動力発生源制御装置
【課題】一層、ハイブリッド車両の燃費を向上させることができる動力発生源制御装置を提供する。
【解決手段】過去の発電電費閾値Dg_limおよびアシスト電費閾値Da_limを計画情報として複数保存し、それら複数の計画情報の各々を用いて、過去の複数の走行パターンを走行したと仮定した場合の推定燃料消費量est_fuelをそれぞれ推定する。そして、その複数の推定燃料消費量est_fuelを平均した平均推定燃料消費量est_fuel_aveが最も少ない計画情報を、次の走行に用いる計画情報として選択する(S312)。そして、選択した計画情報(発電電費閾値Dg_lim_next(l)、アシスト電費閾値Da_lim_next(l))と、車両走行中に実際に必要な駆動動力SPwに基づいて算出した現在の発電電費Dg_nowおよび現在のアシスト電費Da_nowとに基づいて発電時改善量Kgおよびアシスト時改善量Kaを算出して、その2つの改善量Kに基づいてエンジン4およびモータジェネレータMGを制御する。
【解決手段】過去の発電電費閾値Dg_limおよびアシスト電費閾値Da_limを計画情報として複数保存し、それら複数の計画情報の各々を用いて、過去の複数の走行パターンを走行したと仮定した場合の推定燃料消費量est_fuelをそれぞれ推定する。そして、その複数の推定燃料消費量est_fuelを平均した平均推定燃料消費量est_fuel_aveが最も少ない計画情報を、次の走行に用いる計画情報として選択する(S312)。そして、選択した計画情報(発電電費閾値Dg_lim_next(l)、アシスト電費閾値Da_lim_next(l))と、車両走行中に実際に必要な駆動動力SPwに基づいて算出した現在の発電電費Dg_nowおよび現在のアシスト電費Da_nowとに基づいて発電時改善量Kgおよびアシスト時改善量Kaを算出して、その2つの改善量Kに基づいてエンジン4およびモータジェネレータMGを制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両に用いられ、動力発生源を制御する動力発生源制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の駆動軸を駆動するための動力を発生させる動力発生源として、内燃機関および回転電機を備えるとともに、回転電機を回転駆動させるためにその回転電機に電力を供給する蓄電装置とを備えたハイブリッド車両が知られている。
【0003】
ハイブリッド車両は、2種類の動力発生源を備えているので、それら2種類の動力発生源において発生させる動力を適切に分配することにより、燃費を向上させることができる。そのため、2種類の動力発生源の動力分配をどのように決定するかが問題となる。この動力分配を決定する方法として、ナビゲーション装置において設定された走行経路を利用する方法が知られている(たとえば特許文献1)。
【0004】
特許文献1では、予測走行パターンに基づいて作成した充電率目標値を満足するように、走行経路を実際に走行する際のバッテリの充放電制御を行っている。しかし、実際に走行するときの走行パターンが、予測した通りになるとは限らない。そのため、特許文献1の技術では、たとえば、発電効率がよいと予測したタイミングで発電したが実際には発電効率が悪いタイミングであったなど、バッテリの充電タイミングおよび放電タイミングが最適ではないことも生じる。その結果、特許文献1の技術は、燃費を十分に向上させることができなかった。
【0005】
そこで、本願出願人は、特許文献2にて、車両の予定走行経路およびその予定走行経路の駆動動力を予測し、予定走行経路を分割した複数の区間に対して、発電走行したときの発電による燃料増加量の指標となる発電電費とアシスト走行したときの回転電機のアシストによる燃料減少量の指標となるアシスト電費をそれぞれ算出し、これに基づいて発電電費の基準となる発電電費基準値とアシスト電費の基準となるアシスト電費基準値を設定し、車両の走行中は、車軸が要求する実要求駆動動力等から算出した実発電電費、実アシスト電費、発電電費基準値、アシスト電費基準値を基に、内燃機関に発生させる駆動動力と回転電機の発電/アシスト電力を制御する制御手段を開示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3610879号公報
【特許文献2】特開2008−183937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2の発明によれば、発電電費基準値、アシスト電費基準値を基に発電およびアシストを制御しているので、充放電のタイミングずれにより効率の悪い発電やアシストを行ってしまうことがあるという、特許文献1の問題点を回避することができる。
【0008】
しかし、特許文献2の発明では、将来の走行パターンを1パターンのみ予測して、その1パターンに基づいて発電電費基準値、アシスト電費基準値を設定している。そのため、同じ走行経路であっても、走行毎の車速や駆動動力のばらつきが顕著な場合には、発電/アシスト電力の設定値が必ずしも最適な値にならず、その結果、十分に燃費を向上させることができない場合があった。
【0009】
本発明は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、一層、ハイブリッド車両の燃費を向上させることができる動力発生源制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
その目的を達成するための請求項1記載の発明は、車両の駆動軸を駆動するための動力を発生させる動力発生源として、内燃機関および回転電機を備えるとともに、前記回転電機との間で電力の授受を行う蓄電装置を備えたハイブリッド車両に用いられ、前記動力発生源を制御する動力発生源制御装置であって、
前記車両の予定走行経路およびその予定走行経路を走行する時の予測駆動動力を設定する予定走行経路情報設定手段と、
その設定された予定走行経路を複数の第1区間に分割する経路分割手段と、
前記複数の第1区間に対して、発電走行したときの発電による燃料増加量の指標となる発電電費をそれぞれ算出する発電電費算出手段と、
前記複数の第1区間に対して、アシスト走行したときの前記回転電機のアシストによる燃料減少量の指標となるアシスト電費をそれぞれ算出するアシスト電費算出手段と、
各第1区間に対して算出した前記発電電費に基づいて発電電費の基準となる発電電費基準値を設定するとともに、各第1区間に対して算出した前記アシスト電費に基づいてアシスト電費の基準となるアシスト電費基準値を設定する基準値設定手段と、
前記車両の走行中に車軸が要求する要求駆動動力を実要求駆動動力として逐次設定する実要求駆動動力設定手段と、
その設定した実要求駆動動力を満たすように発電走行した場合の発電電費を実発電電費として算出する実発電電費算出手段と、
前記実要求駆動動力を満たすようにアシスト走行した場合のアシスト電費を実アシスト電費として算出する実アシスト電費算出手段と、
前記実発電電費と前記発電電費基準値とから発電走行による電費改善量を決定するとともに、前記実アシスト電費と前記アシスト電費基準値とからアシスト走行による電費改善量を決定し、その2つの電費改善量に基づいて、前記内燃機関に発生させる駆動動力を制御するとともに、前記回転電機を電動または発電制御する制御手段とを備えるとともに、
前記基準値設定手段で設定した過去の発電電費基準値およびアシスト電費基準値を計画情報として複数保存する計画情報保存手段と、
その計画情報保存手段に前記予定走行経路の計画情報として保存されている複数の計画情報に対して、各計画情報に基づいて前記内燃機関および前記回転電機を制御して前記予定走行経路を走行したと仮定した場合に消費すると推定される推定燃料消費量に関する評価指標を算出する評価指標算出手段と、
その評価指標算出手段で算出された評価指標に基づいて、前記計画情報保存手段に前記予定走行経路の計画情報として保存されている複数の計画情報から、最も推定燃料消費量が少ないと推定される計画情報を選択する計画情報選択手段とを備え、
前記制御手段は、前記計画情報選択手段が選択した計画情報を構成する前記発電電費基準値および前記アシスト電費基準値を用いて制御を行うことを特徴とする。
【0011】
この請求項1記載の発明では、特許文献2と同様に、発電電費基準値およびアシスト電費基準値を、予測駆動動力に基づいて算出した発電電費およびアシスト電費に基づいて設定している。そして、これら発電電費基準値およびアシスト電費基準値と、車両走行中に実際に必要な駆動動力に基づいて算出した実発電電費および実アシスト電費とに基づいて発電走行による電費改善量およびアシスト走行による電費改善量を決定して、その2つの電費改善量に基づいて内燃機関および回転電機を制御している。そのため、発電走行、アシスト走行のタイミングが適切となるので、ハイブリッド車両の燃費を向上させることができる。
【0012】
加えて、過去の発電電費基準値およびアシスト電費基準値を計画情報として複数保存しており、複数の計画情報に対して推定燃料消費量に関する評価指標を算出して、最も推定燃料消費量が少ないと推定される計画情報を実際の走行に用いる計画情報として選択しているので、走行毎の車速や駆動動力のばらつきが顕著であっても、燃費をより向上させることができる。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1の動力発生源制御装置において、前記基準値設定手段は、前記予定走行経路を前記第1区間よりも長い第2区間毎に分割し、各第2区間に含まれる第1区間に対して算出した前記発電電費に基づいて、その第2区間の発電電費基準値を設定するとともに、各第2区間に含まれる第1区間に対して算出した前記アシスト電費に基づいてその第2区間のアシスト電費基準値を設定することを特徴とする。
【0014】
このようにすれば、発電電費およびアシスト電費が変動する単位である第1区間よりも長い第2区間を単位として、発電電費基準値およびアシスト電費基準値が変動することになる。そして、この第2区間を単位として設定された発電電費基準値およびアシスト電費基準値を実発電電費および実アシスト電費と比較することで、内燃機関および回転電機を制御する指標となる2つの電費改善量を決定している。そのため、各第1区間に対して予測した予測駆動動力と、車両がその第1区間を走行しているときに実要求駆動動力との間にずれが生じたとしても、そのことが2つの電費改善量に与える影響が低減されることになる。そのため、たとえば、実際には、発電走行することによる電費改善量が少ないにも関わらず発電走行をしてしまうなど、電費改善量の少ない走行を少なくすることができるので、より燃費を向上させることができる。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項2の動力発生源制御装置において、前記発電電費算出手段で算出した各第1区間の発電電費と前記アシスト電費算出手段で算出した各第1区間のアシスト電費とに基づいて、前記予定走行経路を走行した場合の燃料消費量が最小となるように、各第1区間における前記回転電機と前記蓄電装置との間の電力授受量を決定する最適電力授受量決定手段と、
その最適電力授受量決定手段で決定した電力授受量に基づいて、各第2区間の電力収支を理想電力収支として算出する理想電力収支算出手段と、
前記発電電費算出手段で算出した各第1区間の発電電費と前記発電電費基準値とから発電走行による電費改善量を決定するとともに、前記アシスト電費算出手段で算出した各第1区間のアシスト電費と前記アシスト電費基準値とから、アシスト走行による電費改善量を決定し、2つの電費改善量に基づいて、前記予定走行経路を車両が走行したと仮定したときの各第1区間の電力授受量を推定する電力授受量推定手段と、
その電力授受量推定手段で推定した電力授受量に基づいて、各第2区間の電力収支を推定電力収支として算出する推定電力収支算出手段とを備え、
前記基準値設定手段は、前記理想電力収支算出手段で算出した各第2区間の理想電力収支と、前記推定電力収支算出手段で算出した各第2区間の推定電力収支とが略一致するように、前記発電電費基準値および前記アシスト電費基準値を設定することを特徴とする。
【0016】
前述の請求項1に係る発明では、発電電費基準値およびアシスト電費基準値をもとに内燃機関および回転電機の制御を行っている。そのため、これら発電電費基準値およびアシスト電費基準値の大きさが燃費に影響し、基準値の大きさによっては十分に燃費を向上させることができない可能性もある。
【0017】
そこで、この請求項3記載の発明では、予定走行経路を走行した場合に燃料消費量が最小となるように、各第1区間の最適電力授受量を決定して、その最適電力授受量から各第2区間の理想電力収支を算出している。その一方で、電力授受量推定手段において、発電電費基準値およびアシスト電費基準値を用いた制御を行って、予定走行経路を車両が走行したと仮定したときの各第1区間の電力授受量を推定し、その推定した電力授受量からも、第2区間の電力収支を推定電力収支として算出している。そして、これら理想電力収支と推定電力収支とが略一致するように発電電費基準値およびアシスト電費基準値を設定している。そのため、実際に走行したときの燃費をより最小燃費に近づけることができる。
【0018】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項の動力発生源制御装置において、
過去に前記予定走行経路を走行する際に前記発電電費算出手段および前記アシスト電費算出手段で算出した各第1区間の発電電費およびアシスト電費を含む電費情報を、過去複数回の走行分保存する電費情報保存手段と、
前記計画情報保存手段に保存されている計画情報を用いて前記電費情報保存手段に保存されている電費情報に対応する走行を行った場合の推定燃料消費量を、複数の電費情報に対して算出する推定燃料消費量算出手段とを備え、
前記評価指標算出手段は、その複数の推定燃料消費量の平均値である平均推定燃料消費量を前記評価指標として算出することを特徴とする。
【0019】
このように、一つの計画情報に対して、複数の電費情報に基づいて複数の推定燃料消費量を算出し、その平均値である平均推定燃料消費量を評価指標とすれば、平均燃費がより高い計画情報を選択することができる。
【0020】
請求項5記載の発明は、請求項4の動力発生源制御装置において、前記計画情報保存手段に保存されている計画情報を用いて前記電費情報保存手段に保存されている電費情報に対応する走行を行った場合の走行前後での推定電力収支を、複数の電費情報に対して算出する推定電力収支算出手段を備え、
前記推定燃料消費量算出手段は、前記計画情報保存手段に保存されている計画情報を用いて前記電費情報保存手段に保存されている電費情報に対応する走行を行った場合の推定燃料消費量を、前記推定電力収支算出手段で算出した推定電力収支に基づいて所定の電力収支での推定燃料消費量に補正することを特徴とする。
【0021】
ハイブリッド車両では、蓄電装置の電気エネルギの蓄電量が走行前後で相違することによっても燃料消費量が増減する。そこで、このようにして、所定の電力収支での推定燃料消費量に補正することが好ましい。これにより、電力収支の影響を考慮した評価指標を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ハイブリッド制御ECU24およびナビゲーション装置29によって構成される第1実施形態の動力発生源制御装置を備えたハイブリッド車両1の要部構成を示す図である。
【図2】図1のハイブリッド制御ECU24が実行する運転制御ルーチンを示す図である。
【図3】ナビゲーション装置29内の制御装置が実行する閾値現在値の算出・送信処理を示すフローチャートである。
【図4】図3のステップS303で決定した第2分割区間と、区間分割データsection_div(l)のフォーマット例を示す図である。
【図5】図3のステップS307の処理を詳しく示すフローチャートである。
【図6】図3のステップS308の処理を詳しく示すフローチャートである。
【図7】図3のステップS309の処理を詳しく示すフローチャートである。
【図8】図7のステップS703の処理を詳しく示すフローチャートである。
【図9】図7のステップS704の処理を詳しく示すフローチャートである。
【図10】図3のステップS303で予測した車速(図10(a))と、ステップS309にて行ったスケジューリング結果(図10(b))とを示す図である。
【図11】ナビゲーション装置29内の走行情報データベースを示す図である。
【図12】電費Dと、モータジェネレータMGと電源系との間の電力授受量Wmgとの関係を例示する図である。
【図13】図3のステップS310の処理を詳しく示すフローチャートである。
【図14】図13のステップS1306の処理を詳しく示すフローチャートである。
【図15】図14のステップS1401の処理を詳しく示すフローチャートである。
【図16】図3のステップS312の処理を詳しく示すフローチャートである。
【図17】図16のステップS1601における平均推定燃料消費量est_fuel_aveの算出方法を概念的に示す図である。
【図18】図16のステップS1601における推定燃料消費量est_fuel(i,j)の算出処理を詳しく示すフローチャートである。
【図19】図2のステップS202の処理を詳しく示すフローチャートである。
【図20】図19のステップS1904の処理を詳しく示すフローチャートである。
【図21】図20の処理の具体例を説明する図である。
【図22】図20の処理の具体例を説明する図である。
【図23】図20の処理の具体例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、ハイブリッド制御ECU24およびナビゲーション装置29によって構成される動力発生源制御装置を備えたハイブリッド車両1の要部構成を示す図である。
【0024】
図1に示すように、ハイブリッド車両1は、エンジン4と2つのモータジェネレータ(すなわち回転電機)MG1、MG2とを動力発生源として備えたシリーズパラレル式のハイブリッド車両である。
【0025】
エンジン4は、燃料としてガソリンまたは軽油を用いる内燃機関である。このエンジン4の出力軸は、遊星歯車装置12のプラネタリギアに連結されている。遊星歯車装置12のサンギアには第1モータジェネレータMG1の出力軸が連結され、遊星歯車装置12のリングギアには減速機13の入力軸が連結されている。上記減速機13の入力軸には、第2モータジェネレータMG2の出力軸も連結されている。減速機13は一対の常時噛み合い歯車を有しており、減速機13の出力軸の回転がデファレンシャルギア14を介して車軸(すなわち駆動軸)15に伝達される。この構成により、遊星歯車装置12は動力分割機構として機能し、エンジン4からの動力と第2モータジェネレータMG2からの動力とを統合して減速機13の入力軸に入力することができるとともに、エンジン4からの動力を減速機13の入力軸と第1モータジェネレータMG1とに分割することもできる。
【0026】
第1モータジェネレータMG1および第2モータジェネレータMG2は、それぞれ、第1インバータ8および第2インバータ10に接続されており、それら第1、第2インバータ8、10は、電力授受ライン18によって高圧系バッテリ6と電気的に接続されている。第1、第2モータジェネレータMG1、MG2は、高圧系バッテリ6からの電力が供給されるとモータとして機能して動力を発生させる。一方、エンジン4からの動力によって回転させられると発電機として機能して電力を発生させる。
【0027】
請求項の蓄電装置に相当する高圧系高圧系バッテリ6は、複数の二次電池が直列接続されて高電圧を出力するように構成されており、二次電池としては、たとえば、ニッケル水素二次電池を用いる。この高圧系バッテリ6は、電力授受ライン18によってインバータ8、10と接続されていることに加えて、系内電力供給ライン19によって車両1に備えられている種々の電気負荷16とも接続されている。
【0028】
この電気負荷16には、高圧系バッテリ6から直接電力供給を受ける高圧系電気負荷16aと、DCDCコンバータ17を介して系内電力供給ライン19に接続されている低圧系電気負荷16bとがある。
【0029】
低圧系電気負荷16bはたとえばライトなどであり、鉛蓄電池などが用いられる低圧系バッテリ21とも電気的に接続されている。この低圧系バッテリ21と低圧系電気負荷16bは、一つの高圧系電気負荷と考えることもできる。なお、本実施形態では、高圧系バッテリ6と高圧系電気負荷16aとを総称して高圧電源系といい、低圧系バッテリ21と低圧系電気負荷16bとを総称して低圧電源系といい、高圧電源系および低圧電源系を総称して電源系という。
【0030】
電力検出部28は、電源系内において消費される電力を検出するために、系内電力供給ライン19の電流および電圧を検出する。また、バッテリECU22は高圧系バッテリ6の残存エネルギを表す信号をハイブリッド制御ECU24へ逐次供給する。
【0031】
ナビゲーション装置29は、地図データベースを記憶した記憶装置および制御装置(いずれも図示せず)を備えて、通常の経路案内機能、すなわち、出発地から目的地までの予定走行経路を設定し、設定した予定走行経路と車両の現在位置とに基づいて経路案内を行う。また、無線通信機を内蔵して、その無線通信機により車外と通信して、渋滞情報などの交通情報や、その他、必要な情報を取得する機能も備えている。さらに、ナビゲーション装置29の制御装置は、設定した予定走行経路を車両が走行する際に、発電を行うかアシスト行うかの基準となる発電電費閾値現在値Dg_lim_nowおよびアシスト電費閾値現在値Da_lim_nowを、逐次、ハイブリッド制御ECU24に送信する機能を備えている。この機能に関しては後に詳述する。
【0032】
ハイブリッド制御ECU24には、車速Vを表す信号、アクセル開度ACを表す信号、ブレーキのオンオフ状態を表すブレーキ信号Sb、シフト位置を表すシフト位置信号Psが供給される。また、MGECU20、バッテリECU22、エンジンECU26、ナビゲーション装置29との間で相互に信号の送受信を行う。そして、供給される種々の信号に基づいてエンジン4の目標トルクTerefおよびモータジェネレータMG1、MG2の目標トルクTmg1, Tmg2を決定して、その決定した目標トルクTをエンジンECU26およびMGECU20へ出力する。MGECU20は、ハイブリッド制御ECU24から供給される目標トルクTmg1, Tmg2をモータジェネレータMG1、MG2が出力するようにインバータ8、10を制御する。エンジンECU26は、ハイブリッド制御ECU24から供給される目標トルクTerefをエンジン4が出力するようにエンジン4を制御する。
【0033】
図2は、ハイブリッド制御ECU24が実行する運転制御ルーチンを示す図である。この運転制御ルーチンは車両走行中に所定周期で繰り返し実行するようになっている。図2において、まず、実要求駆動動力設定手段に相当するステップS201では、車軸15が要求する要求駆動動力SPwを設定する。この要求駆動動力SPwは請求項の実要求駆動動力に相当するものである。この要求駆動動力SPwは、ハイブリッド制御ECU24に供給されるアクセル開度ACと車速Vとから、予め記憶された三次元マップを参照することにより設定する。
【0034】
続くステップS202では、ナビゲーション装置29から発電電費閾値現在値Dg_lim_nowおよびアシスト電費閾値現在値Da_lim_nowを受信し、それら発電電費閾値現在値Dg_lim_nowおよびアシスト電費閾値現在値Da_lim_nowと、発電電費現在値Dg_nowおよびアシスト電費現在値Da_nowとに基づいて、要求電力授受量BPwrefを算出する。この要求電力授受量BPwrefは、電源系とモータジェネレータMG側との間の電力授受量、すなわち、電力授受ライン18を流れる電力であり、電源系が要求する場合(電源系がモータジェネレータMGから電力供給を受ける場合)を正の値とする。この要求電力授受量BPwrefを算出する処理は、後に詳述する。
【0035】
