半導体基板の表面処理装置及び方法
【課題】パターンの倒壊及びウォーターマークの発生を防止しつつ基板を洗浄・乾燥させる半導体基板の表面処理装置及び方法を提供する。
【解決手段】基板保持回転部100に複数の凸形状パターンを形成した半導体基板Wをほぼ水平に保持して回転させ、薬液を用いて前記半導体基板W表面を洗浄し、洗浄した前記凸形状パターン表面に撥水化剤を用いて撥水性保護膜を形成し、前記撥水性保護膜形成後に、酸性水又は希釈したアルコールを用いて、前記半導体基板Wをリンスし、リンスした前記半導体基板Wを乾燥させた後に、前記凸形状パターンを残存させて前記撥水性保護膜を除去する。
【解決手段】基板保持回転部100に複数の凸形状パターンを形成した半導体基板Wをほぼ水平に保持して回転させ、薬液を用いて前記半導体基板W表面を洗浄し、洗浄した前記凸形状パターン表面に撥水化剤を用いて撥水性保護膜を形成し、前記撥水性保護膜形成後に、酸性水又は希釈したアルコールを用いて、前記半導体基板Wをリンスし、リンスした前記半導体基板Wを乾燥させた後に、前記凸形状パターンを残存させて前記撥水性保護膜を除去する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板の表面処理装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程には、リソグラフィ工程、エッチング工程、イオン注入工程などの様々な工程が含まれている。各工程の終了後、次の工程に移る前に、ウェーハ表面に残存した不純物や残渣を除去してウェーハ表面を清浄にするためのクリーニング(洗浄)工程及び乾燥工程が実施されている。
【0003】
近年、素子の微細化に伴い、リソグラフィ工程(露光・現像)後のレジストパターンをリンスし、乾燥させる際に毛細管現象により、レジストパターンが倒壊する問題が生じた。このような問題を解決するため、レジストパターンの表面を撥水化し、レジストパターンと現像液及びリンス純水との間に働く毛細管力を低下させる方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。この方法では、レジストパターンの表面に有機物が付着するが、この有機物はレジストパターンと共に、リソグラフィ工程後のエッチング工程で除去される。
【0004】
また、例えば、エッチング工程後のウェーハの洗浄処理では、ウェーハの表面に洗浄処理のための薬液が供給され、その後に純水が供給されてリンス処理が行われる。リンス処理後は、ウェーハ表面に残っている純水を除去してウェーハを乾燥させる乾燥処理が行われる。
【0005】
乾燥処理として、例えば、ウェーハを回転させて表面の水分を遠心力により除去するスピン乾燥が行われる。この乾燥処理時にシリコンが溶出し、ウェーハ上にウォーターマークと呼ばれる乾燥しみが発生して、歩留まりを低下させるという問題があった。また、乾燥処理の際に、ウェーハ上のパターンが毛細管力により倒壊するという問題があった。
【0006】
最近では、IPA(イソプロピルアルコール)を用いてウェーハ上の純水をIPAに置換してウェーハを乾燥させる手法が提案されている(例えば特許文献2参照)。また、IPAより表面張力の低いHFE(ハイドロフルオロエーテル)を用いる手法も提案されている。しかし、このような乾燥方法によっても、液体の表面張力によるウェーハ上の微細パターンの倒壊を防止することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−142349
【特許文献2】特許第3866130号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、パターンの倒壊及びウォーターマークの発生を防止しつつ基板を洗浄・乾燥させる半導体基板の表面処理装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様による半導体基板の表面処理装置は、表面に凸形状パターンが形成された半導体基板を保持し、前記半導体基板を回転させる基板保持回転部と、前記基板保持回転部に保持された前記半導体基板の表面に薬液を供給し、前記半導体基板を洗浄する第1供給部と、前記基板保持回転部に保持された前記半導体基板の表面に純水を供給し、前記半導体基板をリンスする第2供給部と、前記基板保持回転部に保持された前記半導体基板の表面に撥水化剤を供給し、前記凸形状パターンの表面に撥水性保護膜を形成する第3供給部と、前記基板保持回転部に保持された前記半導体基板の表面に純水で希釈したアルコールを供給し、前記半導体基板をリンスする第4供給部と、前記凸形状パターンを残存させて前記撥水性保護膜を除去する除去部と、を備えるものである。
【0010】
本発明の一態様による半導体基板の表面処理装置は、表面に凸形状パターンが形成された半導体基板を保持し、前記半導体基板を回転させる基板保持回転部と、前記基板保持回転部に保持された前記半導体基板の表面に薬液を供給し、前記半導体基板を洗浄する第1供給部と、前記基板保持回転部に保持された前記半導体基板の表面に純水を供給し、前記半導体基板をリンスする第2供給部と、前記基板保持回転部に保持された前記半導体基板の表面に撥水化剤を供給し、前記凸形状パターンの表面に撥水性保護膜を形成する第3供給部と、前記基板保持回転部に保持された前記半導体基板の表面に酸性水を供給し、前記半導体基板をリンスする第4供給部と、前記凸形状パターンを残存させて前記撥水性保護膜を除去する除去部と、を備えるものである。
【0011】
本発明の一態様による半導体基板の表面処理方法は、半導体基板上に複数の凸形状パターンを形成し、薬液を用いて前記凸形状パターン表面を洗浄し、洗浄した前記凸形状パターン表面に撥水化剤を用いて撥水性保護膜を形成し、前記撥水性保護膜形成後に、酸性水又は希釈したアルコールを用いて、前記半導体基板をリンスし、リンスした前記半導体基板を乾燥させ、前記乾燥後に前記凸形状パターンを残存させて前記撥水性保護膜を除去するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、パターンの倒壊及びウォーターマークの発生を防止しつつ基板を洗浄・乾燥させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体基板の表面処理装置の概略構成図である。
【図2】同第1の実施形態に係る半導体基板の表面処理方法を説明するフローチャートである。
【図3】洗浄シーケンスとパターンに対する水の接触角との関係を示すグラフである。
【図4】パターンにかかる液体の表面張力を説明する図である。
【図5】IPA濃度とシリコン溶解量との関係を示すグラフである。
【図6】リンス液のIPA濃度とウェーハに形成されるウォーターマークの個数との関係を示すグラフである。
【図7】撥水性保護膜の形成を行った場合と行わなかった場合の乾燥処理後のパターン状態を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る半導体基板の表面処理装置の概略構成図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る半導体基板の表面処理装置の概略構成図である。
【図10】側壁転写プロセスを説明する工程断面図である。
【図11】側壁転写プロセスを説明する工程断面図である。
【図12】パターンにかかる液体の表面張力を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
半導体装置の製造工程における洗浄工程に課せられた課題は半導体基板上に形成された微細パターン構造に欠陥(パターン欠落、傷、パターン細り、基板掘れ等)を生じさせることなく、半導体基板表面を清浄な表面状態に戻すことである。一般的には、洗浄する対象は半導体製造プロセスに用いられるリソグラフィプロセスで用いるレジスト材料、又はドライエッチングプロセス時に半導体ウェーハ表面に残存した反応副生成物(残渣)、各プロセス後にウェーハ表面に残る金属不純物、有機汚染物質等であり、これら洗浄対象物を残したまま、次工程の製造プロセスへウェーハを流品させることは、デバイス製造歩留まりを確実に低下させてしまう。
【0015】
従って、洗浄プロセスには半導体基板上に形成された微細パターン構造に欠陥(パターン欠落、傷、パターン細り、基板掘れ等)を生じさせることなく、洗浄後に清浄な半導体ウェーハ表面を形成するという重要な役割がある。素子の微細化に伴い、洗浄工程に要求される清浄度は高くなっている。
【0016】
特に、昨今の高アスペクトで凸形状の微細パターンをもつ構造(例えばパターンサイズが30nm以下でかつ、アスペクト比が10以上の構造)においては、パターン倒壊を抑制しながら清浄な基板表面を形成することは困難であった。一方で、レジストプロセスで用いられている撥水化技術を適用した場合は、パターン表面を汚染するという問題が生じた。これに対し以下の実施形態においては、高アスペクトで凸形状の微細パターンを持つ構造であっても、パターン表面を清浄に保ちつつ、高い撥水度を実現し、パターン倒壊を抑制することができる。
【0017】
(第1の実施形態)図1に本発明の第1の実施形態に係る半導体基板の表面処理装置の概略構成を示す。表面処理装置は、基板保持回転部100、希釈IPA供給部200、及び薬液等供給部300を備える。
【0018】
