説明

動き検出方法及び装置,プログラム,車両用監視システム

【課題】 演算量を削減でき、しかも複数の検出対象が存在しても個々の動きを検出可能な動き検出方法及び装置、並びにこれを利用した車両用監視システムを提供する。
【解決手段】 撮像装置3からの入力画像と予め設定された背景画像とに基づいて、背景画像に対して変化のある対象領域と変化のない背景領域とからなる二値化画像をフレーム毎に生成し(S120)、この二値化画像をフレーム間で比較することで、対象領域のまま変化のない重なり領域、背景領域から対象領域に変化した増加領域、対象領域から背景領域に変化した減少領域を抽出する(S130)。そして、互いに隣接する増加領域,減少領域,重なり領域を一つの統合領域として抽出し、その抽出した統合領域、及び増加領域,減少領域のそれぞれについて領域パラメータ(領域面積,X座標和,Y座標和)を求め(S140)、この領域パラメータに基づいて、統合領域毎にその統合領域に示された物体(対象領域)の動きを求める(S150)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像に示された物体の動きを検出する動き検出方法及び装置、並びにこれを利用した車両用監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、画像に示された物体の動きを検出する方法として、画像を水平方向及び垂直方向に複数分割し、分割された画像ブロックのそれぞれについて、各画像ブロックがどの方向に移動したかを示す動きベクトルを算出するものが知られている。
【0003】
具体的には、ある時間の画像から切り出した画像ブロック(以下「対象ブロック」と称する。)と、異なる時間の画像から切り出した画像ブロック(以下「比較ブロック」と称する。)との間でパターンマッチング等の相関演算を行い、比較ブロックの位置を、対象ブロックに対応する位置を中心として設定された探索範囲内で上下左右に1画素分移動しながら同様の処理を繰り返す。これにより得られた相関値の中で、最も相関値が大きい比較ブロックを移動先又は移動元であるとして特定する。
【0004】
なお、この方法では、画像から切り出される対象ブロックの数をM個、各対象ブロックの画素数をL×L画素、対象ブロックの周囲にN画素ずつ付加した範囲を探索範囲とすると、L2 ×M×(2N+1)2 回の相関演算が必要となり、膨大な演算量が必要となる。
【0005】
例えば、画像が640×480画素、対象ブロックが16×16画素、探索範囲を±32画素とすると、L=16、M=1200、N=32であり、相関演算の演算量は1フレーム当たり約1.3G回となる。
【0006】
これに対して、相関演算の演算量の低減を図るために、画素を間引くことで分解能の異なる複数種類の画像を生成し、まず、最も低分解能の画像で探索を行い、その結果を用いて、より高分解能の画像で探索を行うことを繰り返す方法が知られている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0007】
また、一方では、予め用意された背景画像と入力画像との差分画像である背景差分画像を入力画像のフレーム毎に求め、フレーム間で背景差分画像を比較することで、差異のある領域(以下「差異領域」と称する。)を抽出し、抽出した差異領域の重心の移動量及び移動方向を求めることにより、パターンマッチングを用いることなく、差分画像に示された物体の移動量及び移動方向を検出する方法が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【0008】
なお、差異領域の重心の算出は、具体的には、画素の位置を表す二次元座標のX座標軸及びY座標軸のそれぞれについて、差異領域に含まれる画素数の分布を求め、この分布から差異領域に含まれる画素の総画素数を二分するX座標及びY座標、即ち、差異領域の面積中心を、差異領域の重心として求めている。
【特許文献1】特開平6−60187号公報
【特許文献2】特開2003−99782号公報
【特許文献3】特許第1895079号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1,2に記載の方法では、基本的にパターンマッチングを用いているため、階層的な方法を用いたとしても、演算量の大幅な削減を期待することができないという問題があった。しかも、探索範囲を大きくすると、指数関数的に演算量が増大するため、演算能力によって探索範囲が制限され、その結果、動き幅の大きな物体、即ち動きの速い物体を検出することができないという問題があった。