続くステップS203では、車両の動力伝達経路で失われる動力損失SPwlossを、車速VとステップS201で設定した要求駆動動力SPwとから、予め記憶された三次元マップを参照することにより設定する。
【0036】
続くステップS204では、エンジンの目標回転速度Nerefと目標トルクTerefを設定する。これら目標回転速度Neref、目標トルクTerefを設定するために、まず、車軸15の駆動動力がステップS201で設定した要求駆動動力SPwとなり、電源系との間の電力授受量WmgがステップS202で設定した要求電力授受量BPwrefとなるようなエンジン4、モータジェネレータMG1、MG2の動作範囲を、ステップS203で設定した動力損失SPwlossおよびモータジェネレータMG1,MG2における機械-電気変換損失を考慮した公知の計算式を用いて設定する。そして、設定した動作範囲内でエンジン4の燃費消費率が最小の動作点における回転速度Ne、トルクTeを、目標回転速度Neref、目標トルクTerefに設定する。
【0037】
ステップ205では、ステップS204で設定した目標回転速度NerefとなるようにモータジェネレータMG1の目標トルクTmg1を設定し、ステップS206では、エンジントルクがステップS204で設定した目標トルクTeref、モータジェネレータMG1のトルクがステップS205で設定した目標トルクTmg1であるとして、車軸15の駆動動力がステップS201で設定した要求駆動動力SPwとなるようにモータジェネレータMG2の目標トルクTmg2を設定する。
【0038】
そして、ステップS207では、ステップS204〜206で設定した目標トルクTeref、Tmg1、Tmg2を対応するECU26、20に出力する。
【0039】
次に、上記ステップS202における要求電力授受量BPwrefの算出処理について説明する。要求電力授受量BPwrefは、現在の発電電費Dg_now[g/kWh]、現在のアシスト電費Da_now[g/kWh]、発電電費閾値現在値Dg_lim_now、電費閾値現在値Da_lim_nowから算出する。本実施形態では、このうち、現在の発電電費Dg_nowと現在のアシスト電費Da_nowはハイブリッド制御ECU24が算出し、発電電費閾値現在値Dg_lim_now、電費閾値現在値Da_lim_nowはナビゲーション装置29が算出してハイブリッド制御ECU24に送信する。そこで、まず、ナビゲーション装置29における発電電費閾値現在値Dg_lim_nowおよびアシスト電費閾値現在値Da_lim_nowの算出・送信処理について説明する。
【0040】
図3は、ナビゲーション装置29内の制御装置が実行する閾値現在値の算出・送信処理を示すフローチャートである。図3において、まず、ステップS301では、出発地から目的地までの予定走行経路を設定する。出発地は、ユーザによって設定された場合にはその設定地とし、それ以外は現在地とする。目的地は、ユーザによって設定された地点とされるが、ユーザによって目的地が設定されない場合であっても、現在地、日時などから目的地が推定できる場合には、その推定した地点を目的地に設定する。
【0041】
続くステップS302は経路分割手段に相当する処理であり、ステップS301で設定した予定走行経路を細かな第1分割区間毎に分割する。本実施形態では、サンプル時間に走行する区間を第1分割区間とし、サンプル時間はたとえば1秒とする。
【0042】
続くステップS303では、予定走行経路を走行する際におけるサンプル時間毎の車速と勾配とを予測する。車速については、ナビゲーション装置29の記憶装置に自車の過去の走行時の車速履歴をデータベースとして保存しておき、このデータベースから自車が前回に同経路を走行した時の車速履歴を呼び出して用いる。勾配については、ナビゲーション装置29の地図データベースの勾配情報を用いてもよいし、外部サーバとの通信で得た勾配情報を用いてもよい。
【0043】
また、このステップS303では、各第1分割区間に対する時間パラメータtime(k)(kは時刻ステップ数を示す自然数)も算出し、保存する。さらに、このステップS303では、予定走行経路を交差点等のチェックポイントにより分割して第2分割区間とする。なお、この第2分割区間は、第1分割区間よりも長い区間であって、道路地図に基づいて分割できる区間であればよい。そして、各第2分割区間への進入時刻を算出し、区間分割データsection_div(l)(lは区間番号)に格納する。なお、各第2分割区間への進入時刻は、ナビゲーション装置29の地図情報と、上述の車速履歴とから算出する。
【0044】
図4に、このステップS303で決定した第2分割区間と、上記区間分割データsection_div(l)のフォーマット例を示す。なお、図4においては第2分割区間を単に分割区間としており、以後の説明においても、単に分割区間というときは第2分割区間を指す。
【0045】
続くステップS304では、各time(k)における走行負荷P(k)[w]、予定走行経路を走行するために必要な総走行エネルギdrive_enrg、および電気負荷総消費エネルギload_enrgを予測する。
【0046】
走行負荷P(k)を予測するには、まず、各time(k)において車両が発生すべき車両駆動力R(k)を下記式1から算出し、その車両駆動力R(k)を式2によって走行負荷P(k)に変換する。この走行負荷P(k)は車軸15に必要なパワーと考えることもできることから、この走行負荷P(k)が請求項の予測駆動動力に相当する。また、ステップS301、S303、S304が予定走行経路情報設定手段に相当する処理である。
(式1) R(k)=W×acc(k)+μr×W+μ1×A×V(k)×V(k)+W×g×sinθ(k)
式1において、W:車両総重量、acc:車両加速度、μr:転がり抵抗係数、μ1:空気抵抗係数、A:前面投影面積、V:車両速度、g:重力加速度、θ:道路勾配であり、W、μr、μ1、A、gは予め記憶された一定値である。VはステップS303で予測した値を用い、Accは車速を微分して求める。θもステップS303で予測した値を用いる。
(式2) P(k)=R(k)×r×ω
式2において、rは車輪半径、ωは車輪角速度である。rは予め記憶された一定値であり、ωは、式1で用いたVから算出する。
【0047】
総走行エネルギdrive_enrgは、上述のようにして算出した走行負荷P(k)のうち正の負荷(正の駆動動力)を、予定走行経路の全区間に渡って時間積分することで算出できる。電気負荷総消費エネルギload_enrgは、予定走行経路を走行する際の平均消費電力load_powerを予測し、この平均消費電力load_powerと走行時間の積から算出する。なお、平均消費電力load_powerは、たとえば、現在の消費電力の平均値を計測して、この消費電力が継続すると仮定してもよいし、過去の履歴から予測してもよい。また、時刻、気温などの情報に基づいてライト、エアコンの動作を予測して、その予測結果に基づいて平均消費電力load_powerを予測してもよい。
【0048】
続くステップS305では、基本燃料消費量fuelrate(k)[g/h]を各time(k)について算出する。基本燃料消費量fuelrateとは、モータジェネレータMGと電源系との間の電力授受量Wmgをゼロと仮定したとき、すなわち、電力授受ライン18を流れる電流をゼロと仮定したときに、ステップS304で予測した走行負荷P(k)をエンジン4のみで出力する場合の燃料消費量である。
【0049】
この基本燃料消費量fuelrateを算出するには、まず、各time(k)に対して、基本エンジン動作点候補(Ne0[i]、Te0[i])を算出する。この基本エンジン動作点候補(Ne0[i]、Te0[i])は、電源系との間の電力授受量Wmgをゼロと仮定したときに、ステップS304で予測した走行負荷P(k)をエンジン4のみで出力する場合のエンジン動作点(すなわち、エンジン回転速度NeとエンジントルクTe)の候補である。なお、ここでの[i]は、1〜n1の間の自然数であり、n1は予め一定数に設定されていてもよいし、可能な候補を全て算出してもよい。また、この基本エンジン動作点候補の算出においては、モータジェネレータMG1、MG2におけるエネルギ変換効率や、動力伝達経路における機械的損失も考慮する。これら変換効率および機械的損失は予め実験に基づいて設定された値を用いる。また、算出することに代えて、走行負荷Pから基本エンジン動作点候補(Ne0[i]、Te0[i])が定まるマップを予め記憶しておき、そのマップから基本エンジン動作点候補(Ne0[i]、Te0[i])を決定するようにしてもよい。
【0050】
次いで、各基本エンジン動作点候補(Ne0[i]、Te0[i])について、単位時間当たりの燃料消費量を算出する。この燃料消費量の算出においては、エンジン動作点と燃料消費量との間の予め記憶したマップを用いる。そして、算出した燃料消費量のうちの最小値を、基本燃料消費量fuelrate(k)とする。
【0051】
続くステップS306では目的地での目標残存エネルギを設定する。本実施形態では、この目標残存エネルギを現時点での残存エネルギとする。そして、発電電費算出手段に相当するステップS307にて各time(k)での発電電費最小値Dg_min(k)および発電電費最小時の電力Pg_min(k)を算出し、アシスト電費算出手段に相当するステップS308にて各time(k)でのアシスト電費最大値Da_max(k)およびアシスト電費最大時の電力Pa_max(k)を算出し、ステップS309にて、各time(k)に対して要求電力授受量BPwrefのスケジューリングを行う。図10に、ステップS303で予測した車速(図10(a))と、ステップS309にて行ったスケジューリング結果(図10(b))とを同一の時間軸上に示す。なお、これらステップS307、S308、S309の処理は、図5〜図9に基づいて後述する。
【0052】
ステップS310では、第2分割区間毎に、発電電費閾値Dg_limおよびアシスト電費閾値Da_limを設定する。この処理は、図13に基づいて後述する。
【0053】
ステップS311では、ステップS301〜S310で算出した各種の情報をナビゲーション装置29内の走行情報データベースに保管する。図11に走行情報データベースを示す。
【0054】
走行情報データベースには、同経路を走行した過去n走分の情報が蓄積されており、過去n走よりも前に走行した時の情報は順次破棄される。蓄積する内容は、図11に示す通りであり、電費情報、計画情報、区間分割データsection_div(l)、総走行エネルギdrive_enrgを含んでいる。電費情報は、図3のステップS301〜308で算出しており、計画情報はステップS310で設定する。区間分割データsection_div(l)はステップS303で算出している。総走行エネルギdrive_enrgはステップS304で算出している。また、走行情報データベースは走行経路毎に用意されており、次に予測される走行経路毎に切り替えて使用する。
【0055】
ステップS312では、この走行情報データベースに蓄積されている走行情報から、過去に同経路を走行した時の走行情報のうちの一つの走行情報を選択して、その走行情報に含まれている計画情報を、次の走行に用いる計画情報とする。図11に示すように、計画情報には、発電電費閾値Dg_lim(l)とアシスト電費閾値Da_lim(l)とが含まれている。従って、このステップS312では、次の走行に用いる発電電費閾値Dg_lim(l)とアシスト電費閾値Da_lim(l)とを選択することになる。なお、このステップS312で選択した閾値を、発電電費閾値Dg_lim_next(l)とアシスト電費閾値Da_lim_next (l)とする。このステップS312の処理も後に詳述する。
【0056】
ここまでのステップS301〜S312の処理は走行前に実行する。そして、走行中は、ステップS313の処理を繰り返し実行する。そのステップS313では、ナビゲーション装置29が逐次決定している現在位置情報から、現在、どの分割区間を走行しているかを判断し、ステップS312で選択した計画情報、すなわち発電電費閾値Dg_lim_next(l)、アシスト電費閾値Da_lim_next(l)から、現在走行中の分割区間に対応する発電電費閾値、アシスト電費閾値をそれぞれ、発電電費閾値現在値Dg_lim_now,アシスト電費閾値現在値Da_lim_nowとして設定し、ハイブリッド制御ECU24に送信する。この発電電費閾値現在値Dg_lim_now,アシスト電費閾値現在値Da_lim_nowは、ステップS202において要求電力授受量BPwrefの算出に用いられる。
【0057】
要求電力授受量BPwrefの算出する処理は後述し、図5〜図9、12に基づいてステップS307、S308、S309の処理を説明する。まず、ステップS307の処理内容を説明する。
【0058】
前述のようにステップS307では、各time(k)での発電電費最小値Dg_min(k)および発電電費最小時の電力Pg_min(k)を算出する。発電電費Dgは、モータジェネレータMG1またはMG2が発電する電力授受量Wmgに対する、増加した燃料消費量の比である。この発電電費Dgは、発電する電力授受量Wmgによってエンジンの動作点が変化したりモータジェネレータMGの発電効率が変化する等の理由により、電力授受量Wmgをパラメータとして変化する。図12の右象限は、発電電費Dgと、モータジェネレータMGから電源系に供給する電力授受量Wmgとの関係を例示する図である。ただし、回生制動時は、電力授受量Wmgを発電することによって燃料消費量が増加しないので、発電電費Dgはゼロとなる。なお、同図の左象限は、後述するアシスト電費Daと、電源系からモータジェネレータMGに供給する電力授受量Wmgとの関係を例示する図である。
【0059】
ステップS307の処理内容を図5に詳しく示す。この図5に示す処理は、図12の右象限に示す曲線上の最小点を決定する処理であり、各time(k)に対して実行する。
【0060】
まず、ステップS501では、電源系の受け入れ可能な電力の最大値(以下、最大受け入れ可能電力という)を決定する。この最大受け入れ可能電力は、各time(k)における電源系内の消費電力と、高圧系バッテリ6の充電可能電力との和である。電源系内の消費電力には、ステップS304で予測したものを用いる。また、高圧系バッテリ6の充電可能電力は、高圧系バッテリ6の充電電力に対する端子電圧の関係と上限電圧とに基づいて定まる値であり、本実施形態では予め記憶した一定値を用いる。
【0061】
続くステップS502では、ステップS501で決定した最大受け入れ可能電力以下において、モータジェネレータMGをエンジン4からの動力によって回転駆動させて発電し、電源系に供給する電力授受量Wmg[i]を決定する。ここで、[i]は、1〜n2の間の自然数であり、n2は、予め設定された一定数であってもよいし、電力授受量Wmgを0〜最大受け入れ可能電力まで所定間隔で設定することによって定まる数でもよい。
【0062】
さらに、このステップS502では、各電力授受量Wmg[i]を発電するようにモータジェネレータMG1またはMG2を駆動させつつ、ステップS304で予測した走行負荷P(k)も満たすようなエンジン4の動作点候補(Neg[i]、Teg[i])を、図3のステップS305と同様にして算出する。以下、このエンジン動作点候補を発電エンジン動作点候補という。なお、一つの電力授受量Wmg[i]に対して複数の発電エンジン動作点候補が存在する場合には、ステップS305と同様の手法により、各発電エンジン動作点候補の燃料消費量を求め、燃料消費量が最小のものを電力授受量Wmg[i]に対応する発電エンジン動作点候補(Neg[i]、Teg[i])とする。
【0063】
続くステップS503では、ステップS502で算出した各発電エンジン動作点候補(Neg[i]、Teg[i])について、単位時間当たりの燃料消費量(以下、発電時燃料消費量という)Fg[i]を算出する。この処理も各time(k)に対して行う。この発電時燃料消費量Fg[i]の算出には、エンジン動作点と燃料消費量との間の予め記憶したマップを用いる。このステップS503の処理も各time(k)に対して行う。
【0064】
続くステップS504では、ステップS503で算出した発電時燃料消費量Fg[i](i=1~n2)に対して、その発電時燃料消費量Fg[i]に対応する電力授受量Wmg[i]とステップS305で算出した基本燃料消費量base_fuelrate(k)とを用いて、以下の式3から、発電電費Dg[i] (i=1~n2)をそれぞれ算出する。この処理も各time(k)に対して行う。
(式3) Dg[i] = (Fg[i] -base_fuelrate(k)/ Wmg[i])
式3の右辺から分かるように、発電電費Dg[i]の絶対値が小さいほど、同じ電力をより少ない燃料増加量で発電することができ、効率よく燃料消費量を低減できることになる。
【0065】
続くステップS505では、ステップS504で算出した発電電費Dg[i]のうちの最小値を、time(k)についての発電電費最小値Dg_min(k)に決定するとともに、そのときの発電電力を発電電費最小時の電力Pg_min(k)に決定する。
【0066】
次に、上記ステップS308の処理内容を図6に基づいて説明する。前述のようにステップS308では、各time(k)でのアシスト電費最大値Da_max(k)およびアシスト電費最大時の電力Pa_max(k)を算出する。アシスト電費Daは、電源系から供給する電力授受量Wmg]に対する、低減される燃料消費量の比である。このアシスト電費Daは、モータジェネレータMGの駆動効率がモータジェネレータMGに供給される電力量によって変化する等の理由により、図12の左象限に示すように、電力授受量Wmgをパラメータとして変化する。図6に示す処理は、図12に左象限に示す曲線上の最大点を決定する処理であり、各time(k)に対して実行する。
【0067】
まず、ステップS601では、電源系からモータジェネレータMG側へ供給可能な最大電力(以下、最大供給可能電力という)を決定する。この最大供給可能電力は、高圧系バッテリ6の放電可能電力から電源系内の消費電力を引いた値である。ここで、高圧系バッテリ6の放電可能電力は、高圧系バッテリ6の放電電力に対する端子電圧の関係と下限電圧とに基づいて定まる値であり、本実施形態では予め記憶した一定値を用いる。また、電源系内の消費電力は、ステップS304と同様に平均消費電力を用いる。ただし、過去の走行履歴に基づいてtime(k)毎に電源系内の消費電力を予測してもよい。
【0068】
続くステップS602では、図3のステップS304で予測した走行負荷P(k)をモータジェネレータMG2のみで出力するとした場合にそのモータジェネレータMG2に電源系から供給する必要がある電力を、最大必要電力として算出する。
【0069】
続くステップS603では、ステップS601で決定した最大供給可能電力以下、且つ、ステップS602で算出した最大必要電力以下において、電源系からモータジェネレータMGへ供給する電力授受量Wmg[i]を決定する。なお、電源系からモータジェネレータMGへ電力を供給する場合の電力を負とする。ここで、[i]は、1〜n3の間の自然数であり、n3は予め設定された一定数であってもよいし、電力授受量Wmgを0〜最大必要電力量まで所定間隔で設定することによって定まる数でもよい。
【0070】
さらに、このステップS603では、各電力授受量Wmg[i]をモータジェネレータMGに供給してモータジェネレータMGを回転駆動させ、それによって生じる動力を車軸15に伝達したと仮定して、残りの走行負荷P(k)をエンジン4において発生させるとしたときのエンジン動作点候補(Nea[i]、Tea[i])を、図5のステップS502と同様にして算出する。以下、このエンジン動作点候補をアシストエンジン動作点候補という。なお、ステップS603で決定した一つの電力授受量Wmg[i]に対して複数のアシストエンジン動作点候補が存在する場合には、図5のステップS502と同様の手法により、各アシストエンジン動作点候補の燃料消費量を求め、燃料消費量が最小のものを電力授受量Wmg[i]に対応するアシストエンジン動作点候補(Nea[i]、Tea[i])とする。
【0071】
続くステップS604では、ステップS603で算出した各アシストエンジン動作点候補(Nea[i]、Tea[i])について、単位時間当たりの燃料消費量(以下、アシスト時燃料消費量という)Fa[i]を算出する。ステップS503と同様に、このアシスト時燃料消費量Fa[i]の算出には、エンジン動作点と燃料消費量との間の予め記憶したマップを用いる。このステップS604の処理も各time(k)に対して行う。
【0072】
続くステップS605では、ステップS604で算出したアシスト時燃料消費量Fa[i] (i=1~n3)に対して、そのアシスト時燃料消費量Fa[i]に対応するアシスト電力授受量Wmg[i]とステップS305で算出した基本燃料消費量base_fuelrate(k)とを用いて、以下の式4から、アシスト電費Da[i] (i=1~n3)をそれぞれ算出する。
(式4) Da[i] = (Fa[i] -base_fuelrate(k) / Wmg[i])
式4の右辺から分かるように、アシスト電費Da[i]が大きいほど、同じ投入電力でより多くの燃料消費量が低減できることになり、効率よく燃料消費量を低減できることになる。なお、前述のように、電源系からモータジェネレータMGに電力が供給される場合は負の値としている。そのため、式4において分母、分子とも負の値となるので、アシスト電費Da[i]は正の値である。
【0073】
ステップS606では、ステップS605で算出したアシスト電費Da[i]のうちの最大値を、time(k)についてのアシスト電費最大値Da_max(k)に決定するとともに、そのときのアシスト電力をアシスト電費最大時の電力Pa_max(k)に決定する。
【0074】
次に、図7に基づいてステップS309の処理を具体的に説明する。この図7の処理は、目的地における高圧系バッテリ6の残存エネルギが図3のステップS306で設定した目標残存エネルギとなり、かつ、目的地までの走行途中においてバッテリの残存エネルギが予め設定した上下限範囲内に入るという条件で、予定走行経路を走行した場合の燃料消費量が最小となるように、各time(k)における計画電力授受量scheduled_power(k)を決定する処理である。
【0075】
図7において、まず、ステップS701では、まず、図5のステップS505で各time(k)に対して決定した発電電費最小値Dg_min(k)を小さい順にソートする。続くステップS702では、図6のステップS606で各time(k)に対して決定したアシスト電費最大値Da_max(k)を大きい順にソートする。
【0076】
続くステップS703およびS704では、上記ステップS701、702でソートした発電電費最小値Dg_min(k)、アシスト電費最大値Da_max(k)を用いて電力授受のスケジューリングを行う。まず、ステップS703において、回生電力のスケジューリングを行う。
【0077】
図8は、ステップS703の処理内容を詳しく示すフローチャートである。図8において、まず、ステップS801では、全time(k)から回生を行う時刻を検索する。回生を行う時刻は発電電費最小値Dg_min(k)がゼロとなる時刻である。
【0078】
続くステップS802では、ステップS801で検索した各回生時刻において、該当時刻における発電電費最小時の電力Pg_min(k)を発電することに決定し、それら発電電費最小時の電力Pg_min(k)の合計値に基づいて総回生エネルギregen_enrgを算出する。
【0079】
続くステップ803では、ステップS802で算出した総回生エネルギregen_enrgがステップS304で予測した電気負荷総消費エネルギload_enrgよりも大きいか否を判断する。この判断が肯定判断となる場合には、回生エネルギのみで電気負荷によって消費されるエネルギを全て賄うことができることになる。この場合にはステップ804にて、regen_enrgの値を、ステップS802で算出した総回生エネルギregen_enrgからステップS304で予測した電気負荷総消費エネルギload_enrgを差し引いた値に更新する。この更新後のregen_enrgは、回生によって得られるエネルギのうち、電気負荷における消費エネルギを賄った後に残るエネルギである。
