説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】配線遅延の増大を防止すると共に、配線信頼性の低下を抑制する。
【解決手段】半導体装置は、基板の上に形成され、第1の配線2を有する第1の絶縁膜1と、第1の絶縁膜1及び第1の配線2の上に形成された第2の絶縁膜3と、第2の絶縁膜3の上に形成された第3の絶縁膜4とを有している。第2の絶縁膜3は、空孔を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路の高集積化に伴い、配線パターンが高密度化し、配線間に生じる寄生容量が増大している。配線間の寄生容量が増大すると、信号の配線遅延が生じるため、高速動作が必要な半導体集積回路においては、配線間の寄生容量の低減が重要課題となっている。そのため、配線間の寄生容量を低減するために、配線間の絶縁膜の比誘電率の低減が行われている。
【0003】
従来、配線間の絶縁膜として、比誘電率が3.9〜4.2のシリコン酸化膜(SiO2膜)、又は比誘電率が3.5〜3.8のフッ素(F)を含有するSiO2膜が多用されてきた。また近年、一部の半導体集積回路においては、配線間の絶縁膜として、比誘電率が3.0以下のSiOC膜が用いられている。
【0004】
現在、配線間の寄生容量をより低減するために、多孔質シリカ膜を、配線間の絶縁膜として用いることが提案されている。ここで、多孔質シリカ膜は、機械的強度が弱いため、多孔質シリカ膜の機械的強度を向上させる方法として、多孔質シリカ膜に紫外線を照射し、多孔質シリカ膜に対して硬化処理を行う方法が提案されている。しかしながら、この方法では、次に示す問題がある。硬化処理時に、多孔質シリカ膜を透過した紫外線が、多孔質シリカ膜の下に形成された膜に進入するため、多孔質シリカ膜の下に形成された膜が劣化するという問題がある。そこで、多孔質シリカ膜の下に形成された膜が劣化するのを抑制しながら、多孔質シリカ膜の機械的強度を向上させることを目的に、多孔質シリカ膜と多孔質シリカ膜の下に形成された膜との間に、紫外線透過抑制膜を設ける技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
以下に、特許文献1に記載の従来の半導体装置の製造方法について、図5(a) 〜(c) を参照しながら説明する。図5(a) 〜(c) は、従来の半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0006】
まず、図5(a) に示すように、基板100の上に、膜厚が130nmのSiOC膜101を形成する。その後、SiOC膜101の上に、膜厚が30nmのSiCN膜からなる紫外線透過抑制膜102を形成する。その後、紫外線透過抑制膜102の上に、膜厚が130nmの多孔質シリカ膜103を形成する。その後、多孔質シリカ膜103に紫外線を照射し、多孔質シリカ膜103に対して硬化処理を行う。
【0007】
次に、図5(b) に示すように、エッチングにより、多孔質シリカ膜103、紫外線透過抑制膜102、及びSiOC膜101を貫通し、基板100の上面を露出するホール104を形成する。
【0008】
次に、図5(c) に示すように、エッチングにより、多孔質シリカ膜103に、配線溝を形成する。このようにして、SiOC膜101、及び紫外線透過抑制膜102に、ビアホールを形成すると共に、多孔質シリカ膜103に、ビアホールと連通する配線溝を形成する。
【0009】
次に、ビアホールの底面及び側面、配線溝の底面及び側面、並びに多孔質シリカ膜103の上に、バリアメタル膜を形成する。その後、多孔質シリカ膜103の上に、ビアホール及び配線溝内を埋め込むように、導電膜を形成する。その後、CMP法により、バリアメタル、及び導電膜における配線溝外に形成された部分を除去する。このようにして、ビアホールの底面及び側面に形成されたバリアメタル105aと、ビアホール内にバリアメタル105aを介して埋め込まれた導電膜105bとを有するビア105を形成する。それと共に、配線溝の底面及び側面に形成されたバリアメタル106aと、配線溝内にバリアメタル106aを介して埋め込まれた導電膜106bとを有する配線106を形成する。
【0010】
以上のようにして、従来の半導体装置を製造する。
【0011】
また現在、配線間の寄生容量をより低減するために、比誘電率が2.5以下に低減されたSiOC膜を、配線間の絶縁膜として用いることが提案されている。ここで、比誘電率が2.5以下に低減されたSiOC膜の形成方法は、次に示す通りである。比誘電率が3.0以下のSiOC膜の形成後に、SiOC膜に紫外線を照射し、SiOC膜に対してUVキュア処理を行うことにより、比誘電率が2.5以下に低減されたSiOC膜を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−21800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、本件発明者が鋭意検討を重ねたところ、比誘電率が2.5以下に低減されたSiOC膜を、配線間の絶縁膜として用いた半導体装置の場合、以下に示す問題があることを見出した。
【0014】
SiOC膜に対して行うUVキュア処理時に、SiOC膜を透過した紫外線が、SiOC膜の下に形成された膜に進入するため、SiOC膜の下に形成された膜に対してUVキュア処理が施される。
【0015】
例えば、SiOC膜の下に形成された膜がSiC膜の場合、SiC膜の比誘電率が、高くなる(後述の表1の左側参照)。SiC膜の比誘電率が高くなると、配線間容量が増大するため、配線遅延が増大するという問題がある。
【0016】
さらに、SiOC膜の下に形成された膜がSiC膜の場合、SiC膜に、大きなテンサイルストレス(引っ張り応力)が発生する(後述の表3の左側参照)。SiC膜に大きなテンサイルストレスが発生すると、SiC膜と、SiC膜の下に形成された配線との密着性が低下するため、配線にEM(エレクトロマイグレーション)が発生し、配線信頼性が低下するという問題がある。
【0017】
このように、SiOC膜に対して行うUVキュア処理時に、SiOC膜を透過した紫外線が、SiOC膜の下に形成された膜(例えば、SiC膜)に進入し、SiOC膜の下に形成された膜に対してUVキュア処理が施されると、配線遅延の増大、及び配線信頼性の低下を招くという問題がある。
【0018】
