説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】Geを含むチャネル形成領域を有する電界効果トランジスタにおいて、基板リーク電流を低減する。
【解決手段】半導体装置150は、Geを含む第1導電型の第1の半導体領域101と、第1の半導体領域101上にゲート絶縁膜121を介して形成されたゲート電極122と、第1の半導体領域101におけるゲート電極122の両側方に形成された第2導電型の拡散領域107と、第1の半導体領域101と拡散領域107との間に形成された第1導電型の第2の半導体領域108とを備える。第2の半導体領域108は、第1の半導体領域101におけるゲート電極122下方のチャネル形成領域よりも高い濃度のSiを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャネルがSiGe層によって形成されたP型電界効果型トランジスタ(P型FET)であって、基板リーク電流の低減が可能なトランジスタとその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置のデザインルールの縮小に伴い、回路の集積度は飛躍的に向上し、1チップ上に1億個以上の電界効果型トランジスタ(FET、Feild Effect Transistor )を搭載することも可能となっている。高性能なトランジスタを実現するためには、ゲート長の縮小に加えて、ゲート絶縁膜の薄膜化も求められている。
【0003】
従来、ゲート絶縁膜には、シリコン酸化膜又はその窒化膜であるシリコン酸窒化膜が用いられてきた。しかし、EOT(Equivalent Oxide Thickness、シリコン酸化膜換算膜厚)が2nm以下である薄膜領域になると、ゲートリーク電流が増大し、回路の消費電力が増大する。このため、ゲートリーク電流を低減しつつ、EOT薄膜化を実現するために、高誘電率ゲート絶縁膜に関心が寄せられている。
【0004】
また、更なるEOT薄膜化のために、高誘電率ゲート絶縁膜/メタルゲート電極構造を有するトランジスタについて多くの研究開発がなされている。これは、ゲート電極として従来のシリコン電極に代えて窒化チタン、窒化タンタル等のメタル材料を用い、高誘電率ゲート絶縁膜と組み合わせた構造である。
【0005】
高誘電率ゲート絶縁膜/メタルゲート電極構造を実現する上での重要となる点の一つに、トランジスタのしきい値電圧制御がある。従来用いられていたシリコン電極の場合、不純物イオン注入によってシリコン電極の仕事関数を調整し、N型FET、P型FETそれぞれに適したしきい値電圧を実現してきた。具体的に、N型FETに対しては、シリコン電極にヒ素、リン等のN型不純物を注入することにより仕事関数の低減を図り、P型FETに対しては、シリコン電極にボロン等のP型不純物を注入することによって仕事関数の増大を図ってきた。
【0006】
しかしながら、メタル電極については、不純物注入による仕事関数制御ができない。このため、トランジスタのしきい値電圧制御が重要となっている。
【0007】
P型FETのしきい値電圧制御の手段(特に、低減の手段)として、トランジスタのチャネル領域を、従来はSi(シリコン)からなる層であったのに代えて、Ge(ゲルマニウム)を含むSi1-x Gex (0<x≦1)からなる層として形成することが提案されている(非特許文献1)。尚、本明細書中において、Si1-x Gex (0<x≦1)の意味で単にSiGeと表記する場合がある。
【0008】
このような技術によると、例えば、半導体基板に形成されたP型FETにおいて、半導体基板の表面から50nm程度の範囲(チャネル領域の構成される部分を含む範囲)をSiGeによって形成する。
【0009】
このようにすると、以下に説明するメカニズムにより、しきい値電圧が低減される。
【0010】
まず、Siのエネルギーバンドギャップは1.12eVであるのに比べ、Geのエネルギーバンドギャップは0.66eVと小さい。また、SiとGeとの混晶であるSiGeのエネルギーバンドギャップは、Geの組成比xに応じて、0.66〜1.12eVの間にて連続的に変化する。
【0011】
また、Si及びGeは、ほぼ同じ電子親和力を有する。このため、Geの組成比xの変化に伴うSiGeのエネルギーバンドギャップの変動は、主に、価電子帯のエネルギーの変動に起因する。つまり、SiGeの価電子帯のエネルギーは、Siの価電子帯のエネルギーに比べて高くなる。
【0012】
この結果、Siチャネルに代えてSiGeチャネルを形成することにより、しきい値電圧を低減することが可能となる。尚、しきい値電圧を有意に低減するためには、Geを10%よりも多く含む(0.1<x≦1)ようにする。また、代表的な組成はX=0.5の場合、つまり、Si:Ge=1:1となる場合である。非特許文献1には、250〜300mVのしきい値電圧の低減が報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】H. R. Harris et al., Symp. VLSI Technology, p.154, 2007.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、前記のようにチャネル部をSi1-x Gex (0.1<x≦1)からなる領域に構成する方法を用いてしきい値電圧制御を行った場合、基板リーク電流が増大するという問題が発生する。よって、その解決が課題となっている。
