説明

圧電発振器

【課題】2次および3次の温度特性を有する圧電振動片を混載した圧電発振器において、外部実装基板からの熱による周波数の変動を抑えた、優れた発振特性を有する圧電発振器を提供する。
【解決手段】パッケージ10は、実装面と天井面との間に中間基板層11を有し、この中間基板層11の実装面側に設けられた凹部と実装面側リッド8とにより実装面側キャビティ51が形成され、中間基板層11の天井面側に設けられた二つの凹部と天井面側リッド9とにより第1の天井面側キャビティ52Aおよび第2の天井面側キャビティ52Bが形成されている。実装面側キャビティ51内には3次の温度特性を有するATカット水晶振動片30が接合されている。また、第1の天井面側キャビティ52A内には2次の温度特性を有する音叉型水晶振動片20が接合され、第2の天井面側キャビティ52B内にはICチップ40が接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次の温度特性を有する圧電振動片と、3次の温度特性を有する圧電振動片と、前記の圧電振動片を発振させる半導体回路素子とが、同一パッケージ内に接合されて封止された圧電発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、水晶などの圧電基板を所定の角度および厚さに切り出した薄板が固有の共振周波数を有する特性を利用し、薄板の対向する面にそれぞれ設けた電極に電圧を印加して、その電圧による圧電効果によって振動する圧電振動片をパッケージ内に接合して気密に封止した圧電デバイスが広く利用されている。圧電デバイスのパッケージ内に接合される圧電振動片としては、例えば、圧電基板を所謂ATカットと呼ばれるカット角にて切り出した薄板を用いた厚み滑り振動をするATカット水晶振動片や、圧電基板を加工することにより、基部と、その基部の一端部から略平行に延出する二つの振動腕が形成された音叉状の音叉型圧電振動片などが利用される。ATカット水晶振動片は温度特性に優れた3次の温度特性を有し、音叉型水晶振動片は2次の温度特性を有している。このような圧電振動片を備えた圧電デバイスの一つとして、同一パッケージ内に圧電振動片とともに発振回路が組み込まれて構成された圧電発振器が、周波数あるいは時間などの基準源として広く用いられている。
【0003】
近年、広く普及している携帯電話や、その他の携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistant)などの小型の情報用通信機器においては、ATカット水晶振動片を用いた圧電発振器は、例えば通信用の基準周波数12.8〜26MHzの高周波帯域の周波数信号を取り出すのに用いられ、音叉型水晶振動片を用いた圧電発振器は、例えば時計用の32.768KHzの低周波数帯域の時計用信号を取り出すのに用いられる。
ところで、小型の情報用通信機器では、なお一層の小型化の要望が強くなっており、これに伴って、情報用通信機器内に搭載される圧電発振器においても、より小型化する要求が高まっている。このような要求に応える圧電発振器として、ATカット振動片と、音叉型振動片と、これらの振動片を発振させる半導体回路素子とを、一つのパッケージ内に収容した圧電発振器が提案されている(例えば特許文献1)。
【0004】
特許文献1に記載の圧電発振器(二種類周波数発振器)は、段差を有する凹部が形成されたパッケージを備え、外部実装基板と実装する際の実装面の側となる凹部の凹底部分に、後述する二つの振動片を発振させる半導体回路素子(ICチップ)が接合されている。ICチップの上方には、2次の温度特性を有する音叉型水晶振動片が、凹部の段差上(支持部)に基部が接合され、振動腕側を自由端として片持ち状態で支持されている。さらに、音叉型水晶振動片が接合された段差よりも高い位置に形成された段差の上には、3次の温度特性を有するATカット水晶振動片の一端側が接合され、他端側を自由端として音叉型水晶振動片の上方に片持ち状態で支持されている。そして、パッケージ上にリッド(蓋)が接合され、パッケージの内部が気密に封止されている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−46360号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の圧電発振器は、2次側の温度特性を有する音叉型水晶振動片が、実装面に近い凹部の凹底部分側に配置され、その上に3次側の温度特性を有するATカット水晶振動片が縦配置にて設けられた構成となっている。2次の温度特性を有する圧電振動片は、3次の温度特性を有する圧電振動片に比して温度に対する周波数の変動が大きいので、急激な温度変化が生じる外部実装基板に近い実装面側に配置されていると、外部実装基板の急激の温度変化の影響を受けやすく、周波数が急激に変動する虞があるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
