説明

基板処理装置および基板処理方法

【課題】 基板へのダメージを低減しつつ、基板表面の不要物を効率的に除去することのできる基板処理装置および方法を提供する。
【解決手段】 スピンチャック1に略水平に保持された基板Wを回転させた状態で、基板裏面Wbに対して摂氏70度以上に加熱された純水(温水)を供給する一方で、基板表面Wfに対して窒素が過飽和に溶解された純水を処理液として供給する。基板裏面Wbに供給された温水により基板Wが昇温され、基板表面Wfに接液する処理液から溶解させている窒素を泡として効率的に発生させることができる。これにより、基板表面Wfのパーティクルを効率良く除去するとともに排出される。しかも、基板表面Wfで直接に泡を発生させているので泡が成長することなく比較的小さな泡で基板Wを処理することができるので、基板Wへのダメージを低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、光ディスク用基板等の各種基板に対して処理液を供給して洗浄処理などの所定の処理を施す基板処理装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から基板表面に付着したパーティクル等の不要物を除去するために、処理液に超音波による物理的な振動を付与して基板洗浄を行うメガソニック洗浄や、二流体ノズルによって処理液と気体とを混合して生成した処理液の液滴を基板に供給して洗浄を行う技術がある。それらの技術のひとつとして、処理液を基板に供給するとともに当該処理液に泡を混入させて洗浄等の処理を行う装置がある。例えば特許文献1に記載された装置では、オゾンガスの気泡を含む処理液によって基板上に形成された薄膜のエッチング処理後に残留する不要なレジスト膜などを除去している。
【0003】
この装置は、基板を処理液に浸漬するバッチ式の基板処理装置であって、処理槽内に複数の基板を整列させて収容している。処理槽は内槽と外槽とを備えており、内槽には処理液(硫酸)が貯留され、溢れた処理液を外槽で回収している。そして、内槽の底部に気泡供給手段を配設することで、オゾンガスの気泡を処理液に混入させて処理液とともに該気泡を基板に作用させている。具体的には、気泡供給手段はオゾンガス発生装置に接続されており、該オゾンガス発生装置から供給されるオゾンガスを多数の細孔から噴出させることによって、処理液中にオゾンガスの気泡を多数混入させている。これにより、基板に被着された不要なレジスト膜などの除去能力を向上させている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−319880号公報(第6−9頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したような泡を用いた不要物の除去処理においては、処理液に含まれる泡がパーティクル等の不要物を捕捉して除去するものと考えられている。したがって、基板表面に付着するパーティクル等の不要物の除去効率を高めるためには、基板表面に泡を効率良く供給することが必要とされる。
【0006】
しかしながら、従来装置では、処理液中に多数の泡を発生させることができるものの、次のような理由により泡を効率良く基板表面に供給することができなかった。すなわち、処理槽(内槽)の底部から供給された、泡を含んだ処理液は上昇して配列した基板の間を通過してオーバーフローする。ここで、各基板の間を通過する処理液の流速は基板表面から離れるにしたがって速く、基板表面近傍ほど遅くなる。そのため、処理液中の泡の多数は基板表面から離れた箇所に集中して流れ、基板表面には泡がほとんど供給されない状態となっていた。その結果、基板表面の不要物を効率良く除去することができなかった。
【0007】
また、基板に与えるダメージを抑制する観点からは、基板に接触する泡の大きさは小さい方が望ましい。しかしながら、従来装置では、処理槽(内槽)の底部に配設した気泡発生手段から発生させた泡を、該気泡発生手段から離れた基板に送り込んでいる。このため、発生した泡は時間の経過につれて成長して泡径が大きくなり、基板を大きく振動させて基板にダメージを与えるおそれがあった。
【0008】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、基板へのダメージを低減しつつ、基板表面の不要物を効率的に除去することのできる基板処理装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
基板表面の不要物を除去するにあたり泡の作用としては、気体と液体(処理液)との界面にパーティクル等の不要物が集まり易い特性から次のように考えられる。すなわち、(1)基板上に付着するパーティクルを捕捉するとともに、泡に働く浮力でもって捕捉したパーティクルを基板から除去する作用と、(2)処理液の流れがある場合に、パーティクル自体が受ける力よりもパーティクルを捕捉した泡全体が受ける力の方が大きいことから、捕捉したパーティクルを効率良く基板外に排出する作用とが考えられる。
