基板の分割方法、電気光学装置の製造方法
【課題】光学素子を有する基板を所定の位置で分割できる基板の分割方法、当該基板を備えた電気光学装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の基板の分割方法は、基板としてのマザー基板W2の切断予定ライン上に位置するマイクロレンズ3の位置を計測する計測工程と、計測結果に基づいてレーザ光113のマイクロレンズ3に対する照射間隔を求める演算工程と、演算結果に基づいてマザー基板W2にレーザ光113を照射する照射工程と、レーザ光113が照射されたマザー基板W2を分割する分割工程とを備えた。照射工程では、マイクロレンズ3の内部に集光点を結ぶように所定の間隔Lmでレーザ光113を照射し、集光点において多光子吸収を発生させ、改質領域21を形成する。
【解決手段】本発明の基板の分割方法は、基板としてのマザー基板W2の切断予定ライン上に位置するマイクロレンズ3の位置を計測する計測工程と、計測結果に基づいてレーザ光113のマイクロレンズ3に対する照射間隔を求める演算工程と、演算結果に基づいてマザー基板W2にレーザ光113を照射する照射工程と、レーザ光113が照射されたマザー基板W2を分割する分割工程とを備えた。照射工程では、マイクロレンズ3の内部に集光点を結ぶように所定の間隔Lmでレーザ光113を照射し、集光点において多光子吸収を発生させ、改質領域21を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を透過する基板の分割方法、当該基板を備えた電気光学装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を透過する基板の分割方法として、加工対象物の表面に溶融や切断予定ラインから外れた割れが生じることなく、加工対象物を切断することができるレーザ加工方法が知られている(特許文献1)。
【0003】
上記レーザ加工方法では、加工対象物の内部に焦点を合わせてレーザ光を照射し、加工対象物の切断予定ラインに沿ってその内部に多光子吸収による改質領域を形成する。この改質領域を起点として切断予定ラインに沿って加工対象物を割る。
【0004】
レーザ光を透過する基板を備えた電気光学装置としては、光源と、光源から入射した光を集光するマイクロレンズアレイ(MLA)とを備えた表示装置(液晶プロジェクタ)が知られている(特許文献2)。また、マイクロレンズを備えたデバイスとしての有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)の製造方法が知られている(特許文献3)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−192370号公報
【特許文献2】特開2000−75106号公報
【特許文献3】特開2006−23683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2あるいは特許文献3に記載のマイクロレンズを備えた基板の分割方法として、上記レーザ加工方法を適用することが考えられる。しかしながら、マイクロレンズが形成された基板にレーザ光を照射すると、マイクロレンズによってレーザ光が屈折して集光点の位置が基板内部において定まらず、切断予定ラインに沿って加工対象物としての基板を割ることができないという課題があった。
【0007】
本発明は、上記課題を改善するためになされたものであり、光学素子を有する基板を所定の位置で分割できる基板の分割方法、当該基板を備えた電気光学装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の基板の分割方法は、レーザ光を透過可能であると共に、切断予定ラインに沿った位置に少なくとも1つの光学素子を有する基板の分割方法であって、基板における光学素子の位置情報を基に切断予定ラインに沿った方向におけるレーザ光の照射間隔を求める演算工程と、レーザ光を切断予定ラインに沿って相対的に移動させる走査を基板の内部において集光点の位置を変えて複数回行うと共に、集光点において多光子吸収が発生するように照射する照射工程と、レーザ光が照射された基板を分割する分割工程と、を備え、照射工程では、光学素子の内部に集光点を位置させて上記照射間隔を置いてレーザ光を照射する少なくとも1回の上記走査を行うことを特徴とする。
【0009】
光学素子に対してレーザ光を照射する場合、照射位置によって入射時のレーザ光の光軸上に集光点が必ず位置するとは限らない。この方法によれば、演算工程で基板における光学素子の位置情報を基に切断予定ラインに沿った方向におけるレーザ光の照射間隔を求める。そして、照射工程では、光学素子の内部に集光点を位置させて、演算工程で求められた照射間隔を置いてレーザ光を照射する少なくとも1回の走査を行う。したがって、光学素子に対するレーザ光の照射位置が一定となり、集光点における多光子吸収を光学素子の内部において切断予定ラインに沿った一定の位置で発生させることができる。ゆえに、多光子吸収によってできる改質層を起点として基板を切断予定ラインに沿って精度よく分割することができる。
【0010】
上記基板に参照光を照射して、光学素子の位置を計測する計測工程をさらに備え、演算工程では、計測工程で得られた光学素子の位置情報を基に照射間隔を求めるとしてもよい。これによれば、計測工程で基板における光学素子の位置を実測し、実測に基づいてレーザ光の照射間隔が求められる。したがって、切断予定ライン上に光学素子がどのように配置されていても正確にレーザ光の照射間隔を求めることができる。ゆえに、高い精度で基板を分割することができる。
【0011】
また、上記演算工程では、光学素子の位置情報を基に切断予定ラインに沿った方向における光学素子の光学軸の位置を求め、照射工程では、光学素子の内部において光学軸上に集光点を位置させてレーザ光を照射する走査を行うことが好ましい。これによれば、光学素子の光学軸とレーザ光の光軸とが合致することになる。したがって、光学素子の光学軸とレーザ光の光軸とがずれる場合に比べて、光学素子に対するレーザ光の入射角度が一定し、レーザ光の光軸上に多光子吸収による改質層を安定して形成することができる。ゆえに、より高い精度で基板を分割することができる。
【0012】
また、上記光学素子が切断予定ラインに沿って周期的に設けられており、照射工程において、光学素子に対してレーザ光を照射する照射間隔が、光学素子の周期と同じ、または周期の整数倍であることを特徴とする。これによれば、光学素子の周期に同期あるいは整数倍の照射間隔でレーザ光が照射される。したがって、基板を分割可能な程度に、多光子吸収による改質層を光学素子の内部において切断予定ラインに沿った位置に形成することができる。
【0013】
また、上記照射工程において、レーザ光と基板との相対移動速度を一定とし、レーザ光を遮るシャッターの開閉を制御して、上記照射間隔を設定するとしてもよい。これによれば、レーザ光の種類に寄らず、光学素子の配置に対応してシャッターの開閉を制御することにより、適正な照射間隔を設定することができる。
【0014】
上記レーザ光としてパルスレーザ光を用い、照射工程において、パルスレーザ光と基板との相対移動速度を一定とし、照射間隔が光学素子の周期と同じになるようにパルスレーザ光の繰り返し率を設定するとしてもよい。これによれば、光学素子の周期が微細となっても、レーザ光の照射間隔を精度よく対応させることができる。
【0015】
これらの発明は、光学素子としてマイクロレンズまたはプリズムを備えた基板の分割方法に適用可能である。
【0016】
本発明の電気光学装置の製造方法は、レーザ光を透過可能であると共に、外形位置に少なくとも1つの光学素子を有する基板を備えた電気光学装置の製造方法であって、上記発明の基板の分割方法を用い、マザー基板の切断予定ラインに沿ってレーザ光を照射して、マザー基板から上記基板を分割することを特徴とする。
【0017】
この方法によれば、マザー基板から光学素子を有する基板を寸法精度よく分割し、且つ分割に伴う外形不良を低減して歩留まりよく電気光学装置を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本実施形態は、電子機器としての投射型表示装置に備えられた電気光学装置としての液晶表示装置の製造方法を例に説明する。
【0019】
まず、投射型表示装置について簡単に説明する。図1は、投射型表示装置の構成を示す概略図である。
【0020】
図1に示すように、投射型表示装置200は、光源210と、2つのダイクロイックミラー213,214と、3つの反射ミラー215,216,217と、入射レンズ218と、リレーレンズ219と、出射レンズ220と、3つの液晶光変調装置222,223,224と、クロスダイクロイックプリズム225と、投射レンズ226とを備えている。光源210はメタルハライド等のランプ211と、ランプ211の光を反射するリフレクタ212とを有する。ダイクロイックミラー213は、光源210からの光束のうちの赤色光を透過させ、青色光と緑色光を反射する。透過した赤色光は反射ミラー217で反射されて、赤色光用の液晶光変調装置222に入射する。一方、ダイクロイックミラー213で反射された光のうち緑色光はダイクロイックミラー214によって反射され、緑色光用の液晶光変調装置223に入射する。ダイクロイックミラー213で反射された光のうち青色光はダイクロイックミラー214も透過する。青色光に対しては、長い光路による光損失を防ぐため、入射レンズ218、リレーレンズ219、出射レンズ220を含むリレーレンズ系からなる導光機構221が設けられ、これを介して青色光が青色光用の液晶光変調装置224に入射する。各液晶光変調装置222,223,224により変調された3つの色光はクロスダイクロイックプリズム225に入射する。このクロスダイクロイックプリズム225は、4つの直角プリズムが貼り合わされ、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが十字状に形成されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成される。そして、合成された光からなるカラー画像が投射光学系である投射レンズ226によってスクリーン227上に投射され拡大して表示される。
【0021】
各液晶光変調装置222,223,224はライトバルブと呼ばれ、後述する液晶表示装置と、液晶表示装置の光の入射側と出射側とにそれぞれ配設された偏光素子としての偏光板(図示省略)とを備えたものである。
【0022】
次に、液晶表示装置について説明する。図2は、液晶表示装置の構造を示す概略断面図である。
【0023】
図2に示すように、液晶表示装置20は、一対の基板としての対向基板1および素子基板7と、対向基板1と素子基板7とによって挟持された液晶9とを備えている。
