説明

分子線エピタキシャル装置の制御装置、分子線エピタキシャル装置、分子線エピタキシャル装置の制御方法、分子線エピタキシャル装置制御プログラム、およびコンピュータ読み取り可能な記録媒体

【課題】同一の分子線材料を有する分子線セルを複数有する分子線エピタキシャル装置の稼動率を向上させ、かつ、成膜において高い再現性を実現する、分子線エピタキシャル装置の制御装置を提供する。
【解決手段】分子線エピタキシャル装置100の制御装置118は、同一の分子線材料105を有する複数の分子線セル107について、各分子線セル107内の分子線材料105の残量を求める残量算出部405と、次回の成膜における各層での同一の分子線材料105の合計の消費量を等しくしたまま、上記各分子線セル107における設定を変更したものについて、次回の成膜後の当該各分子線セル107に残存する分子線材料105の予測消費時間を算出する予測消費時間算出部406と、上記予測消費時間の差が小さくなるように、次回の成膜での上記各分子線セル107における設定を決定するセル設定決定部407とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体結晶膜を形成させる分子線エピタキシャル装置の成膜制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造方法において、基板上に分子線材料を用いて所望の半導体結晶膜をエピタキシャル成長させる方法の1つに、分子線エピタキシャル法(MBE法)がある。この方法は、真空中に置かれ、分子線材料が入れられた坩堝を加熱し、この坩堝から発生した分子線を、同じく真空中に置かれ、適正な温度に保持された基板上に照射させ、結晶成長させるものである。
【0003】
このようなMBE法を用いて半導体結晶膜を成長させる従来の分子線エピタキシャル装置(MBE装置)について説明する。図8は、従来のMBE装置500の一例を示す図である。MBE装置500は、成膜室501の中央に基板加熱ヒータ504と基板502を保持するマニピュレータ503とを備えている。また、MBE装置500には、基板502の下方に、分子線材料505を坩堝506内に充填した分子線セル507が、坩堝506の開口部を基板502の表面に向けて設置されている。MBE装置500を用いて結晶成長を行う場合、基板502を所定の温度まで加熱し、かつ、坩堝506も所定の温度まで加熱して、坩堝506内に充填した分子線材料505の分子を分子の流れ(分子線)として基板502の表面まで移動させる。分子線セル507と基板502の表面との間にはセルシャッター508が配置されている。セルシャッター508の開閉によって分子線を変化させ、基板502の表面に形成される結晶膜の厚さを制御する。
【0004】
図9は、上記従来の分子線セル507の構成を詳細に示す図である。図9に示すように、分子線セル507は、その内部に分子線材料505を充填する坩堝506を備えている。また、坩堝506の周囲には坩堝506を加熱するセルヒータ509が配置されている。また、坩堝506の温度を計測する熱電対510が少なくとも1個、坩堝506に近接もしくは接触して配置されている。セルヒータ509の周囲には、輻射シールド511がセルヒータ509を取り囲むように配置され、セルヒータ509から放射される輻射熱が分子線セル(分子線源セル)507の外部に放射することを防いでいる。上記構成要素はすべて、分子線セル507のベースとなるフランジ512に固定されている。フランジ512には、電力導入端子513が取り付けられている。電力導入端子513は、セルヒータ509と接続され、セルヒータ509へ電力供給を行っている。また、フランジ512には、熱電対導入端子514が取り付けられている。熱電対導入端子514は、熱電対510と接続され、坩堝506の温度を外部へ出力している。
【0005】
熱電対導入端子514は、温度制御手段である温度調節装置515に接続され、温度調節装置515は、熱電対510の出力信号が設定された値となるように変温手段である電源装置516を制御する。電源装置516は、温度調節装置515の指示に従って、セルヒータ509に電力を供給する。したがって、温度調節装置515が設定した温度となるように、坩堝506の温度が制御され、適切な分子線が発生するように設定される。坩堝506内の分子線材料505はセルシャッター508が閉じている間も、セルシャッター508を開いて照射するときの立ち上がりの遅れを無くすために、ある一定温度に保たれる。そのため、待機中も分子線材料505は坩堝506内で蒸発して、分子線材料505の量は減少していく。
【0006】
MBE装置500は、装置内部に配置された分子線セル507の坩堝506に充填された分子線材料505を用いて、基板502の表面に半導体薄膜として結晶を成長させる装置である。したがって、結晶成長を行う毎に坩堝506内の分子線材料505は減少してゆく。坩堝506内の分子線材料505が枯渇した時点で、MBE装置500は結晶成長を行うことができなくなる。そのため、通常、真空状態にある成膜室501内を大気圧に戻し、坩堝506に分子線材料505を再充填する必要がある。再充填後に成膜室501内を真空状態に戻すには、大幅な時間の消費を伴うことから、MBE装置500で電子デバイスの生産を行う場合、上記の分子線材料505の再充填作業が必要となる時期を正確に予測して、電子デバイスの生産計画を立てることが望ましい。ところが、坩堝506内の分子線材料505の残量を正確に知ることは困難であり、従来は経験と勘に頼って残量を予測し、生産計画を立てていた。したがって、分子線材料505の残量の予測を誤ると、電子デバイスの生産計画に大きな齟齬を生じ、莫大な損害が発生することになった。
【0007】
このため、坩堝内の分子線材料の残量を、真空状態を破らずに知る方法が複数提案されている。例えば、坩堝の内壁の深さ方向に2ヶ所の電極を設け、分子線材料が電極位置より下になった状態を導通の有無で判断する方法がある(特許文献1参照)。また、超音波発信器と、分子線材料の液面からの反射波を受信する超音波受信器とを坩堝の底部に設け、超音波発信器から発せられたパルス超音波が分子線材料の液面で反射されて、超音波受信器に到達するまでの時間から、分子線材料の液面の位置を検出する方法がある(特許文献2参照)。しかし、坩堝内の分子線材料の残量を検出する手段として、上述の特許文献1に示すような電極を複数設ける方法は、分子線材料の残量が特定の分子線材料の量よりも多いか少ないか、という不連続的な情報しか得られないという欠点がある。また、特許文献2に示すような分子線セルに超音波受信器・発信器という新たな機構を付加する方法は、分子線材料の充填量の連続的な変化を計測できるという利点がある。しかし、計測手段が比較的大掛かりであり、コストと故障確率の上昇という欠点を有する。
【0008】
これらに対し、坩堝の温度情報に基づき、坩堝の熱質量を推定する熱質量推定手段を設けることにより、坩堝内の分子線材料の残量を推定する方法がある(特許文献3参照)。特許文献3に示すような、検出温度の情報に基づき坩堝の熱質量を推定する方法では、分子線セルに新たな付加機構を設けることなく、分子線セルの坩堝内の、分子線材料の充填量を推定できる点で有効である。
【0009】
しかしながら、分子線材料の残量の把握についての問題以外にも、MBE装置での結晶成長プロセスにおいて、次のような問題がある。この問題について、MBE法によるAlGaInP系の赤色半導体レーザによる従来の半導体素子の製造法について、図10(a)および(b)を参照に説明する。
【0010】
