圧電振動素子、圧電振動子、圧電発振器及び電子デバイス
【課題】屈曲振動等の輪郭振動モードとの結合がなく、且つCIの小さなメサ構造の圧電振動素子を得る。
【解決手段】圧電振動素子100は、圧電基板10と、両主面に夫々対向配置された各励振電極20と、引出電極22と、パッド24と、を備えた圧電振動素子である。圧電基板10は、中央に位置する励振部14と、その周縁に設けられた薄肉の周辺部12と、を有し、励振部14の対向する2つの側面は夫々無段差状の平面であり、励振部14の他の対向する2つの側面は夫々厚み方向に段差部を有している。各パッド24は、圧電基板10の各角隅部と対応する位置に、圧電基板10を支持部材に固定する支持領域26を有し、励振電極20は、励振部14と周辺部12の少なくとも一部との振動領域に跨って形成されている。
【解決手段】圧電振動素子100は、圧電基板10と、両主面に夫々対向配置された各励振電極20と、引出電極22と、パッド24と、を備えた圧電振動素子である。圧電基板10は、中央に位置する励振部14と、その周縁に設けられた薄肉の周辺部12と、を有し、励振部14の対向する2つの側面は夫々無段差状の平面であり、励振部14の他の対向する2つの側面は夫々厚み方向に段差部を有している。各パッド24は、圧電基板10の各角隅部と対応する位置に、圧電基板10を支持部材に固定する支持領域26を有し、励振電極20は、励振部14と周辺部12の少なくとも一部との振動領域に跨って形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚み振動モードの圧電振動子に関し、特に所謂メサ型構造を有する圧電振動素子、圧電振動子、圧電発振器及び電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ATカット水晶振動子は、その振動モードが厚みすべり振動であり、小型化、高周波数化に適し、且つ周波数温度特性が優れた三次曲線を呈するので、電子機器等の多方面で使用されている。
特許文献1には、ベベル構造やコンベックス構造と同等に、エネルギー閉じ込め効果を発揮する、所謂、メサ型構造の圧電振動子が開示され、外形及びメサ型構造が共に円形である圧電基板も開示されている。
特許文献2には、圧電基板の外形及びメサ型構造が共に円形の圧電基板に加え、外形が短冊状のメサ型構造の圧電基板が開示されている。
【0003】
電子機器が小型化されるにつれ、辺比(厚さに対する長辺又は短辺の比)の小さな振動子が要求されるようになってきた。辺比の小さな振動子は主振動に輪郭振動が結合し易く、主振動の電気的特性を劣化させる。
特許文献3には、ATカット水晶振動子をメサ型構造で形成し、メサ部と薄肉部との境界部において、境界部の側壁が主面に対して90°であると、励振電極から延出された引き出し電極(リード電極)が断線する虞があるという問題に対処するために成されたものであって、境界部の側壁を傾斜、又は曲面とすることによりリード電極の断線が防止できると開示されている。また、振動部分の表面の粗さを平均粗さで0.2ミクロンと小さな表面粗さとすることにより、CI値が低下し、副振動が抑圧されると開示されている。
また、特許文献4には、ATカット水晶振動子をメサ型構造で形成し、メサ部の側壁を、63°、35°と傾斜させて、厚みすべり振動と屈曲振動との結合を抑圧した水晶振動子が開示されている。
【0004】
特許文献5には、水晶振動素子の周波数をf、水晶基板の長辺(X軸)の長さをX、メサ部(振動部)の厚みをt、メサ部の長辺の長さをMx、励振電極の長辺の長さをEx、水晶基板の長辺方向に生じる屈曲振動の波長をλとするとき、以下の4つの式
λ/2=(1.332/f)−0.0024 (1)
(Mx−Ex)/2=λ/2 (2)
Mx/2=(n/2+1/4)λ (但しnは整数) (3)
X≧20t (4)
を満たすように、各パラメータf、X、Mx、Exを設定することにより、厚みすべり振動と屈曲振動との結合を抑制できると開示されている。
また、特許文献6には、屈曲変位成分が小さくなるのは、振動部の端縁と励振電極の端縁部分の位置を屈曲変位の腹の位置と一致するように設定した場合であり、これにより不要モードである屈曲振動を抑圧することができると開示されている。
【0005】
特許文献7には、周波数可変感度を高くするとともに、不要な振動を抑圧したメサ型振動素子が提案されている。一般的に振動素子は、励振電極が大きくなるのに伴って等価直列容量C1も大きくなり、周波数可変感度を高くできる。励振電極を大きくしたメサ型振動素子は発振が容易であり、負荷容量に対する周波数変化の幅を広くできると開示されている。
特許文献8には、圧電基板の長辺がX軸方向、短辺がZ’軸方向であり、且つメサ部の長辺がX軸方向、短辺(長さMz)がZ’軸方向であるメサ型振動素子の、メサ部の一方の短辺の両端部を面取りし、その長さをM1とするとき、Ml≧Mz/4の関係を満たすことにより、屈曲振動を抑圧できると開示されている。
【0006】
特許文献9には、メサ型構造のATカット水晶振動子が開示されている。X軸方向に沿うメサ部の両端部の位置をA、Dとし、メサ部上に形成された励振電極の位置をB、Cとしたときに、A<B<C<Dの関係を満たすようにする。各端縁A、B、C、Dの位置と、屈曲振動の腹の位置とを一致させる。Aの位置にある屈曲振動の腹の振幅と、Bの位置にある屈曲振動の腹の振幅とが反対方向である。また、Bの位置にある屈曲振動の腹の振幅と、Cの位置にある屈曲振動の腹の振幅とが反対方向である。更に、Cの位置にある屈曲振動の腹の振幅と、Dの位置にある屈曲振動の腹の振幅とが反対方向である。つまり、屈曲振動の波長をλとすると、隣り合う端縁では、屈曲振動の腹がλ/2の奇数倍ずれていることになる。メサ部の長さをML、X軸方向に生じる屈曲振動の波長をλとすると、MLとλは、ML=(n−1/2)λの関係を満たすことによりメサ型振動素子に生じる屈曲振動を抑圧でき、CIを低減できると開示されている。
メサ型構造の圧電振動素子の容量比γ(等価直列容量C1に対する静電容量C0の比C0/C1)は、べべル構造、又はコンベックス構造圧電振動素子のそれと比べて大きくなる(悪化する)という問題があった。特許文献10には、励振電極をメサ部の段差部より圧電基板の端面に向かって広げた圧電振動素子が開示されている。メサ部の段差部より外側に拡大した部分の励振電極の面積を可変することにより、圧電振動素子の容量比を任意に設定することが可能となる。その結果、べべル構造、又はコンベックス構造の圧電振動素子と同等の性能を有するメサ構造の圧電振動素子が実現できると開示されている。
【0007】
特許文献11には、基本波振動の容量比γを大きくし、負荷容量CLの変化による発振周波数の変動を抑える圧電振動素子が開示されている。等価直列容量C1の飽和点近傍に励振電極の面積を設定して容量比γを小さくするのが一般的である。しかし、飽和点近傍以上に励振電極の面積を広げることにより、等価直列容量C1の変化は極めて小さいのに対し、静電容量C0は面積に比例して大きくなる。そのため容量比γを大きくできると開示されている。
特許文献12には、細帯状(ストリップ状)圧電基板の中央部の表裏面に、励振電極が設けられ、この励振電極から互いに反対側の端部に向けてリード電極が延びる圧電振動子が開示されている。リード電極の形成さない面の基板は夫々研削され疑似メサ型構造とする。この圧電振動子は励振電極下に振動エネルギーを閉じ込めることができるため、CIが小さく、またリード電極の断線が生じにくいと開示されている。
【0008】
特許文献13には、メサ型構造の圧電基板の短辺の長さをZとし、メサ部(振動部)の厚みをtとし、メサ部の短辺方向の電極寸法をMzとしたときに、
15.68≦Z/t≦15.84、かつ、0.77≦Mz/Z≦0.82
の関係を満たすように諸パラメータを設定することにより、不要モードを抑圧できると開示されている。
特許文献14には、メサ型圧電振動素子が開示されている。水晶基板の長辺の長さをx、段差部の堀量(メサ部の高さ)をMd、振動部の板厚をtとし、板厚tに対する段差部の堀量Mdの比をy(百分率)とすると、yが、
y=−1.32×(x/t)+42.87
y≦30
の関係を満足し、且つ水晶基板の振動部の板厚tに対する長辺の長さxの比、即ち辺比x/tが30以下とすることにより、圧電振動素子の電気的特性の悪化を招くこと無く、CIを低下させることができると開示されている。
特許文献15には、メサ型構造の圧電基板のメサ部の高さ(段差部の堀量)yは、圧電基板の長辺の寸法をx、メサ部(振動部)の厚み寸法をtとした時に、板厚tを基準として、次式
y=−0.89×(x/t)+34±3(%)
を満たすように辺比x/tを設定することにより、不要モードを抑圧できると開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公昭58−045205号公報
【特許文献2】特開昭58−047316号公報
【特許文献3】実開平06−052230号公報
【特許文献4】特開2001−230655公報
【特許文献5】特許第4341583号
【特許文献6】特許第4341671号
【特許文献7】特開2008−306594公報
【特許文献8】特開2009−065270公報
【特許文献9】特開2009−130543公報
【特許文献10】特許第4506135号
【特許文献11】特許第4558433号
【特許文献12】特開2001−230654公報
【特許文献13】特開2010−062723公報
【特許文献14】特許第4572807号
【特許文献15】特開2008−263387公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、最近では圧電振動子に対して、容器サイズを1.6mm×1.2mm程度に小型化することが客先から求められている。このような小型の容器に搭載するメサ型構造のATカット水晶振動素子のX辺比(厚さtに対する長辺Xの比X/t)は、例えば1100(μm)/65(μm)=17以下となる。このような小型圧電振動子に先行文献に開示されているような手段を適用しても、客先から要求されるCI(クリスタルインピーダンス、等価抵抗R1)が得られないという問題があった。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、X軸方向を長辺とした厚みすべりモードの圧電振動素子であって、X辺比の小さな圧電振動素子のCIの低減を可能としたメサ型圧電振動素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0012】
[適用例1]本発明に係る圧電振動素子は、圧電基板と、前記圧電基板の両主面に夫々対向配置された各励振電極と、前記各励振電極から該圧電基板の一方の端部に向かって延びる引出電極と、前記各引出電極と電気的に接続され前記圧電基板の2つの角隅部に夫々形成されたパッドと、を備えた圧電振動素子であって、前記圧電基板は、中央に位置する励振部と、前記励振部の厚みより薄肉で前記励振部の周縁に設けられた周辺部と、を有し、前記励振部の対向する2つの側面は夫々無段差状の平面であり、前記励振部の他の対向する2つの側面は夫々厚み方向に段差部を有し、前記圧電基板の各角隅部の前記各パッドと対応する位置に、前記圧電基板を支持部材に固定する支持領域を有し、前記励振電極は、前記励振部と前記周辺部の少なくとも一部の振動領域とに跨って形成されていることを特徴とする圧電振動素子である。
【0013】
以上のように、一方向に沿って厚み方向に段差部を有するメサ型構造の励振部と、励振部の周縁に連接された周辺部の一部とに励振電極を設けた圧電振動素子を構成する。振動エネルギーは主として励振部に閉じ込められるが、周辺部の一部に設けた励振電極により、圧電振動素子が励振された際に生じる電荷が、効率的に集められる。その結果、CIの小さい圧電振動素子が得られと共に、屈曲等の不要モードの少ない圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0014】
[適用例2]また本発明に係る圧電振動素子は、圧電基板と、前記圧電基板の両主面に夫々対向配置された各励振電極と、前記各励振電極から該圧電基板の一方の端部に向かって延びる引出電極と、前記各引出電極と電気的に接続され前記圧電基板の2つの角隅部に夫々形成されたパッドと、を備えた圧電振動素子であって、前記圧電基板は、中央に位置する励振部と、前記励振部の厚みより薄肉で前記励振部の周縁に設けられた周辺部と、を有し、前記励振部の全ての側面は夫々厚み方向に段差部を有し、前記圧電基板の各角隅部の前記各パッドと対応する位置に、前記圧電基板を支持部材に固定する支持領域を有し、前記励振電極は、前記励振部と前記周辺部の少なくとも一部の振動領域とに跨って形成されていることを特徴とする圧電振動素子である。
【0015】
以上のように、全ての側面が段差部を有するメサ型構造の励振部と励振部の周縁に連接された周辺部の一部とに励振電極を設けた圧電振動素子を構成する。振動エネルギーは、主として励振部に振動エネルギーが閉じ込められるが、周辺部の一部に設けた励振電極により、圧電振動素子が励振された際に生じる電荷が、効率的に集められる。その結果、CIの小さい圧電振動素子が得られと共に、屈曲等の不要モードの少ない圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0016】
[適用例3]また本発明に係る圧電振動素子は、前記圧電基板が水晶の結晶軸である、電気軸としてのX軸と、機械軸としてのY軸と、光学軸としてのZ軸と、からなる直交座標系の前記X軸を中心として、前記Z軸を前記Y軸の−Y方向へ傾けた軸をZ’軸とし、前記Y軸を前記Z軸の+Z方向へ傾けた軸をY’軸とし、前記X軸と前記Z’軸に平行な面で構成され、前記Y’軸に平行な方向を厚みとする水晶基板であり、前記水晶基板は、前記X軸に平行な辺を長辺とし前記Z’軸に平行な辺を短辺とし且つその中央に位置する励振部と、前記励振部より薄肉で前記励振部の周縁に設けられた周辺部と、を有し、前記励振部の前記X軸と平行な2つの側面は夫々無段差状の平面であり、前記励振部の前記Z’軸と平行な他の2つの側面は夫々厚み方向に段差部を有していることを特徴とする適用例1に記載の圧電振動素子である。
【0017】
以上のように、Z’軸と平行な2つの側面の厚み方向に段差部を有する励振部と、励振部の周縁に連接された周辺部の一部とに励振電極を設けた圧電振動素子を構成する。振動エネルギーは主として励振部に閉じ込められるが、周辺部の一部に設けた励振電極により、圧電振動素子が励振された際に生じる電荷が、励振電極により効率的に集められる。その結果、CIの小さい圧電振動素子が得られと共に、屈曲等の不要モードの少ない圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0018】
[適用例4]また本発明に係る圧電振動素子は、前記圧電基板が水晶の結晶軸である、電気軸としてのX軸と、機械軸としてのY軸と、光学軸としてのZ軸と、からなる直交座標系の前記X軸を中心として、前記Z軸を前記Y軸の−Y方向へ傾けた軸をZ’軸とし、前記Y軸を前記Z軸の+Z方向へ傾けた軸をY’軸とし、前記X軸と前記Z’軸に平行な面で構成され、前記Y’軸に平行な方向を厚みとする水晶基板であり、前記水晶基板は、前記X軸に平行な辺を長辺とし前記Z’軸に平行な辺を短辺とし且つその中央に位置する励振部と、前記励振部より薄肉で前記励振部の周縁に設けられた周辺部と、を有し、前記励振部の前記X軸と平行な2つの側面、及び前記Z’軸と平行な2つの側面は夫々厚み方向に段差部を有していることを特徴とする適用例2に記載の圧電振動素子である。
【0019】
以上のように、X軸と平行な2つの側面、及び前記Z’軸と平行な2つの側面に夫々厚み方向に段差部を有する励振部と励振部の周縁に連接された周辺部の一部とに励振電極を設けた圧電振動素子を構成する。振動エネルギーは主として励振部に閉じ込められるが、周辺部の一部に設けた励振電極により、圧電振動素子が励振された際に生じる電荷が、励振電極により効率的に集められる。その結果、CIの小さい圧電振動素子が得られと共に、屈曲等の不要モードの少ない圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0020】
[適用例5]また本発明に係る圧電振動素子は、前記圧電基板の前記X軸に平行な方向の寸法をXとし、前記励振部の厚みをtとし、前記支持領域の端部と対向する前記励振電極の端部との距離をΔXとするとき、14≦X/t≦18、且つ、0.04mm≦ΔX≦0.06mmの関係を満たすことを特徴とする適用例3又は4に記載の圧電振動素子である。
【0021】
以上のように、圧電振動素子を構成すれば、CIの低減された圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0022】
[適用例6]また本発明に係る圧電振動素子は、前記圧電基板の前記Z’軸に平行な方向の寸法をZとし、前記励振部の短辺の寸法をMzとし、前記励振部の厚みをtとするとき、8≦Z/t≦11、かつ、0.6≦Mz/Z≦0.8の関係を満たすことを特徴とする適用例3又は4に記載の圧電振動素子である。
【0023】
以上のように、圧電振動素子を構成すれば、CIの低減が図れると共に、屈曲振動等の不要振動との結合のない圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0024】
