説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】オン電流が大きい半導体装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】実施形態に係る半導体装置は、単結晶シリコンからなり、上面が(100)面であり、前記上面にトレンチが形成された基板と、少なくとも前記トレンチの内部に設けられたゲート電極と、前記基板における前記トレンチを挟む領域に形成されたソース・ドレイン領域と、前記基板と前記ゲート電極との間に設けられたゲート絶縁膜と、を備える。前記トレンチは、シリコンの(100)面からなる底面、前記底面に接し、シリコンの(111)面からなる一対の斜面、及び前記斜面に接し、シリコンの(110)面からなる一対の側面により構成されており、前記ソース・ドレイン領域は、前記側面及び前記斜面に接し、前記底面の中央部には接していない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor:金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)において、ソース・ドレイン間のリーク電流を抑制しつつ、微細化を図り、オン電流を増加させるために、ゲート電極の下部をシリコン基板の内部に埋め込んだリセス型トランジスタ(Recessed Channel Transistor:RCAT)が提案されている。そして、RCATにおいても、オン電流のより一層の増加が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−81396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、オン電流が大きい半導体装置及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る半導体装置は、単結晶シリコンからなり、上面が(100)面であり、前記上面にトレンチが形成された基板と、少なくとも前記トレンチの内部に設けられたゲート電極と、前記基板における前記トレンチを挟む領域に形成されたソース・ドレイン領域と、前記基板と前記ゲート電極との間に設けられたゲート絶縁膜と、を備える。前記トレンチは、シリコンの(100)面からなる底面、前記底面に接し、シリコンの(111)面からなる一対の斜面、及び前記斜面に接し、シリコンの(110)面からなる一対の側面により構成されており、前記ソース・ドレイン領域は、前記側面及び前記斜面に接し、前記底面の中央部には接していない。
【0006】
実施形態に係る半導体装置の製造方法は、単結晶シリコンからなり、上面がシリコンの(100)面である基板上に、開口部が形成されたマスク膜を形成する工程と、前記マスク膜をマスクとして、アルカリ性のエッチング液を用いてウェットエッチングを施すことにより、シリコンの(100)面からなる底面、前記底面に接し、シリコンの(111)面からなる一対の斜面、及び、前記斜面に接し、シリコンの(110)面からなる一対の側面から構成されるトレンチを形成する工程と、前記底面上、前記斜面上及び前記側面上にゲート絶縁膜を形成する工程と、少なくとも前記トレンチの内部にゲート電極を形成する工程と、前記基板における前記トレンチを挟む領域に不純物を注入する工程と、前記不純物を拡散させて、前記側面及び前記斜面に接し、前記底面の中央部には接しないソース・ドレイン領域を形成する工程と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施形態に係る半導体装置を例示する斜視断面図である。
【図2】実施形態に係る半導体装置を例示する断面図である。
【図3】(a)〜(c)は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示する工程断面図である。
【図4】(a)〜(c)は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示する工程断面図である。
【図5】(a)〜(c)は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示する工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る半導体装置を例示する斜視断面図であり、
図2は、本実施形態に係る半導体装置を例示する断面図である。
なお、図1においては、図示の便宜上、ゲート電極は省略している。
【0009】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る半導体装置1においては、シリコン基板10が設けられている。シリコン基板10は単結晶シリコンからなり、シリコン基板10の上面10aはシリコンの(100)面である。シリコン基板10の上層部分には、一方向にライン状に延びる複数本の素子分離絶縁体(STI)11が埋め込まれている。素子分離絶縁体11は、例えばシリコン酸化物等の絶縁材料からなり、周期的に配列されている。素子分離絶縁体11により、シリコン基板10の上層部分が複数本のアクティブエリア12に分断されている。すなわち、素子分離絶縁体11とアクティブエリア12とは交互に周期的に配列されている。