【0015】
以上に鑑み、本発明の目的は、SiGeチャネル構造を有するP型FETにおいて、基板リーク電流の増大を抑制することが可能なトランジスタとその製造方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記の目的を達成するため、本願発明者は、非特許文献1の方法によってしきい値電圧を制御する場合に基板リーク電流が増大する理由について検討した。
【0017】
まず、FETにおいて、ゲート電極下方のチャネル部をSiGeによって構成すると、FETが有する拡散層(ソース・ドレイン領域、エクステンション領域等)についてもSiGeからなるものとして形成されることになる。
【0018】
また、基板リーク電流は、拡散層領域と、チャネル部を含むウェル領域とによって形成されるPN接合に対し、逆バイアスが加えられた場合に発生するリーク電流である。その大きさは、PN接合部におけるエネルギーバンドギャップの大きさに依存し、エネルギーバンドギャップが小さいほど増大する。
【0019】
よって、SiGeチャネルを形成した場合、Siチャネルの場合に比べた基板リーク電流の増大の程度は、PN接合部におけるエネルギーバンドギャップの大きさに依存し、更には、Geの組成比xに依存することになる。
【0020】
そこで、本願発明者は、拡散層領域とウェル領域とによって形成されるPN接合部におけるSi濃度(含有率)を、チャネル部に比べて高くすることにより、しきい値電圧を低減すると共に基板リーク電流の増大を抑制することを考案した。
【0021】
具体的に、本発明に係る半導体装置は、Geを含む第1導電型の第1の半導体領域と、第1の半導体領域上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、第1の半導体領域におけるゲート電極の両側方に形成された第2導電型の拡散領域と、第1の半導体領域と拡散領域との間に形成された第1導電型の第2の半導体領域とを備え、第2の半導体領域は、第1の半導体領域におけるゲート電極下方のチャネル形成領域よりも高い濃度のSiを含有する。
【0022】
このような半導体装置によると、Geを含む第1の半導体領域にチャネルが形成されることによりしきい値電圧を制御(低減)しながら、PN接合の部分においてチャネル形成領域よりもSi濃度が高くなっている(言い換えると、Ge濃度が低くなっている)ことにより、基板リーク電流の増大を抑制することができる。
【0023】
尚、第1の半導体領域はN型であり、拡散領域はP型であることが好ましい。
【0024】
Geを含むチャネル(SiGeチャネル)とすることによるしきい値電圧の低減は、P型FETにおいて特に有用である。よって、第1の半導体領域がN型不純物を含むことによりN型となっており、拡散領域がP型不純物を含むことによりP型となっている場合に、本発明の半導体装置の効果が顕著に得られる。
【0025】
また、拡散領域は、ボロン及びインジウムの少なくとも一方を不純物として含有することが好ましい。また、第1の半導体領域は、ヒ素及びリンの少なくとも一方を不純物として含有することが好ましい。各領域に含まれる不純物として、このような元素を用いることができる。
【0026】
また、拡散領域は、ソース・ドレイン領域及びエクステンション領域の少なくとも一方であることが好ましい。
【0027】
基板リーク電流が発生する箇所の例としては、ソース・ドレイン領域及びエクステンション領域の底部及び側部のPN接合が挙げられる。よって、拡散領域がソース・ドレイン領域及びエクステンション領域のいずれか一方又は両方であるようにすると、基板リーク電流を抑制することができる。
【0028】
また、第2の半導体領域は、第1の半導体領域と拡散領域との間の全体に形成されていても良い。また、第2の半導体領域は、前記第1の半導体領域と前記拡散領域との間の一部に形成されていても良い。
【0029】
つまり、基板リーク電流が発生するPN接合の全体についてSi濃度を高くするのであっても良いし、特に基板リーク電流の多い部分についてSi濃度を高くするのであっても良い。
【0030】
このように、個々の半導体装置の特性等に合わせて適切な箇所に第2の半導体領域を配置することにより、基板リーク電流を抑制することができる。
【0031】
また、第2の半導体領域及びチャネル形成領域は、いずれもSi1-x Gex (0<x≦1)からなり、第2の半導体領域におけるxは、チャネル領域におけるxよりも0.1以上小さいことが好ましい。
【0032】