【0010】
また、特許文献3に記載の方法では、画像全体から単一の面積中心を求めているため、検出対象が複数存在する場合には、検出対象毎の動きを検出することができないという問題があった。
【0011】
本発明は、上記問題点を解決するために、演算量を削減でき、しかも複数の検出対象が存在しても個々の動きを検出可能な動き検出方法及び装置、並びにこれを利用した車両用監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するためになされた第一発明の動き検出方法では、まず、フレーム単位で連続的に入力される入力画像と予め設定された背景画像との間の差分画像である背景差分画像を二値化することにより、前記背景画像に対して変化のある対象領域と変化のない背景領域とからなる二値化画像を前記フレーム毎に生成する。
【0013】
そして、この二値化画像をフレーム間で比較することにより、対象領域のまま変化のない重なり領域、背景領域から対象領域に変化した増加領域、対象領域から背景領域に変化した減少領域を抽出する。
【0014】
更に、重なり領域とこの重なり領域に隣接する増加領域,減少領域とを統合してなる統合領域、及び増加領域,減少領域のそれぞれについて、その領域に属する画素数と、画素位置を表すための二次元座標におけるX座標及びY座標の座標値を、その領域に属する全ての画素について各座標毎にそれぞれ加算してなるX座標和,Y座標和とからなる領域パラメータを求める。
【0015】
そして、この領域パラメータに基づいて、統合領域毎にその統合領域に示された移動物体の動きを検出する。
即ち、図7に示すように、統合領域内における、増加領域及び減少領域の位置や大きさ(面積)から、統合領域に示された移動物体の移動方向や移動量を求めることができる。
【0016】
具体的には、ある領域のX座標和を、その領域に属する画素数で割ることで、その領域の重心のX座標が求められ、同様にある領域のY座標和を、その領域に属する画素数で割ることで、その領域の重心のY座標が求められる。また、統合領域から増加領域を除いた領域が、移動前の対象領域であり、統合領域から減少領域を除いた領域が、移動後の対象領域に相当する。
【0017】
つまり、統合領域,増加領域,減少領域の領域パラメータに基づいて、統合領域に示された移動前の移動物体(前フレーム対象領域)の重心位置と移動後の移動物体(現フレーム対象領域)の重心位置とを求めることができ、その重心位置の変化から、移動物体の動き(移動量や移動方向)を検出することができるのである。
【0018】
このように、本発明の動き検出方法によれば、統合領域毎に、その統合領域に示された移動物体の動きが検出されるため、入力画像に検出対象が複数存在していても、各検出対象の動きを個々に検出することができる。しかも、本発明によれば、パターンマッチングを行うことなく、統合領域,増加領域,減少領域が検出されるため、動き検出のための演算量を大幅に削減することができる。
【0019】
即ち、本発明では、統合領域,増加領域,減少領域を抽出する際に、二値化画像(背景差分画像)の生成のための差分演算と、領域抽出のための二値化画像の比較演算とを行えばよい。このため、例えば、入力画像が640×480画素であるとすると、その演算量は、1フレーム当たり約0.6M(=640×480×2)回となり、上述した従来装置(1フレーム当たり約1.3G回)と比較して約1/2000程度となる。
【0020】
次に第二発明の動き検出装置では、二値画像生成手段が、フレーム単位で連続的に入力される入力画像と予め設定された背景画像との間の差分画像である背景差分画像を二値化することにより、前記背景画像に対して変化のある対象領域と変化のない背景領域とからなる二値化画像を前記フレーム毎に生成する。
【0021】
すると、領域抽出手段が、二値化画像生成手段にて生成された二値化画像をフレーム間で比較することにより、対象領域のまま変化のない重なり領域、背景領域から対象領域に変化した増加領域、対象領域から背景領域に変化した減少領域を抽出する。
【0022】
更に、領域パラメータ算出手段が、重なり領域とこの重なり領域に隣接する増加領域,減少領域とを統合してなる統合領域、及び増加領域,減少領域のそれぞれについて、その領域に属する画素数と、画素位置を表すための二次元座標におけるX座標及びY座標の座標値を、その領域に属する全ての画素について各座標毎にそれぞれ加算してなるX座標和,Y座標和とからなる領域パラメータを求める。
