説明

半導体装置の製造方法

【課題】フラッシュメモリといった半導体装置の特性変動を抑えられるようにする。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、基板上にシリコン窒化膜を形成する成膜工程と、前記シリコン窒化膜が形成された前記基板に対して酸化処理を施す酸化工程と、を含み、前記酸化工程では、前記シリコン窒化膜が形成された前記基板を収容したチャンバ内の圧力を大気圧よりも低くした状態で前記チャンバ内に酸素含有ガス及び水素含有ガスを供給し、前記シリコン窒化膜の表面からその反対側の前記基板との界面にかけて前記シリコン窒化膜の全体を酸化して前記シリコン窒化膜の全体をシリコン酸化膜に変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、特に、シリコン窒化膜を酸化する工程を含む半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造プロセスの途中過程においては、大気圧より低い圧力に制御されたチャンバ(処理室)内に酸素含有ガス及び水素含有ガスを導入することによってチャンバ内の被処理物を酸化すること(以下、減圧酸化法という)が行われている。これにより、異なるシリコン結晶面方位上で生じるシリコン酸化膜の成長速度差を抑制したり、高耐圧・高信頼性のシリコン酸化膜を得ることができるという利点がある。
【0003】
また、耐酸化性を有するシリコン窒化膜は通常の酸化方法では殆ど酸化しないが、減圧酸化法でシリコン窒化膜を酸化すると、シリコン基板上と等価な膜厚のシリコン酸化膜が形成されることが報告されている。また、シリコン酸化膜の上に積層されたシリコン窒化膜を減圧酸化法により一部酸化すると、シリコン酸化膜/シリコン窒化膜/シリコン酸化膜の積層構造が形成されるが、かかる積層構造は浮遊ゲート構造のフラッシュメモリのポリシリコン間を絶縁する絶縁膜として用いられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、減圧酸化法によりシリコン基板の表面を酸化することによって得られた酸化膜は、高耐圧・高信頼性等といった良質な電気特性を有するが、その酸化膜は多くの水素を含有している。かかる酸化膜をフラッシュメモリのトンネル酸化膜等のように高電界下で長時間使用すると、酸化膜中の水素が膜中より脱離する。このことが、フラッシュメモリの特性変動の要因となっていた。
【0005】
そこで、本発明の目的は、酸化膜中からの水素の脱離を抑制し、フラッシュメモリ等といった半導体装置の特性変動を抑えられるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、基板上にシリコン窒化膜を形成する成膜工程と、前記シリコン窒化膜が形成された前記基板に対して酸化処理を施す酸化工程と、を含み、前記酸化工程では、前記シリコン窒化膜が形成された基板を収容したチャンバ内の圧力を大気圧よりも低くした状態で前記チャンバ内に酸素含有ガス及び水素含有ガスを供給し、前記シリコン窒化膜の表面からその反対側の前記基板との界面にかけて前記シリコン窒化膜の全体を酸化して前記シリコン窒化膜の全体をシリコン酸化膜に変換することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、チャンバ内の圧力を大気圧よりも低くした状態でチャンバ内に酸素含有ガス及び水素含有ガスを供給し、シリコン窒化膜の全体を酸化してシリコン窒化膜の全体をシリコン酸化膜に変換するようにしたので、そのシリコン酸化膜が含有する水素の量を低く抑えることができる。そのため、そのようなシリコン酸化膜を用いた半導体装置の特性変動を抑えることができる。
また、SiとOの比率が化学量論組成に極めて近く良質なシリコン酸化膜を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
