説明

半導体製造装置での表面腐食抑制方法

【課題】半導体製造装置の機器類にフッ素原子と塩素原子とを含む化合物ガスを作用させた際に、効果的に表面腐食を抑制する方法を提供する。
【解決手段】半導体製造装置の処理チャンバーとこの処理チャンバーに連通する配管路の内部をフッ素原子と塩素原子とを含む化合物ガスを導入してクリーニング処理あるいはプロセス処理した後、この処理チャンバー及び処理チャンバーに連通する配管路に露点温度が213K以下の不活性ガスからなるパージガスを導入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子製造装置や半導体基板製造装置、液晶製造装置、太陽電池製造装置等の半導体製造装置での処理チャンバーやガス配管路の内面腐食の抑制方法に関し、特にクリーニングガスやエッチングガスとして塩素原子とフッ素原子とを含む化合物ガスを使用した際での処理チャンバーやガス配管路の表面腐食抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子製造装置や半導体基板製造装置、液晶製造装置、太陽電池製造装置等の半導体製造装置での処理チャンバーやガス配管路では、これらの装置内に塩素原子とフッ素原子との少なくとも一方の原子を含むガスを導入してクリーニング処理を施した後、水素ガスや水素含有化合物などからなるパージガスを流通させてクリーニング処理によリ生じた汚染物質を除去するようにしている。
【特許文献1】特開平1−152274号公報
【特許文献2】特開平2−190472号公報
【0003】
さらに、パージガスとして、窒素ガス等の不活性ガスを使用するものも提案されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、三フッ化塩素等のハロゲン系クリーニングガスでクリーニング処理した後にパージガスを流通させると、処理チャンバーやガス配管路内に残るクリーニングガスの影響で必要以上にクリーニング処理表面が腐食されるという問題があった。
【0005】
本発明はこのような点に着目し、効果的に表面腐食を抑制する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、本発明は、半導体製造装置の処理チャンバーとこの処理チャンバーに連通する配管路の内部を塩素原子とフツ素原子とを含む化合物ガスを導入してクリーニング処理あるいはプロセス処理した後、この処理チャンバー及び処理チャンバーに連通する配管路に露点温度が213K以下の不活性ガスからなるパージガスを導入するようにしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、パージガスとして、露点温度が213K以下の不活性ガスを用いていることから、処理チャンバーや処理チャンバーに連通する配管路からなる機器類内面に付着残留しているフッ素ガス成分や塩素ガス成分と水との接触により腐食性物質が生成されることを可及的に阻止でき、フッ素ガス成分や塩素ガス成分による腐食性を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を半導体製造装置のCVDチャンバーを例に説明する。
通常、半導体、太陽電池、液晶基板、感光体ドラムなどの製造に使用されるCVDチャンバーは、その薄膜形成処理後に、三フッ化塩素(ClF)等のハロゲン系クリーニングガスを使用してCVDチャンバー内面や基板支持体表面に付着した付着物を除去するようにしている。
【0009】
このクリーニングガスによるクリーニング処理の後、チャンバー内に窒素ガス等の不活性ガスで構成されているパージガスを流通させて、チャンバー内からクリーニングガス成分を排除し、次の薄膜形成処理に備えるようにしている。
【0010】
ところが、パージガスをチャンバー内に流通させた後、チャンバー内の金属表面が腐食されていることがあった。これは、ハロゲン系のガスでは、水分の存在で腐食力が増大することに起因すると思われる。
【0011】
このような観点から本発明では、SUS304のテストピースを100%ClFガスに90分曝露させ、その後、露点の異なる窒素ガスで90分パージし、そのSUS304テストピースの表面について、フッ素(F)濃度、塩素(Cl)濃度をX線光電子分光分析装置で分析した。その結果を表1及び図1に示す。この場合規格化は、それぞれの元素における露点−76℃(197K)でのフッ素濃度、塩素濃度を1としている。
【0012】
【表1】

