説明

低電圧デバイス保護付き高電圧複合半導体デバイス

【課題】低電圧デバイス保護付き高電圧複合半導体デバイスを提供する。
【解決手段】電圧保護されたデバイスを含複合半導体デバイスの1つの好適な実現では、ノーマリオフ複合半導体デバイス300が、第1出力キャパシタンス318を有するノーマリオンIII-窒化物パワートランジスタ310と、このノーマリオンIII-窒化物パワートランジスタとカスコード接続された低電圧(LV)デバイス320を具えて、このノーマリオフ複合半導体デバイスを形成し、このLVデバイスは第2出力キャパシタンス348を有する。第1出力キャパシタンス対第2出力キャパシタンスの比率を、ノーマリオンIII-窒化物パワートランジスタのドレイン電圧対LVデバイスの降伏電圧の比率に基づいて設定して、LVデバイスの電圧保護を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
本願は、係属中の米国特許仮出願第61/454743号、2011年3月21日出願、発明の名称”III-Nitride Optimized Rugged Cascode Power Device”に基づいて優先権を主張する。この係属中の仮出願の開示は、その全文を参考文献として本明細書に含める。
【背景技術】
【0002】
I.定義
本明細書で用いる「III族窒化物」または「III-窒化物」とは、窒素及び少なくとも1つのIII族元素を含む化合物半導体を称し、これらのIII族元素は、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、及びホウ素(B)を含み、そして、その任意の合金、例えばアルミニウム窒化ガリウム(AlxGa(1-x)N)、インジウム窒化ガリウム(InyGa(1-y)N)、アルミニウムインジウム窒化ガリウム(AlxInyGa(1-x-y)N)、ガリウムヒ素リン窒素(GaAsaPbN(1-a-b))、アルミニウムインジウムガリウムヒ素リン窒素(AlxInyGa(1-x-y)AsaPbN(1-a-b))を含むが、これらに限定されない。III-窒化物は一般に、あらゆる極性も称し、これらの極性は、極性Ga、極性N、半極性または非極性の結晶方位を含むが、これらに限定されない。III-窒化物材料は、ウルツ鉱型、閃亜鉛鉱型、あるいは混合型のポリタイプ(結晶多形)のいずれかを含むこともでき、そして、単結晶(モノクリスタル)、多結晶、または非結晶の結晶構造を含むことができる。
【0003】
また、本明細書で用いる「LVデバイス」、「低電圧半導体デバイス」、「低電圧トランジスタ」等は、50ボルトまでの標準的電圧範囲を有する低電圧デバイスを称する。標準的電圧範囲は、約0〜50Vの低電圧(LV)、約50〜200Vの中電圧(MV)、約200〜1200Vの高電圧(HV)、及び約1200V以上の超高電圧(UHV)を含む。このデバイスは、電界効果トランジスタ(FET)またはダイオード、あるいはFETとダイオードの組合せを形成するのに適したあらゆる半導体材料で構成することができる。適切な半導体材料は、IV族半導体材料、例えばシリコン、ひずみシリコン、SiGe、及びIII-As、III-P、III-窒化物、またはこれらの合金のいずれをも含むIII-V族材料である。
【0004】
II 背景技術
III-窒化物材料は半導体化合物であり、比較的広幅の直接バンドギャップを有し、強い圧電分極を有する可能性があり、高い破壊電界、高い飽和速度、及び二次元電子ガスの生成を可能にすることができる。その結果、III-窒化物材料は、多くの電力用途、例えばデプレッションモード(例えばノーマリオン)電力用電界効果トランジスタ(FET)、高電子移動度トランジスタ(HEMT)、及びダイオードに使用されている。
【0005】
パワーデバイスのノーマリオフ特性が望ましいパワーマネージメント(電力管理)用途では、デプレッションモードIII-窒化物パワートランジスタを低電圧(LV)半導体デバイスとカスコード接続して、エンハンスメントモード複合パワーデバイスを形成することができる。しかし、こうした複合デバイスの実用性及び耐久性は、複合デバイス内に含まれるLV半導体デバイスの特性に応じて制限され得る。例えば、複合半導体デバイスの耐久性は、LV半導体デバイスの降伏電圧によって制限され得る。