制御装置及び露光装置
【課題】制御モデルの同定を最適化し、以ってフィードフォワード制御による高精度な位置制御を行う。
【解決手段】制御対象物の制御特性を表すモデルを用いた完全追従制御により前記制御対象物をフィードフォワード制御するフィードフォワード制御手段を備えた制御装置において、前記モデルは、前記制御対象物の周波数応答曲線における第1の変曲点が周波数10Hzより低い領域に存在し、且つ、第2の変曲点が前記第1の変曲点の周波数より高く周波数10Hzより低い領域に存在している場合に、前記第1及び第2の変曲点を含む周波数範囲において前記周波数応答曲線との誤差が最小となるようにモデルパラメータが設定されている。
【解決手段】制御対象物の制御特性を表すモデルを用いた完全追従制御により前記制御対象物をフィードフォワード制御するフィードフォワード制御手段を備えた制御装置において、前記モデルは、前記制御対象物の周波数応答曲線における第1の変曲点が周波数10Hzより低い領域に存在し、且つ、第2の変曲点が前記第1の変曲点の周波数より高く周波数10Hzより低い領域に存在している場合に、前記第1及び第2の変曲点を含む周波数範囲において前記周波数応答曲線との誤差が最小となるようにモデルパラメータが設定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置及び露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば液晶ディスプレイ(総称としてフラットパネルディスプレイ)を製造する工程においては、基板(ガラス基板)にトランジスタやダイオード等の素子を形成するために露光装置が多く使用されている。露光装置は、レジストを塗布した基板をステージ装置のホルダに載置し、マスクに描かれた微細な回路パターンを投影レンズ等の光学系を介して基板に転写するものであり(例えば、特許文献1参照)、基板とマスクの位置制御には、フィードフォワード制御あるいはフィードバック制御によって動作するステージ装置が用いられている。特に、近年、フィードフォワード制御の一手法として、精密な制御モデルに基づいて高精度な制御を可能とする完全追従制御によるフィードフォワード制御が提案されている(例えば、特許文献2又は非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−077313号公報
【特許文献2】特開2001−325005号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「マルチレートフィードフォワード制御を用いた完全追従法」、藤本博志他、計測自動制御学会論文集36巻、9号、pp766−772、2000年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、フィードフォワード制御においては、制御対象物(基板を保持する基板ステージやマスクを保持するマスクステージ)の制御特性を表す制御モデルを同定しておくことが必要であり、この制御モデルの精度がフィードフォワード制御の精度を決することになる。しかしながら、制御対象物ごとに共振などの周波数応答の特徴は違うので、例えば、実際には殆ど制御の性能上は影響を及ぼさない共振点に着目した制御モデルの同定をしてしまう等、必ずしも最適な制御モデルを同定できていないことがある。これにより、従来は、フィードフォワード制御による制御対象物の位置制御を精度良く行うことができないという問題があった。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、制御モデルの同定を最適化し、以ってフィードフォワード制御による高精度な位置制御を行うことが可能な制御装置及び露光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、制御対象物の制御特性を表すモデルを用いた完全追従制御により前記制御対象物をフィードフォワード制御するフィードフォワード制御手段を備えた制御装置において、前記モデルは、前記制御対象物の周波数応答曲線における第1の変曲点が周波数10Hzより低い領域に存在し、且つ、第2の変曲点が前記第1の変曲点の周波数より高く周波数10Hzより低い領域に存在している場合に、前記第1及び第2の変曲点を含む周波数範囲において前記周波数応答曲線との誤差が最小となるようにモデルパラメータが設定されている。
また、本発明は、制御対象物の制御特性を表すモデルを用いた完全追従制御により前記制御対象物をフィードフォワード制御するフィードフォワード制御手段を備えた制御装置において、前記モデルは、前記制御対象物の周波数応答曲線に第1の変曲点と第2の変曲点が含まれ、前記第2の変曲点が、周波数10Hzより高い領域であって前記第1の変曲点の周波数の10倍の周波数より低い領域に存在している場合に、前記第1及び第2の変曲点を含む周波数範囲において前記周波数応答曲線との誤差が最小となるようにモデルパラメータが設定されている。
【0008】
また、本発明は、マスクステージに保持されたマスクのパターンを基板ステージに保持された感光基板に露光する露光装置において、上記の制御装置を備え、前記制御装置が、前記マスクステージと前記基板ステージの少なくとも一方のステージを制御対象物として制御する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、制御モデルの同定が最適化されているので、フィードフォワード制御による高精度な位置制御を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態によるステージ装置の機構部分の構成図である。