図10(a)に示す様に、n−GaAs基板600上に、MBE法を用いて、n−GaAsバッファ層601、n−Ga0.5In0.5層602、n−Al0.5In0.5Pクラッド層603、Ga0.5In0.5P活性層604、p−Al0.5In0.5Pクラッド層605、p−Ga0.5In0.5P層606、p−GaAsキャップ層607、p−GaAsコンタクト層608を順次成長させる。
【0011】
ここで、p−GaAsキャップ層607とp−GaAsコンタクト層608とにおいて、ドーピング濃度は重要であり、p−GaAsキャップ層607では5×1018cm−3、p−GaAsコンタクト層608では1×1019cm−3と設定する。これは、一方で、p−GaAsキャップ層607のドーピング濃度が低すぎる場合、p−Al0.5In0.5Pクラッド層605およびp−Ga0.5In0.5P層606の間で、価電子帯のヘテロ障壁の影響が大きくなり、素子の駆動電圧が上昇するためである。他方で、p−GaAsキャップ層607のドーピング濃度が高すぎると、ドーパントの拡散により活性層やクラッド層の不純物濃度が不安定となり、素子の駆動電流の上昇や素子の信頼性の悪化が起こるからである。また、p−GaAsコンタクト層608のドーピング濃度は、電極コンタクト抵抗を低減させるために高くしている。
【0012】
次に、図10(b)に上記のp−GaAsキャップ層607、p−GaAsコンタクト層608を成長させるときの各分子線セルの分子線量と成長時間との関係を示す。半導体結晶膜を成長させるために、Ga、AsおよびBeの分子線材料の入った分子線セル(セル)をそれぞれ1個づつ使用して、連続的に異なるドーピング濃度の層を成長させる。なお、p型ドーパント材料のBeの分子線量は、実際は、半導体構成元素となる材料用のGaやAsの分子線量に比べてはるかに少ないが、図10(b)では、拡大して図示している。
【0013】
従来は、図10(b)に示すようにGa、Asの分子線を一定にし、Beのセル温度を上昇させることにより、分子線量を増加させていた。したがって、ドーピング濃度は、勾配をもって変化したものとなっている。しかしこの場合、周囲の温度の違いやドーパント材料の量や充填方法によって、勾配は一定とならず、結晶の成長ごとに再現性がとれない。このような原因により、半導体素子の特性が不安定となってしまう。
【0014】
上記問題を解決するために、MBE装置での結晶成長のプロセスにおいて、所望の層の同一分子線材料に対する原料の供給を複数の分子線セルを用いて行う、改良された従来の半導体素子の製造方法が提案されている(特許文献4参照)。この改良された従来の方法を用いると、複数の層を積層して半導体素子を製造する際に、ドーピング濃度を急峻かつ再現性よく制御できる。この改良された従来の半導体素子の製造方法について図11(a)および(b)を用いて説明する。
【0015】
図11(a)に示す様に、n−GaAs基板700上に、MBE法を用いて、n−GaAsバッファ層701、n−(Al0.7Ga0.30.5In0.5Pクラッド層702、Ga0.4In0.6P活性層703、p−(Al0.7Ga0.30.5In0.5Pクラッド層704、p−Ga0.5In0.5P層705を順次成長させる。さらにその上に、p−GaAs層706(p=5×1018cm−3、厚さ4μm)、p−GaAs層707(p=1019cm−3、厚さ0.1μm)をMBE法で成長させる。
【0016】
図11(b)に上記のp−GaAs層706と、p−GaAs層707とを成長させるときの各分子線セルの分子線量と成長時間との関係を示す。半導体結晶膜を成長させるために、AsおよびBeは、それぞれ1つずつの分子線セルを使用する。また、p−GaAs層706をGa1セル、p−GaAs層707をGa2セルを用いて、それぞれGaの分子線を発射するように設定して、成長させる。したがって、2個のGaセルを用いる。図11(b)に示す様に、p−GaAs層707は、p−GaAs層706に比べGaの分子線量が2分の1となっているため、Beの分子線セル(Beセル)からの分子線量は一定であるが、ドーピング濃度を2倍とすることができる。しかも、Gaセルの切り替えは瞬時に行えるため、1個づつの分子線セルを使用した場合に比べて急峻なドーピング濃度変化が得られる。
【0017】
しかし、図11(b)で説明した改良された従来の半導体素子の製造方法を用いた場合でも、ドーピング濃度が不均一になってしまうという問題が残る。これは、p−GaAs層707の成長開始した直後、Ga2セルより発射される分子線強度に変動が現われることによって起こる。この変動が現われるのは、セルシャッターが閉じている時には、セル内部の熱輻射がセルシャッターで反射し分子線材料表面の温度を上昇させるのに対し、セルシャッターを開けた直後に熱輻射の反射がなくなるので、急激に分子線材料の表面の温度が低下するためである。特に、大型の分子線セルに多量の分子線材料を充填する必要のある量産用MBE装置では、上記分子線量の変動値は大きな値となる。Ga2セルでは、p−GaAs層706を成長中セルシャッターが閉じられているため、坩堝内部の温度が高い。したがって、セルシャッターを開いた直後の分子線量は相対的に大きいが、その後、坩堝が冷却されると分子線強度が低下する。この変動の程度(変動値)、つまり、分子線量の最大値と最小値の差は、通常の成長時のGaの分子線量の10〜30%に達する。また変動値は、周囲の温度や分子線材料充填量などにより変化するため、ドーピング濃度の変動の再現性に問題が残ることになる。
【0018】
ただし、このドーピング濃度の変動の再現性の問題を解決するための方法も提案されている。例えば、所望の層の同一分子線材料に対する原料の供給を、複数の分子線セルを用いて行い、隣接したドーピング濃度が異なる層を形成するときに、複数の分子線セルのうちの少なくとも1つを閉じて、連続した層の形成を行う方法である(特許文献5参照)。この方法では、分子線セルのうちの少なくとも1つを閉じることにより、ドーピング濃度を変えることができるため、坩堝開放時の分子線過渡現象がほとんど生じることはない。また、複数の分子線セルの分担する分子線量を低くすることで、分子線過度応答の絶対量を飛躍的に低減させる方法(特許文献6参照)も提案されている。
【0019】
また、同一材料の複数のドーパント用分子線用発生源を用いることで、界面での濃度落ち込みを無くす方法が提示されている(特許文献7参照)。さらに、複数ある同一の分子線セルを数種の分子線材料に用いることで、隣接する混晶層の瞬時の切り替えを可能にする方法が提案されている(特許文献8参照)。
【0020】
特許文献4〜8に示す方法のように、同一の分子線材料に複数の分子線セルを用いると、急峻なドーピング濃度変化が可能となり、また、分子線の過渡現象を抑え、ドーピング濃度の変動の再現性を向上させることができる。
【特許文献1】特開平3−275592号公報(1991年12月6日公開)
【特許文献2】特開昭63−85089号公報(1988年4月15日公開)
【特許文献3】特開2004−189539号公報(2004年7月8日公開)
【特許文献4】特開平11−354450号公報(1999年12月24日公開)
【特許文献5】特開2001−15436号公報(2001年1月19日公開)
【特許文献6】特開2000−307198号公報(2000年11月2日公開)
【特許文献7】特開平8−340137号公報(1996年12月24日公開)
