説明

半導体装置の製造方法

【課題】半導体装置の製造工程での乾燥処理におけるパターンの倒壊を抑制可能とする、半導体装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】シリコン系材料を用いて構成されるシリコン系部材層を形成し、前記シリコン系部材層の上に、金属材料を用いて構成される金属部材層を形成し、前記金属部材層をパターニングし、パターニングされた前記金属部材層の表面に側壁膜を形成し、前記シリコン系部材層をパターニングすることにより、前記シリコン系部材層と、前記側壁膜で表面を覆われた前記金属部材層と、を備える構造体を形成し、薬液を用いて前記構造体の表面を洗浄し、前記構造体の表面から前記薬液を除去し、前記構造体の表面に撥水性保護膜を形成し、前記撥水性保護膜が形成された前記構造体の表面をリンスし、前記構造体の表面を乾燥させる、工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程では、半導体ウェーハの表面に処理液、例えば、薬液や純水を供給する処理が行われる。特に、ウェーハの洗浄処理では、ウェーハの表面に洗浄処理のための薬液が供給され、その後、純水の供給によるリンス処理が行われる。リンス処理後は、ウェーハの表面に残っている純水を除去してウェーハを乾燥させる乾燥処理が行われる。乾燥処理の方法としては、ウェーハ上の純水を例えばIPA(イソプロピルアルコール)に置換して、ウェーハの表面を乾燥させるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ウェーハの乾燥処理では、ウェーハ上のパターンが倒壊する現象の発生が課題となっている。かかる課題に対して、IPAに代えて低表面張力の液体、例えばHFE(ハイドロフルオロエーテル)等を使用する方法や、超臨界プロセスを用いる方法が提案されている。しかし、近年におけるパターンの微細化に伴い、低表面張力の液体を用いてもパターンの倒壊を抑制することが困難になっている。超臨界プロセスの場合、チャンバ内の超臨界雰囲気へ水分等が入ることによるパターンの倒壊や、量産技術の確立が困難であることが課題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3866130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、半導体装置の製造工程での乾燥処理におけるパターンの倒壊を抑制可能とする、半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明の一態様によれば、シリコン系材料を用いて構成されるシリコン系部材層を形成し、前記シリコン系部材層の上に、金属材料を用いて構成される金属部材層を形成し、前記金属部材層をパターニングし、パターニングされた前記金属部材層の表面に側壁膜を形成し、前記シリコン系部材層をパターニングすることにより、前記シリコン系部材層と、前記側壁膜で表面を覆われた前記金属部材層と、を備える構造体を形成し、薬液を用いて前記構造体の表面を洗浄し、前記構造体の表面から前記薬液を除去し、前記構造体の表面に撥水性保護膜を形成し、前記撥水性保護膜が形成された前記構造体の表面をリンスし、前記構造体の表面を乾燥させる、工程を含む、半導体装置の製造方法が提供される。
【0007】
また、本願発明の一態様によれば、金属材料を用いて構成される第1金属部材層を形成し、前記第1金属部材層の上に、シリコン系材料を用いて構成されるシリコン系部材層を形成し、前記シリコン系部材層の上に、金属材料を用いて構成される第2金属部材層を形成し、前記第2金属部材層をパターニングし、パターニングされた前記第2金属部材層の表面に側壁膜を形成し、前記シリコン系部材層と、前記第1金属部材層と、をパターニングすることにより、前記第1金属部材層と、前記シリコン系部材層と、前記側壁膜で表面を覆われた前記第2金属部材層と、を備える構造体を形成し、薬液を用いて前記構造体の表面を洗浄し、前記構造体の表面から前記薬液を除去し、前記構造体の表面に撥水性保護膜を形成し、前記撥水性保護膜が形成された前記構造体の表面をリンスし、前記構造体の表面を乾燥させる、工程を含む、半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、半導体装置の製造工程での乾燥処理におけるパターンの倒壊を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法の手順を説明するフローチャートである。
