説明

基板処理装置および半導体装置の製造方法

【課題】液体原料の温度を精度よく制御できる基板処理装置および半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】基板200が収容される処理室201と、気化空間271を有し、気化空間内に封じ込められた液体原料270を気化して気化ガスを生成する液体原料容器260と、気化ガスを処理室内へ供給する気化ガス供給ライン240aと、液体原料容器内の液体原料を加熱するための加熱装置263と、気化空間内の圧力を測定する圧力計261と、気化空間内の圧力計による測定圧力に基づいて加熱装置を制御する制御部266と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高密度化が進むDRAM等の半導体デバイスでは、ゲート絶縁膜やキャパシタ絶縁膜として、例えばハフニウム(Hf)元素やジルコニウム(Zr)元素を含む高誘電率膜(High−k膜)が用いられるようになってきた。例えば、1.6nmのHfO膜は、4.5nmのSiO膜と同程度の高い誘電率を得ることができるためである。Hf元素やZr元素を含む高誘電率膜を形成するには、例えば、Hf元素やZr元素を含むガスと、酸素(O)元素を含むガスとをシリコンウエハ等の基板上に交互に供給するALD(Atomic Layer Deposition)法等が広く用いられるようになってきた。
【0003】
Hf元素やZr元素を含むガスは、例えばTEMAH(Hf[N(CH)CHCH:テトラキスメチルエチルアミノハフニウム)やTEMAZ(Zr[N(CH)CHCH:テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム)等の有機系化合物(液体原料)が入った液体原料容器を加熱して液体原料を気化させることにより生成している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−028094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液体原料を加熱して気化させることで生成した原料ガスを基板を搭載した処理室内に供給して基板の処理を行う場合、液体原料を気化して生成した原料ガスの処理室内への供給量を管理することは重要である。液体原料を気化して生成した原料ガスの処理室内への供給は、液体原料容器内の圧力と、処理室内の圧力の差圧によって行われる。処理室内の圧力は、自動圧力バルブ(APCバルブ)等により一定に保つことができるが、液体原料容器内の圧力は加熱により気化した原料ガスの蒸気圧により決定される。液体原料の蒸気圧は、温度によって決まるため、液体原料タンクの温度管理が重要となる。温度管理は一般的に熱電対を用いて行われる。しかし、液体原料そのものの温度を測定しようとすると熱電対を液体原料容器内に挿入する熱電対挿入口から液体原料が漏れないようなシールが必要であったり、液体原料が腐食性ガスの場合には熱電対が故障したりするといった様々な理由から、液体原料容器内に熱電対を取り付けることが困難である。従って、熱電対を液体原料容器を加熱するヒータもしくは液体原料容器の表面に取り付けて、温度制御を行っている。そのために、液体原料の実際の気化温度を知ることによって液体原料容器内の実際の圧力知ることができず、ヒータを制御している熱電対の温度で蒸気圧を推測して液体原料タンク内の圧力を推測するしかない。
【0006】
本発明の目的は、液体原料の温度を精度よく制御できる基板処理装置および半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、
基板が収容される処理室と、
気化空間を有し、前記気化空間内に封じ込められた液体原料を気化して気化ガスを生成する液体原料容器と、
前記気化ガスを前記処理室内へ供給する気化ガス供給ラインと、
前記液体原料容器内の前記液体原料を加熱するための加熱装置と、
前記気化空間内の圧力を測定する圧力計と、
前記気化空間内の前記圧力計による測定圧力に基づいて前記加熱装置を制御する制御部と、を備える基板処理装置が提供される。
【0008】
本発明の他の態様によれば、
気化空間を有し、前記気化空間内に封じ込められた液体原料を気化して気化ガスを生成する液体原料容器の前記気化空間内の圧力を測定し、前記測定した圧力に基づいて、前記液体原料容器内の前記液体原料を加熱するための加熱装置を制御して前記液体原料を加熱することによって気化した気化ガスを基板に供給して前記基板を処理する工程を備える半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、液体原料の温度を精度よく制御できる基板処理装置および半導体装置の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の好ましい一実施の形態に係る基板処理装置の概略構成図である。
【図2】図2は、本発明の好ましい一実施の形態に係る基板処理装置が備える処理炉の概略構成図であり、図2(a)は処理炉の縦断面概略図を、図2(b)は処理炉の横断面概略図をそれぞれ示している。