【0080】
ステップS806では、ステップS804にて更新したregen_enrgを、ステップS702におけるソート結果に基づいて、アシスト電費最大値Da_max(k)が高いtime(k)から順に分配する。各time(k)に分配するエネルギは、各time(k)におけるアシスト電費最大時の電力Pa_max(k)×サンプル時間とする。このステップS806における分配処理は、regen_enrgが少なくなって、エネルギが分配されていない区間のうちでアシスト電費最大値Da_max(k)が最も高いtime(k)に対してエネルギが分配できなくなるまで行う。このステップS806でエネルギが分配されたtime(k)はscheduled_power(k)が確定したことになる。
【0081】
そして、ステップS806のエネルギ分配処理が終了したら、ステップS807にて、高圧系バッテリ6に要求する要求エネルギdemand_enrgをゼロとして本サブルーチンを終了し、図6のステップS604へ進む。
【0082】
ステップS803が否定判断となる場合には、回生エネルギのみでは電気負荷によって消費されるエネルギを全て賄うことができないことになる。この場合にはステップ805にて、要求エネルギdemand_enrgの値を、ステップS304で予測した電気負荷総消費エネルギload_enrgからステップS802で算出した総回生エネルギregen_enrgを差し引いた値として、本サブルーチンを終了し、図7のステップS704へ進む。
【0083】
図6のステップS704における回生電力以外のスケジューリング処理は図9に示してある。次に、この図9に基づいてステップS704の処理を説明する。図9において、まず、ステップS901では、計画電力授受量schduled_power(k)が未確定のtime(k)のうちで、アシスト電費最大値Da_max(k)が最も大きい時刻(以下、この時刻を時刻taという)を抽出する。続くステップS902では、ステップS901で抽出した時刻taにおいてモータジェネレータMGが電源系に要求するエネルギを、アシスト電費最大時の電力Pa_max(k)×サンプル時間から算出し、算出値をdemand_enrgに加算する。
【0084】
続くステップS903では、計画電力授受量schduled_power(k)が未確定のtime(k)のうちで、発電電費最小値Dg_min(k)が最も小さい時刻(以下、この時刻を時刻tgという)を抽出する。そして、続くステップS904では、時刻taでのアシスト電費最大値Da_max(k)が時刻tgでの発電電費最小値Dg_min(k)よりも大きいか否かを判断する。
【0085】
このステップS904が肯定判断となる場合には、時刻tgにおいて発電した電力を用いて時刻taでアシスト走行することにより、燃費が向上することになる。この場合には、ステップS905に進んで、ステップS903で抽出した時刻tgにおける発電電費最小時ののエネルギ(Pg_min(k)×サンプル時間)をleft_enrgに加算する。
【0086】
続くステップS906では、left_enrgがdemand_enrgよりも大きいか否かを判断する。この判断が否定判断である場合には、直前のステップS903で抽出した時刻tgにおいて発電しても、時刻taにおいてモータジェネレータMGを駆動させるための電力を賄えないことになる。そこで、ステップS903へ戻り、再度、計画電力授受量schduled_power(k)が未確定のtime(k)のうちで、発電電費最小値Dg_min(k)が最も小さい時刻tgを抽出し、新たに抽出した時刻tgにおける発電電費最小値Dg_min(k)を用いてステップS904を再度判断する。
【0087】
ステップS904が否定判断となる場合には、時刻tgで発電した電力を用いて時刻taでアシスト走行しても燃費が向上しないことになる。この場合には、ステップS910へ進んで、目的地にて図3のステップS306で設定した目標残存エネルギとなるように、スケジューリングを修正する。
【0088】
スケジューリングの修正方法は、スケジューリングした計画電力授受量scheduled_power(k)の積分値とステップ304で予測した電気負荷総消費エネルギload_enrgから、予定走行経路を走行する前後での残存エネルギの変化量を算出する。その変化量が負である場合、すなわち、残存エネルギが減少する場合には、発電走行する時間を追加するか、アシスト走行する時間を減らすか、その両方を行う。一方、残存エネルギの変化量が正である場合、すなわち、残存エネルギが増加する場合には、発電走行する時間を減らすか、アシスト走行する時間を追加するか、その両方を行う。発電走行する時間の追加、削除、アシスト走行する時間の追加、削除は、発電電費最小値Dg_min(k)、アシスト電費最大値Da_max(k)に基づいて、燃費向上の効果が少ない時刻から順に行う。なお、各時刻における発電またはアシストの電力Pは、それぞれその時刻における発電電費最小時の電力Pg_min(k)またはアシスト電費最大時の電力Pa_max(k)とする。
【0089】
ステップS906が肯定判断となる場合には、1つまたは複数の時刻tgにおいて発電した電力を用いて時刻taでアシスト走行することにより、燃費がさらに向上することになる。そこで、ステップS907へ進んで、時刻taにおける計画電力授受量schduled_power(k)を、その時刻taにおける発電電費最小時の電力Pg_min(k)に確定する。
【0090】
そして、ステップS908では、ステップS905にて算出したleft_enrgから上記ステップS907で確定したdemand_enrgを差し引いた値を新たなleft_enrgとし、ステップS909では、demand_enrgをゼロにリセットする。その後、ステップS901へ戻り、アシスト走行を行う時刻taの候補を抽出する。そして、前述のステップS902以降の処理を繰り返す。
【0091】
このようにして回生電力以外のスケジューリングを行ったら、図7に戻ってステップS705を実行する。ステップS705では、スケジューリング通りに発電、アシストを行った場合に、高圧系バッテリ6の残存エネルギが上下限を越えないようにスケジューリングを修正する。そのために、まず、スケジューリングしたエネルギを積分することにより、高圧系バッテリ6の残存エネルギを各time(k)について算出する。そして、残存エネルギが上下限を越えている場合には、そのtime(k)におけるモータジェネレータMG側と電源系との間で授受される電力を少なくして、その時刻における残存エネルギが上下限内に入るようにする。また、それとともに、少なくした分だけ反対方向の電力授受量Wmgも少なくする。反対方向の電力授受量Wmgを少なくする時刻は、発電する時刻の電力授受量Wmgを少なくするのであれば、最も発電電費Dgの高い時刻とし、アシスト走行する時間の電力授受量Wmgを少なくするのであれば、最もアシスト電費Daの小さい時刻とする。
【0092】
図10(b)は、このようにして決定した計画電力授受量scheduled_power(k)を示すタイムチャートである。このようにして電力授受量のスケジューリングを決定したら、図3に戻って、前述したステップS310を実行することにより、各第2分割区間に対して、発電電費閾値Dg_limおよびアシスト電費閾値Da_limを設定する。
【0093】
図13は、ステップS310の処理を詳しく示すフローチャートである。この図13に示す処理は、実際の走行時に、ステップS309で決定した計画電力授受量scheduled_power(k)により近い発電/アシストが実現できる発電電費閾値Dg_limおよびアシスト電費閾値Da_limを第2分割区間毎に決定する処理である。
【0094】
発電電費閾値Dg_limおよびアシスト電費閾値Da_limを第2分割区間毎に決定するために、この図13では、各第2分割区間の発電電費閾値Dg_limおよびアシスト電費閾値Da_limを変化させつつ、予定走行経路を走行した時の電力収支を第2分割区間毎に推定する。そして、推定した電力収支が計画電力授受量scheduled_power(k)から算出できる電力収支に略一致するときの発電電費閾値Dg_limおよびアシスト電費閾値Da_limを、走行情報データベースに保存する閾値とする。以下、各ステップを説明する。
【0095】
ステップS1301では、ステップS309で決定した計画電力授受量scheduled_power(k)を取得する。続くステップS1302では、分割区間カウンタiを1にリセットし、前分割区間の未補正分エネルギerror_previousをゼロにリセットする。この未補正分エネルギerror_previousについては後述する(図14)。
【0096】
続くステップS1303では、各分割区間iの発電電費閾値Dg_lim(i)を設定する。詳しくは、まず、区間分割データを参照して、各分割区間iの進入時刻section_div(i)と、次の分割区間i+1の進入時刻section_div(i+1)とを取得して、time(k)がその間に入っているkに対し、ステップS309で決定した計画電力授受量scheduled_power(k)を取得する。この取得した計画電力授受量scheduled_power(k)が0よりも大きく(すなわち発電が計画されており)、かつ、発電電費最小値Dg_min(k)が最大となるものを、その分割区間iの発電電費閾値Dg_lim(i)に設定する。
【0097】
続くステップS1304では、各分割区間iのアシスト電費閾値Da_lim(i)を設定する。詳しくは、まず、区間分割データを参照して、上述のステップS1303と同様にして各分割区間i内のtime(k)に対し、ステップS309で決定した計画電力授受量scheduled_power(k)を取得する。この取得した計画電力授受量scheduled_power(k)が0よりも小さく(すなわちアシストが計画されており)、かつ、アシスト電費最大値Da_max(k)が最小となるものを、その分割区間iのアシスト電費閾値Da_lim(i)に仮設定する。
【0098】
続くステップS1305では、分割区間iにおける計画電力授受量scheduled_power(k)を時間積分して、分割区間iにおける理想電力収支opt_balanceを算出する。続くステップS1306では、分割区間iの電力収支が、上記ステップS1305で算出した理想電力収支opt_balanceに略一致するように、分割区間iのアシスト電費閾値Da_lim(i)を補正する。このステップS1306の処理は後述する(図14)。
【0099】
ステップS1307では、分割区間カウンタiが第2分割区間の数に一致しているか否かを判断する。この判断が否定判断の場合には、ステップS1308にて分割区間カウンタiに1を加算して、次の分割区間に対してステップS1303以下を実行する。一方、分割区間カウンタiが第2分割区間の数に一致している場合には処理を終了する。この場合には、図3のステップS311へ進む。
【0100】
次に、上記図13のステップS1306の処理を説明する。図14は、図13のステップS1306の処理を詳しく示すフローチャートである。図14に示す処理は、各分割区間iの電力収支を推定しながら、各分割区間iの電力収支が計画電力授受量scheduled_power(k)の電力収支(すなわち理想電力収支)に略一致するようにアシスト電費閾値Da_limを補正する処理である。
【0101】
なお、この図14における電力収支の推定方法は、後述する走行中の要求電力授受量BPwrefの算出方法と同様の算出方法である。すなわち、この図13のステップS1306の処理は、実際に走行した時の各分割区間iの電力収支を走行前に事前に推定し、その推定した電力収支が理想電力収支opt_balanceにできるだけ近づく閾値を設定する処理である。この処理により、実際の走行時における各分割区間iの電力収支を理想電力収支opt_balanceに近づけることができる。
【0102】
図14において、まず、ステップS1401では、発電電費閾値がDg_lim(i)、アシスト電費閾値がDa_lim(i)となった場合の分割区間iの基本電力収支base_balanceを推定する。このステップS1401の処理は図15に基づいて後述するが、この基本電力収支base_balanceは、実際の走行時の各分割区間iの電力収支の推定値である。
【0103】
続くステップS1402では、現分割区間iの目標電力収支tg_balanceを決定する。この目標電力収支tg_balanceは、図13のステップS1305で算出した理想電力収支opt_balanceと前分割区間i-1での未補正分error_previousとの和から、図3のステップS304で算出したload_powerに分割区間iの走行時間をかけた値を引いた値である。前分割区間i-1での未補正分error_previousを加えている理由は、実際の走行時の電力収支と計算時の電力収支との誤差を走行経路全体で小さくするためである。
【0104】
続くステップS1403では、ステップS1401で推定した基本電力収支base_balanceがステップS1402で決定した目標電力収支tg_balanceよりも大きいか否かを判断する。この判断は目標電力収支よりも充電気味であるか否かを判断していることになる。
【0105】
上記ステップS1403が肯定判断の場合、すなわち、充電気味である場合には、ステップS1404へ進み、アシスト電費閾値Da_lim(i)を所定値減少させる。実際の走行時にはアシスト電費閾値Da_lim(i)以上となるように要求電力授受量BPwrefが求められるため、アシスト電費閾値Da_lim(i)を減少させることで、より低いアシスト電費でもアシストが行われるようになるので、結果的に、分割区間iの推定電力収支temp_balenceは放電気味にシフトすることになる。
【0106】
続くステップS1405では、上記ステップS1404で値を減少させたアシスト電費閾値Da_lim(i)と、ステップS1401で用いた発電電費閾値Dg_lim(i)とに基づいて、ステップS1401と同様にして分割区間iの電力収支temp_balanceを推定する。
【0107】
続くステップS1406では、ステップS1405で推定した電力収支temp_balanceがステップS1402で決定した目標電力収支tg_balanceよりも大きいか否かを判断する。この判断が否定判断である場合にはステップS1404〜S1406を繰り返す。この繰り返しにより、アシスト電費閾値Da_lim(i)は徐々に減少していき、分割区間iの電力収支temp_balanceは徐々に放電気味にシフトしていく。そして、ステップS1406の判断が肯定判断となった場合、すなわち、電力収支が放電側に移行した場合にはステップS1410へ進む。
【0108】
前述のステップS1403が否定判断の場合、すなわち、充電気味である場合には、ステップS1407へ進み、アシスト電費閾値Da_lim(i)を所定値増加させる。アシスト電費閾値Da_lim(i)を増加させることで、アシストが行われにくくなるので、結果的に、分割区間iの推定電力収支temp_balenceは充電気味にシフトすることになる。
【0109】
続くステップS1408では、上記ステップS1407で値を増加させたアシスト電費閾値Da_lim(i)と、ステップS1401で用いた発電電費閾値Dg_lim(i)とに基づいて、ステップS1401と同様にして分割区間iの電力収支temp_balanceを推定する。
【0110】
続くステップS1409では、ステップS1408で推定した電力収支temp_balanceがステップS1402で決定した目標電力収支tg_balanceよりも大きいか否かを判断する。この判断が否定判断である場合にはステップS1407〜S1409を繰り返す。この繰り返しにより、アシスト電費閾値Da_lim(i)は徐々に増加していき、分割区間iの電力収支temp_balanceは徐々に充電気味にシフトしていく。そして、ステップS1409の判断が肯定判断となった場合、すなわち、電力収支が充電側に移行した場合にはステップS1410へ進む。
【0111】
ステップS1410では、現分割区間iで補正しきれなかった電力収支、すなわち、目標電力収支tg_balanceと電力収支temp_balanceとの差を算出し、算出結果を、前分割区間での未補正分error_previousとして保存する。
【0112】
次に、図14のステップS1401の処理を説明する。図15は、図14のステップS1401の処理を詳しく示すフローチャートである。図15に示す処理は、発電電費閾値がDg_lim(i)、アシスト電費閾値がDa_lim(i)となった場合の分割区間iの基本電力収支base_balanceを推定する処理である。
【0113】
まず、ステップS1501では、分割区間iの基本電力収支base_balanceをゼロに初期化し、続くステップS1502では、時刻インデックスjをゼロに初期化する。この時刻インデックスjは、kと同様に時刻ステップ数を示す自然数である。
【0114】
続くステップS1503では、section_div(i)≦time(j)<section_div(i+1)となるか否かを判断することにより、時刻インデックスjが分割区間iに属するか否かを判断する。時刻インデックスjが分割区間iに属すると判断されない場合(NO)は、その時刻インデックスjの処理を飛ばしてステップS1511に進む。
【0115】
時刻インデックスjが分割区間iに属する場合(YES)は、ステップS1504にて発電電費改善量Dg_impを下記式5から算出する。
(式5) Dg_imp=max(Dg_lim(i)-Dg_min(j),0)
ここで、max(x,y)はx,yのうちどちらか大きい方を取る関数を示す。式5において、発電電費閾値Dg_lim(i)は、図13のステップS1303で設定したものを用い、発電電費最小値Dg_min(j)は、図3のステップS307で算出したものを用いる。
【0116】
続くステップS1505では、アシスト電費改善量Da_impを下記式6から算出する。
(式6) Da_imp = max(Da_max(j)-Da_lim(j), 0)
式6において、アシスト電費閾値Da_lim(i)は、図13のステップS1304で設定したものを用い、アシスト電費最小値Da_min(j)は、図3のステップS308で算出したものを用いる。
【0117】
これら発電電費改善量Dg_imp、アシスト電費改善量Da_impは、それぞれ、発電による電費の改善量、アシスト走行による電費の改善量を示しており、実際の走行時にもこれら発電電費改善量Dg_imp、アシスト電費改善量Da_impを算出している。
【0118】
続くステップS1506では、発電電費改善量Dg_impがゼロ、かつ、アシスト電費改善量Da_impもゼロであるかを判断する。肯定判断の場合は、発電を行っても、また、アシスト走行を行っても燃費は改善しないので、実際の走行時の要求電力授受量BPwrefがゼロになると推定し、基本電力収支base_balanceの加減算は行わずに、ステップS1510に進む。
【0119】
ステップS1506がNOの場合にはステップS1507へ進む。ステップS1507では、発電電費改善量Dg_impがアシスト電費改善量Da_imp以上であるかを判断する。発電電費改善量Dg_impがアシスト電費改善量Da_imp以上である(YES)と判断された場合は、実際の走行において該当時刻で発電が行われると推定し、基本電力収支base_balanceに、発電電費最小時の電力Pg_min(j)×サンプル時間を加算し、ステップS1510へ進む。
【0120】
一方、ステップS1507で発電電費改善量Dg_impがアシスト電費改善量Da_impより小さい(NO)と判断された場合は、実際の走行において該当時刻でアシストが行われると推定し、基本電力収支base_balanceにアシスト電費最大時の電力Pa_max(j)×サンプル時間を加算し、ステップS1510へ進む。
【0121】
ステップS1510では、ステップS304で推定した平均消費電力load_powerを用い、基本電力収支base_balanceから平均消費電力load_power×サンプル時間を減算する。これは、電力収支に電気負荷で消費される電力の影響を反映させるためである。
【0122】
続くステップS1511では、時刻インデックスjが全サンプル数に達したかを判断し、達していない場合(NO)はステップS1512でjに1を加算してステップS1503に戻り、達している場合(YES)は、上位ルーチン、すなわち、図14に戻る。
【0123】
そして、図14の終了後は、図14の上位ルーチン、すなわち、図13に戻る。そして、図13の終了後は、図13の上位ルーチン、すなわち、図3に戻り、ステップS311を実行する。
【0124】
図3のステップS311では、前述のように、ステップS301〜S310で算出した各種の情報をナビゲーション装置29内の走行情報データベースに保管する。そして、続くステップS312では、走行情報データベースに蓄積されている走行情報から、過去に同経路を走行した時の走行情報のうちの一つの走行情報を選択して、その走行情報に含まれている計画情報を、次の走行に用いる計画情報とする。
【0125】
次に、このステップS312の処理内容を詳しく説明する。図16に計画情報の選択処理のフローチャートを示す。まず、ステップS1601では、平均推定燃料消費量est_fuel_ave(i) (i=1〜n)を算出する。
【0126】
平均推定燃料消費量est_fuel_ave(i)とは、i走前の計画情報を用いて、その計画情報と同じ走行経路を走行した過去n走分の走行パターンを走行したと仮定した場合の平均燃料消費量の推定値である。ここで、計画情報とは、図11に示すように、発電電費閾値Dg_lim(l)、アシスト電費閾値Da_lim(l)(lは分割区間の番号)である。従って、平均推定燃料消費量est_fuel_ave(i)とは、i走前の発電電費閾値Dg_lim(l)、アシスト電費閾値Da_lim(l)を用いて、同じ走行経路を走行した過去n走分の走行パターンを走行したと仮定した場合の平均燃料消費量の推定値である。なお、ここでのiは、分割区間の番号を示すiとは別の意味で用いており、ステップS1601では、i=1〜nまでについて、平均推定燃料消費量est_fuel_ave(i)を算出する。
【0127】
図17に、平均推定燃料消費量est_fuel_aveの算出方法を概念的に示す。図17において、計画iは、i走前の走行(走行iとする)に対する計画情報を意味する。また、推定燃料消費量est_fuel(i,j)は、計画iで過去の走行j(j=1〜n)の走行パターンを走行した場合の燃料消費量推定値である。
【0128】
平均推定燃料消費量est_fuel_aveを算出するためには、まず、計画iを用いて、同経路におけるj走前の走行(以下、走行j)における走行パターンを走行した場合の燃料消費量である推定燃料消費量est_fuel(i,j)をi=1〜n、j=1〜nのすべてのパターン(すなわちnの乗通り)について推定する。なお、推定方法は後述する(図18)。
【0129】
そして、推定燃料消費量est_fuel(i,1)〜est_fuel(i,n)の平均値を取ることで、計画iにおける平均推定燃料消費量est_fuel_ave(i)を算出する。
【0130】
ステップS1601で平均推定燃料消費量est_fuel_ave(i)を算出した後、ステップS1602で、平均推定燃料消費量est_fuel_ave(i)が最小となるiを算出し、走行情報データベースからi走前の計画情報である発電電費閾値Dg_lim(l)、アシスト電費閾値Da_lim(l)を読み出し、次走の発電電費閾値Dg_lim_next(l),アシスト電費閾値Da_lim_next(l)とする。
【0131】
次に、図18を用いて、推定燃料消費量est_fuel(i,j)の算出方法を説明する。まず、ステップS1801にて、走行情報データベースから走行iの計画情報(計画i)を取得する。続くステップS1802では、走行情報データベースから走行jの電費情報、区間分割データsection_div(l)、総走行エネルギdrive_enrgを取得する。
