説明

加熱調理器およびそのプログラム

【課題】発生した煙や炎により被加熱物に臭いがつくのを防止すること。
【解決手段】通電割合決定手段および制御周期決定手段が決定した通電割合と複数の制御周期を用いて下面加熱手段の通電制御を行い下面加熱手段の温度を所定温度域で安定させる間に複数の適切な制御周期に変更することで、煙や炎の発生を抑えた上で、調理性能を維持するために必要な下面加熱手段の温度を、煙や炎の発生を抑えられる温度にできるだけ近い所まで上げることができると共に、スイッチ手段の寿命も長く保ち、調理時間も短くすることが可能な加熱調理器を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被加熱物を加熱調理する加熱調理器およびそのプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の加熱調理器は、図7に示すように、701は調理室、702は被加熱物、703は載置台、704は上面加熱手段、705は下面加熱手段、706は受け皿、707は冷却ファンを備えている。調理室701内の載置台703の上に被加熱物702が設置され加熱調理が開始されると、上面加熱手段704、下面加熱手段705への通電が開始される。被加熱物が魚や肉などの油を含んでいる場合、加熱が行われることで、下面加熱手段705や受け皿706に被加熱物702から出てくる油が滴下する。ここで受け皿706に滴下した油が発煙しないように冷却ファン707で風を送ることにより受け皿を冷却する(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−192154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の構成では、被加熱物702から出た油が下面加熱手段705が制御されずに高温なっている状態で滴下すると、下面加熱手段705に滴下した油から煙や炎が発生する。受け皿706を冷却する構成によれば、発生した炎が受け皿にたまった油に引火することを防ぐことができるが、発生した煙や炎は、被加熱物702に臭いをつけるため、被加熱物702の味や香りが悪くなり、加熱調理器としての調理性能に悪影響を与えるという課題を有していた。
【0004】
一方で煙や炎の発生を抑えるために下面加熱手段705の温度を低くすると、被加熱物702に投入するエネルギーが少なくなるため、投入エネルギーを確保するため調理時間を長くする必要が発生し、加熱調理器としての調理性能に悪影響を与えるという課題を有していた。
【0005】
さらに、下面加熱手段705の温度を一定に保つために位相制御で電力を制御すると、高周波ノイズが発生し周りの機器に悪影響を及ぼすため、電磁調理器の一機能として加熱調理器を組み込んだりする場合に機器としての性能に悪影響を与えるという課題を有していた。
【0006】
また煙や炎の発生を抑えた上で調理性能を維持するためには、下面加熱手段705の温度を煙や炎の発生を抑えられる温度にできるだけ近い所まで上げる方がよいが、通電割合で温度制御を行う場合は、通電ありの期間に温度が上昇し、通電なしの期間に温度が下降するため、通電制御を行った際の下面加熱手段温度には温度幅ができてしまうため、煙や炎の発生を抑えられる温度より、この温度幅の分だけ低い温度を設定しなければならないという課題を有していた。
【0007】
また、煙や炎の発生を抑えるために、通電制御周期を短くすると、下面加熱手段の通電有無を切り換えるための第2のスイッチ手段のスイッチ回数が増えて、第2のスイッチ手段の寿命が短くなるという課題を有していた。
【0008】
また下面加熱手段705の表面温度が高い場合には、下面加熱手段705の表面温度を直接取得することが困難であり、かつ、特に上面加熱手段704を連続通電制御した場合には、調理室内の温度検知手段で取得した温度では下面加熱手段705との直接的な相関が低いため、下面加熱手段705の温度を所定温度域に制御することは困難であるという課題を有していた。
