説明

半導体デバイス用基板洗浄液、半導体デバイス用基板の洗浄方法及び半導体デバイス用基板の製造方法

【課題】基板表面に付着したパーティクルや有機物の汚染、金属汚染及び有機物と金属による複合汚染の除去性と再付着防止性に優れ、基板表面を腐食することなく、高度に清浄化することができる半導体デバイス用基板洗浄液を提供する。特に、疎水性のため薬液をはじき易く、パーティクル除去性が悪い低誘電率(Low−k)材料の洗浄性に優れた洗浄液を提供する。
【解決手段】(A)有機酸及び(B)HLB値が5以上13未満の非イオン型界面活性剤を含有することを特徴とする半導体デバイス用基板洗浄液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属汚染やパーティクル汚染が問題となる半導体、ガラス、金属、セラミックス、樹脂、磁性体、超伝導体などの基板表面の洗浄に用いられる洗浄液、この洗浄液を用いた基板表面の洗浄方法及びこの洗浄液を用いた半導体デバイス用基板の製造方法に関する。詳しくは、本発明は、高清浄な基板表面が要求される、半導体素子やディスプレイデバイス用等の半導体デバイス用基板の製造工程において、半導体デバイス用基板表面を効果的に洗浄するための洗浄液と、この洗浄液を用いた半導体デバイス用基板の洗浄方法及び半導体デバイス用基板の製造方法に関する。
【0002】
本発明の半導体デバイス用基板洗浄液は、特に、シリコンなどの半導体材料、窒化シリコン、酸化シリコン、ガラス、低誘電率(Low−k)材料などの絶縁材料、遷移金属又は遷移金属化合物などを表面の一部あるいは全面に有する半導体デバイス用基板において、基板表面に付着した微粒子(パーティクル)や有機汚染、金属汚染及び有機物と金属による複合汚染を除去し、併せて再付着を抑制し、基板表面の荒れや腐食を引き起こすことなく高度に清浄化する洗浄液として有用である。
【背景技術】
【0003】
マイクロプロセッサー、ロジックLSI、DRAM、フラッシュメモリーやCCDなどの半導体デバイスや、TFT液晶などのフラットパネルディスプレイデバイスの製造工程では、シリコンや酸化シリコン、ガラス等の基板表面にサブミクロンからナノメーターオーダーの寸法でパターン形成や薄膜形成を行っており、製造の各工程において、基板表面の微量な汚染を低減することが極めて重要な課題となっている。基板表面の微量汚染の中でも、特にパーティクル汚染、有機物汚染及び金属汚染は、デバイスの電気的特性や歩留まりを低下させるため、次工程に持ち込む前に極力低減する必要がある。このような汚染の除去には、一般的には洗浄液による基板表面の洗浄が行われている。
【0004】
近年、半導体デバイス製造においては一層のスループット向上、生産効率化が要求されており、益々微細化・高集積化傾向にある半導体デバイス製造用の基板の洗浄には、基板表面のパーティクル汚染、有機物汚染及び金属汚染の除去性のみならず、除去後の再付着防止性に優れた、且つ迅速に基板表面を高清浄化することができる洗浄技術が望まれている。
【0005】
従来、半導体デバイス用基板のパーティクル汚染の除去に用いる洗浄液としては、アルカリ性溶液が有効であることが知られており、半導体素子やディスプレイデバイス用等の半導体デバイス用基板表面の洗浄には、アンモニア水溶液や水酸化カリウム水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液等のアルカリ性水溶液が用いられている。また、アンモニア、過酸化水素、水を含む洗浄液(「SC−1洗浄液」又は「APM洗浄液」という。)による洗浄(「SC−1洗浄」又は「APM洗浄」という。)も広く用いられている(非特許文献1参照)。
【0006】
しかし、アルカリ性洗浄液では、基板表面のシリコンや酸化シリコン膜のエッチングが懸念されており、また、有機物と金属による複合汚染を十分に除去することが困難であるという問題を有していた。
【0007】
そこで近年、基板表面の金属汚染除去に有効な酸性溶液に、パーティクル汚染の除去性向上などを目的として界面活性剤を添加した酸性洗浄液が提案されている。
例えば、特定の界面活性剤とフッ化水素酸を用いてシリコンウエーハを洗浄すること(特許文献1参照)、シリコンウエーハの洗浄にフッ酸水溶液に界面活性剤及びオゾンを添加すること(特許文献2参照)、及び、金属配線を有する基板に吸着した金属不純物及び粒子汚染の除去の為に、分散剤及び/又は界面活性剤に有機酸化合物を添加した洗浄液を用いること(特許文献3参照)などが提案されている。
【0008】
しかし、フッ化水素酸やその塩を用いた溶液では、共存する薄膜層のエッチングに加えてフッ素イオンの含有による廃液処理に問題を抱えていた。また、界面活性剤に有機酸化合物を添加した洗浄液では、疎水性の強い低誘電率(Low−k)材料では、基板表面を十分に濡らすことが困難であり、基板表面の汚染除去性が十分ではなかった。
【特許文献1】特開平7−216392号公報
【特許文献2】特開平8−69990号公報
【特許文献3】特開2001−7071号公報
【非特許文献1】W.Kern and D.A.Puotinen:RCA Review,p.187,June(1970)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来より層間絶縁膜として用いられている親水性の高いTEOS等の酸化シリコンに代わり、低抵抗の配線材料を導入して高速化・高集積化されたLSIデバイスを実現する為、層間絶縁膜に疎水性の強い低誘電率(Low−k)材料を用いることが予定されているが、低抵抗の配線材料は、洗浄液等の薬液をはじき易く、このため、洗浄による汚染除去が困難である。
低誘電率(Low−k)材料のような疎水性の基板表面に対しても、金属汚染、パーティクル汚染、有機物と金属による複合汚染の除去性、及び再付着防止性に優れた洗浄液は提供されておらず、半導体デバイス用基板の洗浄における課題となっていた。
【0010】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、基板表面を十分に濡らすことができ、基板表面に損傷を与えることなく、基板表面の汚染を効率的に除去することができる洗浄液を提供することを目的とする。
詳しくは、シリコンなどの半導体材料、窒化シリコン、酸化シリコン、ガラス、低誘電率(Low−k)材料などの絶縁材料、遷移金属又は遷移金属化合物などを表面の一部あるいは全面に有する半導体デバイス用基板において、その基板表面に付着したパーティクルや有機物の汚染、金属汚染及び有機物と金属による複合汚染を効率的に除去すると共に、再付着を抑制し、基板表面の荒れや腐食を引き起こすことなく、高度に清浄化することができる半導体デバイス用基板洗浄液を提供することを目的とする。特に、本発明は、疎水性であるため薬液をはじき易く、パーティクル除去性に劣る低誘電率(Low−k)材料の洗浄性に優れた半導体デバイス用基板洗浄液を提供することを目的とする。
本発明はまた、このような半導体デバイス用基板洗浄液を用いた半導体デバイス用基板の洗浄方法と半導体デバイス用基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、有機酸に特定の界面活性剤を組み合わせた溶液を洗浄液として用いることによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
即ち本発明は以下を要旨とする。
【0013】
[1] 以下の2成分(A)及び(B)を含有することを特徴とする半導体デバイス用基板洗浄液。
(A)有機酸
(B)HLB値が5以上13未満の非イオン型界面活性剤
【0014】
[2] [1]において、成分(B)の含有量が0.0005〜5重量%であることを特徴とする半導体デバイス用基板洗浄液。
【0015】
[3] [1]又は[2]において、更に成分(C)として成分(B)の可溶化剤を含むことを特徴とする半導体デバイス用基板洗浄液。
【0016】
[4] [3]において、成分(C)がHLB値13〜20の非イオン型界面活性剤であることを特徴とする半導体デバイス用基板洗浄液。
【0017】
