説明

地図表示装置

【課題】視界不良時における安全な運転を確実に支援することができる「地図表示装置」を提供すること。
【解決手段】地図データ記憶手段18と、自車位置検出手段20と、この自車位置検出手段20によって検出された自車位置の周辺の領域を示す第1の地図31を表示部8に表示する第1の地図表示処理手段21と、カメラ3と、このカメラ3の撮影映像に基づいて自車両の前方の視界不良度を検出する視界不良度検出手段26と、前記視界不良度が閾値以上となった場合に、第1の地図31が表示されている画面30上に、自車位置の前方の道路を含む第1の地図31よりも大縮尺の第2の地図32を割り込み表示する第2の地図表示処理手段28とを備えたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図表示装置に係り、特に、視界不良時における安全な運転を支援するのに好適な地図表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車載器には、自車両の安全な運転を支援するための種々の機能を搭載することが行われており、このような機能としては、例えば、自車両の進行方向前方にカーブが存在するような場所において音声警告を出力する機能(例えば、特許文献1参照)や、視界不良時において音声によって自車両の進行方向前方の道路形状を案内する機能(例えば、特許文献2参照)等があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−69691号公報
【特許文献2】特開2005−249647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、地吹雪や霧などによって自車両の前方の視界が悪い場合には、実際に視認することができる自車両の前方の視界と音声案内とだけでは、自車両の前方の道路形状を正確に把握することが困難な場合があり、音声案内から運転者が想像する道路形状が現実とは大きくかけ離れてしまう場合には、却って運転の安全性を損ねる虞があった。
【0005】
そこで、本発明は、このような点に鑑みなされたものであり、視界不良時における安全な運転を確実に支援することができる地図表示装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するため、本発明に係る地図表示装置は、地図データが記憶された地図データ記憶手段と、自車位置を検出する自車位置検出手段と、前記地図データ記憶手段に記憶されている前記地図データを用いることによって前記自車位置検出手段によって検出された自車位置の周辺の領域を示す第1の地図を生成し、生成された前記第1の地図を表示部に表示する第1の地図表示処理手段と、自車両の前方の所定の撮影領域を撮影するカメラと、このカメラの撮影映像に基づいて前記自車両の前方の視界不良度を検出する視界不良度検出手段と、この視界不良度検出手段によって検出された前記視界不良度が閾値以上である場合に、前記地図データ記憶手段に記憶されている前記地図データを用いることによって前記自車位置検出手段によって検出された自車位置の前方の道路を含む前記第1の地図よりも大縮尺の第2の地図を生成し、生成された前記第2の地図を前記第1の地図が表示されている画面上に表示する第2の地図表示処理手段とを備えたことを特徴としている。
【0007】
そして、このような構成によれば、自車両の前方の視界不良度が閾値以上である場合に、第1の地図が表示されている画面上に、自車位置の前方の道路を含む第1の地図よりも大縮尺の第2の地図を表示することによって、視界不良時における安全な運転を確実に支援することができる。
【0008】
また、前記地図データ記憶手段に記憶されている前記地図データに基づいて、前記自車位置の前方の道路が非直線道路であるか否かの判定を行う非直線道路判定手段を備え、前記第2の地図表示処理手段は、前記非直線道路判定手段によって前記自車位置の前方の道路が非直線道路である旨の判定結果が得られた場合に、前記第2の地図の生成および表示を行うようにしてもよい。
【0009】
そして、このような構成によれば、第2の地図として表示される自車両の前方の道路を、直線道路に比べて運転操作が困難な非直線道路に限定することによって、視界不良時においても第1の地図の確認のみで道路形状の把握に十分な直線道路を走行している場合には、無用な第2の地図を表示しないようにすることによって、地図表示装置の処理負担を軽減することができるとともに、無用な第2の地図が表示されることによるユーザの混乱を未然に回避することができる。
【0010】
さらに、前記非直線道路判定手段は、前記視界不良度検出手段によって検出された前記視界不良度の減少にともなって、前記自車位置の前方の道路が非直線道路であるか否かの判定において肯定的な判定結果が得られ難くなるように判定基準を調整することによって、前記第2の地図の表示頻度を減少させるようにしてもよい。
【0011】