基板保持回転部100は、処理チャンバを構成するスピンカップ101、回転軸102、スピンベース103、及びチャックピン104を有する。回転軸102は略鉛直方向に延び、回転軸102の上端に円盤状のスピンベース103が取り付けられている。回転軸102及びスピンベース103は、図示しないモータにより回転させることができる。
【0019】
チャックピン104はスピンベース103の周縁部に設けられている。チャックピン104が基板(ウェーハ)Wを狭持することで、基板保持回転部100は基板Wをほぼ水平に保持して回転させることができる。
【0020】
基板Wの表面の回転中心付近に、希釈IPA供給部200又は薬液等供給部300から液体が供給されると、液体は基板Wの半径方向に広がる。また、基板保持回転部100は、基板Wのスピン乾燥を行うことができる。基板Wの半径方向に飛散した余分な液体は、スピンカップ101に捕らえられ、廃液管105を介して排出される。
【0021】
希釈IPA供給部200は、基板保持回転部100に保持された基板Wに希釈したIPA(イソプロピルアルコール)を供給する。希釈IPAは、スピン乾燥前に半導体基板Wに供給される。
【0022】
IPAは供給ライン(配管)201を介してバッファタンク220に貯留される。供給ライン201には流量計202及びバルブ203が設けられており、バッファタンク220への供給量を制御できる。
【0023】
また、バッファタンク220には、供給ライン211を介して純水が供給される。供給ライン211には流量計212及びバルブ213が設けられており、バッファタンク220への供給量を制御できる。
【0024】
バッファタンク220は、IPA及び純水、すなわち希釈されたIPA(希釈IPA)を貯留する。バッファタンク220には希釈IPAのIPA濃度を検出する濃度センサ221が設けられている。濃度センサ221の検出結果に基づいてバルブ203、213の開度を制御することで、バッファタンク220内の希釈IPAを所望の濃度に調整できる。
【0025】
バッファタンク220内の希釈IPAは、ポンプ230により排出され、フィルタ231を通過した後、供給ライン232を介してノズル233から吐出され、基板Wの表面に供給される。供給ライン232にはバルブ234が設けられており、基板W表面への希釈IPAの供給量や流速を制御できる。なお、ポンプ230から排出された希釈IPAの一部は再びバッファタンク220に戻され、循環している。
【0026】
薬液等供給部300は、基板W表面に、IPA、純水、撥水化剤等を供給することができる。IPAは、供給ライン301を介して供給され、ノズル302から吐出される。同様に、純水は、供給ライン303を介して供給され、ノズル304から吐出される。また、撥水化剤は、供給ライン305を介して供給され、ノズル306から吐出される。また、薬液等供給部300は、SPM(Sulfuric acid Hydrogen Peroxide Mixture:硫酸と過酸化水素水の混合液)等の他の薬液を供給するライン及び吐出するノズル(共に図示せず)を有する。
【0027】
撥水化剤は、基板Wの表面に形成された凸形状パターンの表面に撥水性保護膜を形成し、パターン表面を撥水化する薬液であり、例えばシランカップリング剤である。シランカップリング剤は、分子中に無機材料と親和性、反応性を有する加水分解基と、有機材料と化学結合する有機官能基とを有するものであり、例えばヘキサメチルジシラザン(HMDS)、テトラメチルシリルジエチルアミン(TMSDEA)等を用いることができる。凸形状パターンの表面の撥水化については後述する。
【0028】
また、表面処理装置は、図示しないエキシマUV(紫外線)照射部を備える。エキシマUV照射部は、半導体基板WにUV光を照射し、凸形状パターンを残存させて、撥水性保護膜を除去することができる。紫外線照射以外の方法で、凸形状パターンを残存させて、撥水性保護膜を除去する除去部を設けてもよい。
【0029】
このような表面処理装置を用いて半導体基板の表面処理を行う方法について図2に示すフローチャートを用いて説明する。なお、基板保持回転部100、希釈IPA供給部200、及び薬液等供給部300の動作は図示しない制御部により制御することができる。
【0030】
(ステップS101)表面の所定の領域に複数の凸形状パターンを有する処理対象の半導体基板Wが搬送部(図示せず)により搬入され、基板保持回転部100に保持される。凸形状パターンは、例えば、ラインアンドスペースパターンである。凸形状パターンの少なくとも一部が、シリコンを含む膜で形成されていてもよい。凸形状パターンは、例えば、RIE(Reactive Ion Etching)法により形成される。
【0031】
(ステップS102)半導体基板Wを所定の回転速度で回転させ、薬液等供給部300から半導体基板Wの表面の回転中心付近に薬液を供給する。薬液は例えばSPM、SC−1(Standard Clean 1)、SC−2、HF等である。薬液は1種類でもよいし、複数の薬液を同時又は連続的に供給してもよい。
【0032】
薬液が半導体基板Wの回転による遠心力を受けて、半導体基板W表面全域に行き渡り、半導体基板Wの薬液(洗浄)処理が行われる。
【0033】
(ステップS103)薬液等供給部300から半導体基板Wの表面の回転中心付近に純水を供給する。純水が半導体基板Wの回転による遠心力を受けて、半導体基板W表面全域に行き渡る。これにより、半導体基板Wの表面に残留していた薬液を純水によって洗い流す純水リンス処理が行われる。
【0034】
(ステップS104)薬液等供給部300から半導体基板Wの表面の回転中心付近にIPA等のアルコールを供給する。IPAが半導体基板Wの回転による遠心力を受けて、半導体基板W表面全域に行き渡る。これにより、半導体基板Wの表面に残留していた純水をIPAに置換するアルコールリンス処理が行われる。
【0035】
(ステップS105)薬液等供給部300から半導体基板Wの表面の回転中心付近に撥水化剤を供給する。撥水化剤は例えばシランカップリング剤である。
【0036】
シランカップリング剤が半導体基板Wの回転による遠心力を受けて、半導体基板W表面全域に行き渡る。これにより、凸形状パターンの表面に濡れ性が低い保護膜(撥水性保護膜)が形成される。
【0037】
この撥水性保護膜は、シランカップリング剤のエステル反応が起きることで、形成される。従って、アニール処理を行って液温を上昇させたり、エキシマUV照射部から紫外線を照射したりすることで、反応を促進させるようにしてもよい。
【0038】
凸形状パターンがシリコン窒化膜やポリシリコン等のシリコン系膜の場合はシランカップリング剤を用いたシリル化処理を行ってもシリル化反応が不十分となり、パターンの倒壊を抑制するために十分な撥水性を得られない場合がある。その場合、ステップS102に、シリコン系材料の表面を酸化可能な酸化剤を含む処理薬液による処理を追加し、シリコン系材料の表面をシリコン酸化物系の化学酸化膜に変えることが好適である。その後に、シリル化処理を行うことで、シリル化処理後の撥水性を向上させることができる。
【0039】
例えば、凸形状パターンがシリコン系膜の場合には、図3(a)に示すように、dHF処理のみを行って撥水性保護膜を形成すると、パターンに対する水の接触角は89度である。これにH2O2処理を加えると、接触角は95度まで向上する。これはシリコン系膜の表面に適度な酸化膜が形成されたためと考えられる。
【0040】
また、シリコン窒化膜の場合には、図3(b)に示すように、dHF処理のみを行って撥水性保護膜を形成すると、水の接触角は約46度である。これにH2O2処理を加えると54度まで向上し、SPM処理を追加すると、59度まで向上する。これは洗浄後の基板表面に撥水処理が施されやすいように最適な改質処理が加えられたこと、つまりSiN表面が酸化剤によりSiO2化され、撥水性保護膜を形成されやすくなったと考えられる。
【0041】
また、RIE(Reactive Ion Etching)加工後には加工残渣が多く発生する。加工残渣が残った状態では撥水性保護膜は形成されにくい。従って、ステップS102においてSPM処理等を行って残渣を除去することは、撥水性保護膜を形成する上でも有効である。さらに、RIE加工によりパターン表面にプラズマダメージが蓄積され、ダングリングボンドができる。酸化効果のある薬液で改質処理すると、ダングリングボンドはOH基で修飾される。OH基が多く存在すると、シリル化反応確率が高くなり、撥水性保護膜が形成されやすくなるため、より高い撥水度を得ることができる。この例では、微細パターンがシリコン酸化膜の場合でも効果が得られる。
【0042】
なお、上記の説明では、半導体基板Wの洗浄後に、洗浄薬液とは異なる処理薬液により半導体基板Wの表面を改質する例を示したが、洗浄薬液が改質効果を兼ねる、すなわち酸化効果を持つものであれば別途改質処理を行わなくても構わない。しかし、洗浄工程と改質工程とを分けることにより、凸形状の微細パターンの被洗浄面を清浄化した後、清浄化された面に対し改質を行うため、酸化効果を有する薬液を用いる場合に対して改質効果をさらに向上させることができるため望ましい。
【0043】
(ステップS106)薬液等供給部300から半導体基板Wの表面の回転中心付近にIPAを供給する。IPAが半導体基板Wの回転による遠心力を受けて、半導体基板W表面全域に行き渡る。これにより、半導体基板Wの表面に残留していた未反応のシランカップリング剤をIPAに置換するアルコールリンス処理が行われる。なお、ここで供給されるIPAは希釈されていない濃度100%のものである。
