説明

作業用車輌

【課題】ハイブリッド式の作業用車輌の信頼性を高めると共に、電源車輌としても利用できるようにして作業能率を高める。
【解決手段】エンジン(1)によって駆動される発電機(2)と、該発電機(2)によって発電された電力を蓄電することのできるバッテリ(3)と、エンジン(1)を停止させた状態でも、該バッテリ(3)の電力によってモータ(4)を駆動して走行装置(5)を駆動することのできる走行駆動手段と、発電機(2)によって発電された電力と外部電源から供給される電力とをバッテリ(3)に選択的に充電することのできる充電手段と、発電機(2)によって発電された電力を外部へ取り出して電動作業機等の電動機器を駆動することのできる電力取り出し手段とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、農作業、土木作業、建設作業など、各種の作業に利用することのできる作業用車輌に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンの燃費を向上させると共に、排気ガスを少なくして雰囲気の汚染を防止する技術として、エンジンと電動モータとの二つの動力源を備え、状況に応じて動力源を適宜に切り換えて走行するハイブリッド式の農作業用車輌が試みられている。このような農作業用車輌は、例えばグリーンハウス内での農作業において、エンジンの排気ガスによってハウス内の雰囲気を汚染することがなく、栽培植物や作業者への悪影響を少なくできるものとして期待されている。
【0003】
このような農作業用車輌として、例えば下記特許文献1に記載のハイブリッド式の運搬車や特許文献2に記載のハイブリッド式のトラクタがある。これらの農作業用車輌には、エンジンによって発電機を駆動し、この発電機によって発電された電力をバッテリに充電し、このバッテリに蓄電された電力によって電動モータを駆動して走行できるように構成した走行駆動手段が備えられ、エンジンの駆動力によって走行装置を駆動する状態と、電動モータによって走行装置を駆動する状態とに切換自在に構成されている。
【特許文献1】特開2000−289473号号公報
【特許文献1】特開2002−186110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1及び2に記載されたような従来のハイブリッド式の作業用車輌にあっては、エンジンから走行装置への動力伝動機構と、電動モータから走行装置への動力伝動機構との二系統の動力伝動機構を必要とし、エンジンの駆動力による走行伝動状態と、電動モータの駆動力による走行状態との切換機構及び切換制御が複雑なものとなり、故障の頻度も高くなる問題があった。
【0005】
また、これら従来のハイブリッド式の農作業車輌には、バッテリに充電する電力の供給源として、エンジンによって駆動される発電機を備えるのみである。このため、エンジンの燃料が欠乏してエンジンが停止し、バッテリに蓄電されていた電力も消費してしまった場合には、電動モータを駆動することもできなくなるために、走行不能の状態に陥ってしまう問題があった。
【0006】
また、発電機によって発電された電力は、バッテリに充電されて走行駆動用の電動モータを駆動するために使用されるだけであり、この発電された電力を外部へ取り出して汎用の電源として利用することができない欠点があった。
【0007】
また、車体の前部にバッテリを搭載しているために、凹凸状の地面上を走行する際に車体が大きくピッチングした場合、このバッテリの支持台の底面が地面に干渉しやすくなる。このため、バッテリの搭載位置を下げることが難しく、車体全体の重心位置が高くなって、例えば畝の法面などの傾斜地を走行する際に転倒しやすくなる問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上述の如き従来技術の課題を解決するために、次のような技術的手段を講じる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、エンジン(1)によって駆動される発電機(2)と、該発電機(2)によって発電された電力を蓄電することのできるバッテリ(3)と、前記エンジン(1)を停止させた状態でも、該バッテリ(3)の電力によってモータ(4)を駆動して走行装置(5)を駆動することのできる走行駆動手段と、前記発電機(2)によって発電された電力と外部電源から供給される電力とを前記バッテリ(3)に選択的に充電することのできる充電手段と、前記発電機(2)によって発電された電力を外部へ取り出して電動作業機等の電動機器を駆動することのできる電力取り出し手段とを設けたことを特徴とする作業用車輌としたものである。
