説明

内燃機関の制御装置

【課題】新たなセンサを設けることなく機関逆回転の発生を速やかに検出することができ、且つ、クランクシャフト停止時のカウンタを的確に実クランク角に対応させて次回の機関運転時における始動性向上を図る。
【解決手段】エンジン停止過程での逆回転発生の検出は、バルブタイミング可変機構9の駆動に用いるべく吸気カムシャフト7に連結された電動機10を駆動制御するために電動機10に設けられた回転センサ18〜20という、既存のセンサを利用して行われる。そして、逆回転発生が検出されると、以後はクランク角を把握するためのカウンタCがクランク信号出力毎にデクリメントされる。更に、逆回転発生と当該逆回転発生の検出とのタイミングのずれに起因するカウンタCと実際のクランク角とのずれが、そのずれに対応した値である減算値Yの算出、及び、同減算値Yの分のカウンタCの減算を通じて解消される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用エンジン等の内燃機関においては、クランク信号及びカム信号からクランク角が把握され、当該クランク角に基づいて燃料噴射及び点火が行われる(特許文献1参照)。
【0003】
ここで、上記クランク信号は、クランクシャフトに取り付けられたクランクロータ近傍のクランクポジションセンサから、同シャフトの回転に伴い例えばクランク角30°毎に出力されるものである。すなわち、上記クランクロータの外形は、このような等間隔のクランク信号がクランクポジションセンサから出力されるような形状に形成される。一方、上記カム信号は、カムシャフトに取り付けられたカムロータ近傍のカムポジションセンサから、カムシャフトの360°回転毎(クランク角720°毎)に出力されるものである。すなわち、上記カムロータの外形は、このようなカム信号がカムポジションセンサから出力されるような形状に形成される。なお、上記カム信号の出力間隔については、同カム信号が気筒判別等に用いられるだけであり、クランク信号のように30°CA毎といった短い出力間隔とする必要はないことから、クランク信号の出力間隔(30°CA毎)に比べてクランク角720°毎という長い間隔にされている。
【0004】
そして、上記クランク信号及びカム信号に基づいてクランク角を把握する際には、例えばクランク信号出力毎にインクリメントされるカウンタが用いられることとなる。このカウンタは、機関始動開始後にスタータによりクランクシャフト及びカムシャフトをある程度回転させ、クランク信号及びカム信号に基づき最初にクランク角が0°になった旨判断できたとき「0」にセットされる。その後、カウンタは、クランク信号出力毎にインクリメントされ、クランク角0°から始まる内燃機関の1サイクルが終了したとき、言い換えればクランク角720°に達してカウンタが720°CAに対応した値になるときには「0」に戻される。従って、0〜720°CAの間にはカウンタがクランク角30°毎に「1」ずつ増加し、そのカウンタに基づいてクランク角を把握することが可能になる。
【0005】
ところで、内燃機関の始動性を向上させるには、始動開始後の早期に燃料噴射及び点火を開始することが好ましい。このため、機関運転終了時(クランクシャフト停止時)のカウンタのカウント値を記憶しておき、次回の機関始動開始時には当該記憶されたカウント値をカウンタの初期値とすることで、上記カウント値を機関停止を間においた機関運転間で引き継ぐことが考えられる。このカウント値の引き継ぎを行うことで、機関始動開始後に直ちにカウンタに基づきクランク角を把握することができ、当該クランク角に基づき燃料噴射及び点火を機関始動開始後の早期に開始することが可能になる。
【0006】
しかしながら、内燃機関の運転中からの停止に際しては、燃料噴射や点火の停止後に機関回転速度が圧縮行程での燃焼室内の圧力等による回転抵抗によって徐々に低下してゆき、最終的に上記燃焼室内の圧力によって内燃機関が一旦逆回転した後に機関回転が停止する。このため、クランク信号の出力毎にカウンタをインクリメントするだけでは、上記逆回転の発生後にカウンタと実クランク角との間にずれが生じる。これは、逆回転発生後は、クランク信号の出力毎に実クランク角が小になるのにもかかわらずカウンタがインクリメントされるためである。このため、上記逆回転が発生したときには、カウント値を実クランク角に合わせるための対策を講じないと、クランクシャフト停止時のカウンタのカウント値が実クランク角に対応しなくなる。
【0007】
ここで、上記対策を講じるには逆回転発生を検出する必要がある。しかし、クランク信号及びカム信号の出力パターンは内燃機関の正回転時と逆回転時とでほとんど変わらないため、それらの出力パターンに基づいて逆回転の発生を検出することは困難である。そこで、特許文献2の技術を適用して内燃機関の逆回転発生を検出することも考えられる。この特許文献2では、二つのクランクポジションセンサを設け、機関正回転時に二つのクランクポジションセンサからのクランク信号が互いに異なるタイミングで出力されるように各センサを配置している。この場合、二つのセンサからのクランク信号の出力タイミングのずれ状態が内燃機関の正回転時と逆回転時とで異なるようになるため、そのずれ状態に基づき内燃機関での逆回転発生が検出される。
【特許文献1】特開平8−144825公報(段落番号[0010]、図3、図4)
【特許文献2】特公平6−50107公報(第3頁左欄19〜31行)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように特許文献2の技術を適用して内燃機関の逆回転発生を検出した場合、逆回転が実際に発生した後の比較的早い時期に当該逆回転の発生を検出することはできる。これは、内燃機関の逆回転に伴う上記ずれ状態の変化が、実際に逆回転が発生した後の比較的早い時期に現れるためである。しかし、こうした逆回転発生の検出では、二つのクランクポジションセンサを設けなければならず、余分にクランクポジションセンサを設ける分の手間やコストアップは避けられない。
【0009】
また、逆回転発生の検出を実際の逆回転発生後の比較的早期に行うことができるといっても、実際の逆回転発生から当該逆回転発生の検出までにはある程度の時差(タイミングのずれ)が生じる。このため、当該時差に対応する期間中には上記対策を実施することができず、その時差に起因して上記対策を実施するのが遅れてしまう。その結果、当該対策の実施遅れの分だけ、同対策の実施後にもカウンタと実クランク角との間にずれが残り、クランクシャフト停止時のカウンタのカウント値を実クランク角に対応させることが困難になる。
【0010】
そして、クランクシャフト停止時のカウンタのカウンタ値が実クランク角に対応していないまま記憶され、次回の機関始動開始時のカウンタの初期値として用いられると、その始動開始後にカウンタに基づいて把握されるクランク角が誤ったものとなる。その結果、始動開始後の初回の燃料噴射及び点火を的確なタイミング(クランク角)で実施できず、内燃機関の始動性を向上させることができなくなる。
【0011】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、新たなセンサを設けることなく機関逆回転の発生を速やかに検出することができ、且つ、クランクシャフト停止時のカウンタを的確に実クランク角に対応させて次回の機関運転時における始動性向上を図ることのできる内燃機関の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明では、クランクシャフトが一定角度回転する毎にクランク信号を出力するクランクポジションセンサと、前記クランクシャフト及びカムシャフトのうちの一方に連結された回転電機とを備える内燃機関に適用され、前記回転電機のロータ周りに配設されて同ロータの回転によって生じる誘起電圧に応じた信号を出力する複数の回転センサからの信号を加味して前記回転電機を制御するとともに、前記クランク信号の出力毎にインクリメントされるカウンタに基づきクランク角を把握して当該クランク角に基づき内燃機関の運転制御を実行する内燃機関の制御装置において、前記複数の回転センサからの信号の出力パターンが正回転時の出力パターンと異なることに基づき内燃機関での逆回転発生を検出する検出手段と、前記検出手段による逆回転発生の検出後、前記クランク信号の出力毎に前記カウンタをデクリメントするデクリメント手段と、内燃機関での実際の逆回転発生と当該逆回転発生の検出とのタイミングのずれに起因する前記カウンタと実際のクランク角とのずれに対応した減算値を算出し、その減算値の分だけ前記カウンタを減算する減算手段と、機関停止時の前記カウンタのカウント値を記憶しておき、次回の機関始動時には前記記憶されたカウント値を前記カウンタの初期値とする初期値設定手段とを備えた。
【0013】
内燃機関においては、通常、クランクシャフトやカムシャフトに各種回転電機が接続されている。こうした回転電機としては、例えばクランクシャフトに連結された発電機があげられる。また、ハイブリッド車両に搭載される内燃機関においては、クランクシャフトに同機関の回転をアシストする電動機が回転電機として連結される。更に、クランクシャフトに対するカムシャフトの相対回転位相を変更するバルブタイミング可変機構を備える内燃機関であって、そのバルブタイミング可変機構として電動式のものを採用した場合には、カムシャフトに連結された上記相対回転位相を変更するための電動機が回転電機として連結される。そして、上述した各種回転電機は、クランクシャフト及びカムシャフトと一体的に回転する。また、回転電機のロータの回転によって誘起電圧が生じると、その誘起電圧に応じた信号が各回転センサから出力される。回転電機は各回転センサからの信号を加味して制御される。
【0014】
上記各回転センサからの信号の立ち上がり及び立ち下がりについては、それら回転センサがロータ周りに配設されているため、回転センサ毎に異なるタイミングで生じる。すなわち、内燃機関の正回転時における各回転センサからの信号の出力パターンについては、同信号の立ち上がり及び立ち下がりがそれぞれ異なるタイミングで生じるというパターン、言い換えれば比較的短い間隔で上記立ち上がり及び立ち下がりが生じるというパターンになる。そして、内燃機関の逆回転が発生して回転電機のロータも逆回転すると、すぐに、上記信号の立ち上がり及び立ち下がりのタイミングが正回転時と異なるようになり、その信号の出力パターンの変化に基づき同機関の逆回転発生を速やかに検出することができる。また、こうした逆回転発生の検出では、回転電機を制御するのに用いられる回転センサという既存の部品を利用しているため、新たなセンサを設けることなく当該逆回転発生の検出が可能になる。