【図2】図2は、半導体装置を製造する過程を説明する断面模式図である。
【図3】図3は、半導体装置を製造する過程を説明する断面模式図である。
【図4】図4は、半導体装置を製造する過程を説明する断面模式図である。
【図5】図5は、配線層上に形成されているパターンの一部が液体で濡れている状態を示す図である。
【図6】図6は、第2の実施の形態に係る半導体装置の製造方法による過程を説明する断面模式図である。
【図7】図7は、第2の実施の形態に係る半導体装置の製造方法による過程を説明する断面模式図である。
【図8】図8は、半導体装置の一例であるReRAMの一部概略構成図である。
【図9】図9は、一つのメモリセルと、その上下のビット線及びワード線を取り出して示した図である。
【図10】図10は、ReRAMを製造する過程の一例を説明する斜視模式図である。
【図11】図11は、ReRAMを製造する過程の一例を説明する斜視模式図である。
【図12】図12は、ReRAMを製造する過程の一例を説明する斜視模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を詳細に説明する。
【0011】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法の手順を説明するフローチャートである。図2、図3及び図4は、半導体装置を製造する過程を説明する断面模式図である。本実施の形態は、上層に金属部材層13、下層にシリコン系部材層12を備える構造体からなるパターンの製造において、側壁膜17を形成する工程と、シリル化処理を施す工程とを含むことを特徴とする。本実施の形態に係る製造方法は、例えば、半導体装置であるReRAM(Resistance Random Access Memory)を製造する場合に適している。
【0012】
ステップS1では、図2の(a)に示すように、配線材料からなる配線層11の上に、シリコン系部材層12、金属部材層13を順次形成する。シリコン系部材層12は、シリコン系材料、例えば、シリコン酸化物やポリシリコン等を用いて構成される。金属部材層13は、金属材料を用いて構成される。
【0013】
ステップS2では、図2の(b)に示すように、金属部材層13の上にハードマスク14を形成する。ハードマスク14は、例えば、シリコン酸化物を用いて構成される。次に、図2の(c)に示すように、ハードマスク14の上にレジスト層15を形成し、所望とするパターンにレジスト層15を加工する。レジスト層15をパターニングした後、ドライエッチングを施すことにより、図3の(d)に示すように、ハードマスク14をパターニングする。ハードマスク14をパターニングした後、図3の(e)に示すように、レジスト層15を剥離する。
【0014】
ステップS3では、ドライエッチングを施すことにより、図3の(f)に示すように、金属部材層13をパターニングする。ステップS3では、金属部材層13の下のシリコン系部材層12には加工を施さない。ステップS4では、ステップS3でのドライエッチングにより生じた残渣を除去するために、ステップS3までの工程により形成された構造体16の表面と、シリコン系部材層12の露出部分とを洗浄する。洗浄には、例えば、SC1、SC2、SPM、HF等の薬液を使用する。なお、パターンの倒壊は、パターンを構成する各構造体が高アスペクト比であるほど生じ易い。本工程は、金属部材層13及びシリコン系部材層12のうち、金属部材層13のみを加工した段階であって、構造体16のアスペクト比が十分低いことから、パターンの倒壊が発生する可能性は小さい。
【0015】
ステップS5では、図3の(g)に示すように、金属部材層13及びハードマスク14からなる構造体16の表面と、金属部材層13の加工によって露出したシリコン系部材層12の表面とに、側壁膜17を形成する。側壁膜17は、後述するシリル化処理によってシリル化反応が可能な材料で構成される膜、例えば、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜である。側壁膜17の厚みは、分子一層分の厚み以上であれば良く、さらに、本工程以降における加工寸法への影響を低減可能な程度であることが望ましい。なお、ハードマスク14は、側壁膜17を形成する以前に除去することとしても良い。
【0016】
ステップS6では、ドライエッチングにより、図4の(h)に示すように、シリコン系部材層12をパターニングする。シリコン系部材層12をパターニングすることにより、シリコン系部材層12と、側壁膜17で表面を覆われた金属部材層13とを備える構造体18を形成する。
