位置検出装置、インプリント装置及び位置検出方法
【課題】 位置合わせに用いるマークからの光量を多くして検出しやすくする位置検出装置、及び、それを用いたインプリント装置を提供する。
【解決手段】 本発明の位置検出装置は、第一方向と、第一方向と異なる第二方向にそれぞれ周期をもつ第一回折格子と、第1回折格子の第二方向の周期と異なる周期を第二方向にもつ第二回折格子と、を斜入射照明する照明光学系と、第一回折格子と第二回折格子とからの回折光を検出する検出光学系と、を備え、検出した回折光に基づいて第一回折格子と第二回折格子との第二方向に関する相対的な位置を検出する位置検出装置であって、照明光学系はその瞳面において、第一方向に、複数の極を有する光を照明することを特徴とする。
【解決手段】 本発明の位置検出装置は、第一方向と、第一方向と異なる第二方向にそれぞれ周期をもつ第一回折格子と、第1回折格子の第二方向の周期と異なる周期を第二方向にもつ第二回折格子と、を斜入射照明する照明光学系と、第一回折格子と第二回折格子とからの回折光を検出する検出光学系と、を備え、検出した回折光に基づいて第一回折格子と第二回折格子との第二方向に関する相対的な位置を検出する位置検出装置であって、照明光学系はその瞳面において、第一方向に、複数の極を有する光を照明することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる2つの物体間の相対位置を検出する位置検出装置、インプリント装置及び位置検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インプリント技術は、パターンが形成された型(モールド)を用いて基板の上に微細なパターンを形成する技術である。例えば、インプリント技術の1つとして、光硬化法がある。この光硬化法を用いたインプリント技術は、まず、基板(ウエハ)の上のインプリント領域であるショットにインプリント材としての樹脂(インプリント樹脂、光硬化性樹脂)を供給する。樹脂とモールドのパターンとを接触させ(押印)、接触させた状態で光を照射することによって樹脂を硬化させる。硬化した樹脂からモールドを引き離す(離型)ことにより、樹脂のパターンが基板の上に形成される。
【0003】
基板上の樹脂とモールドとの押印時には、基板とモールドとの正確な位置合わせを必要とする。インプリント装置における基板とモールドとの位置合わせには、モールドに形成されたマークとショット毎に基板に形成されたマークとを検出することによって位置合わせを行う、いわゆるダイバイダイ方式が知られている。
【0004】
特許文献1には、位置合わせに用いるマークを検出する位置合わせマーク検出機構を有するインプリント装置が記載されている。位置合わせに用いるマークとして、回折格子がモールドと基板にそれぞれ配置されている。モールド側の回折格子は計測方向に周期をもつ回折格子であり、基板側の回折格子は計測方向と計測方向に直交する方向(非計測方向)とにそれぞれ周期をもつチェッカーボード状の回折格子である。回折格子に照明を行う照明光学系と、回折格子からの回折光を検出する検出光学系は、いずれもモールドと基板に垂直な方向から非計測方向に傾いて配置されている。すなわち、照明光学系は回折格子に対して非計測方向から斜入射照明を行うように構成されている。回折格子に斜入射で入射した光は基板側に配置されたチェッカーボード状の回折格子によって非計測方向に回折され、検出光学系は非計測方向に関してゼロ次光以外の単一の回折光のみを検出するように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7292326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
つまり、特許文献1の方法では、単一の回折光を検出しているのに過ぎない。そのため、回折格子からの回折光の光量が少なく、位置合わせに用いるマークを検出しにくい。そこで、本発明は位置合わせに用いるマークからの回折光の光量を多くしてマークを検出しやすくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の位置検出装置は、第一方向と、第一方向と異なる第二方向にそれぞれ周期をもつ第一回折格子と、第1回折格子の第二方向の周期と異なる周期を第二方向にもつ第二回折格子と、を斜入射照明する照明光学系と、第一回折格子と第二回折格子からの回折光を検出する検出光学系と、を備え、検出した回折光に基づいて第一回折格子と第二回折格子との第二方向に関する相対的な位置を検出する位置検出装置であって、照明光学系はその瞳面において、第一方向に複数の極を有する光を照明することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、位置合わせに用いるマークからの回折光の光量を多くしてマークを検出しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態のインプリント装置を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態の位置検出装置を示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態の位置検出装置を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態の位置検出装置の照明瞳分布を示す図である。
【図5】モアレ縞を発生するアライメントマークを示す図である。
【図6】本発明の第1実施形態のX方向のアライメントマークを示す図である。
【図7】本発明の第1実施形態のアライメントマークの回折光を示す図である。
【図8】本発明の第1実施形態のY方向のアライメントマークを示す図である。
【図9】本発明の第1実施形態の位置検出装置がX方向とY方向のアライメントマークを検出する様子を示す図である。
【図10】本発明の第2実施形態の位置検出装置の照明瞳分布を示す図である。
【図11】本発明の第2実施形態のX方向のアライメントマークを示す図である。
【図12】本発明の第2実施形態のアライメントマークの回折光を示す図である。
【図13】本発明の第2実施形態のY方向のアライメントマークを示す図である。
【図14】本発明の第3実施形態のインプリント装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
[第1実施形態]
図1を用いて、第1実施形態に係るインプリント装置について説明する。
【0012】
図1は第1実施形態のインプリント装置の構成を示す概略図である。このインプリント装置は、被処理体である基板に供給されたインプリント材(樹脂)を型(モールド)で成形し基板上にパターンを転写する装置である。例えば、半導体デバイスなどのデバイス製造に使用される。以下の図において、基板およびモールドに平行な面内に、互いに直交するX軸およびY軸をとり、X軸とY軸に垂直な方向にZ軸をとる。
【0013】
インプリント装置1は、照射部2と、検出部3、モールド保持部4、基板ステージ5、塗布機構6を備える。
【0014】
照射部2は、凹凸状のパターン7aが形成されたモールド7と基板8に供給された樹脂9とを接触させた状態で、樹脂9を硬化させるために、光を照射する照射装置である。照射部2は光源(不図示)を備えている。また、照射部2は光源から射出される光を被照射面となるパターン7aの領域に対して所定の形状で均一に照射するための複数の光学素子を備えていても良い。光の照射領域(照射範囲)は、パターン7aが形成されている領域の面積と同程度、または、わずかに大きいことが望ましい。これは、照射領域を必要最小限とすることで、照射に伴う熱に起因してモールド7または基板8が膨張し、樹脂9に転写されるパターンに位置ズレや歪みが発生することを抑えるためである。加えて、基板8などで反射した光が塗布機構6に到達し、塗布機構6の吐出口に残留した樹脂を硬化させてしまうことで、後の塗布機構の動作に異常が発生することを抑えるためでもある。
【0015】
光源としては、例えば、高圧水銀ランプ、各種エキシマランプ、エキシマレーザーまたは発光ダイオードなど用いることができる。ここでは、樹脂9として紫外線で硬化する光硬化樹脂を用いているので、光源から紫外線が照射される。しかし、光源から照射される光は用いる樹脂に応じて適宜波長を決めることができる。また、本発明は、光源の種類、数、または波長などにより限定されるものではない。
【0016】
検出部3(位置検出装置)はモールド7と基板8との相対的な位置合わせのためにマークの検出を行う。具体的にはモールド7に形成されたアライメントマーク10と基板8に形成されたアライメントマーク11を光学的に検出することで、両者の相対位置を計測することができる。検出部3の光軸はモールドまたは基板に対して鉛直方向になるように配置されている。また、検出部3はアライメントマーク10、11の位置に合わせて、X方向およびY方向に移動可能に配置されている。さらに検出部3は、アライメントマークの位置に光学系の焦点を合わせるためにZ方向に移動可能である。アライメントマークを検出し、計測したモールド7と基板8の相対位置情報に基づいて基板ステージ5や後述の倍率補正機構を制御する。
【0017】
モールド保持部4(型保持部)は、真空吸着力や静電力によりモールド7を引きつけて保持するモールドチャック機構を含む。また、モールド保持部4は、基板8に供給された樹脂9にモールド7を押し付けるためのモールド駆動機構(不図示)を含んでいる。モールド駆動機構はモールド7をZ方向に動かすことができる。さらに、モールド保持部にはモールド7をX方向およびY方向に変形させてパターンの歪みを補正するモールド倍率補正機構(不図示)を含む。
【0018】
基板ステージ5は、真空吸着力や静電力により基板8を引きつけて保持する基板チャック機構を含む。基板ステージ5は、基板8を保持しながらXY平面内を移動可能とする基板保持部である。
【0019】
なお、インプリント装置1における押印および離型の各動作は、モールド保持部4(モールド7)をZ方向に移動させることで実現してもよいが、基板ステージ5(基板8)をZ方向に移動させてもよい。またはモールド7と基板8の両方を移動させてもよい。
【0020】
塗布機構6は、基板8に樹脂9を供給する供給装置である。塗布機構6は、樹脂9を供給するためのノズルを備えている。塗布機構6は、インプリント装置1の内部に備えていなくてもよく、インプリント装置1の外部でもよい。例えば、外部の塗布機構により予め樹脂が供給された基板8をインプリント装置1の内部に導入する構成もあり得る。この構成によれば、インプリント装置1の内部での塗布工程がなくなるため、インプリント装置1で行う処理の時間の迅速化が可能となる。また、塗布機構6が不要となることから、インプリント装置1全体としての製造コストを抑えることができる。
【0021】
モールド保持部4は、凹凸状のパターン7aが形成されている面が基板8に対向するようにモールド7を保持している。モールド7は、基板8に対する面に所定の凹凸状のパターン7aが形成されている。所定のパターン(例えば、回路パターン等)が3次元状に形成された型である。モールド7を介して光を樹脂9に照射するため、モールド7は光を透過する材料で作られている。その材料としては、例えば石英などである。
【0022】
基板8は、例えば、単結晶シリコンからなる半導体ウエハやガラス基板などの被処理体である。基板8の表面(被処理面)には、樹脂9(インプリント材)が供給される。
【0023】
樹脂9は、本実施形態では紫外線を受光することにより硬化する性質を有する光硬化性樹脂を用いる。樹脂9の材料は製造する半導体デバイスの種類により適宜選択される。
【0024】
次に、インプリント装置1によるインプリント処理について説明する。まず、不図示の基板搬送部により基板8を基板ステージ5に搬送し、基板8を基板ステージ5に載置する。基板ステージ5に保持された基板8は、その表面に塗布機構6を用いて樹脂9を塗布するために塗布位置へ移動する。その後、塗布機構6は塗布工程として基板8の所定のショット(インプリント領域)に樹脂9を供給する。次に、樹脂9が供給されたショットがモールド7の直下に位置するように、基板ステージ5が移動する。次に、モールド駆動機構を駆動させ、基板8に供給された樹脂9にモールド7に形成されたパターン7aを押し付ける(押印工程)。
【0025】
このとき、樹脂9は、モールド7の押印工程によりパターン7aに沿って流動する。より具体的には、パターン7aの凹部に樹脂9が充填される。さらにこの状態で、基板8およびモールド7に形成されたアライメントマーク10および11を検出部3によって検出する。基板ステージ5の移動によるモールド7のパターン面と基板8の塗布面との位置合わせ、および倍率補正機構によるモールド7の倍率補正などを実施する。樹脂9のパターン7aへの充填と、モールド7と基板8との位置合わせおよびモールド7の倍率補正などが十分になされた段階で、照射部2はモールド7を介して光を照射し、モールド7を透過した光により樹脂9を硬化させる(硬化工程)。この際、検出部3は検出部2から照射された光の光路を遮らないように退避する。樹脂9を硬化させた後、モールド7と基板8を引き離す(離型工程)ことにより、基板8の上にモールド7のパターン7aが転写される。
【0026】
続いて、モールド7に形成されたアライメントマーク10と、基板8に形成されたアライメントマーク11を検出する方法について詳細を説明する。
【0027】
図2は本実施形態の検出部3の構成の一例を示す概略図である。検出部3は検出光学系21と照明光学系22を含む構成である。図2は検出光学系の光軸と照明光学系の光軸の一部が共通であることを示している。
【0028】
照明光学系22は光源23からの光を、プリズム24などの光学部材を用いて検出光学系21と同じ光軸上へ導き、アライメントマーク10および11を照明する。
【0029】
光源23には例えばハロゲンランプやLEDなどが用いられる。光源23から照射される光の波長は、前述の照射部2から照射される光の波長とは異なる光を用いるのがよい。例えば、照射部2から照射される光に紫外線を用いて、光源23から照射される光に可視光や赤外線を用いる。
【0030】
