同期モータ
ステータコアにボビンを介して巻き回されるコイル巻線の占積率を向上させた同期モータを提供する。ステータコア26はコイル巻線28が巻き回されたボビン29の軸心方向両側へ分割可能に組み付けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は同期モータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えばOA機器には、冷却用のDC或いはACファンモータが装備されており、特に高回転数を要する機器には2極或いは4極のACファンモータが好適に用いられる。
このACファンモータの構成について説明すると、コイル巻線に接続する整流回路にダイオード、ブラシ、コミュテータを備え、交流電源より供給された交流電流を整流しながらロータを付勢するように回転させて直流モータとして起動運転し、ロータの回転を同期回転付近まで立ち上げ、その時点でコミュテータを機械的に整流回路から脱除して交流電源による同期運転に切り換える同期モータがある(特許文献1、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平9−84316号公報
【特許文献2】特願平9−135559号公報
【0003】
また、運転回路制御部(マイクロコンピュータなど)による通電制御により、起動運転回路のAコイル及びBコイルに流れる整流電流の電流方向を交互に切換えて起動運転し、或いは起動運転回路のコイル巻線に交互に流れる整流電流が反転する範囲内でスイッチング制御して非反転側に対して反転側の入力を抑えて起動運転し、光センサにより検出されたロータの回転数が同期回転数付近に到達したときに、運転切換えスイッチを同期運転回路に切り換えて同期運転に移行するよう制御する同期モータが提案されている(特許文献3及び特許文献4参照)。これらの同期モータにおいて、ステータコア(積層コア)の溝部には絶縁樹脂製のボビンが嵌め込まれており、該ボビンにはコイル巻線としてのコイル巻線が巻き回されている。このコイル巻線は、自動機などを用いてモータの回転方向に合わせて所定の巻き方向に所定の巻数でボビンに巻き付けられている。
【特許文献3】特開2000−125580号公報
【特許文献4】特開2000−166287号公報
【発明の開示】
【0004】
上述した同期モータにおいて、小型のステータコアにボビンを装着し、該ボビンにコイル巻線を巻き回す一連の作業を自動化するのは難しく、モータの組立工数が多く生産性が低いという課題があった。
また、コイル巻線をボビンに巻き回す場合、ボビンの撓みや外形歪み等によりコイル巻線を整列巻きすることが困難であった。これによりコイル巻線の占積率が低下してモータの効率を上げることが難しくなる。
また、ロータの起動回転方向を安定させるためステータコアに周方向へ補助コアを設けるとすれば、ボビンの装着スペースが減少しコイル巻線を巻き回す空間部が減少する。
更に、ロータに囲まれた狭い空間内でコイル外結線を行う必要があり、コイル外結線がロータに干渉することなく配線するのが難しい。
本発明の第1の目的は、ステータコアにボビンを介して巻き回されるコイル巻線の占積率を向上させると共にモータの組立工程を簡略化して量産性向上を図ること、第2の目的は、ロータの起動回転方向を安定させること、第3の目的はコイル外結線の配線長を短縮して限られたスペースを有効利用した同期モータを提供することにある。
上記目的を達成するため本発明は次の構成を有する。
第1の構成は、ハウジング内に出力軸を中心に回転可能に軸支されたロータと、該ロータに囲まれた空間部に配置されるステータとを備えた同期モータにおいて、ステータコアは、コイル巻線が巻き回されるボビンの軸心方向両側へ分割可能に組み付けられていることを特徴とする。
また、前記ステータコアのロータに対向する磁極作用面部は、ステータコアの長手方向の中心線に対して磁気的に非対称となるように該中心線の両側で形状が異なっていることを特徴とする。
また、前記ボビンには予め巻線治具にてコイル状に巻かれたコイル巻線が溝部に嵌め込まれることを特徴とする。
また、前記ボビンは筒状の巻心部を囲む起立壁が架橋部を介して一体に形成された断面コ字状の溝部に、予めコイル状に巻き回されたコイル巻線が嵌め込まれ、分割されたステータコアが前記巻心部へ軸心方向両側から挿入され、先端部が突き当てられて嵌め込まれることを特徴とする。
また、前記巻心部は起立璧より外方へ突出して形成されており、前記巻心部にコイル巻線どうしの端子間接続を行う配線パターンが形成された結線基板が両側を絶縁フィルムに覆われて嵌め込まれ、ステータコアと起立壁との間で挟持されて組み付けられることを特徴とする。
第2の構成は、ハウジング内に出力軸を中心に回転可能に軸支されたロータと、該ロータに囲まれた空間部に配置されるステータとを備えた同期モータにおいて、ステータコアは、コイル巻線が巻き回されるボビンの軸心方向両側へボビンと共に分割可能に組み付けられ、各ボビンの対向面にコイル巻線どうしを結線する結線基板が配設されることを特徴とする。
また、前記ステータコアのロータに対向する磁極作用面部は、ステータコアの長手方向の中心線に対して磁気的に非対称となるように該中心線の両側で形状が異なっていることを特徴とする。
また、前記各ボビンには予め巻線治具にてコイル状に巻かれたコイル巻線が溝部に各々嵌め込まれることを特徴とする。
また、各ボビンの軸心を通じて両側から組み付けられたステータコアどうしを連結して固定する連結プレートが設けられていることを特徴とする。
また、ロータマグネットのステータ磁極に対向する内周面が正弦波着磁されており、磁極検出面は台形波着磁されていることを特徴とする。
第1の構成の同期モータを用いると、ステータコアは、モータコイルが巻き回されたボビンの軸心方向両側へ分割可能に組み付けられているので、ロータに囲まれた限られた空間内でボビンを分割せずにステータコアに装着できる。従って、コイル巻線を巻き回す十分なスペースを確保することができる。
また、ロータに対向するステータコアの磁極作用面は、ステータコアの長手方向の中心線に対して磁気的に非対称となるように該中心線の両側で形状が異なっているので、ロータの起動回転方向を安定化することができる。
また、予め巻線治具にてコイル状に巻かれたコイル巻線が溝部に嵌め込まれるので、ボビンのたわみなどの変形に影響されず整列巻きされたコイル巻線を形成することができる。従って、コイル巻線の占積率を向上させ、モータの出力効率を向上させることができる。
また、ボビンは筒状の巻心部を囲む起立壁が架橋部を介して一体に形成された断面コ字状の溝部に、予めコイル状に巻き回されたコイル巻線が嵌め込まれるので、モータの組立工程を簡略化でき、モータの組立自動化を図ることにより生産性を向上させることができる。
更には、コイル巻線どうしの端子間接続を行う配線パターンが形成された結線基板がボビンの巻心部に嵌め込まれているので、ハウジング内の開いたスペースを利用して結線基板により配線接続を行うことができ、コイル外結線の配線長を短縮してロータとの干渉を防ぐことができる。
また、第2の構成の同期モータを用いれば、ステータコアは、コイル巻線が巻き回されるボビンの軸心方向両側へボビンと共に分割可能に組み付けられるので、出力軸がステータコアを貫通して一端側及び両端側のいずれにも駆動伝達することができるので、利便性が高い。また、各ボビンの対向面にコイル巻線どうしを結線する結線基板を配設することで、コイル外結線の配線長を更に短縮することができ、モータの小型化を図ることができる。
また、分割された各ボビンは予めコイル状に巻き回されたコイル巻線が溝部へ各々嵌め込まれたまま結線基板とステータコアと共に組み付けられ、左右で部品形状を共通化した部品を使用するので生産性が良く、モータの組立工程を簡略化でき、モータの組立自動化を図ることにより生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】図1Aは、第1の構成に係る2極同期モータのステータコアの長手方向断面説明図及び図1Bは、上ハウジングより見た内視断面図である。
【図2】図2Aは、2極同期モータを結線基板側から見た断面説明図、図2Bは、上視図、図2Cは、結線基板の説明図及び図2Dは、ステータフレームと下ハウジングとの組み付け状態を示す部分断面図である。
【図3】図3Aは、結線基板の斜視図、3Bは、絶縁フィルムの斜視図である。
【図4】ボビン及びコイル巻線の斜視図である。
【図5】ステータコアの斜視図である。
【図6】図6Aは、配線接続部、図6Bは、センサ基板、図6Cは、ステータフレーム及び下ハウジングの斜視図である。
【図7】ステータフレームを下ハウジングに組み付けた状態を示す上視図である。
【図8】ボビンにステータコアを組み付けた状態の斜視図である。
【図9】ステータをステータフレームに組み付けた状態の斜視図である。
【図10】第1の構成に係る2極同期モータの分解斜視図である。
【図11】上ハウジングと下ハウジングとの組み付け構造を示す分解斜視図である。
【図12】2極同期モータの運転回路の説明図である。
【図13】図13Aは、第2の構成に係る2極同期モータのステータコアの長手方向断面説明図、図13Bは、内視図、図13Cは、下ハウジングの上視図、図13Dは、結線基板の説明図及び図13Eは、センサ基板の下ハウジングへの組み付け状態を示す部分断面図である。