発明者等は、シリコン窒化膜が形成された基板を収容し大気圧より低い圧力に保たれたチャンバ内に酸素含有ガス及び水素含有ガスを導入して、基板上に形成されたシリコン窒化膜を酸化し、それにより得られたシリコン酸化膜中に含有される水素の量が、他の手法で形成されたシリコン酸化膜中の水素の量よりもはるかに低いことを発見した。そこで、発明者等は、チャンバ内の圧力を大気圧よりも低く制御し、その状態で酸素含有ガス及び水素含有ガスをチャンバ内に導入し、予め基板表面に堆積されたシリコン窒化膜の表面からその反対側の基板との界面にかけてそのシリコン窒化膜の全体を酸化してそのシリコン窒化膜の全体をシリコン酸化膜に変換することで、シリコン窒化膜を積層しない、水素含有量を抑制したシリコン酸化膜を形成することができることを見いだした。なお、当初、発明者等は、大気圧よりも低い圧力下においてシリコン窒化膜を全体的に酸化すると、SiONを含む膜が形成されると考えていたが、酸化処理後の膜を調べた結果、Nを殆ど含まず、SiとOの比率が化学量論組成(Si:O=1:2)に極めて近いシリコン酸化膜が形成されることを確認した。
【0009】
以下に、本発明を実施するための好ましい形態について説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態に限定するものではない。
【0010】
まず、基板上にシリコン窒化膜(Si)を堆積してシリコン窒化膜を成膜する。
ここで、基板の表層の少なくとも一部がシリコン(Si)からなる。基板全体がシリコンからなるものでもよい。シリコン窒化膜を成膜する際の下地となるシリコンは、単結晶シリコンであってもよいし、多結晶シリコンであってもよい。具体的には、例えば、単結晶シリコンウエハを基板として用い、そのシリコンウエハ上にシリコン窒化膜を成膜するようにしてもよいし、基板上に多結晶シリコン膜を形成し、その多結晶シリコン膜上にシリコン窒化膜を成膜するようにしてもよい。なお、基板はシリコンに限るものではなく、例えばガラス基板であってもよい。
【0011】
シリコン窒化膜の成膜法としては、ALD(Atomic Layer Deposition:原子層堆積)法、CVD法その他の気相成長法を用いる。シリコン窒化膜の成膜に用いるガスは例えばSiHClガス及びNHガスとする。なお、シリコン窒化膜の成膜時にレジスト等を用いてシリコン窒化膜を所定の形状にパターニングしてもよいし、シリコン窒化膜の成膜後にフォトリソグラフィ法・エッチング法によってシリコン窒化膜をパターニングしてもよい。
【0012】
シリコン窒化膜の厚さは20nm(200Å)以下とし、更に好ましくは10nm(100Å)以下とする。但し、その厚さは、1nm(10Å)以上とするのがよい。なお、シリコン窒化膜によって基板の表面全体を被覆してもよいし、基板の表面の一部をシリコン窒化膜によって被覆して他の部分を露出させてもよい。
【0013】
次に、大気圧よりも低い圧力、すなわち減圧の雰囲気において、基板の表面に成膜されたシリコン窒化膜を酸化する。ここで、シリコン窒化膜の表面からその反対側の基板との界面にかけてシリコン窒化膜の全体を酸化して、シリコン窒化膜の全体をシリコン酸化膜(SiO)に変換する。
【0014】
シリコン窒化膜を酸化するに際しては、シリコン窒化膜が成膜された基板を酸化処理用のチャンバ内に配置する。そして、そのチャンバ内の圧力を大気圧よりも低い圧力に維持した状態でそのチャンバ内に酸素含有ガス及び水素含有ガスを導入しつつ、そのチャンバ内からガスを排出する。そうすると、シリコン窒化膜が表面から酸化されていく。ここで、水素含有ガスとは、構成元素として水素を含むガスであり、水素含有ガスとしては、水素(H)ガス、アンモニア(NH)ガスおよびメタン(CH)ガスよりなる群から選択される少なくとも一つのガスを用いる。酸素含有ガスとは、構成元素として酸素を含むガスであり、酸素含有ガスとしては、酸素(O)ガスおよび亜酸化窒素(NO)ガスよりなる群から選択される少なくとも一つのガスを用いる。
【0015】
