説明

基板処理装置および基板処理方法

【課題】基板に対して良好に洗浄処理を施すことができる基板処理装置および基板処理方法を提供する。
【解決手段】薬液ユニット10は、基板Wの薬液処理を可能とするユニットである。洗浄ユニット60は、薬液ユニット10により薬液が供給された基板Wにマイクロバブル水を供給して、マイクロバブル水による洗浄処理を可能とするユニットである。洗浄ユニット60は、主として、複数の上側ノズル61と、複数の下側ノズル62と、液ナイフ66と、貯留槽20と、マイクロバブル発生部21と、を備えている。これにより、薬液処理後の基板Wにマイクロバブル水を供給することができる。そのため、薬液処理において基板に付着した薬液をマイクロバブル水により迅速に置換することができ、洗浄処理に使用される処理液の量を低減させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板、液晶表示装置用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、光ディスク用基板等(以下、単に「基板」と称する)に対して処理を施す基板処理装置および基板処理方法に関するもので、特に、基板の洗浄処理に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、純水とガスとを混合させた処理液を薬液が付着した基板に供給することによって基板を洗浄する技術が知られている(例えば、特許文献1)。ここで、特許文献1では、ガスとして炭酸ガス(CO2)が使用されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−273984号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1において、基板に付着した薬液を除去するためには、大量の純水が必要とされる。すなわち、洗浄処理において、基板処理装置からは、薬液を含む多量の排液が排出される。その結果、多量の排液を処理可能な排液処理設備が必要となり、排液処理に関する設備コストが増大するという問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明では、基板に対して良好に洗浄処理を施すことができる基板処理装置および基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、基板に薬液を供給して薬液処理を可能とする薬液供給部と、マイクロバブルを発生させるマイクロバブル発生部と、前記薬液供給部により前記薬液が供給された前記基板に前記マイクロバブル発生部によって発生させられたマイクロバブルを含む処理液を供給して、前記処理液による洗浄処理を可能とする処理液供給部とを備えることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の基板処理装置において、前記処理液供給部から供給される前記処理液は、純水と不活性ガスとを前記マイクロバブル発生部で混合させることによって発生したマイクロバブルを含むことを特徴とする。
【0008】
また、請求項3の発明は、請求項1に記載の基板処理装置において、前記薬液供給部は、有機アミンを含む薬液を供給し、前記処理液供給部から供給される前記処理液は、純水と炭酸ガスとを前記マイクロバブル発生部で混合させることによって発生したマイクロバブルを含むことを特徴とする。
【0009】
また、請求項4の発明は、請求項1に記載の基板処理装置において、前記薬液供給部から供給される前記薬液は、前記基板上に形成されており、エッチング処理を経たレジスト膜を剥離する剥離液であり、前記処理液供給部から供給される前記処理液は、純水と酸化力を有する気体とを前記マイクロバブル発生部で混合させることによって発生したマイクロバブルを含むことを特徴とする。
【0010】
また、請求項5の発明は、請求項1に記載の基板処理装置において、前記薬液供給部から供給される前記薬液は、前記基板上に形成されており、露光処理を経たレジスト膜を現像する現像液であり、前記処理液供給部から供給される前記処理液は、純水と酸化力を有する気体とを前記マイクロバブル発生部で混合させることによって発生したマイクロバブルを含むことを特徴とする。
【0011】
また、請求項6の発明は、請求項4または請求項5に記載の基板処理装置において、前記酸化力を有する気体は、酸素を含むガスであることを特徴とする。
【0012】
