説明

半導体記憶装置およびその製造方法

【課題】MTJ素子内における層間の短絡を抑制し、かつ、MTJ素子を構成する磁性層の劣化を抑制した半導体記憶装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本実施形態による半導体記憶装置は半導体基板を備える。磁気トンネル接合素子は、2つの磁性層と該2つの磁性層間に設けられたトンネル絶縁膜とを含み、半導体基板の上方に設けられている。側壁膜は、磁気トンネル接合素子の側面の上部に設けられている。フェンス層は、導電性材料を含み、側壁膜の側面および磁気トンネル接合素子の側面の下部に設けられている。保護膜は、絶縁体からなりフェンス層の側面に設けられている。フェンス層の上面および保護膜の上面は、側壁膜の上面よりも低く、かつ、トンネル絶縁膜よりも高い位置にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体記憶装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抵抗変化型メモリの一つに磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM(Magnetic Random Access Memory))がある。MRAMの書込み方式には、磁場書込み方式およびスピン注入書込み方式がある。このうちスピン注入書込み方式は、磁性体のサイズが小さくなる程、磁化反転に必要なスピン注入電流が小さくなるという性質を有するため、高集積化、低消費電力化および高性能化に有利である。
【0003】
スピン注入書込み方式のMTJ(Magnetic Tunnel Junction)素子は、2枚の強磁性層とこれらに挟まれた非磁性トンネル絶縁膜とからなる積層構造を有し、スピン偏極トンネル効果による磁気抵抗の変化によりデジタルデータを記憶する。MTJ素子は、2枚の強磁性層の磁化配列によって、低抵抗状態と高抵抗状態とを取り得る。2枚の強磁性層の磁化配列が平行状態(P(Parallel)状態)の場合に、MTJ素子は低抵抗状態となり、2枚の強磁性層の磁化配列が非平行状態(AP(Anti Parallel)状態)の場合に、MTJ素子は高抵抗状態となる。このようなMRAMは、高速動作、低消費電力、かつ、不揮発性等の特徴を有するため、DRAMの代替として注目されている。
【0004】
MTJ素子を加工する際に、2枚の強磁性層およびトンネル絶縁膜を同一のエッチング工程において一括で加工すると、トンネル絶縁膜の下にある下側磁性層の材料がトンネル絶縁膜および上側磁性層の側面に付着し、フェンス層を形成する。この場合、フェンス層は、上側磁性層と下側磁性層とを短絡させる可能性がある。これに対処するために、上側磁性層のエッチング後、上側磁性層の側面を側壁膜で被覆し、その後、トンネル絶縁膜および下側磁性層をエッチングしていた。この場合、フェンス層は、側壁膜の側面に付着する。このフェンス層は、上部電極の一部として機能するハードマスクと下側磁性層との間を短絡させる危険性がある。そこで、フェンス層は横方向からエッチングすることによって除去されていた。
【0005】
しかし、横方向成分の強いエッチングを適用すると、下側磁性層の側面にダメージを与え、下側磁性層の磁気特性を劣化させてしまう。また、フェンス層は、全てのMTJ素子において均一の厚みで付着するわけではないので、全てフェンス層を取り除くためには、オーバーエッチングを長くする必要がある。従って、フェンス層が早く除去されたMTJ素子においては、下側磁性層は、大きなダメージを受けることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−349671号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】K. Sugiura et al. , Jpn. J. Appl. Phys. 48 (2009) 08HD02
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