そして、このような構成によれば、自車両の前方の視界が回復に向かうほど、第2の地図の表示頻度を減少させることができるので、無用な第2の地図の表示をさらに確実に回避することができる。
【0012】
さらにまた、前記第2の地図の縮尺を設定する縮尺設定手段を備え、前記縮尺設定手段は、前記第2の地図の縮尺を、前記視界不良度検出手段によって検出された前記視界不良度の増加にともなって大きくなるような縮尺に設定し、前記第2の地図表示処理手段は、前記縮尺設定手段によって設定された縮尺の前記第2の地図を表示してもよい。
【0013】
そして、このような構成によれば、視界不良度の増加にともなって第2の地図の縮尺を大きくすることができるので、視界不良時における安全な運転を支援するためにより好適な第2の地図を表示することができる。
【0014】
また、前記第2の地図表示処理手段は、前記縮尺設定手段によって設定された縮尺が前記第1の地図の縮尺以下の場合には、前記第2の地図を表示しないようにしてもよい。
【0015】
そして、このような構成によれば、第1の地図の縮尺が十分に大きい場合には、第1の地図よりも大縮尺であるという前提条件から逸脱するような第2の地図が表示されることを未然に回避することができる。
【0016】
さらに、前記第2の地図表示処理手段は、前記第2の地図として、その表示の開始時には、前記第2の地図上の前記自車位置の前方の道路における始端部上に自車位置を示す自車位置マークが表示され、それ以後は、前記第2の地図上の前記自車位置の前方の道路は不動状態のまま、前記自車位置マークが前記第2の地図上の前記自車位置の前方の道路上を前記自車両の実際の走行にともなって当該道路における終端部まで移動するような第2の地図を表示してもよい。
【0017】
そして、このような構成によれば、自車両の実際の走行状態との対比が容易な第2の画像を表示することができるので、円滑な運転を支援することができる。
【0018】
さらにまた、前記第2の地図は、前記自車位置マークが、前記第2の地図上の前記自車位置の前方の道路における各位置において、各位置の道路形状に適合した方向を向くような地図であってもよい。
【0019】
そして、このような構成によれば、自車両の実際の走行状態との対比がさらに容易な第2の地図を表示することができるので、より円滑な運転を支援することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、視界不良時における安全な運転を確実に支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る地図表示装置の実施形態を示すブロック図
【図2】本発明に係る地図表示装置の実施形態において、カーブ判定の方法の一例を示す説明図
【図3】本発明に係る地図表示装置の実施形態において、通常地図を含む地図画面上への割り込み地図の割り込み表示状態を示す図
【図4】本発明に係る地図表示装置の実施形態において、自車位置と割り込み地図の表示状態との関係を説明するための説明図
【図5】本発明に係る地図表示装置の実施形態において、視界不良度と割り込み地図の縮尺との関係を説明するための説明図
【図6】本発明に係る地図表示装置の実施形態において、自車位置の前方の道路についての複数回にわたる割り込み地図上における表示方法を説明するための説明図
【図7】本発明に係る地図表示装置の実施形態を示すフローチャート
【図8】本発明に係る地図表示装置の実施形態において、通常地図を含む地図画面の表示状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る地図表示装置の実施形態について、図1乃至図8を参照して説明する。
【0023】
図1は、本発明に係る地図表示装置の実施形態として、地図表示装置としての機能を備えた車載用ナビゲーション装置1の実施形態を示したものである。
【0024】
図1に示すように、本実施形態における車載用ナビゲーション装置1は、大別して、ナビゲーションメインユニット2と、このナビゲーションメインユニット2にそれぞれ接続された車載カメラ3、GPSレシーバ5、自律航法センサ7、ディスプレイ8、スピーカ10および入力操作部11とによって構成されている。
【0025】
ここで、車載カメラ3は、自車両の前部(例えば、エンブレム部)に取り付けられており、この車載カメラ3は、自車両の前方の所定の撮影領域を撮影するようになっている。この車載カメラ3は、魚眼レンズ等の超広角レンズによって物体側から入射した光を収束させてCCDやCMOS等の撮像素子に結像させることによって物体の像を撮影するデジタル方式のカメラであってもよい。
【0026】
また、GPSレシーバ5は、図示しないGPS衛星から配信されるGPS情報(時刻や軌道に関する情報)を受信し、受信したGPS情報をナビゲーションメインユニット2側に出力するようになっている。
【0027】
