説明

基板処理装置および搬送ローラ

【課題】 基板を均一に処理することが可能な基板処理装置および搬送ローラを提供する。
【解決手段】 搬送ローラ1は、駆動軸3と、複数のローラ部2とから成る。そして、複数のローラ部2は、各々、同一形状を成す3個のローラ部材2a、2b、2cから構成される。これらのローラ部材2a、2b、2cには、その表面が駆動軸3を中心とする円上に配置されたガラス基板との当接領域と、その表面が円より駆動軸3の軸心側に配置されたガラス基板との非当接領域とが形成されている。この当接領域は、円の円周全域の1/3をわずかに越えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、LCD(液晶表示装置)やPDP(プラズマディスプレイ)等のFPD(フラットパネルディスプレイ)用ガラス基板、有機EL用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、太陽電池パネル用基板、光ディスク用基板等の基板を、フッ酸等の処理液により処理する基板処理装置、および、この基板処理装置に使用される搬送ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、LCDの製造時には、アモルファスシリコン層をガラス基板上に形成し、このシリコン層表面の自然酸化膜をエッチング処理し、洗浄および乾燥処理をした後に、レーザーを照射してアモルファスシリコン層を溶融再結晶化している。このとき、例えば、特許文献1に記載されたように、エッチング工程後の洗浄工程においては、基板を低速回転させながら洗浄液を供給し、基板全面にその表面張力で洗浄液の液膜を形成した状態で洗浄処理を施し、しかる後、基板を高速回転させて洗浄液を除去する構成が採用されている。
【0003】
しかしながら、近年の基板の大型化により、特許文献1に記載された発明のように、基板を回転させながら洗浄処理を行うことは困難となっている。このため、基板を水平方向に搬送しながら、基板の表面に対して洗浄液を供給して、基板を洗浄処理することが提案されている。
【0004】
すなわち、特許文献2には、処理工程が洗浄工程ではなく剥離工程ではあるが、基板を複数の搬送ローラにより水平方向に向けて搬送しながら、基板の表面と対向配置されたスプレーノズルから基板の表面に剥離液を供給することにより、基板を剥離液により処理する基板処理装置が開示されている。
【0005】
図9は、このような従来の基板処理装置における搬送機構を模式的に示す説明図である。
【0006】
この搬送機構においては、駆動軸53と、この駆動軸53に固定されたローラ部52とから成る搬送ローラ51によりガラス基板100の下面を支持するとともに、搬送ローラ51を回転駆動することによりガラス基板100を水平方向に移動させる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−17461号公報
【特許文献2】特開2004−146414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような搬送機構を有する従来の基板処理装置においては、ガラス基板100に供給された処理液がガラス基板100の裏面側に回り込み、搬送ローラ51におけるローラ部52の表面とガラス基板100の裏面との間に浸入する場合がある。このような場合においては、搬送ローラ51の回転によるガラス基板100の移動に伴ってローラ部52の表面とガラス基板100の裏面との間に浸入した処理液も移動し、この処理液は図9において符号101で示すように、ガラス基板100の裏面側に筋状に残存することになる。
【0009】
このガラス基板100の処理工程が、例えば、シリコン酸化膜をフッ酸で洗浄処理する洗浄処理工程の場合においては、このように筋状に残存した処理液によりガラス基板100の裏面側がエッチングされるという問題がある。このような現象が発生した場合においては、基板を均一に洗浄処理することができない。さらに、その他の処理液を使用した場合においも、このような筋状の処理液により、処理を均一に行い得ないという問題が生ずる。このような問題は、搬送ローラ51によりガラス基板100を処理室内で一定時間だけ往復移動させて処理を行う場合において、特に、問題となる。
【0010】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、基板を均一に処理することが可能な基板処理装置および搬送ローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、基板を搬送ローラにより水平方向に搬送するとともに、当該基板に対して処理液を供給して基板を処理する基板処理装置において、前記搬送ローラは、駆動軸と、前記駆動軸の軸心方向に所定の厚さを有するとともに、前記駆動軸の軸心方向から観察した場合に、その表面が前記駆動軸を中心とする円上に配置された基板との当接領域と、その表面が前記円より前記駆動軸の軸心側に配置された基板との非当接領域とが形成され、前記駆動軸に固定されることにより前記駆動軸の軸心を中心として回転する、前記駆動軸の軸心方向に対して互いに近接配置された複数個のローラ部材とを備えることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記複数個のローラ部材は、前記複数個のローラ部材における各当接領域が全体として前記円の円周全域に配置されるように、互いに当接領域を補完する形状を有する。