前記に鑑み、本発明の目的は、配線遅延の増大を防止すると共に、配線信頼性の低下を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記の目的を達成するために、本発明に係る半導体装置は、基板の上に形成され、第1の配線を有する第1の絶縁膜と、第1の絶縁膜及び第1の配線の上に形成された第2の絶縁膜と、第2の絶縁膜の上に形成された第3の絶縁膜とを備え、第2の絶縁膜は、空孔を含んでいることを特徴とする。
【0020】
本発明に係る半導体装置によると、第3の絶縁膜に対して行うキュア処理時に、第2の絶縁膜の上面近傍に、不要な結合(例えば、Si−O結合)が生成することはない。そのため、第2の絶縁膜の比誘電率が高くなることを防止することができる。そのため、配線間容量が増大することを防止することができるので、配線遅延が増大することを防止することができる。
【0021】
それと共に、既述の通り、第3の絶縁膜に対して行うキュア処理時に、第2の絶縁膜の上面近傍に、不要な結合(例えば、Si−O結合)が生成することはない。そのため、第2の絶縁膜に、大きなテンサイルストレス(引っ張り応力)が発生することを抑制することができる。そのため、第2の絶縁膜と、第1の配線との密着性が低下することを抑制することができるので、配線信頼性が低下することを抑制することができる。
【0022】
さらに、第2の絶縁膜は、空孔を含んでいるため、第2の絶縁膜の比誘電率を低くすることができるため、配線間容量を低減することができる。
【0023】
本発明に係る半導体装置において、第3の絶縁膜は、SiOCからなり、第3の絶縁膜は、比誘電率が2.5以下であることが好ましい。
【0024】
本発明に係る半導体装置において、第3の絶縁膜の上に形成された第4の絶縁膜をさらに備え、第2の絶縁膜、及び第3の絶縁膜の下部領域には、ビアが形成され、第3の絶縁膜の上部領域、及び第4の絶縁膜には、第2の配線が形成され、第1の配線と第2の配線とは、ビアを介して、互いに電気的に接続されていることが好ましい。
【0025】
本発明に係る半導体装置において、第2の絶縁膜は、SiCからなることが好ましい。
【0026】
本発明に係る半導体装置において、第2の絶縁膜は、比誘電率が4.0以下であることが好ましい。
【0027】
本発明に係る半導体装置において、第2の絶縁膜は、膜中の炭素の含有率が厚さ方向に略一定であることが好ましい。
【0028】
本発明に係る半導体装置において、第2の絶縁膜は、膜中の酸素の含有率が厚さ方向に略一定であることが好ましい。
【0029】
本発明に係る半導体装置において、第2の絶縁膜は、密度が約1.2g/cm3以上約2.0g/cm3以下であることが好ましい。
【0030】
本発明に係る半導体装置において、第2の絶縁膜は、Si−CH3/Si−C比が0.02以上0.10以下であることが好ましい。
【0031】
本発明に係る半導体装置において、第2の絶縁膜は、SiCOからなり、第2の絶縁膜は、Si−O/Si−C比が1.0以上であることが好ましい。
【0032】
本発明に係る半導体装置において、第2の絶縁膜は、SiCNからなることが好ましい。
【0033】
前記の目的を達成するために、本発明に係る半導体装置の製造方法は、基板の上に第1の配線を有する第1の絶縁膜を形成する工程(a)と、第1の絶縁膜及び第1の配線の上に、ポロジェンを含む第2の絶縁膜形成用膜を形成する工程(b)と、第2の絶縁膜形成用膜の上に第3の絶縁膜を形成する工程(c)と、第3の絶縁膜に対してキュア処理を行う工程(d)とを備え、工程(d)において、第2の絶縁膜形成用膜に対してキュア処理が施され、第2の絶縁膜形成用膜に含まれるポロジェンが脱離されてなる空孔を含む第2の絶縁膜が形成されることを特徴とする。
【0034】
本発明に係る半導体装置の製造方法によると、キュア処理時に、第2の絶縁膜の上面近傍に、不要な結合(例えば、Si−O結合)が生成することはない。そのため、第2の絶縁膜の比誘電率が高くなることを防止することができる。そのため、配線間容量が増大することを防止することができるので、配線遅延が増大することを防止することができる。
【0035】
それと共に、既述の通り、キュア処理時に、第2の絶縁膜の上面近傍に、不要な結合(例えば、Si−O結合)が生成することはない。そのため、第2の絶縁膜に、大きなテンサイルストレスが発生することを抑制することができる。そのため、第2の絶縁膜と第1の配線との密着性が低下することを抑制することができるので、配線信頼性が低下することを抑制することができる。
【0036】
さらに、キュア処理時に、第2の絶縁膜形成用膜に含まれるポロジェンを脱離させて、ポロジェンが脱離されてなる空孔を含む第2の絶縁膜を形成することができる。そのため、第2の絶縁膜の比誘電率を低くすることができるので、配線間容量を低減することができる。
【0037】
本発明に係る半導体装置の製造方法において、第3の絶縁膜は、SiOCからなり、工程(d)において、第3の絶縁膜は、工程(c)における第3の絶縁膜に比べて、比誘電率が減少し、第3の絶縁膜の比誘電率は、2.5以下であることが好ましい。
【0038】
本発明に係る半導体装置の製造方法において、工程(d)は、第3の絶縁膜に紫外線を照射する工程であることが好ましい。
【0039】
このようにすると、キュア処理時に、例えば、紫外線が、第3の絶縁膜を透過し、第2の絶縁膜形成用膜に進入することがあっても、第2の絶縁膜形成用膜に含まれるポロジェンを脱離させることで、第2の絶縁膜形成用膜に進入した紫外線のエネルギーを消費することができる。そのため、第2の絶縁膜形成用膜に進入した紫外線によって、第2の絶縁膜の上面近傍に、不要な結合(例えば、Si−O結合)が生成することはない。
【0040】
本発明に係る半導体装置の製造方法において、工程(d)は、第3の絶縁膜に電子線を照射する工程であることが好ましい。
【0041】
このようにすると、キュア処理時に、例えば、電子線が、第3の絶縁膜を透過し、第2の絶縁膜形成用膜に進入することがあっても、第2の絶縁膜形成用膜に含まれるポロジェンを脱離させることで、第2の絶縁膜形成用膜に進入した電子線のエネルギーを消費することができる。そのため、第2の絶縁膜形成用膜に進入した電子線によって、第2の絶縁膜の上面近傍に、不要な結合(例えば、Si−O結合)が生成することはない。
【0042】
本発明に係る半導体装置の製造方法において、工程(d)は、第3の絶縁膜を熱源に曝す工程であることが好ましい。
【0043】