さらに、自律航法センサ7は、自車両の加速度、車速および自車方位等を検出し、検出結果をナビゲーションメインユニット2側に出力するようになっている。この自律航法センサ7は、ジャイロセンサ等からなるものであってもよい。
【0028】
さらにまた、入力操作部11は、リモコン、ディスプレイ8のタッチパネル、リニアエンコーダまたはロータリエンコーダ等であってもよい。
【0029】
次に、ナビゲーションメインユニット2について詳述すると、図1に示すように、ナビゲーションメインユニット2は、システムバス14にそれぞれ接続されたナビCPU15、ROM16、RAM17、ハードディスクドライブ(HDD)18およびユーザインターフェース(I/F)19とによって構成されている。
【0030】
ここで、ナビCPU15は、本実施形態における地図表示装置としての機能その他の車載用ナビゲーション装置1の各種の機能を実行するようになっている。
【0031】
また、ROM16には、ナビCPU15の実行プログラムが記憶されており、ナビCPU15は、この実行プログラムを実行することによって車載用ナビゲーション装置1の機能を実行するようになっている。
【0032】
さらに、RAM17は、ナビCPU15による処理結果等のデータの一時的な保存に用いられるようになっている。
【0033】
さらにまた、ハードディスクドライブ18は、地図データ記憶手段として機能するようになっており、このハードディスクドライブ18には、地図データが記憶されている。
【0034】
また、ユーザインターフェース19には、入力操作部11が接続されており、このユーザインターフェース19を介して入力操作部11による操作結果がナビCPU15に入力されるようになっている。
【0035】
次に、ナビCPU15についてさらに詳述すると、図1に示すように、ナビCPU15は、その機能ブロックの1つとして、自車位置検出手段としての自車位置算出部20を有しており、この自車位置算出部20には、GPSレシーバ5から出力されたGPS情報および自律航法センサ7から出力された検出結果が入力されるようになっている。そして、自車位置算出部20は、GPSレシーバ5側から入力されたGPS情報に基づいて、自車位置を絶対座標として算出(測位)する衛星航法を行うようになっている。また、自車位置算出部20は、自律航法センサ7側から入力された検出結果に基づいて、自車位置を前回の測位位置からの変化分である相対位置として算出する自律航法を行うようになっている。さらに、自車位置算出部20は、ハードディスクドライブ18に記憶されている地図データを用いることによって、衛星航法または自律航法によって算出された自車位置を地図データにおける該当する道路上の位置に補正するマップマッチング処理を行うようになっている。そして、自車位置算出部20は、マップマッチング処理が適正に行われた場合には、マップマッチング処理後の自車位置を最終的な算出結果とするようになっている。
【0036】
また、ナビCPU15は、その機能ブロックの1つとして、第1の地図表示処理手段としての地図画面表示処理部21を有している。この地図画面表示処理部21は、自車位置算出部20による算出結果およびハードディスクドライブ18に記憶されている地図データを用いることによって、自車位置算出部20によって算出された自車位置の周辺の領域を示す第1の地図(以下、通常地図と称する)を含む地図画面を生成し、生成された地図画面をディスプレイ8に表示するようになっている。ここで、通常地図は、道路および背景等からなる地図本体上に、自車位置を示す自車位置マークが重畳された地図であって、実世界上における自車位置の変動にともなって、ディスプレイ8上における自車位置マークの表示位置および向きは不動状態のまま、地図本体の方が移動および回転するような地図とされている。この通常地図の縮尺は、デフォルトとして初期設定された縮尺あるいは入力操作部11を用いた入力操作によって設定された縮尺とされている。
【0037】
さらに、ナビCPU15は、その機能ブロックの1つとして、目的地設定部22を有しており、この目的地設定部22は、ディスプレイ8にナビゲーションの目的地を設定するための操作画面を表示した上で、この操作画面に対するユーザの入力操作部11を用いた入力操作に応じた目的地を設定するようになっている。
【0038】
さらにまた、ナビCPU15は、その機能ブロックの1つとして、経路探索部23を有しており、この経路探索部23は、ハードディスクドライブ18に記憶されている地図データを用いることによって、自車位置算出部20によって算出された自車位置から目的地設定部22によって設定された目的地までの経路を探索するルート計算を行うようになっている。
【0039】
また、ナビCPU15は、その機能ブロックの1つとして、経路誘導部24を有しており、この経路誘導部24は、経路探索部23によって探索された経路に沿って自車両を目的地まで誘導する経路誘導(換言すればルート案内)を行うようになっている。この経路誘導は、例えば、地図画面表示処理部21によってディスプレイ8に表示された地図画面上に、交差点拡大図を表示する(割り込む)ことや、スピーカ10を介して交差点右左折案内用の音声を出力すること等によって行うようになっている。
