説明

共鳴型非接触受電装置の位置決め支援装置および共鳴型非接触受電装置の位置決め方法

【課題】ワイヤレスでの受電状態の良好さの程度を精度良く検出し、位置決めすることが可能な共鳴型非接触受電装置の位置決め支援装置を提供する。
【解決手段】制御装置180は、自己共振コイル112の位置の検出開始後の初期段階に、位相検波器116で測定した測定値をメモリ181に記録し、メモリ181に記録した測定値に対して現在位相検波器116で測定した測定値の符号が反転するまで初期段階よりも自己共振コイルの位置を目標方向に移動させるための制御を実行し、位相検波器116で測定した測定値の符号が反転してから受電電圧センサ190で測定した受電電圧VRに基づいて自己共振コイル112の位置合わせを行なうための制御を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、共鳴型非接触受電装置の位置決め支援装置および共鳴型非接触受電装置の位置決め方法に関し、特に、自己共振コイルを含む共鳴型非接触受電装置の位置決め支援装置および共鳴型非接触受電装置の位置決め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境問題への対策として、電気自動車やハイブリッド自動車が注目されている。これらの自動車に搭載されたバッテリに車両外部の電源からワイヤレスで充電電力を受電するために、共鳴法が検討されている。
【0003】
特開2009−106136号公報(特許文献1)は、共鳴法によって車両外部の電源からワイヤレスで充電電力を受電し、車載の蓄電装置を充電可能な電動車両を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−106136号公報
【特許文献2】国際公開第2007/008646号パンフレット
【特許文献3】特開2008−288889号公報
【特許文献4】特開2007−097345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ワイヤレスでの受電では、送電装置と受電装置の位置関係が正しくないと効率良く受電が行なわれない。したがって、本格的な送電に際し、事前に受電が正しく行なえるか確認することが望ましい。そして、この確認は、受電状態の良好さの程度を精度良く検出して受電装置の位置決めを行なうことが望ましい。
【0006】
特開2009−106136号公報では、受電状態を精度良く検出し、位置決めをするための技術については特に言及されていない。
【0007】
この発明の目的は、ワイヤレスでの受電状態の良好さの程度を精度良く検出し、位置決めすることが可能な共鳴型非接触受電装置の位置決め支援装置および共鳴型非接触受電装置の位置決め方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、要約すると、共鳴型非接触受電装置の位置決め支援装置であって、共鳴法によって電力を受電する自己共振コイルに生じる電流の位相を測定するための位相測定部と、自己共振コイルの受電電圧を測定するための受電電圧測定部と、位相および受電電圧を記録する記録部と、自己共振コイルの位置決め制御を実行する制御部とを備える。制御部は、自己共振コイルの位置の検出開始後の初期段階に位相測定部で測定した測定値を記録部に記録し、記録部に記録した測定値に対して現在位相測定部で測定した測定値の符号が反転するまで初期段階よりも自己共振コイルの位置を目標方向に移動させるための制御を実行し、位相測定部で測定した測定値の符号が反転してから受電電圧測定部で測定した受電電圧に基づいて自己共振コイルの位置合わせを行なうための制御を実行する。
【0009】
好ましくは、自己共振コイルは車両に搭載される。制御部は、自己共振コイルの位置を目標方向に移動させるために、車両の駆動輪を駆動する。
【0010】
好ましくは、自己共振コイルは車両に搭載される。制御部は、自己共振コイルの位置を目標方向に移動させるために、運転者に車両の移動方向を指示する。
【0011】
好ましくは、制御部が記録部に記録する測定値は、少なくとも自己共振コイルの直径の半分より大きい距離だけ自己共振コイルが目標位置から遠ざかっている時に測定された値である。
【0012】
好ましくは、位置決め支援装置は、車両の周囲状況を撮影するカメラをさらに備える。制御部は、カメラで撮影された映像に基づいて、自己共振コイルの位置を目標位置に近づけてから、位相測定部および受電電圧測定部の測定結果に基づいて自己共振コイルの位置の微調整を行なう。
【0013】
この発明は、他の局面では、自己共振コイルを含む共鳴型非接触受電装置の位置決め方法であって、自己共振コイルの位置の検出開始後の初期段階に自己共振コイルに生じる電流の位相を測定して記録するステップと、記録するステップで記録した測定値に対して現在測定した電流の位相の測定値の符号が反転するまで初期段階よりも自己共振コイルの位置を目標方向に移動させるための制御を実行するステップと、測定した電流の位相の符号が反転してから自己共振コイルの受電電圧に基づいて自己共振コイルの位置合わせを行なうための制御を実行するステップとを備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ワイヤレスでの受電状態の良好さの程度を精度良く検出することが可能となり、自己共振コイルを受電が良好となる位置に位置合わせすることが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施の形態による電動車両が適用される充電システムの全体構成図である。
【図2】充電時の車両の位置合わせについて説明するための図である。
【図3】共鳴法による送電の原理を説明するための図である。
【図4】電流源(磁流源)からの距離と電磁界の強度との関係を示した図である。
【図5】図1、図2に示した車両100の詳細を示す構成図である。
【図6】図5に示した制御装置180の機能ブロック図である。
【図7】車両の目標位置までの距離と受電電圧の関係を示した図である。
【図8】一次自己共振コイルと二次自己共振コイルのズレについて説明するための模式図である。
【図9】ズレ量D=0である状態を示した図である。
【図10】ズレ量D=0のときの自己共振コイルの周囲の磁界を示した図である。
【図11】ズレ量D=D1である状態を示した図である。
【図12】ズレ量D=D1のときの自己共振コイルの周囲の磁界を示した図である。
【図13】ズレ量D=D2である状態を示した図である。
【図14】ズレ量D=D2のときの自己共振コイルの周囲の磁界を示した図である。
【図15】ズレ量D=D3である状態を示した図である。
【図16】ズレ量D=D3のときの自己共振コイルの周囲の磁界を示した図である。