【0023】
そして、動き検出手段が、領域パラメータ算出手段が求めた領域パラメータに基づいて、統合領域毎にその統合領域に示された移動物体の動きを検出する。
つまり、本発明の動き検出装置は、第一発明の動き検出方法を実現する装置であり、従って、第一発明の場合と同様の効果を得ることができる。
【0024】
なお、動き検出手段は、具体的には、領域パラメータに基づいて、統合領域毎に、その統合領域に示された移動物体の移動前及び移動後の重心位置を求めることで、その移動物体の動きを検出するように構成すればよい。
【0025】
また、第二発明の動き検出装置を構成する各手段は、電子回路(ハードウェア)により構成してもよいが、コンピュータをこれら各手段として機能させるプログラムとして構成してもよい。この場合、全ての手段をプログラムとして構成してもよいし、一部の手段のみをプログラムとして構成してもよい。
【0026】
次に第三発明の車両用監視システムでは、上述した動き検出装置を備え、車室内に設置された撮像手段が、車室内及び窓を通して車両周辺を撮像した画像を入力画像として検出装置に供給し、判定手段が、動き検出装置での検出結果に基づいて、侵入者や不審者の存在を判定し、更に、報知手段が、判定手段での判定結果の報知を行う。
【0027】
このように、本発明の車両用監視システムによれば、第二発明の動き検出装置での検出結果を利用しているため、少ない演算量にて(即ち、安価な演算処理装置を用いて)、侵入者や不審者を含む移動物体の存在を検出することができ、その検出結果に基づいて、侵入者や不審者の存在を判定することができる。
【0028】
また、動き検出装置では、移動物体毎に動きが検出されるため、判定手段では、移動物体毎に移動状態を追跡することにより、車両の近傍に立ち止まったり、車両周辺を周回したりする不審者を簡単に判定することができる。
【0029】
なお、撮像手段は、例えば、車室内の天井部分に設置することが望ましい。この場合、車室内の全体及び窓を介して見通すことのできる車両の周辺を、死角を生じさせることなく全て撮像することができる。
【0030】
また、撮像手段としては、魚眼カメラ又は全方位カメラを用いることが望ましい。この場合、1台のカメラにて広範囲の領域をカバーすることができ、撮像手段の構成を簡略化することができる。
【0031】
また、撮像手段として、赤外線カメラを用たり、撮像された被測定物までの距離に応じた画素値を有する距離画像を入力画像として供給するものを用いたりしてもよい。これらの場合、低輝度の物体であっても確実に画像として捉えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は、本発明が適用された車両用監視システムの構成を示すブロック図である。
図1に示すように車両用監視システム1は、魚眼カメラからなる撮像装置3と、撮像装置3から供給される画像信号に基づいて、移動物体の動きを検出する動き検出装置5と、動き検出装置5での検出結果に従って、侵入者や不審者の存在を判定する判定装置7と、判定装置7での判定結果を予め設定された通報先に送信する通信装置9とを備えている。
【0033】
このうち、撮像装置3は、図2(a)に示すように、車室内の天井中央に設置され、図2(b)に示すように、車室内及び窓を通して車両周辺を一台で撮像できるように設定されている。なお、以下では、撮像された画像において、車長方向をX軸方向、車幅方向をY軸方向、これら両方向に対する直交方向をZ軸方向とする。
【0034】
また、動き検出装置5は、撮像装置3からの画像信号をアナログ−デジタル変換するA/D変換器11と、A/D変換器11の出力を1フレーム(1画面)分記憶するフレームメモリ13と、周知のマイクロコンピュータからなり、フレームメモリ13の記憶内容に基づいて、撮像された移動物体の動きを検出する動き検出処理等を実行する演算装置15と、演算装置15が実行する動き検出処理のプログラムや、動き検出処理で使用する背景画像や、処理の実行過程で生成される各種画像を記憶する記録装置17とを備えている。
【0035】
なお、記録装置17に記憶される背景画像は、撮像範囲内に移動物体が存在しない状態で撮像された画像であり、車両の出荷時に撮像装置3によって撮像された画像を固定的に用いるようにしてもよいし、車両が施錠される毎に、予め設定されたタイミングで撮像装置3によって撮像された画像を用いるようにしてもよい。
