説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】不良アドレス1ビット分を一対のアンチヒューズ素子に記憶させる半導体装置において、一方のアンチヒューズ素子のみが不良品である場合であっても、不良品として検出できるようにする。
【解決手段】半導体装置10は、それぞれハイレベル及びローレベルのうちのいずれか一方にある一対のアンチヒューズ素子51A,51Bと、これらのうちの少なくとも一方がハイレベルにある場合と、両方がローレベルにある場合とで異なる論理情報を出力するオア回路56と、これらの論理状態が互いに異なる場合と、互いに同一である場合とで異なる論理情報を出力するエクスクルーシブオア回路58とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関し、特に不良アドレスを不揮発性記憶素子に記憶させる半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
DRAM(Dynamic Random Access Memory)に代表される半導体記憶装置の記憶容量は、微細加工技術の進歩により年々増大しているが、微細化が進むに連れ、1チップ当たりに含まれる欠陥メモリセルの数もますます増大しているというのが実情である。このような欠陥メモリセルは、通常、冗長メモリセルに置き換えられ、これによって欠陥のあるアドレスが救済される。
【0003】
不良アドレスの記憶にはヒューズ素子が用いられる(特許文献1,2参照)。初期状態のヒューズ素子は電気的に導通状態であり、レーザービームの照射によってこれを切断することにより、不良アドレスを不揮発的に記憶することができる。したがって、このようなヒューズ素子を複数設け、所望のヒューズ素子を切断すれば、所望のアドレスを記憶させることが可能となる。このように、ヒューズ素子は、導通状態から絶縁状態に変化させることによって情報を不揮発的に記憶する素子である。
【0004】
しかしながら、上記のようなアドレス置換を行った後においても、例えば、パッケージング時における熱ストレスなどにより、不良ビットが散発的に発生することがある。パッケージング後にこのような不良ビットが発見された場合、もはやレーザビームの照射によるアドレス置換を行うことはできないため、不良品として扱わざるを得ない。
【0005】
このような問題を解決する方法として、パッケージング後に発見された少数の不良ビットを救済可能な救済回路を設ける方法が提案されている。この場合、不良アドレスを記憶する回路には、レーザビームの照射が必要なヒューズ素子ではなく、電気的に書き込み可能な不揮発性の記憶素子が用いられる。このような記憶素子としては、酸化膜の絶縁破壊を利用したいわゆる「アンチヒューズ素子」が知られている(特許文献3,4参照)。
【0006】
アンチヒューズ素子とは、上述したヒューズ素子とは逆に、絶縁状態から導通状態に変化させることによって情報を記憶する素子である。アンチヒューズ素子への不良アドレスの書き込みは、高電圧の印加による絶縁破壊によって行う。このため、ヒューズ素子とは異なり、書き込みに際してレーザービームの照射が不要である。これにより、不良アドレスの書き込みを高速に行うことができるとともに、レーザートリマーなどの装置が不要となる。しかも、レーザービームの照射によるパッシベーション膜の破壊なども生じないことから、製品の信頼性を高めることも可能となる。
【0007】
一方で、アンチヒューズ素子には経時劣化の問題がある。すなわち、アンチヒューズ素子を絶縁状態から導通状態へと変化させる際、絶縁破壊が不十分であると、時間の経過に伴って高抵抗化し、絶縁状態に戻ってしまう。そこで、近年、1ビット分の情報を記憶するために一対のアンチヒューズ素子を用いる技術が提案されている(特許文献4参照)。この技術では、一対のアンチヒューズ素子を並列接続しており、いずれか一方のアンチヒューズ素子が絶縁状態に戻ってしまったとしても、他方のアンチヒューズ素子により導通状態が保たれるので、記憶情報が失われることはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−75170号公報
【特許文献2】特開2006−147651号公報
【特許文献3】特開2004−227361号公報
【特許文献4】特開2007−116045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、アンチヒューズ素子には高電圧を印加しても導通状態にならない不良品が混入することがある。そのような不良品は、不良アドレスを書き込んだ後、通常の読み出し方法と同様の方法により一旦読み出し、正しい不良アドレスが読み出されたか否かを確認するテストを行うことで検出するようにしている。