【0017】
ステップS7では、ステップS6でのドライエッチングにより生じた残渣を除去するために、ステップS6までの工程により形成された構造体18の表面と、配線層11の露出部分とを洗浄する。洗浄には、例えば、SC1、SC2、SPM、HF等の薬液を使用する。ステップS8では、ステップS7で使用した薬液を除去するために、超純水(DIW)を用いて構造体18の表面をリンスする。
【0018】
ステップS9では、シリル化処理により、図4の(i)に示すように、構造体18の表面に撥水性保護膜19を形成する。シリル化処理は、ステップS8で使用したDIWが乾燥する前に、構造体18の表面にシランカップリング剤を供給することにより行う。シランカップリング剤とDIWとの置換が十分できない場合、DIWによるリンスの後に、DIWをIPAやシンナーに置換する処理を追加しても良い。すなわち、構造体18の表面をリンスすることにより薬液を除去した後、シランカップリング剤を供給する前に、構造体18の表面にIPA或いはシンナーを供給することとしても良い。
【0019】
シランカップリング剤は、分子中に、無機材料との親和性及び反応性を有する加水分解基と、有機材料との化学結合が可能である有機官能基とを有する。シランカップリング剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、テトラメチルシリルジメチルアミン(TMSDMA)、テトラメチルシリルジエチルアミン(TMSDEA)等を用いる。
【0020】
シリコン系部材層12の表面には、大気との接触により生じたOH基が存在している(自然酸化膜)。シリコン系部材層12の表面にシランカップリング剤を供給すると、シリコン系部材層12の表面に存在するSi−OHと、シランカップリング剤のR−Si−OHとのシリル化反応により、シリコン系部材層12の表面にO−Si−Rが形成される。O−Si−RのうちのR基が外側を向いている分子構造により、撥水性を備える撥水性保護膜19が得られる。
【0021】
これに対して、金属部材層13はOH基を持たないため、金属部材層13にシランカップリング剤を直接供給しても、撥水処理を施すことができない。本実施の形態では、金属部材層13の表面にシリコン系材料からなる側壁膜17を形成することで、側壁膜17とシランカップリング剤とをシリル化反応させる。構造体18のうち金属部材層13により構成される部分には、側壁膜17を介して撥水性保護膜19が形成される。このようにして、構造体18の表面全体に撥水性保護膜19を形成することができる。本実施の形態では、撥水化処理としてシリル化処理について説明しているが、これに限られない。撥水化処理は、金属部材層13の表面には吸着しにくく、側壁膜17には吸着しやすいような界面活性剤等を用いた処理としても、同様の効果を得ることができる。
【0022】
ステップS10では、撥水性保護膜19が形成された構造体18の表面を、DIWを用いてリンスし、構造体18の表面を乾燥させる。なお、必要に応じて、DIWによるリンスの前に、シランカップリング剤をIPAやシンナーに置換する処理を追加しても良い。本工程における乾燥には、例えば、スピン乾燥法、蒸発乾燥法、減圧乾燥法等を用いる。また、DIWを溶剤、例えばIPAやHFEを含む溶剤に置換し、溶剤を蒸発乾燥させることとしても良い。
【0023】
ステップS11では、灰化処理により、図4の(j)に示すように、撥水性保護膜19を除去する。灰化処理は、例えば、ドライアッシング、オゾンガス処理、UV光照射等により行う。なお、撥水性保護膜19は、必要に応じて除去すれば良く、残すこととしても良い。例えば、ReRAMにおけるメモリセルの電気的特性を向上させるためには、撥水性保護膜19を除去することが望ましい。
【0024】
図5は、配線層11上に形成されているパターンの一部が液体20で濡れている状態を示す図である。乾燥処理によるパターンの倒壊現象は、パターンを構成する構造体18間の毛細管力により発生すると考えられている。液体20の表面張力をγ、構造体18の表面と液面とがなす角度(接触角)をθ、構造体18間における液面の高低差をΔH、構造体18間のスペース幅をS、とすると、パターンを倒壊させる力Fは、以下の式(1)で与えられる。
F=2γcosθ・ΔH/S ・・・(1)
【0025】
ΔHは、構造体18の高さによりほぼ決まるパラメータであって、ΔH/Sは、構造体18のアスペクト比によりほぼ決まるパラメータである。式(1)によると、力Fは、ΔH/Sに比例して大きくなる。このことから、構造体18のアスペクト比が高いほど、パターンの倒壊現象は発生し易くなる。