【0010】
これら泡の作用を利用して基板表面のパーティクル等の不要物を除去するためには、上記したように基板表面に効率良く泡を供給することが重要である。しかも、基板へのダメージを考慮すると、発生させた泡でもって速やかに基板を処理させることが必要とされる。したがって、基板へのダメージを抑制しつつ、基板表面のパーティクルの除去効率を高めるためには、パーティクルが存在する基板表面で直接に泡を発生させるのが最も合理的である。
【0011】
そこで、この発明にかかる基板処理装置および基板処理方法は、上記知見に基づき次のように構成している。この発明にかかる基板処理装置は、基板に処理液を供給して基板に対して所定の処理を施す基板処理装置であって、上記目的を達成するため、基板を保持する基板保持手段と、基板保持手段に保持された基板に処理液を供給する処理液ノズルと、基板を加熱することで該基板に接液する処理液から泡を発生させる加熱手段とを備えたことを特徴としている。
【0012】
また、この発明にかかる基板処理方法は、基板に処理液を供給して基板に対して所定の処理を施す基板処理方法であって、上記目的を達成するため、基板に処理液を供給する液供給工程と、液供給工程の間、基板を加熱することで該基板に接液する処理液から泡を発生させる加熱工程とを備えたことを特徴としている。
【0013】
このように構成された発明(基板処理装置および方法)では、基板を加熱することで基板を昇温させることにより、該基板に接液する処理液から泡を発生させている。このように、基板に接液する処理液から直接に泡を発生させているので、被処理面たる基板表面に対して効率良く泡が供給される。そのため、上記した泡の作用(1)によって、基板表面のパーティクル等の不要物を効率良く除去することができる。しかも、基板表面で泡を発生させているので基板が処理されるまでに泡が成長することなく比較的小さな泡で基板を処理することができる。そのため、基板へのダメージを低減することができる。
【0014】
ここで、気体を溶解させた処理液を基板に供給するように構成すると、処理液に溶け込ませた気体を基板表面で泡として効率的に発生させることができる。つまり、処理液中の気体の飽和溶解量は温度上昇につれて減少する。そのため、基板を加熱して基板を昇温させることで該基板に接液する処理液に過剰に溶解している気体を泡として効率的に発生させることができる。また、気体を過飽和(飽和溶解量以上)に溶解させるようにすると、さらに容易に泡を発生させることができる。
【0015】
また、このように処理液に溶解させている気体を泡として効率良く発生させることにより、従来装置のように気泡発生手段から気体を処理液中に噴出させて泡を発生させる場合に比べて気体の消費量を抑制することができる。
【0016】
また、基板の一方主面に処理液を供給するとともに、加熱手段として基板の他方主面に高温流体を供給して基板を加熱するようにしてもよい。この構成によれば、基板および基板の一方主面に接液する処理液のみを効果的に昇温させることができ、該一方主面に接液する処理液から効率良く泡を発生させることができる。しかも、他方主面に高温流体が供給されることで一方主面側で除去されたパーティクル等の不要物が他方主面側へ回り込むのが防止される。ここで、高温流体として基板を均一に昇温させる観点から液体が望ましく、特にランニングコストを低減させる観点から摂氏70度以上に加熱された純水が望ましい。また、基板の一方主面で泡を効率良く発生させる観点からすると、硫酸のような摂氏100度以上に昇温可能な液体を高温流体として用いることが望ましい。
【0017】
また、基板を回転させるように構成すると、基板に供給された処理液は該処理液に働く遠心力によって基板の中心部から周縁部へと流れ、基板外に排出される。そのため、処理液の流れによりパーティクル等の不要物を基板表面から除去するとともに、上記した泡の作用(2)によって、パーティクルを捕捉した泡を効率良く基板外に排出することができる。このように、基板を回転(例えば回転数を300rpmとして基板を回転)させて処理液に遠心力を働かせることで、基板表面からのパーティクルの排出能力を高めることができる。
【0018】
また、基板保持手段は基板の他方主面に対向可能な対向面を有し、基板の他方主面と基板保持手段の対向面とで挟まれた他方主面側空間に高温流体を供給することで他方主面側空間に高温流体を液密状態に溜めるように構成してもよい。この構成によれば、基板の他方主面と基板保持手段の対向面とで挟まれた他方主面側空間に高温流体による液密状態が形成されることで、基板を停止状態もしくは低回転状態(例えば基板回転数が100rpm以下)としても、高温流体が押し出されることで基板外に排出される。このため、高温流体の消費量を抑制することができる。また、回転による高温流体ならびに基板の温度の低下が回避されるので、基板を効率的に加熱することができる。