【0010】
以下、シリコン基板10の上面10aに対して平行な方向のうち、素子分離絶縁体11及びアクティブエリア12が延びる方向を「AA方向」といい、素子分離絶縁体11及びアクティブエリア12の配列方向を「ゲート方向」という。また、上面10aに対して垂直な方向を「上下方向」という。AA方向、ゲート方向、上下方向は、相互に直交している。
【0011】
シリコン基板10の上面10aには、ゲート方向に延びるトレンチ13が複数本形成されている。トレンチ13は、複数本の素子分離絶縁体11及び複数本のアクティブエリア12にわたって形成されている。
トレンチ13のうち、アクティブエリア12内に位置する部分の形状は、ゲート方向に延びる略六角柱形である。AA方向及び上下方向に対して平行な断面において、アクティブエリア12内に位置するトレンチ13の形状は、概ね、長方形から下側の2ヶ所の角部を切り落とした六角形である。すなわち、トレンチ13は、1つの底面13a、底面13aに接した一対の斜面13b、及び斜面13bに接した一対の側面13cによって構成されている。底面13aはシリコンの(100)面によって構成されており、斜面13bはシリコンの(111)面によって構成されており、側面13cはシリコンの(110)面によって構成されている。底面13aと斜面13bとのなす角度θは、55°である。
【0012】
一方、トレンチ13のうち、素子分離絶縁体11内に位置する部分の形状は、ゲート方向に延びる略四角柱形である。AA方向及び上下方向に対して平行な断面において、素子分離絶縁体11内に位置するトレンチ13の形状は、長方形又は上辺が下辺よりも長い台形である。トレンチ13において、素子分離絶縁体11内に位置する部分の幅、すなわち、AA方向における長さは、アクティブエリア12内に位置する部分の幅よりも長い。また、トレンチ13において、素子分離絶縁体11内に位置する部分の深さ、すなわち、上下方向における長さは、アクティブエリア12内に位置する部分の深さと略等しい。
【0013】
トレンチ13におけるアクティブエリア12内に位置する部分の内面上には、例えばシリコン酸化物からなるゲート絶縁膜15が形成されている。また、トレンチ13の内部及び上方には、ゲート電極16が設けられている。ゲート電極16には、例えば、不純物が導入されたポリシリコンからなる下部17と、金属、例えばタングステンからなる上部18とが設けられている。上部18は、シリコン基板10の上面10aよりも上方に設けられている。このように、ゲート絶縁膜15は、シリコン基板10とゲート電極16との間に配置されている。
【0014】
また、ゲート絶縁膜15の膜厚は位置によって異なっており、底面13a上に形成された部分15aは相対的に薄く、斜面13b上に形成された部分15bは部分15aよりも厚く、側面13c上に形成された部分15cは部分15bよりも厚い。一例を挙げると、ゲート絶縁膜15の部分15bの膜厚は部分15aの膜厚の約1.15倍であり、部分15cの膜厚は部分15aの膜厚の約1.50倍である。
【0015】
シリコン基板10のアクティブエリア12におけるトレンチ13に挟まれた部分及びその直下域には、ソース・ドレイン領域21が形成されている。換言すれば、ソース・ドレイン領域21は、シリコン基板10におけるトレンチ13を挟む領域に形成されている。ソース・ドレイン領域21の導電形は例えばn形であり、不純物として例えばリンが含有されている。ソース・ドレイン領域21は、トレンチ13の側面13c及び斜面13bに接しているが、底面13aのAA方向中央部には接していない。なお、ソース・ドレイン領域21は、底面13aの全領域に接していないことが好ましい。また、ソース・ドレイン領域21は、斜面13bの下部に接していなくてもよい。アクティブエリア12におけるソース・ドレイン領域21を除く部分は、導電形が例えばp形のチャネル領域となっている。
【0016】
シリコン基板10におけるトレンチ13の斜面13bの下部に接した部分には、不純物拡散領域22が形成されている。不純物拡散領域22には、ソース・ドレイン領域21に含有された不純物とは異なる種類の不純物が含有されている。不純物拡散領域22に含有されている不純物は、例えば、シリコンの導電性に実質的に影響を及ぼさないような不純物であり、例えば、炭素である。なお、炭素の替わりにフッ素又はボロンが含有されていてもよい。不純物拡散領域22は、トレンチ13の斜面13bの上部、側面13c及び底面13aには接していない。
【0017】
次に、本実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。