【図17】図5の制御装置180が実行する駐車支援制御を説明するためのフローチャートである。
【図18】図17のステップS200の処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
【図19】位相検波器116の概略構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0017】
図1は、この発明の実施の形態による電動車両が適用される充電システムの全体構成図である。図1において位相検波器116を設ける点がこの充電システムの特徴である。
【0018】
図1を参照して、この充電システムは、電動車両100と、給電装置200とを備える。電動車両100は、二次自己共振コイル112と、二次コイル114と、整流器140と、蓄電装置150とを含む。また、電動車両100は、パワーコントロールユニット(以下「PCU(Power Control Unit)」とも称する。)166と、モータ174とをさらに含む。なお、自己共振コイルは、共鳴コイルとも称される。
【0019】
二次自己共振コイル112は、車体下部に配設される。この二次自己共振コイル112は、両端がオープン(非接続)のLC共振コイルであり、給電装置200の一次自己共振コイル234と磁場の共鳴により磁気的に結合され、一次自己共振コイル234から電力を受電可能に構成される。具体的には、二次自己共振コイル112は、蓄電装置150の電圧や、一次自己共振コイル234と二次自己共振コイル112との間の距離、一次自己共振コイル234と二次自己共振コイル112との共鳴周波数等に基づいて、一次自己共振コイル234と二次自己共振コイル112との共鳴強度を示すQ値およびその結合度を示すκ等が大きくなるようにその巻数が適宜設定される。
【0020】
二次コイル114は、電磁誘導によって二次自己共振コイル112から受電可能に構成され、好ましくは二次自己共振コイル112と同軸上に配設される。そして、二次コイル114は、二次自己共振コイル112から受電した電力を整流器140へ出力する。整流器140は、二次コイル114から受ける高周波の交流電力を整流して蓄電装置150へ出力する。なお、整流器140に代えて、二次コイル114から受ける高周波の交流電力を蓄電装置150の電圧レベルに変換するAC/DCコンバータを用いてもよい。
【0021】
蓄電装置150は、充放電可能な直流電源であり、たとえばリチウムイオンやニッケル水素などの二次電池を含む。蓄電装置150の電圧は、たとえば200V程度である。蓄電装置150は、整流器140から供給される電力を蓄えるほか、後述のようにモータ174によって発電された電力も蓄える。そして、蓄電装置150は、その蓄えた電力をPCU166へ供給する。
【0022】
なお、蓄電装置150として、大容量のキャパシタも採用可能であり、整流器140やモータ174からの電力を一時的に蓄え、その蓄えた電力をPCU166へ供給可能な電力バッファであれば如何なるものでもよい。
【0023】
PCU166は、蓄電装置150から供給される電力を交流電圧に変換してモータ174へ出力し、モータ174を駆動する。また、PCU166は、モータ174により発電された電力を整流して蓄電装置150へ出力し、蓄電装置150を充電する。
【0024】
モータ174は、PCU166を介して蓄電装置150から供給される電力を受けて車両駆動力を発生し、その発生した駆動力を車輪へ出力する。また、モータ174は、車輪や図示されないエンジンから受ける運動エネルギーを受けて発電し、その発電した電力をPCU166へ出力する。
【0025】
一方、給電装置200は、高周波電源装置210と、一次コイル232と、一次自己共振コイル234とを含む。
【0026】
高周波電源装置210は、車両外部の系統電源から受ける電力を、磁場共鳴により一次自己共振コイル234から車両側の二次自己共振コイル112へ送電可能な高周波の電力に変換し、その変換した高周波電力を一次コイル232へ供給する。
【0027】
一次コイル232は、電磁誘導によって一次自己共振コイル234へ送電可能に構成され、好ましくは一次自己共振コイル234と同軸上に配設される。そして、一次コイル232は、高周波電源装置210から受電した電力を一次自己共振コイル234へ出力する。
【0028】
一次自己共振コイル234は、地面近傍に配設される。この一次自己共振コイル234は、両端がオープンのLC共振コイルであり、電動車両100の二次自己共振コイル112と磁場の共鳴により磁気的に結合され、二次自己共振コイル112へ電力を送電可能に構成される。具体的には、一次自己共振コイル234は、一次自己共振コイル234から送電される電力によって充電される蓄電装置150の電圧や、一次自己共振コイル234と二次自己共振コイル112との間の距離、一次自己共振コイル234と二次自己共振コイル112との共鳴周波数等に基づいて、Q値および結合度κ等が大きくなるようにその巻数が適宜設定される。
【0029】
電動車両100は、さらに、二次コイル114に発生する電流の位相を検出する位相検波器116をさらに含む。二次コイル114に発生する電流の位相を検出することで二次自己共振コイル112の電流の位相が検出できる。なお、二次自己共振コイル112の電流の位相を直接検出するように位相検波器116を接続しても良い。
【0030】
給電装置200から送電が可能な位置に車両が停止しているかを確認するために、位相検波器116で検波された結果が用いられる。この結果に基づき充電時の車両の位置合わせをする精度を向上させることができる。
【0031】
図2は、充電時の車両の位置合わせについて説明するための図である。
図2を参照して、車両用給電システム10は、車両100と、給電装置200とを備える。車両100は、受電ユニット110と、カメラ120と、通信ユニット130とを含む。
【0032】
受電ユニット110は、車体底面に設置され、給電装置200の送電ユニット220から送出される電力を非接触で受電するように構成される。詳しくは、受電ユニット110は、自己共振コイルを含み、送電ユニット220に含まれる自己共振コイルと電磁場を介して共鳴することにより送電ユニット220から非接触で受電する。カメラ120は、受電ユニット110と送電ユニット220との位置関係を検知するために設けられ、たとえば車両後方を撮影可能に車体に取付けられる。通信ユニット130は、車両100と給電装置200との間で通信を行なうための通信インターフェースである。
【0033】
給電装置200は、高周波電源装置210と、送電ユニット220と、目印230と、通信ユニット240とを含む。高周波電源装置210は、たとえば系統電源から供給される商用交流電力を高周波の電力に変換して送電ユニット220へ出力する。なお、高周波電源装置210が生成する高周波電力の周波数は、たとえば1MHz〜数十MHzである。