このようにしてシリコン窒化膜を酸化処理する際に、シリコン窒化膜の厚さが20nmを超える場合には、シリコン窒化膜の表面から20nmまでの領域が酸化されると、セルフリミットがかかり、それ以降は酸化処理を継続しても酸化レートが極めて低くなる。そうすると、シリコン窒化膜の表面から20nmを超え且つその反対側の下面(基板との界面)までの領域が殆ど酸化されず、酸化膜は殆ど成長しなくなる。従って、シリコン窒化膜の表面からその反対側の下面にかけてシリコン窒化膜を全体的に酸化するためには、シリコン窒化膜の厚さを20nm以下、すなわち、セルフリミットがかかる膜厚以下とする必要がある。なお、シリコン窒化膜の膜厚を例えば40nmとした場合、シリコン窒化膜の全てを酸化することは非常に困難となる。また、シリコン窒化膜を上述の酸化処理により変換したシリコン酸化膜は絶縁膜として用いられるので、そのシリコン酸化膜が薄すぎると、リーク電流が生じてしまう。そのため、変換前のシリコン窒化膜の厚さは1nm以上とするのが望ましい。
【0016】
シリコン窒化膜の表面からその反対側の基板との界面までシリコン酸化膜の全体が酸化されたら、酸化処理を停止する。なお、基板の表面の一部がシリコン窒化膜によって被覆されていない場合には、そのシリコン窒化膜が成膜されていない部分をレジスト等によって被覆した状態で酸化処理を行うと、その部分が酸化されない。一方、シリコン窒化膜が成膜されていない部分を露出させた状態で酸化処理を行うと、基板の露出した部分がシリコン窒化膜とともに酸化され、特に基板がシリコンからなる場合には、基板の露出した部分がシリコン酸化物になる。
【0017】
以上のように、シリコン窒化膜の表面からその反対側の基板との界面にかけてシリコン窒化膜の全体を酸化してシリコン窒化膜の全体をシリコン酸化膜に変換すると、そのシリコン酸化膜は殆どNを含まず、SiとOの比率が化学量論組成(Si:O=1:2)に極めて近い良質な膜となる。
また、上記のようにして得られたシリコン酸化膜には水素が殆ど含まれない。そのため、シリコン酸化膜から水素が脱離するということが生じず、このシリコン酸化膜を用いた半導体装置の特性変動が殆ど生じない。
【0018】
なお、シリコン窒化膜の全体がシリコン酸化膜に変換した後も、酸化処理を継続してもよい。そうすることにより、シリコン窒化膜を形成する際の下地である基板の表面をも酸化することができる。上述のように基板の表層の少なくとも一部又は全体がシリコンからなる場合、酸化処理の継続によってシリコン窒化膜を形成する際の下地のシリコンが表面側から酸化され、その少なくとも一部がシリコン酸化物に変換し、シリコン酸化膜となる。特に、上述のようにシリコン窒化膜の厚さが20nm以下であると、セルフリミットがかからないことから、シリコン窒化膜を形成する際の下地のシリコンの表面をも酸化することができることとなる。
【0019】
シリコン窒化膜を形成する際の下地のシリコンの表面をも酸化することで、シリコン窒化膜の全体を酸化して得られたシリコン酸化膜が薄い場合でも、それを補うことができ、シリコン酸化膜の総膜厚を厚くすることができる。すなわち、シリコン窒化膜の表面からその反対側の基板との界面にかけてそのシリコン窒化膜の全体が酸化された後も、その下層のシリコンの表面が酸化されることで、シリコン窒化膜が変換してなるシリコン酸化膜(第1のシリコン酸化膜)と、そのシリコン酸化膜の下層のシリコンの表面が酸化されることで生成されるシリコン酸化膜(第2のシリコン酸化膜)とを連続的に形成することができる。なお、第2のシリコン酸化膜は、シリコンを熱酸化することで生成される通常の熱酸化膜であり、第1のシリコン酸化膜とその下層のシリコンとの界面に形成されることとなる。このように、シリコン窒化膜の全体が酸化してなるシリコン酸化膜と、その下層のシリコンとの間に通常の熱酸化膜を界面層として形成することにより、その部分でのリークに対するエネルギー障壁を高くすることができ、リーク電流を抑制することができるようになる。
【実施例1】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。
図1は基板処理装置を示した概略縦断面図である。図1に示された基板処理装置は、酸化処理を行うために用いる酸化装置である。
【0021】
反応炉20は反応管21及びシールキャップ22を有し、この反応炉20の下方に回転機構27が設置されている。反応管21の下部が開口し、その開口がシールキャップ22によって閉塞されている。こうして、反応管21及びシールキャップ22によって包囲されたチャンバ(処理室)4が形成される。
【0022】