【0009】
しかして、エンジン1によって発電機2を駆動すると、この発電機2によって発電された電力がバッテリ3に蓄電される。これにより、エンジン1を駆動している状態であっても、或いはエンジン1を停止させた状態であっても、バッテリ3に蓄電された電力によってモータ4を駆動し走行装置5を駆動して走行することが可能となる。(このように、エンジン1を駆動している状態で走行するのは、航続距離を延長するためのもので、これをエクステンダ・ハイブリッド式という。)尚、発電機2からバッテリ3への充電に代えて、例えば家庭用電源などの外部電源からバッテリ3に充電することも可能である。また、発電機2によって発電された電力によって、例えば電動作業機等の電動機器を接続して駆動させることが可能である。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、前記バッテリ(3)の一部ないし全部を、左右の走行装置(5)の間に入り込ませて配置したことを特徴とする請求項1に記載の作業用車輌としたものである。
【0011】
これにより、バッテリ3が車体の低位置に配置され、作業用車輌全体の重心位置が下がる。
また、請求項3に記載の発明は、前記バッテリ(3)を支持するバッテリ支持部材(14)の底部に、下方へ開口する開口部(15)を形成したことを特徴とする請求項2に記載の作業用車輌としたものである。
【0012】
これにより、バッテリ3周辺の通気性がよくなり、また、例えば雨水などがバッテリ3付近に侵入しても、この水を開口部15から下方へ排出することが可能となる。
また、請求項4に記載の発明は、前記バッテリ(3)の上側に開閉自在の板体(11)を設け、該板体(11)を開放することによってバッテリ(3)の少なくとも上部が露出するように構成したことを特徴とする請求項2に記載の作業用車輌としたものである。
【0013】
これにより、板体11を開放させれば、バッテリ3の少なくとも上部が露出して、このバッテリ3のメンテナンスを行える状態となる。
また、請求項5に記載の発明は、前記モータ(4)の出力軸(7)を介して作業機駆動用の駆動力を取り出すことができるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の作業用車輌としたものである。
【0014】
これにより、モータ4の出力軸7を介して、機械駆動式の作業機を駆動することが可能となる。
また、請求項6に記載の発明は、前記モータ(4)を駆動するバッテリ(3)とは別に、エンジン(1)始動用のサブバッテリ(8)を設けたことを特徴とする請求項1に記載の作業用車輌としたものである。
【0015】
これにより、モータ4を駆動するバッテリ3が消耗しても、サブバッテリ8によってエンジン1を始動してバッテリ3に充電することが可能となる。
さらに、請求項7に記載の発明は、前記エンジン(1)とモータ(4)とを隔壁(9)で仕切って配置したことを特徴とする請求項1に記載の作業用車輌としたものである。
【0016】
これにより、隔壁9によってエンジン1の熱がモータ4に伝わりにくくなる。
また、請求項8に記載の発明は、前記隔壁(9)を、エンジン(1)を搭載するフレームによって構成したことを特徴とする請求項7に記載の作業用車輌としたものである。
【0017】
これにより、隔壁9を特別に設けなくても、機体構成の一部であるエンジン1搭載用のフレームが隔壁9となって構成が簡素化される。
また、請求項9に記載の発明は、前記エンジン(1)を搭載するフレームの下側に、前記モータ(4)を配置したことを特徴とする請求項8に記載の作業用車輌としたものである。
【0018】
これにより、エンジン1の下側空間を利用してモータ4が配置され、このモータ4のメンテナンスを容易に行えるようになる。
また、請求項10に記載の発明は、前記モータ(4)の駆動速度を変速操作することのできる変速操作具(36)と、該モータ(4)を駆動して走行している状態において該モータ(4)を緊急停止させることのできる緊急停止操作具(35)とを設けたことを特徴とする請求項1に記載の作業用車輌としたものである。