【図2】本発明の一実施形態によるステージ装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図3】ステージ装置の構造をMaxwellモデルで表した図である。
【図4】図3のステージ装置の周波数応答を示す図である。
【図5】本発明による制御モデルを用いた場合と従来の制御モデルを用いた場合それぞれにおける、ステージの制御結果を示す図である。
【図6】微動ステージの重心のずれを考慮したモデルを表す図である。
【図7】図6のステージ装置の周波数応答を示す図である。
【図8】ステージベースと微動ステージを2質点系の並進モデルで表した図である。
【図9】図8のステージ装置の周波数応答を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る露光装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本発明の一実施形態によるステージ装置の機構部分の構成図である。ステージ装置は、不図示の防振台を介して床面上に設けられたステージベース12と、ステージベース12の上方に配置されX軸に沿って駆動されるX粗動ステージ23Xと、X粗動ステージ23X上に配置されY軸に沿って駆動されるY粗動ステージ23Yと、Y粗動ステージ23Yの上方に配置されステージ装置による駆動対象物(例えば露光対象となるガラス基板)が載置される微動ステージ21と、微動ステージ21の自重を支持する支持部材である自重キャンセル機構27と、自重キャンセル機構27により微動ステージ21の自重を支持しつつ微動ステージ21の動きを制約する部材であるレベリングカップ76と、を含んでいる。
【0012】
X粗動ステージ23Xは、その下部にX軸に沿って2組のXスライダ65が設けられており(図では紙面手前側の1組のみ示されている)、このXスライダ65の各組は、Y軸方向に所定間隔をもって配置された長手方向がX軸方向と一致するXガイド61X1,61X2にそれぞれ係合されている(図ではXガイド61X2のみ示されている)。これにより、不図示のX駆動機構によってX軸方向の駆動力をX粗動ステージ23Xに与えると、X粗動ステージ23Xは、Xガイド61X1,61X2にガイドされてX軸に沿って駆動される。またX粗動ステージ23Xの中央部には、貫通孔23Xaが形成されている。
【0013】
Y粗動ステージ23Yは、その下部にY軸に沿って2組のYスライダ63が設けられており、このYスライダ63の各組は、X軸方向に所定間隔をもってX粗動ステージ23X上に配置された長手方向がY軸方向と一致するYガイド61Y1,61Y2にそれぞれ係合されている。これにより、不図示のY駆動機構によってY軸方向の駆動力をY粗動ステージ23Yに与えると、Y粗動ステージ23Yは、Yガイド61Y1,61Y2にガイドされてY軸に沿って駆動される。またY粗動ステージ23Yの中央部には、貫通孔23Yaが形成されている。
【0014】
微動ステージ21は、駆動対象物を真空吸着等によって保持する基板テーブル22Aと、基板テーブル22Aを下側から支持するステージ本体部22Bと、を含んで構成され、レベリングカップ76を介してその自重を自重キャンセル機構27が支持した状態で、Y粗動ステージ23Yの上方に設けられている。ステージ本体部22Bには、微動ステージ21をY粗動ステージ23Yに対してX軸方向,Y軸方向,Z軸方向,θx方向(X軸回りの回転),及びθy方向(Y軸回りの回転)に微小量だけ駆動するための駆動機構として、不図示の複数のボイスコイルモータ(Voice Coil Motor:VCM)が備え付けられる。
【0015】
自重キャンセル機構27は、筐体70と、筐体70の内部に設けられた空気バネ(ベローズ)71と、Z軸方向に駆動可能なピストン73と、筐体の下部に設けられた3つのベースパッド75と、を含んで構成され、X粗動ステージ23Xに形成された貫通孔23Xa及びY粗動ステージ23Yに形成された貫通孔23Yaを貫通した状態で、ステージベース12上に設けられている。筐体70は接続部材89,90によってY粗動ステージ23Yに接続固定され、これにより自重キャンセル機構27はY粗動ステージ23YとともにX軸方向及びY軸方向に駆動される。空気バネ71は、供給弁等を有する不図示の空気供給装置を介して空気を出し入れすることでその内部の空気圧を調節し、上部に設けられたピストン73をZ軸方向に上下駆動させるアクチュエータとして機能する。ベースパッド75は、ステージベース12へ向けて空気を噴出することによりエアベアリングを形成し、自重キャンセル機構27をステージベース12上に浮上した状態(自重キャンセル機構27とステージベース12とが非接触の状態)に維持する。また、ピストン73の上部からはレベリングカップ76の下面に向けて空気が噴出され、これによりエアベアリングが形成されてピストン73とレベリングカップ76とが非接触の状態とされる。
【0016】
レベリングカップ76は、ステージ本体部22Bの下部に設けられた三角錐状部材88の3つの各面に相対する3つのパッド部を有する。このパッド部から三角錐状部材88の相対する面に向けて空気を噴出してエアベアリングを形成することにより、レベリングカップ76と微動ステージ21とが非接触の状態とされる。上記3つのパッド部はそれぞれその傾斜角度が可変であり、これにより、微動ステージ21は、上述のボイスコイルモータを作動させることで、レベリングカップ76と非接触状態のままZ軸方向,θx方向,及びθy方向の微小駆動が可能となっている。
【0017】
図2は、上記のステージ装置の制御系(制御装置)の構成を示すブロック図である。本実施形態では、Z軸方向の駆動制御のみ考えることとする。図2において、ステージ装置の制御系10は、軌道生成部101と、フィードフォワード制御部102と、フィードバック制御部103と、加算部104と、駆動力分配部105とを含んで構成される。
