説明

半導体封止用エポキシ樹脂組成物及び半導体装置

【課題】本発明は、半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及び、これを用いた半導体装置を提供する。
【解決手段】下記一般式(I)で表される化合物の4つの立体異性体のうち、エキソ−エキソの立体配置を有する立体異性体の含有量が、前記異性体合計量中80%以上である脂環式ジエポキシ化合物、硬化剤、硬化促進剤、及び無機充填剤を含有してなる半導体封止用エポキシ樹脂組成物、並びに、これを用いた半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラーを高充填しても低粘度で、かつ、ガラス転移温度が高く、線膨張係数が小さい硬化物を得ることができる半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及び、この半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて封止されてなる半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の高度情報化社会の急激な進展、情報通信網の発達に伴い、情報処理速度の高速化、通信波長領域の高周波化を達成するために、半導体チップ等の電子部品とプリント基板との接続配線距離を極力短縮して、伝送速度の高速化、高周波領域での伝送損失の低下を図る開発がなされている。
半導体チップ等の電極とプリント基板の電極とを接続する方法としては、金線や半田等を介して直接接続する方法(ベアチップ実装法)が広く用いられている。
【0003】
また、この方法により接続された電極及び電極間の配線は、接続信頼性の向上を目的として封止材料により封止される。封止材料としては、従来公知のエポキシ樹脂からなる液状封止材料やフィルムが広く使用されている。例えば、ベアチップ実装法の1つであるフリップチップボンディング技術では、半導体チップとプリント基板とを、半導体チップ電極部に形成された半田バンプ等によりプリント基板上に形成された電極と直接接続を行う。
【0004】
ところで、この場合、得られる半導体回路をヒートサイクル試験に供すると、プリント基板と半導体チップとの線膨張係数の差に起因して半田バンプ等に過剰な機械的応力が加わり、半田バンプ等にクラックが発生し、半導体回路の接続信頼性が損なわれることがあった。
この問題を解決すべく、従来、プリント基板と半導体チップとの間隙にエポキシ樹脂を用いるアンダーフィル(封止材料)を充填することがあった。
【0005】
上記エポキシ樹脂としては、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂等の汎用型芳香族エポキシ樹脂が挙げられる。これらのエポキシ樹脂の硬化物は、一般的に機械的性質、耐水性、耐食性、密着性、耐化学薬品性、耐熱性、及び電気特性などの点で優れた性能を有することが知られている。
【0006】
しかしながら、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂は一般に流動性が低いため、この樹脂を用いる封止材料は、回路の微細な隙間に対する浸透性や塗布作業性に劣りやすいという問題があった。特に、充填剤を含有する封止材料においては、さらに粘性が高まるため、この問題を解決することは非常に重要であった。
上記エポキシ樹脂の流動性を上げる方法としては、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等の溶剤で希釈して使用するというものが考えられる。しかしながら、この場合、作業性、環境安全性等において問題があった。
【0007】
一方、粘度の低いエポキシ樹脂として、分子内に脂環骨格を持った脂環式エポキシ樹脂が知られている。例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートや1,2,8,9−ジエポキシリモネン等の脂環式エポキシ樹脂が市販されている。また、特許文献1には、ビシクロへキシル−3,3’−ジエポキシドが開示されている。
【0008】
しかしながら、これらの脂環式エポキシ樹脂を硬化する際に、非カチオン系の硬化促進剤を用いると、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂に較べて反応性が悪いため、ガラス転移温度が高く、線膨張率の低い硬化物を得ることは難しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−204228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記した従来技術に鑑みてなされたものであり、フィラーを高充填しても低粘度で、かつ、ガラス転移温度が高く、線膨張係数が小さい硬化物を得ることができる半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及び、この半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて封止されてなる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、ガスクロマトグラフィーにより検出される、後述する一般式(I)で表される脂環式ジエポキシ化合物が有する2つのエポキシ環の立体配置に基づく4つの立体異性体のうち、エキソ−エキソの立体配置を有する立体異性体の含有量が、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合で、前記4つの立体異性体の合計量中80%以上である高純度脂環式ジエポキシ化合物、硬化剤、硬化促進剤、及び無機充填剤を含有してなる半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、フィラーを高充填しても低粘度で、かつ、得られる硬化物はガラス転移温度が高く、線膨張係数が小さいものであるため、半導体封止材料として好適に用いることができることを見出し、かかる知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0012】
かくして本発明の第1によれば、下記(1)〜(7)の半導体封止用エポキシ樹脂組成物が提供される。
(1)ガスクロマトグラフィーにより検出される、下記一般式(I)で表される脂環式ジエポキシ化合物が有する2つのエポキシ環の立体配置に基づく4つの立体異性体のうち、エキソ−エキソの立体配置を有する立体異性体の含有量が、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合で、前記4つの立体異性体の合計量中80%以上である高純度脂環式ジエポキシ化合物、硬化剤、硬化促進剤、及び無機充填剤を含有してなる半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、R〜R12は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)
