説明

半導体装置の製造方法、配線用銅合金、及び半導体装置

【課題】半導体装置の歩留まりと信頼性を向上させる。
【解決手段】配線凹部に埋め込まれた部分以外のバリアメタル膜3b上のCu膜5bを化学機械研磨によって除去する。そして配線凹部内のCu膜5b上に、添加元素からなる層6bを形成する。添加元素を層6bからCu膜5b中に拡散させて、Cu表面、及びCu結晶粒の粒界及び該粒界近傍の位置においてCu結晶粒内部よりも添加元素の濃度が高い界面及びその近傍を形成するとともに、Cu膜5b中の酸素を層6bにゲッタリングさせる。その後、余剰な層6bを除去し、さらに絶縁膜上のバリアメタル膜3bを除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅配線を有する半導体装置の製造方法、配線用銅合金、及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の配線材料にはアルミニウム(Al)もしくはAl合金が広く用いられ、層間絶縁膜材料としてはシリコン酸化膜(SiO)が広く用いられてきた。しかし、半導体装置の微細化および高速化の進行に伴い、配線における信号伝達遅延を改善するうえで、配線材料としてはより低抵抗な銅(Cu)が、絶縁膜としてはより誘電率の低い低誘電率膜、例えばSiOCH膜が、それぞれ用いられるようになってきた。
【0003】
Cu配線を形成する場合には、ドライエッチングによる加工が困難であるため、一般にダマシン法が用いられている。ダマシン法は、半導体基板上に形成された絶縁膜上に溝を形成し、その溝にCuを埋設し、配線溝以外の余剰なCuを研磨することでCu配線を形成する方法である。また、Cuの絶縁膜中への拡散およびCuの腐食を防止するために、Cuの周囲にバリアメタル層を設ける必要がある。
以下に、一般的なCu配線の製造方法について、図10を用いて説明する。
【0004】
図10(a)は、この上に上層配線が形成される下層配線を示している。下層配線は、絶縁膜としてSiOCH膜1a上にキャップ絶縁膜6aが形成され、内側にバリアメタル膜4aが形成された配線溝または配線孔にCu配線5aが埋め込まれた構造となっている。下層配線も、以下に説明する上層配線と同様のプロセスにより形成できる。
【0005】
まず、図10(b)に示すように、下層配線上にSiOCH膜からなる絶縁膜1bを成膜する。次に、図10(c)に示すように、リソグラフィーと異方性エッチングによって、絶縁膜1bに配線溝または配線孔を形成する。続けて、図10(d)に示すように、配線溝または配線孔上に導体膜であるバリアメタル膜3bを形成し、さらに配線溝または配線孔にCu4bを埋め込む。次に、化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)によって、配線溝もしくは配線孔の外部の余剰なCu4bおよびバリアメタル膜3bを除去する(図10(e))。この上に、絶縁体であるキャップ絶縁膜6bを成膜することで、図10(f)に示すように、下面および側面をバリアメタル膜3bで、上面をキャップ絶縁膜6bで覆われたCu配線構造が形成される。
【0006】
Cu配線表面を覆うバリア絶縁膜としては、窒化シリコン(SiN)、炭窒化シリコン(SiCN)などが用いられているが、一般にこれらの膜の比誘電率は5.0以上と高く、配線の実効誘電率の低減、ひいては配線における信号伝達遅延の改善を困難としている。配線の実効誘電率低減のために、より比誘電率の低い膜をバリア絶縁膜として適用する検討がなされている。しかし、その場合、Cuの拡散防止効果が不十分、もしくはCuとの密着性が不十分であるため、エレクトロマイグレーション(EM)耐性が劣化し、断線が生じやすくなるという信頼性上の問題がある。さらに、バリア絶縁膜の低誘電率化に伴って膜の耐水性が劣化することで、製造プロセス中の水分がバリア絶縁膜中を透過し、バリア絶縁膜下のCu配線表面のCuが酸化し不安定化する。Cu表面が酸化し不安定化することで、Cuがさらに拡散しやすくなることで、EM耐性がさらに劣化する。また、Cu表面酸化の影響で、表面のCuが電界ドリフトによってバリア絶縁膜/絶縁膜界面に拡散し易くなることで、TDDB(Time Dependent Dielectric Breakdown)耐性が劣化するといった信頼性上の問題もある。ここで、バリア絶縁膜/Cu界面はEM、及びTDDBでの銅原子の主要拡散パスとなっており、信頼性上最も弱い界面となっている。
【0007】
EM信頼性向上のために、Cu表面のキャップ膜として、絶縁膜に代えて金属膜を用いるメタルキャップ技術が検討されている。メタルキャップ層の形成法としては、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)法(例えば、特許文献1参照)や、無電解めっきによる方法(例えば、特許文献2参照)など、選択的にCu配線上にのみメタルキャップ層を形成する方法が検討されている。
【0008】
また特許文献3には、エレクトロマイグレーションを抑制するために、銅配線を構成する多結晶銅合金の表面および表面近傍、かつ多結晶銅合金を構成する結晶粒の結晶粒界および粒界近傍において、添加元素の濃度が結晶粒内部よりも高くすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−319928号公報
【特許文献2】特表2003−505882号公報
【特許文献3】国際公開04/053971号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記CVDや無電解めっきによるCu配線上への選択成長プロセスでは、本質的に選択破れの可能性が存在し、その場合、絶縁膜上にもメタルが形成されることによる配線間リークや、配線間TDDB耐性の劣化が問題となる。