【0018】
軌道生成部101は、微動ステージ21(基板テーブル22A)に対する指令位置に従って、微動ステージ21が指令位置まで動いていく途中の各時刻における位置を表す目標軌道を計算し出力する。目標軌道は、各時刻tに対応付けられた基板テーブル22Aの位置Z(t)と、Z(t)のn−1次(nは、後述する制御モデルP(s)の分母の多項式の次数)までの時間微分Z’(t),Z”(t),…,Z(n−1)(t)の時系列データであり、その生成アルゴリズムは必要に応じて適宜のアルゴリズムを用いることができる。
【0019】
フィードフォワード制御部102は、軌道生成部101から出力される上記の目標軌道を入力として、基板テーブル22AのZ座標位置を完全追従制御(例えば、特開2001−325005号公報(前述の特許文献2)や論文「マルチレートフィードフォワード制御を用いた完全追従法」(藤本博志他、計測自動制御学会論文集36巻、9号、pp766−772、2000年)(前述の非特許文献1)を参照)に基づいてフィードフォワード制御する。具体的には、フィードフォワード制御部102は、制御対象106(基板テーブル22A)の制御特性を再現した制御モデル(後述)を記憶しており、この制御モデルを用いることにより、ボイスコイルモータと空気バネ71を駆動するための駆動信号を生成する。
【0020】
フィードバック制御部103は、基板テーブル22AのZ位置と軌道生成部101から出力される目標軌道との差分、即ち目標軌道を基準とした基板テーブル22AのZ位置の誤差に基づいて、基板テーブル22AのZ座標位置をフィードバック制御する。具体的には、フィードバック制御部103は、上記誤差がゼロとなるように、ボイスコイルモータと空気バネ71を駆動するための駆動信号を生成する。
【0021】
加算部104は、フィードフォワード制御部102からの駆動信号とフィードバック制御部103からの駆動信号を加算して、加算後の駆動信号Fを駆動力分配部105へ出力する。
【0022】
駆動力分配部105は、駆動信号Fをボイスコイルモータの駆動力Fzと空気バネ71の駆動力Fbelとに分配する。例えば、所定の周波数より低い周波数を通過させるローパスフィルタfLPFを用いて、Fbel=fLPF・F,Fz=(1−fLPF)・Fとすることができる。
【0023】
次に、フィードフォワード制御部102に記憶されている制御モデルを第1の実施形態から第3の実施形態により説明する。
【0024】
(第1の実施形態)
図3は、図1のステージ装置の構造をMaxwellモデルで表した図である。このMaxwellモデルにおいて、運動方程式は次式[数1]で表される。但し、m1は微動ステージ21の質量、c0,c1,c2は粘性係数、k0,k1,k2は弾性係数である。
【0025】
【数1】
【0026】
このとき、フィードフォワード制御部102に記憶されている制御モデルP(s)は、次式[数2],[数3]のように4次のモデルで表すことができる。但し、ここではc0=0とした。
【0027】
【数2】
【0028】
【数3】
【0029】
ここで、図4に、図1のステージ装置の周波数応答を示す。実線は実測した実際のステージ装置の周波数応答である。この実線から分かるように、図1のステージ装置は、f1=0.65Hz付近とf2=2.6Hz付近とf3=100Hz付近に共振に起因して変曲点を持っている。しかし、この周波数応答曲線によればf2=2.6Hzに対応する共振は他の2つの共振に比べて弱い共振であるため、4次の制御モデルを作る場合には、従来は、f1=0.65Hzとf3=100Hzの2つの共振に着目して制御モデルの同定を行っていた。あるいは、従来は、f1のみの共振に着目して2次の制御モデルとして同定を行っていた。
【0030】
本発明では、ともに10Hzより低いf1=0.65Hzとf2=2.6Hzの2つの共振に着目して制御モデルを同定することとする。具体的には、例えば、周波数範囲f1/3<f<3・f2において実際のステージ装置の周波数応答との誤差が最小になるように、制御モデルP(s)の各パラメータa0,a1,a2,a3,a4,b0,b1,b2を決定する。図4の破線が、同定した制御モデルの周波数応答である。
【0031】
図5に、本発明による制御モデルを用いた場合と従来の制御モデルを用いた場合それぞれにおける、ステージの制御結果を比較して示す。図から分かるように、本発明は位置の誤差が従来の1/10程度に低減されており、高精度な位置制御を実現できている。
【0032】
(第2の実施形態)
図6に示すように、図1のステージ装置は、微動ステージ21と自重キャンセル機構27を連結しているレベリングカップ76の連結位置と、微動ステージ21の重心とは実際には距離Lcgだけずれている。そのため、Z軸方向に微動ステージ21を駆動する際、レベリングカップ76の連結位置の周りに回転振動が励起される。
【0033】
この図6のモデルにおいて、運動方程式は次式[数4]で表される。
【0034】
【数4】
【0035】
但し、各変数の意味は次のとおりである。
m:微動ステージ21と自重キャンセル機構27の合計質量
J:微動ステージ21の回転モーメント
Z1:自重キャンセル機構27のZ位置
θ:微動ステージ21の回転角度
Fb:レベリングカップ76(自重キャンセル機構27)の推力
Ff:微動ステージ21の推力
Cb:レベリングカップ76(自重キャンセル機構27)の粘性係数
Kb:レベリングカップ76(自重キャンセル機構27)の弾性係数
μθ:微動ステージ21の回転の粘性係数
kθ:微動ステージ21の回転の剛性係数
【0036】
このとき、フィードフォワード制御部102に記憶されている制御モデルP(s)は、次式[数5]のように4次のモデルで表すことができる。