[5] [3]又は[4]において、成分(B)と成分(C)の相対含有量(重量比)が成分(B):成分(C)=1:1〜10:1であることを特徴とする半導体デバイス用基板洗浄液。
【0018】
[6] [1]乃至[5]の何れかにおいて、更に成分(D)として成分(C)以外の陰イオン型界面活性剤を含むことを特徴とする半導体デバイス用基板洗浄液。
【0019】
[7] [1]乃至[6]の何れかにおいて、成分(A)がポリカルボン酸であることを特徴とする半導体デバイス用基板洗浄液。
【0020】
[8] [1]乃至[7]の何れかにおいて、pHが1〜5であることを特徴とする半導体デバイス用基板洗浄液。
【0021】
[9] [1]乃至[8]の何れかにおいて、更に成分(E)錯化剤を含むことを特徴とする半導体デバイス用基板洗浄液。
【0022】
[10] [1]乃至[9]の何れかの洗浄液を用いて半導体デバイス用基板を洗浄することを特徴とする半導体デバイス用基板の洗浄方法。
【0023】
[11] 有機酸を含有する半導体デバイス用基板の洗浄液であって、半導体デバイス用基板の配線基材に対するエッチング速度が0.06nm/分以下であり、且つ、パーティクル汚染の除去性が95%以上であることを特徴とする半導体デバイス用基板の洗浄液。
【0024】
[12] [11]において、半導体デバイス用基板の配線基材が銅であることを特徴とする半導体デバイス用基板の洗浄液。
【0025】
[13] [11]又は[12]の洗浄液を用いて、表面に配線基材を有する半導体デバイス用基板を洗浄することを特徴とする半導体デバイス用基板の洗浄方法。
【0026】
[14] 配線基材層を作製後にその表面をCMPする工程を含む半導体デバイス用基板の製造方法であって、該CMP工程後に、以下の2成分(A)及び(B)を含有する洗浄液を用いて、配線基材層を洗浄する工程を有することを特徴とする半導体デバイス用基板の製造方法。
(A)有機酸
(B)HLB値が5以上13未満の非イオン型界面活性剤
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、シリコンなどの半導体材料、窒化シリコン、酸化シリコン、ガラス、低誘電率(Low−k)材料などの絶縁材料、遷移金属又は遷移金属化合物などを表面の一部あるいは全面に有する半導体デバイス用基板において、基板表面に付着した微粒子(パーティクル)や有機汚染、金属汚染及び有機物−金属の複合汚染を洗浄により効果的に除去することができる。また、本発明によれば、系内に微粒子等が混入した際にもその再付着を効果的に抑制することができる。特に、薬液をはじき易い疎水性の低誘電率(Low−k)材料の濡れ性をよくし、その洗浄性を高めることができる。更に、洗浄性に加えて、表面のラフネス抑制及び低エッチング性を両立することが可能であることから、本発明は、半導体デバイスやディスプレイデバイスなどの製造工程における汚染洗浄用などの表面処理技術として、工業的に非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0029】
本発明の半導体デバイス用基板洗浄液は、以下の成分(A)及び(B)を含有する。
(A)有機酸
(B)HLB値が5以上13未満の非イオン型界面活性剤
なお、本発明において、界面活性剤のHLB(Hydrophile−Lypophile−Ballance)値とは、グリフィン法に基づき、(親水基の分子量/界面活性剤の分子量)×(100/5)により算出された値である。具体的には、任意の非イオン界面活性剤分子中の親水基の重量に注目して、これを特性値として使用して、これを20倍したものをHLBとして定義すると、HLBは以下式(1)にて表される。
HLB=20×Mw/M=20×(M−Mo)/M=20×(1−Mo/M) (1)
(但し、Mは非イオン型界面活性剤の分子量、Mw及びMoはそれぞれ親水基、疎水基の分子量。詳細は、「新版 界面活性剤ハンドブック」第3版 工学図書株式会社 平成8年 P234を参照。)
【0030】
本発明の洗浄液においては、上記2成分の内、(B)HLB値が5以上13未満の非イオン型界面活性剤(以下、「界面活性剤(B)」と称す場合がある。)を含有することを特徴としている。
【0031】
従来の親水性の層間絶縁膜等を有するデバイス基板に対しては、洗浄成分として陰イオン型界面活性剤及び/又はHLB値13〜20の非イオン型界面活性剤を用いていることにより、良好な界面活性作用によるパーティクル汚染の除去、及び再付着防止等の機能を発現することができていた。しかしながら、これらの界面活性剤を用いた洗浄液を、層間絶縁膜として疎水性の強い低誘電率(Low−k)材料を用いる次世代のデバイス基板の洗浄に用いると、洗浄液が基板にはじかれて、十分な濡れ性が得られず、基板表面の金属汚染、パーティクル汚染、有機物と金属による複合汚染等の除去が不十分であった。
一方、界面活性剤(B)は、そもそも、有機酸溶液に溶解することが困難であったため、デバイス基板洗浄液には用いられないと考えられていた。
しかしながら、成分(A)及び(B)を含有する洗浄液を用いたところ、驚くべきことに、疎水性の強い低誘電率(Low−k)材料に対しても十分な濡れ性を有し、基板表面に付着したパーティクルや有機物の汚染、金属汚染、及び有機物と金属による複合汚染を効率的に洗浄除去し、併せて再付着を抑制し、基板表面の荒れや腐食を引き起こすことなく、高度に清浄化することができた。
【0032】
[半導体デバイス用基板洗浄液]
<(A)有機酸>
本発明で用いる有機酸(A)は水溶性であれば特に限定されないが、溶解性及び化合物の安定性より有機カルボン酸及び/又は有機スルホン酸が好ましい。
【0033】
有機カルボン酸は、カルボキシル基を1又は2以上有するものであればよく、また本発明の所期の効果を阻害しない限り、カルボキシル基以外の官能基を有していてもよい。
有機カルボン酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、エチルメチル酢酸、トリメチル酢酸などのカルボキシル基を1つ有するもの、及び、蓚酸、コハク酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、イタコン酸、グルタル酸、ジメチルマロン酸、シトラコン酸、酒石酸、リンゴ酸、アジピン酸、ヘプタン酸等のカルボキシル基を2以上有する有機ポリカルボン酸等が挙げられる。洗浄液への溶解性が高く溶解安定性もよい点では、脂肪族ポリカルボン酸類が好ましく、なかでも炭素数2〜10の脂肪族ポリカルボン酸が好ましい。特に好ましくは、蓚酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸、グルタル酸、リンゴ酸、アジピン酸、クエン酸が挙げられ、最も好ましくは、マロン酸、酒石酸、クエン酸等が挙げられる。
【0034】
また、有機スルホン酸の代表的なものとしてメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、n−プロパンスルホン酸、i−プロパンスルホン酸、n−ブタンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸、フェニルスルホン酸等の芳香族スルホン酸が挙げられる。この内、水溶性の点から、好ましくは、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等のアルキルスルホン酸が挙げられ、更に好ましくは、メタンスルホン酸が挙げられる。
【0035】
これら有機酸は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の割合で混合して使用してもよい。
【0036】
本発明の洗浄液中の有機酸(A)の濃度は、目的に応じて適宜選択すればよいが、洗浄性の確保のためには洗浄液全体に対して通常0.01重量%以上であり、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上であり、洗浄液における溶解安定性等のためには、洗浄液全体に対して通常30重量%以下、好ましくは25重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。