図3(a)〜(c)、図4(a)〜(c)、図5(a)〜(c)は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示する工程断面図である。
なお、図3(a)は、ゲート方向及び上下方向に対して平行な断面を示している。図3(b)〜図5(c)は、AA方向及び上下方向に対して平行な断面を示している。
【0018】
先ず、図3(a)に示すように、単結晶シリコンからなり、上面10aが(100)面によって構成されるシリコン基板10を用意する。次に、シリコン基板10の上面10aにAA方向に延びる複数本のトレンチ31を形成する。次に、トレンチ31内にシリコン酸化物を埋め込むことにより、素子分離絶縁体11を形成する。これにより、シリコン基板10の上層部分が素子分離絶縁体11によって複数本のアクティブエリア12に分断される。
【0019】
次に、図3(b)に示すように、シリコン基板10上に、アルカリ性のエッチング液に対して耐性があり、シリコン及びシリコン酸化物に対してエッチング選択比がとれる材料、例えば、シリコン窒化物を堆積させることにより、マスク膜32を形成する。なお、マスク膜32においては、シリコン窒化膜上に他の膜が積層されていてもよい。また、マスク膜32は、シリコン窒化物以外の材料によって形成されていてもよい。
【0020】
次に、マスク膜32上にレジスト膜を成膜し、リソグラフィ法によってパターニングすることにより、レジストパターン33を形成する。レジストパターン33においては、トレンチ13を形成する予定の領域に、ライン状の開口部33aを形成する。次に、レジストパターン33をマスクとしてマスク膜32をエッチングする。
これにより、図3(c)に示すように、マスク膜32において、レジストパターン33の開口部33aの直下域に、開口部32aが形成される。このようにして、シリコン基板10上に、ゲート方向に延びるライン状の開口部32aが形成されたマスク膜32が形成される。
【0021】
次に、マスク膜32をマスクとして、RIE(reactive ion etching:反応性イオンエッチング)等のドライエッチングを行う。これにより、シリコン基板10における開口部32aの直下域に相当する部分が選択的に除去されて、シリコン基板10の上面10aにトレンチ13が形成される。この段階では、AA方向及び上下方向に対して平行な断面におけるトレンチ13の形状は、略四角形である。また、トレンチ13における素子分離絶縁体11内に位置する部分は、アクティブエリア12内に位置する部分よりも浅い。次に、アッシングを行い、トレンチ13におけるアクティブエリア12内に位置する部分の内面上に、シリコン酸化膜34を形成する。次に、例えば、SH(硫酸と過酸化水素水の混合液)とNC2(New Clean 2)を用いて、洗浄する。NC2は、TMY(トリメチル−2ヒドロキシエチルアンモニウムハイドロオキサイド)と過酸化水素水の混合液であり、アルカリ性である。次に、不純物をイオン注入して、アクティブエリア12にチャネル領域(図示せず)を形成する。
【0022】
次に、図4(a)に示すように、マスク膜32をマスクとし、不純物、例えば、炭素、フッ素又はボロン、例えば炭素を、シリコン酸化膜34を介してシリコン基板10の上層部分にイオン注入する。これにより、シリコン基板10におけるトレンチ13の底面13aに接する部分に、例えば炭素が含有された不純物拡散領域22が形成される。
【0023】
次に、図4(b)に示すように、DHF(diluted hydrofluoric acid:希フッ酸)によるウェット処理を行う。これにより、シリコン酸化膜34が除去される。このとき、トレンチ13における素子分離絶縁体11(図3(a)参照)内に形成された部分がエッチングされて、幅が広がると共に深さが深くなる。この結果、トレンチ13における素子分離絶縁体11内に形成された部分は、アクティブエリア12内に形成された部分と比較して、幅がより広く、深さがほぼ同じになる。
【0024】
次に、マスク膜32をマスクとして、アルカリ性のエッチング液を用いてウェットエッチングを施す。エッチング液には例えば、温度が75℃のNC2を使用する。なお、アルカリ性のエッチング液として、NC2、すなわち、H(過酸化水素水)及びTMYの混合液の他に、KOH(水酸化カリウム)、TMAH(テトラメチルアンモニアハイドロオキサイド)、EDP(エチレンジアミンピロカテコール)、並びに、N−HO(水和ヒドラジン)からなる群より選択された1種の薬液を含むエッチング液を使用してもよい。これにより、トレンチ13の内面におけるシリコン基板10の露出部分を更に除去する。
【0025】
