説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】ゲート配線が保護膜に覆われた構造において、保護膜に発生するクラックがゲート配線に到達することを防止することにより、ゲート−エミッタ間のショート不良を防止する。
【解決手段】第1保護膜25が表面電極17およびゲート金属配線18の間に配置されると共に、ゲート金属配線18を覆っている。また、第2保護膜26が第1保護膜25の上に形成されている。この場合、第2保護膜26は、第1保護膜25のうちの少なくともはんだ29に覆われる部分の上に形成されている。これにより、はんだ29実装前に引っかき傷等によって第2保護膜26にクラック31が発生したとしても、当該クラック31の進展を第1保護膜25と第2保護膜26との境界面で阻止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子を備える半導体チップを金属板と共にパッケージ化した半導体装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、IGBT等の半導体素子が形成された半導体チップを金属ブロックや放熱基板と共にパッケージ化したパッケージ型半導体装置が、例えば特許文献1で提案されている。具体的に、特許文献1では、IGBTが形成された半導体基板の表面にエミッタAl電極が形成され、半導体基板の表面に形成されたLOCOS酸化膜および絶縁膜を介してゲート配線層が形成されたものが提案されている。
【0003】
また、半導体基板の表面には、エミッタAl電極とゲート配線層とがショートしないようにするため、ゲート配線層の表面を覆うように保護膜が形成されている。この保護膜により、エミッタAl電極とゲート配線層とが互いに電気的に絶縁されている。そして、エミッタAl電極および保護膜の上にはんだを介して金属ブロックが接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3750680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術では、半導体装置に外乱が加わることにより、保護膜にクラックが発生した場合、当該クラックにはんだが侵入してゲート配線層に達すると、エミッタAl電極とゲート配線層とがショートしてしまう。
【0006】
また、保護膜におけるクラックの発生原因は外乱に限らず、保護膜の形成中に発生することもある。例えば、特開2007−27565号公報では、半導体基板の上に保護膜および金属膜を形成した後、切削用のバイトで保護膜の一部および金属膜を切削することにより、保護膜上の不要な金属膜を除去する方法が提案されている。
【0007】
しかし、バイトにより金属膜と共に下地である保護膜を切削するため、保護膜に傷等のダメージを与えてしまう。これにより、保護膜にクラックが発生し、上記と同様に、クラックにはんだが侵入してゲート配線層に達すると、エミッタAl電極とゲート配線層とがショートしてしまう。
【0008】
以上のように、保護膜の形成中や形成後のいずれの状況においても、保護膜にクラックが発生する可能性があり、当該クラックにはんだが侵入してゲート配線層に達すると、エミッタAl電極とゲート配線層とがショートしてしまうという問題がある。
【0009】
本発明は上記点に鑑み、ゲート配線が保護膜に覆われた構造において、保護膜に発生するクラックがゲート配線に到達することを防止すること、および保護膜形成中のクラック発生を抑制することにより、ゲート−エミッタ間のショート不良を防止することができる構造を備えた半導体装置を提供することを第1の目的とする。また、このような構造を備えた半導体装置の製造方法を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、第1領域と第2領域とを有する半導体素子が形成された半導体チップ(10)と、半導体チップ(10)の主表面(14)側に形成され、半導体素子の第1領域と電気的に接続された表面電極(17)と、半導体チップ(10)の主表面(14)側に形成され、半導体素子の第2領域と電気的に接続され、第2領域に印加される電位を制御するための第1金属配線(18)と、表面電極(17)の上に形成された金属層(27、28)と、表面電極(17)および第1金属配線(18)の間に配置されると共に、第1金属配線(18)を覆う第1保護膜(25)と、第1保護膜(25)の上に形成された第2保護膜(26)と、表面電極(17)および第1金属配線(18)の少なくとも一部を覆うように形成され、金属層(27、28)の上に設けられたはんだ(29)を介して金属層(27、28)および表面電極(17)と電気的に接続された金属板(30)と、を備え、半導体チップ(10)、表面電極(17)、第1金属配線(18)、および金属板(30)がパッケージ化された半導体装置であって、第2保護膜(26)は、第1保護膜(25)のうちの少なくともはんだ(29)に覆われる部分の上に形成されていることを特徴とする。
【0011】
これによると、第1保護膜(25)のうちのはんだ(29)に覆われる部分には第2保護膜(26)が配置されているので、均一な固体(第1保護膜(25))とこれとは別の均一な固体(第2保護膜(26))とが積層された状態となる。すなわち、第1保護膜(25)と第2保護膜(26)との境界面では均一な固体が連続していないので、第2保護膜(26)がはんだ(29)から応力を受けて第2保護膜(26)にクラック(31)が発生したとしても、当該クラック(31)の進展は第1保護膜(25)と第2保護膜(26)との境界面で阻止される。したがって、第1保護膜(25)で覆われた第1金属配線(18)にクラック(31)が到達することを防止することができる。このため、第1金属配線(18)と表面電極(17)とのショート不良を防止することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明では、半導体チップ(10)の主表面(14)側に形成され、第1金属配線(18)とは電気的に分離された第2金属配線(20)を備えており、半導体チップ(10)は、半導体素子が形成された複数のセル(11)と、半導体チップ(10)の主表面(14)側において複数のセル(11)の周囲に位置する通路(12)と、を有し、第1金属配線(18)は、通路(12)の少なくとも一部に形成され、第2金属配線(20)は、第1金属配線(18)が形成された通路(12)と同じ通路(12)に少なくとも一部が形成されると共に当該少なくとも一部が第1金属配線(18)と平行に形成されており、第1保護膜(25)は、表面電極(17)、第1金属配線(18)、および第2金属配線(20)の間に配置されると共に、第1金属配線(18)および第2金属配線(20)を覆っていることを特徴とする。
【0013】
これによると、第1金属配線(18)と第2金属配線(20)とが同じ通路(12)に配置されるので、当該通路(12)に第1保護膜(25)を一括塗布できる構造とすることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明では、半導体チップ(10)は、当該半導体チップ(10)の主表面(14)に垂直な側面(33)と、当該半導体チップ(10)の主表面(14)と側面(33)とで構成された角部(34)と、を有し、第1保護膜(25)は、角部(34)を覆うように形成されていることを特徴とする。
【0015】
これによると、第1保護膜(25)により第1金属配線(18)と表面電極(17)とのショート不良を防止できるだけでなく、半導体チップ(10)の側面(33)に沿って主表面(14)側に流れる電流を角部(34)の第1保護膜(25)により阻止することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明では、第2保護膜(26)は、粒状の有機物または繊維状の無機物からなる非導電材(48)が混入されていることを特徴とする。
【0017】
これによると、粒状または繊維状の非導電材(48)がクラック(31)の進展の妨げとなるので、クラック(31)の進展を止めることができる。
【0018】
請求項5に記載の発明では、主表面(14)を有すると共に、当該主表面(14)側に形成されたエミッタ領域(42)と、当該エミッタ領域(42)を貫通するトレンチ(43)と、当該トレンチ(43)の側壁に形成されたゲート絶縁膜(44)と、このゲート絶縁膜(44)上に形成されたゲート領域(37)とにより構成されたトレンチゲート構造を備えた半導体素子を有する半導体チップ(10)と、半導体チップ(10)の主表面(14)側に形成され、半導体素子のエミッタ領域(42)と電気的に接続された表面電極(17)と、半導体チップ(10)の主表面(14)側に形成され、半導体素子のゲート領域(37)と電気的に接続され、ゲート領域(37)に印加される電位を制御するための第1金属配線(18)と、表面電極(17)の上に形成された金属層(27、28)と、第1金属配線(18)を覆う第1保護膜(25)と、表面電極(17)を覆うように形成され、金属層(27、28)の上に設けられたはんだ(29)を介して金属層(27、28)および表面電極(17)と電気的に接続された金属板(30)と、を備え、半導体チップ(10)、表面電極(17)、第1金属配線(18)、および金属板(30)がパッケージ化された半導体装置であって、ゲート領域(37)は、はんだ(29)が実装される領域(14a)とはんだ(29)が実装されない領域(14b)とをまたぐように形成されており、第1金属配線(18)は、主表面(14)のうちはんだ(29)が実装されない領域(14b)に形成されると共に、はんだ(29)が実装されない領域(14b)のみでゲート領域(37)と電気的に接続されていることを特徴とする。
【0019】
これによると、第1金属配線(18)は半導体チップ(10)の主表面(14)のうちはんだ(29)が実装されない領域(14b)に形成され、この第1金属配線(18)を覆う第1保護膜(25)も当該はんだ(29)が実装されない領域(14b)に形成されるので、第1保護膜(25)がはんだ(29)に覆われない構造とすることができる。したがって、第1保護膜(25)にクラック(31)を発生させないようにすることができ、ひいては第1金属配線(18)と表面電極(17)とがショート不良を起こすことを防止することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明では、表面電極(17)は、主表面(14)のうちはんだ(29)が実装される領域(14a)全体に形成されていることを特徴とする。
【0021】
これによると、はんだ(29)が実装される領域(14a)においてはんだ(29)に対する表面電極(17)の接合面積を最大にすることができる。したがって、表面電極(17)に対するはんだ(29)の接合強度の向上を図ることができる。
【0022】
請求項7に記載の発明では、半導体チップ(10)は、半導体素子が形成された複数のセル(11)と、半導体チップ(10)の主表面(14)側において複数のセル(11)の周囲に位置する通路(12)と、を有し、第1保護膜(25)は、通路(12)全体に形成されていることを特徴とする。
【0023】
これによると、通路(12)のうちはんだ(29)が実装される領域(14a)に形成された第1保護膜(25)にクラック(31)が発生したとしても、第1金属配線(18)ははんだ(29)が実装されない領域(14b)に形成されているので、はんだ(29)が第1金属配線(18)に接触することはない。したがって、第1金属配線(18)と表面電極(17)とのショート不良を防止することができる。
【0024】
請求項8に記載の発明では、第1保護膜(25)は、粒状の有機物または繊維状の無機物からなる非導電材(48)が混入されていることを特徴とする。
【0025】
これによると、第1保護膜(25)にクラック(31)が発生したとしても、第1保護膜(25)に混入された粒状または繊維状の非導電材(48)によりクラック(31)の進展を止めることができる。
【0026】
