説明

合成樹脂射出成形品の成形方法及び射出成形金型装置

【課題】 ガス抜きが確実にできてガス焼けやショートショットを防止する。
【解決手段】 複数の一次射出成形用キャビティ部8に第一の樹脂10を射出して複数の一次射出成形部1を成形する。次に、スライドコア7を後退させて隣合う一次射出成形部1の端部間に跨る二次射出成形用キャビティ部13を形成する。次に、二次射出成形用キャビティ部13に第二の樹脂14を射出して二次射出成形部2を形成すると共に二次射出成形部2の両側の重複部3bを隣合う一次射出成形部1の各重複面12に重複一体化させる。二次射出成形用のゲート16を、距離を隔てて隣合う一次射出成形部1間に位置する金型部6の部位の幅方向の略中央で且つ幅方向と直交する方向に複数設ける。隣合う二次射出成形用のゲート16を結ぶ線の略中間位置に対応する金型部6の部位又はスライドコア7の部位にガス抜き部9を設けてガス抜きをする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次射出成形部に二次射出成形部を重複一体化した合成樹脂成形品の成形方法及び射出成形金型装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂射出成形において、ゲート20からキャビティ部21内に樹脂を射出した場合、射出された樹脂は図7に示すようにゲート20を中心にして同心円状に流れるのが普通であり、このため、樹脂の最終到達箇所イはキャビティ部21内におけるゲート20から最も遠い箇所ロとなり、通常は成形される合成樹脂射出成形品の外周が樹脂の最終到達箇所イとなるように設計してあり、この合成樹脂射出成形品の外周は通常金型の割面となっており、このため、キャビティ部21内のガスは射出された樹脂に押されて該樹脂の最終到達箇所の上記金型の割面から外部に抜けるようになっている。このため、一般的な射出成形においてはガス抜き機構は必要でない。
【0003】
また、射出成形においてガス抜き機構を設けるものが特許文献1により知られている。この特許文献1に示されたものは、金型に設けた第一のゲートから第一の樹脂を、第二のゲートから上記第一の樹脂と色の異なる第二の樹脂をそれぞれキャビティ部内に同時に射出して二色コンテナを成形するようになっており、この場合、金型の第一の樹脂と第二の樹脂との合流部にガス抜き機構を設けて成形の際に発生するガス抜きを行うようにしている。
【0004】
このように従来の射出成形においては、ガス抜き機構を設けないか、あるいはガス抜き機構を設ける場合は二色成形において第一の樹脂と第二の樹脂との合流部にガス抜きを設けることが知られているにすぎない。
【0005】
ところで、本発明者は本発明に至る過程で、それぞれ距離を隔てて位置する隣あう一次射出成形部1の外面の重複面12に二次射出成形部2の両側の重複部3bが重複一体化すると共に上記二次射出成形部2の両側の重複部3b間の部位が一次射出成形部1と重複しない非重複部3aとなった図6に示すような合成樹脂射出成形品4を、図8に示すような射出成形用金型装置5を用いて成形することを考えた。
【0006】
すなわち、図8のように複数の金型部6よりなる射出成形金型装置5を型閉めすると共にスライドコア7を前進させて複数の一次射出成形部1を形成するための複数の一次射出成形用キャビティ部8を距離を隔てて形成し、次に、図9に示すように、複数の一次射出成形用キャビティ部8にそれぞれ一次射出成形用の第一のゲート15から第一の樹脂10を一次射出成形により射出して複数の一次射出成形部1を成形し、次に、図10に示すように、スライドコア7を後退させて上記隣合う一次射出成形部1の重複面12と、距離を隔てて隣合う一次射出成形部1間に位置する金型部6の部位6a1と、後退したスライドコア7とで囲まれた空間を隣合う一次射出成形部1の端部間に跨る二次射出成形用キャビティ部13として形成し、次に、図11に示すように、二次射出成形用キャビティ部13に二次射出成形用の第二のゲート16から第二の樹脂14を二次射出成形により射出して二次射出成形部2を形成すると共に二次射出成形部2の両側部の重複部3bをそれぞれ隣合う一次射出成形部1の各重複面12に重複一体化させることで、図6に示すような合成樹脂射出成形品4を成形することができる。