【0044】
(ステップS107)希釈IPA供給部200から半導体基板Wの表面の回転中心付近に希釈IPAを供給する。希釈IPAが半導体基板Wの回転による遠心力を受けて、半導体基板W表面全域に行き渡る。これにより、半導体基板Wの表面に残留していたIPAを希釈IPAによって洗い流す希釈IPAリンス処理が行われる。
【0045】
(ステップS108)半導体基板Wの乾燥処理を行う。例えば半導体基板Wの回転速度を所定のスピンドライ回転速度に上げて、半導体基板Wの表面に残っている希釈IPAを振り切って乾燥させるスピンドライ処理を行う。
【0046】
半導体基板Wに形成されている凸形状パターンは撥水性保護膜に覆われているため、液体の接触角θが大きくなる。特に、ステップS107で半導体基板Wの表面の液体をIPAから希釈IPAに置換することにより、接触角θを90°に近付けることができる。
【0047】
図4に半導体基板W上に形成されているパターン4の一部が液体5に濡れた状態を示す。ここで、パターン4間の距離をSpace、パターン4の高さをH、液体5の表面張力をγとすると、パターン4にかかる力PはP=2×γ×cosθ・H/Space・・・(式1)となる。
【0048】
θが90°に近付くことで、cosθが0に近づき、乾燥処理時にパターンに作用する力Pが小さくなることが分かる。これにより乾燥処理の際にパターンが倒壊することを防止できる。
【0049】
ここでウォーターマークについて考える。ウォーターマークは乾燥処理時におけるシリコンの溶出により形成される。図5に純水とIPAとを混合したリンス液のIPA濃度と、リンス液中におけるシリコンの溶解量との関係を示す。図5に示すグラフの縦軸はリンス液中におけるシリコン溶解量の化学分析結果であり、横軸はリンス液のIPA濃度である。図5から、IPA濃度が0%、すなわち純水の場合はシリコン溶解量が多く、IPA濃度の上昇に伴い、シリコン溶解量が減少することが分かる。
【0050】
また、図6にステップS107で用いるリンス液のIPA濃度と、乾燥処理後にウェーハ上に形成されるウォーターマークの個数との関係を示す。ウォーターマークの個数はウェーハ表面の光学的な欠陥検査とSEM画像分析により求められる。図6から、IPAを含むリンス液を用いることで、純水でリンスを行う場合よりも、ウォーターマークの個数が減ることが分かる。
【0051】
本実施形態では、乾燥処理前のリンス工程(ステップS107)において、希釈IPAリンス処理を行うため、シリコンの溶出を防止し、ウォーターマークの形成を防止することができる。
【0052】
(ステップS109)エキシマUV照射部から紫外線を照射し、凸形状パターン表面に形成された撥水性保護膜を除去する。本実施形態は半導体基板の表面を洗浄・乾燥させるものであるので、撥水性保護膜の除去を行うことにより清浄化工程が終了となる。なお、この工程の後の工程で撥水性保護膜が除去される場合には乾燥後、すぐに撥水性保護膜を除去しなくても構わない。
【0053】
このような撥水性保護膜の形成を行った場合と行わなかった場合の乾燥処理後のパターンの状態を図7に示す。ライン高さが150nm、170nm、200nmの3種類、ライン幅が普通、細、極細(普通>細>極細)の3種類のパターンについて表面処理を行った。
【0054】
図7(a)から分かるように、撥水性保護膜を形成しない場合、ライン幅が極細のパターンは150nm、170nm、200nmのいずれのライン高さにおいてもパターン倒壊が発生した。また、ライン幅が細で、ライン高さが200nmにおいてもパターン倒壊が発生した。
【0055】
一方、図7(b)から分かるように、撥水性保護膜を形成すると、ライン幅が極細で、ライン高さが200nmのパターン以外ではパターン倒壊を防止することができた。撥水性保護膜を形成することで、アスペクト比が高いパターンでも、洗浄・乾燥によるパターン倒壊を防止でき、倒壊マージンを向上させられることが分かる。
【0056】
このように、本実施形態では、半導体基板W表面の洗浄を行う際に、基板表面に撥水性保護膜を形成することで、乾燥処理時の凸形状の微細パターン倒壊を防止することができる。また、乾燥処理の前に希釈IPAリンス処理を行うため、シリコンの溶出を防止し、ウォーターマークの発生を防止することができる。
【0057】
基板上に形成されたパターンの倒壊を防止するためには、パターンにかかる力(上記式1で表されるP)を低減する必要がある。上記式1のパラメータのうち、Spaceはパターン寸法で決まる固定パラメータであり、濡れ性cosθは微細パターン(の表面)を構成する物質と液体との関係で決まる固定パラメータであるため、従来の基板処理では表面張力γに着目し、γの小さい液体を用いることによりパターンにかかる力の低減を図っていた。しかし、γを下げるにも限界があり、パターン倒壊を防止できなくなっていた。
【0058】
これに対し、上述したように、本実施形態による表面処理方法は、パターン表面に撥水性保護膜を形成し、濡れ性cosθを制御することで乾燥処理時にパターンにかかる力を極めて小さくし、パターン倒壊を防止可能とした。
【0059】
上記実施形態による表面処理方法は、アスペクト比が8以上の時のパターン倒壊防止に特に効果がある。
【0060】
上記実施形態では撥水性保護膜の形成工程(ステップS105)の前後にアルコールリンス処理を行っていた(ステップS104、S106)。これは撥水性保護膜の形成時に使用するシランカップリング剤が種類によっては純水と置換可能ではない場合があるためである。従って、使用するシランカップリング剤が純水と置換可能である物質の場合は、このアルコールリンス処理を省略することができる。
【0061】
上記実施形態において、撥水化剤は撥水性保護膜を形成可能な範囲で希釈してもよい。シクロヘキサノンやアルコール等の安価な薬液で撥水化剤を希釈することで、コストを低減できる。撥水化剤として使用するシランカップリング剤がIPA中のヒドロキシル基により加水分解を起こし、撥水化能力が低下するおそれがある場合は、撥水化剤を供給する前に半導体基板上のIPAをシンナーに置換してもよい。
【0062】
上記実施形態において、バッファタンク220は表面処理装置本体の外部に設けてもよい。また、濃度センサ221の代わりに、秤量ポンプ及びバッファタンク220内の液面位置を検出する液面センサを設けて、IPAの希釈度を調整するようにしてもよい。
【0063】
上記実施形態では、バッファタンク220においてIPAと純水とを混合していたが、供給ライン201及び211と連結した混合バルブをノズル233の直前に設けて、希釈IPAを基板Wに供給するようにしてもよい。さらに、IPAと純水とを直接基板Wに供給して基板W上でこれらを混合するようにしてもよく、この場合、希釈IPA供給部200を省略しても構わない。
【0064】
(第2の実施形態)図8に本発明の第2の実施形態に係る半導体基板の表面処理装置の概略構成を示す。本実施形態に係る表面処理装置は、複数枚の半導体基板の洗浄・乾燥を一括して行うバッチ式の表面処理装置である。
【0065】
表面処理装置は、タンク11〜16、エキシマUV照射部17、気体供給部及び搬送部(共に図示せず)を備える。搬送部は、複数枚の基板を保持し、搬送することができる。
【0066】
タンク11は、SPM、SC−1(Standard Clean 1)、SC−2、HF等の基板を洗浄する薬液を貯留する。搬送部が基板をタンク11に導入することで上記第1の実施形態に係る表面処理方法の薬液処理(ステップS102)を実行できる。
【0067】
タンク12は、純水を貯留する。搬送部が基板をタンク11から引き上げ、タンク12に導入することで、上記第1の実施形態に係る表面処理方法の純水リンス処理(ステップS103)を実行できる。
【0068】
タンク13は、IPAを貯留する。搬送部が基板をタンク12から引き上げ、タンク13に導入することで、上記第1の実施形態に係る表面処理方法のアルコールリンス処理(ステップS104)を実行できる。
【0069】
タンク14は、撥水化剤を貯留する。搬送部が基板をタンク13から引き上げ、タンク14に導入することで、基板上の凸形状パターン表面に撥水性保護膜が形成されるため、上記第1の実施形態における表面処理方法の撥水化処理(ステップS105)を実行できる。タンク14に希釈溶剤を供給し、撥水化剤を希釈してもよい。
【0070】
タンク15は、IPAを貯留する。搬送部が基板をタンク14から引き上げ、タンク15に導入することで、上記第1の実施形態に係る表面処理方法のアルコールリンス処理(ステップS106)を実行できる。
【0071】
タンク16は、IPAと水とを混合した希釈IPAを貯留する。搬送部が基板をタンク15から引き上げ、タンク16に導入することで、上記第1の実施形態に係る表面処理方法の希釈IPAリンス処理(ステップS107)を実行できる。
【0072】
気体供給部は、基板にドライエアを供給し、基板を蒸発乾燥させることができる。搬送部が基板をタンク16から引き上げ、その後、気体供給部が基板にドライエアを供給して乾燥させる。これにより、上記第1の実施形態に係る表面処理方法の乾燥処理(ステップS108)を実行できる。なお、乾燥処理は上述した方法に限定されず、スピン乾燥等の他の方法を用いてもよい。
【0073】
基板をタンク14に導入して、凸形状パターン表面に撥水性保護膜を形成しているため、パターンに作用する力が小さく、パターン倒壊を防止することができる。また、基板をタンク16に導入して希釈IPAリンス処理を行っているため、シリコンの溶出を防止し、ウォーターマークの発生を防止することができる。