〔適用例1〕本適用例にかかる圧電発振器は、2次の温度特性を有する圧電振動片と、3次の温度特性を有する圧電振動片と、前記2次の温度特性を有する圧電振動片および前記3次の温度特性を有する圧電振動片を発振させる半導体回路素子と、がパッケージに収容され、少なくとも前記2次の温度特性を有する圧電振動片と前記3次の温度特性を有する圧電振動片とが前記パッケージにおいて縦配置にて配置されている圧電発振器であって、前記パッケージは、中間基板層と、前記中間基板層の実装面の側を凹底部分として設けられた凹部の開口部側に実装面側リッドが接合されることにより形成される実装面側キャビティと、前記中間基板層の前記実装面側キャビティとは反対側となる天井面側を凹底部分として設けられた凹部の開口部側に天井面側リッドが接合されることにより形成される天井面側キャビティと、を有し、前記実装面側キャビティ内に前記3次の温度特性を有する圧電振動片が接合され、前記天井面側キャビティ内に前記2次の温度特性を有する圧電振動片が接合されていることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、中間基板層に隔てられた天井面側キャビティに2次の温度特性を有する圧電振動片が配置されるので、温度変化に対する周波数の変動が比較的大きい2次の温度特性を有する圧電振動片に実装面からの温度が伝わりにくくなり、外部実装基板の急激な温度変化による周波数の変動を抑えることができる。また、温度変化に対する周波数の変動が比較的小さい3次の温度特性を有する圧電振動片を実装面側キャビティ内に配置して、その上方に2次の温度特性を有する圧電振動片に配置する縦配置となっているので、圧電発振器の平面サイズの小型化が図れる。
したがって、小型で、外部の温度変化による周波数の変動が抑えられ安定した発振特性を有する圧電発振器を提供することができる。
【0010】
〔適用例2〕上記適用例にかかる圧電発振器において、前記半導体回路素子が前記天井面側キャビティ内に接合されていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、半導体回路素子においても、実装面側からの温度の影響を受けにくくなるので、2次および3次の温度特性を有する圧電振動片のそれぞれに安定した発振信号を供給することが可能となり、圧電発振器の発振特性を安定させる効果を奏する。
【0012】
〔適用例3〕上記適用例にかかる圧電発振器において、前記半導体回路素子は温度センサ素子を含み、前記2次の温度特性を有する圧電振動片と前記半導体回路素子とが一つの前記天井面側キャビティ内に接合されていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、第2の温度特性を有する圧電振動片と略同じ温度の雰囲気内に半導体回路素子が設けられるので、半導体回路素子により検知した温度に基づく圧電振動片の制御がより正確に行えることにより、安定した発振特性を有する圧電発振器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、圧電発振器の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1および図2は、本実施形態の圧電発振器を説明するものであり、図1(a)は天井面側(上面)側からみた模式平面図、(b)は、(a)のA−A線断面を示す模式断面図であり、図2は、圧電発振器を実装面(外底面)側からみた模式平面図である。なお、図1(a)および図2において、圧電発振器の上部に配置されるリッドは、圧電発振器の内部の構成を説明する便宜上一部を切り取って図示している。また、図2のA−A断面線は、図1(a)のA−A線断面と同じ断面性を示す。
【0015】
図1に示すように、圧電発振器1は、その略直方体の外形のほとんどを形成するパッケージ10を有し、このパッケージ10は外底面を実装面とし、また、実装面と対向する面を天井面としている。パッケージ10の実装面と天井面との間には中間基板層11が設けられ、この中間基板層11の実装面側に形成された凹部と蓋体としての実装面側リッド8とにより実装面側キャビティ51が形成され、中間基板層11の天井面側に形成された二つの凹部と天井面側リッド9とにより第1の天井面側キャビティ52Aおよび第2の天井面側キャビティ52Bが形成されている。実装面側キャビティ51内の凹部の凹底部分である中間基板層11の実装面側には3次の温度特性を有する圧電振動片としてのATカット水晶振動片30が接合されて気密に封止されている。また、第1の天井面側キャビティ52A内の凹部の凹底部分である中間基板層11の天井面側には2次の温度特性を有する圧電振動片としての音叉型水晶振動片20が接合され、第2の天井面側キャビティ52B内の凹部の凹底部分である中間基板層11の天井面側には半導体回路素子としてのICチップ40が接合され、それぞれのキャビティ内に気密に封止されている。
