説明

切断されたウェハをゾーン毎にクリーニングするための保持及びクリーニング装置及び方法

【課題】支持体の長手方向範囲全体に亘ってクリーニング液の均一な分配及び有効な利用を保証する。
【解決手段】装置長手方向軸線(L)に対して平行に配置された2つの区域を有しており、上側の区域はアダプタ区域1として構成されており、アダプタ区域1によって装置を機械機器に結合することができ、下側の区域は保持区域2として構成されており、保持区域2は、周囲で閉鎖された又は閉鎖可能なチャネルシステムの、チャネル11として提供された部分を有しており、チャネルシステムに、閉鎖可能な供給開口5によってフラッシング液を供給することができ、チャネル11の底部は、フラッシング液のための通過開口15を提供するために基板ブロック13A,13Bの切断中にスロット状の形式で開放させられ、チャネル11は、装置長手方向軸線(L)に沿って複数の区域11A,11Bに細分されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソーイング(切断)によってブロックから製造された平坦な基板の保持及びクリーニングを組み合わせて行うための装置、及びそのための方法に関する。特に、本発明は、単結晶シリコン又は多結晶シリコンから成るインゴットとも称呼されるブロックから切断された、省略して以下ではウェハとも呼ばれる平坦なシリコン基板の保持及びクリーニングに関する。
【背景技術】
【0002】
「ウェハ」とは、本発明によれば、他の寸法と比較して、一般的に80〜300μm、特に150〜170μmの極めて小さな厚さを有するスライス状の物体を意味する。これに対して、横方向寸法は、例えば125mm×125mm(5インチウェハ)である。スライスの形状は任意であるが、例えば、実質的に円形(半導体ウェハ)であり、結晶配向を示す選択的なエッジ(ウェハフラット)を有するか、又は矩形又は正方形(ソーラウェハ)であり、この場合、角は選択的に傾斜、丸み付け、又は面取りされている。前記物体は、小さな厚さ及び低い弾性の組合せにより、極めて脆性である。
【0003】
従来技術及び欠点
ウェハを製造するために、まず、ブロックは支持板に固定される。支持板は、通常、ガラスから成り、ブロックの形状に応じて、平坦であるか又は湾曲している。固定のためには、一般的に接着剤が使用される。支持板は、一部のために、通常金属から成るアダプタプレートに固定される。アダプタプレートは、切断装置(ウェハソー)の一部である裏当て面と協働するように構成されている。アダプタプレートが裏当て面に固定された後、通常は1つ又は2つ以上の平行に延びた切断ワイヤを有する切断装置、例えばワイヤ層と共に、ブロックを加工することができる。これによって、ブロックから薄いスライスが形成され、これらのスライスは、接着剤により、支持体に面したエッジ(接着剤エッジ)によって支持体から懸吊されている。従って、並んで配置されたスライスは依然として支持板によって互いに結合されている。ブロックからウェハを完全に分離するために、切断装置がある程度支持板に切り込まなければならず、支持板はこれにより切り込まれ、これにより再利用には不適切となる。
【0004】
ブロックの縦方向区域が完全に個々のウェハに分割され、これにより個々のウェハの間に層状の中間スペースが形成された後、この縦方向区域は、「ウェハコーム(櫛状部)」とも呼ばれるファンの形状の櫛状構造の形態となる。ウェハコームは好適には、支持板から懸吊された向きで取り扱われ、これは、特にその後のクリーニング工程にも当てはまる。
【0005】
経済性の理由から、複数の短いブロックを支持プレートに並べて接着剤により接合し、その後に切断することが一般的に行われる。これにより、加工物を繰り返し締め付けたり解放したりする必要がない。
【0006】
粒子状廃棄物を除去するために、ソーイングプロセスは、一般的にキャリヤ液体と、選択的に炭化ケイ素及び別の添加剤とから成るスラリと呼ばれる懸濁液を利用する。この懸濁液は、望ましくないことにウェハ表面に付着し、中間スペースに固定されてしまう。これは、切断媒体として炭化ケイ素が使用される場合、及びダイヤモンドコーティングされたソーイングワイヤが用いられる場合に当てはまる。その後の処理のために、切断されたウェハは、接着剤層から取り外され、分離され、クリーニングされなければならない。クリーニング、又は少なくとも予備クリーニングは、この場合、できるだけ早期に、特に接着剤が除去される前に行われるべきである。これは、乾燥した状態で極めて固形となるスラリの付着が高められることを回避する。スラリが乾燥するとエッジにおいてスラリが形成する縞模様も、除去することはほとんど不可能であり、極端な場合、ウェハの使用不能につながる恐れがある。さらに、スラリは、移送されることによって後続のプロセス浴を汚染し、これも同様に望ましくない。
