説明

基板処理方法、基板処理装置および記憶媒体

【課題】プラズマエッチング後の所定の膜の表面に残存するエッチング残渣またはアッシング残渣をその膜にダメージを与えずに確実に除去することができる基板処理方法を提供すること。
【解決手段】基板にドライエッチングを施した後に所定の膜の表面に残存するエッチング残渣、またはエッチング残渣をアッシングした後にその膜の表面に残存するアッシング残渣を除去する基板処理方法は、基板表面に液体状の有機酸を形成し、液体状の有機酸によりCFポリマーを分解するとともに液体状の有機酸にその分解物を溶解させる第1工程と、その後、基板をアニールして、有機酸および有機酸に溶解したCFポリマーの溶解物を気化させて基板から除去する第2工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体ウエハのような基板にドライエッチングを施した後に所定の膜の表面に残存するエッチング残渣、またはエッチング残渣をアッシングした後にその膜の表面に残存するアッシング残渣を除去する処理を行う基板処理方法、基板処理装置および記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、半導体デバイスの高速化、配線パターンの微細化、高集積化の要求に対応して、配線間の容量の低下ならびに配線の導電性向上およびエレクトロマイグレーション耐性の向上が求められており、それに対応した技術として、配線材料にアルミニウム(Al)やタングステン(W)よりも導電性が高くかつエレクトロマイグレーション耐性に優れている銅(Cu)を用い、層間絶縁膜として低誘電率膜(Low−k膜)を用いたCu多層配線技術が注目されている。
【0003】
このような技術においては、層間絶縁膜としてのLow−k膜をエッチングしてホールやトレンチを形成し、その中に配線材料であるCuを埋め込むが、Low−k膜をエッチングする際には、レジストをマスクとしてプラズマによりエッチングする枚葉式のプラズマエッチング処理が行われる。
【0004】
Low−k膜のプラズマエッチングには、エッチングガスとしてCF系のガスが用いられることが多いため、エッチングで形成されたホールまたはトレンチの側壁や底部にはエッチング残渣としてレジスト残渣の他、CFポリマーが付着する。
【0005】
このようなLow−k膜のエッチングに限らず、レジスト残渣やCF系ガスによりエッチングを行って生成されたCFポリマーを含むエッチング残渣は、一般的にはアッシングで除去されるが、アッシングのみで完全に除去することが困難であるので、レジスト残渣やCFポリマーはアッシング後にアッシング残渣として残存する場合が多い。これらのレジスト残渣やCFポリマーを除去するため、アッシング後、薬液によるウエット洗浄が行われることが多い。
【0006】
しかしながら、一般的なウエット洗浄は薬液洗浄の後に純水によりリンス処理を行うため、ウエット洗浄によりLow−k膜に付着したレジスト残渣やCFポリマーを除去する際には、Low−k膜が吸湿してダメージを受ける懸念がある。
【0007】
Low−k膜にダメージを与えずにレジスト残渣やCFポリマーを除去する技術としては、有機酸の蒸気によるドライ洗浄が検討されている(特許文献1,2)。しかし、実際には、有機酸の蒸気を用いたドライクリーニングで十分にレジスト残渣やCF系ポリマーを除去することは困難である。
【0008】
一方、非特許文献1には、酢酸蒸気を基板上で結露させてレジストを除去する技術が開示されており、この方法はレジスト残渣やCFポリマーを含むエッチング残渣またはアッシング残渣の除去にも適用できる可能性がある。しかし、この技術は、酢酸蒸気を基板上で結露させてレジストを変質した後、水洗を行うものであり、Low−k膜に適用した場合には、ウエット洗浄の場合と同様、吸湿によるダメージが懸念される。
【特許文献1】特開2006−216937号公報
【特許文献2】特開2006−286802号公報
【非特許文献1】S.Noda et al., J. Electrochem. Soc.152(1)G73(2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、プラズマエッチング後の所定の膜の表面に残存するエッチング残渣、またはエッチング残渣をアッシングした後にその膜の表面に残存するアッシング残渣をその膜にダメージを与えずに確実に除去することができる基板処理方法および基板処理装置を提供することを目的とする。また、そのような基板処理方法を実施するためのプログラムが記憶された記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点では、基板にドライエッチングを施した後に所定の膜の表面に残存するエッチング残渣、またはエッチング残渣およびレジストをアッシングした後にその膜の表面に残存するアッシング残渣を除去する基板処理方法であって、基板表面に液体状の有機酸を形成し、液体状の有機酸により前記エッチング残渣またはアッシング残渣を分解するとともに液体状の有機酸にその分解物を溶解させる第1工程と、その後、基板をアニールして、有機酸および有機酸に溶解した前記エッチング残渣またはアッシング残渣の溶解物を気化させて基板から除去する第2工程とを有することを特徴とする基板処理方法を提供する。
【0011】
上記第1の観点において、前記エッチング残渣またはアッシング残渣は、レジスト残渣およびCFポリマーの少なくとも一方を含むものとすることができる。前記基板としては、Cu配線層と、その上に形成されたキャップ膜とLow−k膜とを有し、前記キャップ膜とLow−k膜が前記Cu配線層までプラズマエッチングされたもの、またはその後さらにアッシングされたものであり、前記エッチング残渣またはアッシング残渣は少なくとも前記Low−k膜に付着しているものを用いることができる。この場合に、前記エッチング残渣またはアッシング残渣は、レジスト残渣、CFポリマー、および酸化銅の少なくとも1種とすることができる。
【0012】
前記第1工程は、処理室内に設けられた載置台に基板を載置し、前記処理室内を真空排気した状態で有機酸蒸気を前記処理室内に導入し、この有機酸蒸気を基板表面で結露させることにより基板表面に液体状の有機酸を形成するものとすることができる。前記第2工程は、処理室内に設けられた載置台に前記第1工程を施された基板を載置し、前記処理室内を真空排気し、非酸化性雰囲気にした状態で基板を加熱することにより行うことができる。この場合に、前記第1工程と前記第2工程とは、真空を破ることなく行われることが好ましい。
【0013】
前記第1工程と前記第2工程とを真空を破ることなく行うために、前記第1工程を行う第1の処理ユニットと、前記第2工程を行う第2の処理ユニットと、前記第1の処理ユニットおよび前記第2の処理ユニットが連結され、基板を搬送する搬送装置を備え、真空に保持された搬送室とを有する処理装置を用い、前記第1の処理ユニットで基板に前記第1工程を施した後、その基板を前記搬送装置により前記第2の処理ユニットへ搬送し、前記第2の処理ユニットで基板に前記第2工程を施すようにすることができる。また、前記第1工程と前記第2工程とを、同一の処理ユニットで行うようにしてもよい。
【0014】
前記有機酸はカルボン酸であることが好ましく、蟻酸であることが一層好ましい。
【0015】
前記有機酸が蟻酸である場合に、前記第1工程は、処理室内に設けられた載置台に基板を載置し、前記処理室内を真空排気した状態で液体状の蟻酸を25〜100℃に加熱することにより蟻酸蒸気を形成し、その蟻酸蒸気を前記処理室内に導入し、基板を8℃(蟻酸の凝固点)以上でかつ加熱温度より5℃以上低い温度に維持して蟻酸蒸気を基板表面で結露させることにより基板表面に液体状の蟻酸を形成するようにすることができ、また、前記第2工程は、前記第1工程が施された基板を150〜300℃に加熱して蟻酸および蟻酸に溶解したエッチング残渣またはアッシング残渣の溶解物を気化させるようにすることができる。
【0016】
