説明

作業機械の燃料性状判別システム及び作業機械の燃料性状判別方法

【課題】本発明の燃料性状判別システムは、作業機械に給油された燃料が正規の燃料であるか否かを判別し、判別結果を分析することにより適切な制御動作を行う。
【解決手段】給油ノズル8から給油された燃料は、燃料受け部2Aを介して燃料タンク2内に流入する。燃料性状検出手段1Bは、所定の測定タイミング(給油時)になると、給油された燃料の性状を測定する。測定データ生成手段1Cは、測定結果と燃料残量(1E)及び環境温度(1F)に基づいて、測定データを生成する。測定データ分析手段1Dは、測定データの分析結果に応じて、エンジン出力の制限(1G)、ユーザへの警告(1H)、ユーザ評価の変更(1I)を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械の燃料性状を判別するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械としては、例えば、油圧ショベルやホイールローダ等の各種建設機械や、ダンプトラック等の運搬車両等が知られている。これらの作業機械では、燃料コストを低減するために、ディーゼルエンジンを搭載し、燃料として軽油を使用する。多くの作業機械使用者は正規の軽油を使用しているが、軽油に灯油等の他の燃料を混ぜて不正使用されることもある。これは、軽油よりも灯油等の方が安価なためである。
【0003】
しかし、近年では、環境問題への対応が社会から強く要請されているため、作業機械メーカー等は、より環境への影響が少なくなるように、ディーゼルエンジンを高度に制御し、主要部品を設計している。このような高度のエンジン制御は、燃料として正規の軽油が使用されることを前提にしている。従って、軽油に比べてオイル含有量の少ない灯油や不純物を含んだ粗悪な燃料が使用されると、予定されたエンジン性能を発揮できない上に、エンジンの燃料噴射系等に損傷を与え、寿命を低下させる可能性がある。
【0004】
そこで、燃料の性状を判別する技術が提案されている。第1の従来技術としては、エンジンの排気ガスに含まれている硫黄酸化物の量に基づいて、正規の軽油が使用されているか否かを判別する方法が知られている(特許文献1)。第2の従来技術としては、軽油と灯油の比重の相違に基づいて、軽油であるか灯油であるかを判別するようにした技術が知られている(特許文献2)。
【特許文献1】特開2004−219269号公報
【特許文献2】実開平2−20146号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記各文献に記載の従来技術は、軽油と灯油を判別するための検査方法を提案するに留まり、判別結果をどのように役立たせるのかについては、全く考察されていない。このため、従来技術では、粗悪な燃料を使用する作業機械使用者の不正行為を阻止することができず、排気ガス中の汚染物質の増大やエンジンの寿命低下を防止することができない。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたもので、その目的は、所定の燃料以外の燃料が使用されているか否かを判別し、この判別結果に基づいた制御情報を出力することのできる作業機械の燃料性状判別システム及び燃料性状判別方法を提供することにある。本発明の他の目的は、燃料タンクへの給油時に所定の燃料が使用されているか否かを判別し、この判別結果に基づいて、作業機械の動作状態を制御できるようにした作業機械の燃料性状判別システム及び燃料性状判別方法を提供することにある。本発明の別の目的は、所定の燃料であるか否かの判別結果に基づいて、作業機械に関する評価を更新できるようにした作業機械の燃料性状判別システム及び燃料性状判別方法の提供にある。本発明の更なる目的は、後述する実施形態の記載から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの側面に従う作業機械の燃料性状判別システムは、作業機械のエンジンに供給される燃料の性状を判別する燃料性状判別システムであって、燃料タンクへ供給される燃料の性状を検出し、検出信号を出力する燃料性状検出手段と、燃料性状検出手段からの検出信号に基づいて、燃料タンクに供給された燃料が予め設定されている所定の燃料であるか否かを判別する判別手段と、判別手段による判別結果に基づいて、制御情報を出力する制御情報出力手段と、を備える。
【0008】
好適な実施形態では、燃料性状検出手段は、燃料タンクの給油口近傍に設けられており、判別手段は、燃料タンクへの給油時に燃料性状検出手段から出力される検出信号に基づいて、燃料タンクに供給された燃料が所定の燃料であるか否かを判別する。
【0009】
好適な実施形態では、燃料タンク内には、燃料タンクに供給される燃料の一部を一時的に貯蔵するための燃料溜まり部を設け、燃料性状検出手段を燃料溜まり部近傍に設け、判別手段は、燃料タンクへの給油時または給油終了直後のいずれかに燃料性状検出手段から出力される検出信号に基づいて、燃料タンクに供給された燃料が所定の燃料であるか否かを判別する。
【0010】
好適な実施形態では、燃料性状検出手段は、燃料タンクからエンジンに燃料を供給する燃料供給経路の途中に設け、判別手段は、エンジンが始動した場合または燃料タンクの燃料残量が増加した場合に、燃料性状検出手段から出力される検出信号に基づいて、燃料タンクに供給された燃料が所定の燃料であるか否かを判別する。
【0011】
好適な実施形態では、制御情報出力手段は、判別手段によって燃料が所定の燃料ではないと判定された場合に、警告情報または作業機械の作動状態を制限するための作動状態制限情報のいずれかまたは両方を出力する。
【0012】
好適な実施形態では、作動状態制限情報は、エンジンのエンジン回転数を制限させる情報である。
【0013】
好適な実施形態では、作動状態制限情報は、作業機械の有する作業機の動作を制限する情報である。
【0014】
本発明の他の観点に従う作業機械の燃料性状判別システムは、通信ネットワークを介して相互通信可能に接続された複数の作業機械と管理装置とを備える作業機械の燃料性状判別システムであって、各作業機械は、エンジンに燃料を供給する燃料タンクと、燃料タンクに供給される燃料の性状を検出して検出信号を出力する燃料性状検出手段と、燃料性状検出手段からの検出信号に基づいて測定データ(D1)を生成する測定データ生成手段と、生成された測定データを管理装置に送信させるデータ送信手段と、管理装置から受信した制御情報に基づいて、作業機械の動作を制限または警告を発する作動状態制限手段と、をそれぞれ備えて構成され、管理装置は、データ送信手段から送信された測定データを受信する受信手段と、測定データに基づいて、燃料タンクに供給された燃料が予め設定されている所定の燃料であるか否かを判別する判別手段と、判別手段による判別結果に基づいて、作業機械に制御情報を送信する制御情報送信手段とを、備えて構成される。
【0015】
本発明のさらに別の観点に従う作業機械の燃料性状判別システムは、通信ネットワークを介して相互通信可能に接続された複数の作業機械と管理装置とを備える作業機械の燃料性状判別システムであって、各作業機械は、エンジンに燃料を供給する燃料タンクと、燃料タンクに供給される燃料の性状を検出して検出信号を出力する燃料性状検出手段と、燃料性状検出手段からの検出信号に基づいて、燃料タンクに供給された燃料が予め設定されている所定の燃料であるか否かを判別する判別手段と、判別手段によって燃料タンクに供給された燃料が所定の燃料ではないと判定された場合に、作業機械の動作を制限または警告する警告手段と、判別手段による判別結果を管理装置に送信させる判別結果送信手段と、をそれぞれ備えて構成され、管理装置は、判別結果送信手段から送信された判別結果を受信する受信手段と、受信手段により受信された判別結果をデータベースに蓄積する記憶手段とを備えて構成される。
【0016】
好適な実施形態では、管理装置は、作業機械毎のユーザまたは使用者を管理するためのデータベースと、データベース内に設けられた使用燃料に関する評価を判別結果に基づいて更新させる評価更新手段とをさらに備える。
【0017】