【0132】
続くステップS1803では、走行jの電費情報内のデータである基本燃料消費量base_fuelrate(k) [g/h]を用いて、合計基本燃料消費量base_fuel [g]を算出する。合計基本燃料消費量とは、走行jをすべて電力授受量ゼロで走行した場合の合計燃料消費量である。この合計基本燃料消費量base_fuelは下記式7に示すように、base_fuelrate(k)[g/h]×サンプル時間[s]/3600を走行jのすべての時刻に対して合計したものである。なお、式7において、DATA_NUMはサンプル数を示す。
【0133】
【数7】
【0134】
続くステップS1804では、時刻インデックスkを1に初期化し、ステップS1805では、燃料増減量fuel_zougen [g]をゼロに初期化する。この燃料増減量fuel_zougenとは、走行jをすべて電力授受量ゼロで走行した場合の燃料消費量(すなわち基本燃料消費量base_fuel)に対して、計画iを用いて回転電機側と電源系との電力授受量を決定することにより増減する燃料消費量を示し、正側を燃料増加側とする。
【0135】
続くステップS1806では、区間分割データsection_div(l)から、時刻time(k)の属する分割区間lを算出する。次に、ステップS1807において、計画iから分割区間lの計画iでの発電電費閾値Dg_lim(l),アシスト電費閾値Da_lim(l)を設定する。
【0136】
続くステップS1808では、現時刻ステップkでの発電電費改善量Dg_impを下記式8から算出し、ステップS1809では、現時刻ステップkでのアシスト電費改善量Da_impを下記式9から算出する。
(式8) Dg_imp=max(Dg_lim(l)-Dg_min(k),0)
(式9) Da_imp = max(Da_max(l)-Da_lim(k), 0)
続くステップS1810では、発電電費改善量Dg_imp=0かつアシスト電費改善量Da_imp=0であるかを判断する。この判断がYESの場合は、現時刻ステップkでの推定電力授受量powwer_est(k)がゼロになると推定し、時刻ステップkでの推定電力授受量power_est(k)=0とした後に、ステップS1817へ進む。
【0137】
ステップS1810がNOの場合は、発電またはアシストが行われると推定し、ステップS1811に進み、発電電費改善量Dg_impがアシスト電費改善量Da_imp以上であるかを判断する。ステップS1811がYESの場合は、現時刻ステップkで発電が行われると推定し、ステップS1812へ進んで、現時刻ステップkの電力授受量power_est(k)を発電電費最小時の電力授受量Pg_min(k)にセットする。
【0138】
そして、ステップS1813に進んで、時刻ステップkでの発電による燃料消費量の増加分「Pg_min(k) [W] / 1000 × Dg_min(k) [g/kWh] × サンプル時間[s] / 3600」を燃料増減量fuel_zougenに加算して、ステップS1817に進む。
【0139】
ステップS1811がNOの場合は、現時刻ステップkでアシストが行われると推定し、ステップS1814へ進んで、現時刻ステップkの電力授受量power_est(k)をアシスト電費最小時の電力授受量Pa_max(k)にセットする。そして、ステップS1815に進んで、時刻ステップkでのアシストによる燃料消費量の減少分「Pa_max(k) [W] / 1000 × Da_max(k) [g/kWh] × サンプル時間[s] / 3600」を燃料増減量fuel_zougenに加算(Pa_max(k)は負なので、実質は減算)してステップS1817に進む。
【0140】
ステップS1817では、kが走行jのすべてのサンプル数に達しているかを判断する。
達していない場合(NOの場合)はステップS1818でkに1を加算してステップS1806に戻り、次の時刻ステップkに進む。kが走行jのすべてのサンプル数に達している場合(YESの場合)はステップS1819に進み、ステップS1803で算出した合計基本燃料消費量base_fuelと燃料増減量fuel_zougenとの和を取ることで、推定燃料消費量est_fuel(i,j)を算出する。
【0141】
次に、ステップS1820で、計画jを用いて走行iを走行したと仮定した場合の推定電力収支est_syusi[J]を算出する。この推定電力収支est_syusiは下記式10に示すように、すべての時刻ステップkにおける推定電力授受量power_est(k)×サンプル時間を合計し、その合計値から、ステップS304で算出した電気負荷総消費エネルギload_enrgを差し引くことで算出する。
【0142】
【数10】
【0143】
次に、ステップS1821にて、ステップS1820で算出した推定電力収支est_syusiを用いて推定燃料消費量est_fuel(i,j)の電力収支補正を行い、推定燃料消費量est_fuel(i,j)を確定させる。
【0144】
上記電力収支補正とは、ステップS1819で算出した推定燃料消費量を、走行中の電力収支をゼロと仮定したときの燃料消費量に補正する処理である。この電力収支補正を行う理由は、ハイブリッド車両ではバッテリの電気エネルギの蓄電量が走行前後で相違することによっても燃料消費量が増減するためである。具体的には、走行前後でバッテリの電力収支が正(増加)となった場合は、増加した電気エネルギを発電した分だけ燃料消費量が増大し、バッテリの電力収支が負(減少)となった場合は、減少した電気エネルギがエンジンアシストや電動走行に使われるため、燃料消費量が減少するからである。
【0145】
以下に、電力収支補正の方法を示す。ステップS1820で算出した推定電力収支est_syusiが正(増加)の場合、電力収支がゼロになった場合には、増加した電気エネルギ分だけ駆動エネルギを削減できると仮定し、下記式11にて推定燃料消費量を減少側に補正する。
(式11)est_fuel(i,j)(補正後)=
est_fuel(i,j)(補正前)−est_syusi×α×est_fuel(i,j)(補正前)/drive_enrg
右辺第2項のest_syusi×αは、増加した電気エネルギで発生できる駆動エネルギであり、αは電気エネルギから駆動エネルギへの変換効率を示す。αは、様々な走行モードにおける変換効率から事前に実験的に求めた平均値である。右辺第2項のest_fuel(i,j)(補正前)/drive_enrgは単位駆動エネルギ当たりに必要な燃料消費量を示す。drive_enrgは、ステップS1802で走行情報データベースから取得した値である。
【0146】
よって、右辺第2項は、増加した電気エネルギによって発生できる駆動エネルギに単位駆動エネルギの発生に必要な燃料消費量を乗算しているので、増加した電気エネルギで削減しうる燃料消費量を表しており、上式において補正前の燃料消費量est_fuel(i,j)(補正前)から右辺第2項を差し引くことで、電力収支ゼロでの燃料消費量est_fuel(i,j)(補正後)を推定している。
【0147】
ステップS1820で推定した推定電力収支est_syusiが負(減少)の場合、電力収支がゼロになった場合には、減少した電気エネルギ分だけ発電が必要であると仮定し、下記式12にて推定燃料消費量を増加側に補正する。
(式12) est_fuel(i,j)(補正後) =
est_fuel(i,j)(補正前)−est_syusi ÷α×est_fuel(i,j)(補正前)/ 駆動エネルギdrive_enrg
右辺第2項のest_syusi÷αは、減少した電気エネルギを発生するために必要な駆動エネルギであり、αはest_syusiが正の場合と同様である。右辺第2項のest_fuel(i,j)(補正前)/drive_enrgはest_syusiが正の場合と同様である。よって、右辺第2項は、減少した電気エネルギ分を発電するために必要な駆動エネルギに、単位駆動エネルギの発生に必要な燃料消費量を乗算しているので、減少した電気エネルギを発生するのに必要な燃料消費量を表しており、補正前の燃料消費量にこれを加算する。なお、式12では、右辺第2項にはマイナスの符号がついているが、est_syusiが負なので実質的には加算である。以上のようにして、電力収支がゼロのときの推定燃料消費量est_fuel(i,j)を確定できる。
【0148】
この図18に示す処理を全ての(i,j)について行うことにより、図17に示す表の「平均」の欄以外を算出することができる。そして、前述のように、推定燃料消費量est_fuel(i,1)〜est_fuel(i,n)の平均値を取ることで、計画iにおける平均推定燃料消費量est_fuel_ave(i)を算出する。その後、図16のステップS1602にて、次走の発電電費閾値Dg_lim_next(l),アシスト電費閾値Da_lim_next(l)を決定する。
【0149】
以上が走行前に実行する処理であり、走行中は、図3のステップS313の処理を繰り返し実行する。ステップS313では、前述のように、ステップS312で選択した計画情報、すなわち発電電費閾値Dg_lim_next(l)、アシスト電費閾値Da_lim_next(l)から、現在走行中の分割区間に対応する発電電費閾値、アシスト電費閾値をそれぞれ、発電電費閾値現在値Dg_lim_now,アシスト電費閾値現在値Da_lim_nowとして設定し、ハイブリッド制御ECU24に送信する。
【0150】
ハイブリッド制御ECU24は、発電電費閾値現在値Dg_lim_now、アシスト電費閾値現在値Da_lim_nowを用いて要求電力授受量BPwrefを算出する(図2のステップS202)。
【0151】
次に、この要求電力授受量BPwrefの算出処理を図19に基づいて説明する。図19において、まず、ステップ1901では、その時点における基本燃料消費量Fg0を設定する。この処理は、図3のステップS304で設定した走行負荷P(k)に代えて、図2のステップS201で設定した要求駆動動力SPwを用いることが異なる以外は、図3のS305と同じ処理である。
【0152】
続いて、実発電電費算出手段に相当するステップS1902にて、現在の発電電費Dg_now[i]、現在の発電電費最小値Dg_min_now、現在の発電電費最小時の電力Pg_min_nowを決定し、実アシスト電費算出手段に相当するステップS1903にて、現在のアシスト電費Da_now[i]、現在のアシスト電費最大値Da_max_now、現在の発電電費最大時の電力Pa_max_nowを決定する。これらステップS1902、S1903の処理は、電源系内の消費電力として、電力検出部28によって検出された系内電力供給ライン19の電流および電圧に基づいて算出した消費電力を用いること、および、ステップS304で設定した走行負荷P(k)に代えて、図2のステップS201で設定した要求駆動動力SPwを用いることが異なる以外は、図3のステップS307、S308と同じ処理である。
【0153】
続くステップS1904では要求電力授受量BPwrefを算出する。このステップS1904の処理を図20に基づいて説明する。
【0154】
まず、ステップS2001では、ナビゲーション装置29から送信されてきた発電電費閾値現在値Dg_lim_nowからステップS1902で設定した現在の発電電費最小値Dg_min_nowを引くことにより、現在の発電電費最小値Dg_min_nowに対する電費の改善量すなわち発電時改善量Kgを算出する。
【0155】
続くステップS2002では、ステップS1903で設定した現在のアシスト電費最大値Da_max_nowからナビゲーション装置29から送信されてきたアシスト電費閾値現在値Da_lim_nowを引くことにより、現在のアシスト電費最大値Da_max_nowに対する電費の改善量すなわちアシスト時改善量Kaを算出する。
【0156】
続くステップS2003では、ステップS2001およびステップS2002で設定した値に基づいて要求電力授受量BPwrefを決定する。この要求電力授受量BPwrefの決定方法について図21〜図23を用いて説明する。
【0157】
図21は、発電電費閾値現在値Dg_lim_nowよりも現在の発電電費最小値Dg_min_nowのほうが小さく、かつ、アシスト電費閾値現在値Da_lim_nowよりも現在のアシスト電費最大値Da_max_nowのほうが小さい場合を示している。
【0158】
発電に関しては、閾値よりも小さい場合には燃費改善効果が大きい。一方、アシスト走行に関しては、閾値よりも大きい場合に燃費改善効果が大きい。従って、図21に示す状態の場合、現在の発電電費最小値Dg_min_nowに対応する電力、すなわち、現在の発電電費最小時の電力Pg_min_nowを要求電力授受量BPwrefに決定する。
【0159】
図22は、発電電費閾値現在値Dg_lim_nowよりも現在の発電電費最小値Dg_min_nowのほうが大きく、かつ、アシスト電費閾値現在値Da_lim_nowよりも現在のアシスト電費最大値Da_max_nowのほうが大きい場合を示している。従って、図22に示す状態の場合、現在のアシスト電費最大値Dg_min_nowに対応する電力、すなわち、現在のアシスト電費最大時の電力Pg_min_nowを要求電力授受量BPwrefに決定する。
【0160】
図23は、発電電費閾値現在値Dg_lim_nowよりも現在の発電電費最小値Dg_min_nowのほうが小さく、かつ、アシスト電費閾値現在値Da_lim_nowよりも現在のアシスト電費最大値Da_max_nowのほうが大きい場合を示している。この場合、アシストを行っても、また、発電を行っても燃費改善効果があることになる。この場合には、ステップS2001で算出した発電時改善量KgとステップS2002で算出したアシスト時改善量Kaとを比較して改善量が大きい方を選択する。両改善量Kを比較すると、発電時改善量Kgの方が大きいので、現在の発電電費最小値Dg_min_nowに対応する電力、すなわち、現在の発電電費最小時の電力Pg_min_nowを要求電力授受量BPwrefに決定する。
【0161】
なお、現在の発電電費最小値Dg_min_nowが発電電費閾値現在値Dg_lim_nowよりも大きく、かつ、現在のアシスト電費最大値Dg_min_nowがアシスト電費閾値現在値Da_lim_nowよりも小さい場合、アシストをしても、また、発電をしても、燃費改善効果がないことから、この場合には要求電力授受量BPwrefをゼロに決定する。
【0162】
このようにして要求電力授受量BPwrefを決定したら、図2に戻ってステップS203以降を実行してエンジンECU26、MGECU20へエンジン4、モータジェネレータMG1,MG2を制御するための信号を出力することになる。
【0163】
以上、説明した本実施形態によれば、発電電費閾値Dg_lim(l)とアシスト電費閾値Da_lim(l)を、予定走行経路を走行する際に予測される走行負荷P(k)に基づいて算出した発電電費Dgおよびアシスト電費Daに基づいて設定している。そして、複数保存してある発電電費閾値Dg_lim(l)とアシスト電費閾値Da_lim(l)から次の走行に用いるものとして選択した発電電費閾値Dg_lim_next(l)、アシスト電費閾値Da_lim_next(l)と、車両走行中に実際に必要な駆動動力SPwに基づいて算出した現在の発電電費Dg_nowおよび現在のアシスト電費Da_nowとに基づいて発電時改善量Kgおよびアシスト時改善量Kaを算出して、その2つの改善量Kに基づいてエンジン4およびモータジェネレータMGを制御している。そのため、発電走行、アシスト走行のタイミングが適切となるので、ハイブリッド車両1の燃費を向上させることができる。
【0164】
加えて、過去の発電電費閾値Dg_limおよびアシスト電費閾値Da_limを計画情報として複数保存しており、それら複数の計画情報の各々を用いて、過去の複数の走行パターンを走行したと仮定した場合の推定燃料消費量est_fuelをそれぞれ推定している。そして、その複数の推定燃料消費量est_fuelを平均した平均推定燃料消費量est_fuel_aveが最も少ない計画情報を、次の走行に用いる計画情報として選択しているので、走行毎の車速や駆動動力のばらつきが顕著であっても、燃費をより向上させることができる。
【0165】
また、本実施形態によれば、予定走行経路を走行した場合に燃料消費量が最小となるように、各time(k)に対して計画電力授受量scheduled_power(k)を決定して、その計画電力授受量scheduled_power(k)から各分割区間iの理想電力収支opt_balanceを算出している。さらに、発電電費閾値Dg_lim(i)およびアシスト電費閾値Da_lim(i)を用いた制御を行って、予定走行経路を車両が走行したと仮定したときの各time(k)の電力授受量を推定し、その推定した電力授受量からも、各分割区間iの推定電力収支temep_balanceを算出している。そして、これら理想電力収支opt_balanceと推定電力収支temp_balanceとが略一致するように発電電費閾値Dg_limおよびアシスト電費閾値Da_limを補正している。そのため、実際に走行したときの燃費をより最小燃費に近づけることができる。
【0166】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0167】
1:ハイブリッド車両、 4:エンジン(動力発生源)、 6:高圧系バッテリ(蓄電装置)、 8:第1インバータ、 10:第2インバータ、 12:遊星歯車装置、 13:減速機、 14:デファレンシャルギア、 15:車軸、 16:電気負荷、 17:DCDCコンバータ、 18:電力授受ライン、 19:系内電力供給ライン、 20:MGECU、 21:低圧系バッテリ、 22:バッテリECU、 24:ハイブリッド制御ECU、 26:エンジンECU、 28:電力検出部、 29:ナビゲーション装置、 MG:モータジェネレータ(回転電機、動力発生源)、
S201:実要求駆動動力設定手段、 S202〜S207:制御手段、 S301、S303、S304:予定走行経路情報設定手段、 S302:経路分割手段、 S307:発電電費算出手段、 S308:アシスト電費算出手段、 S309:最適電力授受量決定手段、 S310:基準値設定手段、 S311:計画情報保存手段、電費情報保存手段、 S312:計画情報選択手段、 S1305:理想電力収支算出手段、 S1405、S1408:推定電力収支算出手段、 S1601:評価指標算出手段、推定燃料消費量算出手段、 S1820:推定電力収支算出手段、 S1902:実発電電費算出手段、 S1903:実アシスト電費算出手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両に用いられ、動力発生源を制御する動力発生源制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の駆動軸を駆動するための動力を発生させる動力発生源として、内燃機関および回転電機を備えるとともに、回転電機を回転駆動させるためにその回転電機に電力を供給する蓄電装置とを備えたハイブリッド車両が知られている。
【0003】
ハイブリッド車両は、2種類の動力発生源を備えているので、それら2種類の動力発生源において発生させる動力を適切に分配することにより、燃費を向上させることができる。そのため、2種類の動力発生源の動力分配をどのように決定するかが問題となる。この動力分配を決定する方法として、ナビゲーション装置において設定された走行経路を利用する方法が知られている(たとえば特許文献1)。
【0004】
特許文献1では、予測走行パターンに基づいて作成した充電率目標値を満足するように、走行経路を実際に走行する際のバッテリの充放電制御を行っている。しかし、実際に走行するときの走行パターンが、予測した通りになるとは限らない。そのため、特許文献1の技術では、たとえば、発電効率がよいと予測したタイミングで発電したが実際には発電効率が悪いタイミングであったなど、バッテリの充電タイミングおよび放電タイミングが最適ではないことも生じる。その結果、特許文献1の技術は、燃費を十分に向上させることができなかった。
【0005】
そこで、本願出願人は、特許文献2にて、車両の予定走行経路およびその予定走行経路の駆動動力を予測し、予定走行経路を分割した複数の区間に対して、発電走行したときの発電による燃料増加量の指標となる発電電費とアシスト走行したときの回転電機のアシストによる燃料減少量の指標となるアシスト電費をそれぞれ算出し、これに基づいて発電電費の基準となる発電電費基準値とアシスト電費の基準となるアシスト電費基準値を設定し、車両の走行中は、車軸が要求する実要求駆動動力等から算出した実発電電費、実アシスト電費、発電電費基準値、アシスト電費基準値を基に、内燃機関に発生させる駆動動力と回転電機の発電/アシスト電力を制御する制御手段を開示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3610879号公報
【特許文献2】特開2008−183937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2の発明によれば、発電電費基準値、アシスト電費基準値を基に発電およびアシストを制御しているので、充放電のタイミングずれにより効率の悪い発電やアシストを行ってしまうことがあるという、特許文献1の問題点を回避することができる。
【0008】
しかし、特許文献2の発明では、将来の走行パターンを1パターンのみ予測して、その1パターンに基づいて発電電費基準値、アシスト電費基準値を設定している。そのため、同じ走行経路であっても、走行毎の車速や駆動動力のばらつきが顕著な場合には、発電/アシスト電力の設定値が必ずしも最適な値にならず、その結果、十分に燃費を向上させることができない場合があった。
【0009】
本発明は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、一層、ハイブリッド車両の燃費を向上させることができる動力発生源制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
その目的を達成するための請求項1記載の発明は、車両の駆動軸を駆動するための動力を発生させる動力発生源として、内燃機関および回転電機を備えるとともに、前記回転電機との間で電力の授受を行う蓄電装置を備えたハイブリッド車両に用いられ、前記動力発生源を制御する動力発生源制御装置であって、
前記車両の予定走行経路およびその予定走行経路を走行する時の予測駆動動力を設定する予定走行経路情報設定手段と、
その設定された予定走行経路を複数の第1区間に分割する経路分割手段と、
前記複数の第1区間に対して、発電走行したときの発電による燃料増加量の指標となる発電電費をそれぞれ算出する発電電費算出手段と、
前記複数の第1区間に対して、アシスト走行したときの前記回転電機のアシストによる燃料減少量の指標となるアシスト電費をそれぞれ算出するアシスト電費算出手段と、
各第1区間に対して算出した前記発電電費に基づいて発電電費の基準となる発電電費基準値を設定するとともに、各第1区間に対して算出した前記アシスト電費に基づいてアシスト電費の基準となるアシスト電費基準値を設定する基準値設定手段と、
前記車両の走行中に車軸が要求する要求駆動動力を実要求駆動動力として逐次設定する実要求駆動動力設定手段と、
その設定した実要求駆動動力を満たすように発電走行した場合の発電電費を実発電電費として算出する実発電電費算出手段と、
前記実要求駆動動力を満たすようにアシスト走行した場合のアシスト電費を実アシスト電費として算出する実アシスト電費算出手段と、
前記実発電電費と前記発電電費基準値とから発電走行による電費改善量を決定するとともに、前記実アシスト電費と前記アシスト電費基準値とからアシスト走行による電費改善量を決定し、その2つの電費改善量に基づいて、前記内燃機関に発生させる駆動動力を制御するとともに、前記回転電機を電動または発電制御する制御手段とを備えるとともに、