(2)前記高純度脂環式ジエポキシ化合物が、前記一般式(I)で表される脂環式ジエポキシ化合物が有する2つのエポキシ環の立体配置に基づく4つの立体異性体のうち、エキソ−エキソの立体配置を有する立体異性体の含有量が、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合で、前記4つの立体異性体の合計量中95%以上である高純度脂環式ジエポキシ化合物である(1)に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
(3)前記高純度脂環式ジエポキシ化合物が、テトラヒドロインデンジエポキシドである(1)又は(2)に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
(4)前記硬化剤が、酸無水物系硬化剤である(1)〜(3)のいずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
(5)前記硬化促進剤が、イミダゾール系硬化促進剤である(1)〜(4)のいずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
(6)前記無機充填剤が、平均粒径が5μm以下の球状シリカであり、かつその含有量が半導体封止用エポキシ樹脂組成物中40重量%以上である(1)〜(5)のいずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
(7)前記無機充填剤が、平均粒径が1μm以下の球状シリカであり、かつその含有量が半導体封止用エポキシ樹脂組成物中50重量%以上である(1)〜(6)のいずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【0015】
本発明の第2によれば、下記(8)の半導体装置が提供される。
(8)(1)〜(7)のいずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて封止されてなる半導体装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、フィラーを高充填しても低粘度で、かつ、得られる硬化物はガラス転移温度が高く、線膨張係数が小さいものであるため、半導体封止材料として好適である。また、得られる硬化物は絶縁信頼性が高い。本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、微細なバンプ間へも樹脂が充分に浸透してボイドの少ない封止が可能である。
また、本発明の半導体装置は、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物により封止されているため、半導体チップとの線膨張率差が比較的小さく、ヒートサイクル試験において優れた接続信頼性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の半導体装置の断面図である。
【図2】本発明の半導体装置の断面図である。
【図3】実施例及び比較例においてキャピラリーフロー性の評価に用いた装置の模式図である。(A)は装置の斜視図、(B)は装置のXY断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を、1)半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及び、2)半導体装置、に項分けして詳細に説明する。
【0019】
1)半導体封止用エポキシ樹脂組成物
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、以下の(a)〜(d)の成分を含有することを特徴とする。
(a)ガスクロマトグラフィーにより検出される、前記一般式(I)で表される脂環式ジエポキシ化合物が有する2つのエポキシ環の立体配置に基づく4つの立体異性体のうち、エキソ−エキソの立体配置を有する立体異性体の含有量が、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合で、前記4つの立体異性体の合計量中80%以上である高純度脂環式ジエポキシ化合物(以下、「高純度脂環式ジエポキシ化合物(a)」ということがある。)
(b)硬化剤
(c)硬化促進剤
(d)無機充填剤
【0020】
(a)高純度脂環式ジエポキシ化合物
本発明において用いる高純度脂環式ジエポキシ化合物(a)は、ガスクロマトグラフィーにより検出される、前記一般式(I)で表される脂環式ジエポキシ化合物(以下、「ジエポキシ化合物A」ということがある。)が有する2つのエポキシ環の立体配置に基づく4つの立体異性体(すなわち、エキソ−エキソの立体配置を有する立体異性体、エキソ−エンドの立体配置を有する立体異性体、エンド−エキソの立体配置を有する立体異性体、エンド−エンドの立体配置を有する立体異性体の4種の立体異性体)のうち、エキソ−エキソの立体配置を有する立体異性体(「以下、エキソ−エキソ立体異性体」ということがある。)の含有量が、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合で、前記4つの立体異性体の合計量中80%以上であることを特徴とする。
【0021】
エキソ−エキソ立体異性体の含有量が、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合で、4つの立体異性体の合計量中80%以上、好ましくは95%以上である高純度脂環式ジエポキシ化合物を含有するエポキシ樹脂組成物を用いることにより、ガラス転移温度が高く、線膨張係数が小さい硬化物を効率的に得ることができる。また、当該硬化物は、光透過性と耐黄変性に優れるという特性を有する。エキソ−エキソ立体異性体はその立体構造の関係で他の3つの異性体に較べてエポキシ基の反応性が高いと考えられるが、かかる性質が寄与しているものと推定される。なお、本発明の高純度脂環式ジエポキシ化合物中、エキソ−エキソ立体異性体以外の3つの立体異性体の存在割合は特に限定されるものではない。
【0022】
前記式(I)中、R〜R12は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。
前記R〜R12のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
炭素数1〜20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜20のアルキル基;ビニル基、アリル基等の炭素数2〜20のアルケニル基;エチリデン基、プロピリデン基等の炭素数2〜20のアルキリデン基;等が挙げられる。
【0023】
これらの中でも、R〜R12としては、光透過性と耐黄変性とにバランスよく優れる硬化物を得ることができることから、互いに独立して、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基であるのが好ましく、水素原子又はメチル基であるのがより好ましく、R〜R12の全てが水素原子であるのが特に好ましい。前記一般式(I)においてR〜R12の全てが水素原子である場合、当該一般式(I)で表される脂環式ジエポキシ化合物はテトラヒドロインデンジエポキシドである。
【0024】
前記ジエポキシ化合物Aの4つの立体異性体の、ガスクロマトグラフィーによる定量分析は、例えば、下記の測定条件で行うことができる。
【0025】