【0026】
本実施の形態では、構造体18の表面に撥水性保護膜19を形成し、構造体18の濡れ性を低下させる。撥水性保護膜19の撥水作用により、接触角θが大きく(90°に近く)なり、構造体18間の毛細管力は低減される。これにより、乾燥処理の際のパターンの倒壊を抑制させることが可能となる。本実施の形態は、上層に金属部材層13、下層にシリコン系部材層12を備え、高アスペクト比かつ微細なパターンの製造に適している。
【0027】
(第2の実施の形態)
図6及び図7は、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の製造方法による過程を説明する断面模式図である。本実施の形態は、第1金属部材層31、シリコン系部材層12及び第2金属部材層32を備える構造体からなるパターンの製造において、第2金属部材層32の表面に側壁膜17を形成する工程を含むことを特徴とする。第1の実施の形態と同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0028】
図6の(a)に示すように、配線層11の上に、第1金属部材層31、シリコン系部材層12、第2金属部材層32を順次形成する。第1金属部材層31、第2金属部材層32は、金属材料を用いて構成される。第1金属部材層31は、配線層11及びシリコン系部材層12の間に設けられる金属部材層である。第2金属部材層32は、シリコン系部材層12の上に形成される金属部材層である。シリコン系部材層12は、第1金属部材層31と第2金属部材層32との間に設けられる。
【0029】
次に、第2金属部材層32の上にハードマスク14を形成し、図6の(b)に示すように、ハードマスク14と第2金属部材層32とをパターニングする。ハードマスク14及び第2金属部材層32は、第1の実施の形態のステップS2及びステップS3(図1参照)と同様の加工により、パターニングする。本工程では、シリコン系部材層12及び第1金属部材層31には加工を施さない。さらに、ハードマスク14及び第2金属部材層32からなる構造体33の表面と、シリコン系部材層12の露出部分とを洗浄する。本実施の形態においても、洗浄には、例えば、SC1、SC2、SPM、HF等の薬液を使用する。本工程は、第1金属部材層31、シリコン系部材層12及び第2金属部材層32のうち、第2金属部材層32のみを加工した段階であって、構造体33のアスペクト比が十分低いことから、パターンの倒壊が発生する可能性は小さい。
【0030】
次に、図6の(c)に示すように、構造体33の表面と、第2金属部材層32の加工によって露出したシリコン系部材層12の表面とに、側壁膜17を形成する。なお、ハードマスク14は、側壁膜17を形成する以前に除去することとしても良い。次に、ドライエッチングにより図7の(d)に示すように、シリコン系部材層12と第1金属部材層31とをパターニングする。シリコン系部材層12と第1金属部材層31とをパターニングすることにより、第1金属部材層31と、シリコン系部材層12と、側壁膜17で表面を覆われた第2金属部材層32とを備える構造体34を形成する。
【0031】
次に、第1の実施の形態のステップS7及びステップS8と同様にして、構造体34の表面と、配線層11の露出部分とを洗浄し、DIWによるリンス処理を施す。さらに、シリル化処理により、図7の(e)に示すように、構造体34のうち第1金属部材層31からなる部分以外の部分の表面に撥水性保護膜19を形成する。シリル化処理は、DIWが乾燥する前に、構造体34の表面にシランカップリング剤を供給することにより行う。なお、本実施の形態の場合も、構造体34の表面をリンスすることにより薬液を除去した後、シランカップリング剤を供給する前に、構造体34の表面にIPA或いはシンナーを供給することとしても良い。
【0032】
シリル化反応は、構造体34のうち、シリコン系部材層12からなる部分と、側壁膜17で覆われた部分とで生じ、第1金属部材層31からなる部分には生じない。このようにして、構造体34のうち第1金属部材層31からなる部分以外の部分の表面に撥水性保護膜19を形成する。シリル化処理の後は、第1の実施の形態のステップS10、ステップS11と同様に、リンス処理、乾燥、灰化処理を施す。本実施の形態の場合も、撥水性保護膜19は、必要に応じて除去すればよく、残すこととしても良い。
【0033】