【0024】
対向基板1は、透明な石英ガラスを用いたガラス基板2と、ガラス基板2上に複数形成された光学素子としての半球状のマイクロレンズ3と、複数のマイクロレンズ3を覆って積層された透明樹脂層4とを備えている。透明樹脂層4の表面には、対向電極5および配向膜6が液晶9に面する所定の範囲に形成されている。なお、ガラス基板2は光を透過する材料であれば石英ガラスに限らず、透明な樹脂基板でもよい。
【0025】
複数のマイクロレンズ3は、ガラス基板2の表面に所定の間隔で配置されている。また、配置されたマイクロレンズ3の間を埋めるように遮光膜13が形成されている。遮光膜13は、例えば、Crなどの金属薄膜や、遮光性の顔料などを含む樹脂膜でもよい。マイクロレンズ3の群をMLA(マイクロレンズアレイ)と呼ぶ。
【0026】
このようなMLAの形成方法は、例えば、特開2000−75106号公報に開示されているように、開口部を有する遮光膜13上にフォトポリマーを含む感光性樹脂をコーティングしてフォトリソグラフィにより画素部10を形成する。その後に、加熱工程を経ることにより、画素部10を溶融(軟化)して表面が凸状となったマイクロレンズ3とする。あるいは、遮光膜13の開口部に向けてフォトポリマーを含む紫外線硬化型樹脂を液滴として吐出する。そして、表面張力により盛り上がった状態で紫外線を照射して硬化させマイクロレンズ3とする方法が挙げられる。
【0027】
この場合、マイクロレンズ3は、マトリクス状に配置され画素部10を構成している。その大きさは、直径がおよそ100μm、高さがおよそ50μmである。
【0028】
MLAを覆う透明樹脂層4は、例えば、紫外線硬化型のアクリル系樹脂を用いることができる。透明樹脂層4を形成する方法としては、スピンコート、ロールコートなどが挙げられる。厚みはおよそ50〜100μmである。
【0029】
対向電極5は、例えば、スパッタ等の方法で成膜されたITO(Indium Tin Oxide)からなる透明電極を用いることができる。
【0030】
素子基板7は、対向基板1と同様に石英ガラス基板を用い、その表面に対向基板1の画素部10に対向して設けられた画素電極11と、画素電極11ごとに設けられた薄膜トランジスタ12とを有している。また、これらの画素電極11および薄膜トランジスタ12を覆うように配向膜8が設けられている。素子基板7も光を透過する材料であれば石英ガラスに限らず、透明な樹脂基板でもよい。
【0031】
図1の光源210から射出した光は、前述の光学系を介してガラス基板2側から入射し、マイクロレンズ3により集光され、対向する画素電極11を透過する。これにより入射光を効率よく利用して明るい画面を表示することができる液晶表示装置20を実現している。
【0032】
<液晶表示装置の製造方法>
次に本実施形態の電気光学装置としての液晶表示装置の製造方法について説明する。図3(a)および(b)は、マザー基板を示す概略図である。同図(a)は概略平面図、同図(b)は同図(a)のA−A線で切った概略断面図である。
【0033】
図3(a)および(b)に示すように、液晶表示装置20の製造方法は、まず1つの液晶表示装置20に対応する素子基板7の各構成がマトリクス状に複数形成されたマザー基板W1に、各液晶表示装置20に対応した所定の位置でシール材を塗布する。塗布方法としては印刷法、転写法、ディスペンス法などが挙げられる。シール材で囲われた内側に液晶9を充填して減圧下で、各液晶表示装置20に対応した位置に対向基板1を接着する。そして、X軸およびY軸方向の切断シロSx,Syをダイシングやスクライブ等の方法で切断して複数の液晶表示装置20を取り出している。
【0034】
図4は、対向基板側のマザー基板を示す概略平面図である。図4に示すように、マザー基板W2には、対向基板1の各構成がマトリクス状に複数形成されている。マザー基板W2の切断予定ラインDx,Dyに沿ってレーザ光を照射することにより、個々の対向基板1を分割した。マイクロレンズ3は、マザー基板W2の表面のほぼ全面に渡って形成されている。したがって、切断予定ラインDx,Dy上には、マイクロレンズ3が周期的に存在する。
【0035】
<基板の分割方法>
次に本実施形態の基板としてのマザー基板W2の分割方法について図5〜図11に基づいて説明する。まず、本実施形態で用いたレーザ照射装置とそのレーザ加工の原理について説明する。
【0036】
図5は、レーザ照射装置の構成を示す概略図である。図5に示すように、レーザ照射装置100は、レーザ光を出射するレーザ光源101と、出射されたレーザ光を反射するダイクロイックミラー102と、反射したレーザ光を集光する集光手段としての集光レンズ103とを備えている。また、加工対象物としての基板Wを載置するステージ105と、集光レンズ103に対してステージ105をレーザ光の光軸101aとほぼ直交する平面内で相対的に移動可能な移動手段としてのX軸スライド部108およびY軸スライド部106とを備えている。また、ステージ105に載置された基板Wに対して集光レンズ103を相対的に移動させてレーザ光の集光点の位置を基板Wの厚み方向で可変可能な移動手段としてのZ軸スライド機構104を備えている。さらには、ダイクロイックミラー102を挟んで集光レンズ103と反対側に位置する撮像機構110を備えている。レーザ光源101とダイクロイックミラー102との間には、レーザ光を遮蔽するシャッター111が設けられている。シャッター111は、レーザ制御部121によってその開閉が制御されている。
【0037】
レーザ照射装置100は、上記各構成を制御する制御部としてのメインコンピュータ120を備えている。メインコンピュータ120には、CPUや各種メモリーの他に撮像機構110が撮像した画像情報を処理する画像処理部124を有している。撮像機構110は、同軸落射型光源とCCD(固体撮像素子)が組み込まれたものである。同軸落射型光源から出射した参照光としての可視光は、集光レンズ103を透過して焦点を結ぶ。同軸落射型光源としては、レーザ光源101から射出されるレーザ光とほぼ同じ波長を有する例えば半導体レーザを用いることができる。これにより、実際のレーザ照射に近い条件で、照射位置を設定することが可能となる。
【0038】
また、メインコンピュータ120には、レーザ加工の際に用いられる各種加工条件のデータを入力する入力部125とレーザ加工時の各種情報を表示する表示部126が接続されている。そして、レーザ光源101の出力やレーザ光のパルス幅、パルス周期を制御するレーザ制御部121と、Z軸スライド機構104を駆動して集光レンズ103のZ軸方向の位置を制御するレンズ制御部122とが接続されている。さらに、X軸スライド部108とY軸スライド部106をそれぞれレール107,109に沿って移動させるサーボモータ(図示省略)を駆動するステージ制御部123が接続されている。
【0039】
集光レンズ103をZ軸方向に移動させるZ軸スライド機構104には、移動距離を検出可能な位置センサが内蔵されており、レンズ制御部122は、この位置センサの出力を検出して集光レンズ103のZ軸方向の位置を制御可能となっている。したがって、撮像機構110の同軸落射型光源から出射した可視光の焦点が基板Wの表面と合うように集光レンズ103をZ軸方向に移動させれば、基板Wの厚みを計測することが可能である。言い換えれば、可視光の焦点をZ軸方向に移動させた場合の移動距離を検出することができる。
【0040】
レーザ光源101は、例えばチタンサファイアを固体光源とするレーザ光をフェムト秒のパルス幅で出射するいわゆるフェムト秒レーザである。この場合、レーザ光は、波長分散特性を有しており、中心波長が800nmであり、その半値幅はおよそ10nmである。またパルス幅はおよそ300fs(フェムト秒)、出力はおよそ700mWであり、繰り返し率としてのパルス周期は1〜10kHzまで可変することができる。
【0041】
集光レンズ103は、この場合、倍率が100倍、開口数(NA)が0.8、WD(Working Distance)が3mmの対物レンズである。集光レンズ103はZ軸スライド機構104から延びたスライドアーム104aによって支持されている。
【0042】
なお、本実施形態では、ステージ105は、Y軸スライド部106に支持されているが、X軸スライド部108とY軸スライド部106との位置関係を逆転させてX軸スライド部108に支持される形態としてもよい。また、ステージ105をθテーブルを介してY軸スライド部106に支持することが好ましい。これによれば、基板Wを光軸101aに対してより垂直な状態とすることが可能である。
【0043】
図6(a)および(b)は、レーザ光の集光領域の位置を加工対象物の厚み方向で可変した状態を示す概略断面図である。同図(a)はレーザ光の集光領域の端部がレーザ光の入射面Waと反対側の表面Wbに掛かるように位置決めされた状態を示す概略断面図、同図(b)はレーザ光の集光領域が入射面Waに徐々に近づいた状態を示す概略断面図である。
【0044】
図6(a)に示すように、集光レンズ103により集光されたレーザ光113は、波長分散特性を有しているため、屈折率がおよそ1.46の基板W(石英ガラスの部分を指す)に入射すると、短波長側のレーザ光114から長波長側のレーザ光115までその集光点が光軸101a上でずれた集光領域116に集光される。集光領域116は、いわゆる軸上色収差を有している。この場合、集光領域116の長波長側のレーザ光115の集光点が表面Wbに近接しているので、短波長側のレーザ光114と長波長側のレーザ光115との光路差が最も大きくなっている。すなわち、基板Wの厚み方向における集光領域116の幅が最大となっている。
【0045】
図6(b)に示すように、集光領域116の位置を入射面Wa側に近づくように、Z軸スライド機構104を駆動して集光レンズ103をZ軸方向に移動させてゆくと、短波長側のレーザ光114と長波長側のレーザ光115との光路差が次第に小さくなってゆく。したがって、基板Wの厚み方向における幅が徐々に小さくなった集光領域117から集光領域118へと変化する。当然ながら、集光領域が入射面Waの近傍から表面Wbに近づくようにZ軸スライド機構104を駆動して集光レンズ103をZ軸方向に移動させてゆくと、集光領域118から集光領域116へと基板Wの厚み方向における幅が徐々に大きくなる。
【0046】
なお、レーザ光源101として波長分散特性が小さい、すなわち半値幅が非常に狭く、且つ集光レンズ103の色収差が小さいあるいは補正されたものを用いれば、基板Wの厚み方向における集光点の位置によって集光領域の幅が変化する変化量を抑えることは可能である。
【0047】
