光コネクタ及び光コネクタの製造方法
【課題】光コネクタ10の組立作業に於いて、光ファイバ100の位置決めを容易に行うこと。
【解決手段】光コネクタ10の製造方法は、光信号が伝播する導波路層112に、レンズ部113と、前記レンズ部113の焦線Fに光ファイバ100の端部をガイドするガイド溝114と、を形成する工程と、前記光ファイバ100の端部が前記レンズ部113の焦線Fに位置するように、前記ガイド溝114に前記光ファイバ100を挿入する工程と、を備える。
【解決手段】光コネクタ10の製造方法は、光信号が伝播する導波路層112に、レンズ部113と、前記レンズ部113の焦線Fに光ファイバ100の端部をガイドするガイド溝114と、を形成する工程と、前記光ファイバ100の端部が前記レンズ部113の焦線Fに位置するように、前記ガイド溝114に前記光ファイバ100を挿入する工程と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の技術は、光コネクタ及び光コネクタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スーパーコンピュータやサーバなどの計算装置に於いて、例えば異なるボードに搭載されたCPUなどの電子部品間を光学的に接続する光配線技術が採用されることがある。
【0003】
光配線技術では、CPUなどの電子部品から出力された電気信号を、各ボードに搭載された光デバイスにより光信号に変換して、他のボードに伝送する。そして、他のボードから伝送された光信号を、各ボードに搭載された光デバイスにより電気信号に変換して、CPUなどの電子部品に入力する。異なるボードに搭載された光デバイス間は、伝送媒体である光ファイバにより接続され、ボード間の光信号伝送が実現される。
【0004】
ところで、スーパーコンピュータやサーバなどの計算装置では、システム拡張又はシステム保全の利便性の観点から、各ボードを、バックプレーンとしてのベース基板に着脱可能に装着することがある。このため、異なるボードに搭載された光デバイスそれぞれに光ファイバを接続して、これらの光ファイバを、ベース基板及び各ボードに設けられた光コネクタにより相互に着脱可能に接続することがある。光コネクタの種類としては、例えば光ファイバの端部から出射した拡散光をレンズにより平行光として、相手の光コネクタに伝送する、所謂レンズ型コネクタがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−216905号公報
【特許文献2】特開2003−322761号公報
【特許文献3】特開2005−309259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レンズ型コネクタでは、光ファイバの先端を、レンズの焦点又はその近傍に配置する必要がある。光ファイバの先端がレンズの焦点又はその近傍からずれていると、光信号の伝送効率が低下するからである。しかし、光ファイバは、非常に細径であるため、光ファイバの先端をレンズの焦点又はその近傍に正確に配置することは難しく、このことが製造コストの低減を妨げている。
【0007】
開示の技術は、光コネクタの組立作業に於いて、光ファイバの位置決めを容易に行うことができる光コネクタ及び光コネクタの製造方法。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示の技術の一観点によれば、光信号が伝播する導波路に、レンズと、前記レンズの焦点に光ファイバの端部をガイドする溝と、を形成する工程と、前記光ファイバの端部が前記レンズの焦点に位置するように、前記溝に前記光ファイバを挿入する工程と、を備える光コネクタの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
開示の技術によれば、光コネクタの組立作業に於いて、光ファイバの位置決めを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態にかかる計算装置の概略図である。
【図2】第1の実施形態にかかる第1、第2、第3のテープファイバの概略図である。
【図3】第1の実施形態にかかる第1の光コネクタの概略図である。
【図4】第1の実施形態にかかるファイバ保持レンズアレイの概略図である。
【図5】第1の実施形態にかかるレンズ部及びガイド溝の概略図である。
【図6】第1の実施形態にかかる第3の光コネクタの概略図である。
【図7】第1の実施形態にかかる第1、第3の光コネクタの接続状態の概略図である。
【図8】第1の実施形態にかかる第1、第3の光コネクタの光ファイバ同士の光学的結合の様子を説明する説明図である。
【図9】第1の実施形態にかかるファイバ保持レンズアレイの製造工程の説明図である。
【図10】第1の実施形態にかかるファイバ保持レンズアレイの製造工程の説明図である。
【図11】第1の実施形態にかかるファイバ保持レンズアレイの製造工程の説明図である。
【図12】第1の実施形態にかかるファイバ保持レンズアレイの製造工程の説明図である。
【図13】第1の実施形態にかかるファイバ保持レンズアレイの製造工程の説明図である。
【図14】第1の実施形態にかかる第1の光コネクタの組立工程の説明図である。
【図15】第1の実施形態にかかる第1の光コネクタの組立工程の説明図である。
【図16】第1の実施形態にかかる第1の光コネクタの組立工程の説明図である。
【図17】第1の実施形態にかかる第1の光コネクタの組立工程の説明図である。
【図18】第1の実施形態にかかる第1の光コネクタの組立工程の説明図である。
【図19】第1の実施形態にかかる第3の光コネクタの未接続状態及び既接続状態の概略図である。
【図20】第1の実施形態の変形例にかかる第1、第3の光コネクタの接続状態の概略図である。
【図21】第2の実施形態にかかる第1の光コネクタの概略図である。
【図22】第2の実施形態にかかる第3の光コネクタの概略図である。
【図23】第3の実施形態にかかる計算装置の概略図である。
【図24】第3の実施形態の変形例にかかる計算装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施形態]
図1−図20を参照しながら、第1の実施形態を説明する。
[計算装置の構成]
図1は、第1の実施形態にかかる計算装置の概略図である。
【0012】
図1に示すように、第1の実施形態にかかる計算装置は、第1のボード1と、第2のボード2と、バックプレーンとしてのベース基板3と、を備える。
【0013】
第1のボード1は、ベース基板3に着脱可能に装着され、第1のボード1の実装表面には、例えばCPU1a、メモリユニット1b、及び光デバイス1cなどの電子部品が搭載されている。
【0014】
CPU1aは、メモリユニット1b及び光デバイス1cに、それぞれ電気配線1d、1eにより電気的に接続されている。電気配線1d、1eは、特に限定されるものではないが、本実施形態では、例えばバスを使用している。光デバイス1cは、電気信号及び光信号を相互に変換する機能を備え、光信号の入出力側には、第1のテープファイバT1が接続されている。第1のテープファイバT1は、光信号を伝送するための光ケーブルであって、第1のテープファイバT1の先端に接続されるコネクタ本体11と共に、第1の光コネクタ10を構成している。
【0015】
第2のボード2は、ベース基板3に着脱可能に装着され、第2のボード2の実装表面には、例えばCPU2a、メモリユニット2b、及び光デバイス2cなどの電子部品が搭載されている。
【0016】
CPU2aは、メモリユニット2b及び光デバイス2cに、それぞれ電気配線2d、2eにより電気的に接続されている。電気配線2d、2eは、特に限定されるものではないが、本実施形態では、例えばバスを使用している。光デバイス2cは、電気信号及び光信号を相互に変換する機能を備え、光信号の入出力側には、第2のテープファイバT2が接続されている。第2のテープファイバT2は、光信号を伝送するための光ケーブルであって、第2のテープファイバT2の先端に接続されるコネクタ本体21と共に、第2の光コネクタ20を構成している。
【0017】
ベース基板3は、計算装置の筺体(図示しない)に固定され、ベース基板3の実装表面には、第3のテープファイバT3が取り付けられている。第3のテープファイバT3は、光信号を伝送するための光ケーブルであって、第3のテープファイバT3の両端に接続されたコネクタ本体31、41と共に、それぞれ第3、第4の光コネクタ30、40を構成している。
【0018】
以上のような計算装置に於いて、第1の光コネクタ10のコネクタ本体11は、第3の光コネクタ30のコネクタ本体31に着脱可能に接続され、第2の光コネクタ20のコネクタ本体21は、第4の光コネクタ40のコネクタ本体41に着脱可能に接続される。こうして、第1のボード1に搭載された光デバイス1c及び第2のボード2に搭載された光デバイス2cは、第1、第2、第3、第4の光コネクタ10、20、30、40により光学的に接続される。
[第1、第2、第3のテープファイバT1、T2、T3の構成]
図2は、第1の実施形態にかかる第1、第2、第3のテープファイバT1、T2、T3の概略的構成を示していて、(a)は第1、第2、第3のテープファイバT1、T2、T3の平面図、(b)は(a)のb−b線に於ける断面図である。
【0019】
図2に示すように、第1、第2、第3のテープファイバT1、T2、T3は、複数の光ファイバ100と、複数の光ファイバ100を被覆するテープ状の被膜110と、を備える。光ファイバ100は、被膜110の幅方向に所定間隔で配列されている。光ファイバ100のピッチ間隔は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、約250μmとしている。光ファイバ100の先端部100aは、被膜110から露出していて、第1、第2、第3、第4の光コネクタ10、20、30、40のコネクタ本体11、21、31、41の何れかに接続されている。本実施形態では、光ファイバ100の本数を4本としているが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば、1本、2本、3本、もしくは5本以上としても良い。
【0020】
光ファイバ100は、光信号が伝搬するコア101と、コア101を被覆して、コア101を伝搬する光信号を全反射させるクラッド102と、を備える。コア101の材料としては、例えば石英ガラスを用いても良い。コア101の外径は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、約50μmとしている。クラッド102の材料としては、コア101よりも屈折率が約2%〜5%だけ低い材料、例えばフッ素系のポリマーを用いても良い。クラッド102の厚さは、特に限定されるものではないが、本実施形態では、約37.5μmとしている。光ファイバ100の最小曲率半径は、ファイバスペックに依存するものであるが、例えばマルチモードファイバであれば、7.5mmRもしくは15mmRとされる。
[第1、第2の光コネクタ10、20の構成]
以下の説明では、図中のX方向及びY方向を、それぞれ横方向及び縦方向、図中のZ方向を上下方向と定義する。なお、第1、第2の光コネクタ10、20は、同等の構成を有しているので、第1の光コネクタ10の構成のみを説明する。
<第1の光コネクタ10>
図3は、第1の実施形態にかかる第1の光コネクタ10の概略的構成を示していて、(a)は第1の光コネクタ10の断面図、(b)は(a)のb−b線に於ける断面図である。
【0021】
図3に示すように、第1の光コネクタ10のコネクタ本体11は、ファイバ保持レンズアレイ110と、ファイバ保持レンズアレイ110を支持する支持部材120と、ファイバ保持レンズアレイ110の上面に配置される蓋板130と、蓋板130の上側に配置される板バネ140と、ファイバ保持レンズアレイ110、支持部材120、蓋板130、及び板バネ140を収容するハウジング150と、を備える。
(ファイバ保持レンズアレイ110)
ファイバ保持レンズアレイ110は、支持部材120に接着剤により接着される基板111と、基板111の上面に形成される導波路層112と、を備える。
【0022】