測定装置:HP6890(ヒューレットパッカード社製)
カラム:HP−1(ヒューレットパッカード社製)、長さ30m、内径0.25mm、膜厚1.0μm
液相 100%−ジメチルポリシロキサン
キャリアガス:ヘリウム
キャリアガス流量:1.0mL/分
検出器:FID
注入口温度:250℃
検出器温度:250℃
昇温パターン(カラム):40℃で3分間保持、10℃/分で300℃まで昇温
スプリット比:200
サンプル:0.4μL
【0026】
また、ガスクロマトグラフィーで検出されるジエポキシ化合物Aの4つの立体異性体の構造はH-NMRや13C−NMRで帰属することができる。
【0027】
ジエポキシ化合物Aは、従来公知の方法により製造することができる。例えば、下記に示すように、対応する環状オレフィン化合物(下記式(II)で表される化合物)を、酸化剤により酸化(エポキシ化)する方法が挙げられる。
【0028】
【化2】

【0029】
(式中、R〜R12は前記と同じ意味を表す。)
酸化剤としては、過酸化水素、脂肪族過カルボン酸、有機過酸化物等が挙げられる。
酸化剤の使用量は、環状オレフィン化合物に対して等モル以上、好ましくは、1〜2倍モルである。
【0030】
エポキシ化反応は、溶媒中で行うのが好ましい。用いる溶媒としては、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;トルエン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類;等が挙げられる。
【0031】
反応温度は、0℃以上用いる溶媒の沸点以下、好ましくは20〜70℃である。
反応時間は、反応規模等にもよるが、通常1〜100時間、好ましくは2〜50時間である。
反応終了後は、例えば、貧溶媒で沈殿させる方法、エポキシ化物を熱水中に攪拌の下で投入し溶媒を蒸留除去する方法、又は、直接脱溶媒法等を行うことにより、目的とするエポキシ樹脂を得ることができる。
【0032】
上記反応により得られる式(I)で表される化合物は、通常、エンド−エンド立体異性体、エンド−エキソ立体異性体、エキソ−エンド立体異性体及びエキソ−エキソ立体異性体の4つの立体異性体の混合物である。
【0033】
前記4つの立体異性体のうち、エキソ−エキソ立体異性体の含有量が、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合で、4つの立体異性体の合計量中80%以上である高純度脂環式ジエポキシ化合物は、前記式(I)で表される化合物の4つの立体異性体混合物を、蒸留やカラムクロマトグラフィー等の公知の精製方法に供し分離・精製することで得ることができる。中でも、当該混合物を、後述の<ジエポキシ化合物Aの精製例>に記載の方法に従って分離・精製するのが好ましい。
【0034】
(b)硬化剤
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、前記高純度脂環式ジエポキシ化合物(a)に加えて、硬化剤(b)を含有する。
硬化剤(b)としては、高純度脂環式ジエポキシ化合物(a)を、熱や光により硬化させ得るエポキシ樹脂用の硬化剤であれば、特に制約はない。
例えば、酸無水物系硬化剤やフェノール系硬化剤等が挙げられ、高純度脂環式ジエポキシ化合物(a)をより好適に硬化できることから、酸無水物系硬化剤が好ましい。
【0035】
酸無水物系硬化剤としては、分子中に脂肪族環又は芳香族環を1個又は2個有するとともに、酸無水物基を1個又は2個有する、炭素原子数4〜25個、好ましくは8〜20個程度の酸無水物が好適である。
【0036】
酸無水物系硬化剤としては、一般にエポキシ樹脂用硬化剤として慣用されているものの中から任意に選択して使用することができ、常温で液状のものが好ましい。具体的には、例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸等を挙げることができる。
【0037】
また、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の含浸性に悪影響を与えない範囲で、常温で固体の酸無水物系硬化剤、例えば、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物等を使用することができる。常温で固体の酸無水物系硬化剤を使用する場合には、常温で液状の酸無水物系硬化剤に溶解させ、常温で液状の混合物として使用することが好ましい。
以上の硬化剤はそれぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
中でも、本発明の目的とする効果がより得られやすいことから、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、及び、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸とヘキサヒドロ無水フタル酸との混合物が好ましい。
【0039】
市販されている酸無水物系硬化剤としては、例えば、商品名「MH−700」、「HNA−100」[以上、新日本理化社製]、「HN−5500E」、「HN−7000」[以上、日立化成工業社製]、グルタル酸無水物(ジャパンエポキシレジン社製)などが挙げられる。
【0040】
硬化剤の使用割合は、硬化剤としての効果を発揮しうる有効量であれば特に制限はないが、通常エポキシ当量1当量に対して、酸無水物当量として0.5〜1.5当量の範囲であり、さらに好ましくは0.8〜1.2当量の範囲である。
【0041】
(c)硬化促進剤
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、前記高純度脂環式ジエポキシ化合物(a)及び硬化剤(b)に加えて、さらに硬化促進剤(c)を含有する。硬化促進剤(c)は、前記高純度脂環式ジエポキシ化合物(a)が硬化剤(b)によって硬化する際、硬化反応を促進する機能を有する化合物である。
【0042】
硬化促進剤(c)の具体例としては、ベンジルジメチルアミン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジメチルシクロヘキシルアミン等の3級アミン類;1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール系硬化促進剤;トリフェニルホスフィン、亜リン酸トリフェニル等の有機リン系硬化促進剤;テトラブチルホスホニウムジエチルホスホロジチオエート、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、メチルトリブチルホスホニウムジメチルホスフェート、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の4級ホスホニウム塩類;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等やその有機酸塩等のジアザビシクロアルケン類;オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫やアルミニウムアセチルアセトン錯体等の有機金属化合物類;テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド等の4級アンモニウム塩類;三フッ化ホウ素、トリフェニルボレート等のホウ素化合物;塩化亜鉛、塩化第二錫等の金属ハロゲン化物;が挙げられる。