【0036】
ここで演算装置15が実行する動き検出処理を、図3〜6に示すフローチャートに沿って説明する。なお、本処理は、撮像装置3が撮像に要する時間以上に設定された一定時間毎に繰り返し実行される。
【0037】
本処理が起動すると、まず、撮像装置3からフレームメモリ13に1フレーム分の画像データ(以下「入力画像」と称する。)を取り込み(S110)、このフレームメモリ13に取り込んだ入力画像と記録装置17に記憶された背景画像との差分画像である背景差分画像を二値化してなる二値化画像を生成する背景差分/二値化処理を実行する(S120)。なお、入力画像は、X軸方向にm(本実施形態ではm=640)画素、Y軸方向にn(本実施形態ではn=480)画素を有するものとする。
【0038】
この背景差分/二値化処理では、図4に示すように、まず、画像を構成する各画素のY座標を指定するためのパラメータjを0に初期化する(S210)と共に、画像を構成する各画素のX座標を指定するためのパラメータiを0に初期化する(S220)。
【0039】
そして、背景画像においてパラメータi,jで指定される画素の画素値Bijと、入力画像においてパラメータi,jで指定される画素の画素値Cijとの差分(即ち、背景差分画像における画素の画素値)の絶対値が、予め設定されたしきい値Thrより大きい(|Bij−Cij|>Thr)か否かを判断する(S230)。なお、しきい値Thrは、固定値を用いてもよいし、画素値の差分(即ち背景差分画像の画素値)の絶対値|Bij−Cij|を履歴データとして保存し、この履歴データの平均値に基づいて設定(例えば、平均値の1/2等)してもよい。
【0040】
そして、二値化画像においてパラメータi,jで指定される画素の画素値をDCijとして、S230にて背景差分画像の画素値の絶対値|Bij−Cij|がしきい値Thrより大きいと判定された場合には、二値化画像の画素値DCijを1に設定し(S240)、一方、背景差分画像の画素値の絶対値|Bij−Cij|がしきい値Thr以下であると判定された場合には、二値化画像の画素値DCijを0に設定する(S250)。
【0041】
このようにして二値化画像の画素値DCijが設定されると、パラメータiをインクリメント(i←i+1)して(S260)、パラメータiが画像のX軸方向の画素数mと等しいか否かを判断する(S270)。この時、パラメータiが画素数mに等しくなければ、S230に戻って、S230〜S260の処理を繰り返し、一方、パラメータiが画素数mに等しければ、パラメータjをインクリメント(j←j+1)して(S280)、パラメータjが画像のY軸方向の画素数nと等しいか否かを判断する(S290)。この時、パラメータjが画素数nに等しくなければ、S220に戻って、S220〜S280の処理を繰り返し、一方、パラメータjが画素数nに等しければ、全ての画素について二値化処理を終了したものとして、本処理を終了する。
【0042】
つまり、背景差分/二値化処理により、入力画像と背景画像とを比較して、背景画像から変化のあった部分(以下「対象領域」と称する。)の画素値DCijが1、変化の無かった部分(以下「背景領域」と称する。)の画素値DCijが0で表された2値化画像が生成されることになる。
【0043】
図3に戻り、このようにして2値化画像が生成されると、次に、S120にて生成された現フレームの2値化画像と、記録装置17に記憶されている前フレームの2値化画像とを比較して、フレーム間比較画像(画素値Rij)を生成するフレーム比較処理を実行する(S130)。
【0044】
このフレーム比較処理では、図5に示すように、まず、画像を構成する各画素のY座標を指定するためのパラメータjを0に初期化する(S310)と共に、画像を構成する各画素のX座標を指定するためのパラメータiを0に初期化する(S320)。
【0045】
続けて、現フレームの2値化画像の画素値(以下「現画素値」と称する。)をDCij、前フレームの2値化画像の画素値(以下「前画素値」と称する。)をDPijとして、パラメータi,jで指定される現画素値DCijが1に設定されているか否か(S330)、及び、パラメータi,jで指定される前画素値DPijが1に設定されているか否か(S340,S370)を判断する。
【0046】