【0074】
搬送部は、乾燥した基板をエキシマUV照射部17へ搬送する。エキシマUV照射部17は、紫外線を照射し、凸形状パターン表面に形成された撥水性保護膜を除去する。これにより、上記第1の実施形態に係る表面処理方法のステップS109を実行できる。
【0075】
このように、本実施形態に係るバッチ式の表面処理装置を用いることで、上記第1の実施形態と同様に、パターンの倒壊及びウォーターマークの発生を防止しつつ基板を洗浄・乾燥させることができる。
【0076】
上記第2の実施形態に係る表面処理装置は、液体の種類に応じたタンク11〜16を備えていたが、単一のタンクを備え、液体を連続的に切り替えながら供給するオーバーフロー型の構成にしてもよい。
【0077】
(第3の実施形態)上記第1の実施形態では、乾燥処理の前に希釈IPAを用いてリンス処理を行っていたが、炭酸水等の酸性水を用いてもよい。このような処理を行うための半導体基板の表面処理装置の構成例を図9に示す。
【0078】
表面処理装置は、図1に示す上記第1の実施形態に係る表面処理装置と比較して、希釈IPA供給部200が省略され、酸性水供給部400が設けられている点が異なる。図9において、図1に示す第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0079】
酸性水供給部400は、純水を供給する供給ライン401、供給ライン401に設けられた流量計402、二酸化炭素ガスを供給する供給ライン403、供給ライン403に設けられた流量計404、二酸化炭素溶解膜405、炭酸水を流す供給ライン406、炭酸水を吐出するノズル407、供給ライン406に設けられたフィルタ408及びバルブ409を備える。
【0080】
二酸化炭素溶解膜405に、供給ライン401を介して純水が供給され、供給ライン403を介して二酸化炭素ガスが供給される。純水及び二酸化炭素ガスは二酸化炭素溶解膜405を通過することで炭酸水となる。
【0081】
この炭酸水は供給ライン406によりノズル407へ供給され、ノズル407から半導体基板Wへ吐出される。半導体基板Wへの炭酸水供給量はバルブ409の開度によって調整できる。
【0082】
上記第3の実施形態に係る表面処理装置は、乾燥処理前のリンス処理に酸性水を用いることで、シリコンの溶出を防止し、ウォーターマークの発生を防止することができる。従って、本実施形態に係る表面処理装置を用いることで、上記第1の実施形態と同様に、パターンの倒壊及びウォーターマークの発生を防止しつつ基板を洗浄・乾燥させることができる。
【0083】
なお、上記の説明では、炭酸水を用いてリンス処理を行う例を示したが、酸性水としては、窒素酸化物NOXを純水に溶解させたものや、塩酸を純水と混合した溶液等を用いてもよい。
【0084】
上記第1〜第3の実施形態に係る表面処理装置は、側壁転写プロセスにより形成された凸形状パターンを有する半導体基板の洗浄・乾燥に適している。側壁転写プロセスは、図10(a)に示すように、まず、半導体基板(図示せず)上に形成された第1膜501上に第2膜502を形成する。そして、第2膜502上に、ラインアンドスペースパターンを有するレジスト503を形成する。
【0085】
次に、図10(b)に示すように、レジスト503をマスクとして、第2膜502にエッチングを施し、パターンを転写する。
【0086】
次に、図10(c)に示すように、第2膜502にスリミング処理を施し、幅を1/2程度に細めて芯材504に加工する。なお、レジスト503はスリミング処理の前又は後に除去される。スリミング処理は、ウェット処理、ドライ処理、又はウェット処理とドライ処理の組み合わせにより行われる。
【0087】
次に、図10(d)に示すように、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等により、芯材504の上面及び側面を一定の膜厚で覆うように第3膜505を形成する。第3膜505は、芯材504とのエッチング選択比を大きくとることのできる材料で形成される。
【0088】
次に、図11(a)に示すように、芯材504の上面が露出するまで、第3膜505をドライエッチングする。ドライエッチングは、芯材504に対し選択性を有するエッチング条件で行われる。これにより、第3膜505は、芯材504の側面に沿ってスペーサ状に残留する。この時に残留する第3膜505は、芯材504側面上部に上端505aが接触して位置すると共に、芯材504の外側に向けて上側部が凸湾曲した形状をなしている。
【0089】
次に、図11(b)に示すように、芯材504をウェットエッチング処理で除去する。第3膜505は、隣接する2個のパターンの上端部の距離(スペースパターンの開口幅寸法)が狭いものと、広いものとが交互に存在する非対称な形状になる。
【0090】
第3膜505のような非対称の形状のパターンを洗浄して乾燥させる場合、図11(c)に示すように、スペース部分のリンス液の液面下降速度が大きく異なり、パターンに大きな力がかかるため、パターン倒壊の防止が困難であった。
【0091】
さらに、得られた第3膜505のパターンをマスクとして、被加工体である第1膜501やその下方の半導体基板等をドライエッチングしてパターンを転写した後、ドライエッチングによる反応副生成物を洗浄し除去する。このとき、マスクとして用いた第3膜505の非対称で上側部が凸湾曲した形状の影響を受け、転写された被加工体においても、スペースパターンの開口幅寸法のばらつきが残存する。そのため、被加工体のパターンを洗浄して乾燥させる際、第3膜505のパターンの場合と同様に、スペース部分のリンス液の液面下降速度が大きく異なり、パターンに大きな力がかかるため、パターン倒壊の防止がやはり困難であった。
【0092】
しかし、上記第1〜第3の実施形態に係る表面処理装置を用いることで、側壁転写プロセスにより形成された非対称形状のパターンであっても、パターン表面の撥水化処理と、乾燥処理前の希釈IPAリンス処理又は酸性水リンス処理とを行うことで、パターンの倒壊及びウォーターマークの発生を防止しつつ基板を洗浄・乾燥させることができる。
【0093】
上記式1及び図4から分かるように、パターン4にかかる力Pは表面張力γの垂直成分に依存する。従って、図12(a)に示すように、パターンの上部が傾斜した構造とすることで、表面張力γの垂直成分を小さくし、パターンにかかる力を低減することができる。
【0094】
このような構造は、パターンをRIE処理する際に、温度を低くしたり、マスク材料とパターン材料との選択比の低い条件にしたりすることで、形成できる。
【0095】
また、図12(b)に示すように、パターン全体が傾斜した構造でも同様の効果が得られる。
【0096】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0097】
100 基板保持回転部
200 希釈IPA供給部
300 薬液等供給部
400 酸性水供給部
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板の表面処理装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程には、リソグラフィ工程、エッチング工程、イオン注入工程などの様々な工程が含まれている。各工程の終了後、次の工程に移る前に、ウェーハ表面に残存した不純物や残渣を除去してウェーハ表面を清浄にするためのクリーニング(洗浄)工程及び乾燥工程が実施されている。
【0003】
近年、素子の微細化に伴い、リソグラフィ工程(露光・現像)後のレジストパターンをリンスし、乾燥させる際に毛細管現象により、レジストパターンが倒壊する問題が生じた。このような問題を解決するため、レジストパターンの表面を撥水化し、レジストパターンと現像液及びリンス純水との間に働く毛細管力を低下させる方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。この方法では、レジストパターンの表面に有機物が付着するが、この有機物はレジストパターンと共に、リソグラフィ工程後のエッチング工程で除去される。
【0004】
また、例えば、エッチング工程後のウェーハの洗浄処理では、ウェーハの表面に洗浄処理のための薬液が供給され、その後に純水が供給されてリンス処理が行われる。リンス処理後は、ウェーハ表面に残っている純水を除去してウェーハを乾燥させる乾燥処理が行われる。
【0005】
乾燥処理として、例えば、ウェーハを回転させて表面の水分を遠心力により除去するスピン乾燥が行われる。この乾燥処理時にシリコンが溶出し、ウェーハ上にウォーターマークと呼ばれる乾燥しみが発生して、歩留まりを低下させるという問題があった。また、乾燥処理の際に、ウェーハ上のパターンが毛細管力により倒壊するという問題があった。
【0006】
最近では、IPA(イソプロピルアルコール)を用いてウェーハ上の純水をIPAに置換してウェーハを乾燥させる手法が提案されている(例えば特許文献2参照)。また、IPAより表面張力の低いHFE(ハイドロフルオロエーテル)を用いる手法も提案されている。しかし、このような乾燥方法によっても、液体の表面張力によるウェーハ上の微細パターンの倒壊を防止することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−142349