【0037】
なお、これら有機酸は陽イオンとの塩として洗浄液中に存在していてもよく、この場合の陽イオンとしては特に制限はないが、例えばアンモニウムイオン、1級、2級、3級又は4級のアルキルアンモニウムイオン、アルカリ金属イオン、ホスホニウムイオン、或いはスルホニウムイオンなどを用いることができる。なかでも基材表面における金属イオン残留等による基板金属への拡散・残留による影響が少ない点で、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオンが好ましく、中でも、アルキルアンモニウムイオンが最も好ましい。アルキルアンモニウムイオンのアルキル基は、洗浄液への溶解性を考慮して適宜選択すればよいが、通常、炭素数1〜4のアルキル基である。
【0038】
<(B)HLB値が5以上13未満の非イオン型界面活性剤>
本発明の洗浄液に含まれる界面活性剤(B)は、浸透性及び低起泡性の点から、HLB値が5以上13未満の非イオン型界面活性剤であればよく、他に特に制限はない。界面活性剤(B)は、生分解性が良好であることから、アルキレンオキサイド型の非イオン型界面活性剤が好ましく、置換基(ただし、フェニル基を除く)を有していてもよい炭化水素基と、ポリオキシアルキレン基とを同一分子構造内に有しているアルキレンオキサイド型の非イオン型界面活性剤が好ましく、とりわけ、この界面活性剤(B)は、下記一般式(I)で表されるポリオキシアルキレンエーテルであることが、パーティクル汚染の除去性や再付着防止能などの観点から好ましい(以下において、下記一般式(I)で表されるアルキレンオキサイド型非イオン型界面活性剤を「界面活性剤(I)」と称す場合がある。)。
界面活性剤(B)のHLB値の下限は5であり、好ましくは8である。また、同HLB値は13未満であり、好ましくは12以下であり、更に好ましくは11以下である。
【0039】
−O−(AO)−X (I)
(但し、Rは置換基(フェニル基を除く)を有していてもよい炭化水素基を示し、AOはアルキレンオキサイドを示す。炭化水素基Rに含まれる炭素数(a)とポリオキシアルキレン基(AO)中のオキシアルキレン基数(b)は、通常a≦15、b≦7であり、且つ、1.5≦a/b≦7を満たす整数である。Xは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基又はアシル基を示す。)
【0040】
この界面活性剤(I)のポリオキシアルキレンアルキルエーテルのうち、AOがエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドであるポリオキシアルキレンエーテルが好ましく、とりわけ、AOがエチレンオキサイドであるポリオキシエチレンアルキルエーテルがより好ましい。
【0041】
界面活性剤(I)等のアルキレンオキサイド型非イオン型界面活性剤において、その炭化水素基Rに含まれる炭素数(a)とポリオキシエチレン基等のオキシアルキレン基数(b)の比率(a/b)(以下「a/b比」と称す場合がある。)は、通常、1.5以上であり、好ましくは2.0以上であり、また、通常7以下であり、好ましくは4以下である。a/b比が上記下限以上であると疎水性の強い基板に対する洗浄液の濡れ性、及び、パーティクルや有機物汚染、金属汚染及び有機物と金属による複合汚染の除去性能の点で好ましい。また、a/b比が上記上限以下であると界面活性剤(B)が細かい油滴となって析出して白濁することがなく、洗浄性能の低下や油滴の残留などの問題が起こりにくいので好ましい。
【0042】
また、炭化水素基Rに含まれる炭素数(a)は通常15以下であり、好ましくは14以下、更に好ましくは13以下である。また、(a)は通常8以上である。なお、主鎖に置換基として炭化水素基を有する際には、主鎖となる炭化水素基と置換基である炭化水素基における炭素数の合計を(a)とする。(a)が上記下限以上であると、疎水性基板に対する濡れ性の向上の点で好ましく、また(a)が上記上限以下であると水への溶解性低下や廃液処理の負荷増加が低い点で好ましい。
この炭化水素基Rとしては、飽和アルキル基としてノニル基、デシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、テトラデシル基等が挙げられ、この炭化水素基Rが有していても良い置換基としては、ヒドロキシ基、エーテル基、ハロゲン、エステル基、ニトロ基、アミド基等が挙げられる。
【0043】
また、ポリオキシアルキレン基のオキシアルキレン基数(b)は7以下が好ましく、より好ましくは6以下、特に好ましくは5以下であり、通常2以上である。(b)が上記上限以下であると、疎水性基板に対する洗浄液の塗れ性の点で好ましい。また(b)が2以上であると、界面活性剤(B)の溶解性や、洗浄液中での安定性の点で好ましい。
【0044】
界面活性剤(I)として、本発明に好適な界面活性剤(B)の具体例としては、ポリオキシエチレン(b=4)ノニルエーテル、ポリオキシエチレン(b=4)デシルエーテル、ポリオキシエチレン(b=4)ウンデシルエーテル、ポリオキシエチレン(b=4)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(b=5)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(b=4)トリデシルエーテル、ポリオキシエチレン(b=5)トリデシルエーテル、ポリオキシエチレン(b=5)テトラデシルエーテル、ポリオキシエチレン(b=6)ペンタデシルエーテルなどが挙げられる。
【0045】
本発明においては、本発明の範囲内であれば(a)及び(b)やその他の置換基等が異なる複数の界面活性剤(I)を任意の割合で併用してもよい。
なお、複数種の界面活性剤(I)を併用する際、全界面活性剤(I)のa/b比の平均値、炭素数(a)及び、オキシアルキレン基数(b)が上記の好ましい範囲を満たせば、各々個別の界面活性剤(I)においてa/b比、(a)又は(b)が上記の好ましい範囲外であってもよい。
【0046】
本発明の洗浄液における界面活性剤(B)の含有量は、洗浄液に対して下限が通常0.0005重量%、好ましくは0.001重量%、より好ましくは0.003重量%、さらに好ましくは0.01重量%であり、同上限が通常5重量%、好ましくは4重量%、より好ましくは3重量%、さらに好ましくは1.0重量%、最も好ましくは0.5重量%である。洗浄液の界面活性剤(B)の濃度が上記下限以上であると、界面活性剤(B)による疎水性基板に対する洗浄液の濡れ性向上効果の点で好ましく、また上記上限以下であると、廃液を生分解処理する場合の負荷が増大しすぎないため好ましい。
【0047】
前述の如く、界面活性剤(B)は有機酸溶液に対する溶解性に劣る。本発明の洗浄液において、界面活性剤(B)は、撹拌、昇温などの物理的方法で可溶化させても、界面活性剤(B)を可溶化させる成分を用いて化学的に可溶化させても、どちらでもよい。洗浄液としての安定性及び使いやすさなどから、本発明の洗浄液は、更に以下の界面活性剤(C)(界面活性剤(B)の可溶化剤)を含有することにより、界面活性剤(B)を化学的に可溶化させたものであることが好ましい。
【0048】
<(C)界面活性剤>
本発明の洗浄液は、通常、洗浄時に溶液になっている。溶液となっていることは、目視で確認可能である。本発明の洗浄液に含まれる成分(C)は、界面活性剤(B)の有機酸溶液(有機酸(A)を含む後述の洗浄液媒体)に対する溶解性を向上させるものであればよく特に制限は無い。
成分(C)は、生分解性の点から、陰イオン型界面活性剤又は非イオン型界面活性剤が好ましく、可溶化効果の点から、非イオン型界面活性剤が更に好ましい(以下、成分(C)としての界面活性剤を「界面活性剤(C)」と称す場合がある。)。
【0049】
界面活性剤(C)が非イオン型界面活性剤である場合、洗浄性、分散性及び低起泡性の点から、HLB値が13〜20の非イオン型界面活性剤が好ましい。