【0007】
保持プレートに依然として固定されたこのようなウェハのためのクリーニング装置は、例えば国際公開第2009/074297号に示されている。この文献では、完全に切断されたブロックは、切断されたブロックに対して横方向に配置された噴霧機器によってフラッシングされる。この場合、クリーニング液のジェットが横方向に層状の中間スペース内へ送り込まれる。これについての問題は、接着剤エッジの中央領域に不十分にしか到達できないとうことである。これは、対応して長いクリーニング時間又は不完全な予備クリーニングにつながる。クリーニング結果を改善するために、両側からの交互の噴霧、支持体及び噴霧機器の相対移動、気泡及び/又は超音波による補助が提案されている。前記文献に基づく欧州特許第1935514号明細書は、さらに、噴霧機器の傾斜可動性を提案している。しかしながら、それでも、前記問題は十分に解決されていない。
【0008】
フラッシングが不十分であるという問題を克服するために、欧州特許出願公開第2153960号明細書は、支持体から懸吊されたウェハの間にフラッシング流体を供給するための少なくとも1つの通路を提供することを提案している。ソーイング後に通路に提供するので、フラッシング流体は、1つの長手方向ギャップ、複数の横方向ギャップ、又は通路のボアを通って、ウェハコームの中間スペースの方向に流出する。従って、前記残留物はウェハコームから全体的にクリーニングされる。長手方向ギャップ、横方向ギャップ、又は通路におけるボアは、この場合、通常、常に、つまりブロックの部分的なソーイングの前及び後にも支持体に存在している。択一例として、横方向ギャップは、ソーイングプロセス自体の結果としてのみ形成されてもよい。この場合、通路を形成する材料は、通常、切断中にソーイングワイヤにできるだけ応力を加えないために、装置の他の部分より柔軟な材料から成っている。
【0009】
クリーニング流体が通路に一括でしか提供することができないため、クリーニング流体は、長手方向ギャップ又はボア全体を通じて、又はソーイングによって形成された横方向ギャップを通じてウェハ中間スペースの方向に同時に流出する。これは、時には、不均一なクリーニング効果を生ずる。なぜならば、圧力、ひいては流出する流体の体積が、通路の長さが長くなるにつれて低下するからである。これにより生じる不均一なクリーニング効果、及び使用されるクリーニング流体の損失は、満足できるものではない。クリーニング流体の有効な利用を保証することができるために、クリーニングはランス等を用いて行われなければならない。ランス先端部の領域において局所的にのみ、圧力降下が最小でかつ体積流量は最大であり、従って、所望のクリーニング効果を達成可能である。ランス先端を通路の長手方向範囲に亘って移動させることにより、個々のウェハ中間スペースのクリーニングは、実質的に順次に行われ、ひいては時間集中的に行われる。さらに、このために必要な装置には、複雑な技術が要求される。技術的により単純な解決手段は、通路のための十分な封止効果を達成するために、通路の対応する接続開口への外部供給ノズルの押し込みを伴う。しかしながら、そこで使用された柔軟な材料(上記参照)により、接続開口に対する損傷が頻繁に生じる。なぜならば、連続した通路により、圧力及び体積流量が大きくなければならないからである。別の欠点は、単に支持体の一部分のみがブロックに結合される場合にも、クリーニング流体がそれにもかかわらず供給部の全長に亘って流出するということである。これは、クリーニング流体の非効率的な使用にもつながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2009/074297号
【特許文献2】欧州特許第1935514号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第2153960号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の課題は、支持体の長手方向範囲全体に亘ってクリーニング液の均一な分配及び有効な利用を保証することである。クリーニング液の提供は、選択的に、ブロックがソーに存在する間でさえも、ソーイングプロセスを妨害するリスクなしに可能であるべきである。これらの課題を達成するために要求される装置は、できるだけ単純であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題は、請求項1記載の装置、及び請求項9記載のクリーニング方法によって達成される。好適な実施の形態が、従属請求項、以下の説明、及び図面に示されている。