ここで多光子吸収による改質領域の形成について説明する。加工対象物が透明な材料であっても、材料の吸収のバンドギャップEgよりも光子のエネルギーhνが非常に大きいと吸収が生じる。これを多光子吸収と言い、レーザ光のパルス幅を極めて短くして、多光子吸収を加工対象物の内部に起こさせると、多光子吸収のエネルギーが熱エネルギーに転化せずに、イオン価数変化、結晶化または分極配向等の永続的な構造変化が誘起されて屈折率変化領域が形成される。本実施形態では、この屈折率変化領域を改質領域と呼ぶ。
【0048】
本実施形態の加工対象物であるマザー基板W2は、その表面のほぼ全面に渡って複数のマイクロレンズ3が形成されている。マザー基板W2の内部に集光点を位置させてレーザ光113を切断予定ラインDx,Dy(図4参照)に沿って走査すると、マイクロレンズ3の半球面に入射したレーザ光113は、入射位置によって必ずしも光軸101a上にその集光点が位置しない。したがって、上記改質領域をマイクロレンズ3の内部において一定の位置に形成することは困難である。それゆえ、本実施形態の基板の分割方法を用いた。
【0049】
図7は、基板の分割方法を示すフローチャートである。図7に示すように、本実施形態のマザー基板W2の分割方法は、マザー基板W2の切断予定ラインDx,Dy上に位置するマイクロレンズ3の位置を計測する計測工程(ステップS1)と、計測結果に基づいてレーザ光113のマイクロレンズ3に対する照射間隔を求める演算工程(ステップS2)と、演算結果に基づいてマザー基板W2にレーザ光113を照射する照射工程(ステップS3)と、レーザ光113が照射されたマザー基板W2を分割する分割工程(ステップS4)とを備えている。以下、各工程について図8〜図11を参照して説明する。図8(a)〜(d)は基板の分割方法を示す概略断面図、図9(a)〜(c)は光学素子としてのマイクロレンズに対するレーザ光の照射方法を示す概略図、図10は改質領域の形成状態の一例を示す概略断面図、図11(a)および(b)は分割工程を示す概略断面図である。
【0050】
図7のステップS1は計測工程である。ステップS1では、図8(a)に示すように、ガラス基板2側を下方にしてマザー基板W2をステージ105に載置する。ステージ制御部123は、光軸101aとマザー基板W2の切断予定ラインDxとが合致するようにサーボモータを駆動してステージ105を移動させる。レンズ制御部122は、Z軸スライド機構104を駆動することにより撮像機構110から射出した可視光110aの焦点が遮光膜13の表面に位置するように集光レンズ103を位置決めする。そして、ステージ105を切断予定ラインDxに沿った矢印方向に移動させる走査を行う。メインコンピュータ120は、画像処理部124を介して撮像機構110から画像情報を入手する。この画像情報から切断予定ラインDxに沿った遮光膜13の形成位置情報を入手可能であり、ひいては切断予定ラインDxに沿ったマイクロレンズ3の位置情報(具体的には寸法m)を入手することができる。この場合、寸法mはおよそ120μmである。
【0051】
上記走査において、可視光110aの焦点がマイクロレンズ3の半球面に結ぶように集光レンズ103の位置を移動させて、撮像機構110からマイクロレンズ3の位置情報を入手してもよい。このようにすればマイクロレンズ3のZ軸方向における位置情報も入手できる。
【0052】
このようなマイクロレンズ3の位置情報の入手は、当然ながら切断予定ラインDyに沿った方向においても実施される。なお、本実施形態では、マザー基板W2に複数の対向基板1がマトリクス状に形成されているため、切断予定ラインDx,Dyに沿ってそれぞれ1回ずつ可視光110aを走査すれば、すべての切断予定ラインDx,Dy上に位置するマイクロレンズ3の位置情報を入手可能である。そして、ステップS2へ進む。
【0053】
図7のステップS2は演算工程である。ステップS2では、計測工程で得られたマイクロレンズ3の位置情報に基づいて、マイクロレンズ3に対してレーザ光113を照射する照射間隔を演算する。より具体的には、この場合、図9(a)に示すように、切断予定ラインDx,Dyがマイクロレンズ3の光学軸3aと直交するように設定されている。よって、光学軸3aの間隔Lmを求める。マイクロレンズ3は周期的に配置されているので、間隔Lmはおよそ120μmである。
【0054】
図9(b)はZ軸方向からマイクロレンズを見た概略平面図、図9(c)は切断予定ラインに沿った方向から見たマイクロレンズの概略断面図である。図9(b)に示すように、切断予定ラインDx,Dyを光学軸3aと直交するように設定することが液晶表示装置20の設計上できない場合もある。言い換えれば、X軸方向またはY軸方向において複数のマイクロレンズ3の中心線と切断予定ラインDx,Dyとが合致しない場合である。その場合には、図9(c)に示すように、マイクロレンズ3の半球面に入射したレーザ光113が光軸101aからずれて集光するので、そのずれ量Δdを考慮してマイクロレンズ3の光学軸3aに沿った照射位置、言い換えればレーザ光113の光軸101aの位置を求める。このようにすればマイクロレンズ3の内部においてレーザ光113の集光点を切断予定ラインDx,Dy上に位置させることが可能である。そして、ステップS3へ進む。
【0055】
図7のステップS3は、レーザ光113を照射する照射工程である。ステップS3では、まず、図8(b)に示すように、切断予定ラインDx上に位置するマイクロレンズ3の内部にレーザ光113の集光点が位置するように集光レンズ103とマザー基板W2とをX軸方向、Y軸方向、Z軸方向において位置決めする。その後、集光レンズ103に対してマザー基板W2をX軸方向に移動させながら、間隔Lmを置いてレーザ光113を照射する。前述したようにレーザ光113は、フェムト秒レーザすなわちパルスレーザである。よって、照射間隔として間隔Lmでレーザ光113をマイクロレンズ3に照射するには、レーザ光113のパルス間隔と、ステージ105の集光レンズ103に対する相対移動速度と、シャッター111の開閉タイミングとを考慮しなければならない。レーザ加工の生産性を確保するために相対移動速度を速くすると、照射間隔を決めるシャッター111の開閉が追いつかないことが考えられる。そこで、本実施形態では、シャッター111を開放したままでパルス周期を調整した。具体的には、相対移動速度を一定の120mm/秒とし、パルス間隔を1kHzとした。これにより、120μmの間隔Lmでレーザ光113をマイクロレンズ3に照射することが可能となる。仮に、間隔Lmが20μmならば、パルス周期は相対移動速度を間隔Lmで除することにより求められるので、6kHzとなる。すなわち、マイクロレンズ3が微細に形成されていても、相対移動速度に対してパルス周期を調整することにより所望の照射間隔を置いてレーザ光113を照射することが可能である。
【0056】
マイクロレンズ3の内部ではレーザ光113の集光領域において多光子吸収が発生する。多光子吸収により形成される改質領域の大きさは、レーザ光113の照射エネルギーを一定とした場合、マイクロレンズ3の材質、屈折率、軸上色収差などの条件により異なる。この場合、石英ガラスにレーザ光113を集光させた場合に比べて改質領域が小さくなる。そこで、マイクロレンズ3の内部で集光点の位置を光学軸3aに沿って移動させ、再び切断予定ラインDxに沿って上記照射間隔を置いてレーザ光113を照射する走査を行う。これにより、図8(c)に示すように、マイクロレンズ3の光学軸3aに沿ってその内部に改質領域21を形成する。
【0057】
次に、透明樹脂層4の内部に集光点が位置するように集光レンズ103をZ軸方向において位置決めし、切断予定ラインDxに沿ってレーザ光113を連続的に照射する走査を行う。この場合、Z軸方向において集光点の位置をずらしてレーザ光113を照射する走査を2回行ったので、図8(d)に示すように透明樹脂層4には2つの改質領域22,23が形成される。このような走査は、他の切断予定ラインDxはもちろんのこと切断予定ラインDyに対しても実施する。
【0058】
次に、図8(d)に示すように、マザー基板W2を表裏反転させてステージ105に載置する。そして、ガラス基板2の表面2aからレーザ光113を入射させ、ガラス基板2の内部に集光点を位置させて切断予定ラインDx,Dyに沿って連続的にレーザ光113を照射する走査を行う。この場合も、ガラス基板2の厚みに応じて集光点の位置をZ軸方向にずらしてレーザ光113を照射する走査を繰り返して行った。そして、ステップS4へ進む。
【0059】
図7のステップS4は、分割工程である。図10に示すように、前段の照射工程において、切断予定ラインDx,Dyに沿った対向基板1の内部では、各マイクロレンズ3の部分にZ軸方向に改質領域21が形成され、透明樹脂層4やガラス基板2の部分にはZ軸方向と切断予定ラインDx,Dyの方向とに連続した改質領域22,23,24,25が形成される。図11(a)に示すように、これらの改質領域21〜25を切断予定ラインDx,Dyに沿った方向(X軸またはY軸方向)から見ると、マザー基板W2の厚み方向(Z軸方向)に連続した改質層Rcが形成されている。ステップS4では、この改質層Rcを分断するようにマザー基板W2に矢印方向の力を加える。そうすると、図11(b)に示すように、改質層Rcを起点としてマザー基板W2を容易に分割することができる。このようにして各切断予定ラインDx,Dyに沿ってマザー基板W2を分割し、個々の対向基板1を取り出す。
【0060】
このようなマザー基板W2の分割方法によれば、マイクロレンズ3が周期的に形成されていても、マイクロレンズ3に対して上記照射間隔を置いてレーザ光113を照射するので、その内部において集光点の位置が安定し、所定の切断予定ラインDx,Dyに沿って改質層Rcが形成され精度よく分割することが可能である。
【0061】
なお、マイクロレンズ3にレーザ光113を入射させる方向は、透明樹脂層4の表面4a(図8(c)参照)からでも、ガラス基板2の表面2a(図8(d)参照)からでもよい。好ましくは、屈折率がマイクロレンズ3に比べて低い材質の表面から入射させる。その方が、レーザ光113がマイクロレンズ3の内部で集光し易い。
【0062】
また、本実施形態では、図8(a)〜(d)に示すように、切断予定ラインDx,Dy上に対向電極5と配向膜6が掛からないように、それぞれを必要な領域においてマザー基板W2に形成している。この方がマザー基板W2の全面に渡って対向電極5および配向膜6を成膜する場合に比べて、レーザ光113が対向電極5と配向膜6によって吸収され、そのエネルギーが損失することを低減できる。
【0063】
本実施形態の効果は、以下の通りである。
(1)上記実施形態のマザー基板W2の分割方法によれば、石英ガラス基板上にマイクロレンズ3が周期的に形成されており、その形成周期(寸法m)に合わせた照射間隔(間隔Lm)でレーザ光113を照射する。また、マイクロレンズ3の光学軸3aとレーザ光113の光軸101aとが合致しているので、マイクロレンズ3に対して一定の入射角でレーザ光113が入射する。したがって、マイクロレンズ3の切断予定ラインDx,Dyに沿った内部に改質領域21を安定した位置で形成することができる。ゆえに、複数のマイクロレンズ3を有するマザー基板W2を所定の位置で精度よく分割することができる。