【特許文献8】特開平11−330623号公報(1998年11月30日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかし、上記に説明したように、特許文献4〜8に記載されたような方法では、同一の分子線材量を不均一に消費してしまうことになる。これは、次のような理由からである。同一の分子線材料に複数の分子線セルを用いる方法では、セルシャッターが閉じている待機中の状態でも、分子線セル内の材料がセルシャッターを開いて分子線を照射するときの立ち上がりの遅れを無くすために、分子線セルがある一定温度に保たれている。このことから、待機中でも材料がセル内で蒸発し材料の量は減少している。このように、同一の分子線材料に複数の分子線セルを用いる方法では、各分子線セルの状態がセルシャッターの開閉状態により分子線の照射と待機とに使い分けられることから、照射時と待機時では分子線材料の消費量に差が生じる。さらに待機中の分子線材料の蒸発によって減少する量も、待機していた時間により差が生じる。これらのことから、各分子線セルが置かれていた照射および待機の状態の時間と、セルシャッターの開閉の頻度との組み合わせの違いにより、各分子線セルで分子線材料の消費に偏りが生じる。このような同一の分子線材料の不均一な消費によって、エピ毎の結晶膜の再現性が悪くなっているという問題がある。
【0022】
また、複数の分子線セルのうちのいずれかの分子線材料が枯渇すれば、MBE装置の稼動が停止され、真空状態にある成膜室内を大気圧に戻し、分子線セルに分子線材料を再充填する必要がある。そのため、複数の分子線セルのうち分子線材料の使用量の多い分子線セルにMBE装置の稼働時間が制約されてしまう。よって、早く分子線材料が尽きるセルと多量の残存があるセルとが存在すると、MBE装置の稼働率が悪くなる。
【0023】
本発明の目的は、同一の分子線材料を有する分子線セルを複数有する分子線エピタキシャル装置の稼動率を向上させ、かつ、成膜において高い再現性を実現する、分子線エピタキシャル装置の制御装置、分子線エピタキシャル装置、分子線エピタキシャル装置の制御方法、分子線エピタキシャル装置制御プログラム、およびコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明に係る分子線エピタキシャル装置の制御装置は、上記課題を解決するために、同一の分子線材料を有する複数の分子線セルを備え、複数の層からなる結晶膜を成膜する分子線エピタキシャル装置の制御装置において、同一の分子線材料を有する複数の分子線セルについて、各分子線セル内の分子線材料の残量を求める残量算出手段と、次回の成膜における各層での同一の分子線材料の合計の消費量を等しくしたまま、上記各分子線セルにおける設定を変更して、次回の成膜後の当該各分子線セルに残存する分子線材料の予測消費時間を算出する予測消費時間算出手段と、上記予測消費時間の差が小さくなるように、次回の成膜での上記各分子線セルにおける設定を決定するセル設定決定手段と、
を備えたことを特徴としている。
【0025】
また、本発明に係る分子線エピタキシャル装置の制御方法は、上記課題を解決するために、同一の分子線材料を有する複数の分子線セルを備え、複数の層からなる結晶膜を成膜する分子線エピタキシャル装置の制御方法において、同一の分子線材料を有する複数の分子線セルについて、各分子線セル内の分子線材料の残量を求める残量算出ステップと、次回の成膜における各層での同一の分子線材料の合計の消費量を等しくしたまま、上記各分子線セルにおける設定を変更したものについて、次回の成膜後の当該各分子線セルに残存する分子線材料の予測消費時間を算出する予測消費時間算出ステップと、上記予測消費時間の差が小さくなるように、次回の成膜での上記各分子線セルにおける設定を決定するセル設定決定ステップと、を含むことを特徴としている。
【0026】
上記構成および上記方法によると、同一分子線を有する複数の分子線セルにおける分子線材料の残量を算出し、次回の成膜における各分子線セルの設定を、次回の成膜における各層での同一の分子線材料の合計の消費量を等しくしたまま、各分子線セルにおける分子線材料の予測消費時間の差が小さくなるように決定する。
【0027】
次回の成膜における各層での同一の分子線材料の合計の消費量を等しくしたまま行うことができるので、ドーピングの濃度が均一とすることができる。そして、予測消費時間の差を小さくすることができるので、分子線材料の枯渇までの時間を、どの分子線セルにおいても、常に略一定にすることができる。つまり、ある分子線セルの分子線材料だけが他の分子線セルより早く枯渇するというような、各分子線セルにおける分子線材料の不均一な消費を抑えることが可能である。
【0028】
このように、ドーピングの濃度を均一とすることができ、同一の分子線材料の不均一な消費の解消を行うことができるので、常に高い再現性にて成膜をすることができる。
【0029】
また、同一の分子線材料の不均一な消費の解消により、分子線材料の枯渇にともなって真空状態を破り分子線セルに分子線材料を再充填するという、大幅に時間を消費する工程の頻度を低下させることができる。よって、分子線エピタキシャル装置の稼働率を向上させることができる。
【0030】
なお、予測消費時間の差が小さくなるように次回の成膜での上記各分子線セルにおける設定を決定する、とは、分子線セルが3つ以上あるときは、各分子線セルにおける設定を変えたものについて、各分子線セルの差分値の平均値を求め、その差分値の平均値を比較して小さいものを選ぶものとする。
【0031】
また、本発明に係る分子線エピタキシャル装置の制御装置は、上記構成に加え、上記分子線セルの設定には、成膜時間、制御温度、昇温・降温時の温度勾配、及び分子線の照射と待機との切り替え、の少なくとも1つを含んでもよい。
【0032】
上記構成によると、分子線セルの設定において、成膜時間、制御温度、昇温・降温時の温度勾配、及び分子線の照射と待機との切り替え、の少なくとも1つを変更させて、次回の成膜後の当該各分子線セルに残存する分子線材料の予測消費時間を算出し、変更したもののうち、予測消費時間の差が小さくなるものを選んで、次回の成膜での各分子線セルにおける設定を決定することができる。
【0033】
また、本発明に係る分子線エピタキシャル装置の制御装置では、上記構成に加え、上記予測消費時間算出手段は、上記同一の分子線材料を有する複数の分子線セルの成膜における用途を変更した組み合わせ毎に次回の成膜後の当該各分子線セルに残存する分子線材料の予測消費時間を算出してもよい。
【0034】
上記構成によると、各分子線セルの成膜における用途を変更した組み合わせ毎に、予測消費時間を算出する。ここで、用途とは、結晶膜の成膜においてどの層に使用しどの層では使用しないかを決めるものである。用途を変更した組み合わせ毎に予測算出時間を算出して、その中の予測算出時間の差が小さい組み合わせを基に、次回の成膜での各分子線セルにおける設定を決定することができる。
【0035】
また、本発明に係る分子線エピタキシャル装置の制御装置では、上記構成に加え、上記残量算出手段は、上記各分子線セルの使用履歴を用いて当該各分子線セルの材料の消費量の推定、及び前記各分子線セルの測定、の少なくともどちらか一方を行い上記各分子線セル内の分子線材料の残量を算出してもよい。
【0036】
上記構成によると、使用履歴を用いて消費量の推定を行うことで分子線材料の残量を算出する、あるいは、実際に分子線セルを測定して分子線材料の残量を算出する。ここで、使用履歴とは、例えば、分子線の照射に使用された時間、制御温度等が挙げられるが、これらに限定はされない。ここで、同一材料を有する複数の分子線セルにおいて、仮に、測定ができなくなった分子線セルが出たとしても、その分子線セルについては推測を行い、他の測定できる分子線セルについては実測を行う、というように、推測と測定とを併用して分子線材料の残量の算出を行うことができる。つまり、どのような状態であれ、残量を算出することができる。