【0007】
ここで、二次射出成形用の第二のゲート16は、図12に示すように隣合う一次射出成形部1間に位置する金型部6の部位6a1の、上記一次射出成形部1間の幅方向の略中央で且つ該幅方向と直交する方向に複数個設けるものである。
【0008】
そして、上記図12に示す第二のゲート16からそれぞれ射出された第二の樹脂14は最初は図12のA1、A2に示すように複数の第二のゲート16からそれぞれ同心円状に流れるのであるが、この第二のゲート16から射出された第二の樹脂14は一次射出成形部1の露出面12に沿って流れるものと、金型部6(6a1)及びスライドコア7の表面に沿って流れるものとが存在し、一次射出成形部1の露出面12の温度が金型部6及びスライドコア7の表面温度よりも高いため、途中から図12のA3、A4で示すように露出面12に沿って流れる第二の樹脂14が金型部6(6a1)及びスライドコア7に沿って流れる第二の樹脂14よりも速く流れ、したがって、隣合う第二のゲート16から最も遠い箇所である図12のロで示す箇所へは一次射出成形部1の露出面12に沿って流れるため速く流れ、一方、第二のゲート16間の中間である図5ハで示す箇所へは金型部6(6a1)に沿って流れるため遅く流れる。このように、隣合う第二のゲート16から最も遠い箇所である図12のロで示す箇所へは一次射出成形部1の露出面12に沿って流れるため速く流れ、一方、第二のゲート16間の中間である図12のハで示す箇所へは金型部6に沿って流れるため遅く流れる。このため、図12のロで示す箇所は第二のゲート16から最も遠いにもかかわらず、第二のゲート16の中間部分である図12のハで示す箇所よりも速く第二の樹脂10が到達し、図12のハで示す箇所が最も遅く第二の樹脂が到達する最終到達箇所イとなる。したがって、二次成形用キャビティ部13内のガスが金型部6の割面でガス抜きされることなく最終到達箇所イである第二のゲート16間の中間のハで示す個所に集まって抜けなくなり、ガス焼けやショートショットが生じるという問題がある。
【0009】
また、前述の特許文献1に示されるような射出成形においても、第二の樹脂を射出した場合に、既に射出成形した高温の一次射出成形部の露出面に沿って流れる第二の樹脂と、一次射出成形部の露出面よりも表面温度が低い金型部を流れる第二の樹脂との流れのスピードが異なるものにおいて、どのようにしてガス抜きを行うかということを解決する技術ではない。
【特許文献1】特開平6−23793号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、距離を隔てて隣合う一次射出成形部の外面の露出面に二次射出成形部の両側の重複部を重複一体化した射出成形品を成形するに当たって、二次射出成形用キャビティ部内のガスを確実に抜いてガス焼けやショートショットを防止することができる合成樹脂射出成形品の成形方法及び射出成金型装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明に係る合成樹脂射出成形品の成形方法は、それぞれ距離を隔てて位置する隣あう一次射出成形部1の外面の重複面12に二次射出成形部2の両側の重複部3bが重複一体化すると共に上記二次射出成形部2の両側の重複部3b間の部位が一次射出成形部1と重複しない非重複部3aとなった合成樹脂射出成形品4を射出成形金型装置5で成形するための成形方法であって、複数の金型部6よりなる射出成形金型装置5を型閉めすると共にスライドコア7を前進させて複数の一次射出成形部1を形成するための複数の一次射出成形用キャビティ部8を距離を隔てて形成し、複数の一次射出成形用キャビティ部8に第一の樹脂10を一次射出成形により射出して複数の一次射出成形部1を成形し、次に、スライドコア7を後退させて上記隣合う一次射出成形部1の重複面12と、距離を隔てて隣合う一次射出成形部1間に位置する金型部6の部位と、後退したスライドコア7とで囲まれた空間を隣合う一次射出成形部1の端部間に跨る二次射出成形用キャビティ部13として形成し、次に、二次射出成形用キャビティ部13に第二の樹脂14を二次射出成形により射出して二次射出成形部2を形成すると共に二次射出成形部2の両側の重複部3bをそれぞれ隣合う一次射出成形部1の各重複面12に重複一体化させるものであって、二次射出成形用のゲート16を、距離を隔てて隣合う一次射出成形部1間に位置する金型部6の部位の幅方向の略中央で且つ該幅方向と直交する方向に複数個設け、距離を隔てて隣合う二次射出成形用のゲート16を結ぶ線の略中間位置に対応する上記金型部6の部位又はスライドコア7の部位にガス抜き部9を設けて、二次射出成形時に発生するガスを上記ガス抜き部9から抜くことを特徴とするものである。
【0012】
このような方法により、複数の一次射出成形用キャビティ部8に第一の樹脂10を一次射出成形により射出成形した後、スライドコア7を後退させて隣合う一次射出成形部1の重複面12と、距離を隔てて隣合う一次射出成形部1間に位置する金型部6の部位と、後退したスライドコア7とで囲まれた隣合う一次射出成形部1の端部間に跨る二次射出成形用キャビティ部13を形成し、その後、この二次射出成形用キャビティ部13内に複数の二次射出成形用のゲート16から第二の樹脂14を射出して合成樹脂射出成形品4を成形する際、隣合う二次射出成形用のゲート16間の中間の部分へ流れる第二の樹脂14の流速が遅くてこの部分(割面が存在しない部分)に最も遅く第二の樹脂14が到達するにもかかわらず、ガス抜き部9から確実にガスを抜いてガス焼けやショートショットを防止することができる。
【0013】
また、本発明の射出成形金型装置は、金型装置5が複数の金型部6よりなり、金型部6に設けた前進、後退自在なスライドコア7と、第一の樹脂10を射出するための第一のゲート15と、第二の樹脂14を射出するための第二のゲート16と、ガス抜き部9とを備え、上記複数の金型部6を型閉めし且つスライドコア7を前進させることで、複数の一次射出成形用キャビティ部8を、隣接する一次射出成形用キャビティ部の端部同士が距離を隔てて位置するように形成し、上記複数の金型部6を型閉めし且つスライドコア7を後退させることで、一次射出成形用キャビティ部8内に成形された一次射出成形部1の外面の少なくとも端部が露出した重複面12と、距離を隔てて隣合う一次射出成形部1間に位置する金型部6の部位と、後退したスライドコア7とで囲まれた空間を隣合う一次射出成形部1の端部間に跨る二次射出成形用キャビティ部13として形成し、スライドコア7の移動方向から投影した二次射出成形用キャビティ部13の投影面の両側部に上記隣合う一次射出成形部1の重複面12がそれぞれ位置すると共に、該二次射出成形用キャビティ部13の投影面の中間部に上記距離を隔てて隣合う一次射出成形部1間に位置する金型部6の部位が位置し、上記第二のゲート16を、上記隣合う一次射出成形部1間に位置する金型部6の部位の幅方向の略中央で且つ該幅方向と直交する方向に複数個設け、距離を隔てて隣合う第二のゲート16を結ぶ線の略中間位置に対応する上記金型部6の部位又はスライドコア7の部位にガス抜き部9を設けて成ることを特徴とするものである。
【0014】
このように距離を隔てて隣合う第二のゲート16を結ぶ線の略中間位置に対応する金型部6の部位又はスライドコア7の部位にガス抜き部9を設けるという簡単な構成で、複数の二次射出成形用のゲート16から第二の樹脂14を射出して合成樹脂射出成形品4を成形する際、隣合う二次射出成形用のゲート16間の中間の部分へ流れる第二の樹脂14の流速が遅くてこの部分(割面が存在しない部分)に最も遅く第二の樹脂14が到達するにもかかわらず、ガス抜き部9から確実にガスを抜いてガス焼けやショートショットを防止することができる射出成形金型装置5を提供できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、距離を隔てて隣合う一次射出成形部の外面の露出面に二次射出成形部の両側の重複部を重複一体化した射出成形品を成形するに当たって、距離を隔てて隣合う第二のゲートを結ぶ線の略中間位置に対応する金型部の部位又はスライドコアの部位にガス抜き部を設けてガス抜きすることで、二次射出成形用キャビティ部内のガスを確実に抜いてガス焼けやショートショットを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0017】