[適用例7]本発明に係る圧電振動子は、適用例1乃至6のうち何れか一項に記載の圧電振動素子と、前記圧電振動素子を収容するパッケージと、を備えたことを特徴とする圧電振動子である。
【0025】
以上のように、圧電振動子を構成すれば、本発明に係る圧電振動素子を備えているので、CIの小さな圧電振動子が得られるという効果がある。
【0026】
[適用例8]本発明に係る圧電発振器は、適用例1乃至6のうち何れか一項に記載の圧電振動素子と、該圧電振動素子を駆動する発振回路と、絶縁基板と、を備えたことを特徴とする圧電発振器である。
【0027】
以上のように、絶縁基板上に本発明に係るCIの小さな圧電振動素子と、発振回路とが搭載され、且つ絶縁基板上の空間が密封された圧電発振器が構成されるので、小型化されると共に、発振電流が小さくでき、低消費電力化が図られるという効果がある。
【0028】
[適用例9]また本発明に係る圧電発振器は、適用例7に記載の圧電振動子と、該圧電振動子を駆動する発振回路と、を備えたことを特徴とする圧電発振器である。
【0029】
以上のように圧電発振器を構成すれば、本発明に係るCIの小さな圧電振動子を備えており、発振周波数が安定であると共に発振回路の電流を小さくできるので、圧電発振器の消費電力を低減することができるという効果がある。
【0030】
[適用例10]また本発明に係る圧電発振器は、前記発振回路はICに搭載されていることを特徴とする適用例8又は9に記載の圧電発振器である。
【0031】
以上のように圧電発振器を構成すれば、発振回路がIC化されていることにより、圧電発振器が小型化されると共に、信頼性も向上するという効果がある。
【0032】
[適用例11]本発明に係る電子デバイスは、適用例1乃至6のうち何れか一項に記載の圧電振動素子と、少なくとも一つ以上の電子部品と、をパッケージに備えたことを特徴とする電子デバイスである。
【0033】
以上のように、本発明の圧電振動素子と電子部品とで電子デバイスを構成するので、CIの小さな圧電振動素子を有する電子デバイスが構成でき、多方面の用途に利用できるという効果がある。
【0034】
[適用例12]また本発明に係る電子デバイスは、適用例11に記載の電子デバイスにおいて、前記電子部品が、サーミスタ、コンデンサ、リアクタンス素子、半導体素子のうちのいずれかであることを特徴とする電子デバイスである。
【0035】
以上のように、サーミスタ、コンデンサ、リアクタンス素子、半導体素子のうち少なくとも一つの電子部品と、圧電振動素子とを用いて電子デバイスを構成るので、電子機器を構成するに当たって有用なデバイスとなるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係るメサ型構造の圧電振動素子の構成を示した概略図であって、(a)は平面図であり、(b)は(a)のP1−P1断面図。
【図2】図1(a)のQ1−Q1断面図。
【図3】水晶の結晶軸X、Y、ZをX軸の回りにθ回転してできた新直交軸X、Y’、Z’軸とATカット水晶基板との関係を示す図。
【図4】メサ型構造の圧電振動素子の構成を示す平面上に、振動変位エネルギーの等しい点を結んでできた等力線を重ね書きした図。
【図5】メサ型構造の圧電振動素子の、電極面積SとCIとの関係を示す図。
【図6】メサ型構造の圧電振動素子の平面図に励振電極の寸法Le、支持領域−励振電極間の寸法ΔX等を記入した図。
【図7】メサ型構造の圧電振動素子の、支持領域−励振電極間の寸法ΔXとCIとの関係を示す図。
【図8】ATカット水晶基板の表裏面に耐蝕膜を形成した断面図。
【図9】(a)乃至(c)は本実施形態の圧電振動素子の製造方法を模式的に示す断面図。
【図10】(a)乃至(c)は本実施形態の圧電振動素子の製造方法を模式的に示す断面図。
【図11】他の実施形態のメサ型構造の圧電振動素子の概略図であって、(a)は平面図であり、(b)は(a)のP1−P1断面図。
【図12】図11(a)のQ1−Q1断面図。
【図13】他の実施形態のメサ型構造の圧電振動素子の概略平面図。
【図14】(a)は図13のP1−P1断面図、(b)は図13のQ1−Q1断面図。
【図15】他の実施形態のメサ型構造の圧電振動素子の概略図であって、(a)は平面図であり、(b)は(a)のP1−P1断面図。
【図16】図15(a)のQ1−Q1断面図。
【図17】本実施形態に係る圧電振動子を模式的に示した断面図。
【図18】(a)は電子デバイスの実施形態を示す断面図であり、(b)は変形例の実施形態を示す断面図。
【図19】圧電発振器の実施形態を示す断面図。
【図20】(a)は他の実施形態の圧電発振器の断面図であり、(b)は他の実施形態の圧電発振器の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明を図面に示した実施形態に基づいて詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例を含む。なお、以下の実施形態で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0038】
1.圧電振動素子
まず、本実施形態に係る圧電振動素子について、図面を参照しながら説明する。図1及び図2は、本発明の一実施形態に係る圧電振動素子100の構成を示す概略図である。図1(a)は、圧電振動素子100の平面図であり、図1(b)は、同図(a)のP1−P1断面図ある。図2は、図1(a)のQ1−Q1断面図である。
本発明の圧電振動素子100は、中央に位置する多段メサ構造の励振部14、及び励振部14の周縁に連設形成された薄肉の周辺部12を有する圧電基板10と、励振部14の両主面上の全域、及び励振部14に連接する周辺部12の少なくとも一部に夫々対向配置された導体膜から成る励振電極20と、各励振電極20から圧電基板10の一方の端縁に向かって夫々延びる引出電極22と、各引出電極22の端部であり且つ圧電基板10の2つの角隅部に夫々形成されたパッド24と、各パッド24を形成した圧電基板の各角隅部(パッドの領域内)に設けられて圧電基板を支持部材に固定する支持領域26と、を概略備えている。
励振部14は圧電基板の中央部を矩形状に両主面方向へ夫々突出させることにより形成した厚肉部であり、周辺部12は励振部14の外周側面の少なくとも一部の厚み方向中間部から外径方向へ張出し形成されている。
【0039】
圧電基板10は、その中央に位置し主たる振動領域となる励振部14と、励振部14より薄肉で励振部14の周縁に沿って形成された、従たる振動領域となる周辺部12と、を有している。つまり、振動領域は後述するように、励振部14と、周辺部12の一部に跨っている。
平面形状がほぼ矩形である励振部14の対向する2つの側面(長手方向に沿った両側面)は夫々無段差状の1つの平面であり、励振部14の他の対向する2つの側面(短辺方向に沿った2つの側面)は夫々厚み方向に段差部を有した構造をしている。各励振電極20に交番電圧を印加すると、圧電振動素子100は固有の振動周波数で励振される。
【0040】
水晶等の圧電材料は三方晶系に属し、図3に示すように互いに直交する結晶軸X、Y、Zを有する。X軸、Y軸、Z軸は、夫々電気軸、機械軸、光学軸と呼称される。ATカット水晶基板101は、XZ面をX軸の回りに角度θだけ回転させた平面に沿って水晶原石から切り出された平板である。ATカット水晶基板101の場合は、θは略35°15′である。なお、Y軸及びZ軸もX軸の周りにθ回転させて、夫々Y’軸、及びZ’軸とする。従って、ATカット水晶基板101は、直交する結晶軸X、Y’、Z’を有する。ATカット水晶基板101は、厚み方向がY’軸であって、Y’軸に直交するXZ’面(X軸及びZ’軸を含む面)が主面であり、厚みすべり振動が主振動として励振される。このATカット水晶基板101を加工して、圧電基板10を得ることができる。
即ち、圧電基板101は、図3に示すようにX軸(電気軸)、Y軸(機械軸)、Z軸(光学軸)からなる直交座標系のX軸を中心として、Z軸をY軸の−Y方向へ傾けた軸をZ’軸とし、Y軸をZ軸の+Z方向へ傾けた軸をY’軸とし、X軸とZ’軸に平行な面で構成され、Y’軸に平行な方向を厚みとするATカット水晶基板からなる。
【0041】
圧電基板10は、図1(a)に示すように、Y’軸に平行な方向(以下、「Y’軸方向」という)を厚み方向として、X軸に平行な方向(以下、「X軸方向」という)を長辺とし、Z’軸に平行な方向(以下、「Z’軸方向」という)を短辺とする矩形の形状を有する。圧電基板10は、励振部14と、励振部14の周縁に沿って形成された周辺部12と、を有する。ここで、「矩形の形状」とは、文字通りの矩形状と、各角部が面取りされた略矩形をも含むものとする。
周辺部12は、図1、図2に示すように、励振部14の周面(側面)の少なくとも一部に形成され、励振部14より小さい厚み(薄肉)を有する。
【0042】
図1、図2の実施形態に示すように本例に係る励振部14は、その全周を周辺部12に囲まれており、周辺部12のY’軸方向の厚みよりも大きい厚み(厚肉)を有する。即ち、励振部14は、図1(b)及び図2に示すように、周辺部12に対してY’軸方向に突出している。図示の例では、励振部14は周辺部12に対して、+Y’軸側と−Y’軸側とに突出している。励振部14は、例えば対称の中心となる点(図示せず)を有し、この中心点に関して点対称となる形状を有することができる。
励振部14は、図1(a)に示すように、X軸方向を長辺とし、Z’軸方向を短辺とする矩形の形状を有する。即ち、励振部14はX軸に平行な辺を長辺とし、Z’軸に平行な辺を短辺としている。そのため、励振部14は、X軸方向に延びる側面14a、14bと、Z’軸方向に延びる側面14c、14dと、を有する。即ち、X軸方向に延びる側面14a、14bの長手方向は、X軸方向であり、Z’軸方向に延びる側面14c、14dの長手方向は、Z’軸方向である。図示の例では、側面14a、14bのうち、側面14aが+Z’軸側の側面であり、側面14bが−Z’軸側の側面である。また、側面14c、14dのうち、側面14cが−X軸側の側面であり、側面14dが+X軸側の側面である。
【0043】
X軸方向に延びる側面14aは、例えば図1(b)に示すように、周辺部12に対して、+Y’軸側と+Y’軸側とに夫々突出して形成されている。このことは側面14b、14c、14dについても同様である。X軸方向に延びる側面14a、14bの各々は、図1(b)に示すように1つの平面内にある無段差状となっている。即ち、+Y’軸側の側面14aは、1つの平面内であり、−Y’軸側の側面14aは、1つの平面内である。同様に、+Y’軸側の側面14bは、1つの平面内であり、−Y’軸側の側面14bは、1つの平面内である。
なお、本発明に係る記載において、「1つの平面内」とは、励振部14の側面が平坦な面である場合と、水晶の結晶の異方性の分だけ凹凸を有する場合と、を含む。即ち、フッ酸を含む溶液をエッチング液としてATカット水晶基板を加工すると、励振部14の側面は水晶結晶のR面が露出して、XY’面と平行な場合と、水晶結晶のm面が露出して、水晶の結晶異方性の分だけ凹凸を有する場合とがある。本発明に係る記載では、このような水晶結晶のm面による凹凸を有する側面についても「1つの平面内」にあるとしている。便宜上、図1(a)及び図2(a)では、m面による凹凸は省略している。
【0044】
Z’軸方向に延びる側面14c、14dの各々は、図2に示すように、段差を有する。励振部14は、中央に位置する最大厚みを有した第1部分15と、第1部分15より小さい厚みを有する第2部分16と、を有し、側面14c、14dの段差は、第1部分15及び第2部分16の各厚みの差によって形成されている。図示の例では、側面14c、14dは、第1部分15のY’Z’平面に平行な面と、第2部分16のXZ’面に平行な面と、第2部分16のY’Z’平面に平行な面と、によって構成される。
このように励振部14は、厚みの異なる2種類の部分15、16を有しており、圧電振動素子100は、所謂2段型メサ構造を有していると言える。圧電振動素子100は、厚みすべり振動を主振動として振動し、励振部14が2段型メサ構造であることによって、エネルギー閉じ込め効果を有することができる。
【0045】
本発明に係る圧電振動素子100の特徴は、図1、図2の実施形態に示すように、励振電極20が、2段メサ型構造の励振部14の対向する表裏面と、励振部14の段差部14a、14b、14c、14dの各側面と、段差部14a〜14dの各側面に連接された周辺部12の少なくとも一部の対向する表裏面とに形成されていることである。このように、周辺部12の少なくとも一部に励振電極20を広げることにより、後述するように、励振された際に発生する電荷をより効率的に集めることが可能となり、より性能のよい圧電振動素子にすることができる。つまり、圧電振動素子100のCIを小さくすることが可能となる。
【0046】
図4は、圧電振動素子100の平面図上に圧電振動素子100が励振された際に生じる振動変位エネルギー(振動変位の二乗とその位置の質量との積)が、等しい点を結んでできる等力線分布を一点鎖線で示している。中央に位置する等力線のエネルギーレベルが一番高く、外側に位置する等力線程そのエネルギーレベルは低くなっている。図4に示す圧電振動素子100の例では、励振部14がX軸方向に長い矩形状をしているので、等力線分布はX軸方向の長径が長く、Z’軸方向の短径が短い楕円形状となる。振動変位の大きさは励振部14の中心部で最大で、中心部から離間するにつれて小さくなる。即ち、励振電極20上ではX軸方向、Z’軸方向ともほぼ余弦上に分布し、励振電極20のない圧電基板上では指数関数的に減衰する。振動領域は、励振部14と、励振部14に連接する周辺部12に楕円形状に広がっているので、励振部14上にのみ励振電極を設けた構成の圧電振動素子では、圧電基板10に励起される電荷を十分に集められない(ピックアップできない)。励振部14に連接する周辺部12の少なくとも一部に励振電極20を配置し、圧電基板10に励起される電荷を集めるように構成した圧電振動素子100の方が、圧電振動素子としての性能がよい。
【0047】
圧電振動子の性能は、一般的に電気機械結合係数k2で評価される。つまり、電気機械結合係数k2が大きい程、電気−機械の変換効率がよい。容量比γはk2に反比例するので、性能が良い程、容量比γが小さくなる。ここで、容量比γは静電容量C0と直列共振容量C1との比C0/C1で表わされる。また、圧電振動子の性能評価指標としてQ/γも用いられる。
一方、発生する電荷は歪Stに比例する。歪Stは振動変位を座標位置で微分したものである。つまり、発生する電荷は、圧電基板10の振動変位に応じて変化する。励振電極20における振動変位は、励振電極20の中心で頂点となる余弦状である。つまり、励振電極20の端部では振動変位は、中心部に比べて小さくなる。励振電極20を必要以上に大きくしても、効率よく電荷を集めることはできない。
【0048】
図5は、1612サイズ(1.6mm×1.2mm)のパッケージに収容する圧電基板として、X軸方向の寸法Xが1100μm、厚さtが65μmのメサ型構造のATカット水晶基板を用い、励振電極の面積Sを変化させたときのCIを測定した図である。この実験によると、面積Sが小さいと水晶振動子のCIは大きく、面積Sが大きくなるに応じてCIが小さくなり、更に面積Sを大きくするとCIが大きくなることが分かった。つまり、水晶基板の寸法を決めるとCIを最小にする電極面積Sが存在することが実験的に分かった。
更に、水晶基板10のX軸方向の寸法と、励振電極20の寸法との関係を調べるべく、実験を重ねた。図6は、図1(a)に示した圧電振動素子100の平面図に各部の寸法を記入し、励振電極20は斜線を付して示している。つまり、励振電極20は、励振部14と、励振部20に連接する周辺部12の一部とに跨って配置されている。水晶基板10のX軸方向寸法をXとし、励振電極20のX軸方向寸法をLeとする。図6の例では、励振電極20は、励振部14の全域と、周辺部12の一部とに跨っている。水晶基板10の各パッド24内に設けた支持領域26(水晶基板10を、導電性接着剤等を用いて支持部材に固定する領域)の大きさをAdとし、支持領域26の水晶基板10の中央寄り端部と、支持領域26と対向する励振電極20の端部20bとの距離をΔXとする。
【0049】
図7は、距離ΔXとメサ型構造の水晶振動子のCIとの関係を示す図である。距離ΔXが小さいとCIは大きく、距離ΔXを大きくするに応じてCIは小さくなり、更に距離ΔXを大きくしていくとCIは大きくなる。
図7は、距離ΔXと圧電振動素子100のCIとの関係を示すΔX−CI曲線である。ΔX−CI曲線は、2つの性質の異なるメカニズムを示す曲線、つまり単調に減少する曲線Aと、単調に増大する曲線Bとから構成されていると推測した。曲線Aで表わされるCIは、距離ΔXの増加と応じて減少している。このメカニズムは、次のように考えられる。励振電極20上の振動変位分布はほぼ余弦状であり、励振電極20のない周辺部12の振動変位は、励振電極20の端部20bからの距離を変数とし指数関数的に減少する。支持領域26は、この領域に導電性接着剤等を塗布し、水晶基板10をパッケージ等の支持部材に固定する部位である。励振電極20の端部20bから急激に減少しつつある振動変位エネルギーは、支持領域26まで到達し、支持領域26に塗布された接着剤に吸収され漏洩し、消散する。つまり、距離ΔXが大きい程、支持領域26の端部(図面の右端)に到達する振動エネルギーは小さく、漏洩するエネルギーも小さくなる。その結果、水晶振動子のQ値が大きく、CIが小さくなる。