本発明のさらに別の観点に従う作業機械の燃料性状判別システムは、作業機械のエンジンに供給される燃料の性状を判別する燃料性状判別システムであって、作業機械は、エンジンに燃料を供給する燃料タンクと、燃料タンクに供給される燃料の性状を検出して検出信号を出力する燃料性状検出手段と、燃料タンク内の燃料残量を検出して検出信号を出力する燃料残量検出手段と、燃料性状検出手段により、燃料タンクに供給された燃料が予め設定されている所定の燃料ではないと判定された場合には、燃料残量検出手段からの検出信号に基づいて、給油前の燃料残量と給油後の燃料残量とを比較演算し、給油量を算出する給油量算出手段と、を備える。
【0018】
本発明のさらに別の観点に従う作業機械の燃料性状判別システムは、通信ネットワークを介して相互通信可能に接続された複数の作業機械と管理装置とを備える作業機械の燃料性状判別システムであって、各作業機械は、エンジンに燃料を供給する燃料タンクと、燃料タンクに供給される燃料の性状を検出して検出信号を出力する燃料性状検出手段と、燃料タンク内の燃料残量を検出して検出信号を出力する燃料残量検出手段と、燃料性状検出手段により、燃料タンクに供給された燃料が予め設定されている所定の燃料ではないと判定された場合には、燃料残量検出手段からの検出信号に基づいて、給油前の燃料残量と給油後の燃料残量とを比較演算し、給油量を算出する給油量算出手段と、給油量算出手段により算出された給油量を管理装置に送信する送信手段とをそれぞれ備え、管理装置は、各作業機械から給油量を受信する受信手段と、作業機械毎のユーザまたは使用者を管理するためのデータベースと、データベース内に設けられた使用燃料に関する評価を判別結果に基づいて更新させる評価更新手段とを備える。
【0019】
本発明のさらに別の観点に従う作業機械の燃料性状判別システムは、通信ネットワークを介して相互通信可能に接続された作業機械と管理装置とを備える作業機械の燃料性状判別システムであって、作業機械は、エンジンに燃料を供給する燃料タンクと、燃料タンクに供給される燃料の性状を検出して検出信号を出力する燃料性状検出手段と、燃料タンク内の燃料残量を検出して検出信号を出力する燃料残量検出手段と、燃料性状検出手段からの検出信号及び燃料残量検出手段からの検出信号に基づいて測定データを生成する測定データ生成手段と、生成された測定データを管理装置に送信させるデータ送信手段と、管理装置から受信した制御情報に基づいて、作業機械の動作を制限させる作業機械動作制限手段と、を備えて構成され、管理装置は、データ送信手段から送信された測定データを受信する受信手段と、測定データに基づいて、燃料タンクに供給された燃料が予め設定されている所定の燃料であるか否かを判別する判別手段と、判別手段による判別結果に基づいて、作業機械に制御情報を送信する送信制御手段とを、備えて構成される。
【0020】
本発明のさらに別の観点に従う作業機械の燃料性状判別システムは、通信ネットワークを介して相互通信可能に接続された作業機械と管理装置とを備える作業機械の燃料性状判別システムであって、作業機械は、エンジンに燃料を供給する燃料タンクと、燃料タンクに供給される燃料の性状を検出して検出信号を出力する燃料性状検出手段と、燃料タンク内の燃料残量を検出して検出信号を出力する燃料残量検出手段と、燃料性状検出手段からの検出信号及び燃料残量検出手段からの検出信号に基づいて、燃料タンクに供給された燃料が予め設定されている所定の燃料であるか否かを判別する判別手段と、判別手段によって燃料タンクに供給された燃料が所定の燃料ではないと判定された場合に、警告する警告手段と、判別手段による判別結果を管理装置に送信させる判別結果送信手段と、を備えて構成され、管理装置は、判別結果送信手段から送信された判別結果を受信する受信手段と、燃料タンク内の燃料残量に占める所定の燃料以外の燃料の割合が所定値を超えた場合は、エンジンの出力を制限させるための制御情報を作業機械に送信する送信制御手段と、を備えて構成される。
【0021】
好適な実施形態では、判別結果に基づいて、作業機械のユーザに関する評価を更新させるユーザ評価更新手段をさらに備える。
【0022】
好適な実施形態では、燃料タンク内の燃料残量が増加しているにもかかわらず、燃料性状検出手段から燃料の存在を示す検出信号が出力されない場合は、異常状態の発生として検出する異常検出手段をさらに備える。
【0023】
本発明のさらに別の観点に従う作業機械の燃料性状判別方法は、作業機械のエンジンに供給される燃料の性状を判別する燃料性状判別方法であって、予め設定された所定の検出タイミングが到来したか否かを検出するステップと、所定の検出タイミングが到来した場合には、燃料タンクに供給される燃料の性状を検出するステップと、検出された燃料性状に基づいて、燃料が予め設定されている所定の燃料であるか否かを判別するステップと、判別の結果、燃料タンクに供給される燃料が所定の燃料ではないと判定された場合には、作業機械の動作を制限させるステップと、をそれぞれ実行する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、燃料タンクへ供給される燃料の性状を検出し、燃料タンクに供給された燃料が予め設定されている所定の燃料であるか否かを判別し、この判別結果に基づいて、制御情報を出力することができる。これにより、例えば、エンジンの回転数や作業機の動作等を制限して、ユーザの不正行為を阻止することができる。例えば、エンジン回転数の上限を低速または中速に制限したり、あるいは、ショベルや旋回体等の動作速度を遅くしたりすることができる。
【0025】
本発明によれば、給油時に燃料性状検出手段から出力される検出信号に基づいて、所定の燃料であるか否かを判別することができる。これにより、検出対象の燃料が燃料タンク内の既存燃料と混じり合ってから検出する場合よりも、燃料の性状を精度良く判別することができる。また、エンジン始動前に早期に判別可能であるため、粗悪な燃料を用いてエンジンが長時間運転されるのを防止することができる。
【0026】
本発明によれば、燃料の一部を一時的に貯蔵するための燃料溜まり部に燃料性状検出手段を設け、給油時または給油終了直後のいずれかで、所定の燃料であるか否かを判別することができる。これにより、より安定した条件下で燃料の性状を判別することができ、検出精度を高めることができる。
【0027】
本発明によれば、判別結果に基づいて、作業機械に関する評価(例えば、作業機械を操作している操作者等の評価、あるいは、作業機械の借り主の評価等)を更新することができる。これにより、例えば、粗悪な燃料を繰り返し使用する悪質なユーザの評価を下げて、作業機械の貸与条件を厳しく設定等することができ、ユーザの種類に応じて作業機械を適切に管理することができる。例えば、所定の燃料以外の燃料を燃料タンクに給油した回数が予め設定された回数を上回った場合や、所定の燃料以外の燃料の給油量が予め設定された量を上回った場合等に、作業機械に関する評価を低下させることができる。
【0028】
本発明によれば、所定の燃料以外の燃料が給油された場合に、給油前後の燃料残量に基づいて給油量を算出することができる。これにより、所定の燃料が給油されている場合には給油量の算出を行う必要がなく、制御構造を簡素化できる。また、本発明によれば、所定の燃料以外の燃料が給油された場合に、その給油量を算出し、給油量の大小に応じて評価を更新させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本実施形態の全体概念を示す説明図である。本実施形態に係る燃料性状判別システム1は、例えば、ホイールローダやトラック等のような作業機械に適用される。
【0030】
作業機械は、例えば、燃料タンク2と、燃料供給配管3と、燃料ポンプ4と、燃料噴射装置5と、エンジン本体6及び燃料残量センサ7を含んで構成される。燃料タンク2には、例えば、給油ノズル8を介して軽油が給油される。本実施形態では、所定の燃料として軽油を使用する場合を説明する。
【0031】
燃料タンク2の給油口には、燃料の性状を検出するための燃料性状検出手段(以下、性状検出センサとも呼ぶ)1Bが設けられている。性状検出センサ1Bは、予定されている正規の燃料(軽油)と軽油以外の燃料(灯油)との成分の相違に由来する物理的性質を検出し、検出信号を出力する。例えば、性状検出センサ1Bは、比重、屈折率、密度及びこれらの組合せ等に基づいて、軽油と灯油とを判別する。
【0032】