本発明の第2の観点では、Cu配線層と、その上に形成されたキャップ膜とLow−k膜とを有する基板に対して、前記キャップ膜とLow−k膜の前記Cu配線層に対応する部分をプラズマエッチングする工程と、前記エッチングのエッチング残渣およびレジストをアッシングにより除去する工程と、アッシング後、アッシング残渣が付着するLow−k膜表面に液体状の有機酸を形成し、液体状の有機酸により前記アッシング残渣を分解するとともに液体状の有機酸にその分解物を溶解させる工程と、その後、基板をアニールして、有機酸および有機酸に溶解した前記アッシング残渣の溶解物を気化させて基板から除去する工程と、前記ドライエッチングにより形成された露出した前記Cu配線に達するホールまたはトレンチにバリア層を形成する工程と、前記バリア層の上にCuシード層を形成する工程とを有し、これら全ての工程を真空を破ることなく実施することを特徴とする基板処理方法を提供する。
【0017】
本発明の第3の観点では、ドライエッチングを施した後に所定の膜の表面に残存するエッチング残渣、またはエッチング残渣およびレジストをアッシングした後にその膜の表面に残存するアッシング残渣を有する基板が搬入され、真空に保持可能な処理室と、前記処理室内に設けられた、基板を載置する載置台と、前記処理室内に有機酸蒸気を供給する有機酸蒸気供給機構と、前記載置台上の基板の温度を前記有機酸蒸気の温度よりも低い温度に温調する温調機構とを有する第1処理ユニットと、前記第1処理ユニットでの処理後の基板が搬入され、真空に保持可能な処理室と、前記処理室内に設けられた、基板を載置する載置台と、前記載置台上の基板を加熱する加熱機構とを有する第2処理ユニットとを具備し、前記第1処理ユニットの処理室に前記エッチング残渣またはアッシング残渣を有する基板が搬入され、前記有機酸供給機構から有機酸蒸気が前記処理室に供給され、前記温調機構により基板が前記有機酸蒸気の温度よりも低い温度に温調されて前記有機酸が基板表面で結露されることにより基板表面に液体状の有機酸が形成され、その液体状の有機酸によりエッチング残渣またはアッシング残渣が分解されるとともに液体状の有機酸にその分解物が溶解され、前記第2処理ユニットの処理室に前記液体状の有機酸が形成された基板が搬入され、前記加熱機構により加熱され、有機酸および有機酸に溶解したエッチング残渣またはアッシング残渣の溶解物が気化されて基板から除去されることを特徴とする基板処理装置を提供する。
【0018】
上記第3の観点において、前記第1の処理ユニットおよび前記第2の処理ユニットが連結され、基板を搬送する搬送装置を備え、真空に保持された搬送室をさらに具備し、前記第1の処理ユニットによる処理および前記第2の処理ユニットによる処理が真空を破ることなく行われることが好ましい。
【0019】
本発明の第4の観点では、ドライエッチングを施した後に所定の膜の表面に残存するエッチング残渣、またはエッチング残渣およびレジストをアッシングした後にその膜の表面に残存するアッシング残渣を有する基板が搬入され、真空に保持可能な処理室と、前記処理室内に設けられた、基板を載置する載置台と、前記処理室内に有機酸蒸気を供給する有機酸蒸気供給機構と、前記載置台上の基板の温度を前記有機酸蒸気の温度よりも低い温度に温調する温調機構と、前記載置台上の基板を加熱する加熱機構とを具備し、前記処理室に前記エッチング残渣またはアッシング残渣を有する基板が搬入され、前記有機酸供給機構から有機酸蒸気が前記処理室に供給され、前記温調機構により基板が前記有機酸蒸気の温度よりも低い温度に温調されて前記有機酸が基板表面で結露されることにより基板表面に液体状の有機酸が形成され、その液体状の有機酸により前記エッチング残渣またはアッシング残渣が分解されるとともに液体状の有機酸にその分解物が溶解され、その基板が前記加熱機構により加熱され、有機酸および有機酸に溶解した前記エッチング残渣またはアッシング残渣の溶解物が気化されて基板から除去されることを特徴とする基板処理装置を提供する。
【0020】
本発明の第5の観点では、ドライエッチングを施した後に所定の膜の表面に残存するエッチング残渣、またはエッチング残渣およびレジストをアッシングした後にその膜の表面に残存するアッシング残渣を有する複数の基板が搬入され、真空に保持可能な処理容器と、前記処理容器内で複数の基板を保持する基板保持部材と、前記処理容器内に有機酸蒸気を供給する有機酸蒸気供給機構と、前記保持部材に保持された複数の基板の温度を前記有機酸蒸気の温度よりも低い温度に温調する温調機構と、前記保持部材に保持された複数の基板を加熱する加熱機構とを具備し、前記処理容器に前記エッチング残渣またはアッシング残渣を有する基板が搬入され、前記有機酸供給機構から有機酸蒸気が前記処理容器に供給され、前記温調機構により基板が前記有機酸蒸気の温度よりも低い温度に温調されて前記有機酸を基板表面で結露させることにより基板表面に液体状の有機酸が形成され、その液体状の有機酸により前記エッチング残渣またはアッシング残渣が分解されるとともに液体状の有機酸にその分解物が溶解され、それら基板が前記加熱機構により加熱され、有機酸および有機酸に溶解した前記エッチング残渣またはアッシング残渣の溶解物が気化されて基板から除去されることを特徴とする基板処理装置を提供する。
【0021】
上記第3〜第5の観点において、前記エッチング残渣またはアッシング残渣は、レジスト残渣およびCFポリマーの少なくとも一方を含むものとすることができる。前記基板としては、Cu配線層と、その上に形成されたLow−k膜とを有し、前記Low−k膜が前記Cu配線層までプラズマエッチングされたもの、またはその後さらにアッシングされたものであり、前記エッチング残渣またはアッシング残渣は前記Low−k膜に付着してものを用いることができる。この場合に、前記エッチング残渣またはアッシング残渣は、レジスト残渣、CFポリマー、および酸化銅の少なくとも1つが含まれるものとすることができる。
【0022】
本発明の第6の観点では、Cu配線層と、その上に形成されたLow−k膜とを有する基板に対して、前記Low−k膜の前記Cu配線層に対応する部分をプラズマエッチングするエッチングユニットと、前記エッチングのエッチング残渣およびレジストをアッシングにより除去するアッシングユニットと、アッシング後、アッシング残渣が付着するLow−k膜表面に液体状の有機酸を形成し、液体状の有機酸により前記アッシング残渣を分解するとともに液体状の有機酸にその分解物を溶解させる溶解ユニットと、前記溶解ユニットでの溶解処理の後、基板をアニールして、有機酸および有機酸に溶解した前記アッシング残渣の溶解物を気化させて基板から除去する気化ユニットと、前記ドライエッチングにより形成された露出した前記Cu配線に達するホールにバリア層を形成するバリア層形成ユニットと、前記バリア層の上にCuシード層を形成するシード層形成ユニットと、前記エッチングユニット、前記アッシングユニット、前記溶解ユニット、前記気化ユニット、前記バリア層形成ユニット、および前記シード層形成ユニットが連結され、基板を搬送する搬送装置を備え、真空に保持される搬送室とを具備し、前記エッチングユニット、前記アッシングユニット、前記溶解ユニット、前記気化ユニット、前記バリア層形成ユニット、および前記シード層形成ユニットによる処理は真空中で行われ、各ユニット間の搬送を前記搬送室を介して行うことにより全てのユニットの処理を真空を破ることなく行うことを特徴とする基板処理装置を提供する。
【0023】
本発明の第7の観点では、コンピュータ上で動作し、処理装置を制御するプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、上記第1の観点または第2の観点の基板処理方法が行われるようにコンピュータに処理装置を制御させることを特徴とする記憶媒体を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、基板表面に液体状の有機酸を形成し、液体状の有機酸により、典型的にはレジスト残渣およびCFポリマーの少なくとも一方を含む、エッチング残渣またはアッシング残渣を分解するとともに液体状の有機酸にその分解物を溶解させ、その後、基板をアニールして、有機酸および有機酸に溶解したエッチング残渣またはアッシング残渣の溶解物を気化させて基板から除去することにより、水や薬液を用いることなく有機酸蒸気よりも反応性の良好な液体状有機酸によりエッチング残渣またはアッシング残渣を除去することができるので、下地にダメージを与えることなく、エッチング残渣またはアッシング残渣を確実に除去することができる。したがって、ダメージを受けやすいLow−k膜のエッチングまたはアッシング後にLow−k膜に付着したエッチング残渣またはアッシング残渣を除去する場合に、特に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
