説明

半導体装置

本発明の目的は、搭載部品の寿命を長くすることができる半導体装置を提供することにある。加熱部(1)と放熱器(2)により冷却用冷媒の温度を制御してなる冷却系を有する。半導体装置(100)は、この冷却系に接続され、冷却される。ここで、半導体装置(100)の稼動状況の変化が及ぼす冷却媒体への温度変化(ΔT2)より、冷却系の加熱部(1)と放熱器(2)により制御される温度の変化幅(ΔT1)が大きい(ΔT1>ΔT2)ものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、半導体装置に係り、特に、モーター駆動などに用いるインバータ装置のような電力調整用半導体装置に関する。
【背景技術】
従来、電力変換等に用いられるインバータ等のパワーデバイスを搭載した半導体装置は、デバイスの温度が動作時にこれを構成するデバイスの動作温度以下となるように、空気あるいは水等を用いて冷却している。従来の冷却構造としては、例えば、特開平10−75583号公報に記載されているように、インバータ装置の上面と下面に、冷却器により冷却するものが知られている。
【発明の開示】
しかしながら、特開平10−75583号公報に記載の構造では、インバータを動作させると、インバータにおいて電圧あるいは電流等を制御するパワーデバイスが動作することによって発生した熱によりこれを冷却するための冷却水へ熱が伝わり冷却水温度が変化したり、インバータを構成するパワーデバイスの動作を制御するためのマイコンやこれを動作するための電源やコンデンサ等の動作によってインバータ装置内部の温度が変化する。半導体装置を構成する電子部品およびその接続部は、半導体装置の動作による冷却水温度変化による温度変化サイクルを受け、これらが搭載部品の寿命減少要因の一つとなる。
本発明の目的は、搭載部品の寿命を長くすることができる半導体装置を提供することにある。
(1)上記目的を達成するため、本発明は、加熱部と放熱器により冷却用冷媒の温度を制御してなる冷却系を有し、この冷却系に接続され、冷却される半導体装置であって、前記半導体装置の稼動状況の変化が及ぼす冷却媒体への温度変化(ΔT2)より、前記冷却系の加熱部と放熱器により制御される温度の変化幅(ΔT1)が大きい(ΔT1>ΔT2)ものである。
かかる構成により、搭載部品の寿命を長くすることができる。
(2)また、上記目的を達成するため、本発明は、加熱部と放熱器により冷却用冷媒の温度を制御してなる冷却系を有し、この冷却系に接続されるとともに、前記加熱部の発熱量よりも小さな発熱量を有するものである。
かかる構成により、搭載部品の寿命を長くすることができる。
(3)さらに、上記目的を達成するため、本発明は、内燃機関と電動機を備えかつ電動機が電力変換装置によって制御される車両に備えられたものであって、冷却媒体を冷却する冷却器と、この冷却器によって冷却された前記冷却媒体を循環するための循環器とを有するとともに、前記冷却器によって冷却された冷却媒体を前記循環器で循環し、その冷却媒体で前記電力変換装置を冷却し、前記電力変換装置を冷却した冷却媒体で前記内燃機関或いは前記内燃機関と前記電動機を冷却し、前記内燃機関或いは前記内燃機関と前記電動機を冷却した冷却媒体を前記冷却器で冷却するように冷却系統が構成されており、前記冷却系統は、前記内燃機関と前記冷却器によって制御される冷却媒体の温度の変化幅(ΔT1)が、前記電力変換装置の稼働状況の変化に応じた冷却媒体の温度変化(ΔT2)よりも大きく(ΔT1>ΔT2)なるように構成したものである。
かかる構成により、搭載部品の寿命を長くすることができる。
(4)また、さらに、上記目的を達成するため、本発明は、内燃機関と電動機を備えた車両に搭載され、バッテリから供給された電力を変換して前記電動機の駆動を制御し、かつ冷却器によって冷却された冷却媒体で前記内燃機関を冷却するように構成された冷却システムの内燃機関上流側に配置されて冷却される車両用電力変換装置であって、容器と、冷却システムから供給される冷却媒体が流通する冷却通路と、前記バッテリから供給された電力を変換するためのものであり、かつ、複数の半導体素子から構成された電力変換回路モジュールと、前記半導体素子の駆動を制御するためのものであり、かつ、複数の電子部品から構成された変換回路制御基板と、を有し、前記容器は、前記電力変換回路モジュール及び前記変換回路制御基板を収納するものであって、少なくとも前記電力変換回路モジュールの稼働状況の変化に応じた冷却媒体の温度の変化幅(ΔT2)が、前記内燃機関と冷却器によって制御される冷却媒体の温度の変化幅(ΔT1)よりも小さく(ΔT2<ΔT1)なるように、外部からの熱伝達を抑制するものである。
かかる構成により、搭載部品の寿命を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の第1の実施形態による半導体装置の冷却システムのシステム構成図である。
図2は、本発明の第1の実施形態による半導体装置の冷却システムにおける温度変化推移を示すパターン図である。
図3は、本発明の第1の実施形態による半導体装置の冷却システムにおける寿命の説明図である。
図4は、本発明の第1の実施形態による半導体装置の冷却システムに用いる冷媒の温度依存性の説明図である。
図5は、本発明の第1の実施形態による半導体装置の構成を示す部分断面の斜視図である。
図6は、本発明の第1の実施形態による半導体装置の組立工程を示す工程図である。
図7は、本発明の第1の実施形態による半導体装置の組立工程を示す工程図である。
図8は、本発明の第1の実施形態による半導体装置の組立工程を示す工程図である。
図9は、本発明の第2の実施形態による半導体装置の構成を示す部分断面の斜視図である。
図10は、本発明の第2の実施形態による半導体装置の冷却システムにおける温度変化推移を示すパターン図である。
図11は、本発明の第3の実施形態による半導体装置の構成を示す部分断面の斜視図である。
図12は、本発明の第4の実施形態による半導体装置の構成を示す部分断面の斜視図である。
図13は、本発明の第5の実施形態による半導体装置の構成を示す部分断面の斜視図である。
図14は、本発明の各実施形態による車両用出力伝達装置を用いた電動車両の一つであるハイブリッド電気自動車の駆動システムのを示すブロック図である。
図15は、本発明の各実施形態による半導体装置を用いた電気自動車のシステムを示すブロック図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、図1〜図8を用いて、本発明の第1の実施形態による半導体装置の構成について説明する。