【0009】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、下面加熱手段の制御目標温度域として煙や炎が発生しにくい温度域を設定し、目標温度を維持可能な平均電力を満たす通電割合を決定することで、下面加熱手段に投入された電気エネルギーと下面加熱手段の表面から調理室内に放散されるエネルギーが平衡状態に達した時の下面加熱手段表面温度が所定温度域におさまるようにすることができ、更に制御周期決定手段により加熱調理による油が発生し易い加熱初期における下面加熱手段の温度幅を、油が発生しにくい期間より小さく制御することで、高周波ノイズが発生し周りの機器に悪影響を及ぼすことなく、煙や炎の発生が殆どなく、スイッチ手段の寿命も長く保ち、調理時間も短くすることが可能な加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来の課題を解決するために、本発明の加熱調理器は、加熱調理初期に上面加熱手段および下面加熱手段に大電力を投入し調理室内温度を高速昇温し、その後、前記通電割合決定手段および前記制御周期決定手段が決定した通電割合と複数の制御周期を用いて前記下面加熱手段の通電制御を行い前記下面加熱手段の温度を所定温度域で安定させる間に複数の適切な制御周期に変更することで、煙や炎の発生を抑えた上で、調理性能を維持するために必要な下面加熱手段の温度を、煙や炎の発生を抑えられる温度にできるだけ近い所まで上げることができると共に、高周波ノイズが発生し周りの機器に悪影響を及ぼすことなく、また、煙や炎が発生が殆どなく、スイッチ手段の寿命も長く保ち、調理時間も短くすることが可能な加熱調理器を提供することができる。
【0011】
また、温度検出手段の検出値を用いて負荷量を検出し、負荷量を基に下面加熱手段の通電割合と第1の制御周期と第2の制御周期と制御周期の継続時間を決定することで、負荷量に応じた目標温度を維持する通電割合と制御周期で決定される第2のスイッチ手段のスイッチ回数を決定し、下面加熱手段の温度を負荷量に依らず所定温度域に維持すると共に、スイッチ手段の寿命もより長く保つことができる。
【0012】
また、加熱調理初期に最大電力を投入することで、温度検出手段の検出変化を大きくし、負荷量出手段の検出値をより正確にすることができる。
【0013】
また、下面加熱手段の温度を所定温度域に安定させる制御を行う際に、温度振幅に関係する制御周期として、加熱初期の第1の制御周期を第2の加熱周期より小さくすることで、油が滴下し易い加熱初期の温度振幅を小さくすることができ、煙や炎の発生を抑えた上で調理性能を維持するために必要な下面加熱手段の温度を、煙や炎の発生を抑えられる温度にできるだけ近い所まで上げることができる。
【0014】
また、負荷量検出と調理室内温度上昇の目的で、加熱調理初期に大電力を投入したことにより上昇した下面加熱手段の温度を、所定温度域に移行させる際、下面加熱手段への通電を停止することで所定温度域への移行を速くすることができ、煙や炎の発生の可能性をより小さくすることができる。
【0015】
また、加熱調理器を電磁調理器に搭載することで、鍋などの容器を電磁誘導により加熱する調理手段に、載置台として焼き網を使った調理手段を加えることができ、家庭内での調理の幅を広くすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の加熱調理器およびそのプログラムは、高周波ノイズが発生し周りの機器に悪影響を及ぼすことなく、煙や炎の発生が殆どなく、スイッチ手段の寿命も長く保ち、調理時間も短くすることが可能な加熱調理器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
第1の発明は、載置台の上に載せた被加熱物を収容する調理室と、前記被加熱物の上面を加熱する上面加熱手段と、前記上面加熱手段の通電有無を切り換える第1のスイッチ手段と、前記被加熱物の下面を加熱する下面加熱手段と、前記下面加熱手段の通電有無を切り換える第2のスイッチ手段と、前記下面加熱手段の通電有無の割合を決定する通電割合決定手段と、前記通電割合決定手段で決定された割合の制御周期として複数の制御周期を決定する制御周期決定手段と、前記第1のスイッチ手段と前記第2のスイッチ手段を動作させることで前記上面加熱手段と前記下面加熱手段を制御する制御手段とを備え、
通電割合決定手段は前記下面加熱手段の制御目標温度を設定し、制御周期決定手段は前記制御目標温度に制御する際の温度振幅を設定し、