更には、高融点イミダゾール化合物、ジシアンジアミド、アミンをエポキシ樹脂等に付加したアミン付加型促進剤等の高融点分散型潜在性促進剤;イミダゾール系、リン系、ホスフィン系促進剤の表面をポリマーで被覆したマイクロカプセル型潜在性促進剤;アミン塩型潜在性硬化促進剤;ルイス酸塩、ブレンステッド酸塩等の高温解離型の熱カチオン重合型の潜在性硬化促進剤;紫外線や放射線等の活性エネルギー線によりプロトンを発生する光解離型の光カチオン重合型の潜在性硬化促進剤等に代表される潜在性硬化促進剤も使用することができる。
【0043】
これらの中でも、より本発明の目的とする効果が得られやすいことから、イミダゾール系硬化促進剤が好ましく、2エチル−4−メチルイミダゾールや1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾールが特に好ましい。
【0044】
以上の硬化促進剤(c)はそれぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。硬化促進剤(c)の使用割合は、硬化促進効果が得られる量であれば特に制限はないが、高純度脂環式ジエポキシ化合物100重量部に対して、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部である。
【0045】
(d)無機充填剤
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、前記高純度脂環式ジエポキシ化合物(a)、硬化剤(b)及び硬化促進剤(c)に加えて、フィラーとしてさらに無機充填剤(d)を含有する。
【0046】
無機充填剤(d)としては、溶融球状シリカ、溶融破砕シリカ、結晶質シリカ、ゾルゲルシリカ、フュームドシリカ等のシリカ、シリカバルーン、アルミナ、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化すず、酸化ベリリウム、バリウムフェライト、及びストロンチウムフェライト等の無機酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、及び炭酸水素ナトリウム等の無機炭酸塩;硫酸カルシウム等の無機硫酸塩;タルク、クレー、マイカ、カオリン、フライアッシュ、モンモリロナイト、ケイ酸カルシウム、ガラス、及びガラスバルーン等の無機ケイ酸塩;等が挙げられる。中でも、最密充填に適した粒度分布の設計が可能なため、球状シリカが好ましく、溶融球状シリカが特に好ましい。
【0047】
溶融球状シリカは、球状の非晶質シリカであって、最密充填に適した粒度分布の設計が可能なため、高充填が可能なシリカである。
溶融球状シリカは、製法によって、天然溶融球状シリカと合成溶融球状シリカに大別され、本発明においては、いずれも使用可能である。
【0048】
天然溶融球状シリカは天然ケイ石が原料として用いられる。水洗、破砕されたミクロンサイズのケイ石が、LPG/酸素火炎中に供給され、加熱されて軟化し表面張力によって球状になり、火炎を出たところで急冷されて非晶質の球状シリカとなる。原料の破砕ケイ石の粒度や溶融条件によって種々の平均粒径のものが製造される。
【0049】
合成溶融球状シリカは、金属ケイ素と塩化水素から合成された高純度四塩化ケイ素が原料として用いられる。水素/酸素火炎中に四塩化ケイ素が供給され、火炎中にて四塩化ケイ素の高温加水分解によりシリカが生成する。次いで火炎中でシリカが溶融し、表面張力によって球状になり、火炎を出たところで急冷されて非晶質の球状シリカとなる。溶融条件によって種々の平均粒径のものが製造される。
【0050】
用いる球状シリカの平均粒径は、特に限定されるものではないが、凝集・沈降がしにくいことから、粒子を三次元的にみたときの長手方向と短手方向の長さの平均値で、5μm以下であるのが好ましく、1μm以下であるのがより好ましい。より詳しくは、0.1〜5μmであるのが好ましく、0.5〜1μmであるのがより好ましい。
また、用いる球状シリカに含まれる粗大粒子の粒径(最大粒径)は、通常50μm以下、好ましくは25μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。この範囲のシリカを用いることで、微細バンプ間にも浸透容易な液状封止材料を効率的に提供することが可能となる。
【0051】
無機充填剤の使用割合は、半導体封止用エポキシ樹脂組成物中40重量%以上であるのが好ましく、50重量%以上であるのがより好ましい。より詳しくは、40〜80重量%であるのが好ましく、50〜70重量%であるのがより好ましい。
【0052】
なかでも、微細バンプ間への浸透性と作業性を考慮すると共に、得られる半導体装置の接続信頼性を充分高める観点から、無機充填剤が、平均粒径が5μm以下の球状シリカであり(下限は通常0.1μm)、かつその含有量が半導体封止用エポキシ樹脂組成物中40重量%以上である(上限は通常80重量%)のが好適であり、平均粒径が1μm以下の球状シリカであり(下限は通常0.5μm)、かつその含有量が半導体封止用エポキシ樹脂組成物中50重量%以上である(上限は通常70重量%)のが特に好適である。
【0053】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物には、樹脂成分と無機充填剤(d)との接着性を高めるために、所望により、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等のシランカップリング剤(e)をさらに添加することができる。
シランカップリング剤(e)の具体例としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−[ビス(β−ヒドロキシエチル)]アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(β−アミノエチル)アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N−(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のシラン系カップリング剤などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シランカップリング剤(e)の配合量は、無機充填剤100重量部に対して0.05〜5重量部であるのが好ましく、0.1〜2.5重量部であるのがより好ましい。
【0054】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物においては、高純度脂環式ジエポキシ化合物(a)、硬化剤(b)、硬化促進剤(c)、無機充填剤(d)、及び、所望により、シランカップリング剤(e)のほかに、本発明の目的を損なわない範囲で、その他の成分を含んでいてもよい。
その他の成分としては、反応調整剤、他のエポキシ化合物、他の添加剤等が挙げられる。
【0055】