【0037】
【数5】
【0038】
図7に、図6のステージ装置の周波数応答を示す。実線は実際のステージ装置の周波数応答である。本発明では、ともに10Hzより低いf1=0.64Hzとf2=2.85Hzの2つの共振に着目して制御モデルを同定することとする。具体的には、例えば、周波数範囲f1/3<f<3・f2において実際のステージ装置の周波数応答との誤差が最小になるように、制御モデルP(s)の各パラメータa0,a1,a2,a3,a4,b0,b1,b2を決定する。図7の破線が、同定した制御モデルの周波数応答である。
【0039】
本実施形態の場合も、第1の実施形態(図5)と同様、従来の制御モデルを用いた制御と比べて高精度な位置制御を実現することができる。
【0040】
(第3の実施形態)
図8は、ステージベース12と微動ステージ21を2質点系の並進モデルで表した図である。このモデルにおいて、フィードフォワード制御部102に記憶されている制御モデルP(s)は、次式[数6]のように4次のモデルで表すことができる。但し、m1は微動ステージ21の質量、m2はステージベース12の質量、c1,c2は粘性係数、k1,k2は弾性係数である。
【0041】
【数6】
【0042】
図9に、図8のステージ装置の周波数応答を示す。実線は実際のステージ装置の周波数応答である。本発明では、ともに10Hzより低いf1=0.6Hzとf2=2.5Hzの2つの共振に着目して制御モデルを同定することとする。具体的には、例えば、周波数範囲f1/3<f<3・f2において実際のステージ装置の周波数応答との誤差が最小になるように、制御モデルP(s)の各パラメータa0,a1,a2,a3,a4,b0,b1,b2を決定する。図9の破線が、同定した制御モデルの周波数応答である。
【0043】
本実施形態の場合も、第1の実施形態(図5)と同様、従来の制御モデルを用いた制御と比べて高精度な位置制御を実現することができる。
【0044】
以上説明した第1乃至第3の実施形態によるステージ装置は、例えば微細な回路パターンをガラス基板や半導体基板に焼き付ける露光装置用のステージ装置として用いることができる。
図10は、上述のステージ装置を適用した露光装置の構成図である。露光装置301は、照明光学系302と、マスクMを保持して移動するマスクステージ装置303と、投影光学系PLと、ガラス基板Pを保持して移動する基板ステージ装置305と、を含んで構成される。
【0045】
照明光学系302は、いずれも図示していない光源ユニット、シャッタ、2次光源形成光学系、ビームスプリッタ、集光レンズ系、レチクルブラインド、および結像レンズ系から構成され、マスクステージ装置303に保持されたマスクM上の所定の照明領域(回路パターンを含んでいる)を照明光ILにより均一な照度で照明する。
投影光学系PLは、光軸AX方向に沿って所定間隔で配置された複数枚のレンズエレメントを有する光学系(例えば屈折光学系)であり、照明光学系302からの照明光ILによってマスクMの照明領域が照明されると、このマスクMを通過した照明光により、投影光学系PLを介してマスクM上の照明領域の回路パターンの所定倍率の正立像がガラス基板P上に投影され、これによりガラス基板Pの表面に塗布されたフォトレジストが露光される。
【0046】
マスクステージ装置303または基板ステージ装置305の少なくともいずれか一方には、上述した第1乃至第3の実施形態によるステージ装置を用いる。ここで、マスクステージ装置303として用いる場合にはXステージ3上のプレートホルダにマスクMが保持され、基板ステージ装置305として用いる場合には同プレートホルダにガラス基板Pが保持される。
【0047】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【0048】
例えば、上述した第1〜第3の実施形態では、制御モデルP(s)の同定において、ともに10Hzより低い周波数f1とf2の2つの共振に着目したが、これに代えて、10Hzより低い周波数f1の共振と、10Hzより高い周波数であってf1の10倍の周波数より低い周波数f2の共振とに着目してもよく、同様の高精度な位置制御を実現することができる。
【符号の説明】
【0049】
12…ステージベース 21…微動ステージ 23X…X粗動ステージ 23Y…Y粗動ステージ 27…自重キャンセル機構 71…空気バネ 73…ピストン 76…レベリングカップ 101…軌道生成部 102…フィードフォワード制御部 103…フィードバック制御部 104…加算部 105…駆動力分配部 106…制御対象
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置及び露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば液晶ディスプレイ(総称としてフラットパネルディスプレイ)を製造する工程においては、基板(ガラス基板)にトランジスタやダイオード等の素子を形成するために露光装置が多く使用されている。露光装置は、レジストを塗布した基板をステージ装置のホルダに載置し、マスクに描かれた微細な回路パターンを投影レンズ等の光学系を介して基板に転写するものであり(例えば、特許文献1参照)、基板とマスクの位置制御には、フィードフォワード制御あるいはフィードバック制御によって動作するステージ装置が用いられている。特に、近年、フィードフォワード制御の一手法として、精密な制御モデルに基づいて高精度な制御を可能とする完全追従制御によるフィードフォワード制御が提案されている(例えば、特許文献2又は非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−077313号公報