【0019】
さらに、基板の一方主面側においても、基板の一方主面に対向可能な対向面を有し、該対向面を一方主面から離間対向された遮断部材をさらに設けて、基板の一方主面と遮断部材の対向面とで挟まれた一方主面側空間に処理液を供給することで一方主面側空間に処理液を液密状態に溜めるように構成してもよい。この構成によれば、上記した基板の他方主面側と同様に、処理液が該処理液に働く遠心力がなくとも押し出されることで基板外に排出される。このため、処理液の消費量を抑制することができるとともに、回転による処理液(ならびに基板)の温度の低下が回避される。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、基板に処理液を供給するとともに、基板を加熱することで該基板に接液する処理液から泡を発生させているので、被処理面たる基板表面に対して効率良く泡が供給される。このため、泡が基板表面に作用することで効率的に基板上に付着するパーティクルを捕捉するとともに基板から除去することができる。しかも、基板表面で泡を直接に発生させているので泡が成長することなく比較的小さな泡で基板を処理することができる。そのため、基板へのダメージを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
<第1実施形態>
図1は、この発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図である。また、図2は、図1の基板処理装置の制御構成を示す図である。この基板処理装置は、半導体ウエハ等の基板Wの表面Wf(本発明の「一方主面」に相当)に付着したパーティクルや各種金属不純物などの不要物を除去する処理を行う枚葉式の基板処理装置である。より具体的には、デバイスパターンが形成される基板表面Wfに純水または洗浄用の薬液(以下「処理液」という)を供給することによって、該基板表面Wfに対して洗浄処理を行う装置である。
【0022】
この基板処理装置は、本発明の「基板保持手段」として機能するスピンチャック1により基板Wをその表面Wfを上方に向けて略水平に保持した状態で、その基板Wに対して膜除去処理、リンス処理、乾燥処理を同一の処理装置内で実行する。このスピンチャック1は、基板裏面Wb(本発明の「他方主面」に相当)側の遮断部材としての機能を兼ねた円盤状のベース部材2と、その上面2aに設けられた3個以上の保持部材3とを備えている。
【0023】
これらの保持部材3のそれぞれは基板Wの外周端部を下方から載置支持する支持部3aと、基板Wの外周端縁の位置を規制する規制部3bとを有している。そして、これらの保持部材3はベース部材2の外周端部付近に設けられている。また、各規制部3bは、基板Wの外周端縁に接触して基板Wを保持する作用状態と、基板Wの外周端縁から離れて基板Wの保持を解除する非作用状態とを採り得るように構成されており、非作用状態で搬送ロボット(図示省略)によって支持部3aに対する基板Wの搬入/搬出を行う一方、基板表面Wfを上側にして支持部3aに載置された後で各規制部3bを作用状態に切替えることで基板Wがスピンチャック1に保持される。なお、この保持部材3(規制部3b)の動作は、例えば、特開昭63−153839号公報に開示されているリンク機構などで実現することができる。
【0024】
また、ベース部材2の下面には、回転軸4の上方端部が取付けられている。そして、この回転軸4の下方端部にプーリ5aが固着されるとともに、このプーリ5aとモータ5の回転軸に固着されたプーリ5bとの間にベルト5cを介してモータ5の回転駆動力が回転軸4に伝達されるように構成されている。このため、モータ5を駆動することでスピンチャック1に保持された基板Wは基板Wの中心周りに回転される。このように、この実施形態では、モータ5の回転駆動力をプーリ5a,5b、ベルト5cからなる動力伝達機構によって回転軸4に伝えてスピンチャック1に保持された基板Wを回転させており、回転軸4、プーリ5a,5b、ベルト5cおよびモータ5により本発明の「基板回転手段」が構成されている。
【0025】
ベース部材2の中央部にはノズル6が設けられている。ノズル6は中空の回転軸4の中心軸に沿って内接された管7や、管8を介して基板裏面Wbに処理液を供給する液供給部50に接続されている。なお、液供給部50の構成および動作について後で後述する。
【0026】