【0034】
送電ユニット220は、駐車場の床面に固定され、高周波電源装置210から供給される高周波電力を車両100の受電ユニット110へ非接触で送出するように構成される。詳しくは、送電ユニット220は、自己共振コイルを含み、受電ユニット110に含まれる自己共振コイルと電磁場を介して共鳴することにより受電ユニット110へ非接触で送電する。目印230は、送電ユニット220上に複数設けられ、送電ユニット220の位置を示すために設けられる。目印230は、たとえば発光ダイオードなどを含む。通信ユニット240は、給電装置200と車両100との間で通信を行なうための通信インターフェースである。
【0035】
この車両用給電システム10においては、給電装置200の送電ユニット220から高周波の電力が送出され、車両100の受電ユニット110に含まれる自己共振コイルと送電ユニット220に含まれる自己共振コイルとが電磁場を介して共鳴することにより、給電装置200から車両100へ給電される。
【0036】
ここで、給電装置200から車両100への給電に際し、車両100を給電装置200へ誘導して車両100の受電ユニット110と給電装置200の送電ユニット220との位置合わせを行なう必要がある。
【0037】
位置合わせは、まず、第1段階においては、カメラ120によって撮影される画像に基づいて車両100の受電ユニット110と給電装置200の送電ユニット220との位置関係が検知され、その検知結果に基づいて送電ユニット220へ車両を誘導するように車両が制御される。より詳しくは、送電ユニット220上に設けられた複数の目印230(発光部など)がカメラ120によって撮影され、複数の目印230の位置および向きが画像認識される。そして、その画像認識の結果に基づいて送電ユニット220と車両との位置および向きが認識され、その認識結果に基づいて送電ユニット220へ車両が誘導される。
【0038】
ここで、受電ユニット110および送電ユニット220の対向面積は、車体底面の面積よりも小さいので、送電ユニット220が車体下部に入り込むことによってカメラ120により送電ユニット220を撮影できなくなる。すると、位置合わせ制御は第1段階から第2段階に切替わる。この第2段階においては、送電ユニット220から受電ユニット110への給電が行なわれ、その給電状況に基づいて送電ユニット220と受電ユニット110との距離が検知される。そして、その距離情報に基づいて、送電ユニット220と受電ユニット110との位置合わせを行なうように車両が制御される。
【0039】
なお、上記の第2段階時に送電ユニット220からテスト信号として送出される電力の大きさは、送電ユニット220と受電ユニット110との位置合わせの完了後に送電ユニット220から受電ユニット110へ供給される充電のための電力よりも小さく設定される。上記第2段階時に送電ユニット220から電力を送出するのは、送電ユニット220と受電ユニット110との間の距離を検知するためであり、本格的な給電を行なう際の大電力は不要だからである。
【0040】
なお、第1段階のカメラによる自動誘導に代えて、直接の目視またはカメラで撮影されたバックモニタを運転者が見て手動で大まかな位置合わせを行なうようにしても良い。
【0041】
次に、この実施の形態による車両用給電システム10に用いられる非接触給電方法について説明する。この実施の形態による車両用給電システム10では、共鳴法を用いて給電装置200から車両100への給電が行なわれる。
【0042】
図3は、共鳴法による送電の原理を説明するための図である。
図3を参照して、この共鳴法では、2つの音叉が共鳴するのと同様に、同じ固有振動数を有する2つのLC共振コイルが電磁場(近接場)において共鳴することによって、一方のコイルから他方のコイルへ電磁場を介して電力が伝送される。
【0043】
具体的には、高周波電源310に一次コイル320を接続し、電磁誘導により一次コイル320と磁気的に結合される一次自己共振コイル330へ1M〜数十MHzの高周波電力を給電する。一次自己共振コイル330は、コイル自身のインダクタンスと浮遊容量とによるLC共振器であり、一次自己共振コイル330と同じ共振周波数を有する二次自己共振コイル340と電磁場(近接場)を介して共鳴する。そうすると、一次自己共振コイル330から二次自己共振コイル340へ電磁場を介してエネルギー(電力)が移動する。二次自己共振コイル340へ移動したエネルギー(電力)は、電磁誘導により二次自己共振コイル340と磁気的に結合される二次コイル350によって取出され、負荷360へ供給される。なお、共鳴法による送電は、一次自己共振コイル330と二次自己共振コイル340との共鳴強度を示すQ値がたとえば100よりも大きいときに実現される。
【0044】
なお、図2との対応関係については、二次自己共振コイル340および二次コイル350が図2の受電ユニット110に対応し、一次コイル320および一次自己共振コイル330が図2の送電ユニット220に対応する。
【0045】
図4は、電流源(磁流源)からの距離と電磁界の強度との関係を示した図である。
図4を参照して、電磁界は3つの成分を含む。曲線k1は、波源からの距離に反比例した成分であり、「輻射電磁界」と称される。曲線k2は、波源からの距離の2乗に反比例した成分であり、「誘導電磁界」と称される。また、曲線k3は、波源からの距離の3乗に反比例した成分であり、「静電磁界」と称される。
【0046】
この中でも波源からの距離とともに急激に電磁波の強度が減少する領域があるが、共鳴法では、この近接場(エバネッセント場)を利用してエネルギー(電力)の伝送が行なわれる。すなわち、近接場を利用して、同じ固有振動数を有する一対の共鳴器(たとえば一対のLC共振コイル)を共鳴させることにより、一方の共鳴器(一次自己共振コイル)から他方の共鳴器(二次自己共振コイル)へエネルギー(電力)を伝送する。この近接場は遠方にエネルギー(電力)を伝播しないので、遠方までエネルギーを伝播する「輻射電磁界」によりエネルギー(電力)を伝送する電磁波に比べて、共鳴法は、より少ないエネルギー損失で送電することができる。
【0047】
図5は、図1、図2に示した車両100の詳細を示す構成図である。本実施の形態は、電気自動車、ハイブリッド自動車のいずれにも適用可能である。図1では、電気自動車と共通する要素のみが示されているが、図5では、エンジンをモータと併用するハイブリッド自動車の構成がより詳細に示されている。
【0048】
図5を参照して、車両100は、蓄電装置150と、システムメインリレーSMR1と、昇圧コンバータ162と、インバータ164,166と、モータジェネレータ172,174と、エンジン176と、動力分割装置177と、駆動輪178とを含む。