MTJ素子内における層間の短絡を抑制し、かつ、MTJ素子を構成する磁性層の劣化を抑制した半導体記憶装置およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態による半導体記憶装置は半導体基板を備える。磁気トンネル接合素子は、2つの磁性層と該2つの磁性層間に設けられたトンネル絶縁膜とを含み、半導体基板の上方に設けられている。側壁膜は、磁気トンネル接合素子の側面の上部に設けられている。フェンス層は、導電性材料を含み、側壁膜の側面および磁気トンネル接合素子の側面の下部に設けられている。保護膜は、絶縁体からなりフェンス層の側面に設けられている。フェンス層の上面および保護膜の上面は、側壁膜の上面よりも低く、かつ、トンネル絶縁膜よりも高い位置にある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に従ったMARMの構成を示すブロック図。
【図2】メモリセルMCの書込み動作を示す説明図。
【図3】第1の実施形態によるMRAMのMTJ素子およびセルトランジスタCTの構成を示す断面図。
【図4】第1の実施形態によるMRAMの製造方法を示す断面図。
【図5】図4に続く、MRAMの製造方法を示す断面図。
【図6】図5に続く、MRAMの製造方法を示す断面図。
【図7】図6に続く、MRAMの製造方法を示す断面図。
【図8】図7に続く、MRAMの製造方法を示す断面図。
【図9】図8に続く、MRAMの製造方法を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に従ったMARMの構成を示すブロック図である。メモリセルアレイ11内には、複数のメモリセルMCがマトリクス状に二次元配置されている。各メモリセルMCは、MTJ素子およびセルトランジスタCTを含む。MTJ素子は、抵抗状態の変化によってデータを記憶し、電流によってデータを書き換え可能な磁気トンネル接合素子である。セルトランジスタCTは、MTJ素子に対応して設けられ、該対応するMTJ素子に電流を流すときに導通状態となるように構成されている。
【0013】
複数のワード線WLはロウ方向に、複数のビット線BLはカラム方向にそれぞれ互いに交差するように配線されている。隣接する2つのビット線BLは対を成しており、メモリセルMCは、ワード線WLとビット線対(例えば、第1のビット線BL1、第2のビット線BL2)との交点に対応して設けられている。各メモリセルMCのMTJ素子およびセルトランジスタは、ビット線対の間(例えば、BL1とBL2との間)に直列に接続されている。また、セルトランジスタCTのゲートはワード線WLに接続されている。
【0014】
メモリセルアレイ11のビット線方向の両側には、センスアンプ12およびライトドライバ22が配置されている。センスアンプ12は、ビット線BLに接続されており、選択ワード線WLに接続されたメモリセルMCに流れる電流を検知することによって、メモリセルに格納されたデータを読み出す。ライトドライバ22は、ビット線BLに接続されており、選択ワード線WLに接続されたメモリセルMCに電流を流すことによってデータを書き込む。
【0015】
メモリセルアレイ11のワード線方向の両側には、ロウデコーダ13およびワード線ドライバ21がそれぞれ配置されている。ワード線ドライバ21は、ワード線に接続されており、データ読出しまたはデータ書込みの際に選択ワード線WLに電圧を印加するように構成されている。
【0016】
センスアンプ12またはライトドライバ22と外部入出力端子I/Oとの間のデータの授受は、データバス14及びI/Oバッファ15を介して行われる。
【0017】
コントローラ16には、各種の外部制御信号、例えば、チップイネーブル信号/CE、アドレスラッチイネーブル信号ALE、コマンドラッチイネーブル信号CLE、書き込みイネーブル信号/WE、及び読み出しイネーブル信号/REなどが入力される。コントローラ16は、これらの制御信号に基づいて、入出力端子I/Oから供給されるアドレスAddとコマンドComとを識別する。そして、コントローラ16は、アドレスAddを、アドレスレジスタ17を介してロウデコーダ13及びカラムデコーダ18に転送する。また、コントローラ16は、コマンドComをデコードする。センスアンプ12は、カラムデコーダ18によってデコードされたカラムアドレスに従って、ビット線に電圧を印加することができるように構成されている。ワード線ドライバ21は、ロウデコーダ13によってデコードされたロウアドレスに従って、選択ワード線WLに電圧を印加することができるように構成されている。
【0018】