Si1-x Gex (0<x≦1)において、Geの組成比であるxが小さいほどSiの濃度が高いのであるから、第2の半導体領域においてxが小さいことが求められる。特に、0.1以上小さい場合に、基板リーク電流を抑制する効果がより確実に得られる。
【0033】
前記の目的を達成するため、本発明に係る半導体装置の製造方法は、基板上に、Geを含む第1導電型の第1の半導体領域を形成する工程(a)と、第1の半導体領域上に、ゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程(b)と、第1の半導体領域におけるゲート電極の両側方に、第2導電型の拡散領域を形成する工程(c)と、第1の半導体領域におけるゲート電極の両側方に、第1導電型の第2の半導体領域を形成する工程(d)とを備え、第2の半導体領域は、少なくとも第1の半導体領域と拡散領域との間に位置していると共に、第1の半導体領域におけるゲート電極下方のチャネル形成領域よりも高い濃度のSiを含有する。
【0034】
本発明の半導体装置の製造方法によると、本発明の半導体装置を製造することができる。つまり、Geを含むチャネル形成領域を備えることによりしきい値電圧を低減しながら、PN接合の部分においてSi濃度が高くなっていることにより基板リーク電流が抑制された半導体装置を製造することができる。
【0035】
尚、拡散領域は、ソース・ドレイン領域及びエクステンション領域の少なくとも一方であることが好ましい。また、拡散領域は、ボロン及びインジウムの少なくとも一方をイオン注入することにより形成されることが好ましい。具体的な拡散領域として、このようになっていても良い。
【0036】
また、第2の半導体領域は、Siイオンの注入により形成しても良い。
【0037】
チャネル形成領域よりもSi濃度が高い第2の半導体領域を形成するために、このようにしても良い。
【発明の効果】
【0038】
Si1-x Gex (0.1<x≦1)からなる領域にチャネルを形成することによりしきい値電圧を制御(低減)しながら、基板リーク電流が発生するPN接合部分のSi濃度を高くすることにより基板リーク電流を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、第1の実施形態の半導体装置の要部断面を模式的に示す図である。
【図2】図2(a)〜(c)は、第1の実施形態における半導体装置の製造方法の各工程を示す図である。
【図3】図3(a)〜(c)は、図2(c)に続いて、第1の実施形態における半導体装置の製造方法の各工程を示す図である。
【図4】図4は、第2の実施形態の半導体装置の要部断面を模式的に示す図である。
【図5】図5(a)〜(c)は、第2の実施形態における半導体装置の製造方法の各工程を示す図である。
【図6】図6(a)〜(c)は、図5(c)に続いて、第1の実施形態における半導体装置の製造方法の各工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態における例示的半導体装置150について、その要部断面を模式的に示す図である図1を参照しながら説明する。
【0041】
図1に示すように、半導体装置150は、シリコンからなる半導体基板100を用いて形成されており、P型FET構造を有する。半導体基板100上には、Si1-x Gex (0<x≦1)からなる第1の半導体領域101が形成されている。第1の半導体領域101は、膜厚が例えば90nmであり、リン、ヒ素等のN型不純物(ウェル形成、しきい値電圧制御用のチャネル不純物)を含むことによりN型になっている。第1の半導体領域101の上には、ゲート絶縁膜121を介してゲート電極122が形成されている。また、ゲート電極122及びゲート絶縁膜121の両側面を覆うように、シリコン酸化膜からなるサイドウォールスペーサー106が形成されている。尚、ゲート絶縁膜121は、酸化膜102上に、高誘電率絶縁膜103が積層された構造である。また、ゲート電極122は、金属を含む材料からなるメタルゲート電極、例えば窒化チタン膜104の上に、ポリシリコン、アモルファスシリコン等のシリコン膜105が積層された構造である。
【0042】
第1の半導体領域101におけるゲート電極122の両側方には、エクステンション領域107が形成されている。エクステンション領域107は、P型不純物であるボロンを含むことによりP型であり、深さは15nm程度である。
【0043】
更に、エクステンション領域107の外側には、P型のソース・ドレイン領域109(ソース領域及びドレイン領域を合わせてこのように呼ぶ)が接合深さ60nm程度に形成されている。
【0044】
また、エクステンション領域107と第1の半導体領域101との間に、エクステンション領域107を覆うように、N型の第2の半導体領域108が形成されている。第2の半導体領域108の深さは20nm程度であり、エクステンション領域107に対して5nm程度外側に形成されている。
【0045】
ここで、第1の半導体領域101を構成するSi1-x Gex (0<x≦1)について、例えば、X=0.5(つまり、Geが50%)であってもよい。