【0019】
これにより、変速操作具36によってモータ4の駆動速度を変速操作して、作業用車輌の走行速度を任意に変速調節することが可能となる。また、走行中に緊急停止操作具35を操作して作業用車輌を緊急停止させることが可能となる。
【0020】
また、請求項11に記載の発明は、車体の下部に左右のクローラ式の走行装置(5)を設け、該左右の走行装置(5)の上側に荷台としての板体(11)を設け、該板体(11)の後側にエンジン(1)と発電機(2)とモータ(4)とを有する原動部を設け、該原動部の上側に操作パネル(47)を設けて、該操作パネル(47)及びその周辺に、前記モータ(4)を始動及び停止操作することのできる走行操作具(33)と、該モータ(4)の駆動速度を変速操作することのできる変速操作具(36)と、前記走行操作具(33)を始動操作してモータ(4)を駆動して走行している状態において該モータ(4)を緊急停止させることのできる緊急停止操作具(35)と、前記左右の走行装置(5)の駆動速度に差を有さしめて車体の走行方向を左右に調節することのできる操向操作具(30,31)とを配置したことを特徴とする請求項1に記載の作業用車輌としたものである。
【0021】
これにより、原動部の前側に設けた板体11を荷台として利用し、例えば電動作業機等の電動機器を搭載して走行しながら作業を行なうことが可能となる。また、走行操作具33によってモータ4を始動及び停止操作して作業用車輌を走行または停止操作することが可能となり、変速操作具36によってモータ4の駆動速度を変速操作して作業用車輌の走行速度を任意に変速調節することが可能となり、走行中に緊急停止操作具35を操作して作業用車輌を緊急停止させることが可能となり、操向操作具30,31を操作して作業用車輌の走行方向を左右に調節することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載の発明によると、発電機2を駆動するエンジン1を停止させた状態であっても、バッテリ3に蓄電された電力によってモータ4を駆動して走行することができるため、例えばグリーンハウス内での走行時にエンジンの排気ガスによるハウス内の雰囲気の汚染を少なくでき、栽培植物や作業者への悪影響を少なくすることができる。また、このエンジン1は、発電機2を駆動できる程度の小排気量のものでよく、排気ガスを少なくできるうえに、燃料消費量を少なくしてランニングコストを低減することができる。
【0023】
また、エンジン1の燃料が欠乏して該エンジン1が停止し、バッテリ3に蓄電されていた電力も消費してしまった場合でも、例えば家庭用電源などの外部電源からバッテリ3に充電してモータ4を駆動することができるため、走行不能の状態に陥りにくくすることができる。これに加えて、従来技術のようなエンジンから走行装置への動力伝動機構と、モータから走行装置への動力伝動機構との二系統の動力伝動機構を設けなくてもよく、構成を簡素化できて故障を少なくすることができ、信頼性を高めることができる。
【0024】
更に、発電機2によって発電された電力によって、例えば電動式の動力噴霧器等の電動機器を接続して駆動させることができるため、この作業用車輌を電源車輌として利用することができ、農作業の能率を向上させることができる。
【0025】
請求項2に記載の発明によると、上記請求項1に記載の発明の効果に加え、作業用車輌全体の重心位置を低くして、例えばハウス内の畝の法面などの傾斜地における走行および農作業を安定して行うことができる。
【0026】
請求項3に記載の発明によると、上記請求項2に記載の発明の効果に加え、バッテリ3周辺の通気性を良くしてバッテリ3からの放熱を良好に行なうことができ、また、バッテリ3への水の影響を少なくして、信頼性を更に向上させることができる。
【0027】
請求項4に記載の発明によると、上記請求項2に記載の発明の効果に加え、板体11を開放させてバッテリ3のメンテナンスを容易に行うことができる。
請求項5に記載の発明によると、上記請求項1に記載の発明の効果に加え、モータ4の出力軸7を介して、例えば機械駆動式の動力噴霧器等の作業機を駆動させることができるため、この作業用車輌を動力供給源として利用することができ、農作業の能率を更に向上させることができる。
【0028】
