説明

光モジュール

【課題】電気的絶縁を簡単な構造で安価に実現することができる光モジュールを提供する。
【解決手段】光モジュール1は、セラミック層5〜7からなる積層セラミックパッケージ4を備えている。下部セラミック層5には光素子2が実装され、中間セラミック層6には電子部品3が実装されている。上部セラミック層7は、積層セラミックパッケージ4の側壁を構成している。上部セラミック層7の上面7aと下面7bとは、電気的に絶縁(分離)された状態となっている。上部セラミック層7の上面7aには、金属リング14、ホルダ16及びジョイント19を介して金属スリーブ22が接合されている。金属スリーブ22内には、光素子2と光結合される光ファイバ24を保持したフェルール25が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信等で使用される光モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の光モジュールとしては、例えば特許文献1に記載されているものが知られている。特許文献1に記載の光モジュールは、光素子を内蔵するパッケージと、光ファイバフェルールを保持するレセプタクルとを備え、パッケージとレセプタクルとが下金属リング、絶縁体リング及び上金属蓋を介して結合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−84683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術のようにパッケージとレセプタクルとの間を絶縁することにより、EMC特性の改善に効果的となる。しかし、円筒状の絶縁部品を金属部品の間に介在させて両者を圧入または接着する方法では、部品点数が多くなり、部品コストの増大につながることがある。
【0005】
本発明の目的は、電気的絶縁を簡単な構造で安価に実現することができる光モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光モジュールは、光素子を内蔵する積層セラミックパッケージと、積層セラミックパッケージに固定され、光素子と光結合される光ファイバを収容する金属筒状部材とを備え、積層セラミックパッケージは、光素子が実装される第1セラミック層と、第1セラミック層の上に積層された第2セラミック層とを有し、金属筒状部材は、第2セラミック層の上面に接合され、第2セラミック層の上面と下面とは電気的に絶縁されていることを特徴とするものである。
【0007】
このように本発明の光モジュールにおいては、第1セラミック層及び第2セラミック層を有する積層セラミックパッケージを設け、第1セラミック層に光素子を実装し、第2セラミック層の上面に金属筒状部材を接合する。ここで、第2セラミック層の上面と下面とを電気的に絶縁することにより、円筒状の絶縁部品を金属部品の間に介在させなくても、積層セラミックパッケージの第1セラミック層と金属筒状部材とが電気的に絶縁されるようになる。これにより、部品点数の増大が抑えられるため、光モジュールの電気的絶縁を簡単な構造で安価に実現することができる。
【0008】
好ましくは、第1セラミック層は、第1セラミック層の上面及び下面にそれぞれ設けられた回路パターン同士を電気的に接続するビアを有し、第2セラミック層は、光素子を取り囲むように設けられたパッケージ側壁を形成している。この場合には、第2セラミック層の上面と下面との電気的絶縁が簡単に行えると共に、光素子及びその他の電子部品をスペース効率良く第1セラミック層に実装することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光モジュールの電気的絶縁を簡単な構造で安価に実現することができる。これにより、例えばEMC特性に優れた光トランシーバを安価に構築することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係わる光モジュールの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示した光モジュールの断面図である。
【図3】図1に示した光モジュールの要部拡大断面図である。
【図4】図1に示した光モジュールを備えた光トランシーバを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係わる光モジュールの好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明に係わる光モジュールの一実施形態を示す斜視図である。図2は、図1に示した光モジュールの断面図であり、図3は、図1に示した光モジュールの要部拡大断面図である。各図において、本実施形態の光モジュール1は、発光素子を有する発光モジュールもしくは受光素子を有する受光モジュールとして用いられるものである。
【0013】
光モジュール1は、光素子(発光素子または受光素子)2及び複数の電子部品3が配置される積層セラミックパッケージ4を備えている。積層セラミックパッケージ4は、下部セラミック層5、中間セラミック層6、上部セラミック層7からなる3層構造を有している。中間セラミック層6は、下部セラミック層5の上に積層され、上部セラミック層7は、中間セラミック層6の上に積層されている。これらのセラミック層5〜7は、加工性に優れるアルミナで形成されている。積層セラミックパッケージ4は、セラミック層5〜7を重ね合わせた状態で焼結することにより形成される。
【0014】
下部セラミック層5の外形は、略矩形となっている。下部セラミック層5の上面及び下面には、金属製の回路配線パターン(メタライズ層)8がそれぞれ設けられている。下部セラミック層5には、上下の回路配線パターン8同士を電気的に接続する複数のビア9が下部セラミック層5を貫通するように設けられている。また、下部セラミック層5の下面には、外部接続端子(図示せず)が設けられている。