最初に、図1を用いて、本実施形態による半導体装置の冷却系の構成について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態による半導体装置の冷却システムのシステム構成図である。
半導体装置100は、冷却のための媒体9を流すパイプ11を介して、媒体を流動させるためのポンプ3と、媒体を冷却するための放熱器2と、半導体装置100以外の加熱部1とに接続されている。半導体装置100は、その内部にパワーデバイス等の発熱部を含んでおり、第1の加熱部を構成している。この冷却系において、加熱部1は、第1の加熱部である半導体装置100の発熱量Q2よりも大きな発熱量Q1(Q1>Q2)を有する第2の加熱部である。さらに、放熱器2およびポンプ3は、加熱部1の温度が特定の範囲内となるように調整される。冷却用の媒体9が通過する容量も、加熱部1の容量V1が半導体装置100の容量V2に比べて充分に大きく、冷却用媒体の温度Tは半導体装置100の動作による温度変化を受け難い状態となっている。
加熱部1としては、例えば、自動車のエンジンである。エンジンとモータを駆動力源とするハイブリット自動車の場合、エンジンが第1の加熱部であり、モータを制御するインバータ装置が半導体装置100となり、第2の加熱部となる。また、モータ単体で駆動する電気自動車の場合、大型モータを使用するため、そのモータを冷却する必要がある。このような場合、モータが第1の加熱部であり、モータを制御するインバータ装置が半導体装置100となり、第2の加熱部となる。さらに、燃料電池車の場合、発電時に発熱する燃料電池或いはモータ、或いはその両方が第1の加熱部であり、駆動力源であるモータを制御するインバータ装置が半導体装置100となり、第2の加熱部となる。
半導体装置100の筐体には、冷却用媒体を流すための流路4が設けられ、コンデンサ6,コントローラ7,パワーデバイス搭載モジュール12等が流路4を形成した筐体の内壁に取り付けられている。半導体装置の筐体はアルミダイカスト,SUS等が一般的であるが、パワーデバイス搭載モジュール12を搭載する放熱部5には、熱伝導率の高い銅等にニッケルめっきを施したものを用い、半導体装置を構成する電子部品の損失による熱を冷却用媒体に伝えやすくする。
半導体装置100の筐体に形成された流路4に流入させる冷却用媒体9は、冷媒輸送用のパイプを分岐して、半導体装置に設けた冷媒の流入口10Aおよび排出口10Bと連結させ筐体の複数面に設けた流路4に冷却用媒体を流入させることにより、筐体の複数面に冷却用媒体を流入させ、パワーデバイス搭載モジュール12,コンデンサ6,コントローラ7等の冷却に用いることができる。また、筐体の壁内で流路4を分岐して、筐体の複数面に冷却用媒体を流入させ、パワーデバイス搭載モジュール12,コンデンサ6,コントローラ7等の冷却に用いるようにしてもよいものである。
また、内燃機関等の加熱部1に用いる冷却系統は一系統ではなく、内燃機関の運転状況が変化しても、運転効率を考慮した温度となるように、複数の冷却系統を切り替えることにより温度調節可能な構造とすることもできる。半導体装置100の冷却用流路4に流入させる冷却用の媒体は、前述した温度調整後の媒体を用いることにより、冷却用媒体の温度へ半導体装置の動作の影響をほとんど受けることなく、内燃機関の運転状態に最適な温度幅となる状態に調整される。したがって、半導体装置100の筐体には、温度変化幅の少ない状態で温度制御された媒体が通過する流路4が設けられているため、半導体装置100を構成する電子部品が搭載された筐体内の温度もほぼ冷却用媒体の温度変化範囲と同じ状態となる。
ここで、図2及び図3を用いて、本実施形態による半導体装置の冷却系のように、温度変化幅の少ない状態で温度制御された媒体による冷却する場合の効果について説明する。
図2は、本発明の第1の実施形態による半導体装置の冷却システムにおける温度変化推移を示すパターン図である。図3は、本発明の第1の実施形態による半導体装置の冷却システムにおける寿命の説明図である。
図2において、点線Bは、従来のようにインバータ用の冷却系のみを適用した冷却水の温度を示したものである。すなわち、本実施形態のように、第1の加熱部と第2の加熱部を有さずに、半導体装置のみを単独で冷却する冷却系を有する場合である。実線Aは、従来の構成において、インバータ用の冷却系を適用した時のインバータ内部の温度を示したものである。自動車を始動(時間t0)し、時間t1からインバータが動作すると、インバータのパワーデバイス部の損失によって冷却水温が高くなる。その後運転を継続し、インバータの冷却水温が温度a℃以上になると、冷却水温を下げるための放熱ファンにより温められた冷却水は冷却され、冷却水温度がa℃からc℃の範囲となるように調整される。その後も、冷却水温度はアクセルの開閉等に応じてインバータの動作状況が変化し、インバータのパワーモジュール部の損失によって発生する熱により加熱され、一方で放熱ファンによる温度調節によって、冷却水温度は点線Bに示したようにa℃からc℃の範囲で調整され変化する。時間t3で運転を停止するとインバータからの損失は無くなり、冷却水温度は徐々に下がり、時間t4で半導体装置の設置されている雰囲気温度に達する。なお、図2では、説明簡略のため始動時の雰囲気温度と停止時の雰囲気温度を同じとしている。
従来の方式では、インバータ内の温度変化も、冷却水温変化と同様に、自動車を始動(時間t0)しインバータが動作すると、インバータのパワーデバイス部による損失により冷却水が温められインバータ内温度が高くなる。その後運転を継続し、インバータの冷却水温が温度a℃以上になると、冷却水温を下げるための放熱ファンにより温められた冷却水は冷却され、冷却水温度がa℃からc℃の範囲となるように調整される。さらに、インバータの動作と同時にインバータを制御するためのマイコンや電力用のコンデンサ等の損失により発生した熱でインバータ内部が温められる。したがって運転中のインバータ内の温度は冷却水よりも高くなりb℃からd℃の範囲で繰り返される。時間t3で運転を停止するとインバータからの損失は無くなり、冷却水温度の低下と共にインバータ内の温度も徐々に下がって行き、時間t4で雰囲気温度に達する。このように、インバータ内の温度は、冷却水温度の変化のみならずインバータを構成する半導体等の損失によって生じる熱の影響により変化することになる。