検出光学系21と照明光学系22はそれらを構成する光学部材の一部を共有するように構成されており、プリズム24は検出光学系21と照明光学系22の瞳面もしくはその近傍に配置されている。アライメントマーク10および11はそれぞれ回折格子から構成されている。照明光学系22によって照明されたアライメントマーク10からの回折光と、アライメントマーク11からの回折光により発生するパターン(モアレ縞)を検出光学系21は撮像素子25に結像する。撮像素子25はCCDやCMOSなどが用いられる。
【0031】
プリズム24はその貼り合せ面において、照明光学系22の瞳面の周辺部分の光を反射するための反射膜24aを有する。反射膜24aは照明光学系22の瞳強度分布形状を規定する開口絞りとして働く。また、反射膜24aは検出光学系21の瞳の大きさを規定する開口絞りとして働く。あるいは検出NA(NAo)を規定する。
【0032】
プリズム24は、貼り合せ面に半透膜を有するハーフプリズムや、あるいはプリズムに限らず表面に反射膜を成膜した板状の光学素子などであってもよい。さらに、照明光学系22あるいは検出光学系21の瞳形状を変化させるために、プリズム24は不図示のターレットやスライド機構の切り換え機構によって、他の開口形状を有するプリズムと交換可能にしてもよい。また、プリズム24が配置される位置は、必ずしも検出光学系21と照明光学系22の瞳面もしくはその近傍でなくてもよい。
【0033】
さらに、瞳強度分布形状を規定する開口絞りはプリズム24に配置しなくても良い。例えば、図3に示すように、検出光学系21の瞳面に開口絞り26を配置し、照明光学系22の瞳面に開口絞り27を配置する。開口絞り26は検出光学系21の瞳の大きさを規定し、開口絞り27は照明光学系22の瞳強度分布を規定する。このとき、プリズム24にはその貼り合せ面に半透膜を有するハーフプリズム等が用いられる。さらに、開口絞り26および開口絞り27は、不図示のターレット等の切り換え機構によって、異なる開口形状を有する開口絞りに切り替え可能にしてもよい。
【0034】
図4は検出部3の照明瞳分布と検出NA(NA0)との関係を示したものである。図4では照明光学系の瞳面における瞳の大きさを開口数NAで示している。本実施形態の照明光学系22の照明瞳分布はIL1からIL4の4つの光強度分布(極)からなる。前述のように照明光学系22の瞳面に開口絞り27を配置することによって、1つの光源23から複数の極を形成することができる。複数のピークを有する光強度分布のために、複数の光源を必要としないため、検出部3を簡略化あるいは小型化することができる。
【0035】
極IL1〜IL4はそれぞれ直径NApの円形である。ここでは、X軸とY軸の交点を光学系の光軸とし、検出光学系の光軸と照明光学系の光軸が共通である。
【0036】
極IL1とIL2は瞳面のY軸上の光軸からそれぞれプラス方向とマイナス方向にNAil(NAil1)だけ離れた位置に配置されている。このように、極IL1とIL2は光軸上を除きY軸方向に平行な軸上に、光軸に対して対称に配置することができる。また、極の大きさはNAp(NAp1)である。
【0037】
極IL3とIL4は瞳面のX軸上の光軸からそれぞれプラス方向とマイナス方向にNAil(NAil2)だけ離れた位置に配置されている。このように、極IL3とIL4は光軸上を除きX軸方向に平行な軸上に、光軸に対して対称に配置することができる。また、極の大きさはNAp(NAp2)である。
【0038】
すなわち、照明光学系22はアライメントマーク10および11に対して同時に斜入射照明を行うように照明瞳分布を形成している。アライメントマーク10および11への入射角度θは
θ=sin−1(NAil) ・・・式1
である。また、NAo、NAp、NAilは下記の式2を満足する。
NAo<NAil−NAp/2 ・・・式2
すなわちアライメントマーク10および11からの正反射光(ゼロ次回折光)を検出しない、暗視野構成になっている。
【0039】
次に図5を用いて、アライメントマーク10および11からの回折光により生じるパターン(モアレ縞)の発生する原理とモアレ縞を用いた相対位置検出について説明する。
【0040】
モールドと基板に形成された回折格子の計測方向の周期は互いに僅かに異なっている。このような周期が互いに異なる回折格子同士を重ねると、2つの回折格子からの回折光同士の干渉により、回折格子間の周期差を反映した周期を有するパターン(いわゆるモアレ縞)が現れる。このとき、回折格子同士の相対位置によってモアレ縞の位相が変化するので、モアレ縞を観察することにより基板とモールドとの相対位置合わせを行うことができる。
【0041】
図5(a)と図5(b)に示すような周期が僅かに異なる回折格子31と回折格子32を重ねると、それぞれの回折格子からの回折光が重なり合うことで、周期の差を反映した周期をもつ図5(c)のようなパターン(モアレ縞)が発生する。モアレ縞は、2つの回折格子31と32の相対位置によって明暗の位置(縞の位相)が変化する。例えば、片方の回折格子をX方向に少しだけずらしてやると、図5(c)のモアレ縞は図5(d)のように変化する。このモアレ縞は、2つの回折格子が実際に変化した相対位置の大きさよりも、大きな周期で縞の位相が変化するため、検出光学系21の解像力が低くても、精度良く2物体間の相対位置を計測することができる。
【0042】
ここで、モアレ縞を検出するために図5(a)と図5(b)の回折格子を明視野で検出(垂直方向から照明し、垂直方向から回折光を検出)しようとすると、回折格子からのゼロ次光も検出してしまう。ゼロ次光はモアレ縞のコントラスを下げる要因になるので、本実施形態の検出部3では、前述のようにゼロ次光を検出しない暗視野の構成をとっている。そこで、斜入射で照明する暗視野の構成でもモアレ縞を検出できるように、モールドに形成された回折格子と基板に形成された回折格子のいずれか一方を、図6(a)に示すようなチェッカーボード状の回折格子にしている。モールド側と基板側のどちらの回折格子をチェッカーボード状の回折格子にしても、基本的に同一であるが、以下ではモールド側の回折格子をチェッカーボード状にした場合を例に説明する。
【0043】
このようなモアレ縞を利用して相対位置を検出する方法では、解像力が低い検出光学系を用いても、高い精度で位置合わせを行うことができるという利点がある。
【0044】
図6(a)と図6(b)はそれぞれモールドと基板のX方向に関する相対位置を検出するためのモールド側のアライメントマーク10(第一マーク)の回折格子10aと、基板側のアライメントマーク11(第二マーク)の回折格子11aを図示したものである。モールド側のアライメントマーク10はX方向(第二方向)とY方向(第一方向)にそれぞれ周期Pm(P1)の周期構造を有するチェッカーボード状の回折格子10aである。また、基板側のアライメントマーク11はX方向に周期Pmと異なる周期Pwの周期構造をもつ回折格子11aである。
【0045】
この2つの回折格子10a(第一回折格子)および11a(第二回折格子)を重ねた状態で検出部3によってモアレ縞を検出する原理について、図7を用いて説明する。ここで、回折格子10aのX方向とY方向の周期は同一としているが、必ずしもその必要はなく、回折格子10aのX方向とY方向の周期は異なっていてもよい。ここでは簡便のために回折格子10aのX方向とY方向の周期は同一である場合について説明するが、X方向とY方向の周期が異なっていても基本的な説明は同じである。
【0046】
図7(a)と図7(b)は回折格子10aと回折格子11aをそれぞれX軸に沿った方向とY軸に沿った方向から見た図である。X方向に関する相対位置を検出するためのモアレ縞は、図4に示した照明瞳面においてY軸に沿った方向に並んだ極IL1とIL2によって発生する。
【0047】
ここで、回折格子による回折角φは、回折格子の周期をd、光の波長をλ、回折次数をnとして、以下の式で表わされる。
sinφ=nλ/d ・・・式3
したがって、回折格子10aおよび11aによる回折角をそれぞれφm、φwとすると、
sinφm=nλ/Pm ・・・式4
sinφw=nλ/Pw ・・・式5
となる。
【0048】
図7(a)を用いてY方向(非計測方向)に関する回折光について説明する。まず照明瞳面において非計測方向であるY軸に沿った方向に並んだ極IL1とIL2によって、回折格子10aおよび回折格子11aがY軸方向から同時に斜入射照明される。回折格子10aおよび回折格子11aで正反射した光(ゼロ次回折光)D1およびD1′は、検出部3が式2を満足するために、検出光学系21には入射しない。一方で、Y方向にPmの周期をもつモールド側の回折格子10aによって角度φmだけ回折した光D2及びD2′は、検出光学系21によって検出される。本実施形態ではゼロ次光を除く回折光の中で回折強度が最も高い±1次回折光を検出するために、PmとNAo、NAil、NApは以下の条件を満足している。
|NAil−|sinφm||=|NAil−λ/Pm|<NAo+NAp/2 ・・・式6
言い換えると、式6を満足する範囲の波長λでY方向への回折光を検出することができる。
【0049】
ここで、もっとも効率良く1次回折光を検出できるのはD2がY軸に垂直になる場合なので、光源から出力される照明光の中心波長をλcとすると、
NAil−λc/Pm=0 ・・・式7
となるように照明条件とモールド側の回折格子の周期が調整されていることが望ましい。
【0050】
以上のように、Y方向に関してはモールド側の回折格子10aが斜入射照明され、回折格子10aによってY方向に回折し、検出光学系21により回折光が検出される。
【0051】
次に、X方向(計測方向)に関する回折光の説明を、図7(b)を用いて行う。
【0052】
照明瞳面のY軸に沿った方向に並んだ極IL1およびIL2は、X軸に垂直な方向から回折格子10aおよび11aに入射する。Y方向の場合と同様に+/−1次の回折光を考えると、モールド側の回折格子10aで+/−1次で回折し、基板側の回折格子11aで−/+1次に回折した回折光D4は、PmとPwが近いためにX軸に対して小さな角度で検出光学系21に入射する。このときの回折角φΔは以下の式で表わされる。
【0053】
【数1】
【0054】
式8において|Pw−Pm|/(Pm・Pw)=1/PΔとすると
sinφΔ=λ/PΔ ・・・式9
となる。これは回折光D4によって周期がPΔのパターンが現れることを意味する。このパターンがモアレ縞であり、その周期はモールド側の回折格子と基板側の回折格子の周期の差に依存する。ただし、本実施形態においてはモールド側の回折格子がチェッカーボード状であるため、発生するモアレ縞の周期はPΔ/2となる。このとき、モールドと基板の相対位置の変化はモアレ縞の明暗の位置ずれに拡大されるため、解像力が低い検出光学系を用いても、高い精度で位置合わせを行うことができる。
【0055】
次に、モールド側の回折格子10aもしくは基板側の回折格子11aのいずれか一方で1回回折した光は、角度φmあるいはφwで射出する(図7(b)のD3)。D3はモアレ縞を発生させずにノイズとなるので、検出光学系21によって検出されないことが望ましい。そのため、本実施形態では下記の式10および式11を満足するように回折格子の周期と検出部3が調整されている。
NAo+NAp/2<|sinφm|=λ/Pm ・・・式10
NAo+NAp/2<|sinφw|=λ/Pw ・・・式11
また、モールド側の回折格子10aと基板側の回折格子のいずれでもX軸方向に回折しなかった光(ゼロ次回折光、図7(b)D5)はモールドおよび基板で正反射して検出光学系21に入射する。また、基板側の回折格子で回折せずに基板での反射の前後でモールド側の回折格子でそれぞれX軸方向に+/−n次回折と−/+n次回折した(トータルでゼロ次の)回折光も検出光学系21に入射する。これらの光はモアレ縞を生成せずにモアレ縞のコントラストを低下する要因となるが、本実施形態においてはモールド側の回折格子10aがチェッカーボード状であるため、隣り合う格子からの回折光の位相がπずれ、互いに打ち消し合う。したがってD5の強度は抑制され、コントラストよくモアレ縞を計測することができる。
【0056】
以上、モールドと基板のX方向に関する相対位置計測のためのモアレ縞の検出について説明したが、Y方向に関する相対位置計測のためのモアレ縞の検出についても、アライメントマークと斜入射照明の方向をX方向とY方向で入れ替えるだけで基本的に同じである。
【0057】
図8(a)と図8(b)はそれぞれモールドと基板のY方向に関する相対位置を検出するためのモールド側のアライメントマーク10の回折格子10bと、基板側のアライメントマーク11の回折格子11bを図示したものである。モールド側のアライメントマーク10(第三マーク)はX方向とY方向にそれぞれ周期Pm(P2)の周期構造を有するチェッカーボード状の回折格子10b(第三回折格子)である。また、基板側のアライメントマーク11(第四マーク)はY方向に周期Pmと異なる周期Pwの周期構造をもつ回折格子11b(第四回折格子)である。
【0058】
Y方向に関する相対位置を検出するためのモアレ縞は、回折格子10bと回折格子11bを照明光学系から照射した光で同時に照明することで発生する。すなわち、図4に示した照明瞳面においてX軸に沿った方向に並んだ極IL3とIL4によってモアレ縞は発生する。
【0059】
ここで、本実施形態においては図4に示した照明瞳面においてY軸方向に平行な軸上に並んだ極IL1とIL2によって、X方向に関する相対位置計測のためのモアレ縞を発生させている。すなわち、照明瞳面において非計測方向に沿った方向に並んだ光強度分布でモアレ縞を発生させている。
【0060】
その一方で、アライメントマーク10とアライメントマーク11の周期を調整すれば、図4に示した照明瞳面においてX軸に沿った方向に並んだ極IL3とIL4によって、X方向に関する相対位置計測のためのモアレ縞を発生させることも可能である。すなわち、照明瞳面において計測方向に垂直な方向に沿って並んだ強度分布でモアレ縞を発生させることも可能である。
【0061】
しかしその場合、IL3とIL4が回折格子10aによって計測方向に回折された+1次光と−1次光の回折格子11aへの入射角度が大きく異なってしまうため、+1次光と−1次光のいずれか一方しか検出できない。無理に検出しようとすると、検出光学系のNAを非常に大きくする必要がある。
【0062】