こうした複合デバイスを、高い電圧スパイクが存在し得るパワーマネージメント(電力管理)システムに適したものとするためには、複合デバイスを、LVデバイスの電圧保護を行うように構成すべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許仮出願第61/454081号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第12/445117号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第12/653240号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第12/928103号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第13/020243号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、低電圧デバイスの保護付きの高電圧複合半導体デバイスに指向したものであり、実質的に、図面の少なくとも1つに示し、及び/またはこの図面に関連して説明し、特許請求の範囲により完全に記載している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】電圧保護デバイスを含む複合半導体デバイスの1つの好適な実現を示す図である。
【図2】電圧保護デバイスを含む複合半導体デバイスの他の好適な実現を示す図である。
【図3】電圧保護デバイスを含む複合半導体デバイスのより詳細な表現を示す図であり、図1に示す実現に相当する。
【図4A】III-窒化物パワートランジスタの例示的な出力キャパシタンスを示す図である。
【図4B】図4Aに示すIII-窒化物パワートランジスタに相当する構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
以下の説明は、本発明の実施に関連する詳細な情報を含む。本発明は、本明細書に具体的に説明するのとは異なる方法で実施することができることは、当業者の認める所である。本願中の図面及びその詳細な説明は、好適な実施例に指向したものに過ぎない。特に断りのない限り、図面中では、同様の、あるいは対応する要素は、同様の、あるいは対応する参照番号で示すことがある。さらに、本願中の図面及び例示は一般に原寸に比例しておらず、そして、実際の相対寸法に相当することを意図していない。
【0010】
III-窒化物材料は、例えば、窒化ガリウム(GaN)及びその合金、例えばアルミニウム窒化ガリウム(AlGaN)、インジウム窒化ガリウム(InGaN)、及びアルミニウムインジウム窒化ガリウム(AlInGaN)を含む。これらの材料は半導体化合物であり、比較的広幅の直接バンドギャップ及び強い圧電分極を有し、高い破壊電界、高い飽和速度、及び二次元電子ガス(2−DEG:two-dimensional electron gas)の生成を可能にすることができる。その結果、上述したように、GaNのようなIII-窒化物材料は、多くのマイクロエレクトロニクス用途、例えばデプレッションモード(例えばノーマリオン)電力用電界効果トランジスタ(パワーFET)、高電子移動度トランジスタ(HEMT)、及びダイオードに使用されている。
【0011】
さらに上述したように、パワーデバイスのノーマリオフ特性が要求されるパワーマネージメント(電力管理)用途では、デプレッションモードIII-窒化物デバイスを低電圧(LV)半導体デバイスとカスコード接続して、エンハンスメントモード複合パワーデバイスを形成することができる。しかし、こうした複合デバイスの実用性及び耐久性は、ノーマリオンIII-窒化物パワーデバイスとカスコード接続したLV半導体デバイスの特性に応じて制限され得る。例えば、複合デバイスの耐久性は、LV半導体デバイスの降伏電圧によって制限され得る。こうした複合デバイスを、高い電圧スパイクが存在し得るパワーマネージメント(電力管理)システムに適したものとするためには、複合デバイスを、LVデバイスの電圧保護を行うように構成すべきである。
【0012】
さらに、パワーマネージメントシステム内での動作に適した実用的な複合デバイスを作製するためには、この複合デバイスは、10年以上のような長年の信頼性ある動作を提供するように設計すべきである。しかし、こうした結果を達成するためには、上記カスコード接続したデバイス構成は、含まれるデバイスのサイズ、並びに、例えば降伏電圧及び出力キャパシタンスのようなデバイス特性に関する最適化を必要とし得る。
【0013】