反応調整剤としては、水酸基を持った化合物が挙げられる。水酸基を持った化合物を添加することで半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化反応を緩やかに進行させることができる。水酸基を持った化合物の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。反応調整剤の添加料としては、高純度脂環式ジエポキシ化合物100重量部に対して、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部である。
【0056】
他のエポキシ化合物の具体例としては、前記一般式(1)で示される脂環式ジエポキシ化合物を除いた脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂などの2官能型エポキシ樹脂が挙げられ、塩素含有率が低いものが特に好ましい。
前記脂環式エポキシ樹脂の具体例としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、リモネンジエポキシド、1-エポキシ−3,4−エポキシシクロヘキサン、ジシクロペンタジエンジエポキシド、エポキシ化3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ビス3−シクロヘキセニルメチルエステル及びそのε−カプロラクトン付加物、並びに、エポキシ化ブタンテトラカルボン酸テトラキス−3−シクロヘキセニルメチルエステル及びそのε−カプロラクトン付加物等が挙げられる。
上記以外にもフェノールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールADノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンとフェノールとの重合物をエポキシ化したジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェノールとフェノールとの縮合体をエポキシ化したフェノール・ビフェニレン型エポキシ樹脂、ナフトールとフェノール類との縮合物をエポキシ化したナフタレン型エポキシ樹脂等の変性ノボラック型エポキシ樹脂;ダイマー酸グリシジルエステル、トリグリシジルエステル等のグリシジルエステル型エポキシ樹脂;テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、トリグリシジルp−アミノフェノール、トリグリシジル−p−アミノフェノール、テトラグリシジルメタキシリレンジアミン、テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環式エポキシ樹脂;フロログリシノールトリグリシジルエーテル、トリヒドロキシビフェニルトリグリシジルエーテル、トリヒドロキシフェニルメタントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、2−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−2−[4−[1,1−ビス[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]エチル]フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−[1−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−1−[4−[1−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチル]フェノキシ]−2−プロパノール等の3官能型エポキシ樹脂;テトラヒドロキシフェニルエタンテトラグリシジルエーテル、テトラグリシジルベンゾフェノン、ビスレゾルシノールテトラグリシジルエーテル、テトラグリシドキシビフェニル等の4官能型エポキシ樹脂;等が挙げられる。
【0057】
これらの他のエポキシ化合物はそれぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、より本発明の目的とする効果が得られ易いことから、25℃で液状の、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、及び脂環式エポキシ樹脂を用いるのが好ましい。
また、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物における他のエポキシ化合物の配合量は、用いるエポキシ化合物の全量中、通常50重量%以下である。他のエポキシ化合物の配合量が、用いるエポキシ化合物の全量中50重量%を超えると本発明の目的とする効果が得られにくくなる。
【0058】
他の添加剤としては、例えば、シリコーン系やフッ素系の消泡剤、前記無機充填剤(d)以外の充填剤、難燃剤、着色剤、酸化防止剤(フェノール系、リン系、イオウ系酸化防止剤等)、紫外線吸収剤、蛍光体、イオン吸着体、染料、顔料、低応力化剤、可撓性付与剤、離型剤、ワックス類、ハロゲントラップ剤、レベリング剤、濡れ改良剤等が挙げられる。
これらの他の添加剤の配合量は、それぞれ、半導体封止用エポキシ樹脂組成物中、重量基準で、通常5%以下である。
【0059】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、高純度脂環式ジエポキシ化合物(a)、硬化剤(b)、硬化促進剤(c)、無機充填剤(d)及び、所望により、シランカップリング剤(e)や他の成分を、公知の方法に従って撹拌、混合することにより調製することができる。
撹拌、混合の際の温度は、配合する硬化剤や硬化促進剤の種類等によっても異なるが、通常、10〜60℃程度に設定されるのが好ましい。調製時の設定温度が10℃未満では、粘度が高すぎて均一な撹拌、混合作業が困難になる場合があり、逆に、調製時の温度が高すぎると、硬化反応が起き、エポキシ樹脂組成物の粘度が高くなってしまう場合があるので、好ましくない。
撹拌、混合するには、例えば、三本ロール、ニーダー、万能攪拌機、ボールミル、プラネタリミキサー、ホモジナイザー、ホモディスパーザー等を用いればよく、撹拌、混合は、前記高純度脂環式ジエポキシ化合物と前記各成分とが均一になるまで行えばよい。
【0060】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、フィラーを高充填しても低粘度であり、従来品に比して、より低温度・短時間で硬化しても、ガラス転移温度(Tg)が高く、線膨張係数が小さい硬化物を与えるものである。従って、作業性が良好な半導体封止材料として好適である。
【0061】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、適度な粘度を有し、その硬化物の線膨張係数は小さいため、作業性が良好で、半導体封止用途に好適である。
適度な粘度とは、通常、25℃において1〜20Pa・s、好ましくは3〜15Pa・sである。粘度は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0062】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、容易に硬化して、半導体を効率よく封止することができる。
硬化方法としては、特に限定されないが、例えば、80〜200℃程度に設定された加熱炉内に0.5〜4時間程度静置する方法が挙げられる。