本発明の合成樹脂射出成形品の成形方法及び射出成形金型装置により成形される合成樹脂成形品4は、図6に示すように、一次射出成形部1の両外面のうち一方の外面の少なくとも端部に二次射出成形部2の一部(重複部3b)が重複一体化すると共に該二次射出成形部2の非重複部3aが一次射出成形部1の端部よりも突出したものである。
【0018】
図6に示す実施形態では、複数の一次射出成形部1を二次射出成形部2で一体に連結した例が示してあり、更に本例では例えば、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、PC(ポリカーボネート)、PVC(塩化ビニル樹脂)、ABS樹脂等の硬質樹脂よりなる第一の樹脂10で一次射出成形部1を形成すると共に、例えば、TPE(エラストマー)、LDPE(低密度ポリエチレン)、EVA(エチレン酢酸ビニルコポリマー)等の軟質樹脂よりなる第二の樹脂14で二次射出成形部2を形成して、軟質樹脂よりなる二次射出成形部2の非重複部3aがヒンジ部を構成している例が示してある。つまり、本実施形態では距離を介して隣合う硬質合成樹脂よりなる一次射出成形部1同士を軟質合成樹脂よりなる二次射出成形部2で折り畳み自在(又は回動自在)に連結した合成樹脂射出成形品4の例を示している。
【0019】
図1には上記図6に示す合成樹脂成形品4を成形するための本発明の射出成形用金型装置5の一例が示してある。
【0020】
射出成形用金型装置5は、金型部6に設けた前進、後退自在なスライドコア7と、第一の樹脂10を射出するための第一のゲート15と、第二の樹脂14を射出するための第二のゲート16とを備えている。
【0021】
金型部6としては固定金型部6aと可動金型部6bとがあり、可動金型部6bの固定金型部6aと対向する面に凹所18が設けてあって、該凹所18にスライドコア7が前進、後退自在に内装してある(図1において矢印Xが前進方向、矢印Yが後退方向を示す)。
【0022】
本発明においては、可動金型部6bは固定金型部6aに対して横方向(水平方向)又は上下方向(垂直方向)に移動自在となっており、可動金型部6bを移動することで型閉めしたり、型開きしたりするようになっている。また、スライドコア7は可動金型部6bに対して可動金型部6bの可動方向と同方向に移動自在となっている。
【0023】
上記固定金型部6aと可動金型部6bとを型閉めすると共にスライドコア7を前進させた状態で、固定金型部6aと可動金型部6bと前進させたスライドコア7とで囲まれた空間が一次射出成形用キャビティ部8として形成される。この一次射出成形用キャビティ部8は複数個形成されるもので、隣合う一次射出成形用キャビティ部8の端部同士は距離を介して隔てている。そして、スライドコア7は上記隣合う一次射出成形用キャビティ部8の端部間に跨るもので、スライドコア7の前面の中央部が、固定金型部6aの隣合う各一次射出成形用キャビティ部8の端部間の部位6a1に対向すると共にスライドコア7の前面の両側部がそれぞれ隣合う一次射出成形用キャビティ部8の端部の片側の内面を構成している。
【0024】
上記複数の一次成形用キャビティ部8は、固定金型部6a乃至可動金型部6bの対向面のいずれか一方又は両方に複数のキャビティ形成用凹部17を設けることで形成されるものであり、添付図面の実施形態では固定金型部6aに複数のキャビティ形成用凹部17を形成した例が示してある。
【0025】
また、固定金型部6aと可動金型部6bとを型閉めした状態でスライドコア7のみを後退させることで、隣合う一次射出成形用キャビティ部8内にそれぞれ成形された一次射出成形部1の両外面のうちの一方の外面の端部がそれぞれ露出して、この隣合う一次射出成形用キャビティ部8内にそれぞれ成形された一次射出成形部1の露出面である重複面12と金型部6とスライドコア7とにより囲まれた二次射出成形用キャビティ部13となる空間が形成されるように構成してある。