請求項6に記載の発明によると、上記請求項1に記載の発明の効果に加え、モータ4を駆動するバッテリ3が消耗しても、サブバッテリ8によってエンジン1を始動してバッテリ3に充電することができるため、外部電源からの充電が行なえない状態でも、走行不能の状態に陥りにくくすることができる。
【0029】
請求項7に記載の発明によると、上記請求項1に記載の発明の効果に加え、隔壁9によってエンジン1の熱がモータ4に伝わりにくくなり、モータ4の過熱による該モータ4の出力低下や故障を少なくすることができ、信頼性を更に向上させることができる。
【0030】
請求項8に記載の発明によると、上記請求項7に記載の発明の効果に加え、隔壁9を特別に設けなくても、機体構成の一部であるエンジン1搭載用のフレームが隔壁9となって構成が簡素化され、製造コストを低減することができる。
【0031】
請求項9に記載の発明によると、上記請求項8に記載の発明の効果に加え、エンジン1の下側空間にモータ4を配置して、このモータ4のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0032】
請求項10に記載の発明によると、上記請求項1に記載の発明の効果に加え、変速操作具36によってモータ4の駆動速度を変速操作して、作業用車輌の走行速度を任意に変速調節することができるうえに、例えば走行中に危険を察知した場合などに緊急停止操作具35を操作して作業用車輌を緊急停止させることができ、作業走行の安全性を向上させることができる。
【0033】
請求項11に記載の発明によると、上記請求項1に記載の発明の効果に加え、原動部の前側に設けた板体11を荷台として利用し、例えば電動式の動力噴霧器等の電動機器を搭載して走行しながら作業を行なうことができ、また、走行操作具33と変速操作具36と緊急停止操作具35と操向操作具30,31とによって、作業用車輌の走行、停止、変速、緊急停止、操向を自在に操作することができ、作業能率及び安全性を更に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、図面に基づいて、この発明の実施の形態を説明する。
この実施例における作業用車輌は、主に農作業等に利用される歩行操作型の運搬車である。
【0035】
まず、図1に示すように、前後方向に長く形成した縦フレーム10を車体下部の左右両側に設け、該縦フレーム10の前端部から立ち上げた支柱部に、荷台(板体)11の前端下部を枢支軸16によって枢支する。そして、該荷台11の後部を、原動枠(側面視において原動部の前側から上側へ屈曲させて設けたフレーム及び後述する隔壁9等の総称)12側の受枠17上に載置して支持できるように構成する。これにより、荷台11を、前側の枢支軸16を中心にして後側を持ち上げるように回動させて起立させ、該荷台11によって覆われていた部分を露出させることができる。
【0036】
また、前記左右の縦フレーム10の左右外側に、前後方向に所定間隔をおいて複数の転輪18,19,20及び緊張輪21を軸支すると共に、前記原動枠12の下部に装着したミッションケース24から左右に突出した車軸に駆動スプロケット22を取り付ける。そして、前記転輪18,19,20及び駆動スプロケット22にわたってクローラ23を巻き掛けてクローラ式の左右の走行装置5を構成する。尚、前記左右の車軸には、ミッションケース24の外側に配置されるディスクブレーキ式の左右のサイドブレーキを設ける。
【0037】
また、前記ミッションケース24の後側において、原動枠12の下部のフレームの一部である隔壁9の上側にエンジン1を搭載すると共に、該隔壁9の下側に電動モータ(モータ)4を装着する。尚、これらエンジン1及び電動モータ4は、隔壁9の上面部及び下面部に対して、それぞれ防振手段を介して支持してもよい。
【0038】
そして、前記電動モータ4の出力軸7に取り付けたプーリ26とミッションケース24の入力軸28に取り付けたプーリ27とにわたってベルト25を巻き掛けて動力伝達可能に構成する。
【0039】
尚、前記電動モータ4の出力軸に取り付けたプーリ26は、ベルト溝を二つ形成したダブルプーリとし、該プーリ26の内側のベルト溝へ前記ベルト25を巻き掛ける一方、該プーリ26の外側のベルト溝へ別のベルトを巻き掛けられるように構成する。これにより、前記プーリ26から、荷台11上に搭載した動力噴霧器等の機械駆動式の作業機へ、電動モータ4の駆動力を取り出せるようにしている。荷台11上に搭載した作業機のみならず、例えば地面上に載置した作業機を駆動してもよいのは勿論であり、この運搬車を動力供給源として利用できるものである。