そして、現画素値DCij=1(S330:YES)且つ前画素値DPij=1(S340:YES)である場合、即ち、対象領域のまま変化がない場合には、フレーム間比較画像の画素値Rijを、重なり領域であることを示す0に設定し(S350)、現画素値DCij=1(S330:YES)且つ前画素値DPij=0(S340:NO)である場合、即ち、背景領域から対象領域に変化した場合には、フレーム間比較画像の画素値Rijを、増加領域であることを示す1に設定する(S360)。
【0047】
また、現画素値DCij=0(S330:NO)且つ前画素値DPij=1(S370:YES)である場合、即ち、対象領域から背景領域に変化した場合には、フレーム間比較画像の画素値Rijを、減少領域であることを示す−1に設定し(S380)、現画素値DCij=0(S330:NO)且つ前画素値DPij=0(S370:NO)である場合、即ち、背景領域のまま変化がない場合には、フレーム間比較画像の画素値Rijを、その他領域であることを表す99に設定する(S390)。
【0048】
このようにしてフレーム間比較画像の画素値Rijが設定されると、パラメータiをインクリメント(i←i+1)して(S400)、パラメータiが画像のX軸方向の画素数mと等しいか否かを判断する(S410)。この時、パラメータiが画素数mに等しくなければ、S330に戻って、S330〜S400の処理を繰り返し、一方、パラメータiが画素数mに等しければ、パラメータjをインクリメント(j←j+1)して(S420)、パラメータjが画像のY軸方向の画素数nと等しいか否かを判断する(S430)。この時、パラメータjが画素数nに等しくなければ、S320に戻って、S320〜S420の処理を繰り返し、一方、パラメータjが画素数nに等しければ、全ての画素につい比較処理を終了したものとして、本処理を終了する。
【0049】
つまり、フレーム比較処理により、[表1]に示すように、前フレームと比較して、背景領域から対象領域(DCij=1,DPij=0)に変化した増加領域(Rij=1)、対象領域から背景領域(DCij=0,DPij=1)に変化した減少領域(Rij=−1)、対象領域のまま(DCij=1,DPij=1)変化のない重なり領域(Rij=0)、背景領域のまま(DCij=0,DPij=0)変化のないその他領域(Rij=99)からなる4種類の領域に区分けされたフレーム間比較画像が生成されることになる。
【0050】
【表1】

図3に戻り、このようにしてフレーム間比較画像が生成されると、次に、このフレーム間比較画像に基づいて、同一の移動物体(対象領域)に基づく増加領域,減少領域,重なり領域をグループ化した統合領域を抽出すると共に、統合領域,増加領域,減少領域のそれぞれについて、その領域に属する画素の総数を表す領域面積、その領域に属する全ての画素のX座標を積算してなるX座標和、その領域に属する全ての画素のY座標を積算してなるY座標和からなる領域パラメータを求める領域分割処理を実行する(S140)。
【0051】
この領域分割処理では、図6に示すように、まず、画像を構成する各画素のY座標を指定するためのパラメータjを0に初期化する(S510)と共に、画像を構成する各画素のX座標を指定するためのパラメータiを0に初期化する(S520)。
【0052】
続けて、フレーム間比較画像においてパラメータi,jで指定される画素(以下「指定画素」と称する。)の画素値Rijが、その他領域であることを表す99に設定されている否かを判断し(S530)、指定画素の画素値Rijが99に設定されていれば、後述するS540〜S610の処理を行うことなく、S620に進む。
【0053】
一方、指定画素の画素値Rijが99以外の値に設定されていれば、その指定画素には隣接する統合領域が存在するか否かを判断し(S540)、隣接する統合領域が存在すれば、その統合領域に関する領域パラメータを読み込み(S550)、一方、隣接する統合領域が存在しなければ、新たな統合領域であるものとして、その統合領域に関する領域パラメータを生成,初期化する(S560)。
【0054】
そして、S550又はS560にて用意された領域パラメータのうち、統合領域に関する領域パラメータ(領域面積S、X座標和Xsum 、Y座標和Ysum )の更新を行う(S570)。具体的には、領域面積Sをインクリメント(S←S+1)し、X座標和Xsum に指定画素のX座標を表すパラメータiを加算(Xsum ←Xsum +i)し、Y座標和Ysum に指定画素のY座標を表すパラメータjを加算(Ysum ←Ysum +j)する。