回転機構27には回転軸26が取り付けられ、その回転軸26が回転機構27の上端から上方に向けて延出し、シールキャップ22を貫通してチャンバ4内まで至っている。回転軸26の先端にボート受け28が取り付けられ、ボート受け28にボート2が搭載されている。ボート2は保持具であって、複数枚の基板1を略水平状態で所定間隔をもって複数段に保持するよう構成されたものである。ボート2の下部には、複数枚の断熱板29が搭載されている。
反応管21の周囲には抵抗加熱ヒータ5が配置されている。抵抗加熱ヒータ5は、反応炉20内のチャンバ4を加熱する加熱源である。
【0023】
反応管21の内側であって反応管21の天井壁31にはシャワー板44が取り付けられている。天井壁31及びシャワー板44によって包囲される部分にバッファ室43が形成されている。
【0024】
反応管21には、酸素含有ガスとしての酸素(O)ガスを供給する酸素供給管72及び水素含有ガスとしての水素(H)ガスを供給する水素供給管82が設けられている。具体的には、水素供給管82が反応管21の側壁32及び天井壁31の外側において上下方向に配管され、水素供給管82の上端部がバッファ室43に連通している。同様に、酸素供給管72が反応管21の側壁32及び天井壁31の外側において上下方向に配管され、酸素供給管72の上端部がバッファ室43に連通している。
【0025】
水素供給管82の下端部は水素供給ライン8に接続され、水素供給ライン8は水素ガス供給源42に接続されている。水素供給ライン8には、電磁バルブ6及びマスフローコントローラ12が設けられている。酸素供給管72の下端部は酸素供給ライン7に接続され、酸素供給ライン7は酸素供給源41に接続されている。酸素供給ライン7には、電磁バルブ6及びマスフローコントローラ12が設けられている。
【0026】
反応管21には、水素含有ガスとしての水素(H)ガスをチャンバ4内の基板が配列される基板配列領域に対応する領域の複数箇所から供給する水素供給ノズル101、102、103、104が設けられている。水素供給ノズル101、102、103、104は、反応管21の側壁32の下部を貫通して設けられている。水素供給ノズル101、102、103、104は反応管21内を反応管21の側壁32の内壁に沿って立ち上がっているが、長さがそれぞれ異なっている。水素供給ノズル101にはガス噴出口111、111aが、水素供給ノズル102にはガス噴出口112、112aが、水素供給ノズル103にはガス噴出口113、113aが、水素供給ノズル104にはガス噴出口114、114aが設けられている。ガス噴出口111、111a、112、112a、113、113a、114、114aは各ノズルの上端部(先端部)側に設けられており、反応管21の側壁32の内壁近傍で、その内壁側とは異なる方向を向くように構成されている。
【0027】
ガス噴出口111、112、113、114は、ウエハ配列方向と平行な方向すなわち上方に向かって開口しており、ガス噴出口111a、112a、113a、114aは、ウエハ配列方向と直交する方向であって基板1側に向かって開口している。
【0028】
水素供給ノズル101,102,103,104の下端部は、それぞれ、水素ライン91,92,93,94に接続され、水素供給ライン91、92、93、94は水素ガス供給源42に接続されている。水素供給ライン91、92、93、94には、電磁バルブ6及びマスフローコントローラ12がそれぞれ設置されている。水素供給ライン91、92、93、94はそれぞれ独立しており、各ライン毎に個別にHガスの流量を制御できるように構成されている。
【0029】
反応管21の下部には排気管36が設けられ、この排気管36に排気ライン23が接続されており、この排気ライン23には圧力制御部37および真空ポンプ3が接続されている。ウエハ処理中、反応管21内は真空ポンプ3により大気圧よりも低い所定の圧力(減圧)とされるが、この圧力制御は圧力制御部37およびコントローラ24により行う。なお、コントローラ24は、酸化装置を構成する各部の動作を所望のタイミングにて制御するように構成されている。
【0030】
次に、上記構成にかかる酸化装置を用いて、半導体装置の製造工程の一工程として、基板にシリコン酸化膜を形成する方法について説明する。