これと逆に、距離ΔXが小さいと、支持領域26の端部(図面の右端)に到達する振動エネルギーは大きく、漏洩するエネルギーが大きくなって、Q値が小さくなる。このため、CIが大きくなる。CIは、距離ΔXの増大に応じて単調に減少する曲線Aとなる。
【0050】
一方、曲線Bについては次のように考えられる。内部損失のみで決まる水晶振動子のQ値は、周波数fに反比例して減少することは、よく知られている。周波数の範囲がそれ程大きくない場合、X軸方向の寸法が1.1mm程度の水晶基板10では、形状寸法を決めると、励振電極の寸法を大幅に変化させない限り、Q値はほぼ一定な値と考えられる。また、水晶振動子の等価直列インダクタンス(モーショナルインダクタンス)L1は、水晶基板の厚さtの三乗に比例し、電極面積に反比例することも周知のことである。
励振電極10を、図6に示すように、中心線Cnに対し、対称に配置するものとする。ここで、水晶基板10を固定する接着剤の影響が無視できる程度に、理想的に支持・固定された場合について考える。距離ΔXが小さい程、つまり励振電極20の寸法Leが大きい程、水晶基板10に励起される電荷を集められる。振動変位は、励振部14の中央を頂点として余弦状に分布するので、励振電極20の端部での電荷収集効率は、悪くなる。従って、励振電極20は大きければよいというものではない。
励振電極20の大きさに応じて決まる等価直列容量C1と、励振電極20の大きさに比例して決まる静電容量C0と、の比C0/C1である容量比γは、最適な励振電極20の大きさがある。等価直列インダクタンスL1と等価直列容量C1とは、ω02=1/(L1・C1)の関係にあるので、励振電極20の寸法Leを大きくすると直列インダクタンスL1は小さく成る。Q値をほぼ一定とすると、水晶振動子のCIは小さくなる。即ち、励振電極20を大きく(寸法Leを大きくする)すると、つまりΔXを小さくすると、CIは小さくなる。
【0051】
しかし、振動変位は周辺部12の周縁では小さくなるので、その部位で励起される電荷は小さく、そこに電極を設けても効率的ではない。また、支持・固定部からの漏洩も考慮する必要がある。距離ΔX大きくしていくと、励振電極20の寸法Leは小さくなってくるが、水晶基板10に励起される電荷を最も効率的に集める励振電極20の寸法Leがある。つまり、容量比γを最小にする寸法Leがある。更に、距離ΔX大きくしていくと、寸法Leが小さくなり、直列インダクタンスL1が大きくなる。Q値をほぼ一定であるとすると、CIが大きくなることに相当する。従って、図7の曲線Bの単調増大曲線で示すように、距離ΔXの増加に応じてCIが大きくなることは説明できる。
つまり、水晶基板10の寸法を決めた場合に、水晶振動子のCIに着目すると、支持領域26からの距離ΔXには、CIを小さくする範囲があることになる。図7からは、CIを68Ωとすると、ΔXの範囲は、0.04mm≦ΔX≦0.06mmである。このΔXの範囲は、X辺比X/tとして、14≦X/t≦18の範囲で実験したが、同様の結果を得た。
【0052】
また、メサ型構造の圧電振動素子100として、圧電基板10のZ’軸方向の寸法(短辺の寸法)をZとし、励振部14の短辺の寸法をMzとし、励振部14の厚み(励振部14の第1部分15の厚み)をtとすると、下記式(1)の関係を満たすことが好ましい。
8≦Z/t≦11、且つ0.6≦Mz/Z≦0.8 (1)
これにより、厚みすべり振動と輪郭振動等の不要モードとの結合を抑圧することができ、CIの低減と周波数温度特性の改善を図ることができる。(詳細は後述)。このような厚みすべり振動と輪郭振動との結合は、一般的に圧電基板の面積が小さいほど抑圧するのが難しい。そのため、例えば圧電基板10のX軸方向の寸法(長辺の寸法)をXとした場合に、下記式(2)の関係を満たすような小型の圧電振動素子100において、上記式(1)の関係を同時に満たすように設計すると、より顕著に厚みすべり振動と輪郭振動との結合を抑圧することができる。
X/t≦18 (2)
励振電極20は、励振部14と、励振部14に連接する周辺部12の少なくとも一部に形成されている。図1(b)及び図2の実施形態例では、励振電極20は励振部14の表裏と、励振部14に連接する周辺部12の表裏の一部に挟んで形成されている。励振電極20は、圧電基板10の振動領域を励振するように作用する。
【0053】
本実施形態に係る圧電振動素子100は、例えば以下の特徴的な効果を発揮する。
図1、2の実施形態例に示すように、一方向(Z’軸方向)に沿って厚み方向に段差部を有するメサ型構造の励振部14と、励振部14の周縁に連接された周辺部12の少なくとも一部とに励振電極20を設けた圧電振動素子100を構成する。振動エネルギーは主として励振部14に閉じ込められるが、周辺部12の一部に設けた励振電極20により、圧電振動素子が励振された際に生じる電荷が効率的に集められる。その結果、CIの小さい圧電振動素子が得られると共に、周波数温度特性が優れ、厚みすべり振動とZ’軸方向の輪郭振動との結合を抑制された圧電振動素子100が得られるという効果がある。
【0054】
また、図6、図7に示したように、X辺比X/tの範囲が14≦X/t≦18である圧電振動子100に対しては、支持領域26の端部と対向する励振電極20の端部20bとの距離をΔXとするとき、0.04mm≦ΔX≦0.06mmの関係を満たすように、圧電振動素子100を構成することにより、圧電振動素子100のCIを小さくすることができるという効果がある。
また、圧電振動素子100によれば、上述の通り、圧電基板10の短辺寸法Z、励振部14の短辺寸法Mz、及び励振部14の第1部分15の厚みtを式(1)の関係を満たすように設定することにより、厚みすべり振動とZ’軸方向の輪郭振動との結合を抑制され、CIの小さな圧電振動素子100が得られるという効果がある。
【0055】
2.圧電振動素子の製造方法
次に、本実施形態に係る圧電振動素子の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図7乃至図9は、本実施形態に係る圧電振動素子100の製造工程を模式的に示す図である。なお、図5乃至図9は、図2に対応している。つまり、Z’軸方向から見た断面図を示している。
図8に示すように、ATカット水晶基板101の表裏主面(XZ’平面に平行な面)に耐蝕膜30を形成する。耐蝕膜30は、例えば、スパッタ法や真空蒸着法などによりクロム及び金をこの順で積層した後、このクロム及び金をパターニングすることによって形成される。パターニングは、例えば、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術によって行われる。耐蝕膜30は、ATカット水晶基板101を加工する際に、エッチング液となるフッ酸を含む溶液に対して耐蝕性を有する。
【0056】
図9(a)に示すように、耐蝕膜30上にポジ型のフォトレジスト膜を塗布した後、このフォトレジスト膜を露光及び現像して、所定の形状を有するレジスト膜40を形成する。レジスト膜40は、耐蝕膜30の一部を覆うように形成される。
次に、図9(b)に示すように、マスクMを用いて再度レジスト膜40の一部を露光して、感光部42を形成する。即ち、マスクMをY’軸方向から見てレジスト膜40の外縁の内側に配置して露光を行う。
次に、図9(c)に示すように、耐蝕膜30をマスクとしてATカット水晶基板101をエッチングする。エッチングは、例えば、フッ化水素酸(フッ酸)とフッ化アンモニウムとの混合液をエッチング液として行われる。これにより、圧電基板10の外形(Y’軸方向から見たときの形状)が形成される。
【0057】
次に、図10(a)に示すように、レジスト膜40をマスクとして、所定のエッチング液で耐蝕膜30をエッチングした後、さらに、上述の混合液をエッチング液として、ATカット水晶基板101を所定の深さまでハーフエッチングすると、励振部14の外形が形成される。
次に、図10(b)に示すように、レジスト膜40の感光部42を現像して除去する。これにより、耐蝕膜30の一部が露出する。なお、感光部42を現像する前に、例えば、真空又は減圧雰囲気下で放電により形成された酸素プラズマによって、レジスト膜40の表面に形成された変質層(図示せず)をアッシングする。これにより、確実に感光部42を現像して除去することができる。
次に、図10(c)に示すように、レジスト膜40をマスクとして、所定のエッチング液で耐蝕膜30の露出部分をエッチング除去した後、さらに、上述の混合液をエッチング液としてATカット水晶基板101を所定の深さまでハーフエッチングする。これにより、Z’軸方向に延びる側面14c、14dの各々に段差を形成することができる。また、図示しないが、X軸方向に延びる側面14a、14bの各々に段差を形成することができる。
【0058】
以上の工程により、周辺部12及び励振部14を有する圧電基板10を形成することができる。
レジスト膜40及び耐蝕膜30を除去した後、例えばスパッタ法や真空蒸着法などにより、クロム及び金をこの順で積層した後、このクロム及び金をパターニングすることによって、圧電基板10に励振電極20、引出電極22、及びパッド24が形成される。つまり、図1、図2の実施の形態に示すように、励振電極20は、励振部14の全域と、励振部14に連接する周辺部12の一部の領域とに設けられた圧電振動素子が形成される。
【0059】
以上の工程により、本実施形態に係る圧電振動素子100を製造することができる。
圧電振動素子100の製造方法によれば、励振部14の外形を形成するために用いたレジスト膜40を現像して感光部を除去した後、再度レジスト膜40を用いてAT水晶基板101をエッチングして励振部14を形成することができる。そのため、精度よく2段型メサ構造の励振部14を形成することができる。
例えば、励振部14を形成するために2回のレジスト膜を塗布する場合(例えば、第1レジスト膜を用いて励振部の外形を形成した後、第1のレジスト膜を剥離し、新たに第2レジスト膜を塗布して励振部の側面を露出する場合)は、第1のレジスト膜と第2のレジスト膜との間で合わせずれが生じ、励振部14を精度よく形成できないことがある。圧電振動素子100の製造方法では、このような問題を解決することができる。
【0060】
3.圧電振動素子の変形例
次に、本実施形態の変形例に係る圧電振動素子について、図面を参照しながら説明する。図11(a)は、本実施形態の変形例に係る圧電振動素子110を模式的に示す平面図である。図11(b)は、(a)のP1−P1断面図である。図12は、図11(a)のQ1−Q1断面図である。以下、本実施形態の変形例に係る圧電振動素子110において、本実施形態に係る100の構成部材と同様な構造、機能を有する部材については同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0061】
本発明に係る圧電振動素子110は、中央に位置する多段メサ構造の励振部14、及び励振部14の周縁に連設形成された薄肉の周辺部12を有する圧電基板10と、励振部14の両主面上に夫々対向配置された励振電極20と、各励振電極20から圧電基板10の端部に向かって延びる引出電極22と、引出電極22の端部であり且つ圧電基板10の2つの角隅部に夫々形成されたパッド24と、を概略備えている。
励振部14は、圧電基板の略中央部を両主面方向へ突出させた厚肉部であり、周辺部12は、励振部14の外周側面の少なくとも一部の厚み方向中間部から外径方向へ張出し形成されている。本例に係る周辺部12は、励振部14の全外周側面から鍔状に張出し形成されている。
【0062】
圧電基板10は、その中央に位置し主たる振動領域となる励振部14と、励振部14より薄肉で励振部14の全周縁に沿って鍔状に形成された周辺部12と、を有している。平面形状がほぼ矩形である励振部14の全ての側面は夫々厚み方向に段差部を有した構造をしている。即ち、図11(b)、図12に示すように、圧電基板10は、側面から見て全ての側面が階段状をした励振部14と、励振部14の厚さの中央部の周囲に連接された周辺部12と、を有した圧電基板である。
図11、図12に示すように、本実施形態例に係る励振部14は、全ての側面が段差状であって、その全周を周辺部12に囲まれており、周辺部12のY’軸方向の厚みよりも大きい厚み(厚肉)を有する。即ち、励振部14は、図11(b)及び図12に示すように、周辺部12に対してY’軸方向両方向に突出している。図示の例では、励振部14は周辺部12に対して、+Y’軸側と−Y’軸側とに突出している。また、励振部14は、例えば対称の中心となる点(図示せず)を有し、この中心点に関して点対称(平面的、立体的に点対称)となる形状を有することができる。
【0063】
励振部14は、図11(a)に示すように、X軸方向を長辺とし、Z’軸方向を短辺とする矩形の形状を有する。即ち、励振部14はX軸に平行な辺を長辺とし、Z’軸に平行な辺を短辺としている。そのため、励振部14は、X軸方向に延びる側面14a、14bと、Z’軸方向に延びる側面14c、14dと、を有する。即ち、X軸方向に延びる側面14a、14bの長手方向は、X軸方向であり、Z’軸方向に延びる側面14c、14dの長手方向は、Z’軸方向である。図示の例では、側面14a、14bのうち、側面14aが+Z’軸側の側面であり、側面14bが−Z’軸側の側面である。また、側面14c、14dのうち、側面14cが−X軸側の側面であり、側面14dが+X軸側の側面である。
図11及び図12に示すように、励振部14は、最も厚い第1部分15と、第1部分15より小さい厚みを有する第2部分16と、を有する。第1部分15は、図11に示すように、X軸に平行な方向を長辺とし、Z’軸に平行な方向を短辺とする矩形の形状を有する。第2部分16は、第1部分15の周囲に形成されている。
【0064】
励振部14の側面14a、14bの段差は、第1部分15及び第2部分16の各厚みの差によって形成されている。図示の例では、側面14a、14bは、第1部分15のXY’平面に平行な面と、第2部分16のXZ’面に平行な面と、第2部分16のXY’平面に平行な面と、によって構成される。同様に、励振部14の側面14c、14dの段差は、第1部分15及び第2部分16の各厚みの差によって形成され、第1部分15のY’Z’平面に平行な面と、第2部分16のXZ’面に平行な面と、第2部分16のY’Z’平面に平行な面と、によって構成される。
このように励振部14は、厚みの異なる2種類の部分15、16を有しており、圧電振動素子100は、2段型のメサ構造を有していると言える。励振部14は、厚みすべり振動を主振動として振動することができる。
図11、図12の実施形態例のように、X軸と平行な2つの側面、及び前記Z’軸と平行な2つの側面に夫々厚み方向に段差部を有する励振部14と励振部14の周縁に連接された周辺部12の少なくとも一部とに励振電極20を設けた圧電振動素子110を構成する。振動エネルギーは、主として励振部14に振動エネルギーが閉じ込められるが、周辺部12の一部に設けた励振電極20により、圧電振動素子110が励振された際に生じる電荷が効率的に集められる。その結果、CIの小さい圧電振動素子が得られと共に、屈曲等の不要モードの少ない圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0065】
図13は、本実施形態の他の変形例に係る圧電振動素子120を模式的に示す平面図である。図14(b)は、図13のP1−P1断面図であり、図14(b)は、図13のQ1−Q1断面図である。
圧電振動素子120では、3段のメサ構造を有する。即ち、圧電振動素子120の励振部14は、第1部分15、第2部分16に加え、第2部分16より厚みの小さい第3部分17を有する。第3部分17は、第1部分15、及び第2部分16をX軸方向から挟むように形成されている。
Z’軸方向に延びる側面14c、14dの段差は、図14(b)に示すように、第1部分15、第2部分16、及び第3部分17の厚みの差によって形成されている。図示の例では、側面14c、14dは、第1部分15のY’Z’平面に平行な面と、第2部分16のXZ’平面に平行な面と、第2部分16のY’Z’平面に平行な面と、第3部分17のXZ’平面に平行な面と、第3部分17のY’Z’平面に平行な面と、によって構成されている。
【0066】
また、第1部分15、第2部分16、及び第3部分17から成る励振部14は、第3部分17の周縁に沿って、第3部分17の厚みより薄い周辺部12が形成されている。励振部14及び周辺部12の一部に表裏対向して形成された励振電極20、各励振電極20からの引出電極22、及び各引出電極22の終端である2つのパッド24も、圧電振動素子100と同様に形成されている。圧電振動素子200は、圧電振動素子100の製造方法を適用して製造することができる。圧電振動素子120によれば、2段型のメサ構造を有する圧電振動素子100に比べて、エネルギー閉じ込め効果をより高めることができる。更に、主として励振部14に振動エネルギーが閉じ込められると共に、本発明の励振電極20により、圧電振動素子120が励振された際に生じる電荷が励振電極により効率的に集められる。その結果、CIの小さい圧電振動素子が得られと共に、屈曲振動等の不要モードとの結合の少ない圧電振動素子120が得られるという効果がある。
