説明

半導体装置およびその製造方法ならびに電子装置

【課題】 熱的安定性と信頼性を両立し、さらに静電破壊耐量を向上したHBTを備えた半導体装置を提供する。
【解決手段】 化合物半導体からなる基板の主面上に、順に形成されたサブコレクタ層、コレクタ層、ベース層4およびエミッタ層5、ならびにコレクタ層4と電気的に接続されたコレクタ電極、ベース層4と電気的に接続されたベース電極、エミッタ層5上に形成され、エミッタ層5と電気的に接続されたエミッタメサ層6M、およびエミッタメサ層6Mと電気的に接続されたエミッタ電極13を備えたHBTであって、このエミッタメサ層6Mが、n型GaAs層からなる半導体層6と、半導体層6上のn型GaAs層からなる高濃度半導体層6Bと、高濃度半導体層6B上のn型InGaAs層からなるバラスト抵抗層7とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造技術に関し、特に、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(以下、HBT(Hetero-junction Bipolar Transistor)と称する)に適用して有効な技術に関するものであり、さらにはそれを用いた電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信機器の需要の急成長に伴い、通信機器に用いられる電力増幅器の研究開
発が盛んに行われている。移動体通信機用電力増幅器に用いられる半導体トランジスタと
してはHBT、電界効果トランジスタ、シリコン(Si)−MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などがある。この中でHBTは、入出力特性の線形性にすぐれていること、正電源のみで動作し、負電源発生回路・部品が不要であること、出力電力密度が高く、チップ面積が小さくて済むため省スペースかつ低コストであることなどの特徴を有する。このため、移動体通信機用の電力増幅器向けトランジスタとして中心的に用いられている。
【0003】
しかし、HBTにおいては熱暴走と呼ばれる熱起因の不安定動作現象が存在するため、その動作安定化のためにいわゆるバラスト抵抗と呼ばれる安定化抵抗が用いられる。その実現のための手段としてInGaPエミッタ層上にAlGaAsバラスト抵抗層を用いた技術が、再公表特許WO98/53502号、第1表に示されている(特許文献1)。
【特許文献1】WO98/53502号公報(第1表)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、無線通信機器に適用されるRF(Radio Frequency)電力増幅器モジュール(電子装置)を開発している。この開発過程において本発明者らは、RF電力増幅器モジュール用のHBTに関して2つの課題を見出した。
【0005】
まず1つめの課題は、これまでの技術には、例えば前記WO98/53502号公報にて示されたような技術には、HBTに通電に対する信頼性に難点があることを見出した。すなわち、前記AlGaAsバラスト抵抗層を有する構造のHBTでは通電中の特性劣化が著しいことを見出した。
【0006】
そこで、本発明者らは、バラスト抵抗層を含む構造のHBTが通電により特性劣化する原因について検討するために図23、図24に示すようなそれぞれ異なる断面構造を有するHBTを作製して、それらHBTの信頼性比較を行った。
【0007】
図23は、本発明者らが検討したバラスト抵抗層を含む構造のHBTの概略断面図である。半絶縁性GaAs層からなる基板101の上にn型GaAs層からなるサブコレクタ層102、n型GaAs層からなるコレクタ層103、p型GaAs層からなるベース層104、n型InGaP層からなるエミッタ層105、n型AlGaAs層からなるバラスト抵抗層107、n型GaAs層からなるコンタクト層108、n型InGaAs層からなるコンタクト層109を順次積層した層構造から構成されている。図23の中で111、112、113はそれぞれ、コレクタ電極、ベース電極、エミッタ電極である。
【0008】
図24は、図23で示した構造のHBTとの比較のために本発明者らが検討したバラスト抵抗層を含まない構造のHBTの概略断面図である。半絶縁性GaAs層からなる基板101の上にn型GaAs層からなるサブコレクタ層102、n型GaAs層からなるコレクタ層103、p型GaAs層からなるベース層104、n型InGaP層からなるエミッタ層105、n型GaAs層からなる半導体層106、n型GaAs層からなるコンタクト層108、n型InGaAs層からなるコンタクト層109を順次積層した層構造から構成されている。図24の中で111、112、113はそれぞれ、コレクタ電極、ベース電極、エミッタ電極である。
【0009】
図23、図24で示したようなHBTに対してコレクタ電流密度40kA/cm、接合温度210℃の同一条件にて通電試験を300時間実施したところ、図23で示したエミッタ層105上にバラスト抵抗層107を含む構造のHBTでは試験を施した20個のHBT全てが劣化した。これに対して、図24で示したバラスト抵抗層を含まない構造のHBTにおいては、20個のHBTに対して通電試験を行ったが劣化したHBTは存在しなかった。
【0010】
上記信頼性比較の結果から、InGaP層からなるエミッタ層の直上にAlGaAs層からなるバラスト抵抗層を有するHBTの素子寿命が短い理由は以下の様に考えられる。一般に空乏層内であれば中性領域に比べ再結合中心での正孔と電子の再結合が発生し易いことから、ベースから注入された正孔は概ね、エミッタの空乏層内で再結合すると考えられる。またAlGaAsには、DXセンターなどの深い不純物準位が多く存在し、それが非発光再結合中心として作用することが考えられる。これらから、p型GaAs層からなるベース層からn型InGaP層からなるエミッタ層側に逆注入された正孔が拡散によりAlGaAs層からなるバラスト抵抗層にまで到達すると、拡散して来た正孔がDXセンターなどの不純物準位を介して電子と再結合し、この時放出されたエネルギーで格子欠陥が増殖して素子劣化に至ると考えられる。すなわち、加速的に再結合電流が増えるため、ベース電流が増えることによるhFEが低下(劣化)すると考えられる。
【0011】
したがって、HBTの通電に対する信頼性を向上するには、DXセンターなどの再結合中心が多いAlGaAs層からなるバラスト抵抗層を空乏化させないことが有効であると考える。
【0012】
次に2つめの課題は、本発明者らが検討した図25に示すような構造のHBTにおいてベース−エミッタ接合(以下、B−E接合と称する)が破壊することを見出した。
【0013】
図25は、本発明者らが検討した、バラスト抵抗層と、そのバラスト抵抗層下の半導体層とを含む構造のHBTの要部を示す概略断面図である。半絶縁性GaAs層からなる基板101の上にn型GaAs層からなるサブコレクタ層102、n型GaAs層からなるコレクタ層103、p型GaAs層からなるベース層104、n型InGaP層からなるエミッタ層105、n型GaAs層からなる半導体層6、n型AlGaAs層からなるバラスト抵抗層107、n型GaAs層からなるコンタクト層108、n型InGaAs層からなるコンタクト層109を順次積層した層構造から成っている。図25の中で111、112、113はそれぞれ、コレクタ電極、ベース電極、エミッタ電極である。
【0014】