本願は、例えばシリコンで形成されたLVIV族半導体デバイスのような電圧保護されたデバイスを含む複合半導体デバイスに指向したものである。1つの実現によれば、複合半導体デバイスは、第1出力キャパシタンスを有するIII-窒化物パワートランジスタ、及びこのIII-窒化物パワートランジスタとカスコード接続された、第2出力キャパシタンスを有するLVデバイスを含むことができる。LVデバイスと、例えばノーマリオンデバイスとすることのできるIII-窒化物パワートランジスタとのカスコード結合は、ノーマリオフ複合デバイスを形成するように実現することができる。本明細書に開示するように、この複合半導体デバイスは、第1出力キャパシタンス対第2出力キャパシタンスの比率が、III-窒化物パワートランジスタのドレイン電圧対LVデバイスの降伏電圧に基づいて設定されて、LVデバイスの電圧保護を行うように構成することができる。
【0014】
図1を参照すれば、図1は、複合半導体デバイスの1つの好適な実現を示す。図1に示すように、複合半導体デバイス100は、III-窒化物パワートランジスタ110、及びIII-窒化物パワートランジスタ110とカスコード接続されたLVデバイス120を含む。図1にさらに示すように、LVデバイス120は、LVトランジスタ140及びLVダイオード130を含む。図1には、複合半導体デバイス100の複合ソース端子102、複合ドレイン端子104、及び複合ゲート端子106も示す。
【0015】
III-窒化物パワートランジスタ110は、窒化ガリウム(GaN)で形成することができ、そして、例えば絶縁ゲートFET(IGFET:insulated-gate FET)またはヘテロ構造FET(heterostructure FET)として実現することができる。1つの実現では、III-窒化物パワートランジスタ110は、金属−絶縁体−半導体FET(MISFET(metal-insulator-semiconductor FET)またはMISHFET)、例えば金属酸化膜半導体FET(MOSFET)の形をとることができる。その代わりに、HFETとして実現する場合、III-窒化物パワートランジスタ110は、2−DEGを形成するように構成されたHEMTとすることができる。1つの実現によれば、例えば、III-窒化物パワートランジスタ110、例えば、III-窒化物電界効果トランジスタ(III-N FET)またはIII-窒化物高電子移動度トランジスタ(III-N HEMT)は、約600Vのドレイン電圧を維持するように構成され、約40Vのゲート定格を有する高電圧(HV)デバイスとすることができる。なお、一部の実現では、複合半導体デバイス100は、III-窒化物FETまたはHEMTの代わりに絶縁ゲートバイポーラトランジスタを、パワーデバイスとして利用することができる。
【0016】
LVデバイス120は、LVトランジスタ140及びLVダイオード130を含むように示している。一部の実現では、LVダイオード130は、単にLVトランジスタ140のボディダイオードとすることができるのに対し、他の実現では、LVダイオード130は、図1に示すようにLVトランジスタ140に結合されたディスクリート(個別)ダイオードとして、LVデバイス120を形成することができる。LVデバイス120は、LVIV族デバイス、例えば約25Vの降伏電圧を有するシリコンデバイスとして実現することができる。1つの実現によれば、LVデバイス120は、例えばLVボディダイオード130を含むシリコンMISFETまたはMOSFETとすることができる。
【0017】
上記の、III-窒化物パワートランジスタ110とLVデバイス120とのカスコード結合が複合半導体デバイス100を形成し、図1に示す実現によれば、複合半導体デバイス100は三端子複合デバイスとなり、この三端子複合デバイスは実際に、LVデバイス120によって提供される複合ソース端子102及び複合ゲート端子106、及びIII-窒化物パワートランジスタ110によって提供される複合ドレイン端子104を有するFETとして機能する。さらに、そして以下でより詳細に説明するように、複合半導体デバイス100は、LVデバイス120の電圧保護を行うように構成されたHV複合デバイスとして実現される。
【0018】
以下、図2を参照し、図2は、電圧保護されたデバイスを含む複合半導体デバイスの他の実現を示す。図2に示すように、複合半導体デバイス200は、III-窒化物パワートランジスタ210、及びIII-窒化物パワートランジスタ210とカスコード接続されたLVデバイス220を含む。III-窒化物パワートランジスタ210は、ソース212、ドレイン214、及びゲート216を含むように示している。III-窒化物パワートランジスタ210は、例えばIII-窒化物電界効果トランジスタ(III-N FET)またはIII-窒化物高電子移動度トランジスタ(III-N HEMT)とすることができ、図1のIII-窒化物パワートランジスタ110に相当し、そして、前のIII-窒化物パワートランジスタ110に起因する上記のあらゆる特徴を共有することができる。図2には、複合半導体デバイス200の複合アノード端子203及び複合カソード端子205も示す。