基板111は、平面視で長方形状に形成され、基板111の下面には、2つのV溝111vが形成されている。V溝111vは、相互に平行に延在していて、ファイバ保持レンズアレイ110の縦方向(Y方向)に於ける双方の端面、即ち第1の端面110a及び第2の端面110bに到達している。V溝111vの内面は、基板111の下面を基準として、約54.7度の角度で傾斜していて、それぞれに支持部材120のレール部122が線接触している。基板111の材料は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、単結晶シリコンを用いている。単結晶シリコンの表面は、結晶方位が<100>であるものとする。基板111の厚さは、特に限定されるものではないが、本実施形態では、約2mm〜10mmとしている。
【0023】
導波路層112は、光信号の伝搬路として機能するものであり、基板111の縦方向(Y方向)の全体に形成されている。導波路層112の詳細については、ファイバ保持レンズアレイ110の詳細とともに、後述することとする。
(支持部材120)
支持部材120は、ベース部121と、ベース部121の上面に配置される2本のレール部122と、を有する。
【0024】
ベース部121は、平面視で長方形状に形成され、ハウジング150の底面に、例えば接着剤により固定されている。ベース部121の寸法及び材料は、特に限定されるものではない。
【0025】
レール部122は、基板111のV溝111vと同等の間隔で配置され、支持部材120の縦方向(Y方向)に延在している。各レール部122は、半円柱状に形成され、基板111のV溝111vの内面に線接触している。レール部122の材質は、特に限定されるものではないが、例えば金属もしくは樹脂を用いても良い。
【0026】
以上のような支持部材120は、ハウジング150の外部まで延在していて、第1、第3の光コネクタ10、30を接続するときに、第3のコネクタ30のコネクタ本体31のハウジング350内に挿入される。
(蓋板130)
蓋板130は、導波路層112の上面に、例えば接着剤により固定され、導波路層112に形成されたガイド溝114内の光ファイバ100を被覆している。蓋板130は、平面視で長方形状に形成され、蓋板130の下面には、複数の逃がし溝131が形成されている。逃がし溝131は、相互に平行に延在して、蓋板130の横方向(X方向)に於ける双方の端面に到達している。従って、例えばガイド溝114に注入された、後述する接着剤116に余分が生じても、当該接着剤116は、蓋板130に形成された逃がし溝131内を流動して、蓋板130の外部に排出される。
(板バネ140)
板バネ140は、蓋板130を下方に加圧している。このため、ファイバ保持レンズアレイ110は、蓋板130により、支持部材120に押圧され、ファイバ保持レンズアレイ110のV溝111vの内面を支持部材120のレール部122に線接触させる。板バネ140の材料は、特に限定されるものではなく、例えば金属もしくは樹脂を用いても良い。本実施形態では、板バネ140は、ハウジング150と別体としているが、ハウジング150と一体としても良い。
(ハウジング150)
ハウジング150は、ハウジング本体151と、掛合部152と、を備える。
【0027】
ハウジング本体151は、矩形箱状に形成され、ファイバ保持レンズアレイ110を包囲する枠壁151aと、第1のテープファイバT1を接続する後壁151bと、を有する。後壁151bは、枠壁151aの片側の開口を閉塞していて、後壁151bの中央には、第1のテープファイバT1を挿入するための挿入穴151hが形成されている。
【0028】
掛合部152は、ハウジング本体151の枠壁151aに於ける、後壁151bとは逆側の端部に連結されている。掛合部152は、ハウジング本体151よりも剛性が低く、所定位置には、突起部152aが形成されている。突起部152aは、第1、第3の光コネクタ10、30を接続するときに、第3の光コネクタ30のコネクタ本体31のハウジング350に形成された窪部352aに掛合して、第1、第3の光コネクタ10、30の接続が解除されることを防止する。
【0029】
ハウジング150は、例えば射出成型により一体的に形成されている。ハウジング150と共に、支持部材120及び板バネ140を一体的に形成しても良い。ハウジング本体151の材料は、特に限定されるものではないが、例えばPBT(Poly Butylene Terephthalate)樹脂、LCP(Liquid Crystal Plastic)樹脂、PPS(Poly Phenylene Sulfide)樹脂などの樹脂材料を用いても良い。
[ファイバ保持レンズアレイ110の詳細構造]
図4は、第1の実施形態にかかるファイバ保持レンズアレイ110の概略的構成を示していて、(a)はファイバ保持レンズアレイ110の平面図、(b)は(a)のb−b線に於ける断面図、(c)は(a)のc−c線に於ける断面図である。
【0030】
図5は、第1の実施形態にかかるレンズ部113及びガイド溝114の概略的構成を示していて、(a)はレンズ部113及びガイド溝114の平面図、(b)は(a)のb−b線に於ける断面図、(c)は(a)のc−c線に於ける断面図、(d)は(a)のd−d線に於ける断面図である。
【0031】
図4、図5に示すように、導波路層112は、基板111の上面に形成される第1のクラッド層112aと、第1のクラッド層112aの上面に形成されるコア層112bと、コア層112bの上面に形成される第2のクラッド層112cと、を備える。
【0032】
コア層112bは、光信号が伝播する透明材料で形成されている。コア層112bの材料は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、感光性ポリイミド樹脂を用いている。感光性ポリイミド樹脂の屈折率は、例えばドーパントのドープ量により、約1.463〜1.467に調整されている。ドーパントは、特に限定されるものではないが、感光性ポリイミド樹脂よりも屈折率が低い材料が用いられる。コア層112bの厚さは、特に限定されるものではないが、本実施形態では、第1のテープファイバT1の光ファイバ100のコア101の直径と同等、即ち約50μmとしている。
【0033】
第1、第2のクラッド層112a、112cは、コア層112bを上下から挟み込んでいる。第1、第2のクラッド層112a、112cの屈折率は、コア層112bの屈折率よりも小さく、本実施形態では、約1.45〜1.46に設定されている。このため、コア層112bに入射した光信号は、第1、第2のクラッド層112a、112cで全反射しながら、コア層112b内を伝播することになる。第1、第2のクラッド層112a、112cの厚さは、特に限定されるものではないが、本実施形態では、光ファイバ100のクラッド102の厚さと同等、即ち約37.5μmとしている。第1、第2のクラッド層112a、112cの材料は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、コア層112bと同等の材料、即ち感光性ポリイミド樹脂を用いている。しかし、コア層112bよりも屈折率を低くするために、第1、第2のクラッド層112a、112cの感光性ポリイミド樹脂には、コア層112bより多くのドーパントがドープされている。
【0034】
以上のような導波路層112は、ファイバ保持レンズアレイ110の第2の端面110bの近傍位置に、複数のレンズ部113を有している。レンズ部113は、導波路層112の横方向(X方向)に所定間隔で配列されている。導波路層112の横方向(X方向)に於けるレンズ部113のピッチ間隔は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、第1のテープファイバT1内に於ける光ファイバ100のピッチ間隔より大きく、約600μmに設定している。導波路層112のY方向に於けるレンズ部113の位置は、導波路層112の横方向(X方向)の中心から離間するほど、ファイバ保持レンズアレイ110の第2の端面110bから離間している。導波路層112の横方向(X方向)に於ける、それぞれのレンズ部113の寸法は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、光ファイバ100の直径より大きく、約400μmとしている。
【0035】
レンズ部113は、導波路層112に形成されたレンズ穴113Hの内面をレンズ面113Rとする円筒レンズであって、ファイバ保持レンズアレイ110の第1の端面110a側に、ファイバ保持レンズアレイ110の上下方向(Z方向)に延在する焦線Fを備える。従って、レンズ面113は、該レンズ面113の焦線Fの位置から出射した拡散光を、少なくとも導波路層112の横方向(X方向)にコリメートする。レンズ面113Rの曲率半径は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、約550μmとしている。
【0036】
レンズ穴113Hは、導波路層112、即ち第1のクラッド層112a、コア層112b、及び第2のクラッド層112cを貫通して、基板111の上面に到達している。本実施形態では、レンズ穴113Hを中空のままとしているが、例えばレンズ穴113Hに樹脂材料を充填しても良い。樹脂材料は、少なくとも光信号が透過することができれば、特に限定されるものではないが、例えばアクリル系、エポキシ系などの樹脂材料を用いても良い。
【0037】
さらに、導波路層112は、光ファイバ100をレンズ部113にガイドする複数のガイド溝114を有している。複数のガイド溝114は、ファイバ保持レンズアレイ110の第1の端面110a付近に於いて、光ファイバ100をガイド溝114に導入する導入溝115に連結されている。導入溝115は、ハウジング本体151の後壁151bに形成された挿入穴151hに対応する位置に配置され、ファイバ保持レンズアレイ110の第1の端面110aに到達している。
【0038】
ガイド溝114のピッチ間隔は、レンズ部113に接近するにつれて、徐々に拡大していて、導入溝115付近では、テープファイバT1内に於ける光ファイバ100のピッチ間隔と同等、即ち約250μm、レンズ部113付近では、レンズ部113のピッチ間隔と同等、即ち約600μmに設定されている。
【0039】
即ち、複数のガイド溝114は、導入溝115からレンズ部113に接近するにつれて、徐々にピッチ間隔が広げながら、それぞれに対応するレンズ部113のレンズ面113Rに接近している。
【0040】
隣り合うガイド溝114間に位置する導波路層112は、それぞれのガイド溝114を隔離する隔壁112Iとして機能している。それぞれの隔壁112Iは、導入溝115に挿入される光ファイバ100の隙間に対応する位置に配置され、導入溝115に接近するほど肉薄となるように形成されている。このため、導入溝115に挿入された光ファイバ100を押し進めると、それぞれの光ファイバ100は、隔壁112Iにより隔離されて、それぞれに対応するガイド溝114内に挿入される。
【0041】
以上のようなガイド溝114及び導入溝115は、レンズ穴113Hと同様に、導波路層112、即ち第1のクラッド層112a、コア層112b、及び第2のクラッド層112cを貫通していて、基板111の表面に到達している。
【0042】
ガイド溝114は、断面視で長方形状に形成され、光ファイバ100の先端をレンズ部113のレンズ面113Rにガイドする側壁114aと、光ファイバ100の先端を突き当てる端壁114bと、を有している。
【0043】
ガイド溝114の側壁114aは、なだらかな曲面状に形成され、導入溝115から端壁114bまで連続している。ガイド溝114の端壁114bは、レンズ面113Rの焦線Fを包含していて、さらに、レンズ面113Rの中心線C及び焦線Fの双方を包含する平面Pに直交している。レンズ面113Rの中心線C及びガイド溝114の端壁114bの距離は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、約1500μmとしている。
【0044】
ガイド溝114の幅は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、光ファイバ100の直径よりも大きく、約200μmに設定されている。導波路層112のコア層112bの厚さは、光ファイバ100のコア101の直径と同等、即ち約50μm、導波路層112のクラッド層112a、112cの厚さは、光ファイバ100のクラッド102の厚さと同等、即ち約37.5μmである。このため、ガイド溝114に配置された光ファイバ100のコア101は、導波路層112のコア層112bに対向している。
【0045】