【0055】
続けて、指定画素の画素値Rijが増加領域であることを表す1に設定されているか否か(S580)、及び指定画素の画素値Rijが減少領域であることを表す−1に設定されているか否か(S600)を判断する。
【0056】
そして、指定画素の画素値Rijが1に設定されていれば(S580:YES)、S550又はS560にて用意された領域パラメータのうち、増加領域に関する領域パラメータ(領域面積S_Inc、X座標和Xsum_Inc 、Y座標和Ysum_Inc )の更新を行って(S590)、S620に進む。具体的には、領域面積S_Incをインクリメント(S_Inc←S_Inc+1)し、X座標和Xsum_Inc に指定画素のX座標を表すパラメータiを加算(Xsum_Inc ←Xsum_Inc +i)し、Y座標和Ysum_Inc に指定画素のY座標を表すパラメータjを加算(Ysum_Inc ←Ysum_Inc +j)する。
【0057】
また、指定画素の画素値Rijが−1に設定されていれば(S580:NO,S600:YES)、S550又はS560にて用意された領域パラメータのうち、減少領域に関する領域パラメータ(領域面積S_Dec、X座標和Xsum_Dec 、Y座標和Ysum_Dec )の更新を行って(S590)、S620に進む。具体的には、領域面積S_Decをインクリメント(S_Dec←S_Dec+1)し、X座標和Xsum_Dec に指定画素のX座標を表すパラメータiを加算(Xsum_Dec ←Xsum_Dec +i)し、Y座標和Ysum_Dec に指定画素のY座標を表すパラメータjを加算(Ysum_Dec ←Ysum_Dec +j)する。
【0058】
一方、指定画素の画素値Rijが1や−1以外の値に設定されていれば(S580:NO,S600:NO)、増加領域及び減少領域に関する領域パラメータの更新を行うことなくS620に進む。
【0059】
このようにして領域パラメータの更新が行われると、パラメータiをインクリメント(i←i+1)して(S620)、パラメータiが画像のX軸方向の画素数mと等しいか否かを判断する(S630)。この時、パラメータiが画素数mに等しくなければ、S530に戻って、S530〜S620の処理を繰り返し、一方、パラメータiが画素数mに等しければ、パラメータjをインクリメント(j←j+1)して(S640)、パラメータjが画像のY軸方向の画素数nと等しいか否かを判断する(S650)。この時、パラメータjが画素数nに等しくなければ、S520に戻って、S520〜S640の処理を繰り返し、一方、パラメータjが画素数nに等しければ、全ての画素につい処理を終了したものとして、本処理を終了する。
【0060】
つまり、領域分割処理では、互いに隣接する増加領域,減少領域,重なり領域が一つの統合領域として抽出されると共に、[表2]に示すように、抽出された統合領域、及び増加領域,減少領域のそれぞれについて、領域パラメータが求められることになる。
【0061】
【表2】

図3に戻り、このようにして統合領域の抽出及び領域パラメータの算出が行われると、次に、この算出した領域パラメータに基づいて、統合領域に示された物体の動きを算出する動き算出処理を実行して(S150)、本処理を終了する。
【0062】
この動き算出処理では、S140にて抽出された統合領域毎、即ち入力画像に示された背景とは異なる物体毎に、以下に示す(1)〜(3)式を用いて、移動方向及び移動量を示す動きベクトルV=(Vx,Vy,Vz)を算出すると共に、(4),(5)式を用いて統合領域の重心位置G=(Gx,Gy)を算出する。
【0063】
【数1】

但し、統合領域に、増加領域又は減少領域が複数存在する場合(図7(c)(d)参照)には、同種の領域毎に領域パラメータを加算したものが、その領域(増加領域又は減少領域)の領域パラメータとなる。
【0064】
なお、ここでは統合領域の重心位置を求めているが、代わりに、現フレームにおける対象領域の重心位置を求めるように構成してもよい。この場合、(1)式の右辺の第1項を用いてGx、(2)式の右辺第1項を用いてGyを求めればよい。
【0065】
次に、判定装置7では、動き検出装置5での検出結果に従って、検出された物体(統合領域)毎に、その物体に関する動きベクトルV及び重心位置Gを用いて、物体の動きを追跡し、その追跡した動きの特徴や位置から不審者や侵入者の判定を行う。