本実施の形態では、構造体34のうち第2金属部材層32、シリコン系部材層12からなる部分に撥水化処理を施し、第1金属部材層31からなる部分には撥水化処理は施されない。構造体34のうち第2金属部材層32の部分の位置、シリコン系部材層12の部分の位置に液面が存在する場合は、撥水性保護膜19の撥水作用により、上記の式(1)の接触角θが90°近くとなり、構造体34間の毛細管力は低減される。
【0034】
構造体34のうち第1金属部材層31の部分の位置に液面が存在する場合、構造体34は、毛細管力を受けることとなる。構造体34を倒壊させる力Fは、実質的に、第1金属部材層31の膜厚に依存する。構造体34の高さに対して、第1金属部材層31の膜厚を薄くすることにより、力Fを小さくすることができる。これにより、本実施の形態の場合も、乾燥処理の際のパターンの倒壊を抑制させることが可能となる。本実施の形態により製造される構造は、金属部材層同士の間にシリコン系部材層を有するものであれば良く、本実施の形態で説明するものに限られない。例えば、本実施の形態を応用することにより、金属部材層を三層以上備える構造を製造することとしても良い。
【0035】
図8は、第1の実施の形態、又は第2の実施の形態により製造された半導体装置の一例であるReRAM40の一部概略構成図である。ReRAM40は、行列状に配置された複数のメモリセル41を備える。ビット線42及びワード線43は、互いに交差させて配線された配線層である。メモリセル41は、ビット線42とワード線43とが交差する位置に配置されている。ReRAM40は、図示する構成に、さらにメモリセル41を介してビット線42及びワード線43を交互に積層させた三次元構造をなす多層型メモリである。
【0036】
図9は、一つのメモリセル41と、その上下のビット線42及びワード線43を取り出して示した図である。メモリセル41は、シリコン系部材層と金属部材層とを用いて構成されている。第1の実施の形態の構造体18(図4参照)、第2の実施の形態の構造体34(図7参照)は、メモリセル41の部分に相当する。第1の実施の形態、第2の実施の形態の配線層11は、ビット線42、ワード線43の部分に相当する。
【0037】
図10から図12は、ReRAM40を製造する過程の一例を説明する斜視模式図である。ここでは、本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法をReRAM40の製造プロセスに適用した場合の一例について、図10から図12を用いて説明する。まず、図10の(a)に示すように、タングステン膜101、窒化タングステン膜102、TiドープNiOx膜103、窒化タングステン膜104、及びPドープ多結晶シリコン膜105を順次形成する。
【0038】
タングステン膜101は、例えば、半導体材料を用いて構成される基板(不図示)の上(主面上)に積層される。タングステン膜101は、ビット線42(図8参照)として機能する層である。タングステン膜101は、例えば50nmの厚さで形成される。なお、タングステン膜101は、基板上に形成される最下層のビット線42である他、2層目以上に形成されるビット線42であっても良い。
【0039】
窒化タングステン膜102は、タングステン膜101が形成された加工体の上面(主面上)に積層される。窒化タングステン膜102は、記録部の電極層として機能する層であって、例えば10nmの厚さで形成される。TiドープNiOx膜103は、記録部の抵抗変化層(記録層)として機能する層であって、例えば10nmの厚さで形成される。窒化タングステン膜104は、記録部の電極層として機能する層であって、例えば10nmの厚さで形成される。
【0040】
Pドープ多結晶シリコン膜105は、化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing;CMP)による平坦化処理におけるストッパーである、CMPストッパー層として機能する。また、Pドープ多結晶シリコン膜105は、整流素子層(PINダイオード)の一部を構成するn型半導体層としても機能する。Pドープ多結晶シリコン膜105は、例えば50nmの厚さで形成される。
【0041】
次に、図10の(b)に示すように、Pドープ多結晶シリコン膜105からタングステン膜101までの各層を、第1の方向であるX軸方向に延在するライン状に一括加工する。加工には、リソグラフィ技術と反応性イオンエッチングとを用いる。エッチングは、基板とタングステン膜101との界面の位置まで施される。これにより、タングステン膜101からPドープ多結晶シリコン膜105までの積層体からなるパターンが基板上に形成された加工体が得られる。