【0037】
また、本発明に係る分子線エピタキシャル装置の制御装置では、上記構成に加え、上記残量算出手段は、上記各分子線セルの分子線材料の、初期充填量、成膜時間、制御温度、昇温・降温時の温度勾配、分子線の照射と待機との切り替え、および分子線セル固有の単位時間当たりの分子線照射量、を基に上記分子線材料の残量を算出してもよい。
【0038】
上記構成によると、各分子線セルの分子線材料の、初期充填量、成膜時間、制御温度、昇温・降温時の温度勾配、分子線の照射と待機との切り替え、および分子線セル固有の単位時間当たりの分子線照射量は、成膜において測定されるものであるので、これらを測定するだけで、分子線セルに新たな付加機構を設けることなく、分子線セル内の分子線材料の充填量を正確に推定することができる。
【0039】
本発明に係る分子線エピタキシャル装置は、上記課題を解決するために、上記の何れかの分子線エピタキシャル装置の制御装置を備えることを特徴としている。
【0040】
上記構造によれば、稼動率を向上させ、かつ、高い再現性を実現して半導体結晶を成膜することができる。
【0041】
また、上記分子線エピタキシャル装置の制御装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記分子線エピタキシャル装置の制御装置における上記各手段として動作させることにより上記分子線エピタキシャル装置の制御装置をコンピュータにて実現させる分子線エピタキシャル装置制御プログラム、及びその分子線エピタキシャル装置制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【0042】
これらの構成によれば、分子線エピタキシャル装置制御プログラムを、コンピュータに読み取り実行させることによって、上記分子線エピタキシャル装置の制御装置と同一の作用効果を実現することができる。
【発明の効果】
【0043】
以上のように、本発明に係るエピタキシャル装置の制御装置は、同一の分子線材料を有する複数の分子線セルについて、各分子線セル内の分子線材料の残量を求める残量算出手段と、次回の成膜における各層での同一の分子線材料の合計の消費量を等しくしたまま、上記各分子線セルにおける設定を変更して、次回の成膜後の当該各分子線セルに残存する分子線材料の予測消費時間を算出する予測消費時間算出手段と、上記予測消費時間の差が小さくなるように、次回の成膜での上記各分子線セルにおける設定を決定するセル設定決定手段と、を備えている。
【0044】
上記構成によると、同一分子線を有する複数の分子線セルにおける分子線材料の残量を算出し、次回の成膜における各分子線セルの設定を、次回の成膜における各層での同一の分子線材料の合計の消費量を等しくしたまま、各分子線セルにおける分子線材料の予測消費時間の差が小さくなるように決定する。
【0045】
次回の成膜における各層での同一の分子線材料の合計の消費量を等しくしたまま行うことができるので、ドーピングの濃度が均一とすることができる。そして、予測消費時間の差を小さくすることができるので、分子線材料の枯渇までの時間を、どの分子線セルにおいても、常に略一定にすることができる。つまり、ある分子線セルの分子線材料だけが他の分子線セルより早く枯渇するというような、各分子線セルにおける分子線材料の不均一な消費を抑えることが可能である。
【0046】
このように、ドーピングの濃度を均一とすることができ、同一の分子線材料の不均一な消費の解消を行うことができるので、常に高い再現性にて成膜をすることができる。
【0047】
また、同一の分子線材料の不均一な消費の解消により、分子線材料の枯渇にともなって真空状態を破り分子線セルに分子線材料を再充填するという、大幅に時間を消費する工程の頻度を低下させることができる。よって、分子線エピタキシャル装置の稼働率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
本発明の一実施形態について図1〜図7に基づいて説明すると以下の通りである。図1は、本発明に係る分子線エピタキシャル装置の制御装置118を備えた分子線エピタキシャル装置(MBE装置)100の概略図である。MBE装置100は、同一の分子線材料を有する複数の分子線セル107を備えており、複数の層からなる結晶膜を成膜するものである。
【0049】
図1に示すように、MBE装置100は、成膜室101、マニピュレータ103、基板加熱ヒータ104、坩堝106を備えた分子線セル(分子線原セル、セル)107、セルシャッター108、シャッター制御装置115、電源装置116、温度調節装置117、制御装置118、記憶装置40を備えている。坩堝106の中には分子線材料(セル材料)105が充填されている。
【0050】
図1では、基板102に半導体結晶膜をエピタキシャル成長させるように、基板102がマニピュレータ103により保持されている。
【0051】
ここで、MBE装置100は、同一の分子線材料を有する複数の分子線セルを備えおり、分子線セル(セル)107は複数ある。そのため、分子線セルまたは分子線セルに関する各構成をそれぞれ区別する際には、分子線セル107a,分子線セル107b…、また、坩堝106a,坩堝106b…のように、部材番号の後ろに英字を添えるものとする。区別する必要がない場合には、つまり、全ての分子線セルあるいは、全ての分子線セルに関する各構成に当てはまる説明の場合には、部材番号の後ろに英字を添えない。
【0052】
成膜室101は、内部に基板102を配置させ、同じく内部に配置させた分子線セル107からの分子線材料105により、基板102上半導体結晶膜をエピタキシャル成長させるための空間をなすものである。成膜室101は、コンプレッサー等により真空引きされ真空状態となっている。
【0053】
マニピュレータ103は、基板102を保持するために成膜室101内に設けられている。
【0054】
基板加熱ヒータ104は、結晶成長を行う場合、基板102を所定の温度まで加熱できるように設けられている。
【0055】
分子線セル107は、成膜室101内で基板102と対面した位置に、坩堝106の開口部を基板102の表面に向けて設置される。また、分子線セル107は、複数配置される。なお、図1では、分子線セルは2個のみ記載している。分子線セル107では、結晶成長を行う場合、坩堝106を所定の温度まで加熱して、坩堝106内に充填した分子線材料(セル材料)105の分子を分子の流れ(分子線)として基板102の表面まで移動させる。なお、分子線セル107の温度制御については、後段に詳しく説明する。
【0056】
セルシャッター108は、分子線セル107と基板102の表面との間に配置される。セルシャッター108の開閉は、セルシャッター制御装置115aにて制御され、セルシャッター108の開閉により、分子線セル107からの分子線の量が変化されて、基板102の表面に形成される結晶膜の厚さが制御される。
【0057】
電源装置116は、分子線セル107の後述するセルヒータ109へ電力供給を行う。電力供給については、後段の分子線セル107の温度制御の説明にて、詳しく説明する。
【0058】
温度調節装置117は、坩堝106の温度を調整する。この温度の調整については、後段の分子線セル107の温度制御の説明にて、詳しく説明する。
【0059】