【0067】
図15(a)は、本実施形態の他の変形例に係る圧電振動素子130を模式的に示す平面図であり、図15(b)は、(a)のP1−P1断面図である。図16は、図15(a)のQ1−Q1断面図である。
圧電振動素子130では、3段のメサ構造を有する圧電振動素子である。即ち、圧電振動素子130の励振部14は、第1部分15、第2部分16に加え、第2部分16より厚みの小さい第3部分17を有する。第3部分17は、第2部分16の周縁を囲むように形成されている。励振部14は、その周縁、即ち第3部分17の側面の厚み方向中央部周縁に、周辺部12が一体的に連接されている。励振部14の両主面上と周辺部12の一部に表裏対向して形成された励振電極20、各励振電極20からの引出電極22、及び各引出電極22の終端である2つのパッド24も、圧電振動素子100と同様に形成されている。
圧電振動素子130は、圧電振動素子100の製造方法を適用して製造することができる。圧電振動素子130によれば、2段型のメサ構造を有する圧電振動素子110に比べて、エネルギー閉じ込め効果をより高めることができる。主として励振部14に振動エネルギーが閉じ込められると共に、本発明の励振電極20により、圧電振動素子120が励振された際に生じる電荷が励振電極により効率的に集められる。その結果、CIの小さい圧電振動素子が得られと共に、屈曲振動等の不要モードとの結合の少ない圧電振動素子120が得られるという効果がある。
なお、上述の例では、3段型のメサ構造を有する圧電振動素子120、130について説明したが、本願に係る発明は多段型のメサ構造において、メサ構造の段数(段差の数)は特に限定されない。
【0068】
4.圧電振動子
次に、本実施形態に係る圧電振動子について、図面を参照しながら説明する。図17は、本実施形態に係る圧電振動子200を模式的に示す断面図である。
図17は、圧電振動子200の構成を示す長手方向(X軸方向)の断面図であり、図2に示した圧電振動素子100の断面図と同様な位置における断面図である。圧電振動子200は、図17に示すように、本発明に係る圧電振動素子(図示の例では圧電振動素子100であるが、圧電振動素子110、120、130でも同様である)と、パッケージ50と、を含む。
【0069】
パッケージ50は、キャビティー52内に圧電振動素子100を収容することができる。パッケージ50の材質としては、例えば、セラミック、ガラス等が挙げられる。キャビティー52は、圧電振動素子100が動作するための空間となる。キャビティー52は密閉され、減圧空間や不活性ガス雰囲気とされる。
圧電振動素子100は、パッケージ50のキャビティー52内に収容されている。図示の例では、圧電振動素子100は、支持領域26内に正確に導電性接着剤60を塗布し、片持ち梁状にキャビティー52内に固定されている。導電性接着剤60としては、例えば、半田、銀ペースト等を用いることができる。
図17の実施形態に示すように、圧電振動子200によれば、本発明に係る圧電振動素子100を有するので、屈曲振動等の不要振動との結合がなく、且つCIの小さい圧電振動子200が得られるという効果がある。
【0070】
5.電子デバイスと圧電発振器
次に、本実施形態に係る電子デバイスと圧電発振器について、図面を参照しながら説明する。
図18(a)は、本発明の電子デバイス400に係る実施形態の一例の断面図である。電子デバイス400は、本発明の圧電振動素子100(図21(a)では圧電振動素子100を示したが、本発明の他の圧電振動素子であってもよい)と、感温素子であるサーミスタ58と、圧電振動素子100及びサーミスタ58を収容するパッケージ50と、を概略備えている。パッケージ50は、パッケージ本体50aと、蓋部材50cとを備えている。パッケージ本体50aは、上面側に圧電振動素子100を収容するキャビティー52が形成され、下面側にサーミスタ58を収容する凹部54aが形成されている。キャビティー52の内底面の端部に複数の素子搭載用パッド55aが設けられ、各素子搭載用パッド55aは内部導体57で複数の実装端子53と導通接続されている。素子搭載用パッド55aに圧電振動素子100を載置し、各パッド24と各素子搭載用パッド55aとを、導電性接着剤60を介して電気的に接続し、固定する。パッケージ本体50aの上部には、コバール等からなるシールリングリング50bが焼成されており、このシールリングリング50bに蓋部材50cを載置し、抵抗溶接機を用いて溶接し、キャビティー52を気密封止する。キャビティー52内は真空にしてもよいし、不活性ガスを封入してもよい。
一方、パッケージ本体50aの下面側中央には凹部54aが形成され、凹部54aの上面には電子部品搭載用パッド55bが焼成されている。サーミスタ58は、電子部品搭載用パッド55bに半田等を用いて搭載される。電子部品搭載用パッド55bは、内部導体57で複数の実装端子53と導通接続されている。
【0071】
図18(b)は、同図(a)の変形例の電子デバイス410であって、電子デバイス400と異なる点は、パッケージ本体50aのキャビティー52底面に凹部54bが形成され、この凹部54bの底面に焼成された電子部品搭載パッド55bに、金属バンプ等を介してサーミスタ58が接続されている構成である。電子部品搭載パッド55bは実装端子53と導通されている。つまり、圧電振動素子100と感温素子のサーミスタ58とが、キャビティー52内に収容され、気密封止されている。
以上では、圧電振動素子100とサーミスタ58とをパッケージ50に収容した例を説明したが、パッケージ50収容する電子部品としては、サーミスタ、コンデンサ、リアクタンス素子、半導体素子のうち少なくとも一つを収容した電子デバイスを構成することが望ましい。
【0072】
図18(a)、(b)に示す実施形態例は、圧電振動素子100とサーミスタ58とをパッケージ50に収容した例である。このように構成すると、感温素子のサーミスタ58が圧電振動素子100の極めて近くに位置しているので、圧電振動素子100の温度変化を素早く感知することができるという効果がある。また、本発明の圧電振動素子と上記の電子部品とで電子デバイスを構成することにより、CIの小さな圧電振動素子を有する電子デバイスが構成できるので、多方面の用途に利用できるという効果がある。
【0073】
本発明に係る圧電振動素子を使用した圧電振動子のパッケージに対して、圧電振動子を駆動し、増幅する発振回路を搭載したIC部品を組み付けることにより、圧電発振器を構築することができる。
図19は、本発明の圧電発振器500に係る実施形態の一例の断面図である。圧電発振器500は、本発明の圧電振動素子100(図19では圧電振動素子100を示したが、本発明の他の圧電振動素子であってもよい)と、単層の絶縁基板70と、圧電振動素子100を駆動するIC(半導体素子)88と、圧電振動素子100及びIC88を含む絶縁基板70の表面空間を気密封止する凸状の蓋部材80と、を概略備えている。絶縁基板70は、表面に圧電振動素子100及びIC88を搭載するための複数の素子搭載パッド74a、電子部品搭載パッド74bを有すると共に、裏面に外部回路との接続用の実装端子76を備えている。素子搭載パッド74a及び電子部品搭載パッド74bと実装端子76とは、絶縁基板70を貫通する導体78により導通されている。更に、絶縁基板70表面に形成された導体配線(図示せず)により、素子搭載パッド74aと電子部品搭載パッド74bとは導通が図られている。金属バンプ等を用いてIC88を電子部品搭載パッド74bに搭載した後、素子搭載パッド74aに導電性接着剤60を塗布し、その上に圧電振動素子100のパッド24を載置し、恒温槽内で硬化させて導通・固定を図る。凸状の蓋部材80と絶縁基板70とは、絶縁基板70の上面周縁に塗布した低融点ガラス85によって密封される。このとき、封止工程を真空中で行うことにより内部を真空にすることができる。
【0074】
図20(a)は、本発明の他の実施形態の圧電発振器510の断面図である。圧電発振器510は、本発明の圧電振動素子100と、パッケージ本体90と、圧電振動素子100を駆動するIC88と、圧電振動素子100を気密封止する蓋部材90cと、を概略備えている。パッケージ本体90は、圧電振動素子100を収容するキャビティー52を有する上部90aと、IC88を収容する凹部90dを有する下部90bとから成る、所謂H型構造のパッケージ本体である。圧電振動素子100は、キャビティー52底部の端部に形成された素子搭載パッド74aに、導電性接着剤60を塗布し、この上に載置し、熱硬化することにより導通・固定される。IC88は、パッケージ本体90の下面側の凹部90dの上面に形成された電子部品搭載パッド74bに、金属バンプ79により接続・固定される。素子搭載パッド74a及び電子部品搭載パッド74bは、内部導体78により導通接続されている。パッケージ本体90の上部に焼成されたシールリング(図示せず)に蓋部材90cを載置し、抵抗溶接機等を用いて溶接し、気密封止する。キャビティー52内は真空にしてもよいし、不活性ガスを封入してもよい。
【0075】
図20(b)は、本発明の他の実施形態の圧電発振器520の断面図である。圧電発振器520は、本発明の圧電振動子300と、パッケージ本体90と、圧電振動子300を駆動するIC88と、圧電振動子300気密封止する蓋部材90cと、を概略備えている。パッケージ本体90は、圧電振動子300を収容するキャビティー52を有する上部90aと、ICを収容する凹部90dを有する下部90bとから成る、所謂H型構造のパッケージ本体である。圧電振動子300は、キャビティー52底部の両端部に形成された素子搭載パッド74aに載置され、半田又は金属バンプ等により接続固定される。IC88は、パッケージ本体90の下面側の凹部90dの上面に形成された素子搭載パッド74bに、金属バンプ79により接続・固定される。素子搭載パッド74a及び電子部品搭載パッド74bは、内部導体78により導通されている。パッケージ本体90の上部に焼成されたシールリング(図示せず)に蓋部材90cを載置し、抵抗溶接機を用いて溶接する。圧電振動素子は二重に気密封止されている。
IC88は、圧電振動子300を駆動する発振回路と、圧電振動子300の周囲の温度を感知する感温素子と、圧電振動子300の周波数温度特性を補償する補償回路と、電圧可変容量素子等を含むことができる。
【0076】
図19の実施形態の圧電発振器500は、パッケージ内に本発明に係るCIが小さな圧電振動素子100と、IC(発振回路を含む)88とを備えており、圧電発振器が小型化されると共に、発振回路の発振電流を小さくできるので、低消費電力化が図れるという効果がある。
図20(a)の実施形態の圧電発振器510は、パッケージ内に本発明に係るCIが小さな圧電振動素子100と、IC(発振回路を含む)88とを備えており、圧電発振器低消費電力化が図れるという効果がある。更に、IC88を外部より調整可能することができるため、より周波数温度特性が優れ、多機能の圧電発振器を構成できるという効果がある。
図20(b)の実施形態の圧電発振器520は、パッケージに収容した圧電振動子300を用いているので、エージング等の周波数安定度が優れ、多機能で信頼性のある圧電発振器を構成できるという効果がある。
【0077】
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
なお、上述した圧電発振器等の電子デバイスにおいては、圧電振動子に半導体素子(IC)に代表される電子部品を備えた構成として説明したが、少なくとも一以上の電子部品を備えることが好適である。そして前記電子部品としては、サーミスタ、コンデンサ、リアクタンス素子等を適用することができ、圧電振動片を発振源として用いた電子デバイスを構築することができる。
【符号の説明】
【0078】
10…圧電基板、11…突起部、11a、11b…突起部分、12…周辺部、14…励振部、14a、14b…X軸方向に延びる側面、14c、14d…Z’軸方向に延びる側面、15…第1部分、16…第2部分、17…第3部分、20…励振電極、22…引出電極、24…パッド、26…支持領域、30…耐蝕膜、40…レジスト膜、42…感光部、50…パッケージ、50a、90…パッケージ本体、50b…シールリングリング、50c、80、90c…蓋部材、52…キャビティー、53…実装端子、54a、54b、90d…凹部、55a、74a…素子搭載用パッド、55b、74b…電子部品搭載用パッド、57…内部導体、58…サーミスタ、60…導電性接着剤、70…絶縁基板、76…実装端子、78…導体、79金…属バンプ、85…低融点ガラス、88…IC(半導体素子)、100、110、120、130…圧電振動素子、101…ATカット水晶基板、200…圧電振動子、400、410…電子デバイス、500、510、520…圧電発振器
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚み振動モードの圧電振動子に関し、特に所謂メサ型構造を有する圧電振動素子、圧電振動子、圧電発振器及び電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ATカット水晶振動子は、その振動モードが厚みすべり振動であり、小型化、高周波数化に適し、且つ周波数温度特性が優れた三次曲線を呈するので、電子機器等の多方面で使用されている。
特許文献1には、ベベル構造やコンベックス構造と同等に、エネルギー閉じ込め効果を発揮する、所謂、メサ型構造の圧電振動子が開示され、外形及びメサ型構造が共に円形である圧電基板も開示されている。
特許文献2には、圧電基板の外形及びメサ型構造が共に円形の圧電基板に加え、外形が短冊状のメサ型構造の圧電基板が開示されている。
【0003】
電子機器が小型化されるにつれ、辺比(厚さに対する長辺又は短辺の比)の小さな振動子が要求されるようになってきた。辺比の小さな振動子は主振動に輪郭振動が結合し易く、主振動の電気的特性を劣化させる。
特許文献3には、ATカット水晶振動子をメサ型構造で形成し、メサ部と薄肉部との境界部において、境界部の側壁が主面に対して90°であると、励振電極から延出された引き出し電極(リード電極)が断線する虞があるという問題に対処するために成されたものであって、境界部の側壁を傾斜、又は曲面とすることによりリード電極の断線が防止できると開示されている。また、振動部分の表面の粗さを平均粗さで0.2ミクロンと小さな表面粗さとすることにより、CI値が低下し、副振動が抑圧されると開示されている。
また、特許文献4には、ATカット水晶振動子をメサ型構造で形成し、メサ部の側壁を、63°、35°と傾斜させて、厚みすべり振動と屈曲振動との結合を抑圧した水晶振動子が開示されている。
【0004】
特許文献5には、水晶振動素子の周波数をf、水晶基板の長辺(X軸)の長さをX、メサ部(振動部)の厚みをt、メサ部の長辺の長さをMx、励振電極の長辺の長さをEx、水晶基板の長辺方向に生じる屈曲振動の波長をλとするとき、以下の4つの式
λ/2=(1.332/f)−0.0024 (1)
(Mx−Ex)/2=λ/2 (2)
Mx/2=(n/2+1/4)λ (但しnは整数) (3)
X≧20t (4)
を満たすように、各パラメータf、X、Mx、Exを設定することにより、厚みすべり振動と屈曲振動との結合を抑制できると開示されている。
また、特許文献6には、屈曲変位成分が小さくなるのは、振動部の端縁と励振電極の端縁部分の位置を屈曲変位の腹の位置と一致するように設定した場合であり、これにより不要モードである屈曲振動を抑圧することができると開示されている。
【0005】
特許文献7には、周波数可変感度を高くするとともに、不要な振動を抑圧したメサ型振動素子が提案されている。一般的に振動素子は、励振電極が大きくなるのに伴って等価直列容量C1も大きくなり、周波数可変感度を高くできる。励振電極を大きくしたメサ型振動素子は発振が容易であり、負荷容量に対する周波数変化の幅を広くできると開示されている。
特許文献8には、圧電基板の長辺がX軸方向、短辺がZ’軸方向であり、且つメサ部の長辺がX軸方向、短辺(長さMz)がZ’軸方向であるメサ型振動素子の、メサ部の一方の短辺の両端部を面取りし、その長さをM1とするとき、Ml≧Mz/4の関係を満たすことにより、屈曲振動を抑圧できると開示されている。
【0006】
特許文献9には、メサ型構造のATカット水晶振動子が開示されている。X軸方向に沿うメサ部の両端部の位置をA、Dとし、メサ部上に形成された励振電極の位置をB、Cとしたときに、A<B<C<Dの関係を満たすようにする。各端縁A、B、C、Dの位置と、屈曲振動の腹の位置とを一致させる。Aの位置にある屈曲振動の腹の振幅と、Bの位置にある屈曲振動の腹の振幅とが反対方向である。また、Bの位置にある屈曲振動の腹の振幅と、Cの位置にある屈曲振動の腹の振幅とが反対方向である。更に、Cの位置にある屈曲振動の腹の振幅と、Dの位置にある屈曲振動の腹の振幅とが反対方向である。つまり、屈曲振動の波長をλとすると、隣り合う端縁では、屈曲振動の腹がλ/2の奇数倍ずれていることになる。メサ部の長さをML、X軸方向に生じる屈曲振動の波長をλとすると、MLとλは、ML=(n−1/2)λの関係を満たすことによりメサ型振動素子に生じる屈曲振動を抑圧でき、CIを低減できると開示されている。