【0066】
具体的には、車両の近くに一定時間以上停止した物体が存在する場合、又は車両を周回する動作をした物体が存在する場合に、これらの物体を不審者として判断する。また、物体が車両内に存在する場合に、その物体を侵入者として判断する。
【0067】
そして、通信装置9は、判定装置7での判定結果が不審者又は侵入者ありである場合に、その旨を、予め登録されている通報先(例えば、ユーザの携帯電話など)に通報する。
以上説明したように、本実施形態の車両用監視システム1においては、撮像装置3からの入力画像と予め設定された背景画像とに基づいて、背景画像に対して変化のある対象領域と変化のない背景領域とからなる二値化画像をフレーム毎に生成し(S120)、この二値化画像をフレーム間で比較することにより、対象領域のまま変化のない重なり領域、背景領域から対象領域に変化した増加領域、対象領域から背景領域に変化した減少領域を抽出している(S130)。
【0068】
そして、互いに隣接する増加領域,減少領域,重なり領域を一つの統合領域として抽出すると共に、抽出した統合領域、及び増加領域,減少領域のそれぞれについて領域パラメータ(領域面積,X座標和,Y座標和)を求め(S140)、この領域パラメータに基づいて、統合領域毎にその統合領域に示された物体(対象領域)の動きを求める(S150)ようにされている。
【0069】
従って、本実施形態の車両用監視システム1によれば、統合領域毎に、その統合領域に示された物体の動きが検出されるため、入力画像に検出対象が複数存在していても、各検出対象の動きを個々に検出することができる。
【0070】
しかも、本実施形態では、二値化画像やフレーム間比較画像の生成を、パターンマッチングを行うことなく、各画素毎の減算と比較演算のみで実現しており、また、統合領域,増加領域,減少領域を抽出を、各画素毎に隣接する統合領域が存在するか否かを判断することにより行っている。更に、領域パラメータの算出を、乗除算を用いることなく、インクリメント処理のみで実現している。このため、本実施形態の車両用監視システム1によれば、従来装置と比較して、動き検出のための演算量を大幅に削減することができ、ひいては、少ない演算量にて動き検出や不審者や侵入者の存在を判定できるため、安価な演算処理装置を用いて当該システム1を構成することができる。
【0071】
また、本実施形態の車両用監視システム1では、撮像装置3として魚眼カメラを用いると共に、これを車室内の天井中央に配置し、車室内及び窓を通して見える車両周辺の全てを単一のカメラにて撮像している。つまり、入力画像を得るための構成が極めて簡易であるため、スペースの限られた車両内に設置される車載機器として好適に用いることができる。
【0072】
なお、本実施形態において、撮像装置3が撮像手段、判定装置7が判定手段、通信装置9が報知手段、背景差分/二値化処理S120が二値化画像生成手段、フレーム比較処理S130が領域抽出手段、領域分割処理S140が領域パラメータ算出手段、動き算出処理S150が動き検出手段に相当する。
【0073】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施可能である。
例えば、上記実施形態では、撮像装置3として魚眼カメラを用いているが、代わりに全方位カメラを用いてもよい。また、撮像装置3として、赤外線カメラを用いたり、撮像された被測定物までの距離に応じた画素値を有する距離画像を入力画像として供給するものを用いてもよい。これらの場合、低輝度の物体であっても確実に画像として捉えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】実施形態の車両用監視システムの構成を示すブロック図である。
【図2】撮像装置の配置、及び撮像装置にて撮像された画像の例を示す説明図である。
【図3】動き検出処理の内容を示すフローチャートである。
【図4】背景差分/二値化処理の内容を示すフローチャートである。
【図5】フレーム比較処理の内容を示すフローチャートである。
【図6】領域分割処理の内容を示すフローチャートである。
【図7】統合領域に含まれる増加領域及び減少領域から、物体の移動方向及び移動量が求められることを概念的に示した説明図である。
【符号の説明】
【0075】