【0013】
本発明による装置を以下により詳細に説明する。本発明による方法の説明がこれに続く。
【0014】
本発明による装置は、切断される基板ブロックを保持し、基板ブロックを切断することによって形成された中間スペースをフラッシングするために使用され、装置長手方向軸線(L)に対して平行にかつ互いに上下に配置された2つの領域を有しており、上側の領域はアダプタ領域として構成されており、アダプタ領域によって装置を機械機器に結合することができ、下側の領域は保持領域として形成されており、保持領域は、周囲で閉鎖された又は閉鎖可能なチャネルシステムを有しており、このチャネルシステムに、閉鎖可能な供給開口によってフラッシング液を供給することができ、チャネルシステムの底部は、フラッシング液のための通過開口を提供するために基板ブロックの切断中にスロット状の形式で開放させられる。
【0015】
本発明による保持は、好適には、基板ブロック、又は基板ブロックから製造された基板が懸吊されながら配置されている位置において行われる。これらの物体は、特に好適には、本発明による装置に接着剤層によって取り付けられる。択一的に又は付加的に、物体の締付けも可能である。
【0016】
装置が主に前記中間スペースをフラッシングするために使用されるが、装置は、切断された基板の表面をクリーニング、又は少なくとも予備クリーニングするために使用することもできる。しかしながら、一般的に、このようなクリーニングは、他の装置(従来技術に関する上記記述を参照)によって行われる。
【0017】
切断された基板は、ソーイング(切断)の後、装置長手方向軸線に沿って並列に配置されている。つまり、装置長手方向軸線は、基板の表面垂線の方向に延びている。一般的に、装置は、装置の幅よりも大きな長さを有する。従って、装置は、平坦な上側及び下側、前端側及び後端側、左側及び右側を有している。
【0018】
「上側」及び「下側」の領域という位置表示は、この場合、単に説明による向きのために働く。装置は、発明の概念から逸脱することなく、他の解釈がなされてもよい。「互いに上下に」とは、2つの領域がそれぞれ、他の外面(側面)に対してより大きな少なくとも1つの面を有することを意味する。つまり、2つの領域は、この面において隣接している。
【0019】
「アダプタ領域」は、機械機器、特にウェハソーの前進移動機器に取り付けることができるように構成されている。この領域が、所定の方向で位置決めされた孔又はボア、ストッパ、レール案内機構のための凹所等の、特に好適にそれに対応する幾何学的特徴を有することが明らかである。この領域が、硬い、中実な、機械的及び化学的に安定した材料、例えばステンレス鋼又はセラミックから形成されていることは、同様に好ましい。
【0020】
「保持領域」は、装置を基板ブロック(上記参照)に取り付けるために使用される。最初は2つの機能的に異なる領域のみが含まれ、これにより、装置自体は単一の部品として容易に製造することができると言及すべきである。
【0021】
本発明によれば、保持領域はチャネルシステムを有しており、このチャネルシステムを通じて、前記中間スペースの方向にフラッシング液を供給することができる。「チャネルシステム」は、一つの連続的なチャネル又は複数の互いに独立した個々のチャネルが設けられていてよいことを意味する。チャネルシステムが供給開口を有さねばならず、この供給開口を通じてフラッシング液がチャネルシステムへ流入することができることは明らかである。本発明によれば、複数のこれらの供給開口が設けられているが、これらの開口は閉鎖可能である。これにより、クリーニング液がチャネルシステム内へ供給される位置は、柔軟に選択可能である。前記閉鎖可能性は、クリーニング液が望ましくない位置においてチャネルシステムから流出しないように提供される。原理的に、周囲で閉鎖されたチャネルシステムがこれにより製造され、「周囲」とは、本発明による実質的に平坦に形成された装置の2つの側及び前端側及び後端側を意味する。しかしながら、装置の上側及び下側は意味しない。供給ボアが、基板ブロックに面した側(装置の下側に)配置されるべきでないことも明らかである。