【0049】
車両100は、さらに、二次自己共振コイル112と、二次コイル114と、整流器140と、DC/DCコンバータ142と、システムメインリレーSMR2と、電圧センサ190とを含む。
【0050】
車両100は、さらに、制御装置180と、カメラ120と、通信ユニット130と、給電ボタン122とを含む。
【0051】
この車両100は、エンジン176およびモータジェネレータ174を動力源として搭載する。エンジン176およびモータジェネレータ172,174は、動力分割装置177に連結される。そして、車両100は、エンジン176およびモータジェネレータ174の少なくとも一方が発生する駆動力によって走行する。エンジン176が発生する動力は、動力分割装置177によって2経路に分割される。すなわち、一方は駆動輪178へ伝達される経路であり、もう一方はモータジェネレータ172へ伝達される経路である。
【0052】
モータジェネレータ172は、交流回転電機であり、たとえばロータに永久磁石が埋設された三相交流同期電動機を含む。モータジェネレータ172は、動力分割装置177によって分割されたエンジン176の運動エネルギーを用いて発電する。たとえば、蓄電装置150の充電状態(「SOC(State Of Charge)」とも称される。)が予め定められた値よりも低くなると、エンジン176が始動してモータジェネレータ172により発電が行なわれ、蓄電装置150が充電される。
【0053】
モータジェネレータ174も、交流回転電機であり、モータジェネレータ172と同様に、たとえばロータに永久磁石が埋設された三相交流同期電動機を含む。モータジェネレータ174は、蓄電装置150に蓄えられた電力およびモータジェネレータ172により発電された電力の少なくとも一方を用いて駆動力を発生する。そして、モータジェネレータ174の駆動力は、駆動輪178に伝達される。
【0054】
また、車両の制動時や下り斜面での加速度低減時には、運動エネルギーや位置エネルギーとして車両に蓄えられた力学的エネルギーが駆動輪178を介してモータジェネレータ174の回転駆動に用いられ、モータジェネレータ174が発電機として作動する。これにより、モータジェネレータ174は、走行エネルギーを電力に変換して制動力を発生する回生ブレーキとして作動する。そして、モータジェネレータ174により発電された電力は、蓄電装置150に蓄えられる。
【0055】
動力分割装置177は、サンギヤと、ピニオンギヤと、キャリアと、リングギヤとを含む遊星歯車を使用することができる。ピニオンギヤは、サンギヤおよびリングギヤと係合する。キャリアは、ピニオンギヤを自転可能に支持するとともに、エンジン176のクランクシャフトに連結される。サンギヤは、モータジェネレータ172の回転軸に連結される。リングギヤはモータジェネレータ174の回転軸および駆動輪178に連結される。
【0056】
蓄電装置150は、再充電可能な直流電源であり、たとえばリチウムイオンやニッケル水素などの二次電池を含む。蓄電装置150は、DC/DCコンバータ142から供給される電力を蓄えるほか、モータジェネレータ172,174によって発電される回生電力も蓄える。そして、蓄電装置150は、その蓄えた電力を昇圧コンバータ162へ供給する。なお、蓄電装置150として大容量のキャパシタも採用可能であり、給電装置200(図1、図2)から供給される電力やモータジェネレータ172,174からの回生電力を一時的に蓄え、その蓄えた電力を昇圧コンバータ162へ供給可能な電力バッファであれば如何なるものでもよい。
【0057】
システムメインリレーSMR1は、蓄電装置150と昇圧コンバータ162との間に配設される。システムメインリレーSMR1は、制御装置180からの信号SE1が活性化されると、蓄電装置150を昇圧コンバータ162と電気的に接続し、信号SE1が非活性化されると、蓄電装置150と昇圧コンバータ162との間の電路を遮断する。昇圧コンバータ162は、制御装置180からの信号PWCに基づいて、正極線PL2の電圧を蓄電装置150から出力される電圧以上の電圧に昇圧する。なお、この昇圧コンバータ162は、たとえば直流チョッパ回路を含む。
【0058】
インバータ164,166は、それぞれモータジェネレータ172,174に対応して設けられる。インバータ164は、制御装置180からの信号PWI1に基づいてモータジェネレータ172を駆動し、インバータ166は、制御装置180からの信号PWI2に基づいてモータジェネレータ174を駆動する。なお、インバータ164,166は、たとえば三相ブリッジ回路を含む。
【0059】
二次自己共振コイル112は、両端がスイッチ(リレー113)を介してコンデンサ111に接続されており、スイッチ(リレー113)が導通状態となったときに給電装置200の一次共振コイルと電磁場を介して共鳴する。この共鳴により給電装置200から受電が行なわれる。なお、図5ではコンデンサ111を設けた例を示したが、コンデンサに代えてコイルの浮遊容量によって共振するように、一次自己共振コイルとの調整をしてもよい。
【0060】
なお、二次自己共振コイル112については、給電装置200の一次自己共振コイルとの距離や、一次自己共振コイルと二次自己共振コイル112との共鳴強度を示すQ値(たとえばQ>100)およびその結合度を示すκなどが大きくなるようにその巻数が適宜設定される。
【0061】
二次コイル114は、二次自己共振コイル112と同軸上に配設され、電磁誘導により二次自己共振コイル112と磁気的に結合可能である。この二次コイル114は、二次自己共振コイル112により受電された電力を電磁誘導により取出して整流器140へ出力する。なお、二次自己共振コイル112および二次コイル114は、図1に示した受電ユニット110を形成する。
【0062】
整流器140は、二次コイル114によって取出された交流電力を整流する。DC/DCコンバータ142は、制御装置180からの信号PWDに基づいて、整流器140によって整流された電力を蓄電装置150の電圧レベルに変換して蓄電装置150へ出力する。
【0063】
システムメインリレーSMR2は、DC/DCコンバータ142と蓄電装置150との間に配設される。システムメインリレーSMR2は、制御装置180からの信号SE2が活性化されると、蓄電装置150をDC/DCコンバータ142と電気的に接続し、信号SE2が非活性化されると、蓄電装置150とDC/DCコンバータ142との間の電路を遮断する。電圧センサ190は、整流器140とDC/DCコンバータ142との間の電圧VRを検出し、その検出値を制御装置180へ出力する。
【0064】