【図3】本発明の好ましい一実施の形態に係る基板処理装置における液体原料の温度制御方法を説明するためのフローチャートである。
【図4】本発明の好ましい一実施の形態に係る基板処理工程を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
(1)基板処理装置の構成
まず、本発明の一実施形態にかかる基板処理装置101の構成例について、図1を参照して説明する。
【0013】
図1に示すように、本実施形態にかかる基板処理装置101は筐体111を備えている。シリコン等からなるウエハ(基板)200を筐体111内外へ搬送するには、複数のウエハ200を収納するウエハキャリア(基板収納容器)としてのカセット110が使用される。筐体111内側の前方(図中の右側)には、カセットステージ(基板収納容器受渡し台)114が設けられている。カセット110は、図示しない工程内搬送装置によってカセットステージ114上に載置され、また、カセットステージ114上から筐体111外へ搬出されるように構成されている。
【0014】
カセット110は、工程内搬送装置によって、カセット110内のウエハ200が垂直姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口が上方向を向くように、カセットステージ114上に載置される。カセットステージ114は、カセット110を筐体111の後方に向けて縦方向に90°回転させ、カセット110内のウエハ200を水平姿勢とさせ、カセット110のウエハ出し入れ口を筐体111内の後方を向かせることが可能なように構成されている。
【0015】
筐体111内の前後方向の略中央部には、カセット棚(基板収納容器載置棚)105が設置されている。カセット棚105には、複数段、複数列にて複数個のカセット110が保管されるように構成されている。カセット棚105には、後述するウエハ移載機構125の搬送対象となるカセット110が収納される移載棚123が設けられている。また、カセットステージ114の上方には、予備カセット棚107が設けられ、予備的にカセット110を保管するように構成されている。
【0016】
カセットステージ114とカセット棚105との間には、カセット搬送装置(基板収納容器搬送装置)118が設けられている。カセット搬送装置118は、カセット110を保持したまま昇降可能なカセットエレベータ(基板収納容器昇降機構)118aと、カセット110を保持したまま水平移動可能な搬送機構としてのカセット搬送機構(基板収納容器搬送機構)118bと、を備えている。これらカセットエレベータ118aとカセット搬送機構118bとの連携動作により、カセットステージ114、カセット棚105、予備カセット棚107、移載棚123の間で、カセット110を搬送するように構成されている。
【0017】
カセット棚105の後方には、ウエハ移載機構(基板移載機構)125が設けられている。ウエハ移載機構125は、ウエハ200を水平方向に回転ないし直動可能なウエハ移載装置(基板移載装置)125aと、ウエハ移載装置125aを昇降させるウエハ移載装置エレベータ(基板移載装置昇降機構)125bと、を備えている。なお、ウエハ移載装置125aは、ウエハ200を水平姿勢で保持するツイーザ(基板移載用治具)125cを備えている。これらウエハ移載装置125aとウエハ移載装置エレベータ125bとの連携動作により、ウエハ200を移載棚123上のカセット110内からピックアップして後述するボート(基板支持部材)217へ装填(チャージング)したり、ウエハ200をボート217から脱装(ディスチャージング)して移載棚123上のカセット110内へ収納したりするように構成されている。
【0018】
筐体111の後部上方には、処理炉202が設けられている。処理炉202の下端部には開口が設けられ、かかる開口は炉口シャッタ(炉口開閉機構)147により開閉されるように構成されている。なお、処理炉202の構成については後述する。
【0019】
処理炉202の下方には、ボート217を昇降させて処理炉202内外へ搬送する昇降機構としてのボートエレベータ(基板支持部材昇降機構)115が設けられている。ボートエレベータ115の昇降台には、連結具としてのアーム128が設けられている。アーム128上には、ボート217を垂直に支持するとともに、ボートエレベータ115によりボート217が上昇したときに処理炉202の下端部を気密に閉塞する蓋体としてのシールキャップ219が水平姿勢で設けられている。
【0020】
ボート217は複数本の保持部材を備えており、複数枚(例えば、50枚〜150枚程度)のウエハ200を、水平姿勢で、かつその中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に保持するように構成されている。ボート217の詳細な構成については後述する。
【0021】
カセット棚105の上方には、供給ファンと防塵フィルタとを備えたクリーンユニット134aが設けられている。クリーンユニット134aは、清浄化した雰囲気であるクリーンエアを筐体111の内部に流通させるように構成されている。