また、請求項7の発明は、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の基板処理装置において、前記酸化力を有する気体は、オゾンガスであることを特徴とする。
【0013】
また、請求項8の発明は、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の基板処理装置において、前記処理液供給部は、カーテン状とされた前記処理液を前記基板に向けて吐出し、搬送部による前記基板の搬送方向と略垂直な第1方向に沿って、前記処理液を前記基板に着液させることを特徴とする。
【0014】
また、請求項9の発明は、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の基板処理装置において、前記処理液供給部は、搬送部による前記基板の搬送方向と略垂直な第1方向に沿って配置された複数のノズルを有し、各ノズルは、前記第1方向に伸びる吐出口、を有することを特徴とする。
【0015】
また、請求項10の発明は、請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の基板処理装置において、前記処理液供給部は、貯留槽内で発生したマイクロバブルを前記基板に供給することを特徴とする。
【0016】
また、請求項11の発明は、請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の基板処理装置において、前記処理液供給部と連通接続されており、前記処理液供給部側に前記処理液を供給する第1供給管、をさらに備え、前記マイクロバブル発生部は、前記第1供給管に設けられていることを特徴とする。
【0017】
また、請求項12の発明は、請求項11に記載の基板処理装置において、前記マイクロバブル発生部は、マイクロバブル径が良好な洗浄処理において要求される範囲となるように、前記第1供給管の所定位置に取り付けられていることを特徴とする。
【0018】
また、請求項13の発明は、(a)基板に薬液を供給する工程と、(b)マイクロバブル発生部によって発生させられたマイクロバブルを含む処理液を、前記工程(a)により前記薬液が供給された前記基板に供給する工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1ないし請求項13に記載の発明によれば、薬液処理が施された基板に対して、マイクロバブルを含む処理液を供給することができる。これにより、薬液処理において、基板に付着した薬液をマイクロバブルを含む処理液によって迅速に置換することができる。そのため、洗浄処理に使用される処理液の量を低減させることができる。
【0020】
また、薬液処理後の基板に付着している汚染物質(例えば、パーティクルや有機物等)を基板から良好に除去することができる。そのため、洗浄処理後の基板の清浄性を向上させることができる。
【0021】
特に、請求項2に記載の発明において、マイクロバブルは、不活性ガスの微小気泡であり、マイクロバブルと純水とを含む処理液中にマイクロバブルが溶解したとしても、処理液の化学的安定性は高い。これにより、薬液供給部からの薬液に処理液が混入した場合であっても、薬液を劣化させることがない。そのため、薬液処理に悪影響を与えることなく、洗浄処理に使用される処理液の量を低減させ、洗浄処理後の基板の清浄性を向上させることができる。
【0022】
特に、請求項3に記載の発明において、薬液処理を経た基板には有機アミンを含む薬液が付着しており、この有機アミンが純水と接触すると強アルカリが生成される。一方、処理液には炭酸ガスが溶解しており、処理液は酸性を有する。
【0023】
これにより、薬液処理後の基板に処理液が供給されると、薬液は酸性の処理液によって中和される。そのため、有機アミンに基づく強アルカリによって基板が腐食されることを防止しつつ、処理液による洗浄処理を良好に実行することができる。
【0024】
特に、請求項4ないし請求項7に記載の発明において、薬液処理(剥離処理または現像処理)後の基板にはレジスト残渣等の有機物が付着している。この場合において、処理液は、酸化力を有する気体(例えば、酸素を含むガス、酸素ガス、またはオゾンガス等)によって形成されたマイクロバブルの酸化力により、基板に付着した有機物を分解して除去することができる。そのため、洗浄処理後の基板の清浄性をさらに向上させることができる。
【0025】
特に、請求項8および請求項9に記載の発明によれば、搬送方向に搬送される基板全体に、マイクロバブルを含む処理液を良好に供給することができる。そのため、処理液による洗浄処理をさらに良好に実行することができる。