これに対して、照明瞳面において計測方向に沿った方向に並んだ極でモアレ縞を発生させる場合には、比較的小さな検出NAを維持したまま、回折格子10aによって計測方向に回折された照明光の+1次光と−1次光のどちらも検出することができる。すなわち、2倍の回折光を検出することができるため、2倍の光量でモアレ縞を検出できるという利点がある。
【0063】
特許文献1の位置検出方法では、基板の上に形成された回折格子によって回折した光をモールドもしくはウエハに垂直ではない方向から検出している。そのため、1つの検出部で複数方向に関する相対位置情報を取得することができない。基板とモールドとの位置合わせを行うためには、少なくとも2方向(例えばX方向とY方向)に関する相対位置情報を取得する必要があるので、少なくとも2つの検出部が必要となる。さらには、モールドと基板のショット形状や倍率を補正するために、例えばショットの4か所で相対位置情報を取得しようとすると、8つの検出部が必要になってしまう。従って、多くの検出部が必要になるため、装置コストが増大するとともに、光学系の配置が複雑になり、さらには光学系を配置するスペースの確保が難しくなるという問題がある。
【0064】
そこで、図9のように回折格子10aと11a、回折格子10bと11bとをそれぞれ重ねたマークを、図4のような照明瞳分布と検出NA(NA0)を有する検出部3を用いてマークを検出する。図9のように、検出部3の視野40にX方向のアライメントマークとY方向のアライメントマークを同時に入れることによって、X方向とY方向に関する位置合わせのためのモアレ縞を同時に観察することができる。すなわち、本実施形態の位置検出システムでは、一つの検出部3(検出光学系21と照明光学系22)によって2方向の相対位置情報を同時に取得することができる。
【0065】
従来の検出部は1方向のマークに対して1つの検出部を必要としていたため、従来と比較して、検出部の数を減らせるため安価で簡易な相対位置検出システムを提供することができる。
【0066】
以上、回折格子10aと回折格子10bの周期がそれぞれ同じで、回折格子11aと回折格子11bの周期がそれぞれ同じ場合について説明したが、これに限られない。すなわち、回折格子10aと回折格子10bの周期はそれぞれ異なっていてもよく、また、回折格子11aと回折格子11bの周期はそれぞれ異なっていてもよい。また、検出部3の光軸から極IL1およびIL2までの距離と、光軸から極IL3およびIL4までの距離はそれぞれ異なっていてもよい。
【0067】
ただし、回折格子10aと回折格子10bがそれぞれX方向とY方向で互いに等しい周期の周期構造をもつ回折格子であると、モールドに形成されたアライメントマーク10を1種類にすることが出来る。つまり、アライメントマーク10をX方向の位置合わせのための回折格子10aとY方向の位置合わせのための回折格子10bを共通のマークとすることができ、アライメントマークのデザインを簡略化することができる。
【0068】
さらに、このように回折格子10aと回折格子10bとを互いに等しい周期の周期構造をもつ回折格子とすることにより、回折格子10aと回折格子10bとを共通の一つの回折格子とすることができる。すなわち、回折格子10aと回折格子10bを、回折格子11aと回折格子11bとの両方に同時に重なるために十分な面積をもつ一つの回折格子とすることもできる。これにより、アライメントマークのデザインを簡略化することができる。
【0069】
本実施形態の位置検出システムでは式6を満足する範囲の波長λで回折光を検出できることは既に述べたとおりであるが、この波長範囲はできる限り広いことが望ましい。
【0070】
基板8に形成されたアライメントマーク11は基板8の表面に剥き出しになっていることは少なく、数層から数十層積まれたプロセスの内部に形成されている場合が多い。アライメントマーク11の上部に透明な物質からなる層が形成されている場合、いわゆる薄膜干渉によって、照明光の波長によってはマークから返ってくる光の強度が非常に弱くなることがある。このとき、照明光の波長λを変えてやれば、薄膜干渉の条件から外れ、マークが見えるようになる。
【0071】
このため、検出部3でアライメントマークを検出する場合も照明光の波長λを広い範囲で可変とし、基板8を作成するプロセスによって、最もよく検出できる条件を設定できることが望ましい。最もよく検出できる条件とは、例えばモアレ縞の信号強度もしくはコントラストが最大になるような条件である。照明光の波長λは光源23としてハロゲンランプのような広帯域に波長を持つ光源を用いてバンドパスフィルタなどで所望の波長帯域を切り出しても良いし、LEDのような単色光光源で中心波長の異なるものを複数備えて切り替えても良い。
【0072】
このように照明光の波長λを選択すると、式3の回折の条件が変わるため、モアレ縞の信号強度やコントラストが変化し、計測精度が低下することがある。また、場合によっては式6を満足しない波長を選択したくなることもある。そのような場合には、検出光学系のNAや照明光学系の瞳面光強度分布、アライメントマーク10および11の回折格子の周期も併せて変更することによって、モアレ縞の強度あるいはコントラスト等を向上できる場合がある。
【0073】
すなわち、照明光の波長λや検出光学系のNA、照明光学系の瞳分布形状、アライメントマーク10および11の回折格子の周期は、基板8を作成するプロセスに応じてモアレ縞を最もよく検出できる条件に適宜選択されることが望ましい。検出光学系のNAおよび照明光学系の瞳強度分布の変更は、前述したように、検出部3内に配置されたプリズム24または開口絞り26および27を切り替えることによって実現される。
【0074】
本実施形態では、図4のように照明光学系の瞳面の光強度分布として、X方向とY方向にそれぞれ2つの極が形成された4重極照明について説明した。光強度分布の形状としては、X方向またはY方向に、2つの極が形成された2重極照明を用いても良い。また、ここでは瞳面において周囲よりも強い光強度を有する領域を極と呼ぶ。したがって、極と極の間に光があっても良い。さらに、光強度分布の形状として、輪帯状であってもよい(輪帯照明)。この場合、X方向とY方向にそれぞれ、2つの光強度のピーク(極)が形成される。そのため、輪帯照明を用いても照明光学系は非計測方向に、複数の極を有する光を照射することができる。
【0075】
このように、本実施形態の検出部3は、1つのモアレ縞を検出するのに位置合わせマークを2方向から同時に斜入射照明して鉛直方向に検出しているので、従来の1方向から斜入射照明して斜め方向から検出する計測光学系と比べて、2倍の光量を確保することができる。これにより、精度よく2物体の相対位置を検出することができる。
【0076】
本実施形態では第一マークと第三マークが形成された第一物体としてモールド、第二マークと第四マークが形成された第二物体として基板の場合について説明した。しかし、第一マークと第三マークが基板に、第二マークと第四マークがモールドに形成されていても良い。ただし、重ねられて配置されている2物体の相対位置を検出するため、2物体のうち、光源側に配置されている物体は光透過性を有している必要がある。第1実施形態ではモールドが光透過性を有している物体として、位置検出装置の光軸に沿って光源側に配置されている。
【0077】
[第2実施形態]
第2実施形態の位置検出装置について説明する。
【0078】
本実施形態の位置検出装置は、第1実施形態で説明した検出部3の照明瞳分布とアライメントマーク10および11の構成が異なることを除いて、その他の基本的な構成は同じである。また、本実施形態の位置検出装置(検出部3)を備えるインプリント装置についても、装置の基本的な構成、インプリント処理の方法については第一実施形態と同じである。
【0079】
図10に本実施形態に係る検出部3(位置検出装置)の照明瞳分布と検出NA(NA0)との関係を示す。図10では図4と同様に照明光学系の瞳面における瞳の大きさを開口数NAで示している。本実施形態の検出部3の照明瞳分布はIL11とIL12の2つの極からなる。IL11およびIL12は、それぞれ直径NApの円形の極である。ここで、XY平面上にX軸およびY軸と異なるW軸を新たに定義する。W軸は例えば、X軸およびY軸と、それぞれ45度をなす方向に定義される。IL11およびIL12は瞳面のW軸上の光軸からそれぞれプラス方向とマイナス方向NAilだけ離れた位置に配置されている。
【0080】
したがって、本実施形態は、アライメントマーク10および11に対して斜入射照明を行う。また、NAo、NAp、NAilは上述の式2を満足しており、アライメントマーク10および11からの正反射光(ゼロ次回折光)を検出しない、暗視野構成になっている。
【0081】
図11(a)と図11(b)はそれぞれモールド7と基板8のX方向に関する相対位置を検出するためのモールドに形成されたアライメントマーク10と基板に形成されたアライメントマーク11を図示したものである。モールド側のアライメントマーク10(第五マーク)はX方向とW方向(第三方向)にそれぞれ周期Pmの周期構造を有するチェッカーボード状の回折格子10c(第五回折格子)である。また、基板側のアライメントマーク11(第二マーク)はX方向にPmと異なる周期Pwの周期構造をもつ回折格子11c(第二回折格子)である。ここで、回折格子10cのX方向とW方向の周期は同一としているが、必ずしもその必要はなく、回折格子10cのX方向とW方向の周期は異なっていてもよい。
【0082】
この2つの回折格子10cおよび11cを重ねた状態で検出部3によってモアレ縞を検出する原理について、図12を用いて説明する。基本的には第一実施形態で説明した原理と同じである。図12(a)はWZ平面、図12(b)はXZ平面で回折格子10cと回折格子11cを見た図を示している。X方向に関する相対位置を検出するためのモアレ縞は、回折格子10cと回折格子11cを照明光学系から照射した光で照明することで発生する。図10に示した照明瞳面においてW軸に沿った方向に並んだ極IL11とIL12によってモアレ縞は発生する。
【0083】
図12(a)を用いてW方向(非計測方向)に関する回折光について説明する。まず照明瞳面において非計測方向であるW軸に沿った方向に並んだ極IL11とIL12によって、回折格子10cおよび回折格子11cがW方向から斜入射照明される。回折格子10cおよび11cによる回折角φm、φwは、第1実施形態と同様に、式4および式5で表わされる。
【0084】
回折格子10cおよび11cで正反射した光(ゼロ次回折光)D11およびD11′は、検出部3が式2を満足するために、検出光学系21には入射しない。一方で、W軸方向にPmの周期をもつ回折格子10cによって角度φmだけ回折した回折光D12およびD12′は、検出光学系21によって検出される。ここで、PmとNAo、NAil、NApは第1実施形態と同様に式6を満足しているので、式6を満足する範囲の波長λでY軸方向への回折光を検出することができる。
【0085】
また、もっとも効率良く1次回折光を検出できるのはD12がY軸に垂直になる場合なので、式7を満足するように、照明条件とモールド側の回折格子の周期が調整されていることが望ましいことも第1実施形態と同様である。
【0086】
以上のように、W方向に関してはモールド側の回折格子10cが斜入射照明され、回折格子10cによってW方向に回折し、検出光学系21により回折光が検出される。
【0087】
次に、図12(b)を用いて、X方向(計測方向)に関する回折光の説明を行う。ここで、IL11およびIL12は本来紙面に対してねじれた方向から入射するものであるが、実際に検出光学系21によって検出される光は上述のように回折格子10cによってW方向にφmだけ回折された回折光D12である。回折光D12はXY平面に対して垂直な方向に回折されているので、回折光D12がさらにX方向への回折を考えることは、XY平面に対して垂直に入射する入射光IL11′およびIL12′を仮想的に考えることと等価である。したがって、ここでは説明を容易にするために、IL11およびIL12がW軸方向に関してXY平面に垂直に回折された回折光D12と等価な入射光IL11′およびIL12′を用いて説明する。
【0088】
IL11′およびIL12′は、X軸に垂直な方向から回折格子10cおよび11cに入射する。W方向の場合と同様に+/−1次の回折光を考えると、回折格子10cで+/−1次で回折し、回折格子11cで−/+1次に回折した回折光D14は、式8で表わされる角度φΔで検出光学系21に入射する。したがって、回折光D14によって周期がPΔ/2のモアレ縞が発生する。
【0089】
次に、回折格子10cもしくは回折格子11cのいずれか一方で1回回折した光は、角度φmあるいはφwで射出する(図12(b)のD13)。D13はモアレ縞を発生させずにノイズとなるので、検出光学系21によって検出されないように、回折格子の周期と検出部3は式11を満足するように調整されている。
【0090】
また、回折格子10cと回折格子11cのいずれでもX方向に回折しなかった光(ゼロ次回折光、図12(b)のD15)はモールドおよび基板で正反射して検出光学系21に入射する。また、基板に形成された回折格子で回折せずに、基板での反射の前後でモールドに形成された回折格子でそれぞれX方向に+/−n次回折と−/+n次回折した(トータルでゼロ次の)回折光も検出光学系21に入射する。これらの光はモアレ縞を生成せずにモアレ縞のコントラストを低下する要因となるが、回折格子10cがチェッカーボード状であるため、隣り合う格子からの回折光の位相がπずれ、互いに打ち消し合う。したがってD15の強度は抑制され、コントラストよくモアレ縞を計測することができる。
【0091】
以上、モールドと基板のX方向に関する相対位置計測のためのモアレ縞の検出について説明したが、Y方向に関する相対位置計測のためのモアレ縞の検出についても、回折格子10cと11cのX方向とY方向を入れ替えるだけで基本的に同一である。
【0092】
図13(a)と図13(b)はそれぞれモールドと基板のY方向に関する相対位置を検出するためのモールド側のアライメントマーク10の回折格子10dと、基板側のアライメントマーク11の回折格子11dを図示したものである。
【0093】