【0019】
図2に示す実現によれば、LVデバイス220は、アノード223及びカソード225を含むLVダイオードであり、例えばシリコンダイオードのようなLVIV族ダイオードとして実現することができる。LVデバイス220は、III-窒化物パワートランジスタ210とカスコード接続されて、複合半導体デバイス200を形成する。即ち、LVデバイス220のカソード225は、III-窒化物パワートランジスタ210のソース212に結合され、LVデバイス220のアノード223は、複合半導体デバイス200の複合アノード端子203を提供し、III-窒化物パワートランジスタ210のドレイン214は、複合半導体デバイス200の複合カソード端子205を提供し、III-窒化物パワートランジスタ210のゲート216は、LVデバイス220のアノード223に結合されている。
【0020】
III-窒化物パワートランジスタ210とLVデバイス220とのカスコード結合が複合半導体デバイス200を形成し、図2に示す実現によれば、複合半導体デバイス200は、ダイオードとして機能する複合二端子デバイスとなり、このダイオードは、LVデバイス220によって提供される複合アノード端子203、及びIII-窒化物パワートランジスタ210によって提供されるカソード端子205を有する。さらに、そして以下でより詳細に説明するように、複合半導体デバイス200は、LVデバイス220の電圧保護を行うように構成された複合デバイスとして実現することができる。
【0021】
続いて図3を参照し、図3は、電圧保護デバイスを含む複合半導体デバイスのより詳細な表現を示し、図1に示す実現に相当する。複合半導体デバイス300は、III-窒化物パワートランジスタ310、及びIII-窒化物パワートランジスタ310とカスコード接続されたLVデバイス320を含み、III-窒化物パワートランジスタ310は、例えばIII-窒化物電界効果トランジスタ(III-N FET)またはIII-窒化物高電子移動度トランジスタ(III-N HEMT)とすることができる。図3にさらに示すように、LVデバイス320は、LVトランジスタ340及びLVダイオード330を含み、LVダイオード330は、例えばLVトランジスタ340のボディダイオードとすることができる。図3には、複合半導体デバイス330の複合ソース端子302、複合ドレイン端子304、及び複合ゲート端子306、並びに、III-窒化物パワートランジスタ310の両端子間で測った第1出力キャパシタンス318(C1)、LVデバイス320(例えば、LVダイオード330を有するLVトランジスタ340)の両端子間で測った第2出力キャパシタンス348(C2)、及びインダクタンス307も示す。
【0022】
複合ソース端子302、複合ドレイン端子304、複合ゲート端子306を有し、III-窒化物パワートランジスタ310を、LVトランジスタ340及びLVダイオード330を含むLVデバイス320と組み合わせて形成される複合半導体デバイス300は、図1の、複合ソース端子102、複合ドレイン端子104、複合ゲート端子106を有し、III-窒化物パワートランジスタ110を、LVトランジスタ140及びLVダイオード130を含むLVデバイス120と組み合わせて形成される複合半導体デバイス100に相当し、これらの対応する特徴要素に起因する上記のあらゆる特徴を共有することができる。
【0023】
図3に示すように、LVトランジスタ340は、III-窒化物パワートランジスタ310とカスコード接続されて複合半導体デバイス300を形成する。即ち、LVトランジスタ340のドレイン344はIII-窒化物パワートランジスタ310のソース312に結合され、LVトランジスタ340のソース342は複合半導体デバイス300の複合ソース端子を提供し、LVトランジスタ340のゲート350は複合半導体デバイス300の複合ゲート端子306を提供する。さらに、III-窒化物310のドレイン314は複合半導体デバイス300の複合ドレイン端子304を提供し、III-窒化物パワートランジスタ310のゲート316はLVトランジスタ340のソース342に結合されている。
【0024】