硬化方法は、多段階のステップキュアとすることも可能であり、例えば本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を硬化させる場合、1次硬化を80〜120℃で0.5〜2時間程度行った後、2次硬化を120〜200℃で0.5〜2時間程度行って硬化することが好ましい。
【0063】
本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度(Tg)は、180℃以上(例えば、180〜250℃)が好ましく、190℃以上(例えば、190〜250℃)がより好ましい。
【0064】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、後述するように、特に、フリップチップ実装パッケージ等において、チップの電極とプリント基板の電極を接続する半田バンプ等の部分を封止するのに好適に用いられる。本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物をアンダーフィル剤として用いた場合、半田バンプ等の間隙に容易に浸透し、当該間隙をボイド残り無く充填することができ、さらに低線膨張率であるため、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物で封止してなる半導体装置を、例えば、ヒートサイクル試験に供した場合、当該装置は優れた接続信頼性を発揮しうる。
【0065】
2)半導体装置
本発明の半導体装置は、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて封止されてなることを特徴とする。
本発明の半導体装置としては、半導体チップ等の電子部品とプリント基板(インターポーザ)との間等が本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて封止されたものであれば、特に制約はない。
【0066】
プリント基板は、少なくとも、絶縁層と導体回路と電極とを有し、電子部品の電極からの電気信号を他の電子部品等に伝送可能なものであれば特に限定はない。プリント基板としては、例えば、従来のガラスエポキシプリント配線基板、ガラスポリイミドプリント配線基板、ビスマレイミドトリアジン樹脂プリント基板、ポリフェニレンエーテル(ポリフェニレンオキサイド)プリント配線基板、フッ素樹脂プリント配線基板、その他環状オレフィン系樹脂プリント配線基板等の低誘電率プリント配線基板等のプリント配線基板;ポリエチレンテレフタレートフレキシブルプリント配線基板、ポリイミドフレキシブルプリント配線基板等のフレキシブルプリント配線基板(FPC);シリコンウェハー基板;セラミック基板;感光性樹脂等を使用した高密度実装基板;樹脂付き金属箔やドライフィルム、接着性絶縁フィルム等のフィルム積層型の高密度実装基板;ポリフェニレンスルフィドや液晶ポリマー等の熱可塑性エンジアリングプラスチックフィルム等のフィルム配線基板等や、近年のパッケージ形態であるチップスケールパッケージ(CSP)に使用されるキャリアフィルム(ポリイミドキャリアフィルム等)や単層基板等、並びにこれらの基板に電子部品が実装されたプリント回路板等が挙げられる。
【0067】
電子部品としては、ICチップ、LSIチップ等の半導体チップ、及び、複数の半導体部品を実装してなるマルチ・チップ・モジュール(MCM)等の半導体パッケージ等が挙げられる。電子部品は、プリント基板の電極に直接接続するための接続ワイヤ又は突起状電極(バンプ)を有する。突起状電極としては、例えば、半田バンプや金バンプ等が挙げられる
【0068】
電子部品をプリント基板に実装する方法としては、特に制約はないが、基板側の電極と電子部品側の電極とをワイヤによって接続するワイヤボンディング実装(図1参照)、電子部品の電極を基板側の電極と直接接続するフリップチップ実装(図2参照)、及びリード線を設けたフィルムを用いて基板側の電極と電子部品側の電極とを接続するTAB(Tape Automated Bonding)実装が挙げられる。
なかでも、フリップチップ実装で実装されていることが好ましい。フリップチップ実装では、電子部品は、突起状電極形成面を逆さまにして、フェースダウンの状態でプリント基板の電極上に搭載され直接接続されることになる。
【0069】
本発明の半導体装置は、前記プリント基板と電子部品との間にできた間隙等に前記半導体封止用エポキシ樹脂組成物を充填し、加熱・硬化することにより、電極間接続部分を該材料により封止する。
半導体装置の封止方法としては特に限定されるものではないが、プリント基板と電子部品との間隙付近に、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物をディスペンサー等を用いて塗布し、毛細管現象を利用して該組成物を間隙に充填し、封止する方法(キャピラリーフローアンダーフィル法)や、トランスファー成形機等により、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物をプリント基板と電子部品との間隙及び電子部品上に充填し、一括して封止する方法(モールドアンダーフィル法)が好適である。
【0070】
前記ワイヤボンディング実装を行った場合(図1参照)は、前記半導体封止用エポキシ樹脂組成物を、少なくともワイヤ接続部分を覆うように塗布することで電極間接続部分を該材料により被覆することができる。その際、塗布した材料が流れないように、電子部品の周辺に枠(ダム)を設置したり、電子部品の実装部分のみを凹部分にしてもよい。
【0071】
加熱は、例えば、電子部品との電極間接続部分が前記半導体封止用エポキシ樹脂組成物で充填された状態にあるプリント基板ごと加熱炉内に静置することにより行われる。
前記半導体封止用エポキシ樹脂組成物を硬化させるための加熱温度は、80〜200℃程度であり、加熱時間は、通常0.5〜4時間程度である。多段階のステップキュアで硬化させることも可能である。
【0072】
得られる半導体装置の例を、図1及び図2に示す。図1は、半導体チップがワイヤボンディング実装された半導体装置を示す図であり、図2は、半導体チップがフリップチップ実装された半導体装置を示す図である。図中、1及び1’はプリント基板を、2は接続ワイヤを、3及び3’は半導体チップを、4及び4’は本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物を、5は半田バンプ(半田ボール)をそれぞれ示す。
【0073】
プリント基板に対して電子部品を取り付ける反対側の面に半田バンプが設けられている場合、上述のようにしてプリント基板と電子部品との電極間接続部分を封止した後(1次封止)、得られたプリント回路板をマザーボード(通常のプリント配線板)上にさらに搭載し接続してもよい。この場合、前記プリント回路板とマザーボードとの間隙に対してアンダーフィル法により本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物をディスペンサー等を使用して流し込み、硬化させることにより、2次封止することができる。
【0074】