また、界面活性剤(C)は、酸性洗浄液における安定性の点から、アルキレンオキサイド型が好ましく、特に、置換基(ただし、環境への影響の点からフェニル基を除く)を有していてもよい炭化水素基と、ポリオキシアルキレン基とを同一分子構造内に有しているアルキレンオキサイド型の非イオン型界面活性剤が好ましく、とりわけ、この界面活性剤(C)は、下記一般式(II)で表されるポリオキシアルキレンエーテルであることが、パーティクル汚染の除去性や再付着防止能などの観点から好ましい(以下において、下記一般式(II)で表されるアルキレンオキサイド型非イオン型界面活性剤を「界面活性剤(II)」と称す場合がある。)。
界面活性剤(C)のHLB値の下限は13であり、好ましくは14であり、同上限は20であり、好ましくは18であり、更に好ましくは16である。
【0050】
−O−(BO)−Y (II)
(但し、Rは置換基(フェニル基を除く)を有していてもよい炭化水素基を示し、BOはアルキレンオキサイドを示す。炭化水素基Rに含まれる炭素数(c)とポリオキシアルキレン基(BO)中のオキシアルキレン基数(d)は、通常9≦c、8≦dであり、且つ、1.0≦c/d≦1.6を満たす整数である。Yは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基又はアシル基を示す。)
【0051】
この界面活性剤(II)のポリオキシアルキレンアルキルエーテルのうち、BOがエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドであるポリオキシアルキレンエーテルが好ましく、とりわけ、BOがエチレンオキサイドであるポリオキシエチレンアルキルエーテルがより好ましい。
【0052】
界面活性剤(II)等のアルキレンオキサイド型非イオン型界面活性剤において、その炭化水素基Rに含まれる炭素数(c)とポリオキシエチレン基等のオキシアルキレン基数(d)の比率(c/d)(以下「c/d比」と称す場合がある。)は、通常1.0以上1.6以下であり、好ましくは1.0以上1.4以下である。c/d比が上記下限以上であると、パーティクル除去能力や再付着防止能力の点で好ましく、また、水への溶解性もあり、廃液処理の負荷も少ないと考えられる。また、c/d比が上記上限以下であると洗浄液の適用条件によらず界面活性剤(C)が細かい油滴となって析出して白濁することがなく、洗浄性能に優れ、油滴の残留などの問題が起きにくいため好ましい。
【0053】
また、炭化水素基Rに含まれる炭素数(c)は9以上であり、好ましくは10以上である。また、好ましくは16未満であり、更に好ましくは14以下である。なお、主鎖に置換基として炭化水素基を有する際には、主鎖となる炭化水素基と置換基である炭化水素基における炭素数の合計を(c)とする。(c)が上記下限以上であると、パーティクル除去性の点で好ましく、また(c)が上記上限以下であると水への溶解性や廃液処理の負荷が少ない点で好ましい。
この炭化水素基Rとしては、飽和アルキル基としてノニル基、デシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、テトラデシル基等が挙げられ、この炭化水素基Rが有していても良い置換基としては、ヒドロキシ基、エーテル基、ハロゲン、エステル基、ニトロ基、アミド基等が挙げられる。
【0054】
また、ポリオキシアルキレン基のオキシアルキレン基数(d)は8以上であり、より好ましくは8以上16以下、更に好ましくは8以上14以下である。(d)が上記下限以上であると、パーティクル除去性の点で好ましく、また、(d)が上記上限以下であると、廃液処理の負荷が少なく、また界面活性剤(C)の洗浄液中での分解が起こりにくい点で好ましい。
【0055】
界面活性剤(C)として、本発明に好適な界面活性剤(II)の具体例としては、ポリオキシエチレン(d=8)ノニルエーテル、ポリオキシエチレン(d=9)デシルエーテル、ポリオキシエチレン(d=11)ウンデシルエーテル、ポリオキシエチレン(d=10)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(d=11)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(d=10)トリデシルエーテル、ポリオキシエチレン(d=12)トリデシルエーテル、ポリオキシエチレン(d=11)テトラデシルエーテル、ポリオキシエチレン(d=13)テトラデシルエーテル、ポリオキシエチレン(d=12)ペンタデシルエーテル、ポリオキシエチレン(d=14)ペンタデシルエーテル、ポリオキシエチレン(d=12)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(d=15)セチルエーテルなどが挙げられる。
【0056】
本発明においては、上記好適範囲内であれば、(c)及び(d)やその他の置換基等が異なる複数の界面活性剤(II)を任意の割合で併用してもよい。
なお、複数種の界面活性剤(II)を併用する際、全界面活性剤(II)のc/d比の平均値が通常1.0以上1.6以下、炭素数(c)の平均値が9以上、オキシアルキレン基数(d)が平均値8以上を満たせば、各々個別の界面活性剤(II)においてc/d比が1.0未満であったり1.6を超えたり、また(c)が9未満であったり、(d)が8未満であってもよい。
【0057】
本発明の洗浄液における界面活性剤(C)等の成分(C)の含有量は、洗浄液に対して下限が通常0.0001重量%、好ましくは0.0003重量%、より好ましくは0.001重量%、さらに好ましくは0.005重量%であり、同上限が通常4重量%、好ましくは3重量%、より好ましくは2重量%、さらに好ましくは0.5重量%、特に好ましくは0.1重量%、とりわけ好ましくは0.05重量%である。洗浄液の界面活性剤(C)等の成分(C)の濃度が上記下限以上であると、界面活性剤(B)の溶解性及びパーティクル汚染除去性能の点で好ましく、また上記上限以下であると、泡立ちがおこりにくく、また廃液を生分解処理する場合の負荷も増大しにくいので好ましい。
【0058】
<界面活性剤(B)、(C)の金属不純物濃度>
界面活性剤は、通常販売されている形態において1〜数千重量ppm程度のNa、K、Fe等の金属不純物やハロゲンイオンなどの陰イオン成分が含有している場合がある。従って、使用される界面活性剤が金属汚染やその他汚染源となる場合が考えられる。
そのため、本発明に使用される界面活性剤(B)及び(C)は、予め含まれる不純物、特に、Na、Mg、Al、K、Ca、Fe、Cu、Pb、Znの各々の含有量を10重量ppm以下、中でも3重量ppm以下とすることが好ましく、特に1重量ppm以下とするのが好ましい。
このような精製された界面活性剤を得るためには、例えば、界面活性剤を水で溶解した後、イオン交換樹脂に通液し、樹脂にイオン性不純物を捕捉させることによって精製すればよい。
【0059】
また、このように、界面活性剤(B)及び(C)、更には後述の(D)陰イオン型界面活性剤等のその他の界面活性剤を含む場合は、これらの界面活性剤についても、Na、Mg、Al、K、Ca、Fe、Cu、Pb、Zn等の不純物含有量を上述の如く規制することにより、本発明の洗浄液は、洗浄液中の金属不純物のうち、少なくともNa、Mg、Al、K、Ca、Fe、Cu、Pb、Znの各々の含有量が20ppb以下、中でも5ppb以下、特に0.1ppb以下であることが、洗浄による半導体デバイス用基板の金属汚染を防止する上で好ましい。特に、本発明の洗浄液は、これら金属不純物の合計含有量が20ppb以下であることが好ましく、中でも5ppb以下、特に0.1ppb以下であることが好ましい。
【0060】
[pH]
本発明の洗浄液は、pH1〜5の酸性洗浄液であることが好ましく、中でも洗浄液のpHは2以上であることがより好ましい。また、本発明の洗浄液のpHの上限は4であることがより好ましい。洗浄液のpHが上記下限以上であると基板表面に露出している遷移金属又は遷移金属化合物などの一部あるいは全面が腐食するまでには到りにくく、またpHが上記上限以下であると本発明の目的である汚染の除去や再付着防止効果の点から好ましい。従って、本発明の洗浄液の(A)有機酸や、後述のその他の成分のうち、pHに影響を及ぼす成分の濃度は、その好適な含有量の範囲において、洗浄液のpHがこのような好適pHとなるように、適宜調整することが好ましい。