【0046】
半導体装置150に構成されたP型FETが動作する際には、ゲート電極122下方における第1の半導体領域101の部分にチャネルが形成される。チャネル形成領域がGeを含むことにより、Siチャネルの場合に比べてしきい値電圧が低減している。
【0047】
尚、少しでもGeが含まれていればしきい値電圧は低減されるが、実質的に低減の効果を得るためには、10%程度は含まれていることが好ましい。また、Siを含まず、Geのみとなっていても構わない。つまり、0.1<x≦1を満たすことが好ましい。
【0048】
このようなチャネル形成領域に比べて、第2の半導体領域108におけるSi濃度が高くなっている。具体的には、例えば、Si濃度が50%(Geの組成比によって記すとx=0.5)であるチャネル形成領域に対して、第2の半導体領域108のSi濃度は75%(Geの組成比によって記すとx=0.25)である。
【0049】
このように、エクステンション領域107の底部及び側部のPN接合部は、第2の半導体領域108が形成されていることにより、チャネル形成領域に比べてSi濃度が高く(言い換えると、Ge濃度が低く)なっている。この結果、エクステンション領域107のPN接合部において発生する基板リーク電流を約一桁低減することができる。
【0050】
尚、チャネル形成領域(第1の半導体領域101)においてx=0.5の場合(Si濃度では50%の場合)を一例として説明したが、これには限らない。0<x≦1の範囲におけるいずれの値である場合にも、チャネル形成領域に比べてPN接合部分(第2の半導体領域108)におけるSi濃度が高くなっていれば、基板リーク電流を低減することができる。
【0051】
また、第2の半導体領域108のSi濃度が25%高くなっている(Ge組成比xが0.25小さくなっている)例を説明したが、これには限らない。Si濃度の差がより小さい場合にも基板リーク電流は低減される。但し、第2の半導体領域108がチャネル形成領域に比べて10%以上高いSi濃度(xが0.1以上小さいGe組成)を有していると、有意に基板リーク電流を抑制することができ、望ましい。チャネル形成領域のSi濃度が50%である場合、第2の半導体領域108のSi濃度を60%〜100%とすることにより、基板リーク電流は3分の1〜100分の1程度に低減される。
【0052】
また、以上の例の場合、Si濃度の高い第2の半導体領域108は、エクステンション領域107の全体を覆うように(エクステンション領域107と第1の半導体領域101の間の全体に位置するように)形成されている。しかしながら、これには限らない。重要なのは、基板リーク電流の多く発生するPN接合部についてSi濃度を高めることである。このため、エクステンション領域107の側面部(チャネル形成領域側の部分)において基板リーク電流が多く発生するのであれば、エクステンション領域107の側面とチャネル形成領域(ゲート電極122下方の第1の半導体領域101)との間に第2の半導体領域108を形成する。同様に、エクステンション領域107の底部において基板リーク電流が多く発生するのであれば、この部分に第2の半導体領域108を形成する。これにより、基板リーク電流を抑制することができる。
【0053】
また、第1の半導体領域101の厚さが90nm程度である場合を説明したが、これには限らない。エクステンション領域107の一部分でもGeを含む第1の半導体領域101とのPN接合を有していると、該PN接合部において基板リーク電流が増大する。これを抑制するために、Si濃度の高い第2の半導体領域108を設ける。従って、第1の半導体領域101がエクステンション領域107よりも薄い場合にも、基板リーク電流を低減する効果を得ることはできる。
【0054】
また、以上では、Geを含む第1の半導体領域101上に酸化膜102が形成されている例を説明した。しかし、これには限らない。例えば、第1の半導体領域101上にSi層を形成し、その上に酸化膜102を形成することもできる。これにより、Siキャップ付きのSiGeチャネルを有するP型FET構造とすることができる。
【0055】
また、以上では、エクステンション領域107に対して5nm程度外側まで第2の半導体領域108が設けられているが、この値には限らず、エクステンション領域107を覆うように第2の半導体領域108を設けることが要点である。
【0056】
次に、本実施形態における例示的半導体装置150の製造方法について、その工程を示す図2(a)〜(c)及び図3(a)〜(c)を参照して説明する。
【0057】
まず、図2(a)に示すように、シリコンからなる半導体基板100上に、第1の半導体領域101を膜厚90nmに堆積する。第1の半導体領域101は、Si1-x Gex においてGe組成比x=0.5(Si濃度として記せば50%)であるSiGe層とする。このためには、CVD(chemical vapor deposition)法を用いてシリコンからなる半導体基板100上にエピタキシャル成長しても良い。この際の条件としては、Si系ガスにSiH4 、Ge系ガスにGeH4 を用い、堆積温度を500℃、ガス圧を20Torr(2666Pa)とする。また、ウェル形成及びしきい値電圧制御のため、第1の半導体領域101は、リン、ヒ素等のN型不純物を含有させてN型の層として形成する。