【特許文献2】特許第3866130号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、パターンの倒壊及びウォーターマークの発生を防止しつつ基板を洗浄・乾燥させる半導体基板の表面処理装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様による半導体基板の表面処理装置は、表面に凸形状パターンが形成された半導体基板を保持し、前記半導体基板を回転させる基板保持回転部と、前記基板保持回転部に保持された前記半導体基板の表面に薬液を供給し、前記半導体基板を洗浄する第1供給部と、前記基板保持回転部に保持された前記半導体基板の表面に純水を供給し、前記半導体基板をリンスする第2供給部と、前記基板保持回転部に保持された前記半導体基板の表面に撥水化剤を供給し、前記凸形状パターンの表面に撥水性保護膜を形成する第3供給部と、前記基板保持回転部に保持された前記半導体基板の表面に純水で希釈したアルコールを供給し、前記半導体基板をリンスする第4供給部と、前記凸形状パターンを残存させて前記撥水性保護膜を除去する除去部と、を備えるものである。
【0010】
本発明の一態様による半導体基板の表面処理装置は、表面に凸形状パターンが形成された半導体基板を保持し、前記半導体基板を回転させる基板保持回転部と、前記基板保持回転部に保持された前記半導体基板の表面に薬液を供給し、前記半導体基板を洗浄する第1供給部と、前記基板保持回転部に保持された前記半導体基板の表面に純水を供給し、前記半導体基板をリンスする第2供給部と、前記基板保持回転部に保持された前記半導体基板の表面に撥水化剤を供給し、前記凸形状パターンの表面に撥水性保護膜を形成する第3供給部と、前記基板保持回転部に保持された前記半導体基板の表面に酸性水を供給し、前記半導体基板をリンスする第4供給部と、前記凸形状パターンを残存させて前記撥水性保護膜を除去する除去部と、を備えるものである。
【0011】
本発明の一態様による半導体基板の表面処理方法は、半導体基板上に複数の凸形状パターンを形成し、薬液を用いて前記凸形状パターン表面を洗浄し、洗浄した前記凸形状パターン表面に撥水化剤を用いて撥水性保護膜を形成し、前記撥水性保護膜形成後に、酸性水又は希釈したアルコールを用いて、前記半導体基板をリンスし、リンスした前記半導体基板を乾燥させ、前記乾燥後に前記凸形状パターンを残存させて前記撥水性保護膜を除去するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、パターンの倒壊及びウォーターマークの発生を防止しつつ基板を洗浄・乾燥させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体基板の表面処理装置の概略構成図である。
【図2】同第1の実施形態に係る半導体基板の表面処理方法を説明するフローチャートである。
【図3】洗浄シーケンスとパターンに対する水の接触角との関係を示すグラフである。
【図4】パターンにかかる液体の表面張力を説明する図である。
【図5】IPA濃度とシリコン溶解量との関係を示すグラフである。
【図6】リンス液のIPA濃度とウェーハに形成されるウォーターマークの個数との関係を示すグラフである。
【図7】撥水性保護膜の形成を行った場合と行わなかった場合の乾燥処理後のパターン状態を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る半導体基板の表面処理装置の概略構成図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る半導体基板の表面処理装置の概略構成図である。
【図10】側壁転写プロセスを説明する工程断面図である。
【図11】側壁転写プロセスを説明する工程断面図である。
【図12】パターンにかかる液体の表面張力を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
半導体装置の製造工程における洗浄工程に課せられた課題は半導体基板上に形成された微細パターン構造に欠陥(パターン欠落、傷、パターン細り、基板掘れ等)を生じさせることなく、半導体基板表面を清浄な表面状態に戻すことである。一般的には、洗浄する対象は半導体製造プロセスに用いられるリソグラフィプロセスで用いるレジスト材料、又はドライエッチングプロセス時に半導体ウェーハ表面に残存した反応副生成物(残渣)、各プロセス後にウェーハ表面に残る金属不純物、有機汚染物質等であり、これら洗浄対象物を残したまま、次工程の製造プロセスへウェーハを流品させることは、デバイス製造歩留まりを確実に低下させてしまう。
【0015】
従って、洗浄プロセスには半導体基板上に形成された微細パターン構造に欠陥(パターン欠落、傷、パターン細り、基板掘れ等)を生じさせることなく、洗浄後に清浄な半導体ウェーハ表面を形成するという重要な役割がある。素子の微細化に伴い、洗浄工程に要求される清浄度は高くなっている。
【0016】
特に、昨今の高アスペクトで凸形状の微細パターンをもつ構造(例えばパターンサイズが30nm以下でかつ、アスペクト比が10以上の構造)においては、パターン倒壊を抑制しながら清浄な基板表面を形成することは困難であった。一方で、レジストプロセスで用いられている撥水化技術を適用した場合は、パターン表面を汚染するという問題が生じた。これに対し以下の実施形態においては、高アスペクトで凸形状の微細パターンを持つ構造であっても、パターン表面を清浄に保ちつつ、高い撥水度を実現し、パターン倒壊を抑制することができる。
【0017】
(第1の実施形態)図1に本発明の第1の実施形態に係る半導体基板の表面処理装置の概略構成を示す。表面処理装置は、基板保持回転部100、希釈IPA供給部200、及び薬液等供給部300を備える。
【0018】
基板保持回転部100は、処理チャンバを構成するスピンカップ101、回転軸102、スピンベース103、及びチャックピン104を有する。回転軸102は略鉛直方向に延び、回転軸102の上端に円盤状のスピンベース103が取り付けられている。回転軸102及びスピンベース103は、図示しないモータにより回転させることができる。
【0019】
チャックピン104はスピンベース103の周縁部に設けられている。チャックピン104が基板(ウェーハ)Wを狭持することで、基板保持回転部100は基板Wをほぼ水平に保持して回転させることができる。
【0020】
基板Wの表面の回転中心付近に、希釈IPA供給部200又は薬液等供給部300から液体が供給されると、液体は基板Wの半径方向に広がる。また、基板保持回転部100は、基板Wのスピン乾燥を行うことができる。基板Wの半径方向に飛散した余分な液体は、スピンカップ101に捕らえられ、廃液管105を介して排出される。
【0021】
希釈IPA供給部200は、基板保持回転部100に保持された基板Wに希釈したIPA(イソプロピルアルコール)を供給する。希釈IPAは、スピン乾燥前に半導体基板Wに供給される。
【0022】
IPAは供給ライン(配管)201を介してバッファタンク220に貯留される。供給ライン201には流量計202及びバルブ203が設けられており、バッファタンク220への供給量を制御できる。
【0023】
また、バッファタンク220には、供給ライン211を介して純水が供給される。供給ライン211には流量計212及びバルブ213が設けられており、バッファタンク220への供給量を制御できる。
【0024】
バッファタンク220は、IPA及び純水、すなわち希釈されたIPA(希釈IPA)を貯留する。バッファタンク220には希釈IPAのIPA濃度を検出する濃度センサ221が設けられている。濃度センサ221の検出結果に基づいてバルブ203、213の開度を制御することで、バッファタンク220内の希釈IPAを所望の濃度に調整できる。
【0025】
バッファタンク220内の希釈IPAは、ポンプ230により排出され、フィルタ231を通過した後、供給ライン232を介してノズル233から吐出され、基板Wの表面に供給される。供給ライン232にはバルブ234が設けられており、基板W表面への希釈IPAの供給量や流速を制御できる。なお、ポンプ230から排出された希釈IPAの一部は再びバッファタンク220に戻され、循環している。
【0026】
薬液等供給部300は、基板W表面に、IPA、純水、撥水化剤等を供給することができる。IPAは、供給ライン301を介して供給され、ノズル302から吐出される。同様に、純水は、供給ライン303を介して供給され、ノズル304から吐出される。また、撥水化剤は、供給ライン305を介して供給され、ノズル306から吐出される。また、薬液等供給部300は、SPM(Sulfuric acid Hydrogen Peroxide Mixture:硫酸と過酸化水素水の混合液)等の他の薬液を供給するライン及び吐出するノズル(共に図示せず)を有する。
【0027】
撥水化剤は、基板Wの表面に形成された凸形状パターンの表面に撥水性保護膜を形成し、パターン表面を撥水化する薬液であり、例えばシランカップリング剤である。シランカップリング剤は、分子中に無機材料と親和性、反応性を有する加水分解基と、有機材料と化学結合する有機官能基とを有するものであり、例えばヘキサメチルジシラザン(HMDS)、テトラメチルシリルジエチルアミン(TMSDEA)等を用いることができる。凸形状パターンの表面の撥水化については後述する。
【0028】