【0022】
また、ウエハ移載装置エレベータ125bおよびボートエレベータ115側と反対側である筐体111の左側端部には、クリーンエアを供給するよう供給フアンと防塵フィルタとを備えたクリーンユニット(図示せず)が設置されている。図示しない前記クリーンユニットから吹き出されたクリーンエアは、ウエハ移載装置125a及びボート217の周囲を流通した後に、図示しない排気装置に吸い込まれて、筐体111の外部に排気されるように構成されている。
【0023】
(2)基板処理装置の動作
次に、本実施形態にかかる基板処理装置101の動作について説明する。
【0024】
まず、カセット110が、図示しない工程内搬送装置によって、ウエハ200が垂直姿勢となりカセット110のウエハ出し入れ口が上方向を向くように、カセットステージ114上に載置される。その後、カセット110は、カセットステージ114によって、筐体111の後方に向けて縦方向に90°回転させられる。その結果、カセット110内のウエハ200は水平姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口は筐体111内の後方を向く。
【0025】
カセット110は、カセット搬送装置118によって、カセット棚105ないし予備カセット棚107の指定された棚位置へ自動的に搬送されて受け渡されて一時的に保管された後、カセット棚105又は予備カセット棚107から移載棚123に移載されるか、もしくは直接移載棚123に搬送される。
【0026】
カセット110が移載棚123に移載されると、ウエハ200は、ウエハ移載装置125aのツイーザ125cによって、ウエハ出し入れ口を通じてカセット110からピックアップされ、ウエハ移載装置125aとウエハ移載装置エレベータ125bとの連続動作によって移載室124の後方にあるボート217に装填(チャージング)される。ボート217にウエハ200を受け渡したウエハ移載機構125は、カセット110に戻り、次のウエハ200をボート217に装填する。
【0027】
予め指定された枚数のウエハ200がボート217に装填されると、炉口シャッタ147によって閉じられていた処理炉202の下端部が、炉口シャッタ147によって開放される。続いて、シールキャップ219がボートエレベータ115によって上昇されることにより、ウエハ200群を保持したボート217が処理炉202内へ搬入(ローディング)される。ローディング後は、処理炉202にてウエハ200に任意の処理が実施される。かかる処理については後述する。処理後は、ウエハ200およびカセット110は、上述の手順とは逆の手順で筐体111の外部へ払出される。
【0028】
(3)処理炉の構成
続いて、本発明の一実施の形態に係る処理炉202の構成について、図面を参照しながら説明する。図2は、本発明の一実施形態にかかる基板処理装置が備える処理炉202の概略構成図であり、図2(a)は処理炉の縦断面概略図を、図2(b)は図2(a)に示す処理炉202の横断面概略図をそれぞれ示している。
【0029】
(処理室)
本発明の一実施の形態に係る処理炉202は、反応管203とマニホールド209とを有している。反応管203は、例えば石英(SiO2)や炭化珪素(SiC)等の耐熱性を有する非金属材料から構成され、上端部が閉塞され、下端部が開放された円筒形状となっている。マニホールド209は、例えばSUS等の金属材料から構成され、上端部及び下端部が開放された円筒形状となっている。反応管203は、マニホールド209により下端部側から縦向きに支持されている。反応管203とマニホールド209とは、同心円状に配置されている。マニホールド209の下端部は、上述したボートエレベータ115が上昇した際に、シールキャップ219により気密に封止されるように構成されている。マニホールド209の下端部とシールキャップ219との間には、処理室201内を気密に封止するOリングなどの封止部材220bが設けられている。
【0030】
反応管203及びマニホールド209の内部には、基板としてのウエハ200が収容される処理室201が形成されている。処理室201内には、基板保持具としてのボート217が下方から挿入されるように構成されている。反応管203及びマニホールド209の内径は、ウエハ200を装填したボート217の最大外形よりも大きくなるように構成されている。
【0031】
ボート217は、複数枚(例えば75枚から100枚)のウエハ200を、略水平状態で所定の隙間(基板ピッチ間隔)をもって多段に保持するように構成されている。ボート217は、ボート217からの熱伝導を遮断する断熱キャップ218上に搭載されている。断熱キャップ218は、回転軸255により下方から支持されている。回転軸255は、処理室201内の気密を保持しつつ、シールキャップ219の中心部を貫通するように設けられている。シールキャップ219の下方には、回転軸255を回転させる回転機構267が設けられている。回転機構267により回転軸255を回転させることにより、処理室201内の気密を保持したまま、複数のウエハ200を搭載したボート217を回転させることが出来るように構成されている。