【0011】
また、配線間の寄生容量低減のために、カーボン(C)を導入して分極率を下げ、さらに膜中に空孔を導入することで比誘電率を2.6以下に下げた多孔質(ポーラス)SiOCH膜が用いられようとしているが、このようなポーラス膜が表面に露出した状態で、CVD原料や無電解めっき液にウェハ表面を曝した場合には、CVD原料やめっき液中の金属分子が多孔質膜中に拡散することで、絶縁特性や信頼性が著しく劣化する。
【0012】
さらに、絶縁膜にポーラスSiCOH膜を用いた場合には、ダマシン法によるCu配線形成時のCMPの際にSiOCH膜が露出した際に、CMPプロセス中の水分が空孔内に蓄積されることで、Cu表面が腐食するといった問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、半導体素子が形成された基板上に、絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜に、溝及び孔の少なくとも一方からなる配線用の凹部を形成する工程と、
前記凹部の内面を含む前記絶縁膜上に、Cuの拡散を防止するバリアメタル膜を成膜する工程と、
前記凹部内に埋め込むようにして、前記バリアメタル膜上にCu膜を成膜する工程と、
前記凹部に埋め込まれた部分以外の前記バリアメタル上の前記Cu膜を化学機械研磨によって除去する工程と、
前記凹部内の前記Cu膜上に添加元素からなる層を形成する工程と、
前記添加元素を前記添加元素の層から前記Cu膜中に拡散させて、Cu表面、及びCu結晶粒の粒界及び該粒界近傍の位置において前記Cu結晶粒内部よりも前記添加元素の濃度が高い界面及びその近傍を形成するとともに、前記Cu膜中の酸素を前記添加元素の層にゲッタリングさせる工程と、
余剰な添加元素の層を除去する工程と、
前記絶縁膜上のバリアメタル膜を除去する工程と、
を有することを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、Cu表面に高濃度に異種元素を添加することで、EMの拡散経路となっているCu配線表面及び表面近傍を安定化させ、Cu配線表面に沿ったCuのマイグレーションを抑制できる。このため、半導体装置の配線の信頼性が向上する。また、添加元素としてCuよりも還元性が高く酸化されやすい元素を用いた場合には、Cu表面及びCu内部に存在する酸素及び不純物のゲッタリング作用により、Cu表面及びCu内部が清浄化される。Cu表面及びCu中に存在する酸素は熱処理中に拡散し、下層のバリアメタルを酸化することがあるが、その場合、Cuとバリアメタルの密着性が悪化し、配線の信頼性に悪影響を及ぼす。Cu表面及びCu中に存在する酸素をゲッタリングすることは、バリアメタルの酸化を抑制することにもなり、Cu配線の信頼性向上に効果がある。さらに、絶縁膜上のバリアメタルを除去した後でも、Cu表面に高濃度の添加元素が残っているため、仮に表面が水分等の酸化性雰囲気に曝された場合でも、上記添加元素が酸化され、安定層が形成されるため、Cu配線表面に沿ったCuのマイグレーションを抑制でき、半導体装置の配線の信頼性が向上する。また、配線間絶縁膜として、空孔径が大きいポーラスSiCOH膜を用いた場合には、膜中に水分を取り込み易く、隣接するCu配線表面が酸化雰囲気である水分に曝されやすくなることから、Cu表面がより不安定化し、ピットやヒロックの欠陥が発生し、半導体装置の製品歩留りを大きく劣化させる要因となる。本発明においては、バリアメタルを除去してポーラスSiCOH膜が露出する前に、Cu表面を安定化させることができるため、半導体装置の歩留りと信頼性が向上する。
【0015】
本発明に係る配線用銅合金は、Cu(銅)を主成分とし、添加元素を含有する多結晶銅合金からなり、
前記添加元素の濃度が、前記多結晶銅合金の表面および表面近傍、かつ前記多結晶銅合金を構成する結晶粒の結晶粒界および粒界近傍において、結晶粒内部よりも高く、
更に、周囲にバリアメタルが形成されており、前記バリアメタルとの界面及び界面近傍において、前記添加元素の濃度が前記結晶粒の内部よりも高く、
前記添加元素の濃度が高い表面層の厚さが30nm未満であり、
前記多結晶銅合金との界面に位置する前記バリアメタルが酸化されていないことを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、配線のEMの拡散経路となっているCu配線表面及び表面近傍に高濃度に添加元素を導入することにより、Cu配線表面に沿ったCuのマイグレーションを抑制でき、配線用金属の信頼性を向上できる。また、添加元素をCu粒内よりも、結晶粒界及び界面近傍に高濃度に分布させることで、配線抵抗上昇を抑制しつつ、効果的に粒界・界面でのCuのマイグレーションを抑制することができる。またバリアメタルが酸化していないため、Cuとバリアメタルの密着性が悪化することが抑制され、これにより半導体装置の歩留りと信頼性が向上する。
【0017】
本発明に係る半導体装置は、半導体素子が形成された基板上に、請求項8乃至14のいずれかに記載の配線用銅合金からなる金属配線が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、半導体装置の歩留まりと信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る半導体装置の製造方法の第1実施形態の工程順に示す断面図である。
【図2】本発明に係る半導体装置の製造方法の第1実施形態の工程順に示す断面図である。図1に続く工程を示す図である。
【図3】本発明に係る半導体装置の製造方法の第2実施形態の工程順に示す断面図である。
【図4】本発明に係る半導体装置の製造方法の第2実施形態の工程順に示す断面図である。図3に続く工程を示す図である。
【図5】本発明に係る半導体装置の製造方法の第3実施形態の工程順に示す断面図である。
【図6】本発明に係る半導体装置の製造方法の第3実施形態の工程順に示す断面図である。図5に続く工程を示す図である。
【図7】本発明に係る半導体装置の製造方法の第1実施形態の変形例の工程順に示す断面図である。
【図8】本発明に係る半導体装置の製造方法の第1実施形態の変形例の工程順に示す断面図である。図7に続く工程を示す図である。
【図9】本発明に係る半導体装置の製造方法の第1実施形態の変形例の工程順に示す断面図である。図8に続く工程を示す図である。
【図10】一般的なCu配線の製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0021】
本願発明を詳細に説明する前に、本願における用語の意味を説明する。
【0022】
絶縁膜とは、例えば配線材を絶縁分離する膜(層間絶縁膜)である。低誘電率絶縁膜とは、半導体素子を接続する多層配線間の容量を低減するため、シリコン酸化膜(比誘電率4.5)よりも比誘電率の低い材料を指す。特に、多孔質絶縁膜としては、例えば、シリコン酸化膜を多孔化して比誘電率を小さくした材料、HSQ(Hydrogen Silsesquioxane:ハイドロゲンシルセスキオキサン)膜、及び、SiOCH系又はSiOC系等の有機シリカ系材料を多孔化して比誘電率を小さくしたもの等がある。これらの膜の更に一層の低誘電率化が望まれている。
【0023】
ダマシン配線とは、予め形成された層間絶縁膜の溝に、金属層を埋め込み、溝内以外の余剰な金属層を、例えばCMP等により除去することで形成される埋め込み配線を指す。例えば銅層によりダマシン配線を形成する場合には、銅層の側面及び底面をバリアメタルで覆い、銅層の上面を絶縁性バリア膜で覆う配線構造が一般に用いられる。
【0024】
CMP法とは、多層配線形成プロセス中に生じたウェハ表面の凹凸を、スラリーをウェハ表面に流しながら回転させた研磨パッドに接触させて研磨することによって平坦化する方法である。ダマシン法による配線形成においては、特に、配線溝又はビアホール(配線孔)に対し金属を埋設した後に、余剰の金属部分を除去し、平坦な配線表面を得るために用いられる。
【0025】
バリアメタルとは、配線を構成する金属元素が層間絶縁膜及び下層へ拡散することを防止するために、配線の側面及び底面を被覆する、バリア性を有する導電性膜を示す。例えば、配線がCuを主成分とする金属元素からなる場合には、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、窒化チタン(TiN)、炭窒化タングステン(WCN)のような高融点金属及びその窒化物等、又はそれらの積層膜が使用される。また、近年、ルテニウム(Ru)が比抵抗の低さと、ルテニウム上への直接Cuめっきが可能なことから、微細配線用のバリアメタル膜として検討が進められている。
【0026】
バリア絶縁膜とは、銅配線層の上面に形成され、Cuの酸化及び絶縁膜中へのCuの拡散を防ぐ機能、並びに加工時にエッチングストップ層としての役割を有する絶縁膜である。従来、SiN膜、SiCN膜及びSiC膜等が用いられている。
【0027】
メタルキャップ膜とは、銅層の上面に形成され、Cuの酸化及び絶縁膜中へのCuの拡散を防ぐ機能を有する金属膜である。例えば、CoWP及びCoWB等が検討されている。バリア絶縁膜が不要となることによる配線信号伝達遅延の改善、並びにエレクトロマイグレーション(EM)耐性及びストレスマイグレーション(SM)等の配線信頼性の向上が期待されている。
【0028】
半導体基板とは、半導体装置が構成された基板であり、特に単結晶シリコン基板上に作られたものだけでなく、SOI(Silicon on Insulator)基板、TFT(Thin film transistor)及び液晶製造用基板等の基板も含む。
【0029】
ハードマスクとは、層間絶縁膜の低誘電率化による強度低下により、直接CMPを行うのが困難な場合に、層間絶縁膜上に積層し、保護する役割の絶縁膜を指す。ハードマスクは相対的に誘電率が高いため、実効誘電率低減のために、CMP時にハードマスクを除去し、低誘電率膜を露出させる場合もある。
【0030】
プラズマCVD法とは、例えば、気体状の原料を減圧下の反応室に連続的に供給し、プラズマエネルギーによって、分子を励起状態にし、気相反応又は基板表面反応等によって基板上に連続膜を形成する手法である。
【0031】
PVD法としては、通常のスパッタリング法でもよいが、埋め込み特性の向上、膜質の向上及び膜厚のウェハ面内均一性を図る上では、指向性の高いスパッタリング法を使用することもできる。例えば、ロングスロースパッタリング法、コリメートスパッタリング法及びイオナイズドスパッタリング法等である。合金をスパッタする場合には、予め金属ターゲット内に主成分以外の金属元素を固溶限以下で含有させることで、成膜された金属膜を合金膜とすることができる。本発明中では、主にダマシン法により銅配線層を形成する際のCuシード層及びバリアメタル層を形成する際に使用することができる。
【0032】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照して具体的に説明する。先ず、本発明の第1の実施形態について説明する。図1(a)乃至(e)、及び図2(a)乃至(e)は、本第1実施形態に係る半導体装置の製造方法をその工程順に示す断面図である。
【0033】