制御装置180は、アクセル開度や車両速度、その他種々のセンサからの信号に基づいて、昇圧コンバータ162およびモータジェネレータ172,174をそれぞれ駆動するための信号PWC,PWI1,PWI2を生成する。制御装置180は、生成した信号PWC,PWI1,PWI2をそれぞれ昇圧コンバータ162およびインバータ164,166へ出力する。そして、車両の走行時、制御装置180は、信号SE1を活性化してシステムメインリレーSMR1をオンさせるとともに、信号SE2を非活性化してシステムメインリレーSMR2をオフさせる。
【0065】
また、給電装置200(図2)から車両100への給電が行なわれるとき、カメラ120によって撮影された画像がカメラ120から制御装置180に送信される。また、給電装置200から送出される交流信号を二次自己共振コイル112および二次コイル114で受信した結果に応じて電圧センサ190の出力する電圧VRや位相検波器116の出力が変化する。制御装置180は、画像や位相検波器116および電圧センサ190の出力に基づいて、給電装置200の送電ユニット220(図1)へ当該車両を誘導するように車両の駐車制御を実行する。制御装置180は、メモリ181に電圧センサ190の出力する電圧VRや位相検波器116の出力を記憶させ、大きさや符号の変化を随時監視する。
【0066】
車両の位置合わせが完了していない状態では給電装置200から大きな電力を送ることは好ましくない。したがって、位置合わせが完了するまでは微弱電力で送信を行なって受電状態を確認する。
【0067】
駐車制御が完了すると、制御装置180は、通信ユニット130を介して給電装置200へ給電指令を送信するとともに、信号SE2を活性化してシステムメインリレーSMR2をオンさせる。そして、制御装置180は、DC/DCコンバータ142を駆動するための信号PWDを生成し、その生成した信号PWDをDC/DCコンバータ142へ出力する。
【0068】
図6は、図5に示した制御装置180の機能ブロック図である。
図6を参照して、制御装置180は、IPA(Intelligent Parking Assist)−ECU(Electronic Control Unit)410と、EPS(Electric Power Steering)420と、MG(Motor-Generator)−ECU430と、ECB(Electronically Controlled Brake)440と、EPB(Electric Parking Brake)450と、共鳴ECU460と、HV(Hybrid Vehicle)−ECU470と、記憶部471とを含む。記憶部471は、図5に示すメモリ181に対応するものであり、いずれかのECUに内蔵されるメモリであっても良い。
【0069】
IPA−ECU410は、車両の動作モードが充電モードのとき、カメラ120から受ける画像情報に基づいて、給電装置200の送電ユニット220(図2)へ車両を誘導する誘導制御を実行する。
【0070】
具体的には、IPA−ECU410は、カメラ120から受ける画像情報に基づいて送電ユニット220を認識する。ここで、送電ユニット220には、送電ユニット220の位置および向きを示す複数の目印230(例えば発光部)が設けられており、IPA−ECU410は、カメラ120に映し出された複数の目印230の映像に基づいて送電ユニット220との位置関係(おおよその距離および向き)を認識する。そして、IPA−ECU410は、その認識結果に基づいて、送電ユニット220へ適切な向きで車両が誘導されるようにEPS420へ指令を出力する。
【0071】
また、IPA−ECU410は、送電ユニット220に車両が近づくことによって送電ユニット220が車体下部に入り込み、カメラ120によって送電ユニット220を撮影できなくなると、カメラ120からの画像情報に基づく誘導制御(第1の誘導制御)の終了をHV−ECU470へ通知する。EPS420は、第1の誘導制御時、IPA−ECU410からの指令に基づいてステアリングの自動制御を行なう。
【0072】
MG−ECU430は、HV−ECU470からの指令に基づいて、モータジェネレータ172,174および昇圧コンバータ162を制御する。詳しくは、MG−ECU430は、モータジェネレータ172,174および昇圧コンバータ162を駆動するための信号を生成してそれぞれインバータ164,166および昇圧コンバータ162へ出力する。
【0073】
ECB440は、HV−ECU470からの指令に基づいて、車両の制動を制御する。詳しくは、ECB440は、HV−ECU470からの指令に基づいて、油圧ブレーキの制御を行なうとともに、油圧ブレーキとモータジェネレータ174による回生ブレーキとの協調制御を行なう。EPB450は、HV−ECU470からの指令に基づいて、電動パーキングブレーキの制御を行なう。
【0074】
共鳴ECU460は、給電装置200(図1)から送出される電力の情報を給電装置200から通信ユニット130を介して受ける。また、共鳴ECU460は、車両における受電状態を示す位相検波器116および電圧センサ190の出力を受ける。そして、共鳴ECU460は、たとえば位相検波器116および電圧センサ190の出力の変化を観察することによって、給電装置200の送電ユニット220と車両の受電ユニット110との距離の変化を検知する。そして、共鳴ECU460は、検出した距離の変化に基づいて車両100を誘導するための第2の車両誘導処理を行なう。
【0075】
HV−ECU470は、第1および第2の車両誘導処理のいずれかの結果に基づいて車両を駆動するMG−ECU430を制御して車両100を移動させる。HV−ECU470は、IPA−ECU410が画像では送電ユニット220の位置を検出できなくなってからMG−ECU430に所定距離を超えて車両を移動させても受電ユニット110が送電ユニット220から受電する電力が所定の受電可能条件を満たさない場合には、車両100の移動を停止させるための処理を行なう。この処理は、自動でブレーキをかける処理であっても良いし、運転者にブレーキを踏むように指示する処理でも良い。
【0076】
HV−ECU470は、IPA−ECU410が画像では送電ユニット220の位置を検出できなくなってからMG−ECU430に所定距離を超えて車両を移動させても受電ユニット110が送電ユニット220から受電する電力が所定の受電可能条件を満たさない場合には、受電ユニット110による電力の受電を停止させ共鳴ECU460による誘導を中断する。
【0077】
HV−ECU470は、IPA−ECU410が画像では送電ユニット220の位置を検出できなくなってから所定距離だけ車両が移動する間に受電ユニット110が送電ユニット220から受電する電力が所定の受電可能条件を満たした場合には、共鳴ECU460による誘導を終了し、送電ユニット220から車載の蓄電装置150への充電を行なう準備を開始する。