【0015】
中間セラミック層6の外形は、下部セラミック層5と同様に略矩形となっている。また、中間セラミック層6の厚みは、下部セラミック層5と同様である。中間セラミック層6の上面及び下面には、金属製の回路配線パターン10がそれぞれ設けられている。中間セラミック層6には、上下の回路配線パターン10同士を電気的に接続する複数のビア11が中間セラミック層6を貫通するように設けられている。
【0016】
中間セラミック層6の中央部分には、開口部12が形成されている。この開口部12は、光素子2を下部セラミック層5に実装するためのキャビティを形成している。つまり、開口部12により露出している下部セラミック層5の上面中央部には、光素子2が実装されている。光素子2は、半導体レーザ等の発光素子もしくはフォトダイオード等の受光素子である。
【0017】
上部セラミック層7は、中間セラミック層6に複数の電子部品3を実装するためのキャビティを形成するように略矩形環状を呈しており、積層セラミックパッケージ4の側壁を構成している。つまり、中間セラミック層6の上面には、IC、抵抗及びコンデンサ等の電子部品3が実装されたり、配線用のワイヤリング等が行われている。よって、上部セラミック層7は、光素子2及び複数の電子部品3を取り囲むように設けられていることとなる。上部セラミック層7の厚みは、中間セラミック層6の厚みよりも大きくなっている。
【0018】
上部セラミック層7の上面7a及び下面7bには、金属製の回路配線パターン13がそれぞれ設けられている。ただし、上部セラミック層7には、上下の回路配線パターン13同士を電気的に接続するビアは設けられていない。従って、上部セラミック層7の上面7aと下面7bとは、電気的に完全に絶縁(分離)された状態となっている。
【0019】
なお、セラミック層5〜7をアルミナで形成することで、シート加工や穴加工、回路配線パターン8,10,13及びビア9,11の形成が容易に行えるようになり、積層セラミックパッケージ4を安価に製造することができる。
【0020】
上部セラミック層7の上面の回路配線パターン(メタライズ層)13には、略矩形環状の金属リング14がロウ付け等により固定されている。金属リング14の上面には、レンズ15を保持する金属製のホルダ16がシームシール等により気密に固定されている。
【0021】
ホルダ16は、金属リング14に接合され、積層セラミックパッケージ4の上部開口を覆い塞ぐフタ部17と、このフタ部17と一体化された筒状部18とを有している。筒状部18の軸心は、積層セラミックパッケージ4の上下面に対して直交している。レンズ15は、筒状部18の内周面から張り出すように設けられた環状保持部18aに固定されている。このようなホルダ16を金属リング14に固定するときは、レンズ15と光素子2との光軸ズレが小さくなるように、金属リング14に対するホルダ16の位置を調整する。
【0022】
ホルダ16には、金属製のジョイント19がYAG溶接等により固定されている。ジョイント19は、光を通すための貫通穴20aを有する基部20と、この基部20と一体化された筒状部21とを有している。そして、その筒状部21の内周面がホルダ16の筒状部18の外周面に接合されている。
【0023】
ジョイント19の基部20には、金属スリーブ22がYAG溶接等により固定されている。金属スリーブ22の内部には、ジルコニアスリーブ23が配置されている。ジルコニアスリーブ23内のジョイント19側には、光素子2と光結合される光ファイバ24を保持したフェルール25が配置されている。また、金属スリーブ22の内部には、フェルール25を圧入固定する金属筒状体26がジルコニアスリーブ23に隣接して配置されている。金属スリーブ22の外周面には、環状の保持溝27aを有するフランジ部27が設けられている。金属スリーブ22をジョイント19の基部20に固定するときは、レンズ15と光ファイバ24との光軸ズレが小さくなるように金属スリーブ22の位置調整を行う。
【0024】
このような光モジュール1において、積層セラミックパッケージ4の内部は、窒素置換された状態でホルダ16及びレンズ15により気密封止された空間となっている。これにより、水分等によるデバイス部品の劣化を抑制することができる。
【0025】
光モジュール1は、図4に示すような光トランシーバ28に組み込まれる。光トランシーバ28はハウジング29を有し、このハウジング29の前端側部分は、光モジュール1と結合される光コネクタ(図示せず)をガイドするレセプタクル部30を形成している。レセプタクル部30には、光モジュール1を保持するための保持用突起31が設けられている。この保持用突起31が光モジュール1における金属スリーブ22の保持溝27aに嵌合することで、光モジュール1がハウジング29に保持された状態となる。
【0026】
光トランシーバ28においては、EMCのシールド性を確保するために、レセプタクル部30が金属からなっているか、或いはレセプタクル部30の内周面に金属メッキが施されている。
【0027】
また、光トランシーバ28内には、電子部品32が実装される回路基板33が配置されている。回路基板33は、実装面33aが積層セラミックパッケージ4の底面と直交するように配置されている。積層セラミックパッケージ4の底面の外部接続端子と回路基板33の実装面33aの外部接続端子とは、フレキシブル基板34を介して接続されている。
【0028】
このような光トランシーバ28は、図示しない通信装置のフロントパネルに搭載される。光トランシーバ28のハウジング29等の金属部分は、通信装置のフレームグランドに接地される。このため、レセプタクル部30に保持される光モジュール1の金属スリーブ22、ジョイント19、ホルダ16及び金属リング14は、フレームグランドに接地されることとなる。