給油口には、燃料タンク2内に位置して、燃料受け部2Aが設けられている。燃料受け部2Aは、給油口から流入する燃料を一時的に受け止めて、性状検出センサ1Bのセンシング部分に燃料を短時間滞留させる。これにより、性状検出センサ1Bは、給油口から燃料タンク2内に直接落下する燃料の性状を検出する場合よりも、安定した検出を行うことができる。
【0033】
燃料タンク2内の燃料(軽油)は、ポンプ4によって吸引され、燃料噴射装置5に供給される。燃料噴射装置5は、燃料タンク2から供給された燃料を、所定の噴射時期及び所定の噴射量で、エンジン本体6内に噴射する。燃料残量センサ7は、例えば、フロート式センサ等のように構成される。燃料残量センサ7は、燃料タンク2内の燃料の量を検出して出力する。燃料残量の変化を監視することにより、給油の開始及び給油の終了を検出することができる。
【0034】
燃料性状判別システム1の構成を説明する。このシステム1は、例えば、測定タイミング検出手段1Aと、燃料性状検出手段(性状検出センサ)1Bと、測定データ生成手段1Cと、測定データ分析手段1Dと、燃料残量検出手段1Eと、環境温度検出手段1Fと、動作制限手段1Gと、警告手段1Hと、ユーザ評価変更手段1Iとを備えて構成することができる。
【0035】
測定タイミング検出手段1Aは、燃料性状の測定タイミングが到来したか否かを検出するものである。測定タイミングとしては、例えば、給油時(給油開始時、給油途中、給油終了時)、エンジン始動時、燃料性状判別システム1の起動時、所定時間の経過時等を挙げることができる。
【0036】
測定データ生成手段1Cは、燃料性状検出手段1Bによって検出された測定値と、燃料残量検出手段1Eにより検出された燃料残量及び環境温度検出手段1Fにより検出された環境温度とに基づいて、測定データを生成する。環境温度とは、燃料性状の測定時の周囲温度(例えば、燃料温度)である。例えば、測定データには、燃料性状の測定値、測定日時、作業機の識別情報、環境温度、測定開始前後の燃料残量等を含めることができる。測定値としては、例えば、複数回測定された値の平均値等を用いることができる。
【0037】
測定データ分析手段1D(以下、分析手段1Dとも呼ぶ)は、測定データ生成手段1Cにより生成された測定データを分析して、判定するものである。例えば、分析手段1Dは、生データである測定値を環境温度によって補正した後、この補正後の測定値と閾値とを比較することにより、給油された燃料の種別を判定する。
【0038】
さらに、分析手段1Dは、給油前後の燃料残量の変化から、どの種類の燃料がどれだけ給油されたのかを算出し、燃料タンク2内の燃料の構成比を求める。そして、分析手段1Dは、この算出された燃料構成比と基準値とを比較し、制御方法を決定する。即ち、分析手段1Dは、例えば、燃料タンク2内における軽油と灯油の割合を算出し、灯油の占める割合に基づいて(または、軽油の占める割合に基づいて)、所定の制御動作を実行させるための制御情報を出力する。制御情報は、例えば、電気信号またはコマンドあるいはデータのような形態で出力される。
【0039】
動作制限手段1Gは、例えば、エンジン本体6の回転数を制限したり、あるいは、作業機械の備える作業機の動作速度を制限する。動作制限手段1Gは、例えば、燃料噴射装置5による燃料噴射量を低下させることにより、エンジン本体6の出力を制限する。エンジン出力の低減には、エンジン本体6の停止も含まれる。例えば、燃料タンク2内に所定割合以上の灯油が混入した場合、分析手段1Dからの指示(制御信号)に応じて、動作制限手段1Gは、エンジン出力を制限させる。これにより、ユーザに警告を与えることができる。また、エンジン本体6の始動を停止させる場合、不純物を多く含んだ粗悪な燃料がエンジン本体6に供給されるのを未然に防止することができる。
【0040】
なお、エンジン出力の制限に代えて、または、エンジン出力の制限と共に、動作制限手段1Gは、作業機械の備える作業機(例えば、ブーム、アーム、バケット等)の速度を一定速度以下に制限したり、あるいは、旋回体の旋回速度を一定速度以下に制限させることもできる。例えば、作業機に供給される作動油の量や圧力を制限することにより、油圧シリンダや油圧モータの動作を通常時よりも遅くすることができる。
【0041】
警告手段1Hは、分析手段1Dからの制御情報に基づいて、作業機械のユーザに警告を与えるものである。警告としては、例えば、警告メッセージの表示出力、警告メッセージの音声出力、警告ランプの点灯、警告ブザーの鳴動等、あるいは、これらの組合せを挙げることができる。
【0042】
ユーザ評価変更手段1Iは、分析手段1Dからの制御情報に基づいて、作業機械のユーザについての評価を修正するものである。ここで、ユーザとは、作業機械の使用者を意味し、例えば、作業機械を借りている借り主等である。ユーザ評価は、例えば、「優」、「良」、「通常」、「悪質」等のように多段階で設定することができる。正規の燃料である軽油を使用し続けているユーザには高い評価が与えられ、不正な燃料である灯油を使用したユーザには低い評価が与えられる。ユーザ評価は、作業機械に関する種々のサービスを提供する企業で利用することができる。例えば、販売会社、レンタル会社、保険会社、メンテナンス会社等である。
【0043】
また、ユーザ評価に代えて、あるいはユーザ評価と共に、作業機械それ自身の評価を行うこともできる。粗悪な燃料が頻繁に使用された作業機械は、正規の燃料が使用されている作業機械よりも劣化や損傷の程度が大きいと考えられ、同一の作業環境下で正しく使用されている他の作業機械に比べてメンテナンス時期が早まると考えられる。従って、例えば、粗悪な燃料の使用頻度や使用量(給油量)に基づいて、作業機械のメンテナンス時期に関する評価を更新し、燃料の給油状態に応じて適切なメンテナンスを設定する構成としてもよい。
【0044】
また、正規の燃料以外の燃料が給油された場合にのみ、粗悪な燃料の給油量を算出し、この給油量に応じて作業機械の動作を制限させることもできる。さらに、正規の燃料以外の燃料が給油された回数に基づいて、作業機械の動作を制限させることもできる。
【0045】
このように構成される本実施形態では、燃料タンク2に供給される燃料の種別を判別し、判別結果に応じた制御情報を出力することにより、適切な制御動作を行わせることができる。以下、本実施形態の詳細を詳述する。
【実施例1】
【0046】
本発明の第1実施例を説明する。図2は、システム全体図である。図1に示すように、本実施例に係る燃料性状判別システムは、作業機械10と、作業機械メーカ側のネットワーク管制局11に設けられた管理サーバ12と、レンタル会社13側に設けられた顧客サーバ14と、これらを結ぶ通信網17とを含んで構成することができる。
【0047】
通信網17は、作業機械10と衛星地球局16とを通信衛星15を介して結ぶ衛星通信回線と、衛星地球局16とネットワーク管制局11の管理サーバ12とを結ぶ専用の地上通信回線と、管理サーバ12と顧客サーバ14とを結ぶイントラネットあるいはインターネット等のコンピュータネットワーク等とを含んで、構成される。衛星通信回線は、作業機械10がどの場所にいても作業機械10と管理装置との間の通信を可能にする目的で使用される。同様の目的を達成できるなら、衛星通信回線に代えて、他の移動体通信網又は無線通信網等を用いてもよい。
【0048】
作業機械10の位置は、GPS(Global Positioning System)衛星18によって把握されるようになっている。なお、作業機械10としては、例えば、油圧ショベル、ホイルローダ、ブルドーザ、モータグレーダ、クレーン等の建設機械や、ダンプトラック等の運搬車両、各種破砕機や発電機等の産業機械が含まれ得る。管理サーバ12は1台でもよいし、複数台でもよい。
【0049】
図3は、作業機械10の機能構成を示すブロック図である。図3には、燃料タンク150,エンジン160,燃料ポンプ170等からなるエンジン系統の構成と、各コントローラ100,110等からなる制御系統の構成とが示されている。先に制御系統について説明する。
【0050】
作業機械10は、例えば、電子コントローラ100と、通信コントローラ110と、GPSセンサ121と、衛星通信端末122と、UI(User Interface)部130と、複数のセンサ140〜143と、サービスメータ144とを備えて構成可能である。これらの各部の全部または一部は、一つまたは複数の車内ネットワークを介して相互に接続することができる。また、例えば、電子コントローラ100と通信コントローラ110とを一体化させる等のように、複数の機能や回路を一つにまとめることもできる。