【0010】
しかしながら、特許文献4のように1ビット分の情報を一対のアンチヒューズ素子に記憶させる場合、上記テストでは、一方のアンチヒューズ素子のみが不良品で、他方が不良品でない場合、不良品として検出できない。つまり、一対のアンチヒューズ素子のうちの一方が導通状態となっていれば正しい情報が読み出されるため、他方のアンチヒューズ素子が導通状態となっていなかったとしても検出されない。
【0011】
1ビット分の情報を一対のアンチヒューズ素子に記憶させる目的は、上述のとおり、経時劣化リスクを軽減することにある。この目的を達成するためには、少なくとも製造時点では2つのアンチヒューズ素子がともに正常に機能している必要がある。したがって、書き込み後のテストにおいて、一方のアンチヒューズ素子のみが不良品である場合にも不良品として検出できるようにすることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による半導体装置は、それぞれ第1及び第2の論理状態のうちのいずれか一方にある一対の不揮発性記憶素子と、前記一対の不揮発性記憶素子のうちの少なくとも一方が前記第1の論理状態にある場合と、前記第1及び第2の不揮発性記憶素子のうちの両方が前記第2の論理状態にある場合とで異なる論理情報を出力する第1の論理回路と、前記一対の不揮発性記憶素子の論理状態が互いに異なる場合と、前記一対の不揮発性記憶素子の論理状態が互いに同一である場合とで異なる論理情報を出力する第2の論理回路とを備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明による半導体装置の製造方法は、それぞれ第1及び第2の論理状態のうちのいずれか一方をとる一対の不揮発性記憶素子を有する半導体装置の製造方法であって、前記一対の不揮発性記憶素子に同一の論理状態を書き込む書込ステップと、前記書込ステップによる書き込みの後、前記一対の不揮発性記憶素子の論理状態が一致しているか否かを判定する判定ステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、不良アドレス1ビット分を一対のアンチヒューズ素子に記憶させる半導体装置において、一方のアンチヒューズ素子のみが不良品である場合であっても、不良品として検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の好ましい実施の形態による半導体装置の主要部の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の好ましい実施の形態によるメモリセルアレイ及びカラムスイッチの構造を示す模式図である。
【図3】本発明の好ましい実施の形態によるバンク内のメインアンプ、救済回路、及びスイッチの回路図である。
【図4】本発明の好ましい実施の形態による不良アドレス判定回路の回路図である。
【図5】本発明の好ましい実施の形態によるアンチヒューズ部の回路図である。
【図6】本発明の好ましい実施の形態によるアンチヒューズ素子対に記憶される情報を読み出すときの信号タイミング図である。
【図7】本発明の好ましい実施の形態による不良判定回路の回路図である。
【図8】(a)は、本発明の好ましい実施の形態による不良アドレス判定回路に含まれるすべてのアンチヒューズ部について、一対のアンチヒューズ素子対の記憶内容が一致する場合の信号タイミング図である。(b)は、記憶内容が一致しない一対のアンチヒューズ素子が、本発明の好ましい実施の形態による不良アドレス判定回路内に存在する場合の信号タイミング図である。
【図9】本発明の好ましい実施の形態による半導体装置の製造工程のうち、不良品の不良アドレス判定回路を検出する工程のフローチャートである。
【図10】本発明の好ましい実施の形態の変形例による不良判定回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の好ましい実施の形態による半導体装置10の主要部の構成を示すブロック図である。図1においては、カラム系回路とデータ系回路のみを図示しており、ロウ系の回路については省略している。なお、特に限定されるものではないが、以下の説明では半導体装置10はDRAMであるとして説明する。
【0018】