制御装置118は、制御装置118とシャッター制御装置115、電源装置116及び温度調節装置117等のMBE装置100における各種構成の動作を統括的に制御する。また、制御装置118は、残量算出部405、予測消費時間算出部406、セル設定決定部407、レシピ決定部408として機能する。
【0060】
残量算出部405は、各分子線セル107の分子線材料105の残量(材料残量)を算出する。本実施形態では、残量算出部405は、熱容量推定部403と消費量推定部404とを備えているものとするが、どちらか一方のみを備えていてもよい。
【0061】
熱容量推定部403は、坩堝の熱容量を推定することで分子線材料の消費量を推定する。
【0062】
消費量推定部404は、各々の分子線セルについての単位時間当たりの消費量のデータベースである単位時間当たりの消費量データベース401および、各々の分子線セルについて実行したレシピの履歴のデータベースであるレシピ履歴データベース402の2つのデータベースを基に、各分子線セル107の分子線材料の消費量を推定する。
【0063】
残量算出部405は、熱容量推定部403あるいは消費量推定部404により推定された分子線材料の消費量と、初期充填量との関係から、分子線材料105の残量を算出する。なお、分子線材料の消費量を、熱容量推定部403あるいは消費量推定部404により推定するかについては、予め決めておいて、以下で説明するレシピ毎、分子線セル107毎で変えることはない。例えば、経験的に算出精度の良い方に固定することになる。
【0064】
予測消費時間算出部406は、残量算出部405が算出した材料残量と単位時間当たりの消費量データベース401を基に、各分子線セル107の分子線材料105の予測消費時間を算出する。予測消費時間算出部406は、成膜における各層での同一の分子線材料の合計の消費量を等しくしたまま、各分子線セル107における設定を変更して、次回の成膜後の当該各分子線セル107に残存する分子線材料の予測消費時間を算出する。本実施形態では、予測消費時間算出部406が予測消費時間を算出するとき、各分子線セル107における設定を変更したものがレシピパターンとして作成されるようになっている。そのため、予測消費時間が異なる複数のレシピパターンが作成される。
【0065】
セル設定決定部407は、同一の分子線材料を有する複数の分子線セル107において、予測消費時間算出部406が算出した予測消費時間の差が小さくなるように、各分子線セル107における設定を決定する。分子線セル107の設定には、成膜時間、制御温度、昇温・降温時の温度勾配、及び分子線の照射と待機との切り替えが含まれるものとする。本実施形態では、セル設定決定部407は、予測消費時間の差が小さくなるレシピパターンを選ぶことで、セルの設定を決定する。なお、設定の決定の仕方については、後述する。
【0066】
レシピ決定部408は、セル設定決定部407が選択したレシピパターンを実行レシピとしてレシピ履歴データベース402に保存する。そして、選択されたレシピパターンにて成膜が行われる。レシピは、例えば、いくつかのステージで構成され、各ステージ中には各分子線セル107のセルシャッター108の開閉、セルヒータの制御温度、温度勾配等の情報が設定されている。セルシャッター108開閉の情報はシャッター制御装置115へ、セルヒータの制御温度、温度勾配の情報は温度調節装置117へ、各ステージ毎に制御装置118から送られ、送られた情報にて成膜を実行する。レシピ作成の詳細については、後述する。
【0067】
なお、本実施形態では、予測消費時間の差が小さくなるレシピパターンを選ぶことで、セルの設定を決定し、その選択したレシピパターン(実行レシピ)を基に成膜が行われる。しかし、予測消費時間算出部406がレシピパターンを作成しなくてもよい。つまり、予測消費時間算出部406が成膜における各層での同一の分子線材料の合計の消費量を等しくしたまま、各分子線セル107における設定を変更して、次回の成膜後の当該各分子線セル107に残存する分子線材料の予測消費時間を算出だけして、その予測消費時間の差が小さくなるように、セル設定決定部407が各分子線セル107における設定を決定してもよい。そして、その決定した設定の情報をそのままシャッター制御装置115、温度調節装置117等に送って、成膜が行われてもよい。この場合、レシピ決定部408は、セル設定決定部407が決定した各分子線セル107の設定を、レシピとして作成して、レシピ履歴データベース402に記憶させるようになる。
【0068】
記憶装置40は、ハードディスクなどの不揮発性の記憶装置によって構成される。記憶装置40には、各分子線セル107毎に、単位時間当たりの消費量データベース401、また、各分子線セル107毎に、レシピ履歴データベース402が記憶されている。
【0069】
単位時間当たりの消費量データベース401は、各分子線セル107の設定温度・セル残量に対する単位時間当たりの消費量を実験的または経験的に求めて、データベースとしたものである。
【0070】
また、レシピ履歴データベース402は、成膜を実行する(エピを実行する)ごとに各分子線セルの設定、詳細には、セルシャッター108の開閉(ON/OFF)、制御温度、温度勾配及び成長時間の情報をデータベースとして構築したものである。
【0071】
ここで、分子線セル107の温度制御について、図2を用いて詳しく説明する。坩堝106の周囲には坩堝106を加熱するセルヒータ109が配置されている。また、坩堝106aの温度を計測する熱電対110が少なくとも1個、坩堝106に近接もしくは接触して配置されている。セルヒータ109の周囲には、輻射シールド111がセルヒータ109を取り囲むように配置され、セルヒータ109から放射される輻射熱が分子線セル107の外部に放射することを防いでいる。上記各構成部材はすべて、分子線源セル107のベースとなるフランジ112に固定されている。フランジ112には、電力導入端子113が取り付けられており、電力導入端子113は、電源装置116とセルヒータ109とを接続している。電源装置116は電力導入端子113を介して、セルヒータ109へ電力供給を行っている。また、フランジ112には、熱電対導入端子114が取り付けられており、熱電対導入端子114は、熱電対110とを接続しており、熱電対110により測定した坩堝106の温度を、外部へ、つまり、温度調節装置117へ、出力する。
【0072】
熱電対110からの出力信号は、温度調節装置117が受信し、温度調節装置117は、熱電対110の出力信号が、セル設定決定部407により設定された値となるように(あるいは、レシピ作成部が作成したレシピにより設定された値になるといってもよい)電源装置116を制御する。そして、電源装置116は、温度調節装置117の制御に基づき、セルヒータ109に電力を供給する。したがって、セル設定決定部407により設定された温度となるように、坩堝106の温度が制御され、適切な分子線が発生するようになる。
【0073】
次に、残量算出部405、予測消費時間算出部406、セル設定決定部407、レシピ決定部408の動作について、図3〜図5のレシピを用いて、レシピの説明とともに詳細に説明する。なお、レシピ中の数値は単なる例示である。
【0074】
初めに、残量算出部405の、分子線材料105の消費量の推定について、図3のレシピ(これをレシピ1とする)を用いて説明する。セル名称とは分子線セルの名称であり、A1、A2は同一の分子線材料(A)を充填した分子線セルの名称である。また、B1、B2、B3は、A1、A2とは別の同一の分子線材料(B)を充填している分子線セルの名称である。