【0051】
電子コントローラ100には、通信コントローラ110と、UI部130と、各種センサ群140〜143及びサービスメータ144と、燃料噴射装置162、エンジンスタータ163を接続させることができる。
【0052】
燃料性状検出センサ140は、例えば、比重、屈折率、密度等のような燃料の有する物理的性質に基づいて、燃料の性質や状態を検出するセンサである。本実施例では、センサ140からの検出信号に基づいて、軽油であるか否か(軽油であるか灯油であるか)を区別する。温度センサ141は、例えば、燃料性状検出センサ140近傍の温度を測定して出力するものである。燃料残量センサ142は、燃料タンク150内の燃料残量を測定して出力するものである。給油キャップセンサ143は、燃料タンク150の給油キャップ151(図5参照)が装着されているか否かを検出するものである。サービスメータ144とは、作業機械10の稼働時間を計測して積算するためのものである。なお、上述のセンサ群のほかに、例えば、エンジン回転数センサ、バッテリ電圧センサ、冷却水温センサ等のセンサ群も電子コントローラ100に接続される。温度センサ141の代わりに、冷却水温センサを用いても良い。
【0053】
電子コントローラ100は、上述のセンサ群により検知された稼働時間、エンジン回転数、バッテリー電圧、燃料量、冷却水温等を示す情報を生成し、これを通信コントローラ110に送信することができる。上記の稼働時間やエンジン回転数等のような、作業機械10の種々の状態や動作を示す情報を、「稼働情報」と総称する。
【0054】
作業機械10の通信系統について説明する。GPSセンサ121は、GPS衛星18からの電波を受信するためのGPSアンテナ121Aを有する。GPSセンサ121は、作業機械10の現在位置を計測して、これを通信コントローラ110に通知する。衛星通信端末122は、通信衛星15と通信するための衛星通信アンテナ122Aを有する。衛星通信端末122は、通信コントローラ110と管理サーバ12との間での衛星通信網を介した通信を可能にする。
【0055】
通信コントローラ110は、管理サーバ12との間の通信を制御する。通信コントローラ110は、電子コントローラ100から稼働情報や燃料判別データ(図4,図7参照)を受信する。また、通信コントローラ110は、GPSセンサ121から現在位置を示す位置情報を受信する。通信コントローラ110は、これらの稼働情報、燃料判別データ及び位置情報を、定期的または不定期に、衛星通信端末122及び衛星通信回線を介して、管理サーバ12に送信する。例えば、通信コントローラ110は、現場作業が終了した時間帯に、一日一回、稼働情報及び位置情報を管理サーバ12に送信することができる。通信コントローラ110は、例えば、給油時やエンジン始動時等に、燃料判別データを管理サーバ12に送信することもできる。
【0056】
通信コントローラ110は、書き換え可能な不揮発性の記憶装置111を備えることができる。記憶装置111には、例えば、作業機械10の位置情報、稼働時間、及び、作業機械10の稼働履歴等を記憶させることができる。また、管理サーバ12側には、作業エリアを設定することもできる。作業エリアとは、ユーザがレンタル会社13から融資を受ける際の契約時に、ユーザ及びレンタル会社13の合意により設定される特定の活動地域である。作業エリアは、その活動地域外へ作業機械10を出すことをレンタル会社13がユーザに許可してないことを意味する。管理サーバ12は、作業機械10から受信した位置情報に基づいて、作業エリアの外に作業機械10が存在するか否かを判断する。その結果、作業エリアの外に作業機械10が存在すると判断された場合には、管理サーバ12は、必要に応じて、作業機械10のロック装置を遠隔操作し、作業機械10をロックさせることもできる。
【0057】
UI部130は、例えば、作業機械10の運転席近傍に設けることができる。UI部130は、例えば、出力部及び入力部を備える。出力部としては、例えば、ディスプレイ装置や音声出力装置等を挙げることができる。入力部としては、例えば、キーボードスイッチやポインティングデバイス、マイクロフォン等を挙げることができる。燃料タンク150内に軽油以外の燃料(灯油)が混入された場合、UI部130は、管理サーバ12からの指令に基づいて警告メッセージを出力させる。
【0058】
作業機械10のエンジン系統を簡単に説明する。燃料タンク150は燃料を貯蔵するものである。燃料ポンプ170は、燃料タンク150内の燃料を燃料供給配管171を介して吸引し、エンジン160に供給する。
【0059】
エンジン160は、例えば、エンジン本体161,燃料噴射装置162,エンジンスタータ163を備える。ユーザがエンジンスイッチ180を操作すると、エンジンスタータ163によってエンジン160は始動する。エンジン160は、燃料噴射装置162からエンジン本体161内に噴射された燃料を燃焼させて、回転力を出力する。なお、燃料ポンプ170と燃料タンク150との間には、異物等を除去するためのフィルタ172(図4参照)が設けられている。
【0060】
図4は、燃料性状判別システムに関する構成を模式的に示す説明図である。まず燃料タンク150の詳細を説明する。燃料タンク150の上部には、給油口152Aが設けられている。給油口152Aは、通常時には給油キャップ151により施蓋されている。給油時には、給油キャップ151を取り外して、給油ノズル200を給油口152Aに挿入することにより、燃料タンク150内に燃料を補給できるようになっている。給油キャップ151によって給油口152Aが施蓋されているか否かは、給油キャップセンサ143により検出される。
【0061】
燃料タンク150内には、給油口152Aの下側に位置して、燃料受け部152が設けられている。燃料受け部152は、給油ノズル200から噴出する燃料を一時的に受け止める。燃料受け部152は、燃料流出口152Bを備えており、給油ノズル200から噴出した燃料は、燃料流出口152Bから燃料タンク150に流入する。燃料受け部152の底部152Cの近傍には、燃料性状検出センサ140が設けられている。センサ140は、燃料受け部152内に一時的に滞留する燃料について、その性状を検出する。
【0062】
燃料タンク150内には、フロート142Aが移動可能に設けられている。フロート142Aは、燃料タンク150内の燃料の液面H1,H2に従って上下に変位する。フロート142Aの変位量は、燃料残量センサ142により燃料残量に変換される。図中の液面H1は給油直前の状態を示し、H2は給油中の状態を示す。なお、燃料残量の検出方法は、上述のフロート式に限らない。例えば、光センサや超音波センサ等で燃料の液面位置を測定する構成や他の構成も採用できる。電子コントローラ100は、燃料性状検出センサ140からの信号等に基づいて、燃料判別データD1を生成する。生成された燃料判別データD1は、管理サーバ12に送信される。燃料判別データD1の構成は、図7と共に後述する。
【0063】
図5は、管理サーバ12の機能的構成を示す。管理サーバ12は、例えば、コンピュータネットワークとの通信を制御する通信制御部300と、通信制御部300を通じて送受信される情報を処理するための演算処理部310と、半導体メモリやハードディスク装置等から構成される記憶部320とを備えることができる。
【0064】
記憶部320は、演算処理部310で実行される各種のコンピュータプログラムが格納されたプログラム格納部321と、各種データベース322〜324が記憶される。燃料判別データのデータベース322は、作業機械10から受信した燃料判別データD1を管理するためのものである。分析結果データベース323は、燃料判別データD1の分析結果を管理するためのものである。車体管理データベース324は、作業機械10の稼働情報や位置情報等を管理するためのものである。
【0065】
演算処理部310は、上記各種のコンピュータプログラムにより、燃料判別データ受信処理311と、燃料判別データ補正処理312と、燃料判別データ分析処理313と、分析結果出力処理314と、エンジン出力制限処理315と、警報出力処理316とを、それぞれ実行させる。
【0066】