【0040】
また、図3及び図4に示すように、前記左右の縦フレーム10の上部間にわたってバッテリ台(バッテリ支持部材)14を載置するようにして取り付ける。このバッテリ台14は左右に二つに仕切った前バッテリ台14aと、前後左右に六つに仕切った後バッテリ台14bとから成り、それぞれの仕切り枠内へ合計8個のバッテリ3を収納するようにしている。また、前バッテリ台14a及び後バッテリ台14bの底面には開口部15を形成して、通気性を確保すると共に、雨水等が溜まらないようにしている。尚、開口部15に網を張設しても良い。また、前記バッテリ台14に収納する8個のバッテリ3は、1個あたりの電圧12Vのもの4個づつをそれぞれ直列に接続して48Vの直列ユニットを2つ形成し、これら直列ユニット2つを並列に繋いで48Vの電圧を出力できるように接続している。
【0041】
図1及び図2に示すように、原動枠12は、立った作業者の腰あたりの高さで後方へ向けてループ状のハンドル杆29を設け、ハンドル杆29前側に取り付けた操作パネル47の上面に操縦操作部13を形成する。該操縦操作部13は、左右に間隔をおいて立設した左右の操縦用サイドクラッチレバー(操向操作具)30,31の間に、エンジン1の回転数を調節するエンジンスロットルレバー32と、走行開始スイッチ(走行操作具)33及び前後進切換スイッチ34を設ける。前記左右の操縦用サイドクラッチレバー30,31は、ミッションケース24内部に設けた左右のサイドクラッチを左右択一的に遮断することにより、操作側の車軸を回転停止させて旋回するためのものである。また、前記ハンドル杆29の左右中央部に緊急停止用押しボタンスイッチ(緊急停止操作具)35を設け、右側にはモータ回転速度調整レバー(変速操作具)36を設けている。このモータ回転速度調整レバー36で走行速度を調整するものである。尚、前記原動枠12の操作パネル47後端部にエンジン始動スイッチ46を設ける。
【0042】
また、前記原動枠12の前側上部に、バッテリ3へ充電するバッテリ充電器37を載置して設ける。該バッテリ充電器37の側面には、家庭用電源等の外部電源からコード接続できる入力ソケット38と、下方に設ける発電調整器40の出力部からコード接続できる入力ソケット39と、直流電力を外部出力できる出力ソケット60を設ける。該出力ソケット60に電動噴霧器等の電動作業機を繋いで使用することができるように構成する。
【0043】
そして、前記原動枠12の操縦操作部13下方における隔壁9上に、エンジン1と発電機2及びエンジン始動用のサブバッテリ8を搭載する。この場合、エンジン1の前側に発電機2を配置し、該発電機2の横側にサブバッテリ8を配置する。また、エンジン1の出力軸に取り付けたプーリ43と発電機2の入力軸に取り付けたプーリ44との間にベルト45を巻き掛けて、エンジン1によって発電機2を駆動して発電する構成とする。更に、前記発電機2の上方における原動枠12の内側に、発電調整器40とモータコントローラ41及び直流電圧変換器42を取り付ける。また、発電調整器40の側面には、前記バッテリ充電器37の入力ソケット39へコード接続できる出力部としての出力ソケット43を設ける。
【0044】
次に、電流の流れとその制御を、図5及び図6のブロック回路図によって説明する。
図5に示す第一実施例では、コントローラ50に対して、その入力側に、走行開始スイッチ33と前後進切換スイッチ34とモータ回転速度調整レバー36の操作量を検出するポテンショメータ36aと緊急停止用押しボタンスイッチ35とバッテリ3とを接続する一方、その出力側に、リレーから成るモータ駆動回路51とエンジン回路55への始動指令出力ラインとを接続する。また、前記バッテリ3から直流/交流変換器54へ接続し、該直流/交流変換器54に、交流電力を外部出力することのできる交流電力外部出力ソケット58を設ける。更に、前記バッテリ3から直流電圧変換器42へ接続し、該直流電圧変換器42から前記サブバッテリ8へ接続して、バッテリ3の48Vの電圧を12Vに下げてサブバッテリ8へ充電できるように構成する。また、該サブバッテリ8からエンジン回路55へ接続して、セルモータを駆動する電力を供給するように構成する。