図25で示したようなHBTに例えば静電気により発生する過剰な電圧を印加したところ、B−E接合で破壊(以下、静電破壊と称する)が起こることがあった。このような静電破壊に至るには、例えばエミッタ電極側から過剰な電子がベース側に流れ込みB−E接合が破壊することが考えられる。
【0015】
したがって、B−E接合の静電破壊を防止するためには、エミッタ電極側からの過剰分の電子をベース側に流れ込ませないようにすることが有効であると考える。
【0016】
また、図24に示したようなバラスト抵抗層を含まない構造のHBTに対し、図25に示すようなバラスト抵抗層と、その下の半導体層とを含む構造のHBTが、静電破壊し易いことを見出した。
【0017】
そこで、本発明者らは、図24および図25に示すような構造を有するHBTに対して要部観察を行った。図26、図27は、それぞれ図24、図25に示したHBTの要部の概略断面図である。ここで、図26および図27に示す符号106Mは、エミッタ層105とエミッタ電極113との間に形成された半導体層からなるエミッタメサ層である。すなわち、本願においては、エミッタメサ層とは、エミッタ層上に形成されたエミッタ電極までの半導体層であって、概ねエミッタ電極と同じ形状に加工された層とする。なお、エミッタ層とエミッタメサ層を含めてエミッタ層と称する場合もあるが、本願においては、エミッタ層は、ベース層と物理的に接してpn接合を形成し、かつ例えばnpnバイポーラトランジスタであれば電子をベースに向かって注入する機能を持つ半導体層とし、エミッタメサ層と区別する。したがって、図26ではエミッタメサ層106Mは、n型GaAs層からなる半導体層106、n型GaAs層からなるコンタクト層108およびn型InGaAs層からなるコンタクト層109から構成され、図27ではエミッタメサ層106Mは、n型GaAs層からなる半導体層6、n型AlGaAs層からなるバラスト抵抗層107、n型GaAs層からなるコンタクト層108およびn型InGaAs層からなるコンタクト層109から構成される。
【0018】
図26および図27を比較して解るように、図27で示したHBTのエミッタメサ層106Mの断面形状は、図26で示したHBTのそれが順テーパ状であるのに対し、くびれている。このくびれ部で電界集中が起こり、図24に示したようなバラスト抵抗層を含まない構造のHBTに対し、図25に示すようなバラスト抵抗層107と、その下の半導体層106とを含む構造のHBTが、静電破壊し易いと考えられる。
【0019】
例えばAlGaAs層からなるバラスト抵抗層107と、その下のGaAs層からなる半導体層106とを含むHBTのエミッタメサ層106Mの断面形状がくびれとなる理由としては、次のように考えられる。すなわち、エミッタメサ層106Mはエミッタ電極113をマスクにウエットエッチングにより形成されるのであるが、そのエッチング液として例えばリン酸:過酸化水素:水=1:2:40の混合液を用いた場合、エミッタメサ層106Mを構成するAlGaAsが、GaAsよりエッチレートが大きいためにくびれが起こるものと考えられる。しかしながら、例えばAlGaAs層からなるバラスト抵抗層は、上述したように、熱起因の不安定動作を安定させるために必要不可欠である。
【0020】
したがって、HBTの静電破壊に対する信頼性を向上するには、上述のくびれ部で電界集中を起こりにくくすることが有効であると考える。
【0021】
本発明の目的は、熱的安定性と信頼性を両立し、さらに静電破壊耐量を向上したHBTを備えた半導体装置およびその製造技術を提供することにある。
【0022】
また本発明の他の目的は、熱的安定性と信頼性を両立し、さらに静電破壊耐量を向上したHBTを備えた電力増幅器を有する電子装置を提供することにある。
【0023】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0025】
本発明による半導体装置は、化合物半導体からなるバイポーラトランジスタを含む半導体装置であって、前記バイポーラトランジスタが、基板と、前記基板の主面上に形成されたコレクタ層と、前記コレクタ層上に形成されたベース層と、前記ベース層上に形成されたInGaP層からなるエミッタ層と、前記コレクタ層と電気的に接続されたコレクタ電極と、前記ベース層と電気的に接続されたベース電極と、前記エミッタ層上に形成され、前記エミッタ層と電気的に接続されたエミッタメサ層と、前記エミッタメサ層と電気的に接続されたエミッタ電極とを有し、前記エミッタメサ層が、第1半導体層と、前記第1半導体層上の第2半導体層と、前記第2半導体層上に形成され、前記第2半導体層よりも比抵抗の大きい半導体層からなるバラスト抵抗層とを有し、前記第2半導体層のキャリア濃度は、前記第1半導体層のキャリア濃度以上である。
【0026】
また、本発明による半導体装置の製造方法は、化合物半導体からなるバイポーラトランジスタを含む半導体装置の製造方法であって、前記バイポーラトランジスタが、基板と、前記基板の主面上に形成されたコレクタ層と、前記コレクタ層上に形成されたベース層と、前記ベース層上に形成されたInGaP層からなるエミッタ層と、前記コレクタ層と電気的に接続されたコレクタ電極と、前記ベース層と電気的に接続されたベース電極と、前記エミッタ層上に形成され、前記エミッタ層と電気的に接続されたエミッタメサ層と、前記エミッタメサ層と電気的に接続されたエミッタ電極とを有し、前記エミッタ電極をマスクとしたウエットエッチングにより、前記エミッタメサ層の側面部を順テーパ状、または、くびれ状に形成する。
【0027】
さらに、本発明による電子装置は、電力増幅器を含む電子装置であって、前記電力増幅器は、化合物半導体からなる1または複数のバイポーラトランジスタから構成され、前記バイポーラトランジスタが、基板と、前記基板の主面上に形成されたコレクタ層と、前記コレクタ層上に形成されたベース層と、前記ベース層上に形成されたInGaP層からなるエミッタ層と、前記コレクタ層と電気的に接続されたコレクタ電極と、前記ベース層と電気的に接続されたベース電極と、前記エミッタ層上に形成され、前記エミッタ層と電気的に接続されたエミッタメサ層と、前記エミッタメサ層と電気的に接続されたエミッタ電極とを有し、前記エミッタメサ層が、第1半導体層と、前記第1半導体層上の第2半導体層と、前記第2半導体層上に形成され、前記第2半導体層よりも比抵抗の大きい半導体層からなるバラスト抵抗層とを有し、前記第2半導体層のキャリア濃度は、前記第1半導体層のキャリア濃度以上である。
【発明の効果】
【0028】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0029】
熱的安定性と信頼性を両立し、さらに静電破壊耐量が向上するHBTを備えた半導体装置を提供することができる。
【0030】
また、熱的安定性と信頼性を両立し、さらに静電破壊耐量が向上するHBTを備えた半導体装置を有する電子装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0032】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態で示す半導体装置の一例として、複数のHBTから構成される大電力用マルチフィンガーHBTを備えた半導体装置を図1〜図3により説明する。図1は半導体装置の概略平面図であり、エミッタ配線16を透視した状態が示されている。図2は図1のA−A’線における半導体装置の概略断面図である。図3は図1における半導体装置の要部の概略断面図である。本実施の形態では、複数のHBTから構成される半導体装置を示すが、1つのHBTを備えた半導体装置であっても良い。なお、1つのHBT(以下、基本HBTと称する)のエミッタ面積は108μmある。