【0029】
一方、光モジュール1の積層セラミックパッケージ4は、上部セラミック層7の上面7aと下面7bとが電気的に絶縁された構造となっている。このため、積層セラミックパッケージ4における上部セラミック層7の下面7b(中間セラミック層6の上面)から下側の回路は、フレームグランドとは独立した構成となる。
【0030】
積層セラミックパッケージ4のセラミック層5,6に設けられた回路配線パターン8,10は、フレキシブル基板34を介して回路基板33と電気的に接続されている。このため、回路配線パターン8,10のグランドラインは、回路基板33のシグナルグランドに接地されることになる。
【0031】
ここで、光モジュール1を発光モジュールとした場合には、発光素子に変調信号を供給する駆動回路からノイズが発生することがある。このノイズは、回路基板33上の信号ライン及びこれに近接するグランドラインを伝搬して、発光モジュールに到達する。しかし、発光モジュールでは、フレームグランドとシグナルグランドとが分離されているため、ノイズの伝搬が抑制されるようになる。これにより、光トランシーバ28から放射されるノイズを抑制することができる。また、金属スリーブ22等の部品がフレームグランドに接地されているため、ノイズ伝搬のシールド効果を発揮することができる。
【0032】
一方、光モジュール1を受光モジュールとした場合には、外部環境を伝搬してきたノイズが光トランシーバ28のハウジング29に伝搬したとしても、受光モジュールにおいてフレームグランドとシグナルグランドとが分離されているため、ノイズが遮断される。従って、EMC耐性の高い光トランシーバ28を構築することができる。
【0033】
以上のように本実施形態の光モジュール1は、光素子2及び電子部品3を内蔵する3層構造の積層セラミックパッケージ4と、この積層セラミックパッケージ4の上面に金属リング14、ホルダ16及びジョイント19を介して固定され、フェルール25を収容する金属スリーブ22とを備えている。
【0034】
このとき、積層セラミックパッケージ4において、上部セラミック層7の上面7aと下面7bとは電気的に絶縁されている。このため、金属スリーブ22、ジョイント19及びホルダ15等の異なる金属部品の間に円筒状のセラミック部品(絶縁部材)を介在させる必要が無いので、金属スリーブ11やジョイント19、ホルダ15を単純な形状の金属部品で構成することができる。また、部品点数の増大を抑えることもできる。これにより、光モジュール1の電気的絶縁を簡単な構造で且つ安価に実現することができる。その結果、光モジュール1の製造コストを低減することが可能となる。
【0035】
また、セラミック部品を異なる金属部品の間に介在させて両者を圧入して固定する方法では、セラミック部品の割れが生じないように圧入力を精度良く管理する必要がある。また、セラミック部品を異なる金属部品の間に介在させて両者を接着で固定する方法では、接着剤硬化工程により生産性の低下が発生する。しかし、本実施形態では、積層セラミックパッケージ4にて電気的絶縁を行うので、光モジュール1の製造工程の複雑化を抑制し、生産性を向上させることができる。また、品質に優れた光モジュール1を得ることができる。
【0036】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、積層セラミックパッケージ4を3層構造としたが、積層セラミックパッケージ4の層数としては2層以上であれば良い。
【0037】
また、上記実施形態では、積層セラミックパッケージ4の底面と光トランシーバ28の回路基板33とをフレキシブル基板34で接続するようにしたが、回路基板33の寸法や配置箇所等によっては積層セラミックパッケージ4を回路基板33に直接接続しても良い。
【符号の説明】
【0038】
1…光モジュール、2…光素子、4…積層セラミックパッケージ、5…下部セラミック層(第1セラミック層)、6…中間セラミック層(第1セラミック層)、7…上部セラミック層(第2セラミック層)、8…回路配線パターン、9…ビア、10…回路配線パターン、11…ビア、16…ホルダ(金属筒状部材)、19…ジョイント(金属筒状部材)、22…金属スリーブ(金属筒状部材)、24…光ファイバ、25…フェルール。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
光素子を内蔵する積層セラミックパッケージと、
前記積層セラミックパッケージに固定され、前記光素子と光結合される光ファイバを収容する金属筒状部材とを備え、
前記積層セラミックパッケージは、前記光素子が実装される第1セラミック層と、前記第1セラミック層の上に積層された第2セラミック層とを有し、
前記金属筒状部材は、前記第2セラミック層の上面に接合され、
前記第2セラミック層の上面と下面とは電気的に絶縁されていることを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
前記第1セラミック層は、前記第1セラミック層の上面及び下面にそれぞれ設けられた回路パターン同士を電気的に接続するビアを有し、
前記第2セラミック層は、前記光素子を取り囲むように設けられたパッケージ側壁を形成していることを特徴とする請求項1記載の光モジュール。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−99911(P2011−99911A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252954(P2009−252954)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】