ここでは、被処理基板として半導体ウエハを用いた場合について説明する。図1は、本発明の基板処理方法を実施するための基板処理装置の一例を示す概略構成図である。
【0026】
この基板処理装置は、被処理基板である半導体ウエハ(以下単にウエハと記す)の表面に存在するプラズマエッチング後のLow−k膜を液体状の有機酸で処理する第1処理ユニット1と、第1処理ユニット1での処理後、ウエハに対してアニール処理を行う第2処理ニット2を備えており、これらの第1および第2処理ユニット1、2は八角形をなす搬送室5の2つの辺にそれぞれ対応して設けられている。また、搬送室5の他の2つの辺にはそれぞれロードロック室6,7が設けられている。これらロードロック室6,7の搬送室5と反対側には搬入出室8が設けられており、搬入出室8のロードロック室6,7と反対側には被処理基板としての半導体ウエハWを収容可能な3つのキャリアCを取り付けるポート9,10,11が設けられている。
【0027】
上記搬送室5ならびに第1および第2の処理ユニット1,2の内部は真空雰囲気に保持され、搬入出室8は大気雰囲気に保持されるようになっている。また、ロードロック室6,7は、大気雰囲気と真空雰囲気との間で切り換え可能となっている。
【0028】
第1および第2処理ユニット1,2は、同図に示すように、搬送室5の各辺にゲートバルブGを介して接続され、これらは対応するゲートバルブGを開放することにより搬送室5と連通され、対応するゲートバルブGを閉じることにより搬送室5から遮断される。また、ロードロック室6,7は、搬送室5の対応する辺に第1のゲートバルブG1を介して接続され、また、搬入出室8に第2のゲートバルブG2を介して接続されている。そして、ロードロック室6,7は、第1のゲートバルブG1を開放することにより搬送室5に連通され、第1のゲートバルブG1を閉じることにより搬送室から遮断される。また、第2のゲートバルブG2を開放することにより搬入出室8に連通され、第2のゲートバルブG2を閉じることにより搬入出室8から遮断される。
【0029】
搬送室5内には、第1および第2処理ユニット1,2、ロードロック室6,7に対して、半導体ウエハWの搬入出を行う搬送装置12が設けられている。この搬送装置12は、搬送室5の略中央に配設されており、回転および伸縮可能な回転・伸縮部13の先端にウエハWを支持する2つの支持アーム14a,14bを有しており、これら2つの支持アーム14a,14bは互いに反対方向を向くように回転・伸縮部13に取り付けられている。
【0030】
搬入出室8のウエハ収納容器であるフープ(FOUP;Front Opening Unified Pod)取り付け用の3つのポート9,10、11にはそれぞれ図示しないシャッターが設けられており、これらポート9,10,11にウエハWを収容した、または空のフープFがステージSに載置された状態で直接取り付けられ、取り付けられた際にシャッターが外れて外気の侵入を防止しつつ搬入出室8と連通するようになっている。また、搬入出室8の側面にはアライメントチャンバ15が設けられており、そこで半導体ウエハWのアライメントが行われる。
【0031】
搬入出室8内には、フープFに対する半導体ウエハWの搬入出およびロードロック室6,7に対する半導体ウエハWの搬入出を行う搬送装置16が設けられている。この搬送装置16は、多関節アーム構造を有しており、フープFの配列方向に沿ってレール18上を走行可能となっていて、その先端の支持アーム17上に半導体ウエハWを載せてその搬送を行う。
【0032】
この処理装置は、制御部20を有しており、制御部20は、プロセスコントローラ21と、ユーザーインターフェース22と、記憶部23とを有している。プロセスコントローラ21には、処理装置の各構成部、例えば搬送装置12の駆動系、第1および第2処理ユニット1,2のガス供給系、搬送室5、第1および第2処理ユニット1,2、ロードロック室6,7の真空排気系、ゲートバルブGの駆動系等が接続されており、これらがプロセスコントローラ21により制御される。
【0033】
ユーザーインターフェース22は、プロセスコントローラ21に接続されており、オペレータが処理装置を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、プラズマ処理装置の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなる。
【0034】
記憶部23は、プロセスコントローラ21に接続されており、処理装置で実行される各種処理をプロセスコントローラ21の制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じて処理装置の各構成部に処理を実行させるためのプログラムすなわちレシピが格納されている。レシピは記憶部23の中の記憶媒体に記憶されている。記憶媒体は、ハードディスクのような固定的なものであってもよいし、CDROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。
【0035】
そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース21からの指示等にて任意のレシピを記憶部23から呼び出してプロセスコントローラ2
1に実行させることで、プロセスコントローラ21の制御下で、処理装置での所望の処理が行われる。
【0036】
次に、上記第1処理ユニット1について説明する。
図2は第1処理ユニット1の概略構成を示す断面図である。第1処理ユニット1は、ウエハWを収容して真空保持可能なチャンバ31と、チャンバ31内に有機酸蒸気を供給する有機酸供給機構32と、希釈ガスとして例えば窒素ガスやアルゴンガスをチャンバ31内に供給する希釈ガス供給機構33と、チャンバ31内を真空排気する排気機構34とを備えている。
【0037】
チャンバ31内の底部には、収容したウエハWを載置するための載置台35が設けられ、この載置台35の内部には、ウエハWを温調するための温調機構として、所定の温度に制御された温調媒体が通流される温調媒体流路36が設けられている。チャンバ31の側壁には、ウエハWを搬入出するための搬入出口37が形成されており、この搬入出口37はゲートバルブGにより開閉される。
【0038】
チャンバ31の上部には、載置台35に対向するようにシャワーヘッド40が設けられている。シャワーヘッド40は、有機酸供給機構32から供給された有機酸および希釈ガス供給機構33から供給された希釈ガスを拡散させる拡散空間41を内部に有するとともに、載置台35との対向面に、有機酸蒸気または希釈ガスをチャンバ31内に吐出するための複数の吐出孔42が形成されている。
【0039】
チャンバ31の底壁には排気口38が形成されており、上記排気機構34は、排気口38に接続された排気管46と、この排気管46を介してチャンバ31内を排気する真空ポンプ47と、排気管46に設けられた圧力調整バルブ48とを有している。
【0040】
有機酸供給機構32は、液体状の有機酸が貯留された有機酸貯留部51と、有機酸貯留部51内の有機酸を蒸気化するためのヒーター52と、蒸気化された有機酸をシャワーヘッド40の拡散空間41内に導く有機酸蒸気供給ライン53と、有機酸蒸気供給ライン53を流通する有機酸蒸気の流量を調整する流量調整機構としてのマスフローコントローラ54と、有機酸蒸気供給ライン53を開閉する開閉バルブ55とを有している。
【0041】
有機酸としてはカルボン酸を好適に用いることができる。カルボン酸としては、蟻酸(HCOOH)、酢酸(CHCOOH)、プロピオン酸(CHCHCOOH)、酪酸(CH(CHCOOH)、吉草酸(CH(CHCOOH)などを挙げることができ、これらの中では蟻酸(HCOOH)、酢酸(CHCOOH)、プロピオン酸(CHCHCOOH)が好ましく、蟻酸(HCOOH)が特に好ましい。