【0016】
〔パッケージ〕
図1(b)に示すように、パッケージ10は、略矩形の平板状の中間基板層11と、その中間基板層11の実装面側に順次積層された略矩形フレーム状の実装面側第1層基板12および実装面側第2層基板13と、実装面側第2層基板13の枠内の実装面側第1層基板12上に積層されたシールリング18と、を有している。また、中間基板層11の天井面側には、二つの開口部が設けられた略矩形フレーム状の天井面側基板16と、その天井面側基板16の二つの開口部を囲む枠上に積層されたシールリング19とが設けられている。このような構成により、パッケージ10には、中間基板層11の実装面側を凹底部分として実装面の側に開口され、実装面側リッド8を接合することにより実装面側キャビティ51を形成する凹部と、中間基板層11の天井面側を凹底部分として天井面の側に開口され、天井面側リッド9を接合することにより第1の天井面側キャビティ52Aおよび第2の天井面側キャビティ52Bとを形成する二つの凹部が設けられている。
【0017】
パッケージ10の天井面側において、第1の天井面側キャビティ52Aを形成する凹部の凹底部分となる中間基板層11上には、音叉型水晶振動片20が接合される複数の接続端子56a,56bが設けられている。また、第2の天井面側キャビティ52Bを形成する凹部の凹底部分となる中間基板層11上には、ICチップ40が接合される複数の接続端子57が、ICチップの外周部分近傍に設けられた複数の電極パッド45(図1(a)を参照)と対応して配設されている。
【0018】
また、図2に示すように、パッケージ10の実装面側において、実装面側キャビティ51を形成する凹部の凹底部分となる中間基板層11上には、ATカット水晶振動片30が接合される複数の接続端子55a,55bが設けられている。また、パッケージ10の実装面となる実装面側第2層基板13上の長辺方向の両端部近傍には、外部実装基板と実装される複数の実装端子15a〜15dが設けられている。上記した各接続端子55a,55b,56a,56b,57や実装端子15a〜15dは、パッケージ10に一つの回路配線を形成するように、各基板に形成された図示しない配線パターンまたはスルーホールなどの層内配線パターンにより、それぞれ対応する端子どうしが接続されている。
【0019】
なお、上記したパッケージ10の中間基板層11、実装面側第1層基板12、実装面側第2層基板13、天井面側基板16は、セラミックス絶縁材料などからなる。また、各基板に設けられた接続端子55a,55b,56a,56b,57や実装端子15a〜15d、あるいはそれらを接続する配線パターンまたは層内配線パターンなどは、一般に、タングステン(W)、モリブデン(Mo)などの金属配線材料をセラミックス絶縁材料上にスクリーン印刷して焼成し、その上にニッケル(Ni)、金(Au)などのめっきを施すことにより形成される。
【0020】
次に、圧電発振器1の中間基板層11から天井面側の構成について説明する。
図1に示すように、パッケージ10の天井面側の二つのキャビティのうち、第1の天井面側キャビティ52A内には音叉型水晶振動片20が接合されている。音叉型水晶振動片20は、水晶基板を加工することにより形成された基部23と、この基部23の一端側(図1(a)において下端側)から二股に別れて互いに平行に延出する一対の振動腕21,22とを有する、所謂音叉状の外形にて形成されている。このような水晶基板の音叉状の外形は、水晶基板をフッ酸溶液などでウエットエッチングしたり、ドライエッチングすることにより精密に形成することができる。
【0021】
図1(a)に示すように、振動腕21,22の一方の面(表側の面)には、駆動用の電極である励振電極25a,25bがそれぞれ設けられている。また、基部23の各振動腕21,22が延出された一端側と異なる他端側近傍には、各励振電極25a,25bと引き回し配線によりそれぞれ接続された接続電極27a,27bが設けられている。これと同様に、図示はしないが、振動腕21,22の他方の面(裏側の面)には、励振電極25a,25bそれぞれと対向電極を構成する励振電極が設けられ、基部23に設けられた接続電極と引き回し配線により接続されている。このような電極や配線は、水晶をエッチングして音叉型水晶振動片20の外形を形成した後で、例えば、ニッケル(Ni)またはクロム(Cr)を下地層として、その上に、蒸着またはスパッタリングにより例えば金(Au)による電極層を成膜し、その後フォトリソグラフィを用いてパターニングすることにより形成することができる。
【0022】