まず、例えばCVD装置を使用してSiHClガス及びNHガスを用いた気相成長法によってシリコン窒化膜(Si膜)を基板1上に成膜する。基板1としては、シリコンウエハを用いる。
【0031】
次に、図1に示された酸化装置を使用して、シリコン窒化膜に酸化処理を施す。以下、具体的に説明するが、以下の説明において、酸化装置を構成する各部の動作はコントローラ24により制御される。
【0032】
1バッチ分の基板1をボート2に移載すると、ヒータ5により加熱状態を維持された反応炉20のチャンバ4内に複数枚の基板1を装填したボート2を装入(ロード)し、シールキャップ22により反応管21内を密閉する。次に、真空ポンプ3により反応管21内を真空引きし、反応管21内の圧力が大気圧よりも低い所定の処理圧力となるよう制御する。回転機構27によりボート2が所定の回転速度で回転するようにする。また、炉内温度を昇温させ、炉内温度が所定の処理温度となるよう制御する。その後、酸素供給ライン7よりチャンバ4内にOを供給すると共に、水素供給ライン8、91、92、93、94よりチャンバ4内にHを供給する。これにより、OとHとがヒータ5により加熱された雰囲気内で反応して反応種が生成され、この反応種によりシリコン窒化膜に酸化処理が施される。こうして、基板1上のシリコン窒化膜をその表面からその反対側のシリコンウエハとの界面にかけて酸化する。処理温度としては、500〜1000℃、処理圧力としては、1〜1000Pa、酸素ガス供給流量としては、1〜20L/min、水素ガス供給流量(総流量)としては、0.5〜10L/minが例示される。
【0033】
シリコン窒化膜の酸化処理が終了すると、真空引き、不活性ガスによるパージ等により炉内の残留ガスを除去し、炉内温度を所定の温度まで降温した後、ボート2を反応炉20内から搬出(アンロード)し、ボート2に支持された全ての基板1が冷えるまで、ボート2を所定位置で待機させる。待機させたボート2に保持された基板1が所定温度まで冷却されると、基板移載機等により基板1を回収する。
【0034】
図2は、上述のように酸化処理を経て得られたシリコン酸化膜中に含有される水素の量をSIMS(Secondary Ion Mass Spectroscopy)により組成分析比較した結果である。図3は、シリコン窒化膜を成膜せずにシリコンウエハの表面を上述の酸化処理によって酸化して、得られた酸化膜中に含有される水素の量をSIMS(Secondary Ion Mass Spectroscopy)により組成分析比較した結果である。図2、図3の何れの場合においても、酸化処理の条件は上述の条件の範囲内とした。また、図2における酸化処理の条件と図3における酸化処理の条件は同じ条件とした。
【0035】
図2、図3を比較すると、シリコン窒化膜を酸化して得られたシリコン酸化膜に含有される水素の量は、シリコンウエハの表面を酸化して得られたシリコン酸化膜に含有される水素の量よりも低いことが明らかである。
【実施例2】
【0036】
図4は、半導体装置の製造工程の一工程として、基板にシリコン酸化膜を形成する工程を示した図である。
【0037】
まず、図4(a)に示すようにシリコンウエハ201を準備し、図4(b)に示すようにシリコンウエハ201の表面上にシリコン窒化膜202を気相成長法により堆積する。シリコン窒化膜202を成膜するに際して、シリコン窒化膜202の膜厚を20nm以下、好ましくは10nm以下にする。このような膜厚にするのは、後述の酸化処理においてセルフリミットを発生させないためである。
【0038】
次に、大気圧よりも低い圧力の雰囲気下においてシリコン窒化膜202を酸化する。即ち、シリコン窒化膜202が成膜されたシリコンウエハ201を酸化処理用のチャンバ内にセッティングし、そのチャンバ内の圧力を大気圧よりも低くし、その状態でチャンバ内にOガス及びHガスを導入する。そうすると、図4(c)に示すように、シリコン窒化膜202が表面から酸化されていく。なお、このような酸化処理は、図1に示された酸化装置を用いて行う。
【0039】
酸化処理を継続すると、図4(d)に示すようにシリコン窒化膜202がシリコンウエハ201との界面まで酸化され、シリコン窒化膜202全体がシリコン酸化膜203に置換される。