ガイド溝112に配置された光ファイバ100は、それぞれ接着剤116により固定されている。接着剤116は、光信号の伝播を阻害するものでなければ、特に限定されるものではないが、本実施形態では、例えばアクリル系又はエポキシ系の透明樹脂を用いている。
[第3、第4の光コネクタ30、40の構成]
以下の説明では、図中のX方向及びY方向を、それぞれ横方向及び縦方向、図中のZ方向を上下方向と定義する。なお、第3、第4の光コネクタ30、40は、同等の構成を有しているので、第3の光コネクタ30の構成のみを説明する。
<第3の光コネクタ30>
図6は、第1の実施形態にかかる第3の光コネクタ30の概略的構成を示していて、(a)は第3の光コネクタ30の断面図、(b)は(a)のb−b線に於ける断面図である。
【0046】
図6に示すように、第3の光コネクタ30は、支持部材320及びハウジング350を除き、第1の光コネクタ10と同等の構成、例えばファイバ保持レンズアレイ110、蓋板130、板バネ140を有している。従って、ここでは、第1の光コネクタ10とは異なる支持部材320及びハウジング350の構成だけを説明する。第3の光コネクタ30の説明に於いて、第1の光コネクタ10と同等の構成については、同様の符号を付すこととする。
(支持部材320)
支持部材320は、ハウジング350の縦方向(Y方向)に延在する帯板であって、それぞれ第1の光コネクタ10の支持部材120の横方向(X方向)に於ける外側に配置されている。このため、第1の光コネクタ10の支持部材120が第2の光コネクタ30のハウジング350に挿入されるときに、第3の光コネクタ30の支持部材320が第1の光コネクタ10の支持部材120に干渉することがない。支持部材320は、少なくとも第1の光コネクタ10の支持部材120より低い。又、ファイバ保持レンズアレイ110は、第1の光コネクタ10のファイバ保持レンズアレイ110とは異なり、支持部材320に接着されていない。即ち、ファイバ保持レンズアレイ110は、ハウジング350内に於いて、少なくとも上下方向(Z方向)に移動可能に支持されている。
(ハウジング350)
ハウジング350は、ハウジング本体351と、掛合部352と、を備える。
【0047】
ハウジング本体351は、矩形箱状に形成され、ファイバ保持レンズアレイ110を包囲する枠壁351aと、第3のテープファイバT3を接続する後壁351bと、を有する。後壁351bは、枠壁351aの片側の開口を閉塞していて、後壁351bの中央には、第3のテープファイバT3を挿入するための挿入穴151hが形成されている。
【0048】
掛合部352は、ハウジング本体351の枠壁351aの内面に形成され、第1の光コネクタ10のハウジング150の突起部152aに対応する位置に、窪部352aを備える。窪部352aは、第1の光コネクタ10のハウジング150の突起部152aと掛合して、第1、第3の光コネクタ10、30の接続が解除されることを防止する。
[第1、第3の光コネクタ10、30の接続状態]
図7は、第1の実施形態にかかる第1、第3の光コネクタ10、30の接続状態の概略図である。図8は、第1の実施形態にかかる第1、第3の光コネクタ10、30の光ファイバ100同士の光学的結合の様子を説明する説明図である。
【0049】
図7、図8に示すように、第1、第3の光コネクタ10、30のコネクタ本体11、31を接続すると、それぞれの導波路層112が突き当たり、第1、第3のテープファイバT1、T3の光ファイバ100が向かい合うことになる。このため、第1のテープファイバT1の光ファイバ100の先端から光信号が出射すると、該光信号は、図中に破線L1で示すように、拡散光として導波路層112を伝播して、第1の光コネクタ10のレンズ部113に到達する。第1の光コネクタ10のレンズ部113に到達した光信号は、該レンズ部113により平行光とされ、図中に破線L2で示すように、第1、第3の光コネクタ10、30双方の導波路層112を伝播して、第3の光コネクタ30のレンズ部113に到達する。第3の光コネクタ30のレンズ部113に到達した光信号は、該レンズ部113により収束光とされ、図中に破線L3で示すように、導波路層112を伝播して、第3のテープファイバT3の光ファイバ100の先端に入射する。
[ファイバ保持レンズアレイ110の製造工程]
図9−図13は、第1の実施形態にかかるファイバ保持レンズアレイ110の製造工程を示していて、(a)はファイバ保持レンズアレイ110の平面図、(b)は(a)のb−b線に於ける断面図である。但し、図9、図10のb−b線は、図11−図13のb−b線と直交している。
【0050】
先ず、図9に示すように、例えば単結晶シリコン基板などの基板111を準備する。基板111の表面は、結晶方位が<100>であるものとする。続いて、基板111の表面に、レジストパターンRを形成する。レジストパターンRの材料としては、例えば感光性樹脂が用いられる。レジストパターンRは、V溝111vに対応する開口Roを有していて、開口Roからは、基板111の表面が部分的に露出している。レジストパターンRの製造方法は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、フォトリソグラフィーを使用する。なお、本実施形態では、基板111の表面にのみ、レジストパターンRを形成しているが、例えば基板111の裏面にもレジストパターンを形成しても良い。基板111の裏面にレジストパターンを形成すれば、基板111の裏面にエッチング液(後述する)が付着しても、基板111の裏面がエッチングされることがない。即ち、基板111の厚さが低減することがない。
【0051】
次に、図10に示すように、レジストパターンRをマスクとして、基板111の表面をウェットエッチングする。エッチング液としては、特に限定されるものではないが、例えば水酸化カリウム(KOH)などの強アルカリ水溶液を使用する。基板111の表面は、結晶方位が<100>であるため、レジストパターンRをマスクとして、基板111をウェットエッチングすると、基板111の表面に於ける、レジストパターンRの開口Roに対応する領域に、基板111の表面を基準として、約54.7度で傾斜するV溝111vが形成される。基板111にV溝111vが形成されたら、例えば薬液を供給して、レジストパターンRを剥離する。薬液の種類は、レジストパターンRの材料に応じて決定すれば良い。
【0052】
本実施形態では、基板111の表面にレジストパターンRを形成し、該レジストパターンRをマスクとして、基板111の表面をウェットエッチングしている。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、基板111として、熱酸化シリコン基板を採用する場合、基板111の熱酸化膜(SiO2膜)をパターニングし、これをマスクとして、基板111の表面をウェットエッチングしても良い。熱酸化膜のパターニングは、特に限定されるものではないが、例えば熱酸化膜の表面にレジストパターンを形成して、該レジストパターンをマスクとして、熱酸化膜をパターニングしても良い。熱酸化膜の厚さは、例えば0.5μmとする。熱酸化シリコン基板は、表面及び裏面に熱酸化膜を有しているため、基板111の裏面にエッチング液が付着しても、基板111の裏面がエッチングされることがない。
【0053】
次に、図11に示すように、基板111の裏面に、第1のクラッド層112a、コア層112b、及び第2のクラッド層112cを順次積層して、導波路層112を形成する。導波路層112の形成方法は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、第1のクラッド層112a、コア層112b、及び第2のクラッド層112cごとに、未硬化の感光性エポキシ樹脂の塗布と、感光性エポキシ樹脂の加熱による硬化と、を実施する。
【0054】
次に、図12に示すように、露光マスクMを用いて、導波路層112、即ち第1のクラッド層112a、コア層112b、及び第2のクラッド層112cを露光する。露光マスクMは、例えばガラス基板の表面に成膜された例えば金属製の遮光膜(図示しない)に、レンズ部113及びガイド溝114に対応するマスク開口Moを形成したものである。このため、露光マスクMによる露光を実施すると、第1のクラッド層112a、コア層112b、及び第2のクラッド層112cに、レンズ部113及びガイド溝114に対応する露光パターン領域Rpが形成される。
【0055】
次に、図13に示すように、現像液を供給して、第1のクラッド層112a、コア層112b、及び第2のクラッド層112cに形成された露光パターン領域Rpを除去する。これにより、導波路層112に、基板111の表面に到達するレンズ部113及びガイド溝114が形成される。こうして、ファイバ保持レンズアレイ110が製造される。
【0056】
なお、ここで使用する露光マスクMは、レンズ部113及びガイド溝114に対応するマスク開口Moを有しているが、本実施形態は、これに限定されるものではない。例えば、露光マスクMは、レンズ部113及びガイド溝114の反転領域に対応するマスク開口を有していても良い。この場合、導波路層112、即ち第1のクラッド層112a、コア層112b、及び第2のクラッド層112cに於ける、未露光パターン領域を除去することになる。
[第1の光コネクタ10の組立工程]
図14−図18は、第1の実施形態にかかる第1の光コネクタ10の組立工程の説明図である。
【0057】
先ず、前準備として、第1のテープファイバT1の被膜110から複数の光ファイバ100の先端部100aを露出させ、例えばファイバカッタにより光ファイバ100の長さを揃える。又、ファイバ保持レンズアレイ110の導波路層112の上面に、例えば接着剤により蓋板130を取り付ける。但し、図14−図18では、図面の明瞭化のため、蓋板130を省略している。
【0058】
次に、図14に示すように、ハウジング150内にファイバ保持レンズアレイ110を挿入して、ファイバ保持レンズアレイ110の第1の端面110aをハウジング150の後壁151bに突き当てる。続いて、ハウジング150の挿入穴151hから導波路層112の導入穴115に、第1のテープファイバT1の光ファイバ100をまとめて挿入する。
【0059】
次に、図15に示すように、導入穴115に挿入された光ファイバ100を押し進める。これにより、光ファイバ100の先端は、導波路層112に形成された隔壁112Iにより隔離されて、それぞれに対応するガイド溝114に挿入される。
【0060】
次に、図16に示すように、ガイド溝114に挿入された光ファイバ100を、さらに押し進める。これにより、光ファイバ100の先端は、ガイド溝114の側壁114aにガイドされながら、それぞれのガイド溝114に対応するレンズ部113に接近する。このとき、側壁114aは、なだらかな曲面状に形成されているため、光ファイバ100の先端は、図17に示すように、側壁114aを滑りながら、ガイド溝114内を進んでいく。ガイド溝114内を進行する光ファイバ100は、ファイバ保持レンズアレイ110の上面に取り付けられた蓋板130によってもガイドされるため、光ファイバ100がガイド溝114の上方に離脱することもない。
【0061】
次に、図18に示すように、光ファイバ100を、さらに押し進める。これにより、それぞれの光ファイバ100の先端は、ガイド溝114の端壁114bに突き当たる。ガイド溝114の端壁114bは、それぞれに対応するレンズ部113の焦線Fに位置している。このため、光ファイバ100の先端がガイド溝114の端壁114bに突き当たると、光ファイバ100の先端は、レンズ部113の焦線Fに位置決めされる。なお、ガイド溝114の幅寸法は、光ファイバ100の直径よりも大きいが、光ファイバ100は、自身の真っ直ぐになろうとする性質により、ガイド溝114の側壁114aに押圧されるので、ガイド溝114の内部で移動することはない。
【0062】
次に、光ファイバ100が挿入されているガイド溝114に、例えばアクリル系もしくはエポキシ系の透明樹脂からなる接着剤116を注入して、それぞれの光ファイバ100をガイド溝114内で固定する。このとき、接着剤116は、光ファイバ100の先端及びガイド溝113の端壁114b間の隙間を充填する。このため、光ファイバ100の先端をファイバカッタで切断するときに、光ファイバ100の切断面の表面粗さが大きくなっても、光ファイバ100の切断面に於ける散乱を抑制することができる。即ち、接着剤116を塗布することで、光ファイバ100の切断面の研磨を省略することができる。接着剤116に余分が発生したら、該接着剤116は、蓋板130に形成された逃がし溝131を流動して、ファイバ保持レンズアレイ110の外側に排出される。