【0042】
希釈ガス供給機構33は、希釈ガス、例えば窒素ガスやアルゴンガスを供給する希釈ガス供給源56と、希釈ガスをシャワーヘッド40の拡散空間41内に導く希釈ガス供給ライン57と、希釈ガス供給ライン57を流通する窒素ガスの流量を調整する流量調整機構としてのマスフローコントローラ58と、希釈ガス供給ライン57を開閉する開閉バルブ59とを有している。
【0043】
次に、上記第2処理ユニット2について説明する。
図3は第2処理ユニット2の概略構成を示す断面図である。第2処理ユニット2は、ウエハWを収容して真空保持可能なチャンバ61と、チャンバ61内に雰囲気形成ガスを供給する雰囲気形成ガス供給機構62と、チャンバ61内を真空排気する排気機構63とを備えている。
【0044】
チャンバ61内の底部には、収容したウエハWを載置するための載置台64が設けられ、この載置台64の内部には、ウエハWを加熱するためのヒーター65が設けられている。ヒーター65へはヒーター電源66から給電される。チャンバ61の側壁には、ウエハWを搬入出するための搬入出口67が形成されており、この搬入出口67はゲートバルブGにより開閉される。
【0045】
チャンバ61の側壁上部には、ガス導入口69が設けられており、上記雰囲気形成ガス供給機構62は、雰囲気形成ガス、例えば窒素ガスやアルゴンガスを供給する雰囲気形成ガス供給源71と、雰囲気形成ガスをガス導入口69からチャンバ61内へ導く雰囲気形成ガス供給ライン72と、雰囲気形成ガス供給ライン72を流通する雰囲気調整ガスの流量を調整する流量調整機構としてのマスフローコントローラ73と、雰囲気形成ガス供給ライン72を開閉する開閉バルブ74とを有している。
【0046】
チャンバ61の底壁には排気口75が形成されており、上記排気機構63は、排気口75に接続された排気管76と、この排気管76を介してチャンバ61内を排気する真空ポンプ77と、排気管76に設けられた圧力調整バルブ78とを有している。
【0047】
次に、このように構成された処理装置により、本発明の基板処理方法をデュアルダマシン構造形成に適用する手順の例について説明する。
【0048】
ここでは、下層の層間絶縁膜であるLow−k膜201の上にキャップ膜206より具体的にはバリア絶縁膜を介して上層の層間絶縁膜であるLow−k膜202が形成され、その上にハードマスク層207が形成され、下層のLow−k膜201にCu配線層203が形成されたウエハWに対し、図4(a)に示すように、Low−k膜202のCu配線層203に対応する位置をプラズマエッチングしてトレンチ204およびホール205を形成した際における、トレンチ204およびホール205の側壁、底壁に付着したエッチング残渣209、または図4(b)に示すように、残存したエッチング残渣209およびレジスト膜208をアッシングした際における、トレンチ204およびホール205の側壁、および底壁、ならびにハードマスク層207の上面に付着したアッシング残渣210を除去する。なお、エッチングマスクがレジスト膜208のみで十分な場合にはハードマスク層207は不要である。エッチング残渣209およびアッシング残渣210は、レジスト残渣およびCFポリマーの少なくとも一方を含んでいる。
【0049】
以下、図5のフローチャートを参照して説明する。
まず、搬入出室8の搬送装置16により、いずれかのフープFからウエハWを取り出し、ロードロック室6または7に搬送し、その中を真空雰囲気にした後、搬送室5の搬送装置12によりそのウエハWを取り出して、第1処理ユニット1に搬入する(工程1)。第1処理ユニット1においては、ゲートバルブGを開いた状態で搬入出口37からチャンバ31内に搬入したウエハWを載置台35に載置した後、ゲートバルブGを閉じてチャンバ31内を密閉する。
【0050】
そして、排気機構34によってチャンバ31内を所定の真空度に調整し、チャンバ31内に希釈ガスとともに有機酸蒸気を供給し、その蒸気をウエハW上で結露させ、ウエハW表面のLow−k膜の表面の全面に液体状の有機酸が存在する状態とする(工程2)。
【0051】
すなわち、有機酸蒸気は、有機酸供給機構32の有機酸貯留部51に貯留された液体状の有機酸をヒーター52で加熱して形成されるが、その際の有機酸蒸気の温度よりも、ウエハW温度のほうが低くなるように、載置台35の温調媒体流路36に通流する温調媒体の温度を制御することにより、ウエハW表面で有機酸を結露させることができる。
【0052】
有機酸蒸気を形成する際の加熱温度は、有機酸によって異なるが、有機酸として蟻酸を用いた場合には、25〜100℃の範囲とすることが好ましい。液化を抑制するためには60℃以上の温度に加熱することが好ましい。
【0053】
このとき、ウエハW(載置台35)の温度は、有機酸の加熱温度よりも低い温度であれば結露させることができるが、確実に結露させる観点からは、有機酸蒸気の温度よりも5℃以上低いことが好ましい。有機酸として蟻酸を用いた場合には、蟻酸の凝固点である8℃以上、例えば50℃程度に設定される。これにより、ウエハW上で有機酸が結露し、図6の模式図に示すように、ウエハW表面のLow−k膜202の表面が液体状の有機酸211で覆われた状態になる。
【0054】
このように有機酸を液化させることにより、例えば、有機酸が蟻酸である場合には、
HCOOH→H+HCOO
のような電離反応が生じる確率が高くなるため、エッチング残渣またはアッシング残渣209を構成するレジスト残渣やCFポリマーとの反応性を高めることができる。
【0055】
この場合に、電離した有機酸とエッチング残渣209またはアッシング残渣210との間に反応が生じ、例えば、レジスト残渣やCFポリマーが低分子量の有機化合物やHFに分解されて液体状の有機酸に溶解し、一部は気化される。
【0056】
この第1処理ユニット1での処理の後、搬送装置12によりウエハWを第1処理ユニット1から取り出し、真空を破ることなく第2処理ユニット2へ搬送する(工程3)。第2処理ユニット2においては、ゲートバルブGを開いた状態で搬入出口67からチャンバ61内に搬入したウエハWを載置台64に載置した後、ゲートバルブGを閉じてチャンバ61内を密閉する。
【0057】
そして、排気機構63によってチャンバ61内を所定の真空度に調整するとともに、チャンバ61内に雰囲気形成ガスとして例えば窒素ガスまたはアルゴンガスを導入して、チャンバ61内の雰囲気を非酸化性雰囲気とするとともに、ヒーター65によりウエハWを加熱してアニールすることにより、図7の模式図に示すように、ウエハW上に存在するレジスト残渣やCFポリマーが低分子量の有機化合物やHFに分解された状態で液体状の有機酸に溶解してなる溶解液212を気化させる。すなわち、溶解液212中に液体として存在する有機酸を気化させ、これと同時に液体有機酸中に溶解したエッチング残渣またはアッシング残渣209を構成するCFポリマーやレジスト残渣の分解物も気化させて、これらを除去する(工程4)。有機酸が蟻酸の場合には、液体状の蟻酸に溶解した低分子量の有機化合物やHF等が蟻酸(HCOOH)とともに気化する。
【0058】
この場合に、チャンバ61内の雰囲気は、Cu配線が酸化しないように非酸化性雰囲気になっていればよく、上記窒素ガスやアルゴンガスのような不活性ガスを供給する他、単に真空引きを行うのみでもよいし、有機酸蒸気雰囲気、例えば蟻酸蒸気雰囲気であってもよい。あるいは水素ガスを供給してもよい。
【0059】
工程4の加熱温度は、有機酸およびその中に含まれるエッチング残渣またはアッシング残渣であるレジスト残渣やCFポリマーの分解物が気化可能な温度であればよいが、有機酸蒸気の供給温度よりも高い温度であることが必要である。この際の温度は有機酸によって異なるが、有機酸として蟻酸を用いた場合には、蟻酸蒸気の供給温度よりも高い温度である必要があり、蟻酸蒸気の供給温度が50℃程度の場合には60℃を超える温度に加熱する必要がある。より好ましくは150〜300℃である。
【0060】