【0015】
そして、内燃機関での逆回転発生が検出されると、以後はカウンタがクランク信号出力毎にデクリメントされる。このため、逆回転発生の検出後にはクランク信号の出力毎に小となってゆくクランク角に合わせて、カウンタをクランク信号の出力毎に小とすることが可能になる。ただし、実際に逆回転が発生してから当該逆回転発生を検出するまでにある程度の時間がかかり、それら逆回転発生と当該逆回転発生の検出との時差(タイミングのずれ)に起因してカウンタのデクリメント開始が遅れてしまう。その結果、上記時差に対応する期間中は、逆回転状態にあるにもかかわらずカウンタがインクリメントされ、カウンタと実クランク角との間にずれが生じる。
【0016】
しかし、逆回転発生と当該逆回転発生の検出とのタイミングのずれに起因する前記カウンタと実際のクランク角とのずれは、そのずれに対応した値である減算値の算出、及び、当該減算値の分のカウンタの減算を通じて解消される。これにより、カウンタの実クランク角への対応が図られることとなる。このため、内燃機関の運転停止過程で逆回転が生じたとしても、クランクシャフト停止時のカウンタを的確に実クランク角に対応させることができる。そして、このときのカウンタのカウンタ値は、記憶されて次回の機関始動開始時にカウンタの初期値として用いられる。従って、上記機関始動開始時にカウンタに基づき把握されるクランク角を正確なものとすることができ、その始動開始後の早期に初回の燃料噴射及び点火を的確なタイミング(クランク角)にて実行し、内燃機関の始動性向上を図ることができるようになる。
【0017】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の発明において、前記検出手段は、前記クランク信号に基づき各回転センサからの信号の機関正回転時における理論上の立ち上がりタイミング及び立ち下がりタイミングを判別し、そのタイミングにて同信号の立ち上がり及び立ち下がりが実際に生じているか否かを判断し、そのときに同信号の立ち上がり及び立ち下がりが生じてない旨判断されることに基づき、内燃機関の逆回転が発生していることを検出するものとした。
【0018】
内燃機関の正回転時における各回転センサからの信号の理論上の立ち上がりタイミング及び立ち下がりタイミングについては、クランクポジションセンサからのクランク信号に基づき判別することができる。そして、それらタイミングがきたときに同信号の立ち上がり及び立ち下がりが実際に生じることとなる。一方、内燃機関の逆回転が生じると、回転電機のロータが逆回転して各回転センサからの信号の出力パターンが変化するのに対し、クランク信号の出力パターンは正回転時と変わらない。このため、内燃機関の逆回転時にも、正回転時と同じように、各回転センサからの信号の理論上の立ち上がりタイミング及び立ち下がりタイミングの判別が行われる。ただし、逆回転時には、ロータ逆回転に伴う上記信号の出力パターンの変化が生じていることから、クランク信号に基づき把握される上記信号の理論上の立ち上がりタイミング及び立ち下がりタイミングがきたとしても、そのときに実際に上記信号の立ち上がり及び立ち下がりが生じることはない。上記構成によれば、こうした現象が発生しているか否かが判断され、発生している旨判断されることに基づき、内燃機関の逆回転発生を的確に検出することができる。
【0019】
請求項3記載の発明では、請求項2記載の発明において、前記減算手段は、前記検出手段による逆回転発生の検出直前に信号の理論上の立ち上がりタイミング及び立ち下がりタイミングを迎えた回転センサについて、同センサからの信号が前記タイミング以降に立ち上がりと立ち下がりとの間で変化するまでの期間のクランク信号の出力回数に基づき、前記減算値を算出するものとした。
【0020】
内燃機関での逆回転発生の有無の判断は、各回転センサからの信号の理論上の立ち上がりタイミング及び立ち下がりタイミング毎に行われる。そして、各回転センサの信号における逆回転発生後の出力パターンは、当該逆回転発生前のパターンを逆回転発生時点を中心として反転させたパターンとなる。このため、逆回転発生の検出直前に信号の理論上の立ち上がりタイミング及び立ち下がりタイミングを迎えた回転センサについては、逆回転発生直後に信号の立ち上がりと立ち下がりとの間での変化が生じることになる。そして、上記回転センサにおける逆回転発生検出前の信号の理論上の立ち上がりタイミング及び立ち下がりタイミングから、逆回転発生後に同信号の立ち上がりと立ち下がりとの間で変化が生じるまでの期間(以下、出力回数判定期間という)は次のような傾向を有する。すなわち、逆回転発生のタイミングが同信号における次回の理論上の立ち上がりタイミング又は立ち下がりタイミング、言い換えれば次回の逆回転発生の有無の判断時点に近いほど長くなり、逆に遠い(判断時点よりも早い)ほど短くなる。また、この出力回数判定期間が長くなるほど、当該期間中でのクランク信号の出力回数は多くなる。
【0021】
従って、上記クランク信号の出力回数が少なくなるほど、実際の逆回転発生から当該逆回転発生の検出までの期間は長くなり、逆回転が発生しているのにカウンタがインクリメントされるという期間も長くなって、同カウンタと実クランク角とのずれが大きくなる。逆に、上記クランク信号の出力回数が多くなるほど、実際の逆回転発生から当該逆回転発生の検出までの期間は短くなり、逆回転が発生しているのにカウンタがインクリメントされるという期間も短くなって、同カウンタと実クランク角とのずれが小さくなる。
【0022】
上記構成によれば、同カウンタと実クランク角とのずれを解消すべくカウンタを減算するための減算値が、当該ずれの大きさに関連するパラメータである上記クランク信号の出力回数に基づき算出される。従って、この減算値の分だけカウンタを減算することで、同カウンタと実クランク角とのずれを的確に解消し、クランクシャフト停止時のカウンタを実クランク角に的確に対応させることができるようになる。
【0023】
請求項4記載の発明では、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発明において、前記内燃機関は前記カムシャフトに連結された電動機の駆動制御を通じて同カムシャフトの前記クランクシャフトに対する相対回転位相を変更するバルブタイミング可変機構を備えるものであり、前記回転電機は前記バルブタイミング可変機構の電動機であることを要旨とした。
【0024】
上記構成によれば、内燃機関は電動機の駆動制御を通じてクランクシャフトに対するカムシャフトの相対回転位相を変更するバルブタイミング可変機構を備えており、同機構の電動機はカムシャフトと一体回転するようになる。また、電動機のロータの回転によって誘起電圧が生じると、その誘起電圧に応じた信号が各回転センサから出力される。この電動機は各回転センサからの信号を加味して駆動制御される。上記各回転センサからの信号出力パターンについては、同信号の立ち上がり及び立ち下がりがそれぞれ異なるタイミングであって比較的短い間隔で生じるというパターンになる。そして、内燃機関の逆回転が発生して電動機のロータも逆回転すると、すぐに、上記信号の立ち上がり及び立ち下がりのタイミングが正回転時と異なるようになり、その信号の出力パターンの変化に基づき同機関の逆回転発生を速やかに検出することができる。また、こうした逆回転発生の検出では、バルブタイミング可変機構の電動機を駆動制御するのに用いられる回転センサという既存の部品を利用しているため、新たなセンサを設けることなく当該逆回転発生の検出が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を自動車用の多気筒エンジンに適用した一実施形態について図1〜図22を参照して説明する。
図1のエンジン1においては、その燃焼室2に燃料噴射弁3から噴射された燃料と吸気通路4から吸入される空気とが供給され、それら燃料と空気とからなる混合気に対し点火プラグ5による点火が行われる。このように混合気に対する点火が行われて同混合気が燃焼すると、その際の燃焼エネルギによりエンジン1が駆動されてクランクシャフト6が回転する。なお、クランクシャフト6には、エンジン1の始動時に同シャフト6を強制回転(クランキング)させるためのスタータ25が接続される。
【0026】
また、クランクシャフト6の回転は、吸気カムシャフト7及び排気カムシャフト8に伝達される。これらカムシャフト7,8は、クランクシャフト6からの回転伝達により、クランクシャフト6が720°回転するに当たり360°回転する。こうした吸気カムシャフト7及び排気カムシャフト8の回転を通じてエンジン1の吸気バルブ及び排気バルブが開閉駆動される。
【0027】
吸気カムシャフト7には、クランクシャフト6に対する吸気カムシャフト7の相対回転位相を変更して、吸気バルブのバルブタイミングを進角又は遅角させるバルブタイミング可変機構9が設けられている。このバルブタイミング可変機構9としては、吸気カムシャフト7に出力軸10aを連結した電動機10の駆動制御を通じて、クランクシャフト6に対する吸気カムシャフト7の相対回転位相を変更する電動式のものが用いられている。上記電動機10は、その出力軸10aに連結される電動機ロータ17に巻線された励磁コイルと、ステータ(図示せず)に配設されたU相、V相、W相の電機子コイルとを備える巻線界磁式の三相交流回転電気機として構成されている。この電動機10の出力軸10aは、吸気カムシャフト7に連結され、同シャフト7と一体回転する。
【0028】
上記出力軸10aの回転速度は電動機10の駆動制御を通じて増減される。そして、出力軸10aの回転速度を吸気カムシャフト7の回転速度よりも速くすると、吸気カムシャフト7の回転が増速されて同シャフト7のクランクシャフト6に対する相対回転位相が進角側に変更される。その結果、吸気バルブのバルブタイミングが進角されるようになる。また、出力軸10aの回転速度を吸気カムシャフト7の回転速度よりも遅くすると、吸気カムシャフト7の回転が減速されて同シャフト7のクランクシャフト6に対する相対回転位相が遅角側に変更される。その結果、吸気バルブのバルブタイミングが遅角されるようになる。
