説明

内燃機関のEGR制御装置

【課題】前方EGR制御と後方EGR制御の利点を併せ持つ内燃機関のEGR制御装置を提供する。
【解決手段】内燃機関2、ターボチャージャ5、タービン4下流から分岐されコンプレッサ3上流に繋がる前方低圧EGR配管8、前方低圧EGR配管8の分岐より下流の後処理装置9、後処理装置9下流から分岐されコンプレッサ3上流に繋がる後方低圧EGR配管10、前方低圧EGR配管8のEGR制御バルブ11、後方低圧EGR配管10の分岐より下流の排気ガス配管6の排圧調整バルブ12、内燃機関状態検出器13、制御部14を備え、排圧調整バルブ12全開及びEGR制御バルブ11開度制御による前方EGR制御とEGR制御バルブ11最小開度及び排圧調整バルブ12開度制御による後方EGR制御を切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前方EGR制御と後方EGR制御の利点を併せ持つ内燃機関のEGR制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボチャージャ付きの内燃機関において低圧EGRを行うEGR制御装置は、内燃機関と、該内燃機関の給気側に接続されたコンプレッサを上記内燃機関の排気側に接続されたタービンで駆動するターボチャージャと、上記タービンの下流の排気ガス配管から分岐されて上記コンプレッサの上流に繋がる低圧EGR配管と、該低圧EGR配管に配置されたEGR制御バルブとを備える。
【0003】
EGR量は、基本的にEGRマップに基づき制御される。EGRマップから読み出されたEGR量に、MAFセンサで検出される吸入空気量や空気圧力センサで検出される給気のブースト圧などをフィードバックして補正が行われ、最終的なEGR制御バルブの開度が決定される。例えば、吸入空気量が制御するべき値より低ければ、EGR量は削減されて0になるという具合である。
【0004】
【特許文献1】特開2008−215112号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来のEGR制御装置による低圧EGRにおいては、一度、EGR制御バルブの開度を0にして低圧EGR配管内の排気ガスの流れを停止させたとき、排気ガスの流れが一旦途切れるか流量が少なくなり、加えてEGRの流路長が長いため、EGR制御バルブを所望の開度に開いてから実際に所望するEGR量となるまでの時間が長い。このように従来のEGR制御装置による低圧EGRは、応答性が十分でないため、結果的にNOxの低減が十分に達成されないという問題がある。
【0006】
また、従来のEGR制御装置は、タービンの下流の排気ガス配管に、DPF(Diesel Particulate Filter)等の排気ガスを浄化する後処理装置を備えている。低圧EGR配管の分岐箇所を後処理装置の上流に置くか下流に置くかで次のような問題がある。
【0007】
後処理装置の上流から低圧EGRを行う(前方EGR制御という)と、排気ガスに含まれる煤によってコンプレッサが汚損される。
【0008】
また、前方EGR制御において後処理装置に煤が溜まると、タービンと後処理装置との間における排気ガス圧力が上昇する。この排気ガス圧力の上昇のため、低圧EGR配管を通ってコンプレッサに流れる実際のERG量が増加して所望したEGR量から乖離してしまう。
【0009】
一方、後処理装置の下流から低圧EGRを行う(後方EGR制御という)と、コンプレッサが汚損されることは回避させるが、前述のようにEGRの流路長が長くなって応答性が悪くなる。
【0010】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、前方EGR制御と後方EGR制御の利点を併せ持つ内燃機関のEGR制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明は、内燃機関と、該内燃機関の給気側に接続されたコンプレッサを上記内燃機関の排気側に接続されたタービンで駆動するターボチャージャと、上記タービンの下流の排気ガス配管から分岐されて上記コンプレッサの上流に繋がる前方低圧EGR配管と、該前方低圧EGR配管の分岐箇所よりも下流の排気ガス配管に配置され排気ガスを浄化する後処理装置と、該後処理装置の下流の排気ガス配管から分岐されて上記コンプレッサの上流に繋がる後方低圧EGR配管と、上記前方低圧EGR配管に配置されたEGR制御バルブと、上記後方低圧EGR配管の分岐箇所よりも下流の排気ガス配管に配置された排圧調整バルブと、上記内燃機関の状態を検出する内燃機関状態検出器と、内燃機関状態が前方EGR制御に適するとき上記排圧調整バルブを全開した状態で上記EGR制御バルブの開度制御による前方EGR制御を行い、内燃機関状態が後方EGR制御に適するとき上記EGR制御バルブを有限の最小開度に制御した状態で上記排圧調整バルブの開度制御による後方EGR制御を行う制御部とを備えたものである。
【0012】
上記内燃機関状態検出器は、エンジン回転数とトルクを検出し、上記制御部は、エンジン回転数とトルクを座標として前方EGR制御領域と後方EGR制御領域が設定されたEGR制御方式選択マップを有し、上記制御部は、検出された内燃機関状態が上記EGR制御方式選択マップの前方EGR制御領域に位置するとき前方EGR制御を行い、検出された内燃機関状態が上記EGR制御方式選択マップの後方EGR制御領域に位置するとき後方EGR制御を行ってもよい。
【0013】
上記タービンと上記後処理装置との間に配置され排気ガスの圧力を検出する排圧検出器を備え、上記制御部は、エンジン回転数とトルクを座標として上記後処理装置の新鮮時における排気ガスの圧力である基礎排圧が設定された基礎排圧選択マップと、検出される排気ガスの圧力と基礎排圧との比である後処理装置劣化比に対する最小EGR開度が設定された最小EGR開度マップとを有し、上記制御部は、前方EGR制御時に、検出された排気ガスの圧力と上記基礎排圧選択マップから読み出した基礎排圧とから後処理装置劣化比を演算し、当該後処理装置劣化比で上記最小EGR開度マップを参照することで、最小EGR開度を読み出して上記EGR制御バルブの最小開度を求めておいてもよい。
【0014】
上記制御部は、EGR指令値に対する実EGR開度が設定されたEGR開度マップを有し、上記制御部は、後方EGR制御において、上記EGR制御バルブを最小開度に制御した状態で、EGR指令値で上記EGR開度マップを参照して実EGR開度を読み出し、その実EGR開度に基づき上記排圧調整バルブの開度制御を行ってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は次の如き優れた効果を発揮する。
【0016】
(1)前方EGR制御による速い応答性が得られる。
【0017】
(2)後方EGR制御による汚損防止ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0019】
図1に示されるように、本発明に係るEGR制御装置1は、内燃機関2と、内燃機関2の給気側に接続されたコンプレッサ3を内燃機関2の排気側に接続されたタービン4で駆動するターボチャージャ5と、タービン4の下流の排気ガス配管6から分岐されてコンプレッサ3の上流で空気吸入管7に繋がる前方低圧EGR配管8と、前方低圧EGR配管8の分岐箇所よりも下流の排気ガス配管6に配置され排気ガスを浄化する後処理装置9と、後処理装置9の下流の排気ガス配管6から分岐されてコンプレッサ3の上流で空気吸入管7に繋がる後方低圧EGR配管10と、前方低圧EGR配管8に配置されたEGR制御バルブ11と、後方低圧EGR配管10の分岐箇所よりも下流の排気ガス配管6に配置された排圧調整バルブ12と、内燃機関2の状態を検出する内燃機関状態検出器13と、内燃機関状態が前方EGR制御に適するとき排圧調整バルブ12を全開した状態でEGR制御バルブ11の開度制御による前方EGR制御を行い、内燃機関状態が後方EGR制御に適するときEGR制御バルブ11を0でない有限の最小開度に制御した状態で排圧調整バルブ12の開度制御による後方EGR制御を行う制御部14とを備える。
【0020】
内燃機関状態検出器13は、内燃機関の状態を表すパラメータとして、エンジン回転数とトルクを検出するようになっている。なお、図1では、内燃機関状態検出器13が内燃機関2に直接接して描かれているが、これはモデルであり、実際にはエンジン回転数とトルクは公知のどのような手段で検出してもよい。