前記制御手段は、前記上面加熱手段を通電制御し、かつ、前記下面加熱手段に第1電力値で所定時間通電制御した後、前記通電割合決定手段および前記制御周期決定手段が決定した通電割合と制御周期を用いて前記下面加熱手段の通電制御を行い前記下面加熱手段の温度を所定温度域で安定させる間に制御周期を切り換える加熱調理器とすることにより、煙や炎の発生を抑えた上で、調理性能を維持するために必要な下面加熱手段の温度を、煙や炎の発生を抑えられる温度にできるだけ近い所まで上げることができると共に、高周波ノイズが発生し周りの機器に悪影響を及ぼすことなく、また、煙や炎が発生が殆どなく、スイッチ手段の寿命も長く保ち、調理時間も短くすることができる。
【0018】
第2の発明は、加熱調理器を、前記調理室内の温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段で検出した検出値により前記被加熱物の負荷量を検出する負荷量検出手段を備え、前記負荷量検出手段で検出した負荷量に基づいて前記通電割合決定手段が通電割合を決定し、前記制御周期決定手段が第1の制御周期と第1の制御周期の継続時間と第2の制御周期を決定し、決定された通電割合および制御周期を用いて前記下面加熱手段の温度を所定温度域で安定させる加熱調理器とすることにより、
負荷量に応じた目標温度を維持する通電割合と制御周期で決定される第2のスイッチ手段のスイッチ回数を決定することで、下面加熱手段の温度を負荷量に依らず所定温度域に維持すると共に、スイッチ手段の寿命もより長く保つことができる。
【0019】
第3の発明は、前記第1電力値が最大電力値である加熱調理器とすることにより、加熱調理初期に最大電力を投入することで、温度検出手段の検出変化を大きくし、負荷量検出手段の検出値をより正確にすることができる。
【0020】
第4の発明は、前記制御周期決定手段が決定する前記第1の制御周期は前記第2の制御周期より短い加熱調理器とすることにより、下面加熱手段の温度を所定温度域に安定させる制御を行う際に、温度振幅に関係する制御周期として、加熱初期の第1の制御周期を第2の加熱周期より小さくすることで、油が滴下し易い加熱初期の温度振幅を小さくすることができ、煙や炎の発生を抑えた上で調理性能を維持するために必要な下面加熱手段の温度を、煙や炎の発生を抑えられる温度にできるだけ近い所まで上げることができる。
【0021】
第5の発明は、制御手段として、前記下面加熱手段に第1電力値で所定時間通電制御した後、前記通電割合決定手段および前記制御周期決定手段が決定した通電割合と制御周期で前記下面加熱手段の温度を所定温度域で安定させる前に、前記下面加熱手段への通電を停止する期間を設けた加熱調理器とすることにより、負荷量検出と調理室内温度上昇の目的で、加熱調理初期に大電力を投入したことにより上昇した下面加熱手段の温度を、所定温度域に移行させる際、下面加熱手段への通電を停止することで所定温度域への移行を速くすることができ、煙や炎の発生の可能性をより小さくすることができる。
【0022】
第6の発明は、電磁調理器に搭載されている加熱調理器とすることにより、加熱調理器を電磁調理器に搭載することで、鍋などの容器を電磁誘導により加熱する調理手段に、載置台として焼き網を使った調理手段を加えることができ、家庭内での調理の幅を広くすることができる。
【0023】
第7の発明は、加熱調理器の機能の少なくとも一部をコンピュータにより実行するためのプログラムである。そして、プログラムであるので、電気・情報機器、コンピュータ、サーバ等のハードリソースを協働させて本発明の加熱調理器の少なくとも一部を容易に実現することができる。また記録媒体に記録したり通信回線を用いてプログラムを配信したりすることでプログラムの配布・更新やそのインストール作業が簡単にできる。
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0025】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における加熱調理器のブロック図を示すものである。
【0026】
図1において、101は調理室、102は被加熱物、103は載置台、104は上面加熱手段、105は下面加熱手段、106は受け皿、107は温度検出手段、108は負荷量検出手段、109は制御手段、110は第1のスイッチ手段、111は第2のスイッチ手段、112は通電割合決定手段、113は制御周期決定手段である。