図1に示すように、半導体装置10は、バンク#0〜#7と、アドレスカウンタ20と、コマンドデコーダ21と、モードレジスタ22と、制御回路23と、FIFO25と、不良アドレス判定回路30〜30と、アドレスラッチ31と、不良判定回路33〜33とを備えている。本実施の形態では、不良アドレス判定回路30〜30及び不良判定回路33〜33は、バンク#0〜#7ごとに1つずつ設けられる。すなわち、半導体装置10は、バンク#0〜#7ごとに1つの不良アドレスを置換可能に構成されている。
【0019】
各バンク#0〜#7は、互いに同一の構成を有している。以下、バンク#0について着目して説明すると、バンク#0は、図1に示すように、メモリセルアレイ11、プリデコーダ12、カラムデコーダ13、カラムスイッチ14、メインアンプ15、アドレスラッチ16、救済回路17、及びスイッチ18を有している。
【0020】
メモリセルアレイ11は、図2に示すように、複数のワード線WL、複数のビット線対BLT,BLB、これらの交点に配置された複数のメモリセルMC、及びビット線対BLT,BLBごとに設けられた複数のセンスアンプSAを含んで構成されており、各メモリセルMCはDRAMセル構成を有している。メモリセルアレイ11には、ウェハ状態で行われる選別試験においてアドレス置換を行うための冗長回路が含まれているが、これについては本発明の要旨とは直接関係ないことから、図示を省略している。
【0021】
プリデコーダ12及びカラムデコーダ13は、アドレスカウンタ20及びアドレスラッチ16を介してアドレス端子ADDに接続されており、アドレス端子ADDからカラムアドレスCADが入力されると、入力されたカラムアドレスCADに対応するカラム選択線YSELを活性化する。
【0022】
カラムスイッチ14は、図2に示すように、カラム選択線YSELごとに一対のトランスファーゲートを有しており、各トランスファーゲートは、ビット線対BLT,BLBとメインIO線対MIOT,MIOBとの間に接続されている。カラムデコーダ13により複数のカラム選択線YSELのうちの1つが活性化されると、そのカラム選択線YSELに接続された制御電極を有するトランスファーゲートがオンし、それによって、対応するビット線対BLT,BLBがメインIO線対MIOT,MIOBに接続される。なお、図2では、図面の簡単のため、ビット線対BLT,BLBとメインIO線対MIOT,MIOBとが直接接続するように記載しているが、実際のDRAMではIO線が階層化されており、ビット線とメインIO線との間にはローカルIO線対LIOT,LIOB(不図示)などが介在する。
【0023】
メインアンプ15は、メインIO線対MIOT,MIOBとリードライトバスRWBUSとの間に設けられており、後述するように、リードアンプ及びライトバッファを含んでいる。リードライトバスRWBUSはFIFO25を介してデータ入出力端子DQに接続されており、これにより、データ入出力端子DQを介したデータの入出力が行われる。
【0024】
救済回路17は、メモリセルアレイ11内の不良アドレス(アクセスや記憶ができないビットに対応するアドレス)を救済するための回路である。スイッチ18は、不良アドレスのリード要求があった場合に、リードライトバスRWBUSの接続先をメモリセルアレイ11から救済回路17へ切り替えるとともに、不良アドレスへのライト要求があった場合に、リードライトバスRWBUSを救済回路17に接続する回路である。以下、救済回路17とスイッチ18について、詳しく説明する。
【0025】
図3は、バンク#0内のメインアンプ15、救済回路17、及びスイッチ18の回路図である。同図に示すように、まずメインアンプ15は、メインIO線対MIOT,MIOBに現れる相補信号をハイレベル又はローレベルの単一信号に変換してリードライトバスRWBUSに供給するリードアンプRAと、リードライトバスRWBUSに現れる単一信号を相補信号の形式でメインIO線対MIOT,MIOBに供給するライトバッファWBとを有している。ライトバッファWBはスイッチSW1,SW2を含んでおり、これらスイッチSW1,SW2は、制御回路23からライトコマンドWcmdが入力されると導通状態となる。
【0026】
救済回路17は、フリップフロップ回路、すなわちSRAMセル構成を有している。つまり、救済回路17は、メモリセルアレイ11内のメモリセルMCとはタイプの異なる記憶素子である。
【0027】
スイッチ18は、スイッチSW3とセレクタSEとアンド回路A1,A2とを有している。スイッチSW3の一端はリードライトバスRWBUSとライトバッファWBの接続線に接続され、他端は救済回路17の一端に接続されている。また、セレクタSEは2つの入力端を有しており、一方の入力端がリードアンプRAの出力端に接続され、他方の入力端が救済回路17の他端に接続されている。セレクタSEの出力端はリードライトバスRWBUSに接続されている。
【0028】