【0021】
制御部14は、内燃機関2を制御するECU(Engin Control Unit)に含まれている。制御部14には、内燃機関状態検出器13で検出されるエンジン回転数及びトルクと、タービン4と後処理装置9との間に配置された排圧検出器15で検出される排気ガスの圧力と、空気吸入管7に設けられたMAFセンサ16で検出される吸入空気量とが入力される。
【0022】
制御部14には、エンジン回転数とトルクを座標として前方EGR制御領域と後方EGR制御領域が設定されたEGR制御方式選択マップ(図2参照)と、エンジン回転数とトルクを座標として後処理装置9の新鮮時における排気ガスの圧力である基礎排圧が設定された基礎排圧選択マップ(図3参照)と、検出される排気ガスの圧力と基礎排圧との比である後処理装置劣化比に対する最小EGR開度が設定された最小EGR開度マップ(図4参照)と、EGR指令値に対する実EGR開度が設定されたEGR開度マップ(図5参照)とが設定されている。
【0023】
図2に示されるように、EGR制御方式選択マップは、エンジン回転数とトルクで参照される座標位置に、前方EGR制御が適切であるか、後方EGR制御が適切であるかが設定されたマップである。前方EGR制御はエンジン回転数が比較的低いとき、あるいはトルクが比較的小さいときに行うのが適切であり、EGR制御方式選択マップでは、前方EGR制御領域が図示のように設定されている。これとは対照的に、後方EGR制御はエンジン回転数が比較的高いとき、あるいはトルクが比較的大きいときに行うのが適切であり、EGR制御方式選択マップでは、後方EGR制御領域が図示のように設定されている。
【0024】
図3に示されるように、基礎排圧選択マップは、エンジン回転数とトルクで参照される座標位置に、後処理装置9の新鮮時における排気ガスの圧力である基礎排圧(EP0)が設定されたマップである。基礎排圧は、図中のハッチング部のように、図2で説明した前方EGR制御領域内のみに設定してもよい。
【0025】
図4に示されるように、最小EGR開度マップは、一方の座標軸に、検出される排気ガスの圧力(EP)と基礎排圧(EP0)との比である後処理装置劣化比(EP/EP0)を取り、他方の座標軸に、後処理装置劣化比に対応する最小EGR開度を取ったものである。
【0026】
図5に示されるように、EGR開度マップは、一方の座標軸にEGR指令値を取り、他方の座標軸にEGR指令値に対応する実EGR開度を取ったものである。
【0027】
以下、EGR制御装置1の動作を説明する。
【0028】
まず、図1に基づき、空気及び排気ガスの流れを説明する。大気中より空気吸入管7に空気が吸入され、その吸入空気量がMAFセンサ16で検出される。ターボチャージャ5のコンプレッサ3で圧縮された空気は内燃機関2に給気される。内燃機関2の排気側からの高圧排気ガスがターボチャージャ5のタービン4を回転させ、このタービン4によってコンプレッサ3が駆動される。
【0029】
タービン4の下流の排気ガス配管6では、排気ガスの一部が前方低圧EGR配管8に流れ、EGR制御バルブ11を介してコンプレッサ3の上流の空気吸入管7に戻される。排気ガスの残りは、後処理装置9を通って浄化される。後処理装置9の排気ガス配管6では、浄化された排気ガスの一部が後方低圧EGR配管10に流れ、コンプレッサ3の上流の空気吸入管7に戻される。浄化された排気ガスの残りは、排圧調整バルブ12を介して排気ガス配管6のさらに下流に流れ、最終的に大気中に排出される。
【0030】
次に、前方EGR制御と後方EGR制御の切り替えを説明する。
【0031】
図6に示されるように、ステップS11において、制御部14は、内燃機関状態検出器13が検出した内燃機関状態(エンジン回転数及びトルク)を読み込むと共に、MAFセンサ16が検出した吸入空気量を読み込む。
【0032】
ステップS12において、制御部14は、内燃機関状態でEGR制御方式選択マップを参照し、内燃機関状態が前方EGR制御領域にあるか後方EGR制御領域にあるかを判定する。
【0033】
