説明

危険回避システム

【課題】 地震などの天災により路面が走行上危険な状態にあることを検知して道路を走行中の車両に伝達して危険回避に供し得るシステムを提供する。
【解決手段】 道路に沿って道路や建物にRFIDタグ10を設置する。RFIDタグ10には湿度・温度・圧力・地磁気センサなどが接続される。RFIDリーダー/ライター12からRFIDタグへ定期的に問い合わせを行ない、予め設定されている上・下限値をオーバーしていれば異常と判定する。判定結果は、道路を走行中の車両16に設置されたRFIDリーダーからの読み出しを可能とするため、当該RFIDタグ10に書き込まれ、また、情報センター14を介して車両16へ伝達される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地震などの天災により路面が走行上危険な状態にあることを検知して危険回避に供し得る危険回避システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地震などの天災により路面が走行上危険な状態にあるとき、これを検出して道路を走行中の車両へ伝えることができれば、二次災害の発生をくい止めることができる。
【0003】
下記特許文献1には複数のRFIDタグまでの距離の変化を検出し、所定の閾値以上の変化があったとき警報器を駆動するシステムが開示されている。また特許文献2には、温度・圧力などのセンサに接続されたRFIDタグが開示されている。しかしながら、いずれも、天災による異常を検知するものではない。
【0004】
【特許文献1】特表2002−525640号公報
【特許文献2】特表2002−540669号公報
【特許文献3】特開2002−116034号公報
【特許文献4】特許第2915851号
【特許文献5】特開2004−78562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって本発明の目的は、地震などの天災により路面が走行上危険な状態にあることを検知して道路を走行中の車両に伝達して危険回避に供し得る危険回避システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、道路に沿って固定的に設けられた複数のRFIDタグと、該RFIDタグと交信する送受信機と、該RFIDタグと該送受信機との交信の結果に基いて、該RFIDタグが設けられた個所における異常の発生を検出する検出手段とを具備する危険回避システムが提供される。
【0007】
例えば、前記複数のRFIDタグの少なくとも一部にはセンサが接続され、前記検出手段は、該センサが検出した情報に基いて異常の発生を検出する。
【0008】
或いはまた、前記検出手段は、前記RFIDタグと前記送受信機との間の交信に要する時間の変化により異常の発生を検出する。
【0009】
或いはまた、前記検出手段は、前記RFIDタグからの電波の前記送受信機における電界強度の変化により異常の発生を検出する。
例えば、前記送受信機および検出手段は固定的に設けられ、該検出手段が異常の発生を検出するとき、移動体に設けられた第2の送受信機からの読み出しを可能とするため、該送受信機を介して前記RFIDタグへ検出結果を書き込む書込手段をさらに具備する。
或いはまた、前記送受信機および検出手段は移動体上に設けられる。
【発明の効果】
【0010】
道路に沿って複数のRFIDタグを固定的に設け、それらRFIDタグとの交信結果に基いて当該RFIDタグの設置個所の異常を検出することにより、これから走行しようとする道路の路面が走行上危険な状態にあることを未然に知り、危険を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本発明の一実施形態に係る危険回避システムの構成を示す。図1において、道路に沿って多数のRFIDタグ10が道路・建物に設置されている。RFIDタグを建物に設置する方法としては、例えば住居番号表示板に埋め込むことが考えられる。RFIDタグとは、メモリ機能と無線送受信機能を有するICチップであり、RFIDリーダー/ライターから電波や電磁波によりメモリ上のデータの読み出し/書き込みが可能である。RFIDタグには、RFIDリーダー/ライターからアンテナを経て電力を供給することにより、電池を必要とせず半永久的に使用可能なタイプがある。アンテナの形状・サイズによって数10mの距離での使用が可能である。
【0012】
RFIDタグ10の少なくとも一部には、圧力センサ、湿度センサ、温度センサ、地磁気センサから選択される少なくとも一種以上のセンサが接続されており、センサの出力から、天災により路面が走行上危険な状態にあることを検知することができる。すなわち、センサが接続されているRFIDタグ10には、接続されているセンサに対応して、正常なときの圧力、湿度、温度、地磁気の方向の上限値および下限値が書き込まれており、センサの出力が示す値と上限値、下限値を比較することにより異常の発生を検出することができる。例えば湿度が上限値以上であればその個所は地震のために水没していることが考えられ、温度が例えば50℃の上限値以上であれば、その個所で火災が発生していることが考えられ、地磁気センサが示す方向が許容誤差範囲を超えて変化していれば、地震の影響でRFIDタグの向きが変化したと考えられる。
【0013】