【図14】図14Aは、2極同期モータのステータコアの短手方向断面説明図及び図14Bは、上視図である。
【図15】永久磁石の着磁波形を示すグラフ図である。
【図16】図16A−図16Cは、下ハウジングへ組み付けられるステータ及びセンサ基板の分解斜視図である。
【図17】上ハウジングと下ハウジングとの組み付け構造を示す分解斜視図である。
【図18】第2の構成に係る2極同期モータの分解斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、発明を実施するための最良の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
以下では、アウターロータ型の同期モータの一例として、2極同期モータについて説明する。先ず、図1乃至図9を参照して第1の構成に係る2極同期モータの全体構成について説明する。
図1Aにおいて、回転子(ロータ)1及び固定子(ステータ)2は上ハウジング3及び下ハウジング4が上下に重ね合わされ、止めねじ49によりねじ止めされて形成されるハウジング6内に収容されている。上ハウジング3には出力軸7が嵌め込まれている。出力軸7は、上ハウジング3に嵌め込まれた上部ベアリング8によりボス部9が回転可能に軸支されている。
ロータ1には、ロータ受け部材10が一体に嵌め込まれ、該ロータ受け部材10が下ハウジング4に嵌め込まれた下部ベアリング11により回転可能に支持されている。上部ベアリング8及び下部ベアリング11としては、ステータコイルに形成される磁界の乱れを考慮して、非磁性の材料、例えばステンレスやアルミ合金などが好適に用いられる。また、上部ベアリング8の軸方向上端と上ハウジング3との間には予圧バネ12(図2B参照)が介装されており、上部ベアリング8を軸方向下側に向けて付勢してロータ1の浮き上がりを抑えている。
ロータ1の構成について説明する。図1A及び図2Aにおいて、ボス部9はロータケース13にかしめられており、ロータケース13はボス部9を介して出力軸7に一体的に連繋している。ロータケース13は下端側が開放されたカップ状に形成されており、内周面には円筒状の永久磁石14が固着されている。永久磁石14は周方向に略180度ずつN・S交互に2極に着磁されている。この永久磁石14としては、例えば、フェライト,ゴムマグネット,プラスチックマグネット,サマリュウムコバルト、希土類のマグネット、ネオジ鉄ボロンなどを原材料として安価に製造することができる。ロータ1は通電によりステータ2側に形成される磁極との反発により出力軸7を中心に起動回転するようになっている。
図1A及び図2Aにおいて、ロータケース13に囲まれた空間部にはステータ2が設けられている。下ハウジング4にはステータフレーム16が止めねじ46により一体に支持されている(図2D参照)。図2Aにおいて、ステータフレーム16には、ロータ1の回転数や磁極位置を検出するホール素子18を備えたセンサ基板19が止めねじ43により固定されている。ホール素子18はロータ1の回転数及び磁極位置を検出し、回転数に応じたパルスを発生させ、磁極位置に応じて後述する運転回路制御部(マイクロコンピュータなど)により所定のタイミングで起動運転回路のスイッチング制御が行われる。尚、ホール素子18に代えて光透過型若しくは反射型の光センサ、磁気抵抗素子、コイルなどを用いた磁気センサ、高周波誘導による方法、キャパシタンス変化による方法など様々なセンサが利用可能である。
ステータ2の構成について説明する。図6A〜Cにおいて、ステータフレーム16及び下ハウジング4の中心部には、外部接続線をハウジング6外へ引き出す配線引出部21が嵌め込まれる。この配線引出部21は、ステータフレーム16及び下ハウジング4の中心部のステータ固定部45に連通して設けられた嵌込み孔22に嵌め込まれる。配線引出部21は、フランジ状に張り出した係止部21aがステータフレーム16の底部に形成された凹部16aに嵌め込まれて係止し、フレーム外側へ抜け止めされている。配線引出部21には、ステータコイルに接続する配線を引き出す配線引出孔(貫通孔)23及びロータ1の回転位置を検出するセンサ基板19に接続する配線を引き出すセンサ配線引出孔(貫通孔)24が各々設けられている。配線引出孔23及びセンサ配線引出孔24から引き出された各配線は後述する起動運転回路や同期運転回路を制御する運転回路制御部に電気的に接続される。
図6Bにおいて、ステータフレーム16には、ステータ載置部25が設けられており、該ステータ載置部25にステータコア26が載置される。図1Aにおいて、ステータコア26は、固定ボルト27によりステータ載置部25に固定される。ステータコア26は2スロットを有する積層コアが用いられ、例えばケイ素鋼板よりなる積層コアが好適に用いられる。図1Bにおいて、ステータコア26は、コイル巻線28が巻き回されたボビン29の軸心方向両側へ分割可能に組み付けられている。
図5において、ステータコア26の永久磁石14に対向する磁極作用面26a、26bは、ステータコア26の長手方向の中心線Mに対して磁気的に非対称となるように該中心線Mの両側で形状が異なっている。これにより、起動時にコイル巻線28への通電により磁極コア30a、30bに発生する磁極とロータ磁極(永久磁石14の磁極)との反発及び吸引によりロータ1の起動回転方向が安定する。このように、磁極コア30a、30bの周方向両側へ突設された磁束作用面部26a、26bが、ステータコア26の長手方向の中心線Mに対して磁気的に非対称となるように当該中心線Mの両側で形状が異なっているので、起動時における回転死点を解消することができ、ロータ1が一定方向(本実施例では図1Bの時計回り方向)へ回転し、起動回転方向を安定化することができる。
図5において、ステータコア26は、磁極片30aと磁極片30bとに分割可能に構成されている。磁極片30a、30bの形状は任意であるが、作り易さを考慮するとロータ1の回転中心に対して互いに点対象となる形状にするのが好ましい。磁極片30aと磁極片30bとは、ボビン29の軸心方向両側から挿入される挿入部31a、31bの側面に形成されたテーパー部31c、31dどうしを摺接させてボビン29の軸孔に両側から挿入されて先端部が互いに突き当てられて嵌め込まれる。磁極作用面部26a、26bの一部に凹部32が各々設けられ、ロータ側永久磁石14の磁極部との間により拡大されたギャップ(空隙部)が形成される。凹部32は、ロータ1の回転中心に対して点対称となる位置(180度回転した位置)に形成されている。この凹部32により、磁束作用面部26a、26bから作用する磁束のバランスが中心線Mに対して左右で崩れて一方側に偏り、即ち磁気抵抗が少ない(空隙部の小さい)時計回り方向側の磁束作用面部26a、26bへ磁束が偏って作用するようになっている。また、磁極片30a、30bのボビン29に当接する当接面部33a、33bには、凹部34が2箇所に各々形成されている。当接面部33a、33bに形成される凹部34も、ロータ1の回転中心に対して点対称となる位置(180度回転した位置)に形成される。この凹部34は、後述する結線基板37への外部接続線の通路及び温度ヒューズ39が組み込まれる空間部として用いられる(図1A参照)。磁極片30a、30bには貫通孔30c、30dが各々穿孔されており固定ボルト27が貫通して固定される。固定ボルト27の先端は、図6及び図7に示すステータ載置部25に形成されたねじ孔25aに螺合して固定される。
図4において、ボビン29は筒状の巻心部35を囲む起立壁29aが架橋部29bを介して一体に形成された断面コ字状の溝部41に、予めコイル状に巻き回されたコイル巻線28が嵌め込まれる。ボビン29はコイル巻線28とステータコアとを絶縁する絶縁樹脂材で形成されており、巻心部35にはステータコア26が軸心方向両側から装着される。磁極片30a、30bが巻心部35の両側からテーパー部31c、31dどうしを摺接させて挿入され、先端部が突き当てられるまで嵌め込まれる(図1B参照)。このボビン29の巻心部35には、例えばAコイル及びBコイルが直列に巻回されたコイル巻線28が嵌め込まれる。図4において、28aが巻き始端、28bが中間タップ、28cが巻き終端である。コイル巻線28は、予め図示しない巻線治具にて自動機によりコイル状に巻かれて形成されている。このコイル巻線28がボビン29の巻心部35の周囲に形成された溝部41に各々嵌め込まれている。コイル巻線としては例えば自己融着線(マグネットワイヤ)が好適に用いられる。自己融着線は、予め巻線治具にコイル状に巻き回された状態で加熱することにより融着してコイル状に形成されるか或いは自己融着線にアルコールを塗付しながらコイル状に巻き回して融着剤が溶け出すことによりコイル状に形成される。このようにして形成されたコイル巻線28がボビン29の巻心部35に嵌め込まれ、溝部41に収容されて接着固定される。
予めコイル状に巻かれたコイル巻線28が巻心部35の周囲に形成された溝部41に嵌め込まれているので、ボビン29のたわみなどの変形に影響されないコイル巻線28を形成することができる。従って、コイル巻線の整列巻きが容易に実現できるので占積率が向上し、モータの効率を向上させることができる。