前記基準値設定手段で設定した過去の発電電費基準値およびアシスト電費基準値を計画情報として複数保存する計画情報保存手段と、
その計画情報保存手段に前記予定走行経路の計画情報として保存されている複数の計画情報に対して、各計画情報に基づいて前記内燃機関および前記回転電機を制御して前記予定走行経路を走行したと仮定した場合に消費すると推定される推定燃料消費量に関する評価指標を算出する評価指標算出手段と、
その評価指標算出手段で算出された評価指標に基づいて、前記計画情報保存手段に前記予定走行経路の計画情報として保存されている複数の計画情報から、最も推定燃料消費量が少ないと推定される計画情報を選択する計画情報選択手段とを備え、
前記制御手段は、前記計画情報選択手段が選択した計画情報を構成する前記発電電費基準値および前記アシスト電費基準値を用いて制御を行うことを特徴とする。
【0011】
この請求項1記載の発明では、特許文献2と同様に、発電電費基準値およびアシスト電費基準値を、予測駆動動力に基づいて算出した発電電費およびアシスト電費に基づいて設定している。そして、これら発電電費基準値およびアシスト電費基準値と、車両走行中に実際に必要な駆動動力に基づいて算出した実発電電費および実アシスト電費とに基づいて発電走行による電費改善量およびアシスト走行による電費改善量を決定して、その2つの電費改善量に基づいて内燃機関および回転電機を制御している。そのため、発電走行、アシスト走行のタイミングが適切となるので、ハイブリッド車両の燃費を向上させることができる。
【0012】
加えて、過去の発電電費基準値およびアシスト電費基準値を計画情報として複数保存しており、複数の計画情報に対して推定燃料消費量に関する評価指標を算出して、最も推定燃料消費量が少ないと推定される計画情報を実際の走行に用いる計画情報として選択しているので、走行毎の車速や駆動動力のばらつきが顕著であっても、燃費をより向上させることができる。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1の動力発生源制御装置において、前記基準値設定手段は、前記予定走行経路を前記第1区間よりも長い第2区間毎に分割し、各第2区間に含まれる第1区間に対して算出した前記発電電費に基づいて、その第2区間の発電電費基準値を設定するとともに、各第2区間に含まれる第1区間に対して算出した前記アシスト電費に基づいてその第2区間のアシスト電費基準値を設定することを特徴とする。
【0014】
このようにすれば、発電電費およびアシスト電費が変動する単位である第1区間よりも長い第2区間を単位として、発電電費基準値およびアシスト電費基準値が変動することになる。そして、この第2区間を単位として設定された発電電費基準値およびアシスト電費基準値を実発電電費および実アシスト電費と比較することで、内燃機関および回転電機を制御する指標となる2つの電費改善量を決定している。そのため、各第1区間に対して予測した予測駆動動力と、車両がその第1区間を走行しているときに実要求駆動動力との間にずれが生じたとしても、そのことが2つの電費改善量に与える影響が低減されることになる。そのため、たとえば、実際には、発電走行することによる電費改善量が少ないにも関わらず発電走行をしてしまうなど、電費改善量の少ない走行を少なくすることができるので、より燃費を向上させることができる。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項2の動力発生源制御装置において、前記発電電費算出手段で算出した各第1区間の発電電費と前記アシスト電費算出手段で算出した各第1区間のアシスト電費とに基づいて、前記予定走行経路を走行した場合の燃料消費量が最小となるように、各第1区間における前記回転電機と前記蓄電装置との間の電力授受量を決定する最適電力授受量決定手段と、
その最適電力授受量決定手段で決定した電力授受量に基づいて、各第2区間の電力収支を理想電力収支として算出する理想電力収支算出手段と、
前記発電電費算出手段で算出した各第1区間の発電電費と前記発電電費基準値とから発電走行による電費改善量を決定するとともに、前記アシスト電費算出手段で算出した各第1区間のアシスト電費と前記アシスト電費基準値とから、アシスト走行による電費改善量を決定し、2つの電費改善量に基づいて、前記予定走行経路を車両が走行したと仮定したときの各第1区間の電力授受量を推定する電力授受量推定手段と、
その電力授受量推定手段で推定した電力授受量に基づいて、各第2区間の電力収支を推定電力収支として算出する推定電力収支算出手段とを備え、
前記基準値設定手段は、前記理想電力収支算出手段で算出した各第2区間の理想電力収支と、前記推定電力収支算出手段で算出した各第2区間の推定電力収支とが略一致するように、前記発電電費基準値および前記アシスト電費基準値を設定することを特徴とする。
【0016】
前述の請求項1に係る発明では、発電電費基準値およびアシスト電費基準値をもとに内燃機関および回転電機の制御を行っている。そのため、これら発電電費基準値およびアシスト電費基準値の大きさが燃費に影響し、基準値の大きさによっては十分に燃費を向上させることができない可能性もある。
【0017】
そこで、この請求項3記載の発明では、予定走行経路を走行した場合に燃料消費量が最小となるように、各第1区間の最適電力授受量を決定して、その最適電力授受量から各第2区間の理想電力収支を算出している。その一方で、電力授受量推定手段において、発電電費基準値およびアシスト電費基準値を用いた制御を行って、予定走行経路を車両が走行したと仮定したときの各第1区間の電力授受量を推定し、その推定した電力授受量からも、第2区間の電力収支を推定電力収支として算出している。そして、これら理想電力収支と推定電力収支とが略一致するように発電電費基準値およびアシスト電費基準値を設定している。そのため、実際に走行したときの燃費をより最小燃費に近づけることができる。
【0018】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項の動力発生源制御装置において、
過去に前記予定走行経路を走行する際に前記発電電費算出手段および前記アシスト電費算出手段で算出した各第1区間の発電電費およびアシスト電費を含む電費情報を、過去複数回の走行分保存する電費情報保存手段と、
前記計画情報保存手段に保存されている計画情報を用いて前記電費情報保存手段に保存されている電費情報に対応する走行を行った場合の推定燃料消費量を、複数の電費情報に対して算出する推定燃料消費量算出手段とを備え、
前記評価指標算出手段は、その複数の推定燃料消費量の平均値である平均推定燃料消費量を前記評価指標として算出することを特徴とする。
【0019】
このように、一つの計画情報に対して、複数の電費情報に基づいて複数の推定燃料消費量を算出し、その平均値である平均推定燃料消費量を評価指標とすれば、平均燃費がより高い計画情報を選択することができる。
【0020】
請求項5記載の発明は、請求項4の動力発生源制御装置において、前記計画情報保存手段に保存されている計画情報を用いて前記電費情報保存手段に保存されている電費情報に対応する走行を行った場合の走行前後での推定電力収支を、複数の電費情報に対して算出する推定電力収支算出手段を備え、
前記推定燃料消費量算出手段は、前記計画情報保存手段に保存されている計画情報を用いて前記電費情報保存手段に保存されている電費情報に対応する走行を行った場合の推定燃料消費量を、前記推定電力収支算出手段で算出した推定電力収支に基づいて所定の電力収支での推定燃料消費量に補正することを特徴とする。
【0021】
ハイブリッド車両では、蓄電装置の電気エネルギの蓄電量が走行前後で相違することによっても燃料消費量が増減する。そこで、このようにして、所定の電力収支での推定燃料消費量に補正することが好ましい。これにより、電力収支の影響を考慮した評価指標を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ハイブリッド制御ECU24およびナビゲーション装置29によって構成される第1実施形態の動力発生源制御装置を備えたハイブリッド車両1の要部構成を示す図である。
【図2】図1のハイブリッド制御ECU24が実行する運転制御ルーチンを示す図である。
【図3】ナビゲーション装置29内の制御装置が実行する閾値現在値の算出・送信処理を示すフローチャートである。
【図4】図3のステップS303で決定した第2分割区間と、区間分割データsection_div(l)のフォーマット例を示す図である。
【図5】図3のステップS307の処理を詳しく示すフローチャートである。
【図6】図3のステップS308の処理を詳しく示すフローチャートである。
【図7】図3のステップS309の処理を詳しく示すフローチャートである。
【図8】図7のステップS703の処理を詳しく示すフローチャートである。
【図9】図7のステップS704の処理を詳しく示すフローチャートである。
【図10】図3のステップS303で予測した車速(図10(a))と、ステップS309にて行ったスケジューリング結果(図10(b))とを示す図である。
【図11】ナビゲーション装置29内の走行情報データベースを示す図である。
【図12】電費Dと、モータジェネレータMGと電源系との間の電力授受量Wmgとの関係を例示する図である。
【図13】図3のステップS310の処理を詳しく示すフローチャートである。
【図14】図13のステップS1306の処理を詳しく示すフローチャートである。
【図15】図14のステップS1401の処理を詳しく示すフローチャートである。
【図16】図3のステップS312の処理を詳しく示すフローチャートである。
【図17】図16のステップS1601における平均推定燃料消費量est_fuel_aveの算出方法を概念的に示す図である。
【図18】図16のステップS1601における推定燃料消費量est_fuel(i,j)の算出処理を詳しく示すフローチャートである。
【図19】図2のステップS202の処理を詳しく示すフローチャートである。
【図20】図19のステップS1904の処理を詳しく示すフローチャートである。
【図21】図20の処理の具体例を説明する図である。
【図22】図20の処理の具体例を説明する図である。
【図23】図20の処理の具体例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、ハイブリッド制御ECU24およびナビゲーション装置29によって構成される動力発生源制御装置を備えたハイブリッド車両1の要部構成を示す図である。
【0024】
図1に示すように、ハイブリッド車両1は、エンジン4と2つのモータジェネレータ(すなわち回転電機)MG1、MG2とを動力発生源として備えたシリーズパラレル式のハイブリッド車両である。
【0025】
エンジン4は、燃料としてガソリンまたは軽油を用いる内燃機関である。このエンジン4の出力軸は、遊星歯車装置12のプラネタリギアに連結されている。遊星歯車装置12のサンギアには第1モータジェネレータMG1の出力軸が連結され、遊星歯車装置12のリングギアには減速機13の入力軸が連結されている。上記減速機13の入力軸には、第2モータジェネレータMG2の出力軸も連結されている。減速機13は一対の常時噛み合い歯車を有しており、減速機13の出力軸の回転がデファレンシャルギア14を介して車軸(すなわち駆動軸)15に伝達される。この構成により、遊星歯車装置12は動力分割機構として機能し、エンジン4からの動力と第2モータジェネレータMG2からの動力とを統合して減速機13の入力軸に入力することができるとともに、エンジン4からの動力を減速機13の入力軸と第1モータジェネレータMG1とに分割することもできる。
【0026】
第1モータジェネレータMG1および第2モータジェネレータMG2は、それぞれ、第1インバータ8および第2インバータ10に接続されており、それら第1、第2インバータ8、10は、電力授受ライン18によって高圧系バッテリ6と電気的に接続されている。第1、第2モータジェネレータMG1、MG2は、高圧系バッテリ6からの電力が供給されるとモータとして機能して動力を発生させる。一方、エンジン4からの動力によって回転させられると発電機として機能して電力を発生させる。
【0027】
請求項の蓄電装置に相当する高圧系高圧系バッテリ6は、複数の二次電池が直列接続されて高電圧を出力するように構成されており、二次電池としては、たとえば、ニッケル水素二次電池を用いる。この高圧系バッテリ6は、電力授受ライン18によってインバータ8、10と接続されていることに加えて、系内電力供給ライン19によって車両1に備えられている種々の電気負荷16とも接続されている。
【0028】
この電気負荷16には、高圧系バッテリ6から直接電力供給を受ける高圧系電気負荷16aと、DCDCコンバータ17を介して系内電力供給ライン19に接続されている低圧系電気負荷16bとがある。
【0029】
低圧系電気負荷16bはたとえばライトなどであり、鉛蓄電池などが用いられる低圧系バッテリ21とも電気的に接続されている。この低圧系バッテリ21と低圧系電気負荷16bは、一つの高圧系電気負荷と考えることもできる。なお、本実施形態では、高圧系バッテリ6と高圧系電気負荷16aとを総称して高圧電源系といい、低圧系バッテリ21と低圧系電気負荷16bとを総称して低圧電源系といい、高圧電源系および低圧電源系を総称して電源系という。
【0030】
電力検出部28は、電源系内において消費される電力を検出するために、系内電力供給ライン19の電流および電圧を検出する。また、バッテリECU22は高圧系バッテリ6の残存エネルギを表す信号をハイブリッド制御ECU24へ逐次供給する。
【0031】
ナビゲーション装置29は、地図データベースを記憶した記憶装置および制御装置(いずれも図示せず)を備えて、通常の経路案内機能、すなわち、出発地から目的地までの予定走行経路を設定し、設定した予定走行経路と車両の現在位置とに基づいて経路案内を行う。また、無線通信機を内蔵して、その無線通信機により車外と通信して、渋滞情報などの交通情報や、その他、必要な情報を取得する機能も備えている。さらに、ナビゲーション装置29の制御装置は、設定した予定走行経路を車両が走行する際に、発電を行うかアシスト行うかの基準となる発電電費閾値現在値Dg_lim_nowおよびアシスト電費閾値現在値Da_lim_nowを、逐次、ハイブリッド制御ECU24に送信する機能を備えている。この機能に関しては後に詳述する。
【0032】
ハイブリッド制御ECU24には、車速Vを表す信号、アクセル開度ACを表す信号、ブレーキのオンオフ状態を表すブレーキ信号Sb、シフト位置を表すシフト位置信号Psが供給される。また、MGECU20、バッテリECU22、エンジンECU26、ナビゲーション装置29との間で相互に信号の送受信を行う。そして、供給される種々の信号に基づいてエンジン4の目標トルクTerefおよびモータジェネレータMG1、MG2の目標トルクTmg1, Tmg2を決定して、その決定した目標トルクTをエンジンECU26およびMGECU20へ出力する。MGECU20は、ハイブリッド制御ECU24から供給される目標トルクTmg1, Tmg2をモータジェネレータMG1、MG2が出力するようにインバータ8、10を制御する。エンジンECU26は、ハイブリッド制御ECU24から供給される目標トルクTerefをエンジン4が出力するようにエンジン4を制御する。
【0033】
図2は、ハイブリッド制御ECU24が実行する運転制御ルーチンを示す図である。この運転制御ルーチンは車両走行中に所定周期で繰り返し実行するようになっている。図2において、まず、実要求駆動動力設定手段に相当するステップS201では、車軸15が要求する要求駆動動力SPwを設定する。この要求駆動動力SPwは請求項の実要求駆動動力に相当するものである。この要求駆動動力SPwは、ハイブリッド制御ECU24に供給されるアクセル開度ACと車速Vとから、予め記憶された三次元マップを参照することにより設定する。
【0034】
続くステップS202では、ナビゲーション装置29から発電電費閾値現在値Dg_lim_nowおよびアシスト電費閾値現在値Da_lim_nowを受信し、それら発電電費閾値現在値Dg_lim_nowおよびアシスト電費閾値現在値Da_lim_nowと、発電電費現在値Dg_nowおよびアシスト電費現在値Da_nowとに基づいて、要求電力授受量BPwrefを算出する。この要求電力授受量BPwrefは、電源系とモータジェネレータMG側との間の電力授受量、すなわち、電力授受ライン18を流れる電力であり、電源系が要求する場合(電源系がモータジェネレータMGから電力供給を受ける場合)を正の値とする。この要求電力授受量BPwrefを算出する処理は、後に詳述する。
【0035】
続くステップS203では、車両の動力伝達経路で失われる動力損失SPwlossを、車速VとステップS201で設定した要求駆動動力SPwとから、予め記憶された三次元マップを参照することにより設定する。
【0036】
続くステップS204では、エンジンの目標回転速度Nerefと目標トルクTerefを設定する。これら目標回転速度Neref、目標トルクTerefを設定するために、まず、車軸15の駆動動力がステップS201で設定した要求駆動動力SPwとなり、電源系との間の電力授受量WmgがステップS202で設定した要求電力授受量BPwrefとなるようなエンジン4、モータジェネレータMG1、MG2の動作範囲を、ステップS203で設定した動力損失SPwlossおよびモータジェネレータMG1,MG2における機械-電気変換損失を考慮した公知の計算式を用いて設定する。そして、設定した動作範囲内でエンジン4の燃費消費率が最小の動作点における回転速度Ne、トルクTeを、目標回転速度Neref、目標トルクTerefに設定する。
【0037】
ステップ205では、ステップS204で設定した目標回転速度NerefとなるようにモータジェネレータMG1の目標トルクTmg1を設定し、ステップS206では、エンジントルクがステップS204で設定した目標トルクTeref、モータジェネレータMG1のトルクがステップS205で設定した目標トルクTmg1であるとして、車軸15の駆動動力がステップS201で設定した要求駆動動力SPwとなるようにモータジェネレータMG2の目標トルクTmg2を設定する。
【0038】
そして、ステップS207では、ステップS204〜206で設定した目標トルクTeref、Tmg1、Tmg2を対応するECU26、20に出力する。
【0039】
次に、上記ステップS202における要求電力授受量BPwrefの算出処理について説明する。要求電力授受量BPwrefは、現在の発電電費Dg_now[g/kWh]、現在のアシスト電費Da_now[g/kWh]、発電電費閾値現在値Dg_lim_now、電費閾値現在値Da_lim_nowから算出する。本実施形態では、このうち、現在の発電電費Dg_nowと現在のアシスト電費Da_nowはハイブリッド制御ECU24が算出し、発電電費閾値現在値Dg_lim_now、電費閾値現在値Da_lim_nowはナビゲーション装置29が算出してハイブリッド制御ECU24に送信する。そこで、まず、ナビゲーション装置29における発電電費閾値現在値Dg_lim_nowおよびアシスト電費閾値現在値Da_lim_nowの算出・送信処理について説明する。
【0040】
図3は、ナビゲーション装置29内の制御装置が実行する閾値現在値の算出・送信処理を示すフローチャートである。図3において、まず、ステップS301では、出発地から目的地までの予定走行経路を設定する。出発地は、ユーザによって設定された場合にはその設定地とし、それ以外は現在地とする。目的地は、ユーザによって設定された地点とされるが、ユーザによって目的地が設定されない場合であっても、現在地、日時などから目的地が推定できる場合には、その推定した地点を目的地に設定する。
【0041】
続くステップS302は経路分割手段に相当する処理であり、ステップS301で設定した予定走行経路を細かな第1分割区間毎に分割する。本実施形態では、サンプル時間に走行する区間を第1分割区間とし、サンプル時間はたとえば1秒とする。
【0042】
続くステップS303では、予定走行経路を走行する際におけるサンプル時間毎の車速と勾配とを予測する。車速については、ナビゲーション装置29の記憶装置に自車の過去の走行時の車速履歴をデータベースとして保存しておき、このデータベースから自車が前回に同経路を走行した時の車速履歴を呼び出して用いる。勾配については、ナビゲーション装置29の地図データベースの勾配情報を用いてもよいし、外部サーバとの通信で得た勾配情報を用いてもよい。
【0043】
また、このステップS303では、各第1分割区間に対する時間パラメータtime(k)(kは時刻ステップ数を示す自然数)も算出し、保存する。さらに、このステップS303では、予定走行経路を交差点等のチェックポイントにより分割して第2分割区間とする。なお、この第2分割区間は、第1分割区間よりも長い区間であって、道路地図に基づいて分割できる区間であればよい。そして、各第2分割区間への進入時刻を算出し、区間分割データsection_div(l)(lは区間番号)に格納する。なお、各第2分割区間への進入時刻は、ナビゲーション装置29の地図情報と、上述の車速履歴とから算出する。
【0044】
図4に、このステップS303で決定した第2分割区間と、上記区間分割データsection_div(l)のフォーマット例を示す。なお、図4においては第2分割区間を単に分割区間としており、以後の説明においても、単に分割区間というときは第2分割区間を指す。
【0045】
続くステップS304では、各time(k)における走行負荷P(k)[w]、予定走行経路を走行するために必要な総走行エネルギdrive_enrg、および電気負荷総消費エネルギload_enrgを予測する。
【0046】
走行負荷P(k)を予測するには、まず、各time(k)において車両が発生すべき車両駆動力R(k)を下記式1から算出し、その車両駆動力R(k)を式2によって走行負荷P(k)に変換する。この走行負荷P(k)は車軸15に必要なパワーと考えることもできることから、この走行負荷P(k)が請求項の予測駆動動力に相当する。また、ステップS301、S303、S304が予定走行経路情報設定手段に相当する処理である。
(式1) R(k)=W×acc(k)+μr×W+μ1×A×V(k)×V(k)+W×g×sinθ(k)
式1において、W:車両総重量、acc:車両加速度、μr:転がり抵抗係数、μ1:空気抵抗係数、A:前面投影面積、V:車両速度、g:重力加速度、θ:道路勾配であり、W、μr、μ1、A、gは予め記憶された一定値である。VはステップS303で予測した値を用い、Accは車速を微分して求める。θもステップS303で予測した値を用いる。
(式2) P(k)=R(k)×r×ω
式2において、rは車輪半径、ωは車輪角速度である。rは予め記憶された一定値であり、ωは、式1で用いたVから算出する。
【0047】
総走行エネルギdrive_enrgは、上述のようにして算出した走行負荷P(k)のうち正の負荷(正の駆動動力)を、予定走行経路の全区間に渡って時間積分することで算出できる。電気負荷総消費エネルギload_enrgは、予定走行経路を走行する際の平均消費電力load_powerを予測し、この平均消費電力load_powerと走行時間の積から算出する。なお、平均消費電力load_powerは、たとえば、現在の消費電力の平均値を計測して、この消費電力が継続すると仮定してもよいし、過去の履歴から予測してもよい。また、時刻、気温などの情報に基づいてライト、エアコンの動作を予測して、その予測結果に基づいて平均消費電力load_powerを予測してもよい。
【0048】
続くステップS305では、基本燃料消費量fuelrate(k)[g/h]を各time(k)について算出する。基本燃料消費量fuelrateとは、モータジェネレータMGと電源系との間の電力授受量Wmgをゼロと仮定したとき、すなわち、電力授受ライン18を流れる電流をゼロと仮定したときに、ステップS304で予測した走行負荷P(k)をエンジン4のみで出力する場合の燃料消費量である。
【0049】