請求項9に記載の発明では、第1領域と第2領域とを有する半導体素子が備えた半導体チップ(10)が複数形成されたウェハを用意する工程と、複数の半導体チップ(10)の主表面(14)側に、半導体素子の第1領域と電気的に接続される表面電極(17)をそれぞれ形成する工程と、複数の半導体チップ(10)の主表面(14)側に、半導体素子の第2領域と電気的に接続される第1金属配線(18)をそれぞれ形成する工程と、表面電極(17)および第1金属配線(18)の間に配置されると共に、第1金属配線(18)を覆う第1保護膜(25)をそれぞれ形成する工程と、注入器(32)を用いて第1保護膜(25)の上に第2保護膜(26)を塗布する工程と、表面電極(17)の上に金属層(27、28)を形成する工程と、金属層(27、28)を形成した後、ウェハを半導体チップ(10)ごとに切断する工程と、金属層(27、28)の上に、はんだ(29)を介して、表面電極(17)および第1金属配線(18)の少なくとも一部を覆うと共に金属層(27、28)および表面電極(17)と電気的に接続される金属板(30)を接合する工程と、金属板(30)を接合した後、半導体チップ(10)、表面電極(17)、第1金属配線(18)、および金属板(30)をパッケージ化する工程と、を含んだ半導体装置の製造方法であって、第2保護膜(26)を塗布する工程では、注入器(32)を用いて第1保護膜(25)のうちの少なくともはんだ(29)に覆われる部分の上に第2保護膜(26)を塗布することを特徴とする。
【0027】
これによると、注入器(32)を用いて、第1保護膜(25)のうちのはんだ(29)に覆われる部分に第2保護膜(26)を部分的に配置しているので、はんだ(29)実装前に引っかき傷等によって第2保護膜(26)にクラック(31)が発生したとしても、当該クラック(31)の進展を第1保護膜(25)と第2保護膜(26)との境界面で阻止することができる。したがって、第1保護膜(25)で覆われた第1金属配線(18)にクラック(31)が到達することを防止でき、第1金属配線(18)と表面電極(17)とのショート不良を防止することができる。
【0028】
また、注入器(32)を用いているので、第1保護膜(25)の上の必要な部分にのみ第2保護膜(26)を塗布することが可能となる。このため、第2保護膜(26)のパターニングに必要なフォトリソグラフィ工程やエッチング工程を不要とすることができる。
【0029】
請求項10に記載の発明では、ウェハを用意する工程では、半導体チップ(10)それぞれが、半導体素子が形成された複数のセル(11)と、半導体チップ(10)の主表面(14)側において複数のセル(11)の周囲に位置する通路(12)と、を有するものを用意し、第1金属配線(18)を形成する工程では、半導体チップ(10)の主表面(14)側において、通路(12)の少なくとも一部に第1金属配線(18)を形成する一方、第1金属配線(18)とは電気的に分離され、第1金属配線(18)を形成する通路(12)と同じ通路(12)に少なくとも一部が配置されると共に当該少なくとも一部が第1金属配線(18)と平行に配置される第2金属配線(20)を形成する工程と、第1保護膜(25)を形成する工程では、表面電極(17)、第1金属配線(18)、および第2金属配線(20)の間に配置されると共に、第1金属配線(18)および第2金属配線(20)を覆うように第1保護膜(25)を形成することを特徴とする。
【0030】
これによると、第1金属配線(18)と第2金属配線(20)とを同じ通路(12)に配置しているので、当該通路(12)に第1保護膜(25)を一括塗布することができる。
【0031】
請求項11に記載の発明では、ウェハを切断する工程は、ウェハを半導体チップ(10)ごとに切断した後、各半導体チップ(10)の間に隙間(35)を設け、注入器(32)を用いて、半導体チップ(10)の主表面(14)と側面(33)とで構成された角部(34)を覆うように第1保護膜(25)を塗布する工程を含んでいることを特徴とする。
【0032】
これによると、第1保護膜(25)により第1金属配線(18)と表面電極(17)とのショート不良を防止できるだけでなく、半導体チップ(10)の側面(33)に沿って主表面(14)側に流れる電流を角部(34)の第1保護膜(25)により阻止できる構造を得ることができる。
【0033】
請求項12に記載の発明では、表面電極(17)の上に金属層(27、28)を形成する工程では、第1保護膜(25)および第2保護膜(26)の上にも金属層(27、28)を形成し、金属層(27、28)を形成する工程の後、金属層(27、28)から第2保護膜(26)が露出するように、第2保護膜(26)の一部および金属層(27、28)をバイト(36)もしくは多刃工具を用いて切削する工程を含んでいることを特徴とする。
【0034】
このように、バイト(36)もしくは多刃工具を用いて第2保護膜(26)の一部を切削することにより第2保護膜(26)にクラック(31)が発生したとしても、当該クラック(31)の進展を第1保護膜(25)と第2保護膜(26)との境界面で阻止することができる。したがって、第1金属配線(18)にクラック(31)が到達することを防止でき、クラック(31)にはんだ(29)が侵入することによって第1金属配線(18)と表面電極(17)とのショート不良が起こることを防止することができる。
【0035】
請求項13に記載の発明では、第2保護膜(26)を塗布する工程では、第2保護膜(26)として、粒状の有機物または繊維状の無機物からなる非導電材(48)が混入されているものを用いることを特徴とする。
【0036】
これによると、粒状または繊維状の非導電材(48)により第2保護膜(26)に発生したクラック(31)の進展を止めることができる構造を得ることができる。
【0037】
請求項14に記載の発明では、第1領域と第2領域とを有する半導体素子が形成された複数のセル(11)と、半導体チップ(10)の主表面(14)側において複数のセル(11)の周囲に位置する通路(12)と、を有する半導体チップ(10)が複数形成されたウェハを用意する工程と、複数の半導体チップ(10)の主表面(14)側に、半導体素子の第1領域と電気的に接続される表面電極(17)をそれぞれ形成する工程と、通路(12)の少なくとも一部に、半導体素子の第2領域と電気的に接続される第1金属配線(18)を形成する工程と、表面電極(17)および第1金属配線(18)の間に配置されると共に第1金属配線(18)を覆う第1保護膜(25)を、はんだ(29)が実装されない通路(12b)に形成する第1保護膜(25)の高さが、はんだ(29)が実装される通路(12a)に形成する第1保護膜(25)の高さよりも高くなるように、注入器(32)を用いて第1保護膜(25)を通路(12)に塗布する工程と、表面電極(17)および第1保護膜(25)の上に金属層(27、28)を形成する工程と、はんだ(29)が実装されない通路(12b)に形成した第1保護膜(25)が金属層(27、28)から露出するように、はんだ(29)が実装されない通路(12b)に形成した第1保護膜(25)の一部および金属層(27、28)をバイト(36)もしくは多刃工具を用いて切削する工程と、切削する工程の後、ウェハを半導体チップ(10)ごとに切断する工程と、金属層(27、28)の上に、はんだ(29)を介して、表面電極(17)および第1金属配線(18)の少なくとも一部を覆うと共に金属層(27、28)および表面電極(17)と電気的に接続される金属板(30)を接合する工程と、金属板(30)を接合した後、半導体チップ(10)、表面電極(17)、第1金属配線(18)、および金属板(30)をパッケージ化する工程と、を含んでいることを特徴とする。
【0038】
これによると、はんだ(29)が実装される通路(12a)に形成した第1保護膜(25)の高さは、はんだ(29)が実装されない通路(12b)に形成した第1保護膜(25)よりも低いので、はんだ(29)が実装される通路(12a)に形成した第1保護膜(25)がバイト(36)もしくは多刃工具により切削されることはない。このため、当該切削時に、はんだ(29)が実装される通路(12a)に形成した第1保護膜(25)にバイト(36)等の応力がかからないので、はんだ(29)が実装される通路(12a)に形成された第1保護膜(25)にクラック(31)が発生しないようにすることができる。したがって、クラック(31)にはんだ(29)が侵入することによって第1金属配線(18)と表面電極(17)とのショート不良が起こることを防止することができる。
【0039】
請求項15に記載の発明では、第1金属配線(18)を形成する工程では、半導体チップ(10)の主表面(14)側において、通路(12)の少なくとも一部に第1金属配線(18)を形成する一方、第1金属配線(18)とは電気的に分離され、第1金属配線(18)を形成する通路(12)と同じ通路(12)に少なくとも一部が配置されると共に当該少なくとも一部が第1金属配線(18)と平行に配置される第2金属配線(20)を形成する工程と、第1保護膜(25)を形成する工程では、表面電極(17)、第1金属配線(18)、および第2金属配線(20)の間に配置されると共に、第1金属配線(18)および第2金属配線(20)を覆うように第1保護膜(25)を形成することを特徴とする。
【0040】
これによると、第1金属配線(18)と第2金属配線(20)とを同じ通路(12)に配置しているので、当該通路(12)に第1保護膜(25)を一括塗布することができる。
【0041】
請求項16に記載の発明では、ウェハを切断する工程は、ウェハを半導体チップ(10)ごとに切断した後、各半導体チップ(10)の間に隙間(35)を設け、注入器(32)を用いて、半導体チップ(10)の主表面(14)と側面(33)とで構成された角部(34)を覆うように第1保護膜(25)を塗布する工程を含んでいることを特徴とする。
【0042】
これによると、第1保護膜(25)により第1金属配線(18)と表面電極(17)とのショート不良を防止できるだけでなく、半導体チップ(10)の側面(33)に沿って主表面(14)側に流れる電流を角部(34)の第1保護膜(25)により阻止できる構造を得ることができる。
【0043】
請求項17に記載の発明では、主表面(14)を有すると共に、当該主表面(14)側に形成されたエミッタ領域(42)と、当該エミッタ領域(42)を貫通するトレンチ(43)と、当該トレンチ(43)の側壁に形成されたゲート絶縁膜(44)と、このゲート絶縁膜(44)上に形成されたゲート領域(37)とにより構成されたトレンチゲート構造を備えた半導体素子を有する半導体チップ(10)が複数形成されたウェハを用意する工程と、複数の半導体チップ(10)の主表面(14)側に、半導体素子のエミッタ領域(42)と電気的に接続される表面電極(17)をそれぞれ形成する工程と、複数の半導体チップ(10)の主表面(14)側に、半導体素子のゲート領域(37)と電気的に接続される第1金属配線(18)をそれぞれ形成する工程と、第1金属配線(18)を覆う第1保護膜(25)をそれぞれ形成する工程と、表面電極(17)および第1保護膜(25)の上に金属層(27、28)を形成する工程と、第1保護膜(25)が金属層(27、28)から露出するように、第1保護膜(25)の一部および金属層(27、28)をバイト(36)もしくは多刃工具を用いて切削する工程と、切削する工程の後、ウェハを半導体チップ(10)ごとに切断する工程と、金属層(27、28)の上に、はんだ(29)を介して、表面電極(17)を覆うと共に金属層(27、28)および表面電極(17)と電気的に接続される金属板(30)を接合する工程と、金属板(30)を接合した後、半導体チップ(10)、表面電極(17)、第1金属配線(18)、および金属板(30)をパッケージ化する工程と、を含んだ半導体装置の製造方法であって、ウェハを用意する工程では、半導体チップ(10)として、ゲート領域(37)ははんだ(29)が実装される領域(14a)とはんだ(29)が実装されない領域(14b)とをまたぐように形成されたものを用意し、第1金属配線(18)を形成する工程では、第1金属配線(18)を主表面(14)のうちはんだ(29)が実装されない領域(14b)に形成すると共に、主表面(14)のうちはんだ(29)が実装されない領域(14b)のみでゲート領域(37)と第1金属配線(18)とを電気的に接続することを特徴とする。
【0044】