さらに、チャネルシステムが保持領域にのみ配置される必要はないことに言及すべきである。チャネルシステムは、上側領域において延びた複数の区域をも容易に有していてよい。チャネルシステムはアダプタ領域に向かって開放していることもでき、従って機械機器に取り付けられたときにだけ対応して封止され、「チャネルシステム」となることもできる。必須のことは、単に、チャネルシステムが、保持領域に突入しておりかつクリーニング液を保持領域の外側における所望の位置へ搬送するのに適した区域を有することである。これらの位置は、チャネルシステムの底部、すなわち保持領域の外側に面した領域に位置している。これらの位置は、フラッシング液のための通過開口を提供するために、基板ブロックを切断するときに本発明により開放させられる。
【0022】
周囲で閉鎖可能な又は閉鎖されたチャネルシステムの本発明による前記使用は、中間スペースをフラッシングする、より均一な効果を生じる。なぜならば、クリーニング液は、もはや望ましくない位置においてチャネルシステムから流出しないからである。圧力はチャネルシステムの内部において実質的に一定であり、従って流出体積流量はもはや、供給開口からの距離が長くなっても低下しない。これは、より均一なフラッシング効果を生じ、使用されないフラッシング液の損失が著しく少なくなる。提供される圧力は、(両側において)開放した通路と比べ、低くなることができる。従来技術から知られるような、供給チャネルの長手方向範囲に亘るランス先端の移動は、その可動性により必要な移動ギャップによる液体損失のように、回避される。
【0023】
本発明によれば、チャネルシステムは、互いに別々にフラッシング液を供給することができる、装置長手方向軸線に沿った複数の区域を有することが特に好ましい。言い換えれば、フラッシング液は、1つの又は複数の他の区域から独立して、好適には縦方向区域である装置の特定の区域に個々に提供することができる。これは、特に、装置の全長に亘って延びていない基板ブロックがフラッシングされる場合に、フラッシング液の損失をさらに減じることができるという利点を提供する。
【0024】
1つの実施の形態によれば、区域は、互いに別々に供給することができる複数の構造的に別個のチャネルによって形成されている。これらのチャネルは、互いに隣接して、ただし好適には装置長手方向軸線の方向で見て相前後して配置されていてよい。この場合の供給は、別個の供給開口につながる。これらの供給開口自体は、好適には装置の同じ側、例えば後端面に配置されている。
【0025】
1つの実施の形態によれば、区域は、チャネルシステムに取外し可能に取り付けられた液体阻止バリヤによって形成される。これは、好適には装置長手方向軸線に沿って延びたもともと連続したチャネルを、様々な位置、好適には長手方向範囲の任意の位置においてチャネルに取り付けることができる物体によって遮断することができることを意味する。チャネルは、特に好適には、突起又は機械加工されたインセット等の、内壁に設けられた正又は負の幾何学的特徴を有しており、この幾何学的特徴を利用して物体は嵌め合いによって相互作用する。例えば滑らかなチャネル内壁における圧力ばめによる相互作用が考えられてもよい。このために、物体は、特に好適には、柔軟に形成されてよい。例えば、物体は、弾性材料から成るか又は弾性材料を含んでよいか、又は締付け機構又はばね機構によって圧力ばめを可能にしてよい。もちろん、2つの形式(圧力ばめ及び嵌め合い)の組合せも可能である。
【0026】
特定の単純な実施の形態によれば、当該チャネルは、内壁のチャネル内部に面した、平面図でほぼ三角形の突起を有しており、これら突起は、物体の対応する凹所に係合し、物体はそれ以外は平坦な小板の形態を有している。別の同様の実施の形態によれば、物体自体は対応する突起を有している。
【0027】
好適な実施の形態によれば、閉鎖可能な供給開口はアダプタ領域の平坦な上側に配置されている。本発明によれば、その側は機械機器の方向に面している。従って、機械機器自体は、対応して配置された開口を有しており、この開口からフラッシング液を供給することができる。これにより、外部供給ラインへの本発明による装置の特に単純な流体接続が可能である。機械機器の開口の位置は、少なくとも部分的に、本発明による装置の供給開口と一致していなければならないことが明らかである。改良された漏れ防止性のために、供給開口及び/又は機械機器における開口にシールが取り付けられてよいことも明らかである。
【0028】