エンジン1本体側の発電機56からも、バッテリ充電器57を介して前記サブバッテリ8へ充電できるように接続する。エンジン始動スイッチ46は前記エンジン回路55へ直接接続する。尚、バッテリ充電器37の入力ソケット39は、発電調整器40側からのコードを接続する200V側の入力ソケットであり、入力ソケット38は、発電調整器38からのコードと外部電源53からのコードとのいずれか一方を接続する100V側の入力ソケットである。また、発電機2から発電調整器40を介してバッテリ充電器37の入力ソケット39へ接続するコードと、外部電源53からバッテリ充電器37の入力ソケット38へ接続するコードとは、それぞれ択一的に接続および離脱操作する構成であるが、両方のコードを両入力ソケット38,39へ共に接続しても支障のないように構成するとよい。
【0045】
以上の構成により、エンジン1で発電機2を駆動し、この発電機2で発電を行なう。この際、エンジン回転数の変動によって発電電力の電圧と電流量と周波数とが変動するが、これらを発電調整器40によって適正範囲に調整してから、バッテリ充電器37によってバッテリ3へ充電する。尚、この発電調整器40は、スイッチ操作によって、100V又は200Vの入力電圧の切換対応が可能である。
【0046】
そして、前記発電調整器40側又は外部電源53側からバッテリ3に充電された電力は、コントローラ50を介してモータ駆動回路51へ出力され、電動モータ4を駆動すると共に一部の電力が電圧変換器42によって12Vに降圧されてエンジン始動用のサブバッテリ8に充電される。さらに、バッテリ3の電力は、直流/交流変換器54を介して交流電力外部出力ソケット58から外部に交流電力を取出し可能である。これにより、交流電力の電源車輌として機能し、交流電力で作動する作業機を接続して駆動することができる。また、バッテリ充電器37の出力ソケット60から外部に直流電力を取り出し可能であり、これにより、直流電力の電源車輌としても機能し、該出力ソケット60に直流電力で作動する電動噴霧器等の電動作業機を繋いで使用することができる。これら出力ソケット58,60までの回路を、この発明の電力取り出し手段と称する。
【0047】
また、前記走行開始スイッチ33を押すと、コントローラ50からモータ駆動回路51へ出力がなされ、電動モータ4に駆動電流が出力されて電動モータ4が始動し、走行を開始する。この電動モータ4の駆動回転方向は、前後進切換スイッチ34の操作によって正逆に切換可能であり、これによって運搬車の走行方向を前進と後進とに切り換えることができる。また、モータ回転速度調整レバー36を操作してポテンショメータ36の値が変化すると、モータ駆動回路51から電動モータ4への出力電流量が変化し、これによって電動モータ4の出力回転数を変速して、運搬車の走行速度を変速操作することができる。また、この走行中において、緊急停止用押しボタンスイッチ35を押すと、モータ駆動回路51のリレーが遮断されて電動モータ4への出力電流がカットされ、電動モータ4が即座に停止する。
【0048】
また、コントローラ50はバッテリ3の電圧を監視しており、エンジン1が停止している状態において、該バッテリ3の電圧が低下したことを検出すると、エンジン回路55にエンジン始動指令を送ってセルモータを回し、エンジン1を始動してバッテリ3に充電を行なう。
【0049】
尚、航続距離を延長するために、前記エンジン1を駆動して発電機2によって発電しながら走行することもでき、これをエクステンダ・ハイブリッド式という。
図6に示す第二実施例において、図5の第一実施例と異なる点は、発電調整器40及び外部電源53からバッテリ充電器37への充電電力の供給方法を、コードの差し替えによる構成からスイッチSによる簡易切換式に変更した点と、コントローラ50からエンジン回路55への、バッテリ3の電圧低下に基づいたエンジン始動指令信号を伝える回路を省略した点にある。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】運搬車の全体側面図。
【図2】運搬車の全体平面図。
【図3】運搬車の荷台を開放した状態の平面図。
【図4】運搬車の一部を破断して示す説明用の平面図。
【図5】第一実施例のブロック回路図。
【図6】第二実施例のブロック回路図。
【符号の説明】
【0051】
1 エンジン
2 発電機
3 バッテリ
4 電動モータ(モータ)
5 走行装置
7 出力軸
8 サブバッテリ