第1図(a)はこの上に上層配線が形成される下層配線を示している。この下層配線は、絶縁膜1a、バリアメタル3a、及び多結晶Cu5a、添加元素濃度が高いCu配線表面及び表面近傍7a、同じく添加元素濃度が高い結晶粒界・バリアメタル界面及びその近傍8aからなるCu配線、さらに、バリア絶縁膜9aにより構成されている。なお、この部分も下記に示される上層配線と同様のプロセスを用いて形成できるが、本明細書においては、便宜上上層配線の製造方法について説明する。
【0034】
先ず、図1(b)に示すように、下層配線の上に、絶縁膜1bを全面に形成する。絶縁膜1bとしては、例えば有機シリカ(SiOCH)を使用することができる。次に、図1(c)に示すように、絶縁膜1bに配線溝及び配線孔(以下、開口部ともいう)を形成する。この工程は、例えば、リソグラフィー及び異方性エッチングによって行うことができる。配線孔を形成する場合には、下層の銅配線層が配線孔の底面に露出する程度にエッチングが行われる。
【0035】
次に、図1(d)に示すように、開口部を含む表面にバリアメタル膜3bを形成する。バリアメタル膜3bとしては、例えばTa、TaN、TiN及びWCN、さらにはRu等を使用することができる。その後、Cu4bを配線溝及び配線孔に埋め込むように、例えばめっき法を用いて形成する。次に、図1(e)に示すように、埋め込まれたCuの結晶粒成長のための熱処理を施す。この熱処理は、300℃以下の低温で行う。好ましくは150℃以下である。このCu粒成長のための熱処理は、省くことも可能である。この処理により、Cu4bは結晶粒の大きい多結晶のCu5bに変わる。なお、この熱処理の温度を150℃以下にすることで、めっき層であるCu4bの表面やCu4b中の酸素によってバリアメタル膜3bが酸化されるのを抑制することができる。
【0036】
その後、図2(a)に示すように、CMPにより配線溝及び配線孔以外の余剰なCu5bを除去する。これにより、配線溝及び配線孔に多結晶のCu5aが埋め込まれる。この時、絶縁膜1b上のバリアメタル膜3bは除去せずに残す。
【0037】
次に、図2(b)に示すように、Cu表面にCu中に添加する元素の層6bを形成する。層6bは、例えばスパッタリング法により形成される。その後、図2(c)に示すように、Cu中に添加元素を拡散させるための熱処理を施す。この熱処理として、例えば、不活性ガス又は還元性ガス雰囲気中において200℃乃至400℃の温度で30秒乃至1時間処理する。
【0038】
この熱処理によって、Cu中に添加元素が添加される。添加元素の層6bとしては、水溶性の金属、例えばTi、Zr、Hf、及びAlからなる群から選択された少なくとも1種の元素を含む層とする。これらの添加元素は、Cu膜中の固溶限が1原子%以下で、Cu結晶粒界での拡散係数が大きい元素である。この添加元素をCu膜中に添加することにより、Cu膜の結晶粒界及び結晶粒界近傍、あるいは、Cu結晶粒/バリアメタル界面及び界面近傍8bに、高濃度に添加元素を導入することができる。具体的には、Cu結晶粒の内部(例えば中心)における添加元素の濃度は0.1原子%以下である。そしてCu結晶粒の粒界及び粒界近傍における添加元素の濃度は、結晶粒内部における添加元素濃度の2倍以上1000倍以下、さらに詳しくは10倍以上100倍以下になる。また、添加元素はCu表面から拡散するため、Cu表面にも高濃度の添加元素の層7bが形成される。
また、この熱処理によって、同時に、Cu表面及びCu内部の酸素が添加元素の層にゲッタリングされることにより、Cu表面及びCu内部が清浄化される。
【0039】
次に、図2(d)に示すように、余剰な添加元素層6b、及びバリアメタル膜3bをCMPにより除去する。この時、Cu5bの表面に高濃度添加元素層7bを残すようにCMP研磨量を制御する。余剰な添加元素層6bの除去と、バリアメタル膜3bの除去を同一工程に行うこともできる。なお、残った高濃度添加元素層7bの厚さは、例えば30nm未満である。このようにすることで、抵抗の高い高濃度不純物添加層7bが配線表面にのみ形成されるため、配線全体の抵抗上昇を抑制しつつ、Cuの拡散経路であるCu配線表面は安定化されることから、効果的に配線の信頼性を向上させることができる。
【0040】
次に、図2(e)に示すように、表面全面にCuの腐食、拡散を防止するバリア絶縁膜9bをプラズマCVD法により形成する。バリア絶縁膜9bとしては、例えばSiCNなどを使用することができる。
【0041】
図1(b)〜図2(e)で示された工程を繰り返すことで、さらに上層の配線を積層できる。また、本実施形態では、配線溝と配線孔を同時に形成するデュアルダマシン法を用いて説明したが、配線溝のみ、または配線孔のみを形成するシングルダマシン法を用いた場合の配線凹部の形成にも同様に適用される。また、添加元素の層6bとしては、Cr、Co、Ru、Sn、Ni、Mg、Mn、及びWからなる群から選択された少なくとも1種の元素を含む層であってもよい。
【0042】
以上、本実施形態によれば、添加元素の層6bを形成するときには、バリアメタル膜3bを絶縁膜1b上から除去していない。そして、Cu5bの表面に高濃度添加元素層7bを形成してから、バリアメタル膜3bを除去している。このため、Cu5bに添加元素が導入される前にCu5bが水分等の酸化性雰囲気にさらされることを抑制できる。また、バリアメタル膜3bを除去する段階では、Cu5bの表面には高濃度添加元素層7bが形成されているため、仮に表面が水分等の酸化性雰囲気に曝された場合でも、上記添加元素が酸化され、多結晶銅合金の表面および表面近傍に、添加元素の酸化物による安定層が形成される。このため、Cu配線表面に沿ったCuのマイグレーションを抑制でき、半導体装置の配線の信頼性が向上する。この効果は、絶縁膜1bがポーラス膜など吸水しやすい膜である場合に特に顕著になる。