【0026】
特に、請求項10に記載の発明によれば、貯留槽内に十分な量のマイクロバブルを発生させ、その後、マイクロバブルを含む処理液を処理液供給部に供給することができる。これにより、有機物除去に十分な量のマイクロバブルを基板に供給することができる。そのため、処理液による洗浄処理をさらに良好に実行することができる。
【0027】
特に、請求項11に記載の発明によれば、第1供給管に設けられたマイクロバブル発生部以外に特別な装置を用いることなく、基板にマイクロバブルを含む処理液を供給することができる。そのため、装置の製造コストおよび装置のフットプリントを低減させることができる。
【0028】
特に、請求項12に記載の発明によれば、マイクロバブル発生部の取付位置を調整することにより、適切な径サイズのマイクロバブルを含む処理液を基板に供給することができる。そのため、処理液による洗浄処理をさらに良好に実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0030】
<1.基板処理装置の構成>
図1は、本発明の実施の形態における基板処理装置1の全体構成の一例を示す図である。ここで、基板処理装置1は、(1)基板Wに薬液(例えば、露光処理を経たレジスト膜を現像する現像液や、エッチング処理を経たレジスト膜を剥離する剥離液等)を供給して薬液処理を実行する工程と、(2)薬液が供給された基板Wにマイクロバブルを含む純水(以下、単に、「マイクロバブル水」とも呼ぶ)を供給して洗浄処理を実行する工程と、を実行可能な装置である。図1に示すように、基板処理装置1は、主として、複数の搬送ローラ5と、薬液ユニット10と、洗浄ユニット60と、を備えている。
【0031】
なお、図1および以降の各図には、それらの方向関係を明確にすべく必要に応じて適宜、Z軸方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とするXYZ直交座標系が付されている。また、本実施の形態において、処理液には、現像液、剥離液、およびフッ酸等の薬液だけでなく純水も含まれる。
【0032】
複数の搬送ローラ5は、処理対象となる基板Wを、薬液ユニット10側から洗浄ユニット60側に搬送する搬送部であり、これら搬送ローラ5によって搬送路6が形成される。各搬送ローラ5は、不図示の駆動モータに接続されており、Y軸と略平行な回転軸を中心として回転させられる。そのため、搬送ローラ5上の基板Wは、搬送方向AR1(X軸と略平行)に搬送される。
【0033】
薬液ユニット10は、基板Wの薬液処理を可能とするユニットである。例えば、薬液ユニット10は、基板Wに現像液を供給することによって露光後の現像処理を実行したり、基板Wに剥離液を供給することによってエッチング後の剥離処理を実行する。図1に示すように、薬液ユニット10は、主として、複数の吐出ノズル11と、薬液供給管32と、を備えている。
【0034】
複数の吐出ノズル11は、処理室10a内であって搬送路6の上方に設けられており、基板Wの上面(Z軸プラス側の面)に薬液11aを供給する。また、図1に示すよに、各吐出ノズル11は、バルブ35が設けられた薬液供給管32を介して、薬液供給源31と連通接続されている。したがって、バルブ35が開放されることにより、各吐出ノズル11は、搬送路6の基板Wに向けて薬液11aを吐出する。このように複数の吐出ノズル11は、基板Wに薬液を供給する薬液供給部として使用される。
【0035】
また、処理室10aの下部付近には、排出口13が設けられている。排出口13は、バルブ15が設けられた排出管14と、共通排出管92と介して、排液ドレイン91と連通接続されている。したがって、バルブ15が開放されることにより、薬液処理に使用された薬液は、排液として薬液ユニット10から排液ドレイン91側に排出される。
【0036】
洗浄ユニット60は、薬液11aが供給された基板Wにマイクロバブル水を供給して、マイクロバブル水による洗浄処理を可能とするユニットである。なお、洗浄ユニット60の構成については、後述する。
【0037】
<2.洗浄ユニットの構成>
図2および図3は、上側ノズル61から吐出されるマイクロバブル水61aの吐出状況を説明するための図である。ここでは、洗浄ユニット60の構成について説明する。図1に示すように、洗浄ユニット60は、主として、複数の上側ノズル61と、複数の下側ノズル62と、液ナイフ66と、貯留槽20と、マイクロバブル発生部21と、を備えている。