このエッチングは、シリコンの結晶方位に応じてエッチング速度が異なる異方性エッチングとなる。この結果、トレンチ13に、シリコンの(100)面からなる底面13a、底面13aに接し、シリコンの(111)面からなる一対の斜面13b、及び、斜面13bに接し、シリコンの(110)面からなる一対の側面13cが形成される。底面13aと斜面13bとのなす角度θは55°となる。また、このとき、トレンチ13の底面13aは不純物拡散領域22を突き抜ける。これにより、不純物拡散領域22は、トレンチ13の底面13aの直下域には存在しなくなり、斜面13bの下部に接する部分にのみ残留する。
【0026】
次に、図4(c)に示すように、例えば、温度が65℃のHPO−NC2を用いてウェット処理を行い、マスク膜32を除去する。
次に、例えば酸化雰囲気中で熱処理を施すことにより、シリコン基板10の露出部分に熱酸化膜を形成する。これにより、トレンチ13におけるアクティブエリア12内に位置する部分の内面上に、シリコン酸化物からなるゲート絶縁膜15が形成される。このとき、シリコン基板10の結晶面によって熱酸化の速度が異なるため、ゲート絶縁膜15の膜厚が部分毎に異なる。すなわち、シリコンの(100)面によって構成される底面13a上に形成された部分15aは相対的に薄くなる。また、シリコンの(111)面によって構成される斜面13b上に形成された部分15bは、部分15aよりも厚くなり、例えば、部分15aの約1.15倍となる。更に、シリコンの(110)面によって構成される側面13c上に形成された部分15cは、部分15bよりも厚くなり、例えば、部分15aの約1.50倍となる。
【0027】
次に、図5(a)に示すように、全面に不純物を導入したポリシリコンを堆積させる。このポリシリコンは、トレンチ13内に埋め込まれると共に、シリコン基板10上に堆積される。次に、ポリシリコン膜上に金属、例えばタングステンを堆積させて、金属膜を形成する。次に、金属膜上に、トレンチ13の直上域を覆うマスク膜(図示せず)を形成する。次に、このマスク膜をマスクとしてエッチングを施し、金属膜及びポリシリコン膜を選択的に除去する。これにより、トレンチ13の内部及び上方に、ゲート電極16が形成される。ゲート電極16の下部17はポリシリコンからなり、上部18はタングステン等の金属からなる。
【0028】
次に、図5(b)に示すように、ゲート電極16をマスクとして、不純物、例えば、リンをイオン注入する。このとき、イオン注入の深さは、トレンチ13の深さと同程度とする。これにより、シリコン基板10内において、トレンチ13を挟む領域に、不純物注入領域35が形成される。不純物注入領域35は、トレンチ13の側面13cに接し、斜面13b及び底面13aには接しない。この結果、不純物注入領域35とトレンチ13の底面13aとの間には、斜面13bの存在により、一定のオフセットAが設定される。
【0029】
次に、図5(c)に示すように、熱処理を行う。この熱処理は、例えば温度を1000℃とし、時間を12秒間とする。これにより、不純物注入領域35に含まれる不純物が拡散すると共に活性化して、ソース・ドレイン領域21が形成される。このとき、不純物はトレンチ13の下部を回り込むように拡散するが、不純物注入領域35と底面13aとの間にはオフセットAが設けられており、また、不純物拡散領域22が拡散防止領域として機能し、注入された不純物(例えばリン)の拡散を抑制するため、不純物はトレンチ13の底面13aには到達しない。従って、ソース・ドレイン領域21は、トレンチ13の側面13c及び斜面に接し、底面13aには接しない。
【0030】
但し、不純物の拡散長は、製造条件によってある程度ばらつくため、ソース・ドレイン領域21とトレンチ13との相対的な位置関係もばらつく可能性がある。この場合であっても、ソース・ドレイン領域21が底面13aのAA方向中央部に接することにより、トレンチ13の両側に形成されたソース・ドレイン領域21同士が接触しなければよく、ソース・ドレイン領域21が底面13aのAA方向両端部に接してもよい。逆に、ソース・ドレイン領域21は、側面13c及び斜面13bの上部にのみ接し、斜面13bの下部及び底面13aには接していなくてもよい。
次に、通常の方法により、シリコン基板10上に上部配線構造を形成する。このようにして、図1及び図2に示す半導体装置1が製造される。
【0031】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
本実施形態に係る半導体装置1においては、トレンチ13の内部及び上方にゲート電極16が設けられており、ゲート電極16の両側にソース・ドレイン領域21が形成されている。これにより、シリコン基板10におけるゲート電極16の直下域がチャネル領域となり、リセス型トランジスタ(RCAT)が構成される。
【0032】
そして、本実施形態においては、トレンチ13が底面13a、斜面13b及び側面13cによって構成されている。このため、ゲート電極16の最下部において、ゲート電極16の幅が狭くなる。この結果、チャネル長L(図2参照)を短くすることができる。例えば、チャネル長Lを、AA方向における底面13aの長さと同程度にすることができる。これにより、リセス型トランジスタのオン電流を大きくすることができる。