【0029】
次に、クランクシャフト6及び吸気カムシャフト7の回転状態を検出する検出装置について説明する。
クランクシャフト6にはクランクロータ13が取り付けられ、同クランクロータ13の近傍にはクランクポジションセンサ14が設けられている。図2は、クランクロータ13及びクランクポジションセンサ14を拡大して示した略図である。同図に示されるように、クランクロータ13の外周部には、クランクシャフト6の軸線を中心とする所定角度(この実施形態では10°)毎に合計34個の突起13aと一つの欠歯13bとが設けられている。そして、クランクシャフト6が回転すると、クランクロータ13の各突起13a及び欠歯13bが順次クランクポジションセンサ14の側方を通過する。その結果、クランクポジションセンサ14からは、図4(a)に示されるような信号、すなわちクランク角が10°進む毎に突起13aに対応したパルス状のクランク信号が出力されるとともに、クランク角180°、540°ではの欠歯13bに対応したクランク信号が出力される。この欠歯13bに対応したクランク信号は、突起13aに対応したクランク信号の三つ分の幅を有する。そして、クランクポジションセンサ14から出力されるクランク信号は、エンジン回転速度を求める際などに用いられる。
【0030】
図1に示されるように、吸気カムシャフト7にはカムロータ15が取り付けられ、同カムロータ15の近傍にはカムポジションセンサ16が設けられている。図3は、このカムロータ15及びカムポジションセンサ16を拡大して示した略図である。同図に示されるように、カムロータ15の外周部には合計三つの突起15a〜15cが設けられている。そして、各突起15a〜15cの吸気カムシャフト7の軸線を中心とする角度間隔はそれぞれ、突起15aと突起15bとで90°、突起15bと突起15cとで90°、突起15cと突起15aとで180°になっている。そして、吸気カムシャフト7が回転すると、カムロータ15の各突起15a〜15cが順次カムポジションセンサ16の側方を通過する。その結果、カムポジションセンサ16からは、図4(b)に示されるような信号、すなわちクランク角が約0°、180°、360°になったときに突起15a〜突起15cに対応したパルス状のカム信号が出力される。そして、カムポジションセンサ16から出力されるカム信号は、エンジン1の気筒判別や吸気バルブのバルブタイミング検出などに用いられる。
【0031】
次に、電動機10の回転状態を検出する検出装置について説明する。
図1に示されるように、電動機10においては、その出力軸10aに取り付けられた電動機ロータ17の周囲に合計三つの回転センサ、すなわち第1〜第3の回転センサ18〜20が等間隔に設けられている。そして、これら第1〜第3の回転センサ18〜20は、クランクシャフト6及び吸気カムシャフト7と一体回転する出力軸10aの回転に伴う電動機ロータ17の回転時、その回転によって生じる誘起電圧に応じた矩形の信号、例えば図4(c)〜(e)に示されるような信号を出力する。同図から分かるように、第1〜第3の回転センサ18〜20からそれぞれ出力される矩形の信号は、クランク角90°毎に立ち上がりと立ち下がりを繰り返し、互いにクランク角60°分ずれた状態となる。そして、第1〜第3の回転センサ18〜20からの信号は、吸気バルブのバルブタイミングを変更すべく電動機10を駆動制御するにあたって、同電動機10(出力軸10a)の回転速度や回転位置を求める際などに用いられる。
【0032】
次に、エンジン1の制御装置の電気的構成について図1を参照して説明する。
この制御装置は、エンジン1の燃料噴射制御や点火時期制御、及び、吸気バルブのバルブタイミング制御といったエンジン1の運転制御、並びに、スタータ25の駆動制御を行うエンジン制御用コンピュータ11を備えている。エンジン制御用コンピュータ11は、エンジン1の制御にかかる演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータの記憶されたROM、CPUの演算結果が一時的に記憶されるRAM、外部との間で信号を入・出力するための入・出力ポート等を備えて構成されている。
【0033】
エンジン制御用コンピュータ11には、上述したクランクポジションセンサ14及びカムポジションセンサ16が接続されるほか、更に以下のセンサを含む各種センサが接続されている。
【0034】
・自動車の運転者によって踏み込み操作されるアクセルペダルの踏み込み量(アクセル踏込量)を検出するアクセルポジションセンサ21。
・エンジン1の吸気通路4に設けられたスロットルバルブの開度(スロットル開度)を検出するスロットルポジションセンサ22。
【0035】
・上記吸気通路4を通じて燃焼室2に吸入される空気の量を検出するエアフローメータ23。
・「オフ」、[アクセサリ]、「オン」、及び、「スタート」といった四つの切換位置のいずれかに切り換え操作され、現在の切換位置に対応した信号を出力するイグニッションスイッチ24。
【0036】
また、エンジン制御用コンピュータ11には電動機10を駆動するための電動機駆動ドライバ12が接続されており、この電動機駆動ドライバ12には上述した第1〜第3の回転センサ18〜20が接続されている。エンジン制御用コンピュータ11は、電動機駆動ドライバ12に対し指令信号を出力することで電動機10を駆動制御する。一方、電動機駆動ドライバ12は、第1〜第3の回転センサ18〜20からの図4(c)〜(e)に示されるような信号を入力すると、それら各信号をエンジン制御用コンピュータ11に出力する。
【0037】
エンジン制御用コンピュータ11は、上記各種センサから入力した検出信号に基づきエンジン運転状態を把握する。そして、その把握したエンジン運転状態に応じて燃料噴射弁3、点火プラグ5、及び、電動機10を駆動することで、燃料噴射弁3からの燃料噴射の制御、及び、点火プラグ5の点火時期の制御、吸気バルブのバルブタイミング制御が行われる。なお、吸気バルブのバルブタイミング制御を行うべく電動機10を駆動制御する際には、上記回転センサ18〜20からの各信号に基づき現在の電動機10の駆動状態、すなわち出力軸10aの回転速度や回転位置などが把握され、その現在の駆動状態を加味しつつ電動機10の駆動が行われる。このように電動機10を駆動する際に現在の電動機10の駆動状態を加味するのは、その電動機10の駆動を的確に行うためである。
【0038】
エンジン1の各種運転制御のうち、燃料噴射制御や点火制御といったエンジン1の運転制御については、エンジン1のクランク角に基づき燃料噴射及び点火を行うことによって実現される。このため、エンジン1での燃料噴射及び点火を行うには、エンジン1のクランク角を把握しておく必要がある。そして、クランク角を把握する際には、クランク信号に基づきインクリメントされるカウンタが用いられることとなる。このカウンタは、クランク角0°を基準として突起13aに対応したクランク信号の出力毎にインクリメント(「1」加算)される。なお、欠歯13bに対応したクランク信号の出力時に限っては、同クランク信号が突起13aに対応したクランク信号三つ分に相当することから、カウンタに「3」が加算される。そして、カウンタがクランク角0°から始まるエンジン1の1サイクルが終了したときのクランク角に対応した値、すなわち「72(720°CA)」になったときには、同カウンタが「0」に戻される。従って、0〜720°CAの間にはカウンタがクランク角10°毎に「1」ずつ増加し、そのカウンタに基づいてクランク角を把握することが可能になる。
【0039】
次に、エンジン1の始動及び停止について説明する。
通常、エンジン1の始動及び停止は、イグニッションスイッチ24の操作に基づき、エンジン制御用コンピュータ11によるスタータ25の駆動制御、並びに、燃料噴射及び点火の制御を通じて行われる。
【0040】
すなわち、エンジン停止中、自動車の乗員によりイグニッションスイッチ24が「オフ」から「アクセサリ」、「オン」、「スタート」へと順次切り換えられると、同スイッチ24が「スタート」に切り換えられた時点でエンジン1の始動指令がなされ、スタータ25の駆動を通じてエンジン1のクランキングが開始される。そして、クランキング中に、燃焼室2への燃料と空気との供給、及び、それら燃料と空気とからなる混合気への点火が行われることで、エンジン1の自立運転が開始される。エンジン1の自立運転開始後は、イグニッションスイッチ24が「オン」に操作され、スタータ25の駆動によるクランキングが停止される。
【0041】
また、エンジン運転中、自動車の乗員によりイグニッションスイッチ24が「オン」から、「アクセサリ」、「オフ」へと順次切り換えられると、同スイッチ24が「アクセサリ」に切り換えられた時点で燃料噴射弁3からの燃料噴射、及び、点火プラグ5による点火が停止され、混合気の燃焼が行われなくなってエンジン1が停止開始される。なお、上記イグニッションスイッチ24の「オン」から「アクセサリ」への切り換えは通常、アイドル運転中に行われることから、上記のようにエンジン1が停止開始された後には、エンジン回転速度が圧縮行程での燃焼室2内の圧力等による回転抵抗によってアイドル回転速度から徐々に低下してゆく。そして、最終的には、上記燃焼室2内の圧力によってエンジン1が一旦逆回転し、その後にエンジン回転が停止することとなる。
【0042】
ところで、エンジン1の始動性を向上させるには、始動開始後のクランク角の把握を可能な限り早く行い、クランク角に基づく燃料噴射及び点火を始動開始後のできる限り早い時期に開始することが好ましい。このため、エンジン1の運転終了時(クランクシャフト6の停止時)のカウンタのカウント値をエンジン制御用コンピュータ11に設けられた不揮発性のRAMに記憶しておき、次回のエンジン始動開始時に当該記憶されたカウント値をカウンタの初期値とすることが考えられる。この場合、上記カウント値がエンジン停止を間においたエンジン運転間で引き継がれることになる。このため、エンジン始動開始後に直ちにカウンタに基づきクランク角を把握することができ、当該クランク角に基づき燃料噴射及び点火を始動開始後の早期に開始することが可能になる。