【0042】
次に、図11の(c)に示すように、層間絶縁膜106、ノンドープ多結晶シリコン膜107、Bドープ多結晶シリコン膜108、窒化タングステン膜109、及びタングステン膜110を順次形成する。層間絶縁膜106は、エッチングにより得られたパターンの間に絶縁性材料を埋め込むことにより形成される。絶縁性材料が埋め込まれた加工体の上面をCMPにより平坦化することで、CMPストッパー層であるPドープ多結晶シリコン膜105を加工体の上面に露出させる。
【0043】
ノンドープ多結晶シリコン膜107は、Pドープ多結晶シリコン膜105を露出させた加工体の上面に積層される。ノンドープ多結晶シリコン膜107は、整流素子層の真性半導体層として機能する層であって、例えば10nmの厚さで形成される。Bドープ多結晶シリコン膜108は、整流素子層のp型半導体層として機能する層であって、例えば30nmの厚さで形成される。
【0044】
窒化タングステン膜109は、バリア層として機能する層であって、例えば10nmの厚さで形成される。タングステン膜110は、ワード線43(図8参照)として機能する層であって、例えば50nmの厚さで形成される。
【0045】
次に、タングステン膜110及び窒化タングステン膜109を、Y軸方向に延在するライン状に加工する。Y軸方向は、第1の方向に対して非平行な第2の方向である。加工には、リソグラフィ技術と反応性イオンエッチングとを用いる。エッチングは、Bドープ多結晶シリコン膜108の位置で選択的に停止させる。続いて、タングステン膜110と窒化タングステン膜109との表面を覆うように側壁膜(図示省略)を成膜する。続いて、側壁膜からPドープ多結晶シリコン膜105までの各層を、Y軸方向に延在するライン状に加工する。加工には、リソグラフィ技術と反応性イオンエッチングとを用いる。ここでのエッチングは、Pドープ多結晶シリコン膜105の途中で停止させる。これにより、図11の(d)に示すように、タングステン膜110からPドープ多結晶シリコン膜105の一部までが、Y軸方向に延在するライン状に加工された加工体が得られる。次に、エッチングにより生じた残渣を除去するために、加工表面を洗浄する。続いて、乾燥工程でのパターンの倒壊を防止するために、シリル化処理を行う。シリル化処理を行った後、リンスし、通常の乾燥工程を行う。このようにして、パターンの倒壊を防止しつつ、加工表面を清浄化することができる。
【0046】
その後、エッチングにより得られた加工体に酸化処理を施す。加工体は、例えば、炉中、水素/酸素混合ガス雰囲気において800℃以上の温度下で酸化処理が施される。ここでは、加工体の側面のうち、整流素子層を構成するPドープ多結晶シリコン膜105、ノンドープ多結晶シリコン膜107、及びBドープ多結晶シリコン膜108を選択的に酸化させ、表面にシリコン熱酸化膜を形成する。酸化処理により、整流素子層の界面特性を向上させることが可能となる。
【0047】
なお、ビット線42となるタングステン膜101、電極層となる窒化タングステン膜102及び104、抵抗変化層となるTiドープNiOx膜103、バリア層となる窒化タングステン膜109、及びワード線43となるタングステン膜110については、酸化させると、導電性や抵抗変化特性などが変化するため、好ましくない場合がある。これに対して、酸化処理より前に形成される層間絶縁膜106は、各層の側面を被覆することで酸化を抑制させる機能を果たす。また、配線層、電極層、及びバリア層として使用するタングステンやタングステン化合物は、比較的酸化されにくい性質を持つ。これらの措置により、加工体のうち整流素子層を構成する部分を選択的に酸化させることが可能となる。
【0048】
次に、図12の(e)に示すように、Pドープ多結晶シリコン膜105の残存部分、窒化タングステン膜104、TiドープNiOx膜103、及び窒化タングステン膜102を、Y軸方向に延在するライン状に加工する。加工には、反応性イオンエッチングを用いる。エッチングは、タングステン膜101と窒化タングステン膜102との界面の位置まで施される。エッチングにより得られたパターンの間には、絶縁性材料を埋め込むことにより、層間絶縁膜(図示省略)を形成する。
【0049】
窒化タングステン膜102、TiドープNiOx層103、及び窒化タングステン膜104は、抵抗変化型の記録部130を構成する。Pドープ多結晶シリコン膜105、ノンドープ多結晶シリコン膜107、及びBドープ多結晶シリコン膜108は、整流素子層140を構成する。Pドープ多結晶シリコン膜105は、整流素子層140のうち記録部130に対応させて突出された凸部を構成する。