アンド回路A1,A2には、対応する不良アドレス判定回路30からヒット信号AFHit_0が入力される。ヒット信号AFHit_0の詳細については後述するが、要するに、アドレス端子ADDから供給されたアドレスが不良アドレス判定回路30に記憶されている場合(アクセス対象のアドレスが不良アドレスである場合)に活性化される信号である。
【0029】
アンド回路A1には制御回路23からリードコマンドRcmdも入力されており、リードコマンドRcmdとヒット信号AFHit_0の両方が活性化すると、冗長リード信号AFRが活性化状態となる。冗長リード信号AFRはセレクタSEに入力されており、セレクタSEは、冗長リード信号AFRが活性化されているとき、救済回路17とリードライトバスRWBUSとを接続し、リードアンプRAとリードライトバスRWBUSとを切り離す。一方、冗長リード信号AFRが活性化されていないとき、リードアンプRAとリードライトバスRWBUSとを接続し、救済回路17とリードライトバスRWBUSとを切り離す。これにより、不良アドレスのリード要求があった場合に、リードライトバスRWBUSの接続先がメモリセルアレイ11から救済回路17へ切り替えられる。
【0030】
アンド回路A2には制御回路23からライトコマンドWcmdも入力されており、ライトコマンドWcmdとヒット信号AFHit_0の両方が活性化すると、冗長ライト信号AFWが活性化状態となる。冗長ライト信号AFWはスイッチSW3に入力されており、スイッチSW3は、冗長ライト信号AFWが活性化されているとき、救済回路17とリードライトバスRWBUSとを接続する。一方、冗長ライト信号AFWが活性化されていないとき、救済回路17とリードライトバスRWBUSとを切り離す。これにより、不良アドレスへのライト要求があった場合に、リードライトバスRWBUSが救済回路17に接続される。
【0031】
図1に戻る。不良アドレス判定回路30〜30はそれぞれ、対応するバンク#0〜#7内の不良アドレスを記憶する。各不良アドレス判定回路30〜30はメモリセルMC1つ分のアドレスのみを記憶可能に構成されており、1つのバンク内にメモリセルMC1つ分を超える不良アドレスが存在する場合には、救済できないためその半導体装置10は破棄される。ただし、バンクごとに2つ以上の不良アドレス判定回路を設け、複数の不良アドレスを救済可能としてもよいことは勿論である。
【0032】
図4は、不良アドレス判定回路30の回路図である。ここでは不良アドレス判定回路30に着目して説明するが、他の不良アドレス判定回路30〜30の構成も同様である。
【0033】
図4に示すように、不良アドレス判定回路30は、複数のアンチヒューズ(AF)部40,41〜41と、アンド回路42とを有している。アンチヒューズ部41〜41の個数n+1はカラムアドレスCADのビット数に等しく、アンチヒューズ部41〜41にはカラムアドレスCADのビットADD0〜nがそれぞれ入力される。
【0034】
各アンチヒューズ部40,41〜41はそれぞれ一対のアンチヒューズ素子を有しており、この一対のアンチヒューズ素子により1ビット分の情報を記憶する。
【0035】
図5は、アンチヒューズ部41の回路図である。ここではアンチヒューズ部41に着目して説明するが、アンチヒューズ部41〜41の構成も同様である。
【0036】
図5に示すように、アンチヒューズ部41は、それぞれアンチヒューズ素子51A,51Bを有する一対のアンチヒューズブロック50A,50(2)と、アンプ回路54A,54Bと、ラッチ回路55A,55Bと、オア回路56(第1の論理回路)と、エクスクルーシブノア回路57と、エクスクルーシブオア回路58(第2の論理回路)とを有している。
【0037】
アンチヒューズブロック50A内には、他にもPチャンネル型MOSトランジスタ52A,53Aが含まれる。同様に、アンチヒューズブロック50B内には、Pチャンネル型MOSトランジスタ52B,53Bが含まれる。トランジスタ52A,52Bのソースには電源電圧VPERIが供給され、ドレインは対応するトランジスタ53A,53Bのソースに接続されている。また、トランジスタ52A,52Bのゲートには制御回路23から制御信号PREが、トランジスタ53A,53Bのゲートには制御回路23から制御信号TGが、それぞれ供給される。アンチヒューズブロック50A,50Bの出力は、トランジスタ53A,53Bのドレインから取り出される。また、アンチヒューズブロック50A,50B内にはアンチヒューズ切断用の高電圧印加回路が配置されているが、図5では省略している。
【0038】