図4において、ボビン29の巻心部35は起立璧29aより外方へ突出して形成されている。巻心部35にはコイル巻線28を覆って、コイル巻線28どうしの端子間接続を行う配線パターンが形成された結線基板37が両側を絶縁フィルム36,38に覆われて嵌め込まれる。図3において、嵌込孔37aが形成された結線基板37の両側が嵌込孔36aが形成された絶縁フィルム36及び嵌込孔38aが形成された絶縁フィルム38に覆われて巻心部35に嵌め込まれる。これらは、例えば磁極片30aがボビン29の巻心部35に嵌め込まれることにより、ステータコア26と起立壁29aとの間で挟持されて組み付けられる(図1B参照)。また、結線基板37には、コイル巻線28の巻き始端28aへ温度ヒューズ39を介して接続する外部接続線40a、中間タップ28bに接続する外部接続線40b、巻き終端28cへ接続する外部接続線40cが各々接続されている(図2C参照)。
図8において、外部接続線40a、40b、40cは、磁極片30aの当接面部33aに設けられた凹部34を通じてハウジング6内を軸方向へ配線される。そして、ステータフレーム16に嵌め込まれた配線接続部21の配線引出孔23を通じて下ハウジング4の外部へ引き出される(図1A参照)。また、図9において、ホール素子18が搭載されたセンサ基板19は、ステータフレーム16の基板固定部42に止めねじ43により固定される。センサ基板19に接続するセンサ引出線44a、44b、44cは、配線接続部21のセンサ配線引出孔24を通じて下ハウジング4の外部へ引き出される(図2A、図7参照)。また、ステータコア26の一部に形成された凹部34を利用して外部接続線40a、40b、40cを軸方向に配線できるので配線長を短くすることができ、ロータ1と干渉するおそれも無くなる。
2極同期モータの組立工程の一例について図10及び図11を参照して説明する。
図10において、先ずロータ1の組立工程の一例について説明する。ロータケース13の中心部にはボス部9が嵌め込まれ、内壁面には円筒状の永久磁石14が嵌め込まれて接着される。また、ボス部9には出力軸7が一体に嵌め込まれる。上ハウジング3の中心部には、予圧バネ12を介して上部ベアリング8が嵌め込まれている、ロータケース13は、ボス部9が上部ベアリング8に回転可能に軸支される。また、ロータケース13の下端側開口部には後述するロータ受け部材10が一体に嵌め込まれる。ロータ受け部材10は、下ハウジング4に嵌め込まれた下部ベアリング11に回転可能に軸支される。
次に図10において、ステータ2の組立工程の一例について説明する。下ハウジング4には下部ベアリング11が嵌め込まれ、下部ベアリング11にはロータ受け部材10が軸支される。この状態で、ステータフレーム16を下ハウジング4の中心部に設けられたステータ固定部45に重ね合わせ、貫通孔4bより止めねじ46を嵌め込んでねじ孔16bに4箇所でねじ止めされる(図6B参照)。ステータフレーム16及びステータ固定部45に設けられた嵌込み孔22には、配線接続部21が嵌め込まれ、基板固定部42には、ホール素子18を搭載したセンサ基板19が止めねじ43にてねじ止めされる。
ボビン29の溝部41には、自己融着線を用いてコイル状に巻き回されたコイル巻線28が巻心部35の周囲に嵌め込まれて接着され、コイル28を覆うように絶縁フィルム36、結線基板37、絶縁フィルム38が巻心部35を挿通させて重ね合わせる。そして、ボビン29の両側からステータコア26を構成する磁極片30a、30bが巻心部35の両側から軸心方向へ先端部どうしが突き当たるまで挿入され、絶縁フィルム36、38間に積層された結線基板37がボビン29に組み付けられる。ステータコア26は、ステータフレーム16のステータ載置部25に載置され、磁極片30a、30bの貫通孔30c、30dに固定ボルト27を各々挿入してねじ孔25aにねじ止めして固定される。
最後に、図11において、ロータケース13を収容した上ハウジング3を下ハウジング4に嵌め込んでステータ2をハウジング6内に収容した後、上ハウジング3の下端側周面部に設けられたスリット孔47よりねじ孔48aが穿孔された挿入片48を挿入し、下ハウジング4側の貫通孔4aより止めねじ49を嵌め込んで挿入片48のねじ孔48aに螺合させることにより、挿入片48を通じて上ハウジング3と下ハウジング4とが引き寄せられて一体化される。
次に、図12において2極同期モータの運転回路の一例について説明する。起動運転回路50は、単相交流電源51の交流電流を整流ブリッジ回路52により全波整流し、ロータ1の回転角度に応じて運転回路制御部(マイクロコンピュータなど)53からの出力(OUT2、3)によりスイッチング手段(トランジスタTr1〜Tr4)を切り換えてAコイルを流れる整流電流の向き(図12の矢印PQ参照)を変えるように通電してロータ1を直流ブラシレスモータとして起動運転する。或いは図示しないがAコイル及びBコイルに交互に流れる整流電流が反転する範囲内でスイッチング制御して非反転側に対して反転側の入力を抑えて起動運転しても良い。尚、起動運転においては、運転切換えスイッチSW1、SW2はOFFになっている。
このように運転回路制御部53による通電制御により、起動運転回路50のAコイルのみに流れる整流電流の電流方向を交互に切換えて起動運転が行われる。そして、運転回路制御部53はホール素子18からの検出信号の入力(IN2)により、ロータ1の回転数が電源周波数検出部54から入力される電源周波数(IN1)と同期する回転数付近に到達したときに、運転回路制御部53からの出力(OUT1)により運転切換えスイッチSW1、SW2をONにして同期運転回路55に切り換えてAコイル及びBコイルによる同期運転に移行するよう制御する(図12の矢印R参照)。
また、同期モータが負荷の変動などにより脱調した場合には、運転回路制御部53は一旦ロータ1の回転数が同期回転移行時より所定値まで落ち込んだ後起動運転に移行し、再度同期運転に移行するよう繰り返し制御を行うようになっている。
また、本実施例に示す2極同期モータは、起動運転から同期運転への移行動作を運転回路制御部53に制御されて行われるため、電源周波数が50Hz、60Hz、100Hz等に変化しても細かい機械設計を変更することなく同一の2極同期モータを用いることができるので、極めて汎用性の高い同期モータを提供することができる。
次に、第2の構成に係る2極同期モータについて図13乃至図18を参照して説明する。第1の構成に係る2極同期モータと同一部材には同一番号を付して説明を援用するものとし、以下では、第1の構成と異なる点を中心に説明する。
図13Aにおいて、ロータ1は、上ハウジング3及び下ハウジング4に出力軸7が回転可能に軸支されている。本実施例では、出力軸7はステータ2を貫通して設けられ、出力軸7の一端に嵌め込まれたボス部9が上部ベアリング8に、他端が下部ベアリング11に回転可能に支持されている。出力軸7は、上ハウジング3側がハウジング外へ突設されているが、下ハウジング4側へ突設されていても良いし、両側へ突設されていても良い。
ステータ2の構成について説明する。図13Bにおいて、ステータコア26は、コイル巻線28が巻き回されるボビン29の軸心方向両側へ当該ボビン29と共に分割可能に組み付けられる。また、各ボビン29の対向面にはコイル巻線29どうしを結線する結線基板37が各々配設される。ステータコア26は、下ハウジング4に形成されたステータ載置部に固定ボルト27によりねじ止め固定される。
図13Bにおいて、ステータコア26は、磁極片30aと磁極片30bとに分割可能に構成されている。磁極片30a、30bの形状は任意であるが、作り易さを考慮するとロータ1の回転中心に対して互いに点対象となる形状にするのが好ましい。磁極片30aと磁極片30bは、各々ボビン29の巻心部35に軸孔に挿入部31a、31bが両側から挿入される。この挿入部31a、31bの先端側には、突き当て凸部31c、31d及び突き当て凹部31e、31fが各々形成されている。この挿入部31aの突き当て凸部31cを挿入部31bの突き当て凹部31fに突き当て、挿入部31bの突き当て凸部31dを挿入部31aの突き当て凹部31eに突き当てて、ステータコア26及びボビン29が一体に組み付けられる。ステータコア26の上面には、連結プレート56が積層されて、固定ボルト27により下ハウジング4へ固定される。
また、出力軸7は、磁極片30a、30bの互いに突き当てられる挿入部31a、31bの先端面に形成される隙間を挿通して設けられる。ステータコア26は、その長手方向の中心線Mに対して磁気的に非対称となるように該中心線の両側で形状が異なっている。即ち、図13Bにおいて、磁極片30a、30bの磁極作用面部26a、26bの一部には凹部32が各々設けられ、ロータ側永久磁石14の磁極部との間により拡大されたギャップ(空隙部)が形成される。凹部32は、ロータ1の回転中心に対して点対称となる位置(180度回転した位置)に形成されている。この凹部32により、磁束作用面部26a、26bから作用する磁束のバランスが中心線Mに対して左右で崩れて一方側に偏り、即ち磁気抵抗が少ない(空隙部の小さい)時計回り方向側の磁束作用面部26a、26bへ磁束が偏って作用するようになっている。