以下、ノーマリオンIII-窒化物パワートランジスタ310とカスコード接続したLVトランジスタ340で形成されたノーマリオフデバイスとして実現される複合半導体デバイス300の動作を、特定のパラメータを参照して説明するが、これらのパラメータは例示に過ぎない。例えば、III-窒化物パワートランジスタ310がオン状態である間は、複合半導体デバイス300の複合ドレイン端子304の電圧が増加すると共に、逆バイアスされたLVダイオード330の両端に数ボルト(例えば約10V)が現れる。この電圧は反転されて、III-窒化物パワートランジスタ310のゲート316に(例えば約-10Vのゲート電圧として)印加される。これに応答して、III-窒化物パワートランジスタ310はターンオフし(例えば、約-7Vのピンチ電圧を有し)、複合ドレイン端子304におけるドレイン電圧の追加的増加は、III-窒化物パワートランジスタ310のドレイン314とソース312との間で支えられる。結果的に、LVトランジスタ340及びLVダイオード330は一般に、上記最初の数V(例えば約10V)を超える電圧に耐える必要はない。
【0025】
しかし、LVトランジスタ340及びLVダイオード330の効果的な電圧保護を行うためには、LVトランジスタ340のドレイン344の電圧が、LVデバイス320の定格降伏電圧(例えば約25V)を超えて上昇しないことを、より高い信頼性で確立することが重要である。1つの実現では、III-窒化物パワートランジスタ310のピンチオフ電圧を、ゲート316の定格降伏電圧に合わせて最適化することが有利であり得る。換言すれば、このピンチオフ電圧は、III-窒化物パワートランジスタ310が、ゲート316の定格電圧を超える前にターンオフするように設計することができる。例えば、約-7Vのピンチオフ電圧は、ゲート316の定格電圧(例えば、約40V)を超えず、LVトランジスタ340の降伏電圧(例えば、約25V)も超えないまま、III-窒化物パワートランジスタ310がターンオフすることを保証する。なお、説明した最適化は、直流(DC)動作条件にも当てはまる。その代わりに、あるいはこれに加えて、LVトランジスタ340は、反復的電子なだれ(アバランシェ)の能力を有して、機能信頼性を継続しながら、サイクル毎に電子なだれ領域に入ることができるように構成することができる。
【0026】
LVトランジスタ340のドレイン344の電圧は、LVダイオード330のリーク(漏洩)電流によっても悪影響され得る。その結果、LVダイオード330は、そのリーク逆電流が、種々の温度範囲及び動作電圧範囲にわたって特定値を超えないように設計する必要があり得る。結果的に、特定の実現では、例えば、上昇した温度でより大きいリークを現しやすいショットキーダイオードではなく、MOS型シリコンダイオードを利用することが好ましいことがある。LVダイオード330は一般に、ダイ上のLVトランジスタ340が製造される集積部分であり、LVダイオード330に当てられるこの領域が、リーク逆電流の一因となり得る。
【0027】
これに加えて、複合半導体デバイス100がオフ状態である際は、LVダイオード330がリーク電流を現して、ノーマリオンIII-窒化物パワートランジスタ310に、同程度の支援的なリーク電流を供給させ得る。このことは、複合半導体デバイス300に不安定性を生じさせ得るし、III-窒化物パワートランジスタ310のゲート316を絶縁するために使用するゲート絶縁体を断裂させる可能性がある。こうした影響を軽減するために、一部の実現では、複合半導体デバイス300はさらに電流源を含むことができ、この電流源は恐らくは、米国特許仮出願第61/454081号明細書(特許文献1)、発明の名称”Improved High Voltage Rectifier and Switching Circuits”、2011年3月18日出願に開示されたような、第2のノーマリオンIII-窒化物デバイスを含み、特許文献1は、その全文を参考文献として本明細書に含める。
【0028】
LVダイオード330のサイズは、例えば、順方向モードで電流がダイオードを通って流れる順方向動作向けにも、有利に最適化することができる。このダイオードのサイズは、当該ダイオードに大きな電圧が現れるほど小さくすることはできない、というのは、この大きな電圧は、LVトランジスタ340のドレイン344を、III-窒化物パワートランジスタ310のゲート316に対してプルダウンし、このことは、複合半導体デバイス300の信頼性を損ない得るからである。従って、LVダイオード330は、LVダイオード330の端子間に小さい電圧しか現れないままで、順方向の過渡電流を受け入れられるようなサイズにすべきである。
【0029】
出願人が本明細書でされに教示するように、LVトランジスタ340及びLVダイオード330の電圧保護は、III-窒化物パワートランジスタ310及びLVデバイス320の最適化、例えば、それぞれの出力キャパシタンス318及び348の最適化によって行うことができる。例えば、出力キャパシタンス318対出力キャパシタンス348の比率は、III-窒化物パワートランジスタのドレイン電圧対LVデバイス320の降伏電圧の比率に基づいて設定して、LVデバイス320の電圧保護を行うことができる。