【0043】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造方法について、図3(a)乃至(e)、及び図4(a)乃至(e)を参照して説明する。
【0044】
第2実施形態の製造方法は、CMPにより余剰なCuを除去する際に、CMP処理時間を通常よりも長く設定することで、配線溝部のCuを過研磨することで、配線溝にリセスを形成する点を除いて、第1実施形態と同様である。その結果、第1実施形態と同様の効果が得られるほか、CMPによるバリアメタル除去後もCu表面に添加元素の層6bが残ることになる。配線表面に添加元素の層6bからなるメタルキャップが形成されることになり、配線表面の安定性がさらに向上し、配線表面でのCuのマイグレーションが抑制されることで、信頼性がよりいっそう高まる。
【0045】
図3(a)はこの上に上層配線が形成される下層配線を示している。この下層配線は、絶縁膜1a、バリアメタル3a、及び、多結晶Cu5a、元素濃度が高いCu配線表面及び表面近傍7a、同じく添加元素濃度が高い結晶粒界・バリアメタル界面及びその近傍8a、及び表面に形成された添加元素の層6aからなるCu配線、さらに、バリア絶縁膜9aにより構成されている。なお、この部分も下記に示される上層配線と同様のプロセスを用いて形成できるが、本明細書においては、便宜上上層配線の製造方法について説明する。
【0046】
先ず、図3(b)に示すように、下層配線の上に、絶縁膜1bを全面に形成する。絶縁膜1bとしては、例えば有機シリカ(SiOCH)を使用することができる。次に、図3(c)に示すように、絶縁膜1bに配線溝及び配線孔(以下、開口部ともいう)を形成する。この工程は、例えば、リソグラフィー及び異方性エッチングによって行うことができる。配線孔を形成する場合には、下層の銅配線層が配線孔の底面に露出する程度にエッチングが行われる。
【0047】
次に、図3(d)に示すように、開口部を含む表面にバリアメタル膜3bを形成する。バリアメタル膜3bとしては、例えばTa、TaN、TiN及びWCN、さらにはRu等を使用することができる。その後、Cu4bを配線溝及び配線孔に埋め込むように、例えばめっき法を用いて形成する。次に、図3(e)に示すように、埋め込まれたCuの結晶粒成長のための熱処理を施す。この熱処理は、300℃以下の低温で行う。好ましくは150℃以下である。このCu粒成長のための熱処理は、省くことも可能である。この処理により、Cu4bは結晶粒の大きいCu5bに変わる。
【0048】
その後、図4(a)に示すように、CMPにより配線溝及び配線孔以外の余剰なCuを除去する。これにより、配線溝及び配線孔に多結晶Cu5aが埋め込まれる。この際、CMP処理時間を通常よりも長く設定することで、配線溝内部のCuを一部除去することで、配線溝にリセスを形成する。また、この時、絶縁膜上のバリアメタル膜3bは除去せずに残す。
【0049】
次に、図4(b)に示すように、Cu表面にCu中に添加する元素の層6bを形成する。その後、図4(c)に示すように、Cu中に添加元素を拡散させるための熱処理を施す。この熱処理として、例えば、不活性ガス又は還元性ガス雰囲気中において200℃乃至400℃の温度で30秒乃至1時間処理する。
【0050】
この熱処理によって、Cu中に添加元素が添加される。添加元素の層6bとしては、Ti、Zr、Hf、及びAlからなる群から選択された少なくとも1種の元素を含む層とする。これらの添加元素は、Cu膜中の固溶限が1原子%以下で、Cu結晶粒界での拡散係数が大きい元素であり、この添加元素をCu膜中に添加することにより、Cu膜の結晶粒界及び結晶粒界近傍、あるいは、Cu結晶粒/バリアメタル界面及び界面近傍8bに、高濃度に添加元素を導入することができる。具体的には、Cu結晶粒の内部(例えば中心)における添加元素の濃度は0.1原子%以下である。そしてCu結晶粒の粒界及び粒界近傍における添加元素の濃度は、結晶粒内部における添加元素濃度の2倍以上1000倍以下、さらに詳しくは10倍以上100倍以下になる。また、添加元素はCu表面から拡散するため、Cu表面にも高濃度の添加元素の層7bが形成される。
また、この熱処理によって、同時に、Cu表面及びCu内部の酸素が添加元素の層にゲッタリングされることにより、Cu表面及びCu内部が清浄化される。
【0051】
次に、図4(d)に示すように、余剰な添加元素層6b、及びバリアメタル膜3bをCMPにより除去する。この時、配線表面には添加元素層6bが残るようにCMP研磨量を制御する。余剰な添加元素層6bの除去と、バリアメタル膜3bの除去は同時に行うことで、製造工程を簡素化することもできる。
【0052】
次に、図4(e)に示すように、表面全面にCuの腐食、拡散を防止するバリア絶縁膜9bをプラズマCVD法により形成する。バリア絶縁膜9bとしては、例えばSiCNなどを使用することができる。
【0053】
図3(b)〜図4(e)で示された工程を繰り返すことで、さらに上層の配線を積層できる。また、本実施形態では、配線溝と配線孔を同時に形成するデュアルダマシン法を用いて説明したが、配線溝のみ、または配線孔のみを形成するシングルダマシン法を用いた場合の配線凹部の形成にも同様に適用される。また、添加元素の層6bとしては、Cr、Co、Ru、Sn、Ni、Mg、Mn、及びWからなる群から選択された少なくとも1種の元素を含む層であってもよい。
【0054】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係る半導体装置の製造方法について、図5(a)乃至(e)、及び図6(a)乃至(d)を参照して説明する。
【0055】