また、ベース部材2の中央部にはノズル6と同軸に開口16が設けられている。この開口16は、上記管7と同軸に回転軸4内に設けられた中空部17や、開閉弁18を介装した管19を介してガス供給部20に連通接続されている。このため、開閉弁18を開にすることにより、遮断部材としてのベース部材2の上面(対向面)2aと基板裏面Wbとの間の空間Slw(本発明の「他方主面側空間」に相当)に不活性ガス(例えば、窒素ガス)を供給し、その空間を不活性ガス雰囲気にパージし得るように構成されている。
【0027】
スピンチャック1の上方には遮断部材21が設けられている。この遮断部材21は、鉛直方向に配設された懸垂アーム22の下端部に取り付けられている。また、この懸垂アーム22の上方端部には、モータ23が設けられ、モータ23を駆動することにより、遮断部材21が懸垂アーム22を回転中心として回転されるようになっている。なお、スピンチャック1の回転軸4の回転軸芯と懸垂アーム22の回転軸芯とは一致されていて、遮断部材としてのベース部材2、スピンチャック1に保持された基板W、遮断部材21は同軸周りに回転されるようになっている。また、モータ23は、スピンチャック1(に保持された基板W)と同じ方向でかつ略同じ回転速度で遮断部材21を回転させるように構成されている。
【0028】
遮断部材21の中央部にはノズル25が設けられている。ノズル25は、中空の懸垂アーム22の中心軸に沿って内設された管26や、管27を介して基板表面Wfに処理液を供給する液供給部70に接続されている。なお、液供給部70の構成および動作について後で詳述する。
【0029】
また、遮断部材21の中央部にはノズル25と同軸に開口35が設けられている。この開口35は、上記管26と同軸に懸垂アーム22内に設けられた中空部36や、開閉弁37を介装した管38を介してガス供給部39に連通接続されている。そして、スピンチャック1に保持された基板表面Wfに遮断部材21が近接配置された状態で、開閉弁37を開にすることにより、遮断部材21の下面21a(対向面)と基板表面Wfとで挟まれた空間Sup(本発明の「一方主面側空間」に相当)に不活性ガス(例えば、窒素ガス)を供給し、その空間を不活性ガス雰囲気にパージし得るように構成されている。
【0030】
スピンチャック1の周囲には、処理液の周囲への飛散を防止するカップ40が配設されている。カップ40の底部には、カップ40で回収された処理液を装置外で回収するとともに、カップ40内の排気を行うための排液・排気管41が設けられている。
【0031】
次に、液供給部50の構成について説明する。この液供給部50は、フッ酸を供給するフッ酸供給源51と、純水を供給する純水供給源52と、窒素溶解ユニット58とを備えている。この窒素溶解ユニット58は、例えばタンクを用いたバブリング装置や中空糸を用いた既存の装置が用いられる。そして、フッ酸供給源51が開閉弁53を介装した管54を介してミキシングユニット55に接続される一方、純水供給源52が窒素溶解ユニット58のインレットに接続されている。また、この窒素溶解ユニット58には、別のインレットが設けられており、図示省略する窒素ガス(N2)供給源と接続されている。そして、純水供給源52からの純水に対して窒素ガス供給源からの窒素ガスを過飽和に溶解させて窒素豊富な純水(以下、単に「窒素溶解水」という)を生成する。さらに、この窒素溶解ユニット58のアウトレットは、開閉弁56を介装した管57を介してミキシングユニット55に接続されている。
【0032】
そして、装置全体を制御する制御部80からの制御指令に応じて開閉弁53,56の開閉の切換えによりミキシングユニット55から管27にフッ酸水溶液または純水を選択的に基板表面Wfに向けて供給可能となっている。すなわち、開閉弁53,56をすべて開にすると、フッ酸および純水がミキシングユニット55に供給されて所定濃度のフッ酸水溶液が調合される。そして、このフッ酸水溶液が管27を介してノズル25から基板表面Wfに向けて吐出されて該基板表面Wfに付着する膜をエッチング除去する。また、開閉弁56のみを開とすると、管27を介してノズル25から窒素溶解水がリンス液として基板表面Wfに供給されてリンス処理を行うことができる。このように、この実施形態では、ノズル25が本発明の「処理液ノズル」として、窒素溶解ユニット58が本発明の「気体溶解手段」として機能している。
【0033】
次に、液供給部70の構成について説明する。この液供給部70は、本発明の「高温流体」として加熱された純水を供給するために、純水を供給する純水供給源71と、加熱ユニット72(本発明の「加熱手段」に相当)とを備えている。この加熱ユニット72のインレットには、純水供給源71が接続されており、該純水供給源71から供給される純水を加熱させることができる。また、加熱ユニット72のアウトレットは開閉弁73を介装した管8に接続されており、加熱された純水を管8を介してノズル6に供給可能となっている。
【0034】