【0043】
ただし、エンジン1の運転中からの停止に際しては、エンジン1が一旦逆回転した後に停止するため、上記逆回転の発生後には実クランク角が小となってゆくのに対しカウンタがクランク信号出力毎に加算されてゆき、それらカウンタと実クランク角との間にずれが生じる。そして、そのずれへの対策を講じないと、クランクシャフト停止時のカウンタのカウント値が実クランク角に対応しなくなる。ここで、上記対策を講じるにはエンジン1での逆回転発生を検出する必要があり、こうした逆回転発生の検出として、例えば[背景技術]の欄に記載した検出の仕方を採用することが考えられる。しかし、[背景技術]の欄に記載した逆回転の検出では、逆回転発生の検出を発生後に速やかに行おうとすると、新たにクランクポジションセンサを追加しなければならず、そのための手間やコストアップは避けられないという問題がある。
【0044】
そこで本実施形態では、第1〜第3の回転センサ18〜20からの信号を利用してエンジン1の逆回転発生を検出することで、その検出を実際の逆回転発生後に速やかに行えるようにする。また、この逆回転発生の検出では、バルブタイミング可変機構9の電動機10を駆動制御するのに用いるべく当該電動機10に設けられた第1〜第3の回転センサ18〜20という既存の部品を利用しているため、新たなセンサを設けることなく逆回転発生を検出することが可能になる。
【0045】
次に、第1〜第3の回転センサ18〜20からの信号を利用したエンジン1の逆回転の検出について、図4のタイミングチャートを参照して詳しく説明する。
このタイミングチャートの横軸は、エンジン1の正回転時におけるクランク角の変化を表している。このクランク角は、図4(a)に示されるクランク信号、及び、図4(b)に示されるカム信号に基づき確定される。
【0046】
また、クランク角の変化に対する第1〜第3の回転センサ18〜20からの信号の出力パターンは、上述したように図4(c)〜(e)に示されるようなものになる。この図から分かるように、上記各回転センサ18〜20の信号は、クランク角90°毎に立ち上がりと立ち下がりを繰り返し、互いにクランク角60°分ずれた状態となる。これは上記各回転センサ18〜20が電動機ロータ17の周囲に等間隔に設けられているためである。以上のことから、上記信号の立ち上がり及び立ち下がりは、回転センサ毎に異なるタイミング、より詳しくはクランク角30°毎という比較的短い間隔毎に生じる。従って、エンジン正回転時における各回転センサ18〜20からの信号の出力パターンについては、同信号の立ち上がり及び立ち下がりがそれぞれ異なるタイミングで生じるというパターン、言い換えればクランク角30°毎という比較的短い間隔で上記立ち上がり及び立ち下がりが生じるというパターンになる。
【0047】
エンジン正回転時における各回転センサ18〜20からの信号の理論上の立ち上がりタイミング及び立ち下がりタイミングについては、クランク信号に基づき判別することができる。すなわち、本実施形態の場合には、クランク角が0°、30°、60°・・・と30°進む毎に上記立ち上がり及び立ち下がりが生じ、このタイミングを上記理論上の立ち上がり及び立ち下がりのタイミングと判別することができる。そして、エンジン正回転時には、それらのタイミングがきたときに、上記信号の実際の立ち上がり及び立ち下がりが生じることとなる。
【0048】
ここで、例えばクランク角315°でエンジン1の逆回転が開始された場合を例に、エンジン1の逆回転について考えてみる。
エンジン1が正回転してクランク角315°になったとき、同エンジン1が逆回転したとすると、それ以後のクランク信号の出力パターン及び各回転センサ18〜20からの信号の出力パターンは、クランク角315°前の各出力パターンを図中の破線L1を中心に反転させたパターンとなる。
【0049】
クランク信号は、正回転時には等間隔毎(クランク角10°毎)に出力されるものであるため、上記逆回転に伴いクランク信号の出力パターンが破線L1を中心に反転したとしても、その出力パターンは正回転時とほとんど変わらない。このため、逆回転後も正回転と同じようにクランク信号に基づき現在のクランク角が確定され、当該確定されたクランク角について0°30CA、°CA、60°CA・・・となる時点が、各回転センサ18〜20からの信号の理論上の立ち上がりタイミング及び立ち下がりタイミングであると判別される。
【0050】
一方、各回転センサ18〜20からの信号の出力パターンには、正回転から逆回転への移行に伴い図5のタイミングチャートに示されるような変化が生じる。同図5において、(a)〜(c)は正回転時における第1〜第3の回転センサからの信号の出力パターンを示している。そして、クランク角315°にてエンジン1が逆回転すると、それ以後の上記信号の出力パターンは、電動機ロータ17の逆回転に伴って図5(d)〜(f)に示されるような出力パターン、すなわちクランク角315°前の出力パターンを図中の破線L1を中心に反転させた出力パターンとなる。
【0051】
この実施形態では、第1〜第3の回転センサ18〜20からの信号の出力パターンがエンジン1の逆回転に伴い正回転時の出力パターンと異なるものになると、そのことに基づきエンジン1の逆回転が発生していることを検出する。
【0052】
上記信号の立ち上がり及び立ち下がりは、エンジン1の正回転時、クランク角30°毎という比較的短い間隔で生じている。このため、エンジン1の逆回転が生じると、それに伴い上記信号の立ち上がり及び立ち下がりのタイミングが正回転時と異なるようになるという、上記信号の出力パターンの変化が速やかに生じる。従って、当該出力パターンの変化に基づき逆回転発生を速やかに検出することができる。
【0053】
なお、上記出力パターンの変化に基づく逆回転の検出は、より具体的には、図6のフローチャートに示される手順に従って以下のように行われる。
すなわち、上述したようにエンジン1の正回転時と逆回転時とのいずれの場合であれ、クランク角の確定はクランク信号に基づいて行われ、当該クランク角について0°CA、30°CA、60°CA・・・となる時点が、各回転センサ18〜20からの信号の理論上の立ち上がりタイミング及び立ち下がりタイミングであると判別される(S101)。
【0054】
ここで、例えばクランク角315°でエンジン1の逆回転が生じたとすると、クランク信号に基づき確定されたクランク角が330°になった時点が、各回転センサ18〜20からの信号の理論上の立ち上がり及び立ち下がりのタイミングであると判別される。そして、エンジン正回転時には、上記のように判別されたタイミング(330°CA)がくると、対応する信号の立ち上がり又は立ち下がり(この場合は第1の回転センサ18からの信号の立ち下がり(図5(a)参照))が実際に生じる。しかし、エンジン1が逆回転している場合には、各回転センサ18〜20からの信号の出力パターンは正回転時の状態から変化するため、上記タイミング(330°CA)がきても、対応する信号の立ち上がり又は立ち下がりは生じない(図5(d)参照)。
【0055】
こうした現象の有無は、上記タイミングがきたとき(S102:YES)、対応する信号の立ち上がり又は立ち下がりが実際に生じているか否か(S103)によって判断される。すなわち、このタイミングにおいて、上記対応する信号の立ち上がり又は立ち下がりが実際に生じていない場合には(S103:YES)、上述した現象が発生していることになる。そして、その現象が発生していることに基づき、エンジン1の逆回転が発生していることが検出される(S104)。
【0056】
以上のような各回転センサ18〜20からの信号の出力パターンを利用した逆回転の検出は、電動機駆動ドライバ12を通じて行われる。そして、エンジン1の逆回転発生が検出されたときには電動機駆動ドライバ12からエンジン制御用コンピュータ11に図5(g)に示されるように逆回転信号「Hi」が出力される。また、エンジン1の逆回転発生が検出されていないときには、電動機駆動ドライバ12からエンジン制御用コンピュータ11に正回転信号「Lo」が出力される。
【0057】
次に、エンジン1での逆回転発生後に生じるカウンタと実クランク角とのずれの対策について、カウンタ算出ルーチンを示す図7のフローチャートを参照して説明する。このカウンタ算出ルーチンは、エンジン制御用コンピュータ11を通じて、クランク信号の出力毎に実行される。
【0058】
同ルーチンでは、クランク角を把握するのに用いられるカウンタCの加減算が行われる。そして、エンジン制御用コンピュータ11は、同ルーチンの実行を通じて加減算される毎にカウンタCのカウント値を不揮発性のRAMに記憶しておき、エンジン停止後の次回のエンジン始動開始時には上記不揮発性のRAMに記憶されたカウント値をカウンタCの初期値として設定する。これにより、エンジン1の運転が終了したときには、クランクシャフト停止時のカウンタCのカウント値が記憶され、次回のエンジン始動開始時には当該カウント値を初期値としてカウンタCの加算が開始されることになる。
【0059】
同ルーチンにおいては、まず電動機駆動ドライバ12から逆回転信号「Hi」が出力されているか否かに基づき、エンジン1の逆回転発生が検出されているか否かが判断される(S201)。
【0060】
ここで否定判定であって逆回転発生が検出されていない旨判断されると、クランク角を把握するのに用いられるカウンタCを加算するための処理(S202〜S204)が行われる。すなわち、ステップS202では、カウンタCが「18」、「54」以外であるか否かが判断される。ここで肯定判定であれば、エンジン1の正回転時に突起13aに基づくクランク信号が出力されている状況ということになり、ステップS203に進んでカウンタCがインクリメント(「1」加算)される。また、ステップS202で否定判定であれば、エンジン1の正回転時に欠歯13bに基づくクランク信号が出力されている状況ということになり、この場合に限ってはステップS204に進んでカウンタCが「3」加算される。このカウンタCは、上記加算処理を通じて「72(720°CA)」になったとき(S212:YES)、「0」に戻されることとなる(S213)。
【0061】