アンチヒューズ素子51A,51Bは、図5に示すようにNチャンネル型MOSトランジスタのソースとドレインが短絡された構造を有しており、そのゲートは対応するトランジスタ52A,52Bのドレインに接続され、ソース/ドレインには接地電位VSSが供給される。
【0039】
初期状態におけるアンチヒューズ素子51A,51Bは、ゲート絶縁膜を介して、ゲートとソース/ドレインとが絶縁されている。このため、両者間に電流は流れない。しかしながら、ゲートとソース/ドレインとの間に高電圧を印加すると、ゲート絶縁膜に絶縁破壊が生じ、両者間に電流パスが形成される。ゲート絶縁膜を一旦絶縁破壊した後は、意図的にはこれを元に戻すことはできず、したがって不可逆的な不揮発性書き込みが可能となる。ただし、上述したようにアンチヒューズ素子には経時劣化の問題があり、絶縁破壊が不十分であると、時間の経過に伴って高抵抗化し、絶縁状態に戻ってしまうことがある。しかし、アンチヒューズ部41は一対のアンチヒューズ素子51A,51Bにより1ビットの情報を記憶するので、一方のアンチヒューズ素子が経時劣化により絶縁状態に戻ってしまったとしても、他方のアンチヒューズ素子により記憶内容は保持される。
【0040】
以下、アンチヒューズ素子対51A,51Bに記憶される情報を読み出すときのアンチヒューズ部41の動作について説明する。
【0041】
図6は、アンチヒューズ素子対51A,51Bに記憶される情報を読み出すときの信号タイミング図である。同図に示す記号AF1,AF2などは、図5中の同一記号に対応する部分の電位を示している。同図は、次のような状態を前提として描いたものである。すなわち、アンチヒューズ素子51A,51Bはともに一旦絶縁破壊され、アンチヒューズ素子51Bは導通状態を保っているが、アンチヒューズ素子51Aは経時劣化により絶縁状態に戻ってしまっている、という状態を前提としている。
【0042】
図6に示すように、まず初めに制御信号PREを時刻Tから所定時間にわたり活性化する。制御信号PREが活性化している間、トランジスタ52A,52Bがオンし、アンチヒューズ素子51A,51Bのゲート電位AF1,AF2は、図6に示すようにハイレベルとなる。アンチヒューズ素子51Aは絶縁状態であるので、制御信号PREが非活性状態に戻った後もゲート電位AF1はハイレベルで維持されるが、アンチヒューズ素子51Bは導通状態であるので、アンチヒューズ素子51Bを通じて接地端に向かう電流が流れ、ゲート電位AF2は低下し、しばらく後にローレベルに戻る。
【0043】
制御信号PREを非活性状態に戻してから所定時間が経過したら、次に時刻Tから所定時間にわたり制御信号TGを活性化する。制御信号TGが活性化している間、トランジスタ53A,53Bがオンし、ゲート電位AF1,AF2がアンプ回路54A,54Bに供給される。
【0044】
制御信号TGを非活性状態に戻してから所定時間が経過したら、次に時刻Tから所定時間にわたり信号AMPEを活性化する。アンプ回路54A,54Bは、信号AMPEが非活性化であるときにはローレベルを出力し、信号AMPEが活性化されている間には、ゲート電位AF1,AF2を後段のラッチ回路55A,55Bで必要とされるレベルまで増幅するとともに、反転して出力する機能を有する。これにより、図6に示すように、アンプ回路54Aの出力電位AF1Dは、信号AMPEが活性化されている間にもローレベルを維持し、アンプ回路54Bの出力電位AF2Dは、信号AMPEが活性化されている間、ハイレベルとなる。
【0045】
次に、信号AMPEが活性化されている間の時刻Tに信号LATEを活性化し、活性化状態を維持する。ラッチ回路55A,55Bは、信号LATEが活性化されたときの出力電位AF2Dをラッチし、出力電位AF1D,AF2Dとして出力する機能を有する。これにより、図6に示すように、時刻T以降の出力電位AF1D,AF2Dは、それぞれローレベル、ハイレベルとなる。
【0046】
電位AFEは、オア回路56の出力電位である。オア回路56は、出力電位AF1D,AF2Dのいずれかがハイレベルであれば、出力電位AFEをハイレベルとすることから、時刻T以降の出力電位AFEはハイレベルとなる。つまり、アンチヒューズ素子51Bが導通状態であることにより、アンチヒューズ素子51Aの状態に関わらず、出力電位AFEがハイレベルとなっている。このことは、アンチヒューズ素子51Aが絶縁状態に戻ってしまっているにも関わらず、アンチヒューズ素子対51A,51Bの記憶内容は保持されていることを意味している。
【0047】
図5に戻る。エクスクルーシブノア回路57には、出力電位AFEとカラムアドレスCADの対応するビットADD0とが供給される。このため、両者の状態が一致する場合には出力信号Hit_0はハイレベルとなり、両者の状態が一致しない場合には出力信号Hit_0はローレベルとなる。
【0048】
図4に戻る。上述したように、アンチヒューズ部41〜41にはカラムアドレスCADのビットADD0〜nがそれぞれ供給されており、上述した構成により、各アンチヒューズ部41〜41は、アンチヒューズ素子対51A,51Bに記憶している1ビット分の情報と、供給されるビットADD0〜nとが一致する場合に、対応する出力信号Hit_0〜nをハイレベルとする。一致しない場合には、対応する出力信号Hit_0〜nをローレベルとする。
【0049】
なお、アンチヒューズ部40には、カラムアドレスCADのビット情報は供給されない。アンチヒューズ部40は、当該不良アドレス判定回路30がイネーブル状態である場合に出力信号Enをハイレベルとし、イネーブル状態でない場合に出力信号Enをローレベルとする回路である。具体的には、図5に説明したアンチヒューズ部41の回路図からエクスクルーシブノア回路57を削除し、出力電位AFEを出力信号Enに置き換えた構成を有しており、当該不良アドレス判定回路30をイネーブル状態とする場合に、アンチヒューズ素子51A,51Bがともに絶縁破壊される。
【0050】
アンド回路42は、出力信号En,Hit_0〜Hit_nを供給され、これらがすべてハイレベルである場合に、ヒット信号AFHit_0を活性状態とする。つまり、当該不良アドレス判定回路30がイネーブル状態であり、かつカラムアドレスCADの全ビットが記憶している情報と一致した場合にヒット信号AFHit_0を活性状態とし、そうでない場合にヒット信号AFHit_0を非活性状態とする。これにより、ヒット信号AFHit_0は、供給されたカラムアドレスCADが不良アドレスであるか否かを示す。ヒット信号AFHit_0は上述したようにスイッチ18(図1)に供給され、救済回路17をリードライトバスRWBUSに接続するか否かの判定のために用いられる。
【0051】
さて、ここから、1ビット分の情報を記憶するための一対のアンチヒューズ素子51A,51Bの一方のみが不良品である場合であっても、不良品として検出できるようにするための構成について説明する。
【0052】
図1に示した不良判定回路33〜33はそれぞれ、不良アドレス判定回路30〜30の良/不良を判定するための回路である。不良アドレス判定回路30〜30が不良である場合とは、1ビット分の情報を記憶するための一対のアンチヒューズ素子51A,51Bの記憶情報が不一致である場合をいう。以下、不良アドレス判定回路30及び不良判定回路33に着目して説明するが、他の回路についても同様である。
【0053】
初めに、図5を再度参照する。アンチヒューズ部41のエクスクルーシブオア回路58には、ラッチ回路55A,55Bの出力電位AF1L,AF2Lが入力される。したがって、エクスクルーシブオア回路58の出力信号Hit_0_ExORは、出力電位AF1L,AF2Lが一致する場合にローレベルとなり、一致しない場合にハイレベルとなる。
【0054】
不良アドレス判定回路30に含まれるアンチヒューズ部41以外のアンチヒューズ部40,41〜41も同様にエクスクルーシブオア回路58を有しており、図4に示すように、それぞれ出力電位AF1L,AF2Lが一致する場合に非活性化し、一致しない場合に活性化する出力信号En_ExOR,Hit_1_ExOR〜Hit_n_ExORを出力する。以上のようにして出力される信号En_ExOR,Hit_0_ExOR〜Hit_n_ExORは、不良判定回路33に供給される。
【0055】
図7は、不良判定回路33の回路図である。同図に示すように、不良判定回路33は、プリチャージラインPLとディスチャージラインDLとの間にNチャンネル型MOSトランジスタ44,45〜45が並列接続された構成を有している。プリチャージラインPLは、テスト信号JGがローレベルになるとプリチャージトランジスタ43を介してプリチャージされる。ディスチャージラインDLは、テスト信号JGがハイレベルになるとインバータ47によってディスチャージされる。トランジスタ44,45〜45の各ゲートには、それぞれ上記した信号En_ExOR,Hit_0_ExOR〜Hit_n_ExORが供給される。したがって、これらの信号が1つでもハイレベルであれば、プリチャージラインPLとディスチャージラインDLとは短絡される。これに対し、これらの信号が全てローレベルであれば、プリチャージラインPLとディスチャージラインDLとは分離される。
【0056】
以下、不良判定回路33の動作について、信号タイミング図を参照しながら詳しく説明する。
【0057】
