説明

回転角度およびトルク検出装置およびその製造方法

【課題】使用時に高温状態となっても検出精度を劣化させない回転角度およびトルク検出装置を提供することを目的としている。
【解決手段】トーションバー2の両端には入力軸4と出力軸6が連結された同一剛体である軸部8と、この軸部8の回転角度を検出する回転角度検出部と、軸部8のトルクを検出するトルク検出部とを備え、トルク検出部はトーションバー2を挟むように軸部8に連結した第1、第2の回転体10、12と、第1、第2の回転体10、12に保持させ、周面方向に極性の異なる磁極を交互に配置した第1、第2のリング磁石部14、16を有し、第1、第2のリング磁石部14、16の線膨張係数よりも小さく第1、第2の回転体10、12の線膨張係数よりも大きい線膨張係数を有する緩衝材15を介して、第1、第2のリング磁石部14、16を第1、第2の回転体10、12に保持させた構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のパワーステアリング等に用いる回転角度およびトルク検出装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図8において、従来の回転角度およびトルク検出装置は、回転角度を検出したい回転軸(図示せず)に、係合バネ60を介して2つの歯車部59を取り付けている。この歯車部59は、外周面に異なる磁極を交互に配置したコード板61を保持する歯車部62と噛み合っている。検出する回転軸の回転にしたがって、コード板61に設けられた磁極が回転移動するので、この磁極の変位をコード板61の外周面に対向して設けた磁気検知素子63でカウントすることにより、回転軸の回転角度を検出することができる。
【0003】
また、トーションバーを介して連結された2本の軸にこの機構を取り付けることにより、2本の軸間にトルクが作用し、軸間のねじれが発生した時、回転軸の回転角度を比較することによってトルクを検出することができる。
【0004】
上記の回転角度およびトルク検出装置では、コード板61に磁極を着磁する磁石形成工程と、歯車部62を歯車部59に噛み合うように取り付ける取付工程とを備えている。一般に、コード板61の磁極は、着磁前のコード板61が取り付けられた歯車部62を着磁機にセットして、コード板61の周面方向に異なる磁極が所定間隔に交互に配置されるように着磁して形成する。そして、2つの歯車部62を対向するように回転軸に取り付けている。
【0005】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開平11−194007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の回転角度およびトルク検出装置は、ハンドル側のステアリングコラムに配置され、ハンドルの回転を伝達する軸部に取り付けられる。ステアリングコラムは車両のエンジンルーム側に配置され使用時には高温状態となるため耐熱性が要求される。
【0007】
しかし、回転角度およびトルク検出装置を構成する個々の部品に耐熱性を持たせても、例えば、磁極を配置したコード板61と、これを保持する歯車部62とは互いに異なる材質から形成し熱膨張係数が異なるので、コード板61と歯車部62との界面が剥離する恐れがあり検出精度を劣化させるという問題点を有していた。
【0008】
本発明は上記問題点を解決するもので、使用時に高温状態となっても検出精度を劣化させない回転角度およびトルク検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、特に、トルク検出部はトーションバーを挟むように軸部に連結した第1、第2の回転体と、前記第1、第2の回転体の周面方向に極性の異なる磁極を交互に配置するとともに前記第1、第2の回転体に保持させた第1、第2のリング磁石と、前記第1、第2のリング磁石の磁極に対向させた第1、第2の磁気検知素子とを有し、前記第1、第2のリング磁石の線膨張係数よりも小さく前記第1、第2の回転体の線膨張係数よりも大きい線膨張係数を有する緩衝材を介して、前記第1、第2のリング磁石を前記第1、第2の回転体に保持させた構成である。
【発明の効果】
【0010】
上記構成により、使用時に高温状態となっても、第1、第2のリング磁石と第1、第2の回転体の熱膨張は緩衝材により分散されるので互いの剥離が抑制され、検出精度の劣化を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本発明の一実施の形態における回転角度およびトルク検出装置の断面図、図2は同検出装置の緩衝材を介して第1のリング磁石部を保持した第1の回転体の斜視図、図3は図2のA−A断面図、図4は同検出装置の第1の回転体の斜視図、図5は同検出装置の緩衝材の斜視図、図6は同検出装置の緩衝材を保持した第1の回転体の斜視図、図7は同検出装置の第1のリング磁石部の斜視図である。
【0012】
図1〜図3において、本発明の一実施の形態における回転角度およびトルク検出装置は、トーションバー2の両端に入力軸4と出力軸6が連結された同一剛体である軸部8と、この軸部8の回転角度を検出する回転角度検出部と、軸部8のトルクを検出するトルク検出部とを備えている。
【0013】
トルク検出部はトーションバー2を挟むように軸部8にかしめることによって連結した第1の回転体10および第2の回転体12と、第1、第2の回転体10、12の周面方向に極性の異なる磁極を交互に配置するとともに第1、第2の回転体10、12に保持させた第1のリング磁石部14および第2のリング磁石部16と、第1、第2のリング磁石部14、16の磁極に対向させて第1の磁気検知素子18および第2の磁気検知素子20とを配置している。
【0014】
また、第1、第2のリング磁石部14、16の線膨張係数よりも小さく第1、第2の回転体10、12の線膨張係数よりも大きい線膨張係数を有する緩衝材15を介して、第1、第2のリング磁石部14、16を第1、第2の回転体10、12に保持させている。この第1、第2の回転体10、12は非磁性のステンレス系材料からなり、緩衝材15はポリフェニレンサルファイド系材料からなり、第1、第2のリング磁石部14、16はポリアミド系磁石材料からなる。