【0033】
また、本実施形態においては、ゲート絶縁膜15の厚さが部分毎に異なっており、トレンチ13の斜面13b上に形成された部分15bは、底面13a上に形成された部分15aよりも厚く、側面13c上に形成された部分15cは、部分15bよりも厚い。これにより、半導体装置1の駆動時において電界が集中するゲート電極16の角部を、厚いゲート絶縁膜15によって覆うことができる。この結果、半導体装置1の耐圧を向上させることができる。
【0034】
更に、本実施形態に係る半導体装置の製造方法においては、図4(b)に示す工程において、アルカリ性のエッチング液を用いてシリコン基板10をエッチングすることにより、シリコンの結晶方位によるエッチングの異方性を利用して、トレンチ13に底面13a、斜面13b及び側面13cを形成することができる。すなわち、トレンチ13を所定の形状に再現性良く加工することができる。これにより、半導体装置1の特性を安定させることができる。
【0035】
更にまた、本実施形態においては、図5(b)に示す工程において、ソース・ドレイン領域21に添加するための不純物を、シリコン基板10における側面13c間の部分に注入している。これにより、不純物注入領域35をチャネル領域となる予定の領域、すなわち、トレンチ13の底面13aの直下域から自己整合的に離隔させることができる。そして、図5(c)に示す工程において、熱処理を行って不純物を拡散させることにより、ソース・ドレイン領域21を形成している。従って、不純物を、チャネル領域となる予定の領域から離隔した領域から拡散させることができる。この結果、チャネル長Lを短く設計しても、ゲート電極16の両側に形成された2つのソース・ドレイン領域21が接触することを防止できる。なお、ソース・ドレイン領域同士の接触を回避するためには、トレンチ13の下部を膨らませることも考えられる。しかしながら、この場合は、チャネル長が長くなり、オン電流が小さくなってしまう。
【0036】
更にまた、本実施形態においては、図4(a)に示す工程において、トレンチ13の直下域に炭素を注入して不純物拡散領域22を形成し、図4(b)に示す工程において、トレンチ13の内面を更にエッチングすることにより、不純物拡散領域22をトレンチ13の斜面13bに接する領域のみに残留させている。そして、図5(a)に示す工程において、リン等の不純物をトレンチ13と同程度の深さに注入し、図5(b)に示す工程において、この不純物を拡散させている。これにより、不純物拡散領域22においては、リン等の不純物の拡散が炭素によって抑制される。すなわち、リン等の不純物の拡散が、不純物拡散領域22において停止する。この結果、ソース・ドレイン領域21がトレンチ13の底面13aの直下域まで回り込むことを確実に防止することができ、ソース・ドレイン領域21の形状の再現性が向上する。これにより、半導体装置1の特性が安定する。
【0037】
なお、本実施形態においては、図3(b)に示す工程において、リセス処理を行ってトレンチ13を形成した後、図5(b)に示す工程において、不純物のイオン注入を行ってソース・ドレイン領域21を形成した。しかしながら、リセス処理の前に、不純物をイオン注入してもよい。これにより、トレンチ13が細くなった場合においても、不純物を確実に注入することができると共に、不純物を注入した後に過度に拡散することを抑制でき、ソース・ドレイン領域21の形状の制御性を高めることができる。
【0038】
以上説明した実施形態によれば、オン電流が大きい半導体装置及びその製造方法を実現することができる。
【0039】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明及びその等価物の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
1:半導体装置、10:シリコン基板、10a:上面、11:素子分離絶縁体、12:アクティブエリア、13:トレンチ、13a:底面、13b:斜面、13c:側面、15:ゲート絶縁膜、15a、15b、15c:部分、16:ゲート電極、17:下部、18:上部、21:ソース・ドレイン領域、22:不純物拡散領域、31:トレンチ、32:マスク膜、32a:開口部、33:レジストパターン、33a:開口部、34:シリコン酸化膜、35:不純物注入領域、A:オフセット、L:チャネル長、θ:トレンチの底面と斜面とがなす角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶シリコンからなり、上面が(100)面であり、前記上面にトレンチが形成された基板と、
少なくとも前記トレンチの内部に設けられたゲート電極と、
前記基板における前記トレンチを挟む領域に形成されたソース・ドレイン領域と、
前記基板と前記ゲート電極との間に設けられたゲート絶縁膜と、
を備え、
前記トレンチは、シリコンの(100)面からなる底面、前記底面に接し、シリコンの(111)面からなる一対の斜面、及び前記斜面に接し、シリコンの(110)面からなる一対の側面により構成されており、