上記した音叉型水晶振動片20は、基部23に設けられた接続電極27a,27bが、第1の天井面側キャビティ52Aの凹部の凹底部分に設けられた対応する接続端子56a,56bに位置合わせした状態で導電性接着剤26により接合され、振動腕21,22側が中間基板層11と接触しないように隙間を空けた状態で片持ち支持されている(図1(b)を参照)。なお、導電性接着剤26としては、一般に、ポリイミド、シリコン系、またはエポキシ系などの樹脂に、銀(Ag)フィラメント、またはニッケル(Ni)粉を混入したものが使用される。
【0023】
また、パッケージ10の天井面側の二つのキャビティのうち、第2の天井面側キャビティ52B内には、音叉型水晶振動片20やATカット水晶振動片30を発振させる発振回路などが集積されて形成され、主面(能動面)に複数の電極パッド45を有するICチップ40が接合されている。本実施形態では、ICチップ40の複数の電極パッド45に予め設けられた例えば金(Au)や半田などのバンプ46(図1(b)を参照)と、第2の天井面側キャビティ52Bの凹部の凹底部分に設けられた対応する接続端子57とを位置合わせしてから、所定の温度および圧力にて加熱および押圧することにより接合する所謂フェースダウン接合により接合されている。
なお、バンプ46は、金や半田などからなるバンプに限らず、樹脂コアの表面に導電膜が形成された樹脂コアバンプなどを用いてもよく、また、例えば、導電性接着剤などの別の接合部材を用いる構成としてもよい。
【0024】
パッケージ10の天井面側基板16上には、例えば金属製の天井面側リッド9が、鉄−ニッケル(Fe−Ni)合金などをフレーム状に型抜きして形成されたシールリング19を介してシーム溶接されている。これにより、パッケージ10において、第1の天井面側キャビティ52A内に接合された音叉型水晶振動片20、および第2の天井面側キャビティ52B内に接合されたICチップ40が気密に封止されている。
【0025】
〔圧電発振器(実装面側)〕
一方、図1(b)および図2に示すように、パッケージ10の実装面側キャビティ51内には、ATカット水晶振動片30が接合されている。ATカット水晶振動片30は、水晶基板をX軸に平行でZ軸から35度15分近辺の角度にて切り出した所謂ATカット水晶板31からなる。このATカット水晶板31の一方の主面には励振電極35が設けられ、ATカット水晶板31の一端部近傍に設けられた接続電極37aに接続されている。なお、図示はしないが、ATカット水晶板31の他方の主面には、励振電極35の対向電極としての励振電極が設けられていて、この励振電極が接続電極37aの近傍に設けられた接続電極37bと接続されている。
【0026】
上記したATカット水晶振動片30は、接続電極37a,37bが、実装面側キャビティ51の凹部の凹底部分に設けられた対応する接続端子55a,55bに位置合わせた状態で導電性接着剤36により接合され、励振電極35側が中間基板層11と接触しない状態で隙間を空けて片持ち支持されている。
【0027】
パッケージ10の実装面側第2層基板13上には、例えば金属製の実装面側リッド8が、鉄−ニッケル合金などからなるフレーム状のシールリング18を介してシーム溶接され、これにより、パッケージ10において、実装面側キャビティ51内に接合されたATカット水晶振動片30が気密に封止されている。
【0028】
上記実施形態の圧電発振器1によれば、中間基板層11に隔てられた第1の天井面側キャビティ52Aに、温度に対する周波数の変動が比較的大きい2次の温度特性を有する音叉型水晶振動片20が配置されている。これにより、音叉型水晶振動片20に実装面からの温度が伝わりにくくなるので、圧電発振器1が実装された外部実装基板の急激な温度変化による周波数の変動を抑えることができる。
また、圧電発振器1の天井面側に第1の天井面側キャビティ52Aおよび第2の天井面側キャビティ52Bを設け、それぞれの内部に音叉型水晶振動片20およびICチップ40を設ける構成としているので、例えば、ICチップ40が動作中に発熱したときの熱が、2次の温度特性を有する音叉型水晶振動片20に伝わりにくくなるので、音叉型水晶振動片20の温度による周波数の変動をより抑える効果を奏する。
また、温度に対する周波数の変動が小さい3次の温度特性を有するATカット水晶振動片30を実装面側キャビティ51内に配置し、その上方の第1の天井面側キャビティ52A内に音叉型水晶振動片20を配置する縦配置となっているので、圧電発振器1の平面サイズの小型化が実現できる。
【0029】
上記実施形態で説明した圧電発振器は、以下の変形例として実施することも可能である。
【0030】
(変形例1)
上記実施形態では、ICチップ40を、2次の温度特性を有する音叉型水晶振動片20とともに、パッケージ10の中間基板層11の天井面側に形成される第2の天井面側キャビティ52B内に設ける構成とした。これに限らず、ICチップ40は、パッケージの中間基板層の実装面側のキャビティ内に設ける構成としてもよい。