別の実施の形態によれば、閉鎖可能な供給開口の外側接続部は、アダプタ領域の周囲側に配置されている。これは、装置の前端側、後端側、右側及び左側を含む。ここでもやはり、供給開口は特に好適には、保持領域ではなくアダプタ領域に配置されている。この配列の利点は、保持領域を構成する材料が時にはアダプタ領域の材料よりも弱い場合があるということにある。アダプタ領域に供給開口を配置することは、供給開口が、機械的な加工及び応力に適した材料に配置されることを保証する。装置の内部に適切に延びたチャネル区域が設けられており、これらのチャネル区域は、アダプタ領域に配置された供給開口から好適には保持領域において延びたチャネルシステムまで延びていることが明らかである。チャネルのゾーン毎に供給可能であるために、又は個々のチャネルに別々に供給可能であるために、対応して別々の供給開口が設けられていなければならない。
【0029】
しかしながら、ゾーン毎に供給可能な上記実施の形態に代えて又は加えて、供給は、所望のチャネル又はチャネル区域へフラッシング液流を方向付けることを可能にする、本発明による装置の内部に配置されておりかつ外部から作動させる又は制御することができる弁、ゲート等を備えた一つの供給開口によって行われてもよい。
【0030】
1つの実施の形態によれば、保持領域は保持プレートに配置されており、アダプタ領域はアダプタプレートに配置されており、2つのプレートは互いに解放可能に結合されている。言い換えれば、この実施の形態によれば、アダプタ領域及び保持領域のこれまでの純水に機能的な分離は、2つの別個の構成部材を提供することによっても反映される。これらの構成部材は、これらの構成部材の機能を満たすために互いにしっかりと接続されなければならないことが明らかである。基板ブロックを切断するときに「消費」される装置の部分、すなわち保持領域を容易に交換することができるように、解放可能性が提供されていることが同様に明らかである。さらに、この場合、チャネルシステムの単純なアクセス性が可能である。従って、要求に従って、それぞれ異なる長さの個々の基板ブロックを取り付けるように製作されたチャネル区域の個々の構成が可能である。
【0031】
別の実施の形態によれば、保持領域の材料、及び設けられているならば保持プレートの材料は、ガラス、プラスチック、エポキシド、セラミック、金属、及びこれらの混合物から成るグループから選択されている。ガラス、プラスチック、又はエポキシドを使用することが特に好ましい。金属の使用はあまり好ましくない。なぜならば、この材料は、通常、前記の他の材料よりも切断しにくいからである。必須のことは、材料が切断しやすく、切断が、加工作業を妨害するか又は結果を妥協するあらゆる粒子を形成せず、基板ブロックを接着及び切断するときの機械的応力に耐えるように材料が十分に強く、製造コストができるだけ低いことである。
【0032】
装置の他に、本発明は、上記記載の範囲に開示された装置を使用することによって基板ブロックを切断することによって形成された中間スペースをフラッシングする方法であって、フラッシング液がチャネルシステムに供給され、チャネルシステムから通過開口を介して流出する方法に関する。
【0033】
本発明による方法を行うために特に適した装置は、従って、装置長手方向軸線に沿って、互いに上下に配置された2つの領域を有しており、上側の領域はアダプタ領域として構成されており、このアダプタ領域によって装置を機械機器に結合することができる。
【0034】
保持領域として使用される下側の領域には、周囲で閉鎖されたチャネルシステムが配置されており、第1のステップにおいて、閉鎖可能な供給開口によってフラッシング液が供給される。
【0035】
第2のステップにおいて、基板ブロックを切断するときにチャネルシステムの底部に形成された、フラッシング液のためのスロット状の通過開口によって、中間スペースがフラッシングされる。
【0036】
装置構成部材に関する反復を回避するために、本発明による装置の上記説明がさらに参照される。
【0037】
本発明によれば、フラッシングは、フラッシング液が供給される通過開口を介して装置長手方向軸線に沿って均一に行われる。これは、周囲で閉鎖されたチャネルシステムに均一な圧力が生ぜしめられることの結果であり、このことは、そのことが意図されたスロット状の開口からのフラッシング液の均一な排出につながる。
【0038】