【0061】
<(A)〜(C)成分の好適配合比>
本発明の洗浄液において、本発明の効果を十分に得るためには、成分(A),(B)、更には成分(C)の相対的な含有量比は、次のような範囲であることが好ましい。
即ち、(A)有機酸は、界面活性剤(B)と界面活性剤(C)との合計濃度に対して、下限が1重量倍であることが好ましく、3重量倍であることが更に好ましく、同上限が20重量倍であることが好ましく、10重量倍であることが更に好ましい。
なお、本発明の洗浄液において、界面活性剤(B)と界面活性剤(C)との合計濃度は、下限が0.001重量%、特に0.004重量%で、上限が6重量%、特に5重量%であることが好ましい。
【0062】
また、界面活性剤(B)と界面活性剤(C)の相対比(重量比)は、界面活性剤(B):界面活性剤(C)が1以上:1であることが好ましく、2以上:1であることが更に好ましく、10以下:1であることが好ましく、5以下:1であることが好ましい。
界面活性剤(B)に対する界面活性剤(C)の量が上記下限以上であると、界面活性剤(B)を洗浄液中に安定に溶解させやすい点で好ましく、上記上限以下であると、本発明において、界面活性剤(B)を用いる効果が十分に発現しやすい点で好ましい。
【0063】
なお、複数の界面活性剤のHLB値の平均値は、界面活性剤の重量とHLB値との積を合計し、この値を界面活性剤の重量の合計で除すことにより算出される。即ち、例えばHLB値がHの界面活性剤M重量%と、HLB値がHの界面活性剤M重量%を用いた場合、そのHLB値の平均値は、(H×M+H×M)/(M+M)で算出される。
【0064】
<(D)陰イオン型界面活性剤>
本発明の洗浄液は、微粒子の除去性を向上させるために、更に成分(D)として、成分(C)以外の陰イオン型界面活性剤(以下、「陰イオン型界面活性剤(D)」と称す場合がある。)を含んでいてもよい。
陰イオン型界面活性剤(D)は、通常水溶性である。陰イオン型界面活性剤(D)としては、アルファオレフィンスルホン酸、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキル硫酸エステル、アルキルエーテル硫酸エステル、メチルタウリン酸、スルホコハク酸、エーテルスルホン酸及びこれらの塩のうち、1種又は2種以上を好ましく用いることができる。この中でも、洗浄液に添加した際の界面活性剤の安定性及び微粒子等のパーティクル除去性の観点より、アルキルベンゼンスルホン酸、メチルタウリン酸、スルホコハク酸及びこれらの塩が好ましい。
【0065】
本発明の洗浄液における水溶性の陰イオン型界面活性剤(D)の含有量は、洗浄液に対して通常0.0001重量%以上、好ましくは0.0003重量%以上、さらに好ましくは0.001重量%以上で、通常0.5重量%以下、好ましくは0.1重量%以下、さらに好ましくは0.05重量%以下である。陰イオン型界面活性剤(D)の濃度が上記下限以上であると、陰イオン型界面活性剤(D)を添加したことによる疎水性基板に対する洗浄液の微粒子除去効果の点で好ましく、また上記上限以下であると、廃液を生分解処理する場合の負荷が過大にならず好ましい。
【0066】
<(E)錯化剤>
本発明の洗浄液においては、更に洗浄液成分として錯化剤(以下、「錯化剤(E)」と称す場合がある。)を含有させると、基板表面の金属汚染をより一層低減した極めて高清浄な表面が得られるので好ましい。
本発明に用いられる錯化剤(E)は従来公知の任意のものを使用できる。錯化剤(E)の選択にあたっては、基板表面の汚染レベル、金属の種類、基板表面に要求される清浄度レベル、錯化剤コスト、化学的安定性等から総合的に判断して選択すればよく、本発明の洗浄液に使用し得る錯化剤(E)としては、例えば、以下に示すものが挙げられる。
【0067】
(1)ドナー原子である窒素とカルボキシル基及び/又はホスホン酸基を有する化合物
例えば、グリシン等のアミノ酸類;イミノ2酢酸、ニトリロ3酢酸、エチレンジアミン4酢酸[EDTA]、トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン4酢酸[CyDTA]、ジエチレントリアミン5酢酸[DTPA]、トリエチレンテトラミン6酢酸[TTHA]等の含窒素カルボン酸類;エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)[EDTPO]、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)[NTPO]、プロピレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)[PDTMP]等の含窒素ホスホン酸類などが挙げられる。
【0068】
(2)芳香族炭化水素環を有し、且つ該環を構成する炭素原子に直接結合したOH基及び/又はO基を2つ以上有する化合物
例えば、カテコール、レゾルシノール、タイロン等のフェノール類及びその誘導体などが挙げられる。
【0069】
(3)上記(1)、(2)の構造を併せ持った化合物
(3−1)エチレンジアミンジオルトヒドロキシフェニル酢酸[EDDHA]及びその誘導体
例えば、エチレンジアミンジオルトヒドロキシフェニル酢酸[EDDHA]、エチレンジアミン−N,N’−ビス〔(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)酢酸〕[EDDHMA]、エチレンジアミン−N,N’−ビス〔(2−ヒドロキシ−5−クロルフェニル)酢酸〕[EDDHCA]、エチレンジアミン−N,N’−ビス〔(2−ヒドロキシ−5−スルホフェニル)酢酸〕[EDDHSA]などの芳香族含窒素カルボン酸類;エチレンジアミン−N,N’−ビス〔(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ホスホン酸〕、エチレンジアミン−N,N’−ビス〔(2−ヒドロキシ−5−ホスホフェニル)ホスホン酸〕などの芳香族含窒素ホスホン酸類が挙げられる。
(3−2)N,N’−ビス(2−ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン−N,N’−二酢酸[HBED]及びその誘導体
例えば、N,N’−ビス(2−ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン−N,N’−二酢酸[HBED]、N,N’−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)エチレンジアミン−N,N’−二酢酸[HMBED]、N,N’−ビス(2−ヒドロキシ−5−クロルベンジル)エチレンジアミン−N,N’−二酢酸などが挙げられる。
【0070】
(4)その他
エチレンジアミン、8−キノリノール、o−フェナントロリン等のアミン類;ギ酸、酢酸等のカルボン酸類;フッ化水素酸、塩酸、臭化水素、ヨウ化水素等のハロゲン化水素又はそれらの塩;リン酸、縮合リン酸等のオキソ酸類又はそれらの塩等が挙げられる。
【0071】
これらの錯化剤は、酸の形態のものを用いてもよいし、アンモニウム塩等の塩の形態のものを用いてもよい。
上述した錯化剤の中でも、洗浄効果、化学的安定性等の理由から、グリシン等のアミノ酸類、エチレンジアミン4酢酸[EDTA]、ジエチレントリアミン5酢酸[DTPA]などの含窒素カルボン酸類;エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)[EDTPO]、プロピレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)[PDTMP]などの含窒素ホスホン酸類;エチレンジアミンジオルトヒドロキシフェニル酢酸[EDDHA]及びその誘導体;N,N’−ビス(2−ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン−N,N’−二酢酸[HBED]などが好ましい。
【0072】