コントローラ16は、外部制御信号とコマンドに従って、データ読み出し、データ書き込み及び消去の各シーケンス制御を行う。内部電圧発生回路19は、各動作に必要な内部電圧(例えば、電源電圧より昇圧された電圧)を発生するために設けられている。この内部電圧発生回路19も、コントローラ16により制御され、昇圧動作を行い必要な電圧を発生する。
【0019】
図2は、メモリセルMCの書込み動作を示す説明図である。TMR(tunneling magnetoresistive)効果を利用したMTJ素子は、2枚の強磁性層Fr、Pとこれらに挟まれた非磁性層(トンネル絶縁膜)Bとからなる積層構造を有し、スピン偏極トンネル効果による磁気抵抗の変化によりデジタルデータを記憶する。MTJ素子は、2枚の強磁性層Fr、Pの磁化配列によって、低抵抗状態と高抵抗状態とを取り得る。例えば、低抵抗状態をデータ“0”と定義し、高抵抗状態をデータ“1”と定義すれば、MTJ素子に1ビットデータを記録することができる。もちろん、低抵抗状態をデータ“1”と定義し、高抵抗状態をデータ“0”と定義してもよい。
【0020】
例えば、MTJ素子は、固定層(Pin層)P、トンネル絶縁膜B、記録層(Free層)Frを順次積層して構成される。Pin層PおよびFree層Fは、強磁性体で構成されており、トンネル絶縁膜Bは、絶縁膜(例えば、Al、MgO)からなる。Pin層Pは、磁化の向きが固定されている層であり、Free層Frは、磁化の向きが可変であり、その磁化の向きによってデータを記憶する。
【0021】
書込み時に矢印A1の向きに反転閾値電極以上の電流を流すと、Pin層Pの磁化の向きに対してFree層Frの磁化の向きがアンチパラレル状態(AP状態)となり、高抵抗状態(データ“1”)となる。書込み時に矢印A2の向きに反転閾値電極以上の電流を流すと、Pin層PとFree層Frとのそれぞれの磁化の向きがパラレル状態(P状態)となり、低抵抗状態(データ“0”)となる。このように、MTJ素子は、電流の方向によって異なるデータを書き込むことができる。
【0022】
尚、Pin層PとFree層Frとの位置関係は逆であってもよい。この場合、電流の方向も逆にすれば、上記のようにデータを書き込むことができる。
【0023】
図3は、第1の実施形態によるMRAMのMTJ素子およびセルトランジスタCTの構成を示す断面図である。セルトランジスタCTは、半導体基板10上に形成されている。MTJ素子は、セルトランジスタCTのさらに上方に形成されている。
【0024】
セルトランジスタCTは、拡散層20と、ゲート絶縁膜25と、ゲート電極GCとを備える。ゲート電極GCは、ゲート絶縁膜25を介して半導体基板10上に設けられている。ゲート電極GCは、ワード線WLに接続され、あるいは、ワード線WLとして機能する。拡散層20は、ゲート電極GCの両側に形成されており、ソースまたはドレイン拡散層として機能する。
【0025】
セルトランジスタCTを被覆するように層間絶縁膜ILD(Inter Layer Dielectric)が設けられている。コンタクトプラグCBが層間絶縁膜ILDを貫通してそれぞれ拡散層20に電気的に接続するように設けられている。
【0026】
MTJ素子は、層間絶縁膜ILDおよびコンタクトプラグCB上に設けられた下部電極LEおよび下地層UL上に設けられている。MTJ素子は、積層されたFree層Frと、トンネル絶縁膜Bと、Pin層Pとを備える。トンネル絶縁膜Bは、2つの磁性層としてのFree層FrおよびPin層Pの間に設けられている。
【0027】
MTJ素子上には、上部電極UEが設けられている。側壁膜30が、MTJ素子の上部側面(Pin層Pの側面)および上部電極UEの下部側面に設けられている。側壁膜30は、トンネル絶縁膜Bの上面上に設けられている。
【0028】
導電性材料を含むフェンス層40が、側壁膜30の下部側面およびMTJ素子の下部側面に設けられている。より詳細には、フェンス層40は、トンネル絶縁膜B、Free層Frおよび下地層ULの各側面に設けられている。フェンス層40は、下部電極LEの側面に設けられていても差し支えない。フェンス層40の上端P40は、側壁膜30の上端P30よりも低く、かつ、トンネル絶縁膜Bの表面よりも高い位置にある。側壁膜30は、例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜等の絶縁膜を用いて形成されている。フェンス層40は、例えば、下側磁性層としてのFree層Frと同じ磁性体材料を用いて形成されている。