以上のように、本実施形態では、第1の処理ユニット1でウエハWのLow−k膜表面に液体状の有機酸を存在させることにより、電離反応により生じたイオンとエッチング残渣またはアッシング残渣であるレジスト残渣やCFポリマーとが高い反応性で反応し、これらが分解されて液体状の有機酸に溶解し、その後第2処理ユニット2にて加熱処理(アニール処理)することにより、有機酸に溶解したレジスト残渣やCFポリマーの分解物が有機酸とともに気化するため、Low−k膜にダメージを与えることなくエッチング残渣やアッシング残渣を確実に除去することができる。また、エッチングやアッシングの際に、酸化銅がエッチング残渣やアッシング残渣としてLow−k膜に付着することがあるが、このような酸化銅も蟻酸などの有機酸によりLow−k膜にダメージを与えることなく除去することができる。
【0061】
また、本実施形態では、第1の処理ユニット1による液体有機酸による処理と、第2の処理ユニット2によるアニール処理とが、大気曝露することなく連続して行われるので、大気中に含まれる水が液体有機酸、例えば液体蟻酸と反応することでCuの腐食が進行したり、Low−k膜のダメージが大きくなる懸念がない。
【0062】
さらに、ウエハWの処理前には、Cu配線層の表面の大気雰囲気による自然酸化もしくはエッチングやアッシングで使用される酸化性ガスによる酸化により酸化銅が形成さているが、蟻酸などの有機酸を用いることにより、レジスト残渣やCFポリマーの除去と同時にCu配線層表面の酸化銅も除去することができる。
【0063】
他の実施形態として、液体有機酸による処理と、アニール処理とを、同一処理ユニット(同一チャンバ)で行うものを挙げることができる。この場合には、大気曝露のおそれを一層小さくすることができるので、Cuの腐食やLow−k膜のダメージを一層効果的に防止することができる。
【0064】
このような処理装置としては、図8に示すように、図2の装置の載置台35の内部に温調媒体流路36の他にヒーター80を設け、このヒーター80にヒーター電源81から給電するようにしたものを挙げることができる。これにより、Low−k膜表面に液体状の有機酸を存在させる処理は、第1の処理ユニット1と全く同様に行うことができ、その後のアニール処理は、ヒーター80により載置台35を加熱することにより行うことができる。ただし、このように同一チャンバで上記2つの処理を行う場合には、一枚のウエハで低温の有機酸処理と高温のアニール処理を行った後、次のウエハについて低温の有機酸処理を行う場合、冷却時間が長時間になってしまうため、処理のスループットを重視する場合には、図1のような処理装置が好ましい。あるいは、アニール処理をランプ加熱で行えば、アニール後ランプOFFで比較的短時間で冷却することができる。
【0065】
以上は、ウエハWを真空雰囲気で1枚ずつ加熱するいわゆる枚葉式の基板処理について説明したが、本発明のさらに他の実施形態として、ウエハWを複数枚同時に加熱するいわゆるバッチ式の基板処理を挙げることができる。このようなバッチ式の基板処理の場合には、枚葉式のようなスループットの低下をさほど考慮する必要がないことから、同一装置で有機酸処理とアニール処理を行うようにすることができる。以下、このようなバッチ式の基板処理装置について説明する。図9はこのようなバッチ式の基板処理装置を示す断面図である。
【0066】
この基板処理装置は、ウエハWを収容して処理する略筒状の処理容器101と、複数枚のウエハWを保持して処理容器101内に収容させるためのウエハボート103と、このウエハボート103を昇降させて処理室101内外の間で進退させるボートエレベータ104と、処理容器101内に有機酸を供給する有機酸供給機構112と、処理容器101内で有機酸を希釈する希釈ガス、例えば窒素ガスやアルゴンガスを処理容器101内に供給する希釈ガス供給機構113と、処理容器101内を真空排気する排気機構114とを備えている。有機酸供給機構112は有機酸を処理容器101内に導く有機酸供給ライン121を有し、希釈ガス供給機構113は希釈ガスを処理容器101内に導く希釈ガス供給ライン122を有し、排気機構114は処理容器101を排気する排気管123を有している。なお、有機酸供給機構112は上記有機酸供給機構32と同様に構成され、希釈ガス供給機構113は上記希釈ガス供給機構33と同様に構成され、排気機構114は上記排気機構34と同様に構成される。
【0067】
処理容器101内には、石英製のプロセスチューブ102が設けられ、このプロセスチューブ102の外周にプロセスチューブ102を囲繞するように、プロセスチューブ102内を所定温度に加熱するヒーター105が設けられている。プロセスチューブ102の下端部には、環状または筒状のマニホールド106が設けられており、このマニホールド106には、有機酸供給機構112の供給ライン121、希釈ガス供給機構113の供給ライン122および排気機構114の排気管123が接続されている。
【0068】
ボートエレベータ104には、マニホールド106と当接してプロセスチューブ102内を密閉状態に保持する蓋部107が設けられており、この蓋部107の上部に保温筒108が搭載されている。
【0069】
この基板処理装置の各構成部は制御部130により制御されるようになっている。この制御部130は上記制御部20と同様に構成される。
【0070】
このように構成された基板処理装置においては、まず、ボートエレベータ104によってウエハボート103を下降させた状態で、ウエハボート103に複数枚のウエハWを保持させる。次に、ボートエレベータ104によってウエハボート103を上昇させて処理容器101内に収容させる。そして、排気機構114によって処理容器101内を所定の真空度の調整し、処理容器101内に希釈ガスとともに有機酸蒸気を供給する。このときヒーター105により、ウエハWを有機酸蒸気よりも低い温度に温調して、ウエハWのLow−k膜表面に有機酸を結露させる。その後、ヒーター105の温度を上昇させて、ウエハW上のCFポリマーを有機酸とともに気化させる。
【0071】
このようにすることにより、このようなバッチ式の処理装置においても、Low−k膜にダメージを与えることなくCFポリマーを除去することができる。
【0072】
次に、本発明の別の実施形態について説明する。
上述したように、Cu配線層の表面に形成された酸化銅は有機酸により除去することができるが、酸化銅を除去した後大気に取り出すと再び酸化するおそれがある。またエッチングやアッシング後に大気に取り出すと大気中に含まれる水分によりLow−k膜が吸湿しダメージを受ける懸念がある。
【0073】
このため、本実施形態では、エッチング、アッシング、残渣除去処理、バリア層形成、およびシード層形成を連続的に行うことができるマルチチャンバータイプの基板処理装置を用い、これら処理を真空を破らずに行う。
【0074】
図10は、このような基板処理装置を示す概略構成図である。この基板処理装置は、被処理基板であるウエハの表面に存在するLow−k膜をプラズマエッチングするエッチングユニット151と、エッチング後に残存するレジスト等をアッシング除去するアッシングユニット152と、アッシング残渣を液体状の有機酸で処理して液体状の有機酸によりアッシング残渣を分解するとともに液体状の有機酸にその分解物を溶解させる溶解ユニット153と、溶解ユニット153での溶解処理の後、ウエハWをアニールして、有機酸および有機酸に溶解したアッシング残渣の溶解物を気化させてウエハWから除去する気化ユニット154と、Cu配線に達するホール等にバリア層を形成するバリア層形成ユニット155と、バリア層の上にCuシード層を形成するシード層形成ユニット156を備えており、これらユニットは搬送室160に接続されている。
【0075】
エッチングユニット151としては公知のプラズマエッチング装置を用いることができる。また、アッシングユニット152も公知のアッシング装置を用いることができる。溶解ユニット153は図2に示す第1処理ユニット1と同じ構成を有しており、気化ユニット154は図3に示す第2処理ユニット2と同じ構成を有している。バリア層形成ユニット155は、公知のPVDまたはCVD等によりバリア層として例えばTa、TaN、Ti、TiN、Ruなどの膜を形成するものであり、シード層形成ユニット156は、公知のPVDまたはCVD等によりバリア層の上にCuシード層を形成するものである。