一方、ステップS201で肯定判定であって逆回転発生が検出されている旨判断されると、逆回転発生後のカウンタCと実クランク角とのずれへの対策として、ステップS205〜S208の処理が実行される。すなわち、ステップS205では、カウンタCが「21」、「57」以外であるか否かが判断される。ここで肯定判定であれば、エンジン1の逆回転時に突起13aに基づくクランク信号が出力されている状況ということになり、ステップS206に進んでカウンタCがデクリメント(「1」減算)される。また、ステップS205で否定判定であれば、エンジン1の逆回転時に欠歯13bに基づくクランク信号が出力されている状況ということになり、この場合に限ってはステップS207に進んでカウンタCが「3」減算される。これは欠歯13bに対応するクランク信号が突起13aに対応するクランク信号三つ分に相当するためである。
【0062】
このようにエンジン1での逆回転発生が検出された後には、クランク角が10°進む毎にカウンタCが「1」ずつ減少する。このため、逆回転発生の検出後にはクランク信号の出力毎に小となってゆく実クランク角に合わせて、カウンタCをクランク信号の出力毎に減少させることが可能になる。
【0063】
ただし、実際に逆回転が発生してから当該逆回転発生を検出するのにある程度の時間がかかり、それら逆回転発生と当該逆回転発生の検出との時差(タイミングのずれ)に起因してカウンタCのデクリメント開始が遅れてしまう。例えば、図5の例では315°CAで逆回転が発生したとしても、当該逆回転の発生を検出できるのは330°CAであって、315〜330°CAの間が上記時差に対応する期間ということになる。この期間中は、逆回転状態にあるにもかかわらずカウンタCがクランク信号の出力毎にインクリメントされるため、カウンタCと実クランク角との間にずれが生じることは避けられない。そして、このずれがクランクシャフト停止に至るまで残ったままとなり、クランクシャフト停止時のカウンタCを実クランク角に対応させることが困難になる。
【0064】
そして、クランクシャフト停止時のカウンタCのカウント値が実クランク角に対応していないまま記憶され、次回のエンジン始動開始時のカウンタCの初期値として用いられると、その始動開始後にカウンタCに基づいて把握されるクランク角が誤ったものとなる。その結果、エンジン始動開始後の初回の燃料噴射及び点火を的確なタイミング(クランク角)で実施できず、エンジン1の始動性を向上させることができなくなる。
【0065】
そこで本実施形態では、ステップS208(図7)の処理として、エンジン1での実際の逆回転発生と当該逆回転発生の検出との時差(タイミングのずれ)に起因するカウンタCと実クランク角とのずれに対応した減算値Yを算出し、その減算値Yの分だけカウンタCを減算するカウンタ減算処理を実行する。このカウンタ減算処理を通じて、上記時差に起因するカウンタCと実クランク角とのずれを解消し、カウンタCの実クランク角への対応を図ることで、エンジン1の停止過程で逆回転が生じたとしても、クランクシャフト停止時のカウンタCを的確に実クランク角に対応させることができる。従って、上記エンジン始動開始時にカウンタCに基づき把握されるクランク角を正確なものとすることができ、その始動開始後の早期に初回の燃料噴射及び点火を的確なタイミング(クランク角)にて実行し、エンジン1の始動性向上を図ることができるようになる。
【0066】
以上のようなステップS205〜S208でのカウンタCの減算を行った後、カウンタCのカウント値が「0」未満になっていれば(S209:YES)、「C←72+C」という式を通じてカウンタCのカウント値が正の値へと変換される(S210)。
【0067】
次に、上記カウンタ減算処理(S208)の概要について説明する。
このカウンタ減算処理で用いられる減算値Yは、逆回転発生の検出直前に信号の理論上の立ち上がりタイミング及び立ち下がりタイミングを迎えた回転センサについて、同センサからの信号が上記タイミング以降に立ち上がりと立ち下がりとの間で変化するまでの期間(以下、出力回数判定期間という)のクランク信号の出力回数Xに基づき算出される。
【0068】
ここで、エンジン1での逆回転発生の有無の判断は、各回転センサ18〜20からの信号の理論上の立ち上がりタイミング及び立ち下がりタイミング毎、すなわち0°CA、30°CA、60°CA・・・・・といったクランク角30°毎に行われる。また、各回転センサ18〜20の信号における逆回転発生後の出力パターンは、当該逆回転発生前のパターンを逆回転発生時点を中心として反転させたパターンとなる。このため、逆回転発生の検出直前に信号の理論上の立ち上がりタイミング及び立ち下がりタイミングを迎えた回転センサについては、逆回転発生直後に信号の立ち上がりと立ち下がりとの間での変化が生じることになる。そして、上記回転センサにおける逆回転発生検出前の信号の理論上の立ち上がりタイミング及び立ち下がりタイミングから、逆回転発生後に同信号の立ち上がりと立ち下がりとの間で変化が生じるまでの期間(出力回数判定期間)は次のような傾向を有する。すなわち、逆回転発生のタイミングが同信号における次回の理論上の立ち上がりタイミング又は立ち下がりタイミング、言い換えれば次回の逆回転発生の有無の判断時点に近いほど長くなり、逆に遠い(判断時点よりも早い)ほど短くなる。また、この出力回数判定期間が長くなるほど、当該期間中でのクランク信号の出力回数は多くなる。
【0069】
従って、上記クランク信号の出力回数Xが少なくなるほど、実際の逆回転発生から当該逆回転発生の検出までの期間は長くなり、逆回転が発生しているのにカウンタCがインクリメントされるという期間も長くなって、同カウンタCと実クランク角とのずれが大きくなる。逆に、上記クランク信号の出力回数Xが多くなるほど、実際の逆回転発生から当該逆回転発生の検出までの期間は短くなり、逆回転が発生しているのにカウンタCがインクリメントされるという期間も短くなって、同カウンタCと実クランク角とのずれが小さくなる。
【0070】
しかし、同カウンタCと実クランク角とのずれを解消すべくカウンタCを減算するための減算値Yは、当該ずれの大きさに関係するパラメータである上記クランク信号の出力回数Xに基づき算出される。従って、この減算値Yの分だけカウンタCを減算することで、同カウンタCと実クランク角とのずれを的確に解消し、クランクシャフト停止時のカウンタCを実クランク角度に的確に対応させることができるようになる。
【0071】
なお、上記ずれを解消可能な減算値Yは、逆回転発生時における欠歯13bのクランクポジションセンサ14に対する相対位置から影響を受ける。このため、減算値Yの算出については、以下の[1]〜[3]に示される場合に分けて各々異なる態様で行われることとなる。
【0072】
[1]欠歯13bから離れた位置の突起13aに対応するクランク信号が出力されているときに逆回転が発生した場合。
[2]欠歯13bに対応したクランク信号が出力されているときに逆回転が発生した場合。
【0073】
[3]欠歯13bの直後に位置する突起13aに対応するクランク信号が出力されているときに逆回転が発生した場合。
次に、上記[1]〜[3]の各状況毎の減算値Yの算出手順について、図8〜図21を参照して詳しく説明する。
【0074】
これらの図のうち、図8〜図13は上記[1]の状況に対応しており、図14及び図15は上記[2]の状況に対応しており、図16〜図21は上記[3]の状況に対応している。そして、これら図8〜図21において、(a)はエンジン正回転時のクランク信号の出力パターンを示し、(b)は破線のタイミングでエンジン逆回転が発生した場合のクランク信号の出力パターンを示している。また、図8〜図21の(C)は、逆回転発生の検出直前に信号の理論上の立ち上がり及び立ち下がりタイミングを迎える回転センサからの信号の出力パターンを示している。以下、[1]〜[3]の各状況毎に減算値Yの算出手順について説明する。
【0075】
・上記[1]の状況での減算値Yの算出
こうした[1]の状況としては、例えばクランク角が300〜330°となる期間にあるときに逆回転が発生するという状況があげられる。この期間においては、300°CAにて第3の回転センサ20からの信号の理論上の立ち上がりタイミングを迎え、330°CAにて同信号の理論上の立ち下がりタイミングを迎えることとなる。そして、実際の逆回転発生から当該逆回転発生の検出までの期間、言い換えれば当該期間中のクランク信号の出力回数Xは、300〜330°CAの間のいずれのタイミングで逆回転が発生するかによって変わってくる。
【0076】
クランク角300〜305°の間で逆回転が発生した場合(図8)、逆回転発生後のクランク信号の出力パターンは、図8(b)に示されるように同クランク信号の逆回転発生前の出力パターンを図中の破線を中心として反転させたパターンとなる。また、上記逆回転発生直前である300°CAには第3の回転センサ20からの信号の立ち上がりが生じる。この第3の回転センサ20からの信号の逆回転発生直後の出力パターンも、同信号の逆回転発生前の出力パターンを上記破線を中心として反転させたパターンとなる。このため、逆回転発生直後には第3の回転センサ20からの信号の立ち下がりが生じる。
【0077】
上記のように逆回転が発生した場合、次回に逆回転発生の有無を判断するタイミング(C=33となるタイミング)まで、実クランク角は逆回転発生後のクランク信号出力毎に290°、280°、270°と小さくなってゆくのに対し、カウンタCはクランク信号の出力毎にインクリメントされて「31」、「32」、「33」と増加することになる。そして、カウンタCが「33」になった時点で逆回転発生が検出され、以降はカウンタCがクランク信号出力毎にデクリメントされる。このため、逆回転発生の検出後、初回のクランク信号の出力時にカウンタCは「33」から「1」だけ減算されて「32」となる。しかし、このときの実クランク角は260°であるため、カウンタCは、本来ならば260°CAに対応した値である「26」になるべきであり、その値に対し「6」だけずれていることになる。
【0078】
こうしたカウンタCと実クランク角との間のずれは、実際の逆回転発生と当該逆回転発生の検出との時差(タイミングのずれ)に起因しており、その時差が大となるほど大きくなる。そして、この時差については、逆回転発生直前での第3の回転センサ20の信号における理論上の立ち上がりタイミング(300°CA)から同信号の次回の立ち下がりまでの期間(出力回数判定期間)に対応しており、この出力回数判定期間が短くなるほど大になるという傾向を有している。更に、上記出力回数判定期間の長さについては、当該期間中のクランク信号の出力回数Xが多くなるほど長くなる。従って、出力回数Xは、上記カウンタCと実クランク角とのずれに対応したパラメータということになり、この場合は「1」という値をとるようになる。