【特許文献2】特開2001−325005号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「マルチレートフィードフォワード制御を用いた完全追従法」、藤本博志他、計測自動制御学会論文集36巻、9号、pp766−772、2000年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、フィードフォワード制御においては、制御対象物(基板を保持する基板ステージやマスクを保持するマスクステージ)の制御特性を表す制御モデルを同定しておくことが必要であり、この制御モデルの精度がフィードフォワード制御の精度を決することになる。しかしながら、制御対象物ごとに共振などの周波数応答の特徴は違うので、例えば、実際には殆ど制御の性能上は影響を及ぼさない共振点に着目した制御モデルの同定をしてしまう等、必ずしも最適な制御モデルを同定できていないことがある。これにより、従来は、フィードフォワード制御による制御対象物の位置制御を精度良く行うことができないという問題があった。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、制御モデルの同定を最適化し、以ってフィードフォワード制御による高精度な位置制御を行うことが可能な制御装置及び露光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、制御対象物の制御特性を表すモデルを用いた完全追従制御により前記制御対象物をフィードフォワード制御するフィードフォワード制御手段を備えた制御装置において、前記モデルは、前記制御対象物の周波数応答曲線における第1の変曲点が周波数10Hzより低い領域に存在し、且つ、第2の変曲点が前記第1の変曲点の周波数より高く周波数10Hzより低い領域に存在している場合に、前記第1及び第2の変曲点を含む周波数範囲において前記周波数応答曲線との誤差が最小となるようにモデルパラメータが設定されている。
また、本発明は、制御対象物の制御特性を表すモデルを用いた完全追従制御により前記制御対象物をフィードフォワード制御するフィードフォワード制御手段を備えた制御装置において、前記モデルは、前記制御対象物の周波数応答曲線に第1の変曲点と第2の変曲点が含まれ、前記第2の変曲点が、周波数10Hzより高い領域であって前記第1の変曲点の周波数の10倍の周波数より低い領域に存在している場合に、前記第1及び第2の変曲点を含む周波数範囲において前記周波数応答曲線との誤差が最小となるようにモデルパラメータが設定されている。
【0008】
また、本発明は、マスクステージに保持されたマスクのパターンを基板ステージに保持された感光基板に露光する露光装置において、上記の制御装置を備え、前記制御装置が、前記マスクステージと前記基板ステージの少なくとも一方のステージを制御対象物として制御する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、制御モデルの同定が最適化されているので、フィードフォワード制御による高精度な位置制御を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態によるステージ装置の機構部分の構成図である。
【図2】本発明の一実施形態によるステージ装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図3】ステージ装置の構造をMaxwellモデルで表した図である。
【図4】図3のステージ装置の周波数応答を示す図である。
【図5】本発明による制御モデルを用いた場合と従来の制御モデルを用いた場合それぞれにおける、ステージの制御結果を示す図である。
【図6】微動ステージの重心のずれを考慮したモデルを表す図である。
【図7】図6のステージ装置の周波数応答を示す図である。
【図8】ステージベースと微動ステージを2質点系の並進モデルで表した図である。
【図9】図8のステージ装置の周波数応答を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る露光装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本発明の一実施形態によるステージ装置の機構部分の構成図である。ステージ装置は、不図示の防振台を介して床面上に設けられたステージベース12と、ステージベース12の上方に配置されX軸に沿って駆動されるX粗動ステージ23Xと、X粗動ステージ23X上に配置されY軸に沿って駆動されるY粗動ステージ23Yと、Y粗動ステージ23Yの上方に配置されステージ装置による駆動対象物(例えば露光対象となるガラス基板)が載置される微動ステージ21と、微動ステージ21の自重を支持する支持部材である自重キャンセル機構27と、自重キャンセル機構27により微動ステージ21の自重を支持しつつ微動ステージ21の動きを制約する部材であるレベリングカップ76と、を含んでいる。
【0012】
X粗動ステージ23Xは、その下部にX軸に沿って2組のXスライダ65が設けられており(図では紙面手前側の1組のみ示されている)、このXスライダ65の各組は、Y軸方向に所定間隔をもって配置された長手方向がX軸方向と一致するXガイド61X1,61X2にそれぞれ係合されている(図ではXガイド61X2のみ示されている)。これにより、不図示のX駆動機構によってX軸方向の駆動力をX粗動ステージ23Xに与えると、X粗動ステージ23Xは、Xガイド61X1,61X2にガイドされてX軸に沿って駆動される。またX粗動ステージ23Xの中央部には、貫通孔23Xaが形成されている。
【0013】