一方、図2の点線Cは、例えば発熱量の大きい自動車のエンジンを冷却するための冷却水温度変化を示したものであり、実線Dは、本実施形態のように、上記冷却水を冷却水として用いたインバータ内の温度変化を示したものである。内燃機関用の冷却水は、内燃機関の燃焼効率を考慮し高温でほぼ一定温度となるように、内燃機関と冷却水容量,冷却能力等の関係が調整されている。したがって、その冷却水温度は、始動後上昇し一定時間後(時間t2)e℃からf℃の温度範囲で調整される。
インバータでは電力調整用のパワーデバイスのみならず、インバータの動作を制御するマイコンや電力用コンデンサ等損失の大きい部品はインバータの内壁等を介しこの冷却水と接触する構造となっている。そのため、インバータの動作によりこれを制御するマイコンや電力用コンデンサ等の損失により発生する熱は、インバータ内壁を介して冷却水へ伝わるため、インバータ装置内部の温度上昇に対する影響が小さくなる。
内燃機関は、燃焼による発熱量が大きくその冷却に際して、発熱量に合わせて多量の冷却水を使用するため冷却水の熱容量が大きい。そのため、インバータの動作による冷却水温度への影響も少なく、運転中のインバータ内部温度は冷却水温度より僅かに大きいe℃からg℃の範囲となる。時間t3で運転を停止するとインバータからの損失、内燃機関による発熱は無くなり、冷却水温度の低下と共にインバータ内の温度も徐々に下がっていく。このとき、内燃機関冷却用の冷却水熱容量は従来例のインバータ専用の冷却水熱容量に比べて大きく冷え難いため、従来例に比べて長い時間t5後に環境温度に達する。
したがって、自動車に搭載されたインバータ装置は、従来の構造では実線Aで表される始動、停止に伴う環境温度からd℃の範囲の温度サイクルと運転中にb℃からd℃の温度サイクルを受ける。それに対して、本実施形態の構造によれば、実線Dで表される始動、停止に伴う環境温度からg℃の範囲の温度サイクルと運転中にe℃からg℃の温度サイクルを受けることになる。したがって、半導体装置100の稼動状況の変化が及ぼす冷却媒体への温度変化(△T2)に対して、冷却系の加熱部と放熱器により制御される温度が変化幅(ΔT1)が、ΔT1>ΔT2となる関係となっている。
このように繰り返し温度ストレスを受ける部品の寿命Nは、次式(1)によって表される。
N=A×ΔT−B … (1)
ここで、AおよびBは、試験環境,材料によって定まる値であり、ΔTは繰り返し温度幅である。
したがって、製品の寿命は、運転・停止に伴う温度変化からなる式(1)から求められる寿命と、運転中のインバータ動作による温度変化からなる式(1)から求められる寿命の和によって表わすことができる。
ここで、図3を用いて、運転時の最高温度と運転中の温度変化幅を変えたときの部品寿命との関係を、式(1)に基づき計算した結果を示している。寿命は運転モデルによって変わるため、任意とした。
図3において、点イは、運転時のインバータ内部品の最高温度120℃で運転中の温度変化を40℃として求めた点である。点ロは、運転時のインバータ内部品の最高温度130℃で運転中の温度変化を40℃として求めた点である。運転時のインバータ内部品の最高温度が上昇すると、始動・停止に伴う温度の繰り返し幅が大きくなり寿命が低下する。
点ハは、運転時のインバータ内部品の最高温度120℃で運転中の温度変化を30℃として求めた点である。点ニは運転時のインバータ内部品の最高温度は130℃で運転中の温度変化を20℃として求めた点である。点ロと点ハを比較すると、運転時のインバータ内部品の最高温度が120℃と同じであっても、運転中の温度変化が40℃から30℃へと小さくなることで、寿命が向上することがわかる。
同様に点イと点ニを比較すると、運転時のインバータ内部品の最高温度が120℃から140℃に上昇しても、運転中の温度変化を40℃から20℃へと小さくなることで、寿命が向上できることがわかる。運転中の温度変化を小さくすることによる部品寿命への寄与は、運転モデルによって変化するが、その傾向は大きく変わらない。
したがって、図2に示したインバータ内の温度変化パターンにおいても、インバータを構成する部品の損失の影響によりインバータ内の温度が変化する実線Aのパターンに比べて、本実施形態のように、実線Dに示したようなインバータを構成する部品の損失の影響が少なくなるようにすることにより、インバータ内の寿命を向上することができる。
次に、図4を用いて、本実施形態による半導体装置の冷却系に用いる冷媒の特性について説明する。
図4は、本発明の第1の実施形態による半導体装置の冷却システムに用いる冷媒の温度依存性の説明図である。
本実施形態の冷却用媒体として、水あるいは水にエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のアルコール類を1種類以上配合し、さらに必要に応じて、チアゾール、トリアゾールや、リン酸、カルボン酸等からなる防錆剤、酸化防止剤、消泡剤等を適宜添加したものを、70℃以上100℃未満の範囲で使用することができる。
図4は、水の粘度の温度依存性を示したものである。アルコール類等は、冷却性能や使用環境を考慮し、約20%から50%の濃度範囲で使用可能であり、このときの粘度の温度変化は、水の場合とほぼ同じ傾向を示す。そこで、冷却用媒体の温度を70℃以上100℃未満とすることにより、冷却媒体の粘度をほぼ一定とすることが可能となり、ポンプによる冷却用媒体の液速変化が少なくなり、半導体装置運転中の冷却用媒体による温度変化を小さくすることができる。これにより、さらなる半導体装置の信頼性および寿命向上が可能となる。
次に、図5を用いて、本実施形態による半導体装置の冷却構造について説明する。
図5は、本発明の第1の実施形態による半導体装置の構成を示す部分断面の斜視図である。なお、図1と同一符号は、同一部分を示している。
半導体装置100は、所望の機能を発現させるための各種電子部品6,7,12と、これを収納するための筐体20とからなる。筐体20には、冷却媒体を流動させるための流路4と、冷媒の入出を行うための入出口10と、電子機器を制御するための信号入出力端子21と、信号により制御された電力等の入出力端子22が設けられている。信号入出力端子21はコネクタによって接続されるため、端子周囲にコネクタ連結用のカバー等が設けられる。また、信号によって制御された電力の入出力端子22は、一般に電圧あるいは電流の大きいものが用いられるため、半導体装置と電力用配線ケーブルを固定するためのボルト・ナットを設けたり、あるいは電力用配線ケーブルを固定するボルトを通すための穴を開けたりして使用する。