【0026】
第一のゲート15、第二のゲート16はそれぞれ固定金型部6aに設けてあり、第一のゲート15は複数の一次射出成形用キャビティ部8にそれぞれ1乃至複数対応するように複数組み設けてあって、1乃至複数で一組となった第一のゲート15は各組毎対応する各一次射出成形用キャビティ部8に開口している。
【0027】
また、第二のゲート16は固定金型部6aの隣合う各一次射出成形用キャビティ部8の端部間の部位6a1の金型面の幅方向の略中央部で且つ該幅方向と直交する方向の複数箇所に開口するように設けてあり(ここで幅方向とは一次成形用キャビティ部8同士の隣り合う方向と同方向における幅方向のことである)、金型部6を型閉めすると共にスライドコア7を前進させた状態でスライドコア7の前端面が第二のゲート16に当接して閉じるようになっており、金型部6を型閉めすると共にスライドコア7を後退させて二次射出成形用キャビティ部13を形成した状態で第二のゲート16が二次射出成形用キャビティ部13に開口するように構成してある。
【0028】
また、固定金型部6aの隣合う各一次射出成形用キャビティ部8の端部間の部位6a1又はスライドコア7の部位の、上記固定金型部6aの隣合う各一次射出成形用キャビティ部8の端部間の部位6a1の幅方向の略中央で且つ該幅方向と直交する方向に設けた距離を隔てて隣合う第二のゲート16を結ぶ線の略中間位置に対応する位置にはガス抜き部9を設けてある。
【0029】
ガス抜き部9は例えば図1に示すように、スライドコア7又は固定金型部6a(図1ではスライドコア7)に貫通孔9aを設けると共に該貫通孔9aにピン9bを挿入して貫通孔9aの内周面とピン9bの外周面との間に気体は通過できるが樹脂は通過できないごく小さい隙間を形成して構成したもので、二次射出成形用キャビティ部8内のガスが上記ガス抜き部9を構成する貫通孔9aの内周面とピン9bの外周面との間のごくわずかな隙間からガス抜きされるようになっている。
【0030】
上記のような射出成形用金型装置5を用いて合成樹脂射出成形品4を成形するには以下のようにして行うものである。
【0031】
まず、図1に示すように複数の金型部6を型閉めすると共にスライドコア7を前進させて一次射出成形用キャビティ部8を形成し、この一次射出成形用キャビティ部8に図2に示すように、第一のゲート15から第一の樹脂10を一次射出成形により射出して一次射出成形部1を成形する一次射出工程を実施する。
【0032】
この一次射出成形により一次射出成形用キャビティ部8内に一次射出成形部1が成形される。
【0033】
この場合、第一のゲート15から一次射出成形用キャビティ部8内に射出された第一の樹脂10は第一のゲート15を中心とした同心円状に広がりながら一次射出成形用キャビティ部8内に充填されるものであり、第一のゲート15から最も遠い箇所に金型部6の割面(固定金型部6aと可動金型部6bとスライドコア7との各割面)が位置するので金型部6の割面部分が第一の樹脂10の最終到達個所であとなって一次射出成形の際のガス抜きが上記割面から行われることになる。
【0034】
次に、図3に示すように複数の金型部6を型閉めしたままの状態でスライドコア7を後退させて二次射出成形用キャビティ部13を形成する。
【0035】
次に、上記のようにして形成した二次射出成形用キャビティ部13に、複数の第二のゲート16から第二の樹脂14を二次射出成形により射出して図4に示すように二次射出成形部2を成形すると共に距離を介して隣合う一次射出成形部1の片側の外面端部の重複面12に二次射出成形部2の両端部の重複部3bが重複一体化される。
【0036】