【0040】
そして、以上のような基本的な車載用ナビゲーション装置1の構成に加えて、さらに、本実施形態において、ナビCPU15は、その機能ブロックの1つとして、視界不良度検出手段としての視界不良度算出部26を有しており、この視界不良度算出部26は、車載カメラ3の撮影映像を車載カメラ3から取得するようになっている。そして、視界不良度算出部26は、取得された車載カメラ3の撮影映像に基づいて、自車両の前方の視界不良度を算出(検出)するようになっている。
【0041】
ここで、視界不良度は、自車両の前方の視界の悪さを示す度合いであり、この視界不良度は、視界が悪くなるほど大きくなる無次元量の数値(不良度0〜10等)や視界の悪さを示す文字値(非常に良好、良好、やや良好、普通、やや悪い、悪い、非常に悪い等)として算出されるものであってもよい。
【0042】
なお、視界不良度算出部26による視界不良度の算出方法としては、公知の種々の方法を適用するようにしてもよい。例えば、特開2006−221467号公報には、カメラで撮影した画像からなるデジタル画像を高速フーリエ変換(FFT)処理によって空間周波数に変換し、この変換によって得られた周波数分布に対して人間のコントラスト感度が良好な所定の周波数帯域の帯域フィルタを適用し、このフィルタによるフィルタ処理後の周波数分布を用いて、予め測定された周波数分布と被験者による視認性評価との対応関係に基づく判定基準にしたがって視界の状態を判定する方法が開示されている。視界不良度算出部26は、このような方法を適用することによって視界不良度を算出するようにしてもよい。
【0043】
あるいは、視界不良度算出部26は、特開2005−249647号公報に示すように、自車両のワイパの駆動速度や自車両の前照灯の点灯状態に応じた視界不良度を算出するようにしてもよい。この場合には、ワイパの駆動速度が速いほど、また、前照灯の光が強いほど、視界不良度が悪いものとなる。
【0044】
また、ナビCPU15は、その機能ブロックの1つとして、非直線道路判定手段としてのカーブ判定部27を有しており、このカーブ判定部27は、視界不良度算出部26によって算出された視界不良度が閾値以上となった場合には、自車両が今まさに走行しようとしている自車位置の前方(進行方向前方)の道路が非直線道路としてのカーブであるか否かの判定(以下、カーブ判定と称する)を行うようになっている。ここで、本実施形態において、カーブには、進行方向に対する右方向へのカーブまたは左方向へのカーブといった変曲点が存在しない単一のカーブに限らず、右方向へのカーブの次に左方向へのカーブが連続するような複数のカーブが変曲点において連続してなるカーブも含まれるものとする。
【0045】
ここで、カーブ判定部27は、経路誘導部24による経路誘導が行われている場合には、経路誘導中の経路における自車位置の前方の所定距離範囲内の道路を1回のカーブ判定の対象として選択し、選択された道路に対するカーブ判定を行うようにしてもよい。
【0046】
一方、カーブ判定部27は、経路誘導が行われていない場合には、自車位置がマッチングされているリンク(以下、該当リンクと称する)のうちの自車位置の前方の部分に対応する道路を1回のカーブ判定の対象として選択してカーブ判定を行うようにしてもよい。あるいは、カーブ判定部27は、経路誘導が行われていない場合には、前述した該当リンクのうちの自車位置の前方の部分と、該当リンクにおける自車位置の前方側の端部(終端部)に接続されるリンク列とに対応する一連の道路を1回のカーブ判定の対象として選択してカーブ判定を行うようにしてもよい。ただし、該当リンクの終端部(ノード)に後続の複数のリンクが分岐状態で接続されている場合には、これら後続のリンクのうちのいずれのリンク以降のリンク列を該当リンクとともにカーブ判定に用いるかが問題となる。この場合には、該当リンクに対する直線性が最も近い後続のリンクや、該当リンクと幅員が最も近い後続のリンクをカーブ判定に用いるようにしてもよい。
【0047】
さらに、1回のカーブ判定の対象となる自車位置の前方の道路についての道路距離範囲(すなわち、当該道路の始端部から終端部までの道程)は、予め設定された固定値であってもよいし、あるいは、視界不良度算出部26の算出結果等に応じてカーブ判定部27が適宜変更可能な値であってもよい。
【0048】
なお、カーブ判定部27によるカーブ判定の具体的な方法としては、公知の種々の方法を適用するようにしてもよい。例えば、第1の判定方法として、自車位置の前方の道路に対応するリンク(もしくはリンク列)中の各形状補間点ごとに、各形状補間点においてリンクに接する各接線を仮定するとともに各接線についての方位を求め、自車位置の前方の道路上において互いに前後する各接線同士の間での方位の変化量についての自車位置の前方の道路全体での積算値が所定値以上となる場合には、自車位置の前方の道路がカーブであると判定するようにしてもよい。あるいは、第2の方法として、図2に示すように、自車位置Pの前方の道路Rにおける始端部と終端部とを結ぶ直線分Lを仮定し、この直線分Lの距離(X〔km〕)に対する自車位置の前方の道路Rの距離(道程)(Y〔km〕)の比Y/Xが閾値以上となる場合には、道路Rがカーブであると判定するようにしてもよい。