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記円の円周全域の1/3を越える当接領域と、前記当接領域以外の非当接領域とが形成された3個のローラ部材を、前記駆動軸の軸心に対して均等な角度位置で固定した。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記円の円周全域の1/4を越える当接領域と、前記当接領域以外の非当接領域とが形成された4個のローラ部材を、前記駆動軸の軸心に対して均等な角度位置で固定した。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項2に記載の基板処理装置において、前記円の円周全域の1/2を越える当接領域と、前記当接領域以外の非当接領域とが形成された2個のローラ部材を、前記駆動軸の軸心に対して均等な角度位置で固定した。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の発明において、前記処理液はフッ酸である基板処理装置。
【0017】
請求項7に記載の発明は、基板を水平方向に搬送するとともに、当該基板に対して処理液を供給して基板を処理する基板処理装置に使用される搬送ローラであって、駆動軸と、前記駆動軸の軸心方向に所定の厚さを有するとともに、nを2以上の整数としたときに、前記駆動軸の軸心方向から観察した場合に、その表面が前記駆動軸を中心とする円上に配置された前記円の円周全域の1/nを越える基板との当接領域と、その表面が前記円より前記駆動軸の軸心側に配置された前記当接領域以外の基板との非当接領域とが形成されたn個のローラ部材を、前記駆動軸の軸心に対して均等な角度位置で前記駆動軸の軸心方向に対して互いに近接配置した状態で、前記駆動軸に固定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1から請求項7に記載の発明によれば、基板の裏面側へ回り込んだ処理液が筋状に残存する現象を防止して、基板を均一に処理することが可能となる。
【0019】
請求項2から請求項5に記載の発明によれば、複数個のローラ部材が互いに当接領域を補完することから、基板を滑らかに搬送することが可能となる。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、基板の裏面が筋状にエッチングされる現象を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明に係る基板処理措置の概要図である。
【図2】ガラス基板100を搬送ローラ1により搬送する状態を示す斜視図である。
【図3】この発明の第1実施形態に係る搬送ローラ1の斜視図である。
【図4】この発明の第1実施形態に係る搬送ローラ1を、駆動軸3の軸心方向から観察した状態を模式的に示す説明図である。
【図5】搬送ローラ1における各ローラ部材2a、2b、2cの配置を示す模式図である。
【図6】この発明の第2実施形態に係る搬送ローラ1を、駆動軸3の軸心方向から観察した状態を模式的に示す説明図である。
【図7】この発明の第3実施形態に係る搬送ローラ1を、駆動軸3の軸心方向から観察した状態を模式的に示す説明図である。
【図8】この発明のさらに他の実施形態に係るローラ部材2jおよび2kを駆動軸3とともに示す説明図である。
【図9】従来の基板処理装置における搬送機構を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、この発明に係る基板処理装置の概要図である。また、図2は、ガラス基板100を搬送ローラ1により搬送する状態を示す斜視図である。
【0023】
この基板洗浄装置は、アモルファスシリコン層がその表面に形成されたガラス基板100に対してレーザーアニールを行う前に、アモルファスシリコン層表面に形成された酸化膜の洗浄処理を行うためのものである。この洗浄処理に使用される処理液(洗浄液)は、フッ酸(フッ化水素水/HF)が使用される。
【0024】
この基板処理装置は、ガラス基板100を水平方向に搬送する複数の搬送ローラ1と、処理液を貯留する貯留槽13と、この貯留槽13に貯留された処理液を、管路16を介して搬送ローラ1により搬送されるガラス基板100の表面に供給するためのスプレーノズル11と、管路16に配設されたポンプ14およびフィルター15と、スプレーノズル11からガラス基板100に供給された処理液を貯留槽13に回収する回収槽12とを備える。なお、搬送ローラ1は、後述する複数のローラ部2および駆動軸3から構成されている。
【0025】
複数の搬送ローラ1は、矩形状のガラス基板100を、その下面を支持した状態で図1における左右方向に搬送する構成となっている。このとき、搬送ローラ1は、ガラス基板100の主面を水平方向を向けた状態で搬送する。但し、ガラス基板100の主面が水平方向に対し交差するように、ガラス基板100の主面を傾斜させた状態で支持して搬送することにより、ガラス基板100の表面における処理液の置換性を向上させるようにしてもよい。