燃料判別データ受信処理311は、作業機械10から燃料判別データD1を受信し、データベース322に蓄積させる機能である。燃料判別データ補正処理312は、燃料判別データD1に含まれる燃料性状の測定値を、燃料判別データD1に含まれる温度によって補正するものである。
【0067】
燃料判別データ分析処理313は、温度補正された燃料性状の測定値及び燃料判別データD1に含まれる燃料残量に基づいて、燃料タンク150内における軽油及び灯油の比率を算出し、算出された比率に応じた制御指令を出力する機能である。分析結果出力処理314は、分析結果を顧客サーバ14に送信させる機能である。エンジン出力制限処理315は、分析処理313からエンジン出力の制限を指示された場合に、作業機械10に遠隔操作信号を送信し、エンジン160の出力を制限させる機能である。警報出力処理316は、分析処理313から警報出力を指示された場合に、作業機械10に信号を送信し、UI部130から警報を出力させる機能である。なお、場合によっては、エンジン出力の制限に代えて、あるいはエンジン出力の制限と共に、作業機械10のロック装置を遠隔操作によって作動させ、作業機械10をロック状態としてもよい。
【0068】
図6は、顧客サーバ14の機能的構成を示す。顧客サーバ14は、コンピュータネットワークに接続されており、管理サーバ12と通信可能である。顧客サーバ14は、通信制御部400と、演算処理部410と、記憶部420とを備えることができる。
【0069】
記憶部420は、例えば、半導体メモリやハードディスク装置等から構成されており、プログラム格納部421とユーザ管理データベース422及び分析結果データベース423を記憶する。プログラム格納部421には、燃料判別の分析結果に基づいて作業機械10のユーザを評価するためのプログラム等が記憶される。ユーザ管理データベース422は、作業機械10のユーザに関する評価を管理する。分析結果データベース423は、管理サーバ12から受信した分析結果を管理する。
【0070】
演算処理部410は、コンピュータプログラムを実行することにより、分析結果受信処理411及びユーザ評価更新処理412を実現させる。分析結果受信処理411は、管理サーバ12から送信された燃料の分析結果を受信し、データベース423に蓄積させる機能である。ユーザ評価更新処理412は、燃料の分析結果に基づいて、ユーザの評価を更新させる機能である。
【0071】
なお、管理サーバ12の有する機能の全部または一部と顧客サーバ14の有する機能の全部または一部を合体させる構成としてもよい。例えば、一つのサーバによって、各作業機械10からの情報収集と、分析と、ユーザ評価を行う構成としてもよい。
【0072】
図7は、燃料判別データD1と分析結果データベース323の構成を示す。燃料判別データD1には、例えば、測定日時と、燃料性状の測定値と、測定時の燃料温度と、燃料残量及び車体識別情報とが含まれる。
【0073】
ここで、燃料性状の測定値は温度補正前のデータ、いわゆる生データである。燃料残量には、測定時の燃料残量または測定終了後の燃料残量が設定される。後述のように、給油時に燃料の性状を判別する場合、給油完了時の燃料残量が設定される。車体識別情報は、作業機械10を特定するための情報である。例えば、作業機械10の車体番号、衛星通信端末122のネットワークアドレス、衛星通信端末122の電子メールアドレス等を用いることができる。
【0074】
分析結果データベース323は、燃料判別データD1の分析結果を管理しており、例えば、車体識別情報と、測定時刻と、燃料残量と、判別結果と、影響度と、燃料性状測定値の格納先アドレスとを含むことができる。
【0075】
判別結果とは、燃料タンク150に収容されている軽油と灯油の比率を示す。例えば、灯油が給油された場合、給油開始時の燃料残量と給油終了時の燃料残量との差から、給油された灯油の量を算出できる。これにより、燃料タンク150に存在する軽油の量及び灯油の量をそれぞれ算出し、割合を求めることができる。
【0076】
影響度とは、燃料タンク150内の燃料の成分が作業機械10のエンジン160に与える影響度を示す。例えば、予定外の成分を多く含む燃料(軽油の比率の少ない燃料)を使用すると、燃料噴射装置162等に損傷を与える可能性がある。そこで、管理サーバ12は、軽油と灯油の割合をランク分けし、影響度を設定する。影響度としては、例えば、「影響無し」、「小」、「中」、「大」等の値を用いることができる。燃料判別測定値の格納先アドレスとは、生データである測定値を記憶している領域を示す情報である。
【0077】
図8は、燃料性状判別システムの動作を示すフローチャートである。本実施例では、以下に述べるように、燃料タンク150への給油時に、燃料の性状を判別する。そこで、作業機械10は、給油キャップセンサ143からの検出信号に基づいて、給油キャップ151が開いたか否かを判定する(S11)。
【0078】
給油キャップ151が取り外された場合(S11:YES)、作業機械10は、燃料性状検出センサ140から検出信号が出力されたか否かを判定する(S12)。給油ノズル200によって給油が開始されると、燃料の性状がセンサ140によって検出される。即ち、給油の開始を、センサ140の検出信号の変化から検出することができる。
【0079】
給油が開始されると(S12:YES)、作業機械10は、燃料タンク150に流入する燃料の性状を測定する(S13)。そして、作業機械10は、燃料判別データD1を生成し(S14)、生成した燃料判別データD1を管理サーバ12に送信する(S15)。
【0080】
管理サーバ12は、燃料判別データD1を作業機械10から受信して保存し(S21)、測定値を測定温度で補正する(S22)。燃料の比重等を用いて性状を判別する場合、測定値が温度依存性を有するためである。なお、温度に依存しない物性値を利用する場合は、温度補正を行う必要はない。
【0081】
管理サーバ12は、温度補正後の測定値を分析し、燃料タンク150内の軽油と灯油の割合を算出する(S23)。また、管理サーバ12は、燃料の構成比に基づいて影響度を算出することもできる。このようにして求められた分析結果は、顧客サーバ14に送信される(S24)。
【0082】
さらに、管理サーバ12は、分析結果に基づいて、ユーザへの警告が必要か否かを判定する(S25)。例えば、灯油が給油された場合、給油された灯油の多少を問わずに、警告を発生させることができる。警告必要と判定した場合(S25:YES)、管理サーバ12は、作業機械10に警告信号を送信する(S26)。
【0083】
発報の指令に続いて、管理サーバ12は、エンジン160の出力制限が必要か否かを判定する(S27)。例えば、所定割合以上(または所定量以上)の灯油が燃料タンク150内に存在する場合、管理サーバ12は、エンジン出力の制限を決定する。エンジン出力の制限を決定した場合(S27:YES)、管理サーバ12は、エンジン出力を制限させるための信号を作業機械10に送信する(S28)。
【0084】
作業機械10は、管理サーバ12から警告信号を受信すると(S31:YES)、UI部130を介して、ユーザに警告を発する(S32)。例えば、UI部130に「灯油の使用は法律により禁止されています。」、「粗悪な燃料を使用するとエンジン等に損傷を与えるため、作業機械の使用を停止して下さい。」等のメッセージを表示させる。もしも、管理サーバ12がユーザの電子メールアドレスを把握している場合は、ユーザ宛の電子メールで警告を与えることもできる。
【0085】
作業機械10は、管理サーバ12からエンジン出力制限信号を受信すると(S33)、エンジン出力を制限させる(S34)。例えば、作業機械10は、燃料噴射量に上限を設定し、エンジン回転数を中速または低速に制限させることができる。あるいは、作業機械10は、エンジン160の始動を制限させることもできる。
【0086】
図9は、顧客サーバ14の動作を示すフローチャートである。顧客サーバ14は、管理サーバ12から分析結果を受信して保存する(S41)。顧客サーバ14は、分析結果に基づいて、その作業機械10のユーザについて改めて評価し(S42)、ユーザ評価を更新させる(S43)。顧客サーバ14は、ユーザ評価をユーザに通知すべきか否かを判定する(S44)。顧客サーバ14は、通知すべきと判定した場合(S44:YES)、ユーザに評価を通知する(S45)。
【0087】