モールド側のアライメントマーク10(第六マーク)はX方向とY方向にそれぞれ周期Pmの周期構造を有するチェッカーボード状の回折格子10d(第六回折格子)である。基板側のアライメントマーク11(第一マーク)はY方向に周期Pmと異なる周期Pwの周期構造をもつ回折格子11d(第一回折格子)である。これらの回折格子を重ねて、極IL11とIL12で照明することで、Y方向に関する相対位置計測のためのモアレ縞が発生する。
【0094】
したがって、図9のように回折格子10cと11c、回折格子10dと11dとをそれぞれ重ねたマークを、図10のような照明瞳分布と検出NA(NA0)を有する検出部3を用いてマークを検出することが出来る。図9のように、検出部3の視野40にX方向のアライメントマークとY方向のアライメントマークを同時に入れることによって、X方向とY方向に関する位置合わせのためのモアレ縞を同時に観察することができる。すなわち、本実施形態の位置検出システムでは、一つの検出部3(検出光学系21と照明光学系22)によって2方向の相対位置情報を同時に取得することができる。
【0095】
さらに、本実施形態の位置検出装置では、X方向とY方向のモアレ縞を共通の照明瞳分布で発生させることができる。これによって照明瞳面に配置される光強度分布の数を減らすことができるため、例えば迷光の発生等によるモアレ縞のコントラスト低下を低減することができる。そのため、精度よくモールドと基板の位置合わせを行うことをできるという利点がある。
【0096】
本実施形態ではW軸をX軸およびY軸に対してそれぞれ45度をなす方向で定義したが、これに限定されることはなく、例えばX軸と40度や30度をなす方向に定義してもよい。ただし、W軸がX軸およびY軸に対してなす角が異なると、回折格子10cと回折格子10dとで基本となる格子の形状が異なってしまう。その結果、回折格子10cと回折格子10dの回折効率に差が生じてしまうので、検出されるモアレ縞の強度やコントラストに差が生じることになる。そのため、X方向とY方向の位置合わせ精度に差が生じる恐れがある。W軸は二つの計測方向(X軸およびY軸)に対してそれぞれ同一な角度(45度)をなす方向に定義されることが望ましい。
【0097】
また、ここでは回折格子10cと回折格子10dの周期がそれぞれ同じで、回折格子11cと回折格子11dの周期がそれぞれ同じ場合について説明したが、本実施形態はこれに限られない。すなわち、第1実施形態と同じく、回折格子10cと回折格子10dの周期はそれぞれ異なっていてもよく、また、回折格子11cと回折格子11dの周期はそれぞれ異なっていてもよい。
【0098】
[第3実施形態]
第3実施形態のインプリント装置について説明する。
【0099】
図14は、本実施形態のインプリント装置の構成を示す概略図である。本実施形態のインプリント装置50は、投影光学系12を備える。その他の装置の構成やインプリント処理の方法については第1実施形態で説明したインプリント装置1と基本的に同じである。
【0100】
投影光学系12はモールド7の直上に配置されており、モールド7に形成されたアライメントマーク10と基板8に形成されたアライメントマーク11の像を投影光学系12の投影面13に投影する。
【0101】
また、投影光学系12は、その内部にビームスプリッター14を備えている。ビームスプリッター14には光の波長によって選択的に反射あるいは透過させる光学部材であり、例えば樹脂9を硬化させる紫外線を反射して、アライメントマーク10および11を照明する可視光線あるいは赤外線を透過するように設計することができる。ビームスプリッター14は、例えばダイクロイックミラーやダイクロイックプリズム等が用いられる。図14はビームスプリッター14にダイクロイックミラーを用いた場合を示している。
【0102】
照射部2は基板8に塗布された樹脂9を硬化させるために、本実施形態では紫外線を照射する。照射部2は投影光学系12の側方からビームスプリッター14に光を照射し、ビームスプリッター14で反射した光が投影光学系12の一部を透過してパターン7aに所定の形状で照射される。
【0103】
検出部3(位置検出装置)は投影光学系12(およびビームスプリッター14)を通してアライメントマーク10および11を照明する。投影光学系12の投影面13に投影されたモアレ縞の像を検出することで、モールドと基板との相対位置を検出する。検出部3は上述の第1実施形態で説明した検出部を用いても良いし、第2実施形態で説明した検出部を用いても良い。
【0104】
ビームスプリッター14は、紫外線を透過して可視光線あるいは赤外線を反射するように構成することも可能である。この場合、検出部3はアライメントマークからの回折光が投影光学系12のビームスプリッター14によって折り曲げられた光を検出する。すなわち照射部2が投影光学系12の上方に配置され、検出部3と照射部2との位置が図14と逆になる。
【0105】
このような装置の構成にすることによって、モールドおよび基板に対してその光軸が鉛直方向になるように配置された検出部3を用いても、紫外線照射時に検出部3を退避させる必要がなくなる。検出部3によるアライメントマーク検出の後に、検出部3の退避にかかる時間が必要なくなる。そのため、インプリント装置の生産性を高めることができる。
【0106】
また、本実施形態のインプリント装置50では、投影光学系12の投影面13の近傍に折り曲げミラー15を配置してもよい。折り曲げミラー15によって、検出部3から照明される照明光とアライメントマーク10および11からの回折光はその光束径が小さい位置でXY面に平行な方向に折り曲げられる。したがって、検出波長範囲の拡大や照明光量の増加のために検出光学系21や照明光学系22のNAを拡大して検出部3の径が大きくなっても、配置の自由度が高くなり、検出部3を空間的に余裕のある位置に配置することが可能になる。また、検出部3の配置の自由度が高くなることで、モールド7と基板8に形成されたアライメントマーク10および11の配置の自由度を高くすることができる。
【0107】
本実施形態のような投影光学系12が構成されていない場合、検出部3はモールド保持部4に構成されたモールド駆動機構やモールド倍率補正機構との干渉を避ける必要がある。そのため、検出部3をモールド7からやや離れた位置に配置するか、その径をなるべく小さくする必要がある。検出部3をモールド7から離れた位置に配置すると、その光束径が拡がるために検出部3は大きくなってしまい、検出部3を配置する場所にも制限が生じるため、アライメントマークの配置にも自由度が低くなってしまう。
【0108】
また、検出部3の径を小さくして配置しようとすると、検出光学系21および照明光学系22のNAが小さくなるため、アライメントマークを照明する光量の減少や、検出波長の狭帯域化を招く。結果としてモールドと基板との相対位置合わせの精度を低下させてしまう恐れがある。
【0109】
本実施形態のように、投影光学系12を構成することにより、モールド駆動機構やモールド倍率補正機構との干渉や、アライメントマーク10および11の配置の制限を気にすることなく、検出部3の検出光学系21や照明光学系22のNAを拡大することができる。その結果、検出部3の検出波長範囲を拡大することができ、照明光量を増加することができる。そして、高い精度でモールドと基板の相対位置合わせを行うことができる。
【0110】
また、本発明の検出部(位置検出装置)はインプリント装置に限られず、2つの物体の相対位置を計測して位置合わせを行う装置に用いることが出来る。2つの物体の相対位置を検出するものであればモールドと基板に限られない。その場合、2つの物体の一方にアライメントマーク10を形成し、他方にアライメントマーク11を形成する。検出部はアライメントマークを同時に検出することができるように配置する必要がある。
【0111】
[デバイス製造方法]
デバイス(半導体集積回路素子、液晶表示素子等)製造方法は、上述したインプリント装置を用いて基板(ウエハ、ガラスプレート、フィルム状基板)にパターンを形成する工程を含む。さらに、デバイス製造方法は、パターンを形成された基板をエッチングする工程を含みうる。なお、パターンドメディア(記録媒体)や光学素子などの他の物品を製造する場合の製造方法は、エッチングの代わりに、パターンを形成された基板を加工する他の処理を含みうる。本実施形態の物品製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも一つにおいて有利である。
【0112】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0113】
1 インプリント装置
2 照射部
3 検出部(位置検出装置)
10 アライメントマーク(モールド)
11 アライメントマーク(基板)
21 検出光学系
22 照明光学系
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる2つの物体間の相対位置を検出する位置検出装置、インプリント装置及び位置検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インプリント技術は、パターンが形成された型(モールド)を用いて基板の上に微細なパターンを形成する技術である。例えば、インプリント技術の1つとして、光硬化法がある。この光硬化法を用いたインプリント技術は、まず、基板(ウエハ)の上のインプリント領域であるショットにインプリント材としての樹脂(インプリント樹脂、光硬化性樹脂)を供給する。樹脂とモールドのパターンとを接触させ(押印)、接触させた状態で光を照射することによって樹脂を硬化させる。硬化した樹脂からモールドを引き離す(離型)ことにより、樹脂のパターンが基板の上に形成される。
【0003】
基板上の樹脂とモールドとの押印時には、基板とモールドとの正確な位置合わせを必要とする。インプリント装置における基板とモールドとの位置合わせには、モールドに形成されたマークとショット毎に基板に形成されたマークとを検出することによって位置合わせを行う、いわゆるダイバイダイ方式が知られている。
【0004】
特許文献1には、位置合わせに用いるマークを検出する位置合わせマーク検出機構を有するインプリント装置が記載されている。位置合わせに用いるマークとして、回折格子がモールドと基板にそれぞれ配置されている。モールド側の回折格子は計測方向に周期をもつ回折格子であり、基板側の回折格子は計測方向と計測方向に直交する方向(非計測方向)とにそれぞれ周期をもつチェッカーボード状の回折格子である。回折格子に照明を行う照明光学系と、回折格子からの回折光を検出する検出光学系は、いずれもモールドと基板に垂直な方向から非計測方向に傾いて配置されている。すなわち、照明光学系は回折格子に対して非計測方向から斜入射照明を行うように構成されている。回折格子に斜入射で入射した光は基板側に配置されたチェッカーボード状の回折格子によって非計測方向に回折され、検出光学系は非計測方向に関してゼロ次光以外の単一の回折光のみを検出するように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7292326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
つまり、特許文献1の方法では、単一の回折光を検出しているのに過ぎない。そのため、回折格子からの回折光の光量が少なく、位置合わせに用いるマークを検出しにくい。そこで、本発明は位置合わせに用いるマークからの回折光の光量を多くしてマークを検出しやすくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の位置検出装置は、第一方向と、第一方向と異なる第二方向にそれぞれ周期をもつ第一回折格子と、第1回折格子の第二方向の周期と異なる周期を第二方向にもつ第二回折格子と、を斜入射照明する照明光学系と、第一回折格子と第二回折格子からの回折光を検出する検出光学系と、を備え、検出した回折光に基づいて第一回折格子と第二回折格子との第二方向に関する相対的な位置を検出する位置検出装置であって、照明光学系はその瞳面において、第一方向に複数の極を有する光を照明することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、位置合わせに用いるマークからの回折光の光量を多くしてマークを検出しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態のインプリント装置を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態の位置検出装置を示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態の位置検出装置を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態の位置検出装置の照明瞳分布を示す図である。
【図5】モアレ縞を発生するアライメントマークを示す図である。
【図6】本発明の第1実施形態のX方向のアライメントマークを示す図である。
【図7】本発明の第1実施形態のアライメントマークの回折光を示す図である。
【図8】本発明の第1実施形態のY方向のアライメントマークを示す図である。
【図9】本発明の第1実施形態の位置検出装置がX方向とY方向のアライメントマークを検出する様子を示す図である。
【図10】本発明の第2実施形態の位置検出装置の照明瞳分布を示す図である。
【図11】本発明の第2実施形態のX方向のアライメントマークを示す図である。
【図12】本発明の第2実施形態のアライメントマークの回折光を示す図である。
【図13】本発明の第2実施形態のY方向のアライメントマークを示す図である。
【図14】本発明の第3実施形態のインプリント装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
[第1実施形態]
図1を用いて、第1実施形態に係るインプリント装置について説明する。
【0012】
図1は第1実施形態のインプリント装置の構成を示す概略図である。このインプリント装置は、被処理体である基板に供給されたインプリント材(樹脂)を型(モールド)で成形し基板上にパターンを転写する装置である。例えば、半導体デバイスなどのデバイス製造に使用される。以下の図において、基板およびモールドに平行な面内に、互いに直交するX軸およびY軸をとり、X軸とY軸に垂直な方向にZ軸をとる。