図3および図4は、パッケージの実装面側キャビティ内にICチップを設けた圧電発振器の変形例を説明するものであり、図3(a)は天井面側からみた模式平面図、(b)は模式断面図、図4は実装面側からみた模式平面図である。なお、図3(b)の断面図のうち、パッケージ110の中間基板層111より天井面側は、(a)のB−B線断面を示し、中間基板層111の実装面側は、図4のC−C線断面を示している。また、本変形例の圧電発振器の構成のうち、上記実施形態の圧電発振器と同じ構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0031】
図3に示すように、本変形例の圧電発振器100は、中間基板層111の実装面側に実装面側キャビティ151を形成する凹部が設けられ、中間基板層111の天井面側に天井面側キャビティ152を形成する凹部が設けられたパッケージ110を備えている。パッケージ110の実装面側の凹部内には、3次の温度特性を有する圧電振動片としてのATカット水晶振動片30と、ICチップ40とが接合され、この凹部を覆うように実装面側リッド108が接合されることにより形成される実装面側キャビティ151内が気密に封止されている。また、パッケージ110の天井面の凹部内には、2次の温度特性を有する圧電振動片としての音叉型水晶振動片20が接合され、この凹部を覆うように天井面側リッド109が接合されることにより形成される天井面側キャビティ152内が気密に封止されている。
【0032】
図3(b)および図4に示すように、パッケージ110は、略矩形の平板状の中間基板層111と、その中間基板層111の実装面側に順次積層された略矩形フレーム状の実装面側第1層基板112および実装面側第2層基板113と、実装面側第2層基板113の枠内の実装面側第1層基板112上に積層されたシールリング118と、を有している。また、中間基板層111の天井面側には、略矩形フレーム状の天井面側基板116と、その天井面側基板116上に積層されたシールリング119が設けられている。このような構成により、パッケージ110には、中間基板層111の実装面側を凹底部分として実装面の側に開口され、実装面側リッド108を接合することにより実装面側キャビティ151を形成する凹部と、中間基板層111の天井面側を凹底部分として天井面の側に開口され、天井面側リッド109を接合することにより天井面側キャビティ152を形成する凹部が設けられている。
【0033】
パッケージ10の天井面側において、天井面側キャビティ152を形成する凹部の凹底部分となる中間基板層111上には、音叉型水晶振動片20が接合される接続端子156a,156bが設けられている。
また、パッケージ10の実装面側において、実装面側キャビティ151を形成する凹部の凹底部分となる中間基板層111上には、ATカット水晶振動片30が接合される接続端子155a,155bと、ICチップの外周部分近傍に設けられた複数の電極パッド45と対応して配設されICチップ40が接合される複数の接続端子157とが設けられている。
さらに、パッケージ110の実装面となる実装面側第2層基板113上の長辺方向の両端部近傍には、複数の実装端子115a〜115dが設けられている。上記した各接続端子155a,155b,156a,156b,157や実装端子115a〜115dは、パッケージ10において一つの回路配線を形成するように、各基板に形成された図示しない配線パターンまたはスルーホールなどの層内配線パターンにより、それぞれ対応する端子が接続されている。
【0034】
図3に示すように、パッケージ110の天井面側キャビティ152内には、音叉型水晶振動片20が接合されている。具体的には、音叉型水晶振動片20の基部23に設けられた接続電極27a,27bが、天井面側キャビティ152の凹部の凹底部分である中間基板層111上に設けられた対応する接続端子156a,156bに位置合わせた状態で導電性接着剤26により接合され、振動腕21,22側が中間基板層111と接触しないように隙間を空けた状態で片持ち支持されている(図3(b)を参照)。
そして、パッケージ110の天井面側基板116上に、天井面側リッド109がシールリング119を介してシーム溶接され、天井面側キャビティ152内に接合された音叉型水晶振動片20が気密に封止されている。
【0035】
一方、図3(b)および図4に示すように、パッケージ110の実装面側キャビティ151内には、ATカット水晶振動片30およびICチップ40が接合されている。
ATカット水晶振動片30は、接続電極37a,37bが、実装面側キャビティ151の凹部の凹底部分に設けられた対応する接続端子155a,155bに位置合わせた状態で導電性接着剤36により接合され、励振電極35側が中間基板層111と接触しない状態で隙間を空けて片持ち支持されている。