【0033】
例えば半絶縁性GaAsの化合物半導体からなる基板1に、例えばn型GaAs層からなるサブコレクタ層(Si濃度5×1018cm−3、膜厚0.6μm)2が形成される。このサブコレクタ層2の上部に、例えばn型GaAs層からなるコレクタ層(Si濃度1×1016cm−3、膜厚1.0μm)3、例えばp型GaAs層からなるベース層(C濃度4×1019cm−3、膜厚150nm)4、例えばn型InGaP層からなるエミッタ層(InPモル比0.5、Si濃度3×1017cm−3、膜厚30nm)5の各層が形成される。このエミッタ層5を介して、ベース電極12が配置される。
【0034】
他方、エミッタ層5上には、エミッタ層5と電気的に接続されたエミッタメサ層6Mが形成される。このエミッタメサ層6Mは、例えばn型GaAs層からなる半導体層(Si濃度3×1017cm−3、膜厚90nm)6、例えばn型GaAs層からなる高濃度半導体層(Si濃度3×1018cm−3、膜厚30nm)6B、例えばn型AlGaAs層からなるバラスト抵抗層(AlAsモル比0.33、Si濃度1×1017cm−3、膜厚120nm)7、例えばn型GaAs層からなるコンタクト層(Si濃度5×1018cm−3、膜厚50nm)8、例えばn型InGaAs層からなるコンタクト層(InAsモル比0.5、Si濃度1×1019cm−3、膜厚50nm)9から構成される。
【0035】
ここで、バラスト抵抗層7は、例えばn型AlGaAs層からなるバラスト抵抗層7/(n型GaAs層からなる高濃度半導体層6B/)n型GaAs層からなる半導体層6/n型InGaP層からなるエミッタ層5の構造において、(n型GaAs層からなる高濃度半導体層6B/)n型GaAs層からなる半導体層6より比抵抗の高い半導体層である。
【0036】
そして、エミッタメサ層6M上には、エミッタメサ層6Mと電気的に接続されたエミッタ電極13が設けられる。また、サブコレクタ層2上で、前記コレクタ層3の両側部に対向して、コレクタ電極11が形成される。図1に示すように、平面的構成は、コレクタ電極11がエミッタ電極13を囲う形態、すなわちコレクタ領域がエミッタ領域を囲う形態となっている。
【0037】
ここで、エミッタメサ層6Mは、エミッタ層5上に形成されたエミッタ電極13までの半導体層であって、概ねエミッタ電極13と同じ形状に加工された半導体層である。
【0038】
前記コレクタ電極11、ベース電極12、エミッタ電極13の具体例を示すならば、各々AuGe(膜厚60nm)/Ni(膜厚10nm)/Au(膜厚200nm)を積層して成るコレクタ電極11、Ti(膜厚50nm)/Pt(膜厚50nm)/Au(膜厚200nm)を積層して成るベース電極12、WSi(Siモル比0.3、膜厚0.3μm)エミッタ電極13である。また、図1における符号10は電極と配線とを電気的に接続するコンタクトであり、符号14、15、16はそれぞれコレクタ配線、ベース配線、エミッタ配線であり、符号17、18、19はHBT外部との電気的接続のための金属パッドである。また、図2における符号20、21、22は、例えば酸化シリコンなどからなる層間絶縁膜である。
【0039】
ところで、例えばAlGaAs層からなるバラスト抵抗層7は抵抗体として動作することが必要であり、量子力学的なトンネル効果を発現しないためにその厚さは10nm以上であることが必要である。AlGaAs層からなるバラスト抵抗層7の厚さは、量子力学的なトンネル効果を発現せず且つその抵抗体としての特性の要請に応じて定められる。その値は200nm程度をも用い得る。また、n型GaAs層からなる半導体層6およびn型GaAs層からなる高濃度半導体層6Bは、n型InGaP層からなるエミッタ層5とn型AlGaAs層からなるバラスト抵抗層7との間の、いわゆる半導体層としての役割を担っている。また、本実施例ではn型AlGaAs層からなるバラスト抵抗層のAlAsモル比が0.33の場合を示したが、零以上であれば良い。
【0040】
本実施の形態にて示した基本HBT20個をコレクタ電流密度40kA/cm、接合温度210℃の条件にて通電試験を実施したところ、良好な信頼性が確認できた。この理由について以下に考察する。
【0041】
n型InGaP層からなるエミッタ層5、n型GaAs層からなる半導体層6およびn型GaAs層からなる高濃度半導体層6Bをn型GaAsと近似すると、エミッタ層5、半導体層6および高濃度半導体層6Bのキャリア濃度が、例えば3×1017cm−3では、B−E接合のエミッタ側に、その接合面から約80nmの空乏層が伸びると考えることができる(図3における符号A1は、B−E接合の空乏化領域である)。一方、エミッタ層5上に形成されているエミッタメサ層6Mの表面(側面)では、表面ポテンシャルにより空乏化し(図3における符号A2は、表面の空乏化領域である)、この表面の空乏化領域A2の表面トラップ準位で再結合が発生し、再結合電流が流れる。したがって、バラスト抵抗層7の表面領域を、B−E接合面から離す必要がある。
【0042】
この結果、エミッタ層5、半導体層6および高濃度半導体層6Bのキャリア濃度が、概ね3×1017cm−3では、空乏層の伸び80nmの2〜3倍程度以上、B−E接合面からバラスト抵抗層7を引き離すのが好ましい。すなわち、B−E接合面からバラスト抵抗層7に至る半導体層6または高濃度半導体層6Bの面濃度(シートキャリア濃度)Nsを、3×1017cm−3×80nm×3倍=約7×1012cm−2以上にするのが概ねの目安となる。高濃度半導体層6Bの厚さ、キャリア濃度をTH、NH、半導体層6の厚さ、キャリア濃度をTL、NLおよびエミッタ層5の厚さ、キャリア濃度をTI、NIとすると、
Ns=TH×NH+TL×NL+TI×NI>7×1012cm−2 (1)
の関係が目安となる。
【0043】
一方、半導体層6の厚さTLと、高濃度半導体層6Bの厚さTHは、エミッタメサ層6Mの厚さを薄くする必要があるため、それぞれの厚さも薄くするのが好ましい。なぜならエミッタメサ層6Mが厚い場合は、エミッタ上の配線の形成が困難になり易くなるからである。図4は本発明者らが検討したHBTを備えた半導体装置の概略断面図であり、エミッタメサ層6Mが厚い状態を示している。
【0044】
図4に示すように、リフトオフ法で配線を加工する場合、エミッタの配線16がエミッタメサ層6Mの段差部で断線するもしくは薄くなり問題となる。またAu配線をスパッタエッチにより加工する場合、エミッタ層5の段差部で配線の加工をするとエッチ残りし、ショートし易くなる問題も起こる。ところでコレクタ層3は、例えばテーパをつけて加工する方法が適用できるので、上部の配線が断切れする問題を回避できる。しかしながら、この方法はエミッタメサ層6Mには適用できない。なぜならテーパをつけて加工するとエミッタメサ層6Mとエミッタ層5の接合面の長さLeが大きくなり、また加工の制御が困難となるからである。すなわち、この接合面の長さLeでB−E接合の大きさが決まるため、HBTの主要な特性がばらついてしまうからである。なお、イオン打ち込みによるアイソレーションにより平坦に形成できる可能性もあるが、エミッタメサ層6M部に欠陥が入り、HBTの信頼性が低下するので適用できない。
【0045】