前述したように、半導体装置100の温度変化が少ないほど、半導体装置100の寿命を長くすることができる。そのため、第1には、エンジン等の発熱量の大きな加熱部を冷却する冷媒により、半導体装置100を冷却している。そして、第2には、半導体装置100の外部の温度変化による影響を受けにくい筐体構造としている。すなわち、冷媒用の流路4は、筐体20の壁面内部の全ての面に設けられている。例えば、筐体20が、直方体形状であるとすると、筐体20の上面に形成された流路4Aと、筐体20の下面に形成された流路4Bと、筐体20の左側面に形成された流路4Cと、筐体20の右側面に形成された流路4Dと、筐体20の手前の側面に形成された流路4Eと、図示は省略されているが筐体20の奥方向の側面に形成された流路との6面の流路を備えている。ここで、流路4は、筐体の壁面内部で細かく分割されていても良いし、筐体の壁面内部一面に広がった状態でも良いものである。また、流路4の内部にフィン状の凹凸を設け、流路内部の表面積を増やすことで冷却効率を向上することも可能である。
このように、筐体20の壁面内の冷媒用流路を増加することにより、筐体外部の温度変化による筐体内部への温度変化の影響を低減することができる。したがって、半導体装置100の寿命を長くすることができる。
半導体装置100を構成する主要部品で損失の大きい電子部品は、流路4が形成された筐体の内壁に固定される。コンデンサ6は、熱伝導ペースト(図示せず)等を介して筐体20の内壁に固定治具23等を用いて接触するように固定され、半導体装置動作時のコンデンサ6部の損失による熱を筐体を介し冷却用媒体へ伝達する。
また、半導体装置100の動作を制御する電子部品のうち、損失の大きいマイコン等の電子部品7は、予め基板24に搭載した後、熱伝導ペースト(図示せず)等を介して筐体20の内壁に固定したり、電子部品の放熱器(フィン)部を筐体20の内壁に固定したりすることにより、電子部品の損失により生じた熱を筐体を介し冷却用媒体へ伝達する。
さらに、損失の大きいパワーデバイスを搭載したモジュール12は、窒化珪素,窒化アルミニウム等の熱伝導率の大きい基板の電極パターン上にパワー用半導体素子をはんだ等を用いて搭載し、半導体素子上の電極と基板上の電極をアルミ線等を用いて接続し、さらにこの基板を銅やモリブデン、アルミ等からなる放熱板5にはんだ等を用いて接続したもので、放熱板を熱伝導ペースト等により筐体20の内壁に固定したり、筐体内壁に予め設けた開口部に設置することにより冷却用媒体流動用の流路が形成できるように上記放熱板部分を固定することで、パワー用半導体素子の損失(発熱)による熱を筐体を介し冷却用媒体へ伝達する。
なお、損失(発熱)の少ない電子部品25は、基板27に搭載した後、スペーサ26を介して基板27を筐体20に固定する等、特に筐体への熱伝達を考慮した構造にしなくても良いし、損失の大きい他の電子部品のように、搭載基板を筐体20の内壁に固定することも可能である。電子部品およびこれを搭載した基板の筐体内部への固定は、必ずしも筐体内部の上下面に限定されず、電子部品の寸法、損失量によって調整可能であり筐体内壁の冷却用流路を設けた側面に上述した方法と同様な方法により固定することもできる。
以上の構成により、半導体装置100を構成する電子部品の動作損失により発生した熱を筐体から冷媒を介して放熱機へ伝えることが可能となり、半導体装置を構成する電子部品の損失による筐体内部温度への影響を低減させ、筐体内の温度上昇を抑えることができる。
したがって、半導体装置の周囲温度が変化してもその温度変化が筐体内部に伝わり難くし、半導体装置を構成する電子部品の損失による筐体内への熱の影響を少なくすることができることから、半導体装置の運転に伴う筐体内部の温度変化を小さくすることが可能となり搭載した電子部品の信頼性向上、寿命向上を図ることができる。
次に、図6〜図8を用いて、本実施形態による半導体装置の組立工程について説明する。
図6〜図8は、本発明の第1の実施形態による半導体装置の組立工程を示す工程図である。なお、図5と同一符号は、同一部分を示している。
本実施形態では、半導体装置構成部品の搭載が容易となるように、筐体20を2つに分割して組み立てるようにしている。
図6は、分割した半導体装置の下側の部分の組立工程を示している。図6(a)に示すように、予め、下側の筐体20aの底面(1面)および側面(4面)に冷却用媒体を流動する流路4B,4E,4Fを形成してある。なお、図5に示した左右側面の流路4C,4Dは、図示されていないものである。また、筐体20aには、冷却用媒体の給排出口10A,10Bと、制御信号導入用のコネクタ21を形成してある。筐体20aは、アルミダイカスト製である。筐体20aの内側底部には、放熱部5が形成されている。筐体20aの放熱部5の上の位置に、パワーデバイスモジュール12が、熱伝導グリース(図示せず)等を介してボルト等(図示せず)により固定される。
次に、図6(b)に示すように、パワーデバイスモジュール12と制御信号の配線を行った後、損失の少ない部品を搭載した基板を固定するためのスペーサ26を、筐体20aの内側に固定する。
次に、図6(c)に示すように、部品を搭載した基板8をスペーサの所定位置に搭載し、図6(d)に示すように、ボルト91で固定し、さらに、パワーデバイスモジュール、筐体に設けたコネクタ部との配線を行い、分割した半導体装置の一部が形成される。
図7は、分割した半導体装置の上側の部分の組立工程を示している。図7(a)に示すように、上側の筐体20bには、冷却用媒体用の上側の流路4Aが形成されている。また、筐体20bには、給排口10A,10Bが設けられている。筐体20bは、アルミダイカスト製である。上側の筐体20bの内側に、損失の大きい制御用電子部品7を予め搭載した基板24やコンデンサ6を、熱伝導グリース(図示せず)等を介して所定の位置に搭載する。
次に、図7(b)に示すように、制御用電子部品7を搭載した基板24がボルト91を用いて筐体20bの内壁に固定される。コンデンサ6は、筐体20bへの熱伝導性をより向上させるため、固定治具23を用いて筐体20bと密着させると共に、コンデンサ6のうち筐体と接していない面からの熱伝導も確保する。
その後、必要な基板間の配線接続を行い、図7(C)に示した分割した半導体装置の上側の部分が形成される。