【0013】
インプリント装置1は、照射部2と、検出部3、モールド保持部4、基板ステージ5、塗布機構6を備える。
【0014】
照射部2は、凹凸状のパターン7aが形成されたモールド7と基板8に供給された樹脂9とを接触させた状態で、樹脂9を硬化させるために、光を照射する照射装置である。照射部2は光源(不図示)を備えている。また、照射部2は光源から射出される光を被照射面となるパターン7aの領域に対して所定の形状で均一に照射するための複数の光学素子を備えていても良い。光の照射領域(照射範囲)は、パターン7aが形成されている領域の面積と同程度、または、わずかに大きいことが望ましい。これは、照射領域を必要最小限とすることで、照射に伴う熱に起因してモールド7または基板8が膨張し、樹脂9に転写されるパターンに位置ズレや歪みが発生することを抑えるためである。加えて、基板8などで反射した光が塗布機構6に到達し、塗布機構6の吐出口に残留した樹脂を硬化させてしまうことで、後の塗布機構の動作に異常が発生することを抑えるためでもある。
【0015】
光源としては、例えば、高圧水銀ランプ、各種エキシマランプ、エキシマレーザーまたは発光ダイオードなど用いることができる。ここでは、樹脂9として紫外線で硬化する光硬化樹脂を用いているので、光源から紫外線が照射される。しかし、光源から照射される光は用いる樹脂に応じて適宜波長を決めることができる。また、本発明は、光源の種類、数、または波長などにより限定されるものではない。
【0016】
検出部3(位置検出装置)はモールド7と基板8との相対的な位置合わせのためにマークの検出を行う。具体的にはモールド7に形成されたアライメントマーク10と基板8に形成されたアライメントマーク11を光学的に検出することで、両者の相対位置を計測することができる。検出部3の光軸はモールドまたは基板に対して鉛直方向になるように配置されている。また、検出部3はアライメントマーク10、11の位置に合わせて、X方向およびY方向に移動可能に配置されている。さらに検出部3は、アライメントマークの位置に光学系の焦点を合わせるためにZ方向に移動可能である。アライメントマークを検出し、計測したモールド7と基板8の相対位置情報に基づいて基板ステージ5や後述の倍率補正機構を制御する。
【0017】
モールド保持部4(型保持部)は、真空吸着力や静電力によりモールド7を引きつけて保持するモールドチャック機構を含む。また、モールド保持部4は、基板8に供給された樹脂9にモールド7を押し付けるためのモールド駆動機構(不図示)を含んでいる。モールド駆動機構はモールド7をZ方向に動かすことができる。さらに、モールド保持部にはモールド7をX方向およびY方向に変形させてパターンの歪みを補正するモールド倍率補正機構(不図示)を含む。
【0018】
基板ステージ5は、真空吸着力や静電力により基板8を引きつけて保持する基板チャック機構を含む。基板ステージ5は、基板8を保持しながらXY平面内を移動可能とする基板保持部である。
【0019】
なお、インプリント装置1における押印および離型の各動作は、モールド保持部4(モールド7)をZ方向に移動させることで実現してもよいが、基板ステージ5(基板8)をZ方向に移動させてもよい。またはモールド7と基板8の両方を移動させてもよい。
【0020】
塗布機構6は、基板8に樹脂9を供給する供給装置である。塗布機構6は、樹脂9を供給するためのノズルを備えている。塗布機構6は、インプリント装置1の内部に備えていなくてもよく、インプリント装置1の外部でもよい。例えば、外部の塗布機構により予め樹脂が供給された基板8をインプリント装置1の内部に導入する構成もあり得る。この構成によれば、インプリント装置1の内部での塗布工程がなくなるため、インプリント装置1で行う処理の時間の迅速化が可能となる。また、塗布機構6が不要となることから、インプリント装置1全体としての製造コストを抑えることができる。
【0021】
モールド保持部4は、凹凸状のパターン7aが形成されている面が基板8に対向するようにモールド7を保持している。モールド7は、基板8に対する面に所定の凹凸状のパターン7aが形成されている。所定のパターン(例えば、回路パターン等)が3次元状に形成された型である。モールド7を介して光を樹脂9に照射するため、モールド7は光を透過する材料で作られている。その材料としては、例えば石英などである。
【0022】
基板8は、例えば、単結晶シリコンからなる半導体ウエハやガラス基板などの被処理体である。基板8の表面(被処理面)には、樹脂9(インプリント材)が供給される。
【0023】
樹脂9は、本実施形態では紫外線を受光することにより硬化する性質を有する光硬化性樹脂を用いる。樹脂9の材料は製造する半導体デバイスの種類により適宜選択される。
【0024】
次に、インプリント装置1によるインプリント処理について説明する。まず、不図示の基板搬送部により基板8を基板ステージ5に搬送し、基板8を基板ステージ5に載置する。基板ステージ5に保持された基板8は、その表面に塗布機構6を用いて樹脂9を塗布するために塗布位置へ移動する。その後、塗布機構6は塗布工程として基板8の所定のショット(インプリント領域)に樹脂9を供給する。次に、樹脂9が供給されたショットがモールド7の直下に位置するように、基板ステージ5が移動する。次に、モールド駆動機構を駆動させ、基板8に供給された樹脂9にモールド7に形成されたパターン7aを押し付ける(押印工程)。
【0025】
このとき、樹脂9は、モールド7の押印工程によりパターン7aに沿って流動する。より具体的には、パターン7aの凹部に樹脂9が充填される。さらにこの状態で、基板8およびモールド7に形成されたアライメントマーク10および11を検出部3によって検出する。基板ステージ5の移動によるモールド7のパターン面と基板8の塗布面との位置合わせ、および倍率補正機構によるモールド7の倍率補正などを実施する。樹脂9のパターン7aへの充填と、モールド7と基板8との位置合わせおよびモールド7の倍率補正などが十分になされた段階で、照射部2はモールド7を介して光を照射し、モールド7を透過した光により樹脂9を硬化させる(硬化工程)。この際、検出部3は検出部2から照射された光の光路を遮らないように退避する。樹脂9を硬化させた後、モールド7と基板8を引き離す(離型工程)ことにより、基板8の上にモールド7のパターン7aが転写される。
【0026】
続いて、モールド7に形成されたアライメントマーク10と、基板8に形成されたアライメントマーク11を検出する方法について詳細を説明する。
【0027】
図2は本実施形態の検出部3の構成の一例を示す概略図である。検出部3は検出光学系21と照明光学系22を含む構成である。図2は検出光学系の光軸と照明光学系の光軸の一部が共通であることを示している。
【0028】
照明光学系22は光源23からの光を、プリズム24などの光学部材を用いて検出光学系21と同じ光軸上へ導き、アライメントマーク10および11を照明する。
【0029】
光源23には例えばハロゲンランプやLEDなどが用いられる。光源23から照射される光の波長は、前述の照射部2から照射される光の波長とは異なる光を用いるのがよい。例えば、照射部2から照射される光に紫外線を用いて、光源23から照射される光に可視光や赤外線を用いる。
【0030】
検出光学系21と照明光学系22はそれらを構成する光学部材の一部を共有するように構成されており、プリズム24は検出光学系21と照明光学系22の瞳面もしくはその近傍に配置されている。アライメントマーク10および11はそれぞれ回折格子から構成されている。照明光学系22によって照明されたアライメントマーク10からの回折光と、アライメントマーク11からの回折光により発生するパターン(モアレ縞)を検出光学系21は撮像素子25に結像する。撮像素子25はCCDやCMOSなどが用いられる。
【0031】
プリズム24はその貼り合せ面において、照明光学系22の瞳面の周辺部分の光を反射するための反射膜24aを有する。反射膜24aは照明光学系22の瞳強度分布形状を規定する開口絞りとして働く。また、反射膜24aは検出光学系21の瞳の大きさを規定する開口絞りとして働く。あるいは検出NA(NAo)を規定する。
【0032】
プリズム24は、貼り合せ面に半透膜を有するハーフプリズムや、あるいはプリズムに限らず表面に反射膜を成膜した板状の光学素子などであってもよい。さらに、照明光学系22あるいは検出光学系21の瞳形状を変化させるために、プリズム24は不図示のターレットやスライド機構の切り換え機構によって、他の開口形状を有するプリズムと交換可能にしてもよい。また、プリズム24が配置される位置は、必ずしも検出光学系21と照明光学系22の瞳面もしくはその近傍でなくてもよい。
【0033】
さらに、瞳強度分布形状を規定する開口絞りはプリズム24に配置しなくても良い。例えば、図3に示すように、検出光学系21の瞳面に開口絞り26を配置し、照明光学系22の瞳面に開口絞り27を配置する。開口絞り26は検出光学系21の瞳の大きさを規定し、開口絞り27は照明光学系22の瞳強度分布を規定する。このとき、プリズム24にはその貼り合せ面に半透膜を有するハーフプリズム等が用いられる。さらに、開口絞り26および開口絞り27は、不図示のターレット等の切り換え機構によって、異なる開口形状を有する開口絞りに切り替え可能にしてもよい。
【0034】
図4は検出部3の照明瞳分布と検出NA(NA0)との関係を示したものである。図4では照明光学系の瞳面における瞳の大きさを開口数NAで示している。本実施形態の照明光学系22の照明瞳分布はIL1からIL4の4つの光強度分布(極)からなる。前述のように照明光学系22の瞳面に開口絞り27を配置することによって、1つの光源23から複数の極を形成することができる。複数のピークを有する光強度分布のために、複数の光源を必要としないため、検出部3を簡略化あるいは小型化することができる。
【0035】
極IL1〜IL4はそれぞれ直径NApの円形である。ここでは、X軸とY軸の交点を光学系の光軸とし、検出光学系の光軸と照明光学系の光軸が共通である。
【0036】
極IL1とIL2は瞳面のY軸上の光軸からそれぞれプラス方向とマイナス方向にNAil(NAil1)だけ離れた位置に配置されている。このように、極IL1とIL2は光軸上を除きY軸方向に平行な軸上に、光軸に対して対称に配置することができる。また、極の大きさはNAp(NAp1)である。
【0037】
極IL3とIL4は瞳面のX軸上の光軸からそれぞれプラス方向とマイナス方向にNAil(NAil2)だけ離れた位置に配置されている。このように、極IL3とIL4は光軸上を除きX軸方向に平行な軸上に、光軸に対して対称に配置することができる。また、極の大きさはNAp(NAp2)である。
【0038】
すなわち、照明光学系22はアライメントマーク10および11に対して同時に斜入射照明を行うように照明瞳分布を形成している。アライメントマーク10および11への入射角度θは
θ=sin−1(NAil) ・・・式1
である。また、NAo、NAp、NAilは下記の式2を満足する。
NAo<NAil−NAp/2 ・・・式2
すなわちアライメントマーク10および11からの正反射光(ゼロ次回折光)を検出しない、暗視野構成になっている。
【0039】
次に図5を用いて、アライメントマーク10および11からの回折光により生じるパターン(モアレ縞)の発生する原理とモアレ縞を用いた相対位置検出について説明する。
【0040】
モールドと基板に形成された回折格子の計測方向の周期は互いに僅かに異なっている。このような周期が互いに異なる回折格子同士を重ねると、2つの回折格子からの回折光同士の干渉により、回折格子間の周期差を反映した周期を有するパターン(いわゆるモアレ縞)が現れる。このとき、回折格子同士の相対位置によってモアレ縞の位相が変化するので、モアレ縞を観察することにより基板とモールドとの相対位置合わせを行うことができる。
【0041】
図5(a)と図5(b)に示すような周期が僅かに異なる回折格子31と回折格子32を重ねると、それぞれの回折格子からの回折光が重なり合うことで、周期の差を反映した周期をもつ図5(c)のようなパターン(モアレ縞)が発生する。モアレ縞は、2つの回折格子31と32の相対位置によって明暗の位置(縞の位相)が変化する。例えば、片方の回折格子をX方向に少しだけずらしてやると、図5(c)のモアレ縞は図5(d)のように変化する。このモアレ縞は、2つの回折格子が実際に変化した相対位置の大きさよりも、大きな周期で縞の位相が変化するため、検出光学系21の解像力が低くても、精度良く2物体間の相対位置を計測することができる。
【0042】
ここで、モアレ縞を検出するために図5(a)と図5(b)の回折格子を明視野で検出(垂直方向から照明し、垂直方向から回折光を検出)しようとすると、回折格子からのゼロ次光も検出してしまう。ゼロ次光はモアレ縞のコントラスを下げる要因になるので、本実施形態の検出部3では、前述のようにゼロ次光を検出しない暗視野の構成をとっている。そこで、斜入射で照明する暗視野の構成でもモアレ縞を検出できるように、モールドに形成された回折格子と基板に形成された回折格子のいずれか一方を、図6(a)に示すようなチェッカーボード状の回折格子にしている。モールド側と基板側のどちらの回折格子をチェッカーボード状の回折格子にしても、基本的に同一であるが、以下ではモールド側の回折格子をチェッカーボード状にした場合を例に説明する。
【0043】
このようなモアレ縞を利用して相対位置を検出する方法では、解像力が低い検出光学系を用いても、高い精度で位置合わせを行うことができるという利点がある。
【0044】
図6(a)と図6(b)はそれぞれモールドと基板のX方向に関する相対位置を検出するためのモールド側のアライメントマーク10(第一マーク)の回折格子10aと、基板側のアライメントマーク11(第二マーク)の回折格子11aを図示したものである。モールド側のアライメントマーク10はX方向(第二方向)とY方向(第一方向)にそれぞれ周期Pm(P1)の周期構造を有するチェッカーボード状の回折格子10aである。また、基板側のアライメントマーク11はX方向に周期Pmと異なる周期Pwの周期構造をもつ回折格子11aである。
【0045】