【0078】
図7は、車両の目標位置までの距離(コイルのズレ量)と受電電圧の関係を示した図である。
【0079】
本願発明者の検討によれば、D4→D3→D2→D1の順に車両を目標位置に近づけていくと、受電電圧が単調に増加するのではなく、図7に示すように一度極小となる点(D2)を経た後に再び受電電圧が増加することが分かった。したがって、電圧のしきい値電圧をD3での受電電圧よりも低く設定すると、D3〜D4の位置で車両の位置合わせが完了すると誤判定をしてしまう。また、受電電圧の増減を監視しておきこれに基づいて目標との距離を判断する場合、D2〜D3の位置は目標に近づくと受電電圧が低下するので注意が必要である。
【0080】
図7に示すように、電磁界解析のシミュレーション結果とこのような特性の実測値とは良く一致している。また、電磁界解析のシミュレーション結果では、D2に示す極小点の前後では、二次自己共振コイルの周囲にできる磁束の向きが変わっていることが判明した。この現象について図を用いて詳しく説明する。
【0081】
図8は、一次自己共振コイルと二次自己共振コイルのズレについて説明するための模式図である。
【0082】
図8を参照して、一次自己共振コイル234の中心軸をY1とし、二次自己共振コイル112の中心軸をY2とすると、ズレ量はDで規定される。後に図10等で示される磁界観測面はコイルが配置される空間を図8の破線で示される面で切った断面である。
【0083】
図9は、ズレ量D=0である状態を示した図である。
図10は、ズレ量D=0のときの自己共振コイルの周囲の磁界を示した図である。
【0084】
図9を参照して、一次コイル232に高周波交流電流を流すと、一次自己共振コイル234に電磁誘導によって電流Iが流れる。そして共鳴によって二次自己共振コイル112にも同じ方向の電流Iが流れる。このとき、図8で示した磁界観測面においては、一次自己共振コイル234と二次自己共振コイル112の周囲には図10の矢印に示すような磁界が発生している。
【0085】
図11は、ズレ量D=D1である状態を示した図である。
図12は、ズレ量D=D1のときの自己共振コイルの周囲の磁界を示した図である。
【0086】
図11を参照して、一次コイル232に高周波交流電流を流すと、一次自己共振コイル234に電磁誘導によって電流が流れる。そして共鳴によって二次自己共振コイル112にも同じ方向の電流が流れる。このとき、図8で示した磁界観測面においては、一次自己共振コイル234と二次自己共振コイル112の周囲には図12の矢印に示すような磁界が発生している。このとき受電電圧はズレ量Dが増加した分ズレ量D=0の時よりも低くなる。
【0087】
図13は、ズレ量D=D2である状態を示した図である。
図14は、ズレ量D=D2のときの自己共振コイルの周囲の磁界を示した図である。
【0088】
図13を参照して、一次コイル232に高周波交流電流を流すと、一次自己共振コイル234に電磁誘導によって電流が流れる。しかし、ズレ量Dは図11の場合よりも増加しコイル径のちょうど半分となっており、二次自己共振コイル112には電流はわずかしか流れなくなる。このとき、図8で示した磁界観測面においては、一次自己共振コイル234と二次自己共振コイル112の周囲には図14の矢印に示すような磁界が発生している。このとき受電電圧は極小となる。
【0089】
図15は、ズレ量D=D3である状態を示した図である。
図16は、ズレ量D=D3のときの自己共振コイルの周囲の磁界を示した図である。
【0090】
図15を参照して、一次コイル232に高周波交流電流を流すと、一次自己共振コイル234に電磁誘導によって電流が流れる。今度は、ズレ量Dはさらに大きくなりコイル径と同じくらいになっている。このとき、図8で示した磁界観測面においては、一次自己共振コイル234と二次自己共振コイル112の周囲には図16の矢印に示すような磁界が発生している。二次自己共振コイル112の周囲の磁束の向きは、図10、図11に示した場合と逆向きであり、二次自己共振コイル112の電流Iも図9に示した場合とは逆向きとなる。
【0091】
再び図7を参照して、ズレ量がD3の位置とD1の位置で二次自己共振コイル112には電流が逆向きに流れる。すなわち電流位相が反転しているので、車両を目標位置に近づける際に、電流位相が反転することを検出してから受電電圧が増加するように位置合わせを行なうと精度良く位置合わせを行なうことができる。
【0092】
図17は、図5の制御装置180が実行する駐車支援制御を説明するためのフローチャートである。
【0093】
図5、図17を参照して、まず処理が開始されると、ステップS100において制御装置180は、カメラ120で撮影した画像を用いて駐車支援を実行する。駐車支援は、自動でハンドル角を制御したりアクセルやブレーキを制御したりするのでもよいし、目標位置との距離をディスプレイ上に示すなど運転者が車両を移動させるための情報を表示するのでも良い。このステップS100に代えて、運転者が目視で目標位置近傍に車両を移動させるようにしても良い。
【0094】
続いて、制御装置180は、ステップS200において、微弱電力を一次自己共振コイル234から送電するように給電装置200に対して要求し、二次自己共振コイル112の受電状態に基づいて車両位置を微調整するように駐車支援を実行する。
【0095】
そして駐車位置が確定したら、制御装置180は、ステップS300において給電装置に対して充電用の電力を一次自己共振コイル234から送電するように要求し、非接触受電を本格的に開始し、充電が完了するとステップS400において処理が終了する。
【0096】
図18は図17のステップS200の処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
【0097】
図5、図18を参照して、ステップS1〜S4において車両の位置合わせのための初期信号の捕捉処理が実行される。つづいてステップS5〜S6において、図7で説明した極小点の捕捉処理が実行される。さらにステップS7〜S8において位置ずれ判定処理が実行される。その後S9で車両の停止が行なわれた後、ステップS10において制御は図17のフローチャートに戻されステップS300の受電制御が実行される。
【0098】
まず、図17においてステップS100からステップS200に処理が進むと、ステップS1で二次自己共振コイル112の受電状態に基づく車両の位置検出動作が作動開始する。たとえば具体的には、制御装置180は、リレー113を導通させ、給電装置との間で通信を行ない、微弱な位置検出用の送電を開始するように要求する。
【0099】
続いて、ステップS2において車両が目標に近づけるように移動されるとともに、位相検波器116による位相測定が実行される。