内燃機関状態が後方EGR制御領域にあるとき、ステップS12からステップS13に進み、制御部14は、EGR制御バルブ11の開度指令値を0とし、排圧調整バルブ12の開度制御によりEGRを掛ける。このとき、EGR制御バルブ11は開度指令値が0でも後述のように最小開度に制御される。したがって、前方EGRが少量は行われていることになるが、その量はコンプレッサ3が汚損に至らない程度である。排圧調整バルブ12の開度制御は、従来から知られている通り、内燃機関状態と吸入空気量とによりEGR量(EGR指令値)を決定して行われる。
【0034】
内燃機関状態が前方EGR制御領域にあるとき、ステップS12からステップS14に進み、制御部14は、排圧調整バルブ12を全開とし、EGR制御バルブ11の開度制御によりEGRを掛ける。排圧調整バルブ12が全開になると、後方低圧EGR配管10によるEGRはほぼなくなり、EGR量はEGR制御バルブ11で制御されるようになる。
【0035】
このように、本発明のEGR制御装置1は、内燃機関2から排出される煤が比較的少ない低負荷時あるいは低負荷から高負荷への過渡時(加速時)において前方EGR制御を行い、内燃機関2から排出される煤が比較的多いときは後方EGR制御を行うようにしたので、加速や加減速の連続時のEGRを確保でき、NOxを十分に低減できると共に、コンプレッサ3の汚損を防止することができる。
【0036】
また、後方EGR制御のみを行う従来技術の場合、EGRの流路長が長いため、排圧調整バルブ12の制御ではEGR量の応答が遅れ、EGR量を変化させる過渡時に問題が生じ、NOx排出量が増大したが、本発明のEGR制御装置1は、後方EGR制御の際にも前方低圧EGR配管8を経由するEGRが常時行われているので、EGR量の応答が遅れることがなく、前方EGR制御と後方EGR制御を切り替えるときの時間遅延もない。
【0037】
次に、最小EGR開度の設定(変更)について説明する。
【0038】
内燃機関2の排気ガス配管6に後処理装置9を設置することは、必須となっている。後処理装置9は、煤をある程度の量まで溜め込んでは再生を掛けて煤を焼くというサイクルを繰り返す。再生直後の新鮮時から次の再生時期まで溜まる煤の量が増加し続け、排気ガスの流通の妨げが増大するので、内燃機関状態が同じであれば、後処理装置9の上流の排圧検出器15で検出される排気ガスの圧力が新鮮時から次の再生時期まで上昇する。このとき、EGR制御バルブ11の開度が一定に保持されていたとすると、排気ガスの圧力上昇によってEGR量が増加する。EGR制御バルブ11の開度制御を行う前方EGR制御においてはフィードバック制御によりEGR制御バルブ11の開度を調節してEGR量が加減できる。しかし、後方EGR制御時はEGR指令値が0近傍ではEGR制御バルブ11が最小開度で常時一定なので、排気ガスの圧力上昇によってEGR量が増加する。このように実際に流れるEGR量が目標とする最小EGR量よりも多いと、粒子状物質(PM;Particulate Matter)が増加する。
【0039】
そこで、本発明のEGR制御装置1では、後処理装置9の劣化に応じて最小EGR量が自動設定されるようにした。以下、そのアルゴリズムを説明する。
【0040】
図7に示されるように、ステップS21において、制御部14は、内燃機関状態検出器13が検出した内燃機関状態(エンジン回転数及びトルク)を読み込む。ステップS22において、制御部14は、内燃機関状態が定常運転状態にあるかどうか判定する。ここで、定常運転状態とは、エンジン回転数とトルクがそれぞれ一定範囲以内にある状態が一定時間継続した状態のことである。よって、制御部14は、エンジン回転数とトルクを繰り返し読み込むと共に変化分を計算して一定範囲を超えたかどうかを監視しつつ、時間を計測して一定時間を超えたかどうかを判断する。
【0041】
ステップS22の判定がN(偽)であれば、内燃機関状態が定常運転状態ではないので、ステップS21に戻る。ステップS22の判定がY(真)であれば、内燃機関状態が定常運転状態なのでステップS23に進む。
【0042】
ステップS23において、制御部14は、現在が後方EGR制御時であるか前方EGR制御時であるか判定する。ステップS23の判定がNであれば、後方EGR制御時であるから、ステップS21に戻る。これは、後方EGR制御時には排圧調整バルブ12の開度制御を行っているため、排気ガス圧力から後処理装置9の劣化を判定できないからである。ステップS23の判定がYであれば、前方EGR制御時であるから、ステップS24に進む。