【0064】
(2)上記実施形態のマザー基板W2の分割方法において、計測工程(ステップS1)では、レーザ光113の波長とほぼ同じ波長の可視光を照射して、マイクロレンズ3の形成位置を計測するので、実際にレーザ光113をマイクロレンズ3に照射する条件に近づけて計測ができる。したがって、より適正なマイクロレンズ3の位置情報を入手することができる。
【0065】
(3)上記実施形態のマザー基板W2の分割方法において、照射工程(ステップS3)では、レーザ光113をマザー基板W2の内部に集光させ切断予定ラインDx,Dyに沿って相対的に移動させる走査を集光点の位置を変えて複数回行う。したがって、マザー基板W2の厚み方向に連続した改質層Rcが形成される。ゆえに、この改質層Rcを起点としてマザー基板W2を容易に分割することができる。
【0066】
(4)上記実施形態の電気光学装置としての液晶表示装置20の製造方法は、上記マザー基板W2の分割方法を用いているので、対向基板1の外形不良の発生を低減し、歩留りよく液晶表示装置20を製造することができる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に対しては、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な変形を加えることができる。例えば上記実施形態以外の変形例は、以下の通りである。
【0068】
(変形例1)上記実施形態のマザー基板W2の分割方法において、計測工程(ステップS1)は必須ではない。演算工程(ステップS2)では、マザー基板W2におけるマイクロレンズ3の設計情報を基にして照射間隔を演算してもよい。
【0069】
(変形例2)上記実施形態のマザー基板W2の分割方法において、照射工程(ステップS3)におけるレーザ光113の照射方法はこれに限定されない。例えば、ガラス基板2の表面2aから先にレーザ光113を照射して、マイクロレンズ3とガラス基板2をレーザ加工(改質領域の形成)してから、マザー基板W2を表裏反転させて、透明樹脂層4のレーザ加工を行ってもよい。
【0070】
(変形例3)上記実施形態のマザー基板W2の分割方法において、マイクロレンズ3に対してレーザ光113を照射する照射間隔は、間隔Lmに限定されない。例えば、間隔Lmを一つ飛ばす、あるいは間隔Lmの整数倍など途中のレーザ光113の照射を間引いてもよい。マイクロレンズ3を挟んでガラス基板2と透明樹脂層4とに厚み方向で連続して改質領域が形成されているので、マザー基板W2の分割が可能である。ゆえに、レーザ光113の照射時間を短縮することができる。
【0071】
(変形例4)上記実施形態のマザー基板W2の分割方法において、マイクロレンズ3の配置は、これに限定されない。例えば、画素電極11に対向する画素部10において、複数のマイクロレンズ3を配置してもよい。
【0072】
(変形例5)上記実施形態のマザー基板W2の分割方法において、マイクロレンズ3は周期的に形成されていることに限定されない。例えば、液晶表示装置20に入射する入射光の輝度分布に応じて、面内の明るさを均一にするためにマイクロレンズ3を不等間隔で配置することが考えられる。その場合にも、マイクロレンズ3の位置情報に基づいて照射間隔を決めるので位置精度よく分割が可能である。
【0073】
(変形例6)上記実施形態のマザー基板W2の分割方法において、レーザ光113は、フェムト秒レーザなどのパルスレーザに限定されない。例えば、YAGレーザやガスレーザなどの連続光(CW光)を用いることができる。その場合には、光学素子としてのマイクロレンズ3に対してその形成周期に同期するようにシャッター111の開閉を制御してレーザ光113を照射すればよい。
【0074】
(変形例7)上記実施形態の液晶表示装置20の製造方法は、これに限定されない。例えば、マザー基板W1と同様にマザー基板W2をウェハ状として、二つのマザー基板W1,W2を接合した後に、上記基板の分割方法を用いてレーザ光113を照射し分割して、個々の液晶表示装置20を取り出すことも可能である。
【0075】
(変形例8)上記実施形態の液晶表示装置20の製造方法において、液晶表示装置20の構成は、これに限定されない。図12は変形例の液晶表示装置を示す概略断面図である。例えば、図12に示すように、液晶表示装置300は、一対の基板としての対向基板301および素子基板309と、両基板301,309により挟持されシール材313により密封された液晶312とを備えている。素子基板309は、マトリクス状に配置された画素電極310と、画素電極310に接続したスイッチング素子としての薄膜トランジスタ311とを有する。対向基板301は、ガラス基板302と、ガラス基板302の凹部306にフォトポリマーを含む樹脂を充填して形成されたマイクロレンズ303と、上記樹脂部分を覆ったカバーガラス304とを有する。カバーガラス304の液晶312に面する表面には、画素部305を区画する遮光膜307と、各遮光膜307を覆うように成膜された対向電極308が設けられている。このように、マイクロレンズ303が凹状に設けられていても、上記実施形態の基板の分割方法を適用することができる。
【0076】
(変形例9)上記実施形態において、電気光学装置および光学素子の形態は、これに限定されない。図13は、有機EL発光素子を備えた有機EL装置を示す概略断面図である。図13に示すように、有機EL装置400は、一方の基板としてガラス基板401上に有機発光層を含む機能層402と、各機能層402を覆うように形成されたプリズム層403とを少なくとも有する。プリズム層403には、二つの斜面からなるプリズム404が複数形成されている。機能層402の幅dに対してプリズム404の幅404dが狭くなっており、1つの機能層402に複数のプリズム404が対向している。したがって、機能層402に電流を印加して励起された発光は、プリズム404を介して所定の方向に射出する。すなわち、一定の方向から見たときに非常に明るい射出光が得られる。このような光学素子としてのプリズム404を有するガラス基板401であっても、上記基板の分割方法を適用することができる。すなわち、ガラス基板401を有する有機EL装置の製造方法に適用することができる。光学素子としては、マイクロレンズやプリズムの他にもフレネルレンズ、回折格子、偏光素子などが考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】投射型表示装置の構成を示す概略図。
【図2】液晶表示装置の構造を示す概略断面図。
【図3】(a)はマザー基板を示す概略平面図、(b)は(a)のA−A線で切った概略断面図。
【図4】対向基板側のマザー基板を示す概略平面図。
【図5】レーザ照射装置の構成を示す概略図。
【図6】(a)および(b)はレーザ光の集光領域の位置を加工対象物の厚み方向で可変した状態を示す概略断面図。
【図7】基板の分割方法を示すフローチャート。
【図8】(a)〜(d)は基板の分割方法を示す概略断面図。
【図9】(a)〜(c)は光学素子としてのマイクロレンズに対するレーザ光の照射方法を示す概略図。
【図10】改質領域の形成状態の一例を示す概略断面図。
【図11】(a)および(b)は分割工程を示す概略断面図。
【図12】変形例の液晶表示装置を示す概略断面図。
【図13】有機EL発光素子を備えた有機EL装置を示す概略断面図。
【符号の説明】
【0078】
1…基板としての対向基板、3…光学素子としてのマイクロレンズ、3a…光学軸、20…電気光学装置としての液晶表示装置、110a…参照光としての可視光、111…シャッター、113…レーザ光およびパルスレーザ光、300…電気光学装置としての変形例の液晶表示装置、301…基板としての対向基板、400…電気光学装置としての有機EL装置、401…基板としてのガラス基板、404…光学素子としてのプリズム、Dx,Dy…切断予定ライン、Lm…照射間隔としての間隔、m…光学素子の周期としての寸法、W2…マザー基板。
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を透過する基板の分割方法、当該基板を備えた電気光学装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を透過する基板の分割方法として、加工対象物の表面に溶融や切断予定ラインから外れた割れが生じることなく、加工対象物を切断することができるレーザ加工方法が知られている(特許文献1)。
【0003】
上記レーザ加工方法では、加工対象物の内部に焦点を合わせてレーザ光を照射し、加工対象物の切断予定ラインに沿ってその内部に多光子吸収による改質領域を形成する。この改質領域を起点として切断予定ラインに沿って加工対象物を割る。
【0004】
レーザ光を透過する基板を備えた電気光学装置としては、光源と、光源から入射した光を集光するマイクロレンズアレイ(MLA)とを備えた表示装置(液晶プロジェクタ)が知られている(特許文献2)。また、マイクロレンズを備えたデバイスとしての有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)の製造方法が知られている(特許文献3)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−192370号公報
【特許文献2】特開2000−75106号公報
【特許文献3】特開2006−23683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2あるいは特許文献3に記載のマイクロレンズを備えた基板の分割方法として、上記レーザ加工方法を適用することが考えられる。しかしながら、マイクロレンズが形成された基板にレーザ光を照射すると、マイクロレンズによってレーザ光が屈折して集光点の位置が基板内部において定まらず、切断予定ラインに沿って加工対象物としての基板を割ることができないという課題があった。
【0007】
本発明は、上記課題を改善するためになされたものであり、光学素子を有する基板を所定の位置で分割できる基板の分割方法、当該基板を備えた電気光学装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の基板の分割方法は、レーザ光を透過可能であると共に、切断予定ラインに沿った位置に少なくとも1つの光学素子を有する基板の分割方法であって、基板における光学素子の位置情報を基に切断予定ラインに沿った方向におけるレーザ光の照射間隔を求める演算工程と、レーザ光を切断予定ラインに沿って相対的に移動させる走査を基板の内部において集光点の位置を変えて複数回行うと共に、集光点において多光子吸収が発生するように照射する照射工程と、レーザ光が照射された基板を分割する分割工程と、を備え、照射工程では、光学素子の内部に集光点を位置させて上記照射間隔を置いてレーザ光を照射する少なくとも1回の上記走査を行うことを特徴とする。