9 隔壁
11 板体
14 バッテリ支持部材
15 開口部
30 右操縦用サイドクラッチレバー(操向操作具)
31 左操縦用サイドクラッチレバー(操向操作具)
33 走行開始スイッチ(走行操作具)
35 緊急停止用押しボタンスイッチ(緊急停止操作具)
36 モータ回転速度調整レバー(変速操作具)
47 操作パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(1)によって駆動される発電機(2)と、
該発電機(2)によって発電された電力を蓄電することのできるバッテリ(3)と、
前記エンジン(1)を停止させた状態でも、該バッテリ(3)の電力によってモータ(4)を駆動して走行装置(5)を駆動することのできる走行駆動手段と、
前記発電機(2)によって発電された電力と外部電源から供給される電力とを前記バッテリ(3)に選択的に充電することのできる充電手段と、
前記発電機(2)によって発電された電力を外部へ取り出して電動作業機等の電動機器を駆動することのできる電力取り出し手段とを設けたことを特徴とする作業用車輌。
【請求項2】
前記バッテリ(3)の一部ないし全部を、左右の走行装置(5)の間に入り込ませて配置したことを特徴とする請求項1に記載の作業用車輌。
【請求項3】
前記バッテリ(3)を支持するバッテリ支持部材(14)の底部に、下方へ開口する開口部(15)を形成したことを特徴とする請求項2に記載の作業用車輌。
【請求項4】
前記バッテリ(3)の上側に開閉自在の板体(11)を設け、該板体(11)を開放することによってバッテリ(3)の少なくとも上部が露出するように構成したことを特徴とする請求項2に記載の作業用車輌。
【請求項5】
前記モータ(4)の出力軸(7)を介して作業機駆動用の駆動力を取り出すことができるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の作業用車輌。
【請求項6】
前記モータ(4)を駆動するバッテリ(3)とは別に、エンジン(1)始動用のサブバッテリ(8)を設けたことを特徴とする請求項1に記載の作業用車輌。
【請求項7】
前記エンジン(1)とモータ(4)とを隔壁(9)で仕切って配置したことを特徴とする請求項1に記載の作業用車輌。
【請求項8】
前記隔壁(9)を、エンジン(1)を搭載するフレームによって構成したことを特徴とする請求項7に記載の作業用車輌。
【請求項9】
前記エンジン(1)を搭載するフレームの下側に、前記モータ(4)を配置したことを特徴とする請求項8に記載の作業用車輌。
【請求項10】
前記モータ(4)の駆動速度を変速操作することのできる変速操作具(36)と、該モータ(4)を駆動して走行している状態において該モータ(4)を緊急停止させることのできる緊急停止操作具(35)とを設けたことを特徴とする請求項1に記載の作業用車輌。
【請求項11】
車体の下部に左右のクローラ式の走行装置(5)を設け、該左右の走行装置(5)の上側に荷台としての板体(11)を設け、該板体(11)の後側にエンジン(1)と発電機(2)とモータ(4)とを有する原動部を設け、該原動部の上側に操作パネル(47)を設けて、該操作パネル(47)及びその周辺に、前記モータ(4)を始動及び停止操作することのできる走行操作具(33)と、該モータ(4)の駆動速度を変速操作することのできる変速操作具(36)と、前記走行操作具(33)を始動操作してモータ(4)を駆動して走行している状態において該モータ(4)を緊急停止させることのできる緊急停止操作具(35)と、前記左右の走行装置(5)の駆動速度に差を有さしめて車体の走行方向を左右に調節することのできる操向操作具(30,31)とを配置したことを特徴とする請求項1に記載の作業用車輌。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−30683(P2008−30683A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−208280(P2006−208280)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(504147254)国立大学法人愛媛大学 (214)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】