第3実施形態の構造においては、バリア絶縁膜9bを用いていない点で第2実施形態の構造と異なる。その結果、第1実施形態と同様の効果が得られるほか、Cu表面に安定な添加元素の層6bからなるメタルキャップが形成されることで、Cuの酸化、腐食が防止される。このため、バリア絶縁膜9bが不要になる。バリア絶縁膜8bを設けないことによりCu配線の実効誘電率が低減されるため、伝送の遅延を改善できる。
【0056】
第5図(a)はこの上に上層配線が形成される下層配線を示している。この下層配線は、絶縁膜1a、バリアメタル3a、及び、多結晶Cu5a、元素濃度が高いCu配線表面及び表面近傍7a、同じく添加元素濃度が高い結晶粒界・バリアメタル界面及びその近傍8a、及び表面に形成された添加元素の層6aからなるCu配線により構成されている。なお、この部分も下記に示される上層配線と同様のプロセスを用いて形成できるが、本明細書においては、便宜上上層配線の製造方法について説明する。
【0057】
先ず、図5(b)に示すように、下層配線の上に、絶縁膜1bを全面に形成する。絶縁膜1bとしては、例えば有機シリカ(SiOCH)を使用することができる。次に、図5(c)に示すように、絶縁膜1bに配線溝及び配線孔(以下、開口部ともいう)を形成する。この工程は、例えば、リソグラフィー及び異方性エッチングによって行うことができる。配線孔を形成する場合には、下層の銅配線層が配線孔の底面に露出する程度にエッチングが行われる。
【0058】
次に、図5(d)に示すように、開口部を含む表面にバリアメタル膜3bを形成する。バリアメタル膜3bとしては、例えばTa、TaN、TiN及びWCN、さらにはRu等を使用することができる。その後、Cu4bを配線溝及び配線孔に埋め込むように、例えばめっき法を用いて形成する。次に、図5(e)に示すように、埋め込まれたCuの結晶粒成長のための熱処理を施す。この熱処理は、300℃以下の低温で行う。好ましくは150℃以下である。このCu粒成長のための熱処理は、省くことも可能である。
【0059】
その後、図6(a)に示すように、CMPにより配線溝及び配線孔以外の余剰なCuを除去する。これにより、配線溝及び配線孔に多結晶のCu5aが埋め込まれる。この際、CMP処理時間を通常よりも長く設定することで、配線溝内部のCuを一部除去することで、配線溝にリセスを形成する。また、この時、絶縁膜上のバリアメタル膜3bは除去せずに残す。
【0060】
次に、図6(b)に示すように、Cu表面にCu中に添加する元素の層6bを形成する。その後、図6(c)に示すように、Cu中に添加元素を拡散させるための熱処理を施す。この熱処理として、例えば、不活性ガス又は還元性ガス雰囲気中において200℃乃至400℃の温度で30秒乃至1時間処理する。
【0061】
この熱処理によって、Cu中に添加元素が添加される。添加元素の層6bとしては、Ti、Zr、Hf、及びAlからなる群から選択された少なくとも1種の元素を含む層とする。これらの添加元素は、Cu膜中の固溶限が1原子%以下で、Cu結晶粒界での拡散係数が大きい元素であり、この添加元素をCu膜中に添加することにより、Cu膜の結晶粒界及び結晶粒界近傍、あるいは、Cu結晶粒/バリアメタル界面及び界面近傍8bに、高濃度に添加元素を導入することができる。具体的には、Cu結晶粒の内部(例えば中心)における添加元素の濃度は0.1原子%以下である。そしてCu結晶粒の粒界及び粒界近傍における添加元素の濃度は、結晶粒内部における添加元素濃度の2倍以上1000倍以下、さらに詳しくは10倍以上100倍以下になる。また、添加元素はCu表面から拡散するため、Cu表面にも高濃度の添加元素の層7bが形成される。また、この熱処理によって、同時に、Cu表面及びCu内部の酸素が添加元素の層にゲッタリングされることにより、Cu表面及びCu内部が清浄化される。
【0062】
次に、図6(d)に示すように、余剰な添加元素層6b、及びバリアメタル膜3bをCMPにより除去する。この時、配線表面には添加元素層6bが残るようにCMP研磨量を制御する。余剰な添加元素層6bの除去と、バリアメタル膜3bの除去は同一工程で行うことで、製造工程を簡素化することもできる。
【0063】
図5(b)〜図6(d)で示された工程を繰り返すことで、さらに上層の配線を積層できる。また、本実施形態では、配線溝と配線孔を同時に形成するデュアルダマシン法を用いて説明したが、配線溝のみ、または配線孔のみを形成するシングルダマシン法を用いた場合の配線凹部の形成にも同様に適用される。また、添加元素の層6bとしては、Cr、Co、Ru、Sn、Ni、Mg、Mn、及びWからなる群から選択された少なくとも1種の元素を含む層であってもよい。
【0064】
図7(a)乃至(i)、図8(a)乃至(f)、及びは、図9(a)乃至(d)は本発明の第1の実施形態における半導体装置の製造方法の変形例の工程順を示す断面図である。なお、本変形例においては、第1配線層をシングルダマシン法によって形成した後に、その上部にデュアルダマシン法によって第2配線層及び第1配線層との接続孔を形成するものである。以下に詳細に説明する。
【0065】
先ず、図7(a)に示すように、絶縁膜21、配線間絶縁膜22、ハードマスク(SiO膜)23を順に成膜する。ここでは、先ず、シリコン基板(図示せず)上に厚さが例えば300nmのSiO膜21を成膜する。次に、第1配線層における配線間絶縁膜となる、厚さが例えば80nmで比誘電率が例えば2.55のポーラスSiOCH膜22をプラズマCVD法により成膜する。続いて、ポーラス低誘電率膜の表面を覆うハードマスクとして、厚さが例えば80nmのSiO膜23を同じくプラズマCVD法により積層する。
【0066】
次に、図7(b)に示すように、リソグラフィーとドライエッチングによって上記の積層絶縁膜中に配線溝を形成する。その後、図7(c)に示すように、基板表面全面にイオン化スパッタ法によって、TaN膜とTa膜をこの順に積層したバリアメタル膜24、及び、厚さが例えば40nmのCu薄膜をシード膜として形成し、このCu膜を電極として電解めっき法によってCu25を埋め込む。