また、本発明の半導体装置は、半導体ベアチップ実装パッケージであってもよい。用いられる電子部品としては、半導体部品の中でもCPU(中央演算装置)やメモリ(DRAM)等に使用されるような、微細配線が高度に集積された大規模集積回路(LSI)等が挙げられる。半導体ベアチップ実装パッケージは、少なくとも半導体チップの電極とプリント基板の電極との間の接続部分を、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて封止することにより得られる。
前記パッケージに、さらにマザーボードのプリント基板に接続する目的で半田ボール等の突起状電極を取付けたボールグリッドアレイ(BGA)、半導体チップが複数実装されたマルチチップパッケージ(マルチチップモジュール)は、コンピューターや通信機器に使用可能である。
【実施例】
【0075】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。各例中の部及び%は、特に断りのない限り、重量基準である。
【0076】
なお、合成例におけるガスクロマトグラフィーの測定条件等は以下に記載の通りである。
測定装置:HP6890(ヒューレットパッカード社製)
カラム:HP−1(ヒューレットパッカード社製)、長さ30m、内径0.25mm、膜厚1.0μm
液相 100%−ジメチルポリシロキサン
キャリアガス:ヘリウム
キャリアガス流量:1.0mL/分
検出器:FID
注入口温度:250℃
検出器温度:250℃
昇温パターン(カラム):40℃で3分間保持、10℃/分で300℃まで昇温
スプリット比:200
サンプル:0.4μL
【0077】
[合成例1]ジエポキシ化合物A(粗生成物)の合成
温度計を備えた3つ口反応器において、窒素気流中、3a,4,7,7a−テトラヒドロインデン40.0g(0.333mol)をアセトン400mLに溶解させ、炭酸水素ナトリウム201.3g(2.396mol)と蒸留水400mLを加えた。その混合液を水浴で10℃に冷却した後、オキソン(登録商標)−過硫酸塩化合物327.4g(0.532mol)を加え、反応液の内温が20〜30℃の間になるように水浴温度を調整しながら2時間攪拌した。その後、反応液を0℃に冷却し、10%水酸化ナトリウム水溶液300mL、蒸留水300mL、飽和食塩水300mLを加え、ヘキサン500mLで2回抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで濃縮した後、真空乾燥させることで、ジエポキシ化合物A(粗生成物)を41.5g得た(収率82%)。
【0078】
得られたジエポキシ化合物A(粗生成物)をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、ジエポキシ化合物Aが有する2つのエポキシ環の立体配置に基づく4つの立体異性体(すなわち、エキソ−エキソの立体配置を有する立体異性体、エキソ−エンドの立体配置を有する立体異性体、エンド−エキソの立体配置を有する立体異性体、エンド−エンドの立体配置を有する立体異性体の4種の立体異性体)の重量比は、エキソ−エキソ体:エキソ−エンド体:エンド−エキソ体:エンド−エンド体=53.5:22.9:21.6:2.0であった(エキソ−エキソ立体異性体の含有量:53.5%)。
【0079】
[合成例2]ジエポキシ化合物Aの精製
上記方法により得られたジエポキシ化合物A(粗生成物)41.5gを薄層クロマトグラフィー(展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=2:1)により分析した結果、R値=0.54とR値=0.44に2つのスポットを確認した。そこで、粗生成物41.5gをシリカゲル1200g(球状、中性、粒径;63−210μm、関東化学社製)と溶離液(ヘキサン:酢酸エチル =1:4(容積比))とを用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。そして、前記薄層クロマトグラフィーによる分析でR値=0.44であった化合物を単離することで、ジエポキシ化合物A(精製物)を17.0g、収率41%で得た。
【0080】
得られたジエポキシ化合物A(精製物)をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、エキソ−エキソの立体配置を有する立体異性体の含有量は99.2%であった。
以上より、ジエポキシ化合物Aの4つの立体異性体のうちエキソ−エキソ立体異性体の含有量が99.2%である高純度脂環式ジエポキシ化合物が得られた。なお、立体異性体の構造はNMRで同定した(第1表)。
【0081】
【表1】

【0082】
[実施例1]
合成例2で得られた高純度脂環式ジエポキシ化合物100部と、硬化剤としてメチルヘキサヒドロ無水フタル酸とヘキサヒドロ無水フタル酸との混合物〔リカシッド(登録商標)MH−700G 新日本理化社製〕170部と、硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール〔キュアゾール(登録商標)2E4MZ 四国化成工業社製〕1部と、無機充填剤として溶融球状シリカ〔商品名PLV−3 龍森社製 平均粒径3.0μm 最大粒径10μm〕406.5部と、シランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン〔商品名KBM−403 信越シリコーン社製〕4.1部と、反応調整剤としてエチレングリコール1部を加え、プラネタリーミキサーにて10分間攪拌し、半導体封止用エポキシ樹脂組成物を調製した。硬化剤の酸無水物とエポキシ樹脂の当量比は酸無水物当量/エポキシ当量として0.9、シリカの含有量は60%であった。
あらかじめ離型フィルムで被覆した1対のガラス基板の間(3mmのスペーサーで間隔が調整されている)に、得られた半導体封止用エポキシ樹脂組成物を注入し、1次硬化を100℃のオーブン中で1時間、さらに2次硬化を150℃のオーブン中で2時間実施して厚さ3mmの硬化物を得た。
以上のようにして得られた半導体封止用エポキシ樹脂組成物及び硬化物につき、半導体の封止剤及び封止物に要求される特性として、以下の評価方法に従い、前者については粘度及びキャピラリーフロー性を、後者についてはガラス転移温度(Tg)及び線膨張率を、それぞれ評価した。それらの結果を表2に示す。
【0083】
前記実施例1における評価方法は以下に記載の通りである。
<粘度>
実施例1で得られた半導体封止用エポキシ樹脂組成物の25℃における粘度を、ブルックフィールド社製ハイシェアレイト粘度計CAP2000+にてCAP−03コーンスピンドルを用いて測定した。
【0084】
<キャピラリーフロー性>
スライドガラス上に厚さ20μmのフォトレジストをラミネートし、フォトリソグラフィー法によりスライドガラスの長片方向に水平に幅6mmの溝を形成した。このようにして作製したパターン付きスライドガラス上に、10mm角のカバーガラスを、溝の中央とカバーガラスの中央が重なるように静置した。溝とカバーガラスの端部にできた隙間(幅6mm、高さ20μm)部分に、半導体封止用エポキシ樹脂組成物をシリンジを用いて手作業で滴下し、毛細管現象により半導体封止用エポキシ樹脂組成物がカバーガラスと溝の反対側の隙間から滲み出してくるまでの時間を測定した。尚、本測定時にはスライドガラスを60℃に加温した。図3にキャピラリーフロー性の評価に用いた装置の模式図を示す。(A)は装置の斜視図であり、10はカバーガラス、11はレジスト、12はスライドガラス、Sは半導体封止用エポキシ樹脂組成物の滴下部分を、(B)は(A)のXY断面図であり、a=20μm、b=6mmである。