上記のように複数の第二のゲート16からそれぞれ二次射出成形用キャビティ部13内に射出された第二の樹脂14は、最初は図5のA1、A2に示すように複数の第二のゲート16からそれぞれ同心円状に流れるのであるが、この第二のゲート16から射出された第二の樹脂14は一次射出成形部1の露出面12に沿って流れるものと、金型部6(6a1)及びスライドコア7の表面に沿って流れるものとが存在し、一次射出成形部1の露出面12の温度が金型部6及びスライドコア7の表面温度よりも高いため、途中から図5のA3、A4で示すように露出面12に沿って流れる第二の樹脂14が金型部6(6a1)及びスライドコア7に沿って流れる第二の樹脂14よりも速く流れ、したがって、隣合う第二のゲート16から最も遠い箇所である図5のロで示す箇所へは一次射出成形部1の露出面12に沿って流れるため速く流れ、一方、第二のゲート16間の中間である図5ハで示す箇所へは金型部6に沿って流れるため遅く流れる。このように、隣合う第二のゲート16から最も遠い箇所である図5のロで示す箇所へは一次射出成形部1の露出面12に沿って流れるため速く流れ、一方、第二のゲート16間の中間である図5ハで示す箇所へは金型部6(6a1)に沿って流れるため遅く流れる。このため、図5のロで示す箇所は第二のゲート16から最も遠いにもかかわらず、第二のゲート16の中間部分である図5のハで示す箇所よりも速く第二の樹脂10が到達し、図5のハで示す箇所が最も遅く第二の樹脂が到達する最終到達箇所イとなるのであるが、第二のゲート16間の中間部分に対応した金型部6(6a1)又はスライドコア7にガス抜き部9を設けてあるので、最終充填部に発生するガスを上記ガス抜き部9から確実に抜くことができ、ガス焼けやショートショットが生じるのを防止することができ、設計通りの外観となった美観に優れた合成樹脂成形品4を成形できる。
【0037】
上記のようにして二次射出成形を実行した後、射出成形用金型装置5を型開きして合成樹脂射出成形品4を取出す離型工程を実行する。
【0038】
これらの一連の型閉めから、一次射出成形、二次射出成形、離型工程という一連の工程は制御部(図示せず)の制御により実行するものである。
【0039】
なお、図6のように二次射出成形部2の両側部の重複部3bをそれぞれ距離を隔てて隣合う一次射出成形部1の端部に積層一体化したものにおいて、一次射出成形部1を形成するための第一の樹脂10が硬質樹脂で、二次射出成形部2を形成するための第二の樹脂143が軟質樹脂であると、二次射出成形部2の中間部の非重複部3a(つまり、二次射出成形部2の中間部の非重複部3aは両一次射出成形部1の端部よりそれぞれ突出した部分である)がヒンジ部となり、硬質の第一の樹脂10よりなる一次射出成形部1同士を軟質の第二の樹脂14よりなるヒンジ部により折り曲げ自在に一体に連結できることになる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の射出成形金型装置を示し、(a)は型閉め状態の正面断面図であり、(b)は側面断面図である。
【図2】同上の一次射出成形用キャビティ部に一次射出成形により第一の樹脂を充填して一次射出成形部を形成した状態の射出成形金型装置の正面断面図であり、(b)はっ側面断面図である。
【図3】同上の二次射出成形用キャビティ部を形成した段階の射出成形金型装置の正面断面図であり、(b)は側面断面図である。
【図4】同上の二次射出成形用キャビティ部に二次射出成形により第二の樹脂を充填して二次射出成形部を形成した段階の射出成形金型装置の正面断面図であり、(b)は側面断面図である。
【図5】同上の二次射出成形用キャビティ部に第二のゲートから第2の樹脂を射出した際の第2の樹脂の流れ及びガス抜きの説明図である。
【図6】同上により成形した合成樹脂射出成形品の一例を示し、(a)は斜視図であり、(b)は断面図である。
【図7】従来例のゲートからの射出された樹脂の流れ及びガス抜きの説明図である。
【図8】比較例の射出成形金型装置を示す型閉め状態の断面図である。
【図9】同上の一次射出成形用キャビティ部に一次射出成形により第一の樹脂を充填して一次射出成形部を形成した状態の射出成形金型装置の断面図である。
【図10】同上の二次射出成形用キャビティ部を形成した段階の射出成形金型装置の断面図である。
【図11】同上の二次射出成形用キャビティ部に二次射出成形により第二の樹脂を充填して二次射出成形部を形成した段階の射出成形金型装置の断面図である。
【図12】同上の二次射出成形用キャビティ部に第二のゲートから第2の樹脂を射出した際の第2の樹脂の流れ及び第二のゲート間にガスが溜まることを説明する説明図である。