【0075】
図3〜5において、セルシャッター108が閉じているときを、グレーで表示している。図3の分子線セルA1を例にとると、分子線セルA1では、バッファ層、活性層、キャップ層を成長させるときにはセルシャッター108を閉じ、Nクラッド層1、Nクラッド層2、Pクラッド層1、Pクラッド層2を成長させるときは、セルシャッター108を開いた状態になっているということを示している。
【0076】
それぞれの分子線セルは、同一の分子線材料を充填していても用途によって使い分けている。同じ分子線材料である「A」を充填していても、分子線セルA1とA2とでは用途が違うということである。また、「B」を充填していても、分子線セルB1とB2とB3とでは用途が違うということである。ここで、用途とは、複数の層からなる結晶膜を成膜する際に、主にどの層の成膜に使用するかを決めるためにある。図3を用いて説明すると、分子線セルA1またはA2では、本実施形態では、用途VまたはWがあり、
用途Vは、「バッファ層、活性層、キャップ層では、未使用、Nクラッド層1、Nクラッド層2、Pクラッド層1、Pクラッド層2では、使用」
用途Wは、「バッファ層、キャップ層では、未使用、Nクラッド層1、Nクラッド層2、活性層、Pクラッド層1、Pクラッド層2では、使用」
となる。つまり、図3に示すレシピ1では、A1は用途Vに使用されるので、「バッファ層、活性層、キャップ層では、セルシャッターを開き、Nクラッド層1、Nクラッド層2、Pクラッド層1、Pクラッド層2では、セルシャッターを閉じる」ように設定される。また、A2は、図3に示すレシピ1では、用途Wに使用されるので、「バッファ層、キャップ層では、セルシャッターを開き、Nクラッド層1、Nクラッド層2、活性層、Pクラッド層1、Pクラッド層2では、セルシャッターを閉じる」ように設定される。なお、上記の記載は単なる例示であり、分子線セルの数や用途は、上記したものに限定されない。
【0077】
各分子線セル107の単位時間当たりの消費量は、分子線セル107の形状や成膜室101内での配置により異なるが、図6に示すように、分子線セルの制御温度(設定温度)Tと分子線材料の残量Rとの関数f(T,R)により表される。
【0078】
図3の例では説明を容易にするため、単位時間当たりの消費量をf(T,R)=「消費量係数」×Tとしている。従って、分子線材料の消費量は「消費量係数」×T(制御温度)×「エピ時間」で算出できる。エピ時間とは各層における成膜(成長)に要する時間である。ここで、セルシャッター108が開いている成長時とセルシャッター108が閉じている待機時とでは、分子線材料105の単位時間当たりの消費量が異なるため、消費量係数を別々に設定している。セルシャッター108が開いているとき(成長時)とセルシャッター108が閉じているとき(待機時)とのそれぞれで、制御温度とエピ時間とを乗算し、その乗算値の各成長層(バッファ層、Nクラッド1層等)の総和を求める。
【0079】
なお、制御温度に変更がある場合は設定した温度勾配にて昇温また降温させる。その場合は、単純な制御温度と成長時間の乗算でなく、制御温度を時間で積分した値を算出して各成長層の総和を求める。この総和に前記の消費量係数を乗算することで分子線材料の消費量が算出される。
【0080】
図3の分子線セルA1を例にとると、成長時の消費量の合計は、0.01×(1040×130+1050×(5+41+30))=2150.0(単位はcc)となる。さらに、待機時の消費量合計は0.001×800×(14+1+3)=14.4となる。よって、図3に示すレシピを用いてエピを実行した場合は、分子線セルA1の消費量は、上記計算した両方を合計して、2164.4ccとなる。全ての分子線セルにおける分子線材料の消費量は、上記と同様の計算により求まる。
【0081】
残量算出部405は、分子線セル107の坩堝106内の分子線材料105の残量(材料残量)を次のように求める。すなわち、それまでに実行されたレシピから算出した推定の消費量を、予め坩堝106に充填していた量より引くことにより求めることが可能である。または、特許文献3に記載された坩堝の熱質量を推定することにより、坩堝内の材料残量を推定することによっても可能である。また、レシピからの算出および熱質量の推定の両方にて残量を推定算出することで、より精度よく分子線材料の残量を推定することが可能である。
【0082】
次に、予測消費時間算出部406は、残量算出部405が求めた分子線セル107内の残量から、その残量の分子線材料105が無くなるまでの予測消費時間を次のように算出する。本実施形態では、予測消費時間算出部406は、簡易的に「残量」を、次回の成膜(レシピ1を実行した後であるなら、レシピ2での成膜)における結晶成長後の予測の残量および制御温度近辺の温度における「単位時間当たりの消費量」で割ることにより求める。ここで、上記制御温度近辺の温度とは、本実施形態では、分子線セルA1,A2については、980〜1140℃の温度域で結晶成長させているため、その中央温度1060℃の固定温度とする。また、分子線セルB1,B2,B3については、820〜1060℃の温度域で結晶成長させていため、その中央温度940℃の固定温度とする。なお、制御温度近辺の温度は、変動温度としてもよい。また、「単位時間当たりの消費量」は、成長時の消費量が多いので、成長時の係数を適用する。なお、成長時と待機時の係数を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0083】
次に、同一材料を有する各分子線セルの材料残量の予測消費時間の差が小さくなるように、各分子線セルの設定をどのようにするか、つまり、レシピ2をどのように作成するか、を図4および5を用いて説明する。図4はレシピ2のある用途(V,WまたはX,Y,Z)で組み合わせたパターン(パターン1)であり、図5はレシピ2の図4とは別の用途で組み合わせたパターン(パターン2)である。
【0084】
簡略化のため、図4、図5の分子線セルA1、A2、B1、B2、B3の分子線材料は初期同一充填量とする。ここでは、レシピ履歴データベース402に基づいて、図3に示したレシピ1実行後の各分子線セルの分子線材料の消費量(図3の消費量合計)が算出される。次に実行しようとするレシピ2(図4または5)について、同様に分子線材料の消費量を計算する(図4または図5の消費量合計)。このとき、同一材料を有する分子線セルの用途(V,WまたはX,Y,Z)の組み合わせパターンの消費量について全て計算する。この消費量の計算の際に、次回(レシピ2)の成膜における各層での同一の分子線材料の合計の消費量を等しくしたまま、上記各分子線セルにおける設定を変更する。本実施形態では、レシピ2のパターン1(図4)を基本とすると、各成長層における成長に使用される消費量が同じになるように、パターン2(図5)において制御温度を「温度選定用係数」を基に変更する。
【0085】
同一の分子線材料を有する分子線セルが2つある場合は2パターン、同一の分子線材料を有する分子線セルが3つある場合は6パターンとなる(本実施形態では、図4,5の2パターンのみを記載している)。各パターンとも各分子線セルについて、レシピ1、2での分子線材料の予測の合計消費量から分子線材料の予測の残量を算出し、その残量が消費されるまでの予測消費時間を求める。同一材料の分子線セルの予測消費時間の差分値を求め、この差分値が小さいパターンにてレシピ2を実行する。
【0086】