【0038】
複数の上側ノズル61は、図1に示すように、処理室60a内であって搬送路6の上方に設けられている。各上側ノズル61は、図2に示すように、その先端に、基板Wの搬送方向AR1と略垂直な方向(第1方向)(略Y軸方向)に伸びる吐出口61bを有している。
【0039】
これにより、各上側ノズル61から搬送路6の基板W上面に向けて吐出されたマイクロバブル水61a(処理液)につき、第1方向から見た該マイクロバブル水61aの断面は、図2に示すように略扇形状となる。そして、マイクロバブル水61aは、第1方向に沿って伸びる着液部61cに着液する。
【0040】
また、複数の上側ノズル61は、図3に示すように、第1方向に沿って配置されている。したがって、複数(本実施の形態では4つ)の上側ノズル61を一組とする上側ノズル列は、カーテン状とされたマイクロバブル水61aを基板W上面に向けて吐出することができ、マイクロバブル水61aを第1方向に沿って着液させることができる。そのため、搬送される基板Wの上面全体に対して、良好にマイクロバブル水61aを供給することができる。
【0041】
なお、本実施の形態において、図1に示すように、この複数の上側ノズル61を一組とする上側ノズル列は搬送路6の上方に3つ設けられているが、上側ノズル列の列数はこれに限定されない。例えば、1列または2列であってもよいし、4列以上であってもよい。
【0042】
また、各上側ノズル列は、4つの上側ノズル61を有するものとして説明したが、上側ノズル61の本数はこれに限定されない。カーテン状にマイクロバブル水61aを吐出可能であれば、上側ノズル61の本数は、1本でもよいし、複数(2本以上)であってもよい。
【0043】
複数の下側ノズル62は、処理室60a内であって搬送路6の下方に設けられており、基板Wの下面(Z軸マイナス側の面)にマイクロバブル水62aを供給する。各下側ノズル62は、上側ノズル61と同様に、その先端に略Y軸方向(第1方向)に伸びる吐出口を有している。
【0044】
これにより、各下側ノズル62から搬送路6の基板W下面に向けて吐出されたマイクロバブル水62a(処理液)につき、第1方向から見た該マイクロバブル水62aの断面は、上側ノズル61の場合と同様に、略扇形状となる。そして、マイクロバブル水62aは、基板Wの搬送方向AR1と略垂直な方向(第1方向)(略Y軸方向)に沿って伸びる着液部に着液する。
【0045】
また、複数の下側ノズル62は、上側ノズル61と同様に、第1方向に沿って配置されている。したがって、複数の下側ノズル62を一組とする下側ノズル列は、カーテン状とされたマイクロバブル水62aを基板W下面に向けて吐出することができ、マイクロバブル水62aを第1方向に沿って着液させることができる。そのため、搬送される基板Wの下面全体に対して、良好にマイクロバブル水62aを供給することができる。
【0046】
なお、本実施の形態において、図1に示すように、この複数の下側ノズル62を一組とする下側ノズル列は、搬送路6の下方に、上側ノズル61と同様に、3つ設けられているが、下側ノズル列の列数はこれに限定されない。例えば、1列または2列であってもよいし、4列以上であってもよい。
【0047】
液ナイフ66は、図1に示すように、処理室60a内であって基板搬入口60bの上方に設けられている。これにいおり、液ナイフ66から吐出されるマイクロバブル水66a(処理液)によって、基板搬入口60b付近には液カーテンが形成される。そのため、前工程である薬液処理が実行される処理室10a内の雰囲気と、洗浄処理が実行される処理室60a内の雰囲気とは遮断される。
【0048】
また、液ナイフ66は、搬送方向AR1から見て上側ノズル61および下側ノズル62の上流側に設けられている。これにより、上側ノズル61および下側ノズル62による洗浄処理に先立って、液ナイフ66からのマイクロバブル水66aが基板Wに供給される。すなわち、上側ノズル61および下側ノズル62は、マイクロバブル水66aが浸された基板Wに対して、マイクロバブル水61a、62aを供給することができる。そのため、上側ノズル61および下側ノズル62による洗浄処理が効率的に実行される。
【0049】
貯留槽20は、図1に示すように、その槽内にマイクロバブル発生部21が設けられており、マイクロバブル発生部21で発生したマイクロバブル水20aを貯留する。
【0050】