Y粗動ステージ23Yは、その下部にY軸に沿って2組のYスライダ63が設けられており、このYスライダ63の各組は、X軸方向に所定間隔をもってX粗動ステージ23X上に配置された長手方向がY軸方向と一致するYガイド61Y1,61Y2にそれぞれ係合されている。これにより、不図示のY駆動機構によってY軸方向の駆動力をY粗動ステージ23Yに与えると、Y粗動ステージ23Yは、Yガイド61Y1,61Y2にガイドされてY軸に沿って駆動される。またY粗動ステージ23Yの中央部には、貫通孔23Yaが形成されている。
【0014】
微動ステージ21は、駆動対象物を真空吸着等によって保持する基板テーブル22Aと、基板テーブル22Aを下側から支持するステージ本体部22Bと、を含んで構成され、レベリングカップ76を介してその自重を自重キャンセル機構27が支持した状態で、Y粗動ステージ23Yの上方に設けられている。ステージ本体部22Bには、微動ステージ21をY粗動ステージ23Yに対してX軸方向,Y軸方向,Z軸方向,θx方向(X軸回りの回転),及びθy方向(Y軸回りの回転)に微小量だけ駆動するための駆動機構として、不図示の複数のボイスコイルモータ(Voice Coil Motor:VCM)が備え付けられる。
【0015】
自重キャンセル機構27は、筐体70と、筐体70の内部に設けられた空気バネ(ベローズ)71と、Z軸方向に駆動可能なピストン73と、筐体の下部に設けられた3つのベースパッド75と、を含んで構成され、X粗動ステージ23Xに形成された貫通孔23Xa及びY粗動ステージ23Yに形成された貫通孔23Yaを貫通した状態で、ステージベース12上に設けられている。筐体70は接続部材89,90によってY粗動ステージ23Yに接続固定され、これにより自重キャンセル機構27はY粗動ステージ23YとともにX軸方向及びY軸方向に駆動される。空気バネ71は、供給弁等を有する不図示の空気供給装置を介して空気を出し入れすることでその内部の空気圧を調節し、上部に設けられたピストン73をZ軸方向に上下駆動させるアクチュエータとして機能する。ベースパッド75は、ステージベース12へ向けて空気を噴出することによりエアベアリングを形成し、自重キャンセル機構27をステージベース12上に浮上した状態(自重キャンセル機構27とステージベース12とが非接触の状態)に維持する。また、ピストン73の上部からはレベリングカップ76の下面に向けて空気が噴出され、これによりエアベアリングが形成されてピストン73とレベリングカップ76とが非接触の状態とされる。
【0016】
レベリングカップ76は、ステージ本体部22Bの下部に設けられた三角錐状部材88の3つの各面に相対する3つのパッド部を有する。このパッド部から三角錐状部材88の相対する面に向けて空気を噴出してエアベアリングを形成することにより、レベリングカップ76と微動ステージ21とが非接触の状態とされる。上記3つのパッド部はそれぞれその傾斜角度が可変であり、これにより、微動ステージ21は、上述のボイスコイルモータを作動させることで、レベリングカップ76と非接触状態のままZ軸方向,θx方向,及びθy方向の微小駆動が可能となっている。
【0017】
図2は、上記のステージ装置の制御系(制御装置)の構成を示すブロック図である。本実施形態では、Z軸方向の駆動制御のみ考えることとする。図2において、ステージ装置の制御系10は、軌道生成部101と、フィードフォワード制御部102と、フィードバック制御部103と、加算部104と、駆動力分配部105とを含んで構成される。
【0018】
軌道生成部101は、微動ステージ21(基板テーブル22A)に対する指令位置に従って、微動ステージ21が指令位置まで動いていく途中の各時刻における位置を表す目標軌道を計算し出力する。目標軌道は、各時刻tに対応付けられた基板テーブル22Aの位置Z(t)と、Z(t)のn−1次(nは、後述する制御モデルP(s)の分母の多項式の次数)までの時間微分Z’(t),Z”(t),…,Z(n−1)(t)の時系列データであり、その生成アルゴリズムは必要に応じて適宜のアルゴリズムを用いることができる。
【0019】
フィードフォワード制御部102は、軌道生成部101から出力される上記の目標軌道を入力として、基板テーブル22AのZ座標位置を完全追従制御(例えば、特開2001−325005号公報(前述の特許文献2)や論文「マルチレートフィードフォワード制御を用いた完全追従法」(藤本博志他、計測自動制御学会論文集36巻、9号、pp766−772、2000年)(前述の非特許文献1)を参照)に基づいてフィードフォワード制御する。具体的には、フィードフォワード制御部102は、制御対象106(基板テーブル22A)の制御特性を再現した制御モデル(後述)を記憶しており、この制御モデルを用いることにより、ボイスコイルモータと空気バネ71を駆動するための駆動信号を生成する。
【0020】
フィードバック制御部103は、基板テーブル22AのZ位置と軌道生成部101から出力される目標軌道との差分、即ち目標軌道を基準とした基板テーブル22AのZ位置の誤差に基づいて、基板テーブル22AのZ座標位置をフィードバック制御する。具体的には、フィードバック制御部103は、上記誤差がゼロとなるように、ボイスコイルモータと空気バネ71を駆動するための駆動信号を生成する。
【0021】
加算部104は、フィードフォワード制御部102からの駆動信号とフィードバック制御部103からの駆動信号を加算して、加算後の駆動信号Fを駆動力分配部105へ出力する。
【0022】
駆動力分配部105は、駆動信号Fをボイスコイルモータの駆動力Fzと空気バネ71の駆動力Fbelとに分配する。例えば、所定の周波数より低い周波数を通過させるローパスフィルタfLPFを用いて、Fbel=fLPF・F,Fz=(1−fLPF)・Fとすることができる。
【0023】
次に、フィードフォワード制御部102に記憶されている制御モデルを第1の実施形態から第3の実施形態により説明する。