【0079】
そして、出力回数Xに基づきカウンタCと実クランク角とのずれ(この場合は「6」)に対応した減算値Yの算出が行われる。具体的には、出力回数Xとして「1」を用い、「Y=7−X」という式に基づき減算値Yが算出される。こうして算出された減算値Yは「6」となり、同減算値Yの分だけカウンタCを減算することで、カウンタCが「26」になって実クランク角(260°CA)とのずれが解消され、同カウンタCの実クランク角への対応が図られる。
【0080】
なお、図9〜図13では各々、逆回転発生のタイミング(図中破線)が305〜310°の間、310〜315°の間、315〜320°の間、320〜325°の間、及び、325〜330°の間となった場合のクランク信号の出力パターン(図中(b))、及び、第3の回転センサ20の出力パターン(図中(c))を表している。
【0081】
これらの図から分かるように、実際の逆回転発生と当該逆回転発生の検出との時差については、逆回転発生のタイミングが第3の回転センサ20からの信号の次回の理論上の立ち下がりタイミング(C=33となるタイミング)、言い換えれば次回の逆回転発生の有無の判断時点に近いほど長くなり、逆に遠い(判断時点よりも早い)ほど短くなる。また、それに対応して、逆回転発生のタイミングが「C=33」となるタイミングに近くなるほど、出力回数判定期間が長くなって出力回数Xが多くなってゆく。より詳しくは、逆回転発生のタイミングが305〜310°の間、310〜315°の間、315〜320°の間、320〜325°の間、325〜330°の間と変化するにつれて、出力回数Xが「2」、「3」、「4」、「5」、「6」と増加してゆく。そして、この出力回数Xを用いて「Y=7−X」という式に基づき減算値Yを算出し、出力回数判定期間終了直後のカウンタCから上記減算値Yを減算することにより、300〜305°の間で逆回転が発生した場合と同様に、カウンタCと実クランク角とのずれが解消され、同カウンタCの実クランク角への対応が図られる。
【0082】
・上記[2]の状況下での減算値Yの算出
こうした[2]の状況としては、例えばクランク角が180〜210°となる期間にあるときに逆回転が発生するという状況があげられる。この期間においては、180°CAにて第2の回転センサ19からの信号の理論上の立ち上がりタイミングを迎え、210°CAにて同信号の理論上の立ち下がりタイミングを迎えることとなる。そして、実際の逆回転発生から当該逆回転の検出までの期間、言い換えれば当該期間中のクランク信号の出力回数Xは、180〜210°CAの間のいずれのタイミングで逆回転が発生するかによって変わってくる。
【0083】
クランク角180〜195°の間で逆回転が発生した場合(図14)、逆回転発生後のクランク信号の出力パターンは、図14(b)に示されるように同クランク信号の逆回転発生前の出力パターンを図中の破線を中心として反転させたパターンとなる。また、上記逆回転発生直前である180°CAには第2の回転センサ19からの信号の立ち上がりが生じる。この第2の回転センサ19からの信号の逆回転発生直後の出力パターンも、同信号の逆回転発生前の出力パターンを上記破線を中心として反転させたパターンとなる。このため、逆回転発生直後には第2の回転センサ19からの信号の立ち下がりが生じる。
【0084】
上記のように逆回転が発生した場合、カウンタCが「18」となった状態でエンジン1が逆回転し、その後の最初のクランク信号出力が突起13aに対応したものであるのに欠歯13bに対応したものと見なされてカウンタCが「3」加算される。このとき、実際のクランク角は逆回転に伴い180°から170°へと小さくなるのに対し、カウンタCは「18」から「21」へと増加することになる。そして、カウンタCが「21」になると、逆回転発生の有無が判断されてエンジン1での逆回転の発生が検出され、以降はカウンタCがクランク信号出力毎にデクリメントされる。このため、逆回転発生の検出後、初回のクランク信号の出力時にカウンタCは「21」から「1」だけ減算されて「20」となる。しかし、このときの実クランク角は170°から160°へと変化しており、カウンタCは、本来ならば160°CAに対応した値である「16」になるべきであり、その値に対し「4」だけずれていることになる。
【0085】
こうしたカウンタCと実クランク角との間のずれは、実際の逆回転発生と当該逆回転発生の検出との時差(タイミングのずれ)に起因しており、その時差が大となるほど大きくなる。そして、この時差については、逆回転発生直前での第2の回転センサ19の信号における理論上の立ち上がりタイミング(180°CA)から同信号の次回の立ち下がりまでの期間(出力回数判定期間)に対応しており、この出力回数判定期間が短くなるほど大になるという傾向を有している。更に、上記出力回数判定期間の長さについては、当該期間中のクランク信号の出力回数Xが多くなるほど長くなる。従って、出力回数Xは、上記カウンタCと実クランク角とのずれに対応したパラメータということになり、この場合は「1」という値をとるようになる。
【0086】
そして、出力回数Xに基づきカウンタCと実クランク角とのずれ(この場合は「4」)に対応した減算値Yの算出が行われる。具体的には、出力回数Xとして「1」を用い、「Y=5−X」という式に基づき減算値Yが算出される。こうして算出された減算値Yは「4」となり、同減算値Yの分だけカウンタCを減算することで、カウンタCが「16」になって実クランク角(160°CA)とのずれが解消され、同カウンタCの実クランク角への対応が図られる。
【0087】
なお、図15では、逆回転発生のタイミング(図中破線)が195〜210°の間となった場合のクランク信号の出力パターン(図中(b))、及び、第2の回転センサ19の出力パターン(図中(c))を表している。
【0088】
この図から分かるように、実際の逆回転発生と当該逆回転発生の検出との時差については、逆回転発生のタイミングが第2の回転センサ19からの信号の次回の理論上の立ち下がりタイミング(C=21となるタイミング)、言い換えれば次回の逆回転発生の有無の判断時点に近いほど長くなる。また、それに対応して、逆回転発生のタイミングが「C=21」となるタイミングに近くなるほど、出力回数判定期間が長くなって出力回数Xが多くなる。従って、逆回転発生のタイミングが195〜210°の間になると、出力回数Xが「2」へと増加する。そして、この出力回数Xを用いて「Y=5−X」という式に基づき減算値Yを算出し、出力回数判定期間終了直後のカウンタC(「20」)から上記減算値Yを減算することにより、180〜195°の間で逆回転が発生した場合と同様に、カウンタCと実クランク角とのずれが解消され、同カウンタCの実クランク角への対応が図られる。
【0089】
・上記[3]の状況下での減算値Yの算出
こうした[3]の状況としては、例えばクランク角が210〜215°となる期間にあるときに逆回転が発生するという状況があげられる。この期間においては、210°CAにて第3の回転センサ20からの信号の理論上の立ち下がりタイミングを迎え、240°CAにて同信号の理論上の立ち上がりタイミングを迎えることとなる。そして、実際の逆回転発生から当該逆回転の検出までの期間、言い換えれば当該期間中のクランク信号の出力回数Xは、210〜240°CAの間のいずれのタイミングで逆回転が発生するかによって変わってくる。
【0090】
クランク角210〜215°の間で逆回転が発生した場合(図16)、逆回転発生後のクランク信号の出力パターンは、図16(b)に示されるように同クランク信号の逆回転発生前の出力パターンを図中の破線を中心として反転させたパターンとなる。また、上記逆回転発生直前である210°CAには第3の回転センサ20からの信号の立ち下がりが生じる。この第3の回転センサ20からの信号の逆回転発生直後の出力パターンも、同信号の逆回転発生前の出力パターンを上記破線を中心として反転させたパターンとなる。このため、逆回転発生直後には第3の回転センサ20からの信号の立ち上がりが生じる。
【0091】
上記のように逆回転が発生した場合、カウンタCが「21」となった状態でエンジン1が逆回転し、その後の最初のクランク信号出力が欠歯13bに対応したものであるのに突起13aに対応したものと見なされてカウンタCがインクリメント(「1」加算)される。このとき実際のクランク角は逆回転に伴い210°から180°へと小さくなるのに対し、カウンタCは「21」から「22」へと増加することになる。その後、次回に逆回転発生の有無を判断するタイミング(C=24となるタイミング)まで、実クランク角はクランク信号出力毎に170°、160°と小さくなってゆくのに対し、カウンタCはクランク信号の出力毎にインクリメントされて「23」、「24」と増加する。そして、カウンタCが「24」になった時点で逆回転発生が検出され、以降はカウンタCがクランク信号出力毎にデクリメントされる。このため、逆回転発生の検出後、初回のクランク信号の出力時にカウンタCは「24」から「1」だけ減算されて「23」となる。しかし、このときの実クランク角は150°であるため、カウンタCは、本来ならば150°CAに対応した値である「15」になるべきであり、その値に対し「8」だけずれていることになる。
【0092】
こうしたカウンタCと実クランク角との間のずれは、実際の逆回転発生と当該逆回転発生の検出との時差(タイミングのずれ)に起因しており、その時差が大となるほど大きくなる。そして、この時差については、逆回転発生直前での第3の回転センサ20の信号における理論上の立ち下がりタイミング(210°CA)から同信号の次回の立ち上がりまでの期間(出力回数判定期間)に対応しており、この出力回数判定期間が短くなるほど大になるという傾向を有している。更に、上記出力回数判定期間の長さについては、当該期間中のクランク信号の出力回数Xが多くなるほど長くなる。従って、出力回数Xは、上記カウンタCと実クランク角とのずれに対応したパラメータということになり、この場合は「1」という値をとるようになる。