メサ型構造の圧電振動素子の容量比γ(等価直列容量C1に対する静電容量C0の比C0/C1)は、べべル構造、又はコンベックス構造圧電振動素子のそれと比べて大きくなる(悪化する)という問題があった。特許文献10には、励振電極をメサ部の段差部より圧電基板の端面に向かって広げた圧電振動素子が開示されている。メサ部の段差部より外側に拡大した部分の励振電極の面積を可変することにより、圧電振動素子の容量比を任意に設定することが可能となる。その結果、べべル構造、又はコンベックス構造の圧電振動素子と同等の性能を有するメサ構造の圧電振動素子が実現できると開示されている。
【0007】
特許文献11には、基本波振動の容量比γを大きくし、負荷容量CLの変化による発振周波数の変動を抑える圧電振動素子が開示されている。等価直列容量C1の飽和点近傍に励振電極の面積を設定して容量比γを小さくするのが一般的である。しかし、飽和点近傍以上に励振電極の面積を広げることにより、等価直列容量C1の変化は極めて小さいのに対し、静電容量C0は面積に比例して大きくなる。そのため容量比γを大きくできると開示されている。
特許文献12には、細帯状(ストリップ状)圧電基板の中央部の表裏面に、励振電極が設けられ、この励振電極から互いに反対側の端部に向けてリード電極が延びる圧電振動子が開示されている。リード電極の形成さない面の基板は夫々研削され疑似メサ型構造とする。この圧電振動子は励振電極下に振動エネルギーを閉じ込めることができるため、CIが小さく、またリード電極の断線が生じにくいと開示されている。
【0008】
特許文献13には、メサ型構造の圧電基板の短辺の長さをZとし、メサ部(振動部)の厚みをtとし、メサ部の短辺方向の電極寸法をMzとしたときに、
15.68≦Z/t≦15.84、かつ、0.77≦Mz/Z≦0.82
の関係を満たすように諸パラメータを設定することにより、不要モードを抑圧できると開示されている。
特許文献14には、メサ型圧電振動素子が開示されている。水晶基板の長辺の長さをx、段差部の堀量(メサ部の高さ)をMd、振動部の板厚をtとし、板厚tに対する段差部の堀量Mdの比をy(百分率)とすると、yが、
y=−1.32×(x/t)+42.87
y≦30
の関係を満足し、且つ水晶基板の振動部の板厚tに対する長辺の長さxの比、即ち辺比x/tが30以下とすることにより、圧電振動素子の電気的特性の悪化を招くこと無く、CIを低下させることができると開示されている。
特許文献15には、メサ型構造の圧電基板のメサ部の高さ(段差部の堀量)yは、圧電基板の長辺の寸法をx、メサ部(振動部)の厚み寸法をtとした時に、板厚tを基準として、次式
y=−0.89×(x/t)+34±3(%)
を満たすように辺比x/tを設定することにより、不要モードを抑圧できると開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公昭58−045205号公報
【特許文献2】特開昭58−047316号公報
【特許文献3】実開平06−052230号公報
【特許文献4】特開2001−230655公報
【特許文献5】特許第4341583号
【特許文献6】特許第4341671号
【特許文献7】特開2008−306594公報
【特許文献8】特開2009−065270公報
【特許文献9】特開2009−130543公報
【特許文献10】特許第4506135号
【特許文献11】特許第4558433号
【特許文献12】特開2001−230654公報
【特許文献13】特開2010−062723公報
【特許文献14】特許第4572807号
【特許文献15】特開2008−263387公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、最近では圧電振動子に対して、容器サイズを1.6mm×1.2mm程度に小型化することが客先から求められている。このような小型の容器に搭載するメサ型構造のATカット水晶振動素子のX辺比(厚さtに対する長辺Xの比X/t)は、例えば1100(μm)/65(μm)=17以下となる。このような小型圧電振動子に先行文献に開示されているような手段を適用しても、客先から要求されるCI(クリスタルインピーダンス、等価抵抗R1)が得られないという問題があった。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、X軸方向を長辺とした厚みすべりモードの圧電振動素子であって、X辺比の小さな圧電振動素子のCIの低減を可能としたメサ型圧電振動素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0012】
[適用例1]本発明に係る圧電振動素子は、圧電基板と、前記圧電基板の両主面に夫々対向配置された各励振電極と、前記各励振電極から該圧電基板の一方の端部に向かって延びる引出電極と、前記各引出電極と電気的に接続され前記圧電基板の2つの角隅部に夫々形成されたパッドと、を備えた圧電振動素子であって、前記圧電基板は、中央に位置する励振部と、前記励振部の厚みより薄肉で前記励振部の周縁に設けられた周辺部と、を有し、前記励振部の対向する2つの側面は夫々無段差状の平面であり、前記励振部の他の対向する2つの側面は夫々厚み方向に段差部を有し、前記圧電基板の各角隅部の前記各パッドと対応する位置に、前記圧電基板を支持部材に固定する支持領域を有し、前記励振電極は、前記励振部と前記周辺部の少なくとも一部の振動領域とに跨って形成されていることを特徴とする圧電振動素子である。
【0013】
以上のように、一方向に沿って厚み方向に段差部を有するメサ型構造の励振部と、励振部の周縁に連接された周辺部の一部とに励振電極を設けた圧電振動素子を構成する。振動エネルギーは主として励振部に閉じ込められるが、周辺部の一部に設けた励振電極により、圧電振動素子が励振された際に生じる電荷が、効率的に集められる。その結果、CIの小さい圧電振動素子が得られと共に、屈曲等の不要モードの少ない圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0014】
[適用例2]また本発明に係る圧電振動素子は、圧電基板と、前記圧電基板の両主面に夫々対向配置された各励振電極と、前記各励振電極から該圧電基板の一方の端部に向かって延びる引出電極と、前記各引出電極と電気的に接続され前記圧電基板の2つの角隅部に夫々形成されたパッドと、を備えた圧電振動素子であって、前記圧電基板は、中央に位置する励振部と、前記励振部の厚みより薄肉で前記励振部の周縁に設けられた周辺部と、を有し、前記励振部の全ての側面は夫々厚み方向に段差部を有し、前記圧電基板の各角隅部の前記各パッドと対応する位置に、前記圧電基板を支持部材に固定する支持領域を有し、前記励振電極は、前記励振部と前記周辺部の少なくとも一部の振動領域とに跨って形成されていることを特徴とする圧電振動素子である。
【0015】
以上のように、全ての側面が段差部を有するメサ型構造の励振部と励振部の周縁に連接された周辺部の一部とに励振電極を設けた圧電振動素子を構成する。振動エネルギーは、主として励振部に振動エネルギーが閉じ込められるが、周辺部の一部に設けた励振電極により、圧電振動素子が励振された際に生じる電荷が、効率的に集められる。その結果、CIの小さい圧電振動素子が得られと共に、屈曲等の不要モードの少ない圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0016】
[適用例3]また本発明に係る圧電振動素子は、前記圧電基板が水晶の結晶軸である、電気軸としてのX軸と、機械軸としてのY軸と、光学軸としてのZ軸と、からなる直交座標系の前記X軸を中心として、前記Z軸を前記Y軸の−Y方向へ傾けた軸をZ’軸とし、前記Y軸を前記Z軸の+Z方向へ傾けた軸をY’軸とし、前記X軸と前記Z’軸に平行な面で構成され、前記Y’軸に平行な方向を厚みとする水晶基板であり、前記水晶基板は、前記X軸に平行な辺を長辺とし前記Z’軸に平行な辺を短辺とし且つその中央に位置する励振部と、前記励振部より薄肉で前記励振部の周縁に設けられた周辺部と、を有し、前記励振部の前記X軸と平行な2つの側面は夫々無段差状の平面であり、前記励振部の前記Z’軸と平行な他の2つの側面は夫々厚み方向に段差部を有していることを特徴とする適用例1に記載の圧電振動素子である。
【0017】
以上のように、Z’軸と平行な2つの側面の厚み方向に段差部を有する励振部と、励振部の周縁に連接された周辺部の一部とに励振電極を設けた圧電振動素子を構成する。振動エネルギーは主として励振部に閉じ込められるが、周辺部の一部に設けた励振電極により、圧電振動素子が励振された際に生じる電荷が、励振電極により効率的に集められる。その結果、CIの小さい圧電振動素子が得られと共に、屈曲等の不要モードの少ない圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0018】
[適用例4]また本発明に係る圧電振動素子は、前記圧電基板が水晶の結晶軸である、電気軸としてのX軸と、機械軸としてのY軸と、光学軸としてのZ軸と、からなる直交座標系の前記X軸を中心として、前記Z軸を前記Y軸の−Y方向へ傾けた軸をZ’軸とし、前記Y軸を前記Z軸の+Z方向へ傾けた軸をY’軸とし、前記X軸と前記Z’軸に平行な面で構成され、前記Y’軸に平行な方向を厚みとする水晶基板であり、前記水晶基板は、前記X軸に平行な辺を長辺とし前記Z’軸に平行な辺を短辺とし且つその中央に位置する励振部と、前記励振部より薄肉で前記励振部の周縁に設けられた周辺部と、を有し、前記励振部の前記X軸と平行な2つの側面、及び前記Z’軸と平行な2つの側面は夫々厚み方向に段差部を有していることを特徴とする適用例2に記載の圧電振動素子である。
【0019】
以上のように、X軸と平行な2つの側面、及び前記Z’軸と平行な2つの側面に夫々厚み方向に段差部を有する励振部と励振部の周縁に連接された周辺部の一部とに励振電極を設けた圧電振動素子を構成する。振動エネルギーは主として励振部に閉じ込められるが、周辺部の一部に設けた励振電極により、圧電振動素子が励振された際に生じる電荷が、励振電極により効率的に集められる。その結果、CIの小さい圧電振動素子が得られと共に、屈曲等の不要モードの少ない圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0020】
[適用例5]また本発明に係る圧電振動素子は、前記圧電基板の前記X軸に平行な方向の寸法をXとし、前記励振部の厚みをtとし、前記支持領域の端部と対向する前記励振電極の端部との距離をΔXとするとき、14≦X/t≦18、且つ、0.04mm≦ΔX≦0.06mmの関係を満たすことを特徴とする適用例3又は4に記載の圧電振動素子である。
【0021】
以上のように、圧電振動素子を構成すれば、CIの低減された圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0022】
[適用例6]また本発明に係る圧電振動素子は、前記圧電基板の前記Z’軸に平行な方向の寸法をZとし、前記励振部の短辺の寸法をMzとし、前記励振部の厚みをtとするとき、8≦Z/t≦11、かつ、0.6≦Mz/Z≦0.8の関係を満たすことを特徴とする適用例3又は4に記載の圧電振動素子である。
【0023】
以上のように、圧電振動素子を構成すれば、CIの低減が図れると共に、屈曲振動等の不要振動との結合のない圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0024】
[適用例7]本発明に係る圧電振動子は、適用例1乃至6のうち何れか一項に記載の圧電振動素子と、前記圧電振動素子を収容するパッケージと、を備えたことを特徴とする圧電振動子である。
【0025】
以上のように、圧電振動子を構成すれば、本発明に係る圧電振動素子を備えているので、CIの小さな圧電振動子が得られるという効果がある。
【0026】
[適用例8]本発明に係る圧電発振器は、適用例1乃至6のうち何れか一項に記載の圧電振動素子と、該圧電振動素子を駆動する発振回路と、絶縁基板と、を備えたことを特徴とする圧電発振器である。
【0027】
以上のように、絶縁基板上に本発明に係るCIの小さな圧電振動素子と、発振回路とが搭載され、且つ絶縁基板上の空間が密封された圧電発振器が構成されるので、小型化されると共に、発振電流が小さくでき、低消費電力化が図られるという効果がある。
【0028】
[適用例9]また本発明に係る圧電発振器は、適用例7に記載の圧電振動子と、該圧電振動子を駆動する発振回路と、を備えたことを特徴とする圧電発振器である。
【0029】
以上のように圧電発振器を構成すれば、本発明に係るCIの小さな圧電振動子を備えており、発振周波数が安定であると共に発振回路の電流を小さくできるので、圧電発振器の消費電力を低減することができるという効果がある。
【0030】
[適用例10]また本発明に係る圧電発振器は、前記発振回路はICに搭載されていることを特徴とする適用例8又は9に記載の圧電発振器である。
【0031】
以上のように圧電発振器を構成すれば、発振回路がIC化されていることにより、圧電発振器が小型化されると共に、信頼性も向上するという効果がある。
【0032】
[適用例11]本発明に係る電子デバイスは、適用例1乃至6のうち何れか一項に記載の圧電振動素子と、少なくとも一つ以上の電子部品と、をパッケージに備えたことを特徴とする電子デバイスである。
【0033】
以上のように、本発明の圧電振動素子と電子部品とで電子デバイスを構成するので、CIの小さな圧電振動素子を有する電子デバイスが構成でき、多方面の用途に利用できるという効果がある。
【0034】
[適用例12]また本発明に係る電子デバイスは、適用例11に記載の電子デバイスにおいて、前記電子部品が、サーミスタ、コンデンサ、リアクタンス素子、半導体素子のうちのいずれかであることを特徴とする電子デバイスである。
【0035】
以上のように、サーミスタ、コンデンサ、リアクタンス素子、半導体素子のうち少なくとも一つの電子部品と、圧電振動素子とを用いて電子デバイスを構成るので、電子機器を構成するに当たって有用なデバイスとなるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係るメサ型構造の圧電振動素子の構成を示した概略図であって、(a)は平面図であり、(b)は(a)のP1−P1断面図。
【図2】図1(a)のQ1−Q1断面図。
【図3】水晶の結晶軸X、Y、ZをX軸の回りにθ回転してできた新直交軸X、Y’、Z’軸とATカット水晶基板との関係を示す図。
【図4】メサ型構造の圧電振動素子の構成を示す平面上に、振動変位エネルギーの等しい点を結んでできた等力線を重ね書きした図。
【図5】メサ型構造の圧電振動素子の、電極面積SとCIとの関係を示す図。
【図6】メサ型構造の圧電振動素子の平面図に励振電極の寸法Le、支持領域−励振電極間の寸法ΔX等を記入した図。
【図7】メサ型構造の圧電振動素子の、支持領域−励振電極間の寸法ΔXとCIとの関係を示す図。
【図8】ATカット水晶基板の表裏面に耐蝕膜を形成した断面図。
【図9】(a)乃至(c)は本実施形態の圧電振動素子の製造方法を模式的に示す断面図。
【図10】(a)乃至(c)は本実施形態の圧電振動素子の製造方法を模式的に示す断面図。
【図11】他の実施形態のメサ型構造の圧電振動素子の概略図であって、(a)は平面図であり、(b)は(a)のP1−P1断面図。
【図12】図11(a)のQ1−Q1断面図。
【図13】他の実施形態のメサ型構造の圧電振動素子の概略平面図。
【図14】(a)は図13のP1−P1断面図、(b)は図13のQ1−Q1断面図。
【図15】他の実施形態のメサ型構造の圧電振動素子の概略図であって、(a)は平面図であり、(b)は(a)のP1−P1断面図。
【図16】図15(a)のQ1−Q1断面図。
【図17】本実施形態に係る圧電振動子を模式的に示した断面図。
【図18】(a)は電子デバイスの実施形態を示す断面図であり、(b)は変形例の実施形態を示す断面図。
【図19】圧電発振器の実施形態を示す断面図。
【図20】(a)は他の実施形態の圧電発振器の断面図であり、(b)は他の実施形態の圧電発振器の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明を図面に示した実施形態に基づいて詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例を含む。なお、以下の実施形態で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0038】
1.圧電振動素子
まず、本実施形態に係る圧電振動素子について、図面を参照しながら説明する。図1及び図2は、本発明の一実施形態に係る圧電振動素子100の構成を示す概略図である。図1(a)は、圧電振動素子100の平面図であり、図1(b)は、同図(a)のP1−P1断面図ある。図2は、図1(a)のQ1−Q1断面図である。
本発明の圧電振動素子100は、中央に位置する多段メサ構造の励振部14、及び励振部14の周縁に連設形成された薄肉の周辺部12を有する圧電基板10と、励振部14の両主面上の全域、及び励振部14に連接する周辺部12の少なくとも一部に夫々対向配置された導体膜から成る励振電極20と、各励振電極20から圧電基板10の一方の端縁に向かって夫々延びる引出電極22と、各引出電極22の端部であり且つ圧電基板10の2つの角隅部に夫々形成されたパッド24と、各パッド24を形成した圧電基板の各角隅部(パッドの領域内)に設けられて圧電基板を支持部材に固定する支持領域26と、を概略備えている。