【0076】
搬送室160にはロードロック室166,167も接続されている。これらロードロック室166,167の搬送室160と反対側には搬入出室168が設けられており、搬入出室168のロードロック室166,167と反対側には被処理基板としての半導体ウエハWを収容可能な3つのキャリアCを取り付けるポート169,170,171が設けられている。
【0077】
上記搬送室160ならびにユニット151〜156の内部は真空雰囲気に保持されるようになっており、搬入出室168は大気雰囲気に保持されるようになっている。また、ロードロック室166,167は、大気雰囲気と真空雰囲気との間で切り換え可能となっている。
【0078】
ユニット151〜156は、同図に示すように、搬送室160にゲートバルブGを介して接続され、これらは対応するゲートバルブGを開放することにより搬送室160と連通され、対応するゲートバルブGを閉じることにより搬送室160から遮断される。また、ロードロック室166,167は、搬送室160に第1のゲートバルブG1を介して接続され、また、搬入出室168に第2のゲートバルブG2を介して接続されている。そして、ロードロック室166,167は、第1のゲートバルブG1を開放することにより搬送室160に連通され、第1のゲートバルブG1を閉じることにより搬送室から遮断される。また、第2のゲートバルブG2を開放することにより搬入出室168に連通され、第2のゲートバルブG2を閉じることにより搬入出室168から遮断される。
【0079】
搬送室160内には、第1および第2処理ユニット1,2、ロードロック室166,167に対して、半導体ウエハWの搬入出を行う搬送装置161が設けられている。この搬送装置161は、搬送室160の中央部に設けられたレール162を走行する基部163と、基部163に対して回転および伸縮可能に設けられた回転・伸縮部164と、その先端に設けられたウエハWを支持する2つの支持アーム165a,165bとを有しており、これら2つの支持アーム165a,165bは互いに反対方向を向くように回転・伸縮部164に取り付けられている。
【0080】
搬入出室168のウエハ収納容器であるフープ(FOUP;Front Opening Unified Pod)取り付け用の3つのポート169,170、171にはそれぞれ図示しないシャッターが設けられており、これらポート169,170,171にウエハWを収容した、または空のフープFがステージSに載置された状態で直接取り付けられ、取り付けられた際にシャッターが外れて外気の侵入を防止しつつ搬入出室168と連通するようになっている。また、搬入出室168の側面にはアライメントチャンバ175が設けられており、そこでウエハWのアライメントが行われる。
【0081】
搬入出室168内には、フープFに対する半導体ウエハWの搬入出およびロードロック室166,167に対する半導体ウエハWの搬入出を行う搬送装置176が設けられている。この搬送装置176は、多関節アーム構造を有しており、フープFの配列方向に沿ってレール178上を走行可能となっていて、その先端の支持アーム177上に半導体ウエハWを載せてその搬送を行う。
【0082】
この基板処理装置の各構成部は制御部180により制御されるようになっている。この制御部180は上記制御部20と同様に構成される。
【0083】
このように構成される基板処理装置では、層間絶縁膜としてのLow−k膜を有するウエハWを搬入出室168の搬送装置176により、いずれかのフープFからウエハWを取り出し、ロードロック室166または167に搬送し、その中を真空雰囲気にした後、搬送室160の搬送装置161によりそのウエハWを取り出して、エッチングユニット151に搬入し、そこで層間絶縁膜であるLow−k膜にCu配線層までプラズマエッチングを施す。その後、搬送装置161によりエッチングユニット151からウエハWを取り出して、アッシングユニット152に搬入し、そこで残存するレジストをアッシングにより除去する。
【0084】
その後、搬送装置161によりアッシングユニット151からウエハWを取り出して、溶解ユニット153に搬入する。溶解ユニット153では、基本的に第1処理ユニット1と同じ処理を行う。すなわち、アッシング残渣を液体状の有機酸で処理して液体状の有機酸によりアッシング残渣を分解するとともに液体状の有機酸にその分解物を溶解させる。
【0085】
引き続き、搬送装置161により溶解ユニット153からウエハWを取り出して、気化ユニット154に搬入する。気化ユニット154では、基本的に第2処理ユニット2と同じ処理を行う。すなわち、有機酸および有機酸に溶解したアッシング残渣の溶解物を気化させてウエハWから除去する。
【0086】
このようにしてアッシング残渣が除去されたウエハWは、搬送装置161により気化ユニット154からバリア層形成ユニット155に搬入される。バリア層形成ユニット155では、アッシング残渣が除去されたホール等の内壁にバリア層として、例えばTa、TaN、Ti、TiN、Ruなどの膜をPVDまたはCVDにより2〜50nm程度の厚さで成膜する。引き続き、搬送装置161によりバリア層形成ユニット155からウエハWを取り出して、シード層形成ユニット156に搬入する。シード層形成ユニット156ではバリア層の上にPVDまたはCVDによりCuのシード層を5〜50nm程度の厚さで成膜する。
【0087】
シード層形成ユニット156での処理が終了したウエハWは、搬送装置161によりロードロック室166および167のいずれかに搬入され、そこで大気に戻されて、搬送装置176により、いずれかのフープFに戻される。これらの処理が施されたウエハWは、めっき装置等へ搬送され、電解めっき等によりホール等の中にCu埋込層を形成する。
【0088】
このように、本実施形態では、Low−k膜のエッチング、アッシング、残渣除去処理、バリア層形成、およびシード層形成を真空を破らずに実施することができるので、不所望の酸化銅の形成を極力抑えながら、Cuシード層の形成までを行うことができ、高い品質のデバイスを得ることができる。なお、このようなマルチチャンバータイプの基板処理装置は種々の変形が可能である。例えば、エッチングとアッシングを同一チャンバで行ってもよい。また、大気中の水分による吸湿の影響が少なければ、溶解ユニット153、気化ユニット154、バリア層形成ユニット155、シード層形成ユニット156の4ユニット構成としてもよい。
【0089】
なお、本実施形態の処理方法が特に有効なLow−k膜としては、例えば、シロキサン系であるSi、O、Hを含むHSQ(Hydrogen−silsesquioxane)やSi、C、O、Hを含むMSQ(Methyl−Silsesquioxane)等、有機系であるポリアリレンエーテルからなるFLAME(ハネウエル社製)やポリアリレンハイドロカーボンからなるSILK(ダウ・ケミカル社製)、Parylene、BCB、PTFE、フッ化ポリイミド等、多孔質膜であるポーラスMSQやポーラスSILK、ポーラスシリカ等の塗布膜として形成されるもの、および、Black Diamond(Applied Materials社製)、Coral(Novellus社製)、Aurora(ASM社製)等のSiOC系材料(SiOのSi−O結合にメチル基(−CH)を導入してSi−CHを混入したもの)やSiOF系材料(SiOにフッ素(F)を導入したもの)等のCVDにより形成されるものを挙げることができる。
【0090】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく、本発明の思想の範囲内で種々の変形が可能である。例えば上記実施形態では、有機酸蒸気を形成してこれをチャンバ内のウエハ上で結露させて液体状の有機酸を形成したが、ウエハ上にスピン塗布等により液体状の有機酸を直接塗布するようにしてもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、被エッチング対象としてLow−k膜を用いたが、これに限るものではなく、他の層間絶縁膜であってもよいし、それ以外の膜であってもよい。また、上記実施形態ではCu配線層に達するエッチングを行った場合について示したが、これに限るものではない。キャップ膜としてバリア絶縁膜を用いた場合を例にとって説明したが、Cu上に選択成長させたキャップメタル膜やCuSiN膜を用いてもよい。