【0027】
なお、上面加熱手段104、下面加熱手段105にはシーズヒータ、温度検出手段107にはサーミスタ、負荷量検出手段108、制御手段109、通電割合決定手段112、制御周期決定手段にはマイクロコンピュータ、第1のスイッチ手段110、第二のスイッチ手段111にはリレーを用いることでこの構成を容易に実現できる。
【0028】
以上のように構成された加熱調理器について、以下その動作、作用を説明する。
【0029】
被加熱物102は、魚焼きという対象だけでも、魚の種類や調理対象の種類(生姿焼きと干物の違いなど)によって厚みが異なる。従って載置台に置いた被加熱物102と上面加熱手段104の間には、ある程度の距離が必要となる。一方、下面加熱手段105は、被加熱物102との距離は固定可能である。この状態で、被加熱物102の上下両面の加熱状態を該同一にする場合は、上面加熱手段104を一定電力とし、下面加熱手段105の電力を可変調整する方が都合がよい。なお、被加熱物102の温度変化性が強く、一定電力による加熱で焼け過ぎるような場合は、上面加熱手段を温調してもよいことは言うまでもない。
【0030】
被加熱物102が魚の生姿焼きや鶏肉などの油を多く含む対象である場合、調理を実行する過程で被加熱物102から油が流出し、下面加熱手段105に滴下する。下面加熱手段105は、被加熱物102に焼き色をつけるためには高温を保たなければならないが、一方で高温にすると油の滴下によりすぐに発煙や小さな発火を起こしてしまう。しかしながら、発煙がほぼ発生しない温度は約500℃となる。一方で、被加熱物102に焼き色を適切につけたり、高速に調理するために必要な温度は約450℃以上である。したがって、サンマ4匹を同時に焼ける広さを持つ調理室101を持つ加熱調理器では、下面加熱手段105を450℃以上500℃以下の温度域で安定させるように制御すれば、煙や炎の発生がなく、調理時間も短い加熱調理器を実現することができる。
【0031】
ここで、下面加熱手段105の温度を調節するには、直接下面加熱手段105の温度を取得して制御するのが一番正確であるが、500℃近い温度を取得する温度検出手段は非常に高価であり、加熱調理器に適用するのは困難である。また、調理室101内の温度を取得するための温度検出手段107は、特に上面加熱手段104を連続通電制御した場合には、調理室内の温度検知手段107で取得した温度では下面加熱手段105との直接的な相関が低いため、温度制御用の検出手段にすることは困難である。温度検出により下面加熱手段105の温度制御を行うことは困難ではあるが、調理室101は閉じた空間であるため、下面加熱手段105に投入される電力量としての電気エネルギーと、下面加熱手段105の表面から調理室101内を構成する構成要素に放散される熱エネルギーが平衡状態に達して安定する時の下面加熱手段105の表面温度は、被加熱物102の負荷量に応じて定められ、被加熱物102の負荷量が同等である場合には、下面加熱手段105の表面温度はほぼ同じ温度になる。
【0032】
また、投入する電気エネルギーは、下面加熱手段105の通電有無の割合を制御するデューティ制御を適切な周期で行えば、下面加熱手段105の入り切りを行うだけで容易に電力制御を行うことができる(例えば下面加熱手段105が定格電圧で1000Wのヒータであれば、制御周期10秒のうち30%を通電有とすれば1000*30/100=300Wを得ることができる)。さらに、デューティ制御では、位相制御で電力を制御した場合のような、高周波ノイズが発生し周りの機器に悪影響を及ぼすことはなく、電磁調理器の一機能として加熱調理器を組み込んだりする場合に機器としての性能に悪影響を与えることはない。
【0033】
ここで、例えば、被加熱物の負荷量の代表値(例:サンマ1匹、2匹、3匹、4匹)で温度調節をした時に、下面加熱手段105の表面温度を450℃〜500℃の温度域にするために必要な下面加熱手段105の通電有無の割合の平均データを制御手段109内にデータテーブルとして保持し、制御手段109で負荷量検出手段108の検出した負荷量に応じて比例演算することで、負荷量に応じた必要電力量を通電有無の割合で制御することができる。上面加熱手段104を800W、下面加熱手段105を1000Wで加熱調理する場合、負荷としてサンマ4匹を被加熱物102とする場合、下面加熱手段105の適切な通電割合は50%になる。