この2つの回折格子10a(第一回折格子)および11a(第二回折格子)を重ねた状態で検出部3によってモアレ縞を検出する原理について、図7を用いて説明する。ここで、回折格子10aのX方向とY方向の周期は同一としているが、必ずしもその必要はなく、回折格子10aのX方向とY方向の周期は異なっていてもよい。ここでは簡便のために回折格子10aのX方向とY方向の周期は同一である場合について説明するが、X方向とY方向の周期が異なっていても基本的な説明は同じである。
【0046】
図7(a)と図7(b)は回折格子10aと回折格子11aをそれぞれX軸に沿った方向とY軸に沿った方向から見た図である。X方向に関する相対位置を検出するためのモアレ縞は、図4に示した照明瞳面においてY軸に沿った方向に並んだ極IL1とIL2によって発生する。
【0047】
ここで、回折格子による回折角φは、回折格子の周期をd、光の波長をλ、回折次数をnとして、以下の式で表わされる。
sinφ=nλ/d ・・・式3
したがって、回折格子10aおよび11aによる回折角をそれぞれφm、φwとすると、
sinφm=nλ/Pm ・・・式4
sinφw=nλ/Pw ・・・式5
となる。
【0048】
図7(a)を用いてY方向(非計測方向)に関する回折光について説明する。まず照明瞳面において非計測方向であるY軸に沿った方向に並んだ極IL1とIL2によって、回折格子10aおよび回折格子11aがY軸方向から同時に斜入射照明される。回折格子10aおよび回折格子11aで正反射した光(ゼロ次回折光)D1およびD1′は、検出部3が式2を満足するために、検出光学系21には入射しない。一方で、Y方向にPmの周期をもつモールド側の回折格子10aによって角度φmだけ回折した光D2及びD2′は、検出光学系21によって検出される。本実施形態ではゼロ次光を除く回折光の中で回折強度が最も高い±1次回折光を検出するために、PmとNAo、NAil、NApは以下の条件を満足している。
|NAil−|sinφm||=|NAil−λ/Pm|<NAo+NAp/2 ・・・式6
言い換えると、式6を満足する範囲の波長λでY方向への回折光を検出することができる。
【0049】
ここで、もっとも効率良く1次回折光を検出できるのはD2がY軸に垂直になる場合なので、光源から出力される照明光の中心波長をλcとすると、
NAil−λc/Pm=0 ・・・式7
となるように照明条件とモールド側の回折格子の周期が調整されていることが望ましい。
【0050】
以上のように、Y方向に関してはモールド側の回折格子10aが斜入射照明され、回折格子10aによってY方向に回折し、検出光学系21により回折光が検出される。
【0051】
次に、X方向(計測方向)に関する回折光の説明を、図7(b)を用いて行う。
【0052】
照明瞳面のY軸に沿った方向に並んだ極IL1およびIL2は、X軸に垂直な方向から回折格子10aおよび11aに入射する。Y方向の場合と同様に+/−1次の回折光を考えると、モールド側の回折格子10aで+/−1次で回折し、基板側の回折格子11aで−/+1次に回折した回折光D4は、PmとPwが近いためにX軸に対して小さな角度で検出光学系21に入射する。このときの回折角φΔは以下の式で表わされる。
【0053】
【数1】
【0054】
式8において|Pw−Pm|/(Pm・Pw)=1/PΔとすると
sinφΔ=λ/PΔ ・・・式9
となる。これは回折光D4によって周期がPΔのパターンが現れることを意味する。このパターンがモアレ縞であり、その周期はモールド側の回折格子と基板側の回折格子の周期の差に依存する。ただし、本実施形態においてはモールド側の回折格子がチェッカーボード状であるため、発生するモアレ縞の周期はPΔ/2となる。このとき、モールドと基板の相対位置の変化はモアレ縞の明暗の位置ずれに拡大されるため、解像力が低い検出光学系を用いても、高い精度で位置合わせを行うことができる。
【0055】
次に、モールド側の回折格子10aもしくは基板側の回折格子11aのいずれか一方で1回回折した光は、角度φmあるいはφwで射出する(図7(b)のD3)。D3はモアレ縞を発生させずにノイズとなるので、検出光学系21によって検出されないことが望ましい。そのため、本実施形態では下記の式10および式11を満足するように回折格子の周期と検出部3が調整されている。
NAo+NAp/2<|sinφm|=λ/Pm ・・・式10
NAo+NAp/2<|sinφw|=λ/Pw ・・・式11
また、モールド側の回折格子10aと基板側の回折格子のいずれでもX軸方向に回折しなかった光(ゼロ次回折光、図7(b)D5)はモールドおよび基板で正反射して検出光学系21に入射する。また、基板側の回折格子で回折せずに基板での反射の前後でモールド側の回折格子でそれぞれX軸方向に+/−n次回折と−/+n次回折した(トータルでゼロ次の)回折光も検出光学系21に入射する。これらの光はモアレ縞を生成せずにモアレ縞のコントラストを低下する要因となるが、本実施形態においてはモールド側の回折格子10aがチェッカーボード状であるため、隣り合う格子からの回折光の位相がπずれ、互いに打ち消し合う。したがってD5の強度は抑制され、コントラストよくモアレ縞を計測することができる。
【0056】
以上、モールドと基板のX方向に関する相対位置計測のためのモアレ縞の検出について説明したが、Y方向に関する相対位置計測のためのモアレ縞の検出についても、アライメントマークと斜入射照明の方向をX方向とY方向で入れ替えるだけで基本的に同じである。
【0057】
図8(a)と図8(b)はそれぞれモールドと基板のY方向に関する相対位置を検出するためのモールド側のアライメントマーク10の回折格子10bと、基板側のアライメントマーク11の回折格子11bを図示したものである。モールド側のアライメントマーク10(第三マーク)はX方向とY方向にそれぞれ周期Pm(P2)の周期構造を有するチェッカーボード状の回折格子10b(第三回折格子)である。また、基板側のアライメントマーク11(第四マーク)はY方向に周期Pmと異なる周期Pwの周期構造をもつ回折格子11b(第四回折格子)である。
【0058】
Y方向に関する相対位置を検出するためのモアレ縞は、回折格子10bと回折格子11bを照明光学系から照射した光で同時に照明することで発生する。すなわち、図4に示した照明瞳面においてX軸に沿った方向に並んだ極IL3とIL4によってモアレ縞は発生する。
【0059】
ここで、本実施形態においては図4に示した照明瞳面においてY軸方向に平行な軸上に並んだ極IL1とIL2によって、X方向に関する相対位置計測のためのモアレ縞を発生させている。すなわち、照明瞳面において非計測方向に沿った方向に並んだ光強度分布でモアレ縞を発生させている。
【0060】
その一方で、アライメントマーク10とアライメントマーク11の周期を調整すれば、図4に示した照明瞳面においてX軸に沿った方向に並んだ極IL3とIL4によって、X方向に関する相対位置計測のためのモアレ縞を発生させることも可能である。すなわち、照明瞳面において計測方向に垂直な方向に沿って並んだ強度分布でモアレ縞を発生させることも可能である。
【0061】
しかしその場合、IL3とIL4が回折格子10aによって計測方向に回折された+1次光と−1次光の回折格子11aへの入射角度が大きく異なってしまうため、+1次光と−1次光のいずれか一方しか検出できない。無理に検出しようとすると、検出光学系のNAを非常に大きくする必要がある。
【0062】
これに対して、照明瞳面において計測方向に沿った方向に並んだ極でモアレ縞を発生させる場合には、比較的小さな検出NAを維持したまま、回折格子10aによって計測方向に回折された照明光の+1次光と−1次光のどちらも検出することができる。すなわち、2倍の回折光を検出することができるため、2倍の光量でモアレ縞を検出できるという利点がある。
【0063】
特許文献1の位置検出方法では、基板の上に形成された回折格子によって回折した光をモールドもしくはウエハに垂直ではない方向から検出している。そのため、1つの検出部で複数方向に関する相対位置情報を取得することができない。基板とモールドとの位置合わせを行うためには、少なくとも2方向(例えばX方向とY方向)に関する相対位置情報を取得する必要があるので、少なくとも2つの検出部が必要となる。さらには、モールドと基板のショット形状や倍率を補正するために、例えばショットの4か所で相対位置情報を取得しようとすると、8つの検出部が必要になってしまう。従って、多くの検出部が必要になるため、装置コストが増大するとともに、光学系の配置が複雑になり、さらには光学系を配置するスペースの確保が難しくなるという問題がある。
【0064】
そこで、図9のように回折格子10aと11a、回折格子10bと11bとをそれぞれ重ねたマークを、図4のような照明瞳分布と検出NA(NA0)を有する検出部3を用いてマークを検出する。図9のように、検出部3の視野40にX方向のアライメントマークとY方向のアライメントマークを同時に入れることによって、X方向とY方向に関する位置合わせのためのモアレ縞を同時に観察することができる。すなわち、本実施形態の位置検出システムでは、一つの検出部3(検出光学系21と照明光学系22)によって2方向の相対位置情報を同時に取得することができる。
【0065】
従来の検出部は1方向のマークに対して1つの検出部を必要としていたため、従来と比較して、検出部の数を減らせるため安価で簡易な相対位置検出システムを提供することができる。
【0066】
以上、回折格子10aと回折格子10bの周期がそれぞれ同じで、回折格子11aと回折格子11bの周期がそれぞれ同じ場合について説明したが、これに限られない。すなわち、回折格子10aと回折格子10bの周期はそれぞれ異なっていてもよく、また、回折格子11aと回折格子11bの周期はそれぞれ異なっていてもよい。また、検出部3の光軸から極IL1およびIL2までの距離と、光軸から極IL3およびIL4までの距離はそれぞれ異なっていてもよい。
【0067】
ただし、回折格子10aと回折格子10bがそれぞれX方向とY方向で互いに等しい周期の周期構造をもつ回折格子であると、モールドに形成されたアライメントマーク10を1種類にすることが出来る。つまり、アライメントマーク10をX方向の位置合わせのための回折格子10aとY方向の位置合わせのための回折格子10bを共通のマークとすることができ、アライメントマークのデザインを簡略化することができる。
【0068】
さらに、このように回折格子10aと回折格子10bとを互いに等しい周期の周期構造をもつ回折格子とすることにより、回折格子10aと回折格子10bとを共通の一つの回折格子とすることができる。すなわち、回折格子10aと回折格子10bを、回折格子11aと回折格子11bとの両方に同時に重なるために十分な面積をもつ一つの回折格子とすることもできる。これにより、アライメントマークのデザインを簡略化することができる。
【0069】
本実施形態の位置検出システムでは式6を満足する範囲の波長λで回折光を検出できることは既に述べたとおりであるが、この波長範囲はできる限り広いことが望ましい。
【0070】
基板8に形成されたアライメントマーク11は基板8の表面に剥き出しになっていることは少なく、数層から数十層積まれたプロセスの内部に形成されている場合が多い。アライメントマーク11の上部に透明な物質からなる層が形成されている場合、いわゆる薄膜干渉によって、照明光の波長によってはマークから返ってくる光の強度が非常に弱くなることがある。このとき、照明光の波長λを変えてやれば、薄膜干渉の条件から外れ、マークが見えるようになる。
【0071】
このため、検出部3でアライメントマークを検出する場合も照明光の波長λを広い範囲で可変とし、基板8を作成するプロセスによって、最もよく検出できる条件を設定できることが望ましい。最もよく検出できる条件とは、例えばモアレ縞の信号強度もしくはコントラストが最大になるような条件である。照明光の波長λは光源23としてハロゲンランプのような広帯域に波長を持つ光源を用いてバンドパスフィルタなどで所望の波長帯域を切り出しても良いし、LEDのような単色光光源で中心波長の異なるものを複数備えて切り替えても良い。
【0072】
このように照明光の波長λを選択すると、式3の回折の条件が変わるため、モアレ縞の信号強度やコントラストが変化し、計測精度が低下することがある。また、場合によっては式6を満足しない波長を選択したくなることもある。そのような場合には、検出光学系のNAや照明光学系の瞳面光強度分布、アライメントマーク10および11の回折格子の周期も併せて変更することによって、モアレ縞の強度あるいはコントラスト等を向上できる場合がある。
【0073】
すなわち、照明光の波長λや検出光学系のNA、照明光学系の瞳分布形状、アライメントマーク10および11の回折格子の周期は、基板8を作成するプロセスに応じてモアレ縞を最もよく検出できる条件に適宜選択されることが望ましい。検出光学系のNAおよび照明光学系の瞳強度分布の変更は、前述したように、検出部3内に配置されたプリズム24または開口絞り26および27を切り替えることによって実現される。
【0074】
本実施形態では、図4のように照明光学系の瞳面の光強度分布として、X方向とY方向にそれぞれ2つの極が形成された4重極照明について説明した。光強度分布の形状としては、X方向またはY方向に、2つの極が形成された2重極照明を用いても良い。また、ここでは瞳面において周囲よりも強い光強度を有する領域を極と呼ぶ。したがって、極と極の間に光があっても良い。さらに、光強度分布の形状として、輪帯状であってもよい(輪帯照明)。この場合、X方向とY方向にそれぞれ、2つの光強度のピーク(極)が形成される。そのため、輪帯照明を用いても照明光学系は非計測方向に、複数の極を有する光を照射することができる。
【0075】
このように、本実施形態の検出部3は、1つのモアレ縞を検出するのに位置合わせマークを2方向から同時に斜入射照明して鉛直方向に検出しているので、従来の1方向から斜入射照明して斜め方向から検出する計測光学系と比べて、2倍の光量を確保することができる。これにより、精度よく2物体の相対位置を検出することができる。
【0076】
本実施形態では第一マークと第三マークが形成された第一物体としてモールド、第二マークと第四マークが形成された第二物体として基板の場合について説明した。しかし、第一マークと第三マークが基板に、第二マークと第四マークがモールドに形成されていても良い。ただし、重ねられて配置されている2物体の相対位置を検出するため、2物体のうち、光源側に配置されている物体は光透過性を有している必要がある。第1実施形態ではモールドが光透過性を有している物体として、位置検出装置の光軸に沿って光源側に配置されている。