また、表面処理装置は、図示しないエキシマUV(紫外線)照射部を備える。エキシマUV照射部は、半導体基板WにUV光を照射し、凸形状パターンを残存させて、撥水性保護膜を除去することができる。紫外線照射以外の方法で、凸形状パターンを残存させて、撥水性保護膜を除去する除去部を設けてもよい。
【0029】
このような表面処理装置を用いて半導体基板の表面処理を行う方法について図2に示すフローチャートを用いて説明する。なお、基板保持回転部100、希釈IPA供給部200、及び薬液等供給部300の動作は図示しない制御部により制御することができる。
【0030】
(ステップS101)表面の所定の領域に複数の凸形状パターンを有する処理対象の半導体基板Wが搬送部(図示せず)により搬入され、基板保持回転部100に保持される。凸形状パターンは、例えば、ラインアンドスペースパターンである。凸形状パターンの少なくとも一部が、シリコンを含む膜で形成されていてもよい。凸形状パターンは、例えば、RIE(Reactive Ion Etching)法により形成される。
【0031】
(ステップS102)半導体基板Wを所定の回転速度で回転させ、薬液等供給部300から半導体基板Wの表面の回転中心付近に薬液を供給する。薬液は例えばSPM、SC−1(Standard Clean 1)、SC−2、HF等である。薬液は1種類でもよいし、複数の薬液を同時又は連続的に供給してもよい。
【0032】
薬液が半導体基板Wの回転による遠心力を受けて、半導体基板W表面全域に行き渡り、半導体基板Wの薬液(洗浄)処理が行われる。
【0033】
(ステップS103)薬液等供給部300から半導体基板Wの表面の回転中心付近に純水を供給する。純水が半導体基板Wの回転による遠心力を受けて、半導体基板W表面全域に行き渡る。これにより、半導体基板Wの表面に残留していた薬液を純水によって洗い流す純水リンス処理が行われる。
【0034】
(ステップS104)薬液等供給部300から半導体基板Wの表面の回転中心付近にIPA等のアルコールを供給する。IPAが半導体基板Wの回転による遠心力を受けて、半導体基板W表面全域に行き渡る。これにより、半導体基板Wの表面に残留していた純水をIPAに置換するアルコールリンス処理が行われる。
【0035】
(ステップS105)薬液等供給部300から半導体基板Wの表面の回転中心付近に撥水化剤を供給する。撥水化剤は例えばシランカップリング剤である。
【0036】
シランカップリング剤が半導体基板Wの回転による遠心力を受けて、半導体基板W表面全域に行き渡る。これにより、凸形状パターンの表面に濡れ性が低い保護膜(撥水性保護膜)が形成される。
【0037】
この撥水性保護膜は、シランカップリング剤のエステル反応が起きることで、形成される。従って、アニール処理を行って液温を上昇させたり、エキシマUV照射部から紫外線を照射したりすることで、反応を促進させるようにしてもよい。
【0038】
凸形状パターンがシリコン窒化膜やポリシリコン等のシリコン系膜の場合はシランカップリング剤を用いたシリル化処理を行ってもシリル化反応が不十分となり、パターンの倒壊を抑制するために十分な撥水性を得られない場合がある。その場合、ステップS102に、シリコン系材料の表面を酸化可能な酸化剤を含む処理薬液による処理を追加し、シリコン系材料の表面をシリコン酸化物系の化学酸化膜に変えることが好適である。その後に、シリル化処理を行うことで、シリル化処理後の撥水性を向上させることができる。
【0039】
例えば、凸形状パターンがシリコン系膜の場合には、図3(a)に示すように、dHF処理のみを行って撥水性保護膜を形成すると、パターンに対する水の接触角は89度である。これにH2O2処理を加えると、接触角は95度まで向上する。これはシリコン系膜の表面に適度な酸化膜が形成されたためと考えられる。
【0040】
また、シリコン窒化膜の場合には、図3(b)に示すように、dHF処理のみを行って撥水性保護膜を形成すると、水の接触角は約46度である。これにH2O2処理を加えると54度まで向上し、SPM処理を追加すると、59度まで向上する。これは洗浄後の基板表面に撥水処理が施されやすいように最適な改質処理が加えられたこと、つまりSiN表面が酸化剤によりSiO2化され、撥水性保護膜を形成されやすくなったと考えられる。
【0041】
また、RIE(Reactive Ion Etching)加工後には加工残渣が多く発生する。加工残渣が残った状態では撥水性保護膜は形成されにくい。従って、ステップS102においてSPM処理等を行って残渣を除去することは、撥水性保護膜を形成する上でも有効である。さらに、RIE加工によりパターン表面にプラズマダメージが蓄積され、ダングリングボンドができる。酸化効果のある薬液で改質処理すると、ダングリングボンドはOH基で修飾される。OH基が多く存在すると、シリル化反応確率が高くなり、撥水性保護膜が形成されやすくなるため、より高い撥水度を得ることができる。この例では、微細パターンがシリコン酸化膜の場合でも効果が得られる。
【0042】
なお、上記の説明では、半導体基板Wの洗浄後に、洗浄薬液とは異なる処理薬液により半導体基板Wの表面を改質する例を示したが、洗浄薬液が改質効果を兼ねる、すなわち酸化効果を持つものであれば別途改質処理を行わなくても構わない。しかし、洗浄工程と改質工程とを分けることにより、凸形状の微細パターンの被洗浄面を清浄化した後、清浄化された面に対し改質を行うため、酸化効果を有する薬液を用いる場合に対して改質効果をさらに向上させることができるため望ましい。
【0043】
(ステップS106)薬液等供給部300から半導体基板Wの表面の回転中心付近にIPAを供給する。IPAが半導体基板Wの回転による遠心力を受けて、半導体基板W表面全域に行き渡る。これにより、半導体基板Wの表面に残留していた未反応のシランカップリング剤をIPAに置換するアルコールリンス処理が行われる。なお、ここで供給されるIPAは希釈されていない濃度100%のものである。
【0044】
(ステップS107)希釈IPA供給部200から半導体基板Wの表面の回転中心付近に希釈IPAを供給する。希釈IPAが半導体基板Wの回転による遠心力を受けて、半導体基板W表面全域に行き渡る。これにより、半導体基板Wの表面に残留していたIPAを希釈IPAによって洗い流す希釈IPAリンス処理が行われる。
【0045】
(ステップS108)半導体基板Wの乾燥処理を行う。例えば半導体基板Wの回転速度を所定のスピンドライ回転速度に上げて、半導体基板Wの表面に残っている希釈IPAを振り切って乾燥させるスピンドライ処理を行う。
【0046】
半導体基板Wに形成されている凸形状パターンは撥水性保護膜に覆われているため、液体の接触角θが大きくなる。特に、ステップS107で半導体基板Wの表面の液体をIPAから希釈IPAに置換することにより、接触角θを90°に近付けることができる。
【0047】
図4に半導体基板W上に形成されているパターン4の一部が液体5に濡れた状態を示す。ここで、パターン4間の距離をSpace、パターン4の高さをH、液体5の表面張力をγとすると、パターン4にかかる力PはP=2×γ×cosθ・H/Space・・・(式1)となる。
【0048】
θが90°に近付くことで、cosθが0に近づき、乾燥処理時にパターンに作用する力Pが小さくなることが分かる。これにより乾燥処理の際にパターンが倒壊することを防止できる。
【0049】
ここでウォーターマークについて考える。ウォーターマークは乾燥処理時におけるシリコンの溶出により形成される。図5に純水とIPAとを混合したリンス液のIPA濃度と、リンス液中におけるシリコンの溶解量との関係を示す。図5に示すグラフの縦軸はリンス液中におけるシリコン溶解量の化学分析結果であり、横軸はリンス液のIPA濃度である。図5から、IPA濃度が0%、すなわち純水の場合はシリコン溶解量が多く、IPA濃度の上昇に伴い、シリコン溶解量が減少することが分かる。
【0050】
また、図6にステップS107で用いるリンス液のIPA濃度と、乾燥処理後にウェーハ上に形成されるウォーターマークの個数との関係を示す。ウォーターマークの個数はウェーハ表面の光学的な欠陥検査とSEM画像分析により求められる。図6から、IPAを含むリンス液を用いることで、純水でリンスを行う場合よりも、ウォーターマークの個数が減ることが分かる。
【0051】
本実施形態では、乾燥処理前のリンス工程(ステップS107)において、希釈IPAリンス処理を行うため、シリコンの溶出を防止し、ウォーターマークの形成を防止することができる。
【0052】
(ステップS109)エキシマUV照射部から紫外線を照射し、凸形状パターン表面に形成された撥水性保護膜を除去する。本実施形態は半導体基板の表面を洗浄・乾燥させるものであるので、撥水性保護膜の除去を行うことにより清浄化工程が終了となる。なお、この工程の後の工程で撥水性保護膜が除去される場合には乾燥後、すぐに撥水性保護膜を除去しなくても構わない。
【0053】
このような撥水性保護膜の形成を行った場合と行わなかった場合の乾燥処理後のパターンの状態を図7に示す。ライン高さが150nm、170nm、200nmの3種類、ライン幅が普通、細、極細(普通>細>極細)の3種類のパターンについて表面処理を行った。
【0054】
図7(a)から分かるように、撥水性保護膜を形成しない場合、ライン幅が極細のパターンは150nm、170nm、200nmのいずれのライン高さにおいてもパターン倒壊が発生した。また、ライン幅が細で、ライン高さが200nmにおいてもパターン倒壊が発生した。