【0058】
次に、図2(b)に示すように、第1の半導体領域101上に、ゲート絶縁膜121を介してゲート電極122を形成する。このためには、まず、第1の半導体領域101表面のSiGeをオゾンにより酸化させることにより、膜厚1nmの酸化膜102を形成する。次に、該酸化膜102上に、例えばハフニウムを含む膜厚2nmの高誘電率絶縁膜103を堆積する。続いて、高誘電率絶縁膜103上に、メタルゲートとして膜厚10nmの窒化チタン膜104を堆積し、更にその上に、膜厚100nmのシリコン膜105を堆積する。この後、レジストパターニング、ゲートドライエッチング等を行なうことにより、図2(b)に示す酸化膜102と高誘電率絶縁膜103からなるゲート絶縁膜121及び窒化チタン膜104とシリコン膜105からなるゲート電極122の構造を得る。
【0059】
次に、図2(c)に示すように、半導体装置150製造における特徴となるSiの注入を行なう。具体的には、加速エネルギー15keV、注入ドーズ量3×1016atoms/cm2の条件により、ゲート電極122をマスクとしてSiのイオン注入を行なう。これにより、第1の半導体領域101におけるゲート電極122の両側方に、表面から深さ20nm程度のSi濃度が25%増加して75%となった(Ge濃度が25%に低減した)N型の第2の半導体領域108が形成される。
【0060】
尚、イオン注入の際、Siはゲート電極122の下方にも回り込む。但し、回り込み両、つまりゲート電極122下方へのオーバーラップ量は、深さに比べて小さく、10nm以下である。
【0061】
次に、図3(a)に示すように、エクステンション注入を行なう。具体的には、注入する不純物としてボロンを用い、加速エネルギー0.3keV、注入ドーズ量5×1014atoms/cm2の条件によりゲート電極122をマスクとしてイオン注入を行なう。これにより、第1の半導体領域101におけるゲート電極122の両側方にP型のエクステンション領域107を形成する。注入直後の接合深さは10nm以下と非常に浅いが、後述する活性化アニールによりボロンが拡散し、最終的な接合深さは15nm程度となる。このため、エクステンション領域107は、深さが20nm程度である第2の半導体領域108よりも5nm浅く形成されることになる。
【0062】
次に、図3(b)に示すように、ゲート電極122及びゲート絶縁膜121の側面を覆うサイドウォールスペーサー106を形成する。このためには、エクステンション領域107を形成した後、半導体基板100上に膜厚70nm程度のシリコン酸化膜を堆積する。続いて、ドライエッチングにより全面エッチバックを行なうことにより、ゲート電極122の側面上に幅70nm程度のシリコン酸化膜からなるサイドウォールスペーサー106を形成する。
【0063】
次に、図3(c)に示すように、ソース・ドレイン領域109を形成する。このために、不純物としてボロンを用い、加速エネルギー1.5keV、注入ドーズ量4×1015atoms/cm2の条件により、ゲート電極122及びサイドウォールスペーサー106をマスクとしてイオン注入を行なう。これにより、第1の半導体領域101におけるサイドウォールスペーサー106の外側方の部分にP型のソース・ドレイン領域109が形成される。続いて、1000℃、0秒(目標到達温度に達した後、直ちに降温する)の条件のスパイクアニールを行なうことにより、エクステンション領域107及びソース・ドレイン領域109の不純物を活性化させる。このアニールにより、接合深さ60nmのソース・ドレイン領域109が形成される。
【0064】
以上により、半導体装置150が製造される。本実施形態の場合、エクステンション領域107を形成する前に、エクステンション領域107が形成される領域を覆うように、Si濃度が高い第2の半導体領域108を形成することを特徴としている。これにより、エクステンション領域107の底部及び側部のPN接合部において発生する基板リーク電流を低減している。本実施形態の例では、チャネル形成領域(第1の半導体領域101)におけるSi濃度50%に対してPN接合部(第2の半導体領域108)におけるSi濃度は75%であり、25%の差があることから、基板リーク電流は一桁程度低減している。
【0065】
尚、以上に説明したように先に第2の半導体領域108を形成すると、Si注入によるプリアモルファス化によって短チャネル特性を改善する効果が期待できる。しかしながら、以上とは異なる工程順として、先にエクステンション領域107を形成し、その後に第2の半導体領域108を形成することもできる。この場合にも、基板リーク電流を低減する効果は得られる。
【0066】