マイクロバブル発生部21は、窒素ガス供給源41からの窒素ガス(気相)と、純水供給源51から供給される純水(液相)と、を混合させることによって、マイクロバブルを発生させる。例えば、マイクロバブルの発生は、気液二相の流体を高速旋回させることで生ずる遠向心分離作用を利用して行われている。
【0051】
ここで、マイクロバブル水が、各ノズル61、62、66から吐出され、基板Wに衝突すると、基板Wの上面には、物理的な衝撃が付与される。そして、基板Wに付着した薬液、パーティクル、および有機物(例えば、レジスト残渣)等の汚染物質は、この物理的な衝撃によって、基板Wから遊離されて除去される。
【0052】
また、マイクロバブル水に含まれるマイクロバブルは、マイクロバブル水中において徐々に収縮し、その一部が消滅(いわゆる「圧壊」)する。このようにマイクロバブルが圧壊する場合、マイクロバブルは、その内部が断熱圧縮される。これにより、消滅直前にマイクロバブルが位置する微小領域(いわゆる「ホットスポット」)は、高温(例えば数千℃)、高圧(例えば数千気圧)となる。そのため、基板Wに付着した汚染物質は、ホットスポットから発散されるエネルギーの作用によって、基板Wから遊離されて除去される。
【0053】
なお、マイクロバブル水の衝突による物理的衝撃は、主として、サイズの大きな汚染物質に作用する。一方、マイクロバブルの圧壊により発散されるエネルギーは、主として、サイズの小さな汚染物質に作用する。
【0054】
また、マイクロバブルは、電気的吸着性を有している。さらに、マイクロバブルのサイズは、70μm以下と微小であり、マイクロバブル水の単位体積当たりの表面積(気液界面の面積)は、大きくなる。そのため、マイクロバブル水中を浮遊する汚染物質は、マイクロバブルによって効率よく吸着される。
【0055】
さらに、マイクロバブル水は、マイクロバブルの電気的吸着性により、基板Wに付着した汚染物質を効率的に除去することができる。図4は、純水による基板W上面側の洗浄処理を説明するための図である。図5は、マイクロバブル水による基板W上面側の洗浄処理を説明するための図である。
【0056】
ここで、純水による洗浄処理では、図4に示すように、基板Wの上面に純水81が供給されると、供給された純水81の一部は、その水流により基板W上に設けられたトレンチ溝85にも導入され、トレンチ溝85の内側に付着した薬液と置換される。
【0057】
しかし、トレンチ溝85の底部コーナ付近に付着する薬液82は、高水圧の純水81をトレンチ溝85に導入しなければ、純水81と置換することができない。これにより、基板Wに多量の純水を供給することが必要となり、基板処理装置1からは多量の排液が排出されることになる。その結果、純水のみによる洗浄処理では、多量の排液を処理可能な排液処理設備が必要となり、排液処理に関する設備コストが増大するという問題が生じていた。
【0058】
これに対して、マイクロバブル水83による洗浄処理では、マイクロバブル水83の水流とマイクロバブルの電気的吸着作用により、薬液82がマイクロバブル水83と置換される。すなわち、図5に示すように、マイクロバブル22は、トレンチ溝85底部付近の薬液82に付着して、薬液82とともに上昇する。その結果、トレンチ溝85底部付近の薬液82は、マイクロバブル水83によって容易に置換される。
【0059】
このように、本実施の形態の洗浄ユニット60では、(1)マイクロバブル水(処理液)による物理的衝撃、(2)ホットスポットから発散されるエネルギー、および、(3)マイクロバブルが有する電気的吸着性によって、基板Wに付着した汚染物質が除去される。そのため、洗浄ユニット60は、洗浄処理に要する時間を低減させることができ、洗浄処理に要するマイクロバブル水の液量(処理液量)を低減させることができる。その結果、排液処理設備に要する設備コストおよび排液処理コストを低減させることができる。
【0060】
また、マイクロバブル水によって基板Wに付着した汚染物質が除去されると、基板W表面の接触角が下がり、濡れ性が向上する。これにより、洗浄処理の後工程において供給される処理液を基板Wに均一に供給することが可能となる。そのため、後工程における基板処理の均一性を向上させることができる。
【0061】
図1に戻って、上側ノズル61は、ポンプ78が設けられた共通供給管71と、共通供給管71上の分岐点72aから分岐しており、バルブ76が設けられたマイクロバブル水供給管73とを介して、貯留槽20の下部付近と連通接続されている。また、下側ノズル62は、共通供給管71と、共通供給管71の分岐点71aから分岐しており、バルブ77が設けられたマイクロバブル水供給管74とを介して、貯留槽20と連通接続されちる。さらに、液ナイフ66は、共通供給管71と、分岐点72aから分岐しており、バルブ75が設けられたマイクロバブル水供給管72とを介して、貯留槽20と連通接続されている。