【0040】
その後も、チャンバの圧力を大気圧よりも低い状態に保ち、チャンバ内にOガス及びHガスを導入し続けることで、酸化処理を継続する。そうすると、シリコンウエハ201がシリコン酸化膜203との界面から酸化されていく。そうして、シリコンウエハ201の表層部分がシリコン酸化膜204に置換されたら、酸化処理を終了する。
【0041】
以上のようにして形成されたシリコン酸化膜203には水素が殆ど含まれず、またシリコン酸化膜203のSiとOの比率も化学量論組成比に極めて近くなる。それゆえ、シリコン酸化膜203を用いた半導体装置の特性変動を抑えることができる。また、シリコン酸化膜203とシリコンウエハ201との間に通常の熱酸化膜であるシリコン酸化膜204が界面層として形成されるので、その部分でのリークに対するエネルギー障壁を高くすることができ、リーク電流を抑制することができる。
【実施例3】
【0042】
図5は、半導体装置、特にDRAMの製造工程の一工程として、DRAMのメモリセルに設けられるトランジスタの製造工程を示した図である。
【0043】
まず、図5(a)に示すように、単結晶シリコンからなるシリコンウエハ301上にシリコン窒化膜(Si膜)302を形成する。具体的には、例えばSiHClガス及びNHガスを用いたALD法、CVD法その他の気相成長法による成膜工程、フォトリソグラフィ法・エッチング法等によるパターニング工程を経てシリコン窒化膜302を形成する。
【0044】
次に、シリコン酸化膜302が形成されたシリコンウエハ301を酸化処理用のチャンバ内に収容し、そのチャンバ内の圧力を大気圧よりも低い状態に保って、チャンバ内にOガス及びHガスを導入して、シリコン窒化膜302を酸化する。このような酸化処理は図1に示された酸化装置を用いて行う。そうすると、シリコン窒化膜302の表面からその反対側のシリコンウエハ301との界面にかけてシリコン窒化膜302の全体が酸化され、シリコン窒化膜302の全体がシリコン酸化膜(SiO膜)303に変換される(図5(b))。ここで、酸化処理は、シリコン窒化膜302の表面を露出させ、シリコン窒化膜302が積層されていない部分を例えばマスク又はレジストによって被覆した状態で行うのが好ましい。
【0045】
シリコン窒化膜302全体が酸化した後も酸化処理を継続して行うことで、シリコン酸化膜303の下層がシリコン酸化膜303との界面から酸化されていき、シリコン酸化膜303の下層がシリコン酸化膜304に変換される(図5(c))。シリコン酸化膜303及びシリコン酸化膜304が、ゲート絶縁膜としてのゲート酸化膜となる。
【0046】
次に、シリコン酸化膜303の上にポリシリコン膜(Poly−Si膜)305を形成する。例えば、ALD法、CVD法その他の気相成長法によって成膜工程、フォトリソグラフィ法・エッチング法等によるパターンニング工程を経て、ポリシリコン膜305を形成する。
【0047】
次に、ポリシリコン膜305の上にタングステン(W)等のメタル膜306を形成する。例えば、ALD法、CVD法その他の気相成長法による成膜工程、フォトリソグラフィ法・エッチング法等によるパターンニング工程を経て、メタル膜306を形成する。メタル膜306及びポリシリコン膜305が、ゲート電極となる。
【0048】
次に、メタル膜306、ポリシリコン膜305及びシリコン酸化膜303を絶縁層307で被覆するよう絶縁層307を形成する(図5(d))。絶縁層307は例えばシリコン窒化物(Si)からなり、例えばSiHClガス及びNHガスを用いてCVD法により形成する。
【0049】
次に、図5(e)に示すように、シリコンウエハ301の主面であってシリコン酸化膜303の両側に不純物をイオン注入法によりドープして、不純物領域308,309を形成する。不純物領域308と不純物領域309との間には、チャネル領域310が形成される。不純物領域308がソースとなり、不純物領域309がドレインとなる。
以上の工程を経て、DRAMのトランジスタの製造がなされる。
【0050】