この基本燃料消費量fuelrateを算出するには、まず、各time(k)に対して、基本エンジン動作点候補(Ne0[i]、Te0[i])を算出する。この基本エンジン動作点候補(Ne0[i]、Te0[i])は、電源系との間の電力授受量Wmgをゼロと仮定したときに、ステップS304で予測した走行負荷P(k)をエンジン4のみで出力する場合のエンジン動作点(すなわち、エンジン回転速度NeとエンジントルクTe)の候補である。なお、ここでの[i]は、1〜n1の間の自然数であり、n1は予め一定数に設定されていてもよいし、可能な候補を全て算出してもよい。また、この基本エンジン動作点候補の算出においては、モータジェネレータMG1、MG2におけるエネルギ変換効率や、動力伝達経路における機械的損失も考慮する。これら変換効率および機械的損失は予め実験に基づいて設定された値を用いる。また、算出することに代えて、走行負荷Pから基本エンジン動作点候補(Ne0[i]、Te0[i])が定まるマップを予め記憶しておき、そのマップから基本エンジン動作点候補(Ne0[i]、Te0[i])を決定するようにしてもよい。
【0050】
次いで、各基本エンジン動作点候補(Ne0[i]、Te0[i])について、単位時間当たりの燃料消費量を算出する。この燃料消費量の算出においては、エンジン動作点と燃料消費量との間の予め記憶したマップを用いる。そして、算出した燃料消費量のうちの最小値を、基本燃料消費量fuelrate(k)とする。
【0051】
続くステップS306では目的地での目標残存エネルギを設定する。本実施形態では、この目標残存エネルギを現時点での残存エネルギとする。そして、発電電費算出手段に相当するステップS307にて各time(k)での発電電費最小値Dg_min(k)および発電電費最小時の電力Pg_min(k)を算出し、アシスト電費算出手段に相当するステップS308にて各time(k)でのアシスト電費最大値Da_max(k)およびアシスト電費最大時の電力Pa_max(k)を算出し、ステップS309にて、各time(k)に対して要求電力授受量BPwrefのスケジューリングを行う。図10に、ステップS303で予測した車速(図10(a))と、ステップS309にて行ったスケジューリング結果(図10(b))とを同一の時間軸上に示す。なお、これらステップS307、S308、S309の処理は、図5〜図9に基づいて後述する。
【0052】
ステップS310では、第2分割区間毎に、発電電費閾値Dg_limおよびアシスト電費閾値Da_limを設定する。この処理は、図13に基づいて後述する。
【0053】
ステップS311では、ステップS301〜S310で算出した各種の情報をナビゲーション装置29内の走行情報データベースに保管する。図11に走行情報データベースを示す。
【0054】
走行情報データベースには、同経路を走行した過去n走分の情報が蓄積されており、過去n走よりも前に走行した時の情報は順次破棄される。蓄積する内容は、図11に示す通りであり、電費情報、計画情報、区間分割データsection_div(l)、総走行エネルギdrive_enrgを含んでいる。電費情報は、図3のステップS301〜308で算出しており、計画情報はステップS310で設定する。区間分割データsection_div(l)はステップS303で算出している。総走行エネルギdrive_enrgはステップS304で算出している。また、走行情報データベースは走行経路毎に用意されており、次に予測される走行経路毎に切り替えて使用する。
【0055】
ステップS312では、この走行情報データベースに蓄積されている走行情報から、過去に同経路を走行した時の走行情報のうちの一つの走行情報を選択して、その走行情報に含まれている計画情報を、次の走行に用いる計画情報とする。図11に示すように、計画情報には、発電電費閾値Dg_lim(l)とアシスト電費閾値Da_lim(l)とが含まれている。従って、このステップS312では、次の走行に用いる発電電費閾値Dg_lim(l)とアシスト電費閾値Da_lim(l)とを選択することになる。なお、このステップS312で選択した閾値を、発電電費閾値Dg_lim_next(l)とアシスト電費閾値Da_lim_next (l)とする。このステップS312の処理も後に詳述する。
【0056】
ここまでのステップS301〜S312の処理は走行前に実行する。そして、走行中は、ステップS313の処理を繰り返し実行する。そのステップS313では、ナビゲーション装置29が逐次決定している現在位置情報から、現在、どの分割区間を走行しているかを判断し、ステップS312で選択した計画情報、すなわち発電電費閾値Dg_lim_next(l)、アシスト電費閾値Da_lim_next(l)から、現在走行中の分割区間に対応する発電電費閾値、アシスト電費閾値をそれぞれ、発電電費閾値現在値Dg_lim_now,アシスト電費閾値現在値Da_lim_nowとして設定し、ハイブリッド制御ECU24に送信する。この発電電費閾値現在値Dg_lim_now,アシスト電費閾値現在値Da_lim_nowは、ステップS202において要求電力授受量BPwrefの算出に用いられる。
【0057】
要求電力授受量BPwrefの算出する処理は後述し、図5〜図9、12に基づいてステップS307、S308、S309の処理を説明する。まず、ステップS307の処理内容を説明する。
【0058】
前述のようにステップS307では、各time(k)での発電電費最小値Dg_min(k)および発電電費最小時の電力Pg_min(k)を算出する。発電電費Dgは、モータジェネレータMG1またはMG2が発電する電力授受量Wmgに対する、増加した燃料消費量の比である。この発電電費Dgは、発電する電力授受量Wmgによってエンジンの動作点が変化したりモータジェネレータMGの発電効率が変化する等の理由により、電力授受量Wmgをパラメータとして変化する。図12の右象限は、発電電費Dgと、モータジェネレータMGから電源系に供給する電力授受量Wmgとの関係を例示する図である。ただし、回生制動時は、電力授受量Wmgを発電することによって燃料消費量が増加しないので、発電電費Dgはゼロとなる。なお、同図の左象限は、後述するアシスト電費Daと、電源系からモータジェネレータMGに供給する電力授受量Wmgとの関係を例示する図である。
【0059】
ステップS307の処理内容を図5に詳しく示す。この図5に示す処理は、図12の右象限に示す曲線上の最小点を決定する処理であり、各time(k)に対して実行する。
【0060】
まず、ステップS501では、電源系の受け入れ可能な電力の最大値(以下、最大受け入れ可能電力という)を決定する。この最大受け入れ可能電力は、各time(k)における電源系内の消費電力と、高圧系バッテリ6の充電可能電力との和である。電源系内の消費電力には、ステップS304で予測したものを用いる。また、高圧系バッテリ6の充電可能電力は、高圧系バッテリ6の充電電力に対する端子電圧の関係と上限電圧とに基づいて定まる値であり、本実施形態では予め記憶した一定値を用いる。
【0061】
続くステップS502では、ステップS501で決定した最大受け入れ可能電力以下において、モータジェネレータMGをエンジン4からの動力によって回転駆動させて発電し、電源系に供給する電力授受量Wmg[i]を決定する。ここで、[i]は、1〜n2の間の自然数であり、n2は、予め設定された一定数であってもよいし、電力授受量Wmgを0〜最大受け入れ可能電力まで所定間隔で設定することによって定まる数でもよい。
【0062】
さらに、このステップS502では、各電力授受量Wmg[i]を発電するようにモータジェネレータMG1またはMG2を駆動させつつ、ステップS304で予測した走行負荷P(k)も満たすようなエンジン4の動作点候補(Neg[i]、Teg[i])を、図3のステップS305と同様にして算出する。以下、このエンジン動作点候補を発電エンジン動作点候補という。なお、一つの電力授受量Wmg[i]に対して複数の発電エンジン動作点候補が存在する場合には、ステップS305と同様の手法により、各発電エンジン動作点候補の燃料消費量を求め、燃料消費量が最小のものを電力授受量Wmg[i]に対応する発電エンジン動作点候補(Neg[i]、Teg[i])とする。
【0063】
続くステップS503では、ステップS502で算出した各発電エンジン動作点候補(Neg[i]、Teg[i])について、単位時間当たりの燃料消費量(以下、発電時燃料消費量という)Fg[i]を算出する。この処理も各time(k)に対して行う。この発電時燃料消費量Fg[i]の算出には、エンジン動作点と燃料消費量との間の予め記憶したマップを用いる。このステップS503の処理も各time(k)に対して行う。
【0064】
続くステップS504では、ステップS503で算出した発電時燃料消費量Fg[i](i=1~n2)に対して、その発電時燃料消費量Fg[i]に対応する電力授受量Wmg[i]とステップS305で算出した基本燃料消費量base_fuelrate(k)とを用いて、以下の式3から、発電電費Dg[i] (i=1~n2)をそれぞれ算出する。この処理も各time(k)に対して行う。
(式3) Dg[i] = (Fg[i] -base_fuelrate(k)/ Wmg[i])
式3の右辺から分かるように、発電電費Dg[i]の絶対値が小さいほど、同じ電力をより少ない燃料増加量で発電することができ、効率よく燃料消費量を低減できることになる。
【0065】
続くステップS505では、ステップS504で算出した発電電費Dg[i]のうちの最小値を、time(k)についての発電電費最小値Dg_min(k)に決定するとともに、そのときの発電電力を発電電費最小時の電力Pg_min(k)に決定する。
【0066】
次に、上記ステップS308の処理内容を図6に基づいて説明する。前述のようにステップS308では、各time(k)でのアシスト電費最大値Da_max(k)およびアシスト電費最大時の電力Pa_max(k)を算出する。アシスト電費Daは、電源系から供給する電力授受量Wmg]に対する、低減される燃料消費量の比である。このアシスト電費Daは、モータジェネレータMGの駆動効率がモータジェネレータMGに供給される電力量によって変化する等の理由により、図12の左象限に示すように、電力授受量Wmgをパラメータとして変化する。図6に示す処理は、図12に左象限に示す曲線上の最大点を決定する処理であり、各time(k)に対して実行する。
【0067】
まず、ステップS601では、電源系からモータジェネレータMG側へ供給可能な最大電力(以下、最大供給可能電力という)を決定する。この最大供給可能電力は、高圧系バッテリ6の放電可能電力から電源系内の消費電力を引いた値である。ここで、高圧系バッテリ6の放電可能電力は、高圧系バッテリ6の放電電力に対する端子電圧の関係と下限電圧とに基づいて定まる値であり、本実施形態では予め記憶した一定値を用いる。また、電源系内の消費電力は、ステップS304と同様に平均消費電力を用いる。ただし、過去の走行履歴に基づいてtime(k)毎に電源系内の消費電力を予測してもよい。
【0068】
続くステップS602では、図3のステップS304で予測した走行負荷P(k)をモータジェネレータMG2のみで出力するとした場合にそのモータジェネレータMG2に電源系から供給する必要がある電力を、最大必要電力として算出する。
【0069】
続くステップS603では、ステップS601で決定した最大供給可能電力以下、且つ、ステップS602で算出した最大必要電力以下において、電源系からモータジェネレータMGへ供給する電力授受量Wmg[i]を決定する。なお、電源系からモータジェネレータMGへ電力を供給する場合の電力を負とする。ここで、[i]は、1〜n3の間の自然数であり、n3は予め設定された一定数であってもよいし、電力授受量Wmgを0〜最大必要電力量まで所定間隔で設定することによって定まる数でもよい。
【0070】
さらに、このステップS603では、各電力授受量Wmg[i]をモータジェネレータMGに供給してモータジェネレータMGを回転駆動させ、それによって生じる動力を車軸15に伝達したと仮定して、残りの走行負荷P(k)をエンジン4において発生させるとしたときのエンジン動作点候補(Nea[i]、Tea[i])を、図5のステップS502と同様にして算出する。以下、このエンジン動作点候補をアシストエンジン動作点候補という。なお、ステップS603で決定した一つの電力授受量Wmg[i]に対して複数のアシストエンジン動作点候補が存在する場合には、図5のステップS502と同様の手法により、各アシストエンジン動作点候補の燃料消費量を求め、燃料消費量が最小のものを電力授受量Wmg[i]に対応するアシストエンジン動作点候補(Nea[i]、Tea[i])とする。
【0071】
続くステップS604では、ステップS603で算出した各アシストエンジン動作点候補(Nea[i]、Tea[i])について、単位時間当たりの燃料消費量(以下、アシスト時燃料消費量という)Fa[i]を算出する。ステップS503と同様に、このアシスト時燃料消費量Fa[i]の算出には、エンジン動作点と燃料消費量との間の予め記憶したマップを用いる。このステップS604の処理も各time(k)に対して行う。
【0072】
続くステップS605では、ステップS604で算出したアシスト時燃料消費量Fa[i] (i=1~n3)に対して、そのアシスト時燃料消費量Fa[i]に対応するアシスト電力授受量Wmg[i]とステップS305で算出した基本燃料消費量base_fuelrate(k)とを用いて、以下の式4から、アシスト電費Da[i] (i=1~n3)をそれぞれ算出する。
(式4) Da[i] = (Fa[i] -base_fuelrate(k) / Wmg[i])
式4の右辺から分かるように、アシスト電費Da[i]が大きいほど、同じ投入電力でより多くの燃料消費量が低減できることになり、効率よく燃料消費量を低減できることになる。なお、前述のように、電源系からモータジェネレータMGに電力が供給される場合は負の値としている。そのため、式4において分母、分子とも負の値となるので、アシスト電費Da[i]は正の値である。
【0073】
ステップS606では、ステップS605で算出したアシスト電費Da[i]のうちの最大値を、time(k)についてのアシスト電費最大値Da_max(k)に決定するとともに、そのときのアシスト電力をアシスト電費最大時の電力Pa_max(k)に決定する。
【0074】
次に、図7に基づいてステップS309の処理を具体的に説明する。この図7の処理は、目的地における高圧系バッテリ6の残存エネルギが図3のステップS306で設定した目標残存エネルギとなり、かつ、目的地までの走行途中においてバッテリの残存エネルギが予め設定した上下限範囲内に入るという条件で、予定走行経路を走行した場合の燃料消費量が最小となるように、各time(k)における計画電力授受量scheduled_power(k)を決定する処理である。
【0075】
図7において、まず、ステップS701では、まず、図5のステップS505で各time(k)に対して決定した発電電費最小値Dg_min(k)を小さい順にソートする。続くステップS702では、図6のステップS606で各time(k)に対して決定したアシスト電費最大値Da_max(k)を大きい順にソートする。
【0076】
続くステップS703およびS704では、上記ステップS701、702でソートした発電電費最小値Dg_min(k)、アシスト電費最大値Da_max(k)を用いて電力授受のスケジューリングを行う。まず、ステップS703において、回生電力のスケジューリングを行う。
【0077】
図8は、ステップS703の処理内容を詳しく示すフローチャートである。図8において、まず、ステップS801では、全time(k)から回生を行う時刻を検索する。回生を行う時刻は発電電費最小値Dg_min(k)がゼロとなる時刻である。
【0078】
続くステップS802では、ステップS801で検索した各回生時刻において、該当時刻における発電電費最小時の電力Pg_min(k)を発電することに決定し、それら発電電費最小時の電力Pg_min(k)の合計値に基づいて総回生エネルギregen_enrgを算出する。
【0079】
続くステップ803では、ステップS802で算出した総回生エネルギregen_enrgがステップS304で予測した電気負荷総消費エネルギload_enrgよりも大きいか否を判断する。この判断が肯定判断となる場合には、回生エネルギのみで電気負荷によって消費されるエネルギを全て賄うことができることになる。この場合にはステップ804にて、regen_enrgの値を、ステップS802で算出した総回生エネルギregen_enrgからステップS304で予測した電気負荷総消費エネルギload_enrgを差し引いた値に更新する。この更新後のregen_enrgは、回生によって得られるエネルギのうち、電気負荷における消費エネルギを賄った後に残るエネルギである。
【0080】
ステップS806では、ステップS804にて更新したregen_enrgを、ステップS702におけるソート結果に基づいて、アシスト電費最大値Da_max(k)が高いtime(k)から順に分配する。各time(k)に分配するエネルギは、各time(k)におけるアシスト電費最大時の電力Pa_max(k)×サンプル時間とする。このステップS806における分配処理は、regen_enrgが少なくなって、エネルギが分配されていない区間のうちでアシスト電費最大値Da_max(k)が最も高いtime(k)に対してエネルギが分配できなくなるまで行う。このステップS806でエネルギが分配されたtime(k)はscheduled_power(k)が確定したことになる。
【0081】
そして、ステップS806のエネルギ分配処理が終了したら、ステップS807にて、高圧系バッテリ6に要求する要求エネルギdemand_enrgをゼロとして本サブルーチンを終了し、図6のステップS604へ進む。
【0082】
ステップS803が否定判断となる場合には、回生エネルギのみでは電気負荷によって消費されるエネルギを全て賄うことができないことになる。この場合にはステップ805にて、要求エネルギdemand_enrgの値を、ステップS304で予測した電気負荷総消費エネルギload_enrgからステップS802で算出した総回生エネルギregen_enrgを差し引いた値として、本サブルーチンを終了し、図7のステップS704へ進む。
【0083】
図6のステップS704における回生電力以外のスケジューリング処理は図9に示してある。次に、この図9に基づいてステップS704の処理を説明する。図9において、まず、ステップS901では、計画電力授受量schduled_power(k)が未確定のtime(k)のうちで、アシスト電費最大値Da_max(k)が最も大きい時刻(以下、この時刻を時刻taという)を抽出する。続くステップS902では、ステップS901で抽出した時刻taにおいてモータジェネレータMGが電源系に要求するエネルギを、アシスト電費最大時の電力Pa_max(k)×サンプル時間から算出し、算出値をdemand_enrgに加算する。
【0084】
続くステップS903では、計画電力授受量schduled_power(k)が未確定のtime(k)のうちで、発電電費最小値Dg_min(k)が最も小さい時刻(以下、この時刻を時刻tgという)を抽出する。そして、続くステップS904では、時刻taでのアシスト電費最大値Da_max(k)が時刻tgでの発電電費最小値Dg_min(k)よりも大きいか否かを判断する。
【0085】
このステップS904が肯定判断となる場合には、時刻tgにおいて発電した電力を用いて時刻taでアシスト走行することにより、燃費が向上することになる。この場合には、ステップS905に進んで、ステップS903で抽出した時刻tgにおける発電電費最小時ののエネルギ(Pg_min(k)×サンプル時間)をleft_enrgに加算する。
【0086】
続くステップS906では、left_enrgがdemand_enrgよりも大きいか否かを判断する。この判断が否定判断である場合には、直前のステップS903で抽出した時刻tgにおいて発電しても、時刻taにおいてモータジェネレータMGを駆動させるための電力を賄えないことになる。そこで、ステップS903へ戻り、再度、計画電力授受量schduled_power(k)が未確定のtime(k)のうちで、発電電費最小値Dg_min(k)が最も小さい時刻tgを抽出し、新たに抽出した時刻tgにおける発電電費最小値Dg_min(k)を用いてステップS904を再度判断する。
【0087】
ステップS904が否定判断となる場合には、時刻tgで発電した電力を用いて時刻taでアシスト走行しても燃費が向上しないことになる。この場合には、ステップS910へ進んで、目的地にて図3のステップS306で設定した目標残存エネルギとなるように、スケジューリングを修正する。
【0088】
スケジューリングの修正方法は、スケジューリングした計画電力授受量scheduled_power(k)の積分値とステップ304で予測した電気負荷総消費エネルギload_enrgから、予定走行経路を走行する前後での残存エネルギの変化量を算出する。その変化量が負である場合、すなわち、残存エネルギが減少する場合には、発電走行する時間を追加するか、アシスト走行する時間を減らすか、その両方を行う。一方、残存エネルギの変化量が正である場合、すなわち、残存エネルギが増加する場合には、発電走行する時間を減らすか、アシスト走行する時間を追加するか、その両方を行う。発電走行する時間の追加、削除、アシスト走行する時間の追加、削除は、発電電費最小値Dg_min(k)、アシスト電費最大値Da_max(k)に基づいて、燃費向上の効果が少ない時刻から順に行う。なお、各時刻における発電またはアシストの電力Pは、それぞれその時刻における発電電費最小時の電力Pg_min(k)またはアシスト電費最大時の電力Pa_max(k)とする。
【0089】
ステップS906が肯定判断となる場合には、1つまたは複数の時刻tgにおいて発電した電力を用いて時刻taでアシスト走行することにより、燃費がさらに向上することになる。そこで、ステップS907へ進んで、時刻taにおける計画電力授受量schduled_power(k)を、その時刻taにおける発電電費最小時の電力Pg_min(k)に確定する。
【0090】
そして、ステップS908では、ステップS905にて算出したleft_enrgから上記ステップS907で確定したdemand_enrgを差し引いた値を新たなleft_enrgとし、ステップS909では、demand_enrgをゼロにリセットする。その後、ステップS901へ戻り、アシスト走行を行う時刻taの候補を抽出する。そして、前述のステップS902以降の処理を繰り返す。
【0091】
このようにして回生電力以外のスケジューリングを行ったら、図7に戻ってステップS705を実行する。ステップS705では、スケジューリング通りに発電、アシストを行った場合に、高圧系バッテリ6の残存エネルギが上下限を越えないようにスケジューリングを修正する。そのために、まず、スケジューリングしたエネルギを積分することにより、高圧系バッテリ6の残存エネルギを各time(k)について算出する。そして、残存エネルギが上下限を越えている場合には、そのtime(k)におけるモータジェネレータMG側と電源系との間で授受される電力を少なくして、その時刻における残存エネルギが上下限内に入るようにする。また、それとともに、少なくした分だけ反対方向の電力授受量Wmgも少なくする。反対方向の電力授受量Wmgを少なくする時刻は、発電する時刻の電力授受量Wmgを少なくするのであれば、最も発電電費Dgの高い時刻とし、アシスト走行する時間の電力授受量Wmgを少なくするのであれば、最もアシスト電費Daの小さい時刻とする。
【0092】
図10(b)は、このようにして決定した計画電力授受量scheduled_power(k)を示すタイムチャートである。このようにして電力授受量のスケジューリングを決定したら、図3に戻って、前述したステップS310を実行することにより、各第2分割区間に対して、発電電費閾値Dg_limおよびアシスト電費閾値Da_limを設定する。