RFIDリーダー/ライター12は、複数のRFIDタグ10に対して、後述するように、定期的に問い合わせを行い、上記の異常があれば、異常発生を示す情報を当該RFIDタグに書き込むとともに、適切な通信手段を介して情報センター14へ異常発生個所とその内容を通知する。さらに、個々のRFIDタグ10の応答時間はRFIDタグとの距離に対応しているので、正常なときの応答時間の上限値と下限値を記憶しておいても良い。実際の応答時間がこれら上限値と下限値の間になければ、地震の影響でRFIDタグとの距離が変わったものとして、センサ出力異常の場合と同様な処理を行う。地震の影響でRFIDタグの設置の向きが変わると、アンテナに指向性があるために、RFIDリーダー/ライター12における電界強度が変化する。そこで、正常なときの電界強度の上限値・下限値を記憶しておき、電界強度が上・下限値を超えたら地震の影響でRFIDタグの向きが変わったために電界強度が変化したものとして異常処理を行うようにしても良い。なお、センサ出力、応答時間および電界強度の上限値・下限値をRFIDタグ10へ書き込む代わりに、RFIDリーダー/ライター12の側へ記憶しても良い。
【0014】
路上を走行する車両16は、RFIDリーダーを備えていれば、その近傍に存在するRFIDタグ10にRFIDリーダー/ライター12が書き込んだ情報から路面の異常を知り、事前に危険を回避することができる。情報センター14との無線を介しての通信手段があれば、情報センター14から、路面の異常を知り、事前に危険を回避することができる。また、固定的に設けられたRFIDリーダー/ライター12による判定結果によらず、自車16に備えられたRFIDリーダーによりRFIDタグ10からセンサ出力およびその上限値および下限値を読み出し、比較することにより異常の発生を検出することができる。さらに、GPS衛星18からの電波を受信して自車16の位置を知ることのできるGPSナビゲーション装置が搭載されていれば、自車16とRFIDタグ10の距離の異常を検出することによりRFIDタグの設置位置が動いたことを知り路面の異常の発生を検出することができる。すなわち、あらかじめRFIDタグ10にそれぞれの設置位置を記録しておき、GPS衛星18の情報から知ることのできる自車16の位置と各RFIDタグ10に記録された位置から、正常なときの自車16からRFIDタグ10までの距離を決定することができる。これとRFIDタグ10の応答時間から決まる距離との間に所定値以上の差があれば異常と判断することができる。ナビゲーション装置を塔載している車両の場合には、地図上に異常個所を表示するようにしても良い。さらに、危険回避のためのルートを表示するようにしても良い。
【0015】
無線LAN,UWBなどの通信手段により車両16とその周辺を走行中の他の車両20,22,24,26との間で基地局やアクセスポイントを介さないネットワークであるアドホックネットワークが形成されていれば、他の車両へ路面が走行上危険な状態にあることを伝達することもできる。
【0016】
図2はRFIDタグ10の詳細な構成の一例を示す。RFID通信部30は、マイクロコンピュータ32による制御のもとで、アンテナを介してのデータの送信および受信を行う。マイクロコンピュータ32はRFID通信部30が受信した所定の形式の書き込みコマンドに従ってデータをメモリ34へ書き込み、所定の形式の読み出しコマンドに従ってデータをメモリ34から読み出してRFID通信部30に所定の形式で送信させる。電力生成部36はアンテナに誘起された電力からマイクロコンピュータ32およびRFID通信部30の動作に必要な電源を生成して供給する。少なくとも一部のRFIDタグのマイクロコンピュータ32には温度センサなどのセンサが接続され、その出力値はRFID通信部30が受信した読み出しコマンドに従ってデータとして送信される。
【0017】
図3は車両16に搭載されるRFIDリーダの構成の一例を示す。なお、この構成は車両に搭載されるナビゲーション装置にRFID通信部40を追加し、ナビゲーション装置のコンピュータに所定のソフトウェアを追加することにより実現することができる。
【0018】
RFID通信部40は、マイクロコンピュータ42による制御のもとで、アンテナを介してのコマンドの送信およびデータの受信を行う。マイクロコンピュータ42はRFID通信部40に所定の形式の読み出しコマンドを送信させ、その応答を受信させ、受信メッセージに含まれるセンサ出力などのデータをメモリ44、ハードディスク46へ格納し、後述する判定処理を行って、結果を表示部50および音声出力部52へ出力する。また、マイクロコンピュータ42にはタッチパネルや押鉛等からなる操作部48が接続されており、ユーザの操作に応じた動作が行われる。
【0019】
図4は固定的に設けられるRFIDリーダー/ライター12の構成の一例を示す。情報センター14へ異常発生個所を通知するためのセンター間通信機54が追加されており、表示部50と音声出力部52がない以外は図3の車載用の機器と同じ構成で良い。
【0020】