特に好適な実施の形態によれば、チャネルシステムの供給、及び通過開口によるフラッシングは、装置長手方向軸線で見てゾーン毎に行われる。これは、チャネルシステムの全て、つまりチャネルシステムに接続された全ての通過開口が、フラッシングのために同時に使用されるのではなく、要求に応じてチャネルシステムの各部分に液体が流し込まれることを意味し、これにより、装置自体よりも短い長さを有する、基板ブロック又は基板ブロックから製造された基板グループの、制御されたフラッシングを可能にする。
【0039】
ゾーン毎のフラッシングは、選択的に、クリーニング液を別々に提供することができる複数のこのような開口を提供することによって、及び/又は個々に所望のチャネル又はチャネル区域を選択することを可能にする、装置の内部の機器を提供することによって、達成されてよい。
【0040】
別の実施の形態によれば、フラッシングは、ウェハソーの加工領域において行われる。これは、クリーニング(予備クリーニング)のための付加的な装置が不要であることを意味し、これはコストを節約する。対応するクリーニング(予備クリーニング)装置への、切断された基板のその他の所要の搬送はさらに回避され、これは時間を節約する。しかしながら、択一的な実施の形態によれば、フラッシングは、フラッシング装置の、後に配置された別個のフラッシングタンクにおいて行われる。
【0041】
特に好適な実施の形態によれば、フラッシングは、中間スペースからワイヤソーのソーイングワイヤを抜き取る間に行われる。提供された1つ又は2つ以上のソーイングワイヤは、従って、切断の後に基板が互いに付着しないようにするスペーサとして作用する。これは、切断ギャップが開放したままであることも保証し、これは、有効なフラッシングを可能にする。フラッシングは、この場合、ソーイングワイヤの抜取りの間、又は抜取りにおける一時的な休止の間に行われてよい。
【0042】
別の実施の形態によれば、フラッシングは、液体において及び/又は超音波補助を利用して行われる。低温又は高温の水、又はスラリを溶解又は希釈する水性溶剤が、特に液体として考えられてよい。提供されるならば、超音波源は特に好適には、超音波源が基板の中間スペースに向けられるように適応される。
【0043】
上述の装置及び上述の方法は、依然としてソーイング装置にあるウェハコームをクリーニングする均一な効果を提供する。これは、時間及びクリーニング液を節約する。フラッシングは、従来技術よりも有効にかつ経済的に行われる。本発明による装置は、単純に構成されており、これにより、経済的に製造して作動させることができる。柔軟な支持領域に供給ボアが形成される必要がないので、柔軟な支持領域への損傷が回避される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明による装置の好適な実施の形態を示す外観図である。
【図2】図1に示した装置の断面図である。
【図3】基板ブロックを備えた、図1及び図2に示した装置の別の断面図である。
【図4】異なる構成のアダプタプレートを備えた、本発明による装置の実施の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、好適な実施の形態による装置を斜視図で示している。装置は、アダプタ領域1として使用される上側領域と、1つ又は2つ以上の基板ブロック(図示せず)のための保持領域2として使用される下側領域とを有している。この場合、アダプタ領域1が、別個の構成部材として提供されたアダプタプレート3の、図面の上方を向いた側に配置されており、保持領域2が、同様に別個の構成部材として提供された保持プレート4に配置されている。図面はさらに、複数の供給開口5(そのうちの幾つかのみに符号を付してある)を示している。この場合の供給開口5は、装置の平坦な上側6と、前端側及び後端側7A,7Bと、右側及び左側8A,8Bとに配置されている。全ての供給開口5はアダプタ領域1、又はアダプタプレート3に配置されている。供給開口5の幾つかは閉鎖ねじ9によって閉鎖されている。
【0046】
図2は、ここで説明される装置の、装置長手方向軸線L(一点鎖線)に沿って延びた断面図を示している。前端側及び後端側7A,7Bに配置された閉鎖ねじ9の機能を明瞭に見ることができる。閉鎖ねじは、分岐したチャネルシステムの一部である、ここでは装置全体を貫通して延びたチャネル10を閉鎖している。チャネルシステムには、供給開口5(そのうちの幾つかは図2において符号を付されていない)を通じてフラッシング液(図示せず)を供給することができる。図示された実施の形態は、単に幾つかの閉鎖ねじ9を例示するためにのみ提供されている。通常の場合、閉鎖可能な供給開口5のほとんどは実際に閉鎖されており、フラッシング液が望ましくない位置において流出できないようになっている。