図8は、図6及び図7に示した工程で製造した分割した半導体装置を組み合わせ、所望の半導体装置とする組立工程を示している。図8(a)に示すように、分割した半導体装置20a,20bの間の制御信号、電力等にかかわる配線を行い、その後お互いの半導体装置の開口部を組み合わせる。
次に、図8(b)に示すように、分割部分をボルト92により固定し、本実施形態による半導体装置100が完成する。
図8(c)に示すように、組み立てた半導体装置100と、加熱機,ポンプ,放熱機等と接続して温度調整がなされた冷却用媒体を流動させるパイプ11を半導体装置の給排口10A,10Bに接続し、本実施形態による半導体装置を用いた冷却系が得られる。
本実施形態の半導体装置の組立工程において、各電子部品の搭載方法,順序および、半導体装置の分割方法は、必ずしもこの方法に固定されず、他の分割方法、搭載順序によっても組み立て可能である。
以上説明したように、本実施形態によれば、熱容量の大きい加熱部を冷却する冷却媒体により、半導体装置も冷却するようにしているので、冷媒の温度変化が小さく、半導体装置の寿命を長くすることができる。さらに、半導体装置の筐体の各面に冷却媒体の流路を設けて、周囲の温度変化を影響を受けにくくしているので、運転中の半導体装置内の温度変化を小さくすることが可能となり、半導体装置の信頼性や、搭載部品の接続寿命を向上することができる。
次に、図9及び図10を用いて、本発明の第2の実施形態による半導体装置の構成について説明する。なお、本実施形態による半導体装置の冷却系の構成は、図1に示したものと同様である。
図9は、本発明の第2の実施形態による半導体装置の構成を示す部分断面の斜視図である。なお、図5と同一符号は、同一部分を示している。図10は、本発明の第2の実施形態による半導体装置の冷却システムにおける温度変化推移を示すパターン図である。なお、図2と同一符号は、同一部分を示している。
本実施形態の半導体装置100Aでは、冷媒流入用の流路4の上面側に冷却板(放熱部)5が設けられ、この冷却板5にパワー半導体モジュール12等を熱伝導ペースト等を介して固定され、また、流路4の下面側には、コンデンサ6,制御部品7を搭載した基板24が、熱伝導ペースト等を介して固定される。パワー半導体モジュール12やコンデンサ6,制御部品7を搭載した基板24は、熱伝導率の小さい材料で形成された筐体31で覆われている。冷媒流入用の流路4には、冷却用媒体の給排出口10A.10Bが設けられ、図1に示した加熱部1、放熱機2、ポンプ3等によって温度調節された冷却用媒体が供給される。
筐体31に用いる熱伝導率の小さい材料としては、例えば,微細なシリカ粉からなるフォーム材の両面をアルミニウムやステンレス板で覆ったものや、フェノール樹脂等の樹脂をバインダーとしたグラスウールをアルミニウムやステンレス板で挟んだもの、あるいはこれら金属板の代わりに、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトンなども使用可能である。
この構造では、筐体を構成する筐体31は熱伝導率の小さい材料で形成されているため、ケース内部の温度は半導体装置外部の温度変化の影響を受け難く、冷却板5内の冷却用媒体温度と搭載した電子部品の損失による筐体内部への熱の影響によって決まる。
その結果、図10に示すように、始動・停止から次の始動・停止までの間にインバータ内の温度が半導体装置が設置された雰囲気温度h℃まで下がり難い構造となるため、次回始動t6時の温度をh℃よりも高いi℃とすることができ、始動・停止に伴う温度変化幅を小さくできる。
半導体装置を構成する電子部品の損失による熱は、これら電子部品を搭載した冷却板5に形成された流路を流れる冷却媒体によって放熱機に伝達されるため、筐体内部への電子部品の損失による熱の影響を少なくし、半導体装置の運転に伴う筐体内部の温度変化を小さくすることが可能となり搭載した電子部品の信頼性向上、寿命向上を図ることができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、熱容量の大きい加熱部を冷却する冷却媒体により、半導体装置も冷却するようにしているので、冷媒の温度変化が小さく、半導体装置の寿命を長くすることができる。さらに、半導体装置の筐体を熱伝導率の小さい材料で形成することにより、周囲の温度変化を影響を受けにくくしているので、運転中の半導体装置内の温度変化を小さくすることが可能となり、半導体装置の信頼性や、搭載部品の接続寿命を向上することができる。
次に、図11を用いて、本発明の第3の実施形態による半導体装置の構成について説明する。なお、本実施形態による半導体装置の冷却系の構成は、図1に示したものと同様である。
図11は、本発明の第3の実施形態による半導体装置の構成を示す部分断面の斜視図である。なお、図5と同一符号は、同一部分を示している。
本実施形態では、半導体装置100Bの筐体の上面と下面には、冷却媒体を流すための流路が設けられている。また、左右側面と前後側面の筐体32を、熱伝導率の小さい材料で形成している。
これにより、熱容量の大きい加熱部を冷却する冷却媒体により、半導体装置も冷却するようにしているので、冷媒の温度変化が小さく、半導体装置の寿命を長くすることができる。さらに、半導体装置の筐体の上下面は、冷却媒体の流路を形成し、他の面を熱伝導率の小さい材料で形成することにより、周囲の温度変化の影響を受けにくくしているので、運転中の半導体装置内の温度変化を小さくすることが可能となり、半導体装置の信頼性や、搭載部品の接続寿命を向上することができる。
次に、図12を用いて、本発明の第4の実施形態による半導体装置の構成について説明する。なお、本実施形態による半導体装置の冷却系の構成は、図1に示したものと同様である。
図12は、本発明の第4の実施形態による半導体装置の構成を示す部分断面の斜視図である。なお、図5と同一符号は、同一部分を示している。
本実施形態の半導体装置100Cは、図1に示した半導体装置100の周囲に、隙間を設けて筐体33で覆うようにして、この隙間に、断熱層40を設けている。半導体装置の外周に設ける断熱層40としては、例えば,微細なシリカ粉からなるフォーム材の両面をアルミニウムやステンレス板で覆ったものや、フェノール樹脂等の樹脂をバインダーとしたグラスウールをアルミニウムやステンレス板で挟んだものなどが使用可能である。さらに、断熱層の外側は、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン等のように耐熱性があり熱伝導率の小さい樹脂材料を用いることにより、この半導体装置が設置される環境温度の変化をさらに受け難くすることができる。