図3は、加熱ユニットの構成を示すブロック図である。加熱ユニット72は、純水を一時的に蓄えるタンク72a、該タンク72a内の純水を加熱する加熱装置72bとを備えている。加熱ユニット72は、制御部80からの指令に基づいて、加熱装置72bによりタンク72a内の純水を所定の温度にまで加熱する。ここでは、後述する処理において、基板Wを昇温させて基板表面Wfに接液する処理液から泡を効率的に発生させるために、純水を摂氏70度以上であって沸点以下の温度にまで加熱することが望ましい。なお、必要に応じて、加熱ユニット72は、純水中の溶存酸素を低減させるため、タンク72a内の純水を脱気する脱気装置(図示省略)を備えるようにしてもよい。
【0035】
そして、制御部80は開閉弁73を開にすることで、所定の温度に加熱された純水(以下、単に「温水」という)がノズル6から基板裏面Wbに向けて吐出される。これにより、基板Wは裏面Wbに供給された温水によって昇温される。ここで、液体中の気体飽和溶解量は温度上昇につれて減少するため、基板表面Wfに接液する処理液中に溶解している気体(窒素ガス)を泡として基板表面Wf上で発生させることができる。このように、この実施形態では、ノズル6が本発明の「流体供給ノズル」として機能している。
【0036】
次に、上記のように構成された基板処理装置の動作について図4を参照しつつ説明する。図4は、図1の基板処理装置の動作を示すフローチャートである。この基板処理装置では、搬送ロボットにより未処理基板Wが膜形成面を上方に向けた状態でスピンチャック1に搬送され、保持部材3により保持された(ステップS1)後、制御部80により装置各部が以下のように制御されて膜除去処理、リンス処理、乾燥処理がこの順序で行われる。
【0037】
ステップS2で、スピンチャック1に保持された基板表面Wfに遮断部材21を近接配置させた後、基板Wがベース部材2と遮断部材21とに挟まれた状態で、モータ5の駆動を開始してスピンチャック1とともに基板Wを回転させる。この実施形態では、後述する基板Wに供給される処理液に遠心力を作用させるとともに、回転により基板Wを冷却させ過ぎることのないように、例えば300rpmの回転数で基板Wを回転させる。このとき、基板回転と併せてモータ23を制御してスピンチャック1の回転数とほぼ同一の回転数で同一方向に遮断部材21を回転させるのが望ましい。これにより、基板Wと遮断部材21との間に余分な気流が発生するのを防止してミスト状の処理液の巻き込みを抑制することができる。
【0038】
この状態で、開閉弁53,56を開いてフッ酸および純水をミキシングユニット55に供給し、所定濃度のフッ酸水溶液を調合するとともに、該フッ酸水溶液をノズル25に圧送する。これにより該ノズル25から基板表面Wfへのフッ酸水溶液の供給が開始される。これにより基板表面Wfに形成された膜のエッチング除去が開始される(ステップS3)。
【0039】
そして、膜除去処理が完了したことが確認されると、開閉弁53,56を閉じ、ノズル25から基板Wへのフッ酸水溶液の供給を停止した後、基板Wを高速回転させてフッ酸水溶液を振り切って装置外へ排液する。こうしてフッ酸水溶液の液切りが完了すると、開閉弁18,37を開いて、基板Wとベース部材2とで挟まれた空間Slwおよび基板Wと遮断部材21とで挟まれた空間Supに不活性ガスを供給する。基板Wの周辺雰囲気を不活性ガス雰囲気にした後、開閉弁73を開いて基板裏面Wbに温水を供給する。裏面Wb中央部に供給された温水は基板Wの回転に伴う遠心力によって周縁部に向けて広がり、基板裏面Wb全体に温水が供給される。これにより、基板Wが均一に昇温され、後述する処理において基板表面Wf全体から泡を均等に発生させることができる。
【0040】
また、制御部80は基板裏面Wbへの温水の供給と同時にまたは前後して、開閉弁56を開くことにより、窒素溶解水をリンス液として基板表面Wfに供給する。基板表面Wf中央部に供給された窒素溶解水は基板Wの回転に伴う遠心力によって周縁部に向けて広がり、基板表面Wf全体に行き渡る。ここで、基板Wは裏面Wbに供給される温水によって昇温されているので、基板表面Wfに接液する処理液(窒素溶解水)の気体の飽和溶解量は減少する。そのため、処理液に過剰に溶解している窒素ガスを泡として基板表面Wfの全体から効率的に発生させることができる。これにより、次に示す泡の作用によって、基板表面Wfのパーティクルを効率的に除去するとともに排出することができる(ステップS4)。
【0041】