【0047】
図面に見られるように、保持領域2、又は保持プレート4におけるチャネル11の形態でチャネルシステムも設けられている。この場合、チャネルシステムには、チャネル10、及びアダプタプレート3の平坦な上側6に配置された供給開口5によって、供給することができる。チャネルシステムのこの部分は、2つの区域11A,11Bを含んでいる。閉鎖ねじ9の位置に応じて、前記区域に互いに個別に供給することができる。これらの2つの区域11A,11Bを形成するために、チャネルシステムに取外し可能に取り付けられた液体阻止バリヤ12が、チャネルシステムの対応する部分(チャネル11)に設けられている。これにより、もともと装置のほとんど全体を貫通して延びているチャネル11を細分することが対応して可能である。バリヤ11の位置は、装置を組み立てる際の要求に応じて柔軟に決定することができる。
【0048】
図3は、図1及び図2による装置の前方から見た断面図を示している。2つの基板ブロック13A,13Bがさらに示されており、これらの基板ブロックは、本発明による装置から懸吊されて配置されている。後側の基板ブロック13Bはまだ切断されていないのに対し、前側の基板ブロック13Aは既に部分的に個々の基板13(塗り潰された領域)に切断されている。図3に見られるように、この時点でチャネル11に通過開口15が設けられている。通過開口15は、基板ブロック13Aをソーイングワイヤ(図示せず)によって基板14に切断するときに形成されたものである。供給開口(符号は付されていない)によってフラッシング液を供給することによって、フラッシング液(図示せず)がチャネルシステムに提供されると、フラッシング液は通過開口15から流出する。そこから、フラッシング液は基板14の中間スペースの領域に流入し、存在する場合があるあらゆるスラリを押し流す。中間スペースは側方及び下方へ開放しているので、スラリを含んだフラッシング液は、妨げられずに流れ去ることができる。
【0049】
図4によれば、アダプタプレート3は、ここに示されたものと異なる形式で構成されてもよい。アダプタプレート3は、図示のように、収容レール16を有してよく、この収容レール16により装置を機械機器に結合することができる(図示せず)。アダプタプレート3の平坦な上側6に関しては図示されたもの以外の形状が、機械機器の特定の構成に応じて提供されてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 アダプタ領域
2 保持領域
3 アダプタプレート
4 保持プレート
5 供給開口
6 平坦な上側
7A 前端側
7B 後端側
8A 右側
8B 左側
9 閉鎖ねじ
10 チャネル
11 チャネル
11A 第1の区域
11B 第2の区域
12 バリヤ
13A 基板ブロック
13B 基板ブロック
14 基板
15 通過開口
16 収容レール
L 装置の長手方向軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断される基板ブロック(13A,13B)を保持し、前記基板ブロック(13A,13B)を切断することによって形成された中間スペースをフラッシングするための装置において、装置長手方向軸線(L)に対して平行にかつ互いに上下に配置された2つの領域を有しており、上側の領域はアダプタ領域(1)として構成されており、該アダプタ領域(1)によって装置を機械機器に結合することができ、下側の領域は保持領域(2)として形成されており、該保持領域(2)は、周囲で閉鎖された又は閉鎖可能なチャネルシステムの、チャネル(11)として提供された部分を有しており、前記チャネルシステムに、閉鎖可能な供給開口(5)によってフラッシング液を供給することができ、チャネル(11)の底部は、フラッシング液のための通過開口(15)を提供するために基板ブロック(13A,13B)の切断中にスロット状の形式で開放させられ、前記チャネル(11)は、装置長手方向軸線(L)に沿って複数の区域(11A,11B)に細分されていることを特徴とする、切断される基板ブロック(13A,13B)を保持し、前記基板ブロック(13A,13B)を切断することによって形成された中間スペースをフラッシングするための装置。
【請求項2】