【0049】
図1に戻って、ナビCPU15は、その機能ブロックの1として、第2の地図表示処理手段としての割り込み地図表示処理部28を有している。この割り込み地図表示処理部28は、視界不良度算出部26によって算出された視界不良度が閾値以上である場合であって、カーブ判定部27によって自車位置の前方の道路がカーブである旨の判定結果が得られた場合に、自車位置の前方の道路を含む通常地図よりも大縮尺の第2の地図(以下、割り込み地図と称する)を生成するようになっている。なお、割り込み地図は、通常地図よりも大縮尺の地図であるため、地図上に表示される実世界上の領域は通常地図よりも狭域となるとともに、通常地図に比べて道路等の地図上の地物の情報が詳細にかつ拡大して表示される地図となる。このような割り込み地図は、通常地図の生成に用いた地図データよりも地図データベース上における階層(レベル)が下階層に属する詳細な地図データを用いることによって生成することができる。そして、図3に示すように、割り込み地図表示処理部28は、生成された割り込み地図32を、通常地図31が表示されている地図画面30上に表示する(割り込む)ようになっている。なお、図3においては、割り込み地図32が、通常地図31に並べて表示されている。
【0050】
ここで、図4(a)に示すように、割り込み地図32は、その表示の開始時には、割り込み地図32上の自車位置の前方の道路33における始端部上に自車位置を示す自車位置マーク34が表示された地図32となっている。なお、図4(a)に示すように、割り込み地図32上の自車位置の前方の道路33は、その始端部が割り込み地図32における下端部近傍に表示され、その終端部が割り込み地図32における上端部近傍に表示されている。また、図4(a)において、自車位置マーク34は、自車位置の前方の道路33における始端部上に、この始端部の位置における道路33の形状(図4において左斜め上向きの形状)に適合した方向(左斜め上方向)を向くような状態として表示されている。
【0051】
また、図4(b)および図4(c)に示すように、割り込み地図32は、図4(a)に示した表示の開始以後は、実世界において自車両が自車位置の前方の道路上を実際に走行することにともなって、割り込み地図32上の自車位置の前方の道路33および背景(建物や緑地等)は不動状態のまま、自車位置マーク34が当該道路33上を終端部まで移動するような地図32となっている。また、図4(b)および図4(c)においても、自車位置マーク34は、自車位置の前方の道路33における現在の自車位置に該当する位置に、この位置における道路33の形状に適合した方向を向くような状態として表示されている。
【0052】
したがって、本実施形態によれば、自車両の前方の視界不良度が閾値以上である場合には、自車位置の前方の道路がカーブであることを条件として、地図画面30上に通常地図31よりも大縮尺の割り込み地図32を表示することができるので、視界不良時における運転操作が困難なカーブの安全な運転を確実に支援することができる。一方において、視界不良時においても、自車位置の前方の道路が通常地図31のみの確認で道路形状を十分に把握することができるような直線道路の場合には、無用な割り込み画像32の表示を防止することによってナビCPU15の処理負担を軽減し、ユーザの混乱を回避することができる。さらに、本実施形態によれば、図4に示すような自車両の実際の走行状態との対比が容易な状態の割り込み地図32を表示することができるので、自車両の円滑な運転を支援することができる。
【0053】
図1に戻って、さらに、本実施形態において、ナビCPU15は、その機能ブロックの1つとして、縮尺設定手段としての縮尺設定部37を有しており、この縮尺設定部37は、割り込み地図32の縮尺を、視界不良度算出部26によって算出された視界不良度の増加にともなって段階的に大きくなるような縮尺に自動的に設定するようになっている。そして、図5に示すように、割り込み地図表示処理部28は、縮尺設定部37によって設定された縮尺の割り込み地図32を表示するようになっている。このような視界不良度に応じた縮尺の設定は、視界不良度の値と縮尺の値との対応関係が記述されたテーブルをROM16に格納しておき、縮尺設定部37が、視界不良度算出部26の算出結果に対応する縮尺の値をテーブルから取得すること等によって実現するようにしてもよい。ここで、図5には、互いに縮尺が異なる3つの割り込み地図32が例示されている。これら3つの割り込み地図32のうちの上端に位置する1つの割り込み地図32は、25mスケールの割り込み地図32とされており、この25mスケールの割り込み地図32は、図中のバー40Aの寸法が実世界上において25mであるような縮尺の地図32とされている。