【0093】
そして、出力回数Xに基づきカウンタCと実クランク角とのずれ(この場合は「8」)に対応した減算値Yの算出が行われる。具体的には、出力回数Xとして「1」を用い、「Y=9−X」という式に基づき減算値Yが算出される。こうして算出された減算値Yは「8」となり、同減算値Yの分だけカウンタCを減算することで、カウンタCが「15」になって実クランク角(150°CA)とのずれが解消され、同カウンタCの実クランク角への対応が図られる。
【0094】
なお、図17〜図21では各々、逆回転発生のタイミング(図中破線)が215〜220°の間、220〜225°の間、225〜230°の間、230〜235°の間、及び、235〜240°の間となった場合のクランク信号の出力パターン(図中(b))、及び、第3の回転センサ20の出力パターン(図中(c))を表している。
【0095】
これらの図から分かるように、実際の逆回転発生と当該逆回転発生の検出との時差については、逆回転発生のタイミングが第3の回転センサ20からの信号の次回の理論上の立ち上がりタイミング(C=24となるタイミング)、言い換えれば次回の逆回転発生の有無の判断時点に近いほど長くなり、逆に遠い(判断時点よりも早い)ほど短くなる。また、それに対応して、逆回転発生のタイミングが「C=24」となるタイミングに近くなるほど、出力回数判定期間が長くなって出力回数Xが多くなってゆく。より詳しくは、逆回転発生のタイミングが215〜220°の間、220〜225°の間、225〜230°の間、230〜235°の間、235〜240°の間と変化するにつれて、出力回数Xが「2」、「3」、「4」、「5」、「6」と増加してゆく。そして、この出力回数Xを用いて「Y=9−X」という式に基づき減算値Yを算出し、出力回数判定期間終了直後のカウンタCから上記減算値Yを減算することにより、210〜215°の間で逆回転が発生した場合と同様に、カウンタCと実クランク角とのずれが解消され、同カウンタCの実クランク角への対応が図られる。
【0096】
次に、カウンタ減算処理(図7のS208)の詳細な実行手順について、カウンタ減算処理ルーチンを示す図22のフローチャートを参照して説明する。このカウンタ減算処理ルーチンは、エンジン制御用コンピュータ11を通じて、図7のカウンタ算出ルーチンにおけるステップS208に進む毎に実行される。
【0097】
同ルーチンにおいては、エンジン停止までの間にカウンタ減算処理が既に行われているか否かを判断するためのフラグFが「0(未完)」であるか否かが判断される(S301)。ここで肯定判定がなされると、逆回転発生直前に信号の理論上の立ち上がりタイミング及び立ち下がりタイミングを迎えた回転センサについて、上記タイミング以降に同センサからの信号の立ち上がりと立ち下がりとの間での変化が生じたか否かが判断される(S302)。そして、ここで肯定判定であれば出力回数判定期間が終わったことになり、その出力回数判定期間中のクランク信号の出力回数Xに基づき、上記[1]〜[3]の各状況毎に減算値Yを算出するための処理(S303〜307)が実行される。
【0098】
具体的には、逆回転発生検出時のカウンタCが「21」または「57」でないこと(S303:YES)、すなわち上記[2]の状況でないこと、及び、同カウンタCが「24」または「57」でないこと、すなわち上記[3]の状況でないことを条件に、上記[1]の状況である旨判断され、ステップS305の処理に進む。この処理では、出力回数判定期間中のクランク信号の出力回数Xに基づき「Y=7−X」という式を用いて減算値Yが算出される(S305)。また、逆回転発生時のカウンタCが「21」または「57」であるとき(S303:NO)、すなわち上記[2]の状況であるときには、出力回数判定期間中のクランク信号の出力回数Xを用いて「Y=5−X」という式に基づき減算値Yが算出される(S306)。更に、逆回転発生時のカウンタCが「24」または「60」であるとき(S304:NO)、すなわち上記[3]の状況であるときには、出力回数判定期間中のクランク信号の出力回数Xを用いて「Y=9−X」という式に基づき減算値Yが算出される(S307)。
【0099】
このように減算値Yが算出されると、カウンタCが減算値Yだけ減算される(S308)。その後、フラグFが「1(完了)」に設定され、以降にステップS302〜S308の処理(カウンタ減算処理)が実施されることはなくなる。なお、フラグFはエンジン停止時に初期値である「0(未完)」に設定されることとなる。
【0100】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)エンジン1の停止過程での逆回転発生の検出には、バルブタイミング可変機構9を駆動するための電動機10に設けられた第1〜第3の回転センサ18〜20が利用される。これら回転センサ18〜20は、吸気バルブのバルブタイミング制御を行うべく電動機10を駆動制御するために設けられたものである。このように既存のセンサである第1〜第3の回転センサ18〜20を用いてエンジン1の逆回転発生を検出しているため、その逆回転発生の検出のために新たなセンサやロータを設ける必要はない。
【0101】
(2)第1〜第3の回転センサ18〜20は電動機ロータ17の周りに等間隔をおいて配設されており、各センサ18からの信号の立ち上がり及び立ち下がりはエンジン1の正回転時にはクランク角30°毎という比較的短い間隔で生じる。そして、エンジン1の逆回転時には、それに伴い上記信号の立ち上がり及び立ち下がりのタイミングが正回転時と異なるようになるという、上記信号の出力パターンの変化が速やかに生じる。従って、当該出力パターンの変化に基づき逆回転発生を速やかに検出することができる。
【0102】
(3)第1〜第3の回転センサ18〜20からの信号の出力パターンが正回転時の状態から変化しているか否かは、クランク信号に基づき判別される上記信号の理論上の立ち上がり及び立ち下がりタイミングにて、実際に同信号の立ち上がり及び立ち下がりが生じているか否かに基づき判断される。逆回転が発生している場合、上記タイミングがきても、対応する信号の立ち上がり及び立ち下がりが実際に生じることはない。このため、上述した判断に基づき、各回転センサ18〜20からの信号の出力パターンの正回転時の状態からの変化、言い換えればエンジン1の逆回転発生を的確に検出することができる。
【0103】
(4)エンジン1の停止過程で逆回転発生が検出されると、以後はクランク角を把握するためのカウンタCがクランク信号出力毎にデクリメントされる。このため、逆回転発生の検出後にはクランク信号の出力毎に小となってゆく実クランク角に合わせて、カウンタCをクランク信号の出力毎に小とすることが可能になる。ただし、実際に逆回転が発生してから当該逆回転発生を検出するまでにある程度の時間がかかり、それら逆回転発生と当該逆回転発生の検出との時差(タイミングのずれ)に起因してカウンタCのデクリメント開始が遅れてしまう。その結果、上記時差に対応する期間中は、逆回転状態にあるにもかかわらずカウンタCがインクリメントされ、カウンタCと実クランク角との間にずれが生じる。しかし、逆回転発生と当該逆回転発生の検出とのタイミングのずれに起因するカウンタCと実際のクランク角とのずれは、そのずれに対応した値である減算値Yの算出、及び、当該減算値Yの分のカウンタCの減算を通じて解消される。こうしたカウンタ減算処理を行うことで、カウンタCの実クランク角への対応が図られる。このため、エンジン1の運転停止過程で逆回転が生じたとしても、クランクシャフト停止時のカウンタCを的確に実クランク角に対応させることができる。そして、このときのカウンタCのカウンタ値は、記憶されて次回のエンジン始動開始時にカウンタCの初期値として用いられる。従って、上記エンジン始動開始時にカウンタCに基づき把握されるクランク角を正確なものとすることができ、その始動開始後の早期に初回の燃料噴射及び点火を的確なタイミング(クランク角)にて実行し、エンジンの始動性向上を図ることができるようになる。
【0104】
(5)エンジン1での逆回転発生の有無の判断は、各回転センサ18〜20からの信号の理論上の立ち上がりタイミング及び立ち下がりタイミング毎に行われる。そして、各回転センサ18〜20の信号における逆回転発生後の出力パターンは、当該逆回転発生前のパターンを逆回転発生時点を中心として反転させたパターンとなる。このため、逆回転発生の検出直前に信号の理論上の立ち上がりタイミング及び立ち下がりタイミングを迎えた回転センサについては、逆回転発生直後に信号の立ち上がりと立ち下がりとの間での変化が生じることになる。そして、上記回転センサにおける逆回転発生検出前の信号の理論上の立ち上がりタイミング及び立ち下がりタイミングから、逆回転発生後に同信号の立ち上がりと立ち下がりとの間での変化が生じるまでの期間(出力回数判定期間)は次のような傾向を有する。すなわち、逆回転発生のタイミングが同信号における次回の理論上の立ち上がりタイミング又は立ち下がりタイミング、言い換えれば次回の逆回転発生の有無の判断時点に近いほど長くなり、逆に遠い(判断時点よりも早い)ほど短くなる。そして、この出力回数判定期間が長くなるほど、当該機関中でのクランク信号の出力回数Xは多くなる。従って、上記出力回数Xが少なくなるほど、実際の逆回転発生から当該逆回転発生の検出までの期間は長くなり、逆回転が発生しているのにカウンタCがインクリメントされるという期間も長くなって、同カウンタCと実クランク角のずれが大きくなる。逆に、上記出力回数Xが多くなるほど、実際の逆回転発生から当該逆回転発生の検出までの期間は短くなり、逆回転が発生しているのにカウンタCがインクリメントされるという期間も短くなって、同カウンタCと実クランク角とのずれが小さくなる。そして、カウンタCと実クランク角とのずれを解消すべくカウンタCを減算するための減算値Yは、当該ずれの大きさに関連するパラメータである上記出力回数Xに基づき算出される。従って、この減算値Yの分だけカウンタCを減算することで、同カウンタCと実クランク角とのずれを的確に解消し、クランクシャフト停止時のカウンタCを実クランク各に的確に対応させることができるようになる。
【0105】