このようにすると、キュア処理時に、例えば、第3の絶縁膜に供給された熱が、第2の絶縁膜形成用膜に伝播することがあっても、第2の絶縁膜形成用膜に含まれるポロジェンを脱離させることで、第2の絶縁膜形成用膜に伝播した熱のエネルギーを消費することができる。そのため、第2の絶縁膜形成用膜に伝播した熱によって、第2の絶縁膜の上面近傍に、不要な結合(例えば、Si−O結合)が生成することはない。
【0044】
本発明に係る半導体装置の製造方法において、工程(d)の後に、第3の絶縁膜の上に、第4の絶縁膜を形成する工程(e)と、第2の絶縁膜、及び第3の絶縁膜の下部領域に形成されたビアホール内に、ビアを形成すると共に、第3の絶縁膜の上部領域、及び第4の絶縁膜に形成された配線溝内に、第2の配線を形成する工程(f)とをさらに備えていることが好ましい。
【0045】
本発明に係る半導体装置の製造方法において、第2の絶縁膜は、SiCからなることが好ましい。
【0046】
本発明に係る半導体装置の製造方法において、工程(d)において、第2の絶縁膜は、第2の絶縁膜形成用膜に比べて、比誘電率が減少し、第2の絶縁膜の比誘電率は、4.0以下であることが好ましい。
【0047】
本発明に係る半導体装置の製造方法において、工程(d)において、第2の絶縁膜は、膜中の炭素の含有率が厚さ方向に略一定となるように形成されることが好ましい。
【0048】
本発明に係る半導体装置の製造方法において、工程(d)において、第2の絶縁膜は、膜中の酸素の含有率が厚さ方向に略一定となるように形成されることが好ましい。
【0049】
本発明に係る半導体装置の製造方法において、工程(d)において、第2の絶縁膜は、第2の絶縁膜形成用膜に比べて、C/Si組成比が0.5%以上減少することが好ましい。
【0050】
本発明に係る半導体装置の製造方法において、第2の絶縁膜は、SiCOからなり、工程(d)において、第2の絶縁膜は、第2の絶縁膜形成用膜に比べて、O/Si組成比が2.0%以上増加することが好ましい。
【0051】
本発明に係る半導体装置の製造方法において、第2の絶縁膜は、SiCNからなり、工程(d)において、第2の絶縁膜は、第2の絶縁膜形成用膜に比べて、N/Si組成比が2.0%以上減少することが好ましい。
【発明の効果】
【0052】
本発明に係る半導体装置及びその製造方法によると、キュア処理時に、第2の絶縁膜の上面近傍に、不要な結合(例えば、Si−O結合)が生成することはない。そのため、第2の絶縁膜の比誘電率が高くなることを防止することができる。そのため、配線間容量が増大することを防止することができるので、配線遅延が増大することを防止することができる。
【0053】
それと共に、既述の通り、キュア処理時に、第2の絶縁膜の上面近傍に、不要な結合(例えば、Si−O結合)が生成することはない。そのため、第2の絶縁膜に、大きなテンサイルストレスが発生することを抑制することができる。そのため、第2の絶縁膜と第1の配線との密着性が低下することを抑制することができるので、配線信頼性が低下することを抑制することができる。
【0054】
さらに、キュア処理時に、第2の絶縁膜形成用膜に含まれるポロジェンを脱離させて、ポロジェンが脱離されてなる空孔を含む第2の絶縁膜を形成することができる。そのため、第2の絶縁膜の比誘電率を低くすることができるので、配線間容量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。
【図2】(a) 〜(c) は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図3】(a) 〜(c) は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図4】(a) は、ポロジェンを含まないSiC膜に対し、UVキュア処理を施した場合における、C,O含有率と深さとの関係を示すグラフであり、(b) は、ポロジェンを含むSiC膜に対し、UVキュア処理を施した場合における、C,O含有率と深さとの関係を示すグラフである。
【図5】(a) 〜(c) は、従来の半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0057】
(一実施形態)
以下に、本発明の一実施形態に係る半導体装置について、図1、図2(a) 〜(c) 、図3(a) 〜(c) 、及び図4(a) 〜(b) を参照しながら説明する。
【0058】
以下に、本発明の一実施形態に係る半導体装置の構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。
【0059】
図1に示すように、基板(図示せず)の上には、第1の絶縁膜1が形成されている。第1の絶縁膜1の上部領域には、バリアメタル2aと導電膜2bとを有する第1の配線2が形成されている。第1の絶縁膜1及び第1の配線2の上には、空孔(図示せず)を含む第2の絶縁膜3が形成されている。
【0060】
第2の絶縁膜3の上には、第3の絶縁膜4及び第4の絶縁膜5が順次形成されている。第2の絶縁膜3、及び第3の絶縁膜4の下部領域には、バリアメタル7aと導電膜7bとを有するビア7が形成されている。第3の絶縁膜4の上部領域、及び第4の絶縁膜5には、バリアメタル8aと導電膜8bとを有する第2の配線8が形成されている。第1の配線2と第2の配線8とは、ビア7を介して、互いに電気的に接続している。
【0061】
第1の絶縁膜1は、例えば、SiOCからなる。ここで、「SiOC」とは、ベースにSi−O骨格を有し、Si−O骨格に−CH3基が結合されてなる化合物である。
【0062】
第2の絶縁膜3は、例えば、SiC又はSiCOからなり、比誘電率が、4.0以下である。第2の絶縁膜3が、例えば、SiCOからなる場合、第2の絶縁膜3を構成する各原子の原子百分率の値について、ラザフォード後方散乱(RBS)法により求めたところ、例えば、Si=38、O=35、C=27である。ここで、「SiC」とは、ベースにSi−C骨格を有し、Si−C骨格に−CH3基が結合されてなる化合物である。また、「SiCO」とは、ベースにSi−C骨格を有し、Si−C骨格にOが結合されてなる化合物である。
【0063】
第3の絶縁膜4は、例えば、SiOCからなり、比誘電率が、2.5以下である。
【0064】
第4の絶縁膜5は、例えば、SiOCからなり、比誘電率が3.0である。
【0065】
バリアメタル2a,7a,8aは、例えば、窒化タンタル(TaN)からなる。導電膜2b,7b,8bは、例えば、銅(Cu)からなる。