以上のようにして形成されたシリコン酸化膜303には水素が殆ど含まれないから、トランジスタの特性変動が生じにくい。また、シリコン酸化膜303のSiとOの比率が化学量論組成比に極めて近くなるので、シリコン酸化膜303の電気的特性が極めて良好である。また、シリコン酸化膜303とシリコンウエハ301との間に通常の熱酸化膜であるシリコン酸化膜304が界面層として形成されるので、その部分でのリークに対するエネルギー障壁を高くすることができ、リーク電流を抑制することができる。
【0051】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0052】
本発明の一態様によれば、基板上にシリコン窒化膜を形成する成膜工程と、前記シリコン窒化膜が形成された前記基板に対して酸化処理を施す酸化工程と、を含み、前記酸化工程では、前記シリコン窒化膜が形成された前記基板を収容したチャンバ内の圧力を大気圧よりも低くした状態で前記チャンバ内に酸素含有ガス及び水素含有ガスを供給し、前記シリコン窒化膜の表面からその反対側の前記基板との界面にかけて前記シリコン窒化膜の全体を酸化して前記シリコン窒化膜の全体をシリコン酸化膜に変換することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0053】
好ましくは、前記成膜工程では、膜厚が20nm以下の前記シリコン窒化膜を形成する。
【0054】
好ましくは、前記成膜工程において前記シリコン窒化膜を形成する際の下地がシリコンであり、前記酸化工程では、前記シリコン窒化膜の全体を前記シリコン酸化膜に変換した後も前記酸化処理を継続することで、前記下地をも酸化する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】基板処理装置を説明するための概略縦断面図である。
【図2】本発明の実施例1に係る製造方法よって得られたシリコン酸化膜中に含有する水素の量を分析した結果を示すグラフである。
【図3】比較例によって得られたシリコン酸化膜中に含有する水素の量を分析した結果を示すグラフである。
【図4】本発明の実施例2に係る半導体装置の製造方法の工程を示した図である。
【図5】本発明の実施例3に係る半導体装置の製造方法の工程を示した図である。
【符号の説明】
【0056】
1 基板
4 チャンバ
72 酸素供給管
82 水素供給管
91 水素供給ライン
101 水素供給ノズル
102 水素供給ノズル
103 水素供給ノズル
104 水素供給ノズル
201 シリコンウエハ
202 シリコン窒化膜
203 シリコン酸化膜
204 シリコン酸化膜
301 シリコンウエハ
302 シリコン窒化膜
303 シリコン酸化膜
304 下地

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にシリコン窒化膜を形成する成膜工程と、
前記シリコン窒化膜が形成された前記基板に対して酸化処理を施す酸化工程と、を含み、
前記酸化工程では、前記シリコン窒化膜が形成された前記基板を収容したチャンバ内の圧力を大気圧よりも低くした状態で前記チャンバ内に酸素含有ガス及び水素含有ガスを供給し、前記シリコン窒化膜の表面からその反対側の前記基板との界面にかけて前記シリコン窒化膜の全体を酸化して前記シリコン窒化膜の全体をシリコン酸化膜に変換することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記成膜工程では、膜厚が20nm以下の前記シリコン窒化膜を形成することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記成膜工程において前記シリコン窒化膜を形成する際の下地がシリコンであり、
前記酸化工程では、前記シリコン窒化膜の全体を前記シリコン酸化膜に変換した後も前記酸化処理を継続することで、前記下地をも酸化することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−87167(P2010−87167A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−253549(P2008−253549)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】