説明

半導体製造装置におけるウエハステージおよびその使用方法

【課題】ウエハステージにおいて石英ガラスからなる当設部材が割れるのを防止する。
【解決手段】ウエハWを支持する支持ユニット2をウエハWの外周円上に配置したウエハステージであって、各支持ユニット2は、ウエハWの外周縁に接するセラミック質の当接部材3と、当接部材3が装着される金属製のベース部と、当接部材3をベース部に固定する固定具とを備える。ベース部には挿入孔40が形成され、当接部材3には挿入孔40に向かって上下に貫通する係合孔30が形成され、固定具は挿入孔40に嵌合する上下に延びる軸部54と係合孔30に係合する係合頭部53とが一体に形成されたピン5を備え、ピン5が永久磁石の磁力によって下方に向かって付勢されていることで当接部材を固定している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子計算機のチップの他LEDや太陽電池などの素子を構成する半導体の製造装置におけるウエハステージおよびその使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造のウエハステージ(ウエハの載物台)の当接部材は、石英ガラスのような低膨張特性を有するセラミック質の材料が用いられている(特許文献1)。かかる石英ガラスは各種の工程において汚染の原因となるNaOやKOを含有しないという利点を持つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】JP2005−89272A(段落0013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、常圧モノシラン(SiH)のCVD成膜装置等において、ウエハの表面に膜を形成する際には、ウエハの温度が数百度上昇する。この際、ウエハの熱が石英ガラスに伝熱されるが石英ガラスは殆ど熱膨張しない一方で、ステージを構成する金属材料は大きく熱膨張する。
【0005】
そのため、熱応力が発生し、石英ガラスからなる当接部材を金属のベース材にボルトで止めていると、前記石英ガラスからなる当接部材が割れる。
【0006】
本発明はかかる従来の問題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために本発明装置は、薄板円盤状のウエハの外周縁に当接して、前記ウエハを支持する支持ユニットを前記ウエハの外周円上に少なくとも3組配置した半導体製造装置におけるウエハステージであって、前記各支持ユニットは、前記ウエハの外周縁に接して前記ウエハを位置決めすると共に支持するセラミック質の当接部材と、前記当接部材が装着される金属製のベース部と、前記当接部材を前記ベース部に固定する固定具とを備え、前記ベース部には挿入孔が形成され、 前記当接部材には前記挿入孔に向かって上下に貫通する係合孔が形成され、ここにおいて、前記固定具は前記挿入孔に嵌合する上下に延びる軸部と前記係合孔に係合する係合頭部とが一体に形成されたピンを備え、前記ピンが永久磁石の磁力によって下方に向かって付勢されていることで前記当接部材を固定している。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、永久磁石の磁力によってピンが当接部材を固定している。かかる磁力はボルトの軸力に比べ締付力が大きくなりすぎず、しかも、機械振動で緩むこともなく、安定した一定の小さな力を発揮する。したがって、当接部材をベース部に固定し得ると共に、金属製のベース部が熱により膨張・収縮してもセラミック質の当接部材に熱によるストレスの生じるおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例1を示すウエハステージの概略斜視図である。
【図2】同実施例1の支持ユニットを示す拡大分解斜視図である。
【図3】図3Aは同支持ユニットを示す拡大断面図、図3Bは実施例2に係る同拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の好ましい実施例においては、前記固定具は、前記ピンの下方に配置され前記磁力を発揮する永久磁石部材と、前記永久磁石部材によって下方に付勢される磁性体金属を含む前記ピンとを備えている。
【0011】
この場合、ピンとは別体の永久磁石部材を設けるので、頭部および軸部を持つピンの製造が容易になるであろう。
【0012】
本発明の更に好ましい実施例においては、前記ベース部は前記ウエハの放射方向に延び、前記放射方向に互いに離間した複数の固定ポイントを有し、前記各固定ポイントに前記挿入孔および永久磁石部材が設けられている。
【0013】
この場合、ボルトやネジと異なりピンを引き抜き、当接部材を移動した後に前記ピンを落とし込むだけで、極めて簡単にウエハの寸法の変化に対応し得るだけでなく、ネジ山において汚れの発生するおそれもない。
【実施例】
【0014】
以下、本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
実施例1:
図1〜図3Aは実施例1を示す。
【0015】
図1において、本ウエハステージは、たとえばCVD成膜装置における搬出入を行うターレットの一対のステーションに設けられる。各ステージは一方のステーションにおいて吸着パッドを持つ搬入機からウエハWを受け取り、ターレットが旋回し、他方のステーションにおいて下方からリフタが上昇して前記ステージから半導体のウエハWを受け取り、所定の成膜加工が施される。
【0016】
図1に示すように、各ステージ1には、ウエハWの外周円上に、たとえば3組の支持ユニット2が配置されている。各支持ユニット2はドーナツ状の円盤上に互いに等角度ピッチで固定されている。
各支持ユニット2は薄板円盤状のウエハWの外周縁に当接して、前記ウエハWを支持する。
【0017】
図2に示す前記各支持ユニット2は、前記ウエハWの外周縁に接して前記ウエハWを位置決めすると共に支持するセラミック質の当接部材3と、前記当接部材3が装着される金属製のベース部材(ベース部の一例)4と、前記当接部材3を前記ベース部材4に固定する固定具とを備える。
【0018】
前記当接部材3は、たとえば石英ガラスのような結晶化ガラスで形成されており、ウエハWと接触してもウエハWを汚染するおそれがない。