【0077】
[第2実施形態]
第2実施形態の位置検出装置について説明する。
【0078】
本実施形態の位置検出装置は、第1実施形態で説明した検出部3の照明瞳分布とアライメントマーク10および11の構成が異なることを除いて、その他の基本的な構成は同じである。また、本実施形態の位置検出装置(検出部3)を備えるインプリント装置についても、装置の基本的な構成、インプリント処理の方法については第一実施形態と同じである。
【0079】
図10に本実施形態に係る検出部3(位置検出装置)の照明瞳分布と検出NA(NA0)との関係を示す。図10では図4と同様に照明光学系の瞳面における瞳の大きさを開口数NAで示している。本実施形態の検出部3の照明瞳分布はIL11とIL12の2つの極からなる。IL11およびIL12は、それぞれ直径NApの円形の極である。ここで、XY平面上にX軸およびY軸と異なるW軸を新たに定義する。W軸は例えば、X軸およびY軸と、それぞれ45度をなす方向に定義される。IL11およびIL12は瞳面のW軸上の光軸からそれぞれプラス方向とマイナス方向NAilだけ離れた位置に配置されている。
【0080】
したがって、本実施形態は、アライメントマーク10および11に対して斜入射照明を行う。また、NAo、NAp、NAilは上述の式2を満足しており、アライメントマーク10および11からの正反射光(ゼロ次回折光)を検出しない、暗視野構成になっている。
【0081】
図11(a)と図11(b)はそれぞれモールド7と基板8のX方向に関する相対位置を検出するためのモールドに形成されたアライメントマーク10と基板に形成されたアライメントマーク11を図示したものである。モールド側のアライメントマーク10(第五マーク)はX方向とW方向(第三方向)にそれぞれ周期Pmの周期構造を有するチェッカーボード状の回折格子10c(第五回折格子)である。また、基板側のアライメントマーク11(第二マーク)はX方向にPmと異なる周期Pwの周期構造をもつ回折格子11c(第二回折格子)である。ここで、回折格子10cのX方向とW方向の周期は同一としているが、必ずしもその必要はなく、回折格子10cのX方向とW方向の周期は異なっていてもよい。
【0082】
この2つの回折格子10cおよび11cを重ねた状態で検出部3によってモアレ縞を検出する原理について、図12を用いて説明する。基本的には第一実施形態で説明した原理と同じである。図12(a)はWZ平面、図12(b)はXZ平面で回折格子10cと回折格子11cを見た図を示している。X方向に関する相対位置を検出するためのモアレ縞は、回折格子10cと回折格子11cを照明光学系から照射した光で照明することで発生する。図10に示した照明瞳面においてW軸に沿った方向に並んだ極IL11とIL12によってモアレ縞は発生する。
【0083】
図12(a)を用いてW方向(非計測方向)に関する回折光について説明する。まず照明瞳面において非計測方向であるW軸に沿った方向に並んだ極IL11とIL12によって、回折格子10cおよび回折格子11cがW方向から斜入射照明される。回折格子10cおよび11cによる回折角φm、φwは、第1実施形態と同様に、式4および式5で表わされる。
【0084】
回折格子10cおよび11cで正反射した光(ゼロ次回折光)D11およびD11′は、検出部3が式2を満足するために、検出光学系21には入射しない。一方で、W軸方向にPmの周期をもつ回折格子10cによって角度φmだけ回折した回折光D12およびD12′は、検出光学系21によって検出される。ここで、PmとNAo、NAil、NApは第1実施形態と同様に式6を満足しているので、式6を満足する範囲の波長λでY軸方向への回折光を検出することができる。
【0085】
また、もっとも効率良く1次回折光を検出できるのはD12がY軸に垂直になる場合なので、式7を満足するように、照明条件とモールド側の回折格子の周期が調整されていることが望ましいことも第1実施形態と同様である。
【0086】
以上のように、W方向に関してはモールド側の回折格子10cが斜入射照明され、回折格子10cによってW方向に回折し、検出光学系21により回折光が検出される。
【0087】
次に、図12(b)を用いて、X方向(計測方向)に関する回折光の説明を行う。ここで、IL11およびIL12は本来紙面に対してねじれた方向から入射するものであるが、実際に検出光学系21によって検出される光は上述のように回折格子10cによってW方向にφmだけ回折された回折光D12である。回折光D12はXY平面に対して垂直な方向に回折されているので、回折光D12がさらにX方向への回折を考えることは、XY平面に対して垂直に入射する入射光IL11′およびIL12′を仮想的に考えることと等価である。したがって、ここでは説明を容易にするために、IL11およびIL12がW軸方向に関してXY平面に垂直に回折された回折光D12と等価な入射光IL11′およびIL12′を用いて説明する。
【0088】
IL11′およびIL12′は、X軸に垂直な方向から回折格子10cおよび11cに入射する。W方向の場合と同様に+/−1次の回折光を考えると、回折格子10cで+/−1次で回折し、回折格子11cで−/+1次に回折した回折光D14は、式8で表わされる角度φΔで検出光学系21に入射する。したがって、回折光D14によって周期がPΔ/2のモアレ縞が発生する。
【0089】
次に、回折格子10cもしくは回折格子11cのいずれか一方で1回回折した光は、角度φmあるいはφwで射出する(図12(b)のD13)。D13はモアレ縞を発生させずにノイズとなるので、検出光学系21によって検出されないように、回折格子の周期と検出部3は式11を満足するように調整されている。
【0090】
また、回折格子10cと回折格子11cのいずれでもX方向に回折しなかった光(ゼロ次回折光、図12(b)のD15)はモールドおよび基板で正反射して検出光学系21に入射する。また、基板に形成された回折格子で回折せずに、基板での反射の前後でモールドに形成された回折格子でそれぞれX方向に+/−n次回折と−/+n次回折した(トータルでゼロ次の)回折光も検出光学系21に入射する。これらの光はモアレ縞を生成せずにモアレ縞のコントラストを低下する要因となるが、回折格子10cがチェッカーボード状であるため、隣り合う格子からの回折光の位相がπずれ、互いに打ち消し合う。したがってD15の強度は抑制され、コントラストよくモアレ縞を計測することができる。
【0091】
以上、モールドと基板のX方向に関する相対位置計測のためのモアレ縞の検出について説明したが、Y方向に関する相対位置計測のためのモアレ縞の検出についても、回折格子10cと11cのX方向とY方向を入れ替えるだけで基本的に同一である。
【0092】
図13(a)と図13(b)はそれぞれモールドと基板のY方向に関する相対位置を検出するためのモールド側のアライメントマーク10の回折格子10dと、基板側のアライメントマーク11の回折格子11dを図示したものである。
【0093】
モールド側のアライメントマーク10(第六マーク)はX方向とY方向にそれぞれ周期Pmの周期構造を有するチェッカーボード状の回折格子10d(第六回折格子)である。基板側のアライメントマーク11(第一マーク)はY方向に周期Pmと異なる周期Pwの周期構造をもつ回折格子11d(第一回折格子)である。これらの回折格子を重ねて、極IL11とIL12で照明することで、Y方向に関する相対位置計測のためのモアレ縞が発生する。
【0094】
したがって、図9のように回折格子10cと11c、回折格子10dと11dとをそれぞれ重ねたマークを、図10のような照明瞳分布と検出NA(NA0)を有する検出部3を用いてマークを検出することが出来る。図9のように、検出部3の視野40にX方向のアライメントマークとY方向のアライメントマークを同時に入れることによって、X方向とY方向に関する位置合わせのためのモアレ縞を同時に観察することができる。すなわち、本実施形態の位置検出システムでは、一つの検出部3(検出光学系21と照明光学系22)によって2方向の相対位置情報を同時に取得することができる。
【0095】
さらに、本実施形態の位置検出装置では、X方向とY方向のモアレ縞を共通の照明瞳分布で発生させることができる。これによって照明瞳面に配置される光強度分布の数を減らすことができるため、例えば迷光の発生等によるモアレ縞のコントラスト低下を低減することができる。そのため、精度よくモールドと基板の位置合わせを行うことをできるという利点がある。
【0096】
本実施形態ではW軸をX軸およびY軸に対してそれぞれ45度をなす方向で定義したが、これに限定されることはなく、例えばX軸と40度や30度をなす方向に定義してもよい。ただし、W軸がX軸およびY軸に対してなす角が異なると、回折格子10cと回折格子10dとで基本となる格子の形状が異なってしまう。その結果、回折格子10cと回折格子10dの回折効率に差が生じてしまうので、検出されるモアレ縞の強度やコントラストに差が生じることになる。そのため、X方向とY方向の位置合わせ精度に差が生じる恐れがある。W軸は二つの計測方向(X軸およびY軸)に対してそれぞれ同一な角度(45度)をなす方向に定義されることが望ましい。
【0097】
また、ここでは回折格子10cと回折格子10dの周期がそれぞれ同じで、回折格子11cと回折格子11dの周期がそれぞれ同じ場合について説明したが、本実施形態はこれに限られない。すなわち、第1実施形態と同じく、回折格子10cと回折格子10dの周期はそれぞれ異なっていてもよく、また、回折格子11cと回折格子11dの周期はそれぞれ異なっていてもよい。
【0098】
[第3実施形態]
第3実施形態のインプリント装置について説明する。
【0099】
図14は、本実施形態のインプリント装置の構成を示す概略図である。本実施形態のインプリント装置50は、投影光学系12を備える。その他の装置の構成やインプリント処理の方法については第1実施形態で説明したインプリント装置1と基本的に同じである。
【0100】
投影光学系12はモールド7の直上に配置されており、モールド7に形成されたアライメントマーク10と基板8に形成されたアライメントマーク11の像を投影光学系12の投影面13に投影する。
【0101】
また、投影光学系12は、その内部にビームスプリッター14を備えている。ビームスプリッター14には光の波長によって選択的に反射あるいは透過させる光学部材であり、例えば樹脂9を硬化させる紫外線を反射して、アライメントマーク10および11を照明する可視光線あるいは赤外線を透過するように設計することができる。ビームスプリッター14は、例えばダイクロイックミラーやダイクロイックプリズム等が用いられる。図14はビームスプリッター14にダイクロイックミラーを用いた場合を示している。
【0102】
照射部2は基板8に塗布された樹脂9を硬化させるために、本実施形態では紫外線を照射する。照射部2は投影光学系12の側方からビームスプリッター14に光を照射し、ビームスプリッター14で反射した光が投影光学系12の一部を透過してパターン7aに所定の形状で照射される。
【0103】
検出部3(位置検出装置)は投影光学系12(およびビームスプリッター14)を通してアライメントマーク10および11を照明する。投影光学系12の投影面13に投影されたモアレ縞の像を検出することで、モールドと基板との相対位置を検出する。検出部3は上述の第1実施形態で説明した検出部を用いても良いし、第2実施形態で説明した検出部を用いても良い。
【0104】
ビームスプリッター14は、紫外線を透過して可視光線あるいは赤外線を反射するように構成することも可能である。この場合、検出部3はアライメントマークからの回折光が投影光学系12のビームスプリッター14によって折り曲げられた光を検出する。すなわち照射部2が投影光学系12の上方に配置され、検出部3と照射部2との位置が図14と逆になる。
【0105】
このような装置の構成にすることによって、モールドおよび基板に対してその光軸が鉛直方向になるように配置された検出部3を用いても、紫外線照射時に検出部3を退避させる必要がなくなる。検出部3によるアライメントマーク検出の後に、検出部3の退避にかかる時間が必要なくなる。そのため、インプリント装置の生産性を高めることができる。
【0106】
また、本実施形態のインプリント装置50では、投影光学系12の投影面13の近傍に折り曲げミラー15を配置してもよい。折り曲げミラー15によって、検出部3から照明される照明光とアライメントマーク10および11からの回折光はその光束径が小さい位置でXY面に平行な方向に折り曲げられる。したがって、検出波長範囲の拡大や照明光量の増加のために検出光学系21や照明光学系22のNAを拡大して検出部3の径が大きくなっても、配置の自由度が高くなり、検出部3を空間的に余裕のある位置に配置することが可能になる。また、検出部3の配置の自由度が高くなることで、モールド7と基板8に形成されたアライメントマーク10および11の配置の自由度を高くすることができる。
【0107】
本実施形態のような投影光学系12が構成されていない場合、検出部3はモールド保持部4に構成されたモールド駆動機構やモールド倍率補正機構との干渉を避ける必要がある。そのため、検出部3をモールド7からやや離れた位置に配置するか、その径をなるべく小さくする必要がある。検出部3をモールド7から離れた位置に配置すると、その光束径が拡がるために検出部3は大きくなってしまい、検出部3を配置する場所にも制限が生じるため、アライメントマークの配置にも自由度が低くなってしまう。
【0108】
また、検出部3の径を小さくして配置しようとすると、検出光学系21および照明光学系22のNAが小さくなるため、アライメントマークを照明する光量の減少や、検出波長の狭帯域化を招く。結果としてモールドと基板との相対位置合わせの精度を低下させてしまう恐れがある。
【0109】
本実施形態のように、投影光学系12を構成することにより、モールド駆動機構やモールド倍率補正機構との干渉や、アライメントマーク10および11の配置の制限を気にすることなく、検出部3の検出光学系21や照明光学系22のNAを拡大することができる。その結果、検出部3の検出波長範囲を拡大することができ、照明光量を増加することができる。そして、高い精度でモールドと基板の相対位置合わせを行うことができる。