これによると、半導体チップ(10)の主表面(14)のうちはんだ(29)が実装されない領域(14b)に第1金属配線(18)を形成しているので、はんだ(29)の応力が第1保護膜(25)にかかって第1保護膜(25)にクラック(31)が発生したとしても、当該クラック(31)にはんだ(29)が進入することはない。したがって、第1金属配線(18)と表面電極(17)とがショート不良を起こすことを防止することができる。
【0045】
請求項18に記載の発明では、表面電極(17)を形成する工程では、主表面(14)のうちはんだ(29)が実装される領域(14a)全体に表面電極(17)を形成することを特徴とする。
【0046】
これによると、はんだ(29)が実装される領域(14a)においてはんだ(29)に対する表面電極(17)の接合面積が最大となるようにすることができる。したがって、表面電極(17)に対するはんだ(29)の接合強度を向上することができる。
【0047】
請求項19に記載の発明では、ウェハを用意する工程では、半導体素子が形成された複数のセル(11)と、半導体チップ(10)の主表面(14)側において複数のセル(11)の周囲に位置する通路(12)と、を有する半導体チップ(10)が複数形成されたウェハを用意し、第1保護膜(25)を形成する工程では、第1保護膜(25)を通路(12)全体に形成することを特徴とする。
【0048】
これによると、通路(12)のうちはんだ(29)が実装される領域(14a)に第1金属配線(18)を形成していないので、はんだ(29)が実装される領域(14a)内の通路(12)に形成した第1保護膜(25)にクラック(31)が発生したとしてもはんだ(29)が第1金属配線(18)に接触することはない。したがって、ゲート領域(37)に接続された第1金属配線(18)と表面電極(17)とのショート不良を防止することができる。
【0049】
請求項20に記載の発明では、第1保護膜(25)を形成する工程では、半導体チップ(10)の主表面(14)を基準として、はんだ(29)が実装されない領域(14b)内の通路(12)に形成する第1保護膜(25)よりもはんだ(29)が実装される領域(14a)内の通路(12)に形成する第1保護膜(25)が低くなるように第1保護膜(25)を形成し、切削する工程では、はんだ(29)が実装されない領域(14b)に形成された第1保護膜(25)が金属層(27、28)から露出するように、はんだ(29)が実装されない領域(14b)に形成された第1保護膜(25)の一部および金属層(27、28)を切削することを特徴とする。
【0050】
これによると、はんだ(29)が実装される領域(14a)に形成された第1保護膜(25)は切削されず、さらに、はんだ(29)が実装される領域(14a)に第1金属配線(18)が形成されていないので、はんだ(29)が実装される領域(14a)において第1金属配線(18)と表面電極(17)とのショート不良を防止することができる。
【0051】
請求項21に記載の発明では、切削する工程では、はんだ(29)が実装されない領域(14b)およびはんだ(29)が実装される領域(14a)に形成された第1保護膜(25)が金属層(27、28)からそれぞれ露出するように、第1保護膜(25)の一部および金属層(27、28)を切削することを特徴とする。
【0052】
これによると、はんだ(29)が実装される領域(14a)に第1金属配線(18)が形成されていないので、はんだ(29)が実装される領域(14a)に形成された第1保護膜(25)にバイト(36)等の応力がかかってクラック(31)が発生したとしても、クラック(31)に進入したはんだ(29)を介して表面電極(17)と第1金属配線(18)とがショート不良を起こしてしまうことを防止することができる。
【0053】
請求項22に記載の発明では、第1保護膜(25)を形成する工程では、第1保護膜(25)として、粒状の有機物または繊維状の無機物からなる非導電材(48)が混入されているものを用いることを特徴とする。
【0054】
これによると、粒状または繊維状の非導電材(48)により第1保護膜(25)に発生したクラック(31)の進展を止めることができる構造を得ることができる。
【0055】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1実施形態に係る半導体チップの平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】半導体チップを含んだ半導体装置の一部断面図である。
【図4】図3のB部拡大図である。
【図5】第2保護膜を形成する工程を示した図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る半導体チップの平面図である。
【図7】第2実施形態において、第2保護膜を形成する工程を示した図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る半導体チップの外縁部の一部断面図である。
【図9】第3実施形態において、半導体チップの角部に第1保護膜を形成する工程を示した図である。
【図10】図9のC−C断面図である。
【図11】本発明の第4実施形態において、Ni膜、Au膜、および第2保護膜の一部を切削する工程を示した図である。
【図12】本発明の第5実施形態において、バイトにより第1保護膜の一部を切削する工程を示した図である。
【図13】本発明の第6実施形態に係る半導体装置の平面図である。
【図14】図13のD部拡大図である。
【図15】図13および図14のE−E断面図である。
【図16】図14のF−F断面図である。
【図17】第6実施形態において、第1保護膜を切削する工程を示した図である。
【図18】本発明の第7実施形態に係る半導体装置の断面図である。
【図19】本発明の第8実施形態に係る半導体装置の断面図である。
【図20】本発明の第9実施形態に係る半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0058】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る半導体装置に備えられた半導体チップ10の平面図である。図2は、図1のA−A断面図である。また、図3は、図1のA−A断面に相当する図であり、半導体チップ10を含んだ半導体装置の一部断面図である。図1〜図3を参照して本実施形態に係る半導体装置について説明する。
【0059】
図1に示されるように、半導体チップ10は、半導体素子が形成された複数のセル11と、複数のセル11の周囲に位置する通路12と、を有している。このような半導体チップ10は、図2に示されるように、シリコン基板等の半導体基板13を用いて形成されたものである。半導体基板13は図示しないp+型基板の表面上にn−型ドリフト層が形成されたものである。以下では、半導体基板13の表面、すなわちn−型ドリフト層の表面を半導体基板13または半導体チップ10の主表面14という。したがって、通路12は半導体チップ10の主表面14側において、セル11の周囲に位置している。
【0060】
各セル11には、半導体素子として多数のIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)が形成されている。図示しないが、n−型ドリフト層の表層部にはp型ベース層が形成され、p型ベース層の表層部には第1領域に相当するn+型エミッタ領域が形成されている。これら、n+型エミッタ領域とp型ベース層とを貫通してn−型ドリフト層に達するようにトレンチが形成され、このトレンチの内壁表面にゲート絶縁膜と第2領域に相当するゲート層とが順に形成され、これらトレンチ、ゲート絶縁膜、ゲート層によりトレンチゲート構造が構成されている。n+型エミッタ領域の一部とトレンチゲート構造とが絶縁膜にて覆われている。なお、上記の構造はIGBTの一例であり、他の構造を採用しても構わない。
【0061】
また、p+型基板はコレクタ領域としての役割を果たし、このp+型基板の裏面には、当該裏面と接するようにコレクタ電極として機能する裏面電極15が形成されている。この裏面電極15は、例えばTi/Ni/Au膜である。
【0062】
さらに、半導体基板13のうちの主表面14側には、半導体素子の耐圧を確保するためのガードリング16が形成されている。このガードリング16は、例えばn−型ドリフト層の上層部に形成されたp型領域である。
【0063】
IGBTの表面には、エミッタ電極として機能する表面電極17が形成されている。この表面電極17は、1つのセル11内に形成される多数のIGBTのp型ベース層とn+型エミッタ領域に接しており、各セル11の上に複数形成されている。具体的には、表面電極17は、半導体基板13の主表面14において、複数のトレンチゲート構造上にまたがるように形成され、図1に示されるように、ストライプ状に各セル11の上面のほぼ全域を覆うようにそれぞれ形成されている。このような表面電極17は、例えばAl−Si等のAlを主成分とするAl合金からなる金属材料でスパッタリングにより形成される。
【0064】
また、半導体基板13の主表面14には、図示しないLOCOS酸化膜および絶縁膜を介して、第1金属配線としてのゲート金属配線18が形成されている。このゲート金属配線18は、セル11に形成された複数のゲート層と電気的に接続されており、各トレンチゲート構造におけるゲート電位を制御する役割、すなわち半導体素子に印加する電位を制御する役割を果たす。
【0065】
ゲート金属配線18は、図1に示されるように、半導体チップ10の主表面14側において、セル11の周囲に位置する通路12に配置されている。ここで、ゲート金属配線18は通路12の全体に形成されているわけではなく、通路12の少なくとも一部に形成されている。本実施形態では、ゲート金属配線18が表面電極17を囲んだレイアウト構成になっている。
【0066】
半導体チップ10の主表面14には温度センサ19が設けられている。温度センサ19は、温度に応じた電圧を出力するもの、すなわち順方向電圧VFの値が変化するものであり、半導体チップ10が作動することにより発生する熱に応じた順方向電圧VFを出力する。半導体チップ10が作動することによって発生する熱が半導体チップ10の中心部に集中することが知られていることから、温度センサ19は半導体チップ10の中心部に位置するように配置されている。
【0067】
このような温度センサ19は、例えば、半導体基板13上に形成された図示しない絶縁膜上に多結晶SiのN型層、P型層として形成された感温ダイオードである。
【0068】
また、半導体基板13の主表面14には、図示しないLOCOS酸化膜および絶縁膜を介して、第2金属配線としてのセンサ金属配線20が形成されている。このセンサ金属配線20は、半導体基板13の主表面14の中央部から外縁部に延びるように設けられた通路12に配置されており、ゲート金属配線18とは電気的に分離されている。そして、センサ金属配線20は上記の温度センサ19に接続されている。
【0069】
さらに、図1に示されるように、半導体基板13の主表面14には、図示しないLOCOS酸化膜および絶縁膜を介して、ゲート金属配線18と電気的に接続されたゲート用パッド21やセンサ金属配線20と電気的に接続されたセンサ用パッド22が形成されている。ゲート用パッド21を介して、ゲート金属配線18への印加電圧、すなわちゲート電位が制御されるようになっている。また、センサ用パッド22を介して温度センサ19の順方向電圧VFを外部に取り出すことができるようになっている。
【0070】
なお、半導体基板13の主表面14には、ゲート用パッド21やセンサ用パッド22の他、例えば電流センス用パッド23やケルビンエミッタ用パッド24も設けられている。
【0071】
通路12の上には第1保護膜25が塗布されている。この第1保護膜25は、表面電極17、ゲート金属配線18、およびセンサ金属配線20の間に配置されると共に、ゲート金属配線18およびセンサ金属配線20を覆っている。これにより、第1保護膜25によってゲート金属配線18、センサ金属配線20、および表面電極17が互いに電気的に絶縁された状態となっている。もちろん、各パッド21〜24は第1保護膜25から露出するように第1保護膜25が形成されている。また、第1保護膜25は温度センサ19も覆っている。
【0072】