【0032】
反応管203の外周には、反応管203と同心円状に加熱手段(加熱機構)としてのヒータ207が設けられている。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。
【0033】
(気化ガス供給系)
マニホールド209には、気化ガス導入部としての気化ガスノズル233aが設けられている。気化ガスノズル233aは、垂直部と水平部とを有するL字形状に構成されている。気化ガスノズル233aの垂直部は、反応管203の内壁を沿うように鉛直方向に配設されている。気化ガスノズル233aの垂直部側面には、気化ガス供給孔248aが鉛直方向に複数設けられている。気化ガス供給孔248aの開口径は、それぞれ下部から上部にわたって同一とされていてもよく、下部から上部にわたって徐々に大きくされていてもよい。気化ガスノズル233aの水平部は、マニホールド209の側壁を貫通するように設けられている。
【0034】
マニホールド209の側壁から突出した気化ガスノズル233aの水平端部(上流側)には、気化ガスを処理室201内へ供給する気化ガス供給系としての気化ガス供給管240aが接続されている。気化ガス供給系としての気化ガス供給管240aの上流側には、液体原料容器260が接続されている。液体原料容器260の下流側の気化ガス供給管240aには開閉バルブ241cが設けられている。開閉バルブ241cを開けることにより、液体原料容器260にて気化された気化ガスが処理室201内へ供給されるように構成されている。
【0035】
液体原料容器260の内部には、気化空間271が形成されている。気化空間271内には液体原料270が封じ込められている。液体原料容器260には気化空間271に連通する圧力センサ261が取り付けられている。圧力センサ261としては、例えば、隔膜式真空計が用いられる。液体原料容器260の外側の近傍には、液体原料容器260を加熱して液体原料270を加熱するヒータ263が設けられている。温度センサとしての熱電対262が、液体原料容器260の表面またはヒータ263に取り付けられている。ヒータ263がSSR(ソリッドステートリレー)264を介して電源265に接続されている。温度調節器266が設けられ、温度調節器266には圧力センサ261からの信号および熱電対262からの信号が入力され、圧力センサ261からの信号や熱電対262からの信号に基づいて、温度調節器266が電源265からの電力をSSR(ソリッドステートリレー)264で制御してヒータ263に供給することにより、液体原料容器260の温度を制御する。
【0036】
液体原料270の蒸気圧と液体原料270の温度とは一定の関係がある。すなわち、液体原料270は圧力と温度の関係である蒸気圧曲線を持つ。従って、温度が決まれば蒸気圧が決まり、逆に蒸気圧が決まれば温度が決まる。圧力センサ261で測定している、液体原料容器260の内部の気化空間271の圧力は液体原料270の蒸気圧であるので、液体原料270の蒸気圧曲線を予め温度調節器266に記憶させておけば、蒸気圧曲線を介して蒸気圧を温度に変換することができ、その結果、液体原料270の温度を精度よく測定し、制御することができる。
【0037】
液体原料270を気化して生成した原料ガスの処理室201内への供給は、液体原料容器260内の圧力と、処理室201内の圧力の差圧よって行われる。処理室201内の圧力は、後述する圧力センサ245、APCバルブ231a、真空ポンプ231b等により一定に保つことができ、液体原料容器260内の圧力は、圧力センサ261で測定した圧力に基づいて液体原料容器260内の温度を制御することによって制御できるので、液体原料容器260内の圧力と、処理室201内の圧力の差圧も精度よく制御することができ、その結果、液体原料270を気化して生成した原料ガスの処理室201内への供給量を精度よく制御できる。
【0038】
本実施の形態では、液体原料容器260を加熱するヒータ263を圧力センサ261からの圧力信号に基づいて制御することにより液体原料容器260の温度を制御しているので、液体原料容器260から安定した精度の高い蒸気圧の気化ガスを得ることができる。液体原料容器260を加熱するヒータ263は温度調節器266にて制御を行う。圧力センサ261からはアナログ信号にて温度調節器266に液体原料容器260の内部の圧力のモニタ値を与える。液体原料は圧力と温度の関係である蒸気圧曲線を持つので、圧力センサ261からのアナログ信号は圧力を示しているが、蒸気圧曲線を介して温度に変換することができる。そのため、圧力センサ261からの信号にて温度調節器266がヒータ263を制御することが可能である。
【0039】
なお、本実施の形態では、アナログ信号を用いているが、上位にコントローラ(後述するコントローラ280参照)を用いてDeviceNetやLANといった通信にて信号をやり取りし、ヒータ263を制御しても良い。また、液体原料容器260の表面またはヒータ263取り付けられた熱電対262を用いて、後述するように、熱電対262と圧力センサ261の値で液体原料容器260の加熱をカスケード制御することでより精度の良いヒータ制御が可能となる。