1…車両用監視システム、3…撮像装置、5…動き検出装置、7…判定装置、9…通信装置、11…A/D変換器、13…フレームメモリ、15…演算装置、17…記録装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム単位で連続的に入力される入力画像と予め設定された背景画像との間の差分画像である背景差分画像を二値化することにより、前記背景画像に対して変化のある対象領域と変化のない背景領域とからなる二値化画像を前記フレーム毎に生成し、
該二値化画像をフレーム間で比較することにより、前記対象領域のまま変化のない重なり領域、前記背景領域から前記対象領域に変化した増加領域、前記対象領域から背景領域に変化した減少領域を抽出し、
前記重なり領域と該重なり領域に隣接する増加領域,減少領域とを統合してなる統合領域、及び前記増加領域,前記減少領域のそれぞれについて、該領域に属する画素数と、画素位置を表すための二次元座標におけるX座標及びY座標の座標値を、該領域に属する全ての画素について各座標毎にそれぞれ加算してなるX座標和,Y座標和とからなる領域パラメータを求め、
該領域パラメータに基づいて、前記統合領域毎に該統合領域に示された移動物体の動きを検出することを特徴とする動き検出方法。
【請求項2】
フレーム単位で連続的に入力される入力画像と予め設定された背景画像との間の差分画像である背景差分画像を二値化することにより、前記背景画像に対して変化のある対象領域と変化のない背景領域とからなる二値化画像を前記フレーム毎に生成する二値化画像生成手段と、
該二値化画像生成手段にて生成された二値化画像をフレーム間で比較することにより、前記対象領域のまま変化のない重なり領域、前記背景領域から前記対象領域に変化した増加領域、前記対象領域から背景領域に変化した減少領域を抽出する領域抽出手段と、
前記重なり領域と該重なり領域に隣接する増加領域,減少領域とを統合してなる統合領域、及び前記増加領域,前記減少領域のそれぞれについて、該領域に属する画素数と、画素位置を表すための二次元座標におけるX座標及びY座標の座標値を、該領域に属する全ての画素について各座標毎にそれぞれ加算してなるX座標和,Y座標和とからなる領域パラメータを求める領域パラメータ算出手段と、
該領域パラメータ算出手段が求めた領域パラメータに基づいて、前記統合領域毎に該統合領域に示された移動物体の動きを検出する動き検出手段と、
を備えることを特徴とする動き検出装置。
【請求項3】
前記動き検出手段は、前記領域パラメータに基づいて、前記移動物体の移動前及び移動後の重心位置を求めることで、該移動物体の動きを検出することを特徴とする請求項2に記載の動き検出装置。
【請求項4】
コンピュータを、請求項2又は3に記載の動き検出装置を構成する各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項5】
請求項2又は3に記載の動き検出装置と、
車室内に設置され、車室内及び窓を通して車両周辺を撮像した画像を前記入力画像として前記動き検出装置に供給する撮像手段と、
前記動き検出装置での検出結果に基づいて、侵入者や不審者の存在を判定する判定手段と、
該判定手段での判定結果の報知を行う報知手段と、
を備えることを特徴とする車両用監視システム。
【請求項6】
前記撮像手段は、車室内の天井部分に設置されていることをと特徴とする請求項5に記載の車両用監視システム。
【請求項7】
前記撮像手段は、魚眼カメラ又は全方位カメラからなることを特徴とする請求項5又は6に記載の車両用監視システム。
【請求項8】
前記撮像手段は、赤外線カメラからなることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の車両用監視システム。
【請求項9】
前記撮像手段は、撮像された被測定物までの距離に応じた画素値を有する距離画像を前記入力画像として供給することを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の車両用監視システム。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−59252(P2006−59252A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−242385(P2004−242385)
【出願日】平成16年8月23日(2004.8.23)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】