中でも洗浄効果の観点からエレンジアミンジオルトヒドロキシフェニル酢酸[EDDHA]、エチレンジアミン−N,N’−ビス〔(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)酢酸〕[EDDHMA]、ジエチレントリアミン5酢酸[DTPA]、エチレンジアミン4酢酸[EDTA]、プロピレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)[PDTMP]が好ましい。
【0073】
これらの錯化剤(E)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の割合で併用してもよい。
【0074】
本発明の洗浄液中の錯化剤(E)の濃度は汚染金属不純物の種類と量、基板表面に要求される清浄度レベルによって任意に選択すればよいが、一般的には通常1重量ppm以上、中でも5重量ppm以上、特に10重量ppm以上で、通常10000重量ppm以下、中でも1000重量ppm以下、特に200重量ppm以下が好ましい。錯化剤(E)の濃度が上記下限以上であると錯化剤(E)による汚染除去や付着防止効果の点で好ましく、一方、上記上限以下であると経済的に有利であり、基板表面に錯化剤(E)が付着して、表面処理後に残留する危険性が少ないので好ましい。
【0075】
なお、錯化剤は、通常販売されている試薬において1〜数千重量ppm程度のFe等の金属不純物が含有している場合があるので、本発明に使用する錯化剤(E)が金属汚染源となる場合が考えられる。これらは、初期には錯化剤と安定な錯体を形成して存在しているが、表面処理剤として長時間使用しているうちに錯化剤が分解し、金属が遊離して基体表面に付着してしまう。そのため、本発明に使用される錯化剤(E)は、予め含まれるFe、Al、Zn等の金属不純物各々の含有量を5重量ppm以下とすることが好ましく、特に2重量ppm以下とするのが好ましい。このような精製された錯化剤を得るためには、例えば酸性又はアルカリ性溶液に錯化剤を溶解した後、不溶性不純物を濾過分離して取り除き、再び中和して結晶を析出させ、該結晶を液と分離することによって精製すればよい。
【0076】
<その他の成分>
本発明の洗浄液は、その性能を損なわない範囲において、更にその他の成分を任意の割合で含有していてもよい。他の成分としては、含硫黄有機化合物(2−メルカプトチアゾリン、2−メルカプトイミダゾリン、2−メルカプトエタノール、チオグリセロール等)、含窒素有機化合物(ベンゾトリアゾール、3−アミノトリアゾール、N(R)(Rは炭素数1〜4のアルキル基)、N(ROH)(Rは炭素数1〜4のアルキル基)、ウレア、チオウレア等)、水溶性ポリマー(ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール等)、アルキルアルコール系化合物(ROH(Rは炭素数1〜4のアルキル基))などの防食剤、硫酸、塩酸などの酸、ヒドラジンなどの還元剤、水素、アルゴン、窒素などの溶存ガス、フッ酸、フッ化アンモニウム、BHF(バッファードフッ酸)等のドライエッチング後に強固に付着したポリマー等の除去効果が期待できるエッチング促進剤などが挙げられる。
【0077】
また、本発明の洗浄液に含有させることができる他の成分として過酸化水素、オゾン、酸素などの酸化剤も挙げられる。半導体デバイス用基板の洗浄工程において、酸化膜のないシリコン(ベアシリコン)基板表面を洗浄する際には、酸化剤の配合により、基板表面へのエッチングによる表面荒れを抑えることができるので好ましい。本発明の洗浄液に過酸化水素等の酸化剤を含有させる場合には、その洗浄液中の濃度が通常0.001重量%以上、特に0.01重量%以上で、通常5重量%以下、特に1重量%以下となるように用いることが好ましい。
本発明の洗浄液が成分(A)〜(E)以外のその他の成分を含有する場合、その他の成分の含有量は、合計で通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、更に好ましくは1重量%以下である。
【0078】
<洗浄液媒体>
本発明の洗浄液の主要媒体は、比誘電率が50〜90の液体が好ましい。本発明の洗浄液の主要媒体としては、具体的には、水が好ましい。水としては、特に高清浄な基板表面を得たい場合には、通常脱イオン水、好ましくは超純水が用いられる。また、水の電気分解によって得られる電解イオン水や、水に水素ガスを溶存させた水素水などを用いることもできる。
【0079】
<調製方法>
本発明の洗浄液の調製方法は、従来公知の方法によればよい。
本発明の洗浄液の調製に際しては、洗浄液の構成成分、即ち、有機酸(A)、界面活性剤(B)、洗浄液媒体及び必要に応じて用いられる界面活性剤(C)、陰イオン型界面活性剤(D)、錯化剤(E)、その他の成分のうち、何れか2成分以上を予め接触させた後に残りの成分を接触させてもよいし、一度に全ての成分を接触させてもよい。
但し、界面活性剤(B)は、溶解性の点から、それのみより、界面活性剤(C)を溶解させて洗浄液媒体に接触させるか、又は、界面活性剤(B)と界面活性剤(C)とを同時に洗浄液媒体に接触させるのが好ましい。
【0080】
<洗浄対象基板(半導体デバイス用基板)>
本発明の洗浄液は、金属汚染やパーティクル汚染が問題となる半導体、ガラス、金属、セラミックス、樹脂、磁性体、超伝導体などの半導体デバイス用基板表面の洗浄に使用できる。特に、高清浄な基板表面が要求される、半導体素子やディスプレイデバイス用などの半導体デバイス用基板を製造する工程における、半導体デバイス用基板表面の洗浄に好適に使用される。これらの基板の表面には、配線、電極などが存在していてもよい。配線や電極の材料としては、Si、Ge、GaAs等の半導体材料;SiO、窒化シリコン、ガラス、低誘電率(Low−k)材料、酸化アルミニウム、遷移金属酸化物(酸化チタン、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム等)、(Ba,Sr)TiO(BST)、ポリイミド、有機熱硬化性樹脂などの絶縁材料;W、Cu、Al等の金属又はこれらの合金、シリサイド、窒化物などが挙げられる。ここで、Low−k材料とは、TEOSなどの酸化シリコンの比誘電率が3.8〜3.9なのに対し、比誘電率が3.5以下である材料の総称である。
【0081】
Low−k材料としては、有機ポリマー材料、無機ポリマー(シロキサン系)材料、多孔質(ポーラス)材料と、大きく三つに分けられる。有機ポリマー材料としては、Polyimide、BCB(Benzocyclobutene)、Flare(Honeywell社)、SiLK(Dow Chemical)等が上げられ、無機ポリマー材料としては、FSG(Fluorinated silicate glass)、BLACK DIAMOND(Applied Materials)、Aurora(日本ASM)等が挙げられる。
【0082】
本発明の洗浄液は、その表面において電極や配線材料の有無に関わらず、半導体デバイス用基板の表面洗浄に好適に用いられる。その中でも、本発明の洗浄液は、表面に絶縁膜等を有し、基板表面における水の接触角が60゜以上の半導体デバイス用基板の洗浄に好適に用いられる。
基板を洗浄する際に接触角が大きいと、洗浄液等の薬液をはじき易くなり、基板表面の金属汚染除去、パーティクル汚染、有機物と金属による複合汚染の除去が不十分となるために、基板に対する洗浄液の接触角は40゜以下が好ましく、より好ましくは30゜以下、さらに好ましくは25゜以下である。
【0083】
<配線基材のエッチング速度とパーティクル汚染の除去性>
表面に配線基材を有する半導体デバイス用基板を洗浄する場合、洗浄に用いた洗浄液の配線基材に対するエッチング速度が速く、洗浄により配線の膜厚が減少すると、配線抵抗等の増加をもたらし、デバイスとしての配線遅延等、各種特性を劣化させるので好ましくない。
従って、洗浄時における洗浄液による半導体デバイス用基板の配線基材に対するエッチング速度は10nm/分以下であることが好ましく、8nm/分以下であるのが更に好ましく、5nm/分以下であることが特に好ましく、1nm/分以下であるのが最も好ましい。
【0084】