第1保護膜25の上には、第2保護膜26が形成されている。第2保護膜26の形成場所については後で説明する。
【0073】
第1保護膜25および第2保護膜26の材料としては、例えばポリイミド膜が用いられる。ここで、第1保護膜25として用いられるポリイミド膜は、半導体基板13、ゲート金属配線18、センサ金属配線20を確実に覆ってこれらを保護する性質を持っている。一方、第2保護膜26は、第1保護膜25と同じポリイミド膜が用いられたとしても、成膜時に第1保護膜25との界面が確実に形成できていれば良い。なお、第1保護膜25および第2保護膜26として、それぞれ異なる材料が用いられても良い。
【0074】
そして、表面電極17の上には金属層に相当するNi膜27およびAu膜28が順に形成されている。これらNi膜27およびAu膜28は、例えば無電解めっき法にて形成されためっき膜である。
【0075】
図3に示されるように、半導体チップ10にははんだ29を介して金属板30が接合されている。この金属板30は、はんだ29、Ni膜27、およびAu膜28を介して表面電極17に電気的および熱的に接続されている。すなわち、金属板30は、電極(配線)およびヒートシンクの両方の役割を果たす。
【0076】
ここで、通路12には、はんだ29が実装される通路12aと、はんだ29が実装されない通路12bとがある。すなわち、図1の斜線で示された領域であるはんだ実装領域内に位置する通路12がはんだ29が実装される通路12aである。一方、はんだ実装領域外に位置する通路12がはんだ29が実装されない通路12bである。
【0077】
また、金属板30は、表面電極17およびゲート金属配線18の少なくとも一部を覆うように形成されたものである。具体的には、金属板30は、半導体チップ10の主表面14のうちの各パッド21〜24およびはんだ29が実装されない通路12bを除いた部分を覆うように形成されている。つまり、金属板30は、はんだ実装領域を覆うように形成されたものである。したがって、本実施形態では、金属板30は表面電極17全体を覆っている。
【0078】
このような金属板30のサイズに基づき、第2保護膜26は、第1保護膜25のうちの少なくともはんだ29に覆われる部分の上に部分的に形成されている。言い換えると、本実施形態では、第2保護膜26は、半導体チップ10の主表面14のうちのはんだ29が実装されない通路12bを除いた通路12aに位置する第1保護膜25の上に部分的に形成されている。
【0079】
そして、図3に示される構造に対し、図示しない下側ヒートシンクが裏面電極15に接合され、図示しない上側ヒートシンクが金属板30に接合されている。このような積層構造が図示しないモールド樹脂にて封止されたことにより、両面放熱型の半導体装置が構成されている。このようにして、半導体チップ10、表面電極17、ゲート金属配線18、および金属板30がパッケージ化されている。
【0080】
なお、図示しないワイヤを介して各パッド21〜24とリード端子とがそれぞれ接続されており、当該リード端子の端部がモールド樹脂から露出している。また、下側ヒートシンクや上側ヒートシンクにもリード端子がそれぞれ備えられており、これらのリード端子の端部もモールド樹脂からそれぞれ露出している。これらのリード端子と外部とが電気的に接続されることにより、外部の電気回路と半導体チップ10とが電気的に接続されることとなる。以上が、本実施形態に係る半導体装置の構成である。
【0081】
次に、図4を参照して、第2保護膜26の機能について説明する。図4は、図3のB部拡大図である。
【0082】
図4に示されるように、はんだ29実装の前に第2保護膜26に引っかき傷等によるクラック31が発生する場合がある。このクラック31は、はんだ29を介して金属板30が接合される際、はんだ29から応力を受け、第1保護膜25側に進展するが、第1保護膜25と第2保護膜26との境界面(界面)で停止する。
【0083】
すなわち、第1保護膜25および第2保護膜26はそれぞれが均一な固体として形成されたものである。したがって、均一な固体(第1保護膜25)とこれとは別の均一な固体(第2保護膜26)とが積層された状態となる。このため、第1保護膜25と第2保護膜26との境界面では均一な固体が連続して存在していないので、第2保護膜26にクラック31が発生したとしても、第2保護膜26に発生したクラック31の進展は第1保護膜25と第2保護膜26との境界面で阻止され、第2保護膜26から第1保護膜25に進展することはない。つまり、第1保護膜25にクラック31は発生しない。
【0084】
したがって、クラック31は第1保護膜25と第2保護膜26との境界面までしか進展していないので、第2保護膜26にはんだ29が侵入したとしても、第1保護膜25の内部にまで侵入することはできない。
【0085】
このように、第1保護膜25のうちはんだ29に覆われる部分に少なくとも第2保護膜26を部分的に設けておけば、第1保護膜25で覆われたゲート金属配線18にクラック31が到達することを防止できるし、ゲート金属配線18と表面電極17とのショート不良を防止することもできる。
【0086】
もちろん、第1保護膜25は第2保護膜26に覆われているので、はんだ29から応力を直接受けることもない。
【0087】
次に、本実施形態に係る半導体装置の製造方法について、図5を参照して説明する。
【0088】
まず、ウェハに複数の半導体チップ10を形成する。このため、ウェハを用意し、このウェハにIGBTを形成する。IGBTの具体的な製造工程に関しては、周知なものと同様であるため、詳細については図示しないが、n−型ドリフト層の表層部にp型ベース層とn+型エミッタ領域とを形成する。そして、n+型エミッタ領域とp型ベース層とを貫通してn−型ドリフト層に達するようにトレンチを形成し、このトレンチの内壁表面にゲート絶縁膜とゲート層とを形成する。また、n+型エミッタ領域の一部とトレンチを覆う絶縁膜を形成する。こうして、半導体チップ10が複数形成されたウェハを用意する。
【0089】
続いて、IGBTが形成されたウェハの表面に金属膜を形成する。この金属膜として、Alを主成分とする金属材料が用いられる。この金属膜の表面にフォトレジストを塗布して、露光によってパターニングする。これにより、フォトレジストの一部を開口させて、図2に示した表面電極17、ゲート金属配線18、センサ金属配線20、および各パッド21〜24が形成される予定の領域上にのみフォトレジストを残す。このフォトレジストをマスクとしてウェットエッチングを行い、金属膜をパターニングする。これにより、半導体素子のn+型エミッタ領域と電気的に接続される表面電極17と、半導体素子のゲート層と電気的に接続されるゲート金属配線18と、センサ金属配線20と、各パッド21〜24とを同時に形成する。その後、フォトレジストを除去する。
【0090】
なお、表面電極17等の形成は同時形成でなくても、表面電極17、ゲート金属配線18、センサ金属配線20、各パッド21〜24をそれぞれ単独で形成しても良い。
【0091】
この後、温度センサ19の形成予定位置に温度センサ19を構成する多結晶SiのN型層およびP型層を形成する。この場合、N型層およびP型層がそれぞれセンサ金属配線20に接続されるようにする。
【0092】
この後、ウェハ全体にポリイミド膜を配置し、ポリイミド膜の所望位置のみを残すことにより第1保護膜25を形成する。これにより、表面電極17、ゲート金属配線18、およびセンサ金属配線20の間に第1保護膜25が入り込み、これらそれぞれが互いに電気的に絶縁された状態となる。また、ゲート金属配線18、センサ金属配線20、および温度センサ19が第1保護膜25に覆われる。
【0093】
続いて、図5に示されるように、注入器32を用いて第1保護膜25の上に第2保護膜26を部分的に塗布する。注入器32としては、例えばディスペンサーやインクジェット等を用いる。
【0094】
上述のように、ゲート金属配線18等は通路12に形成されているので、注入器32を通路12に沿って移動させると共に、注入器32から第1保護膜25を通路12に塗布する。また、第2保護膜26を形成する場合、注入器32を用いて第1保護膜25のうちの少なくともはんだ29に覆われる部分の上に第2保護膜26を部分的に塗布する。したがって、温度センサ19や少なくともはんだ29に覆われる部分のセンサ金属配線20の上に形成された第1保護膜25の上にも第2保護膜26を塗布する。
【0095】
次に、第1保護膜25から露出した表面電極17の上に、無電解めっき法により、NiめっきおよびAuめっきを順に行うことで、Ni膜27およびAu膜28を形成する。なお、各パッド21〜24をNiめっきおよびAuめっきにより形成しても良い。また、ウェハの裏面側にはTi/Ni/Au層を蒸着法等により形成することで裏面電極15を形成する。
【0096】
そして、ウェハをダイシングテープに貼り付け、ウェハを半導体チップ10ごとに切断する。このようにして個々に分割された半導体チップ10において、Au膜28の上に、はんだ29を介して金属板30を接合する。この後、ワイヤを介して各パッド21〜24とリード端子とを接続し、裏面電極15に下側ヒートシンクを接合し、金属板30に上側ヒートシンクを接合し、半導体チップ10をモールド樹脂で封止することにより半導体装置が完成する。
【0097】
以上説明したように、本実施形態では、第1保護膜25のうちはんだ29に覆われる部分に、注入器32を用いて第2保護膜26を部分的に塗布したことが特徴となっている。
【0098】
これにより、第1保護膜25がはんだ29から応力を直接受けないようにすることができる。また、はんだ29実装前に引っかき傷等によって第2保護膜26にクラック31が発生したとしても、当該クラック31の進展を第1保護膜25と第2保護膜26との境界面で阻止することができる。したがって、第1保護膜25で覆われたゲート金属配線18にクラック31が到達することを防止でき、ゲート金属配線18と表面電極17とのショート不良を防止することができる。
【0099】
そして、第2保護膜26の形成に注入器32を用いているので、第1保護膜25の上の必要な部分にのみ第2保護膜26を塗布することができる。このため、第2保護膜26のパターニングに必要なフォリソグラフィ工程やエッチング工程を不要とすることができる。
【0100】
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。本実施形態では、通路12におけるセンサ金属配線20の配置を規定したことが特徴となっている。
【0101】
図6は、本実施形態に係る半導体チップ10の平面図である。この図に示されるように、半導体チップ10において各セル11はストライプ状に配置されている。このため、通路12もストライプ状にレイアウトされている。そして、各通路12にはゲート金属配線18が配置されている。
【0102】
また、温度センサ19は各通路12のうちの1つに配置されている。したがって、センサ金属配線20は、ゲート金属配線18が形成された通路12と同じ通路12に少なくとも一部が形成されると共に当該少なくとも一部がゲート金属配線18と平行に形成されていると言える。本実施形態では、図6に示されるように、1つの通路12のうち中央部に温度センサ19が配置され、温度センサ19を境にして通路12の一方向(各パッド21〜24側)にセンサ金属配線20が延設され、通路の他方向にゲート金属配線18が延設されている。
【0103】
次に、本実施形態に係る半導体装置の製造方法について、図7を参照して説明する。まず、セル11が図6に示されるようにストライプ状となるように半導体基板13にIGBTを形成する。また、半導体基板13の主表面14側に表面電極17、ゲート金属配線18、センサ金属配線20、各パッド21〜24を形成する。
【0104】
ゲート金属配線18およびセンサ金属配線20を形成する際には、ゲート金属配線18とセンサ金属配線20とを同じ通路12にそれぞれ平行に形成する。これにより、当該通路にはゲート金属配線18の少なくとも一部およびセンサ金属配線20の少なくとも一部が配置される。
【0105】