【0030】
例として、交流(AC)動作条件については、III-窒化物パワートランジスタ310の出力キャパシタンス318(C1)及びLVデバイス320の出力キャパシタンス348(C2)は、次式によって記述することができる:
【数1】

【0031】
さらに、過渡動作中には、LVトランジスタ340のドレイン344の電圧は、出力キャパシタンス318と348との比率によって、次式のように設定される:
式2: VLV_drain=VComposite_drain×C2(C1+C2)
【0032】
上述した、複合ドレイン端子の電圧(例えば600V)及びLVデバイス320の降伏電圧(例えば25V)は、次の結果1を生じさせる:
結果1:(C1+C2)/C2≒24、または等価的にC1/C2≒23
【0033】
結果1に基づき、出力キャパシタンス318及び348をこの比率を満足するように設計して、LVデバイス320の電圧保護を行うことができる。他の実現では、複合ドレイン端子の電圧が、例えば約100Vから約1200Vまでの範囲にすることができるのに対し、LVデバイス320の降伏電圧は、約10Vから約50Vまでの範囲内に入ることができる。従って、上記の結果1によれば、C1対C2の比率は、約120未満であることを想定することができる(即ち、C1/C2は、LVデバイス320の降伏電圧範囲及び上述した複合ドレイン端子の電圧に合わせて、約1から約119までの範囲とすることができる)。
【0034】
図4A及び4Bを参照すれば、図4Aは、III-窒化物パワートランジスタ410Aの例示的な出力キャパシタンスを示すのに対し、図4Bは、図4AのIII-窒化物パワートランジスタ410Aに相当する構造410Bの断面図を示す。図4A及び4Bに示すように、III-窒化物パワートランジスタ410A/410Bは、ソース412、ドレイン414、及びゲート416を含み、出力キャパシタンス418を生成し、これらはそれぞれ、図3のソース312、ドレイン314、ゲート316、出力キャパシタンス318に相当する。これに加えて、図4Bは、基板460、III-窒化物層462及びAlGaN層464を含む代表的なヘテロ構造、絶縁体466、ソース金属471、ドレイン金属472、及びドレイン金属472をその上方にあるソース金属471から隔てる距離461を示す。図4Bより明らかなように、出力キャパシタンス418(C1)は、デバイスのレイアウトに応じて変化し得る。より具体的には、ソース金属471とドレイン金属472とのオーバラップ(重なり)は、C1の特定値を目標にして、絶縁体466の特性と組み合わせて慎重に設計し形成することができる。
【0035】
なお、C1とC2との比率を、図3を参照して説明したように設定すると、LVデバイス320の出力キャパシタンス348(C2)を特定限界を超えて増加させることは、一般に実行不可能である。例えば、LVデバイス320の過度の出力変化は、複合半導体デバイス300の低い逆方向回復電荷(Qrr)に関連する性能改善を低下させ得る。
【0036】
図3の参照を続ければ、III-窒化物トランジスタ310のレイアウトの最適化、または半導体パッケージの寄生パラメータの低減のいずれかによって、インダクタンス307を最小化することが有利であり得ることもわかる。1つの実現では、例えば、米国特許出願公開第12/445117号明細書(特許文献2)、発明の名称”Monolithic Vertically Integrated Composite Group III-V and Group IV Semiconductor Device and Method for Fabricating Same”、2009年5月28日出願、2011年3月29日に米国特許第7915645号として特許付与、並びに米国特許公開出願第12/653240号明細書(特許文献3)、発明の名称”Highly Conductive Source/Drain Contacts in III-Nitride Transistors”、2009年12月10日出願、米国特許出願公開第12/928103号明細書(特許文献4)、発明の名称”Monolithic Integration of Silicon and Group III-V Devices”、2010年12月3日出願、及び米国特許出願公開第13/020243号明細書(特許文献5)、発明の名称”Efficient High Voltage Switching Circuits and Monolithic Integration of Same”、2011年2月3日出願に開示されているように、III-窒化物パワートランジスタ310とLVデバイス320とをモノリシック集積することができ、これらの特許文献の各々は、その全文を参考文献として本明細書に含める。