【0100】
図19は、位相検波器116の概略構成を示した図である。
図19を参照して、位相検波器116は、二次自己共振コイル112で受電され、二次コイル114に伝達された微弱電力に起因する受信信号を受ける入力ノード502と、参照信号を発生する信号源504と、参照信号と受信信号とが入力される掛算器506と、掛算器506の出力を受けるローパスフィルタ(LPF)508とを含む。信号源504が発生する参照信号は、入力信号と周波数が等しく、位相が固定された信号である。
【0101】
掛算器506では2つの正弦波が乗算され、信号位相に応じたDCレベルがLPF508の出力FOUTとして得られる。
【0102】
入力信号をsinαとし、入力信号と周波数が等しい参照信号をsinβとすると、掛算器506の出力は、次式で与えられる。
sinα・sinβ=(cos(α−β)−cos(α+β))/2
ここで、位相が一致するとα=βであるので、これを代入すると式の右辺は(cos(0)−cos(2α))/2=(1−cos(2α))/2となる。これは、入力信号の振幅に比例した直流分と、入力信号の周波数の2倍の周波数の交流分である。交流分をローパスフィルタで除去すると、直流分が得られることになる。なお、参照信号は方形波であっても良く、一般的なアナログ式ロックアンプでは、参照信号に方形波が採用され、掛算器として入力信号の正転および反転信号を方形波に応じて切り替えるスイッチが採用されることもある。
【0103】
位相がずれると、この直流分は位相のズレに応じて変化する。またノイズなど参照信号と非同期な入力信号の場合は、長期的には位相検波器116の出力はゼロとなる。
【0104】
つまり、位相検波器116への入力信号が正弦波なら、掛算する参照信号が正弦波でも方形波でも、基本波の位相を基準にすれば、入力信号の信号振幅A、位相差Δαとすると、平均出力は、A×cos(Δα)に比例する。
【0105】
入力信号と参照信号との位相差が一定ならば、出力は入力信号の振幅に比例し振幅検波になる。位相差ゼロで振幅感度最大、位相感度最小である。入力信号の振幅が一定なら、位相検波器116の出力は信号位相の関数であり位相検波になる。位相+90°または−90°で位相検波器116の出力は出力ゼロ、位相感度最大となる。
【0106】
再び、図5、図18を参照して、ステップS2において位相が測定された後に、ステップS3において、測定値がしきい値V1より大きいか否かが判断される。ステップS3で測定値がしきい値V1より大きくなければ、ステップS2に処理が戻り再び車両の移動と位相の測定が実行される。
【0107】
ステップS3において測定値がしきい値V1より大きい場合には、ステップS4に処理が進む。なお、ステップS2、S3は、ステップS4で位相測定を行なうためのタイミングを決めるための処理であり、同期された入力信号が確認されればよいので、ステップS8で実施するような受電電圧が所定値(ただしこの所定値はステップS8の目標値よりも小さい)に到達したことを確認する処理に代えても良い。
【0108】
ステップS4では、制御装置180は、位相検波器116で測定した位相を図5のメモリ181(図6では記憶部471)に記録させる。測定値は、記録値Kとしてメモリ181に保存される。この記録値Kを記録するときの車両位置は、図7のD2よりずれ量が小さくなる位置ではよくない。位相の測定値が車両を目標に向けて移動させても反転しなくなっているからである。
【0109】
したがって、ステップS1,S2で位相測定を開始し始めるタイミングは、あまり目標位置に近いと良くなく、目標位置からある程度ずれていることが分かっている位置(たとえばズレ量Dが少なくともコイル径の半分以上であることが分かっている位置)から位相測定を開始する必要がある。目視やカメラで大まかな位置合わせを行なう際にあまりズレ量Dを小さくしすぎないようにして、わざとずらした位置にしてからステップS1、S2の処理が開始される。車両を目標位置に一致させることは難しいが、確実にずれているようにするのは容易である。なお、目視やカメラで大まかな位置合わせを行なうことと並行して、位相の測定を開始しておいても良い。そうすれば、図7のD2〜D4の間の山を見逃してズレ量がD2より小の位置で測定値を記録してしまうことを回避できる。
【0110】
そして、ステップS5に処理が進み、再び車両の移動および位相の測定処理が実行される。図7の極小点を与える距離D2の前後で、位相の符号は反転する。これを検出するためにステップS6において、位相を示す測定値の符号が記録値Kの符号に対して反転したか否かが判断される。ステップS6において符号の反転が認められない場合には、図7の極小点を与える距離D2〜D4の間に対応する位置に車両があると考えられる。したがって、図7の距離D1〜D2に対応する車両位置のように車両を目標に向けて移動させると受電電圧が単純に増加する状態とするには、目標に向けてさらに車両を移動させる必要がある。
【0111】
ステップS6において符号の反転が認められた場合には、車両は図7の距離D1〜D2に対応する位置にあるので、受電電圧による位置ずれ判定処理を開始する。ステップS7において車両の移動と電圧測定を実行する。ステップS8において受電電圧が目標値(図7の検出しきい値Vth)に到達していない場合にはステップS7の処理を繰返す。ステップS8において受電電圧が目標値に到達した場合には、ステップS9において車両を停止させ、ステップS10において制御は図17に戻り、その後ステップS300の充電が開始される。
【0112】
なお、ステップS2,S5,S7の車両の移動は、車両が自動で行なっても行なわなくてもよい。自動で行なわない場合には、制御装置180がディスプレイ等を使用して車両を移動させるべき方向を運転者に指示し、運転者がその指示に従って車両を動かすようにすればよい。
【0113】
このように電圧測定による位置検出に先立って、位相が反転する車両位置を認識すれば、受電電圧に極小点があっても正確に受電コイルの位置合わせを行なうことができる。
【0114】
最後に、再び図を参照して本実施の形態について総括する。図5を参照して、本実施の形態に開示される共鳴型非接触受電装置の位置決め支援装置は、共鳴法によって電力を受電する二次自己共振コイル112に生じる電流の位相を測定するための位相検波器116と、二次自己共振コイル112の受電電圧を測定するための受電電圧センサ190と、位相および受電電圧を記録するメモリ181と、二次自己共振コイル112の位置決め制御を実行する制御装置180とを備える。制御装置180は、二次自己共振コイル112の位置の検出開始後の初期段階に、位相検波器116で測定した測定値をメモリ181に記録し、メモリ181に記録した測定値に対して現在位相検波器116で測定した測定値の符号が反転するまで初期段階よりも二次自己共振コイル112の位置を目標方向に移動させるための制御を実行し、位相検波器116で測定した測定値の符号が反転してから受電電圧センサ190で測定した受電電圧VRに基づいて二次自己共振コイル112の位置合わせを行なうための制御を実行する。