【0043】
ステップS24において、制御部14は、排圧検出器15で検出される排気ガスの圧力(EP)を読み込む。ステップS25において、制御部14は、図3の基礎排圧選択マップをエンジン回転数とトルクで参照して、後処理装置9の新鮮時における排気ガスの圧力である基礎排圧(EP0)を読み出す。
【0044】
ステップS26において、制御部14は、後処理装置劣化比(EP/EP0)を計算する。後処理装置劣化比(EP/EP0)は、後処理装置9の新鮮時に1であり、その後、大きくなるが2程度で飽和し、後処理装置9が再生されると1に戻る。次いで、制御部14は、後処理装置劣化比(EP/EP0)で図4の最小EGR開度マップを参照して、最小EGR開度を読み出す。図4に示されるように、後処理装置劣化比(EP/EP0)が1のとき最小EGR開度はEVfである。後処理装置劣化比(EP/EP0)が大きくなると最小EGR開度は小さくなり、後処理装置劣化比(EP/EP0)が2で飽和すると、最小EGR開度はEVaで一定となる。制御部14は、このようにして最小EGR開度マップから読み出した最小EGR開度に基づいてEGR制御バルブ11の最小開度を設定(変更)する。
【0045】
このように、本発明のEGR制御装置1は、後処理装置9の劣化に応じてEGR制御バルブ11の最小開度を決定することができる。
【0046】
次に、後方EGR制御におけるEGR制御バルブ11の最小開度の働きを説明する。
【0047】
本発明のEGR制御装置1の制御部14は、後方EGR制御において、EGR制御バルブ11を最小開度に制御した状態で排圧調整バルブ12の開度制御を行う。このとき、制御部14は、従来と同様にEGR指令値で図5のEGR開度マップを参照して実EGR開度を読み出し、その実EGR開度に基づき排圧調整バルブ12の開度制御を行う。図5に示されるように、EGR指令値と実EGR開度は1:1であるため、EGR指令値が0であれば実EGR開度も0である。したがって、EGR指令値が0であれば、排圧調整バルブ12は実EGR開度が0となるよう全開に制御される。しかし、前述したように、本発明のEGR制御装置1では、後方EGR制御において、EGR制御バルブ11が最小開度に制御された状態である。これにより、前方低圧EGR配管に有限のEGR量が常時流れている。結果的に、後方EGR制御におけるEGR指令値に対する実際の実EGR開度は図8のようになる。
【0048】
図8(a)に示されるように、後処理装置9が新鮮時には、最小EGR開度がEVfであるため、EGR指令値が0に近付くと実EGR開度はEVfで一定となる。その後は、時間経過と共に図4のように最小EGR開度は小さくなるので、一定となる実EGR開度が下がり、最終的に、図8(b)に示されるように、後処理装置9が劣化時には、最小EGR開度がEVaとなるため、EGR指令値が0に近付くと実EGR開度はEVaで一定となる。後処理装置9が再生されると、図8(a)に戻る。
【0049】
このように、後方EGR制御におけるEGR制御バルブ11の最小開度が後処理装置9の劣化の度合いに応じて設定されるので、排気ガスの圧力上昇によるEGR量の過剰増加が抑制され、浮遊粒子状物質の増加が防止される。
【0050】
図1に示したEGR制御装置1には低圧EGR配管用クーラーを設けなかったが、低圧EGR配管用クーラーを設けても本発明は適用できる。
【0051】
また、低圧EGRと高圧EGRを併用する場合でも、本発明は低圧EGRに対して適用できる。したがって、図1に示したEGR制御装置1において、内燃機関2の排気側から給気側に繋ぐ高圧EGR配管、高圧EGRバルブ、高圧EGRクーラーを設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態を示すEGR制御装置の構成図である。
【図2】本発明に用いるEGR制御方式選択マップに相当するグラフである。
【図3】本発明に用いる基礎排圧選択マップに相当するグラフである。
【図4】本発明に用いる最小EGR開度マップに相当するグラフである。
【図5】本発明に用いるEGR開度マップに相当するグラフである。
【図6】本発明における前方EGR制御と後方EGR制御の切り替えアルゴリズムを示すフローチャートである。