また、Si1-x Gex (0<x≦1)層である第1の半導体領域101の形成条件、Siイオンの注入条件、エクステンション領域107の注入条件、サイドウォールスペーサー106の形成条件、ソース・ドレイン領域109の注入条件、活性化アニールの条件等について、いずれも例示するものであって、上記の記載には限定されない。
【0067】
また、以上の説明では、Si濃度の高い第2の半導体領域108は、エクステンション領域107の全体を覆うように形成している。しかし、基板リーク電流の発生箇所に合わせて配置しても良い。エクステンション領域107の側面部(チャネル形成領域の側)において基板リーク電流が多く発生するのであれば、Si注入時に角度注入を行なってゲート電極122の下方に対する第2の半導体領域108のオーバーラップ量を増加させることもできる。これにより、エクステンション領域107の側面部におけるSi濃度を増大させることができる。また、エクステンション領域107の底部において基板リーク電流が多く発生するのであれば、Si注入時の加速エネルギーをより大きくすることにより、特にエクステンション領域107の底部にSi濃度の高い領域を形成しても良い。
【0068】
また、図2(a)の工程の後、図2(b)に示す酸化膜102を形成する間に、第1の半導体領域101上に膜厚2nm程度のSiキャップ層を堆積するようにしても良い。これにより、酸化膜102の品質を向上することができる。
【0069】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態における例示的半導体装置151について、その要部断面を模式的に示す図である図4を参照しながら説明する。ここで、半導体装置151の構成のうち、第1の実施形態の半導体装置150と共通の部分については同じ符号を用いることにより詳しい説明を省略し、相違点を主に説明する。
【0070】
第1の実施形態の半導体装置150の場合、P型のエクステンション領域107を覆うように、Si濃度がチャネル形成領域に比べて高いN型の第2の半導体領域108を有している。これに対し、本実施形態の半導体装置151の場合には、P型のソース・ドレイン領域109を覆うように、Si濃度がチャネル形成領域に比べて高いN型の第2の半導体領域128が形成されている。
【0071】
ここで、ソース・ドレイン領域109の深さは60nm程度、第2の半導体領域128の深さは70nm程度である。また、第1の実施形態と同様、チャネル形成領域(ゲート電極122下方の第1の半導体領域101)においてSi濃度は50%である。第2の半導体領域128のSi濃度は75%である。
【0072】
このような構成により、本実施形態の半導体装置151において、ソース・ドレイン領域109の底部及び側部のPN接合部(ソース・ドレイン領域109と、ウェル及びチャネル形成領域とのPN接合部)における基板リーク電流を抑制することができる。
【0073】
尚、ソース・ドレイン領域109全体を第2の半導体領域128が覆うことは必須ではなく、基板リーク電流が多く発生する箇所のみに第2の半導体領域を設けても良い。例えば、ソース・ドレイン領域109の底部のみ又は側部のみに設けることもできる。
【0074】
また、エクステンション領域107及びソース・ドレイン領域109の両方を覆うように、Si濃度の高い領域を設けても良い。つまり、第1の実施形態における第2の半導体領域108と、第2の実施形態における第2の半導体領域128とを両方備えるような半導体装置としても良い。この場合、エクステンション領域107及びソース・ドレイン領域109の両方について、PN接合部における基板リーク電流を低減することができる。
【0075】
また、チャネル形成領域に比べて第2の半導体領域128のSi濃度を25%高くしているが、これは必須ではない。Si濃度を10%高くする(チャネル形成領域においてSiが50%であるのに対し、第2の半導体領域128においてSiを60%とする)だけでも、基板リーク電流を3分の1程度に抑制することができる。
【0076】
また、第1の半導体領域101の厚さが90nmであること、第2の半導体領域128がソース・ドレイン領域109から10nm外側にまで形成されていること等についても例示であって、これらに限定されることはない。
【0077】
次に、本実施形態における例示的半導体装置151の製造方法について、その工程を示す図5(a)〜(c)及び図6(a)〜(c)を参照して説明する。
【0078】
図5(a)及び(b)の工程は、第1の実施形態において説明した図2(a)及び(b)の工程と同様である。これらの工程により、シリコンからなる半導体基板100上にSiGe(Ge組成50%)からなる第1の半導体領域101が形成される。また、その上に、酸化膜102及び高誘電率絶縁膜103の積層されたゲート絶縁膜121を介して、窒化チタン膜104及びシリコン膜105の積層されたゲート電極122が形成される。
【0079】