【0040】
主に、気化ガスノズル233a、気化ガス供給管240a、開閉バルブ241a、液体原料容器260、圧力センサ261、熱電対262、ヒータ263、SSR264、電源265、温度調節器266により、本実施形態に係る気化ガス供給系が構成されている。
【0041】
(反応ガス供給系)
マニホールド209には、反応ガス導入部としての反応ガスノズル233bが設けられている。反応ガスノズル233bは、垂直部と水平部とを有するL字形状に構成されている。反応ガスノズル233bの垂直部は、反応管203の内壁を沿うように鉛直方向に配設されている。反応ガスノズル233bの垂直部側面には、反応ガス供給孔248bが鉛直方向に複数設けられている。反応ガス供給孔248bの開口径は、それぞれ下部から上部にわたって同一とされていてもよく、下部から上部にわたって徐々に大きくされていてもよい。反応ガスノズル233bの水平部は、マニホールド209の側壁を貫通するように設けられている。
【0042】
マニホールド209の側壁から突出した反応ガスノズル233bの水平端部(上流側)には、反応ガスを処理室201内へ供給する反応ガス供給系としての反応ガス供給管240bが接続されている。反応ガス供給系としての反応ガス供給管240bの上流側には、反応ガスとしてのオゾン(O3)ガス(酸化ガス)を生成するオゾナイザ270が接続されている。反応ガス供給管240bには、上流から順に、流量コントローラ(マスフローコントローラ(MFC))242b、開閉バルブ241bが設けられている。オゾナイザ270には、酸素ガス供給管240eが接続されている。酸素ガス供給管240eの上流側は、酸素(O2)ガスを供給する図示しない酸素ガス供給源に接続されている。酸素ガス供給管240eには開閉バルブ241eが設けられている。開閉バルブ241eを開けることによりオゾナイザ270に酸素ガスが供給され、開閉バルブ241bを開けることによりオゾナイザ270にて生成されオゾンガスが反応ガス供給管240bを介して処理室201内へ供給されるように構成されている。なお、処理室201内へのオゾンガスの供給流量は、流量コントローラ242bによって制御することが可能なように構成されている。
【0043】
主に、反応ガスノズル233b、反応ガス供給管240b、オゾナイザ270、流量コントローラ(MFC)242b、開閉バルブ241、酸素ガス供給管240e、図示しない酸素ガス供給源、開閉バルブ241eにより、本実施形態に係る反応ガス供給系が構成されている。
【0044】
(ベント管)
気化ガス供給管240aにおける開閉バルブ241cと開閉バルブ241aとの間には、ガスベント管240iの上流側が接続されている。気化ガスベント管240iの下流側は、後述する排気管231の下流側(後述するAPCバルブ231aと真空ポンプ231bとの間)に接続されている。気化ガスベント管240iには開閉バルブ241iが設けられている。開閉バルブ241aを閉め、開閉バルブ241iを開けることにより、液体原料容器260における気化ガスの生成を継続したまま、処理室201内への気化ガスの供給を停止することが可能なように構成されている。気化ガスを安定して生成するには所定の時間を要するが、開閉バルブ241a、開閉バルブ241iの切り替え動作によって、処理室201内への気化ガスの供給・停止をごく短時間で切り替えることが可能なように構成されている。
【0045】
同様に、反応ガス供給管240bにおけるオゾナイザ270と流量コントローラ242bとの間には、反応ガスベント管240jの上流側が接続されている。反応ガスベント管240jの下流側は、排気管231の下流側(APCバルブ231aと真空ポンプ231bとの間)に接続されている。反応ガスベント管240jには開閉バルブ241jが設けられている。開閉バルブ241bを閉め、開閉バルブ241jを開けることにより、オゾナイザ270によるオゾンガスの生成を継続したまま、処理室201内へのオゾンガスの供給を停止することが可能なように構成されている。オゾンガスを安定して生成するには所定の時間を要するが、開閉バルブ241b、開閉バルブ241jの切り替え動作によって、処理室201内へのオゾンガスの供給・停止をごく短時間で切り替えることが可能なように構成されている。
【0046】
(パージガス供給管)
気化ガス供給管240aにおける開閉バルブ241aの下流側には、第1パージガス管240gの下流側が接続されている。第1パージガス管240gには、上流側から順に、N2ガス等の不活性ガスを供給する図示しないパージガス供給源、流量コントローラ(MFC)242g、開閉バルブ241gが設けられている。開閉バルブ241aを閉め、開閉バルブ241i及び開閉バルブ241gを開けることにより、気化ガスの生成を継続したまま処理室201内への気化ガスの供給を停止すると共に、処理室201内へのパージガスの供給を開始することが可能なように構成されている。処理室201内へパージガスを供給することにより、処理室201内からの気化ガスの排出を促すことが可能となる。