【0055】
一方、図7(b)から分かるように、撥水性保護膜を形成すると、ライン幅が極細で、ライン高さが200nmのパターン以外ではパターン倒壊を防止することができた。撥水性保護膜を形成することで、アスペクト比が高いパターンでも、洗浄・乾燥によるパターン倒壊を防止でき、倒壊マージンを向上させられることが分かる。
【0056】
このように、本実施形態では、半導体基板W表面の洗浄を行う際に、基板表面に撥水性保護膜を形成することで、乾燥処理時の凸形状の微細パターン倒壊を防止することができる。また、乾燥処理の前に希釈IPAリンス処理を行うため、シリコンの溶出を防止し、ウォーターマークの発生を防止することができる。
【0057】
基板上に形成されたパターンの倒壊を防止するためには、パターンにかかる力(上記式1で表されるP)を低減する必要がある。上記式1のパラメータのうち、Spaceはパターン寸法で決まる固定パラメータであり、濡れ性cosθは微細パターン(の表面)を構成する物質と液体との関係で決まる固定パラメータであるため、従来の基板処理では表面張力γに着目し、γの小さい液体を用いることによりパターンにかかる力の低減を図っていた。しかし、γを下げるにも限界があり、パターン倒壊を防止できなくなっていた。
【0058】
これに対し、上述したように、本実施形態による表面処理方法は、パターン表面に撥水性保護膜を形成し、濡れ性cosθを制御することで乾燥処理時にパターンにかかる力を極めて小さくし、パターン倒壊を防止可能とした。
【0059】
上記実施形態による表面処理方法は、アスペクト比が8以上の時のパターン倒壊防止に特に効果がある。
【0060】
上記実施形態では撥水性保護膜の形成工程(ステップS105)の前後にアルコールリンス処理を行っていた(ステップS104、S106)。これは撥水性保護膜の形成時に使用するシランカップリング剤が種類によっては純水と置換可能ではない場合があるためである。従って、使用するシランカップリング剤が純水と置換可能である物質の場合は、このアルコールリンス処理を省略することができる。
【0061】
上記実施形態において、撥水化剤は撥水性保護膜を形成可能な範囲で希釈してもよい。シクロヘキサノンやアルコール等の安価な薬液で撥水化剤を希釈することで、コストを低減できる。撥水化剤として使用するシランカップリング剤がIPA中のヒドロキシル基により加水分解を起こし、撥水化能力が低下するおそれがある場合は、撥水化剤を供給する前に半導体基板上のIPAをシンナーに置換してもよい。
【0062】
上記実施形態において、バッファタンク220は表面処理装置本体の外部に設けてもよい。また、濃度センサ221の代わりに、秤量ポンプ及びバッファタンク220内の液面位置を検出する液面センサを設けて、IPAの希釈度を調整するようにしてもよい。
【0063】
上記実施形態では、バッファタンク220においてIPAと純水とを混合していたが、供給ライン201及び211と連結した混合バルブをノズル233の直前に設けて、希釈IPAを基板Wに供給するようにしてもよい。さらに、IPAと純水とを直接基板Wに供給して基板W上でこれらを混合するようにしてもよく、この場合、希釈IPA供給部200を省略しても構わない。
【0064】
(第2の実施形態)図8に本発明の第2の実施形態に係る半導体基板の表面処理装置の概略構成を示す。本実施形態に係る表面処理装置は、複数枚の半導体基板の洗浄・乾燥を一括して行うバッチ式の表面処理装置である。
【0065】
表面処理装置は、タンク11〜16、エキシマUV照射部17、気体供給部及び搬送部(共に図示せず)を備える。搬送部は、複数枚の基板を保持し、搬送することができる。
【0066】
タンク11は、SPM、SC−1(Standard Clean 1)、SC−2、HF等の基板を洗浄する薬液を貯留する。搬送部が基板をタンク11に導入することで上記第1の実施形態に係る表面処理方法の薬液処理(ステップS102)を実行できる。
【0067】
タンク12は、純水を貯留する。搬送部が基板をタンク11から引き上げ、タンク12に導入することで、上記第1の実施形態に係る表面処理方法の純水リンス処理(ステップS103)を実行できる。
【0068】
タンク13は、IPAを貯留する。搬送部が基板をタンク12から引き上げ、タンク13に導入することで、上記第1の実施形態に係る表面処理方法のアルコールリンス処理(ステップS104)を実行できる。
【0069】
タンク14は、撥水化剤を貯留する。搬送部が基板をタンク13から引き上げ、タンク14に導入することで、基板上の凸形状パターン表面に撥水性保護膜が形成されるため、上記第1の実施形態における表面処理方法の撥水化処理(ステップS105)を実行できる。タンク14に希釈溶剤を供給し、撥水化剤を希釈してもよい。
【0070】
タンク15は、IPAを貯留する。搬送部が基板をタンク14から引き上げ、タンク15に導入することで、上記第1の実施形態に係る表面処理方法のアルコールリンス処理(ステップS106)を実行できる。
【0071】
タンク16は、IPAと水とを混合した希釈IPAを貯留する。搬送部が基板をタンク15から引き上げ、タンク16に導入することで、上記第1の実施形態に係る表面処理方法の希釈IPAリンス処理(ステップS107)を実行できる。
【0072】
気体供給部は、基板にドライエアを供給し、基板を蒸発乾燥させることができる。搬送部が基板をタンク16から引き上げ、その後、気体供給部が基板にドライエアを供給して乾燥させる。これにより、上記第1の実施形態に係る表面処理方法の乾燥処理(ステップS108)を実行できる。なお、乾燥処理は上述した方法に限定されず、スピン乾燥等の他の方法を用いてもよい。
【0073】
基板をタンク14に導入して、凸形状パターン表面に撥水性保護膜を形成しているため、パターンに作用する力が小さく、パターン倒壊を防止することができる。また、基板をタンク16に導入して希釈IPAリンス処理を行っているため、シリコンの溶出を防止し、ウォーターマークの発生を防止することができる。
【0074】
搬送部は、乾燥した基板をエキシマUV照射部17へ搬送する。エキシマUV照射部17は、紫外線を照射し、凸形状パターン表面に形成された撥水性保護膜を除去する。これにより、上記第1の実施形態に係る表面処理方法のステップS109を実行できる。
【0075】
このように、本実施形態に係るバッチ式の表面処理装置を用いることで、上記第1の実施形態と同様に、パターンの倒壊及びウォーターマークの発生を防止しつつ基板を洗浄・乾燥させることができる。
【0076】
上記第2の実施形態に係る表面処理装置は、液体の種類に応じたタンク11〜16を備えていたが、単一のタンクを備え、液体を連続的に切り替えながら供給するオーバーフロー型の構成にしてもよい。
【0077】
(第3の実施形態)上記第1の実施形態では、乾燥処理の前に希釈IPAを用いてリンス処理を行っていたが、炭酸水等の酸性水を用いてもよい。このような処理を行うための半導体基板の表面処理装置の構成例を図9に示す。
【0078】
表面処理装置は、図1に示す上記第1の実施形態に係る表面処理装置と比較して、希釈IPA供給部200が省略され、酸性水供給部400が設けられている点が異なる。図9において、図1に示す第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0079】
酸性水供給部400は、純水を供給する供給ライン401、供給ライン401に設けられた流量計402、二酸化炭素ガスを供給する供給ライン403、供給ライン403に設けられた流量計404、二酸化炭素溶解膜405、炭酸水を流す供給ライン406、炭酸水を吐出するノズル407、供給ライン406に設けられたフィルタ408及びバルブ409を備える。
【0080】
二酸化炭素溶解膜405に、供給ライン401を介して純水が供給され、供給ライン403を介して二酸化炭素ガスが供給される。純水及び二酸化炭素ガスは二酸化炭素溶解膜405を通過することで炭酸水となる。
【0081】
この炭酸水は供給ライン406によりノズル407へ供給され、ノズル407から半導体基板Wへ吐出される。半導体基板Wへの炭酸水供給量はバルブ409の開度によって調整できる。
【0082】
上記第3の実施形態に係る表面処理装置は、乾燥処理前のリンス処理に酸性水を用いることで、シリコンの溶出を防止し、ウォーターマークの発生を防止することができる。従って、本実施形態に係る表面処理装置を用いることで、上記第1の実施形態と同様に、パターンの倒壊及びウォーターマークの発生を防止しつつ基板を洗浄・乾燥させることができる。
【0083】
なお、上記の説明では、炭酸水を用いてリンス処理を行う例を示したが、酸性水としては、窒素酸化物NOXを純水に溶解させたものや、塩酸を純水と混合した溶液等を用いてもよい。
【0084】
上記第1〜第3の実施形態に係る表面処理装置は、側壁転写プロセスにより形成された凸形状パターンを有する半導体基板の洗浄・乾燥に適している。側壁転写プロセスは、図10(a)に示すように、まず、半導体基板(図示せず)上に形成された第1膜501上に第2膜502を形成する。そして、第2膜502上に、ラインアンドスペースパターンを有するレジスト503を形成する。
【0085】
次に、図10(b)に示すように、レジスト503をマスクとして、第2膜502にエッチングを施し、パターンを転写する。
【0086】