【0034】
この時の負荷量検出手段の負荷量検出は、調理室101内の温度検出手段107の検出値を次のような原理に基づき、データ処理することで実現できる。加熱調理初期に上面加熱手段104、下面加熱手段105が投入した電力量としての電気エネルギーは、調理室内の構成要素および被加熱物である負荷に吸収される。調理室内は被加熱物102を除けば常に構成が一定であり、上面加熱手段104と下面加熱手段105から投入した電力量としての電気エネルギーも一定であるため、熱エネルギーに変換されて調理室101内を暖めるために使われるエネルギーは、変化する被加熱物102としての負荷に吸収される分だけ減少する。したがって、負荷量が多ければ調理室101内の温度検出手段107の単位時間あたりの温度変化量が少なくなり、負荷量が少なければ変化量が多くなる。この変化量を検出することで負荷量検出を行うことができる。例えば、調理室101の温度が80℃に到達した時点から50度温度が上がるまでの所要時間を観測し、予めデータとしてマイコンに保存された負荷量テーブルと比較することで負荷量検出を実行することができる。
【0035】
また、加熱調理初期には、加熱調理器の構成要素の全てが、加熱調理器の置かれている環境温度になっているため、加熱調理を高速化するためには、調理に直接的には寄与しない構成要素である、調理室101、載置台103、受け皿106の熱容量分のエネルギーを早期に投入することが必要である。このために、加熱調理初期に上面加熱手段103、下面加熱手段104から大電力を投入することで、調理時間を短くすることが可能となる。
【0036】
図2に所定温度域の上限を目標とし、通電有無の割合を制御するデューティ制御で下面加熱手段104に電力を投入する際の制御周期の違いによる制御結果の違いを示す。図を見れば明らかなように周期が短い方が下面加熱手段104の平均温度は高くとることができる。ここで、下面加熱手段104の表面温度は、高ければ高いほど加熱調理への寄与が大きくなるが、一方で周期を短くすると第2のスイッチ手段111として使用するリレーのスイッチ開閉回数が多くなり、製品としての寿命に影響してしまう。例えば毎日1200秒加熱調理を制御周期を20秒で行う場合、1200[秒]/30[秒/回]×365[日]×10[年]=14万6000回となり15万回のスイッチ耐久性能でよいが、周期を1/4にすると60万回のスイッチ耐久性能が必要となる。
【0037】
ここで、所定温度域での制御を行う目的は、被加熱物102から調理序盤の油が頻出する油頻出期に滴下した油が下面加熱手段105に触れても発煙しないようにすることと、被加熱物102が生から焼けた状態に変化する調理序盤に調理性能を維持することであり、このためには、特に調理序盤にみられる被加熱物102からの油頻出期に、所定温度域上限を守った上で平均温度を高く取ることが大切である。また、被調理物102の状態が、生から焼けた状態に移行し終えた後の加熱調理中盤から終盤の加熱調理期においては、下面加熱手段105の温度管理を序盤ほど厳密に管理する必要がない。
【0038】
したがって、通電割合決定手段112で決定された通電割合を用いて、制御周期決定手段113で調理序盤油頻出期の第1の制御周期を、調理加熱期の第2の制御周期よりも短くとり、制御周期決定手段113が決定した継続時間(例えば5分)だけ第1の制御周期を継続した後、第2の制御周期で加熱調理を行うことで、図3に示すような調理序盤油頻出期の温度制御幅を小さくすることができ、更に必要な期間だけ第2のスイッチ手段111のスイッチ回数を増やすのでスイッチ寿命も長くとることができる。
【0039】
以上で説明してきた原理に基づいて、煙や炎の発生を抑えつつ、調理時間をより短くし、スイッチ手段の寿命も長く保つことができるように動作する加熱調理器の動作シーケンスおよび上面加熱手段104、下面加熱手段105の温度変化の様子を図3、4を用いて説明する。
【0040】