【0009】
光学素子に対してレーザ光を照射する場合、照射位置によって入射時のレーザ光の光軸上に集光点が必ず位置するとは限らない。この方法によれば、演算工程で基板における光学素子の位置情報を基に切断予定ラインに沿った方向におけるレーザ光の照射間隔を求める。そして、照射工程では、光学素子の内部に集光点を位置させて、演算工程で求められた照射間隔を置いてレーザ光を照射する少なくとも1回の走査を行う。したがって、光学素子に対するレーザ光の照射位置が一定となり、集光点における多光子吸収を光学素子の内部において切断予定ラインに沿った一定の位置で発生させることができる。ゆえに、多光子吸収によってできる改質層を起点として基板を切断予定ラインに沿って精度よく分割することができる。
【0010】
上記基板に参照光を照射して、光学素子の位置を計測する計測工程をさらに備え、演算工程では、計測工程で得られた光学素子の位置情報を基に照射間隔を求めるとしてもよい。これによれば、計測工程で基板における光学素子の位置を実測し、実測に基づいてレーザ光の照射間隔が求められる。したがって、切断予定ライン上に光学素子がどのように配置されていても正確にレーザ光の照射間隔を求めることができる。ゆえに、高い精度で基板を分割することができる。
【0011】
また、上記演算工程では、光学素子の位置情報を基に切断予定ラインに沿った方向における光学素子の光学軸の位置を求め、照射工程では、光学素子の内部において光学軸上に集光点を位置させてレーザ光を照射する走査を行うことが好ましい。これによれば、光学素子の光学軸とレーザ光の光軸とが合致することになる。したがって、光学素子の光学軸とレーザ光の光軸とがずれる場合に比べて、光学素子に対するレーザ光の入射角度が一定し、レーザ光の光軸上に多光子吸収による改質層を安定して形成することができる。ゆえに、より高い精度で基板を分割することができる。
【0012】
また、上記光学素子が切断予定ラインに沿って周期的に設けられており、照射工程において、光学素子に対してレーザ光を照射する照射間隔が、光学素子の周期と同じ、または周期の整数倍であることを特徴とする。これによれば、光学素子の周期に同期あるいは整数倍の照射間隔でレーザ光が照射される。したがって、基板を分割可能な程度に、多光子吸収による改質層を光学素子の内部において切断予定ラインに沿った位置に形成することができる。
【0013】
また、上記照射工程において、レーザ光と基板との相対移動速度を一定とし、レーザ光を遮るシャッターの開閉を制御して、上記照射間隔を設定するとしてもよい。これによれば、レーザ光の種類に寄らず、光学素子の配置に対応してシャッターの開閉を制御することにより、適正な照射間隔を設定することができる。
【0014】
上記レーザ光としてパルスレーザ光を用い、照射工程において、パルスレーザ光と基板との相対移動速度を一定とし、照射間隔が光学素子の周期と同じになるようにパルスレーザ光の繰り返し率を設定するとしてもよい。これによれば、光学素子の周期が微細となっても、レーザ光の照射間隔を精度よく対応させることができる。
【0015】
これらの発明は、光学素子としてマイクロレンズまたはプリズムを備えた基板の分割方法に適用可能である。
【0016】
本発明の電気光学装置の製造方法は、レーザ光を透過可能であると共に、外形位置に少なくとも1つの光学素子を有する基板を備えた電気光学装置の製造方法であって、上記発明の基板の分割方法を用い、マザー基板の切断予定ラインに沿ってレーザ光を照射して、マザー基板から上記基板を分割することを特徴とする。
【0017】
この方法によれば、マザー基板から光学素子を有する基板を寸法精度よく分割し、且つ分割に伴う外形不良を低減して歩留まりよく電気光学装置を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本実施形態は、電子機器としての投射型表示装置に備えられた電気光学装置としての液晶表示装置の製造方法を例に説明する。
【0019】
まず、投射型表示装置について簡単に説明する。図1は、投射型表示装置の構成を示す概略図である。
【0020】
図1に示すように、投射型表示装置200は、光源210と、2つのダイクロイックミラー213,214と、3つの反射ミラー215,216,217と、入射レンズ218と、リレーレンズ219と、出射レンズ220と、3つの液晶光変調装置222,223,224と、クロスダイクロイックプリズム225と、投射レンズ226とを備えている。光源210はメタルハライド等のランプ211と、ランプ211の光を反射するリフレクタ212とを有する。ダイクロイックミラー213は、光源210からの光束のうちの赤色光を透過させ、青色光と緑色光を反射する。透過した赤色光は反射ミラー217で反射されて、赤色光用の液晶光変調装置222に入射する。一方、ダイクロイックミラー213で反射された光のうち緑色光はダイクロイックミラー214によって反射され、緑色光用の液晶光変調装置223に入射する。ダイクロイックミラー213で反射された光のうち青色光はダイクロイックミラー214も透過する。青色光に対しては、長い光路による光損失を防ぐため、入射レンズ218、リレーレンズ219、出射レンズ220を含むリレーレンズ系からなる導光機構221が設けられ、これを介して青色光が青色光用の液晶光変調装置224に入射する。各液晶光変調装置222,223,224により変調された3つの色光はクロスダイクロイックプリズム225に入射する。このクロスダイクロイックプリズム225は、4つの直角プリズムが貼り合わされ、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが十字状に形成されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成される。そして、合成された光からなるカラー画像が投射光学系である投射レンズ226によってスクリーン227上に投射され拡大して表示される。
【0021】
各液晶光変調装置222,223,224はライトバルブと呼ばれ、後述する液晶表示装置と、液晶表示装置の光の入射側と出射側とにそれぞれ配設された偏光素子としての偏光板(図示省略)とを備えたものである。
【0022】
次に、液晶表示装置について説明する。図2は、液晶表示装置の構造を示す概略断面図である。
【0023】
図2に示すように、液晶表示装置20は、一対の基板としての対向基板1および素子基板7と、対向基板1と素子基板7とによって挟持された液晶9とを備えている。
【0024】
対向基板1は、透明な石英ガラスを用いたガラス基板2と、ガラス基板2上に複数形成された光学素子としての半球状のマイクロレンズ3と、複数のマイクロレンズ3を覆って積層された透明樹脂層4とを備えている。透明樹脂層4の表面には、対向電極5および配向膜6が液晶9に面する所定の範囲に形成されている。なお、ガラス基板2は光を透過する材料であれば石英ガラスに限らず、透明な樹脂基板でもよい。
【0025】
複数のマイクロレンズ3は、ガラス基板2の表面に所定の間隔で配置されている。また、配置されたマイクロレンズ3の間を埋めるように遮光膜13が形成されている。遮光膜13は、例えば、Crなどの金属薄膜や、遮光性の顔料などを含む樹脂膜でもよい。マイクロレンズ3の群をMLA(マイクロレンズアレイ)と呼ぶ。
【0026】
このようなMLAの形成方法は、例えば、特開2000−75106号公報に開示されているように、開口部を有する遮光膜13上にフォトポリマーを含む感光性樹脂をコーティングしてフォトリソグラフィにより画素部10を形成する。その後に、加熱工程を経ることにより、画素部10を溶融(軟化)して表面が凸状となったマイクロレンズ3とする。あるいは、遮光膜13の開口部に向けてフォトポリマーを含む紫外線硬化型樹脂を液滴として吐出する。そして、表面張力により盛り上がった状態で紫外線を照射して硬化させマイクロレンズ3とする方法が挙げられる。
【0027】
この場合、マイクロレンズ3は、マトリクス状に配置され画素部10を構成している。その大きさは、直径がおよそ100μm、高さがおよそ50μmである。
【0028】
MLAを覆う透明樹脂層4は、例えば、紫外線硬化型のアクリル系樹脂を用いることができる。透明樹脂層4を形成する方法としては、スピンコート、ロールコートなどが挙げられる。厚みはおよそ50〜100μmである。
【0029】
対向電極5は、例えば、スパッタ等の方法で成膜されたITO(Indium Tin Oxide)からなる透明電極を用いることができる。
【0030】
素子基板7は、対向基板1と同様に石英ガラス基板を用い、その表面に対向基板1の画素部10に対向して設けられた画素電極11と、画素電極11ごとに設けられた薄膜トランジスタ12とを有している。また、これらの画素電極11および薄膜トランジスタ12を覆うように配向膜8が設けられている。素子基板7も光を透過する材料であれば石英ガラスに限らず、透明な樹脂基板でもよい。
【0031】
図1の光源210から射出した光は、前述の光学系を介してガラス基板2側から入射し、マイクロレンズ3により集光され、対向する画素電極11を透過する。これにより入射光を効率よく利用して明るい画面を表示することができる液晶表示装置20を実現している。
【0032】
<液晶表示装置の製造方法>
次に本実施形態の電気光学装置としての液晶表示装置の製造方法について説明する。図3(a)および(b)は、マザー基板を示す概略図である。同図(a)は概略平面図、同図(b)は同図(a)のA−A線で切った概略断面図である。
【0033】
図3(a)および(b)に示すように、液晶表示装置20の製造方法は、まず1つの液晶表示装置20に対応する素子基板7の各構成がマトリクス状に複数形成されたマザー基板W1に、各液晶表示装置20に対応した所定の位置でシール材を塗布する。塗布方法としては印刷法、転写法、ディスペンス法などが挙げられる。シール材で囲われた内側に液晶9を充填して減圧下で、各液晶表示装置20に対応した位置に対向基板1を接着する。そして、X軸およびY軸方向の切断シロSx,Syをダイシングやスクライブ等の方法で切断して複数の液晶表示装置20を取り出している。
【0034】
図4は、対向基板側のマザー基板を示す概略平面図である。図4に示すように、マザー基板W2には、対向基板1の各構成がマトリクス状に複数形成されている。マザー基板W2の切断予定ラインDx,Dyに沿ってレーザ光を照射することにより、個々の対向基板1を分割した。マイクロレンズ3は、マザー基板W2の表面のほぼ全面に渡って形成されている。したがって、切断予定ラインDx,Dy上には、マイクロレンズ3が周期的に存在する。
