説明

半導体装置、半導体装置の製造方法

【課題】微細配線であっても、Cu配線の配線抵抗上昇の低減と信頼性向上とを両立する。
【解決手段】半導体装置は、絶縁膜2と、絶縁膜2に形成された溝5と、溝5の側壁及び底面に形成された、チタン(Ti)とタンタル(Ta)との合金からなるバリアメタル膜3と、バリアメタル膜3に積層され、溝5の中に位置する銅(Cu)配線4と、を有する。バリアメタル膜3のチタン濃度は、0.1at%以上14at%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、その製造方法、この半導体装置を製造するためのターゲットに関する。
【背景技術】
【0002】
LSI(Large Scale Integration)配線にはCu配線が用いられている。Cuは絶縁膜中を拡散しやすいため、配線溝には、Cu配線を形成する前に、バリアメタル膜を形成する。こうすることで、Cuが絶縁層や基板に拡散してしまうのを防止できる。バリアメタル膜として、タンタル(Ta)とチタン(Ti)との合金を用いることが知られている。
【0003】
特許文献1には、バリアメタル膜におけるTiの割合を15at%以上90at%以下とすることが記載されている。また、これにより、Cu配線に使用されるバリアメタル膜の抵抗および応力の低減化が図れることが記載されている。
【0004】
特許文献2には、絶縁膜付近はTi濃度を高くし、Cu膜付近はTa濃度を高くすることで、Ti濃度に勾配をかけることが記載されている。また、これにより、銅及び他の導電体材料とともに使用するのに適し、酸化物及び他の誘電体薄膜に良く固着し、境界を形成しつつ、低い歪又はヘテロエピタキシャル関係を生じることが記載されている。
【特許文献1】特開2003−109956号公報
【特許文献2】特開2001−110751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トランジスタの微細化に伴い、Cu配線の配線抵抗の増大が顕著となっている。これは、Tiの濃度が高すぎると、熱履歴により多量のTiがCu配線中に拡散してしまい、配線抵抗が上昇してしまうためである。また、TiはTaより軽い元素であるため、バリアメタル膜の被覆率(カバレッジ)が低くなり、絶縁膜とバリアメタル膜との間にボイド(空孔)が発生し、Cu配線の信頼性を低下させてしまう。
【0006】
一方、バリアメタル膜をTaのみで構成すると、Cu配線との密着性が低く、Cuのカバレッジが低下する。そのため、Cu配線とバリアメタル膜との間にボイドが発生し、Cu配線の信頼性が低下してしまう。また、Ti拡散によるCuの合金化が起こらず、Cu配線の信頼性を向上できない。
【0007】
そのため、微細配線では、Cu配線の配線抵抗上昇の低減と信頼性向上との両立を達成することが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、絶縁膜と、
前記絶縁膜に形成された溝と、
前記溝の側壁及び底面に形成された、チタンとタンタルとの合金からなるバリアメタル膜と、
前記バリアメタル膜に積層され、前記溝の中に位置する銅配線と、
を有し、
前記バリアメタル膜のチタン濃度が0.1at%以上14at%以下である半導体装置
が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、半導体基板上に絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜に溝を形成する工程と、
前記溝の側面および底面に、それぞれ、チタンとタンタルとの合金からなるバリアメタル膜を形成する工程と、
前記溝に銅配線を埋め込む工程と、
を含み、
前記バリアメタル膜のチタン濃度が0.1at%以上14at%以下である半導体装置の製造方法
が提供される。
【0010】
さらに、本発明によれば、銅配線にバリアメタル膜を形成するためのスパッタリング装置のターゲットであって、
タンタルおよびチタンから構成され、前記チタンを0.1at%以上14at%以下で含有するターゲット
が提供される。
【0011】
この発明によれば、チタンとタンタルとの合金からなるバリアメタル膜のチタン濃度を0.1at%以上14at%以下にしているため、熱履歴により銅配線にチタンが拡散しすぎることを抑制でき、これにより、銅配線の配線抵抗の上昇を防ぐことができる。また、チタン濃度を上記範囲とすることで、銅配線とバリアメタル膜とを良好に接着することができ、銅配線とバリアメタル膜との間にボイドが発生することを防止して、銅配線の信頼性を高めることができる。また、Cu配線のTiによる合金化が起こり、信頼性が向上する。したがって、銅配線の配線抵抗上昇の低減と信頼性向上とを両立することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、銅配線の配線抵抗上昇の低減と信頼性向上とを両立することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明する断面図である。本実施形態に係る半導体装置は、図1(d)で示すように、絶縁膜2と、絶縁膜2に形成された溝と、溝の側壁及び底面に形成された、チタン(Ti)とタンタル(Ta)との合金からなるバリアメタル膜3と、バリアメタル膜3に積層され、溝の中に位置する銅(Cu)配線4と、を有する。バリアメタル膜3のTi濃度は、0.1at%以上14at%以下である。
【0015】