したがって、半導体層6の厚さTLと、高濃度半導体層6Bの厚さTHは、それぞれ厚さを薄くするのが好ましく、概ね
TH+TL<150nm (2)
の関係が成立することが好ましい。
【0046】
また、半導体層6の厚さTLが薄すぎると、B−E接合の耐圧Bvcboが低下するため、半導体層6の厚さTLは、
TL≧50nm (3)
が好ましい。なお、半導体層6の厚さTLが例えば50nm程度のとき、耐圧Bvcboは7V程度である。
【0047】
本実施の形態では、高濃度半導体層6Bの厚さTL=30nm程度、キャリア濃度NH=3×1018cm−3、半導体層6の厚さTL=90nm程度、キャリア濃度NL=3×1017cm−3およびエミッタ層5の厚さTI=30nm、キャリア濃度NI=3×1017cm−3することで、面濃度Ns=1.3×1011cm−2を含め、式(1)、(2)、(3)すべてを満たしている。したがって、バラスト抵抗層7下部に、高濃度の半導体層である高濃度半導体層6Bを挿入して、B−E接合からの空乏層の伸びを、完全にバラスト抵抗層7まで達しないようにすることで、バラスト抵抗層7での再結合電流を無くし、通電信頼度の向上を図ることができる。なお、本実施の形態では、エミッタ層5とバラスト抵抗層7との間に、半導体層6および高濃度半導体層6Bを挿入しているが、半導体層6は挿入せずにn型GaAs層からなる高濃度半導体層(Si濃度3×1018cm−3、膜厚100nm)6Bのみの構造でも良い。
【0048】
また、本実施の形態で示したHBTでは、順方向の静電破壊耐圧が、図25に示した高濃度半導体層を含まない構造のHBTよりも10V程度高い30V程度に向上した。静電破壊に至るには、例えばエミッタ電極側から過剰な電子がベースに流れ込みB−E接合が破壊する。したがって、エミッタメサ層6Mに高濃度の半導体層である高濃度半導体層6Bを挿入することによりB−E接合容量が増加し、過剰な電荷の一部を高濃度の半導体層である高濃度半導体層6Bで吸収し、B−E接合の破壊を緩和することができると考えられる。
【0049】
以上より、本実施の形態で示したHBTは、熱的安定性と信頼性を両立し、さらに静電破壊についても良好なHBTであることが確認できた。
【0050】
次に、本実施の形態で示す大電力用マルチフィンガーHBTを備えた半導体装置の製造技術を図5〜図13により説明する。図5〜図12は、本実施の形態における半導体装置の製造工程中の概略断面図である。図13は、本発明者らが検討した半導体装置の要部を示す概略断面図である。なお、図12は、図1のA−A’線における半導体装置の概略断面図である。
【0051】
図5に示すように、半絶縁性GaAs基板からなる基板1上に、n型GaAs層からなるサブコレクタ層(Si濃度5×1018cm−3、膜厚0.6μm)2、n型GaAs層からなるコレクタ層(Si濃度1×1016cm−3、膜厚1.0μm)3、p型GaAs層からなるベース層(C濃度4×1019cm−3、膜厚150nm)4、n型InGaP層からなるエミッタ層(InPモル比0.5、Si濃度3x1017cm−3、膜厚30nm)5を、有機金属気相エピタキシー法により成長する。
【0052】
続いて、エミッタ層5上に、n型GaAs層からなる半導体層(Si濃度3×1017cm−3、膜厚90nm)6、n型GaAs層からなる高濃度半導体層(Si濃度3×1018cm−3、膜厚30nm)6B、n型AlGaAs層からなるバラスト抵抗層(AlAsモル比0.33、Si濃度1×1017cm−3、膜厚120nm)7、n型GaAs層からなるコンタクト層(Si濃度1×1019cm−3、膜厚50nm)8、n型InGaAs層からなるコンタクト層(InAsモル比0.5、Si濃度1×1019cm−3、膜厚50nm)9を有機金属気相エピタキシー法により成長する。その後、高周波スパッタ法を用いてWSi(Siモル比0.3、膜厚0.3μm)層をウエハ全面に堆積する。
【0053】
次に、図6に示すように、このWSi層をホトリソグラフィー及びCFを用いたドライエッチングにより加工し、エミッタ電極13を形成する。ここで、エミッタ電極13は、図1で示したように、平面形状が矩形形状で、その長手方向がウエハの[01−1]方向となるように形成する。
【0054】
次に、図7に示すように、n型InGaAs層からなるコンタクト層9、n型GaAs層からなるコンタクト層8、n型AlGaAs層からなるバラスト抵抗層7、n型GaAs層からなる高濃度半導体層6Bおよびn型GaAs層からなる半導体層6を所望の形状に加工してエミッタ領域を形成する。加工方法の例は次の通りである。エミッタ電極13をマスクとして、エッチング液(エッチング液の組成例、リン酸:過酸化水素水:水=1:2:40)を用いたウエットエッチングによりn型InGaAs層からなるコンタクト層9、n型GaAs層からなるコンタクト層8、n型AlGaAs層からなるバラスト抵抗層7、n型GaAs層からなる高濃度半導体層6Bおよびn型GaAs層からなる半導体層6の不要領域を除去する。すなわち、エミッタメサ層6Mを形成する。なお、エミッタ電極13の長手方向がウエハの[01−1]方向となるように形成されているので、エミッタメサ層6Mの長手方向もウエハの[01−1]方向となるように形成されることとなる。
【0055】
次に、図8に示すように、通例のリフトオフ法を用いて、エミッタ層5を貫通してベース層4上に、Ti(膜厚50nm)/Pt(膜厚50nm)/Au(膜厚200nm)ベース電極12を形成する。
【0056】
次に、図9に示すように、ホトリソグラフィー及びウエットエッチングにより、n型InGaP層からなるエミッタ層5、p型GaAs層からなるベース層4、及びn型GaAs層からなるコレクタ層3の各所望領域を除去して、n型GaAs層からなるサブコレクタ層2を露出させてベース領域を形成する。エッチング液は以下の通りである。n型InGaP層からなるエミッタ層5をエッチングする場合のエッチング液としては塩酸を用い、p型GaAs層からなるベース層4及びn型GaAs層からなるコレクタ層3をエッチングする場合のエッチング液の組成例は、リン酸:過酸化水素:水=1:2:40である。
【0057】
次に、図10に示すように、通例のリフトオフ法によりコレクタ電極11を形成し、350℃にて30分間アロイを施す。コレクタ電極11の構成は、AuGe(膜厚60nm)/Ni(膜厚10nm)/Au(膜厚200nm)の積層体である。
【0058】
次に、図11に示すように、CVD法により形成した例えば酸化シリコン膜からなる層間絶縁膜20のエミッタ電極13およびコレクタ電極11上を開孔し、金属膜を形成する。このエミッタ電極13上の金属膜は、コンタクト10を形成し、コレクタ電極11上の金属膜は、コレクタ配線14を形成する。
【0059】
次に、図12に示すように、CVD法により形成した例えば酸化シリコン膜からなる層間絶縁膜21のコンタクト10上を開孔し、金属膜を形成する。このコンタクト10上の金属は、エミッタ配線16を形成する。その後、CVD法により層間絶縁膜22を形成して、大電力用マルチフィンガーHBTを備えた半導体装置が完成する。
【0060】
本実施の形態では、エミッタ層5とバラスト抵抗層7との間に、高濃度半導体層6Bを挿入することで、B−E接合から伸びた空乏層によりバラスト抵抗層を空乏化させないこと、およびエミッタ電極側からの過剰分の電子をベース側に流れ込ませないこととしている。したがって、熱的安定性と信頼性を両立し、さらに静電破壊についても良好なHBTが得られることとなる。
【0061】