【0066】
<第2の絶縁膜>
第2の絶縁膜3について、本件発明者が検証したところ、以下に示すことを見出した。
【0067】
第2の絶縁膜3は、膜中の炭素の含有率が、厚さ方向に略同一である(後述の図4(b):点線参照)。また、第2の絶縁膜3は、膜中の酸素の含有率が、厚さ方向に略同一である(後述の図4(b):実線参照)。
【0068】
第2の絶縁膜3は、密度が約1.2g/cm3以上約2.0g/cm3以下である。
【0069】
第2の絶縁膜3におけるSi−CH3/Si−C比は、0.02以上0.10以下である。
【0070】
以下に、本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法について、図2(a) 〜(c) 及び図3(a) 〜(c) を参照しながら説明する。図2(a) 〜図3(c) は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0071】
まず、図2(a) に示すように、例えば、シリコン(Si)からなる基板(図示せず)の上に、例えば、SiOCからなる第1の絶縁膜1を形成する。その後、第1の絶縁膜1の上にレジスト(図示せず)を形成した後、リソグラフィ法により、レジストに配線溝パターンを形成し、配線溝パターンが形成されたレジストパターンを形成する。その後、レジストパターンをマスクとして、ドライエッチングにより、第1の絶縁膜1の上部領域に、配線溝を形成した後、アッシングにより、レジストパターンを除去する。その後、スパッタリングにより、配線溝の底面及び側面、並びに第1の絶縁膜1の上に、例えば、TaNからなるバリアメタルを形成した後、電気メッキ法により、第1の絶縁膜1の上に、配線溝内を埋め込むように、例えば、Cuからなる導電膜を形成する。その後、化学的機械的研磨(CMP)法により、バリアメタル及び導電膜における配線溝外に形成された部分を除去する。このようにして、配線溝の底面及び側面に形成されたバリアメタル2aと、配線溝内にバリアメタル2aを介して埋め込まれた導電膜2bとを有する第1の配線2を形成する。
【0072】
次に、図2(b) に示すように、例えば、化学気相堆積(CVD)法により、原料ガスとして、オルガノシラン及びポロジェン等を含むガスを用いて、第1の絶縁膜1及び第1の配線2の上に、例えば、膜厚が50nmのSiCからなり、ポロジェン(図示せず)を含む第2の絶縁膜形成用膜3Xを形成する。このとき、第2の絶縁膜形成用膜3Xの比誘電率は、5.0以下である。
【0073】
次に、CVD法により、第2の絶縁膜形成用膜3Xの上に、例えば、膜厚が125nmのSiOCからなる第3の絶縁膜4Xを形成する。このとき、第3の絶縁膜4Xの比誘電率は、3.0以下である。
【0074】
次に、図2(c) に示すように、第3の絶縁膜4Xに紫外線(UV)を照射し、第3の絶縁膜4に対してキュア処理を行う(以下、「UVキュア処理」と称す)。具体的には例えば、紫外線源が配置された真空チャンバー内において、ヘリウム(He)又はアルゴン(Ar)等のガス雰囲気中、第3の絶縁膜4Xに紫外線を照射する。これにより、第3の絶縁膜4の比誘電率を、2.5以下にする。
【0075】
このとき、UVキュア処理時における紫外線が、第3の絶縁膜4Xを透過するため、第3の絶縁膜4Xを透過した紫外線が、第2の絶縁膜形成用膜3Xに進入し、第2の絶縁膜形成用膜3Xに対してUVキュア処理が施される。これにより、第2の絶縁膜形成用膜3Xに含まれるポロジェンを脱離させて、ポロジェンが脱離されてなる空孔(図示せず)を含む第2の絶縁膜3を形成し、第2の絶縁膜3の比誘電率を、4.0以下にする。
【0076】
ここで、図2(c) に示す工程において、第2の絶縁膜3は、膜中の炭素の含有率が厚さ方向に略一定となるように形成される(後述の図4(b):点線参照)。また、第2の絶縁膜3は、膜中の酸素の含有率が厚さ方向に略一定となるように形成される(後述の図4(b):実線参照)。
【0077】
またここで、図2(c) に示す工程において、第2の絶縁膜3の密度は、約1.2g/cm3以上約2.0g/cm3以下になる。
【0078】
またここで、図2(c) に示す工程において、第2の絶縁膜3におけるSi−CH3/Si−O比は、0.02以上0.10以下になる。
【0079】
またここで、第2の絶縁膜3におけるC/Si組成比は、第2の絶縁膜形成用膜3XにおけるC/Si組成比に比べて、0.5%以上減少する。
【0080】
ここで、UVキュア処理の条件は、次に示す通りである。例えば、温度:300℃以上450℃以下、圧力:10×10-8Pa以上1.01325×105Pa以下、雰囲気:窒素を含む雰囲気、UVパワー:1kW以上10kW以下、UV照射時間:240秒以上1200秒以下である。
【0081】
次に、図3(a) に示すように、第3の絶縁膜4の上に、例えば、膜厚が60nmのSiOCからなる第4の絶縁膜5を形成する。
【0082】
次に、図3(b) に示すように、第4の絶縁膜5の上に、レジスト(図示せず)を形成した後、リソグラフィ法により、レジストにビアホールパターンを形成し、ビアホールパターンが形成されたレジストパターンを形成する。
【0083】
その後、レジストパターンをマスクとして、1回目のドライエッチングにより、第4の絶縁膜5及び第3の絶縁膜4におけるレジストパターンのビアホールパターン内に露出する部分を除去し、第4の絶縁膜5及び第3の絶縁膜4を貫通し、第2の絶縁膜3の上面を露出するホールを形成する。その後、2回目のドライエッチングにより、第2の絶縁膜3における該ホール内に露出する部分を除去し、第4の絶縁膜5、第3の絶縁膜4、及び第2の絶縁膜3を貫通し、第1の配線2の上面を露出するホール6を形成する。このように、第2の絶縁膜3は、エッチングストッパ膜として機能する。その後、アッシングにより、レジストパターンを除去する。
【0084】
次に、図3(c) に示すように、第4の絶縁膜5の上に、レジスト(図示せず)を形成した後、リソグラフィ法により、レジストに配線溝パターンを形成し、配線溝パターンが形成されたレジストパターンを形成する。その後、レジストパターンをマスクとして、ドライエッチングにより、第3の絶縁膜4の上部領域、及び第4の絶縁膜5に、配線溝を形成する。その後、アッシングにより、レジストパターンを除去する。このようにして、第2の絶縁膜3、及び第3の絶縁膜4の下部領域に、第1の配線2の上面を露出するビアホールを形成すると共に、第3の絶縁膜4の上部領域、及び第4の絶縁膜5に、ビアホールと連通する配線溝を形成する。