この後、第1実施形態と同様に、第1保護膜25および第2保護膜26を形成する。第2保護膜26を形成する場合には、図7に示されるように、注入器32を用いてはんだが実装される通路12aに沿って第1保護膜25の上に第2保護膜26を塗布することとなる。上述のように、ゲート金属配線18の一部とセンサ金属配線20の一部とが同じ通路12aに平行に配置されているので、図7に示されるように、注入器32を通路12aに沿って移動させることにより第2保護膜26を一括塗布することができる。
【0106】
なお、注入器32を用いて第1保護膜25を塗布する場合にも、ゲート金属配線18の一部とセンサ金属配線20の一部とが同じ通路12に平行に配置されているので、ゲート金属配線18およびセンサ金属配線20の上に第1保護膜25を一括塗布することができる。
【0107】
この後、Ni膜27およびAu膜28を形成し、半導体チップ10の主表面14側にはんだ29を介して金属板30を接合し、上側および下側ヒートシンク等を接合してモールド樹脂により封止することにより半導体装置が完成する。
【0108】
以上のように、半導体基板13の主表面14側にゲート金属配線18とは異なる配線であるセンサ金属配線20が配置される場合、ゲート金属配線18の少なくとも一部とセンサ金属配線20の少なくとも一部を同じ通路12に平行に配置することにより、第1保護膜25や第2保護膜26の形成を効率的に行うことができる。
【0109】
(第3実施形態)
本実施形態では、第1、第2実施形態と異なる部分についてのみ説明する。本実施形態では、半導体チップ10の側面にも第1保護膜25を塗布したことが特徴となっている。
【0110】
図8は、本実施形態に係る半導体チップ10の外縁部の一部断面図である。この図に示されるように、半導体チップ10は、当該半導体チップ10の主表面14に垂直な側面33と、当該半導体チップ10の主表面14と側面33とで構成された角部34と、を有している。そして、第1保護膜25は、半導体チップ10の角部34を覆うように形成されている。
【0111】
次に、半導体チップ10の角部34に第1保護膜25を形成する方法について、図9および図10を参照して説明する。図9は、半導体チップ10の側面33に第1保護膜25を形成する工程を示した図である。図10は、図9のC−C断面図である。
【0112】
上述のようにウェハをダイシングカットした後、ウェハエキスパンド工程を行う。すなわち、グラインドテープを径方向に引き伸ばすことにより、各半導体チップ10の間に隙間35を設ける。
【0113】
続いて、注入器32を用いて、半導体チップ10の角部34に当該角部34を覆うように第1保護膜25を塗布する。この場合、半導体チップ10の主表面14側には第1保護膜25が既に形成されているので、半導体チップ10の側面33に第1保護膜25を塗布することとなる。また、隙間35に沿って、注入器32を移動させると共に、注入器32により各角部34に第1保護膜25を塗布する。「隙間35に沿って」とは、つまり、半導体チップ10の角部34に沿ってという意味である。
【0114】
これにより、図10に示されるように、各半導体チップ10の各側面33にも第1保護膜25が形成される。なお、図10では、半導体チップ10の側面33の全体に第1保護膜25が塗布されているが、半導体チップ10の角部34を覆うという観点では、必ずしも側面33の全体に第1保護膜25を形成しなくても良い。
【0115】
このように、半導体チップ10の角部34に第1保護膜25が配置されると、裏面電極15から半導体チップ10の側面33に沿って主表面14側に流れる電流を角部34の第1保護膜25により阻止することができる。したがって、第1保護膜25によりゲート金属配線18と表面電極17とのショート不良を防止できるだけでなく、裏面電極15と主表面14側の構造とのショート不良を防止することもできる。
【0116】
(第4実施形態)
本実施形態では、第1〜第3実施形態と異なる部分についてのみ説明する。本実施形態では、半導体チップ10の主表面14側にスパッタリング等によりNi膜27およびAu膜28の金属層を形成した後、当該金属層のうち不要な部分を切削により除去することが特徴となっている。これについて、図11を参照して説明する。なお、図11は図1のA−A断面に相当する図である。ただし、ゲート金属配線18のレイアウトが図1の場合と異なる。
【0117】
本実施形態では、半導体チップ10の主表面14側に第1保護膜25および第2保護膜26を形成した後、表面電極17の上だけでなく第1保護膜25および第2保護膜26の上にもNi膜27およびAu膜28を形成する。
【0118】
この後、図11に示されるように、バイト36を用いてNi膜27およびAu膜28の金属層から第2保護膜26が露出するように、Ni膜27、Au膜28、および第2保護膜26を切削する。なお、バイト36ではなく多刃工具を用いても良い。これにより、表面電極17上に形成されたNi膜27およびAu膜28と、パッド21〜24上に形成されたNi膜27およびAu膜28とが電気的に分離される。
【0119】
このように、バイト36もしくは多刃工具を用いて切削を行った場合、バイト36もしくは多刃工具による応力が第2保護膜26に与えられ、第2保護膜26にクラック31が発生したとしても、当該クラック31の進展は第1保護膜25と第2保護膜26との境界面で阻止される。したがって、ゲート金属配線18にクラック31が到達することを防止でき、クラック31にはんだ29が侵入することによってゲート金属配線18と表面電極17とのショート不良が起こることも防止できる。
【0120】
なお、図11では第2保護膜26は第1保護膜25の全体を覆っているが、第1保護膜25にバイト36等の応力が直接加わらないようにできれば良いので、第2保護膜26は第1保護膜25の全体ではなく上部だけに設けられていても良い。
【0121】
(第5実施形態)
本実施形態では、第1〜第4実施形態と異なる部分についてのみ説明する。上記各実施形態では、第1保護膜25の上に第2保護膜26を形成したことにより、第1保護膜25にはんだ29の応力やバイト36等の応力が直接加わらないようにしていた。一方、本実施形態では、第2保護膜26を用いずに、ゲート金属配線18を覆う第1保護膜25の高さを他よりも低くすることにより、バイト36が当該第1保護膜25に触れないようにする。これにより、当該第1保護膜25に応力がかからないようにしたことが特徴となっている。このことについて、図12を参照して説明する。なお、図12は図1のA−A断面に相当する図である。ただし、ゲート金属配線18のレイアウトが図1の場合と異なる。
【0122】
本実施形態では、半導体チップ10の主表面14側に、表面電極17、ゲート金属配線18、センサ金属配線20、ゲート用パッド21等の各パッド21〜24を形成した後、当該主表面14側の通路12に第1保護膜25を形成する。
【0123】
この場合、はんだ29が実装されない通路12bに形成する第1保護膜25の高さが、はんだ29が実装される通路12aに形成する第1保護膜25の高さよりも高くなるように、注入器32を用いて第1保護膜25を塗布する。注入器32では、塗布量を調節することにより、第1保護膜25の高さを調節できるので、通路12のうちゲート金属配線18を配置した通路12とそうでない通路12とに形成する第1保護膜25の高さを異ならせることができる。
【0124】
この後、半導体チップ10の主表面14側の全体にNi膜27およびAu膜28を形成する。
【0125】
次に、図12に示されるように、バイト36もしくは多刃工具を用いて、はんだ29が実装されない通路12bに形成した第1保護膜25がNi膜27およびAu膜28から露出するように、はんだ29が実装されない通路12bに形成した第1保護膜25の一部、Ni膜27、およびAu膜28を切削する。これにより、はんだ29が実装されるゲート金属配線18を覆う第1保護膜25にはバイト36が接触しないので、当該第1保護膜25がバイト36等から応力を受けることもない。したがって、はんだ29が実装されるゲート金属配線18を覆う第1保護膜25にクラック31が発生することはない。
【0126】
一方、はんだ29が実装されない第1保護膜25上の金属層は除去されるので、表面電極17上の金属層と各パッド21〜24上の金属層とが電気的に絶縁される。
【0127】
以上のように、注入器32により第1保護膜25の高さを調節することにより、はんだ29が実装される通路12aに形成した第1保護膜25を、はんだ29が実装されない通路12bに形成した第1保護膜25よりも低く塗布することができるので、はんだ29が実装される通路12aに形成した第1保護膜25をバイト36もしくは多刃工具により切削しないようにすることができる。
【0128】
このように、はんだ29が実装される通路12aに形成した第1保護膜25にバイト36等の切削による応力がかからないので、はんだ29が実装される通路12aに形成した第1保護膜25にクラック31が発生しないようにすることができる。したがって、ゲート金属配線18は第1保護膜25に覆われた状態が維持されるので、第1保護膜25のクラック31にはんだ29が侵入することによるゲート金属配線18と表面電極17とのショート不良が起こることを防止することができる。
【0129】
(第6実施形態)
本実施形態では、第1〜第5実施形態と異なる部分についてのみ説明する。上記各実施形態では、通路12のうちはんだ29が実装される通路12aにゲート金属配線18が形成された構造が示されていたが、本実施形態では、主表面14のうちはんだ29が実装される領域にはゲート金属配線18が形成されていないことが特徴となっている。
【0130】
図13は、本実施形態に係る半導体装置の平面図である。なお、図13では、電流センス用パッド23やケルビンエミッタ用パッド24を省略している。
【0131】
図13に示されるように、本実施形態では、半導体チップ10の主表面14のうち、斜線で囲まれた中央部が「はんだ29が実装される領域14a(はんだ実装領域)」となっており、この領域14aを囲むようにはんだ29が実装されない領域14bが位置している。すなわち、「はんだ29が実装されない領域14b」とは、上記各実施形態における「はんだ29が実装されない通路12b」と同じ領域である。
【0132】
そして、半導体チップ10内においては、半導体素子のトレンチゲート構造を構成するゲート領域37が、はんだ29が実装される領域14aとはんだ29が実装されない領域14bとをまたぐように形成されている。つまり、図13に示される斜線で囲まれた領域の中から外にゲート領域37が引き出されている。
【0133】
また、本実施形態では、半導体チップ10内には、ゲート領域37と同様に配線領域38が形成されている。ここで、「ゲート領域37と同様に」とは、トレンチゲート構造と同様の構造を意味している。
【0134】
具体的には、半導体基板13に図示しないトレンチが形成され、このトレンチの壁面に側壁酸化膜が形成され、さらにこの側壁酸化膜の上に配線領域38としてのポリシリコンが形成されたものを指す。温度センサ19は配線領域38と同様にトレンチ内に形成されており、トレンチ内で配線領域38と温度センサ19とが接続される共に、配線領域38がはんだ29が実装される領域14aからはんだ29が実装されない領域14bに引き出されている。なお、温度センサ19の上に酸化膜等の絶縁膜が形成されることで、温度センサ19と表面電極17との絶縁が図られている。
【0135】
一方、半導体チップ10外においては、表面電極17は、半導体チップ10の主表面14のうちはんだ29が実装される領域14a全体に形成されている。これにより、はんだ29が実装される領域14aにおいて、複数のセル11ごとに表面電極17が設けられる場合(例えば図1や図6参照)と比較してはんだ29に対する表面電極17の接合面積が最大になるので、表面電極17に対するはんだ29の接合強度の向上を図ることができる。
【0136】
また、図13に示されるように、ゲート金属配線18は、半導体チップ10の主表面14のうちはんだ29が実装される領域14aには形成されておらず、はんだ29が実装されない領域14bに形成されている。さらに、ゲート金属配線18は、半導体チップ10の主表面14のうちはんだ29が実装されない領域14bのみでゲート領域37と電気的に接続されている。これにより、ゲート領域37がゲート金属配線18を介してゲート用パッド21に電気的に接続されている。
【0137】