励振部14は圧電基板の中央部を矩形状に両主面方向へ夫々突出させることにより形成した厚肉部であり、周辺部12は励振部14の外周側面の少なくとも一部の厚み方向中間部から外径方向へ張出し形成されている。
【0039】
圧電基板10は、その中央に位置し主たる振動領域となる励振部14と、励振部14より薄肉で励振部14の周縁に沿って形成された、従たる振動領域となる周辺部12と、を有している。つまり、振動領域は後述するように、励振部14と、周辺部12の一部に跨っている。
平面形状がほぼ矩形である励振部14の対向する2つの側面(長手方向に沿った両側面)は夫々無段差状の1つの平面であり、励振部14の他の対向する2つの側面(短辺方向に沿った2つの側面)は夫々厚み方向に段差部を有した構造をしている。各励振電極20に交番電圧を印加すると、圧電振動素子100は固有の振動周波数で励振される。
【0040】
水晶等の圧電材料は三方晶系に属し、図3に示すように互いに直交する結晶軸X、Y、Zを有する。X軸、Y軸、Z軸は、夫々電気軸、機械軸、光学軸と呼称される。ATカット水晶基板101は、XZ面をX軸の回りに角度θだけ回転させた平面に沿って水晶原石から切り出された平板である。ATカット水晶基板101の場合は、θは略35°15′である。なお、Y軸及びZ軸もX軸の周りにθ回転させて、夫々Y’軸、及びZ’軸とする。従って、ATカット水晶基板101は、直交する結晶軸X、Y’、Z’を有する。ATカット水晶基板101は、厚み方向がY’軸であって、Y’軸に直交するXZ’面(X軸及びZ’軸を含む面)が主面であり、厚みすべり振動が主振動として励振される。このATカット水晶基板101を加工して、圧電基板10を得ることができる。
即ち、圧電基板101は、図3に示すようにX軸(電気軸)、Y軸(機械軸)、Z軸(光学軸)からなる直交座標系のX軸を中心として、Z軸をY軸の−Y方向へ傾けた軸をZ’軸とし、Y軸をZ軸の+Z方向へ傾けた軸をY’軸とし、X軸とZ’軸に平行な面で構成され、Y’軸に平行な方向を厚みとするATカット水晶基板からなる。
【0041】
圧電基板10は、図1(a)に示すように、Y’軸に平行な方向(以下、「Y’軸方向」という)を厚み方向として、X軸に平行な方向(以下、「X軸方向」という)を長辺とし、Z’軸に平行な方向(以下、「Z’軸方向」という)を短辺とする矩形の形状を有する。圧電基板10は、励振部14と、励振部14の周縁に沿って形成された周辺部12と、を有する。ここで、「矩形の形状」とは、文字通りの矩形状と、各角部が面取りされた略矩形をも含むものとする。
周辺部12は、図1、図2に示すように、励振部14の周面(側面)の少なくとも一部に形成され、励振部14より小さい厚み(薄肉)を有する。
【0042】
図1、図2の実施形態に示すように本例に係る励振部14は、その全周を周辺部12に囲まれており、周辺部12のY’軸方向の厚みよりも大きい厚み(厚肉)を有する。即ち、励振部14は、図1(b)及び図2に示すように、周辺部12に対してY’軸方向に突出している。図示の例では、励振部14は周辺部12に対して、+Y’軸側と−Y’軸側とに突出している。励振部14は、例えば対称の中心となる点(図示せず)を有し、この中心点に関して点対称となる形状を有することができる。
励振部14は、図1(a)に示すように、X軸方向を長辺とし、Z’軸方向を短辺とする矩形の形状を有する。即ち、励振部14はX軸に平行な辺を長辺とし、Z’軸に平行な辺を短辺としている。そのため、励振部14は、X軸方向に延びる側面14a、14bと、Z’軸方向に延びる側面14c、14dと、を有する。即ち、X軸方向に延びる側面14a、14bの長手方向は、X軸方向であり、Z’軸方向に延びる側面14c、14dの長手方向は、Z’軸方向である。図示の例では、側面14a、14bのうち、側面14aが+Z’軸側の側面であり、側面14bが−Z’軸側の側面である。また、側面14c、14dのうち、側面14cが−X軸側の側面であり、側面14dが+X軸側の側面である。
【0043】
X軸方向に延びる側面14aは、例えば図1(b)に示すように、周辺部12に対して、+Y’軸側と+Y’軸側とに夫々突出して形成されている。このことは側面14b、14c、14dについても同様である。X軸方向に延びる側面14a、14bの各々は、図1(b)に示すように1つの平面内にある無段差状となっている。即ち、+Y’軸側の側面14aは、1つの平面内であり、−Y’軸側の側面14aは、1つの平面内である。同様に、+Y’軸側の側面14bは、1つの平面内であり、−Y’軸側の側面14bは、1つの平面内である。
なお、本発明に係る記載において、「1つの平面内」とは、励振部14の側面が平坦な面である場合と、水晶の結晶の異方性の分だけ凹凸を有する場合と、を含む。即ち、フッ酸を含む溶液をエッチング液としてATカット水晶基板を加工すると、励振部14の側面は水晶結晶のR面が露出して、XY’面と平行な場合と、水晶結晶のm面が露出して、水晶の結晶異方性の分だけ凹凸を有する場合とがある。本発明に係る記載では、このような水晶結晶のm面による凹凸を有する側面についても「1つの平面内」にあるとしている。便宜上、図1(a)及び図2(a)では、m面による凹凸は省略している。
【0044】
Z’軸方向に延びる側面14c、14dの各々は、図2に示すように、段差を有する。励振部14は、中央に位置する最大厚みを有した第1部分15と、第1部分15より小さい厚みを有する第2部分16と、を有し、側面14c、14dの段差は、第1部分15及び第2部分16の各厚みの差によって形成されている。図示の例では、側面14c、14dは、第1部分15のY’Z’平面に平行な面と、第2部分16のXZ’面に平行な面と、第2部分16のY’Z’平面に平行な面と、によって構成される。
このように励振部14は、厚みの異なる2種類の部分15、16を有しており、圧電振動素子100は、所謂2段型メサ構造を有していると言える。圧電振動素子100は、厚みすべり振動を主振動として振動し、励振部14が2段型メサ構造であることによって、エネルギー閉じ込め効果を有することができる。
【0045】
本発明に係る圧電振動素子100の特徴は、図1、図2の実施形態に示すように、励振電極20が、2段メサ型構造の励振部14の対向する表裏面と、励振部14の段差部14a、14b、14c、14dの各側面と、段差部14a〜14dの各側面に連接された周辺部12の少なくとも一部の対向する表裏面とに形成されていることである。このように、周辺部12の少なくとも一部に励振電極20を広げることにより、後述するように、励振された際に発生する電荷をより効率的に集めることが可能となり、より性能のよい圧電振動素子にすることができる。つまり、圧電振動素子100のCIを小さくすることが可能となる。
【0046】
図4は、圧電振動素子100の平面図上に圧電振動素子100が励振された際に生じる振動変位エネルギー(振動変位の二乗とその位置の質量との積)が、等しい点を結んでできる等力線分布を一点鎖線で示している。中央に位置する等力線のエネルギーレベルが一番高く、外側に位置する等力線程そのエネルギーレベルは低くなっている。図4に示す圧電振動素子100の例では、励振部14がX軸方向に長い矩形状をしているので、等力線分布はX軸方向の長径が長く、Z’軸方向の短径が短い楕円形状となる。振動変位の大きさは励振部14の中心部で最大で、中心部から離間するにつれて小さくなる。即ち、励振電極20上ではX軸方向、Z’軸方向ともほぼ余弦上に分布し、励振電極20のない圧電基板上では指数関数的に減衰する。振動領域は、励振部14と、励振部14に連接する周辺部12に楕円形状に広がっているので、励振部14上にのみ励振電極を設けた構成の圧電振動素子では、圧電基板10に励起される電荷を十分に集められない(ピックアップできない)。励振部14に連接する周辺部12の少なくとも一部に励振電極20を配置し、圧電基板10に励起される電荷を集めるように構成した圧電振動素子100の方が、圧電振動素子としての性能がよい。
【0047】
圧電振動子の性能は、一般的に電気機械結合係数k2で評価される。つまり、電気機械結合係数k2が大きい程、電気−機械の変換効率がよい。容量比γはk2に反比例するので、性能が良い程、容量比γが小さくなる。ここで、容量比γは静電容量C0と直列共振容量C1との比C0/C1で表わされる。また、圧電振動子の性能評価指標としてQ/γも用いられる。
一方、発生する電荷は歪Stに比例する。歪Stは振動変位を座標位置で微分したものである。つまり、発生する電荷は、圧電基板10の振動変位に応じて変化する。励振電極20における振動変位は、励振電極20の中心で頂点となる余弦状である。つまり、励振電極20の端部では振動変位は、中心部に比べて小さくなる。励振電極20を必要以上に大きくしても、効率よく電荷を集めることはできない。
【0048】
図5は、1612サイズ(1.6mm×1.2mm)のパッケージに収容する圧電基板として、X軸方向の寸法Xが1100μm、厚さtが65μmのメサ型構造のATカット水晶基板を用い、励振電極の面積Sを変化させたときのCIを測定した図である。この実験によると、面積Sが小さいと水晶振動子のCIは大きく、面積Sが大きくなるに応じてCIが小さくなり、更に面積Sを大きくするとCIが大きくなることが分かった。つまり、水晶基板の寸法を決めるとCIを最小にする電極面積Sが存在することが実験的に分かった。
更に、水晶基板10のX軸方向の寸法と、励振電極20の寸法との関係を調べるべく、実験を重ねた。図6は、図1(a)に示した圧電振動素子100の平面図に各部の寸法を記入し、励振電極20は斜線を付して示している。つまり、励振電極20は、励振部14と、励振部20に連接する周辺部12の一部とに跨って配置されている。水晶基板10のX軸方向寸法をXとし、励振電極20のX軸方向寸法をLeとする。図6の例では、励振電極20は、励振部14の全域と、周辺部12の一部とに跨っている。水晶基板10の各パッド24内に設けた支持領域26(水晶基板10を、導電性接着剤等を用いて支持部材に固定する領域)の大きさをAdとし、支持領域26の水晶基板10の中央寄り端部と、支持領域26と対向する励振電極20の端部20bとの距離をΔXとする。
【0049】
図7は、距離ΔXとメサ型構造の水晶振動子のCIとの関係を示す図である。距離ΔXが小さいとCIは大きく、距離ΔXを大きくするに応じてCIは小さくなり、更に距離ΔXを大きくしていくとCIは大きくなる。
図7は、距離ΔXと圧電振動素子100のCIとの関係を示すΔX−CI曲線である。ΔX−CI曲線は、2つの性質の異なるメカニズムを示す曲線、つまり単調に減少する曲線Aと、単調に増大する曲線Bとから構成されていると推測した。曲線Aで表わされるCIは、距離ΔXの増加と応じて減少している。このメカニズムは、次のように考えられる。励振電極20上の振動変位分布はほぼ余弦状であり、励振電極20のない周辺部12の振動変位は、励振電極20の端部20bからの距離を変数とし指数関数的に減少する。支持領域26は、この領域に導電性接着剤等を塗布し、水晶基板10をパッケージ等の支持部材に固定する部位である。励振電極20の端部20bから急激に減少しつつある振動変位エネルギーは、支持領域26まで到達し、支持領域26に塗布された接着剤に吸収され漏洩し、消散する。つまり、距離ΔXが大きい程、支持領域26の端部(図面の右端)に到達する振動エネルギーは小さく、漏洩するエネルギーも小さくなる。その結果、水晶振動子のQ値が大きく、CIが小さくなる。
これと逆に、距離ΔXが小さいと、支持領域26の端部(図面の右端)に到達する振動エネルギーは大きく、漏洩するエネルギーが大きくなって、Q値が小さくなる。このため、CIが大きくなる。CIは、距離ΔXの増大に応じて単調に減少する曲線Aとなる。
【0050】
一方、曲線Bについては次のように考えられる。内部損失のみで決まる水晶振動子のQ値は、周波数fに反比例して減少することは、よく知られている。周波数の範囲がそれ程大きくない場合、X軸方向の寸法が1.1mm程度の水晶基板10では、形状寸法を決めると、励振電極の寸法を大幅に変化させない限り、Q値はほぼ一定な値と考えられる。また、水晶振動子の等価直列インダクタンス(モーショナルインダクタンス)L1は、水晶基板の厚さtの三乗に比例し、電極面積に反比例することも周知のことである。
励振電極10を、図6に示すように、中心線Cnに対し、対称に配置するものとする。ここで、水晶基板10を固定する接着剤の影響が無視できる程度に、理想的に支持・固定された場合について考える。距離ΔXが小さい程、つまり励振電極20の寸法Leが大きい程、水晶基板10に励起される電荷を集められる。振動変位は、励振部14の中央を頂点として余弦状に分布するので、励振電極20の端部での電荷収集効率は、悪くなる。従って、励振電極20は大きければよいというものではない。
励振電極20の大きさに応じて決まる等価直列容量C1と、励振電極20の大きさに比例して決まる静電容量C0と、の比C0/C1である容量比γは、最適な励振電極20の大きさがある。等価直列インダクタンスL1と等価直列容量C1とは、ω02=1/(L1・C1)の関係にあるので、励振電極20の寸法Leを大きくすると直列インダクタンスL1は小さく成る。Q値をほぼ一定とすると、水晶振動子のCIは小さくなる。即ち、励振電極20を大きく(寸法Leを大きくする)すると、つまりΔXを小さくすると、CIは小さくなる。
【0051】
しかし、振動変位は周辺部12の周縁では小さくなるので、その部位で励起される電荷は小さく、そこに電極を設けても効率的ではない。また、支持・固定部からの漏洩も考慮する必要がある。距離ΔX大きくしていくと、励振電極20の寸法Leは小さくなってくるが、水晶基板10に励起される電荷を最も効率的に集める励振電極20の寸法Leがある。つまり、容量比γを最小にする寸法Leがある。更に、距離ΔX大きくしていくと、寸法Leが小さくなり、直列インダクタンスL1が大きくなる。Q値をほぼ一定であるとすると、CIが大きくなることに相当する。従って、図7の曲線Bの単調増大曲線で示すように、距離ΔXの増加に応じてCIが大きくなることは説明できる。
つまり、水晶基板10の寸法を決めた場合に、水晶振動子のCIに着目すると、支持領域26からの距離ΔXには、CIを小さくする範囲があることになる。図7からは、CIを68Ωとすると、ΔXの範囲は、0.04mm≦ΔX≦0.06mmである。このΔXの範囲は、X辺比X/tとして、14≦X/t≦18の範囲で実験したが、同様の結果を得た。
【0052】
また、メサ型構造の圧電振動素子100として、圧電基板10のZ’軸方向の寸法(短辺の寸法)をZとし、励振部14の短辺の寸法をMzとし、励振部14の厚み(励振部14の第1部分15の厚み)をtとすると、下記式(1)の関係を満たすことが好ましい。
8≦Z/t≦11、且つ0.6≦Mz/Z≦0.8 (1)
これにより、厚みすべり振動と輪郭振動等の不要モードとの結合を抑圧することができ、CIの低減と周波数温度特性の改善を図ることができる。(詳細は後述)。このような厚みすべり振動と輪郭振動との結合は、一般的に圧電基板の面積が小さいほど抑圧するのが難しい。そのため、例えば圧電基板10のX軸方向の寸法(長辺の寸法)をXとした場合に、下記式(2)の関係を満たすような小型の圧電振動素子100において、上記式(1)の関係を同時に満たすように設計すると、より顕著に厚みすべり振動と輪郭振動との結合を抑圧することができる。
X/t≦18 (2)
励振電極20は、励振部14と、励振部14に連接する周辺部12の少なくとも一部に形成されている。図1(b)及び図2の実施形態例では、励振電極20は励振部14の表裏と、励振部14に連接する周辺部12の表裏の一部に挟んで形成されている。励振電極20は、圧電基板10の振動領域を励振するように作用する。
【0053】
本実施形態に係る圧電振動素子100は、例えば以下の特徴的な効果を発揮する。
図1、2の実施形態例に示すように、一方向(Z’軸方向)に沿って厚み方向に段差部を有するメサ型構造の励振部14と、励振部14の周縁に連接された周辺部12の少なくとも一部とに励振電極20を設けた圧電振動素子100を構成する。振動エネルギーは主として励振部14に閉じ込められるが、周辺部12の一部に設けた励振電極20により、圧電振動素子が励振された際に生じる電荷が効率的に集められる。その結果、CIの小さい圧電振動素子が得られると共に、周波数温度特性が優れ、厚みすべり振動とZ’軸方向の輪郭振動との結合を抑制された圧電振動素子100が得られるという効果がある。
【0054】
また、図6、図7に示したように、X辺比X/tの範囲が14≦X/t≦18である圧電振動子100に対しては、支持領域26の端部と対向する励振電極20の端部20bとの距離をΔXとするとき、0.04mm≦ΔX≦0.06mmの関係を満たすように、圧電振動素子100を構成することにより、圧電振動素子100のCIを小さくすることができるという効果がある。