本実施形態に係る半導体装置の製造方法を図1を用いつつ説明する。まず、図1(a)で示すように、絶縁膜2の表面に溝5を形成する。このとき、溝5として、配線溝のみを形成してもよいし、接続孔及び配線溝の双方を形成してもよい。接続孔および配線溝を形成することで、配線およびプラグを同時に形成することができる。この場合、ビアファースト法、トレンチファースト法、ミドルファースト法、及びデュアルハードマスク法などのうちいずれの方法を用いても良い。
【0016】
絶縁膜2は、比誘電率が3.0以下の低誘電率膜(いわゆるLow−k膜)である。このような絶縁膜2としては、SiOC、HSQ(ハイドロジェンシルセスキオキサン)、MSQ(メチルシルセスキオキサン)、またはMHSQ(メチル化ハイドロジェンシルセスキオキサン)等のポリハイドロジェンシロキサン、ポリアリールエーテル(PAE)、ジビニルシロキサン−ビス−ベンゾシクロブテン(BCB)、またはSilk(登録商標)等の芳香族含有有機材料、SOG、FOX(flowable oxide)、サイトップ、またはBCB(Bensocyclobutene)等を用いることもできる。また、絶縁膜2として、これらの膜に複数の空孔を設けた膜(ポーラス膜)を用いてもよい。
【0017】
ついで、図1(b)で示すように、溝5の側面および底面を被膜するように、バリアメタル膜3を形成する。このとき、バリアメタル膜3は、スパッタリング法により絶縁膜2上に成膜する。
【0018】
ここで、スパッタリング法によるバリアメタル膜3の形成には、スパッタリング装置のターゲットとして、TaとTiとの二成分からなるターゲットを用いる。このターゲットは、Tiを0.1at%以上14at%以下で含有する。より好ましくは、ターゲット中のTi濃度を3at%以上10at%以下とする。
【0019】
ついで、図1(c)で示すように、溝5の内及び絶縁膜2上にCu膜40を形成する。ここで、Cu膜40は、スパッタリング法およびめっき法により形成され、バリアメタル膜3上に積層される。
【0020】
ついで、バリアメタル膜3およびCu膜40に熱処理を施す。このときの熱処理温度は、例えば250℃以上400℃以下であり、好ましくは250℃以上350℃以下である。ただし、350℃以上400℃以下であってもよい。熱処理時間は、例えば30秒〜1時間である。この熱処理により、バリアメタル膜3に含まれるTiがCu膜4中に拡散すると同時に、Cu膜4とバリアメタル膜3の界面にTiが偏析する。この偏析したTiによって、Cu膜とバリアメタル膜の密着性が改善されると考えられる。なお、得られたバリアメタル膜3におけるTiとTaとの比率は、上記のターゲット中に含まれるTiとTaとの比率とほぼ同じである。
【0021】
ついで、図1(d)で示すように、絶縁膜2上に位置するCu膜40およびバリアメタル膜3をCMP(Chemical Mechanical Polishing)により除去して、Cu配線4を完成させる。
【0022】
つづいて、本実施形態の作用効果について説明する。本実施形態の半導体装置によれば、TaTi合金からなるバリアメタル膜3のTi濃度を14at%以下にしているため、熱履歴によりCu配線4にTiが拡散しすぎることを抑制でき、これにより、Cu配線4の配線抵抗の上昇を防ぐことができる。一方、Ti濃度を0.1at%以上とすることで、Cu配線4とバリアメタル膜3とを良好に接着することができ、Cu配線4とバリアメタル膜3との間にボイドが発生することを防止して、Cu配線4の信頼性を高めることができる。また、Cu配線4のTiによる合金化が起こり、信頼性が向上する。したがって、Cu配線4の配線抵抗上昇の低減と信頼性向上とを両立することができる。
【0023】
(第2の実施形態)
図2は、第2の実施形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。この半導体装置は、トランジスタ20が形成された基板10上に、層間絶縁膜30及び絶縁層110を形成し、さらに絶縁層120,130,140,150をこの順に積層させた構成である。
【0024】
基板10は、たとえば、シリコン基板とする。絶縁層110は、第1の実施形態における絶縁膜2と同様の構成である。絶縁層110には、Cu配線210が埋め込まれている。Cu配線210の構成は、第1の実施形態におけるCu配線4と同様の構成である。Cu配線210は、例えば層間絶縁膜30に埋め込まれたコンタクトを介して、トランジスタ20に接続している。層間絶縁膜30は、たとえば、酸化シリコンとする。
【0025】
絶縁層120,130,140,150は、第1の実施形態における絶縁膜2と同様の構成であり、それぞれCu配線220,230,240,250が埋め込まれている。Cu配線220,230,240,250の構成は、第1の実施形態におけるCu配線4の構成と同様であり、Cu配線4と同様の方法により形成される。Cu配線220,230,240,250と絶縁層120,130,140,150の間には、第1の実施形態におけるバリアメタル膜3と同様の構成を有するバリアメタル膜212,222,232,242,252が設けられている。なお、このバリアメタル膜212,222,232,242,252のTiとTaとの比率は、バリアメタル成膜に使用したターゲット中に含まれるTiとTaとの比率とほぼ同じである。
【0026】