この25mスケールの割り込み地図32は、図5における3つの割り込み地図32の中で、視界不良度が最も大きい場合に表示される最も大縮尺の地図32となる。また、図5における3つの割り込み地図32のうちの下端に位置する1つの割り込み地図32は、100mスケールの割り込み地図32とされており、この100mスケールの割り込み地図32は、図中のバー40Cの寸法が実世界上において100mであるような縮尺の地図32とされている。この100mスケールの割り込み地図32は、図5における3つの割り込み地図32の中で、視界不良度が最も小さい場合に表示される最も小縮尺の地図32となる。さらに、図5における3つの割り込み地図32のうちの中央に位置する1つの割り込み地図32は、50mスケールの割り込み地図32とされており、この50mスケールの割り込み地図32は、図中のバー40Bの寸法が実世界上において50mであるような縮尺の地図32とされている。
【0054】
このような構成によれば、視界不良度の増加にともなって割り込み地図32の縮尺を大きくすることができるので、視界不良時における安全な運転を支援するためにより好適な割り込み地図32を表示することができる。
【0055】
なお、割り込み地図32に設定された縮尺が大きい場合すなわち視界不良度が大きい場合には、カーブ判定部27による1回のカーブ判定によってカーブであると判定された自車位置の前方の道路のすべてを同一画面上に表示することができない場合も想定される。そのような場合には、割り込み地図表示処理部28は、図6に示すように、自車位置の前方の道路を複数回に分割して順次割り込み地図32上に表示すればよい。すなわち、図6(a)に示すように、第1回目の割り込み地図32を表示する際には、割り込み地図表示処理部28は、カーブ判定部27によってカーブであると判定された自車位置(図6(a)におけるP)の前方の道路のうち、縮尺設定部37によって設定された縮尺の地図に対応するような第1の領域範囲Aに属する道路を、当該第1の領域範囲Aとともに第1回目の割り込み地図32の表示に用いるようにする。すなわち、第1回目の割り込み地図32は、この第1の領域範囲Aの道路形状および自車位置を反映した地図となる。なお、割り込み地図表示処理部28は、この第1の領域範囲Aとして、自車位置が第1の領域範囲Aにおける下端部の中央に位置するような自車位置の前方の道路を含む領域を抽出するようにしてもよい。また、第1の領域範囲Aの抽出にあたっては、縮尺設定部37によって設定された縮尺とともに、ディスプレイ8上における割り込み地図32の表示範囲も考慮されることは勿論である。次いで、第1回目の割り込み地図32を表示した上で、自車両の実際の走行にともなって第1回目の割り込み地図32上の道路33の終端部に対応する地点に自車位置(図6(a)におけるP’)が到達した時点で、図6(b)に示すように、割り込み地図表示処理部28は、カーブ判定部27によってカーブであると判定された自車位置の前方の道路のうち、第1の領域範囲Aに自車両の前方において連なる第2の領域範囲Aに属する道路を、当該第2の領域範囲Aとともに第2回目の割り込み地図32の表示に用いるようにする。すなわち、第2回目の割り込み地図32は、この第2の領域範囲Aの道路形状および自車位置を反映した地図となる。この第2の領域範囲Aも、縮尺設定部37によって設定された縮尺の地図に対応するような第1の領域範囲Aと同面積の領域とされており、この第2の領域範囲Aの下端部には、第2回目の割り込み地図32の表示の開始時における自車位置(図6(b)におけるP)が位置されている。次いで、第2回目の割り込み地図32を表示した上で、自車両の実際の走行にともなって第2回目の割り込み地図32上の道路33の終端部に対応する地点に自車位置(図6(b)におけるP’)が到達した時点で、図6(c)に示すように、割り込み地図表示処理部28は、カーブ判定部27によってカーブであると判定された自車位置の前方の道路のうち、第2の領域範囲Aに自車両の前方において連なる第3の領域範囲Aに属する道路を、当該第3の領域範囲Aとともに第3回目の割り込み地図32の表示に用いるようにする。すなわち、第3回目の割り込み地図32は、この第3の領域範囲Aの道路形状および自車位置を反映した地図となる。この第3の領域範囲Aも、縮尺設定部37によって設定された縮尺の地図に対応するような第1の領域範囲Aと同面積の領域とされており、この第3の領域範囲Aの下端部には、第3回目の割り込み地図32の表示の開始時における自車位置(図6(c)におけるP)が位置されている。このように、自車位置の前方の道路を複数回に分割して順次割り込み地図32上に表示する場合には、第N回目(Nは任意の自然数)の割り込み地図32上の道路33における終端部に到達した自車位置マーク34が向く方向と、第N+1回目の割り込み地図32上の道路における始端部に位置された自車位置マーク34が向く方向とを互いに揃えるようにしてもよい。このようにすれば、ユーザが、第N+1回目の割り込み地図32が、第N回目の割り込み地図32の続きであることを容易に認識することができ、分かりやすい地図表示にすることができる。