【0029】
保護膜50が、隣接する2つのMTJ素子間に設けられており、フェンス層40の上端P40の高さまで充填されている。従って、保護膜50は、フェンス層40の側面を被覆している。フェンス層40の上面(P40)および保護膜50の上面S50は、フェンス層40と保護膜50との間で面一となっている。従って、保護膜50の上面は、フェンス層40の上端P40と同様に、側壁膜30の上端P30よりも低く、かつ、トンネル絶縁膜Bの表面よりも高い位置にある。保護膜50がスピンコートを用いたSOG(Spin-On Glass)である場合、保護膜50はシリコン酸化物が主成分であるが、カーボンおよびOH基を含んでいる。
【0030】
さらに、層間絶縁膜ILDが、保護膜50上に設けられており、隣接するMTJ素子間に充填されている。
【0031】
上部電極UEは、MTJ素子のPin層P上に設けられている。上部電極UEは、ビアコンタクト(図示せず)を介してビット線BL1に電気的に接続されている。セルトランジスタCTの一方の拡散層20は、MTJ素子の下にある下部電極LEにコンタクトプラグCBを介して電気的に接続されている。セルトランジスタCTの他方の拡散層20は、他のコンタクトプラグCBおよびビアコンタクト(図示せず)を介して、ビット線BL1に隣接するビット線BL2に電気的に接続される。これにより、MTJ素子およびセルトランジスタCTは、図2に示すようにビット線対BL1とBL2との間に直列に接続される。尚、ビット線BL1およびBL2は、ワード線WL(ゲート電極GC)の延伸するロウ方向に配列されている。
【0032】
本実施形態によるMRAMでは、フェンス層40の上端P40は、側壁膜30の上端P30よりも低い位置にある。従って、導電性材料を含むフェンス層40は、上部電極UEと下側磁性層としてのFree層Frとの間において切断されており、上部電極UEとFree層Frとの間を電気的に短絡させない。また、フェンス層40の上端P40および保護膜50の上面S50は、トンネル絶縁膜Bの上面よりも高い位置にある。従って、フェンス層40および保護膜50は、トンネル絶縁膜BおよびFree層Frの側面を被覆した状態である。これにより、フェンス層40および保護膜50は、トンネル絶縁膜BおよびFree層Frを、後述するフェンス層40のエッチングから保護している。その結果、本実施形態によるMRAMは、MTJ素子内における層間の短絡を抑制し、かつ、MTJ素子を構成する下側磁性層(Free層Fr)の劣化を抑制することができる。
【0033】
図4から図9は、第1の実施形態によるMRAMの製造方法を示す断面図である。まず、シリコン基板10上にセルトランジスタCTを形成する。素子分離領域STI(Shallow Trench Isolation)の形成後、アクティブエリアにセルトランジスタCTを形成する。セルトランジスタCTは、既知のトランジスタの形成方法と同様でよい。図4では、セルトランジスタCTの拡散層20およびゲート電極GCが表示されている。拡散層20は、ソースまたはドレイン拡散層のいずれかである。ゲート電極GCは、図4の紙面に対して垂直方向(ロウ方向)に延伸しておち、ワード線WLとして機能する。
【0034】
次に、ゲート電極GC上およびゲート電極GC間を被覆するように、層間絶縁膜ILDを堆積する。続いて、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用いて、層間絶縁膜ILDを平坦化する。
【0035】
次に、リソグラフィ技術およびRIE(Reactive Ion Etching)法を用いて、層間絶縁膜ILDにコンタクトプラグCB用のコンタクトホールを形成する。そして、CVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて金属材料(例えば、タングステン)をコンタクトホール内に堆積する。次に、CMP法を用いて金属材料を平坦化し、隣接するコンタクトプラグCBを互いに電気的に分離する。コンタクトプラグCBは、拡散層20に接続され、かつ、ゲート電極GCから絶縁されるように形成される。
【0036】
次に、下部電極LEの材料を堆積する。下部電極LEの材料は、例えば、Ta、Pt、Ir、Ru、Pd、W、Ti、Al 及びそれらの窒化物、あるいは、これらの材料の複合膜である。