図5はRFIDリーダー/ライター12がその周辺に設置されているRFIDタグ10に定期的に問い合わせを行って、異常を検出する際のマイクロコンピュータ42における処理の一例を示すフローチャートである。図5において、この処理は定期的に繰り返し起動され、定刻になっていなければ何もせずに終了する。定刻になったら、まず変数nを1とし(ステップ1002)、n番目のRFIDタグ10に対して問い合わせを行ない(ステップ1004)、RFIDタグ10からの応答に含まれるセンサ出力、RFIDタグ10の応答時間およびRFIDタグ10からの電波の電界強度を当該RFIDタグに対応するそれぞれの上・下限値と比較し(ステップ1006)、上・下限値をオーバーしていれば、前述したように、異常発生を示す情報を当該RFIDタグに書き込み、情報センター14へ異常が検出された個所を通知する異常時の処理を行う(ステップ1008)。次に、変数nを1増やし(ステップ1012)、nがRFIDタグの数Nを超えていなければ(ステップ1014)ステップ1004の処理へ戻って次のRFIDタグに関する処理を開始し、Nを超えていれば処理を終了する。誤検出を避けるため、複数回連続して異常が検出されたときのみ異常と判定し、複数回連続して正常であるときのみ正常と判定するようにしても良い。
【0021】
図6は、RFIDリーダを備えた車両16におけるマイクロコンピュータ42の異常検出・回避処理の一例のフローチャートである。この処理も定期的に繰り返し起動され、まず、RFIDタグ10が検出されるときのみ(ステップ1100)、以下の処理が実行される。複数のRFIDタグ10が検出されるときはそのそれぞれについて以下の処理を実行する。まず、GPSナビゲーション装置が車両16に搭載されていれば(ステップ1102)、GPS衛星18から受信される信号に基いて自車の位置を決定する(ステップ1104)。そして、検出されたRFIDタグ10について異常判定処理を行う(ステップ1106)。具体的には、前述したように検出されたRFIDタグ10にRFIDリーダー/ライター12から異常を示す情報が書き込まれていれば異常と判断する。これに代わり、或いはこれと併用してRFIDタグに接続されているセンサの出力とRFIDタグに書き込まれているセンサ出力の上・下限値を比較し、センサ出力が上・下限値を超えていれば異常と判定する。また、RFIDに書き込まれている設置位置とGPS衛星から受信される信号から決定される自車の位置とから検出されたRFIDタグまでの距離を算出し、RFIDタグの応答時間から決まる距離との間に所定値以上の差があれば異常と判定する。
【0022】
異常と判定されるときは(ステップ1108)、音声により運転者に警告し、近傍車両とアドホックネットワークを介する通信を行って情報を伝送し、情報センター14へ異常個所の通知を行うなどの異常処理を行う(ステップ1110)。次にナビゲーション装置が車両に搭載されているかどうか判断し(ステップ1112)、車両に搭載されている場合には、危険を回避するための経路を表示して(ステップ1114)処理を終了する。ナビゲーション装置が搭載されていない場合にはこの処理はバイパスされる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る危険回避システムの構成を示す図である。
【図2】RFIDタグ10の構成の一例を示すブロック図である。
【図3】車両に搭載される機器の構成の一例を示すブロック図である。
【図4】固定的に設けられる機器の構成の一例を示すブロック図である。
【図5】RFIDリーダー/ライター12のマイクロコンピュータにおける処理の一例のフローチャートである。
【図6】車両16におけるマイクロコンピュータの処理の一例のフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路に沿って固定的に設けられた複数のRFIDタグと、
該RFIDタグと交信する送受信機と、
該RFIDタグと該送受信機との交信の結果に基いて、該RFIDタグが設けられた個所における異常の発生を検出する検出手段とを具備する危険回避システム。
【請求項2】
前記複数のRFIDタグの少なくとも一部にはセンサが接続され、
前記検出手段は、該センサが検出した情報に基いて異常の発生を検出する請求項1記載の危険回避システム。
【請求項3】
前記検出手段は、前記RFIDタグと前記送受信機との間の交信に要する時間の変化により異常の発生を検出する請求項1または2記載の危険回避システム。
【請求項4】
前記検出手段は、前記RFIDタグからの電波の前記送受信機における電界強度の変化により異常の発生を検出する請求項1〜3のいずれか1項記載の危険回避システム。
【請求項5】
前記送受信機および検出手段は固定的に設けられ、
該検出手段が異常の発生を検出するとき、移動体に設けられた第2の送受信機からの読み出しを可能とするため、該送受信機を介して前記RFIDタグへ検出結果を書き込む書込手段をさらに具備する請求項1〜4のいずれか1項記載の危険回避システム。
【請求項6】
前記検出手段が異常の発生と検出するとき、異常発生個所を情報センターへ通知する手段をさらに具備する請求項5記載の危険回避システム。
【請求項7】
前記送受信機および検出手段は移動体上に設けられる請求項1〜4のいずれか1項記載の危険回避システム。
【請求項8】
複数の移動体がネットワークで結ばれ、
前記移動体上に設けられた検出手段が異常を検出するとき、検出結果を該ネットワークを介して他の移動体へ伝達する伝達手段をさらに具備する請求項7記載の危険回避システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−58713(P2007−58713A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−245383(P2005−245383)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】