分子線セルA1、A2については、図5にしめされるパターンにてレシピ2を実行する。セルB1、B2、B3の用途決定については、6パターンの差分値を比較する必要がある。また、この場合の差分値の算出方法としては、各分子線セルの差分値の平均値(B1とB2、B2とB3、B3とB1の差分値の平均値)を算出すればよい。このように、予測消費時間の差が小さくなるように次回の成膜での上記各分子線セルにおける設定を決定する、とは、分子線セルが3つ以上あるときは、各分子線セルにおける設定を変えたものについて、各分子線セルの差分値の平均値を求め、その差分値の平均値を比較して小さいものを選ぶものとする。
【0087】
なお、レシピは、レシピ制御用のパソコン(図示せず)で作成され、制御装置118へ送られるようになっていてもよい。この場合、結晶膜の成膜を実行する際に、レシピ制御パソコンは、制御装置118から送られてくる成膜中の状態情報を受信し、その情報をディスプレイ(図示せず)上に表示するとともに、ロギングデータとして保存してもよい。
【0088】
次に、制御装置118の成膜における処理の流れについて図7のフローチャートを用いて説明する。
【0089】
はじめに、残量算出部405は、各分子線セル107の分子線材料105の残量(材料残量)を算出する(S1)。残量を算出する際には、消費量推定部404が、各々の分子線セルについての単位時間当たりの消費量データベース401および、各々の分子線セルについてのレシピ履歴データベース402の2つのデータベースを基に、各分子線セル107の分子線材料の消費量を推定する。そして、初期充填量との関係から、分子線材料の残量を算出する。このとき、熱容量推定部403が、坩堝の熱容量を推定することで分子線材料の消費量を推定し、分子線材料の残量を算出してもよい。なお、材料残量を、データベースを基に算出するか、あるいは、熱容量を基に算出するか、については、予め決めておいて、レシピ毎、セル毎で変えることはない。例えば、経験的に算出精度の良い方に固定することになる。
【0090】
次に、予測消費時間算出部406は、各分子線セル107の予測消費時間を算出する(S2)。予測消費時間は、S1で算出された材料残量と単位時間当たりの消費量データベース401を基に行う。予測消費時間算出部406は、成膜における各層での同一の分子線材料の合計の消費量を等しくしたまま、各分子線セル107における設定を変更して、次回の成膜後の当該各分子線セル107に残存する分子線材料の予測消費時間を算出する。ここでは、予測消費時間算出部406は、予測消費時間を算出するとき、各分子線セル107における設定を変更したものが、複数のレシピパターンとして作成される。
【0091】
次に、セル設定決定部407は、同一の分子線材料を有する複数の分子線セル107における予測消費時間の差が小さくなるように、各分子線セル107における設定を決定する(S3)。ここで、セル設定決定部407は、予測消費時間の差が小さくなるレシピパターンを選ぶことで、セルの設定を決定する。また、レシピ決定部408は、選択されたレシピパターンを、実行レシピとしてレシピ履歴データベース402に記憶する。
【0092】
そして、選択されたレシピパターンにより、予測消費時間の差が小さくなるように設定された分子線セル107にて、成膜を行う(エピを実行する)(S4)。
【0093】
以上のように、制御装置118がMBE装置100の各構成を制御して、分子線エピタキシャル成長による成膜が行われる。
【0094】
以上のように、本実施形態のMBE装置100の制御装置118では、同一分子線を有する複数の分子線セルにおける分子線材料の残量を算出し、次回の成膜における各分子線セルの設定を、次回の成膜における各層での同一の分子線材料の合計の消費量を等しくしたまま、各分子線セルにおける分子線材料の予測消費時間の差が小さくなるように決定する。
【0095】
このように本実施形態のMBE装置100の制御装置118では、次回の成膜における各層での同一の分子線材料の合計の消費量を等しくしたまま行うことができるので、ドーピングの濃度が均一とすることができる。そして、予測消費時間の差を小さくすることができるので、分子線材料の枯渇までの時間を、どの分子線セルにおいても、常に略一定にすることができる。つまり、ある分子線セルの分子線材料だけが他の分子線セルより早く枯渇するというような、各分子線セルにおける分子線材料の不均一な消費を抑えることが可能である。
【0096】
このように、ドーピングの濃度を均一とすることができ、同一の分子線材料の不均一な消費の解消を行うことができるので、常に高い再現性にて成膜をすることができる。
【0097】
また、同一の分子線材料の不均一な消費の解消により、分子線材料の枯渇にともなって真空状態を破り分子線セルに分子線材料を再充填するという、大幅に時間を消費する工程の頻度を低下させることができる。よって、分子線エピタキシャル装置の稼働率を向上させることができる。
【0098】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0099】
なお、上記分子線エピタキシャル装置の制御装置118の各ブロックは、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0100】
すなわち、分子線エピタキシャル装置の制御装置118は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェア分子線エピタキシャル装置の制御装置118の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記分子線エピタキシャル装置の制御装置に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0101】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0102】
また、分子線エピタキシャル装置の制御装置118を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エクストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0103】
また、本発明は、次のような成膜方法として表現してもよい。すなわち、同一材料を有する分子線セルを複数備えた分子線エピタキシャル装置を用いた成膜方法において、前記同一材料を有する分子線セルの使用履歴を用いて、同一材料を有する各分子線セルの材料の消費量を推定する工程、または/および、前記同一材料を有する分子線セルを測定することにより、前記同一材料を有する各分子線セルの材料残量を推測する工程を含み、前記同一材料を有する各分子線セルの材料残量の消費時間が略同等になるように、エピ毎の前記同一材料を有する各分子線セルの使用を制御する成膜方法である、と表現してもよい。
【0104】
また、前記成膜方法において、前記の分子線セルの材料の消費量を推定する工程は、分子線セルの材料残量とエピ実行時の成膜時間、制御温度、昇温・降温時の温度勾配及びセルシャッターON/OFFのレシピ情報と分子線セル固有の単位時間当たりの分子線照射量により分子線材料の消費量を算出してもよい。
【0105】