【0092】
さらに、上記実施形態では有機酸を用いてレジスト残渣やCFポリマー等を含むエッチング残渣またはアッシング残渣を除去する場合について説明したが、エッチング後にエッチング残渣とともに、残存するレジストそのものも除去することができ、その場合にはアッシングが不要となる。さらに、上記実施形態では、エッチング残渣、アッシング残渣として、レジスト残渣、CFポリマー、酸化銅を示したが、これに限らず、エッチングする膜に応じて他の物質が含まれることもある。
【0093】
さらにまた、上記実施形態ではCu配線をデュアルダマシンにより形成する場合について説明したが、シングルダマシンにより形成する場合に本発明を適用することも可能である。
【0094】
さらにまた、基板として半導体ウエハを用いた場合を例にとって説明したが、FPDのガラス基板等、他の基板であっても適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、半導体ウエハ等の基板の所定の膜、特にLow−k膜をプラズマエッチングした後にその表面に付着するCFポリマーを除去する際に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の基板処理方法を実施するための処理装置の一例を示す概略構成図。
【図2】図1の処理装置に搭載された第1処理ユニット1の概略構成を示す断面図。
【図3】図1の処理装置に搭載された第2処理ユニット2の概略構成を示す断面図。
【図4】本発明の基板処理方法が適用されるウエハの構造を示す断面図。
【図5】本発明の一実施形態に係る基板処理方法を説明するためのフローチャート。
【図6】液体状の有機酸をLow−k膜表面に形成した際の状態を示す模式図。
【図7】液体状の有機酸をLow−k膜表面に形成した後、アニールした際の状態を示す模式図。
【図8】本発明の基板処理方法の他の実施形態を実施するための基板処理装置を示す概略構成図。
【図9】本発明の基板処理方法のさらに他の実施形態を実施するための基板処理装置を示す概略構成図。
【図10】本発明の基板処理方法の別の実施形態を実施するための基板処理装置を示す概略構成図。
【符号の説明】
【0097】
1;第1処理ユニット
2;第2処理ユニット
5,160;搬送室
6,7,166,167;ロードロック室
8,168;搬入出室
12,16,161,176;搬送装置
20,130,180;制御部
31,61;チャンバ
32,112;有機酸供給機構
34,114;排気機構
35,64;載置台
36;温調媒体流路
37,67;搬入出口
40;シャワーヘッド
101;処理容器
102;プロセスチューブ
103;ウエハボート
151;エッチングユニット
152;アッシングユニット
153;溶解ユニット
154;気化ユニット
155;バリア層形成ユニット
156;シード層形成ユニット
201,202;Low−k膜
203;Cu配線層
204;トレンチ
205;ホール
209;エッチング残渣
210;アッシング残渣
211;液体状有機酸
212;溶解液
G;ゲートバルブ
W;半導体ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にドライエッチングを施した後に所定の膜の表面に残存するエッチング残渣、またはエッチング残渣およびレジストをアッシングした後にその膜の表面に残存するアッシング残渣を除去する基板処理方法であって、
基板表面に液体状の有機酸を形成し、液体状の有機酸により前記エッチング残渣またはアッシング残渣を分解するとともに液体状の有機酸にその分解物を溶解させる第1工程と、
その後、基板をアニールして、有機酸および有機酸に溶解した前記エッチング残渣またはアッシング残渣の溶解物を気化させて基板から除去する第2工程と
を有することを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
前記エッチング残渣またはアッシング残渣は、レジスト残渣およびCFポリマーの少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記基板は、Cu配線層と、その上に形成されたキャップ膜とLow−k膜とを有し、前記キャップ膜とLow−k膜が前記Cu配線層までプラズマエッチングされたもの、またはその後さらにアッシングされたものであり、前記エッチング残渣またはアッシング残渣は少なくとも前記Low−k膜に付着していることを特徴とする請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記エッチング残渣またはアッシング残渣は、レジスト残渣、CFポリマー、および酸化銅の少なくとも1種であることを特徴とする請求項3に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記第1工程は、処理室内に設けられた載置台に基板を載置し、前記処理室内を真空排気した状態で有機酸蒸気を前記処理室内に導入し、この有機酸蒸気を基板表面で結露させることにより基板表面に液体状の有機酸を形成することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記第2工程は、処理室内に設けられた載置台に前記第1工程を施された基板を載置し、前記処理室内を真空排気し、非酸化性雰囲気にした状態で基板を加熱することにより行われることを特徴とする請求項5に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記第1工程と前記第2工程とは、真空を破ることなく行われることを特徴とする請求項6に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記第1工程を行う第1の処理ユニットと、前記第2工程を行う第2の処理ユニットと、前記第1の処理ユニットおよび前記第2の処理ユニットが連結され、基板を搬送する搬送装置を備え、真空に保持された搬送室とを有する処理装置を用い、
前記第1の処理ユニットで基板に前記第1工程を施した後、その基板を前記搬送装置により前記第2の処理ユニットへ搬送し、前記第2の処理ユニットで基板に前記第2工程を施すことを特徴とする請求項7に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記第1工程と前記第2工程とを、同一の処理ユニットで行うことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記有機酸はカルボン酸であることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記有機酸は蟻酸であることを特徴とする請求項10に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記第1工程は、処理室内に設けられた載置台に基板を載置し、前記処理室内を真空排気した状態で液体状の蟻酸を25〜100℃に加熱することにより蟻酸蒸気を形成し、その蟻酸蒸気を前記処理室内に導入し、基板を8℃以上でかつ加熱温度より5℃以上低い温度に維持して蟻酸蒸気を基板表面で結露させることにより基板表面に液体状の蟻酸を形成することを特徴とする請求項11に記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記第2工程は、前記第1工程が施された基板を150〜300℃に加熱して蟻酸および蟻酸に溶解したエッチング残渣またはアッシング残渣の溶解物を気化させることを特徴とする請求項11または請求項12に記載の基板処理方法。
【請求項14】
Cu配線層と、その上に形成されたキャップ膜とLow−k膜とを有する基板に対して、前記キャップ膜とLow−k膜の前記Cu配線層に対応する部分をプラズマエッチングする工程と、
前記エッチングのエッチング残渣およびレジストをアッシングにより除去する工程と、