図5は、泡の洗浄作用を説明するための図である。気体と液体との界面(気液界面)にはパーティクル等の不要物が集まり易い。これから、泡の作用として、(1)基板W上に付着するパーティクルを捕捉するとともに基板Wから除去する作用と、(2)処理液の流れによって捕捉したパーティクルを排出する作用とが考えられる。具体的には、図5に示すように、基板表面Wfと処理液との界面を含む領域で泡が発生すると、泡が基板表面Wfに付着する、あるいは基板表面Wf近傍に浮遊するパーティクルを捕捉する。そして、捕捉されたパーティクルは泡に働く浮力でもって基板表面Wfから除去される。また、この実施形態では、処理液は基板Wの回転による遠心力を受けて基板外に排液される。ここで、処理液の流れに沿ってパーティクル自体が受ける力よりもパーティクルを捕捉した泡全体が受ける力の方が大きいことから、泡に捕捉されたパーティクルは効率良く基板外に排出される。なお、基板裏面Wb全体は温水で覆われているので、除去されたパーティクルが基板裏面Wbに回り込んで付着するのが防止される。
【0042】
また、この実施形態では、被処理面たる基板表面Wfで直接に泡を発生させているので、発生させた泡を被処理面に送り込む場合と比較して、泡が大きく成長することなく比較的小さな泡でパーティクルを基板表面Wfから除去できる。そのため、泡径が大きくなって基板Wを大きく振動させるなどして基板Wにダメージを与えるのを低減することができる。しかも、小さな泡がまんべんなく基板表面Wfに供給されることで、気液界面の表面積を増大させてパーティクルを効率良く捕捉するとともに、基板表面Wfから除去することができる。
【0043】
こうして、リンス処理を所定時間行うと、開閉弁56,73を閉にして窒素溶解水および温水の供給を停止して、リンス処理を終了する。その後、不活性ガスを供給を継続させたまま制御部80はモータ5,23の回転速度を高めて基板Wおよび遮断部材21を高速回転させる。これにより、洗浄後の基板Wおよび遮断部材21に付着している処理液を振り切って乾燥させる(ステップS5)。基板Wの乾燥終了後、基板の回転を停止するとともに開閉弁18,37を閉じて不活性ガスの供給を停止する(ステップS6)。
【0044】
こうして、一連の基板処理(膜除去処理、リンス処理および乾燥処理)が完了すると、遮断部材21をスピンチャック1に保持された基板Wの表面から離間させるとともに、保持部材3による基板保持を解除させる。その後、搬送ロボットが処理済基板Wを装置から搬出する(ステップS7)。
【0045】
以上のように、この実施形態によれば、温水を基板裏面Wbに供給することによって基板Wを昇温させる一方で、窒素を過飽和に溶解させた純水(処理液)を基板表面Wfに供給している。これにより、基板表面Wfに接液する処理液から効率的に泡を発生させて、基板表面Wfに効率良く泡が供給される。このため、泡の作用によって基板表面Wfのパーティクル等の不要物を捕捉するとともに、効率良く除去することができる。また、基板Wの回転により処理液に遠心力を働かせて基板外に排液させるようにしているので、処理液中のパーティクルとともに、パーティクルを捕捉した泡を効率的に排出することができる。
【0046】
また、この実施形態によれば、基板表面Wfで直接に泡を発生させているので基板Wが洗浄(パーティクルが除去)されるまで、泡が成長することなく比較的小さな泡で洗浄することができる。そのため、泡が基板Wを大きく振動させるなどして基板Wにダメージを与えるのを低減することができる。
【0047】
また、この実施形態によれば、処理液(純水)に溶解させている気体(窒素ガス)を泡として効率的に発生させているので、気泡発生手段から気体を処理液中に噴出させて泡を発生させる場合に比べて気体の消費量を抑制することができる。
【0048】
<第2実施形態>
第1実施形態では、基板表面Wfに供給される窒素溶解水および基板裏面Wbに供給される温水に対して基板Wの回転による遠心力を働かせて基板外に排液していたが、これら基板Wの表裏面に供給される液に対してノズル6,25からの液供給による押し出しによって基板外に排液するようにしてもよい。
【0049】
図6は、この発明にかかる基板処理装置の第2実施形態の動作を示す図である。この第2実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、リンス処理の際に基板Wとベース部材2との間の空間Slwおよび基板Wと遮断部材21との間の空間Supに、それぞれ温水、窒素溶解水を溜めている点であり、その他の構成および動作は基本的に第1実施形態と同様である。したがって、以下においては相違点を中心に説明する。
【0050】
この実施形態においては、基板Wを停止状態もしくは低回転状態(例えば100rpm以下)として、ノズル6から基板裏面Wbに向けて温水を供給することで、基板裏面Wbとベース部材2の上面2aとで挟まれた空間Slwに温水を溜めて温水による液密状態を形成する。一方で、ノズル25から基板表面Wfに向けて処理液として窒素溶解水を供給することで、基板表面Wfと遮断部材21の上面21aとで挟められた空間Supに窒素溶解水を溜めて窒素溶解水による液密状態を形成する。なお、基板Wの中央部に供給された液(温水および窒素溶解水)は、それぞれノズル6,25から供給される液によって基板Wの周縁部に押し出されて基板外に排出される。