【0063】
なお、本実施形態では、ガイド溝114に光ファイバ100を挿入した後で、ガイド溝114に接着剤116を注入しているが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、ハウジング150の挿入穴151hに光ファイバ100を挿入する前に、光ファイバ100に接着剤116を塗布しても良い。また、接着剤116の塗布法としては、例えばディッピング法を用いれば良い。
【0064】
以上のように、本実施形態では、事前に、単一の導波路層112に、相互に位置を整合されたレンズ部113及びガイド溝114を形成している。このため、第1の光コネクタ10を組み立てる際には、それぞれのガイド溝114に光ファイバ100を挿入するだけで、光ファイバ100の先端を、それぞれに対応するレンズ部113の焦線Fに位置決めすることができる。従って、第1の光コネクタ10の組立作業を簡単化でき、結果として、第1の光コネクタ10の製造コストを低減することができる。
[第1、第3の光コネクタ10、30の接続作業]
図19は、第1の実施形態にかかる第3の光コネクタ30の未接続状態及び既接続状態を示していて、(a)は第3の光コネクタ30の未接続状態の断面図、(b)は第3の光コネクタ30の既接続状態の断面図である。
【0065】
第1、第3の光コネクタ10、30が接続されていない場合、図19(a)に示すように、第3の光コネクタ30のファイバ保持レンズアレイ110は、板バネ140に押し下げられて、支持部材320に接触している。このため、第1、第3の光コネクタ10、30を接続する場合、先ず、図19(b)に示すように、第3の光コネクタ30のファイバ保持レンズアレイ110を押し上げて、ファイバ保持レンズアレイ110の下方のスペースSを拡大する。
【0066】
そして、ファイバ保持レンズアレイ110の下方のスペースSが充分に確保されたら、第3の光コネクタ30のハウジング350に、第1の光コネクタ10の支持部材120を挿入する。第1の光コネクタ10の支持部材120をハウジング350の後壁350bに突き当てたら、第3の光コネクタ30のファイバ保持レンズアレイ110の押し上げのための加重を取り去り、ファイバ保持レンズアレイ110を低下させる。これにより、第3の光コネクタ30のファイバ保持レンズアレイ110の基板111のV溝111vの内面に、それぞれ第1の光コネクタ10の支持部材120のレール部122が接触して、第3の光コネクタ30のファイバ保持レンズアレイ110が静止する。こうして、第1、第3の光コネクタ10、30のファイバ保持レンズアレイ110の導波路層112のコア層112bが相互に向かい合い、第1、第3の光コネクタ10が光学的に結合される。なお、第1、第3の光コネクタ10、30の接続作業は、使用者により行われるものである。
【0067】
本実施形態によれば、事前に、単一の導波路層112に、相互に位置整合されたレンズ部113及びガイド溝114を形成している。このため、第1の光コネクタ10を組み立てる際には、それぞれのガイド溝114に光ファイバ100を挿入するだけで、光ファイバ100の先端を、それぞれに対応するレンズ部113の焦線Fに位置決めすることができる。従って、第1の光コネクタ10の組立作業を簡単化でき、結果として、第1の光コネクタ10の製造コストを低減することができる。
【0068】
さらに、本実施形態では、フォトリソグラフィーにより、導波路層112にレンズ部113及びガイド溝114を形成するので、レンズ部113及びガイド溝114の位置整合を簡単かつ精度よく実施することができる。
[変形例]
図20は、第1の実施形態の変形例にかかる第1、第3の光コネクタ10A、30Aの接続状態の概略図である。
【0069】
図20に示すように、第1の実施形態の変形例にかかる第1、第3の光コネクタ10A、30Aは、第1の実施形態にかかる第1、第3の光コネクタ10、30に加えて、さらにブーツ部70を備える。ブーツ部70は、それぞれコネクタ本体11A、31Aの後壁151b、351bを貫通していて、第1、第2のテープファイバT1、T2を被嵌している。ブーツ部70は、第1、第3のテープファイバT1、T3よりも剛性が高く、第1、第2のテープファイバT1、T2に作用する曲げ応力を緩和する。ブーツ部70の材料は、特に限定されるものではないが、例えばシリコンゴムなどを用いても良い。
【0070】
このように、第1、第3の光コネクタ10A、30Aにブーツ部70を追加すれば、コネクタ本体11A、31A付近に於ける光ファイバ100の曲げ応力が緩和されるから、光ファイバ100の曲げによる損傷が抑制される。さらに、それぞれのブーツ部70は、該ブーツ部70に挿入される光ファイバ100の撓みを補正して、まっすぐにしてくれるので、ガイド溝112への光ファイバ100の挿入を、より簡単化することができる。
【0071】
又、第1の実施形態にかかる第1、第3の光コネクタ10A、30Aは、コネクタ本体11A、31Aの枠壁151a、351aに両端が連結される板バネ140Aを有していてもて良い。
[第2の実施形態]
図21、図22を参照しながら、第2の実施形態を説明する。
【0072】
図21は、第2の実施形態にかかる第1の光コネクタ10Bの概略的構成を示していて、(a)は第1の光コネクタ10Bの断面図、(b)は(a)のb−b線に於ける断面図である。図22は、第2の実施形態にかかる第3の光コネクタ30Bの概略的構成を示していて、(a)は第3の光コネクタ30Bの断面図、(b)は(a)のb−b線に於ける断面図である。
【0073】
図21、図22に示すように、第2の実施形態にかかる第1、第3の光コネクタ10B、30Bのファイバ保持レンズアレイ110Bは、基板111の下面に導波路層112を有する。このため、第1の光コネクタ10Bの支持部材120Bのベース部121Bに、導波路層112を収容するための凹部121rが形成されている。凹部121rは、2本のレール部122間に於いて、ベース部121Bの縦方向(Y方向)に延在していて、第1、第3の光コネクタ10B、30Bを接続するときに、第3の光コネクタ30Bの導波路層112も収容する。
【0074】
以上のように、本実施形態では、基板111の下面に導波路層112を配置しているので、導波路層112の高さが基板111の厚さに影響されない。従って、第1、第3の光コネクタ10B、30Bを接続するときに、それぞれの導波路層112のコア層112bの高さが、精度良く揃うので、第1、第3の光コネクタ10B、30B間に於ける光信号の伝送効率を高めることができる。
[第3の実施形態]
図23、図24を参照しながら、第3の実施形態を説明する。
【0075】
図23は、第3の実施形態にかかる計算装置の概略図である。
【0076】
図23に示すように、第3の実施形態にかかる第1、第2のボード1、2は、それぞれ複数の、本実施形態では4つの光デバイス1c、2cを備え、それぞれの光デバイス1c、2cの光信号の入出力側に、第1、第2のテープファイバT1、T2が接続されている。
【0077】
4本の第1のテープファイバT1は、それぞれの先端に共通に接続されたコネクタ本体11Cと共に、1つの第1の光コネクタ10Cを構成している。同様に、4本の第2のテープファイバT2は、それぞれの先端に共通に接続されたコネクタ本体21Cと共に、1つの第2の光コネクタ20Cを構成している。
【0078】
第3の実施形態にかかるベース基板3は、第1、第2のテープファイバT1、T2に対応する本数の、即ち4本の第3のテープファイバT3が取り付けられている。第3のテープファイバT3は、それぞれの両端に共通に接続されたコネクタ本体31C、41Cと共に、それぞれ第3、第4の光コネクタ30C、40Cを構成している。
【0079】
第1の光コネクタ10Cは、4つのファイバ保持レンズアレイ(図示しない)を備える。4つのファイバ保持レンズアレイは、コネクタ本体11Cの横方向(X方向)に配列され、それぞれ支持部材のレール部に支持されている。従って、本実施形態にかかる支持部材は、8本のレール部を有している。
【0080】
ファイバ保持レンズアレイは、第1の実施形態にかかるファイバ保持レンズアレイ110と同等に構成され、それぞれの導波路層に形成されたガイド溝に、第1のテープファイバT1の光ファイバ100が挿入されている。第2−第4の光コネクタ20C−40Cについても、第1の光コネクタ10Cと同等の構成を有する。
【0081】
以上のように、本実施形態では、第1の光コネクタ10Cに、複数の第1のテープファイバT1を接続しているが、複数のファイバ保持レンズアレイ110を配列するだけで、第1の実施形態と同様に、第1の光コネクタ10Cの組立作業を簡単化できる。従って、光ファイバ100が増加しても、光ファイバ100の位置決めの煩雑性を抑制することができる。
【0082】
なお、本実施形態では、4本の光ファイバ100が内蔵された第1のテープファイバT1を用いているが、例えば12本の光ファイバ100が内蔵されたテープファイバ、即ち12心のテープファイバを用いても良い。12心のテープファイバを用いる場合、それぞれのファイバ保持レンズアレイの導波路層は、12個のレンズ部と、12本のガイド溝と、を有することになる。
[変形例]
図24は、第3の実施形態の変形例にかかる計算装置の概略図である。
【0083】
図24に示すように、第3の実施形態の変形例にかかるベース基板3は、テープファイバT3の代わりに、複数の光ファイバ100を編み込んだファイバシートUを有する。このように、テープファイバT3の代わりに、ファイバシートUを用いても良い。
【符号の説明】
【0084】
10、10A、10B、10C:第1の光コネクタ
30、30A、30B、30C:第3の光コネクタ
100:光ファイバ
112:導波路層
112a:クラッド層
112b:コア層
112c:クラッド層
113:レンズ部
113H:レンズ穴
113R:レンズ面
114:ガイド溝
114a:側壁
114b:端壁
116:接着剤
F:焦線
Rp:露光パターン領域
【技術分野】
【0001】
開示の技術は、光コネクタ及び光コネクタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スーパーコンピュータやサーバなどの計算装置に於いて、例えば異なるボードに搭載されたCPUなどの電子部品間を光学的に接続する光配線技術が採用されることがある。
【0003】
光配線技術では、CPUなどの電子部品から出力された電気信号を、各ボードに搭載された光デバイスにより光信号に変換して、他のボードに伝送する。そして、他のボードから伝送された光信号を、各ボードに搭載された光デバイスにより電気信号に変換して、CPUなどの電子部品に入力する。異なるボードに搭載された光デバイス間は、伝送媒体である光ファイバにより接続され、ボード間の光信号伝送が実現される。
【0004】
ところで、スーパーコンピュータやサーバなどの計算装置では、システム拡張又はシステム保全の利便性の観点から、各ボードを、バックプレーンとしてのベース基板に着脱可能に装着することがある。このため、異なるボードに搭載された光デバイスそれぞれに光ファイバを接続して、これらの光ファイバを、ベース基板及び各ボードに設けられた光コネクタにより相互に着脱可能に接続することがある。光コネクタの種類としては、例えば光ファイバの端部から出射した拡散光をレンズにより平行光として、相手の光コネクタに伝送する、所謂レンズ型コネクタがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−216905号公報
【特許文献2】特開2003−322761号公報
【特許文献3】特開2005−309259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レンズ型コネクタでは、光ファイバの先端を、レンズの焦点又はその近傍に配置する必要がある。光ファイバの先端がレンズの焦点又はその近傍からずれていると、光信号の伝送効率が低下するからである。しかし、光ファイバは、非常に細径であるため、光ファイバの先端をレンズの焦点又はその近傍に正確に配置することは難しく、このことが製造コストの低減を妨げている。
【0007】
開示の技術は、光コネクタの組立作業に於いて、光ファイバの位置決めを容易に行うことができる光コネクタ及び光コネクタの製造方法。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示の技術の一観点によれば、光信号が伝播する導波路に、レンズと、前記レンズの焦点に光ファイバの端部をガイドする溝と、を形成する工程と、前記光ファイバの端部が前記レンズの焦点に位置するように、前記溝に前記光ファイバを挿入する工程と、を備える光コネクタの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