また、断熱層40には特に断熱材を挿入しなくても、この半導体装置が設置される雰囲気の空気と混ざらないような空気層を形成したり、真空の層を形成したりすることにより断熱材と同等の効果を得ることも可能である。
このように、冷却媒体の流路を設けた半導体装置の周囲を断熱層40で囲むことにより、半導体装置内部に及ぼす周囲温度変化の影響を低減して半導体内部の温度変化をさらに小さくし、半導体装置の信頼性、寿命等を向上することが可能となる。
次に、図13を用いて、本発明の第5の実施形態による半導体装置の構成について説明する。なお、本実施形態による半導体装置の冷却系の構成は、図1に示したものと同様である。
図13は、本発明の第5の実施形態による半導体装置の構成を示す部分断面の斜視図である。なお、図5と同一符号は、同一部分を示している。
本実施形態の半導体装置100Dは、図1に示した半導体装置100の周囲に、隙間を設けて筐体33で覆うようにして、この隙間に、蓄熱層50を設けたものである。蓄熱層50に用いる蓄熱材としては、酢酸ナトリウム水和物、水和塩系蓄熱材等の潜熱蓄熱材が使用可能である。さらに蓄熱層の外壁には、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン等のように耐熱性があり熱伝導率の小さい樹脂材料を用いることも可能である。
蓄熱層50を半導体装置の周囲に装着することにより、半導体装置運転中は冷却用媒体からの熱を吸収し蓄熱材が溶融し、運転を停止し冷却用媒体温度が下がってくると蓄熱材が固化し凝固時の潜熱を放出して、半導体装置部の温度低下速度を緩やかにする。すなわち、図10に示したように、運転停止時t3からの温度低下が緩やかとなるため、次回の始動までの時間が短く半導体装置の温度が環境温度h℃まで下がる前に次回の始動を時間t6で行った場合、半導体装置の温度がi℃までしか下がらずに始動することになる。この場合、半導体装置の始動から運転に伴う温度変化範囲はi℃からg℃までとなり、半導体装置の周囲に蓄熱層を設けない場合の始動から運転に伴う温度変化範囲となるh℃からg℃に比べて、温度変化範囲が狭くなる。
このように、冷却媒体の流路を設けた半導体装置の周囲を蓄熱層50で囲むことにより、半導体装置内部に及ぼす周囲温度変化の影響を低減して半導体内部の温度変化をさらに小さくし、半導体装置の信頼性、寿命等を向上することが可能となる。
次に、図14を用いて、本発明の各実施形態による車両用出力伝達装置を用いた電動車両の一つであるハイブリッド電気自動車の駆動システムの構成について説明する。
図14は、本発明の各実施形態による車両用出力伝達装置を用いた電動車両の一つであるハイブリッド電気自動車の駆動システムのを示すブロック図である。
本実施形態のハイブリッド電気自動車は、内燃機関であるエンジンENとモータ・ジェネレータMGによって前輪WH−Fを、モータMによって後輪WH−Rをそれぞれ駆動するように構成された四輪駆動式のものである。尚、本実施形態では、エンジンENとモータ・ジェネレータMGによって前輪WH−Fを、モータMによって後輪WH−Rをそれぞれ駆動する場合について説明するが、エンジンENとモータ・ジェネレータMGによって後輪WH−Rを、モータMによって前輪WH−Fをそれぞれ駆動するようにしてもよい。
エンジンENと、放熱機2と、ポンプ3と、半導体装置100は、点線で示す流路で接続されており、半導体装置100は、エンジンENの冷却水で冷却される。
前輪WH−Fの前輪車軸DS−Fには差動装置(図示省略)を介して変速機TMが機械的に接続されている。変速機TMには出力制御機構(図示省略)を介してエンジンENとモータ・ジェネレータMGが機械的に接続されている。出力制御機構(図示省略)は、回転出力の合成や分配を司る機構である。モータ・ジェネレータMGの固定子巻線には、前述した半導体装置100(100A,100B,100C,100D)であるインバータの交流側が電気的に接続されている。インバータは、直流電力を三相交流電力に変換する電力変換装置であり、モータ・ジェネレータMGの駆動を制御するものである。半導体装置100の直流側にはバッテリBAが電気的に接続されている。
後輪WH−Rの後輪車軸DS−R1,DS−R2にはモータMが機械的に接続されている。モータMの固定子巻線には半導体装置100の交流側が電気的に接続されている。ここで、半導体装置100はモータ・ジェネレータMGとモータMの電動機に対して共用のものであり、モータ・ジェネレータMG用の変換回路部と、モータMの電動機の変換回路部と、それらを駆動するための駆動制御部とを有する。
ハイブリッド電気自動車の始動時及び低速走行時(エンジンENの運転効率(燃費)が低下する走行領域)は、モータ・ジェネレータMGによって前輪WH−Fを駆動する。尚、本実施形態では、ハイブリッド電気自動車の始動時及び低速走行時、モータ・ジェネレータMGによって前輪WH−Fを駆動する場合について説明するが、モータ・ジェネレータMGによって前輪WH−Fを駆動し、モータMによって後輪WH−Rを駆動するようにしてもよい(四輪駆動走行をしてもよい)。半導体装置100にはバッテリBAから直流電力が供給される。供給された直流電力は半導体装置100によって三相交流電力に変換される。これによって得られた三相交流電力はモータ・ジェネレータMGの固定子巻線に供給される。これにより、モータ・ジェネレータMGは駆動され、回転出力を発生する。この回転出力は出力制御機構(図示省略)を介して変速機TMに入力される。入力された回転出力は変速機TMによって変速され、差動装置(図示省略)に入力される。入力された回転出力は差動装置(図示省略)によって左右に分配され、前輪WH−Fの一方における前輪車軸DS−Fと前輪WH−Fの他方における前輪車軸DS−Fにそれぞれ伝達される。これにより、前輪車軸DS−Fが回転駆動される。そして、前輪車軸DS−Fの回転駆動によって前輪WH−Fが回転駆動される。