【0051】
そして、基板裏面Wb全体に供給された温水によって基板Wが均一に昇温される。しかも、基板Wの回転による液(温水および窒素溶解水)の温度低下を回避しながら基板Wが効率良く昇温される。これによって、第1実施形態と同様にして基板表面Wfに接液する窒素溶解水から泡を効率良く、しかも基板表面Wf全体から均一に発生させることができる。その結果、基板表面Wfのパーティクルを効率的に除去するとともに排出することができる。
【0052】
以上のように、この実施形態によれば、基板表面Wfに接液する窒素溶解水(処理液)から効率的に泡を発生させているので、第1実施形態と同様にして、泡の作用によって基板表面Wfのパーティクル等の不要物を捕捉するとともに、効率良く除去することができる。また、処理液を押し出して基板外に排液させるようにしているので、処理液中のパーティクルとともに、パーティクルを捕捉した泡を効率的に排出することができる。
【0053】
また、この実施形態によれば、基板Wを停止状態もしくは低回転状態として処理液を基板外に排出しているので、基板Wの回転による液(温水および窒素溶解水)の温度低下が回避され、基板Wを効率的に昇温させることができる。
【0054】
また、この実施形態によれば、基板Wに供給された液(温水および窒素溶解水)を当該液に作用する遠心力でなく押し出しにより基板外に排出しているので、液の消費量を抑制することができる。
【0055】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、加熱ユニット72を本発明の「加熱手段」として設け、高温流体を基板Wに供給することによって基板Wを加熱させているが、加熱手段はこれに限定されない。例えば、ガスを高温に温調しておき、このガス供給によって基板Wを加熱するようにしてもよい。 また、高温流体を供給する代わりにベース部材2などに光源あるいはヒータなどの発熱部材を設けて該発熱部材を作動させることで基板Wを摂氏70度以上に加熱するようにしてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、高温流体として、ランニングコストを低減させる観点から摂氏70度以上に加熱された純水を用いているが、これに限定されない。例えば純水に代えて硫酸のような摂氏100度以上に昇温可能な液体を高温流体として用いると、基板Wに接液する処理液から泡をさらに効率良く発生させることができる。
【0057】
また、上記実施形態では、窒素溶解ユニット58によって処理液中に溶解させた気体(窒素)を泡として発生させているが、これに限定されない。例えば処理液にそのまま含まれている気体、あるいは処理液を直接に気化させて該処理液から泡を発生させるようにしてもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、処理液(純水)に窒素を溶解させているが、処理液に溶解させる気体はこれに限定されず、例えば二酸化炭素(CO2)、清浄な空気を処理液に溶解させるようにしてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、リンス処理時に処理液として純水(窒素溶解水)を用いているが、これに限定されない。例えば純水に希塩酸もしくは希フッ酸等を添加してpH調整した混合液を処理液(リンス液)として用いてもよい。これにより、基板Wからの被酸化物質の溶出が低減され、ウォーターマークの発生を防止することができる。
【0060】
また、上記実施形態では、基板表面Wfに形成された膜の除去処理後に、基板Wを加熱して該基板表面Wfに接液する処理液から泡を発生させて基板表面Wfを洗浄処理しているが、これに限定されない。例えば基板表面Wfをブラシでスクラブ洗浄した後に、処理液から泡を発生させて基板表面Wfを洗浄処理するようにしてもよい。このスクラブ洗浄により基板表面Wfに付着するパーティクルが物理的に除去され、大まかな洗浄が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、光ディスク用基板などを含む基板全般に対して洗浄等の所定の処理を施す基板処理装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】この発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図である。
【図2】図1の基板処理装置の制御構成を示す図である。
【図3】加熱ユニットの構成を示すブロック図である。
【図4】図1の基板処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】泡の洗浄作用を説明するための図である。