例えば、正規の燃料である軽油の使用が確認された場合、そのユーザは優良ユーザであるため、高いユーザ評価が与えられる。これに対し、正規の燃料ではない灯油の使用が確認された場合、そのユーザは不良ユーザであるため、低いユーザ評価が与えられる。ユーザ評価が一定値まで低下した場合、顧客サーバ14は、例えば、作業機械10の貸し出し条件、保険料金、保守条件等をユーザに不利な条件に変更可能である。例えば、作業機械10の所有者であるレンタル会社13は、悪質なユーザへの貸し出しを断ったり、貸出料金を通常ユーザよりも高く設定することができる。
【0088】
以上詳述した通り、本実施例では、燃料の性状を判別し、この判別結果を分析して、適切な制御動作を行わせる構成とした。これにより、粗悪な燃料が使用されるのを抑制し、排気ガスが悪化したり、エンジン160が損傷したりするのを防止できる。
【0089】
本実施例では、灯油が給油された場合、ユーザに警告を発する。従って、軽油の給油時に直ちにユーザに注意を与えて、その後の適切な行動等を促すことができる。
【0090】
本実施例では、給油時に、給油される燃料の性状を判別する。従って、燃料タンク150内の既存燃料と混じり合ってから燃料性状を判別する場合よりも、精度良く判別することができる。また、給油時に判別するため、より早期に適切な制御動作を行わせることができる。
【0091】
本実施例では、給油口152Aに燃料受け部152を設け、給油時の燃料を一時的に滞留させて燃料性状を測定する。これにより、給油口152Aから燃料タンク150内に直接流入する燃料を測定する場合よりも、測定環境を安定させることができ、測定精度を高めることができる。
【実施例2】
【0092】
図10に基づいて第2実施例を説明する。本実施例では、作業機械10内において、燃料性状測定値の温度補正及び分析等を行う。図10は、本実施例による燃料性状判別システムで実行される処理のフローチャートである。
【0093】
作業機械10は、給油キャップ151が取り外され(S51:YES)、かつ、燃料性状検出センサ140から検出信号が出力された場合に(S52:YES)、燃料性状を測定し(S53)、測定結果を温度補正する(S54)。そして、作業機械10(電子コントローラ100)は、温度補正された測定値に基づいて、燃料タンク150内の燃料の構成比等を分析する(S55)。
【0094】
作業機械10は、分析結果を管理サーバ12に送信する(S56)。また、作業機械10は、分析結果に基づいて、ユーザへの警告が必要か否かを判定する(S57)。必要と判断した場合(S57:YES)、作業機械10は、直ちにユーザに警告する(S58)。
【0095】
一方、管理サーバ12は、作業機械10から分析結果を受信して保存し(S61)、この分析結果を顧客サーバ14に送信する(S62)。管理サーバ12は、エンジン出力の制限が必要か否かを判定し(S63)、必要であると判定した場合(S63:YES)、作業機械10にエンジン出力制限信号を送信する(S64)。
【0096】
作業機械10から管理サーバ12に送信される分析結果データD2は、図10の下側に示すように、例えば、車体識別情報と、測定時刻と、燃料残量と、判別結果と、影響度と、燃料性状の測定値とを含むことができる。
【0097】
このように構成される本実施例も前記第1実施例と同様の効果を奏する。これに加えて、本実施例では、作業機械10側で燃料性状測定値を分析し、分析結果を管理サーバ12に送信するため、直ちに警告を発することができ、管理サーバ12の処理負担を軽減することができる。例えば、通信環境の悪い場所で給油が行われた場合でも、作業機械10は、給油時点で直ちに警告を発することができ、ユーザの不正な行為を牽制できる。また、同時に多数の作業機械10を管理する管理サーバ12の負荷を軽減できる。
【実施例3】
【0098】
図11に基づいて第3実施例を説明する。本実施例では、燃料性状検出センサ140が正常に稼働しているか否かを診断できるようにしている。図11は、本実施例による燃料性状判別システムで実行されるフローチャートである。
【0099】
作業機械10は、給油キャップセンサ143からの検出信号に基づいて、給油キャップ151が取り外されたことを検出すると(S71:YES)、燃料タンク150内の燃料が増加しているか否かを判定する(S72)。
【0100】
燃料残量が増加している場合(S72:YES)、作業機械10は、燃料性状検出センサ140から検出信号が出力されているか否かを判定する(S73)。燃料性状検出センサ140から検出信号が出力されている場合(S73:YES)、燃料性状検出センサ140は正常に稼働しているため、作業機械10は、燃料性状を測定する(S74)。作業機械10は、燃料判別データD1を作成して(S75)、この燃料判別データD1を管理サーバ12に送信する(S76)。
【0101】
これに対し、燃料残量が増加しているにもかかわらず、燃料性状検出センサ140が検出信号を出力しない場合(S73:NO)、例えば、このセンサ140またはセンサ140と電子コントローラ100との通信経路に何らかの障害が生じていると考えられる。そこで、作業機械10は、エラー処理を行う(S77)。エラー処理としては、例えば、ユーザへの通知、管理サーバ12への報告等を挙げることができる。
【0102】
このように構成される本実施例も前記第1実施例と同様の効果を奏する。これに加えて、本実施例では、燃料性状検出センサ140が正常に稼働しているか否かを診断できるため、より一層信頼性が向上する。
【実施例4】
【0103】
図12,図13に基づいて第4実施例を説明する。本実施例では、燃料受け部152に、測定用の燃料貯蔵部152Dを設けている。図12は、燃料タンク150及び燃料受け部152の構成を模式的に示す説明図である。
【0104】
本実施例の燃料受け部152は、その底部152Cを一部凹ませることにより形成された燃料貯蔵部152Dを備える。燃料貯蔵部152Dには、小径な燃料排出口152Eが設けられている。
【0105】
給油ノズル200から噴出された燃料の大部分は、流出口152Bを介して燃料タンク150内に落下する。他の一部の燃料LFは、燃料貯蔵部152Dに貯蔵される。従って、給油が終了して、給油口152Aが給油キャップ151で施蓋された後も、短時間だけ燃料貯蔵部152D内に燃料が滞留する。燃料性状検出センサ140は、燃料貯蔵部152D内に滞留している燃料LFの性状を検出する。燃料貯蔵部152D内に残留した少量の燃料LFは、徐々に燃料排出口152Eから排出される。
【0106】
図13は、本実施例による燃料性状判別システムで実行される処理を示すフローチャートである。作業機械10は、給油キャップ151が取り外された後(S81:YES)、給油キャップ151が給油口152Aを施蓋したか否かを判定する(S82)。そして、作業機械10は、燃料残量が増加しているか否かを判定する(S83)。
【0107】
給油キャップ151が着脱された後で、燃料残量が増加している場合(S83:YES)、給油作業が行われたものと考えることができる。給油作業が行われた直後には、燃料貯蔵部152D内に少量の燃料LFが残留している。そこで、作業機械10は、燃料性状検出センサ140から検出信号が出力されているか否かを判定する(S84)。検出信号が出力されている場合(S84:YES)、作業機械10は、燃料性状を測定し(S85)、燃料判別データD1を生成して(S86)、管理サーバ12に送信する(S87)。
【0108】
燃料残量が増加しているにもかかわらず燃料性状検出センサ140から検出信号が出力されない場合(S84:NO)、作業機械10は、燃料性状検出センサ140等に障害が生じたものと判定してエラー処理を行う(S88)。
【0109】
このように構成される本実施例も前記第1実施例と同様の効果を奏する。これに加えて、本実施例では、給油作業の完了後に短時間だけ燃料を残留させるための燃料貯蔵部152Dを設けるため、より安定した環境下で燃料性状を測定することができる。
【実施例5】
【0110】
図14,図15に基づいて第5実施例を説明する。本実施例では、燃料性状検出センサ140の取付位置をフィルタ172の上流側に変更すると共に、燃料性状の測定タイミングをエンジン始動時に変更する。
【0111】
図14は、本実施例による燃料性状判別システムの要部を模式的に示す説明図である。本実施例では、燃料性状検出センサ140をフィルタ172と燃料タンク150との間に設けている。従って、本実施例では、燃料受け部152を廃止している。