【0024】
(第1の実施形態)
図3は、図1のステージ装置の構造をMaxwellモデルで表した図である。このMaxwellモデルにおいて、運動方程式は次式[数1]で表される。但し、m1は微動ステージ21の質量、c0,c1,c2は粘性係数、k0,k1,k2は弾性係数である。
【0025】
【数1】
【0026】
このとき、フィードフォワード制御部102に記憶されている制御モデルP(s)は、次式[数2],[数3]のように4次のモデルで表すことができる。但し、ここではc0=0とした。
【0027】
【数2】
【0028】
【数3】
【0029】
ここで、図4に、図1のステージ装置の周波数応答を示す。実線は実測した実際のステージ装置の周波数応答である。この実線から分かるように、図1のステージ装置は、f1=0.65Hz付近とf2=2.6Hz付近とf3=100Hz付近に共振に起因して変曲点を持っている。しかし、この周波数応答曲線によればf2=2.6Hzに対応する共振は他の2つの共振に比べて弱い共振であるため、4次の制御モデルを作る場合には、従来は、f1=0.65Hzとf3=100Hzの2つの共振に着目して制御モデルの同定を行っていた。あるいは、従来は、f1のみの共振に着目して2次の制御モデルとして同定を行っていた。
【0030】
本発明では、ともに10Hzより低いf1=0.65Hzとf2=2.6Hzの2つの共振に着目して制御モデルを同定することとする。具体的には、例えば、周波数範囲f1/3<f<3・f2において実際のステージ装置の周波数応答との誤差が最小になるように、制御モデルP(s)の各パラメータa0,a1,a2,a3,a4,b0,b1,b2を決定する。図4の破線が、同定した制御モデルの周波数応答である。
【0031】
図5に、本発明による制御モデルを用いた場合と従来の制御モデルを用いた場合それぞれにおける、ステージの制御結果を比較して示す。図から分かるように、本発明は位置の誤差が従来の1/10程度に低減されており、高精度な位置制御を実現できている。
【0032】
(第2の実施形態)
図6に示すように、図1のステージ装置は、微動ステージ21と自重キャンセル機構27を連結しているレベリングカップ76の連結位置と、微動ステージ21の重心とは実際には距離Lcgだけずれている。そのため、Z軸方向に微動ステージ21を駆動する際、レベリングカップ76の連結位置の周りに回転振動が励起される。
【0033】
この図6のモデルにおいて、運動方程式は次式[数4]で表される。
【0034】
【数4】
【0035】
但し、各変数の意味は次のとおりである。
m:微動ステージ21と自重キャンセル機構27の合計質量
J:微動ステージ21の回転モーメント
Z1:自重キャンセル機構27のZ位置
θ:微動ステージ21の回転角度
Fb:レベリングカップ76(自重キャンセル機構27)の推力
Ff:微動ステージ21の推力
Cb:レベリングカップ76(自重キャンセル機構27)の粘性係数
Kb:レベリングカップ76(自重キャンセル機構27)の弾性係数
μθ:微動ステージ21の回転の粘性係数
kθ:微動ステージ21の回転の剛性係数
【0036】
このとき、フィードフォワード制御部102に記憶されている制御モデルP(s)は、次式[数5]のように4次のモデルで表すことができる。
【0037】
【数5】
【0038】
図7に、図6のステージ装置の周波数応答を示す。実線は実際のステージ装置の周波数応答である。本発明では、ともに10Hzより低いf1=0.64Hzとf2=2.85Hzの2つの共振に着目して制御モデルを同定することとする。具体的には、例えば、周波数範囲f1/3<f<3・f2において実際のステージ装置の周波数応答との誤差が最小になるように、制御モデルP(s)の各パラメータa0,a1,a2,a3,a4,b0,b1,b2を決定する。図7の破線が、同定した制御モデルの周波数応答である。
【0039】
本実施形態の場合も、第1の実施形態(図5)と同様、従来の制御モデルを用いた制御と比べて高精度な位置制御を実現することができる。
【0040】
(第3の実施形態)
図8は、ステージベース12と微動ステージ21を2質点系の並進モデルで表した図である。このモデルにおいて、フィードフォワード制御部102に記憶されている制御モデルP(s)は、次式[数6]のように4次のモデルで表すことができる。但し、m1は微動ステージ21の質量、m2はステージベース12の質量、c1,c2は粘性係数、k1,k2は弾性係数である。
【0041】
【数6】
【0042】
図9に、図8のステージ装置の周波数応答を示す。実線は実際のステージ装置の周波数応答である。本発明では、ともに10Hzより低いf1=0.6Hzとf2=2.5Hzの2つの共振に着目して制御モデルを同定することとする。具体的には、例えば、周波数範囲f1/3<f<3・f2において実際のステージ装置の周波数応答との誤差が最小になるように、制御モデルP(s)の各パラメータa0,a1,a2,a3,a4,b0,b1,b2を決定する。図9の破線が、同定した制御モデルの周波数応答である。
【0043】
本実施形態の場合も、第1の実施形態(図5)と同様、従来の制御モデルを用いた制御と比べて高精度な位置制御を実現することができる。
【0044】
以上説明した第1乃至第3の実施形態によるステージ装置は、例えば微細な回路パターンをガラス基板や半導体基板に焼き付ける露光装置用のステージ装置として用いることができる。
図10は、上述のステージ装置を適用した露光装置の構成図である。露光装置301は、照明光学系302と、マスクMを保持して移動するマスクステージ装置303と、投影光学系PLと、ガラス基板Pを保持して移動する基板ステージ装置305と、を含んで構成される。
【0045】