【0085】
その後、スパッタリングにより、ビアホールの底面及び側面、配線溝の底面及び側面、並びに第4の絶縁膜5の上に、例えば、TaNからなるバリアメタルを形成した後、電気メッキ法により、第4の絶縁膜5の上に、ビアホール及び配線溝内を埋め込むように、例えば、Cuからなる導電膜を形成する。その後、CMP法により、バリアメタル及び導電膜における配線溝外に形成された部分を除去する。このようにして、ビアホールの底面及び側面に形成されたバリアメタル7aと、ビアホール内にバリアメタル7aを介して埋め込まれた導電膜7bとを有するビア7を形成する。それと共に、配線溝の底面及び側面に形成されたバリアメタル8aと、配線溝内にバリアメタル8aを介して埋め込まれた導電膜8bとを有する第2の配線8を形成する。
【0086】
以上のようにして、本実施形態に係る半導体装置を製造することができる。
【0087】
以下に、第2の絶縁膜3(即ち、ポロジェンを含むSiC膜に対し、UVキュア処理が施された膜)の物性について、図4(a) 〜(b) 、表1、表2、表3、表4、及び表5を参照しながら説明する。
【0088】
<C含有率,O含有率>
ポロジェンを含まないSiC膜、及びポロジェンを含むSiC膜の各々に対し、UVキュア処理を施した場合における、C,O含有率と深さとの関係について、図4(a) 〜(b) を参照しながら説明する。図4(a) は、ポロジェンを含まないSiC膜に対し、UVキュア処理を施した場合における、C,O含有率と深さとの関係を示すグラフである。一方、図4(b) は、ポロジェンを含むSiC膜に対し、UVキュア処理を施した場合における、C,O含有率と深さとの関係を示すグラフである。
【0089】
図4(a) 〜(b) に示す実線は、O含有率について示し、点線は、C含有率について示す。
【0090】
図4(a) 〜(b) に示す横軸は、深さを示す。ここで、「深さX」とは、UVキュア処理後のSiC膜の上面(即ち、SiC膜における紫外線が照射される面)を深さ0とし、UVキュア処理後のSiC膜の下面を深さ1とした場合における、上面からの深さである。
【0091】
図4(a) 〜(b) に示す縦軸は、C含有率、又はO含有率を示す。ここで、「C含有率」とは、深さ1のO含有量に対する深さXにおけるC含有量を示す。「O含有率」とは、深さ1のO含有量に対する深さXにおけるO含有量を示す。
【0092】
ポロジェンを含まないSiC膜に対し、UVキュア処理を施した場合、図4(a) に示すように、深さが0に近付くに従い(言い換えれば、上面に近付くに従い)、C含有率が減少する一方、深さが0に近付くに従い、O含有率が増加する。
【0093】
一方、ポロジェンを含むSiC膜に対し、UVキュア処理を施した場合、図4(b) に示すように、略一定のC含有率、及び略一定のO含有率を示す。
【0094】
このことから、ポロジェンを含まないSiC膜に対し、UVキュア処理を施した場合、UVキュア処理後のSiC膜の上面(即ち、SiC膜における紫外線が照射される面)近傍に、Si−O結合が生成することが判る。一方、ポロジェンを含むSiC膜に対し、UVキュア処理を施した場合、UVキュア処理後のSiC膜の上面近傍に、Si−O結合が生成しないことが判る。
【0095】
このように、ポロジェンを含むSiC膜に対し、UVキュア処理を施した場合、SiC膜に含まれるポロジェンを脱離させることで、紫外線のエネルギーが消費されるため、UVキュア処理によって、SiC膜の上面近傍にSi−O結合が生成することはない。そのため、UVキュア処理によって、膜中のC含有率、及び膜中のO含有率が、厚さ方向(深さ方向)に変化する(図4(a) 参照)ことはなく、図4(b) に示すように、膜中のC含有率、及び膜中のO含有率を、厚さ方向に略一定にすることができる。
【0096】
<比誘電率>
ポロジェンを含まないSiC膜、及びポロジェンを含むSiC膜の各々において、UVキュア処理を施す前の比誘電率と、UVキュア処理を施した後の比誘電率とについて、表1を参照しながら説明する。また、ポロジェンを含むSiC膜において、UVキュア処理を施す前の空孔率と、UVキュア処理を施した後の空孔率とについて、表2を参照しながら説明する。表1は、左側に、ポロジェンを含まないSiC膜におけるUVキュア処理前の比誘電率、UVキュア処理後の比誘電率、これらの差分を示す。一方、表1は、右側に、ポロジェンを含むSiC膜におけるUVキュア処理前の比誘電率、UVキュア処理後の比誘電率、これらの差分を示す。表2は、ポロジェンを含むSiC膜におけるUVキュア処理前の空孔率、及びUVキュア処理後の空孔率を示す。ここで、「空孔率」とは、SiC膜の全体積における空孔の体積が占める割合をいう。
【0097】
【表1】

【0098】
【表2】

【0099】
表1の左側に示すように、ポロジェンを含まないSiC膜の場合、UVキュア処理後の比誘電率は、UVキュア処理前の比誘電率に比べて高くなる。この理由は、次に示すものと考えられる。図4(a) から判るように、UVキュア処理後に、SiC膜の上面近傍にSi−O結合が生成したため、UVキュア処理後の比誘電率は、UVキュア処理前の比誘電率に比べて高くなる。
【0100】
これに対し、表1の右側に示すように、ポロジェンを含むSiC膜の場合、UVキュア処理後の比誘電率は、UVキュア処理前の比誘電率に比べて低くなる。この理由は、次に示すものと考えられる。図4(b) から判るように、UVキュア処理後に、SiC膜の上面近傍にSi−O結合が生成しなかったため、UVキュア処理後の比誘電率は、UVキュア処理前の比誘電率に比べて高くならない。さらに、表2に示すように、UVキュア処理時に、SiC膜に含まれるポロジェンが脱離し、SiC膜にポロジェンが脱離されてなる空孔が生成したため、UVキュア処理後の比誘電率は、UVキュア処理前の比誘電率に比べて低くなる。
【0101】
このように、ポロジェンを含むSiC膜に対し、UVキュア処理を施した場合、SiC膜に含まれるポロジェンを脱離させることで、紫外線のエネルギーが消費されるため、UVキュア処理によって、SiC膜の上面近傍にSi−O結合が生成することはない。そのため、表1に示すように、UVキュア処理後の比誘電率が、UVキュア処理前の比誘電率に比べて高くなることを防止することができる。
【0102】
さらに、表2に示すように、UVキュア処理によって、SiC膜に含まれるポロジェンを脱離させて、ポロジェンが脱離されてなる空孔を含むSiC膜を形成することができるため、表1に示すように、UVキュア処理後の比誘電率を、UVキュア処理前の比誘電率に比べて低くすることができる。