また、圧電振動素子100によれば、上述の通り、圧電基板10の短辺寸法Z、励振部14の短辺寸法Mz、及び励振部14の第1部分15の厚みtを式(1)の関係を満たすように設定することにより、厚みすべり振動とZ’軸方向の輪郭振動との結合を抑制され、CIの小さな圧電振動素子100が得られるという効果がある。
【0055】
2.圧電振動素子の製造方法
次に、本実施形態に係る圧電振動素子の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図7乃至図9は、本実施形態に係る圧電振動素子100の製造工程を模式的に示す図である。なお、図5乃至図9は、図2に対応している。つまり、Z’軸方向から見た断面図を示している。
図8に示すように、ATカット水晶基板101の表裏主面(XZ’平面に平行な面)に耐蝕膜30を形成する。耐蝕膜30は、例えば、スパッタ法や真空蒸着法などによりクロム及び金をこの順で積層した後、このクロム及び金をパターニングすることによって形成される。パターニングは、例えば、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術によって行われる。耐蝕膜30は、ATカット水晶基板101を加工する際に、エッチング液となるフッ酸を含む溶液に対して耐蝕性を有する。
【0056】
図9(a)に示すように、耐蝕膜30上にポジ型のフォトレジスト膜を塗布した後、このフォトレジスト膜を露光及び現像して、所定の形状を有するレジスト膜40を形成する。レジスト膜40は、耐蝕膜30の一部を覆うように形成される。
次に、図9(b)に示すように、マスクMを用いて再度レジスト膜40の一部を露光して、感光部42を形成する。即ち、マスクMをY’軸方向から見てレジスト膜40の外縁の内側に配置して露光を行う。
次に、図9(c)に示すように、耐蝕膜30をマスクとしてATカット水晶基板101をエッチングする。エッチングは、例えば、フッ化水素酸(フッ酸)とフッ化アンモニウムとの混合液をエッチング液として行われる。これにより、圧電基板10の外形(Y’軸方向から見たときの形状)が形成される。
【0057】
次に、図10(a)に示すように、レジスト膜40をマスクとして、所定のエッチング液で耐蝕膜30をエッチングした後、さらに、上述の混合液をエッチング液として、ATカット水晶基板101を所定の深さまでハーフエッチングすると、励振部14の外形が形成される。
次に、図10(b)に示すように、レジスト膜40の感光部42を現像して除去する。これにより、耐蝕膜30の一部が露出する。なお、感光部42を現像する前に、例えば、真空又は減圧雰囲気下で放電により形成された酸素プラズマによって、レジスト膜40の表面に形成された変質層(図示せず)をアッシングする。これにより、確実に感光部42を現像して除去することができる。
次に、図10(c)に示すように、レジスト膜40をマスクとして、所定のエッチング液で耐蝕膜30の露出部分をエッチング除去した後、さらに、上述の混合液をエッチング液としてATカット水晶基板101を所定の深さまでハーフエッチングする。これにより、Z’軸方向に延びる側面14c、14dの各々に段差を形成することができる。また、図示しないが、X軸方向に延びる側面14a、14bの各々に段差を形成することができる。
【0058】
以上の工程により、周辺部12及び励振部14を有する圧電基板10を形成することができる。
レジスト膜40及び耐蝕膜30を除去した後、例えばスパッタ法や真空蒸着法などにより、クロム及び金をこの順で積層した後、このクロム及び金をパターニングすることによって、圧電基板10に励振電極20、引出電極22、及びパッド24が形成される。つまり、図1、図2の実施の形態に示すように、励振電極20は、励振部14の全域と、励振部14に連接する周辺部12の一部の領域とに設けられた圧電振動素子が形成される。
【0059】
以上の工程により、本実施形態に係る圧電振動素子100を製造することができる。
圧電振動素子100の製造方法によれば、励振部14の外形を形成するために用いたレジスト膜40を現像して感光部を除去した後、再度レジスト膜40を用いてAT水晶基板101をエッチングして励振部14を形成することができる。そのため、精度よく2段型メサ構造の励振部14を形成することができる。
例えば、励振部14を形成するために2回のレジスト膜を塗布する場合(例えば、第1レジスト膜を用いて励振部の外形を形成した後、第1のレジスト膜を剥離し、新たに第2レジスト膜を塗布して励振部の側面を露出する場合)は、第1のレジスト膜と第2のレジスト膜との間で合わせずれが生じ、励振部14を精度よく形成できないことがある。圧電振動素子100の製造方法では、このような問題を解決することができる。
【0060】
3.圧電振動素子の変形例
次に、本実施形態の変形例に係る圧電振動素子について、図面を参照しながら説明する。図11(a)は、本実施形態の変形例に係る圧電振動素子110を模式的に示す平面図である。図11(b)は、(a)のP1−P1断面図である。図12は、図11(a)のQ1−Q1断面図である。以下、本実施形態の変形例に係る圧電振動素子110において、本実施形態に係る100の構成部材と同様な構造、機能を有する部材については同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0061】
本発明に係る圧電振動素子110は、中央に位置する多段メサ構造の励振部14、及び励振部14の周縁に連設形成された薄肉の周辺部12を有する圧電基板10と、励振部14の両主面上に夫々対向配置された励振電極20と、各励振電極20から圧電基板10の端部に向かって延びる引出電極22と、引出電極22の端部であり且つ圧電基板10の2つの角隅部に夫々形成されたパッド24と、を概略備えている。
励振部14は、圧電基板の略中央部を両主面方向へ突出させた厚肉部であり、周辺部12は、励振部14の外周側面の少なくとも一部の厚み方向中間部から外径方向へ張出し形成されている。本例に係る周辺部12は、励振部14の全外周側面から鍔状に張出し形成されている。
【0062】
圧電基板10は、その中央に位置し主たる振動領域となる励振部14と、励振部14より薄肉で励振部14の全周縁に沿って鍔状に形成された周辺部12と、を有している。平面形状がほぼ矩形である励振部14の全ての側面は夫々厚み方向に段差部を有した構造をしている。即ち、図11(b)、図12に示すように、圧電基板10は、側面から見て全ての側面が階段状をした励振部14と、励振部14の厚さの中央部の周囲に連接された周辺部12と、を有した圧電基板である。
図11、図12に示すように、本実施形態例に係る励振部14は、全ての側面が段差状であって、その全周を周辺部12に囲まれており、周辺部12のY’軸方向の厚みよりも大きい厚み(厚肉)を有する。即ち、励振部14は、図11(b)及び図12に示すように、周辺部12に対してY’軸方向両方向に突出している。図示の例では、励振部14は周辺部12に対して、+Y’軸側と−Y’軸側とに突出している。また、励振部14は、例えば対称の中心となる点(図示せず)を有し、この中心点に関して点対称(平面的、立体的に点対称)となる形状を有することができる。
【0063】
励振部14は、図11(a)に示すように、X軸方向を長辺とし、Z’軸方向を短辺とする矩形の形状を有する。即ち、励振部14はX軸に平行な辺を長辺とし、Z’軸に平行な辺を短辺としている。そのため、励振部14は、X軸方向に延びる側面14a、14bと、Z’軸方向に延びる側面14c、14dと、を有する。即ち、X軸方向に延びる側面14a、14bの長手方向は、X軸方向であり、Z’軸方向に延びる側面14c、14dの長手方向は、Z’軸方向である。図示の例では、側面14a、14bのうち、側面14aが+Z’軸側の側面であり、側面14bが−Z’軸側の側面である。また、側面14c、14dのうち、側面14cが−X軸側の側面であり、側面14dが+X軸側の側面である。
図11及び図12に示すように、励振部14は、最も厚い第1部分15と、第1部分15より小さい厚みを有する第2部分16と、を有する。第1部分15は、図11に示すように、X軸に平行な方向を長辺とし、Z’軸に平行な方向を短辺とする矩形の形状を有する。第2部分16は、第1部分15の周囲に形成されている。
【0064】
励振部14の側面14a、14bの段差は、第1部分15及び第2部分16の各厚みの差によって形成されている。図示の例では、側面14a、14bは、第1部分15のXY’平面に平行な面と、第2部分16のXZ’面に平行な面と、第2部分16のXY’平面に平行な面と、によって構成される。同様に、励振部14の側面14c、14dの段差は、第1部分15及び第2部分16の各厚みの差によって形成され、第1部分15のY’Z’平面に平行な面と、第2部分16のXZ’面に平行な面と、第2部分16のY’Z’平面に平行な面と、によって構成される。
このように励振部14は、厚みの異なる2種類の部分15、16を有しており、圧電振動素子100は、2段型のメサ構造を有していると言える。励振部14は、厚みすべり振動を主振動として振動することができる。
図11、図12の実施形態例のように、X軸と平行な2つの側面、及び前記Z’軸と平行な2つの側面に夫々厚み方向に段差部を有する励振部14と励振部14の周縁に連接された周辺部12の少なくとも一部とに励振電極20を設けた圧電振動素子110を構成する。振動エネルギーは、主として励振部14に振動エネルギーが閉じ込められるが、周辺部12の一部に設けた励振電極20により、圧電振動素子110が励振された際に生じる電荷が効率的に集められる。その結果、CIの小さい圧電振動素子が得られと共に、屈曲等の不要モードの少ない圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0065】
図13は、本実施形態の他の変形例に係る圧電振動素子120を模式的に示す平面図である。図14(b)は、図13のP1−P1断面図であり、図14(b)は、図13のQ1−Q1断面図である。
圧電振動素子120では、3段のメサ構造を有する。即ち、圧電振動素子120の励振部14は、第1部分15、第2部分16に加え、第2部分16より厚みの小さい第3部分17を有する。第3部分17は、第1部分15、及び第2部分16をX軸方向から挟むように形成されている。
Z’軸方向に延びる側面14c、14dの段差は、図14(b)に示すように、第1部分15、第2部分16、及び第3部分17の厚みの差によって形成されている。図示の例では、側面14c、14dは、第1部分15のY’Z’平面に平行な面と、第2部分16のXZ’平面に平行な面と、第2部分16のY’Z’平面に平行な面と、第3部分17のXZ’平面に平行な面と、第3部分17のY’Z’平面に平行な面と、によって構成されている。
【0066】
また、第1部分15、第2部分16、及び第3部分17から成る励振部14は、第3部分17の周縁に沿って、第3部分17の厚みより薄い周辺部12が形成されている。励振部14及び周辺部12の一部に表裏対向して形成された励振電極20、各励振電極20からの引出電極22、及び各引出電極22の終端である2つのパッド24も、圧電振動素子100と同様に形成されている。圧電振動素子200は、圧電振動素子100の製造方法を適用して製造することができる。圧電振動素子120によれば、2段型のメサ構造を有する圧電振動素子100に比べて、エネルギー閉じ込め効果をより高めることができる。更に、主として励振部14に振動エネルギーが閉じ込められると共に、本発明の励振電極20により、圧電振動素子120が励振された際に生じる電荷が励振電極により効率的に集められる。その結果、CIの小さい圧電振動素子が得られと共に、屈曲振動等の不要モードとの結合の少ない圧電振動素子120が得られるという効果がある。
【0067】
図15(a)は、本実施形態の他の変形例に係る圧電振動素子130を模式的に示す平面図であり、図15(b)は、(a)のP1−P1断面図である。図16は、図15(a)のQ1−Q1断面図である。
圧電振動素子130では、3段のメサ構造を有する圧電振動素子である。即ち、圧電振動素子130の励振部14は、第1部分15、第2部分16に加え、第2部分16より厚みの小さい第3部分17を有する。第3部分17は、第2部分16の周縁を囲むように形成されている。励振部14は、その周縁、即ち第3部分17の側面の厚み方向中央部周縁に、周辺部12が一体的に連接されている。励振部14の両主面上と周辺部12の一部に表裏対向して形成された励振電極20、各励振電極20からの引出電極22、及び各引出電極22の終端である2つのパッド24も、圧電振動素子100と同様に形成されている。
圧電振動素子130は、圧電振動素子100の製造方法を適用して製造することができる。圧電振動素子130によれば、2段型のメサ構造を有する圧電振動素子110に比べて、エネルギー閉じ込め効果をより高めることができる。主として励振部14に振動エネルギーが閉じ込められると共に、本発明の励振電極20により、圧電振動素子120が励振された際に生じる電荷が励振電極により効率的に集められる。その結果、CIの小さい圧電振動素子が得られと共に、屈曲振動等の不要モードとの結合の少ない圧電振動素子120が得られるという効果がある。
なお、上述の例では、3段型のメサ構造を有する圧電振動素子120、130について説明したが、本願に係る発明は多段型のメサ構造において、メサ構造の段数(段差の数)は特に限定されない。
【0068】
4.圧電振動子
次に、本実施形態に係る圧電振動子について、図面を参照しながら説明する。図17は、本実施形態に係る圧電振動子200を模式的に示す断面図である。
図17は、圧電振動子200の構成を示す長手方向(X軸方向)の断面図であり、図2に示した圧電振動素子100の断面図と同様な位置における断面図である。圧電振動子200は、図17に示すように、本発明に係る圧電振動素子(図示の例では圧電振動素子100であるが、圧電振動素子110、120、130でも同様である)と、パッケージ50と、を含む。
【0069】
パッケージ50は、キャビティー52内に圧電振動素子100を収容することができる。パッケージ50の材質としては、例えば、セラミック、ガラス等が挙げられる。キャビティー52は、圧電振動素子100が動作するための空間となる。キャビティー52は密閉され、減圧空間や不活性ガス雰囲気とされる。
圧電振動素子100は、パッケージ50のキャビティー52内に収容されている。図示の例では、圧電振動素子100は、支持領域26内に正確に導電性接着剤60を塗布し、片持ち梁状にキャビティー52内に固定されている。導電性接着剤60としては、例えば、半田、銀ペースト等を用いることができる。
図17の実施形態に示すように、圧電振動子200によれば、本発明に係る圧電振動素子100を有するので、屈曲振動等の不要振動との結合がなく、且つCIの小さい圧電振動子200が得られるという効果がある。
【0070】
5.電子デバイスと圧電発振器
次に、本実施形態に係る電子デバイスと圧電発振器について、図面を参照しながら説明する。
図18(a)は、本発明の電子デバイス400に係る実施形態の一例の断面図である。電子デバイス400は、本発明の圧電振動素子100(図21(a)では圧電振動素子100を示したが、本発明の他の圧電振動素子であってもよい)と、感温素子であるサーミスタ58と、圧電振動素子100及びサーミスタ58を収容するパッケージ50と、を概略備えている。パッケージ50は、パッケージ本体50aと、蓋部材50cとを備えている。パッケージ本体50aは、上面側に圧電振動素子100を収容するキャビティー52が形成され、下面側にサーミスタ58を収容する凹部54aが形成されている。キャビティー52の内底面の端部に複数の素子搭載用パッド55aが設けられ、各素子搭載用パッド55aは内部導体57で複数の実装端子53と導通接続されている。素子搭載用パッド55aに圧電振動素子100を載置し、各パッド24と各素子搭載用パッド55aとを、導電性接着剤60を介して電気的に接続し、固定する。パッケージ本体50aの上部には、コバール等からなるシールリングリング50bが焼成されており、このシールリングリング50bに蓋部材50cを載置し、抵抗溶接機を用いて溶接し、キャビティー52を気密封止する。キャビティー52内は真空にしてもよいし、不活性ガスを封入してもよい。
一方、パッケージ本体50aの下面側中央には凹部54aが形成され、凹部54aの上面には電子部品搭載用パッド55bが焼成されている。サーミスタ58は、電子部品搭載用パッド55bに半田等を用いて搭載される。電子部品搭載用パッド55bは、内部導体57で複数の実装端子53と導通接続されている。
【0071】
図18(b)は、同図(a)の変形例の電子デバイス410であって、電子デバイス400と異なる点は、パッケージ本体50aのキャビティー52底面に凹部54bが形成され、この凹部54bの底面に焼成された電子部品搭載パッド55bに、金属バンプ等を介してサーミスタ58が接続されている構成である。電子部品搭載パッド55bは実装端子53と導通されている。つまり、圧電振動素子100と感温素子のサーミスタ58とが、キャビティー52内に収容され、気密封止されている。
以上では、圧電振動素子100とサーミスタ58とをパッケージ50に収容した例を説明したが、パッケージ50収容する電子部品としては、サーミスタ、コンデンサ、リアクタンス素子、半導体素子のうち少なくとも一つを収容した電子デバイスを構成することが望ましい。
【0072】