使用者の指示で調理が開始されると、第1のスイッチ手段110を入にし上面加熱手段104を最大電力とし、下面加熱手段105を第1電力に設定して第2のスイッチ手段111を入にし通電を開始する(S101)。調理室101の温度を温度検出手段107で検出し(S102)、温度検出手段107の検出値をデータ処理することで負荷量検出処理を行う(S103)。負荷量検出は、前述のように例えば調理室101の温度が80℃に到達した時点から50度温度が上がるまでの所要時間を観測し、予めデータとしてマイコンに保存された負荷量テーブルと比較することで行う。負荷量検出条件が満たされ負荷量検知が完了するまで負荷量検出処理を実施し、負荷量検出が完了した後(S104)、加熱調理初期に必要な加熱調理器の構成要素の昇温が充分に行えたことを所定時間の経過(例えば3分)で確認する(S105)。この動作で加熱調理初期が終了となり、負荷量検出と調理室内温度上昇の目的で加熱調理初期に大電力を投入したことにより上昇した下面加熱手段の温度を所定温度域に移行させ、更に温度を所定域温度に保つべき調理序盤油頻出期へと移る(図3)。
【0041】
前述の通り、負荷量検出手段108により検出した負荷量に基づき、通電割合決定手段112が通電割合を決定し、制御周期決定手段113が第1の制御周期とその継続時間と第2の制御周期を決定する。
【0042】
通電割合決定手段112が第2電力としての下面加熱手段105の通電割合(例えば、負荷量がサンマ4匹相当の時通電割合50%)を決定し、制御周期決定手段113が第1の制御周期(例えば、5秒周期)を決定し(S106)、制御手段109が決定された通電割合と周期で通電を行う(S107)。
【0043】
第2電力は第1電力より低いため、加熱調理を行いながらも調理室101内温度は低下してゆき、第2電力で平衡状態に達する温度で安定し、第1の制御周期継続時間終了まで第1の制御周期を継続し(S108)、調理序盤油頻出期から調理加熱期へ移行し(図3)、制御周期決定手段113が下面加熱手段105の制御周期を第2の制御周期に変更する(S109)。
【0044】
その後、所定時間(例えば15分)の通電を実施し加熱調理を終了する(S110)。
【0045】
以上のように、本実施の形態においては、加熱調理初期に上面加熱手段104および下面加熱手段105に大電力を投入し調理室101内温度を高速昇温し、その後、通電割合決定手段112および制御周期決定手段113が決定した通電割合と複数の制御周期を用いて下面加熱手段105の通電制御を行い下面加熱手段105の温度を所定温度域で安定させる間に複数の適切な制御周期に変更することで、煙や炎の発生を抑えた上で、調理性能を維持するために必要な下面加熱手段の温度を、煙や炎の発生を抑えられる温度にできるだけ近い所まで上げることができると共に、高周波ノイズが発生し周りの機器に悪影響を及ぼすことなく、また、煙や炎が発生が殆どなく、スイッチ手段の寿命も長く保ち、調理時間も短くすることが可能な加熱調理器を提供することができる。
【0046】
また、温度検出手段107の検出値を用いて負荷量を検出し、負荷量を基に下面加熱手段105の通電有無の割合を演算することで、下面加熱手段105の温度を負荷量に依らず所定温度域を維持することが可能な加熱調理器を提供することができる。
【0047】
また、第1電力値を最大電力値として加熱調理初期に最大電力を投入することで、温度検出手段の検出変化を大きくし、負荷量出手段の検出値をより正確にすること可能な加熱調理器を提供できる。
【0048】
また、負荷量検出と調理室内温度上昇の目的で、加熱調理初期に大電力を投入したことにより上昇した下面加熱手段105の温度を、所定温度域に移行させる際、温調時の電力を投入することで所定温度域への移行を促進しつつ、加熱調理用の電力も投入することができるため、煙や炎の発生を抑えつつ、調理時間をより短くすることが可能な加熱調理器を提供できる。
【0049】
また、下面加熱手段105の温度を所定温度域に安定させる制御を行う際に、温度振幅に関係する制御周期として、調理序盤油頻出期に用いる第1の制御周期を第2の加熱周期より小さくすることで、油が滴下し易い調理序盤油頻出期の温度振幅を小さくすることができ、煙や炎の発生を抑えた上で調理性能を維持するために必要な下面加熱手段105の温度を、煙や炎の発生を抑えられる温度にできるだけ近い所まで上げることができる。
【0050】
次に、加熱調理初期に大電力を投入したことにより上昇した下面加熱手段105の温度を、所定温度域に移行させる際、下面加熱手段105への通電を停止することで所定温度域への移行を速くすることができ、煙や炎の発生の可能性をより小さくすることができるように動作する加熱調理器の動作シーケンスおよび上面加熱手段104、下面加熱手段105の温度変化の様子を図4、5を用いて説明する。