また、ICチップ40は、複数の電極パッド45に予め設けられた金や半田などのバンプ46と、実装面側キャビティ151の凹部の凹底部分である中間基板層111の実装面側に設けられた対応する接続端子157とを位置合わせしてから、所定の温度および圧力にて加熱および押圧するフェースダウン接合により接合されている。
パッケージ110の実装面側第2層基板113上には、実装面側リッド108がシールリング118を介してシーム溶接され、実装面側キャビティ151内に接合されたATカット水晶振動片30およびICチップ40が気密に封止されている。
【0036】
上記変形例1の圧電発振器100によれば、上記実施形態の圧電発振器1と同様に、2次の温度特性を有する音叉型水晶振動片20を実装面から離されていることにより、音叉型水晶振動片20の実装面からの熱が伝わりにくくなるので、外部実装基板から加わる温度による音叉型水晶振動片20の周波数の変動を抑えることができる。
【0037】
(変形例2)
上記実施形態の圧電発振器1では、パッケージ10の実装面側に第1の天井面側キャビティ52Aおよび第2の天井面側キャビティ52Bを設け、それぞれに2次の温度特性を有する音叉型水晶振動片20およびICチップ40を接合して別々に封止する構成とした。これに限らず、音叉型水晶振動片20とICチップ40とを、一つの天井面側キャビティ内に接合して封止する構成としてもよい。
図5は、本変形例の圧電発振器を説明するものであり、(a)は、天井面側からみた模式平面図、(b)は、(a)のD−D線断面を示す模式断面図である。なお、本変形例は、一つの天井面側キャビティ内に音叉型水晶振動片とICチップとを接合すること以外は、上記実施形態の圧電発振器1の構成と同じであるため、本変形例の圧電発振器の構成のうち、上記実施形態の圧電発振器と同じ構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0038】
図5(b)に示すように、本変形例の圧電発振器200は、中間基板層11の実装面側に実装面側キャビティ51が形成され、中間基板層11の天井面側に天井面側キャビティ252を形成する凹部が設けられたパッケージ210を備えている。パッケージ210の実装面側の凹部内には、3次の温度特性を有するATカット水晶振動片30が接合され、この凹部を覆うように実装面側リッド8が接合されることにより形成される実装面側キャビティ51内が気密に封止されている。また、パッケージ210の天井面の凹部内には、2次の温度特性を有する音叉型水晶振動片20と、ICチップ40とが接合され、この凹部を覆うように天井面側リッド209が接合されることにより形成される天井面側キャビティ252内が気密に封止されている。
【0039】
図5(b)に示すように、パッケージ210は、略矩形の平板状の中間基板層11と、その中間基板層11の実装面側に順次積層された略矩形フレーム状の実装面側第1層基板12および実装面側第2層基板13と、実装面側第2層基板13の枠内の実装面側第1層基板12上に積層されたシールリング18と、を有している。また、中間基板層11の天井面側には、略矩形フレーム状の天井面側基板216と、その天井面側基板216上に積層されたシールリング219が設けられている。このような構成により、パッケージ210には、中間基板層11の実装面側を凹底部分として実装面の側に開口され、実装面側リッド8を接合することにより実装面側キャビティ51を形成する凹部と、中間基板層11の天井面側を凹底部分として天井面の側に開口され、天井面側リッド209を接合することにより天井面側キャビティ252を形成する凹部が設けられている。
【0040】
パッケージ210の天井面側において、天井面側キャビティ252を形成する凹部の凹底部分となる中間基板層11上には、音叉型水晶振動片20が接合される接続端子256a,256bと、ICチップ40が接合される複数の接続端子257が、ICチップの外周部分近傍に設けられた複数の電極パッド45(図5(a)を参照)と対応して配設されている。
また、パッケージ210の実装面側において、実装面側キャビティ51を形成する凹部の凹底部分となる中間基板層11上には、ATカット水晶振動片30が接合される接続端子55aが設けられている。
【0041】
図5に示すように、パッケージ210の天井面側キャビティ252内には、音叉型水晶振動片20とICチップ40とが接合されている。本変形例のICチップ40は、音叉型水晶振動片20およびATカット水晶振動片30を発振させる発振回路とともに、温度補償回路を有し、具体的には温度センサ素子を含む半導体回路素子である。