【0112】
図15は、本実施例による燃料性状判別処理のフローチャートである。作業機械10は、エンジン160が始動した場合(S91:YES)、または、燃料残量が増加した場合(S92:YES)のいずれかが検出されたときに、燃料性状を測定する(S93)。そして、作業機械10は、燃料判別データD1を生成して(S94)、この燃料判別データD1を管理サーバ12に送信する(S95)。
【0113】
このように構成される本実施例も燃料性状を判別し、判別結果の分析に基づいて、適切な制御動作を行わせることができる。これに加えて、本実施例では、燃料供給配管171の途中に燃料性状検出センサ140を設けるため、燃料受け部152が不要となり、センサ140の取付方法を簡略化することができる。
【0114】
なお、上記実施形態は本発明の説明のための例示にすぎず、本発明の範囲をこれのみに限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態以外の他の種々の形態で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の実施形態の全体概念を示す説明図。
【図2】燃料性状判別システムのネットワーク構成等を示す説明図。
【図3】作業機械の構成を示すブロック図。
【図4】燃料タンク等の構成を示す説明図。
【図5】管理サーバのブロック図。
【図6】顧客サーバのブロック図。
【図7】燃料判別データ及び分析結果データベースの構成を示す説明図。
【図8】燃料性状判別処理を示すフローチャート。
【図9】顧客サーバの処理を示すフローチャート。
【図10】第2実施例に係る燃料性状判別処理を示すフローチャート。
【図11】第3実施例に係る燃料性状判別処理を示すフローチャート。
【図12】第4実施例に係る燃料性状判別システムの要部を示す説明図。
【図13】燃料性状判別処理を示すフローチャート。
【図14】第5実施例に係る燃料性状判別システムの要部を示す説明図。
【図15】燃料性状判別処理を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0116】
1:燃料性状判別システム、1A:測定タイミング検出手段、1B:燃料性状検出手段、1C:測定データ生成手段、1D:測定データ分析手段、1E:燃料残量検出手段、1F:環境温度検出手段、1G:動作制限手段、1H:警告手段、1I:ユーザ評価変更手段、2:燃料タンク、2A:燃料受け部、3:燃料供給配管、4:燃料ポンプ、5:燃料噴射装置、6:エンジン本体、7:燃料残量センサ、8:給油ノズル、10:作業機械、11:ネットワーク管制局、12:管理サーバ、13:レンタル会社、14:顧客サーバ、15:通信衛星、16:衛星地球局、17:通信網、18:GPS衛星、100:電子コントローラ、110:通信コントローラ、111:記憶装置、121:GPSセンサ、121A:GPSアンテナ、122:衛星通信端末、122A:衛星通信アンテナ、130:ユーザインターフェース部、140:燃料性状検出センサ、141:温度センサ、142:燃料残量センサ、142A:フロート、143:給油キャップセンサ、144:サービスメータ、150:燃料タンク、151:給油キャップ、152:燃料受け部、152A:給油口、152B:流出口、152C:底部、152D:燃料貯蔵部、152E:燃料排出口、160:エンジン、161:エンジン本体、162:燃料噴射装置、163:エンジンスタータ、170:燃料ポンプ、171:燃料供給配管、172:フィルタ、180:エンジンスイッチ、200:給油ノズル、300:通信制御部、310:演算処理部、311:燃料判別データ受信処理、312:燃料判別データ補正処理、313:燃料判別データ分析処理、314:分析結果出力処理、315:エンジン出力制限処理、316:警報出力処理、320:記憶部、321:プログラム格納部、322:燃料判別データのデータベース、323:分析結果データベース、324:車体管理データベース、400:通信制御部、410:演算処理部、411:分析結果受信処理、412:ユーザ評価更新処理、420:記憶部、421:プログラム格納部、422:ユーザ管理データベース、423:分析結果データベース、D1:燃料判別データ、D2:分析結果データ、H1,H2:燃料の液面、LF:測定用燃料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械(10)のエンジン(6,160)に供給される燃料の性状を判別する燃料性状判別システムであって、
燃料タンク(2,150)へ供給される燃料の性状を検出し、検出信号を出力する燃料性状検出手段(1B,140)と、
前記燃料性状検出手段からの検出信号に基づいて、前記燃料タンクに供給された燃料が予め設定されている所定の燃料であるか否かを判別する判別手段(1D,313)と、
前記判別手段による判別結果に基づいて、制御情報を出力する制御情報出力手段(1G,1H,315,316)と、
を備えた作業機械の燃料性状判別システム。
【請求項2】
前記燃料性状検出手段(1B,140)は、前記燃料タンク(2,150)の給油口(152A)近傍に設けられており、
前記判別手段(1D,313)は、前記燃料タンクへの給油時に前記燃料性状検出手段から出力される検出信号に基づいて、前記燃料タンクに供給された燃料が前記所定の燃料であるか否かを判別する請求項1に記載の作業機械の燃料性状判別システム。
【請求項3】
前記燃料タンク(2,150)内には、前記燃料タンクに供給される燃料の一部を一時的に貯蔵するための燃料溜まり部(152D)を設け、
前記燃料性状検出手段(1B,140)を前記燃料溜まり部近傍に設け、
前記判別手段(1D,313)は、前記燃料タンクへの給油時または給油終了直後のいずれかに前記燃料性状検出手段から出力される検出信号に基づいて、前記燃料タンクに供給された燃料が前記所定の燃料であるか否かを判別する請求項1に記載の作業機械の燃料性状判別システム。
【請求項4】
前記燃料性状検出手段(1B,140)は、前記燃料タンク(2,150)から前記エンジン(6,160)に燃料を供給する燃料供給経路(3,171)の途中に設け、
前記判別手段(1D,313)は、前記エンジンが始動した場合または前記燃料タンクの燃料残量が増加した場合に、前記燃料性状検出手段から出力される検出信号に基づいて、前記燃料タンクに供給された燃料が前記所定の燃料であるか否かを判別する請求項1に記載の作業機械の燃料性状判別システム。
【請求項5】
前記制御情報出力手段(1G,1H,315,316)は、前記判別手段によって前記燃料が前記所定の燃料ではないと判定された場合に、警告情報または前記作業機械の作動状態を制限するための作動状態制限情報のいずれかまたは両方を出力する請求項1〜4のいずれかに記載の作業機械の燃料性状判別システム。
【請求項6】
前記作動状態制限情報は、前記エンジンのエンジン回転数を制限させる情報である請求項5に記載の作業機械の燃料性状判別システム。
【請求項7】
前記作動状態制限情報は、前記作業機械の有する作業機の動作を制限する情報である請求項5に記載の作業機械の燃料性状判別システム。
【請求項8】
通信ネットワーク(17)を介して相互通信可能に接続された複数の作業機械(10)と管理装置(12)とを備える作業機械の燃料性状判別システムであって、
前記各作業機械(10)は、
エンジン(160)に燃料を供給する燃料タンク(150)と、
前記燃料タンクに供給される燃料の性状を検出して検出信号を出力する燃料性状検出手段(140)と、
前記燃料性状検出手段からの検出信号に基づいて測定データ(D1)を生成する測定データ生成手段(S14)と、
前記生成された測定データを前記管理装置に送信させるデータ送信手段(S15,122)と、
前記管理装置から受信した制御情報に基づいて、前記作業機械の動作を制限または警告を発する作動状態制限手段(S34)と、
をそれぞれ備えて構成され、
前記管理装置(12)は、
前記データ送信手段から送信された前記測定データ(D1)を受信する受信手段(311,S21)と、
前記測定データに基づいて、前記燃料タンクに供給された燃料が予め設定されている所定の燃料であるか否かを判別する判別手段(313,S23)と、