開示の技術によれば、光コネクタの組立作業に於いて、光ファイバの位置決めを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態にかかる計算装置の概略図である。
【図2】第1の実施形態にかかる第1、第2、第3のテープファイバの概略図である。
【図3】第1の実施形態にかかる第1の光コネクタの概略図である。
【図4】第1の実施形態にかかるファイバ保持レンズアレイの概略図である。
【図5】第1の実施形態にかかるレンズ部及びガイド溝の概略図である。
【図6】第1の実施形態にかかる第3の光コネクタの概略図である。
【図7】第1の実施形態にかかる第1、第3の光コネクタの接続状態の概略図である。
【図8】第1の実施形態にかかる第1、第3の光コネクタの光ファイバ同士の光学的結合の様子を説明する説明図である。
【図9】第1の実施形態にかかるファイバ保持レンズアレイの製造工程の説明図である。
【図10】第1の実施形態にかかるファイバ保持レンズアレイの製造工程の説明図である。
【図11】第1の実施形態にかかるファイバ保持レンズアレイの製造工程の説明図である。
【図12】第1の実施形態にかかるファイバ保持レンズアレイの製造工程の説明図である。
【図13】第1の実施形態にかかるファイバ保持レンズアレイの製造工程の説明図である。
【図14】第1の実施形態にかかる第1の光コネクタの組立工程の説明図である。
【図15】第1の実施形態にかかる第1の光コネクタの組立工程の説明図である。
【図16】第1の実施形態にかかる第1の光コネクタの組立工程の説明図である。
【図17】第1の実施形態にかかる第1の光コネクタの組立工程の説明図である。
【図18】第1の実施形態にかかる第1の光コネクタの組立工程の説明図である。
【図19】第1の実施形態にかかる第3の光コネクタの未接続状態及び既接続状態の概略図である。
【図20】第1の実施形態の変形例にかかる第1、第3の光コネクタの接続状態の概略図である。
【図21】第2の実施形態にかかる第1の光コネクタの概略図である。
【図22】第2の実施形態にかかる第3の光コネクタの概略図である。
【図23】第3の実施形態にかかる計算装置の概略図である。
【図24】第3の実施形態の変形例にかかる計算装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施形態]
図1−図20を参照しながら、第1の実施形態を説明する。
[計算装置の構成]
図1は、第1の実施形態にかかる計算装置の概略図である。
【0012】
図1に示すように、第1の実施形態にかかる計算装置は、第1のボード1と、第2のボード2と、バックプレーンとしてのベース基板3と、を備える。
【0013】
第1のボード1は、ベース基板3に着脱可能に装着され、第1のボード1の実装表面には、例えばCPU1a、メモリユニット1b、及び光デバイス1cなどの電子部品が搭載されている。
【0014】
CPU1aは、メモリユニット1b及び光デバイス1cに、それぞれ電気配線1d、1eにより電気的に接続されている。電気配線1d、1eは、特に限定されるものではないが、本実施形態では、例えばバスを使用している。光デバイス1cは、電気信号及び光信号を相互に変換する機能を備え、光信号の入出力側には、第1のテープファイバT1が接続されている。第1のテープファイバT1は、光信号を伝送するための光ケーブルであって、第1のテープファイバT1の先端に接続されるコネクタ本体11と共に、第1の光コネクタ10を構成している。
【0015】
第2のボード2は、ベース基板3に着脱可能に装着され、第2のボード2の実装表面には、例えばCPU2a、メモリユニット2b、及び光デバイス2cなどの電子部品が搭載されている。
【0016】
CPU2aは、メモリユニット2b及び光デバイス2cに、それぞれ電気配線2d、2eにより電気的に接続されている。電気配線2d、2eは、特に限定されるものではないが、本実施形態では、例えばバスを使用している。光デバイス2cは、電気信号及び光信号を相互に変換する機能を備え、光信号の入出力側には、第2のテープファイバT2が接続されている。第2のテープファイバT2は、光信号を伝送するための光ケーブルであって、第2のテープファイバT2の先端に接続されるコネクタ本体21と共に、第2の光コネクタ20を構成している。
【0017】
ベース基板3は、計算装置の筺体(図示しない)に固定され、ベース基板3の実装表面には、第3のテープファイバT3が取り付けられている。第3のテープファイバT3は、光信号を伝送するための光ケーブルであって、第3のテープファイバT3の両端に接続されたコネクタ本体31、41と共に、それぞれ第3、第4の光コネクタ30、40を構成している。
【0018】
以上のような計算装置に於いて、第1の光コネクタ10のコネクタ本体11は、第3の光コネクタ30のコネクタ本体31に着脱可能に接続され、第2の光コネクタ20のコネクタ本体21は、第4の光コネクタ40のコネクタ本体41に着脱可能に接続される。こうして、第1のボード1に搭載された光デバイス1c及び第2のボード2に搭載された光デバイス2cは、第1、第2、第3、第4の光コネクタ10、20、30、40により光学的に接続される。
[第1、第2、第3のテープファイバT1、T2、T3の構成]
図2は、第1の実施形態にかかる第1、第2、第3のテープファイバT1、T2、T3の概略的構成を示していて、(a)は第1、第2、第3のテープファイバT1、T2、T3の平面図、(b)は(a)のb−b線に於ける断面図である。
【0019】
図2に示すように、第1、第2、第3のテープファイバT1、T2、T3は、複数の光ファイバ100と、複数の光ファイバ100を被覆するテープ状の被膜110と、を備える。光ファイバ100は、被膜110の幅方向に所定間隔で配列されている。光ファイバ100のピッチ間隔は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、約250μmとしている。光ファイバ100の先端部100aは、被膜110から露出していて、第1、第2、第3、第4の光コネクタ10、20、30、40のコネクタ本体11、21、31、41の何れかに接続されている。本実施形態では、光ファイバ100の本数を4本としているが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば、1本、2本、3本、もしくは5本以上としても良い。
【0020】
光ファイバ100は、光信号が伝搬するコア101と、コア101を被覆して、コア101を伝搬する光信号を全反射させるクラッド102と、を備える。コア101の材料としては、例えば石英ガラスを用いても良い。コア101の外径は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、約50μmとしている。クラッド102の材料としては、コア101よりも屈折率が約2%〜5%だけ低い材料、例えばフッ素系のポリマーを用いても良い。クラッド102の厚さは、特に限定されるものではないが、本実施形態では、約37.5μmとしている。光ファイバ100の最小曲率半径は、ファイバスペックに依存するものであるが、例えばマルチモードファイバであれば、7.5mmRもしくは15mmRとされる。
[第1、第2の光コネクタ10、20の構成]
以下の説明では、図中のX方向及びY方向を、それぞれ横方向及び縦方向、図中のZ方向を上下方向と定義する。なお、第1、第2の光コネクタ10、20は、同等の構成を有しているので、第1の光コネクタ10の構成のみを説明する。
<第1の光コネクタ10>
図3は、第1の実施形態にかかる第1の光コネクタ10の概略的構成を示していて、(a)は第1の光コネクタ10の断面図、(b)は(a)のb−b線に於ける断面図である。
【0021】
図3に示すように、第1の光コネクタ10のコネクタ本体11は、ファイバ保持レンズアレイ110と、ファイバ保持レンズアレイ110を支持する支持部材120と、ファイバ保持レンズアレイ110の上面に配置される蓋板130と、蓋板130の上側に配置される板バネ140と、ファイバ保持レンズアレイ110、支持部材120、蓋板130、及び板バネ140を収容するハウジング150と、を備える。
(ファイバ保持レンズアレイ110)
ファイバ保持レンズアレイ110は、支持部材120に接着剤により接着される基板111と、基板111の上面に形成される導波路層112と、を備える。
【0022】
基板111は、平面視で長方形状に形成され、基板111の下面には、2つのV溝111vが形成されている。V溝111vは、相互に平行に延在していて、ファイバ保持レンズアレイ110の縦方向(Y方向)に於ける双方の端面、即ち第1の端面110a及び第2の端面110bに到達している。V溝111vの内面は、基板111の下面を基準として、約54.7度の角度で傾斜していて、それぞれに支持部材120のレール部122が線接触している。基板111の材料は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、単結晶シリコンを用いている。単結晶シリコンの表面は、結晶方位が<100>であるものとする。基板111の厚さは、特に限定されるものではないが、本実施形態では、約2mm〜10mmとしている。
【0023】
導波路層112は、光信号の伝搬路として機能するものであり、基板111の縦方向(Y方向)の全体に形成されている。導波路層112の詳細については、ファイバ保持レンズアレイ110の詳細とともに、後述することとする。
(支持部材120)
支持部材120は、ベース部121と、ベース部121の上面に配置される2本のレール部122と、を有する。
【0024】
ベース部121は、平面視で長方形状に形成され、ハウジング150の底面に、例えば接着剤により固定されている。ベース部121の寸法及び材料は、特に限定されるものではない。
【0025】
レール部122は、基板111のV溝111vと同等の間隔で配置され、支持部材120の縦方向(Y方向)に延在している。各レール部122は、半円柱状に形成され、基板111のV溝111vの内面に線接触している。レール部122の材質は、特に限定されるものではないが、例えば金属もしくは樹脂を用いても良い。
【0026】
以上のような支持部材120は、ハウジング150の外部まで延在していて、第1、第3の光コネクタ10、30を接続するときに、第3のコネクタ30のコネクタ本体31のハウジング350内に挿入される。
(蓋板130)
蓋板130は、導波路層112の上面に、例えば接着剤により固定され、導波路層112に形成されたガイド溝114内の光ファイバ100を被覆している。蓋板130は、平面視で長方形状に形成され、蓋板130の下面には、複数の逃がし溝131が形成されている。逃がし溝131は、相互に平行に延在して、蓋板130の横方向(X方向)に於ける双方の端面に到達している。従って、例えばガイド溝114に注入された、後述する接着剤116に余分が生じても、当該接着剤116は、蓋板130に形成された逃がし溝131内を流動して、蓋板130の外部に排出される。
(板バネ140)
板バネ140は、蓋板130を下方に加圧している。このため、ファイバ保持レンズアレイ110は、蓋板130により、支持部材120に押圧され、ファイバ保持レンズアレイ110のV溝111vの内面を支持部材120のレール部122に線接触させる。板バネ140の材料は、特に限定されるものではなく、例えば金属もしくは樹脂を用いても良い。本実施形態では、板バネ140は、ハウジング150と別体としているが、ハウジング150と一体としても良い。
(ハウジング150)
ハウジング150は、ハウジング本体151と、掛合部152と、を備える。
【0027】
ハウジング本体151は、矩形箱状に形成され、ファイバ保持レンズアレイ110を包囲する枠壁151aと、第1のテープファイバT1を接続する後壁151bと、を有する。後壁151bは、枠壁151aの片側の開口を閉塞していて、後壁151bの中央には、第1のテープファイバT1を挿入するための挿入穴151hが形成されている。
【0028】