この後、図5(c)のように、エクステンション領域107を形成する。このためには、不純物としてボロンを用い、加速エネルギー0.3keV、注入ドーズ量5×1014atoms/cm2の条件によりゲート電極122をマスクとしてイオン注入を行なう。これにより、第1の半導体領域101におけるゲート電極122の両側方にエクステンション領域107が形成される。注入直後の接合深さは10nm以下と非常に浅いが、後述する活性化アニールによりボロンが拡散し、最終的な接合深さは15nm程度となる。
【0080】
次に、図6(a)に示すように、ゲート電極122及びゲート絶縁膜121の側面を覆うサイドウォールスペーサー106を形成する。このためには、P型のエクステンション領域107を形成した後、半導体基板100上に膜厚70nm程度のシリコン酸化膜を堆積する。続いて、ドライエッチングにより全面エッチバックを行なうことにより、ゲート電極122の側面上に幅70nm程度のシリコン酸化膜からなるサイドウォールスペーサー106を形成する。
【0081】
次に、図6(b)に示すように、半導体装置151製造における特徴となるSiの注入を行なう。具体的には、加速エネルギー55keV、注入ドーズ量7.2×1016atoms/cm2の条件により、ゲート電極122をマスクとしてSiのイオン注入を行なう。これにより、第1の半導体領域101におけるサイドウォールスペーサー106の外側方に、表面から深さ70nm程度のSi濃度が75%に増加した(Ge濃度が25%に低減した)第2のN型の半導体領域128が形成される。
【0082】
尚、イオン注入の際、Siはサイドウォールスペーサー106の下方にも回り込む。但し、回り込み量、つまりサイドウォールスペーサー106下方へのオーバーラップ量は、垂直方向に比べて小さく、20nm程度である。
【0083】
次に、図6(c)に示すように、ソース・ドレイン領域109を形成する。このためには、不純物としてボロンを用い、加速エネルギー1.5keV、注入ドーズ量4×1015atoms/cm2の条件により、ゲート電極122及びサイドウォールスペーサー106をマスクとしてイオン注入を行なう。これにより、第1の半導体領域101におけるサイドウォールスペーサー106の外側方の部分にP型のソース・ドレイン領域109が形成される。続いて、1000℃、0秒の条件のスパイクアニールを行なうことにより、エクステンション領域107及びソース・ドレイン領域109の不純物を活性化させる。このアニールにより、接合深さ60nmのソース・ドレイン領域109が形成される。これは、深さが70nmである第2の半導体領域128よりも10nm浅いことになる。
【0084】
以上により、半導体装置151が製造される。本実施形態の場合、ソース・ドレイン領域109を形成する前に、ソース・ドレイン領域109が形成される領域を覆うように、Si濃度が高い第2の半導体領域128を形成することを特徴としている。これにより、ソース・ドレイン領域109の底部及び側部のPN接合部において発生する基板リーク電流を低減している。
【0085】
尚、以上とは異なる工程順として、先にソース・ドレイン領域109を形成し、その後に第2の半導体領域128を形成することもできる。
【0086】
また、第1の半導体領域101の形成条件、Siイオンの注入条件、エクステンション領域107の注入条件、サイドウォールスペーサー106の形成条件、ソース・ドレイン領域109の注入条件、活性化アニールの条件等について、いずれも例示するものであって、上記の記載には限定されない。
【0087】
また、ソース・ドレイン領域109の全体を覆うように第2の半導体領域128を形成することは必須ではない。例えば、Si注入時に角度注入を行なってサイドウォールスペーサー106の下方に対する第2の半導体領域128のオーバーラップ量を増加させても良い。これにより、ソース・ドレイン領域109の側面部におけるSi濃度を増大させることができる。その結果、側面部が主要なリーク源である場合の基板リーク電流の低減が可能となる。また、ソース・ドレイン領域109の底部において基板リーク電流が多く発生するのであれば、Si注入時の加速エネルギーをより大きくすることにより、特にソース・ドレイン領域109の底部にSi濃度の高い領域を形成しても良い。
【0088】
更に、エクステンション領域107及びソース・ドレイン領域109の両方を覆うように、Si濃度の高い領域を設けても良い。このためには、例えば、第1の実施形態における図2(a)〜(c)と図3(a)及び(b)までの工程を終えた後、第2の実施形態における図6(b)及び(c)と同様の工程を行なえばよい。これにより、エクステンション領域107及びソース・ドレイン領域109の両方について、基板リーク電流を抑制した半導体装置を製造することができる。
【0089】
また、図5(a)の工程の後、図5(b)に示す酸化膜102を形成する間に、第1の半導体領域101上に膜厚2nm程度のSiキャップ層を堆積するようにしても良い。これにより、酸化膜102の品質を向上することができる。
【0090】