ところで、本実施の形態では、エミッタメサ層6Mの長手方向がウエハの[01−1]方向となるようにHBTが形成されているが、エミッタメサ層6Mの長手方向がウエハの[01−1]方向以外の方向となるように形成したHBTについて検討する。図13は本発明者らが検討した半導体装置の要部の概略断面図である。エミッタメサ層6Mの長手方向がウエハの[01−1]方向となるようにHBTでは、図3にも示したように、エミッタメサ層6Mの側面部が比較的なだらかなくびれ形状となっている。一方、エミッタメサ層6Mの長手方向がウエハの[01−1]方向以外の、例えば[011]方向となるように、HBTが形成された場合、図13に示すように、エミッタメサ層6Mの側面部が図3のそれよよりも比較的急峻なくびれ状となっている。このような急峻な形状のエミッタメサ層6Mでは、応力および電界が集中すると考えられる。
【0062】
したがって、AlGaAs層からなるバラスト抵抗層では、応力集中による格子欠陥が生じる。仮に、p型GaAs層からなるベース層4からn型InGaP層からなるエミッタ層5側に逆注入された正孔が拡散によりAlGaAs層からなるバラスト抵抗層にまで到達すると、拡散して来た正孔がDXセンターを介して電子と再結合し、この時放出されたエネルギーで格子欠陥が増殖して素子劣化に至ると考えられる。また、AlGaAs層からなるバラスト抵抗層では、電界集中によりHBTが静電破壊し易くなると考えられる。
【0063】
しかしながら、上述したようにエミッタメサ層6Mの長手方向がウエハの[01−1]方向となるようにエミッタメサ層6Mを形成することで、エミッタメサ層6Mの側面部を比較的なだらかなくびれ形状にし、エミッタメサ層6Mの側面部での応力集中および電界集中を緩和することができ、熱的安定性と信頼性を両立し、さらに静電破壊耐量が向上したHBTを得ることができる。
【0064】
(実施の形態2)
前記実施の形態1では、バラスト抵抗層にAlGaAsを用いたが、本実施の形態では、バラスト抵抗層にAlGaInP、または、GaInAsPを用いたHBTを備えた半導体装置の一例として説明する。なお、前記実施の形態1と重複する内容についての説明は省略する。
【0065】
本実施の形態で示す半導体装置は、前記実施の形態1で図2を用いて説明したように、例えばp型GaAs層からなるベース層4上には、例えばn型InGaP層からなるエミッタ層5と、エミッタ層5と電気的に接続されたエミッタメサ層6Mと、エミッタメサ層6Mと電気的に接続されたエミッタ電極13とが形成されている。
【0066】
このエミッタメサ層6Mは、前記実施の形態1で図3を用いて説明したように、エミッタ層5上に、例えばn型GaAs層からなる半導体層6、例えばn型GaAs層からなる高濃度半導体層6B、例えばn型AlGaInP、または、n型GaInAsP層からなるバラスト抵抗層7、例えばn型GaAs層からなるコンタクト層8、例えばn型InGaAs層からなるコンタクト層9の順で形成されている。
【0067】
このエミッタメサ層6Mの加工方法は、前記実施の形態1で図7を用いて説明したように、エミッタ電極13をマスクとして、エッチング液を用いたウエットエッチングによりn型InGaAs層からなるコンタクト層9、n型GaAs層からなるコンタクト層8、n型AlGaInP、または、n型GaInAsP層からなるバラスト抵抗層7、n型GaAs層からなる高濃度半導体層6Bおよびn型GaAs層からなる半導体層6の不要領域を除去する。ここで、バラスト抵抗層7がn型AlGaInP層からなる場合、エッチング液は硫酸:過酸化水素:水の混合液を用い、またバラスト抵抗層7がn型GaInAsP層からなる場合、エッチング液は塩酸:硝酸:水の混合液を用いる。なお、前記実施の形態1で図3を用いて説明したように、本実施の形態で示すエミッタメサ層6Mも、その断面形状がなだらかなくびれ形状となる。
【0068】
前記実施の形態1のHBTは、バラスト抵抗層7にAlGaAsを用いたが、本実施の形態に示すように、バラスト抵抗層7にAlGaInP、または、GaInAsPを用いたHBTでも、同等の特性を得ることができる。
【0069】
なお、本実施の形態では、高濃度半導体層6Bがバラスト抵抗層7と半導体層6との間に挿入した場合を示すが、高濃度半導体層6Bが挿入されなくとも良い。しかしながら、前記実施の形態1で示したように、バラスト抵抗層7下部に、高濃度の半導体層である高濃度半導体層6Bを挿入することにより、B−E接合からの空乏層の伸びを、完全にバラスト抵抗層7まで達しないようにすることで、バラスト抵抗層7での再結合電流を無くし、通電信頼度の向上を図ることができる。また、エミッタメサ層6Mに高濃度の半導体層である高濃度半導体層6Bを挿入することにより、B−E接合容量が増加し、過剰な電荷の一部を高濃度の半導体層である高濃度半導体層6Bで吸収し、B−E接合の破壊を緩和することができる。
【0070】
(実施の形態3)
前記実施の形態1では、エミッタメサ層6Mがバラスト抵抗層7とその下の高濃度半導体層6Bとを含む場合を示したが、本実施の形態では、バラスト抵抗層7および高濃度半導体層6Bを含まない場合、および高濃度半導体層6Bのみ含まない場合のエミッタメサ層6Mを有するHBTを備えた半導体装置の一例として図14〜図18により説明する。なお、前記実施の形態1と重複する内容についての説明は省略する。
【0071】
図14は、本実施の形態の一例における半導体装置の要部の概略断面図である。図15は、本実施の形態の一例における半導体装置の製造工程中の概略平面図である。図16は、本発明者らが検討した半導体装置の要部の概略断面図である。図17は、本実施の形態の他の一例における半導体装置の要部の概略断面図である。図18は、本発明者らが検討した半導体装置の要部の概略断面図である。
【0072】
本実施の形態で示す半導体装置は、前記実施の形態1で図2を用いて説明したように、例えばp型GaAs層からなるベース層4上には、例えばn型InGaP層からなるエミッタ層5と、エミッタ層5と電気的に接続されたエミッタメサ層6Mと、エミッタメサ層6Mと電気的に接続されたエミッタ電極13とが形成されている。
【0073】
まず、バラスト抵抗層7および高濃度半導体層6Bを含まない場合について説明する。このエミッタメサ層6Mは、図14に示すように、エミッタ層5上に、例えばn型GaAs層からなる半導体層(Si濃度3×1017cm−3、膜厚90nm)6、例えばn型GaAs層からなるコンタクト層8、例えばn型InGaAs層からなるコンタクト層9の順で形成されている。なお、図14に示すように、本実施の形態で示すエミッタメサ層6Mは、その断面形状が順テーパ状となる。
【0074】
このように順テーパ状のエミッタメサ層6Mを形成するには、まず、図15に示すように、矩形形状のエミッタ電極13の長手方向がウエハ1Wの[01−1]方向となるように形成する。次いで、前記実施の形態1で図7を用いて説明したように、エミッタ電極13をマスクとして、エッチング液(リン酸:過酸化水素:水=1:2:40の混合液)を用いたウエットエッチングによりn型InGaAs層からなるコンタクト層9、n型GaAs層からなるコンタクト層8、n型GaAs層からなる半導体層6の不要領域を除去する。すなわち、エミッタ電極13の長手方向がウエハの[01−1]方向となるように形成されているので、エミッタメサ層6Mの長手方向もウエハの[01−1]方向となるように形成されることとなる。
【0075】