【0047】
同様に、反応ガス供給管240bにおける開閉バルブ241bの下流側には、第2パージガス管240hの下流側が接続されている。第2パージガス管240hには、上流側から順に、N2ガス等の不活性ガスを供給する図示しないパージガス供給源、流量コントローラ(MFC)242h、開閉バルブ241hが設けられている。開閉バルブ241bを閉め、開閉バルブ241j及び開閉バルブ241hを開けることにより、処理室201内へのオゾンガスの供給を停止すると共に、オゾンガスの生成を継続したまま処理室201内へのパージガスの供給を開始することが可能なように構成されている。処理室201内へパージガスを供給することにより、処理室201内からのオゾンガスの排出を促すことが可能となる。
【0048】
(排気系)
マニホールド209の側壁には、処理室201内の雰囲気を排気する排気系としての排気管231が接続されている。排気管231には、上流側から順に、圧力検出器としての圧力センサ245、圧力調整器としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ231a、真空排気装置としての真空ポンプ231bが設けられている。真空ポンプ231bを作動させつつ、APCバルブ242の開閉弁の開度を調整することにより、処理室201内を所望の圧力とすることが可能なように構成されている。
【0049】
主に、排気管231、圧力センサ245、APCバルブ231a、真空ポンプ231bにより、本実施形態に係る排気系が構成されている。
【0050】
(シールキャップ)
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、マニホールド209の下端に垂直方向下側から当接されるようになっている。シールキャップ219は、例えばステンレス等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219の処理室201と反対側には、ボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217を下方から支持しており、回転機構267を作動させることでウエハ200を回転させることが可能なように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に垂直に配置された昇降機構としてのボートエレベータ215によって、垂直方向に昇降されるように構成されており、これによりボート217を処理室201内外に搬送することが可能となっている。
【0051】
(コントローラ)
制御部(制御手段)であるコントローラ280は、ヒータ207、APCバルブ231a、真空ポンプ231b、回転機構267、ボートエレベータ215、開閉バルブ241a,241b,242c,241e,241g,241h,241i,241j、流量コントローラ242b、242g、242h等に接続されている。コントローラ280により、ヒータ207の温度調整動作、APCバルブ231aの開閉及び圧力調整動作、真空ポンプ231bの起動・停止、回転機構267の回転速度調節、ボートエレベータ215の昇降動作、開閉バルブ241a,241b,242c,241e,241g,241h,241i,241jの開閉動作、流量コントローラ242b,242g,242hの流量調整等の制御が行われる。また、コントローラ280は、温度調節器266に接続され、温度調節器266を介して、液体原料容器260の温度を制御する。
【0052】
(4)基板処理工程
次に、本発明の一実施の形態としての基板処理工程について説明するが、まず、図3を参照して、液体原料容器260内の液体原料270の温度制御方法を説明する。
【0053】
まず、ヒータ263を加熱し、熱電対262のモニタ値を得る(ステップS110)。熱電対262のモニタ値が設定温度となると(ステップS120)、圧力センサ261のモニタ値を得る(ステップS130)。圧力センサ261のモニタ値と設定圧力とを比較し(ステップS140)、圧力センサ261のモニタ値が設定圧力であれば、SSR264からの出力を一定としてヒータ263を安定させ(ステップS152)、圧力センサ261のモニタ値が設定圧力より大きければ、SSR264からの出力を減少させてヒータ263を冷却させ(ステップS151)、圧力センサ261のモニタ値が設定圧力より小さければ、SSR264からの出力を増加させてヒータ263を加熱する(ステップS153)。このようにして、液体原料容器260内の液体原料270の温度を設定温度に保ち、液体原料容器260内の液体原料270の蒸気圧を一定の圧力に保っておく。このように、まず熱電対262によって液体原料容器260の加熱を制御し、その後、圧力センサ261の値によって液体原料容器260の加熱を制御するようにカスケード制御することでより精度の良いヒータ制御が可能となる。
【0054】