【0015】
この第1の磁気検知素子18および第2の磁気検知素子20により磁界の変化を検知する。
【0016】
回転角度検出部は第1、第2の回転体10、12のいずれか一方と同期する同期回転体を設けてこの回転角度を検出すればよい。
【0017】
上記の回転角度およびトルク検出装置の製造工程においては以下の工程を有する。
【0018】
第1に、図4から図6に示すように、第1の回転体10に緩衝材15を射出成形している。さらに、図7に示す金属リング体17を緩衝材15に射出成形して、緩衝材15を介して金属リング体17を第1の回転体10に保持させている。同様にして、金属リング体17を第2の回転体12にも保持させる(保持工程)。
【0019】
上記の緩衝材15は金属リング体17の線膨張係数よりも小さく第1、第2の回転体10、12の線膨張係数よりも大きい線膨張係数を有するものであり、第1、第2の回転体10、12を非磁性のステンレス系材料から形成し、緩衝材15をポリフェニレンサルファイド系材料から形成し、第1、第2のリング磁石部14、16をポリアミド系磁石材料から形成してなる。
【0020】
第2に、第1、第2の回転体10、12を着磁機に装着して、金属リング体17の周面方向に極性の異なる磁極を交互に配置した同一の着磁パターンを2つの金属リング体17に着磁して第1、第2のリング磁石部14、16を形成する(磁石形成工程)。
【0021】
第3に、第1、第2のリング磁石部14、16を保持した第1、第2の回転体10、12を互いに対向させて軸部8にかしめたり連結用ピンを用いたりして連結する(連結工程)。
【0022】
上記構成により、同検出装置を使用する際に高温状態となっても、第1、第2のリング磁石部14、16と第1、第2の回転体10、12の熱膨張は緩衝材15により分散されるので互いの剥離が抑制され、検出精度の劣化を抑制できる。
【0023】
特に、第1、第2の回転体10、12は非磁性のステンレス系材料からなり、緩衝材15はポリフェニレンサルファイド系材料からなり、第1、第2のリング磁石部14、16をポリアミド系磁石材料とすることによって、互いの剥離を非常に抑制して上記効果を確実に得ることができる。軸部8に第1、第2の回転体10、12をかしめて連結する際もステンレス系材料を用いているので的確にかしめることができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明にかかる回転角度およびトルク検出装置は、使用時に高温状態となっても、検出精度の劣化を抑制でき、各種の車両のパワーステアリング等で用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施の形態における回転角度およびトルク検出装置の断面図
【図2】同検出装置の緩衝材を介して第1のリング磁石部を保持した第1の回転体の斜視図
【図3】図2のA−A断面図
【図4】同検出装置の第1の回転体の斜視図
【図5】同検出装置の緩衝材の斜視図
【図6】同検出装置の緩衝材を保持した第1の回転体の斜視図
【図7】同検出装置の第1のリング磁石部の斜視図
【図8】従来の回転角およびトルク検出装置の断面図
【符号の説明】
【0026】
2 トーションバー
4 入力軸
6 出力軸
8 軸部
10 第1の回転体
12 第2の回転体
14 第1のリング磁石部
16 第2のリング磁石部
17 金属リング体
18 第1の磁気検知素子
20 第2の磁気検知素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トーションバーを有する軸部と、前記軸部の回転角度を検出する回転角度検出部と、前記軸部のトルクを検出するトルク検出部とを備え、
前記トルク検出部は前記トーションバーを挟むように前記軸部に連結した第1、第2の回転体と、前記第1、第2の回転体の周面方向に極性の異なる磁極を交互に配置するとともに前記第1、第2の回転体に保持させた第1、第2のリング磁石と、前記第1、第2のリング磁石の磁極に対向させた第1、第2の磁気検知素子とを有し、
前記第1、第2のリング磁石の線膨張係数よりも小さく前記第1、第2の回転体の線膨張係数よりも大きい線膨張係数を有する緩衝材を介して、前記第1、第2のリング磁石を前記第1、第2の回転体に保持させた回転角度およびトルク検出装置。
【請求項2】
前記回転体は非磁性のステンレス系材料からなり、前記緩衝材はポリフェニレンサルファイド系材料からなり、前記金属リング体はポリアミド系磁石材料からなる請求項1記載の回転角度およびトルク検出装置。
【請求項3】
2つの金属リング体を2つの回転体に各々保持させる保持工程と、前記金属リング体の周面方向に極性の異なる磁極を交互に配置した着磁パターンを2つの前記金属リング体に各々着磁してリング磁石を形成する磁石形成工程と、前記リング磁石を保持した2つの前記回転体を軸部に連結する連結工程とを備え、
前記保持工程では、前記金属リング体の線膨張係数よりも小さく前記回転体の線膨張係数よりも大きい線膨張係数を有する緩衝材を前記回転体に射出成形するとともに、前記金属リング体を前記緩衝材に射出成形して、前記緩衝材を介して前記金属リング体を前記回転体に保持させる回転角度およびトルク検出装置の製造方法。
【請求項4】
前記回転体は非磁性のステンレス系材料からなり、前記緩衝材はポリフェニレンサルファイド系材料からなり、前記金属リング体はポリアミド系磁石材料からなる請求項3記載の回転角度およびトルク検出装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1、第2回転体は前記軸部にかしめて連結する請求項3記載の回転角度およびトルク検出装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−279003(P2007−279003A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−109509(P2006−109509)
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】