【0115】
好ましくは、二次自己共振コイル112は車両に搭載される。制御装置180は、二次自己共振コイル112の位置を目標方向に移動させるために、車両の駆動輪178を駆動する。
【0116】
好ましくは、二次自己共振コイル112は車両に搭載される。制御装置180は、二次自己共振コイル112の位置を目標方向に移動させるために、運転者に車両の移動方向を指示する。
【0117】
好ましくは、制御装置180がメモリ181に記録する測定値は、少なくとも所定距離(例えば二次自己共振コイル112の直径の半分より大きい距離)だけ自己共振コイルが目標位置から遠ざかっている時に測定された値である。
【0118】
好ましくは、位置決め支援装置は、車両の周囲状況を撮影するカメラ120をさらに備える。制御装置180は、カメラ120で撮影された映像に基づいて、二次自己共振コイル112の位置を目標位置に近づけてから、位相検波器116および受電電圧センサ190の測定結果に基づいて二次自己共振コイル112の位置の微調整を行なう。
【0119】
図5、図18を参照して、この発明は、他の局面では、二次自己共振コイル112を含む共鳴型非接触受電装置の位置決め方法であって、二次自己共振コイル112の位置の検出開始後の初期段階に二次自己共振コイル112に生じる電流の位相を測定して記録するステップS4と、記録するステップで記録した記録値Kに対して現在測定した電流の位相の測定値の符号が反転するまで、初期段階よりも二次自己共振コイル112の位置を目標方向に移動させるための制御を実行するステップS5,S6と、測定した電流の位相の符号が反転してから二次自己共振コイル112の受電電圧に基づいて二次自己共振コイル112の位置合わせを行なうための制御を実行するステップS7,S8とを備える。
【0120】
本実施の形態では、極小点の前後で二次自己共振コイルの電流波形の状態が変化(位相変化)すること検出し、その後の受電電圧に基づく距離検出の精度を向上させることにこれを役立てることができる。
【0121】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0122】
10 車両用給電システム、100 車両、110 受電ユニット、111 コンデンサ、112,340 二次自己共振コイル、113 リレー、114,350 二次コイル、116 位相検波器、120 カメラ、122 給電ボタン、130,240 通信ユニット、140 整流器、142 DC/DCコンバータ、150 蓄電装置、162 昇圧コンバータ、164,166 インバータ、172,174 モータジェネレータ、176 エンジン、177 動力分割装置、178 駆動輪、180 制御装置、181 メモリ、190 電圧センサ、200 給電装置、210 高周波電源装置、220 送電ユニット、230 目印、232,320 一次コイル、234,330 一次自己共振コイル、310 高周波電源、360 負荷、410 IPA−ECU、460 共鳴ECU、470 HV−ECU、471 記憶部、502 入力ノード、504 信号源、506 掛算器、PL1,PL2 正極線、SMR1,SMR2 システムメインリレー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共鳴法によって電力を受電する自己共振コイルに生じる電流の位相を測定するための位相測定部と、
前記自己共振コイルの受電電圧を測定するための受電電圧測定部と、
前記位相および前記受電電圧を記録する記録部と、
前記自己共振コイルの位置決め制御を実行する制御部とを備え、
前記制御部は、前記自己共振コイルの位置の検出開始後の初期段階に前記位相測定部で測定した測定値を前記記録部に記録し、前記記録部に記録した測定値に対して現在前記位相測定部で測定した測定値の符号が反転するまで前記初期段階よりも前記自己共振コイルの位置を目標方向に移動させるための制御を実行し、前記位相測定部で測定した測定値の符号が反転してから前記受電電圧測定部で測定した受電電圧に基づいて前記自己共振コイルの位置合わせを行なうための制御を実行する、共鳴型非接触受電装置の位置決め支援装置。
【請求項2】
前記自己共振コイルは車両に搭載され、
前記制御部は、前記自己共振コイルの位置を前記目標方向に移動させるために、前記車両の駆動輪を駆動する、請求項1に記載の共鳴型非接触受電装置の位置決め支援装置。
【請求項3】
前記自己共振コイルは車両に搭載され、
前記制御部は、前記自己共振コイルの位置を前記目標方向に移動させるために、運転者に車両の移動方向を指示する、請求項1に記載の共鳴型非接触受電装置の位置決め支援装置。
【請求項4】
前記制御部が前記記録部に記録する前記測定値は、少なくとも前記自己共振コイルの直径の半分より大きい距離だけ前記自己共振コイルが目標位置から遠ざかっている時に測定された値である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の共鳴型非接触受電装置の位置決め支援装置。
【請求項5】
車両の周囲状況を撮影するカメラをさらに備え、
前記制御部は、前記カメラで撮影された映像に基づいて、前記自己共振コイルの位置を目標位置に近づけてから、前記位相測定部および前記受電電圧測定部の測定結果に基づいて前記自己共振コイルの位置の微調整を行なう、請求項1〜4のいずれか1項に記載の共鳴型非接触受電装置の位置決め支援装置。
【請求項6】
自己共振コイルを含む共鳴型非接触受電装置の位置決め方法であって、
前記自己共振コイルの位置の検出開始後の初期段階に自己共振コイルに生じる電流の位相を測定して記録するステップと、
前記記録するステップで記録した測定値に対して現在測定した電流の位相の測定値の符号が反転するまで前記初期段階よりも前記自己共振コイルの位置を目標方向に移動させるための制御を実行するステップと、
測定した電流の位相の符号が反転してから前記自己共振コイルの受電電圧に基づいて前記自己共振コイルの位置合わせを行なうための制御を実行するステップとを備える、共鳴型非接触受電装置の位置決め方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−254633(P2011−254633A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127008(P2010−127008)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】