【0062】
したがって、バルブ76が開放されて、バルブ75、バルブ77が閉鎖されるとともに、ポンプ78が駆動させられることにより、貯留槽20に貯留されたマイクロバブル水20aは、共通供給管71側に供給される。そして、マイクロバブル水20aは、上側ノズル61から吐出される。
【0063】
また、バルブ77が開放されて、バルブ75、76が閉鎖されるとともに、ポンプ78が駆動させられることにより、貯留槽20のマイクロバブル水20aが下側ノズル62から吐出される。さらに、バルブ75が開放されて、バルブ76、77が閉鎖されるとともに、ポンプ78が駆動させられることにより、液ナイフ66からマイクロバブル水66aが吐出される。
【0064】
また、バルブ75〜77のうちのいずれか2つ以上が開放されることにより、対応する2つ以上のノズル61、62、66から貯留槽20に貯留されたマイクロバブル水20aが吐出されてもよい。
【0065】
このように、本実施の形態において、複数の上側ノズル61、複数の下側ノズル62、および液ナイフ66は、マイクロバブル水(処理液)を供給して、マイクロバブル水による洗浄処理を可能とする処理液供給部として使用される。そして、基板Wに向けて吐出されたマイクロバブル水は、排出口63と、バルブ65が設けられた排出管64とを介して、洗浄ユニット60の処理室60aから排液ドレイン91側に排出される。
【0066】
ここで、上述のように、マイクロバブル発生部21は、窒素ガスと純水とを混合させることによってマイクロバブルを発生させている。すなわち、このマイクロバブルは、不活性ガスの微小気泡であり、マイクロバブルと純水とを含む処理液中にマイクロバブル(窒素ガス)が溶解したとしても、処理液の化学的安定性は高い。
【0067】
これにより、薬液ユニット10の複数の吐出ノズル11から吐出された薬液11aにマイクロバブル水が混入した場合であっても、薬液を劣化させることがない。そのため、薬液処理に悪影響を与えることなく、洗浄処理に使用される処理液の量を低減させ、洗浄処理後の基板の清浄性を向上させることができる。
【0068】
<3.本実施の形態の基板処理装置の利点>
以上のように、本実施の形態の基板処理装置1は、各ノズル61、62、66から吐出されたマイクロバブル水(処理液)を薬液処理後の基板Wに供給することができる。これにより、薬液処理において基板に付着した薬液をマイクロバブル水により迅速に置換することができる。そのため、洗浄処理に使用される処理液の量を低減させることができる。
【0069】
また、マイクロバブル水によって、薬液処理後の基板Wに付着している汚染物質を基板Wから良好に除去することができる。そのため、洗浄処理後の基板Wの清浄性を向上させることができる。
【0070】
<4.変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。
【0071】
(1)本実施の形態において、マイクロバブル発生部21は純水と窒素ガスとを混合させることによってマイクロバブルを発生させるものとして説明したが、これに限定されない。例えば、マイクロバブル発生部21で混合される気体は、炭酸ガスであってもよい。
【0072】
この場合において、薬液ユニット10の複数の吐出ノズル11から有機アミンを含む薬液が供給されると、次のような利点が生ずる。すなわち、有機アミンが純水と接触すると強アルカリが生成される。一方、マイクロバブル水には炭酸ガスが溶解しており、マイクロバブル水は酸性を有する。
【0073】
これにより、薬液処理後の基板Wにマイクロバブル水が供給されると、薬液は酸性のマイクロバブル水によって中和される。そのため、有機アミンに基づく強アルカリによって基板Wが腐食されることを防止しつつ、マイクロバブル水による洗浄処理を良好に実行することができる。
【0074】
(2)また、マイクロバブル発生部21で混合される気体は、酸化力を有する気体、例えば、酸素(O2)を含むガス(エア、空気)、酸素ガス、またはオゾンガスであってもよい。この場合において、剥離液や現像液が薬液として供給されると、次のような利点が生ずる。
【0075】