また、磁極片30a、30bと共に各々組み付けられるボビン29は、図4と同様のものでも良いが、本実施例では、巻心部35の対向する端面に凹部35a及び凸部35bが各々形成されており、磁極片30a、30bと共に組み付けられると対向する凹部35aと凸部35bとが凹凸嵌合して位置決めされるようになっている(図18参照)。ボビン29は、筒状の巻心部35を囲む起立壁29aが架橋部29bを介して一体に形成された断面コ字状の溝部41に、予めコイル状に巻き回されたコイル巻線28が嵌め込まれる。予めコイル状に巻かれたコイル巻線28が巻心部35の周囲に形成された溝部41に嵌め込まれているので、ボビン29のたわみなどの変形に影響されないコイル巻線28を形成することができる。
各ボビン29の溝部41を構成する起立壁29aの端面(ボビン29どうしの対向面)に4箇所設けられた突起29c(図18参照)に、図13D、Eに示す結線基板37の嵌合孔37bを位置合わせして嵌め込み熱溶着により一体に取り付けられている。この結線基板37間に形成される空間部に、外部接続線40a、40b、40c、図13Dの基板配線の一部に設けられる温度ヒューズ39、基板間結線40d(図13B参照)が設けられる。外部接続線40a、40b、40cは、軸方向直下へ配設され、下ハウジング4に設けられる配線引出し孔23(図14A参照)を通じてハウジング外へ引き出される。
また、図13Cにおいて、下ハウジング4のステータコア26の載置部分には、ステータコア26を貫通して嵌め込まれる固定ボルト27をねじ嵌合するねじ孔4cが設けられている。また、下ハウジング4には、センサ基板19が止めねじ43にて固定される。図13F、図14Aにおいて、センサ基板19にはホール素子18が搭載されており、センサ基板19に接続するセンサ引出し線44a、44b、44cが基板直下に設けられるセンサ配線引出し孔24を通じてハウジング外へ引き出される。
また、ロータ1の永久磁石14のステータ磁極に対向する内周面側は、図15の実線で示す正弦波着磁がなされている。また、磁極検出面となる軸方向端面は、図15の破線で示す台形波着磁がなされている。これは、永久磁石14からの漏れ磁束をホール素子18でひろって磁極位置を検出する場合、センサの感度にもよるが正弦波着磁されていると磁極切り換わり位置(零クロス点)が判別し難いのに対し、台形波着磁(若しくは擬似正弦波着磁)されていると、磁極切り換わり位置を精度良く検出して通電方向の切り換えが行なわれるので、ロータ1の起動動作が安定する。
次に、第2の構成に係る2極同期モータの組立工程の一例について図16乃至図18を参照して説明する。
図18において、先ずロータ1の組立工程の一例について説明する。ロータケース13の中心部にはボス部9が嵌め込まれ、カシメ固定により一体化されており、内壁面には円筒状の永久磁石14が嵌め込まれて接着される。また、ボス部9には出力軸7が一体に嵌め込まれる。上ハウジング3の中心部には、予圧バネ12を介して上部ベアリング8が嵌め込まれ、ロータ1の軸方向の浮き上がりを抑える。ロータ1は、ボス部9が上部ベアリング8に回転可能に軸支され、下ハウジング4に設けられる下部ベアリング11により出力軸7が回転可能に軸支される。
次に図16乃至図18において、ステータ2の組立工程の一例について説明する。図18において、各ボビン29の溝部41には、自己融着線を用いてコイル状に巻き回されたコイル巻線28が巻心部35の外周に嵌め込まれて溝部41内で接着される。次いで、コイル巻線28を覆うように結線基板37が起立壁29aの端面に重ね合わせて各々溶着される。そして、左右のボビン29のうち一方側(図18では右側)から他方側の巻心部35の軸孔へ連結プレート56を起立した状態で挿入してコア積層方向に向きを変え、巻心部35の両側から挿入される磁極片30a、30bに重ね合わせてステータコア26が組み付けられる(図16A参照)。このステータコア26は、下ハウジング4のステータ載置部に載置され、磁極片30a、30bの貫通孔30c、30dに固定ボルト27を各々挿入してねじ孔4cにねじ止めして一体に固定される(図16A、C参照)。また、下ハウジング4には、ホール素子18を搭載したセンサ基板19(図16B参照)が止めねじ43にてねじ止めされる(図16B、C参照)。また、下ハウジング4には、外部接続線40a、40b、40cやセンサ引出し線44a、44b、44cを引き出す際の引出孔23、24(図17参照)に嵌合する絶縁部品(樹脂材、グロメットなど)57、58が嵌め込まれる。
最後に、図18において、ロータケース13を収容した上ハウジング3を下ハウジング4に嵌め込んでステータ2をハウジング6内に収容した後、上ハウジング3の下端側周面部に設けられたスリット孔47よりねじ孔48aが穿孔された挿入片48を挿入し、下ハウジング4側の貫通孔4aより止めねじ49を嵌め込んで挿入片48のねじ孔48aに螺合させることにより、挿入片48を通じて上ハウジング3と下ハウジング4とが引き寄せられて一体化される。また。上ハウジング3には、モータ取付用ねじ孔3aが3箇所に形成されている(図14B、図17参照)。
本実施例の2極同期モータの運転回路は図12と同様の回路が用いられる。
本実施例の2極同期モータは、第1の構成のボビン29に比べてコイル巻線28の占積率は低下するが、モータの回転周波数によりトルクに見合ったコイルの巻数がほぼ決まるため、巻線径を選ぶことで出力効率を落とさずに性能の良い同期モータを提供することができる。
また、出力軸7は一端側のみならず両端側へ突設して駆動伝達することができ、しかも部品形状を左右で共通化して使用するので生産性が良く、コイル外結線の配線長を短縮できるので、小型で高性能なモータを安価に提供できる。
本発明に係る同期モータは、上述した形態に限定されるものではなく、磁気的に非対称となるように形成される磁極片30a、30bの形状や磁束作用面部26a、26bに形成される凹部32の形状、位置、大きさ、範囲等は可能な範囲で変更可能である。また、モータを駆動制御する運転回路制御部53を当該モータと一体に装備している場合であっても、或いはモータが用いられる電機機器の装置本体に内蔵した制御回路の一部(交流電源、起動運転回路、同期運転回路などを含む)を用いてモータを駆動制御するタイプのいずれであっても良い。
また、結線基板37を含む制御回路には、過負荷時の安全を保証するために、温度ヒューズ39の他に、運転動作中に常時通電する回路部分にバイメタル式の高温検出スイッチを組み込むこともできる。また同期モータは2極に限らず4極、6極、8極などのアウターロータ型モータにも同様に適用できる。
【技術分野】
【0001】
本発明は同期モータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えばOA機器には、冷却用のDC或いはACファンモータが装備されており、特に高回転数を要する機器には2極或いは4極のACファンモータが好適に用いられる。
このACファンモータの構成について説明すると、コイル巻線に接続する整流回路にダイオード、ブラシ、コミュテータを備え、交流電源より供給された交流電流を整流しながらロータを付勢するように回転させて直流モータとして起動運転し、ロータの回転を同期回転付近まで立ち上げ、その時点でコミュテータを機械的に整流回路から脱除して交流電源による同期運転に切り換える同期モータがある(特許文献1、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平9−84316号公報
【特許文献2】特願平9−135559号公報
【0003】
また、運転回路制御部(マイクロコンピュータなど)による通電制御により、起動運転回路のAコイル及びBコイルに流れる整流電流の電流方向を交互に切換えて起動運転し、或いは起動運転回路のコイル巻線に交互に流れる整流電流が反転する範囲内でスイッチング制御して非反転側に対して反転側の入力を抑えて起動運転し、光センサにより検出されたロータの回転数が同期回転数付近に到達したときに、運転切換えスイッチを同期運転回路に切り換えて同期運転に移行するよう制御する同期モータが提案されている(特許文献3及び特許文献4参照)。これらの同期モータにおいて、ステータコア(積層コア)の溝部には絶縁樹脂製のボビンが嵌め込まれており、該ボビンにはコイル巻線としてのコイル巻線が巻き回されている。このコイル巻線は、自動機などを用いてモータの回転方向に合わせて所定の巻き方向に所定の巻数でボビンに巻き付けられている。
【特許文献3】特開2000−125580号公報
【特許文献4】特開2000−166287号公報
【発明の開示】
【0004】
上述した同期モータにおいて、小型のステータコアにボビンを装着し、該ボビンにコイル巻線を巻き回す一連の作業を自動化するのは難しく、モータの組立工数が多く生産性が低いという課題があった。
また、コイル巻線をボビンに巻き回す場合、ボビンの撓みや外形歪み等によりコイル巻線を整列巻きすることが困難であった。これによりコイル巻線の占積率が低下してモータの効率を上げることが難しくなる。
また、ロータの起動回転方向を安定させるためステータコアに周方向へ補助コアを設けるとすれば、ボビンの装着スペースが減少しコイル巻線を巻き回す空間部が減少する。
更に、ロータに囲まれた狭い空間内でコイル外結線を行う必要があり、コイル外結線がロータに干渉することなく配線するのが難しい。
本発明の第1の目的は、ステータコアにボビンを介して巻き回されるコイル巻線の占積率を向上させると共にモータの組立工程を簡略化して量産性向上を図ること、第2の目的は、ロータの起動回転方向を安定させること、第3の目的はコイル外結線の配線長を短縮して限られたスペースを有効利用した同期モータを提供することにある。