【0056】
あるいは、カーブ判定部27による1回のカーブ判定によってカーブであると判定された自車位置の前方の道路のすべてを同一の割り込み地図32上に同時に表示するように構成することもできる。すなわち、カーブ判定部27が、1回のカーブ判定の対象となる自車位置の前方の道路についての道路距離範囲を、縮尺設定部37によって設定された当該カーブ判定時における視界不良度算出部26の算出結果に応じた縮尺の地図上に収まるような道路距離範囲に調整するように構成すればよい。ただし、このような構成を採用する場合にも、割り込み地図32のディスプレイ8上における表示範囲についての情報も考慮することが必要となる。また、このような構成を採用する場合には、カーブ判定部27によるカーブ判定よりも先に縮尺設定部37による縮尺の設定が行われるように構成することが必要となる。
【0057】
また、上記構成に加えて、さらに、割り込み地図表示処理部28は、縮尺設定部37によって設定された縮尺が現在の通常地図の縮尺以下の場合には、割り込み地図32を表示しないようにすることが好ましい。
【0058】
このような構成によれば、通常地図31の縮尺が、視界不良度との関係から見ても十分に大きな縮尺の場合には、割り込み地図32の表示を行わないことによって、通常地図31よりも大縮尺であるという前提条件から逸脱するような割り込み地図32が表示されることを未然に回避することができる。
【0059】
さらに、上記構成以外にも、カーブ判定部27は、視界不良度算出部26によって算出された視界不良度の減少にともなって、カーブ判定において肯定的な判定結果が得られ難くなるように判定基準を調整することによって、割り込み地図32の表示頻度を減少させるようにしてもよい。具体的には、例えば、図2に示したようなカーブ判定の方法を採用する場合には、カーブ判定の基準となるY/Xの閾値は固定したままの状態で、視界不良度が小さくなるほど判定対象となる自車位置の前方の道路Rの道路距離範囲を大きくとるようにしてもよい。このような構成によれば、実世界上においてカーブの曲率半径が相当大きいか、または、カーブの発生頻度が高くなければカーブ判定がなされないことになるので、カーブ判定における肯定的な判定結果が出され難くなることになる。
【0060】
次に、本実施形態の作用の一例について説明する。
【0061】
本実施形態においては、まず、図7のステップ1(ST1)に示すように、地図画面表示処理部21により、図8に示すような通常地図31を含む地図画面30をディスプレイ8に表示する。なお、図8の地図画面30は、通常地図31の右側に所定の画像(割り込み地図32が割り込まれる前の画像)が表示されていてもよい。
【0062】
次いで、ステップ2(ST2)においては、視界不良度算出部26により、車載カメラ3の撮影映像に基づいて自車両の前方の視界不良度を算出する。
【0063】
次いで、ステップ3(ST3)においては、カーブ判定部27により、ステップ2(ST2)において算出された視界不良度が閾値以上であるか否かを判定し、閾値以上である場合にはステップ4(ST4)に進み、閾値未満である場合にはステップ2(ST2)に戻る。
【0064】
次いで、ステップ4(ST4)においては、カーブ判定部27により、カーブ判定の対象となる自車位置の前方の道路を、自車位置算出部20の算出結果およびハードディスクドライブ18から読み出された地図データを用いて抽出した上で、抽出された自車位置の前方の道路がカーブであるか否かのカーブ判定を行う。
【0065】
そして、このカーブ判定において自車位置の前方の道路がカーブであるとの肯定的な判定結果が得られた場合にはステップ5(ST5)に進み、カーブではないとの否定的な判定結果が得られた場合には処理を終了する。
【0066】
次いで、ステップ5(ST5)においては、縮尺設定部37により、ステップ2(ST2)における視界不良度算出部26の算出結果に応じた縮尺を設定する。なお、ステップ5(ST5)とステップ4(ST4)とは、処理の順番が互いに入れ替わってもよい。
【0067】
次いで、ステップ6(ST6)においては、割り込み地図表示処理部28により、ステップ5(ST5)において設定された割り込み地図の縮尺が通常地図の縮尺以下であるか否かを判定し、通常地図の縮尺以下である場合には処理を終了し、通常地図の縮尺よりも大きい場合にはステップ7(ST7)に進む。
【0068】
次いで、ステップ7(ST7)においては、割り込み地図表示処理部28により、ステップ5(ST5)において設定された縮尺の割り込み地図32を生成するとともに、生成された割り込み地図32を、ステップ1(ST1)において表示された地図画面30上に割り込み表示して(図3参照)、処理を終了する。
【0069】