この場合に、図14に示したように、エミッタメサ層6Mの側面部が順テーパ状となる。なお、図15に示すように、エミッタ電極13すなわちエミッタメサ層6Mの長手方向がウエハ1Wの[01−1]方向以外の、例えば[011]方向となるように、HBTが形成された場合、図16に示すように、エミッタメサ層6Mの側面部が逆テーパ状となる。
【0076】
次に、高濃度半導体層6Bのみ含まない場合について説明する。エミッタメサ層6Mのコンタクト層8と半導体層6との間に、例えばn型AlGaAs層からなるバラスト抵抗層7を挿入した場合、エミッタメサ層6Mの長手方向がウエハの[01−1]方向となるようにエミッタメサ層6Mを形成すると、図17に示すように、エミッタメサ層6Mの側面部がなだらかなくびれ状となっている。一方、エミッタメサ層6Mのコンタクト層8と半導体層6との間に、例えばn型AlGaAs層からなるバラスト抵抗層7を挿入した場合、エミッタメサ層6Mの長手方向がウエハ1Wの[011]方向となるようにエミッタメサ層6Mを形成すると、図18に示すように、エミッタメサ層6Mの側面部が図17のそれよりも比較的急峻なくびれ状となっている。
【0077】
このエミッタメサ層6Mの長手方向がウエハ1Wの[01−1]方向となるように形成されたエミッタメサ層6Mを有するHBT(以下、順メサHBTを称する)と、エミッタメサ層6Mの長手方向がウエハ1Wの[011]方向となるように形成されたエミッタメサ層6Mを有するHBT(以下、逆メサHBTと称する)の通電信頼性試験を行った。なお、矩形形状したエミッタメサ層6Mの平面形状が、概ね4μm、28μm程度とした。
【0078】
その結果、逆メサHBTでは、100時間以下の短時間でhFEの低下が生じ、実用に耐えることができないことがわかった。一方、順メサHBTでは、100時間以上の信頼性試験に耐える良好な結果が得られた。
【0079】
このような結果は、急峻なくびれ状のエミッタメサ層6Mでは、応力が集中し、特に、AlGaAs層からなるバラスト抵抗層7で応力集中による格子欠陥が生じていると考えられる。仮に、p型GaAs層からなるベース層4からn型InGaP層からなるエミッタ層5側に逆注入された正孔が拡散によりAlGaAs層からなるバラスト抵抗層7にまで到達すると、拡散して来た正孔が応力集中による格子欠陥によりできた不純物準位を介して電子と再結合し、この時放出されたエネルギーでさらに格子欠陥が増殖し、この時放出されたエネルギーで格子欠陥が増殖して素子劣化に至ると考えられる。すなわち、加速的に再結合電流が増えるため、ベース電流が増えることによるhFEが低下(劣化)するものと考えられる。しかしながら、エミッタメサ層6Mの長手方向がウエハの[01−1]方向となるようにエミッタメサ層6Mを形成することで、図17に示したように、エミッタメサ層6Mの側面部を比較的なだらかなくびれ状にし、エミッタメサ層6Mの側面部での応力集中を緩和することで、バラスト抵抗層7には応力集中による格子欠陥の発生を抑制することができる。
【0080】
また、AlGaAs層からなるバラスト抵抗層7では、電界集中によりHBTが静電破壊し易くなると考えられる。しかしながら、上述したようにエミッタメサ層6Mの長手方向がウエハの[01−1]方向となるようにエミッタメサ層6Mを形成することで、エミッタメサ層6Mの側面部を比較的なだらかなくびれ状にし、エミッタメサ層6Mの側面部での電界集中を緩和することができる。
【0081】
以上より、本実施の形態で示したHBTは、熱的安定性と信頼性を両立し、さらに静電破壊についても良好なHBTであることが確認できた。
【0082】
(実施の形態4)
前記実施の形態1および3では、主にAlGaAs層からなるバラスト抵抗層を形成するために、そのエッチング液にリン酸:過酸化水素:水の混合液を用いた場合を示したが、本実施の形態では、エッチング液にリン酸:過酸化水素:エチレングリコールの混合液で形成したエミッタメサ層6Mを有するHBTを備えた半導体装置の一例として図19により説明する。なお、前記実施の形態1と重複する内容についての説明は省略する。
【0083】
本実施の形態で示す半導体装置は、前記実施の形態1で図2を用いて説明したように、例えばp型GaAs層からなるベース層4上には、例えばn型InGaP層からなるエミッタ層5と、エミッタ層5と電気的に接続されたエミッタメサ層6Mと、エミッタメサ層6Mと電気的に接続されたエミッタ電極13とが形成されている。図19は、本実施の形態の一例における半導体装置の要部の概略断面図である。
【0084】
このエミッタメサ層6Mは、図19に示すように、エミッタ層5上に、例えばn型GaAs層からなる半導体層6、例えばn型AlGaAs層からなるバラスト抵抗層7、例えばn型GaAs層からなるコンタクト層8、例えばn型InGaAs層からなるコンタクト層9の順で形成されている。
【0085】
このエミッタメサ層6Mの加工方法は、前記実施の形態1で図7を用いて説明したように、エミッタ電極13をマスクとして、エッチング液を用いたウエットエッチングによりn型InGaAs層からなるコンタクト層9、n型GaAs層からなるコンタクト層8、n型AlGaAs層からなるバラスト抵抗層7およびn型GaAs層からなる半導体層6の不要領域を除去する。ここで、エッチング液はリン酸:過酸化水素:エチレングリコールの混合液である。この場合、図19に示したようにエミッタメサ層6Mの側面部が順テーパ状となっている。
【0086】
さらに、エミッタメサ層6Mの長手方向がウエハの[01−1]方向とし、かつ、エッチング液をリン酸:過酸化水素:エチレングリコールの混合液で形成したエミッタメサ層6Mを有するHBTの通電信頼性試験を行ったところ、このHBTが、前記実施の形態3で示したエッチング液をリン酸:過酸化水素:水の混合液で形成したエミッタメサ層6Mを有する前記実施の形態3で示すHBTより、良好な信頼性結果が得られた。また、静電破壊強度も、前記実施の形態3で示したHBTより、良好な結果が得られた。
【0087】
このような結果より、エミッタメサ層6Mの長手方向がウエハの[01−1]方向とし、かつ、エッチング液をリン酸:過酸化水素:エチレングリコールの混合液でエミッタメサ層6Mを形成することで、より応力集中および電界集中が緩和されるものと考えられる。
【0088】
(実施の形態5)
本発明の実施の形態で示す電子装置の一例として、前記実施の形態1〜4で示した半導体装置を有する電子装置を図20〜図22により説明する。なお、本実施の形態では、半導体装置は、例えばMMIC(Microwave Monolithic Integrated Circuit)などの電力増幅器であり、電子装置は、例えば電力増幅器モジュールである。
【0089】
図20は、電力増幅器51のブロック構成図である。本例は、増幅段が2段構成の電力増幅器である。図中、24、25はそれぞれ第1の増幅回路、第2の増幅回路であり、又、符号26a、26b、26cは、それぞれ入力整合回路、段間整合回路、出力整合回路である。増幅される高周波信号は、高周波入力端子27から電力増幅器に入力され、上記整合回路26a、26b、26c、増幅回路24、25を介して増幅された後、高周波出力端子28から出力される。なお、上記第1の増幅回路24、第2の増幅回路25は、それぞれエミッタ面積108μmの基本HBTを10並列、60並列接続してなるマルチフィンガーHBTから構成されている。すなわち単位HBT各々のベース、エミッタ、及びコレクタが互いに接続され、並列接続とされている。
【0090】