次に、本発明の一実施の形態としての基板処理工程について、図4を参照しながら説明する。なお、本実施の形態は、ALD(Atomic Layer Deposition)法を用いてウエハ200の表面に高誘電率膜を成膜する方法であり、半導体デバイスの製造工程の一工程として実施される。なお、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ280により制御される。
【0055】
(基板搬入工程(ステップS210))
まず、複数枚のウエハ200をボート217に装填(ウエハチャージ)する。そして、複数枚のウエハ200を保持したボート217を、ボートエレベータ215によって持ち上げて処理室201内に搬入(ボートローディング)する。この状態で、シールキャップ219はOリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。基板搬入工程(ステップS210)においては、開閉バルブ241g、開閉バルブ241hを開けて、処理室201内にパージガスを供給し続けることが好ましい。
【0056】
(減圧及び昇温工程(ステップS220))
続いて、開閉バルブ241g、開閉バルブ241hを閉め、処理室201内が所望の圧力(真空度)となるように、処理室201内を真空ポンプ231bにより排気する(ステップS220)。この際、処理室201内の圧力を圧力センサ245で測定して、この測定された圧力に基づき、APCバルブ231aの開度をフィードバック制御する。また、処理室201内が所望の温度となるように、ヒータ207によって加熱する(S220)。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサが検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合をフィードバック制御する。そして、回転機構267によりボート217を回転させ、ウエハ200を回転させる。
【0057】
(成膜工程(ステップS230))
続いて、成膜工程(ステップS230)を実施する。成膜工程(ステップS230)では、ウエハ200上に気化ガスを供給する工程(ステップS231)と、処理室201内をパージする工程(ステップS232)と、ウエハ200上に反応ガスを供給する工程(ステップS233)と、処理室201内をパージする工程(ステップS234)と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数繰り返す。
【0058】
気化ガスを供給する工程(ステップS231)では、予め、上述のようにして、液体原料容器260内の液体原料270の温度を設定温度に保ち、液体原料容器260内の液体原料270の蒸気圧を一定の圧力に保っておく。そして、開閉バルブ241cを開け、開閉バルブ241aを閉め、開閉バルブ241iを開けて、気化ガスを気化ガスベント管240iから排出しておく。その後、気化ガスを供給する際には、開閉バルブ241iを閉め、開閉バルブ241aを開けて、気化ガスを処理室201内に供給する。その結果、積層されたウエハ200間に気化ガスが供給され、ウエハ200の表面に気化ガスのガス分子が吸着する。気化ガスの供給を所定時間継続したら、開閉バルブ241aを閉め、開閉バルブ241iを開けて、液体原料容器260内の液体原料270の蒸気圧を一定の圧力に保ったまま処理室201内への気化ガスの供給を停止する。
【0059】
処理室201内をパージする工程(ステップS232)では、開閉バルブ241gを開けて処理室201内へパージガスを供給し、処理室201内からの気化ガスの排出を促す。処理室201内の雰囲気がパージガスに置換されたら、開閉バルブ241gを閉めて処理室201内へのパージガスの供給を停止する。
【0060】
ウエハ200上に反応ガスを供給する工程(ステップS233)では、開閉バルブ241eを開けてオゾナイザ270に酸素ガスを供給し、反応ガスとしてのオゾンガスを生成する。反応ガスが安定して生成されるまでは、開閉バルブ241bを閉め、開閉バルブ241jを開けて、反応ガスを反応ガスベント管240jから排出しておく。反応ガスが安定して生成されるようになったら、開閉バルブ241jを閉め、開閉バルブ241bを開けて、反応ガスを処理室201内へ供給する。その結果、積層されたウエハ200間に反応ガスが供給され、ウエハ200の表面に吸着している気化ガスのガス分子と反応ガスとが化学反応し、ウエハ200の表面に1原子層から数原子層のHf元素やZr元素を含む高誘電率膜(High−k膜)が生成される。反応ガスの供給を所定時間継続したら、開閉バルブ241bを閉め、開閉バルブ241jを開けて、反応ガスの生成を継続したまま処理室201内への反応ガスの供給を停止する。
【0061】
処理室201内をパージする工程(ステップS234)では、開閉バルブ241hを開けて処理室201内へパージガスを供給し、処理室201内からの反応ガス及び反応生成物の排出を促す。処理室201内の雰囲気がパージガスに置換されたら、開閉バルブ241hを閉めて処理室201内へのパージガスの供給を停止する。
【0062】