【0051】
使用者の指示で調理が開始されると、第1のスイッチ手段110を入にし上面加熱手段104を最大電力とし、下面加熱手段105を第1電力に設定して第2のスイッチ手段111を入にし通電を開始する(S101)。調理室101の温度を温度検出手段107で検出し(S102)、温度検出手段107の検出値をデータ処理することで負荷量検出処理を行う(S103)。負荷量検出は、前述のように例えば調理室101の温度が80℃に到達した時点から50度温度が上がるまでの所要時間を観測し、予めデータとしてマイコンに保存された負荷量テーブルと比較することで行う。負荷量検出条件が満たされ負荷量検知が完了するまで負荷量検出処理を実施し、負荷量検出が完了した後(S104)、加熱調理初期に必要な加熱調理器の構成要素の昇温が充分に行えたことを所定時間の経過(例えば3分)で確認する(S105)。この動作で加熱調理初期が終了となり、負荷量検出と調理室内温度上昇の目的で加熱調理初期に大電力を投入したことにより上昇した下面加熱手段の温度を所定温度域に移行させる動作を行う。
【0052】
ここで、調理室101は閉じた空間であるので、温調移行期において、制御手段109が第2のスイッチ手段111を切に設定することで下面加熱手段105電力を0に設定すれば(S601)、調理室101が所定温度域に到達するまでの時間は、調理室101の熱容量から定まり、所定時間として設定することができる。従って、電力を0として所定時間経過を待つ(S602)ことで、所定温度域への温調移行期を短くすることができる。
【0053】
更に、所定時間の経過により、温度降下期から調理序盤油頻出期へと移る(図5)。
【0054】
前述の通り、負荷量検出手段108により検出した負荷量に基づき、通電割合決定手段112が通電割合を決定し、制御周期決定手段113が第1の制御周期とその継続時間と第2の制御周期を決定する。
【0055】
通電割合決定手段112が第2電力としての下面加熱手段105の通電割合(例えば、負荷量がサンマ4匹相当の時通電割合50%)を決定し、制御周期決定手段113が第1の制御周期(例えば、5秒周期)を決定し(S106)、制御手段109が決定された通電割合と周期で通電を行う(S107)。
【0056】
第2電力は第1電力より低いため、加熱調理を行いながらも調理室101内温度は低下してゆき、第2電力で平衡状態に達する温度で安定し、第1の制御周期継続時間終了まで第1の制御周期を継続し(S108)、調理序盤油頻出期から調理加熱期へ移行し(図3)、制御周期決定手段113が下面加熱手段105の制御周期を第2の制御周期に変更する(S109)。
【0057】
その後、所定時間(例えば15分)の通電を実施し加熱調理を終了する(S110)。
【0058】
以上のように、本実施の形態においては、負荷量検出と調理室内温度上昇の目的で、加熱調理初期に大電力を投入したことにより上昇した下面加熱手段105の温度を、所定温度域に移行させる際、下面加熱手段105への通電を停止することで所定温度域への移行を最も速くすることができ、煙や炎の発生の可能性をより小さくすることができる。
【0059】
また、本実施の形態1で説明した手段は、CPU(またはマイコン)、RAM、ROM、記憶・記録装置、I/Oなどを備えた電気・情報機器、コンピュータ、サーバ等のハードリソースを協働させるプログラムの形態で実施してもよい。プログラムであれば、磁気メディアや光メディアなどの記録媒体に記録したり、インターネットなどの通信回線を用いて配信することでプログラムの配布・更新やそのインストール作業が簡単にできる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上のように、本発明にかかる加熱調理器およびそのプログラムは、業務用の加熱調理器等の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の形態1における加熱調理器の構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態1における制御周期と下面加熱手段の温度変化を説明する図