【0037】
次に、下部電極LE上に、下地層ULの材料を堆積する。下地層ULは、例えば、タンタル、ルテニウム等の低抵抗金属を用いて形成される。
【0038】
次に、下地層UL上に、MTJ素子の材料を堆積する。例えば、下地層UL上に、Free層Frの材料、トンネル絶縁膜Bの材料およびPin層Pの材料をこの順番で堆積する。Free層FrおよびPin層Pの材料は、例えば、Co、Fe、Ni、Pt、Fe、Pd、B、Ta、Dy、Ti、Cr等を含む磁性体材料である。トンネル絶縁膜Bの材料は、例えば、酸化マグネシウムまたは酸化アルミニウムである。
【0039】
次に、MTJ素子の材料の上に、ハードマスクHMの材料を堆積する。これにより、図4に示す構造が得られる。ハードマスクHMの材料は、例えば、SiO、SiN、Ta、TiAlxNy、TaN、TiN、WN、W、Al等の単層膜または積層膜である。ハードマスクHMが単層膜の場合、ハードマスクHMの材料は、上部電極UEとして利用され得るように、導電性材料(例えば、Ta、TiAlxNy、TaN、WN、W、TiN)であることが好ましい。ハードマスクHMが積層膜の場合、ハードマスクHMの材料は、少なくともMTJ素子上に導電性材料を堆積し、その導電性材料の上に絶縁性材料(例えば、SiO、SiN、Al)を堆積する。ハードマスクHMの絶縁性材料は、MTJ素子のエッチング時に除去される。本実施形態では、ハードマスクHMの材料として、プラズマTEOSによって形成されたSiOとSiNとTaとの積層膜、あるいは、SiO、TaおよびTiAlNの積層膜を採用した。この場合、TaまたはTiAlNがMTJ素子の材料上に最初に堆積され、その後にSiNおよびSiOが堆積される。
【0040】
次に、図5に示すように、リソグラフィ技術およびRIE法を用いて、ハードマスクHMを加工する。ハードマスクHMは、MTJ素子の平面パターンに加工される。さらに、ハードマスクHMをマスクとして用いて、Pin層Pの材料を、トンネル絶縁膜Bの表面が露出されるまでエッチングする。このとき、トンネル絶縁膜Bは、エッチングストッパとして機能する。このエッチング工程において、ハードマスクHMの上部の絶縁性材料は除去される。
【0041】
ここで、Pin層Pの材料は、RIE、150℃〜300℃の高温RIE、IBE(Ion Beam Etching)、イオンミリングを用いてエッチングしてもよい。さらに、Pin層Pの材料は、RIE、高温RIE、IBE、イオンミリングのうち複数の方法を組み合わせてエッチングしてもよい。
【0042】
次に、側壁膜30の材料を堆積した後、側壁膜30の材料を異方的にエッチングする。これにより、図6に示すように、側壁膜30がトンネル絶縁膜Bの上面上、および、ハードマスクHMおよびPin層Pの側面に残置される。側壁膜30の材料は、絶縁材料であり、例えば、シリコン窒化膜、アルミニウム酸化物、ジルコン酸化物あるいはそれらの複合膜を用いて形成される。また、側壁膜30の材料は、例えば、PVD(Physical Vapor Deposition)法、ALD法(Atomic Layer Deposition)、PeALD(Plasma Enhanced Atomic Layer Deposition)法で堆積されたシリコン窒化膜等でもよい。
【0043】
次に、ハードマスクHMおよび側壁膜30をマスクとして用いて、トンネル絶縁膜B、Free層Fr、下地層ULおよび下部電極LEの各材料をエッチングする。このエッチング工程では、上述したPin層Pのエッチング法のいずれかを用いればよい。
【0044】
ここで、Free層Frに対するイオンダメージを低減するために、トンネル絶縁膜B、Free層Fr、下地層ULおよび下部電極LEの各材料は、エッチングの横方向成分が小さくなるように異方的にエッチングされることが好ましい。例えば、イオンミリングの場合、半導体基板10の表面に対してほぼ垂直方向にエッチングすることによって、エッチングの横方向成分を小さくすることができる。
【0045】
Free層Frのエッチング時に、Free層Frの材料がエッチングイオン種の衝突によって反跳し、トンネル絶縁膜Bおよび側壁膜30の各側面に付着する。これにより、図7に示すように、フェンス層40が形成される。従って、フェンス層40は、主にFree層Frの材料で形成され、導電性を有する。フェンス層40は、上部電極UEとして機能するハードマスクHMに達するため、上部電極UEとFree層Frとの間を短絡するおそれがある。