上記目的を達成するため本発明は次の構成を有する。
第1の構成は、ハウジング内に出力軸を中心に回転可能に軸支されたロータと、該ロータに囲まれた空間部に配置されるステータとを備えた同期モータにおいて、ステータコアは、コイル巻線が巻き回されるボビンの軸心方向両側へ分割可能に組み付けられていることを特徴とする。
また、前記ステータコアのロータに対向する磁極作用面部は、ステータコアの長手方向の中心線に対して磁気的に非対称となるように該中心線の両側で形状が異なっていることを特徴とする。
また、前記ボビンには予め巻線治具にてコイル状に巻かれたコイル巻線が溝部に嵌め込まれることを特徴とする。
また、前記ボビンは筒状の巻心部を囲む起立壁が架橋部を介して一体に形成された断面コ字状の溝部に、予めコイル状に巻き回されたコイル巻線が嵌め込まれ、分割されたステータコアが前記巻心部へ軸心方向両側から挿入され、先端部が突き当てられて嵌め込まれることを特徴とする。
また、前記巻心部は起立璧より外方へ突出して形成されており、前記巻心部にコイル巻線どうしの端子間接続を行う配線パターンが形成された結線基板が両側を絶縁フィルムに覆われて嵌め込まれ、ステータコアと起立壁との間で挟持されて組み付けられることを特徴とする。
第2の構成は、ハウジング内に出力軸を中心に回転可能に軸支されたロータと、該ロータに囲まれた空間部に配置されるステータとを備えた同期モータにおいて、ステータコアは、コイル巻線が巻き回されるボビンの軸心方向両側へボビンと共に分割可能に組み付けられ、各ボビンの対向面にコイル巻線どうしを結線する結線基板が配設されることを特徴とする。
また、前記ステータコアのロータに対向する磁極作用面部は、ステータコアの長手方向の中心線に対して磁気的に非対称となるように該中心線の両側で形状が異なっていることを特徴とする。
また、前記各ボビンには予め巻線治具にてコイル状に巻かれたコイル巻線が溝部に各々嵌め込まれることを特徴とする。
また、各ボビンの軸心を通じて両側から組み付けられたステータコアどうしを連結して固定する連結プレートが設けられていることを特徴とする。
また、ロータマグネットのステータ磁極に対向する内周面が正弦波着磁されており、磁極検出面は台形波着磁されていることを特徴とする。
第1の構成の同期モータを用いると、ステータコアは、モータコイルが巻き回されたボビンの軸心方向両側へ分割可能に組み付けられているので、ロータに囲まれた限られた空間内でボビンを分割せずにステータコアに装着できる。従って、コイル巻線を巻き回す十分なスペースを確保することができる。
また、ロータに対向するステータコアの磁極作用面は、ステータコアの長手方向の中心線に対して磁気的に非対称となるように該中心線の両側で形状が異なっているので、ロータの起動回転方向を安定化することができる。
また、予め巻線治具にてコイル状に巻かれたコイル巻線が溝部に嵌め込まれるので、ボビンのたわみなどの変形に影響されず整列巻きされたコイル巻線を形成することができる。従って、コイル巻線の占積率を向上させ、モータの出力効率を向上させることができる。
また、ボビンは筒状の巻心部を囲む起立壁が架橋部を介して一体に形成された断面コ字状の溝部に、予めコイル状に巻き回されたコイル巻線が嵌め込まれるので、モータの組立工程を簡略化でき、モータの組立自動化を図ることにより生産性を向上させることができる。
更には、コイル巻線どうしの端子間接続を行う配線パターンが形成された結線基板がボビンの巻心部に嵌め込まれているので、ハウジング内の開いたスペースを利用して結線基板により配線接続を行うことができ、コイル外結線の配線長を短縮してロータとの干渉を防ぐことができる。
また、第2の構成の同期モータを用いれば、ステータコアは、コイル巻線が巻き回されるボビンの軸心方向両側へボビンと共に分割可能に組み付けられるので、出力軸がステータコアを貫通して一端側及び両端側のいずれにも駆動伝達することができるので、利便性が高い。また、各ボビンの対向面にコイル巻線どうしを結線する結線基板を配設することで、コイル外結線の配線長を更に短縮することができ、モータの小型化を図ることができる。
また、分割された各ボビンは予めコイル状に巻き回されたコイル巻線が溝部へ各々嵌め込まれたまま結線基板とステータコアと共に組み付けられ、左右で部品形状を共通化した部品を使用するので生産性が良く、モータの組立工程を簡略化でき、モータの組立自動化を図ることにより生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】図1Aは、第1の構成に係る2極同期モータのステータコアの長手方向断面説明図及び図1Bは、上ハウジングより見た内視断面図である。
【図2】図2Aは、2極同期モータを結線基板側から見た断面説明図、図2Bは、上視図、図2Cは、結線基板の説明図及び図2Dは、ステータフレームと下ハウジングとの組み付け状態を示す部分断面図である。
【図3】図3Aは、結線基板の斜視図、3Bは、絶縁フィルムの斜視図である。
【図4】ボビン及びコイル巻線の斜視図である。
【図5】ステータコアの斜視図である。
【図6】図6Aは、配線接続部、図6Bは、センサ基板、図6Cは、ステータフレーム及び下ハウジングの斜視図である。
【図7】ステータフレームを下ハウジングに組み付けた状態を示す上視図である。
【図8】ボビンにステータコアを組み付けた状態の斜視図である。
【図9】ステータをステータフレームに組み付けた状態の斜視図である。
【図10】第1の構成に係る2極同期モータの分解斜視図である。
【図11】上ハウジングと下ハウジングとの組み付け構造を示す分解斜視図である。
【図12】2極同期モータの運転回路の説明図である。
【図13】図13Aは、第2の構成に係る2極同期モータのステータコアの長手方向断面説明図、図13Bは、内視図、図13Cは、下ハウジングの上視図、図13Dは、結線基板の説明図及び図13Eは、センサ基板の下ハウジングへの組み付け状態を示す部分断面図である。
【図14】図14Aは、2極同期モータのステータコアの短手方向断面説明図及び図14Bは、上視図である。
【図15】永久磁石の着磁波形を示すグラフ図である。
【図16】図16A−図16Cは、下ハウジングへ組み付けられるステータ及びセンサ基板の分解斜視図である。
【図17】上ハウジングと下ハウジングとの組み付け構造を示す分解斜視図である。
【図18】第2の構成に係る2極同期モータの分解斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、発明を実施するための最良の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
以下では、アウターロータ型の同期モータの一例として、2極同期モータについて説明する。先ず、図1乃至図9を参照して第1の構成に係る2極同期モータの全体構成について説明する。
図1Aにおいて、回転子(ロータ)1及び固定子(ステータ)2は上ハウジング3及び下ハウジング4が上下に重ね合わされ、止めねじ49によりねじ止めされて形成されるハウジング6内に収容されている。上ハウジング3には出力軸7が嵌め込まれている。出力軸7は、上ハウジング3に嵌め込まれた上部ベアリング8によりボス部9が回転可能に軸支されている。
ロータ1には、ロータ受け部材10が一体に嵌め込まれ、該ロータ受け部材10が下ハウジング4に嵌め込まれた下部ベアリング11により回転可能に支持されている。上部ベアリング8及び下部ベアリング11としては、ステータコイルに形成される磁界の乱れを考慮して、非磁性の材料、例えばステンレスやアルミ合金などが好適に用いられる。また、上部ベアリング8の軸方向上端と上ハウジング3との間には予圧バネ12(図2B参照)が介装されており、上部ベアリング8を軸方向下側に向けて付勢してロータ1の浮き上がりを抑えている。
ロータ1の構成について説明する。図1A及び図2Aにおいて、ボス部9はロータケース13にかしめられており、ロータケース13はボス部9を介して出力軸7に一体的に連繋している。ロータケース13は下端側が開放されたカップ状に形成されており、内周面には円筒状の永久磁石14が固着されている。永久磁石14は周方向に略180度ずつN・S交互に2極に着磁されている。この永久磁石14としては、例えば、フェライト,ゴムマグネット,プラスチックマグネット,サマリュウムコバルト、希土類のマグネット、ネオジ鉄ボロンなどを原材料として安価に製造することができる。ロータ1は通電によりステータ2側に形成される磁極との反発により出力軸7を中心に起動回転するようになっている。
図1A及び図2Aにおいて、ロータケース13に囲まれた空間部にはステータ2が設けられている。下ハウジング4にはステータフレーム16が止めねじ46により一体に支持されている(図2D参照)。図2Aにおいて、ステータフレーム16には、ロータ1の回転数や磁極位置を検出するホール素子18を備えたセンサ基板19が止めねじ43により固定されている。ホール素子18はロータ1の回転数及び磁極位置を検出し、回転数に応じたパルスを発生させ、磁極位置に応じて後述する運転回路制御部(マイクロコンピュータなど)により所定のタイミングで起動運転回路のスイッチング制御が行われる。尚、ホール素子18に代えて光透過型若しくは反射型の光センサ、磁気抵抗素子、コイルなどを用いた磁気センサ、高周波誘導による方法、キャパシタンス変化による方法など様々なセンサが利用可能である。