【0103】
<ストレスの変化率>
ポロジェンを含まないSiC膜、及びポロジェンを含むSiC膜の各々に対し、UVキュア処理を施した場合における、UVキュア処理前後のストレスの変化率について、表3を参照しながら説明する。表3は、左側に、ポロジェンを含まないSiC膜に対し、UVキュア処理を施した場合における、UVキュア処理前後のストレスの変化率を示す。一方、表3は、右側に、ポロジェンを含むSiC膜に対し、UVキュア処理を施した場合における、UVキュア処理前後のストレスの変化率を示す。ここで、「UVキュア処理前後のストレスの変化率」とは、以下に示す式から算出される。式中に登場する「Sb」とは、UVキュア処理前のSiC膜に発生するストレスであり、「Sa」とは、UVキュア処理後のSiC膜に発生するストレスである。
UVキュア処理前後のストレスの変化率=(Sa−Sb)/Sb
【0104】
【表3】

【0105】
ポロジェンを含まないSiC膜、及びポロジェンを含むSiC膜の各々に対し、UVキュア処理を施したところ、何れの膜も、UVキュア処理後に、テンサイルストレス(引っ張り応力)が発生することが判った。
【0106】
ポロジェンを含まないSiC膜におけるストレスの変化率を、1とした場合、ポロジェンを含むSiC膜におけるストレスの変化率は、0.83となった。
【0107】
このことから、ポロジェンを含まないSiC膜に対し、UVキュア処理を施した場合、UVキュア処理後のSiC膜に、比較的大きなテンサイルストレスが発生することが判る。この理由は、次に示すものと考えられる。図4(a) から判るように、UVキュア処理後に、SiC膜の上面近傍にSi−O結合が生成したため、SiC膜の上面における応力と、SiC膜の下面における応力との間に、比較的大きな差異が発生するので、UVキュア処理後のSiC膜に、比較的大きなテンサイルストレスが発生する。
【0108】
一方、ポロジェンを含むSiC膜に対し、UVキュア処理を施した場合、UVキュア処理後のSiC膜に、比較的小さなテンサイルストレスが発生することが判る。この理由は、次に示すものと考えられる。図4(b) から判るように、UVキュア処理後に、SiC膜の上面近傍にSi−O結合が生成しなかったため、SiC膜の上面における応力と、SiC膜の下面における応力との間に、比較的大きな差異が発生しないので、UVキュア処理後のSiC膜に、比較的小さなテンサイルストレスが発生する。
【0109】
このように、ポロジェンを含むSiC膜に対し、UVキュア処理を施した場合、SiC膜に含まれるポロジェンを脱離させることで、紫外線のエネルギーが消費されるため、UVキュア処理によって、SiC膜の上面近傍にSi−O結合が生成することはない。そのため、表3に示すように、UVキュア処理によって、SiC膜に、大きなテンサイルストレスが発生することはなく、SiC膜に、大きなテンサイルストレスが発生することを抑制することができる。
【0110】
<50%故障時間>
SiC膜のストレスと、SiC膜の下に形成された配線の電気特性との関係について、表4を参照しながら説明する。表4は、SiC膜のストレスと、配線のEM(エレクトロマイグレーション)に起因する故障との関係について示す。ここで、表4に示す「50%故障時間」とは、配線素子の平均故障時間のことである。またここで、表4に示す「−100[MPa]」とは、100[MPa]のコンプレッシブストレス(圧縮応力)であることを意味する。一方、「+300[MPa]」とは、300[MPa]のテンサイルストレスであることを意味する。
【0111】
【表4】

【0112】
表4に示すように、SiC膜のストレスが100MPaのコンプレッシブストレスの場合における50%故障時間を、1とした場合、SiC膜のストレスが300MPaのテンサイルストレスの場合における50%故障時間は、0.14となった。
【0113】
表4に示すように、SiC膜のストレスがテンサイルストレスの場合、SiC膜のストレスがコンプレッシブストレスの場合に比べて、50%故障時間が、短くなることが判る。この理由は、次に示すものと考えられる。SiC膜のストレスがテンサイルストレスの場合、SiC膜に、上方向(即ち、配線から引き離される方向)に引っ張る応力が発生する。そのため、配線とSiC膜との密着性が低下し、配線のEM試験によりSiC膜と配線間にボイドが発生する。そのため、SiC膜のストレスがテンサイルストレスの場合、コンプレッシブストレスの場合に比べて、50%故障時間が短くなる。
【0114】
即ち、テンサイルストレスが大きくない方が故障し難いため、ポロジェンを含むSiC膜に対してUVキュア処理を施したSiC膜の方が、ポロジェンを含まないSiC膜に対してUVキュア処理を施したSiC膜よりも好ましいことが判る。
【0115】
<配線間容量>
第2の絶縁膜形成用膜として、ポロジェンを含まないSiC膜を用いて製造された半導体装置、及び第2の絶縁膜形成用膜として、ポロジェンを含むSiC膜を用いて製造された半導体装置(即ち、本実施形態に係る半導体装置)の各々における配線間容量について、表5を参照しながら説明する。表5は、ポロジェンを含まないSiC膜を用いて製造された半導体装置における配線間容量、及びポロジェンを含むSiC膜を用いて製造された半導体装置における配線間容量を示す。
【0116】
【表5】

【0117】
表5に示すように、ポロジェンを含むSiC膜を用いて製造された半導体装置の場合、ポロジェンを含まないSiC膜を用いて製造された半導体装置の場合に比べて、配線間容量を約10%低減することができる。
【0118】
本実施形態によると、UVキュア処理時に、紫外線が、第3の絶縁膜4Xを透過し、第3の絶縁膜4Xの下に形成された第2の絶縁膜形成用膜3Xに進入することがあっても、第2の絶縁膜形成用膜3Xに含まれるポロジェンを脱離させることで、第2の絶縁膜形成用膜3Xに進入した紫外線のエネルギーを消費することができる。そのため、第2の絶縁膜形成用膜3Xに進入した紫外線によって、第2の絶縁膜3の上面近傍に、Si−O結合が生成することはない。そのため、第2の絶縁膜3の比誘電率が高くなることを防止することができる(表1参照)。そのため、配線間容量が増大することを防止することができるので、配線遅延が増大することを防止することができる。
【0119】