図8(a)は、信号En_ExOR,Hit_0_ExOR〜Hit_n_ExORがすべてローレベルである場合、すなわち不良アドレス判定回路30に含まれるすべてのアンチヒューズ部40,41〜41について、一対のアンチヒューズ素子対51A,51Bの記憶内容が一致する場合の信号タイミング図である。
【0058】
図8(a)に示すように、テスト信号JGがローレベルである期間は、プリチャージラインPLがプリチャージされるため、出力信号NGはローレベルである。時刻Tでテスト信号JGがハイレベルになると、プリチャージラインPLのプリチャージが終了し、代わりにディスチャージラインDLがディスチャージされる。しかしながら、図8(a)の例ではトランジスタ44,45〜45はすべてオフ状態であることから、プリチャージラインPLはプリチャージ状態を維持する。このため、出力信号NGはローレベルに維持される。この状態は、トランジスタ46とインバータ48によって保たれる。
【0059】
図8(b)は、信号En_ExOR,Hit_0_ExOR〜Hit_n_ExORのうちのいずれか少なくとも1つがハイレベルである場合、すなわち記憶内容が一致しない一対のアンチヒューズ素子51A,51Bが不良アドレス判定回路30内に存在する場合の信号タイミング図である。
【0060】
時刻Tでテスト信号JGがハイレベルになると、プリチャージラインPLのプリチャージが終了し、代わりにディスチャージラインDLがディスチャージされるところまでは、図8(a)と同様である。
【0061】
図8(b)の例ではトランジスタ44,45〜45のいずれかがオン状態であることから、プリチャージラインPLの電位はすぐにローレベルに低下し、図8(b)に示すように、出力信号NGはハイレベルとなる。
【0062】
なお、出力信号NGは、データ入出力端子DQを通じて外部に出力される。すなわち、FIFO25は、テスト信号JGに応じて、その入力をリードライトバスRWBUSから不良判定回路33の出力信号NGに切り替える。これにより、FIFO25は、出力信号NGのハイ/ローレベルを、データ入出力端子DQを介して外部に出力する。
【0063】
以上説明したように、不良判定回路33の出力信号NGは、不良アドレス判定回路30内の一対のアンチヒューズ素子51A,51Bの記憶情報が不一致である場合、すなわち不良アドレス判定回路30が不良品である場合に活性化され、不良アドレス判定回路30が良品である場合に非活性化される。したがって、出力信号NGを参照することで、1ビット分の情報を記憶するための一対のアンチヒューズ素子51A,51Bの一方のみが不良品である場合であっても、不良品として検出できることになる。
【0064】
次に、不良判定回路33〜33を利用して不良品の不良アドレス判定回路30〜30を峻別するための半導体装置10の製造方法について説明する。
【0065】
図9は、半導体装置10の製造工程のうち、不良品の不良アドレス判定回路30〜30を検出する工程のフローチャートである。この工程は、パッケージング後に行われるものである。同図に示すように、まず初めに全アドレスの読み書きを行い、読み書きの出きない不良アドレスを検出する(ステップS1)。そして、検出された不良アドレスを、対応する不良アドレス判定回路30〜30に書き込む(ステップS2)。具体的な例を挙げると、例えばバンク#0内に不良アドレスが見つかった場合、不良アドレス判定回路30内のAF部41〜41のうち、当該不良アドレスのビット1に対応するAF部41〜41内の一対のアンチヒューズ素子51A,51Bにそれぞれ高電圧を印加し、導通状態に遷移させる。なお、ステップS2では、AF部40へのイネーブル状態の書き込みも行う。
【0066】
書き込みが終了したら、次にテスト信号JGを活性化し(ステップS3)、その結果データ入出力端子DQから出力される出力信号NGを参照することにより、不良アドレス判定回路30〜30ごとの良/不良判定を行う(ステップS4)。不良アドレスが見つかったバンクに対応するすべての不良アドレス判定回路が良品であれば、処理を終了する。一方、不良品が検出された場合には、当該半導体装置10を破棄する(ステップS6)。
【0067】
以上説明したように、半導体装置10によれば、1ビット分の情報を記憶するための一対のアンチヒューズ素子51A,51Bの一方のみが不良品である場合であっても、不良品として検出できることになる。したがって、製造段階で不良品の不良アドレス判定回路30〜30を峻別することが可能になる。
【0068】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0069】