また、エクステンション領域107、ソース・ドレイン領域109の形成等に用いるP型不純物としてボロンを例示したが、これに代えてインジウムを用いても良い。更には、ボロン及びインジウムの両方を用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の半導体装置は、Geを含む第1の半導体領域をチャネル形成領域とすることによりしきい値電圧を低減すると共に、PN接合部においてSi濃度を高くすることにより基板リーク電流を低減することができ、トランジスタの低消費電力化に有用である。
【符号の説明】
【0092】
100 半導体基板
101 第1の半導体領域
102 酸化膜
103 高誘電率絶縁膜
104 窒化チタン膜
105 シリコン膜
106 サイドウォールスペーサー
107 エクステンション領域
108、128 第2の半導体領域
109 ソース・ドレイン領域
121 ゲート絶縁膜
122 ゲート電極
150、151 半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Geを含む第1導電型の第1の半導体領域と、
前記第1の半導体領域上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、
前記第1の半導体領域における前記ゲート電極の両側方に形成された第2導電型の拡散領域と、
前記第1の半導体領域と前記拡散領域との間に形成された第1導電型の第2の半導体領域とを備え、
前記第2の半導体領域は、前記第1の半導体領域における前記ゲート電極下方のチャネル形成領域よりも高い濃度のSiを含有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の半導体領域はN型であり、
前記拡散領域はP型であることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記拡散領域は、ボロン及びインジウムの少なくとも一方を不純物として含有することを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つにおいて、
前記第1の半導体領域は、ヒ素及びリンの少なくとも一方を不純物として含有することを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つにおいて、
前記拡散領域は、ソース・ドレイン領域及びエクステンション領域の少なくとも一方であることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一つにおいて、
前記第2の半導体領域は、前記第1の半導体領域と前記拡散領域との間の全体に形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一つにおいて、
前記第2の半導体領域は、前記第1の半導体領域と前記拡散領域との間の一部に形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一つにおいて、
前記第2の半導体領域及び前記チャネル形成領域は、いずれもSi1-x Gex (0<x≦1)からなり、
前記第2の半導体領域におけるxは、前記チャネル領域におけるxよりも0.1以上小さいことを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
基板上に、Geを含む第1導電型の第1の半導体領域を形成する工程(a)と、
前記第1の半導体領域上に、ゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程(b)と、
前記第1の半導体領域における前記ゲート電極の両側方に、第2導電型の拡散領域を形成する工程(c)と、
前記第1の半導体領域における前記ゲート電極の両側方に、第1導電型の第2の半導体領域を形成する工程(d)とを備え、
前記第2の半導体領域は、少なくとも前記第1の半導体領域と前記拡散領域との間に位置していると共に、前記第1の半導体領域における前記ゲート電極下方のチャネル形成領域よりも高い濃度のSiを含有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項9において、
前記拡散領域は、ソース・ドレイン領域及びエクステンション領域の少なくとも一方であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項9又は10において、
前記拡散領域は、ボロン及びインジウムの少なくとも一方をイオン注入することにより形成されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか一つにおいて、
前記第2の半導体領域は、Siイオンの注入により形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−267713(P2010−267713A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116577(P2009−116577)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】