ハイブリッド電気自動車の通常走行時(乾いた路面を走行する場合であって、エンジンENの運転効率(燃費)が良い走行領域)は、エンジンENによって前輪WH−Fを駆動する。このため、エンジンENの回転出力は出力制御機構(図示省略)を介して変速機TMに入力される。入力された回転出力は変速機TMによって変速される。変速された回転出力は差動装置(図示省略)を介して前輪車軸DS−Fに伝達される。これにより、前輪WH−Fが回転駆動される。また、バッテリBAの充電状態を検出し、バッテリBAを充電する必要がある場合は、エンジンENの回転出力を、出力制御機構(図示省略)を介してモータ・ジェネレータMGに分配し、モータ・ジェネレータMGを回転駆動する。これにより、モータ・ジェネレータMGは発電機として動作する。この動作により、モータ・ジェネレータMGの固定子巻線に三相交流電力が発生する。この発生した三相交流電力は半導体装置100によって所定の直流電力に変換される。この変換によって得られた直流電力はバッテリBAに供給される。これにより、バッテリBAは充電される。
ハイブリッド電気自動車の四輪駆動走行時(雪道などの低μ路を走行する場合であって、エンジンENの運転効率(燃費)が良い走行領域)は、モータMによって後輪WH−Rを駆動する。また、上記通常走行と同様に、エンジンENによって前輪WH−Fを駆動する。さらに、モータMの駆動によってバッテリBAの蓄電量が減少するので、上記通常走行と同様に、エンジンENの回転出力によってモータ・ジェネレータMGを回転駆動してバッテリBAを充電する。モータMによって後輪WH−Rを駆動するめに、半導体装置100にはバッテリBAから直流電力が供給される。供給された直流電力は半導体装置100INVによって三相交流電力に変換され、この変換によって得られた交流電力がモータMの固定子巻線に供給される。これにより、モータMは駆動され、回転出力を発生する。発生した回転出力は左右に分配され、後輪WH−Rの一方における後輪車軸DS−R1と後輪WH−Rの他方における後輪車軸DS−R2にそれぞれ伝達される。これにより、後輪車軸DS−F4回転駆動される。そして、後輪車軸DS−R1,DS−R2の回転駆動によって後輪WH−Rが回転駆動される。
ハイブリッド電気自動車の加速時は、エンジンENとモータ・ジェネレータMGによって前輪WH−Fを駆動する。尚、本実施形態では、ハイブリッド電気自動車の加速時、エンジンENとモータ・ジェネレータMGによって前輪WH−Fを駆動する場合について説明するが、エンジンENとモータ・ジェネレータMGによって前輪WH−Fを駆動し、モータMによって後輪WH−Rを駆動するようにしてもよい(四輪駆動走行をしてもよい)。エンジンENとモータ・ジェネレータの回転出力は出力制御機構(図示省略)を介して変速機TMに入力される。入力された回転出力は変速機TMによって変速される。変速された回転出力は差動装置(図示省略)を介して前輪車軸DS−Fに伝達される。これにより、前輪WH−Fが回転駆動される。
ハイブリッド電気自動車の回生時(ブレーキを踏み込み時,アクセルの踏み込みを緩めた時或いはアクセルの踏み込みを止めた時などの減速時)は、前輪WH−Fの回転出力を前輪車軸DS−F,差動装置(図示省略)、変速機TM、出力制御機構(図示省略)を介してモータ・ジェネレータMGに伝達し、モータジェネレータMGを回転駆動する。これにより、モータ・ジェネレータMGは発電機として動作する。この動作により、モータ・ジェネレータMGの固定子巻線に三相交流電力が発生する。この発生した三相交流電力は半導体装置100によって所定の直流電力に変換される。この変換によって得られた直流電力はバッテリBAに供給される。これにより、バッテリBAは充電される。一方、後輪WH−Rの回転出力を後輪車軸DS−R1,DS−R2介してモータMに伝達し、モータMを回転駆動する。これにより、モータMは発電機として動作する。この動作により、モータMの固定子巻線に三相交流電力が発生する。この発生した三相交流電力は半導体装置100によって所定の直流電力に変換される。この変換によって得られた直流電力はバッテリBAに供給される。これにより、バッテリBAは充電される。
なお、冷却流路には、エンジンENと、放熱機2と、ポンプ3と、半導体装置100とに、モータ・ジェネレータMGを加えるようにしてもよいものである。
本実施形態の電機駆動システムによれば、半導体装置の寿命を長くて、ハイブリット自動車のメンテナンスを容易にすることができる。
次に、図15を用いて、本発明の各実施形態による半導体装置を用いた電動車両の一つである電気自動車のシステムの構成について説明する。
図15は、本発明の各実施形態による半導体装置を用いた電気自動車のシステムを示すブロック図である。
モータMの出力軸の端部には前輪WH−Fの前輪車軸DS−F1,DS−F2が機械的に接続されている。これにより、モータMの出力は前輪車軸DS−F1,DS−F2に伝達されて前輪車軸DS−F1,DS−F2を回転駆動する。そして、前輪車軸DS−F1,DS−F2の回転駆動によって前輪WH−Fが回転駆動させ、図示する構成の電気自動車が駆動される。尚、本実施形態では、モータMによって前輪車軸DS−F1,DS−F2を回転駆動して前輪WH−Fを回転駆動する場合について説明するが、モータMによって後輪車軸4を回転駆動して後輪2を回転駆動するようにしてもよい。
モータMと、放熱機2と、ポンプ3と、半導体装置100は、点線で示す流路で接続されており、半導体装置100は、モータMの冷却水で冷却される。
モータMの固定子巻線には半導体装置100の交流側が電気的に接続されている。半導体装置100は、直流電力を三相交流電力に変換する電力変換装置であり、モータMの駆動を制御するものである。半導体装置100の直流側にはバッテリBAが電気的に接続されている。
電気自動車の力行時(始動時、走行時、加速時など)は、モータMによって前輪WH−Fを駆動する。このため、半導体装置100にはバッテリBAから直流電力が供給される。供給された直流電力は半導体装置100によって三相交流電力に変換される。これによって得られた三相交流電力はモータMの固定子巻線に供給される。これにより、モータMは駆動され、回転出力を発生する。この回転出力は左右に分配され、前輪WH−Fの一方における前輪車軸DS−F1と前輪WH−Fの他方における前輪車軸DS−F2にそれぞれ伝達される。これにより、前輪車軸DS−F1,DS−F2が回転駆動される。そして、前輪車軸DS−F1,DS−F2の回転駆動によって前輪WH−Fが回転駆動される。
電気自動車の回生時(ブレーキを踏み込み時,アクセルの踏み込みを緩めた時或いはアクセルの踏み込みを止めた時などの減速時)は、前輪WH−Fの回転出力を前輪車軸DS−F1,DS−F2を介して,モータMに伝達し、モータMを回転駆動する。これにより、モータMは発電機として動作する。この動作により、モータMの固定子巻線に三相交流電力が発生する。この発生した三相交流電力は半導体装置100によって所定の直流電力に変換される。この変換によって得られた直流電力はバッテリBAに供給される。これにより、バッテリBAは充電される。