【0110】
また、本発明の検出部(位置検出装置)はインプリント装置に限られず、2つの物体の相対位置を計測して位置合わせを行う装置に用いることが出来る。2つの物体の相対位置を検出するものであればモールドと基板に限られない。その場合、2つの物体の一方にアライメントマーク10を形成し、他方にアライメントマーク11を形成する。検出部はアライメントマークを同時に検出することができるように配置する必要がある。
【0111】
[デバイス製造方法]
デバイス(半導体集積回路素子、液晶表示素子等)製造方法は、上述したインプリント装置を用いて基板(ウエハ、ガラスプレート、フィルム状基板)にパターンを形成する工程を含む。さらに、デバイス製造方法は、パターンを形成された基板をエッチングする工程を含みうる。なお、パターンドメディア(記録媒体)や光学素子などの他の物品を製造する場合の製造方法は、エッチングの代わりに、パターンを形成された基板を加工する他の処理を含みうる。本実施形態の物品製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも一つにおいて有利である。
【0112】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0113】
1 インプリント装置
2 照射部
3 検出部(位置検出装置)
10 アライメントマーク(モールド)
11 アライメントマーク(基板)
21 検出光学系
22 照明光学系
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一方向と、第一方向と異なる第二方向にそれぞれ周期をもつ第一回折格子と、該第一回折格子の第二方向の周期と異なる周期を第二方向にもつ第二回折格子と、を斜入射照明する照明光学系と、
前記第一回折格子と前記第二回折格子とからの回折光を検出する検出光学系と、を備え、
検出した前記回折光に基づいて前記第一回折格子と前記第二回折格子との第二方向に関する相対的な位置を検出する位置検出装置であって、
前記照明光学系はその瞳面において、第一方向に、複数の極を有する光を照明すること
を特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
前記第一回折格子の第一方向への周期をP1、前記瞳面における前記検出光学系の開口数の大きさをNAo、前記瞳面における前記照明光学系の前記極の、光軸からの距離をNAil1、前記極の大きさをNAp1、前記照明光学系から照明される光の波長をλとしたとき、
|NAil1−λ/P1|<NAo+NAp1/2を満足することを特徴とする、
請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
前記照明光学系は、
第一物体に形成された前記第一回折格子と、第一方向と第二方向にそれぞれ周期構造をもつ第三回折格子とを照明し、
第二物体に形成された前記第二回折格子と、前記第三回折格子の第一方向への周期と異なる周期の周期構造を第一方向にもつ第四回折格子とを照明し、
前記照明光学系はその瞳面において、第二方向に、複数の極を有する光を照明し、
前記検出光学系は、
前記第一回折格子と前記第二回折格子からの回折光と、前記第三回折格子と前記第四回折格子からの回折光を検出し、
前記検出した結果に基づいて前記第一物体と前記第二物体の第一方向及び第二方向に関する相対的な位置を検出することを特徴とする、
請求項1または2のいずれか1項に記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記第三回折格子の第二方向への周期をP2、前記瞳面における前記検出光学系の開口数の大きさをNAo、前記瞳面における前記照明光学系の前記極の、光軸からの距離をNAil2、前記極の大きさをNAp2、前記照明光学系から照明される光の波長をλとしたとき、
|NAil2−λ/P2|<NAo+NAp2/2を満足することを特徴とする、
請求項3に記載の位置検出装置。
【請求項5】
前記第一方向と第二方向は、互いに直交することを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の位置検出装置。
【請求項6】
前記第一回折格子と前記第三回折格子は、第一方向への周期と第二方向への周期のうち少なくともいずれか一方は、互いに等しいことを特徴とする、請求項4または5のいずれか1項に記載の位置検出装置。
【請求項7】
前記第一回折格子と前記第三回折格子は互いに等しい周期構造を有することを特徴とする、請求項6に記載の位置検出装置。
【請求項8】
第二方向と、第二方向と異なる第三方向にそれぞれ周期をもつ第五回折格子と、該第五回折格子の第二方向の周期と異なる周期を第二方向にもつ第二回折格子と、を斜入射照明し、第三方向と、第二方向及び第三方向と異なる第一方向にそれぞれ周期をもつ第六回折格子と、該第六回折格子の第一方向の周期と異なる周期を第一方向にもつ第一回折格子と、を斜入射照明する照明光学系と、
前記第五回折格子と前記第六回折格子からの回折光と、前記第二回折格子と前記第一回折格子からの回折光を検出する検出光学系と、
を備え、
検出した前記回折光に基づいて、前記第五回折格子と前記第六回折格子が形成された前記第一物体と、前記第二回折格子と前記第一回折格子が形成された前記第二物体と、の第一方向及び第二方向に関する相対的な位置を検出する位置検出装置であって、
前記照明光学系はその瞳面において、第三方向に、複数の極を有する光を照明すること
を特徴とする位置検出装置。
【請求項9】
前記照明光学系と前記検出光学系の光軸は一部が共通であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の位置検出装置。
【請求項10】
前記検出光学系の開口数と前記照明光学系の瞳面光強度分布と前記照明光の波長のうち、少なくともいずれか一つが可変であることを特徴とする、
請求項1から9のいずれか1項に記載の位置検出装置。
【請求項11】
前記第一物体に形成されている回折格子は、チェッカーボード状の回折格子であることを特徴とする、
請求項3に記載の位置検出装置。
【請求項12】
型に形成されたパターンを用いて、基板に供給されたインプリント材に前記パターンを転写するインプリント装置であって、
請求項1から11のいずれか1項に記載の位置検出装置を用いて型と基板の相対的な位置を検出することを特徴とするインプリント装置。
【請求項13】
前記インプリント材を硬化させるための光を照射する照射部と、
前記第一回折格子と前記第二回折格子の像を前記型の上部に投影する投影光学系と、を有し、
前記投影光学系を介して前記第一回折格子と前記第二回折格子との相対的な位置を検出することを特徴とする、請求項12に記載のインプリント装置。
【請求項14】
請求項12または13のいずれか1項に記載のインプリント装置を用いて基板上にパターンを形成する工程と、
前記工程で前記パターンを形成された基板を加工する工程と、
を含むことを特徴とするデバイス製造方法。
【請求項15】
第一方向と、第一方向と異なる第二方向とにそれぞれ周期をもつ第一回折格子と、該第一回折格子の第二方向の周期と異なる周期を第二方向にもつ第二回折格子と、を照明光学系が斜入射照明し、
検出光学系が、前記第一回折格子と前記第二回折格子とからの回折光を検出し、
前記回折光に基づいて前記第一回折格子と前記第二回折格子との第二方向に関する相対的な位置を検出する位置検出方法であって、
前記照明光学系はその瞳面において、第一方向に複数の極を有する光を照明することを特徴とする位置検出方法。
【請求項1】
第一方向と、第一方向と異なる第二方向にそれぞれ周期をもつ第一回折格子と、該第一回折格子の第二方向の周期と異なる周期を第二方向にもつ第二回折格子と、を斜入射照明する照明光学系と、
前記第一回折格子と前記第二回折格子とからの回折光を検出する検出光学系と、を備え、
検出した前記回折光に基づいて前記第一回折格子と前記第二回折格子との第二方向に関する相対的な位置を検出する位置検出装置であって、
前記照明光学系はその瞳面において、第一方向に、複数の極を有する光を照明すること
を特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
前記第一回折格子の第一方向への周期をP1、前記瞳面における前記検出光学系の開口数の大きさをNAo、前記瞳面における前記照明光学系の前記極の、光軸からの距離をNAil1、前記極の大きさをNAp1、前記照明光学系から照明される光の波長をλとしたとき、
|NAil1−λ/P1|<NAo+NAp1/2を満足することを特徴とする、
請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
前記照明光学系は、
第一物体に形成された前記第一回折格子と、第一方向と第二方向にそれぞれ周期構造をもつ第三回折格子とを照明し、
第二物体に形成された前記第二回折格子と、前記第三回折格子の第一方向への周期と異なる周期の周期構造を第一方向にもつ第四回折格子とを照明し、
前記照明光学系はその瞳面において、第二方向に、複数の極を有する光を照明し、
前記検出光学系は、
前記第一回折格子と前記第二回折格子からの回折光と、前記第三回折格子と前記第四回折格子からの回折光を検出し、
前記検出した結果に基づいて前記第一物体と前記第二物体の第一方向及び第二方向に関する相対的な位置を検出することを特徴とする、
請求項1または2のいずれか1項に記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記第三回折格子の第二方向への周期をP2、前記瞳面における前記検出光学系の開口数の大きさをNAo、前記瞳面における前記照明光学系の前記極の、光軸からの距離をNAil2、前記極の大きさをNAp2、前記照明光学系から照明される光の波長をλとしたとき、
|NAil2−λ/P2|<NAo+NAp2/2を満足することを特徴とする、
請求項3に記載の位置検出装置。
【請求項5】
前記第一方向と第二方向は、互いに直交することを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の位置検出装置。
【請求項6】
前記第一回折格子と前記第三回折格子は、第一方向への周期と第二方向への周期のうち少なくともいずれか一方は、互いに等しいことを特徴とする、請求項4または5のいずれか1項に記載の位置検出装置。
【請求項7】
前記第一回折格子と前記第三回折格子は互いに等しい周期構造を有することを特徴とする、請求項6に記載の位置検出装置。
【請求項8】
第二方向と、第二方向と異なる第三方向にそれぞれ周期をもつ第五回折格子と、該第五回折格子の第二方向の周期と異なる周期を第二方向にもつ第二回折格子と、を斜入射照明し、第三方向と、第二方向及び第三方向と異なる第一方向にそれぞれ周期をもつ第六回折格子と、該第六回折格子の第一方向の周期と異なる周期を第一方向にもつ第一回折格子と、を斜入射照明する照明光学系と、
前記第五回折格子と前記第六回折格子からの回折光と、前記第二回折格子と前記第一回折格子からの回折光を検出する検出光学系と、
を備え、
検出した前記回折光に基づいて、前記第五回折格子と前記第六回折格子が形成された前記第一物体と、前記第二回折格子と前記第一回折格子が形成された前記第二物体と、の第一方向及び第二方向に関する相対的な位置を検出する位置検出装置であって、
前記照明光学系はその瞳面において、第三方向に、複数の極を有する光を照明すること
を特徴とする位置検出装置。
【請求項9】
前記照明光学系と前記検出光学系の光軸は一部が共通であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の位置検出装置。
【請求項10】
前記検出光学系の開口数と前記照明光学系の瞳面光強度分布と前記照明光の波長のうち、少なくともいずれか一つが可変であることを特徴とする、
請求項1から9のいずれか1項に記載の位置検出装置。
【請求項11】
前記第一物体に形成されている回折格子は、チェッカーボード状の回折格子であることを特徴とする、
請求項3に記載の位置検出装置。
【請求項12】
型に形成されたパターンを用いて、基板に供給されたインプリント材に前記パターンを転写するインプリント装置であって、
請求項1から11のいずれか1項に記載の位置検出装置を用いて型と基板の相対的な位置を検出することを特徴とするインプリント装置。
【請求項13】
前記インプリント材を硬化させるための光を照射する照射部と、
前記第一回折格子と前記第二回折格子の像を前記型の上部に投影する投影光学系と、を有し、
前記投影光学系を介して前記第一回折格子と前記第二回折格子との相対的な位置を検出することを特徴とする、請求項12に記載のインプリント装置。
【請求項14】
請求項12または13のいずれか1項に記載のインプリント装置を用いて基板上にパターンを形成する工程と、
前記工程で前記パターンを形成された基板を加工する工程と、
を含むことを特徴とするデバイス製造方法。
【請求項15】
第一方向と、第一方向と異なる第二方向とにそれぞれ周期をもつ第一回折格子と、該第一回折格子の第二方向の周期と異なる周期を第二方向にもつ第二回折格子と、を照明光学系が斜入射照明し、
検出光学系が、前記第一回折格子と前記第二回折格子とからの回折光を検出し、
前記回折光に基づいて前記第一回折格子と前記第二回折格子との第二方向に関する相対的な位置を検出する位置検出方法であって、
前記照明光学系はその瞳面において、第一方向に複数の極を有する光を照明することを特徴とする位置検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−30757(P2013−30757A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−134845(P2012−134845)
【出願日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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