同様に、配線領域38は、半導体チップ10の主表面14のうちはんだ29が実装されない領域14bのみでセンサ金属配線20と電気的に接続されている。これにより、温度センサ19が配線領域38およびセンサ金属配線20を介してセンサ用パッド22に電気的に接続されている。
【0138】
具体的な半導体チップ10の平面図および断面図について、図14〜図16を参照して説明する。図14は、図13のD部拡大図である。また、図15は図13および図14のE−E断面図であり、図16は図14のF−F断面図である。なお、図15では、表面電極17にはんだ29を介して金属板30を実装すると共に、裏面電極15にはんだ29を介してリードフレーム39を実装した断面図を示している。
【0139】
図15に示されるように、半導体チップ10の主表面14において、はんだ29が実装される領域14aにはゲート金属配線18は配置されていない。これに伴い、当該領域14aには第1保護膜25も形成されていない。したがって、第1保護膜25を覆う第2保護膜26も形成されていない。
【0140】
一方、はんだ29が実装されない領域14bにゲート金属配線18が形成され、このゲート金属配線18が第1保護膜25に覆われている。このように、第1保護膜25ははんだ29が実装されない領域14bに位置しているので、例えば第1実施形態で示された第2保護膜26で第1保護膜25を覆う必要はない。
【0141】
また、図16には本実施形態に係る半導体素子としてIGBTの構造が示されている。上述のように、n−型ドリフト層40の表層部にp型ベース層41が形成され、p型ベース層41の表層部にはn+型エミッタ領域42(本発明のエミッタ領域に相当)が形成されている。これら、n+型エミッタ領域42とp型ベース層41とを貫通してn−型ドリフト層40に達するようにトレンチ43が形成され、このトレンチ43の内壁表面にゲート絶縁膜44とゲート領域37とが順に形成され、これらトレンチ43、ゲート絶縁膜44、ゲート領域37によりトレンチゲート構造が構成されている。また、n+型エミッタ領域42の一部とトレンチゲート構造とがBPSG膜45にて覆われている。そして、BPSG膜45等を覆うように半導体チップ10の主表面14側に表面電極17が形成され、表面電極17と主表面14とが接触する部分がコンタクト46となる。このコンタクト46は、図14に示されるようにストライプ状に設けられている。さらに、n+型ドリフト層40の反対側にn+型層47が設けられ、このn+型層47の上に裏面電極15が形成されている。
【0142】
以上が、本実施形態に係る半導体装置の構造である。なお、図16に示されるIGBTの構造は、もちろん上記各実施形態の半導体素子に採用することもできる。
【0143】
次に、上記の半導体装置の製造方法について説明する。まず、図16に示されたトレンチゲート構造を備えた半導体チップ10がウェハに複数形成されたものを用意する。この場合、ウェハとして、ゲート領域37および配線領域38は、はんだ29が実装される領域14aとはんだ29が実装されない領域14bとをまたぐように形成されたものを用意する。このゲート領域37および配線領域38の各端部は、はんだ29が実装されない領域14bに露出している。
【0144】
続いて、第1実施形態と同様に、ウェハの表面に金属膜を形成し、この金属膜の表面にフォトレジストを塗布して、露光によってパターニングする。これにより、表面電極17、ゲート金属配線18、センサ金属配線20、および各パッド21〜24が形成される予定の領域上にのみフォトレジストを残す。これによると、金属膜のうちゲート金属配線18やセンサ金属配線20となる部分は、はんだ29が実装されない領域14bでゲート領域37や配線領域38に接触している。
【0145】
ここで、表面電極17については、半導体チップ10の主表面14のうちはんだ29が実装される領域14a全体に形成されるようにフォトレジストを残す。また、ゲート金属配線18およびセンサ金属配線20については、半導体チップ10の主表面14のうちはんだ29が実装されない領域14bに形成されるようにフォトレジストを残す。
【0146】
このフォトレジストをマスクとしてウェットエッチングを行い、金属膜をパターニングする。これにより、表面電極17、ゲート金属配線18、センサ金属配線20、および各パッド21〜24を同時に形成する。その後、フォトレジストを除去する。これによると、ゲート金属配線18およびセンサ金属配線20を主表面14のうちはんだ29が実装されない領域14bに形成することとなる。また、主表面14のうちはんだ29が実装されない領域14bのみでゲート領域37とゲート金属配線18とを電気的に接続し、当該領域14bのみで配線領域38とセンサ金属配線20とを電気的に接続することとなる。
【0147】
続いて、ウェハ全体にポリイミド膜を配置し、ポリイミド膜の所望位置のみを残すことにより第1保護膜25を形成する。これにより、はんだ29が実装されない領域14bに形成されたゲート金属配線18およびセンサ金属配線20が第1保護膜25に覆われる。なお、注入器32を用いて第1保護膜25を形成しても良い。
【0148】
この後、第1保護膜25および表面電極17の上にNi膜27およびAu膜28を形成する。また、ウェハの裏面側に裏面電極15を形成する。
【0149】
そして、図17に示されるように、バイト36もしくは多刃工具を用いてNi膜27およびAu膜28の金属層から第1保護膜25が露出するように、Ni膜27、Au膜28、および第1保護膜25を切削する。これにより、表面電極17上に形成されたNi膜27およびAu膜28と、パッド21〜24上に形成されたNi膜27およびAu膜28とが電気的に分離される。
【0150】
このように、バイト36もしくは多刃工具を用いて切削を行った場合、バイト36もしくは多刃工具による応力が第1保護膜25に与えられたとしても、はんだ29が実装される領域14aに第1保護膜25が形成されていないので、はんだ29が実装される領域14a内で第1保護膜25にクラック31が発生すること事態が起こらない。また、はんだ29が実装されない領域14bの第1保護膜25にクラック31が生じたとしても、この第1保護膜25の上にはんだ29は存在しないので当該クラック31にはんだ29が進入してゲート金属配線18と表面電極17とのショート不良が起こることもない。
【0151】
この後、第1実施形態と同様に、ウェハをダイシングテープに貼り付けてウェハを半導体チップ10ごとに切断し、各半導体チップ10にはんだ29を介して金属板30を接合する。また、ワイヤを介して各パッド21〜24とリード端子とを接続し、裏面電極15に下側ヒートシンク(リードフレーム39)を接合し、金属板30に上側ヒートシンクを接合して半導体チップ10をモールド樹脂で封止することにより半導体装置が完成する。
【0152】
以上説明したように、本実施形態では、第1保護膜25に覆われるゲート金属配線18をはんだ29が実装されない領域14bに形成し、半導体素子のゲート領域37をはんだ29が実装される領域14aからはんだ29が実装されない領域14bに引き出して当該領域14bのみでゲート金属配線18とゲート領域37とを接続したことが特徴となっている。
【0153】
これにより、半導体装置の製造の際に第1保護膜25をバイト36等で切削したとしても、当該第1保護膜25ははんだ29が実装されない領域14bに形成されているので、第1保護膜25のクラック31にはんだ29が進入することはない。また、第1保護膜25がはんだ29に覆われないので、第1保護膜25がはんだ29から応力を受けることもなく、さらに当該応力によってクラック31が発生することもない。したがって、ゲート金属配線18と表面電極17とがショート不良を起こすことを防止することができる。
【0154】
そして、第1保護膜25を覆う第2保護膜26も不要となるので、製造工程および製造コストを削減することもできる。
【0155】
(第7実施形態)
本実施形態では、第6実施形態と異なる部分についてのみ説明する。上記第6実施形態では、はんだ29が実装される領域14aの全体に表面電極17を形成していたが、第1実施形態のように表面電極17を複数のセル11ごとに設けることもできる。したがって、本実施形態では、半導体チップ10は、半導体素子が形成された複数のセル11と、複数のセル11の周囲に位置する通路12と、を有している。
【0156】
図18は、本実施形態に係る半導体装置の断面図であり、例えば図13のE−E断面に相当する図である。なお、図18では金属板30やリードフレーム39が半導体チップ10にはんだ29を介して接合されたものが示されている。
【0157】
図18に示されるように、半導体チップ10の主表面14に表面電極17が複数設けられている。また、第1保護膜25が通路12全体に形成されている。すなわち、表面電極17から露出する主表面14全体が第1保護膜25に覆われている。
【0158】
そして、半導体チップ10の主表面14を基準として、はんだ29が実装されない領域14b内の通路12(つまりはんだ29が実装されない通路12b)に形成された第1保護膜25よりもはんだ29が実装される領域14a内の通路12(つまりはんだ29が実装される通路12a)に形成された第1保護膜25が低くなっている。このため、はんだ29が実装されない領域14bに形成された第1保護膜25がNi膜27およびAu膜28から露出するように、はんだ29が実装されない領域14bに形成された第1保護膜25の一部、Ni膜27、およびAu膜28が切削されている。
【0159】
より具体的には、半導体チップ10の主表面14を基準として、はんだ29が実装される領域14aに形成された第1保護膜25の上のAu膜28の高さが、はんだ29が実装されない領域14bに形成された第1保護膜25の高さよりも低くなっている。これにより、はんだ29が実装されない領域14bに形成された第1保護膜25をバイト36で削ったとしても、はんだ29が実装される領域14aに形成された第1保護膜25の上のNi膜27およびAu膜28が削られることはない。
【0160】
このような構造においても、はんだ29が実装される領域14aの通路12にはゲート金属配線18やセンサ金属配線20が形成されていないので、はんだ29が実装される領域14aにおいてゲート金属配線18と表面電極17とがショート不良を起こすことはない。また、はんだ29が実装される領域14aに形成された第1保護膜25は、はんだ29が実装されない領域14bに形成された第1保護膜25よりも低いので、当該第1保護膜25がバイト36等により機械加工されることもなく、クラック31が発生することもない。
【0161】
上記構造の半導体装置を製造する際には、ウェハとして、半導体素子が形成された複数のセル11と、半導体チップ10の主表面14側において複数のセル11の周囲に位置する通路12と、を有する半導体チップ10が複数形成されたものを用意すれば良い。
【0162】
また、第1保護膜25を形成する際には、第1保護膜25を通路12全体に形成する。この場合、半導体チップ10の主表面14を基準として、はんだ29が実装されない領域14b内の通路12に形成する第1保護膜25よりもはんだ29が実装される領域14a内の通路12に形成する第1保護膜25が低くなるように第1保護膜25を形成する。
【0163】
そして、第1保護膜25を切削する際には、はんだ29が実装されない領域14bに形成された第1保護膜25がNi膜27およびAu膜28から露出するように、はんだ29が実装されない領域14bに形成された第1保護膜25の一部、Ni膜27、およびAu膜28を切削すれば良い。この場合、はんだ29が実装される領域14aに形成された第1保護膜25は切削されず、バイト36等から応力を受けることはない。また、はんだ29が実装される領域14aにはゲート金属配線18は形成されていないので、当該領域14aにおいてゲート金属配線18と表面電極17とのショート不良が起こらないようにすることができる。
【0164】
(第8実施形態)
本実施形態では、第7実施形態と異なる部分についてのみ説明する。第7実施形態では、はんだ29が実装される領域14aに形成された第1保護膜25がはんだ29が実装されない領域14bに形成された第1保護膜25よりも低くなっているが、本実施形態では、各領域14a、14bつまり通路12全体に形成した第1保護膜25の高さは同じになっている。
【0165】