図18(a)、(b)に示す実施形態例は、圧電振動素子100とサーミスタ58とをパッケージ50に収容した例である。このように構成すると、感温素子のサーミスタ58が圧電振動素子100の極めて近くに位置しているので、圧電振動素子100の温度変化を素早く感知することができるという効果がある。また、本発明の圧電振動素子と上記の電子部品とで電子デバイスを構成することにより、CIの小さな圧電振動素子を有する電子デバイスが構成できるので、多方面の用途に利用できるという効果がある。
【0073】
本発明に係る圧電振動素子を使用した圧電振動子のパッケージに対して、圧電振動子を駆動し、増幅する発振回路を搭載したIC部品を組み付けることにより、圧電発振器を構築することができる。
図19は、本発明の圧電発振器500に係る実施形態の一例の断面図である。圧電発振器500は、本発明の圧電振動素子100(図19では圧電振動素子100を示したが、本発明の他の圧電振動素子であってもよい)と、単層の絶縁基板70と、圧電振動素子100を駆動するIC(半導体素子)88と、圧電振動素子100及びIC88を含む絶縁基板70の表面空間を気密封止する凸状の蓋部材80と、を概略備えている。絶縁基板70は、表面に圧電振動素子100及びIC88を搭載するための複数の素子搭載パッド74a、電子部品搭載パッド74bを有すると共に、裏面に外部回路との接続用の実装端子76を備えている。素子搭載パッド74a及び電子部品搭載パッド74bと実装端子76とは、絶縁基板70を貫通する導体78により導通されている。更に、絶縁基板70表面に形成された導体配線(図示せず)により、素子搭載パッド74aと電子部品搭載パッド74bとは導通が図られている。金属バンプ等を用いてIC88を電子部品搭載パッド74bに搭載した後、素子搭載パッド74aに導電性接着剤60を塗布し、その上に圧電振動素子100のパッド24を載置し、恒温槽内で硬化させて導通・固定を図る。凸状の蓋部材80と絶縁基板70とは、絶縁基板70の上面周縁に塗布した低融点ガラス85によって密封される。このとき、封止工程を真空中で行うことにより内部を真空にすることができる。
【0074】
図20(a)は、本発明の他の実施形態の圧電発振器510の断面図である。圧電発振器510は、本発明の圧電振動素子100と、パッケージ本体90と、圧電振動素子100を駆動するIC88と、圧電振動素子100を気密封止する蓋部材90cと、を概略備えている。パッケージ本体90は、圧電振動素子100を収容するキャビティー52を有する上部90aと、IC88を収容する凹部90dを有する下部90bとから成る、所謂H型構造のパッケージ本体である。圧電振動素子100は、キャビティー52底部の端部に形成された素子搭載パッド74aに、導電性接着剤60を塗布し、この上に載置し、熱硬化することにより導通・固定される。IC88は、パッケージ本体90の下面側の凹部90dの上面に形成された電子部品搭載パッド74bに、金属バンプ79により接続・固定される。素子搭載パッド74a及び電子部品搭載パッド74bは、内部導体78により導通接続されている。パッケージ本体90の上部に焼成されたシールリング(図示せず)に蓋部材90cを載置し、抵抗溶接機等を用いて溶接し、気密封止する。キャビティー52内は真空にしてもよいし、不活性ガスを封入してもよい。
【0075】
図20(b)は、本発明の他の実施形態の圧電発振器520の断面図である。圧電発振器520は、本発明の圧電振動子300と、パッケージ本体90と、圧電振動子300を駆動するIC88と、圧電振動子300気密封止する蓋部材90cと、を概略備えている。パッケージ本体90は、圧電振動子300を収容するキャビティー52を有する上部90aと、ICを収容する凹部90dを有する下部90bとから成る、所謂H型構造のパッケージ本体である。圧電振動子300は、キャビティー52底部の両端部に形成された素子搭載パッド74aに載置され、半田又は金属バンプ等により接続固定される。IC88は、パッケージ本体90の下面側の凹部90dの上面に形成された素子搭載パッド74bに、金属バンプ79により接続・固定される。素子搭載パッド74a及び電子部品搭載パッド74bは、内部導体78により導通されている。パッケージ本体90の上部に焼成されたシールリング(図示せず)に蓋部材90cを載置し、抵抗溶接機を用いて溶接する。圧電振動素子は二重に気密封止されている。
IC88は、圧電振動子300を駆動する発振回路と、圧電振動子300の周囲の温度を感知する感温素子と、圧電振動子300の周波数温度特性を補償する補償回路と、電圧可変容量素子等を含むことができる。
【0076】
図19の実施形態の圧電発振器500は、パッケージ内に本発明に係るCIが小さな圧電振動素子100と、IC(発振回路を含む)88とを備えており、圧電発振器が小型化されると共に、発振回路の発振電流を小さくできるので、低消費電力化が図れるという効果がある。
図20(a)の実施形態の圧電発振器510は、パッケージ内に本発明に係るCIが小さな圧電振動素子100と、IC(発振回路を含む)88とを備えており、圧電発振器低消費電力化が図れるという効果がある。更に、IC88を外部より調整可能することができるため、より周波数温度特性が優れ、多機能の圧電発振器を構成できるという効果がある。
図20(b)の実施形態の圧電発振器520は、パッケージに収容した圧電振動子300を用いているので、エージング等の周波数安定度が優れ、多機能で信頼性のある圧電発振器を構成できるという効果がある。
【0077】
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
なお、上述した圧電発振器等の電子デバイスにおいては、圧電振動子に半導体素子(IC)に代表される電子部品を備えた構成として説明したが、少なくとも一以上の電子部品を備えることが好適である。そして前記電子部品としては、サーミスタ、コンデンサ、リアクタンス素子等を適用することができ、圧電振動片を発振源として用いた電子デバイスを構築することができる。
【符号の説明】
【0078】
10…圧電基板、11…突起部、11a、11b…突起部分、12…周辺部、14…励振部、14a、14b…X軸方向に延びる側面、14c、14d…Z’軸方向に延びる側面、15…第1部分、16…第2部分、17…第3部分、20…励振電極、22…引出電極、24…パッド、26…支持領域、30…耐蝕膜、40…レジスト膜、42…感光部、50…パッケージ、50a、90…パッケージ本体、50b…シールリングリング、50c、80、90c…蓋部材、52…キャビティー、53…実装端子、54a、54b、90d…凹部、55a、74a…素子搭載用パッド、55b、74b…電子部品搭載用パッド、57…内部導体、58…サーミスタ、60…導電性接着剤、70…絶縁基板、76…実装端子、78…導体、79金…属バンプ、85…低融点ガラス、88…IC(半導体素子)、100、110、120、130…圧電振動素子、101…ATカット水晶基板、200…圧電振動子、400、410…電子デバイス、500、510、520…圧電発振器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、前記圧電基板の両主面に夫々対向配置された各励振電極と、前記各励振電極から該圧電基板の一方の端部に向かって延びる引出電極と、前記各引出電極と電気的に接続され前記圧電基板の2つの角隅部に夫々形成されたパッドと、を備えた圧電振動素子であって、
前記圧電基板は、中央に位置する励振部と、前記励振部の厚みより薄肉で前記励振部の周縁に設けられた周辺部と、を有し、
前記励振部の対向する2つの側面は夫々無段差状の平面であり、前記励振部の他の対向する2つの側面は夫々厚み方向に段差部を有し、
前記圧電基板の各角隅部の前記各パッドと対応する位置に、前記圧電基板を支持部材に固定する支持領域を有し、
前記励振電極は、前記励振部と前記周辺部の少なくとも一部の振動領域とに跨って形成されていることを特徴とする圧電振動素子。
【請求項2】
圧電基板と、前記圧電基板の両主面に夫々対向配置された各励振電極と、前記各励振電極から該圧電基板の一方の端部に向かって延びる引出電極と、前記各引出電極と電気的に接続され前記圧電基板の2つの角隅部に夫々形成されたパッドと、を備えた圧電振動素子であって、
前記圧電基板は、中央に位置する励振部と、前記励振部の厚みより薄肉で前記励振部の周縁に設けられた周辺部と、を有し、
前記励振部の全ての側面は夫々厚み方向に段差部を有し、
前記圧電基板の各角隅部の前記各パッドと対応する位置に、前記圧電基板を支持部材に固定する支持領域を有し、
前記励振電極は、前記励振部と前記周辺部の少なくとも一部の振動領域とに跨って形成されていることを特徴とする圧電振動素子。
【請求項3】
前記圧電基板は、水晶の結晶軸である、電気軸としてのX軸と、機械軸としてのY軸と、光学軸としてのZ軸と、からなる直交座標系の前記X軸を中心として、前記Z軸を前記Y軸の−Y方向へ傾けた軸をZ’軸とし、前記Y軸を前記Z軸の+Z方向へ傾けた軸をY’軸とし、前記X軸と前記Z’軸に平行な面で構成され、前記Y’軸に平行な方向を厚みとする水晶基板であり、
前記水晶基板は、前記X軸に平行な辺を長辺とし前記Z’軸に平行な辺を短辺とし且つその中央に位置する励振部と、前記励振部より薄肉で前記励振部の周縁に設けられた周辺部と、を有し、
前記励振部の前記X軸と平行な2つの側面は夫々無段差状の平面であり、前記励振部の前記Z’軸と平行な他の2つの側面は夫々厚み方向に段差部を有していることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動素子。
【請求項4】
前記圧電基板は、水晶の結晶軸である、電気軸としてのX軸と、機械軸としてのY軸と、光学軸としてのZ軸と、からなる直交座標系の前記X軸を中心として、前記Z軸を前記Y軸の−Y方向へ傾けた軸をZ’軸とし、前記Y軸を前記Z軸の+Z方向へ傾けた軸をY’軸とし、前記X軸と前記Z’軸に平行な面で構成され、前記Y’軸に平行な方向を厚みとする水晶基板であり、
前記水晶基板は、前記X軸に平行な辺を長辺とし前記Z’軸に平行な辺を短辺とし且つその中央に位置する励振部と、前記励振部より薄肉で前記励振部の周縁に設けられた周辺部と、を有し、
前記励振部の前記X軸と平行な2つの側面、及び前記Z’軸と平行な2つの側面は夫々厚み方向に段差部を有していることを特徴とする請求項2に記載の圧電振動素子。
【請求項5】
前記圧電基板の前記X軸に平行な方向の寸法をXとし、前記励振部の厚みをtとし、
前記支持領域の端部と対向する前記励振電極の端部との距離をΔXとするとき、
14≦X/t≦18、且つ、0.04mm≦ΔX≦0.06mmの関係を満たすことを特徴とする請求項3又は4に記載の圧電振動素子。
【請求項6】
前記圧電基板の前記Z’軸に平行な方向の寸法をZとし、前記励振部の短辺の寸法をMzとし、前記励振部の厚みをtとするとき、
8≦Z/t≦11、かつ、0.6≦Mz/Z≦0.8の関係を満たすことを特徴とする請求項3又は4に記載の圧電振動素子。
【請求項7】
請求項1乃至6のうち何れか一項に記載の圧電振動素子と、前記圧電振動素子を収容するパッケージと、を備えたことを特徴とする圧電振動子。
【請求項8】
請求項1乃至6のうち何れか一項に記載の圧電振動素子と、該圧電振動素子を駆動する発振回路と、絶縁基板と、を備えたことを特徴とする圧電発振器。
【請求項9】
請求項7に記載の圧電振動子と、該圧電振動子を駆動する発振回路と、を備えたことを特徴とする圧電発振器。
【請求項10】
前記発振回路はICに搭載されていることを特徴とする請求項8又は9に記載の圧電発振器。
【請求項11】
請求項1乃至6のうち何れか一項に記載の圧電振動素子と、少なくとも一つ以上の電子部品と、をパッケージに備えたことを特徴とする電子デバイス。
【請求項12】
請求項11に記載の電子デバイスにおいて、前記電子部品が、サーミスタ、コンデンサ、リアクタンス素子、半導体素子のうちのいずれかであることを特徴とする電子デバイス。
【請求項1】
圧電基板と、前記圧電基板の両主面に夫々対向配置された各励振電極と、前記各励振電極から該圧電基板の一方の端部に向かって延びる引出電極と、前記各引出電極と電気的に接続され前記圧電基板の2つの角隅部に夫々形成されたパッドと、を備えた圧電振動素子であって、
前記圧電基板は、中央に位置する励振部と、前記励振部の厚みより薄肉で前記励振部の周縁に設けられた周辺部と、を有し、
前記励振部の対向する2つの側面は夫々無段差状の平面であり、前記励振部の他の対向する2つの側面は夫々厚み方向に段差部を有し、
前記圧電基板の各角隅部の前記各パッドと対応する位置に、前記圧電基板を支持部材に固定する支持領域を有し、
前記励振電極は、前記励振部と前記周辺部の少なくとも一部の振動領域とに跨って形成されていることを特徴とする圧電振動素子。
【請求項2】
圧電基板と、前記圧電基板の両主面に夫々対向配置された各励振電極と、前記各励振電極から該圧電基板の一方の端部に向かって延びる引出電極と、前記各引出電極と電気的に接続され前記圧電基板の2つの角隅部に夫々形成されたパッドと、を備えた圧電振動素子であって、
前記圧電基板は、中央に位置する励振部と、前記励振部の厚みより薄肉で前記励振部の周縁に設けられた周辺部と、を有し、
前記励振部の全ての側面は夫々厚み方向に段差部を有し、
前記圧電基板の各角隅部の前記各パッドと対応する位置に、前記圧電基板を支持部材に固定する支持領域を有し、
前記励振電極は、前記励振部と前記周辺部の少なくとも一部の振動領域とに跨って形成されていることを特徴とする圧電振動素子。
【請求項3】
前記圧電基板は、水晶の結晶軸である、電気軸としてのX軸と、機械軸としてのY軸と、光学軸としてのZ軸と、からなる直交座標系の前記X軸を中心として、前記Z軸を前記Y軸の−Y方向へ傾けた軸をZ’軸とし、前記Y軸を前記Z軸の+Z方向へ傾けた軸をY’軸とし、前記X軸と前記Z’軸に平行な面で構成され、前記Y’軸に平行な方向を厚みとする水晶基板であり、
前記水晶基板は、前記X軸に平行な辺を長辺とし前記Z’軸に平行な辺を短辺とし且つその中央に位置する励振部と、前記励振部より薄肉で前記励振部の周縁に設けられた周辺部と、を有し、
前記励振部の前記X軸と平行な2つの側面は夫々無段差状の平面であり、前記励振部の前記Z’軸と平行な他の2つの側面は夫々厚み方向に段差部を有していることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動素子。
【請求項4】
前記圧電基板は、水晶の結晶軸である、電気軸としてのX軸と、機械軸としてのY軸と、光学軸としてのZ軸と、からなる直交座標系の前記X軸を中心として、前記Z軸を前記Y軸の−Y方向へ傾けた軸をZ’軸とし、前記Y軸を前記Z軸の+Z方向へ傾けた軸をY’軸とし、前記X軸と前記Z’軸に平行な面で構成され、前記Y’軸に平行な方向を厚みとする水晶基板であり、
前記水晶基板は、前記X軸に平行な辺を長辺とし前記Z’軸に平行な辺を短辺とし且つその中央に位置する励振部と、前記励振部より薄肉で前記励振部の周縁に設けられた周辺部と、を有し、
前記励振部の前記X軸と平行な2つの側面、及び前記Z’軸と平行な2つの側面は夫々厚み方向に段差部を有していることを特徴とする請求項2に記載の圧電振動素子。
【請求項5】
前記圧電基板の前記X軸に平行な方向の寸法をXとし、前記励振部の厚みをtとし、
前記支持領域の端部と対向する前記励振電極の端部との距離をΔXとするとき、
14≦X/t≦18、且つ、0.04mm≦ΔX≦0.06mmの関係を満たすことを特徴とする請求項3又は4に記載の圧電振動素子。
【請求項6】
前記圧電基板の前記Z’軸に平行な方向の寸法をZとし、前記励振部の短辺の寸法をMzとし、前記励振部の厚みをtとするとき、
8≦Z/t≦11、かつ、0.6≦Mz/Z≦0.8の関係を満たすことを特徴とする請求項3又は4に記載の圧電振動素子。
【請求項7】
請求項1乃至6のうち何れか一項に記載の圧電振動素子と、前記圧電振動素子を収容するパッケージと、を備えたことを特徴とする圧電振動子。
【請求項8】
請求項1乃至6のうち何れか一項に記載の圧電振動素子と、該圧電振動素子を駆動する発振回路と、絶縁基板と、を備えたことを特徴とする圧電発振器。
【請求項9】
請求項7に記載の圧電振動子と、該圧電振動子を駆動する発振回路と、を備えたことを特徴とする圧電発振器。
【請求項10】
前記発振回路はICに搭載されていることを特徴とする請求項8又は9に記載の圧電発振器。
【請求項11】
請求項1乃至6のうち何れか一項に記載の圧電振動素子と、少なくとも一つ以上の電子部品と、をパッケージに備えたことを特徴とする電子デバイス。
【請求項12】
請求項11に記載の電子デバイスにおいて、前記電子部品が、サーミスタ、コンデンサ、リアクタンス素子、半導体素子のうちのいずれかであることを特徴とする電子デバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−199602(P2012−199602A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60457(P2011−60457)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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