本実施形態の電機駆動システムによれば、半導体装置の寿命を長くて、ハイブリット自動車のメンテナンスを容易にすることができる。
【産業上の利用可能性】
本発明によれば、半導体装置の搭載部品の寿命を長くすることができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】




【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱部と放熱器により冷却用冷媒の温度を制御してなる冷却系を有し、
この冷却系に接続され、冷却される半導体装置であって、
前記半導体装置の稼動状況の変化が及ぼす冷却媒体への温度変化(ΔT2)より、前記冷却系の加熱部と放熱器により制御される温度の変化幅(ΔT1)が大きい(ΔT1>ΔT2)ことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置において、
前記半導体装置の外周を覆うように設けられ、外部雰囲気から前記半導体装置に対する熱伝達を抑制する抑制手段を備えたことを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項2記載の半導体装置において、
前記抑制手段は、前記半導体装置の外周を覆う筐体の全面に形成され、前記冷却用冷媒を循環する流路であることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項2記載の半導体装置において、
前記半導体装置の内面に前記冷却用の流路を設け、
この流路の両側に半導体装置を構成する電子部品を搭載したことを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項2記載の半導体装置において、
前記抑制手段は、前記半導体装置の外周を覆うように設けられた熱伝導率の小さな材料から形成された断熱部であることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項2記載の半導体装置において、
前記抑制手段は、前記半導体装置の外周を覆うように設けられた蓄熱部であることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項2記載の半導体装置において、
前記抑制手段は、前記半導体装置の外周面の少なくとも2面に設けられた前記冷却用冷媒を循環する流路と、
前記半導体装置の他の外周面を覆うように設けられた熱伝導率の小さな材料から形成された断熱部であることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項1記載の半導体装置において、
前記冷却媒体として、水あるいは水にエチレングリコール,プロピレングリコール,ブチレングリコール等のアルコール類を1種類以上配合したものを、70℃以上100℃未満の範囲で使用することを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
加熱部と放熱器により冷却用冷媒の温度を制御してなる冷却系を有し、
この冷却系に接続されるとともに、前記加熱部の発熱量よりも小さな発熱量を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
内燃機関と電動機を備えかつ電動機が電力変換装置によって制御される車両に備えられたものであって、
冷却媒体を冷却する冷却器と、
この冷却器によって冷却された前記冷却媒体を循環するための循環器とを有するとともに、
前記冷却器によって冷却された冷却媒体を前記循環器で循環し、その冷却媒体で前記電力変換装置を冷却し、前記電力変換装置を冷却した冷却媒体で前記内燃機関或いは前記内燃機関と前記電動機を冷却し、前記内燃機関或いは前記内燃機関と前記電動機を冷却した冷却媒体を前記冷却器で冷却するように冷却系統が構成されており、
前記冷却系統は、前記内燃機関と前記冷却器によって制御される冷却媒体の温度の変化幅(ΔT1)が、前記電力変換装置の稼働状況の変化に応じた冷却媒体の温度変化(ΔT2)よりも大きく(ΔT1>ΔT2)なるように構成されていることを特徴とする車両用冷却システム。
【請求項11】
内燃機関と電動機を備えた車両に搭載され、
バッテリから供給された電力を変換して前記電動機の駆動を制御し、
かつ冷却器によって冷却された冷却媒体で前記内燃機関を冷却するように構成された冷却システムの内燃機関上流側に配置されて冷却される車両用電力変換装置であって、
容器と、
冷却システムから供給される冷却媒体が流通する冷却通路と、
前記バッテリから供給された電力を変換するためのものであり、かつ、複数の半導体素子から構成された電力変換回路モジュールと、
前記半導体素子の駆動を制御するためのものであり、かつ、複数の電子部品から構成された変換回路制御基板と、を有し、
前記容器は、
前記電力変換回路モジュール及び前記変換回路制御基板を収納するものであって、
少なくとも前記電力変換回路モジュールの稼働状況の変化に応じた冷却媒体の温度の変化幅(ΔT2)が、前記内燃機関と冷却器によって制御される冷却媒体の温度の変化幅(ΔT1)よりも小さく(ΔT2<ΔT1)なるように、外部からの熱伝達を抑制することを特徴とする車両用電力変換装置。
【請求項12】
請求項11記載の車両用電力変換装置において、
前記容器に前記冷却通路を設けて、前記冷却通路を流れる冷却媒体によって前記容器に断熱層を形成することにより、外部からの熱伝達を抑制することを特徴とする車両用電力変換装置。
【請求項13】
請求項11記載の車両用電力変換装置において、
前記容器を熱伝導率の小さい部材で形成することにより、外部からの熱伝達を抑制することを特徴とする車両用電力変換装置。

【国際公開番号】WO2005/071824
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【発行日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517177(P2005−517177)
【国際出願番号】PCT/JP2004/000658
【国際出願日】平成16年1月26日(2004.1.26)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】