【0050】
このようにして、ビット線42であるタングステン膜101と、ワード線43であるタングステン膜110とが交差する部分に、記録部130とPドープ多結晶シリコン膜105とを備えるメモリセル41が構成される。以上の工程を繰り返し、Z軸方向へ各層を積み上げることにより、多層型メモリであるReRAM40が作製される。Z軸方向は、X軸方向及びY軸方向に対して非平行な第3の方向である。
【0051】
第1の実施の形態及び第2の実施の形態に係る製造方法を用いて、配線層上にパターンを形成することにより、パターンの倒壊を抑制させ、ReRAM40の歩留まりを向上させることが可能となる。第1の実施の形態及び第2の実施の形態に係る製造方法は、シリコン系部材層と金属部材層とを備えるパターンの形成に適用可能であって、特に、高アスペクト比かつ微細なパターンの製造に有用である。パターンを構成する各層は、製造される半導体装置に応じて、適宜積層することとしても良い。なお、各実施の形態に係る製造方法は、ReRAM40の製造に適用される場合に限られず、各実施の形態にて参照した断面構成と同様の断面構成を備える構造について広く適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
12 シリコン系部材層、13 金属部材層、17 側壁膜、19 撥水性保護膜、31 第1金属部材層、32 第2金属部材層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン系材料を用いて構成されるシリコン系部材層を形成し、
前記シリコン系部材層の上に、金属材料を用いて構成される金属部材層を形成し、
前記金属部材層をパターニングし、
パターニングされた前記金属部材層の表面に側壁膜を形成し、
前記シリコン系部材層をパターニングすることにより、前記シリコン系部材層と、前記側壁膜で表面を覆われた前記金属部材層と、を備える構造体を形成し、
薬液を用いて前記構造体の表面を洗浄し、
前記構造体の表面から前記薬液を除去し、
前記構造体の表面に撥水性保護膜を形成し、
前記撥水性保護膜が形成された前記構造体の表面をリンスし、
前記構造体の表面を乾燥させる、
工程を含む、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
金属材料を用いて構成される第1金属部材層を形成し、
前記第1金属部材層の上に、シリコン系材料を用いて構成されるシリコン系部材層を形成し、
前記シリコン系部材層の上に、金属材料を用いて構成される第2金属部材層を形成し、
前記第2金属部材層をパターニングし、
パターニングされた前記第2金属部材層の表面に側壁膜を形成し、
前記シリコン系部材層と、前記第1金属部材層と、をパターニングすることにより、前記第1金属部材層と、前記シリコン系部材層と、前記側壁膜で表面を覆われた前記第2金属部材層と、を備える構造体を形成し、
薬液を用いて前記構造体の表面を洗浄し、
前記構造体の表面から前記薬液を除去し、
前記構造体の表面に撥水性保護膜を形成し、
前記撥水性保護膜が形成された前記構造体の表面をリンスし、
前記構造体の表面を乾燥させる、
工程を含む、半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記構造体の表面にシランカップリング剤を供給することにより前記撥水性保護膜を形成する、請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記側壁膜は、シリコン系材料を用いて構成される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記薬液を除去した後、前記シランカップリング剤を供給する前に、前記構造体の表面にイソプロピルアルコール或いはシンナーを供給する、請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記構造体の表面を乾燥させた後、前記撥水性保護膜を除去する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−251596(P2010−251596A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100850(P2009−100850)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】