ステータ2の構成について説明する。図6A〜Cにおいて、ステータフレーム16及び下ハウジング4の中心部には、外部接続線をハウジング6外へ引き出す配線引出部21が嵌め込まれる。この配線引出部21は、ステータフレーム16及び下ハウジング4の中心部のステータ固定部45に連通して設けられた嵌込み孔22に嵌め込まれる。配線引出部21は、フランジ状に張り出した係止部21aがステータフレーム16の底部に形成された凹部16aに嵌め込まれて係止し、フレーム外側へ抜け止めされている。配線引出部21には、ステータコイルに接続する配線を引き出す配線引出孔(貫通孔)23及びロータ1の回転位置を検出するセンサ基板19に接続する配線を引き出すセンサ配線引出孔(貫通孔)24が各々設けられている。配線引出孔23及びセンサ配線引出孔24から引き出された各配線は後述する起動運転回路や同期運転回路を制御する運転回路制御部に電気的に接続される。
図6Bにおいて、ステータフレーム16には、ステータ載置部25が設けられており、該ステータ載置部25にステータコア26が載置される。図1Aにおいて、ステータコア26は、固定ボルト27によりステータ載置部25に固定される。ステータコア26は2スロットを有する積層コアが用いられ、例えばケイ素鋼板よりなる積層コアが好適に用いられる。図1Bにおいて、ステータコア26は、コイル巻線28が巻き回されたボビン29の軸心方向両側へ分割可能に組み付けられている。
図5において、ステータコア26の永久磁石14に対向する磁極作用面26a、26bは、ステータコア26の長手方向の中心線Mに対して磁気的に非対称となるように該中心線Mの両側で形状が異なっている。これにより、起動時にコイル巻線28への通電により磁極コア30a、30bに発生する磁極とロータ磁極(永久磁石14の磁極)との反発及び吸引によりロータ1の起動回転方向が安定する。このように、磁極コア30a、30bの周方向両側へ突設された磁束作用面部26a、26bが、ステータコア26の長手方向の中心線Mに対して磁気的に非対称となるように当該中心線Mの両側で形状が異なっているので、起動時における回転死点を解消することができ、ロータ1が一定方向(本実施例では図1Bの時計回り方向)へ回転し、起動回転方向を安定化することができる。
図5において、ステータコア26は、磁極片30aと磁極片30bとに分割可能に構成されている。磁極片30a、30bの形状は任意であるが、作り易さを考慮するとロータ1の回転中心に対して互いに点対象となる形状にするのが好ましい。磁極片30aと磁極片30bとは、ボビン29の軸心方向両側から挿入される挿入部31a、31bの側面に形成されたテーパー部31c、31dどうしを摺接させてボビン29の軸孔に両側から挿入されて先端部が互いに突き当てられて嵌め込まれる。磁極作用面部26a、26bの一部に凹部32が各々設けられ、ロータ側永久磁石14の磁極部との間により拡大されたギャップ(空隙部)が形成される。凹部32は、ロータ1の回転中心に対して点対称となる位置(180度回転した位置)に形成されている。この凹部32により、磁束作用面部26a、26bから作用する磁束のバランスが中心線Mに対して左右で崩れて一方側に偏り、即ち磁気抵抗が少ない(空隙部の小さい)時計回り方向側の磁束作用面部26a、26bへ磁束が偏って作用するようになっている。また、磁極片30a、30bのボビン29に当接する当接面部33a、33bには、凹部34が2箇所に各々形成されている。当接面部33a、33bに形成される凹部34も、ロータ1の回転中心に対して点対称となる位置(180度回転した位置)に形成される。この凹部34は、後述する結線基板37への外部接続線の通路及び温度ヒューズ39が組み込まれる空間部として用いられる(図1A参照)。磁極片30a、30bには貫通孔30c、30dが各々穿孔されており固定ボルト27が貫通して固定される。固定ボルト27の先端は、図6及び図7に示すステータ載置部25に形成されたねじ孔25aに螺合して固定される。
図4において、ボビン29は筒状の巻心部35を囲む起立壁29aが架橋部29bを介して一体に形成された断面コ字状の溝部41に、予めコイル状に巻き回されたコイル巻線28が嵌め込まれる。ボビン29はコイル巻線28とステータコアとを絶縁する絶縁樹脂材で形成されており、巻心部35にはステータコア26が軸心方向両側から装着される。磁極片30a、30bが巻心部35の両側からテーパー部31c、31dどうしを摺接させて挿入され、先端部が突き当てられるまで嵌め込まれる(図1B参照)。このボビン29の巻心部35には、例えばAコイル及びBコイルが直列に巻回されたコイル巻線28が嵌め込まれる。図4において、28aが巻き始端、28bが中間タップ、28cが巻き終端である。コイル巻線28は、予め図示しない巻線治具にて自動機によりコイル状に巻かれて形成されている。このコイル巻線28がボビン29の巻心部35の周囲に形成された溝部41に各々嵌め込まれている。コイル巻線としては例えば自己融着線(マグネットワイヤ)が好適に用いられる。自己融着線は、予め巻線治具にコイル状に巻き回された状態で加熱することにより融着してコイル状に形成されるか或いは自己融着線にアルコールを塗付しながらコイル状に巻き回して融着剤が溶け出すことによりコイル状に形成される。このようにして形成されたコイル巻線28がボビン29の巻心部35に嵌め込まれ、溝部41に収容されて接着固定される。
予めコイル状に巻かれたコイル巻線28が巻心部35の周囲に形成された溝部41に嵌め込まれているので、ボビン29のたわみなどの変形に影響されないコイル巻線28を形成することができる。従って、コイル巻線の整列巻きが容易に実現できるので占積率が向上し、モータの効率を向上させることができる。
図4において、ボビン29の巻心部35は起立璧29aより外方へ突出して形成されている。巻心部35にはコイル巻線28を覆って、コイル巻線28どうしの端子間接続を行う配線パターンが形成された結線基板37が両側を絶縁フィルム36,38に覆われて嵌め込まれる。図3において、嵌込孔37aが形成された結線基板37の両側が嵌込孔36aが形成された絶縁フィルム36及び嵌込孔38aが形成された絶縁フィルム38に覆われて巻心部35に嵌め込まれる。これらは、例えば磁極片30aがボビン29の巻心部35に嵌め込まれることにより、ステータコア26と起立壁29aとの間で挟持されて組み付けられる(図1B参照)。また、結線基板37には、コイル巻線28の巻き始端28aへ温度ヒューズ39を介して接続する外部接続線40a、中間タップ28bに接続する外部接続線40b、巻き終端28cへ接続する外部接続線40cが各々接続されている(図2C参照)。
図8において、外部接続線40a、40b、40cは、磁極片30aの当接面部33aに設けられた凹部34を通じてハウジング6内を軸方向へ配線される。そして、ステータフレーム16に嵌め込まれた配線接続部21の配線引出孔23を通じて下ハウジング4の外部へ引き出される(図1A参照)。また、図9において、ホール素子18が搭載されたセンサ基板19は、ステータフレーム16の基板固定部42に止めねじ43により固定される。センサ基板19に接続するセンサ引出線44a、44b、44cは、配線接続部21のセンサ配線引出孔24を通じて下ハウジング4の外部へ引き出される(図2A、図7参照)。また、ステータコア26の一部に形成された凹部34を利用して外部接続線40a、40b、40cを軸方向に配線できるので配線長を短くすることができ、ロータ1と干渉するおそれも無くなる。
2極同期モータの組立工程の一例について図10及び図11を参照して説明する。
図10において、先ずロータ1の組立工程の一例について説明する。ロータケース13の中心部にはボス部9が嵌め込まれ、内壁面には円筒状の永久磁石14が嵌め込まれて接着される。また、ボス部9には出力軸7が一体に嵌め込まれる。上ハウジング3の中心部には、予圧バネ12を介して上部ベアリング8が嵌め込まれている、ロータケース13は、ボス部9が上部ベアリング8に回転可能に軸支される。また、ロータケース13の下端側開口部には後述するロータ受け部材10が一体に嵌め込まれる。ロータ受け部材10は、下ハウジング4に嵌め込まれた下部ベアリング11に回転可能に軸支される。
次に図10において、ステータ2の組立工程の一例について説明する。下ハウジング4には下部ベアリング11が嵌め込まれ、下部ベアリング11にはロータ受け部材10が軸支される。この状態で、ステータフレーム16を下ハウジング4の中心部に設けられたステータ固定部45に重ね合わせ、貫通孔4bより止めねじ46を嵌め込んでねじ孔16bに4箇所でねじ止めされる(図6B参照)。ステータフレーム16及びステータ固定部45に設けられた嵌込み孔22には、配線接続部21が嵌め込まれ、基板固定部42には、ホール素子18を搭載したセンサ基板19が止めねじ43にてねじ止めされる。