掛合部152は、ハウジング本体151の枠壁151aに於ける、後壁151bとは逆側の端部に連結されている。掛合部152は、ハウジング本体151よりも剛性が低く、所定位置には、突起部152aが形成されている。突起部152aは、第1、第3の光コネクタ10、30を接続するときに、第3の光コネクタ30のコネクタ本体31のハウジング350に形成された窪部352aに掛合して、第1、第3の光コネクタ10、30の接続が解除されることを防止する。
【0029】
ハウジング150は、例えば射出成型により一体的に形成されている。ハウジング150と共に、支持部材120及び板バネ140を一体的に形成しても良い。ハウジング本体151の材料は、特に限定されるものではないが、例えばPBT(Poly Butylene Terephthalate)樹脂、LCP(Liquid Crystal Plastic)樹脂、PPS(Poly Phenylene Sulfide)樹脂などの樹脂材料を用いても良い。
[ファイバ保持レンズアレイ110の詳細構造]
図4は、第1の実施形態にかかるファイバ保持レンズアレイ110の概略的構成を示していて、(a)はファイバ保持レンズアレイ110の平面図、(b)は(a)のb−b線に於ける断面図、(c)は(a)のc−c線に於ける断面図である。
【0030】
図5は、第1の実施形態にかかるレンズ部113及びガイド溝114の概略的構成を示していて、(a)はレンズ部113及びガイド溝114の平面図、(b)は(a)のb−b線に於ける断面図、(c)は(a)のc−c線に於ける断面図、(d)は(a)のd−d線に於ける断面図である。
【0031】
図4、図5に示すように、導波路層112は、基板111の上面に形成される第1のクラッド層112aと、第1のクラッド層112aの上面に形成されるコア層112bと、コア層112bの上面に形成される第2のクラッド層112cと、を備える。
【0032】
コア層112bは、光信号が伝播する透明材料で形成されている。コア層112bの材料は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、感光性ポリイミド樹脂を用いている。感光性ポリイミド樹脂の屈折率は、例えばドーパントのドープ量により、約1.463〜1.467に調整されている。ドーパントは、特に限定されるものではないが、感光性ポリイミド樹脂よりも屈折率が低い材料が用いられる。コア層112bの厚さは、特に限定されるものではないが、本実施形態では、第1のテープファイバT1の光ファイバ100のコア101の直径と同等、即ち約50μmとしている。
【0033】
第1、第2のクラッド層112a、112cは、コア層112bを上下から挟み込んでいる。第1、第2のクラッド層112a、112cの屈折率は、コア層112bの屈折率よりも小さく、本実施形態では、約1.45〜1.46に設定されている。このため、コア層112bに入射した光信号は、第1、第2のクラッド層112a、112cで全反射しながら、コア層112b内を伝播することになる。第1、第2のクラッド層112a、112cの厚さは、特に限定されるものではないが、本実施形態では、光ファイバ100のクラッド102の厚さと同等、即ち約37.5μmとしている。第1、第2のクラッド層112a、112cの材料は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、コア層112bと同等の材料、即ち感光性ポリイミド樹脂を用いている。しかし、コア層112bよりも屈折率を低くするために、第1、第2のクラッド層112a、112cの感光性ポリイミド樹脂には、コア層112bより多くのドーパントがドープされている。
【0034】
以上のような導波路層112は、ファイバ保持レンズアレイ110の第2の端面110bの近傍位置に、複数のレンズ部113を有している。レンズ部113は、導波路層112の横方向(X方向)に所定間隔で配列されている。導波路層112の横方向(X方向)に於けるレンズ部113のピッチ間隔は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、第1のテープファイバT1内に於ける光ファイバ100のピッチ間隔より大きく、約600μmに設定している。導波路層112のY方向に於けるレンズ部113の位置は、導波路層112の横方向(X方向)の中心から離間するほど、ファイバ保持レンズアレイ110の第2の端面110bから離間している。導波路層112の横方向(X方向)に於ける、それぞれのレンズ部113の寸法は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、光ファイバ100の直径より大きく、約400μmとしている。
【0035】
レンズ部113は、導波路層112に形成されたレンズ穴113Hの内面をレンズ面113Rとする円筒レンズであって、ファイバ保持レンズアレイ110の第1の端面110a側に、ファイバ保持レンズアレイ110の上下方向(Z方向)に延在する焦線Fを備える。従って、レンズ面113は、該レンズ面113の焦線Fの位置から出射した拡散光を、少なくとも導波路層112の横方向(X方向)にコリメートする。レンズ面113Rの曲率半径は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、約550μmとしている。
【0036】
レンズ穴113Hは、導波路層112、即ち第1のクラッド層112a、コア層112b、及び第2のクラッド層112cを貫通して、基板111の上面に到達している。本実施形態では、レンズ穴113Hを中空のままとしているが、例えばレンズ穴113Hに樹脂材料を充填しても良い。樹脂材料は、少なくとも光信号が透過することができれば、特に限定されるものではないが、例えばアクリル系、エポキシ系などの樹脂材料を用いても良い。
【0037】
さらに、導波路層112は、光ファイバ100をレンズ部113にガイドする複数のガイド溝114を有している。複数のガイド溝114は、ファイバ保持レンズアレイ110の第1の端面110a付近に於いて、光ファイバ100をガイド溝114に導入する導入溝115に連結されている。導入溝115は、ハウジング本体151の後壁151bに形成された挿入穴151hに対応する位置に配置され、ファイバ保持レンズアレイ110の第1の端面110aに到達している。
【0038】
ガイド溝114のピッチ間隔は、レンズ部113に接近するにつれて、徐々に拡大していて、導入溝115付近では、テープファイバT1内に於ける光ファイバ100のピッチ間隔と同等、即ち約250μm、レンズ部113付近では、レンズ部113のピッチ間隔と同等、即ち約600μmに設定されている。
【0039】
即ち、複数のガイド溝114は、導入溝115からレンズ部113に接近するにつれて、徐々にピッチ間隔が広げながら、それぞれに対応するレンズ部113のレンズ面113Rに接近している。
【0040】
隣り合うガイド溝114間に位置する導波路層112は、それぞれのガイド溝114を隔離する隔壁112Iとして機能している。それぞれの隔壁112Iは、導入溝115に挿入される光ファイバ100の隙間に対応する位置に配置され、導入溝115に接近するほど肉薄となるように形成されている。このため、導入溝115に挿入された光ファイバ100を押し進めると、それぞれの光ファイバ100は、隔壁112Iにより隔離されて、それぞれに対応するガイド溝114内に挿入される。
【0041】
以上のようなガイド溝114及び導入溝115は、レンズ穴113Hと同様に、導波路層112、即ち第1のクラッド層112a、コア層112b、及び第2のクラッド層112cを貫通していて、基板111の表面に到達している。
【0042】
ガイド溝114は、断面視で長方形状に形成され、光ファイバ100の先端をレンズ部113のレンズ面113Rにガイドする側壁114aと、光ファイバ100の先端を突き当てる端壁114bと、を有している。
【0043】
ガイド溝114の側壁114aは、なだらかな曲面状に形成され、導入溝115から端壁114bまで連続している。ガイド溝114の端壁114bは、レンズ面113Rの焦線Fを包含していて、さらに、レンズ面113Rの中心線C及び焦線Fの双方を包含する平面Pに直交している。レンズ面113Rの中心線C及びガイド溝114の端壁114bの距離は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、約1500μmとしている。
【0044】
ガイド溝114の幅は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、光ファイバ100の直径よりも大きく、約200μmに設定されている。導波路層112のコア層112bの厚さは、光ファイバ100のコア101の直径と同等、即ち約50μm、導波路層112のクラッド層112a、112cの厚さは、光ファイバ100のクラッド102の厚さと同等、即ち約37.5μmである。このため、ガイド溝114に配置された光ファイバ100のコア101は、導波路層112のコア層112bに対向している。
【0045】
ガイド溝112に配置された光ファイバ100は、それぞれ接着剤116により固定されている。接着剤116は、光信号の伝播を阻害するものでなければ、特に限定されるものではないが、本実施形態では、例えばアクリル系又はエポキシ系の透明樹脂を用いている。
[第3、第4の光コネクタ30、40の構成]
以下の説明では、図中のX方向及びY方向を、それぞれ横方向及び縦方向、図中のZ方向を上下方向と定義する。なお、第3、第4の光コネクタ30、40は、同等の構成を有しているので、第3の光コネクタ30の構成のみを説明する。
<第3の光コネクタ30>
図6は、第1の実施形態にかかる第3の光コネクタ30の概略的構成を示していて、(a)は第3の光コネクタ30の断面図、(b)は(a)のb−b線に於ける断面図である。
【0046】
図6に示すように、第3の光コネクタ30は、支持部材320及びハウジング350を除き、第1の光コネクタ10と同等の構成、例えばファイバ保持レンズアレイ110、蓋板130、板バネ140を有している。従って、ここでは、第1の光コネクタ10とは異なる支持部材320及びハウジング350の構成だけを説明する。第3の光コネクタ30の説明に於いて、第1の光コネクタ10と同等の構成については、同様の符号を付すこととする。
(支持部材320)
支持部材320は、ハウジング350の縦方向(Y方向)に延在する帯板であって、それぞれ第1の光コネクタ10の支持部材120の横方向(X方向)に於ける外側に配置されている。このため、第1の光コネクタ10の支持部材120が第2の光コネクタ30のハウジング350に挿入されるときに、第3の光コネクタ30の支持部材320が第1の光コネクタ10の支持部材120に干渉することがない。支持部材320は、少なくとも第1の光コネクタ10の支持部材120より低い。又、ファイバ保持レンズアレイ110は、第1の光コネクタ10のファイバ保持レンズアレイ110とは異なり、支持部材320に接着されていない。即ち、ファイバ保持レンズアレイ110は、ハウジング350内に於いて、少なくとも上下方向(Z方向)に移動可能に支持されている。
(ハウジング350)
ハウジング350は、ハウジング本体351と、掛合部352と、を備える。
【0047】
ハウジング本体351は、矩形箱状に形成され、ファイバ保持レンズアレイ110を包囲する枠壁351aと、第3のテープファイバT3を接続する後壁351bと、を有する。後壁351bは、枠壁351aの片側の開口を閉塞していて、後壁351bの中央には、第3のテープファイバT3を挿入するための挿入穴151hが形成されている。
【0048】
掛合部352は、ハウジング本体351の枠壁351aの内面に形成され、第1の光コネクタ10のハウジング150の突起部152aに対応する位置に、窪部352aを備える。窪部352aは、第1の光コネクタ10のハウジング150の突起部152aと掛合して、第1、第3の光コネクタ10、30の接続が解除されることを防止する。
[第1、第3の光コネクタ10、30の接続状態]
図7は、第1の実施形態にかかる第1、第3の光コネクタ10、30の接続状態の概略図である。図8は、第1の実施形態にかかる第1、第3の光コネクタ10、30の光ファイバ100同士の光学的結合の様子を説明する説明図である。
【0049】