また、洗浄後の基板にパーティクルが残存すると、後の工程において配線等の寸法変化や抵抗変化、断線や絶縁膜の誘電率変化等の潜在的な要因となるため、洗浄後の基板上のパーティクルは十分に除去されていることが好ましい。
本発明の洗浄液を用いて半導体デバイス用基板の洗浄を行う場合は、後述の実施例の項に記載される「パーティクル汚染の洗浄性」評価で、パーティクル汚染の除去性95%以上を達成すること、即ち、洗浄前の基板に存在するパーティクルの95%以上を洗浄により除去することが可能である。
【0085】
一般的に、洗浄液は、洗浄性が高いほど半導体デバイス用基板の配線基材に対するエッチング速度も大きくなってしまう。しかしながら、本発明の洗浄液では、パーティクル汚染の除去性が95%以上で、且つ、半導体デバイス用基板の配線基材に対するエッチング速度0.06nm/分以下で半導体デバイス用基板を洗浄可能である。また、更に好ましくはパーティクル汚染の除去性が95%以上で、且つ、半導体デバイス用基板の配線基材に対するエッチング速度0.05nm/分以下で、特に好ましくはパーティクル汚染の除去性が95%以上で、且つ、半導体デバイス用基板の配線基材に対するエッチング速度0.04nm/分以下で、半導体デバイス用基板を洗浄可能である。
【0086】
なお、本発明の洗浄液の適用対象となる半導体デバイス用基板に形成される配線基材層に用いる材料としては、遷移金属及び遷移金属化合物等が挙げられる。具体的には、W(タングステン)、Cu(銅)、Ti(チタン)、Cr(クロム)、Co(コバルト)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、Mo(モリブデン)、Ru(ルテニウム)、Au(金)、Pt(白金)、Ag(銀)等の遷移金属及びこれらのチッ化物、酸化物、シリサイド等の遷移金属化合物が挙げられる。この内、本発明の洗浄液を適用する対象としては、W(タングステン)及び/又はCu(銅)が好ましく、Cu(銅)が特に好ましい。
【0087】
[半導体デバイス用基板の洗浄方法]
本発明の洗浄液を用いて半導体デバイス用基板を洗浄する方法は、通常、洗浄液を直接基板に接触させる方法で行われる。洗浄液の基板への接触方法には、洗浄槽に洗浄液を満たして基板を浸漬させるディップ式、ノズルから基板上に洗浄液を流しながら基板を高速回転させるスピン式、基板に液を噴霧して洗浄するスプレー式等が挙げられる。この様な洗浄を行うための装置としては、カセットに収容された複数枚の基板を同時に洗浄するバッチ式洗浄装置、1枚の基板をホルダーに装着して洗浄する枚葉式洗浄装置等がある。
【0088】
洗浄時間は、バッチ式洗浄装置の場合、通常30秒以上、好ましくは1分以上で、通常
30分以下、好ましくは15分以下である。枚葉式洗浄装置の場合の洗浄時間は、通常1秒以上、好ましくは5秒以上で、通常15分以下、好ましくは5分以下である。洗浄時間が上記下限以上であると、洗浄効果の点で好ましく、上記上限以下であるとスループットの低下が起こりにくく好ましい。本発明の洗浄液は、上記いずれの方法にも適用できるが、短時間でより効率的な汚染除去ができる点から、スピン式やスプレー式の洗浄に好ましく用いられる。洗浄装置のタイプとしては、特に枚葉式洗浄装置に適用すると、洗浄時間の短縮、洗浄剤使用量の削減が可能であることから好ましい。
【0089】
洗浄液の温度は、任意の温度でよい。洗浄は、通常は室温で行うが、洗浄効果を向上させる目的で、40℃以上、70℃以下程度に加温して行ってもよい。即ち、本発明の洗浄液による洗浄は、通常20℃以上、70℃以下の幅広い温度範囲で実施することができる。
更に、表面にシリコンが露出している基板を洗浄する場合には、シリコン表面に有機物汚染が残留しやすいので、基板を温度300℃以上の加熱処理工程に供して熱分解させるか、オゾン水処理によって有機物を酸化分解処理することが好ましい。
【0090】
また、本発明の洗浄方法においては、物理力による洗浄方法(物理洗浄)、たとえば洗浄ブラシを用いたスクラブ洗浄などの機械的洗浄、あるいは超音波洗浄と併用させることが好ましい。中でも超音波照射又はブラシスクラブを併用すると、パーティクル汚染の除去性がさらに向上し、洗浄時間の短縮にも繋がるので好ましい。
特に、CMPを施した基板については、樹脂製ブラシを用いて洗浄するのが好ましい。ブラシ洗浄の際に用いる樹脂製ブラシの材質は任意であるが、例えばPVA(ポリビニルアルコール)を用いるのが好ましい。
また、基板に周波数0.5メガヘルツ以上の超音波を照射すると、界面活性剤との相乗作用により、パーティクルの除去性が著しく向上するので好ましい。
更に、水の電気分解によって得られる電解イオン水や、水に水素ガスを溶存させた水素水による洗浄を本発明の洗浄方法の前及び/又は後に組み合わせてもよい。
【0091】
[半導体デバイス用基板の製造方法]
本発明の洗浄液は、前述の如く、パーティクル汚染の除去性が高く、かつ半導体デバイス用基板の配線基材に対するエッチング速度が低いことから、表面に配線基材を有する半導体デバイス用基板の洗浄に好適に用いられる。
具体的には、配線基材層を作製後にその表面をCMP(化学的機械研磨:Chemical Mechanical Polishing)する工程を含む半導体デバイス用基板の製造方法であって、該CMP工程後に、配線基材層を洗浄する工程を有する半導体デバイス用基板の製造方法に好適に用いられる。
【0092】
前述の如く、該配線基材に用いる材料としては、遷移金属及び遷移金属化合物等が挙げられる。具体的には、W(タングステン)、Cu(銅)、Ti(チタン)、Cr(クロム)、Co(コバルト)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、Mo(モリブデン)、Ru(ルテニウム)、Au(金)、Pt(白金)、Ag(銀)等の遷移金属及びこれらのチッ化物、酸化物、シリサイド等の遷移金属化合物が挙げられる。この内、本発明の洗浄液を適用する対象としては、W(タングステン)及び/又はCu(銅)が好ましく、Cu(銅)が特に好ましい。
【0093】
これらの配線基材の層を表面に有する基板の洗浄を行う工程としては、配線基材と層間絶縁膜等を有する基板表面の洗浄工程が挙げられる。具体的には、半導体デバイス用基板に配線材料層を成膜した後の洗浄工程、特に配線基材の膜に対して、CMPを行った後の洗浄工程、或いは配線基材の膜上の層間絶縁膜にドライエッチングによりホールを開けた後の洗浄工程が適用される。
【0094】
前述の如く、このような配線基材層が表面に形成された半導体デバイス用基板を洗浄する工程において、本発明の洗浄液は、パーティクル汚染の除去性が高く、かつ配線基材に対するエッチング速度が小さいことから、洗浄による配線基材層の膜厚の変化が小さく、従って、洗浄による配線抵抗等の増加、デバイスとしての配線遅延等、各種特性の劣化の問題がない。また、パーティクル汚染の除去性が高いため、洗浄後の基板にパーティクルが殆ど残存せず、後の工程において配線等の寸法変化や抵抗変化、断線や絶縁膜の誘電率変化等の不具合を引き起こすことがない。
【0095】
この結果、CPM工程後の半導体デバイス用基板の配線基材層の洗浄工程で、本発明の洗浄液を用いて洗浄を行うことにより、高特性の半導体デバイス用基板を歩留りよく製造することができる。
【実施例】
【0096】
次に実施例を用いて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
【0097】
以下の実施例、比較例及び参考例で、洗浄液の構成成分として用いた成分(B)〜(E)の詳細は次の通りである。なお、界面活性剤中の元素濃度は、ICP−MSで分析した。
【0098】
[界面活性剤(B):前記一般式(I)で表される界面活性剤(I)]
<界面活性剤(B−1):実施例1〜13,参考例1,2で使用>
ポリオキシエチレン(b=4.5)ラウリルエーテル及びポリオキシエチレン(b=4.5)トリデシルエーテルの混合物(Na、Mg、Al、K、Ca、Fe、Cu、Pb、Znの各含有量は10重量ppm以下)
HLB値=10.2(9.8、9.4、10.5、10.9の平均)
(a)=12、13
(b)=4.5
a/b=2.7、2.9
<界面活性剤(B−2):参考例3,4で使用>