ボビン29の溝部41には、自己融着線を用いてコイル状に巻き回されたコイル巻線28が巻心部35の周囲に嵌め込まれて接着され、コイル28を覆うように絶縁フィルム36、結線基板37、絶縁フィルム38が巻心部35を挿通させて重ね合わせる。そして、ボビン29の両側からステータコア26を構成する磁極片30a、30bが巻心部35の両側から軸心方向へ先端部どうしが突き当たるまで挿入され、絶縁フィルム36、38間に積層された結線基板37がボビン29に組み付けられる。ステータコア26は、ステータフレーム16のステータ載置部25に載置され、磁極片30a、30bの貫通孔30c、30dに固定ボルト27を各々挿入してねじ孔25aにねじ止めして固定される。
最後に、図11において、ロータケース13を収容した上ハウジング3を下ハウジング4に嵌め込んでステータ2をハウジング6内に収容した後、上ハウジング3の下端側周面部に設けられたスリット孔47よりねじ孔48aが穿孔された挿入片48を挿入し、下ハウジング4側の貫通孔4aより止めねじ49を嵌め込んで挿入片48のねじ孔48aに螺合させることにより、挿入片48を通じて上ハウジング3と下ハウジング4とが引き寄せられて一体化される。
次に、図12において2極同期モータの運転回路の一例について説明する。起動運転回路50は、単相交流電源51の交流電流を整流ブリッジ回路52により全波整流し、ロータ1の回転角度に応じて運転回路制御部(マイクロコンピュータなど)53からの出力(OUT2、3)によりスイッチング手段(トランジスタTr1〜Tr4)を切り換えてAコイルを流れる整流電流の向き(図12の矢印PQ参照)を変えるように通電してロータ1を直流ブラシレスモータとして起動運転する。或いは図示しないがAコイル及びBコイルに交互に流れる整流電流が反転する範囲内でスイッチング制御して非反転側に対して反転側の入力を抑えて起動運転しても良い。尚、起動運転においては、運転切換えスイッチSW1、SW2はOFFになっている。
このように運転回路制御部53による通電制御により、起動運転回路50のAコイルのみに流れる整流電流の電流方向を交互に切換えて起動運転が行われる。そして、運転回路制御部53はホール素子18からの検出信号の入力(IN2)により、ロータ1の回転数が電源周波数検出部54から入力される電源周波数(IN1)と同期する回転数付近に到達したときに、運転回路制御部53からの出力(OUT1)により運転切換えスイッチSW1、SW2をONにして同期運転回路55に切り換えてAコイル及びBコイルによる同期運転に移行するよう制御する(図12の矢印R参照)。
また、同期モータが負荷の変動などにより脱調した場合には、運転回路制御部53は一旦ロータ1の回転数が同期回転移行時より所定値まで落ち込んだ後起動運転に移行し、再度同期運転に移行するよう繰り返し制御を行うようになっている。
また、本実施例に示す2極同期モータは、起動運転から同期運転への移行動作を運転回路制御部53に制御されて行われるため、電源周波数が50Hz、60Hz、100Hz等に変化しても細かい機械設計を変更することなく同一の2極同期モータを用いることができるので、極めて汎用性の高い同期モータを提供することができる。
次に、第2の構成に係る2極同期モータについて図13乃至図18を参照して説明する。第1の構成に係る2極同期モータと同一部材には同一番号を付して説明を援用するものとし、以下では、第1の構成と異なる点を中心に説明する。
図13Aにおいて、ロータ1は、上ハウジング3及び下ハウジング4に出力軸7が回転可能に軸支されている。本実施例では、出力軸7はステータ2を貫通して設けられ、出力軸7の一端に嵌め込まれたボス部9が上部ベアリング8に、他端が下部ベアリング11に回転可能に支持されている。出力軸7は、上ハウジング3側がハウジング外へ突設されているが、下ハウジング4側へ突設されていても良いし、両側へ突設されていても良い。
ステータ2の構成について説明する。図13Bにおいて、ステータコア26は、コイル巻線28が巻き回されるボビン29の軸心方向両側へ当該ボビン29と共に分割可能に組み付けられる。また、各ボビン29の対向面にはコイル巻線29どうしを結線する結線基板37が各々配設される。ステータコア26は、下ハウジング4に形成されたステータ載置部に固定ボルト27によりねじ止め固定される。
図13Bにおいて、ステータコア26は、磁極片30aと磁極片30bとに分割可能に構成されている。磁極片30a、30bの形状は任意であるが、作り易さを考慮するとロータ1の回転中心に対して互いに点対象となる形状にするのが好ましい。磁極片30aと磁極片30bは、各々ボビン29の巻心部35に軸孔に挿入部31a、31bが両側から挿入される。この挿入部31a、31bの先端側には、突き当て凸部31c、31d及び突き当て凹部31e、31fが各々形成されている。この挿入部31aの突き当て凸部31cを挿入部31bの突き当て凹部31fに突き当て、挿入部31bの突き当て凸部31dを挿入部31aの突き当て凹部31eに突き当てて、ステータコア26及びボビン29が一体に組み付けられる。ステータコア26の上面には、連結プレート56が積層されて、固定ボルト27により下ハウジング4へ固定される。
また、出力軸7は、磁極片30a、30bの互いに突き当てられる挿入部31a、31bの先端面に形成される隙間を挿通して設けられる。ステータコア26は、その長手方向の中心線Mに対して磁気的に非対称となるように該中心線の両側で形状が異なっている。即ち、図13Bにおいて、磁極片30a、30bの磁極作用面部26a、26bの一部には凹部32が各々設けられ、ロータ側永久磁石14の磁極部との間により拡大されたギャップ(空隙部)が形成される。凹部32は、ロータ1の回転中心に対して点対称となる位置(180度回転した位置)に形成されている。この凹部32により、磁束作用面部26a、26bから作用する磁束のバランスが中心線Mに対して左右で崩れて一方側に偏り、即ち磁気抵抗が少ない(空隙部の小さい)時計回り方向側の磁束作用面部26a、26bへ磁束が偏って作用するようになっている。
また、磁極片30a、30bと共に各々組み付けられるボビン29は、図4と同様のものでも良いが、本実施例では、巻心部35の対向する端面に凹部35a及び凸部35bが各々形成されており、磁極片30a、30bと共に組み付けられると対向する凹部35aと凸部35bとが凹凸嵌合して位置決めされるようになっている(図18参照)。ボビン29は、筒状の巻心部35を囲む起立壁29aが架橋部29bを介して一体に形成された断面コ字状の溝部41に、予めコイル状に巻き回されたコイル巻線28が嵌め込まれる。予めコイル状に巻かれたコイル巻線28が巻心部35の周囲に形成された溝部41に嵌め込まれているので、ボビン29のたわみなどの変形に影響されないコイル巻線28を形成することができる。
各ボビン29の溝部41を構成する起立壁29aの端面(ボビン29どうしの対向面)に4箇所設けられた突起29c(図18参照)に、図13D、Eに示す結線基板37の嵌合孔37bを位置合わせして嵌め込み熱溶着により一体に取り付けられている。この結線基板37間に形成される空間部に、外部接続線40a、40b、40c、図13Dの基板配線の一部に設けられる温度ヒューズ39、基板間結線40d(図13B参照)が設けられる。外部接続線40a、40b、40cは、軸方向直下へ配設され、下ハウジング4に設けられる配線引出し孔23(図14A参照)を通じてハウジング外へ引き出される。
また、図13Cにおいて、下ハウジング4のステータコア26の載置部分には、ステータコア26を貫通して嵌め込まれる固定ボルト27をねじ嵌合するねじ孔4cが設けられている。また、下ハウジング4には、センサ基板19が止めねじ43にて固定される。図13F、図14Aにおいて、センサ基板19にはホール素子18が搭載されており、センサ基板19に接続するセンサ引出し線44a、44b、44cが基板直下に設けられるセンサ配線引出し孔24を通じてハウジング外へ引き出される。
また、ロータ1の永久磁石14のステータ磁極に対向する内周面側は、図15の実線で示す正弦波着磁がなされている。また、磁極検出面となる軸方向端面は、図15の破線で示す台形波着磁がなされている。これは、永久磁石14からの漏れ磁束をホール素子18でひろって磁極位置を検出する場合、センサの感度にもよるが正弦波着磁されていると磁極切り換わり位置(零クロス点)が判別し難いのに対し、台形波着磁(若しくは擬似正弦波着磁)されていると、磁極切り換わり位置を精度良く検出して通電方向の切り換えが行なわれるので、ロータ1の起動動作が安定する。
次に、第2の構成に係る2極同期モータの組立工程の一例について図16乃至図18を参照して説明する。
図18において、先ずロータ1の組立工程の一例について説明する。ロータケース13の中心部にはボス部9が嵌め込まれ、カシメ固定により一体化されており、内壁面には円筒状の永久磁石14が嵌め込まれて接着される。また、ボス部9には出力軸7が一体に嵌め込まれる。上ハウジング3の中心部には、予圧バネ12を介して上部ベアリング8が嵌め込まれ、ロータ1の軸方向の浮き上がりを抑える。ロータ1は、ボス部9が上部ベアリング8に回転可能に軸支され、下ハウジング4に設けられる下部ベアリング11により出力軸7が回転可能に軸支される。