例えば、上記実施の形態では不良判定回路33として図7に示す回路を用いたが、例えば図10に示す回路を用いて不良判定回路33を構成することも可能である。すなわち、図10に示すように、信号En_ExOR,Hit_0_ExOR〜Hit_n_ExORをオア回路に入力し、その出力とテスト信号JGのNANDを出力信号/NGとして用いることも可能である。ただし、この場合、図7に示した回路に比べて占有面積が大きくなる。
【0070】
また、上記実施の形態ではアンチヒューズ素子を用いる例を説明したが、本発明は、1ビット分の情報を一対の不揮発性素子に記憶させる場合であれば、他の種類の不揮発性素子にも適用可能である。
【符号の説明】
【0071】
10 半導体装置
11 メモリセルアレイ
12 プリデコーダ
13 カラムデコーダ
14 カラムスイッチ
15 メインアンプ
16 アドレスラッチ
17 救済回路
18 スイッチ
20 アドレスカウンタ
21 コマンドデコーダ
22 モードレジスタ
23 制御回路
25 FIFO
30〜30 不良アドレス判定回路
31 アドレスラッチ
33〜33 不良判定回路
40,41〜41 アンチヒューズ部
42 アンド回路
43,46 Pチャンネル型MOSトランジスタ
44,45〜45 Nチャンネル型MOSトランジスタ
47,48 インバータ
50A,50B アンチヒューズブロック
51A,51B アンチヒューズ素子
52A,53A,52B,53B Pチャンネル型MOSトランジスタ
54A,54B アンプ回路
55A,55B ラッチ回路
56 オア回路
57 エクスクルーシブノア回路
58 エクスクルーシブオア回路
A1,A2 アンド回路
BLT,BLB ビット線
MC メモリセル
RA リードアンプ
RWBUS リードライトバス
SA センスアンプ
SE セレクタ
SW1〜SW3 スイッチ
WB ライトバッファ
WL ワード線
YSEL カラム選択線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ第1及び第2の論理状態のうちのいずれか一方にある一対の不揮発性記憶素子と、
前記一対の不揮発性記憶素子のうちの少なくとも一方が前記第1の論理状態にある場合と、前記第1及び第2の不揮発性記憶素子のうちの両方が前記第2の論理状態にある場合とで異なる論理情報を出力する第1の論理回路と、
前記一対の不揮発性記憶素子の論理状態が互いに異なる場合と、前記一対の不揮発性記憶素子の論理状態が互いに同一である場合とで異なる論理情報を出力する第2の論理回路とを備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記一対の不揮発性記憶素子は、同一の論理状態になるよう書き込み制御されることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記一対の不揮発性記憶素子はアンチヒューズ素子であり、前記第1の論理状態は導通状態、前記第2の論理状態は絶縁状態であることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
スイッチ素子を介してそれぞれリードライトバスに接続されたメモリセルアレイ及び救済回路と、
不良アドレスを記憶し、アクセスが要求されたアドレスと前記不良アドレスとを比較する不良アドレス判定回路とをさらに備え、
前記スイッチ素子は、前記不良アドレス判定回路による比較の結果が不一致である場合に前記メモリセルアレイと前記リードライトバスとを接続し、一致である場合に前記救済回路と前記リードライトバスとを接続し、
前記不良アドレス判定回路は、それぞれ前記一対の不揮発性記憶素子を複数含み、該一対の不揮発性記憶素子ごとに前記不良アドレスの1ビット分を記憶することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
それぞれ第1及び第2の論理状態のうちのいずれか一方をとる一対の不揮発性記憶素子を有する半導体装置の製造方法であって、
前記一対の不揮発性記憶素子に同一の論理状態を書き込む書込ステップと、
前記書込ステップによる書き込みの後、前記一対の不揮発性記憶素子の論理状態が一致しているか否かを判定する判定ステップとを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−277662(P2010−277662A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131174(P2009−131174)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(500174247)エルピーダメモリ株式会社 (2,599)
【Fターム(参考)】