【0067】
次に、図7(d)に示すように、Cu粒成長のために、窒素(N)雰囲気中において例えば、150℃で30分間の熱処理を行う。これにより、Cu25は結晶粒の大きい多結晶のCu26に変わる。その後、図7(e)に示すように、余剰なCuをCMPにて除去する。
【0068】
次に、図7(f)に示すように、全面に膜厚20nmのTi膜(添加元素層)27をスパッタリングによって形成する。
【0069】
続いて、図7(g)に示すように、窒素雰囲気中で350℃、30分間の熱処理をして、Cu表面からTiをCu中に拡散させる。ここで、TiはCu結晶粒界を介して拡散し、バルク内には殆ど拡散しないため、Cu表面近傍の層28、及びCu結晶粒界近傍29にTiを多く含み、バルクCu中26にはTiが殆ど混入しない構造が形成される。
【0070】
次に、図7(h)に示すように、余剰なTi膜(添加元素層)27、及び、TaN膜とTa膜をこの順に積層したバリアメタル膜24を同時にCMPにより除去する。さらに、ハードマスク(SiO膜)23を除去し、ポーラスSiOCH膜22表面を露出させる。このとき、Cu表面近傍には、Tiが高濃度に添加された層28を残す。
【0071】
次に、図7(i)に示すように、バリア絶縁膜としてプラズマCVD法によって厚さが例えば30nmのSiCN膜30を形成する。次に、ビア及び第2配線層における配線層間絶縁膜として、比誘電率が例えば2.55のポーラスSiOCH膜31を例えば200nmの厚さでプラズマCVD法によって成膜する。その上に、ハードマスクとして厚さが例えば80nmのSiO膜32を、夫々CVD法によって成膜する。
【0072】
次に、図8(a)に示すように、リソグラフィーと異方性ドライエッチングによって、SiCN膜30をエッチングストッパーとして、SiO膜32、ポーラスSiOCH膜31の一部を順次除去することにより、第1及び第2配線層間のビア孔の主部を形成する。
【0073】
引き続きリソグラフィーと異方性エッチングにより、図8(b)に示すように、SiO膜32、ポーラスSiOCH膜31の一部を除去する。これにより、第2配線層の配線溝の主部を形成すると同時に、ビア孔底部のSiCN膜30を除去して、第1配線層の上部接続面を露出させる。この際、有機剥離液を用いて、ビア孔内及び溝内のエッチング残渣の除去並びにビア底に露出した配線層の表面のCuO及びCuOの除去を行う。
【0074】
次に、図8(c)に示すように、第2配線層の配線溝並びに第1及び第2配線層間のビア孔の内面を被覆するように、イオン化スパッタリング法によって、TaN膜とTa膜をこの順に積層したバリアメタル膜33、及び厚さが例えば40nmのCu薄膜を形成する。その後、これをシード電極として電解めっき法によってCu34を埋め込む。この手順は、図7(c)に示す第1配線層の形成と同様の手順である。
【0075】
次に、図8(d)に示すように、Cu34の粒成長のために、窒素(N)雰囲気中において例えば、150℃で30分間の熱処理を行う。その後、図8(e)に示すように、余剰なCuをCMPにて除去する。これにより、結晶粒が大きいCu35が形成される。
【0076】
次に、図8(f)に示すように、全面に膜厚20nmのTi膜(添加元素層)36をスパッタリングによって形成する。
【0077】
続いて、図9(a)に示すように、窒素雰囲気中で350℃、30分間の熱処理をして、Cu表面からTiをCu中に拡散させる。ここで、TiはCu結晶粒界を介して拡散し、バルク内には殆ど拡散しないため、Cu表面近傍の層37、及びCu結晶粒界近傍38にTiを多く含み、バルクCu中35にはTiが殆ど混入しない構造が形成される。
【0078】
次に、図9(b)に示すように、余剰なTi膜(添加元素層)36、及び、TaN膜とTa膜のバリアメタル膜33を同時にCMPにより除去し、さらに、ハードマスク(SiO膜)32を除去し、ポーラスSiOCH膜31表面を露出させる。このとき、Cu表面近傍には、Tiが高濃度に添加された層37を残す。
【0079】
次に、図9(c)に示すように、バリア絶縁膜としてプラズマCVD法によって厚さが例えば30nmのSiCN膜39を形成する。次に、図9(d)に示すように、カバー膜40としてSiO膜を成膜する。以下、図示しないが、カバー膜40にリソグラフィーとエッチングによって第2配線層との接合部を開口した後に、Ti、TiN及びAlを順次スパッタリングによって成膜する。次に、リソグラフィーとエッチングによってAl/TiN/Ti積層膜を電気測定用パッドパターンに加工する。以上により、2層配線を形成することができる。
【0080】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0081】
1a 絶縁膜
1b 絶縁膜
3a バリアメタル
3b バリアメタル膜
4a バリアメタル膜
4b Cu
5a 多結晶Cu
5b 多結晶Cu
6a 添加元素の層
6b 添加元素の層
9a バリア絶縁膜
9b バリア絶縁膜
21 SiO
22 ポーラスSiOCH膜
23 SiO2膜
24 バリアメタル膜
25 Cu
26 Cu
27 Ti膜
28 層
29 Cu結晶粒界近傍
30 SiCN膜
31 ポーラスSiOCH膜
32 SiO2膜
33 バリアメタル膜
34 Cu
35 Cu
46 Ti膜
37 層
38 Cu結晶粒界近傍
39 SiCN膜
40 カバー膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子が形成された基板上に、絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜に、溝及び孔の少なくとも一方からなる配線用の凹部を形成する工程と、