次に図16乃至図18において、ステータ2の組立工程の一例について説明する。図18において、各ボビン29の溝部41には、自己融着線を用いてコイル状に巻き回されたコイル巻線28が巻心部35の外周に嵌め込まれて溝部41内で接着される。次いで、コイル巻線28を覆うように結線基板37が起立壁29aの端面に重ね合わせて各々溶着される。そして、左右のボビン29のうち一方側(図18では右側)から他方側の巻心部35の軸孔へ連結プレート56を起立した状態で挿入してコア積層方向に向きを変え、巻心部35の両側から挿入される磁極片30a、30bに重ね合わせてステータコア26が組み付けられる(図16A参照)。このステータコア26は、下ハウジング4のステータ載置部に載置され、磁極片30a、30bの貫通孔30c、30dに固定ボルト27を各々挿入してねじ孔4cにねじ止めして一体に固定される(図16A、C参照)。また、下ハウジング4には、ホール素子18を搭載したセンサ基板19(図16B参照)が止めねじ43にてねじ止めされる(図16B、C参照)。また、下ハウジング4には、外部接続線40a、40b、40cやセンサ引出し線44a、44b、44cを引き出す際の引出孔23、24(図17参照)に嵌合する絶縁部品(樹脂材、グロメットなど)57、58が嵌め込まれる。
最後に、図18において、ロータケース13を収容した上ハウジング3を下ハウジング4に嵌め込んでステータ2をハウジング6内に収容した後、上ハウジング3の下端側周面部に設けられたスリット孔47よりねじ孔48aが穿孔された挿入片48を挿入し、下ハウジング4側の貫通孔4aより止めねじ49を嵌め込んで挿入片48のねじ孔48aに螺合させることにより、挿入片48を通じて上ハウジング3と下ハウジング4とが引き寄せられて一体化される。また。上ハウジング3には、モータ取付用ねじ孔3aが3箇所に形成されている(図14B、図17参照)。
本実施例の2極同期モータの運転回路は図12と同様の回路が用いられる。
本実施例の2極同期モータは、第1の構成のボビン29に比べてコイル巻線28の占積率は低下するが、モータの回転周波数によりトルクに見合ったコイルの巻数がほぼ決まるため、巻線径を選ぶことで出力効率を落とさずに性能の良い同期モータを提供することができる。
また、出力軸7は一端側のみならず両端側へ突設して駆動伝達することができ、しかも部品形状を左右で共通化して使用するので生産性が良く、コイル外結線の配線長を短縮できるので、小型で高性能なモータを安価に提供できる。
本発明に係る同期モータは、上述した形態に限定されるものではなく、磁気的に非対称となるように形成される磁極片30a、30bの形状や磁束作用面部26a、26bに形成される凹部32の形状、位置、大きさ、範囲等は可能な範囲で変更可能である。また、モータを駆動制御する運転回路制御部53を当該モータと一体に装備している場合であっても、或いはモータが用いられる電機機器の装置本体に内蔵した制御回路の一部(交流電源、起動運転回路、同期運転回路などを含む)を用いてモータを駆動制御するタイプのいずれであっても良い。
また、結線基板37を含む制御回路には、過負荷時の安全を保証するために、温度ヒューズ39の他に、運転動作中に常時通電する回路部分にバイメタル式の高温検出スイッチを組み込むこともできる。また同期モータは2極に限らず4極、6極、8極などのアウターロータ型モータにも同様に適用できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に出力軸を中心に回転可能に軸支されたロータと、該ロータに囲まれた空間部に配置されるステータとを備えた同期モータにおいて、
ステータコアは、コイル巻線が巻き回されるボビンの軸心方向両側へ分割可能に組み付けられていることを特徴とする同期モータ。
【請求項2】
前記ステータコアのロータに対向する磁極作用面部は、ステータコアの長手方向の中心線に対して磁気的に非対称となるように該中心線の両側で形状が異なっていることを特徴とする請求項1記載の同期モータ。
【請求項3】
前記ボビンには予め巻線治具にてコイル状に巻かれたコイル巻線が溝部に嵌め込まれることを特徴とする請求項1記載の同期モータ。
【請求項4】
前記ボビンは筒状の巻心部を囲む起立壁が架橋部を介して一体に形成された断面コ字状の溝部に、予めコイル状に巻き回されたコイル巻線が嵌め込まれ、分割されたステータコアが前記巻心部へ軸心方向両側から挿入され、先端部が突き当てられて嵌め込まれることを特徴とする請求項1記載の同期モータ。
【請求項5】
前記巻心部は起立璧より外方へ突出して形成されており、前記巻心部にコイル巻線どうしの端子間接続を行う配線パターンが形成された結線基板が両側を絶縁フィルムに覆われて嵌め込まれ、ステータコアと起立壁との間で挟持されて組み付けられることを特徴とする請求項4記載の同期モータ。
【請求項6】
ハウジング内に出力軸を中心に回転可能に軸支されたロータと、該ロータに囲まれた空間部に配置されるステータとを備えた同期モータにおいて、
ステータコアは、コイル巻線が巻き回されるボビンの軸心方向両側へボビンと共に分割可能に組み付けられ、各ボビンの対向面にコイル巻線どうしを結線する結線基板が配設されることを特徴とする同期モータ。
【請求項7】
前記ステータコアのロータに対向する磁極作用面部は、ステータコアの長手方向の中心線に対して磁気的に非対称となるように該中心線の両側で形状が異なっていることを特徴とする請求項6記載の同期モータ。
【請求項8】
前記各ボビンには予め巻線治具にてコイル状に巻かれたコイル巻線が溝部に各々嵌め込まれることを特徴とする請求項6記載の同期モータ。
【請求項9】
各ボビンの軸心を通じて両側から組み付けられたステータコアどうしを連結して固定する連結プレートが設けられていることを特徴とする請求項6記載の同期モータ。
【請求項10】
ロータマグネットのステータ磁極に対向する内周面が正弦波着磁されており、磁極検出面は台形波着磁されていることを特徴とする請求項6記載の同期モータ。
【請求項1】
ハウジング内に出力軸を中心に回転可能に軸支されたロータと、該ロータに囲まれた空間部に配置されるステータとを備えた同期モータにおいて、
ステータコアは、コイル巻線が巻き回されるボビンの軸心方向両側へ分割可能に組み付けられていることを特徴とする同期モータ。
【請求項2】
前記ステータコアのロータに対向する磁極作用面部は、ステータコアの長手方向の中心線に対して磁気的に非対称となるように該中心線の両側で形状が異なっていることを特徴とする請求項1記載の同期モータ。
【請求項3】
前記ボビンには予め巻線治具にてコイル状に巻かれたコイル巻線が溝部に嵌め込まれることを特徴とする請求項1記載の同期モータ。
【請求項4】
前記ボビンは筒状の巻心部を囲む起立壁が架橋部を介して一体に形成された断面コ字状の溝部に、予めコイル状に巻き回されたコイル巻線が嵌め込まれ、分割されたステータコアが前記巻心部へ軸心方向両側から挿入され、先端部が突き当てられて嵌め込まれることを特徴とする請求項1記載の同期モータ。
【請求項5】
前記巻心部は起立璧より外方へ突出して形成されており、前記巻心部にコイル巻線どうしの端子間接続を行う配線パターンが形成された結線基板が両側を絶縁フィルムに覆われて嵌め込まれ、ステータコアと起立壁との間で挟持されて組み付けられることを特徴とする請求項4記載の同期モータ。
【請求項6】
ハウジング内に出力軸を中心に回転可能に軸支されたロータと、該ロータに囲まれた空間部に配置されるステータとを備えた同期モータにおいて、
ステータコアは、コイル巻線が巻き回されるボビンの軸心方向両側へボビンと共に分割可能に組み付けられ、各ボビンの対向面にコイル巻線どうしを結線する結線基板が配設されることを特徴とする同期モータ。
【請求項7】
前記ステータコアのロータに対向する磁極作用面部は、ステータコアの長手方向の中心線に対して磁気的に非対称となるように該中心線の両側で形状が異なっていることを特徴とする請求項6記載の同期モータ。
【請求項8】
前記各ボビンには予め巻線治具にてコイル状に巻かれたコイル巻線が溝部に各々嵌め込まれることを特徴とする請求項6記載の同期モータ。
【請求項9】
各ボビンの軸心を通じて両側から組み付けられたステータコアどうしを連結して固定する連結プレートが設けられていることを特徴とする請求項6記載の同期モータ。
【請求項10】
ロータマグネットのステータ磁極に対向する内周面が正弦波着磁されており、磁極検出面は台形波着磁されていることを特徴とする請求項6記載の同期モータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【国際公開番号】WO2005/018071
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【発行日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513140(P2005−513140)
【国際出願番号】PCT/JP2004/007501
【国際出願日】平成16年5月31日(2004.5.31)
【出願人】(393015520)
【Fターム(参考)】
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【発行日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【国際出願番号】PCT/JP2004/007501
【国際出願日】平成16年5月31日(2004.5.31)
【出願人】(393015520)
【Fターム(参考)】
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