【0046】
そこで、フェンス層40を斜め方向からエッチングする。このとき、フェンス層40の全体を除去しようとすると、トンネル絶縁膜BおよびFree層Frの側面がエッチングされる。このため、トンネル絶縁膜BおよびFree層Frが劣化するおそれがある。
【0047】
本実施形態では、図8に示すように、隣接するMTJ素子間において、トンネル絶縁膜Bよりも高くかつ側壁膜30の上端よりも低い位置まで保護膜50を堆積する。保護膜50は、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、カーボン膜等の絶縁膜を用いて形成される。ただし、保護膜50は、隣接する2つのMTJ素子間の平坦部において充分な膜厚を有し、かつ、MTJ素子の側面(フェンス層40の側面)において充分に薄い膜厚を有するように堆積されることが好ましい。隣接するMTJ素子間に堆積された保護膜50の厚みT1は、側壁膜30またはフェンス層40の側面に堆積された保護膜50の厚みT2よりも厚い。即ち、保護膜50は、カバレッジの悪い成膜方法で形成される。これは、フェンス層40のエッチングにおいて、トンネル絶縁膜Bを保護しつつ、トンネル絶縁膜Bの上方にあるフェンス層40を除去するためである。カバレッジの悪い成膜方法および保護膜50としては、例えば、スピンコートを用いたSOG(Spin On Glass)、あるいは、PVD(Physical Vapor Deposition)法によって形成されたシリコン窒化膜がある。保護膜50がスピンコートを用いたSOGである場合、保護膜50はシリコン酸化物が主成分であるが、カーボンおよびOH基を含んでいる。
【0048】
次に、保護膜50およびフェンス層40を斜め方向からエッチングする。保護膜50およびフェンス層40のエッチングは、RIE、高温RIE、IBE、イオンミリング、ウェットエッチングのいずれでもよい。この場合、保護膜50およびフェンス層40は半導体基板10の表面に対して垂直方向から傾斜した方向からエッチングされ、横方向成分の強いエッチング条件が好ましい。例えば、イオンミリング法では、半導体基板10の表面に対して垂直方向から40度以上傾斜した角度でエッチングすることによって、フェンス層40を横方向から除去できる。このとき、図9に示すように、隣接するMTJ素子間において厚く堆積された保護膜50の上面S50は、トンネル絶縁膜Bよりも高い位置にある。従って、上面S50よりも下にあるフェンス層40は除去されず、上面S50よりも上にあるフェンス層40は薄い保護膜50とともに除去される。上面S50よりも下にある保護膜50およびフェンス層40は除去されないので、トンネル絶縁膜BおよびFree層Frは、エッチングから保護される。即ち、本実施形態では、隣接するMTJ素子間に堆積された保護膜50をマスクとして用いて、フェンス層40の上端を側壁膜30の上端よりも低く、かつ、トンネル絶縁膜Bよりも高い位置に位置づけるようにフェンス層40をエッチングする。これにより、トンネル絶縁膜BおよびFree層Frを保護しつつ、ハードマスクHM(上部電極UE)とFree層Frとの間の電気的な短絡を抑制することができる。
【0049】
フェンス層40のエッチング後、残置されたフェンス層40の上面(P40)および保護膜50の上面S50は、フェンス層40と保護膜50との間で面一となる。
【0050】
次に、隣接するMTJ素子間を層間絶縁膜ILDで充填する。層間絶縁膜ILDを、ハードマスクHMの上部が露出されるまで研磨する。次に、上部電極UEの材料をハードマスクHMおよび層間絶縁膜ILD上に堆積し、これを加工する。ハードマスクHMは、上部電極UEと一体となって上部電極UEとして機能する。
【0051】
さらに、層間絶縁膜ILD、ビアコンタクト(図示せず)、ビット線BL1、BL2の配線を形成する。これにより、図3に示すMRAMが完成する。
【0052】
本実施形態によれば、保護膜50の厚みを利用してフェンス層40のエッチングエリアを制御することができる。フェンス層40は、ハードマスクHM(上部電極UE)とFree層Frとの間の一部において除去され、上部電極UEとFree層Frとの間を電気的に切断する。尚かつ、フェンス層40および保護膜50は、トンネル絶縁膜BおよびFree層Frの側面を保護する。よって、上部電極UEとFree層Frとの間の短絡を防止しつつ、トンネル絶縁膜BおよびFree層Frの劣化を抑制することができる。