前記判別手段による判別結果に基づいて、前記作業機械(10)に前記制御情報を送信する制御情報送信手段(315,S28)とを、
備えて構成されている作業機械の燃料性状判別システム。
【請求項9】
通信ネットワーク(17)を介して相互通信可能に接続された複数の作業機械(10)と管理装置(14)とを備える作業機械の燃料性状判別システムであって、
前記各作業機械(10)は、
エンジン(160)に燃料を供給する燃料タンク(150)と、
前記燃料タンクに供給される燃料の性状を検出して検出信号を出力する燃料性状検出手段(140)と、
前記燃料性状検出手段からの検出信号に基づいて、前記燃料タンクに供給された燃料が予め設定されている所定の燃料であるか否かを判別する判別手段(1D,100,S55)と、
前記判別手段によって前記燃料タンクに供給された燃料が前記所定の燃料ではないと判定された場合に、前記作業機械の動作を制限または警告する警告手段(S58)と、
前記判別手段による判別結果(D2)を前記管理装置に送信させる判別結果送信手段(S56)と、
をそれぞれ備えて構成され、
前記管理装置(14)は、
前記判別結果送信手段から送信された前記判別結果(D2)を受信する受信手段(411,S41)と、
前記受信手段により受信された前記判別結果をデータベースに蓄積する記憶手段(S42)とを備えて構成されている作業機械の燃料性状判別システム。
【請求項10】
前記管理装置(14)は、前記作業機械毎のユーザまたは使用者を管理するためのデータベース(422)と、前記データベース内に設けられた使用燃料に関する評価を前記判別結果に基づいて更新させる評価更新手段(412)とをさらに備える請求項9に記載の燃料性状判別システム。
【請求項11】
作業機械(10)のエンジン(6,160)に供給される燃料の性状を判別する燃料性状判別システムであって、
前記作業機械(10)は、
前記エンジンに燃料を供給する燃料タンク(2,150)と、
前記燃料タンクに供給される燃料の性状を検出して検出信号を出力する燃料性状検出手段(1B,140)と、
前記燃料タンク内の燃料残量を検出して検出信号を出力する燃料残量検出手段(1E,142)と、
前記燃料性状検出手段により、前記燃料タンクに供給された燃料が予め設定されている所定の燃料ではないと判定された場合には、前記燃料残量検出手段からの検出信号に基づいて、給油前の燃料残量と給油後の燃料残量とを比較演算し、給油量を算出する給油量算出手段(S55)と、を備えた作業機械の燃料性状判別システム。
【請求項12】
通信ネットワーク(17)を介して相互通信可能に接続された複数の作業機械(10)と管理装置(12,14)とを備える作業機械の燃料性状判別システムであって、
前記各作業機械(10)は、
エンジン(160)に燃料を供給する燃料タンク(150)と、
前記燃料タンクに供給される燃料の性状を検出して検出信号を出力する燃料性状検出手段(140)と、
前記燃料タンク内の燃料残量を検出して検出信号を出力する燃料残量検出手段(142)と、
前記燃料性状検出手段により、前記燃料タンクに供給された燃料が予め設定されている所定の燃料ではないと判定された場合には、前記燃料残量検出手段からの検出信号に基づいて、給油前の燃料残量と給油後の燃料残量とを比較演算し、給油量を算出する給油量算出手段(S55)と、
前記給油量算出手段により算出された給油量を前記管理装置に送信する送信手段(S56)とをそれぞれ備え、
前記管理装置(12,14)は、
前記各作業機械から前記給油量を受信する受信手段(S61)と、
前記作業機械毎のユーザまたは使用者を管理するためのデータベース(422)と、
前記データベース内に設けられた使用燃料に関する評価を前記判別結果に基づいて更新させる評価更新手段(412)とを備える燃料性状判別システム。
【請求項13】
通信ネットワーク(17)を介して相互通信可能に接続された作業機械(10)と管理装置(12)とを備える作業機械の燃料性状判別システムであって、
前記作業機械(10)は、
エンジン(160)に燃料を供給する燃料タンク(150)と、
前記燃料タンクに供給される燃料の性状を検出して検出信号を出力する燃料性状検出手段(140)と、
前記燃料タンク内の燃料残量を検出して検出信号を出力する燃料残量検出手段(142)と、
前記燃料性状検出手段からの検出信号及び前記燃料残量検出手段からの検出信号に基づいて測定データ(D1)を生成する測定データ生成手段(S14)と、
前記生成された測定データを前記管理装置に送信させるデータ送信手段(S15,122)と、
前記管理装置から受信した制御情報に基づいて、前記作業機械の動作を制限させる作業機械動作制限手段(S34)と、
を備えて構成され、
前記管理装置(12)は、
前記データ送信手段から送信された前記測定データ(D1)を受信する受信手段(311,S21)と、
前記測定データに基づいて、前記燃料タンクに供給された燃料が予め設定されている所定の燃料であるか否かを判別する判別手段(313,S23)と、
前記判別手段による判別結果に基づいて、前記作業機械(10)に前記制御情報を送信する送信制御手段(315,S28)とを、
備えて構成されている作業機械の燃料性状判別システム。
【請求項14】
通信ネットワーク(17)を介して相互通信可能に接続された作業機械(10)と管理装置(12)とを備える作業機械の燃料性状判別システムであって、
前記作業機械(10)は、
エンジン(160)に燃料を供給する燃料タンク(150)と、
前記燃料タンクに供給される燃料の性状を検出して検出信号を出力する燃料性状検出手段(140)と、
前記燃料タンク内の燃料残量を検出して検出信号を出力する燃料残量検出手段(142)と、
前記燃料性状検出手段からの検出信号及び前記燃料残量検出手段からの検出信号に基づいて、前記燃料タンクに供給された燃料が予め設定されている所定の燃料であるか否かを判別する判別手段(S55)と、
前記判別手段によって前記燃料タンクに供給された燃料が前記所定の燃料ではないと判定された場合に、警告する警告手段(S58)と、
前記判別手段による判別結果(D2)を前記管理装置に送信させる判別結果送信手段(S56)と、
を備えて構成され、
前記管理装置(12)は、
前記判別結果送信手段から送信された前記判別結果(D2)を受信する受信手段(311,S61)と、
前記燃料タンク内の燃料残量に占める前記所定の燃料以外の燃料の割合が所定値を超えた場合は、前記エンジンの出力を制限させるための制御情報を前記作業機械に送信する送信制御手段(S63,S64)と、
を備えて構成されている作業機械の燃料性状判別システム。
【請求項15】
前記判別結果に基づいて、前記作業機械のユーザに関する評価を更新させるユーザ評価更新手段(11,412,S43)をさらに備える請求項1〜請求項7のいずれかに記載の作業機械の燃料性状判別システム。
【請求項16】
前記燃料タンク内の燃料残量が増加しているにもかかわらず、前記燃料性状検出手段(140)から前記燃料の存在を示す検出信号が出力されない場合は、異常状態の発生として検出する異常検出手段(S77)をさらに備える請求項1〜請求項3のいずれかに記載の作業機械の燃料性状判別システム。
【請求項17】
作業機械(10)のエンジン(6,160)に供給される燃料の性状を判別する燃料性状判別方法であって、
予め設定された所定の検出タイミングが到来したか否かを検出するステップ(S11,S51,S71,S81,)と、
前記所定の検出タイミングが到来した場合には、燃料タンク(2,150)に供給される燃料の性状を検出するステップ(S13,S53,S74,S93)と、
前記検出された燃料性状に基づいて、前記燃料が予め設定されている所定の燃料であるか否かを判別するステップ(S23,S55)と、
前記判別の結果、前記燃料タンクに供給される燃料が前記所定の燃料ではないと判定された場合には、前記作業機械の動作を制限させるステップ(S28,S34,S64)と、をそれぞれ実行する作業機械の燃料性状判別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−8234(P2008−8234A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−180842(P2006−180842)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】