アッシング後、アッシング残渣が付着するLow−k膜表面に液体状の有機酸を形成し、液体状の有機酸により前記アッシング残渣を分解するとともに液体状の有機酸にその分解物を溶解させる工程と、
その後、基板をアニールして、有機酸および有機酸に溶解した前記アッシング残渣の溶解物を気化させて基板から除去する工程と、
前記ドライエッチングにより形成された露出した前記Cu配線に達するホールまたはトレンチにバリア層を形成する工程と、
前記バリア層の上にCuシード層を形成する工程と
を有し、これら全ての工程を真空を破ることなく実施することを特徴とする基板処理方法。
【請求項15】
ドライエッチングを施した後に所定の膜の表面に残存するエッチング残渣、またはエッチング残渣およびレジストをアッシングした後にその膜の表面に残存するアッシング残渣を有する基板が搬入され、真空に保持可能な処理室と、前記処理室内に設けられた、基板を載置する載置台と、前記処理室内に有機酸蒸気を供給する有機酸蒸気供給機構と、前記載置台上の基板の温度を前記有機酸蒸気の温度よりも低い温度に温調する温調機構とを有する第1処理ユニットと、
前記第1処理ユニットでの処理後の基板が搬入され、真空に保持可能な処理室と、前記処理室内に設けられた、基板を載置する載置台と、前記載置台上の基板を加熱する加熱機構とを有する第2処理ユニットと
を具備し、
前記第1処理ユニットの処理室に前記エッチング残渣またはアッシング残渣を有する基板が搬入され、前記有機酸供給機構から有機酸蒸気が前記処理室に供給され、前記温調機構により基板が前記有機酸蒸気の温度よりも低い温度に温調されて前記有機酸が基板表面で結露されることにより基板表面に液体状の有機酸が形成され、その液体状の有機酸によりエッチング残渣またはアッシング残渣が分解されるとともに液体状の有機酸にその分解物が溶解され、
前記第2処理ユニットの処理室に前記液体状の有機酸が形成された基板が搬入され、前記加熱機構により加熱され、有機酸および有機酸に溶解したエッチング残渣またはアッシング残渣の溶解物が気化されて基板から除去されることを特徴とする基板処理装置。
【請求項16】
前記第1の処理ユニットおよび前記第2の処理ユニットが連結され、基板を搬送する搬送装置を備え、真空に保持された搬送室をさらに具備し、前記第1の処理ユニットによる処理および前記第2の処理ユニットによる処理が真空を破ることなく行われることを特徴とする請求項15に記載の基板処理装置。
【請求項17】
ドライエッチングを施した後に所定の膜の表面に残存するエッチング残渣、またはエッチング残渣およびレジストをアッシングした後にその膜の表面に残存するアッシング残渣を有する基板が搬入され、真空に保持可能な処理室と、
前記処理室内に設けられた、基板を載置する載置台と、
前記処理室内に有機酸蒸気を供給する有機酸蒸気供給機構と、
前記載置台上の基板の温度を前記有機酸蒸気の温度よりも低い温度に温調する温調機構と、
前記載置台上の基板を加熱する加熱機構と
を具備し、
前記処理室に前記エッチング残渣またはアッシング残渣を有する基板が搬入され、前記有機酸供給機構から有機酸蒸気が前記処理室に供給され、前記温調機構により基板が前記有機酸蒸気の温度よりも低い温度に温調されて前記有機酸が基板表面で結露されることにより基板表面に液体状の有機酸が形成され、その液体状の有機酸により前記エッチング残渣またはアッシング残渣が分解されるとともに液体状の有機酸にその分解物が溶解され、
その基板が前記加熱機構により加熱され、有機酸および有機酸に溶解した前記エッチング残渣またはアッシング残渣の溶解物が気化されて基板から除去されることを特徴とする基板処理装置。
【請求項18】
ドライエッチングを施した後に所定の膜の表面に残存するエッチング残渣、またはエッチング残渣およびレジストをアッシングした後にその膜の表面に残存するアッシング残渣を有する複数の基板が搬入され、真空に保持可能な処理容器と、
前記処理容器内で複数の基板を保持する基板保持部材と、
前記処理容器内に有機酸蒸気を供給する有機酸蒸気供給機構と、
前記保持部材に保持された複数の基板の温度を前記有機酸蒸気の温度よりも低い温度に温調する温調機構と、
前記保持部材に保持された複数の基板を加熱する加熱機構と
を具備し、
前記処理容器に前記エッチング残渣またはアッシング残渣を有する基板が搬入され、前記有機酸供給機構から有機酸蒸気が前記処理容器に供給され、前記温調機構により基板が前記有機酸蒸気の温度よりも低い温度に温調されて前記有機酸を基板表面で結露させることにより基板表面に液体状の有機酸が形成され、その液体状の有機酸により前記エッチング残渣またはアッシング残渣が分解されるとともに液体状の有機酸にその分解物が溶解され、
それら基板が前記加熱機構により加熱され、有機酸および有機酸に溶解した前記エッチング残渣またはアッシング残渣の溶解物が気化されて基板から除去されることを特徴とする基板処理装置。
【請求項19】
前記エッチング残渣またはアッシング残渣は、レジスト残渣およびCFポリマーの少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項15から請求項18のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項20】
前記基板は、Cu配線層と、その上に形成されたLow−k膜とを有し、前記Low−k膜が前記Cu配線層までプラズマエッチングされたもの、またはその後さらにアッシングされたものであり、前記エッチング残渣またはアッシング残渣は前記Low−k膜に付着していることを特徴とする請求項15から請求項18のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項21】
前記エッチング残渣またはアッシング残渣は、レジスト残渣、CFポリマー、および酸化銅の少なくとも1つが含まれるものであることを特徴とする請求項20に記載の基板処理装置。
【請求項22】
Cu配線層と、その上に形成されたLow−k膜とを有する基板に対して、前記Low−k膜の前記Cu配線層に対応する部分をプラズマエッチングするエッチングユニットと、
前記エッチングのエッチング残渣およびレジストをアッシングにより除去するアッシングユニットと、
アッシング後、アッシング残渣が付着するLow−k膜表面に液体状の有機酸を形成し、液体状の有機酸により前記アッシング残渣を分解するとともに液体状の有機酸にその分解物を溶解させる溶解ユニットと、
前記溶解ユニットでの溶解処理の後、基板をアニールして、有機酸および有機酸に溶解した前記アッシング残渣の溶解物を気化させて基板から除去する気化ユニットと、
前記ドライエッチングにより形成された露出した前記Cu配線に達するホールにバリア層を形成するバリア層形成ユニットと、
前記バリア層の上にCuシード層を形成するシード層形成ユニットと、
前記エッチングユニット、前記アッシングユニット、前記溶解ユニット、前記気化ユニット、前記バリア層形成ユニット、および前記シード層形成ユニットが連結され、基板を搬送する搬送装置を備え、真空に保持される搬送室と
を具備し、
前記エッチングユニット、前記アッシングユニット、前記溶解ユニット、前記気化ユニット、前記バリア層形成ユニット、および前記シード層形成ユニットによる処理は真空中で行われ、各ユニット間の搬送を前記搬送室を介して行うことにより全てのユニットの処理を真空を破ることなく行うことを特徴とする基板処理装置。
【請求項23】
コンピュータ上で動作し、処理装置を制御するプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、請求項1から請求項14のいずれかの基板処理方法が行われるようにコンピュータに処理装置を制御させることを特徴とする記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−27786(P2010−27786A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186150(P2008−186150)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】