【0037】
従って、本明細書に開示する複合半導体デバイスは、電圧保護されたLVデバイスを含むHVパワーデバイスの実現を可能にする。その結果、LVIV族デバイスを有利にノーマリオンIII-窒化物パワートランジスタとカスコード接続して、高い耐久性及び電圧破壊に対する増強された耐性を示す、頑丈なノーマリオフHV複合デバイスを形成することができる。
【0038】
以上の説明より、本願に記載した概念を、これらの概念の範囲を逸脱することなしに、種々の技術を用いて実現することができることは明らかである。さらに、これらの概念は特定の実現を具体的に参照して説明しているが、これらの概念の範囲を逸脱することなしに、その形態及び細部に変更を加えることができることは、当業者の認める所である。こうしたものとして、説明した実現は、あらゆる点で例示的であり限定的ではないと考えるべきである。また、本願は、本明細書に記載した特定の実現に限定されず、本開示の範囲を逸脱することなしに、多数の再構成、変更及び代替が可能であることも明らかである。
【符号の説明】
【0039】
100 複合半導体デバイス
102 複合ソース端子
104 複合ドレイン端子
106 複合ゲート端子
110 III-窒化物パワートランジスタ
120 LVデバイス
130 LVダイオード
140 LVトランジスタ
200 複合半導体デバイス
203 複合アノード端子
205 複合カソード端子
210 III-窒化物パワートランジスタ
212 ソース
214 ドレイン
216 ゲート
220 LVデバイス
223 アノード
225 カソード
300 複合半導体デバイス
302 複合ソース端子
304 複合ドレイン端子
306 複合ゲート端子
307 インダクタンス
310 III-窒化物パワートランジスタ
312 ソース
314 ドレイン
316 ゲート
318 第1出力キャパシタンス
320 LVデバイス
330 LVダイオード
340 LVトランジスタ
342 ソース
344 ドレイン
348 第2出力キャパシタンス
350 ゲート
410A、410B III-窒化物パワートランジスタ
412 ソース
414 ドレイン
416 ゲート
418 出力キャパシタンス
460 基板
462 III-窒化物層
464 AlGaN層
466 絶縁体
471 ソース金属
472 ドレイン金属

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノーマリオフ複合半導体デバイスであって、
第1出力キャパシタンスを有するノーマリオンIII-窒化物パワートランジスタと;
前記ノーマリオンIII-窒化物パワートランジスタとカスコード接続されて前記ノーマリオフ複合半導体デバイスを形成する低電圧(LV)デバイスであって、第2出力キャパシタンスを有するLVデバイスとを具え、
前記第1出力キャパシタンス対前記第2出力キャパシタンスの比率が、前記ノーマリオンIII-窒化物パワートランジスタのドレイン電圧対前記LVデバイスの降伏電圧の比率に基づいて設定されて、前記LVデバイスの電圧保護を行うことを特徴とするノーマリオフ複合半導体デバイス。
【請求項2】
前記第1出力キャパシタンス対前記第2出力キャパシタンスの比率が、約120未満であることを特徴とする請求項1に記載のノーマリオフ複合半導体デバイス。
【請求項3】
前記ノーマリオンIII-窒化物パワートランジスタが、III-窒化物電界効果トランジスタ(III-N FET)及びIII-窒化物高電子移動度トランジスタ(III-N HEMT)の一方であることを特徴とする請求項1に記載のノーマリオフ複合半導体デバイス。
【請求項4】
前記LVデバイスが、LVIV族半導体デバイスで構成されることを特徴とする請求項1に記載のノーマリオフ複合半導体デバイス。
【請求項5】
前記LVデバイスが、LVシリコンデバイスで構成されることを特徴とする請求項1に記載のノーマリオフ複合半導体デバイス。
【請求項6】
前記LVデバイスが、LV電界効果トランジスタ(LV FET)で構成されることを特徴とする請求項1に記載のノーマリオフ複合半導体デバイス。
【請求項7】
前記LVデバイスが、LV金属酸化膜半導体FET(LV MOSFET)及びLV金属−絶縁体−半導体FET(LV MISFET)であることを特徴とする請求項1に記載のノーマリオフ複合半導体デバイス。
【請求項8】
前記LVデバイスが、LVダイオードで構成されることを特徴とする請求項1に記載のノーマリオフ複合半導体デバイス。
【請求項9】
前記ノーマリオンIII-窒化物パワートランジスタと前記LVデバイスとが、モノリシック集積されていることを特徴とする請求項1に記載のノーマリオフ複合半導体デバイス。