図7、図8に示すように、第1、第3の光コネクタ10、30のコネクタ本体11、31を接続すると、それぞれの導波路層112が突き当たり、第1、第3のテープファイバT1、T3の光ファイバ100が向かい合うことになる。このため、第1のテープファイバT1の光ファイバ100の先端から光信号が出射すると、該光信号は、図中に破線L1で示すように、拡散光として導波路層112を伝播して、第1の光コネクタ10のレンズ部113に到達する。第1の光コネクタ10のレンズ部113に到達した光信号は、該レンズ部113により平行光とされ、図中に破線L2で示すように、第1、第3の光コネクタ10、30双方の導波路層112を伝播して、第3の光コネクタ30のレンズ部113に到達する。第3の光コネクタ30のレンズ部113に到達した光信号は、該レンズ部113により収束光とされ、図中に破線L3で示すように、導波路層112を伝播して、第3のテープファイバT3の光ファイバ100の先端に入射する。
[ファイバ保持レンズアレイ110の製造工程]
図9−図13は、第1の実施形態にかかるファイバ保持レンズアレイ110の製造工程を示していて、(a)はファイバ保持レンズアレイ110の平面図、(b)は(a)のb−b線に於ける断面図である。但し、図9、図10のb−b線は、図11−図13のb−b線と直交している。
【0050】
先ず、図9に示すように、例えば単結晶シリコン基板などの基板111を準備する。基板111の表面は、結晶方位が<100>であるものとする。続いて、基板111の表面に、レジストパターンRを形成する。レジストパターンRの材料としては、例えば感光性樹脂が用いられる。レジストパターンRは、V溝111vに対応する開口Roを有していて、開口Roからは、基板111の表面が部分的に露出している。レジストパターンRの製造方法は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、フォトリソグラフィーを使用する。なお、本実施形態では、基板111の表面にのみ、レジストパターンRを形成しているが、例えば基板111の裏面にもレジストパターンを形成しても良い。基板111の裏面にレジストパターンを形成すれば、基板111の裏面にエッチング液(後述する)が付着しても、基板111の裏面がエッチングされることがない。即ち、基板111の厚さが低減することがない。
【0051】
次に、図10に示すように、レジストパターンRをマスクとして、基板111の表面をウェットエッチングする。エッチング液としては、特に限定されるものではないが、例えば水酸化カリウム(KOH)などの強アルカリ水溶液を使用する。基板111の表面は、結晶方位が<100>であるため、レジストパターンRをマスクとして、基板111をウェットエッチングすると、基板111の表面に於ける、レジストパターンRの開口Roに対応する領域に、基板111の表面を基準として、約54.7度で傾斜するV溝111vが形成される。基板111にV溝111vが形成されたら、例えば薬液を供給して、レジストパターンRを剥離する。薬液の種類は、レジストパターンRの材料に応じて決定すれば良い。
【0052】
本実施形態では、基板111の表面にレジストパターンRを形成し、該レジストパターンRをマスクとして、基板111の表面をウェットエッチングしている。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、基板111として、熱酸化シリコン基板を採用する場合、基板111の熱酸化膜(SiO2膜)をパターニングし、これをマスクとして、基板111の表面をウェットエッチングしても良い。熱酸化膜のパターニングは、特に限定されるものではないが、例えば熱酸化膜の表面にレジストパターンを形成して、該レジストパターンをマスクとして、熱酸化膜をパターニングしても良い。熱酸化膜の厚さは、例えば0.5μmとする。熱酸化シリコン基板は、表面及び裏面に熱酸化膜を有しているため、基板111の裏面にエッチング液が付着しても、基板111の裏面がエッチングされることがない。
【0053】
次に、図11に示すように、基板111の裏面に、第1のクラッド層112a、コア層112b、及び第2のクラッド層112cを順次積層して、導波路層112を形成する。導波路層112の形成方法は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、第1のクラッド層112a、コア層112b、及び第2のクラッド層112cごとに、未硬化の感光性エポキシ樹脂の塗布と、感光性エポキシ樹脂の加熱による硬化と、を実施する。
【0054】
次に、図12に示すように、露光マスクMを用いて、導波路層112、即ち第1のクラッド層112a、コア層112b、及び第2のクラッド層112cを露光する。露光マスクMは、例えばガラス基板の表面に成膜された例えば金属製の遮光膜(図示しない)に、レンズ部113及びガイド溝114に対応するマスク開口Moを形成したものである。このため、露光マスクMによる露光を実施すると、第1のクラッド層112a、コア層112b、及び第2のクラッド層112cに、レンズ部113及びガイド溝114に対応する露光パターン領域Rpが形成される。
【0055】
次に、図13に示すように、現像液を供給して、第1のクラッド層112a、コア層112b、及び第2のクラッド層112cに形成された露光パターン領域Rpを除去する。これにより、導波路層112に、基板111の表面に到達するレンズ部113及びガイド溝114が形成される。こうして、ファイバ保持レンズアレイ110が製造される。
【0056】
なお、ここで使用する露光マスクMは、レンズ部113及びガイド溝114に対応するマスク開口Moを有しているが、本実施形態は、これに限定されるものではない。例えば、露光マスクMは、レンズ部113及びガイド溝114の反転領域に対応するマスク開口を有していても良い。この場合、導波路層112、即ち第1のクラッド層112a、コア層112b、及び第2のクラッド層112cに於ける、未露光パターン領域を除去することになる。
[第1の光コネクタ10の組立工程]
図14−図18は、第1の実施形態にかかる第1の光コネクタ10の組立工程の説明図である。
【0057】
先ず、前準備として、第1のテープファイバT1の被膜110から複数の光ファイバ100の先端部100aを露出させ、例えばファイバカッタにより光ファイバ100の長さを揃える。又、ファイバ保持レンズアレイ110の導波路層112の上面に、例えば接着剤により蓋板130を取り付ける。但し、図14−図18では、図面の明瞭化のため、蓋板130を省略している。
【0058】
次に、図14に示すように、ハウジング150内にファイバ保持レンズアレイ110を挿入して、ファイバ保持レンズアレイ110の第1の端面110aをハウジング150の後壁151bに突き当てる。続いて、ハウジング150の挿入穴151hから導波路層112の導入穴115に、第1のテープファイバT1の光ファイバ100をまとめて挿入する。
【0059】
次に、図15に示すように、導入穴115に挿入された光ファイバ100を押し進める。これにより、光ファイバ100の先端は、導波路層112に形成された隔壁112Iにより隔離されて、それぞれに対応するガイド溝114に挿入される。
【0060】
次に、図16に示すように、ガイド溝114に挿入された光ファイバ100を、さらに押し進める。これにより、光ファイバ100の先端は、ガイド溝114の側壁114aにガイドされながら、それぞれのガイド溝114に対応するレンズ部113に接近する。このとき、側壁114aは、なだらかな曲面状に形成されているため、光ファイバ100の先端は、図17に示すように、側壁114aを滑りながら、ガイド溝114内を進んでいく。ガイド溝114内を進行する光ファイバ100は、ファイバ保持レンズアレイ110の上面に取り付けられた蓋板130によってもガイドされるため、光ファイバ100がガイド溝114の上方に離脱することもない。
【0061】
次に、図18に示すように、光ファイバ100を、さらに押し進める。これにより、それぞれの光ファイバ100の先端は、ガイド溝114の端壁114bに突き当たる。ガイド溝114の端壁114bは、それぞれに対応するレンズ部113の焦線Fに位置している。このため、光ファイバ100の先端がガイド溝114の端壁114bに突き当たると、光ファイバ100の先端は、レンズ部113の焦線Fに位置決めされる。なお、ガイド溝114の幅寸法は、光ファイバ100の直径よりも大きいが、光ファイバ100は、自身の真っ直ぐになろうとする性質により、ガイド溝114の側壁114aに押圧されるので、ガイド溝114の内部で移動することはない。
【0062】
次に、光ファイバ100が挿入されているガイド溝114に、例えばアクリル系もしくはエポキシ系の透明樹脂からなる接着剤116を注入して、それぞれの光ファイバ100をガイド溝114内で固定する。このとき、接着剤116は、光ファイバ100の先端及びガイド溝113の端壁114b間の隙間を充填する。このため、光ファイバ100の先端をファイバカッタで切断するときに、光ファイバ100の切断面の表面粗さが大きくなっても、光ファイバ100の切断面に於ける散乱を抑制することができる。即ち、接着剤116を塗布することで、光ファイバ100の切断面の研磨を省略することができる。接着剤116に余分が発生したら、該接着剤116は、蓋板130に形成された逃がし溝131を流動して、ファイバ保持レンズアレイ110の外側に排出される。
【0063】
なお、本実施形態では、ガイド溝114に光ファイバ100を挿入した後で、ガイド溝114に接着剤116を注入しているが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、ハウジング150の挿入穴151hに光ファイバ100を挿入する前に、光ファイバ100に接着剤116を塗布しても良い。また、接着剤116の塗布法としては、例えばディッピング法を用いれば良い。
【0064】
以上のように、本実施形態では、事前に、単一の導波路層112に、相互に位置を整合されたレンズ部113及びガイド溝114を形成している。このため、第1の光コネクタ10を組み立てる際には、それぞれのガイド溝114に光ファイバ100を挿入するだけで、光ファイバ100の先端を、それぞれに対応するレンズ部113の焦線Fに位置決めすることができる。従って、第1の光コネクタ10の組立作業を簡単化でき、結果として、第1の光コネクタ10の製造コストを低減することができる。
[第1、第3の光コネクタ10、30の接続作業]
図19は、第1の実施形態にかかる第3の光コネクタ30の未接続状態及び既接続状態を示していて、(a)は第3の光コネクタ30の未接続状態の断面図、(b)は第3の光コネクタ30の既接続状態の断面図である。
【0065】
第1、第3の光コネクタ10、30が接続されていない場合、図19(a)に示すように、第3の光コネクタ30のファイバ保持レンズアレイ110は、板バネ140に押し下げられて、支持部材320に接触している。このため、第1、第3の光コネクタ10、30を接続する場合、先ず、図19(b)に示すように、第3の光コネクタ30のファイバ保持レンズアレイ110を押し上げて、ファイバ保持レンズアレイ110の下方のスペースSを拡大する。
【0066】
そして、ファイバ保持レンズアレイ110の下方のスペースSが充分に確保されたら、第3の光コネクタ30のハウジング350に、第1の光コネクタ10の支持部材120を挿入する。第1の光コネクタ10の支持部材120をハウジング350の後壁350bに突き当てたら、第3の光コネクタ30のファイバ保持レンズアレイ110の押し上げのための加重を取り去り、ファイバ保持レンズアレイ110を低下させる。これにより、第3の光コネクタ30のファイバ保持レンズアレイ110の基板111のV溝111vの内面に、それぞれ第1の光コネクタ10の支持部材120のレール部122が接触して、第3の光コネクタ30のファイバ保持レンズアレイ110が静止する。こうして、第1、第3の光コネクタ10、30のファイバ保持レンズアレイ110の導波路層112のコア層112bが相互に向かい合い、第1、第3の光コネクタ10が光学的に結合される。なお、第1、第3の光コネクタ10、30の接続作業は、使用者により行われるものである。
【0067】
本実施形態によれば、事前に、単一の導波路層112に、相互に位置整合されたレンズ部113及びガイド溝114を形成している。このため、第1の光コネクタ10を組み立てる際には、それぞれのガイド溝114に光ファイバ100を挿入するだけで、光ファイバ100の先端を、それぞれに対応するレンズ部113の焦線Fに位置決めすることができる。従って、第1の光コネクタ10の組立作業を簡単化でき、結果として、第1の光コネクタ10の製造コストを低減することができる。
【0068】
さらに、本実施形態では、フォトリソグラフィーにより、導波路層112にレンズ部113及びガイド溝114を形成するので、レンズ部113及びガイド溝114の位置整合を簡単かつ精度よく実施することができる。