【図7】本発明における後処理装置の劣化に応じた最小EGR量の自動設定アルゴリズムを示すフローチャートである。
【図8】(a)は後処理装置が新鮮時、(b)は後処理装置が劣化時におけるEGR指令値に対する実際の実EGR開度を示すグラフである。
【符号の説明】
【0053】
1 EGR制御装置
2 内燃機関
3 コンプレッサ
4 タービン
5 ターボチャージャ
6 排気ガス配管
7 空気吸入管
8 前方低圧EGR配管
9 後処理装置
10 後方低圧EGR配管
11 EGR制御バルブ
12 排圧調整バルブ
13 内燃機関状態検出器
14 制御部
15 排圧検出器
16 MAFセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、
該内燃機関の給気側に接続されたコンプレッサを上記内燃機関の排気側に接続されたタービンで駆動するターボチャージャと、
上記タービンの下流の排気ガス配管から分岐されて上記コンプレッサの上流に繋がる前方低圧EGR配管と、該前方低圧EGR配管の分岐箇所よりも下流の排気ガス配管に配置され排気ガスを浄化する後処理装置と、
該後処理装置の下流の排気ガス配管から分岐されて上記コンプレッサの上流に繋がる後方低圧EGR配管と、
上記前方低圧EGR配管に配置されたEGR制御バルブと、
上記後方低圧EGR配管の分岐箇所よりも下流の排気ガス配管に配置された排圧調整バルブと、
上記内燃機関の状態を検出する内燃機関状態検出器と、
内燃機関状態が前方EGR制御に適するとき上記排圧調整バルブを全開した状態で上記EGR制御バルブの開度制御による前方EGR制御を行い、内燃機関状態が後方EGR制御に適するとき上記EGR制御バルブを有限の最小開度に制御した状態で上記排圧調整バルブの開度制御による後方EGR制御を行う制御部とを備えたことを特徴とする内燃機関のEGR制御装置。
【請求項2】
上記内燃機関状態検出器は、エンジン回転数とトルクを検出し、
上記制御部は、エンジン回転数とトルクを座標として前方EGR制御領域と後方EGR制御領域が設定されたEGR制御方式選択マップを有し、
上記制御部は、検出された内燃機関状態が上記EGR制御方式選択マップの前方EGR制御領域に位置するとき前方EGR制御を行い、検出された内燃機関状態が上記EGR制御方式選択マップの後方EGR制御領域に位置するとき後方EGR制御を行うことを特徴とする請求項1記載の内燃機関のEGR制御装置。
【請求項3】
上記タービンと上記後処理装置との間に配置され排気ガスの圧力を検出する排圧検出器を備え、
上記制御部は、エンジン回転数とトルクを座標として上記後処理装置の新鮮時における排気ガスの圧力である基礎排圧が設定された基礎排圧選択マップと、検出される排気ガスの圧力と基礎排圧との比である後処理装置劣化比に対する最小EGR開度が設定された最小EGR開度マップとを有し、
上記制御部は、前方EGR制御時に、検出された排気ガスの圧力と上記基礎排圧選択マップから読み出した基礎排圧とから後処理装置劣化比を演算し、当該後処理装置劣化比で上記最小EGR開度マップを参照することで、最小EGR開度を読み出して上記EGR制御バルブの最小開度を求めておくことを特徴とする請求項1又は2記載の内燃機関のEGR制御装置。
【請求項4】
上記制御部は、EGR指令値に対する実EGR開度が設定されたEGR開度マップを有し、
上記制御部は、後方EGR制御において、上記EGR制御バルブを最小開度に制御した状態で、EGR指令値で上記EGR開度マップを参照して実EGR開度を読み出し、その実EGR開度に基づき上記排圧調整バルブの開度制御を行うことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の内燃機関のEGR制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−156231(P2010−156231A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334083(P2008−334083)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】