図19は、本実施形態に係る半導体装置の断面図である。なお、図19は、図18と同様に、例えば図13のE−E断面に相当する図であり、はんだ29を介して金属板30やリードフレーム39が半導体チップ10に接合されたものを示している。
【0166】
図19に示されるように、本実施形態では、はんだ29が実装されない領域14bおよびはんだ29が実装される領域14aに形成された第1保護膜25がNi膜27およびAu膜28からそれぞれ露出するように、第1保護膜25の一部、Ni膜27、およびAu膜28が切削されている。これにより、主表面14上の第1保護膜25の高さはそれぞれ同じになっている。
【0167】
このような構造は、第1保護膜25および表面電極17の上にNi膜27およびAu膜28を形成した後、はんだ29が実装されない領域14bおよびはんだ29が実装される領域14aに形成された第1保護膜25がNi膜27およびAu膜28からそれぞれ露出するように、バイト36等によって第1保護膜25の一部、Ni膜27、およびAu膜28を切削することとなる。
【0168】
このように、はんだ29が実装される領域14aの第1保護膜25を切削し、第1保護膜25にバイト36等の応力がかかって第1保護膜25にクラック31が発生したとしても、はんだ29が実装される領域14aにゲート金属配線18が形成されていないので、クラック31に進入したはんだ29を介して表面電極17とゲート金属配線18とがショート不良を起こしてしまうことを防止することができる。
【0169】
(第9実施形態)
本実施形態では、第5、第7実施形態と異なる部分についてのみ説明する。第5、第7実施形態では、はんだ29が実装される通路12aに形成された第1保護膜25の高さが、はんだ29が実装されない通路12bに形成された第1保護膜25の高さよりも低かった。このため、はんだ29が実装される通路12aの第1保護膜25はバイト36等で加工されることがなかった。しかしながら、本実施形態では、はんだ29が実装される通路12aの第1保護膜25を切削するが、第1保護膜25に粒状の有機物または繊維状の無機物からなる非導電材48を混入することにより、第1保護膜25にクラック31が発生してもこの非導電材48によりクラック31の進展を阻止できるようにしたことが特徴となっている。
【0170】
以下では、第5実施形態のように、はんだ29が実装される通路12aにゲート金属配線18が形成されたものを例に説明する。
【0171】
図20は、本実施形態に係る半導体装置の断面図である。なお、図20は、図18と同様に、例えば図13のE−E断面に相当する図であり、はんだ29を介して金属板30やリードフレーム39が半導体チップ10に接合されたものを示している。また、ゲート金属配線18がビア49を介してゲート領域37に接続された断面を示している。
【0172】
図20に示されるように、第1保護膜25には非導電材48が混入している。非導電材48としては、例えば、アクリルやカーボンナノチューブ等の繊維状の無機物や、ガラスやエポキシ等の粒状の有機物を用いることができる。本実施形態では、非導電材48として、繊維状のアクリルを用いている。
【0173】
このような非導電材48が第1保護膜25に混入していることで、粒状または繊維状の非導電材48により第1保護膜25に発生したクラック31の進展が止まる。したがって、クラック31が発生してはんだ29が進入したとしても、ゲート金属配線18と表面電極17とのショート不良を防止することができる。
【0174】
上記では、はんだ29が実装される通路12aにゲート金属配線18が形成されたものについて説明したが、第7実施形態のように、はんだ29が実装される通路12aにゲート金属配線18が形成されない構造についても同様に第1保護膜25に非導電材48を混入したもの用いることができる。
【0175】
(他の実施形態)
上記各実施形態では、半導体チップ10に温度センサ19が設けられたものが示されているが、半導体チップ10に温度センサ19が設けられていなくても良い。また、センサ金属配線20は、温度センサ19が設けられていなくても、配線として半導体チップ10の主表面14に形成されていても良い。
【0176】
上記第1〜第4実施形態では、ウェハ全体にポリイミド膜を形成して所望位置のポリイミド膜のみを残すことにより第1保護膜25を形成していたが、第2保護膜26と同様に、注入器32を用いて第1保護膜25を形成しても良い。
【0177】
第5実施形態において、第2保護膜26を用いずに第1保護膜25の高さを調節する場合であっても、第2実施形態と同様に、ゲート金属配線18とセンサ金属配線20を同じ通路12に平行に配置することもできる。また、第3実施形態と同様に、半導体チップ10の角部34に第1保護膜25を塗布することもできる。
【0178】
第9実施形態では、第1保護膜25に非導電材48が混入されたものが示されているが、第2保護膜26についても粒状の有機物または繊維状の無機物からなる非導電材48が混入されているものを用いることができる。これにより、粒状または繊維状の非導電材48により第2保護膜26に発生したクラック31の進展を止めることができる。
【符号の説明】
【0179】
10 半導体チップ
11 セル
12 通路
12a はんだが実装される通路
12b はんだが実装されない通路
14 主表面
14a はんだが実装される領域
14b はんだが実装されない領域
17 表面電極
18 ゲート金属配線
20 センサ金属配線
25 第1保護膜
26 第2保護膜
27 Ni膜
28 Au膜
29 はんだ
30 金属板
32 注入器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1領域と第2領域とを有する半導体素子が形成された半導体チップ(10)と、
前記半導体チップ(10)の主表面(14)側に形成され、前記半導体素子の第1領域と電気的に接続された表面電極(17)と、
前記半導体チップ(10)の主表面(14)側に形成され、前記半導体素子の第2領域と電気的に接続され、前記第2領域に印加される電位を制御するための第1金属配線(18)と、
前記表面電極(17)の上に形成された金属層(27、28)と、
前記表面電極(17)および前記第1金属配線(18)の間に配置されると共に、前記第1金属配線(18)を覆う第1保護膜(25)と、
前記第1保護膜(25)の上に形成された第2保護膜(26)と、
前記表面電極(17)および前記第1金属配線(18)の少なくとも一部を覆うように形成され、前記金属層(27、28)の上に設けられたはんだ(29)を介して前記金属層(27、28)および前記表面電極(17)と電気的に接続された金属板(30)と、を備え、
前記半導体チップ(10)、前記表面電極(17)、前記第1金属配線(18)、および前記金属板(30)がパッケージ化された半導体装置であって、
前記第2保護膜(26)は、前記第1保護膜(25)のうちの少なくとも前記はんだ(29)に覆われる部分の上に形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記半導体チップ(10)の主表面(14)側に形成され、前記第1金属配線(18)とは電気的に分離された第2金属配線(20)を備えており、
前記半導体チップ(10)は、前記半導体素子が形成された複数のセル(11)と、前記半導体チップ(10)の主表面(14)側において前記複数のセル(11)の周囲に位置する通路(12)と、を有し、
前記第1金属配線(18)は、前記通路(12)の少なくとも一部に形成され、
前記第2金属配線(20)は、前記第1金属配線(18)が形成された通路(12)と同じ通路(12)に少なくとも一部が形成されると共に当該少なくとも一部が前記第1金属配線(18)と平行に形成されており、
前記第1保護膜(25)は、前記表面電極(17)、前記第1金属配線(18)、および前記第2金属配線(20)の間に配置されると共に、前記第1金属配線(18)および前記第2金属配線(20)を覆っていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体チップ(10)は、当該半導体チップ(10)の主表面(14)に垂直な側面(33)と、当該半導体チップ(10)の主表面(14)と側面(33)とで構成された角部(34)と、を有し、
前記第1保護膜(25)は、前記角部(34)を覆うように形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2保護膜(26)は、粒状の有機物または繊維状の無機物からなる非導電材(48)が混入されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項5】
主表面(14)を有すると共に、当該主表面(14)側に形成されたエミッタ領域(42)と、当該エミッタ領域(42)を貫通するトレンチ(43)と、当該トレンチ(43)の側壁に形成されたゲート絶縁膜(44)と、このゲート絶縁膜(44)上に形成されたゲート領域(37)とにより構成されたトレンチゲート構造を備えた半導体素子を有する半導体チップ(10)と、
前記半導体チップ(10)の主表面(14)側に形成され、前記半導体素子のエミッタ領域(42)と電気的に接続された表面電極(17)と、
前記半導体チップ(10)の主表面(14)側に形成され、前記半導体素子のゲート領域(37)と電気的に接続され、前記ゲート領域(37)に印加される電位を制御するための第1金属配線(18)と、
前記表面電極(17)の上に形成された金属層(27、28)と、
前記第1金属配線(18)を覆う第1保護膜(25)と、
前記表面電極(17)を覆うように形成され、前記金属層(27、28)の上に設けられたはんだ(29)を介して前記金属層(27、28)および前記表面電極(17)と電気的に接続された金属板(30)と、を備え、
前記半導体チップ(10)、前記表面電極(17)、前記第1金属配線(18)、および前記金属板(30)がパッケージ化された半導体装置であって、
前記ゲート領域(37)は、前記はんだ(29)が実装される領域(14a)と前記はんだ(29)が実装されない領域(14b)とをまたぐように形成されており、
前記第1金属配線(18)は、前記主表面(14)のうち前記はんだ(29)が実装されない領域(14b)に形成されると共に、前記はんだ(29)が実装されない領域(14b)のみで前記ゲート領域(37)と電気的に接続されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
前記表面電極(17)は、前記主表面(14)のうち前記はんだ(29)が実装される領域(14a)全体に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体チップ(10)は、前記半導体素子が形成された複数のセル(11)と、前記半導体チップ(10)の主表面(14)側において前記複数のセル(11)の周囲に位置する通路(12)と、を有し、
前記第1保護膜(25)は、前記通路(12)全体に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1保護膜(25)は、粒状の有機物または繊維状の無機物からなる非導電材(48)が混入されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項9】
第1領域と第2領域とを有する半導体素子が備えた半導体チップ(10)が複数形成されたウェハを用意する工程と、
前記複数の半導体チップ(10)の主表面(14)側に、前記半導体素子の第1領域と電気的に接続される表面電極(17)をそれぞれ形成する工程と、
前記複数の半導体チップ(10)の主表面(14)側に、前記半導体素子の第2領域と電気的に接続される第1金属配線(18)をそれぞれ形成する工程と、
前記表面電極(17)および前記第1金属配線(18)の間に配置されると共に、前記第1金属配線(18)を覆う第1保護膜(25)をそれぞれ形成する工程と、
注入器(32)を用いて前記第1保護膜(25)の上に第2保護膜(26)を塗布する工程と、
前記表面電極(17)の上に金属層(27、28)を形成する工程と、
前記金属層(27、28)を形成した後、前記ウェハを前記半導体チップ(10)ごとに切断する工程と、