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・第1〜第3の回転センサ18〜20からの信号の出力パターンが正回転時の状態から変化しているか否かの判断として、上記(3)に記載した判断の仕方以外の仕方を採用することもできる。例えば、あるクランク角での各回転センサ18〜20からの信号の状態(「Hi」か「Lo」か)をエンジン正回転時の状態と比較し、ここで正回転時の状態と異なっている場合に、上記信号の出力パターンが正回転時の状態から変化していること、言い換えればエンジン1の逆回転が発生していることを検出するようにしてもよい。
【0106】
・減算値Yを逆回転発生から当該逆回転発生の検出までの期間に対応する値として算出するのに、上記(5)に記載した算出の仕方以外の仕方を採用してもよい。
・クランクシャフトやカムシャフトに連結される回転電機として、バルブタイミング可変機構9の電動機10を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、エンジンのクランクシャフトには通常は発電機が連結されるが、この発電機を上記回転電機として用いてもよい。また、ハイブリッド自動車に搭載されるエンジンにおいては、クランクシャフトに同エンジンの回転をアシストする電動機が連結されるが、この電動機を上記回転電機として用いてもよい。
【0107】
・クランクポジションセンサ14及びクランクロータ13については、必ずしもクランクシャフト6側に設ける必要はなく、例えば排気カムシャフト8側に設けて同シャフト8の回転に基づきクランクシャフト6の回転状態を検出するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本実施形態の制御装置が適用されるエンジン全体を示す略図。
【図2】クランクロータ及びクランクポジションセンサを拡大して示す略図。
【図3】カムロータ及びカムポジションセンサを拡大して示した略図。
【図4】(a)〜(e)は、クランク角が変化したときのクランクポジションセンサからのクランク信号、カムポジションセンサからのカム信号、及び、第1〜第3の回転センサからの信号の波形を示すタイミングチャート。
【図5】(a)〜(c)はエンジン正回転時における第1〜第3の回転センサからの信号、(d)〜(f)はエンジン逆回転時における第1〜第3の回転センサからの信号、(g)は電動機駆動ドライバから出力される正逆回転信号の波形をそれぞれ示すタイミングチャート。
【図6】エンジンの逆回転発生を検出する手順を示すフローチャート。
【図7】カウンタの算出手順を示すフローチャート。
【図8】(a)は正回転時のクランク信号の出力パターン、(b)は300〜305°CAの間で逆回転が発生した場合のクランク信号の出力パターン、(c)は上記逆回転発生時の第3の回転センサからの信号の出力パターンを示す波形図。
【図9】(a)は正回転時のクランク信号の出力パターン、(b)は305〜310°CAの間で逆回転が発生した場合のクランク信号の出力パターン、(c)は上記逆回転発生時の第3の回転センサからの信号の出力パターンを示す波形図。
【図10】(a)は正回転時のクランク信号の出力パターン、(b)は310〜315°CAの間で逆回転が発生した場合のクランク信号の出力パターン、(c)は上記逆回転発生時の第3の回転センサからの信号の出力パターンを示す波形図。
【図11】(a)は正回転時のクランク信号の出力パターン、(b)は315〜320°CAの間で逆回転が発生した場合のクランク信号の出力パターン、(c)は上記逆回転発生時の第3の回転センサからの信号の出力パターンを示す波形図。
【図12】(a)は正回転時のクランク信号の出力パターン、(b)は320〜325°CAの間で逆回転が発生した場合のクランク信号の出力パターン、(c)は上記逆回転発生時の第3の回転センサからの信号の出力パターンを示す波形図。
【図13】(a)は正回転時のクランク信号の出力パターン、(b)は325〜330°CAの間で逆回転が発生した場合のクランク信号の出力パターン、(c)は上記逆回転発生時の第3の回転センサからの信号の出力パターンを示す波形図。
【図14】(a)は正回転時のクランク信号の出力パターン、(b)は180〜195°CAの間で逆回転が発生した場合のクランク信号の出力パターン、(c)は上記逆回転発生時の第3の回転センサからの信号の出力パターンを示す波形図。
【図15】(a)は正回転時のクランク信号の出力パターン、(b)は195〜210°CAの間で逆回転が発生した場合のクランク信号の出力パターン、(c)は上記逆回転発生時の第3の回転センサからの信号の出力パターンを示す波形図。
【図16】(a)は正回転時のクランク信号の出力パターン、(b)は210〜215°CAの間で逆回転が発生した場合のクランク信号の出力パターン、(c)は上記逆回転発生時の第3の回転センサからの信号の出力パターンを示す波形図。
【図17】(a)は正回転時のクランク信号の出力パターン、(b)は215〜220°CAの間で逆回転が発生した場合のクランク信号の出力パターン、(c)は上記逆回転発生時の第3の回転センサからの信号の出力パターンを示す波形図。
【図18】(a)は正回転時のクランク信号の出力パターン、(b)は220〜225°CAの間で逆回転が発生した場合のクランク信号の出力パターン、(c)は上記逆回転発生時の第3の回転センサからの信号の出力パターンを示す波形図。
【図19】(a)は正回転時のクランク信号の出力パターン、(b)は225〜230°CAの間で逆回転が発生した場合のクランク信号の出力パターン、(c)は上記逆回転発生時の第3の回転センサからの信号の出力パターンを示す波形図。
【図20】(a)は正回転時のクランク信号の出力パターン、(b)は230〜235°CAの間で逆回転が発生した場合のクランク信号の出力パターン、(c)は上記逆回転発生時の第3の回転センサからの信号の出力パターンを示す波形図。
【図21】(a)は正回転時のクランク信号の出力パターン、(b)は235〜240°CAの間で逆回転が発生した場合のクランク信号の出力パターン、(c)は上記逆回転発生時の第3の回転センサからの信号の出力パターンを示す波形図。
【図22】カウンタ減算処理の実行手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0109】
1…エンジン、2…燃焼室、3…燃料噴射弁、4…吸気通路、5…点火プラグ、6…クランクシャフト、7…吸気カムシャフト、8…排気カムシャフト、9…バルブタイミング可変機構、10…電動機(回転電機)、10a…出力軸、11…エンジン制御用コンピュータ(検出手段、デクリメント手段、減算手段、初期値設定手段)、12…電動機駆動ドライバ(検出手段)、13…クランクロータ、13a…突起、13b…欠歯、14…クランクポジションセンサ、15…カムロータ、15a〜15c…突起、16…カムポジションセンサ、17…電動機ロータ、18…第1の回転センサ、19…第2の回転センサ、20…第3の回転センサ、21…アクセルポジションセンサ、22…スロットルポジションセンサ、23…エアフローメータ、24…イグニッションスイッチ、25…スタータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクシャフトが一定角度回転する毎にクランク信号を出力するクランクポジションセンサと、前記クランクシャフト及びカムシャフトのうちの一方に連結された回転電機とを備える内燃機関に適用され、前記回転電機のロータ周りに配設されて同ロータの回転によって生じる誘起電圧に応じた信号を出力する複数の回転センサからの信号を加味して前記回転電機を制御するとともに、前記クランク信号の出力毎にインクリメントされるカウンタに基づきクランク角を把握して当該クランク角に基づき内燃機関の運転制御を実行する内燃機関の制御装置において、
前記複数の回転センサからの信号の出力パターンが正回転時の出力パターンと異なることに基づき内燃機関での逆回転発生を検出する検出手段と、
前記検出手段による逆回転発生の検出後、前記クランク信号の出力毎に前記カウンタをデクリメントするデクリメント手段と、
内燃機関での実際の逆回転発生と当該逆回転発生の検出とのタイミングのずれに起因する前記カウンタと実際のクランク角とのずれに対応した減算値を算出し、その減算値の分だけ前記カウンタを減算する減算手段と、
機関停止時の前記カウンタのカウント値を記憶しておき、次回の機関始動時には前記記憶されたカウント値を前記カウンタの初期値とする初期値設定手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記検出手段は、前記クランク信号に基づき各回転センサからの信号の機関正回転時における理論上の立ち上がりタイミング及び立ち下がりタイミングを判別し、そのタイミングにて同信号の立ち上がり及び立ち下がりが実際に生じているか否かを判断し、そのときに同信号の立ち上がり及び立ち下がりが生じてない旨判断されることに基づき、内燃機関の逆回転が発生していることを検出する
請求項1記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記減算手段は、前記検出手段による逆回転発生の検出直前に信号の理論上の立ち上がりタイミング及び立ち下がりタイミングを迎えた回転センサについて、同センサからの信号が前記タイミング以降に立ち上がりと立ち下がりとの間で変化するまでの期間のクランク信号の出力回数に基づき、前記減算値を算出する
請求項2記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記内燃機関は前記カムシャフトに連結された電動機の駆動制御を通じて同カムシャフトの前記クランクシャフトに対する相対回転位相を変更するバルブタイミング可変機構を備えるものであり、前記回転電機は前記バルブタイミング可変機構の電動機である
請求項1〜3のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2006−233914(P2006−233914A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−51861(P2005−51861)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】