それと共に、既述の通り、第2の絶縁膜形成用膜3Xに進入した紫外線によって、第2の絶縁膜3の上面近傍に、Si−O結合が生成することはない。そのため、第2の絶縁膜3に、大きなテンサイルストレスが発生することを抑制することができる(表3参照)。そのため、第2の絶縁膜3と、第2の絶縁膜3の下に形成された第1の配線2との密着性が低下することを抑制することができるので、配線信頼性が低下することを抑制することができる。
【0120】
さらに、UVキュア処理時に、第2の絶縁膜形成用膜3Xに含まれるポロジェンを脱離させて、ポロジェンが脱離されてなる空孔を含む第2の絶縁膜3を形成することができる。そのため、第2の絶縁膜3の比誘電率を低くすることができるので(表1参照)、配線間容量を低減することができる(表5参照)。
【0121】
なお、本実施形態では、第3の絶縁膜4に対して行うキュア処理として、第3の絶縁膜4に紫外線を照射する場合を具体例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0122】
第1に例えば、キュア処理として、第3の絶縁膜に電子線を照射してもよい。ここで、電子線照射の条件は、次に示す通りである。例えば、温度:300℃以上450℃以下、圧力:10×10-8Pa以上10×10-4Pa以下、雰囲気:ヘリウムを含む雰囲気、電子線パワー:10kW以上30kW以下、電子線照射時間:60秒以上180秒以下である。
【0123】
第2に例えば、キュア処理として、第3の絶縁膜を熱源に曝してもよい。ここで、熱暴露の条件は、次に示す通りである。例えば、温度:600℃以上1200℃以下、圧力:10×10-4Pa以上1.01325×105Pa以下、雰囲気:ヘリウム、窒素、又は水素を含む雰囲気、暴露時間:10分以上30分以下である。
【0124】
本実施形態では、SiCからなる第2の絶縁膜形成用膜3Xを用いて、SiCからなる第2の絶縁膜3を形成する場合を具体例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0125】
−SiCO−
第1に例えば、SiCOからなる第2の絶縁膜形成用膜を用いて、SiCOからなる第2の絶縁膜を形成してもよい。ここで、「SiCO」とは、ベースにSi−C骨格を有し、Si−C骨格にOが結合されてなる化合物である。
【0126】
CVD法によるSiCOからなる第2の絶縁膜形成用膜の形成条件は、次に示す通りである。例えば、成膜温度:200〜300℃、テトラメチルシラン:300sccm、二酸化炭素(CO2):1900sccm(standard cubic centimeter per minute)、環状C1016:800sccm、ヘリウム(He):1500〜3000sccm、成膜圧力:533Pa、RF電力:450W(高周波27.1MHz)、RF電力:100W(低周波13.56MHz)である。
【0127】
第2の絶縁膜は、密度が約1.2g/cm3以上約2.0g/cm3以下である。
【0128】
第2の絶縁膜におけるSi−O/Si−C比は、1.0以上である。
【0129】
第2の絶縁膜におけるC/Si組成比は、第2の絶縁膜形成用膜におけるC/Si組成比に比べて、0.5%以上減少する。
【0130】
第2の絶縁膜におけるO/Si組成比は、第2の絶縁膜形成用膜におけるO/Si組成比に比べて、2.0%以上増加する。
【0131】
−SiCN−
第2に例えば、SiCNからなる第2の絶縁膜形成用膜を用いて、SiCNからなる第2の絶縁膜を形成してもよい。ここで、「SiCN」とは、ベースにSi−C骨格を有し、Si−C骨格にNが結合されてなる化合物である。
【0132】
CVD法によるSiCNからなる第2の絶縁膜形成用膜の形成条件は、次に示す通りである。例えば、成膜温度:200〜300℃、テトラメチルシラン:220sccm、アンモニア(NH3):250sccm、環状C1016:800sccm、He:1500〜3000sccm、成膜圧力:665Pa、RF電力:550W(高周波27.1MHz)、RF電力:70W(低周波13.56MHz)である。
【0133】
第2の絶縁膜は、密度が約1.2g/cm3以上約2.0g/cm3以下である。
【0134】
第2の絶縁膜におけるC/Si組成比は、第2の絶縁膜形成用膜におけるC/Si組成比に比べて、0.5%以上減少する。
【0135】
第2の絶縁膜におけるN/Si組成比は、第2の絶縁膜形成用膜におけるN/Si組成比に比べて、2.0%以上減少する。
【0136】
また、本実施形態では、第2の絶縁膜3が、SiC膜からなる場合を具体例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第2の絶縁膜の上面又は下面に、SiCN膜を形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明は、被膜に対して行うキュア処理時に、被膜の下に形成された膜の上面近傍に、不要な結合(例えば、Si−O結合)が形成されることはないため、配線遅延の増大を防止すると共に、配線信頼性の低下を抑制することができるので、被膜を有する半導体装置及びその製造方法に有用である。
【符号の説明】
【0138】
1 第1の絶縁膜
2 第1の配線
2a バリアメタル
2b 導電膜
3 第2の絶縁膜
3X 第2の絶縁膜形成用膜
4,4X 第3の絶縁膜
5 第4の絶縁膜
6 ホール
7 ビア
7a バリアメタル
7b 導電膜
8 第2の配線
8a バリアメタル
8b 導電膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に形成され、第1の配線を有する第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜及び前記第1の配線の上に形成された第2の絶縁膜と、
前記第2の絶縁膜の上に形成された第3の絶縁膜とを備え、
前記第2の絶縁膜は、空孔を含んでいることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第3の絶縁膜は、SiOCからなり、
前記第3の絶縁膜は、比誘電率が2.5以下であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第3の絶縁膜の上に形成された第4の絶縁膜をさらに備え、
前記第2の絶縁膜、及び前記第3の絶縁膜の下部領域には、ビアが形成され、
前記第3の絶縁膜の上部領域、及び前記第4の絶縁膜には、第2の配線が形成され、