すなわち、薬液処理(剥離処理または現像処理)後の基板Wにはレジスト残渣等の有機物が付着している。この場合において、基板Wに付着した有機物(例えば、炭素C、水素H等によって構成されている)やマイクロバブル水中の有機物は、酸化力を有する気体(酸素を含むガス、酸素ガス、またはオゾンガス等)によって形成されたマイクロバブルの酸化力により、例えばCO2とH2Oとに分解されて除去される。そのため、洗浄処理後の基板Wの清浄性をさらに向上させることができる。
【0076】
(3)また、本実施の形態の薬液ユニット10において、薬液処理に使用された使用済みの薬液は、排液ドレイン91側に排出されているが、これに限定されるものでない。例えば、不図示の循環機構をさらに追加して、排出口13から排液された薬液を再度吐出ノズル11から吐出するようにしてもよい。これにより、薬液の使用量を低減させることができる。
【0077】
(4)さらに、本実施の形態において、マイクロバブル発生部21は、貯留槽20の槽内に設けられているものとして説明したが、マイクロバブル発生部21の取付位置はこれに限定されない。
【0078】
図6は、本発明の実施の形態の他の例である基板処理装置100の全体構成を示す図である。基板処理装置100は、マイクロバブル発生部の取付位置を除き、基板処理装置1と同様なハードウェア構成を有している。
【0079】
マイクロバブル発生部121は、図6に示すように、各ノズル61、62、66側にマイクロバブル水を供給する共通供給管71(第1供給管)に設けられている。また、マイクロバブル発生部121は、バルブ45が設けられたガス供給管42を介して、窒素ガス供給源41と連通接続されている。
【0080】
したがって、マイクロバブル発生部121は、共通供給管71を流れる純水と、窒素ガス供給源41からの窒素ガスと、を混合させることによって、マイクロバブルを発生させることができる。これにより、基板処理装置100は、マイクロバブル発生部121以外に特別な装置を用いることなく、マイクロバブル水(処理液)を基板Wに供給することができる。そのため、基板処理装置100の製造コストおよび装置のフットプリントを低減させることができる。
【0081】
また、基板W上でのマイクロバブル径は、共通供給管71上におけるマイクロバブル発生部121の取付位置(すなわち、各ノズル61、62、66からマイクロバブル発生部121までの距離)に応じて変化する。すなわち、マイクロバブル発生部121の取付位置が調整されると、基板W上でのマイクロバブル径が制御される。
【0082】
したがって、マイクロバブル径は、マイクロバブル発生部121が共通供給管71の所定位置に取り付けられることによって、良好な洗浄処理において要求される範囲内となるように制御される。これにより、適切な径サイズのマイクロバブルを含むマイクロバブル水を基板Wに供給することができる。そのため、洗浄処理をさらに良好に実行することが可能となる。なお、マイクロバブル発生部121が共通供給管71に取り付けられる所定位置は、例えば、実験によって求められる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の実施の形態における基板処理装置の全体構成の一例を示す図である。
【図2】上側ノズルから吐出されるマイクロバブル水(処理液)の吐出状況を説明するための図である。
【図3】上側ノズルから吐出されるマイクロバブル水(処理液)の吐出状況を説明するための図である。
【図4】純水による洗浄処理を説明するための図である。
【図5】マイクロバブル水による洗浄処理を説明するための図である。
【図6】本発明の実施の形態における基板処理装置の全体構成の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0084】
1、100 基板処理装置
5 搬送ローラ(搬送部)
10 薬液ユニット
11 吐出ノズル
11a 薬液
20 貯留槽
21、121 マイクロバブル発生部
22 マイクロバブル
31 薬液供給源
41 窒素ガス供給源
51 純水供給源
60 洗浄ユニット
61 上側ノズル
61a、62a、66a マイクロバブル水
61b 吐出口
62 下側ノズル
66 液ナイフ
71 共通供給管(第1供給管)
AR1 搬送方向
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に薬液を供給して薬液処理を可能とする薬液供給部と、
マイクロバブルを発生させるマイクロバブル発生部と、
前記薬液供給部により前記薬液が供給された前記基板に前記マイクロバブル発生部によって発生させられたマイクロバブルを含む処理液を供給して、前記処理液による洗浄処理を可能とする処理液供給部と、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置において、