音叉型水晶振動片20は、その基部23に設けられた接続電極27a,27bが、天井面側キャビティ252の凹部の凹底部分である中間基板層11上に設けられた対応する接続端子256a,256bに位置合わせた状態で導電性接着剤26により接合され、振動腕21,22側が中間基板層11と接触しないように隙間を空けた状態で片持ち支持されている。
また、ICチップ40は、複数の電極パッド45に予め設けられた金や半田などのバンプ46と、天井面側キャビティ252の凹部の凹底部分である中間基板層11の実装面側に設けられた対応する接続端子257とを位置合わせしてから、所定の温度および圧力にて加熱および押圧するフェースダウン接合により接合されている。
そして、パッケージ210の天井面側基板216上に、リッド209がシールリング219を介してシーム溶接され、天井面側キャビティ252内に接合された音叉型水晶振動片20およびICチップ40が気密に封止されている。
【0042】
一方、図5(b)に示すように、パッケージ210の実装面側キャビティ51内には、ATカット水晶振動片30が接合されている。ATカット水晶振動片30は、実装面側キャビティ51の凹部の凹底部分に設けられた接続端子55aに位置合わせた状態で導電性接着剤36により接合され、励振電極35側が中間基板層11と接触しない状態で隙間を空けて片持ち支持されている。
パッケージ210の実装面側第2層基板13上には、実装面側リッド8がシールリング18を介してシーム溶接され、実装面側キャビティ51内に接合されたATカット水晶振動片30が気密に封止されている。
【0043】
上記変形例2の圧電発振器200によれば、温度センサ素子を含むICチップ40と、音叉型水晶振動片20とが、略同じ温度雰囲気内に曝されることにより、圧電発振器200において、より安定した発振特性を得ることができる。
【0044】
以上、発明者によってなされた本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明は上記した実施の形態およびその変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。
【0045】
例えば、上記実施形態および変形例では、2次の温度特性を有する圧電振動片として音叉型水晶振動片20を使用する例を説明した。これに限らず、音叉型水晶振動片20の他の2次の温度特性を有する圧電振動片、例えば、SAW共振子などを使用しても、上記実施形態および変形例の圧電発振器において説明した効果と同様な効果を奏する。
【0046】
また、上記実施形態および変形例では、音叉型水晶振動片20やATカット水晶振動片などの圧電振動片を、パッケージ10,110,210に形成される凹部の凹底部分に設けられた接続端子上に接合する構成を説明した。これに限らず、パッケージの凹部内に複数の段差を設け、この段差のうちのいずれかの段差上に接続端子を設けて、圧電振動片を接合する構成としてもよい。この場合、音叉型水晶振動片20およびATカット振動子の励振電極が設けられた自由端側を、接続端子が設けられた段差の高さ分だけ浮かすことができるので、振動や落下などの衝撃などにより各圧電振動片がパッケージに衝突して破損するなどの不具合を回避することができ、耐衝撃性を向上させることができる。
また、パッケージは、上記実施形態および変形例で説明した積層構造を有するものでなく、初めから一体化した形のものを成形するようにしてもよい。
【0047】
また、上記実施形態および変形例では、ICチップ40をパッケージ10,110,210にフェースダウン接合により接合した。これに限らず、例えばワイヤボンディングなどの他の接合方法により接合する構成としてもよい。
また、上記実施形態および変形例のように、ICチップ40をパッケージ10,110,210に直接接合する方法に限らず、別途用意した配線基板に実装したICチップ実装基板をパッケージ10,110,210に接合する構成としてもよく、この場合、その実装基板に、適宜にコンデンサなどの回路素子を含む構成とすることもできる。
【0048】
また、上記実施形態および変形例で説明した2次の温度特性を有する圧電振動片としての音叉型水晶振動片や、3次の温度特性を有する圧電振動片としてのATカット水晶振動片などの、水晶からなる圧電振動片について説明した。これに限らず、水晶以外に、窒化アルミニウム(AlN)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、四ほう酸リチウム(Li247)などの酸化物基板や、ガラス基板上に窒化アルミニウム、五酸化タンタル(Ta25)などの薄膜圧電材料を積層させて構成された圧電材料からなる圧電振動片を用いることもできる。
【0049】