前記凹部の内面を含む前記絶縁膜上に、Cuの拡散を防止するバリアメタル膜を成膜する工程と、
前記凹部内に埋め込むようにして、前記バリアメタル膜上にCu膜を成膜する工程と、
前記凹部に埋め込まれた部分以外の前記バリアメタル上の前記Cu膜を化学機械研磨によって除去する工程と、
前記凹部内の前記Cu膜上に添加元素からなる層を形成する工程と、
前記添加元素を前記添加元素の層から前記Cu膜中に拡散させて、Cu表面、及びCu結晶粒の粒界及び該粒界近傍の位置において前記Cu結晶粒内部よりも前記添加元素の濃度が高い界面及びその近傍を形成するとともに、前記Cu膜中の酸素を前記添加元素の層にゲッタリングさせる工程と、
余剰な添加元素の層を除去する工程と、
前記絶縁膜上のバリアメタル膜を除去する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記バリアメタル上のCu膜を成膜する工程と、前記凹部内のCu膜上に添加元素からなる層を形成する工程との間では、150℃より高い温度での熱処理を加えないことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の半導体装置の製造方法において、
前記余剰な添加元素の層を除去する工程と、前記絶縁膜上のバリアメタル膜を除去する工程とを化学機械研磨によって同一工程で行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれかに記載の半導体装置の製造方法において、
前記凹部内の前記Cu膜上に添加元素からなる層を形成する工程がスパッタリング法によることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至3いずれかに記載の半導体装置の製造方法において、
前記凹部内の前記Cu膜上に添加元素からなる層を形成する工程が水溶性金属を用いることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記添加元素は、Ti(チタン)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、及びAl(アルミニウム)からなる群から選択された少なくとも1種の元素であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記添加元素は、Cr(クロム)、Co(コバルト)、Ru(ルテニウム)、Sn(錫)、Ni(ニッケル)、Mg(マグネシウム)、Mn(マンガン)、及びW(タングステン)からなる群から選択された少なくとも1種の元素であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
Cu(銅)を主成分とし、添加元素を含有する多結晶銅合金からなり、
前記添加元素の濃度が、前記多結晶銅合金の表面および表面近傍、かつ前記多結晶銅合金を構成する結晶粒の結晶粒界および粒界近傍において、結晶粒内部よりも高く、
更に、周囲にバリアメタルが形成されており、前記バリアメタルとの界面及び界面近傍において、前記添加元素の濃度が前記結晶粒の内部よりも高く、
前記添加元素の濃度が高い表面層の厚さが30nm未満であり、
前記多結晶銅合金界面のバリアメタルが酸化されていないことを特徴とする配線用銅合金。
【請求項9】
請求項8に記載の配線用銅合金において、
前記添加元素が、Ti、Zr、Hf、及びAlからなる群から選択された少なくとも1種の元素であることを特徴とする配線用銅合金。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の配線用銅合金において、
前記多結晶銅合金の表面および表面近傍には、Ti、Zr、Hf、及びAlからなる群から選択された少なくとも1種の元素の酸化物が形成されていることを特徴とする配線用銅合金。
【請求項11】
請求項8に記載の配線用銅合金において、
前記添加元素が、Cr、Co、Ru、Sn、Ni、Mg、Mn、及びWからなる群から選択された少なくとも1種の元素であることを特徴とする配線用銅合金。
【請求項12】
請求項8又は請求項11に記載の配線用銅合金において、
前記多結晶銅合金の表面および表面近傍には、Cr、Co、Ru、Sn、Ni、Mg、Mn、及びWからなる群から選択された少なくとも1種の元素の酸化物が形成されていることを特徴とする配線用銅合金。
【請求項13】
請求項8乃至12いずれか一項に記載の配線用銅合金において、
前記結晶粒内部の前記添加元素の濃度が0.1原子%以下であり、かつ、
前記結晶粒の粒界及び粒界近傍における添加元素の濃度は、結晶粒内部における添加元素濃度の2倍以上1000倍以下であることを特徴とする配線用銅合金。
【請求項14】
請求項13に記載の配線用銅合金において、
前記結晶粒の粒界及び粒界近傍における添加元素の濃度は、結晶粒内部における添加元素濃度の10倍以上100倍以下であることを特徴とする配線用銅合金。
【請求項15】
半導体素子が形成された基板上に、請求項8乃至14のいずれかに記載の配線用銅合金からなる金属配線が形成されていることを特徴とする半導体装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−9617(P2012−9617A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144092(P2010−144092)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】