照明光学系302は、いずれも図示していない光源ユニット、シャッタ、2次光源形成光学系、ビームスプリッタ、集光レンズ系、レチクルブラインド、および結像レンズ系から構成され、マスクステージ装置303に保持されたマスクM上の所定の照明領域(回路パターンを含んでいる)を照明光ILにより均一な照度で照明する。
投影光学系PLは、光軸AX方向に沿って所定間隔で配置された複数枚のレンズエレメントを有する光学系(例えば屈折光学系)であり、照明光学系302からの照明光ILによってマスクMの照明領域が照明されると、このマスクMを通過した照明光により、投影光学系PLを介してマスクM上の照明領域の回路パターンの所定倍率の正立像がガラス基板P上に投影され、これによりガラス基板Pの表面に塗布されたフォトレジストが露光される。
【0046】
マスクステージ装置303または基板ステージ装置305の少なくともいずれか一方には、上述した第1乃至第3の実施形態によるステージ装置を用いる。ここで、マスクステージ装置303として用いる場合にはXステージ3上のプレートホルダにマスクMが保持され、基板ステージ装置305として用いる場合には同プレートホルダにガラス基板Pが保持される。
【0047】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【0048】
例えば、上述した第1〜第3の実施形態では、制御モデルP(s)の同定において、ともに10Hzより低い周波数f1とf2の2つの共振に着目したが、これに代えて、10Hzより低い周波数f1の共振と、10Hzより高い周波数であってf1の10倍の周波数より低い周波数f2の共振とに着目してもよく、同様の高精度な位置制御を実現することができる。
【符号の説明】
【0049】
12…ステージベース 21…微動ステージ 23X…X粗動ステージ 23Y…Y粗動ステージ 27…自重キャンセル機構 71…空気バネ 73…ピストン 76…レベリングカップ 101…軌道生成部 102…フィードフォワード制御部 103…フィードバック制御部 104…加算部 105…駆動力分配部 106…制御対象
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象物の制御特性を表すモデルを用いた完全追従制御により前記制御対象物をフィードフォワード制御するフィードフォワード制御手段を備えた制御装置において、
前記モデルは、前記制御対象物の周波数応答曲線における第1の変曲点が周波数10Hzより低い領域に存在し、且つ、第2の変曲点が前記第1の変曲点の周波数より高く周波数10Hzより低い領域に存在している場合に、前記第1及び第2の変曲点を含む周波数範囲において前記周波数応答曲線との誤差が最小となるようにモデルパラメータが設定されている
制御装置。
【請求項2】
制御対象物の制御特性を表すモデルを用いた完全追従制御により前記制御対象物をフィードフォワード制御するフィードフォワード制御手段を備えた制御装置において、
前記モデルは、前記制御対象物の周波数応答曲線に第1の変曲点と第2の変曲点が含まれ、前記第2の変曲点が、周波数10Hzより高い領域であって前記第1の変曲点の周波数の10倍の周波数より低い領域に存在している場合に、前記第1及び第2の変曲点を含む周波数範囲において前記周波数応答曲線との誤差が最小となるようにモデルパラメータが設定されている
制御装置。
【請求項3】
マスクステージに保持されたマスクのパターンを基板ステージに保持された感光基板に露光する露光装置において、
請求項1又は請求項2に記載の制御装置を備え、
前記制御装置が、前記マスクステージと前記基板ステージの少なくとも一方のステージを制御対象物として制御する
露光装置。
【請求項1】
制御対象物の制御特性を表すモデルを用いた完全追従制御により前記制御対象物をフィードフォワード制御するフィードフォワード制御手段を備えた制御装置において、
前記モデルは、前記制御対象物の周波数応答曲線における第1の変曲点が周波数10Hzより低い領域に存在し、且つ、第2の変曲点が前記第1の変曲点の周波数より高く周波数10Hzより低い領域に存在している場合に、前記第1及び第2の変曲点を含む周波数範囲において前記周波数応答曲線との誤差が最小となるようにモデルパラメータが設定されている
制御装置。
【請求項2】
制御対象物の制御特性を表すモデルを用いた完全追従制御により前記制御対象物をフィードフォワード制御するフィードフォワード制御手段を備えた制御装置において、
前記モデルは、前記制御対象物の周波数応答曲線に第1の変曲点と第2の変曲点が含まれ、前記第2の変曲点が、周波数10Hzより高い領域であって前記第1の変曲点の周波数の10倍の周波数より低い領域に存在している場合に、前記第1及び第2の変曲点を含む周波数範囲において前記周波数応答曲線との誤差が最小となるようにモデルパラメータが設定されている
制御装置。
【請求項3】
マスクステージに保持されたマスクのパターンを基板ステージに保持された感光基板に露光する露光装置において、
請求項1又は請求項2に記載の制御装置を備え、
前記制御装置が、前記マスクステージと前記基板ステージの少なくとも一方のステージを制御対象物として制御する
露光装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−267144(P2010−267144A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119068(P2009−119068)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
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