【符号の説明】
【0041】
1 一次射出成形部
2 二次射出成形部
3a 非重複部
3b 重複部
4 合成樹脂射出成形品
5 射出成形金型装置
6 金型部
7 スライドコア
8 一次射出成形用キャビティ部
9 ガス抜き部
10 第一の樹脂
12 重複面
13 二次射出成形用キャビティ部
14 第二の樹脂
15 第一のゲート
16 第二のゲート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ距離を隔てて位置する隣あう一次射出成形部の外面の重複面に二次射出成形部の両側の重複部が重複一体化すると共に上記二次射出成形部の両側の重複部間の部位が一次射出成形部と重複しない非重複部となった合成樹脂射出成形品を射出成形金型装置で成形するための成形方法であって、
複数の金型部よりなる射出成形金型装置を型閉めすると共にスライドコアを前進させて複数の一次射出成形部を形成するための複数の一次射出成形用キャビティ部を距離を隔てて形成し、
複数の一次射出成形用キャビティ部に第一の樹脂を一次射出成形により射出して複数の一次射出成形部を成形し、次に、スライドコアを後退させて上記隣合う一次射出成形部の重複面と、距離を隔てて隣合う一次射出成形部間に位置する金型部の部位と、後退したスライドコアとで囲まれた空間を隣合う一次射出成形部の端部間に跨る二次射出成形用キャビティ部として形成し、次に、二次射出成形用キャビティ部に第二の樹脂を二次射出成形により射出して二次射出成形部を形成すると共に二次射出成形部の両側の重複部をそれぞれ隣合う一次射出成形部の各重複面に重複一体化させるものであって、
二次射出成形用のゲートを、距離を隔てて隣合う一次射出成形部間に位置する金型部の部位の幅方向の略中央で且つ該幅方向と直交する方向に複数個設け、距離を隔てて隣合う二次射出成形用のゲートを結ぶ線の略中間位置に対応する上記金型部の部位又はスライドコアの部位にガス抜き部を設けて、二次射出成形時に発生するガスを上記ガス抜き部から抜くことを特徴とする合成樹脂射出成形品の成形方法。
【請求項2】
請求項1記載の合成樹脂射出成形品を成形するための射出成形金型装置であって、金型装置が複数の金型部よりなり、金型部に設けた前進、後退自在なスライドコアと、第一の樹脂を射出するための第一のゲートと、第二の樹脂を射出するための第二のゲートと、ガス抜き部とを備え、
上記複数の金型部を型閉めし且つスライドコアを前進させることで、複数の一次射出成形用キャビティ部を、隣接する一次射出成形用キャビティ部の端部同士が距離を隔てて位置するように形成し、
上記複数の金型部を型閉めし且つスライドコアを後退させることで、一次射出成形用キャビティ部内に成形された一次射出成形部の外面の少なくとも端部が露出した重複面と、距離を隔てて隣合う一次射出成形部間に位置する金型部の部位と、後退したスライドコアとで囲まれた空間を隣合う一次射出成形部の端部間に跨る二次射出成形用キャビティ部として形成し、スライドコアの移動方向から投影した二次射出成形用キャビティ部の投影面の両側部に上記隣合う一次射出成形部の重複面がそれぞれ位置すると共に、該二次射出成形用キャビティ部の投影面の中間部に上記距離を隔てて隣合う一次射出成形部間に位置する金型部の部位が位置し、
上記第二のゲートを、上記隣合う一次射出成形部間に位置する金型部の部位の幅方向の略中央で且つ該幅方向と直交する方向に複数個設け、距離を隔てて隣合う第二のゲートを結ぶ線の略中間位置に対応する上記金型部の部位又はスライドコアの部位にガス抜き部を設けて成ることを特徴とする射出成形金型装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−1256(P2007−1256A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−186958(P2005−186958)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(000010054)岐阜プラスチック工業株式会社 (108)
【Fターム(参考)】