図21、図22は、それぞれ電力増幅器モジュール63の実装形態を示す概略断面図及び概略平面図である。電力増幅器モジュール63は、その使用周波数が約500MHz以上であり、例えば使用周波数が約800MHz〜900MHzのGSM(Global System for Mobile Communication)方式、使用周波数が約1.8GHz〜1.9GHzのDCS(Digital Cellular System)方式、またはそれら2方式の両方に対応する送信用電力増幅器モジュールである。実装基板60に電力増幅器51、及び受動素子52が搭載される。符号54は導体層を示し、電力増幅器51との電気信号接続を構成する。この例では複数の実装基板60、61、及び62が積層されて用いられている。
【0091】
ここで、上記基本HBTは、例えば、半絶縁性GaAs基板からなる基板上に、n型GaAs層からなるサブコレクタ層(Si濃度5×1018cm−3、膜厚0.6μm)、n型GaAs層からなるコレクタ層(Si濃度1×1016cm−3、膜厚1.0μm)、p型GaAs層からなるベース層(C濃度4×1019cm−3、膜厚150nm)、n型InGaP層からなるエミッタ層(InPモル比0.5、Si濃度3×1017cm−3、膜厚30nm)、n型GaAs層からなる半導体層(Si濃度3×1017cm−3、膜厚90nm)、n型GaAs層からなる高濃度半導体層(Si濃度3×1018cm−3、膜厚30nm)、n型AlGaAs層からなるバラスト抵抗層(AlAsモル比0.33、Si濃度1×1017cm−3、膜厚120nm)、n型GaAs層からなるコンタクト層(Si濃度1×1019cm−3、膜厚50nm)、n型InGaAs層からなるコンタクト層(InAsモル比0.5、Si濃度1×1019cm−3、膜厚50nm)を具備したHBTである。すなわち、上記HBTは、熱的安定性と信頼性を両立し、さらに静電破壊耐量が向上したHBTである。したがって、このHBTを備えた電力増幅器は、大電流・高周波動作、さらに信頼性向上が要求される電力増幅器モジュール63に適しているといえる。
【0092】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0093】
例えば、前記実施の形態では、基板としてGaAs基板からなる化合物半導体を適用した場合について説明したが、InP(インジウムリン)基板からなる化合物半導体を提供しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、半導体装置を製造する製造業に幅広く利用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の実施の形態1における半導体装置の概略平面図である。
【図2】図1のA−A’線における半導体装置の概略断面図である。
【図3】実施の形態1における半導体装置の要部の概略断面図である。
【図4】本発明者らが検討した半導体装置の概略断面図である。
【図5】実施の形態1における半導体装置の製造工程中の概略断面図である。
【図6】図5に続く半導体装置の製造工程中の概略断面図である。
【図7】図6に続く半導体装置の製造工程中の概略断面図である。
【図8】図7に続く半導体装置の製造工程中の概略断面図である。
【図9】図8に続く半導体装置の製造工程中の概略断面図である。
【図10】図9に続く半導体装置の製造工程中の概略断面図である。
【図11】図10に続く半導体装置の製造工程中の概略断面図である。
【図12】図11に続く半導体装置の製造工程中の概略断面図である。
【図13】本発明者らが検討した半導体装置の要部の概略断面図である。
【図14】本発明の実施の形態3における半導体装置の要部の概略断面図である。
【図15】実施の形態3における半導体装置の製造工程中の概略平面図である。
【図16】本発明者らが検討した半導体装置の要部の概略断面図である。
【図17】本発明の実施の形態3における半導体装置の要部の概略断面図である。
【図18】本発明者らが検討した半導体装置の要部の概略断面図である。
【図19】本発明の実施の形態4における半導体装置の要部の概略断面図である。
【図20】本発明の実施の形態5における電力増幅器のブロック図である。
【図21】図20の電力増幅器を備えた電子装置の概略断面図である。
【図22】図21の電力増幅器を備えた電子装置の概略断面図である。
【図23】本発明者らが検討した半導体装置の概略断面図である。
【図24】本発明者らが検討した半導体装置の概略断面図である。
【図25】本発明者らが検討した半導体装置の概略断面図である。
【図26】本発明者らが検討した半導体装置の要部の概略断面図である。
【図27】本発明者らが検討した半導体装置の要部の概略断面図である。
【符号の説明】
【0096】
1 基板
1W ウエハ
2 サブコレクタ層
3 コレクタ層
4 ベース層
5 エミッタ層
6 半導体層
6B 高濃度半導体層
6M エミッタメサ層
7 バラスト抵抗層
8 コンタクト層
9 コンタクト層
10 コンタクト
11 コレクタ電極
12 ベース電極
13 エミッタ電極
14 コレクタ配線
15 ベース配線
16 エミッタ配線
17 パッド
18 パッド
19 パッド
20 層間絶縁膜
21 層間絶縁膜
22 層間絶縁膜
24 増幅回路
25 増幅回路
26a 入力整合回路
26b 段間整合回路
26c 出力整合回路
27 高周波入力端子
28 高周波出力端子
51 電力増幅器
52 受動素子
54 導体層
60 実装基板
61 実装基板
62 実装基板
63 電力増幅器モジュール
101 基板
102 サブコレクタ層
103 コレクタ層
104 ベース層
105 エミッタ層
106 半導体層
106M エミッタメサ層
107 バラスト抵抗層
108 コンタクト層
109 コンタクト層
111 コレクタ電極
112 ベース電極
113 エミッタ電極
A1 B−E接合の空乏化領域
A2 表面の空乏化領域
Le 長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物半導体からなるバイポーラトランジスタを含む半導体装置であって、
前記バイポーラトランジスタは、
基板と、
前記基板の主面上に形成されたコレクタ層と、
前記コレクタ層上に形成されたベース層と、
前記ベース層上に形成されたInGaP層からなるエミッタ層と、
前記コレクタ層と電気的に接続されたコレクタ電極と、
前記ベース層と電気的に接続されたベース電極と、
前記エミッタ層上に形成され、前記エミッタ層と電気的に接続されたエミッタメサ層と、
前記エミッタメサ層と電気的に接続されたエミッタ電極とを有し、
前記エミッタメサ層は、
第1半導体層と、
前記第1半導体層上の第2半導体層と、
前記第2半導体層上に形成され、前記第2半導体層よりも比抵抗の大きい半導体層からなるバラスト抵抗層とを有し、
前記第2半導体層のキャリア濃度は、前記第1半導体層のキャリア濃度以上であることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第2半導体層の厚さは、前記第1半導体層の厚さより薄いことを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1半導体層は、GaAs層からなり、
前記第2半導体層は、GaAs層からなることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記バラスト抵抗層は、AlGaAs層、AlInAs層、または、GaInAsP層のいずれかからなることを特徴とする請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