【0013】
この結果、露点温度−20℃(253K)程度まではフッ素濃度はパージ窒素ガスの露点にあまり影響されないが、塩素濃度は露点が高くなるほど(含有水分濃度が高くなるほど)高くなることがわかる。
したがって、フッ素による腐食は露点に無関係にほぼ一定であるが、塩素による腐食は露点が高くなるほど顕著に現れることがわかる。
【0014】
次に、1/4インチのSUS316L電解研磨管、溶接部なし、長さ200mmのサンプル配管に、100%ClFガスを0.05MPaG、120℃、2日間の条件で曝露し、40℃の純水中に20時間浸漬させ、その水について鉄、クロム、ニツケル、モリブデン、マンガンの合計溶出金属量を分析した。そして、露点温度と合計溶出金属量との関係を表2及び図2に示す。
【0015】
【表2】

【0016】
この結果、ClFガスでは、露点温度が高くなるほど、溶出金属量は急増することがわかる。
【0017】
また、1/4インチのSUS316L電解研磨管、溶接部なし、長さ200mmのサンプル配管に、ヘリウムで希釈した15%Fガスを0.35MPaG、60℃、6日間の条件で曝露した後、前記ClFガスと同様に合計溶出金属量を分析した。露点温度と合計溶出金属量との関係を表3及び図3に示す。
【0018】
【表3】

【0019】
この結果、Fガスでは、露点温度の相違は溶出金属量の変化に対しては影響が少ないことがわかる。
【0020】
さらに、1/2インチのSUS316L電解研磨管、自動溶接による溶接部1個所、長さ100mmのサンプル配管に、100%Clガスを0.35MPaG、60℃、6日間の条件で曝露した後、前記ClFガスやFガスと同様に合計溶出金属量を分析した。露点温度と合計溶出金属量との関係を表4及び図4に示す。
【0021】
【表4】

【0022】
この結果、Clガスでは、露点温度の相違が合計溶出金属量の変動に大きな影響を与えることがわかる。
【0023】
上述のように、、ClFガスを使用したクリーニング処理の後のパージ処理に使用するパージガスの水分量を減少させることによりクリーニングガスが接触する金属表面の腐食量を抑制できることを確認することができた。この場合、パージガスの露点温度として、水分濃度が10ppmに対応する213K(−60℃)以下とすることにより、溶出金属量を50ppm以下に抑制することができる。
【0024】
上記実施例では、パージガスとして窒素ガスを例に説明しているが、このパージガスとしては、ヘリウムやアルゴン等の希ガスであってもよい。さらに、基板に対するエッチングガスとしてClFガスを使用する場合にも発明を応用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
半導体素子製造装置や半導体基板製造装置や、液晶製造装置、太陽電池製造装置等の半導体製造装置の処理チャンバーやガス配管路での内面腐食の抑制方法として広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】ClFガスで処理後、窒素ガスでパージした場合のパージガス露点温度と金属表面でのフッ素残留濃度、塩素残留濃度の関係を示すグラフである。
【図2】ClFガスで処理した場合の露点温度と溶出金属濃度の関係を示すグラフである。
【図3】Fで処理した場合の露点温度と溶出金属濃度の関係を示すグラフである。
【図4】Clで処理した場合の露点温度と溶出金属濃度の関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体製造装置の処理チャンバーとこの処理チャンバーに連通する配管路の内部を塩素原子とフッ素原子とを含む化合物ガスを導入してクリーニング処理あるいはプロセス処理した後、この処理チャンバー及び処理チャンバーに連通する配管路に露点温度が213K以下の不活性ガスからなるパージガスを導入するようにした半導体製造装置での表面腐食抑制方法。
【請求項2】
パージガスが窒素ガスである請求項1に記載した半導体製造装置での表面腐食抑制方法。
【請求項3】
パージガスが希ガスである請求項1に記載した半導体製造装置での表面腐食抑制方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−147118(P2010−147118A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320399(P2008−320399)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000158312)岩谷産業株式会社 (137)
【Fターム(参考)】