また、上記実施形態および変形例では、音叉型水晶振動片20およびATカット水晶振動片30の電極や電極間配線、あるいは引き回し配線などの形成用金属材料として、ニッケル(Ni)またはクロム(Cr)を下地層としてその上に蒸着またはスパッタリングにより、例えば金(Au)による電極層を成膜したものを用いる例を説明した。これに限定されず、例えば、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、アルミニウム(Al)などの金属材料を用いることもできる。また、マグネシウム(Mg)などを用いることも可能である。
【0050】
また、上記実施形態および変形例では、圧電発振器1,100,200の用途について特に説明していないが、信号の基準周波数を発振する発振器と時刻の基準信号を発振する発振器の両方に併用できるのは勿論であり、あるいは、基準周波数を発振する発振器として単独に用い、また、時刻の基準信号を発振する発振器として単独に用いることも自在にできる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】(a)は、実施形態の圧電発振器を天井面側からみた模式平面図、(b)は、(a)のA−A線断面を示す模式断面図。
【図2】実施形態の圧電発振器を実装面側からみた模式平面図。
【図3】(a)は、変形例1の圧電発振器を天井面側からみた模式平面図、(b)は、天井面側が(a)のB−B線断面、実装面側が図4のC−C線断面をそれぞれ示す模式断面図。
【図4】変形例1の圧電発振器を実装面側からみた模式平面図。
【図5】(a)は、変形例2の圧電発振器を天井面側からみた模式平面図、(b)は、(a)のD−D線断面図。
【符号の説明】
【0052】
1,100,200…圧電発振器、8,108…実装面側リッド、9,109,209…天井面側リッド、10,110,120…パッケージ、11、111…中間基板層、12,112…実装面側第1層基板、13,113…実装面側第2層基板、15a〜15d,115a〜115d…実装端子、16,116,216…天井面側基板、18,19,118,119,219…シールリング、20…2次の温度特性を有する圧電振動片としての音叉型水晶振動片、21,22…振動腕、23…基部、25a,25b…音叉型水晶振動片の励振電極、26,36…導電性接着剤、27a,27b…音叉型水晶振動片の接続電極、30…3次の温度特性を有する圧電振動片としてのATカット水晶振動片、35…ATカット水晶振動片の励振電極、37a,37b…ATカット水晶振動片の接続電極、40…半導体回路素子としてのICチップ、45…電極パッド、46…バンプ、51,151…実装面側キャビティ、52A…第1の天井面側キャビティ、52B…第2の天井面側キャビティ、152,252…天井面側キャビティ、55a,55b,56a,56b,57,155a,155b,156a,156b,157,256a,256b…接続端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次の温度特性を有する圧電振動片と、
3次の温度特性を有する圧電振動片と、
前記2次の温度特性を有する圧電振動片および前記3次の温度特性を有する圧電振動片を発振させる半導体回路素子と、がパッケージに収容され、
少なくとも前記2次の温度特性を有する圧電振動片と前記3次の温度特性を有する圧電振動片とが前記パッケージにおいて縦配置にて配置されている圧電発振器であって、
前記パッケージは、
中間基板層と、
前記中間基板層の実装面の側を凹底部分として設けられた凹部の開口部側に実装面側リッドが接合されることにより形成される実装面側キャビティと、
前記中間基板層の前記実装面側キャビティとは反対側となる天井面側を凹底部分として設けられた凹部の開口部側に天井面側リッドが接合されることにより形成される天井面側キャビティと、を有し、
前記実装面側キャビティ内に前記3次の温度特性を有する圧電振動片が接合され、
前記天井面側キャビティ内に前記2次の温度特性を有する圧電振動片が接合されていることを特徴とする圧電発振器。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電発振器において、
前記半導体回路素子が前記天井面側キャビティ内に接合されていることを特徴とする圧電発振器。
【請求項3】
請求項2に記載の圧電発振器において、
前記半導体回路素子は温度センサ素子を含み、
前記2次の温度特性を有する圧電振動片と前記半導体回路素子とが一つの前記天井面側キャビティ内に接合されていることを特徴とする圧電発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−232336(P2009−232336A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−77416(P2008−77416)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】