したがって、本実施形態によれば、自車両の前方の視界不良度が閾値以上である場合に、通常地図31が表示されている地図画面30上に、自車位置の前方の道路を含む通常地図31よりも大縮尺の割り込み地図32を割り込み表示することができるので、視界不良時におけるカーブの安全な運転を確実に支援することができる。
【0070】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【0071】
例えば、本発明は、カーブ以外の非直線道路(例えば、くの字状、クランク状あるいはジグザグ状の道路等)にも適用することができる。
【符号の説明】
【0072】
3 車載カメラ
8 ディスプレイ
18 ハードディスクドライブ
20 自車位置算出部
21 地図画面表示処理部
26 視界不良度算出部
27 カーブ判定部
28 割り込み地図表示処理部
30 地図画面
31 通常地図
32 割り込み地図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図データが記憶された地図データ記憶手段と、
自車位置を検出する自車位置検出手段と、
前記地図データ記憶手段に記憶されている前記地図データを用いることによって前記自車位置検出手段によって検出された自車位置の周辺の領域を示す第1の地図を生成し、生成された前記第1の地図を表示部に表示する第1の地図表示処理手段と、
自車両の前方の所定の撮影領域を撮影するカメラと、
このカメラの撮影映像に基づいて前記自車両の前方の視界不良度を検出する視界不良度検出手段と、
この視界不良度検出手段によって検出された前記視界不良度が閾値以上である場合に、前記地図データ記憶手段に記憶されている前記地図データを用いることによって前記自車位置検出手段によって検出された自車位置の前方の道路を含む前記第1の地図よりも大縮尺の第2の地図を生成し、生成された前記第2の地図を前記第1の地図が表示されている画面上に表示する第2の地図表示処理手段と
を備えたことを特徴とする地図表示装置。
【請求項2】
前記地図データ記憶手段に記憶されている前記地図データに基づいて、前記自車位置の前方の道路が非直線道路であるか否かの判定を行う非直線道路判定手段を備え、
前記第2の地図表示処理手段は、前記非直線道路判定手段によって前記自車位置の前方の道路が非直線道路である旨の判定結果が得られた場合に、前記第2の地図の生成および表示を行うこと
を特徴とする請求項1に記載の地図表示装置。
【請求項3】
前記非直線道路判定手段は、前記視界不良度検出手段によって検出された前記視界不良度の減少にともなって、前記自車位置の前方の道路が非直線道路であるか否かの判定において肯定的な判定結果が得られ難くなるように判定基準を調整することによって、前記第2の地図の表示頻度を減少させること
を特徴とする請求項2に記載の地図表示装置。
【請求項4】
前記第2の地図の縮尺を設定する縮尺設定手段を備え、
前記縮尺設定手段は、前記第2の地図の縮尺を、前記視界不良度検出手段によって検出された前記視界不良度の増加にともなって大きくなるような縮尺に設定し、
前記第2の地図表示処理手段は、前記縮尺設定手段によって設定された縮尺の前記第2の地図を表示すること
を特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の地図表示装置。
【請求項5】
前記第2の地図表示処理手段は、前記縮尺設定手段によって設定された縮尺が前記第1の地図の縮尺以下の場合には、前記第2の地図を表示しないようにすること
を特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の地図表示装置。
【請求項6】
前記第2の地図表示処理手段は、前記第2の地図として、その表示の開始時には、前記第2の地図上の前記自車位置の前方の道路における始端部上に自車位置を示す自車位置マークが表示され、それ以後は、前記第2の地図上の前記自車位置の前方の道路は不動状態のまま、前記自車位置マークが前記第2の地図上の前記自車位置の前方の道路上を前記自車両の実際の走行にともなって当該道路における終端部まで移動するような第2の地図を表示すること
を特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の地図表示装置。
【請求項7】
前記第2の地図は、前記自車位置マークが、前記第2の地図上の前記自車位置の前方の道路における各位置において、各位置の道路形状に適合した方向を向くような地図であること
を特徴とする請求項6に記載の地図表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−164519(P2010−164519A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8826(P2009−8826)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】