前記金属層(27、28)の上に、はんだ(29)を介して、前記表面電極(17)および前記第1金属配線(18)の少なくとも一部を覆うと共に前記金属層(27、28)および前記表面電極(17)と電気的に接続される金属板(30)を接合する工程と、
前記金属板(30)を接合した後、前記半導体チップ(10)、前記表面電極(17)、前記第1金属配線(18)、および前記金属板(30)をパッケージ化する工程と、を含んだ半導体装置の製造方法であって、
前記第2保護膜(26)を塗布する工程では、前記注入器(32)を用いて前記第1保護膜(25)のうちの少なくとも前記はんだ(29)に覆われる部分の上に前記第2保護膜(26)を塗布することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記ウェハを用意する工程では、前記半導体チップ(10)それぞれが、前記半導体素子が形成された複数のセル(11)と、前記半導体チップ(10)の主表面(14)側において前記複数のセル(11)の周囲に位置する通路(12)と、を有するものを用意し、
前記第1金属配線(18)を形成する工程では、前記半導体チップ(10)の主表面(14)側において、前記通路(12)の少なくとも一部に前記第1金属配線(18)を形成する一方、前記第1金属配線(18)とは電気的に分離され、前記第1金属配線(18)を形成する通路(12)と同じ通路(12)に少なくとも一部が配置されると共に当該少なくとも一部が前記第1金属配線(18)と平行に配置される第2金属配線(20)を形成する工程と、
前記第1保護膜(25)を形成する工程では、前記表面電極(17)、前記第1金属配線(18)、および前記第2金属配線(20)の間に配置されると共に、前記第1金属配線(18)および前記第2金属配線(20)を覆うように前記第1保護膜(25)を形成することを特徴とする請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記ウェハを切断する工程は、前記ウェハを前記半導体チップ(10)ごとに切断した後、前記各半導体チップ(10)の間に隙間(35)を設け、前記注入器(32)を用いて、前記半導体チップ(10)の主表面(14)と側面(33)とで構成された角部(34)を覆うように前記第1保護膜(25)を塗布する工程を含んでいることを特徴とする請求項9または10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記表面電極(17)の上に金属層(27、28)を形成する工程では、前記第1保護膜(25)および前記第2保護膜(26)の上にも前記金属層(27、28)を形成し、
前記金属層(27、28)を形成する工程の後、前記金属層(27、28)から前記第2保護膜(26)が露出するように、前記第2保護膜(26)の一部および前記金属層(27、28)をバイト(36)もしくは多刃工具を用いて切削する工程を含んでいることを特徴とする請求項9ないし11のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記第2保護膜(26)を塗布する工程では、前記第2保護膜(26)として、粒状の有機物または繊維状の無機物からなる非導電材(48)が混入されているものを用いることを特徴とする請求項9ないし12のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
第1領域と第2領域とを有する半導体素子が形成された複数のセル(11)と、前記半導体チップ(10)の主表面(14)側において前記複数のセル(11)の周囲に位置する通路(12)と、を有する半導体チップ(10)が複数形成されたウェハを用意する工程と、
前記複数の半導体チップ(10)の主表面(14)側に、前記半導体素子の第1領域と電気的に接続される表面電極(17)をそれぞれ形成する工程と、
前記通路(12)の少なくとも一部に、前記半導体素子の第2領域と電気的に接続される第1金属配線(18)を形成する工程と、
前記表面電極(17)および前記第1金属配線(18)の間に配置されると共に前記第1金属配線(18)を覆う第1保護膜(25)を、はんだ(29)が実装されない通路(12b)に形成する前記第1保護膜(25)の高さが、はんだ(29)が実装される通路(12a)に形成する前記第1保護膜(25)の高さよりも高くなるように、注入器(32)を用いて前記第1保護膜(25)を前記通路(12)に塗布する工程と、
前記表面電極(17)および前記第1保護膜(25)の上に金属層(27、28)を形成する工程と、
前記はんだ(29)が実装されない通路(12b)に形成した前記第1保護膜(25)が前記金属層(27、28)から露出するように、前記はんだ(29)が実装されない通路(12b)に形成した前記第1保護膜(25)の一部および前記金属層(27、28)をバイト(36)もしくは多刃工具を用いて切削する工程と、
前記切削する工程の後、前記ウェハを前記半導体チップ(10)ごとに切断する工程と、
前記金属層(27、28)の上に、はんだ(29)を介して、前記表面電極(17)および前記第1金属配線(18)の少なくとも一部を覆うと共に前記金属層(27、28)および前記表面電極(17)と電気的に接続される金属板(30)を接合する工程と、
前記金属板(30)を接合した後、前記半導体チップ(10)、前記表面電極(17)、前記第1金属配線(18)、および前記金属板(30)をパッケージ化する工程と、を含んでいることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記第1金属配線(18)を形成する工程では、前記半導体チップ(10)の主表面(14)側において、前記通路(12)の少なくとも一部に前記第1金属配線(18)を形成する一方、前記第1金属配線(18)とは電気的に分離され、前記第1金属配線(18)を形成する通路(12)と同じ通路(12)に少なくとも一部が配置されると共に当該少なくとも一部が前記第1金属配線(18)と平行に配置される第2金属配線(20)を形成する工程と、
前記第1保護膜(25)を形成する工程では、前記表面電極(17)、前記第1金属配線(18)、および前記第2金属配線(20)の間に配置されると共に、前記第1金属配線(18)および前記第2金属配線(20)を覆うように前記第1保護膜(25)を形成することを特徴とする請求項14に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記ウェハを切断する工程は、前記ウェハを前記半導体チップ(10)ごとに切断した後、前記各半導体チップ(10)の間に隙間(35)を設け、前記注入器(32)を用いて、前記半導体チップ(10)の主表面(14)と側面(33)とで構成された角部(34)を覆うように前記第1保護膜(25)を塗布する工程を含んでいることを特徴とする請求項14または15に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
主表面(14)を有すると共に、当該主表面(14)側に形成されたエミッタ領域(42)と、当該エミッタ領域(42)を貫通するトレンチ(43)と、当該トレンチ(43)の側壁に形成されたゲート絶縁膜(44)と、このゲート絶縁膜(44)上に形成されたゲート領域(37)とにより構成されたトレンチゲート構造を備えた半導体素子を有する半導体チップ(10)が複数形成されたウェハを用意する工程と、
前記複数の半導体チップ(10)の主表面(14)側に、前記半導体素子のエミッタ領域(42)と電気的に接続される表面電極(17)をそれぞれ形成する工程と、
前記複数の半導体チップ(10)の主表面(14)側に、前記半導体素子のゲート領域(37)と電気的に接続される第1金属配線(18)をそれぞれ形成する工程と、
前記第1金属配線(18)を覆う第1保護膜(25)をそれぞれ形成する工程と、
前記表面電極(17)および前記第1保護膜(25)の上に金属層(27、28)を形成する工程と、
前記第1保護膜(25)が前記金属層(27、28)から露出するように、前記第1保護膜(25)の一部および前記金属層(27、28)をバイト(36)もしくは多刃工具を用いて切削する工程と、
前記切削する工程の後、前記ウェハを前記半導体チップ(10)ごとに切断する工程と、
前記金属層(27、28)の上に、はんだ(29)を介して、前記表面電極(17)を覆うと共に前記金属層(27、28)および前記表面電極(17)と電気的に接続される金属板(30)を接合する工程と、
前記金属板(30)を接合した後、前記半導体チップ(10)、前記表面電極(17)、前記第1金属配線(18)、および前記金属板(30)をパッケージ化する工程と、を含んだ半導体装置の製造方法であって、
前記ウェハを用意する工程では、前記半導体チップ(10)として、前記ゲート領域(37)は前記はんだ(29)が実装される領域(14a)と前記はんだ(29)が実装されない領域(14b)とをまたぐように形成されたものを用意し、
前記第1金属配線(18)を形成する工程では、前記第1金属配線(18)を前記主表面(14)のうち前記はんだ(29)が実装されない領域(14b)に形成すると共に、前記主表面(14)のうち前記はんだ(29)が実装されない領域(14b)のみで前記ゲート領域(37)と前記第1金属配線(18)とを電気的に接続することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項18】
前記表面電極(17)を形成する工程では、前記主表面(14)のうち前記はんだ(29)が実装される領域(14a)全体に前記表面電極(17)を形成することを特徴とする請求項17に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項19】
前記ウェハを用意する工程では、前記半導体素子が形成された複数のセル(11)と、前記半導体チップ(10)の主表面(14)側において前記複数のセル(11)の周囲に位置する通路(12)と、を有する半導体チップ(10)が複数形成されたウェハを用意し、
前記第1保護膜(25)を形成する工程では、前記第1保護膜(25)を前記通路(12)全体に形成することを特徴とする請求項17に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項20】
前記第1保護膜(25)を形成する工程では、前記半導体チップ(10)の主表面(14)を基準として、前記はんだ(29)が実装されない領域(14b)内の前記通路(12)に形成する第1保護膜(25)よりも前記はんだ(29)が実装される領域(14a)内の通路(12)に形成する第1保護膜(25)が低くなるように前記第1保護膜(25)を形成し、
前記切削する工程では、前記はんだ(29)が実装されない領域(14b)に形成された第1保護膜(25)が前記金属層(27、28)から露出するように、前記はんだ(29)が実装されない領域(14b)に形成された第1保護膜(25)の一部および前記金属層(27、28)を切削することを特徴とする請求項19に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項21】
前記切削する工程では、前記はんだ(29)が実装されない領域(14b)および前記はんだ(29)が実装される領域(14a)に形成された前記第1保護膜(25)が前記金属層(27、28)からそれぞれ露出するように、前記第1保護膜(25)の一部および前記金属層(27、28)を切削することを特徴とする請求項19に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項22】
前記第1保護膜(25)を形成する工程では、前記第1保護膜(25)として、粒状の有機物または繊維状の無機物からなる非導電材(48)が混入されているものを用いることを特徴とする請求項9ないし21のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−66371(P2011−66371A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−237249(P2009−237249)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】