また、前記成膜方法では、前記の同一材料を有する各分子線セルの材料残量の消費時間が略同等になるように、エピ毎に各分子線セルの使用を制御する方法は、分子線セルの使用履歴から分子線材料の残量を推定する工程と、複数ある同一材料を有する分子線セルの使用用途による組み合わせにおける次エピ実行後の推定残量をそれぞれの組み合わせで算出する工程とその推定残量より複数ある同一材料を有する分子線セルの次エピの使用用途を決定する工程からなっていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明によると、同一の分子線材料を有する分子線セルを複数有する分子線エピタキシャル装置の稼動率を向上させ、かつ、成膜において高い再現性を実現することができる。本発明は、半導体の分野に、特に半導体結晶膜の分野において有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本実施形態に係る分子線エピタキシャル装置の構成を示す図である。
【図2】上記分子線エピタキシャル装置における分子線セルの拡大図である。
【図3】本実施形態おける分子線材料の消費量算出を説明するための図である。
【図4】次回の成膜におけるレシピを示す図である。
【図5】図4とは別の次回の成膜におけるレシピを示す図である。
【図6】各温度について、単位時間当たりの分子線材料の消費量と分子線材料残量の関係を示す図である。
【図7】本実施形態の分子線エピタキシャル装置の制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】従来の分子線エピタキシャル装置の構成を示す概略図である。
【図9】従来の分子線エピタキシャル装置の分子線セルの構成を示す概略図である。
【図10】(a)は、従来の分子線エピタキシャル装置を用いて成長させた、結晶膜の成長方向における断面図であり、(b)は、(a)の特定の成長層における各分子線セルの分子線量と成長時間との関係を示す図である。
【図11】(a)は、図10とは別の従来の分子線エピタキシャル装置を用いて成長させた結晶膜の成長方向における断面図であり、(b)は、(a)の特定の成長層における各分子線セルの分子線量と成長時間との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0108】
40 記憶部
100 分子線エピタキシャル装置
101 成膜室
102 基板
103 マニピュレータ
104 基板加熱ヒータ
105,105a,105b 分子線材料
106,106a,106b 坩堝
107,107a,107b 分子線セル
108,108a,108b セルシャッター
109 セルヒータ
110 熱電対
111 輻射シールド
112 フランジ
113 電力導入端子
114 熱電対導入端子
115a シャッター制御装置
116a 電源装置
117a 温度調節装置
118 制御装置(分子線エピタキシャル装置の制御装置)
401 単位時間当たりの消費量データベース
402 レシピ履歴データベース
403 熱容量推定部
404 消費量推定部
405 残量算出処理部
406 予測消費時間算出部
407 セル設定決定部
408 レシピ決定部
600 n−GaAs基板
601 n−GaAsバッファ層
602 n−GaInP層
603 n−AlInPクラッド層
604 GaInP活性層
605 p−AlInPクラッド層
606 p−GaInP層
607 p−GaAsキャップ層
608 p+−GaAsコンタクト層
700 n−GaAs基板
701 n−GaAsバッファ層
702 n−AlGaInPクラッド層
703 GaInP活性層
704 p−AlGaInPクラッド層
705 p−GaInP層
706 p−GaAsキャップ層
707 p+−GaAsコンタクト層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の分子線材料を有する複数の分子線セルを備え、複数の層からなる結晶膜を成膜する分子線エピタキシャル装置の制御装置において、
同一の分子線材料を有する複数の分子線セルについて、各分子線セル内の分子線材料の残量を求める残量算出手段と、
次回の成膜における各層での同一の分子線材料の合計の消費量を等しくしたまま、上記各分子線セルにおける設定を変更して、次回の成膜後の当該各分子線セルに残存する分子線材料の予測消費時間を算出する予測消費時間算出手段と、
上記予測消費時間の差が小さくなるように、次回の成膜での上記各分子線セルにおける設定を決定するセル設定決定手段と、
を備えたことを特徴とする分子線エピタキシャル装置の制御装置。
【請求項2】
上記分子線セルの設定には、成膜時間、制御温度、昇温・降温時の温度勾配、及び分子線の照射と待機との切り替え、の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の分子線エピタキシャル装置。
【請求項3】
上記予測消費時間算出手段は、上記同一の分子線材料を有する複数の分子線セルの成膜における用途を変更した組み合わせ毎に次回の成膜後の当該各分子線セルに残存する分子線材料の予測消費時間を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の分子線エピタキシャル装置の制御装置。
【請求項4】
上記残量算出手段は、上記各分子線セルの使用履歴を用いて当該各分子線セルの材料の消費量の推定、及び前記各分子線セルの測定、の少なくともどちらか一方を行い上記各分子線セル内の分子線材料の残量を算出することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の分子線エピタキシャル装置の制御装置。
【請求項5】
上記残量算出手段は、上記各分子線セルの、分子線材料の初期充填量、成膜時間、制御温度、昇温・降温時の温度勾配、分子線の照射と待機との切り替え、および分子線セル固有の単位時間当たりの分子線照射量、を基に上記分子線材料の残量を算出することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の分子線エピタキシャル装置の制御装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の分子線エピタキシャル装置の制御装置を備えることを特徴とする分子線エピタキシャル装置。
【請求項7】
同一の分子線材料を有する複数の分子線セルを備え、複数の層からなる結晶膜を成膜する分子線エピタキシャル装置の制御方法において、
同一の分子線材料を有する複数の分子線セルについて、各分子線セル内の分子線材料の残量を求める残量算出ステップと、
次回の成膜における各層での同一の分子線材料の合計の消費量を等しくしたまま、上記各分子線セルにおける設定を変更したものについて、次回の成膜後の当該各分子線セルに残存する分子線材料の予測消費時間を算出する予測消費時間算出ステップと、
上記予測消費時間の差が小さくなるように、次回の成膜での上記各分子線セルにおける設定を決定するセル設定決定ステップと、
を含むことを特徴とする分子線エピタキシャル装置の制御方法。
【請求項8】
請求項1〜5の何れか1項に記載の分子線エピタキシャル装置の制御装置を動作させるための制御プログラムであって、コンピュータを上記分子線エピタキシャル装置の制御装置における上記各手段として機能させるための分子線エピタキシャル装置制御プログラム。
【請求項9】
請求項8に記載の分子線エピタキシャル装置制御プログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−123639(P2007−123639A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−315481(P2005−315481)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】