【0053】
また、フェンス層40および保護膜50は、トンネル絶縁膜BおよびFree層Frの側面を被覆しているので、フェンス層40のエッチングによって記憶層Frのサイズが不均一に縮小することはなく、各MTJ素子の記憶層Frのサイズが均一になる。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0055】
MC・・・メモリセル、CT・・・セルトランジスタ、GC・・・ゲート電極、MTJ・・・MTJ素子、P・・・Pin層、B・・・トンネル絶縁膜、Fr・・・Free層、LE・・・下部電極、UE・・・上部電極、ILD・・・層間絶縁膜、UL・・・下地層、BL1、BL2・・・ビット線、WL・・・ワード線、CB・・・コンタクトプラグ、HM・・・ハードマスク、10・・・半導体基板、20・・・拡散層、30・・・側壁膜、40・・・フェンス層、50・・・保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
2つの磁性層と該2つの磁性層間に設けられたトンネル絶縁膜とを含み、前記半導体基板の上方に設けられた磁気トンネル接合素子と、
前記磁気トンネル接合素子の側面の上部に設けられた側壁膜と、
導電性材料を含み、前記側壁膜の側面および前記磁気トンネル接合素子の側面の下部に設けられたフェンス層と、
絶縁体からなり前記フェンス層の側面に設けられている保護膜とを備え、
前記フェンス層の上面および前記保護膜の上面は、前記側壁膜の上面よりも低く、かつ、前記トンネル絶縁膜よりも高い位置にあることを特徴とする半導体記憶装置。
【請求項2】
前記フェンス層の上面および前記保護膜の上面は、前記フェンス層と前記保護膜との間で面一となっていることを特徴とする請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項3】
前記保護膜は、カーボン、または、OH基を有する絶縁体を用いて形成されていることを特長とする請求項1または請求項2に記載の半導体記憶装置。
【請求項4】
下側磁性層、トンネル絶縁膜および上側磁性層を含む複数の磁気トンネル接合素子を備えた半導体記憶装置の製造方法であって、
半導体基板の上方に前記下側磁性層、前記トンネル絶縁膜および前記上側磁性層の各材料を堆積し、
マスク材を用いて前記上側磁性層を加工し、
前記トンネル絶縁膜の上面上および前記上側磁性層の側面に側壁膜を形成し、
前記マスク材および前記側壁膜をマスクとして用いて、前記トンネル絶縁膜および前記下側磁性層を加工し、
隣接する前記磁気トンネル接合素子間において、前記トンネル絶縁膜よりも高くかつ前記側壁膜の上端よりも低い位置まで保護膜を堆積し、
隣接する前記磁気トンネル接合素子間に堆積された前記保護膜をマスクとして用いて、前記下側磁性層の加工時に前記側壁膜の側面に付着したフェンス層をエッチングし、前記フェンス層の上端を前記側壁膜の上端よりも低く、かつ、前記トンネル絶縁膜よりも高い位置に位置づけることを具備した半導体記憶装置の製造方法。
【請求項5】
前記保護膜を堆積したときに、隣接する前記磁気トンネル接合素子間に堆積された前記保護膜の厚みは、前記側壁膜または前記フェンス層の側面に堆積された前記保護膜の厚みよりも厚いことを特徴とする請求項4に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【請求項6】
前記フェンス層のエッチング後、残置された前記フェンス層の上面および前記保護膜の上面は、前記フェンス層と前記保護膜との間で面一となっていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【請求項7】
前記保護膜は、SOG法またはPVD法を用いて堆積されていることを特長とする請求項4から請求項6のいずれかに記載の半導体記憶装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−65755(P2013−65755A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204306(P2011−204306)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】