【0035】
<基板の分割方法>
次に本実施形態の基板としてのマザー基板W2の分割方法について図5〜図11に基づいて説明する。まず、本実施形態で用いたレーザ照射装置とそのレーザ加工の原理について説明する。
【0036】
図5は、レーザ照射装置の構成を示す概略図である。図5に示すように、レーザ照射装置100は、レーザ光を出射するレーザ光源101と、出射されたレーザ光を反射するダイクロイックミラー102と、反射したレーザ光を集光する集光手段としての集光レンズ103とを備えている。また、加工対象物としての基板Wを載置するステージ105と、集光レンズ103に対してステージ105をレーザ光の光軸101aとほぼ直交する平面内で相対的に移動可能な移動手段としてのX軸スライド部108およびY軸スライド部106とを備えている。また、ステージ105に載置された基板Wに対して集光レンズ103を相対的に移動させてレーザ光の集光点の位置を基板Wの厚み方向で可変可能な移動手段としてのZ軸スライド機構104を備えている。さらには、ダイクロイックミラー102を挟んで集光レンズ103と反対側に位置する撮像機構110を備えている。レーザ光源101とダイクロイックミラー102との間には、レーザ光を遮蔽するシャッター111が設けられている。シャッター111は、レーザ制御部121によってその開閉が制御されている。
【0037】
レーザ照射装置100は、上記各構成を制御する制御部としてのメインコンピュータ120を備えている。メインコンピュータ120には、CPUや各種メモリーの他に撮像機構110が撮像した画像情報を処理する画像処理部124を有している。撮像機構110は、同軸落射型光源とCCD(固体撮像素子)が組み込まれたものである。同軸落射型光源から出射した参照光としての可視光は、集光レンズ103を透過して焦点を結ぶ。同軸落射型光源としては、レーザ光源101から射出されるレーザ光とほぼ同じ波長を有する例えば半導体レーザを用いることができる。これにより、実際のレーザ照射に近い条件で、照射位置を設定することが可能となる。
【0038】
また、メインコンピュータ120には、レーザ加工の際に用いられる各種加工条件のデータを入力する入力部125とレーザ加工時の各種情報を表示する表示部126が接続されている。そして、レーザ光源101の出力やレーザ光のパルス幅、パルス周期を制御するレーザ制御部121と、Z軸スライド機構104を駆動して集光レンズ103のZ軸方向の位置を制御するレンズ制御部122とが接続されている。さらに、X軸スライド部108とY軸スライド部106をそれぞれレール107,109に沿って移動させるサーボモータ(図示省略)を駆動するステージ制御部123が接続されている。
【0039】
集光レンズ103をZ軸方向に移動させるZ軸スライド機構104には、移動距離を検出可能な位置センサが内蔵されており、レンズ制御部122は、この位置センサの出力を検出して集光レンズ103のZ軸方向の位置を制御可能となっている。したがって、撮像機構110の同軸落射型光源から出射した可視光の焦点が基板Wの表面と合うように集光レンズ103をZ軸方向に移動させれば、基板Wの厚みを計測することが可能である。言い換えれば、可視光の焦点をZ軸方向に移動させた場合の移動距離を検出することができる。
【0040】
レーザ光源101は、例えばチタンサファイアを固体光源とするレーザ光をフェムト秒のパルス幅で出射するいわゆるフェムト秒レーザである。この場合、レーザ光は、波長分散特性を有しており、中心波長が800nmであり、その半値幅はおよそ10nmである。またパルス幅はおよそ300fs(フェムト秒)、出力はおよそ700mWであり、繰り返し率としてのパルス周期は1〜10kHzまで可変することができる。
【0041】
集光レンズ103は、この場合、倍率が100倍、開口数(NA)が0.8、WD(Working Distance)が3mmの対物レンズである。集光レンズ103はZ軸スライド機構104から延びたスライドアーム104aによって支持されている。
【0042】
なお、本実施形態では、ステージ105は、Y軸スライド部106に支持されているが、X軸スライド部108とY軸スライド部106との位置関係を逆転させてX軸スライド部108に支持される形態としてもよい。また、ステージ105をθテーブルを介してY軸スライド部106に支持することが好ましい。これによれば、基板Wを光軸101aに対してより垂直な状態とすることが可能である。
【0043】
図6(a)および(b)は、レーザ光の集光領域の位置を加工対象物の厚み方向で可変した状態を示す概略断面図である。同図(a)はレーザ光の集光領域の端部がレーザ光の入射面Waと反対側の表面Wbに掛かるように位置決めされた状態を示す概略断面図、同図(b)はレーザ光の集光領域が入射面Waに徐々に近づいた状態を示す概略断面図である。
【0044】
図6(a)に示すように、集光レンズ103により集光されたレーザ光113は、波長分散特性を有しているため、屈折率がおよそ1.46の基板W(石英ガラスの部分を指す)に入射すると、短波長側のレーザ光114から長波長側のレーザ光115までその集光点が光軸101a上でずれた集光領域116に集光される。集光領域116は、いわゆる軸上色収差を有している。この場合、集光領域116の長波長側のレーザ光115の集光点が表面Wbに近接しているので、短波長側のレーザ光114と長波長側のレーザ光115との光路差が最も大きくなっている。すなわち、基板Wの厚み方向における集光領域116の幅が最大となっている。
【0045】
図6(b)に示すように、集光領域116の位置を入射面Wa側に近づくように、Z軸スライド機構104を駆動して集光レンズ103をZ軸方向に移動させてゆくと、短波長側のレーザ光114と長波長側のレーザ光115との光路差が次第に小さくなってゆく。したがって、基板Wの厚み方向における幅が徐々に小さくなった集光領域117から集光領域118へと変化する。当然ながら、集光領域が入射面Waの近傍から表面Wbに近づくようにZ軸スライド機構104を駆動して集光レンズ103をZ軸方向に移動させてゆくと、集光領域118から集光領域116へと基板Wの厚み方向における幅が徐々に大きくなる。
【0046】
なお、レーザ光源101として波長分散特性が小さい、すなわち半値幅が非常に狭く、且つ集光レンズ103の色収差が小さいあるいは補正されたものを用いれば、基板Wの厚み方向における集光点の位置によって集光領域の幅が変化する変化量を抑えることは可能である。
【0047】
ここで多光子吸収による改質領域の形成について説明する。加工対象物が透明な材料であっても、材料の吸収のバンドギャップEgよりも光子のエネルギーhνが非常に大きいと吸収が生じる。これを多光子吸収と言い、レーザ光のパルス幅を極めて短くして、多光子吸収を加工対象物の内部に起こさせると、多光子吸収のエネルギーが熱エネルギーに転化せずに、イオン価数変化、結晶化または分極配向等の永続的な構造変化が誘起されて屈折率変化領域が形成される。本実施形態では、この屈折率変化領域を改質領域と呼ぶ。
【0048】
本実施形態の加工対象物であるマザー基板W2は、その表面のほぼ全面に渡って複数のマイクロレンズ3が形成されている。マザー基板W2の内部に集光点を位置させてレーザ光113を切断予定ラインDx,Dy(図4参照)に沿って走査すると、マイクロレンズ3の半球面に入射したレーザ光113は、入射位置によって必ずしも光軸101a上にその集光点が位置しない。したがって、上記改質領域をマイクロレンズ3の内部において一定の位置に形成することは困難である。それゆえ、本実施形態の基板の分割方法を用いた。
【0049】
図7は、基板の分割方法を示すフローチャートである。図7に示すように、本実施形態のマザー基板W2の分割方法は、マザー基板W2の切断予定ラインDx,Dy上に位置するマイクロレンズ3の位置を計測する計測工程(ステップS1)と、計測結果に基づいてレーザ光113のマイクロレンズ3に対する照射間隔を求める演算工程(ステップS2)と、演算結果に基づいてマザー基板W2にレーザ光113を照射する照射工程(ステップS3)と、レーザ光113が照射されたマザー基板W2を分割する分割工程(ステップS4)とを備えている。以下、各工程について図8〜図11を参照して説明する。図8(a)〜(d)は基板の分割方法を示す概略断面図、図9(a)〜(c)は光学素子としてのマイクロレンズに対するレーザ光の照射方法を示す概略図、図10は改質領域の形成状態の一例を示す概略断面図、図11(a)および(b)は分割工程を示す概略断面図である。
【0050】
図7のステップS1は計測工程である。ステップS1では、図8(a)に示すように、ガラス基板2側を下方にしてマザー基板W2をステージ105に載置する。ステージ制御部123は、光軸101aとマザー基板W2の切断予定ラインDxとが合致するようにサーボモータを駆動してステージ105を移動させる。レンズ制御部122は、Z軸スライド機構104を駆動することにより撮像機構110から射出した可視光110aの焦点が遮光膜13の表面に位置するように集光レンズ103を位置決めする。そして、ステージ105を切断予定ラインDxに沿った矢印方向に移動させる走査を行う。メインコンピュータ120は、画像処理部124を介して撮像機構110から画像情報を入手する。この画像情報から切断予定ラインDxに沿った遮光膜13の形成位置情報を入手可能であり、ひいては切断予定ラインDxに沿ったマイクロレンズ3の位置情報(具体的には寸法m)を入手することができる。この場合、寸法mはおよそ120μmである。
【0051】
上記走査において、可視光110aの焦点がマイクロレンズ3の半球面に結ぶように集光レンズ103の位置を移動させて、撮像機構110からマイクロレンズ3の位置情報を入手してもよい。このようにすればマイクロレンズ3のZ軸方向における位置情報も入手できる。
【0052】
このようなマイクロレンズ3の位置情報の入手は、当然ながら切断予定ラインDyに沿った方向においても実施される。なお、本実施形態では、マザー基板W2に複数の対向基板1がマトリクス状に形成されているため、切断予定ラインDx,Dyに沿ってそれぞれ1回ずつ可視光110aを走査すれば、すべての切断予定ラインDx,Dy上に位置するマイクロレンズ3の位置情報を入手可能である。そして、ステップS2へ進む。
【0053】
図7のステップS2は演算工程である。ステップS2では、計測工程で得られたマイクロレンズ3の位置情報に基づいて、マイクロレンズ3に対してレーザ光113を照射する照射間隔を演算する。より具体的には、この場合、図9(a)に示すように、切断予定ラインDx,Dyがマイクロレンズ3の光学軸3aと直交するように設定されている。よって、光学軸3aの間隔Lmを求める。マイクロレンズ3は周期的に配置されているので、間隔Lmはおよそ120μmである。
【0054】