[変形例]
図20は、第1の実施形態の変形例にかかる第1、第3の光コネクタ10A、30Aの接続状態の概略図である。
【0069】
図20に示すように、第1の実施形態の変形例にかかる第1、第3の光コネクタ10A、30Aは、第1の実施形態にかかる第1、第3の光コネクタ10、30に加えて、さらにブーツ部70を備える。ブーツ部70は、それぞれコネクタ本体11A、31Aの後壁151b、351bを貫通していて、第1、第2のテープファイバT1、T2を被嵌している。ブーツ部70は、第1、第3のテープファイバT1、T3よりも剛性が高く、第1、第2のテープファイバT1、T2に作用する曲げ応力を緩和する。ブーツ部70の材料は、特に限定されるものではないが、例えばシリコンゴムなどを用いても良い。
【0070】
このように、第1、第3の光コネクタ10A、30Aにブーツ部70を追加すれば、コネクタ本体11A、31A付近に於ける光ファイバ100の曲げ応力が緩和されるから、光ファイバ100の曲げによる損傷が抑制される。さらに、それぞれのブーツ部70は、該ブーツ部70に挿入される光ファイバ100の撓みを補正して、まっすぐにしてくれるので、ガイド溝112への光ファイバ100の挿入を、より簡単化することができる。
【0071】
又、第1の実施形態にかかる第1、第3の光コネクタ10A、30Aは、コネクタ本体11A、31Aの枠壁151a、351aに両端が連結される板バネ140Aを有していてもて良い。
[第2の実施形態]
図21、図22を参照しながら、第2の実施形態を説明する。
【0072】
図21は、第2の実施形態にかかる第1の光コネクタ10Bの概略的構成を示していて、(a)は第1の光コネクタ10Bの断面図、(b)は(a)のb−b線に於ける断面図である。図22は、第2の実施形態にかかる第3の光コネクタ30Bの概略的構成を示していて、(a)は第3の光コネクタ30Bの断面図、(b)は(a)のb−b線に於ける断面図である。
【0073】
図21、図22に示すように、第2の実施形態にかかる第1、第3の光コネクタ10B、30Bのファイバ保持レンズアレイ110Bは、基板111の下面に導波路層112を有する。このため、第1の光コネクタ10Bの支持部材120Bのベース部121Bに、導波路層112を収容するための凹部121rが形成されている。凹部121rは、2本のレール部122間に於いて、ベース部121Bの縦方向(Y方向)に延在していて、第1、第3の光コネクタ10B、30Bを接続するときに、第3の光コネクタ30Bの導波路層112も収容する。
【0074】
以上のように、本実施形態では、基板111の下面に導波路層112を配置しているので、導波路層112の高さが基板111の厚さに影響されない。従って、第1、第3の光コネクタ10B、30Bを接続するときに、それぞれの導波路層112のコア層112bの高さが、精度良く揃うので、第1、第3の光コネクタ10B、30B間に於ける光信号の伝送効率を高めることができる。
[第3の実施形態]
図23、図24を参照しながら、第3の実施形態を説明する。
【0075】
図23は、第3の実施形態にかかる計算装置の概略図である。
【0076】
図23に示すように、第3の実施形態にかかる第1、第2のボード1、2は、それぞれ複数の、本実施形態では4つの光デバイス1c、2cを備え、それぞれの光デバイス1c、2cの光信号の入出力側に、第1、第2のテープファイバT1、T2が接続されている。
【0077】
4本の第1のテープファイバT1は、それぞれの先端に共通に接続されたコネクタ本体11Cと共に、1つの第1の光コネクタ10Cを構成している。同様に、4本の第2のテープファイバT2は、それぞれの先端に共通に接続されたコネクタ本体21Cと共に、1つの第2の光コネクタ20Cを構成している。
【0078】
第3の実施形態にかかるベース基板3は、第1、第2のテープファイバT1、T2に対応する本数の、即ち4本の第3のテープファイバT3が取り付けられている。第3のテープファイバT3は、それぞれの両端に共通に接続されたコネクタ本体31C、41Cと共に、それぞれ第3、第4の光コネクタ30C、40Cを構成している。
【0079】
第1の光コネクタ10Cは、4つのファイバ保持レンズアレイ(図示しない)を備える。4つのファイバ保持レンズアレイは、コネクタ本体11Cの横方向(X方向)に配列され、それぞれ支持部材のレール部に支持されている。従って、本実施形態にかかる支持部材は、8本のレール部を有している。
【0080】
ファイバ保持レンズアレイは、第1の実施形態にかかるファイバ保持レンズアレイ110と同等に構成され、それぞれの導波路層に形成されたガイド溝に、第1のテープファイバT1の光ファイバ100が挿入されている。第2−第4の光コネクタ20C−40Cについても、第1の光コネクタ10Cと同等の構成を有する。
【0081】
以上のように、本実施形態では、第1の光コネクタ10Cに、複数の第1のテープファイバT1を接続しているが、複数のファイバ保持レンズアレイ110を配列するだけで、第1の実施形態と同様に、第1の光コネクタ10Cの組立作業を簡単化できる。従って、光ファイバ100が増加しても、光ファイバ100の位置決めの煩雑性を抑制することができる。
【0082】
なお、本実施形態では、4本の光ファイバ100が内蔵された第1のテープファイバT1を用いているが、例えば12本の光ファイバ100が内蔵されたテープファイバ、即ち12心のテープファイバを用いても良い。12心のテープファイバを用いる場合、それぞれのファイバ保持レンズアレイの導波路層は、12個のレンズ部と、12本のガイド溝と、を有することになる。
[変形例]
図24は、第3の実施形態の変形例にかかる計算装置の概略図である。
【0083】
図24に示すように、第3の実施形態の変形例にかかるベース基板3は、テープファイバT3の代わりに、複数の光ファイバ100を編み込んだファイバシートUを有する。このように、テープファイバT3の代わりに、ファイバシートUを用いても良い。
【符号の説明】
【0084】
10、10A、10B、10C:第1の光コネクタ
30、30A、30B、30C:第3の光コネクタ
100:光ファイバ
112:導波路層
112a:クラッド層
112b:コア層
112c:クラッド層
113:レンズ部
113H:レンズ穴
113R:レンズ面
114:ガイド溝
114a:側壁
114b:端壁
116:接着剤
F:焦線
Rp:露光パターン領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号が伝播する導波路に、レンズと、前記レンズの焦点に光ファイバの端部をガイドする溝と、を形成する工程と、
前記光ファイバの端部が前記レンズの焦点に位置するように、前記溝に前記光ファイバを挿入する工程と、
を備えることを特徴とする光コネクタの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の光コネクタの製造方法に於いて、
前記溝は、前記光ファイバの端部を前記レンズの焦点に位置決めするための端面及び側面を含み、
前記溝に前記光ファイバを挿入する工程では、前記光ファイバの端部を、前記溝の側面に沿わせ且つ前記溝の端面に突き当てることで、前記レンズの焦点に配置することを特徴とする光コネクタの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光コネクタの製造方法に於いて、
前記導波路に前記レンズ及び前記溝を形成する工程は、
前記導波路に、前記レンズ及び前記溝に対応する露光パターン領域を形成する工程と、
前記導波路から前記露光パターン領域を除去する工程と、
を備えることを特徴とする光コネクタの製造方法。
【請求項4】
光信号を伝送する光ファイバと、
前記光ファイバの端部に対向するレンズと、前記光ファイバの端部が前記レンズの焦点に位置するように、前記光ファイバを保持する溝と、を有する、光信号が伝播する導波路と、
を備えることを特徴とする光コネクタ。
【請求項5】
請求項4に記載の光コネクタに於いて、
前記溝は、前記光ファイバの端部を前記レンズの焦点に位置決めするための端面及び側面を含むことを特徴とする光コネクタ。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の光コネクタに於いて、
前記レンズは、円筒レンズであって、
前記導波路は、少なくとも前記端面及び前記レンズ間に、前記光信号が伝搬するコア層と、前記コア層に表面に形成され、前記レンズの焦線に交差すると共に、前記コア層を伝搬する光信号を反射するクラッド層と、を備えることを特徴とする光コネクタ。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれかに記載の光コネクタに於いて、
前記レンズは、前記導波路に形成された穴の内面の一部をレンズ面とすることを特徴とする光コネクタ。
【請求項8】
請求項4乃至7のいずれかに記載の光コネクタに於いて、さらに、
前記光ファイバの端部を被覆すると共に、前記光ファイバを前記導波路に接着する接着剤を備えることを特徴とする光コネクタ。
【請求項1】
光信号が伝播する導波路に、レンズと、前記レンズの焦点に光ファイバの端部をガイドする溝と、を形成する工程と、
前記光ファイバの端部が前記レンズの焦点に位置するように、前記溝に前記光ファイバを挿入する工程と、
を備えることを特徴とする光コネクタの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の光コネクタの製造方法に於いて、
前記溝は、前記光ファイバの端部を前記レンズの焦点に位置決めするための端面及び側面を含み、
前記溝に前記光ファイバを挿入する工程では、前記光ファイバの端部を、前記溝の側面に沿わせ且つ前記溝の端面に突き当てることで、前記レンズの焦点に配置することを特徴とする光コネクタの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光コネクタの製造方法に於いて、
前記導波路に前記レンズ及び前記溝を形成する工程は、
前記導波路に、前記レンズ及び前記溝に対応する露光パターン領域を形成する工程と、
前記導波路から前記露光パターン領域を除去する工程と、
を備えることを特徴とする光コネクタの製造方法。
【請求項4】
光信号を伝送する光ファイバと、
前記光ファイバの端部に対向するレンズと、前記光ファイバの端部が前記レンズの焦点に位置するように、前記光ファイバを保持する溝と、を有する、光信号が伝播する導波路と、
を備えることを特徴とする光コネクタ。
【請求項5】
請求項4に記載の光コネクタに於いて、
前記溝は、前記光ファイバの端部を前記レンズの焦点に位置決めするための端面及び側面を含むことを特徴とする光コネクタ。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の光コネクタに於いて、
前記レンズは、円筒レンズであって、
前記導波路は、少なくとも前記端面及び前記レンズ間に、前記光信号が伝搬するコア層と、前記コア層に表面に形成され、前記レンズの焦線に交差すると共に、前記コア層を伝搬する光信号を反射するクラッド層と、を備えることを特徴とする光コネクタ。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれかに記載の光コネクタに於いて、
前記レンズは、前記導波路に形成された穴の内面の一部をレンズ面とすることを特徴とする光コネクタ。
【請求項8】
請求項4乃至7のいずれかに記載の光コネクタに於いて、さらに、
前記光ファイバの端部を被覆すると共に、前記光ファイバを前記導波路に接着する接着剤を備えることを特徴とする光コネクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2012−203270(P2012−203270A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69037(P2011−69037)
【出願日】平成23年3月26日(2011.3.26)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月26日(2011.3.26)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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