【図3】本発明の実施の形態1における加熱手段の温度変化を示す図
【図4】本発明の実施の形態1における動作シーケンスを示す図
【図5】本発明の実施の形態1における加熱手段の温度変化を示す図
【図6】本発明の実施の形態1における動作シーケンスを示す図
【図7】従来例である加熱調理器の構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0062】
101 調理室
102 被加熱物
103 載置台
104 上面加熱手段
105 下面加熱手段
106 受け皿
107 温度検出手段
108 負荷量検出手段
109 制御手段
110 第1のスイッチ手段
111 第2のスイッチ手段
112 通電割合決定手段
113 制御周期決定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置台の上に載せた被加熱物を収容する調理室と、前記被加熱物の上面を加熱する上面加熱手段と、前記上面加熱手段の通電有無を切り換える第1のスイッチ手段と、前記被加熱物の下面を加熱する下面加熱手段と、前記下面加熱手段の通電有無を切り換える第2のスイッチ手段と、前記下面加熱手段の通電有無の割合を決定する通電割合決定手段と、前記通電割合決定手段で決定された割合の制御周期として複数の制御周期を決定する制御周期決定手段と、前記第1のスイッチ手段と前記第2のスイッチ手段を動作させることで前記上面加熱手段と前記下面加熱手段を制御する制御手段とを備え、
前記通電割合決定手段は前記下面加熱手段の制御目標温度を設定し、前記制御周期決定手段は前記制御目標温度に制御する際の温度振幅を設定し、
前記制御手段は、前記上面加熱手段を通電制御し、かつ、前記下面加熱手段に第1電力値で所定時間通電制御した後、前記通電割合決定手段および前記制御周期決定手段が決定した通電割合と制御周期を用いて前記下面加熱手段の通電制御を行い前記下面加熱手段の温度を所定温度域で安定させる間に制御周期を切り換えることを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
加熱調理器は、前記調理室内の温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段で検出した検出値により前記被加熱物の負荷量を検出する負荷量検出手段を備え、
前記負荷量検出手段で検出した負荷量に基づいて前記通電割合決定手段が通電割合を決定し、前記制御周期決定手段が第1の制御周期と第1の制御周期の継続時間と第2の制御周期を決定し、決定された通電割合および制御周期を用いて前記下面加熱手段の温度を所定温度域で安定させることを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記第1電力値は最大電力値であることを特徴とする請求項1または2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記制御周期決定手段が決定する前記第1の制御周期は前記第2の制御周期より短いことを特徴とする請求項2または3に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記制御手段は、前記下面加熱手段に第1電力値で所定時間通電制御した後、前記通電割合決定手段および前記制御周期決定手段が決定した通電割合と制御周期で前記下面加熱手段の温度を所定温度域で安定させる前に、前記下面加熱手段への通電を停止する期間を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項6】
電磁調理器に搭載されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載加熱調理器の少なくとも一部をコンピュータにより実行するためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−32277(P2008−32277A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−204356(P2006−204356)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】