【図6】この発明にかかる基板処理装置の第2実施形態の動作を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
1…スピンチャック(基板保持手段)
2a…ベース部材の上面(他方主面側対向面)
4…回転軸(基板回転手段)
5…モータ(基板回転手段)
5a,5b…プーリ(基板回転手段)
5c…ベルト(基板回転手段)
6…ノズル(流体供給ノズル)
21…遮断部材
21a…遮断部材21の下面(一方主面側対向面)
25…ノズル(処理液ノズル)
58…窒素溶解ユニット(気体溶解手段)
72…加熱ユニット(加熱手段)
Slw…他方主面側空間
Sup…一方主面側空間
W…基板
Wb…基板裏面(基板の他方主面)
Wf…基板表面(基板の一方主面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に処理液を供給して前記基板に対して所定の処理を施す基板処理装置において、
基板を保持する基板保持手段と、
前記基板保持手段に保持された基板に処理液を供給する処理液ノズルと、
基板を加熱することで該基板に接液する処理液から泡を発生させる加熱手段と
を備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
処理液に気体を溶解させるとともに、該気体を溶解させた処理液を前記処理液ノズルに送給する気体溶解手段をさらに備え、
前記処理液ノズルは前記気体を溶解させた処理液を前記基板に供給する請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記気体溶解手段は処理液に気体を過飽和に溶解させる請求項2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記処理液ノズルは前記基板の一方主面に前記処理液を供給するとともに、
前記加熱手段は前記基板の他方主面に対して高温流体を供給する流体供給ノズルを備え、前記流体供給ノズルから供給される前記高温流体によって前記基板を加熱する請求項1ないし3のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記高温流体は摂氏70度以上に加熱された純水である請求項4記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記高温流体は摂氏100度以上に加熱された硫酸である請求項4記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記基板保持手段を回転させることで基板を回転させる基板回転手段をさらに備える請求項1ないし6のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記基板保持手段は前記基板の他方主面に対向可能な対向面を有し、
前記基板の他方主面と前記基板保持手段の対向面とで挟まれた他方主面側空間に前記流体供給ノズルから高温流体を供給することで前記他方主面側空間に前記高温流体を液密状態に溜める請求項4ないし7のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記基板の一方主面に対向可能な対向面を有し、該対向面を前記一方主面から離間対向された遮断部材をさらに備え、
前記基板の一方主面と前記遮断部材の対向面とで挟まれた一方主面側空間に前記処理液ノズルから処理液を供給することで前記一方主面側空間に前記処理液を液密状態に溜める請求項1ないし8のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項10】
基板に処理液を供給して前記基板に対して所定の処理を施す基板処理方法において、
基板に処理液を供給する液供給工程と、
前記液供給工程の間、基板を加熱することで該基板に接液する処理液から泡を発生させる加熱工程と
を備えたことを特徴とする基板処理方法。
【請求項11】
処理液に気体を溶解させる気体溶解工程をさらに備え、
前記液供給工程は前記気体溶解工程で気体を溶解させた処理液を前記基板に供給する請求項10記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記液供給工程において前記基板の一方主面に前記処理液を供給するとともに、
前記加熱工程は前記基板の他方主面に対して高温流体を供給することによって前記基板を加熱する請求項10または11記載の基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−181426(P2006−181426A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−376110(P2004−376110)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】