前記第1の配線と前記第2の配線とは、前記ビアを介して、互いに電気的に接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2の絶縁膜は、SiCからなることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2の絶縁膜は、比誘電率が4.0以下であることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第2の絶縁膜は、膜中の炭素の含有率が厚さ方向に略一定であることを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第2の絶縁膜は、膜中の酸素の含有率が厚さ方向に略一定であることを特徴とする請求項1〜6のうちいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第2の絶縁膜は、密度が約1.2g/cm3以上約2.0g/cm3以下であることを特徴とする請求項1〜7のうちいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第2の絶縁膜は、Si−CH3/Si−C比が0.02以上0.10以下であることを特徴とする請求項1〜8のうちいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第2の絶縁膜は、SiCOからなり、
前記第2の絶縁膜は、Si−O/Si−C比が1.0以上であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第2の絶縁膜は、SiCNからなることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項12】
基板の上に第1の配線を有する第1の絶縁膜を形成する工程(a)と、
前記第1の絶縁膜及び前記第1の配線の上に、ポロジェンを含む第2の絶縁膜形成用膜を形成する工程(b)と、
前記第2の絶縁膜形成用膜の上に第3の絶縁膜を形成する工程(c)と、
前記第3の絶縁膜に対してキュア処理を行う工程(d)とを備え、
前記工程(d)において、前記第2の絶縁膜形成用膜に対してキュア処理が施され、前記第2の絶縁膜形成用膜に含まれるポロジェンが脱離されてなる空孔を含む第2の絶縁膜が形成されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記第3の絶縁膜は、SiOCからなり、
前記工程(d)において、前記第3の絶縁膜は、前記工程(c)における前記第3の絶縁膜に比べて、比誘電率が減少し、前記第3の絶縁膜の比誘電率は、2.5以下であることを特徴とする請求項12に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記工程(d)は、前記第3の絶縁膜に紫外線を照射する工程であることを特徴とする請求項12又は13に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記工程(d)は、前記第3の絶縁膜に電子線を照射する工程であることを特徴とする請求項12又は13に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記工程(d)は、前記第3の絶縁膜を熱源に曝す工程であることを特徴とする請求項12又は13に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記工程(d)の後に、前記第3の絶縁膜の上に、第4の絶縁膜を形成する工程(e)と、
前記第2の絶縁膜、及び前記第3の絶縁膜の下部領域に形成されたビアホール内に、ビアを形成すると共に、前記第3の絶縁膜の上部領域、及び前記第4の絶縁膜に形成された配線溝内に、第2の配線を形成する工程(f)とをさらに備えていることを特徴とする請求項12〜16のうちいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項18】
前記第2の絶縁膜は、SiCからなることを特徴とする請求項12〜17のうちいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項19】
前記工程(d)において、前記第2の絶縁膜は、前記第2の絶縁膜形成用膜に比べて、比誘電率が減少し、前記第2の絶縁膜の比誘電率は、4.0以下であることを特徴とする請求項12〜18のうちいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項20】
前記工程(d)において、前記第2の絶縁膜は、膜中の炭素の含有率が厚さ方向に略一定となるように形成されることを特徴とする請求項12〜19のうちいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項21】
前記工程(d)において、前記第2の絶縁膜は、膜中の酸素の含有率が厚さ方向に略一定となるように形成されることを特徴とする請求項12〜20のうちいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項22】
前記工程(d)において、前記第2の絶縁膜は、前記第2の絶縁膜形成用膜に比べて、C/Si組成比が0.5%以上減少することを特徴とする請求項12〜21のうちいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項23】
前記第2の絶縁膜は、SiCOからなり、
前記工程(d)において、前記第2の絶縁膜は、前記第2の絶縁膜形成用膜に比べて、O/Si組成比が2.0%以上増加することを特徴とする請求項12に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項24】
前記第2の絶縁膜は、SiCNからなり、
前記工程(d)において、前記第2の絶縁膜は、前記第2の絶縁膜形成用膜に比べて、N/Si組成比が2.0%以上減少することを特徴とする請求項12に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−245235(P2010−245235A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91564(P2009−91564)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】