【0093】
図13は、ステップS310の処理を詳しく示すフローチャートである。この図13に示す処理は、実際の走行時に、ステップS309で決定した計画電力授受量scheduled_power(k)により近い発電/アシストが実現できる発電電費閾値Dg_limおよびアシスト電費閾値Da_limを第2分割区間毎に決定する処理である。
【0094】
発電電費閾値Dg_limおよびアシスト電費閾値Da_limを第2分割区間毎に決定するために、この図13では、各第2分割区間の発電電費閾値Dg_limおよびアシスト電費閾値Da_limを変化させつつ、予定走行経路を走行した時の電力収支を第2分割区間毎に推定する。そして、推定した電力収支が計画電力授受量scheduled_power(k)から算出できる電力収支に略一致するときの発電電費閾値Dg_limおよびアシスト電費閾値Da_limを、走行情報データベースに保存する閾値とする。以下、各ステップを説明する。
【0095】
ステップS1301では、ステップS309で決定した計画電力授受量scheduled_power(k)を取得する。続くステップS1302では、分割区間カウンタiを1にリセットし、前分割区間の未補正分エネルギerror_previousをゼロにリセットする。この未補正分エネルギerror_previousについては後述する(図14)。
【0096】
続くステップS1303では、各分割区間iの発電電費閾値Dg_lim(i)を設定する。詳しくは、まず、区間分割データを参照して、各分割区間iの進入時刻section_div(i)と、次の分割区間i+1の進入時刻section_div(i+1)とを取得して、time(k)がその間に入っているkに対し、ステップS309で決定した計画電力授受量scheduled_power(k)を取得する。この取得した計画電力授受量scheduled_power(k)が0よりも大きく(すなわち発電が計画されており)、かつ、発電電費最小値Dg_min(k)が最大となるものを、その分割区間iの発電電費閾値Dg_lim(i)に設定する。
【0097】
続くステップS1304では、各分割区間iのアシスト電費閾値Da_lim(i)を設定する。詳しくは、まず、区間分割データを参照して、上述のステップS1303と同様にして各分割区間i内のtime(k)に対し、ステップS309で決定した計画電力授受量scheduled_power(k)を取得する。この取得した計画電力授受量scheduled_power(k)が0よりも小さく(すなわちアシストが計画されており)、かつ、アシスト電費最大値Da_max(k)が最小となるものを、その分割区間iのアシスト電費閾値Da_lim(i)に仮設定する。
【0098】
続くステップS1305では、分割区間iにおける計画電力授受量scheduled_power(k)を時間積分して、分割区間iにおける理想電力収支opt_balanceを算出する。続くステップS1306では、分割区間iの電力収支が、上記ステップS1305で算出した理想電力収支opt_balanceに略一致するように、分割区間iのアシスト電費閾値Da_lim(i)を補正する。このステップS1306の処理は後述する(図14)。
【0099】
ステップS1307では、分割区間カウンタiが第2分割区間の数に一致しているか否かを判断する。この判断が否定判断の場合には、ステップS1308にて分割区間カウンタiに1を加算して、次の分割区間に対してステップS1303以下を実行する。一方、分割区間カウンタiが第2分割区間の数に一致している場合には処理を終了する。この場合には、図3のステップS311へ進む。
【0100】
次に、上記図13のステップS1306の処理を説明する。図14は、図13のステップS1306の処理を詳しく示すフローチャートである。図14に示す処理は、各分割区間iの電力収支を推定しながら、各分割区間iの電力収支が計画電力授受量scheduled_power(k)の電力収支(すなわち理想電力収支)に略一致するようにアシスト電費閾値Da_limを補正する処理である。
【0101】
なお、この図14における電力収支の推定方法は、後述する走行中の要求電力授受量BPwrefの算出方法と同様の算出方法である。すなわち、この図13のステップS1306の処理は、実際に走行した時の各分割区間iの電力収支を走行前に事前に推定し、その推定した電力収支が理想電力収支opt_balanceにできるだけ近づく閾値を設定する処理である。この処理により、実際の走行時における各分割区間iの電力収支を理想電力収支opt_balanceに近づけることができる。
【0102】
図14において、まず、ステップS1401では、発電電費閾値がDg_lim(i)、アシスト電費閾値がDa_lim(i)となった場合の分割区間iの基本電力収支base_balanceを推定する。このステップS1401の処理は図15に基づいて後述するが、この基本電力収支base_balanceは、実際の走行時の各分割区間iの電力収支の推定値である。
【0103】
続くステップS1402では、現分割区間iの目標電力収支tg_balanceを決定する。この目標電力収支tg_balanceは、図13のステップS1305で算出した理想電力収支opt_balanceと前分割区間i-1での未補正分error_previousとの和から、図3のステップS304で算出したload_powerに分割区間iの走行時間をかけた値を引いた値である。前分割区間i-1での未補正分error_previousを加えている理由は、実際の走行時の電力収支と計算時の電力収支との誤差を走行経路全体で小さくするためである。
【0104】
続くステップS1403では、ステップS1401で推定した基本電力収支base_balanceがステップS1402で決定した目標電力収支tg_balanceよりも大きいか否かを判断する。この判断は目標電力収支よりも充電気味であるか否かを判断していることになる。
【0105】
上記ステップS1403が肯定判断の場合、すなわち、充電気味である場合には、ステップS1404へ進み、アシスト電費閾値Da_lim(i)を所定値減少させる。実際の走行時にはアシスト電費閾値Da_lim(i)以上となるように要求電力授受量BPwrefが求められるため、アシスト電費閾値Da_lim(i)を減少させることで、より低いアシスト電費でもアシストが行われるようになるので、結果的に、分割区間iの推定電力収支temp_balenceは放電気味にシフトすることになる。
【0106】
続くステップS1405では、上記ステップS1404で値を減少させたアシスト電費閾値Da_lim(i)と、ステップS1401で用いた発電電費閾値Dg_lim(i)とに基づいて、ステップS1401と同様にして分割区間iの電力収支temp_balanceを推定する。
【0107】
続くステップS1406では、ステップS1405で推定した電力収支temp_balanceがステップS1402で決定した目標電力収支tg_balanceよりも大きいか否かを判断する。この判断が否定判断である場合にはステップS1404〜S1406を繰り返す。この繰り返しにより、アシスト電費閾値Da_lim(i)は徐々に減少していき、分割区間iの電力収支temp_balanceは徐々に放電気味にシフトしていく。そして、ステップS1406の判断が肯定判断となった場合、すなわち、電力収支が放電側に移行した場合にはステップS1410へ進む。
【0108】
前述のステップS1403が否定判断の場合、すなわち、充電気味である場合には、ステップS1407へ進み、アシスト電費閾値Da_lim(i)を所定値増加させる。アシスト電費閾値Da_lim(i)を増加させることで、アシストが行われにくくなるので、結果的に、分割区間iの推定電力収支temp_balenceは充電気味にシフトすることになる。
【0109】
続くステップS1408では、上記ステップS1407で値を増加させたアシスト電費閾値Da_lim(i)と、ステップS1401で用いた発電電費閾値Dg_lim(i)とに基づいて、ステップS1401と同様にして分割区間iの電力収支temp_balanceを推定する。
【0110】
続くステップS1409では、ステップS1408で推定した電力収支temp_balanceがステップS1402で決定した目標電力収支tg_balanceよりも大きいか否かを判断する。この判断が否定判断である場合にはステップS1407〜S1409を繰り返す。この繰り返しにより、アシスト電費閾値Da_lim(i)は徐々に増加していき、分割区間iの電力収支temp_balanceは徐々に充電気味にシフトしていく。そして、ステップS1409の判断が肯定判断となった場合、すなわち、電力収支が充電側に移行した場合にはステップS1410へ進む。
【0111】
ステップS1410では、現分割区間iで補正しきれなかった電力収支、すなわち、目標電力収支tg_balanceと電力収支temp_balanceとの差を算出し、算出結果を、前分割区間での未補正分error_previousとして保存する。
【0112】
次に、図14のステップS1401の処理を説明する。図15は、図14のステップS1401の処理を詳しく示すフローチャートである。図15に示す処理は、発電電費閾値がDg_lim(i)、アシスト電費閾値がDa_lim(i)となった場合の分割区間iの基本電力収支base_balanceを推定する処理である。
【0113】
まず、ステップS1501では、分割区間iの基本電力収支base_balanceをゼロに初期化し、続くステップS1502では、時刻インデックスjをゼロに初期化する。この時刻インデックスjは、kと同様に時刻ステップ数を示す自然数である。
【0114】
続くステップS1503では、section_div(i)≦time(j)<section_div(i+1)となるか否かを判断することにより、時刻インデックスjが分割区間iに属するか否かを判断する。時刻インデックスjが分割区間iに属すると判断されない場合(NO)は、その時刻インデックスjの処理を飛ばしてステップS1511に進む。
【0115】
時刻インデックスjが分割区間iに属する場合(YES)は、ステップS1504にて発電電費改善量Dg_impを下記式5から算出する。
(式5) Dg_imp=max(Dg_lim(i)-Dg_min(j),0)
ここで、max(x,y)はx,yのうちどちらか大きい方を取る関数を示す。式5において、発電電費閾値Dg_lim(i)は、図13のステップS1303で設定したものを用い、発電電費最小値Dg_min(j)は、図3のステップS307で算出したものを用いる。
【0116】
続くステップS1505では、アシスト電費改善量Da_impを下記式6から算出する。
(式6) Da_imp = max(Da_max(j)-Da_lim(j), 0)
式6において、アシスト電費閾値Da_lim(i)は、図13のステップS1304で設定したものを用い、アシスト電費最小値Da_min(j)は、図3のステップS308で算出したものを用いる。
【0117】
これら発電電費改善量Dg_imp、アシスト電費改善量Da_impは、それぞれ、発電による電費の改善量、アシスト走行による電費の改善量を示しており、実際の走行時にもこれら発電電費改善量Dg_imp、アシスト電費改善量Da_impを算出している。
【0118】
続くステップS1506では、発電電費改善量Dg_impがゼロ、かつ、アシスト電費改善量Da_impもゼロであるかを判断する。肯定判断の場合は、発電を行っても、また、アシスト走行を行っても燃費は改善しないので、実際の走行時の要求電力授受量BPwrefがゼロになると推定し、基本電力収支base_balanceの加減算は行わずに、ステップS1510に進む。
【0119】
ステップS1506がNOの場合にはステップS1507へ進む。ステップS1507では、発電電費改善量Dg_impがアシスト電費改善量Da_imp以上であるかを判断する。発電電費改善量Dg_impがアシスト電費改善量Da_imp以上である(YES)と判断された場合は、実際の走行において該当時刻で発電が行われると推定し、基本電力収支base_balanceに、発電電費最小時の電力Pg_min(j)×サンプル時間を加算し、ステップS1510へ進む。
【0120】
一方、ステップS1507で発電電費改善量Dg_impがアシスト電費改善量Da_impより小さい(NO)と判断された場合は、実際の走行において該当時刻でアシストが行われると推定し、基本電力収支base_balanceにアシスト電費最大時の電力Pa_max(j)×サンプル時間を加算し、ステップS1510へ進む。
【0121】
ステップS1510では、ステップS304で推定した平均消費電力load_powerを用い、基本電力収支base_balanceから平均消費電力load_power×サンプル時間を減算する。これは、電力収支に電気負荷で消費される電力の影響を反映させるためである。
【0122】
続くステップS1511では、時刻インデックスjが全サンプル数に達したかを判断し、達していない場合(NO)はステップS1512でjに1を加算してステップS1503に戻り、達している場合(YES)は、上位ルーチン、すなわち、図14に戻る。
【0123】
そして、図14の終了後は、図14の上位ルーチン、すなわち、図13に戻る。そして、図13の終了後は、図13の上位ルーチン、すなわち、図3に戻り、ステップS311を実行する。
【0124】
図3のステップS311では、前述のように、ステップS301〜S310で算出した各種の情報をナビゲーション装置29内の走行情報データベースに保管する。そして、続くステップS312では、走行情報データベースに蓄積されている走行情報から、過去に同経路を走行した時の走行情報のうちの一つの走行情報を選択して、その走行情報に含まれている計画情報を、次の走行に用いる計画情報とする。
【0125】
次に、このステップS312の処理内容を詳しく説明する。図16に計画情報の選択処理のフローチャートを示す。まず、ステップS1601では、平均推定燃料消費量est_fuel_ave(i) (i=1〜n)を算出する。
【0126】
平均推定燃料消費量est_fuel_ave(i)とは、i走前の計画情報を用いて、その計画情報と同じ走行経路を走行した過去n走分の走行パターンを走行したと仮定した場合の平均燃料消費量の推定値である。ここで、計画情報とは、図11に示すように、発電電費閾値Dg_lim(l)、アシスト電費閾値Da_lim(l)(lは分割区間の番号)である。従って、平均推定燃料消費量est_fuel_ave(i)とは、i走前の発電電費閾値Dg_lim(l)、アシスト電費閾値Da_lim(l)を用いて、同じ走行経路を走行した過去n走分の走行パターンを走行したと仮定した場合の平均燃料消費量の推定値である。なお、ここでのiは、分割区間の番号を示すiとは別の意味で用いており、ステップS1601では、i=1〜nまでについて、平均推定燃料消費量est_fuel_ave(i)を算出する。
【0127】
図17に、平均推定燃料消費量est_fuel_aveの算出方法を概念的に示す。図17において、計画iは、i走前の走行(走行iとする)に対する計画情報を意味する。また、推定燃料消費量est_fuel(i,j)は、計画iで過去の走行j(j=1〜n)の走行パターンを走行した場合の燃料消費量推定値である。
【0128】
平均推定燃料消費量est_fuel_aveを算出するためには、まず、計画iを用いて、同経路におけるj走前の走行(以下、走行j)における走行パターンを走行した場合の燃料消費量である推定燃料消費量est_fuel(i,j)をi=1〜n、j=1〜nのすべてのパターン(すなわちnの乗通り)について推定する。なお、推定方法は後述する(図18)。
【0129】
そして、推定燃料消費量est_fuel(i,1)〜est_fuel(i,n)の平均値を取ることで、計画iにおける平均推定燃料消費量est_fuel_ave(i)を算出する。
【0130】
ステップS1601で平均推定燃料消費量est_fuel_ave(i)を算出した後、ステップS1602で、平均推定燃料消費量est_fuel_ave(i)が最小となるiを算出し、走行情報データベースからi走前の計画情報である発電電費閾値Dg_lim(l)、アシスト電費閾値Da_lim(l)を読み出し、次走の発電電費閾値Dg_lim_next(l),アシスト電費閾値Da_lim_next(l)とする。
【0131】
次に、図18を用いて、推定燃料消費量est_fuel(i,j)の算出方法を説明する。まず、ステップS1801にて、走行情報データベースから走行iの計画情報(計画i)を取得する。続くステップS1802では、走行情報データベースから走行jの電費情報、区間分割データsection_div(l)、総走行エネルギdrive_enrgを取得する。
【0132】
続くステップS1803では、走行jの電費情報内のデータである基本燃料消費量base_fuelrate(k) [g/h]を用いて、合計基本燃料消費量base_fuel [g]を算出する。合計基本燃料消費量とは、走行jをすべて電力授受量ゼロで走行した場合の合計燃料消費量である。この合計基本燃料消費量base_fuelは下記式7に示すように、base_fuelrate(k)[g/h]×サンプル時間[s]/3600を走行jのすべての時刻に対して合計したものである。なお、式7において、DATA_NUMはサンプル数を示す。
【0133】
【数7】
【0134】
続くステップS1804では、時刻インデックスkを1に初期化し、ステップS1805では、燃料増減量fuel_zougen [g]をゼロに初期化する。この燃料増減量fuel_zougenとは、走行jをすべて電力授受量ゼロで走行した場合の燃料消費量(すなわち基本燃料消費量base_fuel)に対して、計画iを用いて回転電機側と電源系との電力授受量を決定することにより増減する燃料消費量を示し、正側を燃料増加側とする。
【0135】
続くステップS1806では、区間分割データsection_div(l)から、時刻time(k)の属する分割区間lを算出する。次に、ステップS1807において、計画iから分割区間lの計画iでの発電電費閾値Dg_lim(l),アシスト電費閾値Da_lim(l)を設定する。
【0136】
続くステップS1808では、現時刻ステップkでの発電電費改善量Dg_impを下記式8から算出し、ステップS1809では、現時刻ステップkでのアシスト電費改善量Da_impを下記式9から算出する。
(式8) Dg_imp=max(Dg_lim(l)-Dg_min(k),0)
(式9) Da_imp = max(Da_max(l)-Da_lim(k), 0)
続くステップS1810では、発電電費改善量Dg_imp=0かつアシスト電費改善量Da_imp=0であるかを判断する。この判断がYESの場合は、現時刻ステップkでの推定電力授受量powwer_est(k)がゼロになると推定し、時刻ステップkでの推定電力授受量power_est(k)=0とした後に、ステップS1817へ進む。
【0137】
ステップS1810がNOの場合は、発電またはアシストが行われると推定し、ステップS1811に進み、発電電費改善量Dg_impがアシスト電費改善量Da_imp以上であるかを判断する。ステップS1811がYESの場合は、現時刻ステップkで発電が行われると推定し、ステップS1812へ進んで、現時刻ステップkの電力授受量power_est(k)を発電電費最小時の電力授受量Pg_min(k)にセットする。
【0138】
そして、ステップS1813に進んで、時刻ステップkでの発電による燃料消費量の増加分「Pg_min(k) [W] / 1000 × Dg_min(k) [g/kWh] × サンプル時間[s] / 3600」を燃料増減量fuel_zougenに加算して、ステップS1817に進む。
【0139】
ステップS1811がNOの場合は、現時刻ステップkでアシストが行われると推定し、ステップS1814へ進んで、現時刻ステップkの電力授受量power_est(k)をアシスト電費最小時の電力授受量Pa_max(k)にセットする。そして、ステップS1815に進んで、時刻ステップkでのアシストによる燃料消費量の減少分「Pa_max(k) [W] / 1000 × Da_max(k) [g/kWh] × サンプル時間[s] / 3600」を燃料増減量fuel_zougenに加算(Pa_max(k)は負なので、実質は減算)してステップS1817に進む。
【0140】
ステップS1817では、kが走行jのすべてのサンプル数に達しているかを判断する。
達していない場合(NOの場合)はステップS1818でkに1を加算してステップS1806に戻り、次の時刻ステップkに進む。kが走行jのすべてのサンプル数に達している場合(YESの場合)はステップS1819に進み、ステップS1803で算出した合計基本燃料消費量base_fuelと燃料増減量fuel_zougenとの和を取ることで、推定燃料消費量est_fuel(i,j)を算出する。
【0141】
次に、ステップS1820で、計画jを用いて走行iを走行したと仮定した場合の推定電力収支est_syusi[J]を算出する。この推定電力収支est_syusiは下記式10に示すように、すべての時刻ステップkにおける推定電力授受量power_est(k)×サンプル時間を合計し、その合計値から、ステップS304で算出した電気負荷総消費エネルギload_enrgを差し引くことで算出する。
【0142】
【数10】
【0143】
次に、ステップS1821にて、ステップS1820で算出した推定電力収支est_syusiを用いて推定燃料消費量est_fuel(i,j)の電力収支補正を行い、推定燃料消費量est_fuel(i,j)を確定させる。
【0144】
上記電力収支補正とは、ステップS1819で算出した推定燃料消費量を、走行中の電力収支をゼロと仮定したときの燃料消費量に補正する処理である。この電力収支補正を行う理由は、ハイブリッド車両ではバッテリの電気エネルギの蓄電量が走行前後で相違することによっても燃料消費量が増減するためである。具体的には、走行前後でバッテリの電力収支が正(増加)となった場合は、増加した電気エネルギを発電した分だけ燃料消費量が増大し、バッテリの電力収支が負(減少)となった場合は、減少した電気エネルギがエンジンアシストや電動走行に使われるため、燃料消費量が減少するからである。
【0145】
以下に、電力収支補正の方法を示す。ステップS1820で算出した推定電力収支est_syusiが正(増加)の場合、電力収支がゼロになった場合には、増加した電気エネルギ分だけ駆動エネルギを削減できると仮定し、下記式11にて推定燃料消費量を減少側に補正する。
(式11)est_fuel(i,j)(補正後)=
est_fuel(i,j)(補正前)−est_syusi×α×est_fuel(i,j)(補正前)/drive_enrg
右辺第2項のest_syusi×αは、増加した電気エネルギで発生できる駆動エネルギであり、αは電気エネルギから駆動エネルギへの変換効率を示す。αは、様々な走行モードにおける変換効率から事前に実験的に求めた平均値である。右辺第2項のest_fuel(i,j)(補正前)/drive_enrgは単位駆動エネルギ当たりに必要な燃料消費量を示す。drive_enrgは、ステップS1802で走行情報データベースから取得した値である。
【0146】
よって、右辺第2項は、増加した電気エネルギによって発生できる駆動エネルギに単位駆動エネルギの発生に必要な燃料消費量を乗算しているので、増加した電気エネルギで削減しうる燃料消費量を表しており、上式において補正前の燃料消費量est_fuel(i,j)(補正前)から右辺第2項を差し引くことで、電力収支ゼロでの燃料消費量est_fuel(i,j)(補正後)を推定している。
【0147】
ステップS1820で推定した推定電力収支est_syusiが負(減少)の場合、電力収支がゼロになった場合には、減少した電気エネルギ分だけ発電が必要であると仮定し、下記式12にて推定燃料消費量を増加側に補正する。