図9(b)はZ軸方向からマイクロレンズを見た概略平面図、図9(c)は切断予定ラインに沿った方向から見たマイクロレンズの概略断面図である。図9(b)に示すように、切断予定ラインDx,Dyを光学軸3aと直交するように設定することが液晶表示装置20の設計上できない場合もある。言い換えれば、X軸方向またはY軸方向において複数のマイクロレンズ3の中心線と切断予定ラインDx,Dyとが合致しない場合である。その場合には、図9(c)に示すように、マイクロレンズ3の半球面に入射したレーザ光113が光軸101aからずれて集光するので、そのずれ量Δdを考慮してマイクロレンズ3の光学軸3aに沿った照射位置、言い換えればレーザ光113の光軸101aの位置を求める。このようにすればマイクロレンズ3の内部においてレーザ光113の集光点を切断予定ラインDx,Dy上に位置させることが可能である。そして、ステップS3へ進む。
【0055】
図7のステップS3は、レーザ光113を照射する照射工程である。ステップS3では、まず、図8(b)に示すように、切断予定ラインDx上に位置するマイクロレンズ3の内部にレーザ光113の集光点が位置するように集光レンズ103とマザー基板W2とをX軸方向、Y軸方向、Z軸方向において位置決めする。その後、集光レンズ103に対してマザー基板W2をX軸方向に移動させながら、間隔Lmを置いてレーザ光113を照射する。前述したようにレーザ光113は、フェムト秒レーザすなわちパルスレーザである。よって、照射間隔として間隔Lmでレーザ光113をマイクロレンズ3に照射するには、レーザ光113のパルス間隔と、ステージ105の集光レンズ103に対する相対移動速度と、シャッター111の開閉タイミングとを考慮しなければならない。レーザ加工の生産性を確保するために相対移動速度を速くすると、照射間隔を決めるシャッター111の開閉が追いつかないことが考えられる。そこで、本実施形態では、シャッター111を開放したままでパルス周期を調整した。具体的には、相対移動速度を一定の120mm/秒とし、パルス間隔を1kHzとした。これにより、120μmの間隔Lmでレーザ光113をマイクロレンズ3に照射することが可能となる。仮に、間隔Lmが20μmならば、パルス周期は相対移動速度を間隔Lmで除することにより求められるので、6kHzとなる。すなわち、マイクロレンズ3が微細に形成されていても、相対移動速度に対してパルス周期を調整することにより所望の照射間隔を置いてレーザ光113を照射することが可能である。
【0056】
マイクロレンズ3の内部ではレーザ光113の集光領域において多光子吸収が発生する。多光子吸収により形成される改質領域の大きさは、レーザ光113の照射エネルギーを一定とした場合、マイクロレンズ3の材質、屈折率、軸上色収差などの条件により異なる。この場合、石英ガラスにレーザ光113を集光させた場合に比べて改質領域が小さくなる。そこで、マイクロレンズ3の内部で集光点の位置を光学軸3aに沿って移動させ、再び切断予定ラインDxに沿って上記照射間隔を置いてレーザ光113を照射する走査を行う。これにより、図8(c)に示すように、マイクロレンズ3の光学軸3aに沿ってその内部に改質領域21を形成する。
【0057】
次に、透明樹脂層4の内部に集光点が位置するように集光レンズ103をZ軸方向において位置決めし、切断予定ラインDxに沿ってレーザ光113を連続的に照射する走査を行う。この場合、Z軸方向において集光点の位置をずらしてレーザ光113を照射する走査を2回行ったので、図8(d)に示すように透明樹脂層4には2つの改質領域22,23が形成される。このような走査は、他の切断予定ラインDxはもちろんのこと切断予定ラインDyに対しても実施する。
【0058】
次に、図8(d)に示すように、マザー基板W2を表裏反転させてステージ105に載置する。そして、ガラス基板2の表面2aからレーザ光113を入射させ、ガラス基板2の内部に集光点を位置させて切断予定ラインDx,Dyに沿って連続的にレーザ光113を照射する走査を行う。この場合も、ガラス基板2の厚みに応じて集光点の位置をZ軸方向にずらしてレーザ光113を照射する走査を繰り返して行った。そして、ステップS4へ進む。
【0059】
図7のステップS4は、分割工程である。図10に示すように、前段の照射工程において、切断予定ラインDx,Dyに沿った対向基板1の内部では、各マイクロレンズ3の部分にZ軸方向に改質領域21が形成され、透明樹脂層4やガラス基板2の部分にはZ軸方向と切断予定ラインDx,Dyの方向とに連続した改質領域22,23,24,25が形成される。図11(a)に示すように、これらの改質領域21〜25を切断予定ラインDx,Dyに沿った方向(X軸またはY軸方向)から見ると、マザー基板W2の厚み方向(Z軸方向)に連続した改質層Rcが形成されている。ステップS4では、この改質層Rcを分断するようにマザー基板W2に矢印方向の力を加える。そうすると、図11(b)に示すように、改質層Rcを起点としてマザー基板W2を容易に分割することができる。このようにして各切断予定ラインDx,Dyに沿ってマザー基板W2を分割し、個々の対向基板1を取り出す。
【0060】
このようなマザー基板W2の分割方法によれば、マイクロレンズ3が周期的に形成されていても、マイクロレンズ3に対して上記照射間隔を置いてレーザ光113を照射するので、その内部において集光点の位置が安定し、所定の切断予定ラインDx,Dyに沿って改質層Rcが形成され精度よく分割することが可能である。
【0061】
なお、マイクロレンズ3にレーザ光113を入射させる方向は、透明樹脂層4の表面4a(図8(c)参照)からでも、ガラス基板2の表面2a(図8(d)参照)からでもよい。好ましくは、屈折率がマイクロレンズ3に比べて低い材質の表面から入射させる。その方が、レーザ光113がマイクロレンズ3の内部で集光し易い。
【0062】
また、本実施形態では、図8(a)〜(d)に示すように、切断予定ラインDx,Dy上に対向電極5と配向膜6が掛からないように、それぞれを必要な領域においてマザー基板W2に形成している。この方がマザー基板W2の全面に渡って対向電極5および配向膜6を成膜する場合に比べて、レーザ光113が対向電極5と配向膜6によって吸収され、そのエネルギーが損失することを低減できる。
【0063】
本実施形態の効果は、以下の通りである。
(1)上記実施形態のマザー基板W2の分割方法によれば、石英ガラス基板上にマイクロレンズ3が周期的に形成されており、その形成周期(寸法m)に合わせた照射間隔(間隔Lm)でレーザ光113を照射する。また、マイクロレンズ3の光学軸3aとレーザ光113の光軸101aとが合致しているので、マイクロレンズ3に対して一定の入射角でレーザ光113が入射する。したがって、マイクロレンズ3の切断予定ラインDx,Dyに沿った内部に改質領域21を安定した位置で形成することができる。ゆえに、複数のマイクロレンズ3を有するマザー基板W2を所定の位置で精度よく分割することができる。
【0064】
(2)上記実施形態のマザー基板W2の分割方法において、計測工程(ステップS1)では、レーザ光113の波長とほぼ同じ波長の可視光を照射して、マイクロレンズ3の形成位置を計測するので、実際にレーザ光113をマイクロレンズ3に照射する条件に近づけて計測ができる。したがって、より適正なマイクロレンズ3の位置情報を入手することができる。
【0065】
(3)上記実施形態のマザー基板W2の分割方法において、照射工程(ステップS3)では、レーザ光113をマザー基板W2の内部に集光させ切断予定ラインDx,Dyに沿って相対的に移動させる走査を集光点の位置を変えて複数回行う。したがって、マザー基板W2の厚み方向に連続した改質層Rcが形成される。ゆえに、この改質層Rcを起点としてマザー基板W2を容易に分割することができる。
【0066】
(4)上記実施形態の電気光学装置としての液晶表示装置20の製造方法は、上記マザー基板W2の分割方法を用いているので、対向基板1の外形不良の発生を低減し、歩留りよく液晶表示装置20を製造することができる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に対しては、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な変形を加えることができる。例えば上記実施形態以外の変形例は、以下の通りである。
【0068】
(変形例1)上記実施形態のマザー基板W2の分割方法において、計測工程(ステップS1)は必須ではない。演算工程(ステップS2)では、マザー基板W2におけるマイクロレンズ3の設計情報を基にして照射間隔を演算してもよい。
【0069】
(変形例2)上記実施形態のマザー基板W2の分割方法において、照射工程(ステップS3)におけるレーザ光113の照射方法はこれに限定されない。例えば、ガラス基板2の表面2aから先にレーザ光113を照射して、マイクロレンズ3とガラス基板2をレーザ加工(改質領域の形成)してから、マザー基板W2を表裏反転させて、透明樹脂層4のレーザ加工を行ってもよい。
【0070】
(変形例3)上記実施形態のマザー基板W2の分割方法において、マイクロレンズ3に対してレーザ光113を照射する照射間隔は、間隔Lmに限定されない。例えば、間隔Lmを一つ飛ばす、あるいは間隔Lmの整数倍など途中のレーザ光113の照射を間引いてもよい。マイクロレンズ3を挟んでガラス基板2と透明樹脂層4とに厚み方向で連続して改質領域が形成されているので、マザー基板W2の分割が可能である。ゆえに、レーザ光113の照射時間を短縮することができる。
【0071】
(変形例4)上記実施形態のマザー基板W2の分割方法において、マイクロレンズ3の配置は、これに限定されない。例えば、画素電極11に対向する画素部10において、複数のマイクロレンズ3を配置してもよい。
【0072】
(変形例5)上記実施形態のマザー基板W2の分割方法において、マイクロレンズ3は周期的に形成されていることに限定されない。例えば、液晶表示装置20に入射する入射光の輝度分布に応じて、面内の明るさを均一にするためにマイクロレンズ3を不等間隔で配置することが考えられる。その場合にも、マイクロレンズ3の位置情報に基づいて照射間隔を決めるので位置精度よく分割が可能である。
【0073】
(変形例6)上記実施形態のマザー基板W2の分割方法において、レーザ光113は、フェムト秒レーザなどのパルスレーザに限定されない。例えば、YAGレーザやガスレーザなどの連続光(CW光)を用いることができる。その場合には、光学素子としてのマイクロレンズ3に対してその形成周期に同期するようにシャッター111の開閉を制御してレーザ光113を照射すればよい。
【0074】
(変形例7)上記実施形態の液晶表示装置20の製造方法は、これに限定されない。例えば、マザー基板W1と同様にマザー基板W2をウェハ状として、二つのマザー基板W1,W2を接合した後に、上記基板の分割方法を用いてレーザ光113を照射し分割して、個々の液晶表示装置20を取り出すことも可能である。