【請求項10】
複合半導体デバイスであって、
第1出力キャパシタンスを有するIII-窒化物パワートランジスタと;
第2出力キャパシタンスを有する低電圧(LV)トランジスタとを具え、
前記LVトランジスタのドレインは、前記III-窒化物パワートランジスタのソースに結合され、前記LVトランジスタのソースは、前記複合半導体デバイスの複合ソース端子を提供し、前記LVトランジスタのゲートは、前記複合半導体デバイスの複合ゲート端子を提供し、前記III-窒化物パワートランジスタのドレインは、前記複合半導体デバイスの複合ドレイン端子を提供し、前記III-窒化物パワートランジスタのゲートは、前記LVトランジスタのソースに結合され、
前記第1出力キャパシタンス対前記第2出力キャパシタンスの比率が、前記III-窒化物パワートランジスタのドレイン電圧対前記LVトランジスタの降伏電圧の比率に基づいて設定されて、前記LVトランジスタの電圧保護を行うことを特徴とする複合半導体デバイス。
【請求項11】
前記第1出力キャパシタンス対前記第2出力キャパシタンスの比率が、約120未満であることを特徴とする請求項10に記載の複合半導体デバイス。
【請求項12】
前記III-窒化物パワートランジスタが、III-窒化物電界効果トランジスタ(III-N FET)であることを特徴とする請求項10に記載の複合半導体デバイス。
【請求項13】
前記III-窒化物パワートランジスタが、III-窒化物高電子移動度トランジスタ(III-N HEMT)であることを特徴とする請求項10に記載の複合半導体デバイス。
【請求項14】
前記LVトランジスタが、LVIV族トランジスタであることを特徴とする請求項10に記載の複合半導体デバイス。
【請求項15】
前記LVトランジスタが、LVシリコントランジスタで構成されることを特徴とする請求項10に記載の複合半導体デバイス。
【請求項16】
前記LVトランジスタが、LV金属酸化膜半導体FET(LV MOSFET)及びLV金属−絶縁体−半導体FET(LV MISFET)の一方であることを特徴とする請求項10に記載の複合半導体デバイス。
【請求項17】
前記III-窒化物パワートランジスタと前記LVトランジスタとが、モノリシック集積されていることを特徴とする請求項10に記載の複合半導体デバイス。
【請求項18】
複合半導体デバイスであって、
第1出力キャパシタンスを有するIII-窒化物パワートランジスタと;
第2出力キャパシタンスを有する低電圧(LV)ダイオードとを具え、
前記LVダイオードのカソードは、前記III-窒化物パワートランジスタのソースに結合され、前記LVダイオードのアノードは、前記複合半導体デバイスの複合アノード端子を提供し、前記III-窒化物パワートランジスタのゲートは、前記LVダイオードのアノードに結合され、
前記第1出力キャパシタンス対前記第2出力キャパシタンスの比率が、前記III-窒化物パワートランジスタのドレイン電圧対前記LVダイオードの降伏電圧の比率に基づいて設定されて、前記LVダイオードの電圧保護を行うことを特徴とする複合半導体デバイス。
【請求項19】
前記第1出力キャパシタンス対前記第2出力キャパシタンスの比率が、約120未満であることを特徴とする請求項18に記載の複合半導体デバイス。
【請求項20】
前記III-窒化物パワートランジスタが、III-窒化物電界効果トランジスタ(III-N FET)及びIII-窒化物高電子移動度トランジスタ(III-N HEMT)の一方であることを特徴とする請求項18に記載の複合半導体デバイス。
【請求項21】
前記LVダイオードが、LVIV族ダイオードで構成されることを特徴とする請求項18に記載の複合半導体デバイス。
【請求項22】
前記LVダイオードが、LVシリコンダイオードで構成されることを特徴とする請求項18に記載の複合半導体デバイス。
【請求項23】
前記III-窒化物パワートランジスタと前記LVダイオードとが、モノリシック集積されていることを特徴とする請求項18に記載の複合半導体デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【公開番号】特開2012−212875(P2012−212875A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−59454(P2012−59454)
【出願日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【出願人】(597161115)インターナショナル レクティフィアー コーポレイション (71)
【Fターム(参考)】