ポリオキシエチレン(b=5.0)ラウリルエーテル(Na、Mg、Al、K、Ca、Fe、Cu、Pb、Znの各含有量は10重量ppm以下)
HLB値=10.9
(a)=12
(b)=5.0
a/b=2.4
【0099】
[界面活性剤(C):前記一般式(II)で表される界面活性剤(II)]
ポリオキシエチレン(d=11)ラウリルエーテル(Na、Mg、Al、K、Ca、Fe、Cu、Pb、Znの各含有量は1重量ppm以下)
HLB値=14.5
(c)=12
(d)=11
c/d=1.1
【0100】
[陰イオン型界面活性剤(D)]
ドデシルベンゼンスルホン酸(DBS)(Na、Mg、Al、K、Ca、Fe、Cu、Pb、Znの各含有量は1重量ppm以下)
【0101】
[錯化剤(E)]
グリシン
【0102】
実施例1〜13、比較例1,2、参考例1〜4
表1に示す配合で洗浄液を調製した(但し、残部は水)。洗浄液の調製は、何れも水に各成分を同時に添加して攪拌混合して行った。調製された何れの洗浄液も、Na、Mg、Al、K、Ca、Fe、Cu、Pb、Znの各含有量は5ppb以下であり、これらの合計量は10ppb以下であった。調製された洗浄液のpHは、pHメーター((株)堀場製作所製)により測定した。なお、用いた水は、洗浄液媒体用、流水洗浄用共に超純水(比抵抗18MΩ以上)である。
【0103】
得られた洗浄液について、以下の評価を行った結果を表1に示す。なお、参考例1〜4では、目視で界面活性剤(B)が明らかに溶解していないことが確認されたため、洗浄液としての評価は行わなかった。
【0104】
<基板に対する接触角>
膜厚100nmのLow−k膜(SiOC:炭素含有SiO)が基板表面に積層された50mm×20mmの試料片を10分間流水で洗浄した後、液滴調整器を用いて、各洗浄液をこの試料片のLow−k膜上に所定量滴下して液滴を形成した。1分間静置後に試料片と液滴との接触角を画像処理式接触角計(協和界面科学(株)製「CA−X150」)を用いて測定した。なお、この方法で求めた試料片に対する水の接触角は75゜であった。
【0105】
<銅エッチング量>
各洗浄液に銅薄膜を浸漬させ、その浸漬前後の膜厚の変化から、以下のようにして銅薄膜のエッチング量を算出した。
表面に膜厚150nmの銅層が成膜された20mm角の試料片を10分間流水で洗浄した。該試料片を23℃に温度制御された洗浄液に2時間浸漬させた。浸漬後に5分間流水で洗浄を行ってから、窒素ブローにて該試料片を乾燥させた。全反射蛍光X線(日本電子(株)製「RIX−3000」)を用いて、試料片表面の反射強度を測定し、銅層の膜厚を算出した。そして、洗浄処理前後の膜厚測定値から、エッチング量としてエッチング速度を算出した。
【0106】
<パーティクル汚染の洗浄性>
Low−k膜付きのシリコン基板をSiOスラリー溶液に浸漬させて表面にパーティクルを付けた後、各洗浄液に浸漬させ、その浸漬前後のパーティクル数の変化から以下のようにしてパーティクル汚染の洗浄性を評価した。
Low−k膜(SiOC:炭素含有SiO)付きの8インチシリコン基板を、SiOスラリー溶液に10分間浸漬した。浸漬後の基板を1分間水洗し、マルチスピンナー((株)カイジョー製「KSSP−201」)を用いてスピン乾燥させた。その後、レーザー表面検査装置(日立電子エンジニアリング(株)製「LS−6600」)を用いて基板表面に付着したパーティクル数を測定し、0.2μm以上のパーティクルが4000〜7000個付着していることを確認した。
このSiOスラリーが付着した基板を、各洗浄液を用いて、マルチスピンナー((株)カイジョー製「KSSP−201」)でブラシスクラブ洗浄することにより、基板表面のパーティクルを除去した。洗浄は、ポリビニルアルコール製ブラシを用いて、基板を600rpmにて回転させながら、洗浄液を1リットル/分にて供給して室温で30秒間行った。洗浄後の基板を30秒間流水で洗浄し、3000rpmにて回転させながら20秒間スピン乾燥した。この基板について、前記レーザー表面検査装置を用いて、基板表面に残留する0.2μm以上のパーティクル数を計測し、洗浄処理前後のパーティクル数の測定値から、洗浄によるパーティクルの除去率(%)を算出し、洗浄性(パーティクル汚染の除去性)を評価した。
【0107】
【表1】

【0108】
以上の結果から、本発明の洗浄液は、疎水性の低誘電率(Low−k)膜に対して接触角が極めて小さく、良好な濡れ性を有しており、また配線基材に対するエッチング量も低く抑えられていることが明らかである。しかも、系内に微粒子(パーティクル)等が混入しても、本発明の洗浄液を用いて洗浄することによって、高度に清浄化すると共に基板への再付着を抑制することが可能であり、本発明の洗浄液により、疎水性の基板に対する洗浄性と低エッチング性を両立することができることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の2成分(A)及び(B)を含有することを特徴とする半導体デバイス用基板洗浄液。
(A)有機酸
(B)HLB値が5以上13未満の非イオン型界面活性剤
【請求項2】
請求項1において、成分(B)の含有量が0.0005〜5重量%であることを特徴とする半導体デバイス用基板洗浄液。
【請求項3】
請求項1又は2において、更に成分(C)として成分(B)の可溶化剤を含むことを特徴とする半導体デバイス用基板洗浄液。
【請求項4】
請求項3において、成分(C)がHLB値13〜20の非イオン型界面活性剤であることを特徴とする半導体デバイス用基板洗浄液。
【請求項5】
請求項3又は4において、成分(B)と成分(C)の相対含有量(重量比)が成分(B):成分(C)=1:1〜10:1であることを特徴とする半導体デバイス用基板洗浄液。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項において、更に成分(D)として成分(C)以外の陰イオン型界面活性剤を含むことを特徴とする半導体デバイス用基板洗浄液。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項において、成分(A)がポリカルボン酸であることを特徴とする半導体デバイス用基板洗浄液。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項において、pHが1〜5であることを特徴とする半導体デバイス用基板洗浄液。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項において、更に成分(E)錯化剤を含むことを特徴とする半導体デバイス用基板洗浄液。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項の洗浄液を用いて半導体デバイス用基板を洗浄することを特徴とする半導体デバイス用基板の洗浄方法。
【請求項11】
有機酸を含有する半導体デバイス用基板の洗浄液であって、半導体デバイス用基板の配線基材に対するエッチング速度が0.06nm/分以下であり、且つ、パーティクル汚染の除去性が95%以上であることを特徴とする半導体デバイス用基板の洗浄液。
【請求項12】
請求項11において、半導体デバイス用基板の配線基材が銅であることを特徴とする半導体デバイス用基板の洗浄液。
【請求項13】
請求項11又は12の洗浄液を用いて、表面に配線基材を有する半導体デバイス用基板を洗浄することを特徴とする半導体デバイス用基板の洗浄方法。
【請求項14】
配線基材層を作製後にその表面をCMPする工程を含む半導体デバイス用基板の製造方法であって、該CMP工程後に、以下の2成分(A)及び(B)を含有する洗浄液を用いて、配線基材層を洗浄する工程を有することを特徴とする半導体デバイス用基板の製造方法。
(A)有機酸
(B)HLB値が5以上13未満の非イオン型界面活性剤

【公開番号】特開2009−4759(P2009−4759A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−128555(P2008−128555)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】