【0075】
(変形例8)上記実施形態の液晶表示装置20の製造方法において、液晶表示装置20の構成は、これに限定されない。図12は変形例の液晶表示装置を示す概略断面図である。例えば、図12に示すように、液晶表示装置300は、一対の基板としての対向基板301および素子基板309と、両基板301,309により挟持されシール材313により密封された液晶312とを備えている。素子基板309は、マトリクス状に配置された画素電極310と、画素電極310に接続したスイッチング素子としての薄膜トランジスタ311とを有する。対向基板301は、ガラス基板302と、ガラス基板302の凹部306にフォトポリマーを含む樹脂を充填して形成されたマイクロレンズ303と、上記樹脂部分を覆ったカバーガラス304とを有する。カバーガラス304の液晶312に面する表面には、画素部305を区画する遮光膜307と、各遮光膜307を覆うように成膜された対向電極308が設けられている。このように、マイクロレンズ303が凹状に設けられていても、上記実施形態の基板の分割方法を適用することができる。
【0076】
(変形例9)上記実施形態において、電気光学装置および光学素子の形態は、これに限定されない。図13は、有機EL発光素子を備えた有機EL装置を示す概略断面図である。図13に示すように、有機EL装置400は、一方の基板としてガラス基板401上に有機発光層を含む機能層402と、各機能層402を覆うように形成されたプリズム層403とを少なくとも有する。プリズム層403には、二つの斜面からなるプリズム404が複数形成されている。機能層402の幅dに対してプリズム404の幅404dが狭くなっており、1つの機能層402に複数のプリズム404が対向している。したがって、機能層402に電流を印加して励起された発光は、プリズム404を介して所定の方向に射出する。すなわち、一定の方向から見たときに非常に明るい射出光が得られる。このような光学素子としてのプリズム404を有するガラス基板401であっても、上記基板の分割方法を適用することができる。すなわち、ガラス基板401を有する有機EL装置の製造方法に適用することができる。光学素子としては、マイクロレンズやプリズムの他にもフレネルレンズ、回折格子、偏光素子などが考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】投射型表示装置の構成を示す概略図。
【図2】液晶表示装置の構造を示す概略断面図。
【図3】(a)はマザー基板を示す概略平面図、(b)は(a)のA−A線で切った概略断面図。
【図4】対向基板側のマザー基板を示す概略平面図。
【図5】レーザ照射装置の構成を示す概略図。
【図6】(a)および(b)はレーザ光の集光領域の位置を加工対象物の厚み方向で可変した状態を示す概略断面図。
【図7】基板の分割方法を示すフローチャート。
【図8】(a)〜(d)は基板の分割方法を示す概略断面図。
【図9】(a)〜(c)は光学素子としてのマイクロレンズに対するレーザ光の照射方法を示す概略図。
【図10】改質領域の形成状態の一例を示す概略断面図。
【図11】(a)および(b)は分割工程を示す概略断面図。
【図12】変形例の液晶表示装置を示す概略断面図。
【図13】有機EL発光素子を備えた有機EL装置を示す概略断面図。
【符号の説明】
【0078】
1…基板としての対向基板、3…光学素子としてのマイクロレンズ、3a…光学軸、20…電気光学装置としての液晶表示装置、110a…参照光としての可視光、111…シャッター、113…レーザ光およびパルスレーザ光、300…電気光学装置としての変形例の液晶表示装置、301…基板としての対向基板、400…電気光学装置としての有機EL装置、401…基板としてのガラス基板、404…光学素子としてのプリズム、Dx,Dy…切断予定ライン、Lm…照射間隔としての間隔、m…光学素子の周期としての寸法、W2…マザー基板。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を透過可能であると共に、切断予定ラインに沿った位置に少なくとも1つの光学素子を有する基板の分割方法であって、
前記基板における前記光学素子の位置情報を基に前記切断予定ラインに沿った方向における前記レーザ光の照射間隔を求める演算工程と、
前記レーザ光を前記切断予定ラインに沿って相対的に移動させる走査を前記基板の内部において前記レーザ光の集光点の位置を変えて複数回行うと共に、前記集光点において多光子吸収が発生するように照射する照射工程と、
前記レーザ光が照射された前記基板を分割する分割工程と、を備え、
前記照射工程では、前記光学素子の内部に前記集光点を位置させて前記照射間隔を置いて前記レーザ光を照射する少なくとも1回の前記走査を行うことを特徴とする基板の分割方法。
【請求項2】
前記基板に参照光を照射して、前記光学素子の位置を計測する計測工程をさらに備え、
前記演算工程では、前記計測工程で得られた前記光学素子の位置情報を基に前記照射間隔を求めることを特徴とする請求項1に記載の基板の分割方法。
【請求項3】
前記演算工程では、前記光学素子の位置情報を基に前記切断予定ラインに沿った方向における前記光学素子の光学軸の位置を求め、
前記照射工程では、前記光学素子の内部において前記光学軸上に前記集光点を位置させて前記レーザ光を照射する前記走査を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の基板の分割方法。
【請求項4】
前記光学素子が前記切断予定ラインに沿って周期的に設けられており、
前記照射工程において、前記光学素子に対して前記レーザ光を照射する前記照射間隔が、前記光学素子の周期と同じ、または前記周期の整数倍であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の基板の分割方法。
【請求項5】
前記照射工程において、前記レーザ光と前記基板との相対移動速度を一定とし、前記レーザ光を遮るシャッターの開閉を制御して、前記照射間隔を設定することを特徴とする請求項4に記載の基板の分割方法。
【請求項6】
前記レーザ光としてパルスレーザ光を用い、
前記照射工程において、前記パルスレーザ光と前記基板との相対移動速度を一定とし、前記照射間隔が前記光学素子の周期と同じになるように前記パルスレーザ光の繰り返し率を設定することを特徴とする請求項4に記載の基板の分割方法。
【請求項7】
前記光学素子がマイクロレンズまたはプリズムであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の基板の分割方法。
【請求項8】
レーザ光を透過可能であると共に、外形位置に少なくとも1つの光学素子を有する基板を備えた電気光学装置の製造方法であって、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の基板の分割方法を用い、マザー基板の切断予定ラインに沿って前記レーザ光を照射して、前記マザー基板から前記基板を分割することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項1】
レーザ光を透過可能であると共に、切断予定ラインに沿った位置に少なくとも1つの光学素子を有する基板の分割方法であって、
前記基板における前記光学素子の位置情報を基に前記切断予定ラインに沿った方向における前記レーザ光の照射間隔を求める演算工程と、
前記レーザ光を前記切断予定ラインに沿って相対的に移動させる走査を前記基板の内部において前記レーザ光の集光点の位置を変えて複数回行うと共に、前記集光点において多光子吸収が発生するように照射する照射工程と、
前記レーザ光が照射された前記基板を分割する分割工程と、を備え、
前記照射工程では、前記光学素子の内部に前記集光点を位置させて前記照射間隔を置いて前記レーザ光を照射する少なくとも1回の前記走査を行うことを特徴とする基板の分割方法。
【請求項2】
前記基板に参照光を照射して、前記光学素子の位置を計測する計測工程をさらに備え、
前記演算工程では、前記計測工程で得られた前記光学素子の位置情報を基に前記照射間隔を求めることを特徴とする請求項1に記載の基板の分割方法。
【請求項3】
前記演算工程では、前記光学素子の位置情報を基に前記切断予定ラインに沿った方向における前記光学素子の光学軸の位置を求め、
前記照射工程では、前記光学素子の内部において前記光学軸上に前記集光点を位置させて前記レーザ光を照射する前記走査を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の基板の分割方法。
【請求項4】
前記光学素子が前記切断予定ラインに沿って周期的に設けられており、
前記照射工程において、前記光学素子に対して前記レーザ光を照射する前記照射間隔が、前記光学素子の周期と同じ、または前記周期の整数倍であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の基板の分割方法。
【請求項5】
前記照射工程において、前記レーザ光と前記基板との相対移動速度を一定とし、前記レーザ光を遮るシャッターの開閉を制御して、前記照射間隔を設定することを特徴とする請求項4に記載の基板の分割方法。
【請求項6】
前記レーザ光としてパルスレーザ光を用い、
前記照射工程において、前記パルスレーザ光と前記基板との相対移動速度を一定とし、前記照射間隔が前記光学素子の周期と同じになるように前記パルスレーザ光の繰り返し率を設定することを特徴とする請求項4に記載の基板の分割方法。
【請求項7】
前記光学素子がマイクロレンズまたはプリズムであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の基板の分割方法。
【請求項8】
レーザ光を透過可能であると共に、外形位置に少なくとも1つの光学素子を有する基板を備えた電気光学装置の製造方法であって、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の基板の分割方法を用い、マザー基板の切断予定ラインに沿って前記レーザ光を照射して、前記マザー基板から前記基板を分割することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−174395(P2008−174395A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−6673(P2007−6673)
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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