以上、ウエハ200上に気化ガスを供給する工程(ステップS231)〜処理室201内をパージする工程(ステップS234)を1サイクルとして、このサイクルを所定回数繰り返す(ステップS235)ことにより、ウエハ200上に所望の厚さの高誘電率膜が形成されたら成膜工程(ステップS230)を終了する。
【0063】
(昇圧工程(ステップS240)、基板搬出工程(ステップS250))
続いて、APCバルブ231aの開度を小さくし、開閉バルブ241g、開閉バルブ241hを開けて、処理室201内の圧力が大気圧になるまで処理室201内にパージガスを供給する(ステップS240)。そして、基板搬入工程(ステップS210)と逆の手順により、成膜済のウエハ200を処理室201内から搬出する(ステップS250)。基板搬出工程(ステップS250)においては、開閉バルブ241g、開閉バルブ241hを開けて、処理室201内にパージガスを供給し続けることが好ましい。
【0064】
(本発明の好ましい態様)
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0065】
(付記1)
本発明の好ましい一態様によれば、
基板が収容される処理室と、
気化空間を有し、前記気化空間内に封じ込められた液体原料を気化して気化ガスを生成する液体原料容器と、
前記気化ガスを前記処理室内へ供給する気化ガス供給ラインと、
前記液体原料容器内の前記液体原料を加熱するための加熱装置と、
前記気化空間内の圧力を測定する圧力計と、
前記気化空間内の前記圧力計による測定圧力に基づいて前記加熱装置を制御する制御部と、を備える基板処理装置が提供される。
【0066】
(付記2)
付記1の基板処理装置であって、好ましくは、前記制御部は、予め記憶しておいた前記液体原料の蒸気圧曲線を介して前記測定圧力を温度に変換し、変換した温度によって前記液体原料の温度を制御する。
【0067】
(付記3)
付記1または2の基板処理装置であって、好ましくは、前記液体原料容器の温度を測定する熱電対をさらに備え、前記制御部は、まず、前記熱電対による測定値に基づいて前記加熱装置を制御し、その後、前記圧力計による測定圧力に基づいて前記加熱装置を制御する。
(付記4)
本発明の好ましい他の態様によれば、
気化空間を有し、前記気化空間内に封じ込められた液体原料を気化して気化ガスを生成する液体原料容器の前記気化空間内の圧力を測定し、前記測定した圧力に基づいて、前記液体原料容器内の前記液体原料を加熱するための加熱装置を制御して前記液体原料を加熱することによって気化した気化ガスを基板に供給して前記基板を処理する工程を備える半導体装置の製造方法。
を備える半導体装置の製造方法が提供される。
【0068】
(付記5)
付記7の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、予め記憶しておいた前記液体原料の蒸気圧曲線を介して前記測定圧力を温度に変換し、変換した温度によって前記液体原料の温度を制御する。
【0069】
(付記6)
付記4または5の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、熱電対による測定値に基づいて前記加熱装置を制御し、その後、前記圧力計による測定圧力に基づいて前記加熱装置を制御する。
【0070】
以上、本発明の種々の典型的な実施の形態を説明してきたが、本発明はそれらの実施の形態に限定されない。従って、本発明の範囲は、次の特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。
【符号の説明】
【0071】
200 ウエハ
201 処理室
240a 気化ガス供給管
260 液体原料容器
261 圧力センサ
263 ヒータ
266 温度調節器
270 液体原料
271 気化空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が収容される処理室と、
気化空間を有し、前記気化空間内に封じ込められた液体原料を気化して気化ガスを生成する液体原料容器と、
前記気化ガスを前記処理室内へ供給する気化ガス供給ラインと、
前記液体原料容器内の前記液体原料を加熱するための加熱装置と、
前記気化空間内の圧力を測定する圧力計と、
前記気化空間内の前記圧力計による測定圧力に基づいて前記加熱装置を制御する制御部と、を有する基板処理装置。
【請求項2】
気化空間を有し、前記気化空間内に封じ込められた液体原料を気化して気化ガスを生成する液体原料容器の前記気化空間内の圧力を測定し、前記測定した圧力に基づいて、前記液体原料容器内の前記液体原料を加熱するための加熱装置を制御して前記液体原料を加熱することによって気化した気化ガスを基板に供給して前記基板を処理する工程を備える半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−89911(P2013−89911A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232013(P2011−232013)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】