(式12) est_fuel(i,j)(補正後) =
est_fuel(i,j)(補正前)−est_syusi ÷α×est_fuel(i,j)(補正前)/ 駆動エネルギdrive_enrg
右辺第2項のest_syusi÷αは、減少した電気エネルギを発生するために必要な駆動エネルギであり、αはest_syusiが正の場合と同様である。右辺第2項のest_fuel(i,j)(補正前)/drive_enrgはest_syusiが正の場合と同様である。よって、右辺第2項は、減少した電気エネルギ分を発電するために必要な駆動エネルギに、単位駆動エネルギの発生に必要な燃料消費量を乗算しているので、減少した電気エネルギを発生するのに必要な燃料消費量を表しており、補正前の燃料消費量にこれを加算する。なお、式12では、右辺第2項にはマイナスの符号がついているが、est_syusiが負なので実質的には加算である。以上のようにして、電力収支がゼロのときの推定燃料消費量est_fuel(i,j)を確定できる。
【0148】
この図18に示す処理を全ての(i,j)について行うことにより、図17に示す表の「平均」の欄以外を算出することができる。そして、前述のように、推定燃料消費量est_fuel(i,1)〜est_fuel(i,n)の平均値を取ることで、計画iにおける平均推定燃料消費量est_fuel_ave(i)を算出する。その後、図16のステップS1602にて、次走の発電電費閾値Dg_lim_next(l),アシスト電費閾値Da_lim_next(l)を決定する。
【0149】
以上が走行前に実行する処理であり、走行中は、図3のステップS313の処理を繰り返し実行する。ステップS313では、前述のように、ステップS312で選択した計画情報、すなわち発電電費閾値Dg_lim_next(l)、アシスト電費閾値Da_lim_next(l)から、現在走行中の分割区間に対応する発電電費閾値、アシスト電費閾値をそれぞれ、発電電費閾値現在値Dg_lim_now,アシスト電費閾値現在値Da_lim_nowとして設定し、ハイブリッド制御ECU24に送信する。
【0150】
ハイブリッド制御ECU24は、発電電費閾値現在値Dg_lim_now、アシスト電費閾値現在値Da_lim_nowを用いて要求電力授受量BPwrefを算出する(図2のステップS202)。
【0151】
次に、この要求電力授受量BPwrefの算出処理を図19に基づいて説明する。図19において、まず、ステップ1901では、その時点における基本燃料消費量Fg0を設定する。この処理は、図3のステップS304で設定した走行負荷P(k)に代えて、図2のステップS201で設定した要求駆動動力SPwを用いることが異なる以外は、図3のS305と同じ処理である。
【0152】
続いて、実発電電費算出手段に相当するステップS1902にて、現在の発電電費Dg_now[i]、現在の発電電費最小値Dg_min_now、現在の発電電費最小時の電力Pg_min_nowを決定し、実アシスト電費算出手段に相当するステップS1903にて、現在のアシスト電費Da_now[i]、現在のアシスト電費最大値Da_max_now、現在の発電電費最大時の電力Pa_max_nowを決定する。これらステップS1902、S1903の処理は、電源系内の消費電力として、電力検出部28によって検出された系内電力供給ライン19の電流および電圧に基づいて算出した消費電力を用いること、および、ステップS304で設定した走行負荷P(k)に代えて、図2のステップS201で設定した要求駆動動力SPwを用いることが異なる以外は、図3のステップS307、S308と同じ処理である。
【0153】
続くステップS1904では要求電力授受量BPwrefを算出する。このステップS1904の処理を図20に基づいて説明する。
【0154】
まず、ステップS2001では、ナビゲーション装置29から送信されてきた発電電費閾値現在値Dg_lim_nowからステップS1902で設定した現在の発電電費最小値Dg_min_nowを引くことにより、現在の発電電費最小値Dg_min_nowに対する電費の改善量すなわち発電時改善量Kgを算出する。
【0155】
続くステップS2002では、ステップS1903で設定した現在のアシスト電費最大値Da_max_nowからナビゲーション装置29から送信されてきたアシスト電費閾値現在値Da_lim_nowを引くことにより、現在のアシスト電費最大値Da_max_nowに対する電費の改善量すなわちアシスト時改善量Kaを算出する。
【0156】
続くステップS2003では、ステップS2001およびステップS2002で設定した値に基づいて要求電力授受量BPwrefを決定する。この要求電力授受量BPwrefの決定方法について図21〜図23を用いて説明する。
【0157】
図21は、発電電費閾値現在値Dg_lim_nowよりも現在の発電電費最小値Dg_min_nowのほうが小さく、かつ、アシスト電費閾値現在値Da_lim_nowよりも現在のアシスト電費最大値Da_max_nowのほうが小さい場合を示している。
【0158】
発電に関しては、閾値よりも小さい場合には燃費改善効果が大きい。一方、アシスト走行に関しては、閾値よりも大きい場合に燃費改善効果が大きい。従って、図21に示す状態の場合、現在の発電電費最小値Dg_min_nowに対応する電力、すなわち、現在の発電電費最小時の電力Pg_min_nowを要求電力授受量BPwrefに決定する。
【0159】
図22は、発電電費閾値現在値Dg_lim_nowよりも現在の発電電費最小値Dg_min_nowのほうが大きく、かつ、アシスト電費閾値現在値Da_lim_nowよりも現在のアシスト電費最大値Da_max_nowのほうが大きい場合を示している。従って、図22に示す状態の場合、現在のアシスト電費最大値Dg_min_nowに対応する電力、すなわち、現在のアシスト電費最大時の電力Pg_min_nowを要求電力授受量BPwrefに決定する。
【0160】
図23は、発電電費閾値現在値Dg_lim_nowよりも現在の発電電費最小値Dg_min_nowのほうが小さく、かつ、アシスト電費閾値現在値Da_lim_nowよりも現在のアシスト電費最大値Da_max_nowのほうが大きい場合を示している。この場合、アシストを行っても、また、発電を行っても燃費改善効果があることになる。この場合には、ステップS2001で算出した発電時改善量KgとステップS2002で算出したアシスト時改善量Kaとを比較して改善量が大きい方を選択する。両改善量Kを比較すると、発電時改善量Kgの方が大きいので、現在の発電電費最小値Dg_min_nowに対応する電力、すなわち、現在の発電電費最小時の電力Pg_min_nowを要求電力授受量BPwrefに決定する。
【0161】
なお、現在の発電電費最小値Dg_min_nowが発電電費閾値現在値Dg_lim_nowよりも大きく、かつ、現在のアシスト電費最大値Dg_min_nowがアシスト電費閾値現在値Da_lim_nowよりも小さい場合、アシストをしても、また、発電をしても、燃費改善効果がないことから、この場合には要求電力授受量BPwrefをゼロに決定する。
【0162】
このようにして要求電力授受量BPwrefを決定したら、図2に戻ってステップS203以降を実行してエンジンECU26、MGECU20へエンジン4、モータジェネレータMG1,MG2を制御するための信号を出力することになる。
【0163】
以上、説明した本実施形態によれば、発電電費閾値Dg_lim(l)とアシスト電費閾値Da_lim(l)を、予定走行経路を走行する際に予測される走行負荷P(k)に基づいて算出した発電電費Dgおよびアシスト電費Daに基づいて設定している。そして、複数保存してある発電電費閾値Dg_lim(l)とアシスト電費閾値Da_lim(l)から次の走行に用いるものとして選択した発電電費閾値Dg_lim_next(l)、アシスト電費閾値Da_lim_next(l)と、車両走行中に実際に必要な駆動動力SPwに基づいて算出した現在の発電電費Dg_nowおよび現在のアシスト電費Da_nowとに基づいて発電時改善量Kgおよびアシスト時改善量Kaを算出して、その2つの改善量Kに基づいてエンジン4およびモータジェネレータMGを制御している。そのため、発電走行、アシスト走行のタイミングが適切となるので、ハイブリッド車両1の燃費を向上させることができる。
【0164】
加えて、過去の発電電費閾値Dg_limおよびアシスト電費閾値Da_limを計画情報として複数保存しており、それら複数の計画情報の各々を用いて、過去の複数の走行パターンを走行したと仮定した場合の推定燃料消費量est_fuelをそれぞれ推定している。そして、その複数の推定燃料消費量est_fuelを平均した平均推定燃料消費量est_fuel_aveが最も少ない計画情報を、次の走行に用いる計画情報として選択しているので、走行毎の車速や駆動動力のばらつきが顕著であっても、燃費をより向上させることができる。
【0165】
また、本実施形態によれば、予定走行経路を走行した場合に燃料消費量が最小となるように、各time(k)に対して計画電力授受量scheduled_power(k)を決定して、その計画電力授受量scheduled_power(k)から各分割区間iの理想電力収支opt_balanceを算出している。さらに、発電電費閾値Dg_lim(i)およびアシスト電費閾値Da_lim(i)を用いた制御を行って、予定走行経路を車両が走行したと仮定したときの各time(k)の電力授受量を推定し、その推定した電力授受量からも、各分割区間iの推定電力収支temep_balanceを算出している。そして、これら理想電力収支opt_balanceと推定電力収支temp_balanceとが略一致するように発電電費閾値Dg_limおよびアシスト電費閾値Da_limを補正している。そのため、実際に走行したときの燃費をより最小燃費に近づけることができる。
【0166】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0167】
1:ハイブリッド車両、 4:エンジン(動力発生源)、 6:高圧系バッテリ(蓄電装置)、 8:第1インバータ、 10:第2インバータ、 12:遊星歯車装置、 13:減速機、 14:デファレンシャルギア、 15:車軸、 16:電気負荷、 17:DCDCコンバータ、 18:電力授受ライン、 19:系内電力供給ライン、 20:MGECU、 21:低圧系バッテリ、 22:バッテリECU、 24:ハイブリッド制御ECU、 26:エンジンECU、 28:電力検出部、 29:ナビゲーション装置、 MG:モータジェネレータ(回転電機、動力発生源)、
S201:実要求駆動動力設定手段、 S202〜S207:制御手段、 S301、S303、S304:予定走行経路情報設定手段、 S302:経路分割手段、 S307:発電電費算出手段、 S308:アシスト電費算出手段、 S309:最適電力授受量決定手段、 S310:基準値設定手段、 S311:計画情報保存手段、電費情報保存手段、 S312:計画情報選択手段、 S1305:理想電力収支算出手段、 S1405、S1408:推定電力収支算出手段、 S1601:評価指標算出手段、推定燃料消費量算出手段、 S1820:推定電力収支算出手段、 S1902:実発電電費算出手段、 S1903:実アシスト電費算出手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動軸を駆動するための動力を発生させる動力発生源として、内燃機関および回転電機を備えるとともに、前記回転電機との間で電力の授受を行う蓄電装置を備えたハイブリッド車両に用いられ、前記動力発生源を制御する動力発生源制御装置であって、
前記車両の予定走行経路およびその予定走行経路を走行する時の予測駆動動力を設定する予定走行経路情報設定手段と、
その設定された予定走行経路を複数の第1区間に分割する経路分割手段と、
前記複数の第1区間に対して、発電走行したときの発電による燃料増加量の指標となる発電電費をそれぞれ算出する発電電費算出手段と、
前記複数の第1区間に対して、アシスト走行したときの前記回転電機のアシストによる燃料減少量の指標となるアシスト電費をそれぞれ算出するアシスト電費算出手段と、
各第1区間に対して算出した前記発電電費に基づいて発電電費の基準となる発電電費基準値を設定するとともに、各第1区間に対して算出した前記アシスト電費に基づいてアシスト電費の基準となるアシスト電費基準値を設定する基準値設定手段と、
前記車両の走行中に車軸が要求する要求駆動動力を実要求駆動動力として逐次設定する実要求駆動動力設定手段と、
その設定した実要求駆動動力を満たすように発電走行した場合の発電電費を実発電電費として算出する実発電電費算出手段と、
前記実要求駆動動力を満たすようにアシスト走行した場合のアシスト電費を実アシスト電費として算出する実アシスト電費算出手段と、
前記実発電電費と前記発電電費基準値とから発電走行による電費改善量を決定するとともに、前記実アシスト電費と前記アシスト電費基準値とからアシスト走行による電費改善量を決定し、その2つの電費改善量に基づいて、前記内燃機関に発生させる駆動動力を制御するとともに、前記回転電機を電動または発電制御する制御手段とを備えるとともに、
前記基準値設定手段で設定した過去の発電電費基準値およびアシスト電費基準値を計画情報として複数保存する計画情報保存手段と、
その計画情報保存手段に前記予定走行経路の計画情報として保存されている複数の計画情報に対して、各計画情報に基づいて前記内燃機関および前記回転電機を制御して前記予定走行経路を走行したと仮定した場合に消費すると推定される推定燃料消費量に関する評価指標を算出する評価指標算出手段と、
その評価指標算出手段で算出された評価指標に基づいて、前記計画情報保存手段に前記予定走行経路の計画情報として保存されている複数の計画情報から、最も推定燃料消費量が少ないと推定される計画情報を選択する計画情報選択手段とを備え、
前記制御手段は、前記計画情報選択手段が選択した計画情報を構成する前記発電電費基準値および前記アシスト電費基準値を用いて制御を行うことを特徴とする動力発生源制御装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記基準値設定手段は、前記予定走行経路を前記第1区間よりも長い第2区間毎に分割し、各第2区間に含まれる第1区間に対して算出した前記発電電費に基づいて、その第2区間の発電電費基準値を設定するとともに、各第2区間に含まれる第1区間に対して算出した前記アシスト電費に基づいてその第2区間のアシスト電費基準値を設定することを特徴とする動力発生源制御装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記発電電費算出手段で算出した各第1区間の発電電費と前記アシスト電費算出手段で算出した各第1区間のアシスト電費とに基づいて、前記予定走行経路を走行した場合の燃料消費量が最小となるように、各第1区間における前記回転電機と前記蓄電装置との間の最適電力授受量を決定する最適電力授受量決定手段と、
その最適電力授受量に基づいて、各第2区間の電力収支を理想電力収支として算出する理想電力収支算出手段と、
前記発電電費算出手段で算出した各第1区間の発電電費と前記発電電費基準値とから発電走行による電費改善量を決定するとともに、前記アシスト電費算出手段で算出した各第1区間のアシスト電費と前記アシスト電費基準値とから、アシスト走行による電費改善量を決定し、2つの電費改善量に基づいて、前記予定走行経路を車両が走行したと仮定したときの各第1区間の電力授受量を推定する電力授受量推定手段と、
その電力授受量推定手段で推定した電力授受量に基づいて、各第2区間の電力収支を推定電力収支として算出する推定電力収支算出手段とを備え、
前記基準値設定手段は、前記理想電力収支算出手段で算出した各第2区間の理想電力収支と、前記推定電力収支算出手段で算出した各第2区間の推定電力収支とが略一致するように、前記発電電費基準値および前記アシスト電費基準値を設定することを特徴とする動力発生源制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、
過去に前記予定走行経路を走行する際に前記発電電費算出手段および前記アシスト電費算出手段で算出した各第1区間の発電電費およびアシスト電費を含む電費情報を、過去複数回の走行分保存する電費情報保存手段と、
前記計画情報保存手段に保存されている計画情報を用いて前記電費情報保存手段に保存されている電費情報に対応する走行を行った場合の推定燃料消費量を、複数の電費情報に対して算出する推定燃料消費量算出手段とを備え、
前記評価指標算出手段は、その複数の推定燃料消費量の平均値である平均推定燃料消費量を前記評価指標として算出することを特徴とする動力発生源制御装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記計画情報保存手段に保存されている計画情報を用いて前記電費情報保存手段に保存されている電費情報に対応する走行を行った場合の走行前後での推定電力収支を、複数の電費情報に対して算出する推定電力収支算出手段を備え、
前記推定燃料消費量算出手段は、前記計画情報保存手段に保存されている計画情報を用いて前記電費情報保存手段に保存されている電費情報に対応する走行を行った場合の推定燃料消費量を、前記推定電力収支算出手段で算出した推定電力収支に基づいて所定の電力収支での推定燃料消費量に補正することを特徴とする動力発生源制御装置。
【請求項1】
車両の駆動軸を駆動するための動力を発生させる動力発生源として、内燃機関および回転電機を備えるとともに、前記回転電機との間で電力の授受を行う蓄電装置を備えたハイブリッド車両に用いられ、前記動力発生源を制御する動力発生源制御装置であって、
前記車両の予定走行経路およびその予定走行経路を走行する時の予測駆動動力を設定する予定走行経路情報設定手段と、
その設定された予定走行経路を複数の第1区間に分割する経路分割手段と、
前記複数の第1区間に対して、発電走行したときの発電による燃料増加量の指標となる発電電費をそれぞれ算出する発電電費算出手段と、
前記複数の第1区間に対して、アシスト走行したときの前記回転電機のアシストによる燃料減少量の指標となるアシスト電費をそれぞれ算出するアシスト電費算出手段と、
各第1区間に対して算出した前記発電電費に基づいて発電電費の基準となる発電電費基準値を設定するとともに、各第1区間に対して算出した前記アシスト電費に基づいてアシスト電費の基準となるアシスト電費基準値を設定する基準値設定手段と、
前記車両の走行中に車軸が要求する要求駆動動力を実要求駆動動力として逐次設定する実要求駆動動力設定手段と、
その設定した実要求駆動動力を満たすように発電走行した場合の発電電費を実発電電費として算出する実発電電費算出手段と、
前記実要求駆動動力を満たすようにアシスト走行した場合のアシスト電費を実アシスト電費として算出する実アシスト電費算出手段と、
前記実発電電費と前記発電電費基準値とから発電走行による電費改善量を決定するとともに、前記実アシスト電費と前記アシスト電費基準値とからアシスト走行による電費改善量を決定し、その2つの電費改善量に基づいて、前記内燃機関に発生させる駆動動力を制御するとともに、前記回転電機を電動または発電制御する制御手段とを備えるとともに、
前記基準値設定手段で設定した過去の発電電費基準値およびアシスト電費基準値を計画情報として複数保存する計画情報保存手段と、
その計画情報保存手段に前記予定走行経路の計画情報として保存されている複数の計画情報に対して、各計画情報に基づいて前記内燃機関および前記回転電機を制御して前記予定走行経路を走行したと仮定した場合に消費すると推定される推定燃料消費量に関する評価指標を算出する評価指標算出手段と、
その評価指標算出手段で算出された評価指標に基づいて、前記計画情報保存手段に前記予定走行経路の計画情報として保存されている複数の計画情報から、最も推定燃料消費量が少ないと推定される計画情報を選択する計画情報選択手段とを備え、
前記制御手段は、前記計画情報選択手段が選択した計画情報を構成する前記発電電費基準値および前記アシスト電費基準値を用いて制御を行うことを特徴とする動力発生源制御装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記基準値設定手段は、前記予定走行経路を前記第1区間よりも長い第2区間毎に分割し、各第2区間に含まれる第1区間に対して算出した前記発電電費に基づいて、その第2区間の発電電費基準値を設定するとともに、各第2区間に含まれる第1区間に対して算出した前記アシスト電費に基づいてその第2区間のアシスト電費基準値を設定することを特徴とする動力発生源制御装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記発電電費算出手段で算出した各第1区間の発電電費と前記アシスト電費算出手段で算出した各第1区間のアシスト電費とに基づいて、前記予定走行経路を走行した場合の燃料消費量が最小となるように、各第1区間における前記回転電機と前記蓄電装置との間の最適電力授受量を決定する最適電力授受量決定手段と、
その最適電力授受量に基づいて、各第2区間の電力収支を理想電力収支として算出する理想電力収支算出手段と、
前記発電電費算出手段で算出した各第1区間の発電電費と前記発電電費基準値とから発電走行による電費改善量を決定するとともに、前記アシスト電費算出手段で算出した各第1区間のアシスト電費と前記アシスト電費基準値とから、アシスト走行による電費改善量を決定し、2つの電費改善量に基づいて、前記予定走行経路を車両が走行したと仮定したときの各第1区間の電力授受量を推定する電力授受量推定手段と、
その電力授受量推定手段で推定した電力授受量に基づいて、各第2区間の電力収支を推定電力収支として算出する推定電力収支算出手段とを備え、
前記基準値設定手段は、前記理想電力収支算出手段で算出した各第2区間の理想電力収支と、前記推定電力収支算出手段で算出した各第2区間の推定電力収支とが略一致するように、前記発電電費基準値および前記アシスト電費基準値を設定することを特徴とする動力発生源制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、
過去に前記予定走行経路を走行する際に前記発電電費算出手段および前記アシスト電費算出手段で算出した各第1区間の発電電費およびアシスト電費を含む電費情報を、過去複数回の走行分保存する電費情報保存手段と、
前記計画情報保存手段に保存されている計画情報を用いて前記電費情報保存手段に保存されている電費情報に対応する走行を行った場合の推定燃料消費量を、複数の電費情報に対して算出する推定燃料消費量算出手段とを備え、
前記評価指標算出手段は、その複数の推定燃料消費量の平均値である平均推定燃料消費量を前記評価指標として算出することを特徴とする動力発生源制御装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記計画情報保存手段に保存されている計画情報を用いて前記電費情報保存手段に保存されている電費情報に対応する走行を行った場合の走行前後での推定電力収支を、複数の電費情報に対して算出する推定電力収支算出手段を備え、
前記推定燃料消費量算出手段は、前記計画情報保存手段に保存されている計画情報を用いて前記電費情報保存手段に保存されている電費情報に対応する走行を行った場合の推定燃料消費量を、前記推定電力収支算出手段で算出した推定電力収支に基づいて所定の電力収支での推定燃料消費量に補正することを特徴とする動力発生源制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2010−162957(P2010−162957A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5074(P2009−5074)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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