次に、図10(c)に示すように、第2膜502にスリミング処理を施し、幅を1/2程度に細めて芯材504に加工する。なお、レジスト503はスリミング処理の前又は後に除去される。スリミング処理は、ウェット処理、ドライ処理、又はウェット処理とドライ処理の組み合わせにより行われる。
【0087】
次に、図10(d)に示すように、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等により、芯材504の上面及び側面を一定の膜厚で覆うように第3膜505を形成する。第3膜505は、芯材504とのエッチング選択比を大きくとることのできる材料で形成される。
【0088】
次に、図11(a)に示すように、芯材504の上面が露出するまで、第3膜505をドライエッチングする。ドライエッチングは、芯材504に対し選択性を有するエッチング条件で行われる。これにより、第3膜505は、芯材504の側面に沿ってスペーサ状に残留する。この時に残留する第3膜505は、芯材504側面上部に上端505aが接触して位置すると共に、芯材504の外側に向けて上側部が凸湾曲した形状をなしている。
【0089】
次に、図11(b)に示すように、芯材504をウェットエッチング処理で除去する。第3膜505は、隣接する2個のパターンの上端部の距離(スペースパターンの開口幅寸法)が狭いものと、広いものとが交互に存在する非対称な形状になる。
【0090】
第3膜505のような非対称の形状のパターンを洗浄して乾燥させる場合、図11(c)に示すように、スペース部分のリンス液の液面下降速度が大きく異なり、パターンに大きな力がかかるため、パターン倒壊の防止が困難であった。
【0091】
さらに、得られた第3膜505のパターンをマスクとして、被加工体である第1膜501やその下方の半導体基板等をドライエッチングしてパターンを転写した後、ドライエッチングによる反応副生成物を洗浄し除去する。このとき、マスクとして用いた第3膜505の非対称で上側部が凸湾曲した形状の影響を受け、転写された被加工体においても、スペースパターンの開口幅寸法のばらつきが残存する。そのため、被加工体のパターンを洗浄して乾燥させる際、第3膜505のパターンの場合と同様に、スペース部分のリンス液の液面下降速度が大きく異なり、パターンに大きな力がかかるため、パターン倒壊の防止がやはり困難であった。
【0092】
しかし、上記第1〜第3の実施形態に係る表面処理装置を用いることで、側壁転写プロセスにより形成された非対称形状のパターンであっても、パターン表面の撥水化処理と、乾燥処理前の希釈IPAリンス処理又は酸性水リンス処理とを行うことで、パターンの倒壊及びウォーターマークの発生を防止しつつ基板を洗浄・乾燥させることができる。
【0093】
上記式1及び図4から分かるように、パターン4にかかる力Pは表面張力γの垂直成分に依存する。従って、図12(a)に示すように、パターンの上部が傾斜した構造とすることで、表面張力γの垂直成分を小さくし、パターンにかかる力を低減することができる。
【0094】
このような構造は、パターンをRIE処理する際に、温度を低くしたり、マスク材料とパターン材料との選択比の低い条件にしたりすることで、形成できる。
【0095】
また、図12(b)に示すように、パターン全体が傾斜した構造でも同様の効果が得られる。
【0096】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0097】
100 基板保持回転部
200 希釈IPA供給部
300 薬液等供給部
400 酸性水供給部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に凸形状パターンが形成された半導体基板を保持し、前記半導体基板を回転させる基板保持回転部と、
前記基板保持回転部に保持された前記半導体基板の表面に薬液を供給し、前記半導体基板を洗浄する第1供給部と、
前記基板保持回転部に保持された前記半導体基板の表面に純水を供給し、前記半導体基板をリンスする第2供給部と、
前記基板保持回転部に保持された前記半導体基板の表面に撥水化剤を供給し、前記凸形状パターンの表面に撥水性保護膜を形成する第3供給部と、
前記基板保持回転部に保持された前記半導体基板の表面に純水で希釈したアルコールを供給し、前記半導体基板をリンスする第4供給部と、
前記凸形状パターンを残存させて前記撥水性保護膜を除去する除去部と、
を備える半導体基板の表面処理装置。
【請求項2】
前記除去部は、前記半導体基板に紫外線を照射して前記撥水性保護膜を除去する紫外線照射部であることを特徴とする請求項1に記載の半導体基板の表面処理装置。
【請求項3】
表面に凸形状パターンが形成された半導体基板を保持し、前記半導体基板を回転させる基板保持回転部と、
前記基板保持回転部に保持された前記半導体基板の表面に薬液を供給し、前記半導体基板を洗浄する第1供給部と、
前記基板保持回転部に保持された前記半導体基板の表面に純水を供給し、前記半導体基板をリンスする第2供給部と、
前記基板保持回転部に保持された前記半導体基板の表面に撥水化剤を供給し、前記凸形状パターンの表面に撥水性保護膜を形成する第3供給部と、
前記基板保持回転部に保持された前記半導体基板の表面に酸性水を供給し、前記半導体基板をリンスする第4供給部と、
前記凸形状パターンを残存させて前記撥水性保護膜を除去する除去部と、
を備える半導体基板の表面処理装置。
【請求項4】
前記第4供給部は、
純水を供給する第1供給ラインと、
二酸化炭素ガスを供給する第2供給ラインと、
前記第1供給ラインから純水が供給され、前記第2供給ラインから二酸化炭素ガスが供給され、炭酸水を排出する二酸化炭素溶解膜と、
前記炭酸水を前記半導体基板の表面に吐出するノズルと、
を有することを特徴とする請求項3に記載の半導体基板の表面処理装置。
【請求項5】
半導体基板上に複数の凸形状パターンを形成し、
薬液を用いて前記凸形状パターン表面を洗浄し、
洗浄した前記凸形状パターン表面に撥水化剤を用いて撥水性保護膜を形成し、
前記撥水性保護膜形成後に、酸性水又は希釈したアルコールを用いて、前記半導体基板をリンスし、
リンスした前記半導体基板を乾燥させ、
前記乾燥後に、前記凸形状パターンを残存させて前記撥水性保護膜を除去する半導体基板の表面処理方法。
【請求項1】
表面に凸形状パターンが形成された半導体基板を保持し、前記半導体基板を回転させる基板保持回転部と、
前記基板保持回転部に保持された前記半導体基板の表面に薬液を供給し、前記半導体基板を洗浄する第1供給部と、
前記基板保持回転部に保持された前記半導体基板の表面に純水を供給し、前記半導体基板をリンスする第2供給部と、
前記基板保持回転部に保持された前記半導体基板の表面に撥水化剤を供給し、前記凸形状パターンの表面に撥水性保護膜を形成する第3供給部と、
前記基板保持回転部に保持された前記半導体基板の表面に純水で希釈したアルコールを供給し、前記半導体基板をリンスする第4供給部と、
前記凸形状パターンを残存させて前記撥水性保護膜を除去する除去部と、
を備える半導体基板の表面処理装置。
【請求項2】
前記除去部は、前記半導体基板に紫外線を照射して前記撥水性保護膜を除去する紫外線照射部であることを特徴とする請求項1に記載の半導体基板の表面処理装置。
【請求項3】
表面に凸形状パターンが形成された半導体基板を保持し、前記半導体基板を回転させる基板保持回転部と、
前記基板保持回転部に保持された前記半導体基板の表面に薬液を供給し、前記半導体基板を洗浄する第1供給部と、
前記基板保持回転部に保持された前記半導体基板の表面に純水を供給し、前記半導体基板をリンスする第2供給部と、
前記基板保持回転部に保持された前記半導体基板の表面に撥水化剤を供給し、前記凸形状パターンの表面に撥水性保護膜を形成する第3供給部と、
前記基板保持回転部に保持された前記半導体基板の表面に酸性水を供給し、前記半導体基板をリンスする第4供給部と、
前記凸形状パターンを残存させて前記撥水性保護膜を除去する除去部と、
を備える半導体基板の表面処理装置。
【請求項4】
前記第4供給部は、
純水を供給する第1供給ラインと、
二酸化炭素ガスを供給する第2供給ラインと、
前記第1供給ラインから純水が供給され、前記第2供給ラインから二酸化炭素ガスが供給され、炭酸水を排出する二酸化炭素溶解膜と、
前記炭酸水を前記半導体基板の表面に吐出するノズルと、
を有することを特徴とする請求項3に記載の半導体基板の表面処理装置。
【請求項5】
半導体基板上に複数の凸形状パターンを形成し、
薬液を用いて前記凸形状パターン表面を洗浄し、
洗浄した前記凸形状パターン表面に撥水化剤を用いて撥水性保護膜を形成し、
前記撥水性保護膜形成後に、酸性水又は希釈したアルコールを用いて、前記半導体基板をリンスし、
リンスした前記半導体基板を乾燥させ、
前記乾燥後に、前記凸形状パターンを残存させて前記撥水性保護膜を除去する半導体基板の表面処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図7】
【公開番号】特開2011−124410(P2011−124410A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281346(P2009−281346)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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