前記ソース・ドレイン領域は、前記側面及び前記斜面に接し、前記底面の中央部には接していないことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記基板における前記斜面の下部に接した領域に形成され、前記ソース・ドレイン領域に含有される不純物とは異なる種類の不純物を含有した不純物拡散領域をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記不純物拡散領域に含有される前記不純物は、炭素であることを特徴とする請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ゲート絶縁膜における前記側面上に設けられた部分は、前記ゲート絶縁膜における前記底面上に設けられた部分よりも厚いことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記ゲート絶縁膜における前記側面上に設けられた部分は、前記ゲート絶縁膜における前記斜面上に設けられた部分よりも厚く、前記ゲート絶縁膜における前記斜面上に設けられた部分は、前記ゲート絶縁膜における前記底面上に設けられた部分よりも厚いことを特徴とする請求項4記載の半導体装置。
【請求項6】
前記基板の上層部分に埋め込まれ、一方向に延び、前記上層部分を複数本のアクティブエリアに分断する複数本の素子分離絶縁体をさらに備え、
前記トレンチは、前記アクティブエリア及び前記素子分離絶縁体の配列方向に延び、前記複数本のアクティブエリア及び前記複数本の素子分離絶縁体にわたって形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記トレンチにおける前記素子分離絶縁体内に形成された部分の幅は、前記トレンチにおける前記アクティブエリア内に形成された部分の幅よりも広いことを特徴とする請求項6記載の半導体装置。
【請求項8】
単結晶シリコンからなり、上面がシリコンの(100)面である基板上に、開口部が形成されたマスク膜を形成する工程と、
前記マスク膜をマスクとして、アルカリ性のエッチング液を用いてウェットエッチングを施すことにより、シリコンの(100)面からなる底面、前記底面に接し、シリコンの(111)面からなる一対の斜面、及び、前記斜面に接し、シリコンの(110)面からなる一対の側面から構成されるトレンチを形成する工程と、
前記底面上、前記斜面上及び前記側面上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
少なくとも前記トレンチの内部にゲート電極を形成する工程と、
前記基板における前記トレンチを挟む領域に不純物を注入する工程と、
前記不純物を拡散させて、前記側面及び前記斜面に接し、前記底面の中央部には接しないソース・ドレイン領域を形成する工程と、
を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記ウェットエッチングの前に、前記マスク膜をマスクとしてドライエッチングを行う工程をさらに備えたことを特徴とする請求項8記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記ドライエッチングを行う工程の後、前記ウェットエッチングを行う工程の前に、
前記底面に前記ソース・ドレイン領域に含有される不純物とは異なる種類の不純物を注入する工程をさらに備えたことを特徴とする請求項9記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記異なる種類の不純物として、炭素を注入することを特徴とする請求項10記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記アルカリ性のエッチング液は、過酸化水素水及びTMYの混合液、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニアハイドロオキサイド、エチレンジアミンピロカテコール、並びに、水和ヒドラジンからなる群より選択された1種の薬液を含むことを特徴とする請求項8〜11のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記トレンチを挟む領域に不純物を注入する工程は、前記ゲート電極をマスクとして行うことを特徴とする請求項8〜12のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−253219(P2012−253219A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125173(P2011−125173)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】