装置長手方向軸線(L)に沿ったチャネル(11)の前記区域(11A,11B)に、互いに別々にフラッシング液を供給することができる、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記チャネル(11)が、互いに別々に供給することができる複数の構造的に別個のチャネルに細分されている、請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
前記チャネル(11)が、該チャネル(11)に取外し可能に取り付けられた複数のバリヤ(12)によって細分されている、請求項1又は2記載の装置。
【請求項5】
前記閉鎖可能な供給開口(5)が、アダプタ領域(1)の平坦な上側(6)に配置されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記閉鎖可能な供給開口(5)が、アダプタ領域(1)の周囲の側(7A,7B,8A,8B)に配置されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の装置。
【請求項7】
前記保持領域(2)が保持プレート(4)として形成されており、前記アダプタ領域(1)がアダプタプレート(3)として形成されており、2つのプレート(3,4)が互いに解放可能に結合されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
前記保持領域(2)の材料が、ガラス、プラスチック、エポキシド、セラミック、金属、及びこれらの材料の混合物から成るグループから選択されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
フラッシング液が、チャネルシステムに提供され、かつ該チャネルシステムから、通過開口(15)を介して流出することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の装置を使用することによって基板ブロック(13A,13B)を切断することによって形成された中間スペースをフラッシングする方法。
【請求項10】
装置長手方向軸線(L)に対して平行にかつ互いに上下に配置された2つの領域を有する装置を使用することによって基板ブロック(13A,13B)を切断することによって形成された中間スペースをフラッシングする方法において、上側の領域がアダプタ領域(1)として構成されており、該アダプタ領域によって装置を機械機器に結合することができ、周囲で閉鎖されたチャネルシステムの、装置長手方向軸線(L)に沿って延びた複数の区域(11A,11B)を有するチャネル(11)として提供された部分が、保持領域(2)として形成された下側の領域に配置されており、
上側領域に配置された閉鎖可能な供給開口(5)によってチャネルシステムにフラッシング液を供給するステップと、
基板ブロック(13A,13B)を切断するときにチャネル(11)の底部に形成されたスロット状の通過開口(15)によって中間スペースをフラッシングするステップとを有することを特徴とする、装置長手方向軸線(L)に対して平行にかつ互いに上下に配置された2つの領域を有する装置を使用することによって基板ブロック(13A,13B)を切断することによって形成された中間スペースをフラッシングする方法。
【請求項11】
フラッシングが、フラッシング液が供給される通過開口(15)を介して装置長手方向軸線(L)に沿って均一に行われる、請求項9又は10記載の方法。
【請求項12】
チャネル(11)の供給と、中間スペースのフラッシングとが、装置長手方向軸線(L)の方向で見てゾーン毎に行われる、請求項9から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
フラッシングが、ウェハソーの加工領域において行われる、請求項9から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
フラッシングが、液体において及び/又は超音波補助を利用して行われる、請求項9から13までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−115980(P2012−115980A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−260791(P2011−260791)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(504382349)レナ ゲーエムベーハー (10)
【Fターム(参考)】