また絶縁層110と絶縁層120との間には、拡散防止膜310が形成されている。同様に、絶縁層120と絶縁層130との間、絶縁層130と絶縁層140との間、及び絶縁層140と絶縁層150との間にも、それぞれ拡散防止膜320,330,340が形成されている。拡散防止膜320,330,340は、例えばSiCN、SiC、又はSiNにより形成される。
【0027】
本実施形態によっても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0028】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。たとえば、実施形態において、バリアメタル膜およびCu膜の熱処理はCu膜を形成する工程とCMPを行う工程との間に行うことを例示した。しかしながら、バリアメタル膜およびCu膜の熱処理は半導体装置の製造工程において行われていればよい。この場合もバリアメタル膜中のTiとTaとの比率は、バリアメタル成膜に使用したターゲット中に含まれるTiとTaとの比率とほぼ同じとなる。
【0029】
(実施例)
第1の実施形態で説明した方法において、バリアメタル膜3中のTiの割合を変えたCu配線4をそれぞれ用意し、Cu配線4の実効抵抗を測定した。図3にその結果を示す。Tiの割合は、0、4、8、12、16、20at%とした。熱処理の温度は、350℃とした。
【0030】
図3で示すように、バリアメタル膜3中のTiの割合を16at%から12at%に小さくすることでCu配線4の抵抗が218(mΩ/square)から204(mΩ/square)にまで低減することができた。
【0031】
バリアメタル膜3とCu配線4との密着性試験を行った結果、バリアメタル膜3中のTiの割合を0.1at%以上とすることで良好な密着性が得られた。バリアメタル膜3中のTiの割合を3at%以上とすることで、さらにより良好な密着性が得られた。
【0032】
バリアメタル膜3のCuのバリア性を調べた結果、バリアメタル膜3中のTiの割合を0.1at%以上14at%以下とすることでバリア性は良好であった。また、バリアメタル膜3中のTiの割合を0.1at%以上10at%以下とすることでより良好なバリア性が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するである。
【図2】実施の形態に係る半導体装置を示す模式的な断面図である。
【図3】銅配線の配線抵抗の結果を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
2 絶縁膜
3 バリアメタル膜
4 Cu配線
5 溝
10 基板
20 トランジスタ
30 層間絶縁膜
40 Cu膜
110 絶縁層
120 絶縁層
130 絶縁層
140 絶縁層
150 絶縁層
210 Cu配線
220 Cu配線
230 Cu配線
240 Cu配線
250 Cu配線
212 バリアメタル膜
222 バリアメタル膜
232 バリアメタル膜
242 バリアメタル膜
252 バリアメタル膜
310 拡散防止膜
320 拡散防止膜
330 拡散防止膜
340 拡散防止膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁膜と、
前記絶縁膜に形成された溝と、
前記溝の側壁及び底面に形成された、チタンとタンタルとの合金からなるバリアメタル膜と、
前記バリアメタル膜に積層され、前記溝の中に位置する銅配線と、
を有し、
前記バリアメタル膜のチタン濃度が0.1at%以上14at%以下である半導体装置。
【請求項2】
前記バリアメタル膜のチタン濃度が0.1at%以上10at%以下である請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
半導体基板上に絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜に溝を形成する工程と、
前記溝の側面および底面に、それぞれ、チタンとタンタルとの合金からなるバリアメタル膜を形成する工程と、
前記溝に銅配線を埋め込む工程と、
を含み、
前記バリアメタル膜のチタン濃度が0.1at%以上14at%以下である半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記バリアメタル膜のチタン濃度が0.1at%以上10at%以下である請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記溝に前記銅配線を埋め込む前記工程の後に前記バリアメタル膜に熱処理を行う工程を含む請求項3または4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
250℃以上400℃以下で前記熱処理を行う請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
銅配線にバリアメタル膜を形成するためのスパッタリング装置のターゲットであって、
タンタルおよびチタンから構成され、前記チタンを0.1at%以上14at%以下で含有するターゲット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−123586(P2010−123586A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−292909(P2008−292909)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】