前記処理液供給部から供給される前記処理液は、純水と不活性ガスとを前記マイクロバブル発生部で混合させることによって発生したマイクロバブルを含むことを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の基板処理装置において、
前記薬液供給部は、有機アミンを含む薬液を供給し、
前記処理液供給部から供給される前記処理液は、純水と炭酸ガスとを前記マイクロバブル発生部で混合させることによって発生したマイクロバブルを含むことを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の基板処理装置において、
前記薬液供給部から供給される前記薬液は、前記基板上に形成されており、エッチング処理を経たレジスト膜を剥離する剥離液であり、
前記処理液供給部から供給される前記処理液は、純水と酸化力を有する気体とを前記マイクロバブル発生部で混合させることによって発生したマイクロバブルを含むことを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載の基板処理装置において、
前記薬液供給部から供給される前記薬液は、前記基板上に形成されており、露光処理を経たレジスト膜を現像する現像液であり、
前記処理液供給部から供給される前記処理液は、純水と酸化力を有する気体とを前記マイクロバブル発生部で混合させることによって発生したマイクロバブルを含むことを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の基板処理装置において、
前記酸化力を有する気体は、酸素を含むガスであることを特徴とする基板処理装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の基板処理装置において、
前記酸化力を有する気体は、オゾンガスであることを特徴とする基板処理装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の基板処理装置において、
前記処理液供給部は、カーテン状とされた前記処理液を前記基板に向けて吐出し、搬送部による前記基板の搬送方向と略垂直な第1方向に沿って、前記処理液を前記基板に着液させることを特徴とする基板処理装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の基板処理装置において、
前記処理液供給部は、
搬送部による前記基板の搬送方向と略垂直な第1方向に沿って配置された複数のノズルを有し、
各ノズルは、
前記第1方向に伸びる吐出口、
を有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の基板処理装置において、
前記処理液供給部は、貯留槽内で発生したマイクロバブルを前記基板に供給することを特徴とする基板処理装置。
【請求項11】
請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の基板処理装置において、
前記処理液供給部と連通接続されており、前記処理液供給部側に前記処理液を供給する第1供給管、
をさらに備え、
前記マイクロバブル発生部は、前記第1供給管に設けられていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項12】
請求項11に記載の基板処理装置において、
前記マイクロバブル発生部は、マイクロバブル径が良好な洗浄処理において要求される範囲となるように、前記第1供給管の所定位置に取り付けられていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項13】
(a) 基板に薬液を供給する工程と、
(b) マイクロバブル発生部によって発生させられたマイクロバブルを含む処理液を、前記工程(a)により前記薬液が供給された前記基板に供給する工程と、
を備えることを特徴とする基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−93577(P2008−93577A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−278964(P2006−278964)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】