【0085】
<ガラス転移温度(Tg)・線膨張率>
実施例1で得られた硬化物を、マルトー社製ラボカッターMC−120にて5mm角に切断し、エスアイアイナノテクノロジー社製EXSTER TMA/SS7100を用いて、膨張・圧縮法によりTMA測定を行った。得られたデータから、ガラス転移温度(Tg)とTg前後の平均線膨張率(α1、α2)を算出した。
【0086】
[実施例2]
合成例2で得られた高純度脂環式ジエポキシ化合物50部と、他のエポキシ樹脂として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート〔セロキサイド(登録商標)2021P ダイセル化学工業社製〕50部を用いたこと、MH−700Gを141.7部、PLV−3を364部、KBM−403を3.6部用いたこと以外は実施例1と同様にして半導体封止用エポキシ樹脂組成物を調製し、その硬化物を得た。評価は実施例1で示した方法で行った。その結果を第2表に示す。
【0087】
[実施例3]
合成例2で得られた高純度脂環式ジエポキシ化合物50部と、他のエポキシ樹脂として、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(商品名jER YL983U 三菱化学社製)50部を用いたこと、MH−700Gを121.4部、PLV−3を339.6部、KBM−403を3.4部用いたこと以外は実施例1と同様にして半導体封止用エポキシ樹脂組成物を調製し、その硬化物を得た。評価は実施例1で示した方法で行った。その結果を第2表に示す。
【0088】
[比較例1]
合成例1で得られたジエポキシ化合物A(粗生成物)100部を用いたこと以外は実施例1と同様にして半導体封止用エポキシ樹脂組成物を調製し、その硬化物を得た。評価は実施例1で示した方法で行った。その結果を第2表に示す。
【0089】
[比較例2]
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート〔セロキサイド(登録商標)2021P ダイセル化学工業社製〕100部を用いたこと、MH−700Gを112.8部、PLV−3を320.7部、KBM−403を3.2部用いたこと以外は実施例1と同様にして半導体封止用エポキシ樹脂組成物を調製し、その硬化物を得た。評価は実施例1で示した方法で行った。その結果を第2表に示す。
【0090】
[比較例3]
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(商品名jER YL983U 三菱化学社製)100を用いたこと、MH−700Gを86.8部、PLV−3を281.7部、KBM−403を2.8部用いたこと以外は実施例1と同様にして半導体封止用エポキシ樹脂組成物を調製し、その硬化物を得た。評価は実施例1で示した方法で行った。その結果を第2表に示す。
【0091】
【表2】

【0092】
第2表より、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、無機充填材を高い割合で含有しても低粘度でキャピラリーフロー性に優れており、その硬化物はTgが高く、線膨張率が低いことが分かる。従って、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、半導体チップとプリント基板を接続するバンプ間の隙間に短時間でボイド無く浸透することができ、また、当該組成物を硬化し、封止してなる半導体装置は、例えば、ヒートサイクル試験に供した場合、優れた接続信頼性を発揮しうる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、特にバンプ間距離が短く、チップとパッケージ基板とのギャップが小さい高密度実装品の封止により好適に用いうる。
【符号の説明】
【0094】
1,1’・・・プリント基板、2・・・接続ワイヤ、3,3’・・・半導体チップ、4,4’・・・本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物、5・・・半田バンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスクロマトグラフィーにより検出される、下記一般式(I)で表される脂環式ジエポキシ化合物が有する2つのエポキシ環の立体配置に基づく4つの立体異性体のうち、エキソ−エキソの立体配置を有する立体異性体の含有量が、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合で、前記4つの立体異性体の合計量中80%以上である高純度脂環式ジエポキシ化合物、硬化剤、硬化促進剤、及び無機充填剤を含有してなる半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【化1】

(式中、R〜R12は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)
【請求項2】
前記高純度脂環式ジエポキシ化合物が、前記一般式(I)で表される脂環式ジエポキシ化合物が有する2つのエポキシ環の立体配置に基づく4つの立体異性体のうち、エキソ−エキソの立体配置を有する立体異性体の含有量が、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合で、前記4つの立体異性体の合計量中95%以上である高純度脂環式ジエポキシ化合物である請求項1に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記高純度脂環式ジエポキシ化合物が、テトラヒドロインデンジエポキシドである請求項1又は2に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記硬化剤が、酸無水物系硬化剤である請求項1〜3のいずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
前記硬化促進剤が、イミダゾール系硬化促進剤である請求項1〜4のいずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
前記無機充填剤が、平均粒径が5μm以下の球状シリカであり、かつその含有量が半導体封止用エポキシ樹脂組成物中40重量%以上である請求項1〜5のいずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
前記無機充填剤が、平均粒径が1μm以下の球状シリカであり、かつその含有量が半導体封止用エポキシ樹脂組成物中50重量%以上である請求項1〜6のいずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて封止されてなる半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−14643(P2013−14643A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146703(P2011−146703)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】