化合物半導体からなるバイポーラトランジスタを含む半導体装置であって、
前記バイポーラトランジスタは、
基板と、
前記基板の主面上に形成されたコレクタ層と、
前記コレクタ層上に形成されたベース層と、
前記ベース層上に形成されたInGaP層からなるエミッタ層と、
前記コレクタ層と電気的に接続されたコレクタ電極と、
前記ベース層と電気的に接続されたベース電極と、
前記エミッタ層上に形成され、前記エミッタ層と電気的に接続されたエミッタメサ層と、
前記エミッタメサ層と電気的に接続されたエミッタ電極とを有し、
前記エミッタメサ層は、
GaAs層からなる第1半導体層と、
前記第1半導体層上に形成され、前記第1半導体層よりも比抵抗の大きい半導体層からなるバラスト抵抗層とを含み、
前記基板の主面に平行な平面において前記エミッタメサ層は、前記基板の[01−1]方向の長さが、前記基板の[011]方向の長さより長いことを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
化合物半導体からなるバイポーラトランジスタを含む半導体装置であって、
前記バイポーラトランジスタは、
基板と、
前記基板の主面上に形成されたコレクタ層と、
前記コレクタ層上に形成されたベース層と、
前記ベース層上に形成されたInGaP層からなるエミッタ層と、
前記コレクタ層と電気的に接続されたコレクタ電極と、
前記ベース層と電気的に接続されたベース電極と、
前記エミッタ層上に形成され、前記エミッタ層と電気的に接続されたエミッタメサ層と、
前記エミッタメサ層と電気的に接続されたエミッタ電極とを有し、
前記エミッタメサ層は、
GaAs層からなる第1半導体層と、
前記第1半導体層上に形成され、前記第1半導体層よりも比抵抗の大きい半導体層からなるバラスト抵抗層とを含み、
前記エミッタメサ層の断面は、その側面部が、順テーパ状に形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
前記バラスト抵抗層は、AlGaAs層、AlInAs層、または、GaInAsP層のいずれかからなることを特徴とする請求項5記載の半導体装置。
【請求項8】
化合物半導体からなるバイポーラトランジスタを含む半導体装置の製造方法であって、
前記バイポーラトランジスタは、
基板と、
前記基板の主面上に形成されたコレクタ層と、
前記コレクタ層上に形成されたベース層と、
前記ベース層上に形成されたInGaP層からなるエミッタ層と、
前記コレクタ層と電気的に接続されたコレクタ電極と、
前記ベース層と電気的に接続されたベース電極と、
前記エミッタ層上に形成され、前記エミッタ層と電気的に接続されたエミッタメサ層と、
前記エミッタメサ層と電気的に接続されたエミッタ電極とを有し、
前記エミッタ電極をマスクとしたウエットエッチングにより、前記エミッタメサ層の側面部を順テーパ状、または、くびれ状に形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記エミッタメサ層は、
GaAs層からなる第1半導体層と、
前記第1半導体層上のGaAs層からなる第2半導体層と、
前記第2半導体層上に形成され、前記第2半導体層よりも比抵抗の大きい半導体層からなるバラスト抵抗層とを有し、
前記第2半導体層のキャリア濃度を、前記第1半導体層のキャリア濃度以上にすることを特徴とする請求項8記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記エミッタメサ層は、
GaAs層からなる第1半導体層と、
前記第1半導体層上に形成され、前記第1半導体層よりも比抵抗の大きい半導体層からなるバラスト抵抗層とを有し、
前記バラスト抵抗層は、AlGaAs層からなり、
リン酸:過酸化水素:水の混合液、または、リン酸:過酸化水素:エチレングリコールの混合液でウエットエッチングを行うことを特徴とする請求項8記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記エミッタメサ層は、
GaAs層からなる第1半導体層と、
前記第1半導体層上に形成され、前記第1半導体層よりも比抵抗の大きい半導体層からなるバラスト抵抗層とを有し、
前記バラスト抵抗層は、GaInAsP層からなり、
塩酸:硝酸:水の混合液でウエットエッチングを行うことを特徴とする請求項8記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記エミッタメサ層は、
GaAs層からなる第1半導体層と、
前記第1半導体層上に形成され、前記第1半導体層よりも比抵抗の大きい半導体層からなるバラスト抵抗層とを有し、
前記バラスト抵抗層は、AlInAs層からなり、
硫酸:過酸化水素:水の混合液でウエットエッチングを行うことを特徴とする請求項8記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記基板の主面に平行な平面において前記基板の[01−1]方向の前記エミッタメサ層の長さを、前記基板の[011]方向の長さより長くすることを特徴とする請求項8記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
電力増幅器を含む電子装置であって、
前記電力増幅器は、化合物半導体からなる1または複数のバイポーラトランジスタから構成され、
前記バイポーラトランジスタは、
基板と、
前記基板の主面上に形成されたコレクタ層と、
前記コレクタ層上に形成されたベース層と、
前記ベース層上に形成されたInGaP層からなるエミッタ層と、
前記コレクタ層と電気的に接続されたコレクタ電極と、
前記ベース層と電気的に接続されたベース電極と、
前記エミッタ層上に形成され、前記エミッタ層と電気的に接続されたエミッタメサ層と、
前記エミッタメサ層と電気的に接続されたエミッタ電極とを有し、
前記エミッタメサ層は、
第1半導体層と、
前記第1半導体層上の第2半導体層と、
前記第2半導体層上に形成され、前記第2半導体層よりも比抵抗の大きい半導体層からなるバラスト抵抗層とを有し、
前記第2半導体層のキャリア濃度は、前記第1半導体層のキャリア濃度以上であることを特徴とする電子装置。
【請求項15】
前記基板の主面に平行な平面において前記エミッタメサ層は、前記基板の[01−1]方向の長さが、前記基板の[011]方向の長さより長いことを特徴とする請求項14記載の電子装置。
【請求項16】
前記電子装置は、無線通信機器に搭載され、
前記電力増幅器の動作周波数は、500MHz以上であることを特徴とする請求項14記載の電子装置。
【請求項17】
前記電力増幅器は、複数の前記バイポーラトランジスタが多段接続されて構成され、
各バイポーラトランジスタ間には、整合回路用の受動部品が接続されていることを特徴とする請求項14記載の電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2006−185990(P2006−185990A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−375632(P2004−375632)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】