【0019】
前記ベース部材4は、たとえばステンレススチールで形成され、図1に示すように、ウエハWの中心Oから放射方向Rに延びる。前記ベース部材4は放射方向Rに互いに離間した図2の複数の固定ポイントPを有し、前記固定ポイントPごとに断面円形の挿入孔40が前記ベース部材4に形成されている。
また、前記ベース部材4には各固定ポイントPにおいて当接部材3を周方向に位置決めする1本の溝41が形成されている。
【0020】
図3Aに示すように、前記当接部材3には前記挿入孔40に向かって上下に貫通する係合孔30が形成されている。係合孔30の上部は下方に向かって窄まる逆円錐台形に形成されているが、円柱形であってもよい。
【0021】
前記固定具はピン5および永久磁石部材6とを備える。永久磁石部材6はピン5の下方に配置され磁力を発揮する。ピン5は前記永久磁石部材6によって下方に付勢される磁性体金属を含む。
【0022】
前記ピン5は、たとえばSUS430のような磁性ステンレスからなり、表面が腐食しないようになっている。なお、ピン5は鉄系金属にクロムメッキを施して形成されてもよい。
【0023】
前記永久磁石部材6としては、たとえばサマリウムコバルトマグネットを採用することができ、強磁性体を磁化してなる。なお、本実施例の場合、永久磁石部材6は小さな円盤形で、各固定ポイントPごとに前記挿入孔40の真下に配置されている。
【0024】
図3Aに示すように、前記各永久磁石部材6はベース部材4に形成した円形の収容凹所42に収容されており、固定プレート(カバー)43を介してビス44により、前記収容凹所42に固定されている。
【0025】
前記ピン5は係合頭部53と上下に延びる軸部54とが一体に形成されている。前記軸部54は円柱形で、前記当接部材3の係合孔30からベース部材4の挿入孔40に挿入され、挿入孔40に嵌合する。一方、前記係合頭部53は逆円錐台形で、前記当接部材3の係合孔30に嵌って当接部材3に係合する。
前記ピン5は永久磁石部材6の磁力によって下方に向かって付勢されていることで、前記当接部材3をベース部材4に固定している。
【0026】
前記ピン5の軸部54の底面と、前記永久磁石部材6の上面との間には、微小な隙間△が設定される。この隙間△はたとえば、0.05mmに設定されるが、一般に、0.01mm〜0.2mm程度が好ましい。
隙間△が小さすぎると高い加工精度が要求され、一方、隙間△が大きいと磁力が小さくなるからである。
【0027】
つぎに、本ステージの使用方法について説明する。まず、加工対象となるウエハWの大きさ(外径)に応じた位置に、つまり固定ポイントPに当接部材3を配置し、当該当接部材3にピン5を挿通させる。
【0028】
この状態で、前記ピン5で固定された図1の前記当接部材3の間に前記ウエハWを上方から載せる。この後、ターレットが旋回し、下方から図示しないリフタがウエハWを上昇させ、所定の成膜加工が施される。この加工の際、ウエハWは昇温し、この昇温したウエハWは再びステージ1上に載置され、これにより当接部材3およびベース部材4が昇温する。その後、前記ターレットが再び旋回した後、前記ステージ1からウエハWが上方に搬出される。
【0029】
図3Bは実施例2を示す。
この実施例2においては、ピン5が永久磁石で形成され、ベース部材4またはカバー43がSUS430で形成されている。この場合もピン5はベース部材4またはカバー43に吸着されて下方に付勢され、当接部材4に当接部材3を固定する安定した磁力を発揮する。
なお、前記各実施例において、ウエハステージには必ずしもリフタを有している必要はなく、また、ターレット式である必要はない。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、半導体製造におけるウエハのステージに利用できる。
【符号の説明】
【0031】
1:ステージ
2:支持ユニット
3:当接部材、30:係合孔
4:ベース部材、40:挿入孔、41:溝、42:収容凹所、43:固定プレート
44:ビス
5:ピン、53:係合頭部、54:軸部
6:永久磁石部材
P:固定ポイント
R:放射方向
W:ウエハ
△:隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板円盤状のウエハの外周縁に当接して、前記ウエハを支持する支持ユニットを前記ウエハの外周円上に少なくとも3組配置した半導体製造装置におけるウエハステージであって、
前記各支持ユニットは、前記ウエハの外周縁に接して前記ウエハを位置決めすると共に支持するセラミック質の当接部材と、前記当接部材が装着される金属製のベース部と、前記当接部材を前記ベース部に固定する固定具とを備え、
前記ベース部には挿入孔が形成され、
前記当接部材には前記挿入孔に向かって上下に貫通する係合孔が形成され、
ここにおいて、前記固定具は前記挿入孔に嵌合する上下に延びる軸部と前記係合孔に係合する係合頭部とが一体に形成されたピンを備え、前記ピンが永久磁石の磁力によって下方に向かって付勢されていることで前記当接部材を固定している。
【請求項2】
請求項1のウエハステージにおいて、
前記固定具は、前記ピンの下方に配置され前記磁力を発揮する永久磁石部材と、
前記永久磁石部材によって下方に付勢される磁性体金属を含む前記ピンとを備えている。
【請求項3】
請求項2のウエハステージにおいて、前記ベース部は前記ウエハの放射方向に延び、前記放射方向に互いに離間した複数の固定ポイントを有し、
前記各固定ポイントに前記挿入孔および永久磁石部材が設けられている。
【請求項4】
請求項2のウエハステージの使用方法であって、前記ピンで固定された複数の前記当接部材の間に前記ウエハを上方から載せる工程と、前記ウエハに所定の加工を施す工程と、前記加工されたウエハを上方へ搬出する工程とを備えている。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−12509(P2013−12509A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142534(P2011−142534)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(303051503)株式会社エース (1)
【Fターム(参考)】