【0026】
貯留槽13内に貯留された処理液は、管路16中に配設されたポンプ14の作用により、フィルター15および管路16を介して、搬送ローラ1により搬送されるガラス基板100の上方に配設されたスプレーノズル11に送液され、このスプレーノズル11から搬送ローラ1により搬送されるガラス基板100の表面の全域に供給される。この状態において、ガラス基板100は、複数の搬送ローラ1の作用により、回収槽12の上方において往復移動され、ガラス基板100におけるアモルファスシリコン層の表面に形成された酸化膜が洗浄除去される。
【0027】
そして、ガラス基板100から流下した処理液は、回収槽12を介して、貯留槽13に回収され、再度、スプレーノズル11に送液される。なお、ガラス基板100の表面のみに処理液を供給するかわりに、ガラス基板100の両面に処理液を供給するようにしてもよい。
【0028】
次に、この発明の特徴部分である搬送ローラ1の構成について説明する。図3は、この発明の第1実施形態に係る搬送ローラ1の斜視図である。また、図4は、この発明の第1実施形態に係る搬送ローラ1を、駆動軸3の軸心方向から観察した状態を模式的に示す説明図である。
【0029】
これらの図に示すように、搬送ローラ1は、駆動軸3と、複数のローラ部2とから成る。そして、複数のローラ部2は、各々、同一形状を成す3個のローラ部材2a、2b、2cから構成される。各ローラ部材2a、2b、2cは、駆動軸3の軸心方向にガラス基板100を支持するのに必要な所定の厚さを有する。そして、3個のローラ部材2a、2b、2cから成るローラ部2は、駆動軸3に対して一定ピッチで配設されている。
【0030】
また、これらのローラ部材2a、2b、2cには、図4に示すように駆動軸3の軸心方向から観察した場合に、その表面が、図4において仮想線で示す駆動軸3を中心とする円S上に配置されたガラス基板100との当接領域21と、その表面が円Sより駆動軸3の軸心側に配置されたガラス基板100との非当接領域22とが形成されている。この当接領域21は、図4において仮想線で示す円Sの円周全域の1/3(三分の一)をわずかに越えている。このため、非当接領域22は、その円Sの円周全域の2/3(三分の二)よりわずかに小さな領域に対応して配置されることになる。
【0031】
そして、これらのローラ部材2a、2b、2cは、駆動軸3の軸心に対して均等な角度位置となる状態、すなわち互いに120度だけ位相がずれた状態で、駆動軸3に対して固定されている。このため、これらのローラ部材2a、2b、2cは、各ローラ部材2a、2b、2cの各当接領域21が全体として図4において仮想線で示す円Sの円周全域に配置されるように、互いに当接領域21を補完する形状を有することになる。そして、これらのローラ部材2a、2b、2cは、駆動軸3の軸心を中心として、駆動軸3の回転に伴って回転する。
【0032】
このような構成を有する搬送ローラ1によりガラス基板100を搬送した場合においては、ローラ部2を構成する各ローラ部材2a、2b、2cの当接領域21が順次ガラス基板100の裏面に当接し、ガラス基板100を搬送する。このとき、各ローラ部材2a、2b、2cにおける当接領域21は、円Sの円周全域の1/3をわずかに越えており、各ローラ部材2a、2b、2cの各当接領域21が全体として円Sの円周全域に配置されるように、互いに当接領域21を補完する形状を有することから、ガラス基板100に振動等を与えることなく、ガラス基板100を水平方向に安定して搬送することが可能となる。
【0033】
そして、ローラ部2は、ガラス基板100の裏面を、3個のローラ部材2a、2b、2cにより順次支持して搬送する構成であることから、ガラス基板100の裏面とローラ部2を構成する3個のローラ部材2a、2b、2cとの間に処理液が浸入したとしても、それらの処理液は速やかに滴下し、図9に示すような筋状の処理液101がガラス基板100の裏面に残存する現象を大幅に低減することが可能となる。従って、筋状に残存した処理液101によりガラス基板100の裏面側がエッチングされるという問題が生ずることはない。
【0034】
なお、この搬送ローラ1においては、ローラ部2を構成する各ローラ部材2a、2b、2cの当接領域21が順次ガラス基板100の裏面に当接してガラス基板100を搬送する構成であることから、ガラス基板100の裏面におけるガラス基板100の搬送方向に伸びる筋状の領域が常にローラ部2と当接する場合に比べ、ガラス基板100とローラ部2との当接によるガラス基板100の温度変化の影響を小さくすることができる。このため、ガラス基板100をより均一に処理することが可能となる。
【0035】
図5は、搬送ローラ1における各ローラ部材2a、2b、2cの配置を示す模式図である。
【0036】
上述した実施形態においては、図5(a)に示すように、ローラ部2を構成する3個のローラ部材2a、2b、2cを、互いに当接させた状態で配置している。しかしながら、図5(b)に示すように、3個のローラ部材2a、2b、2cを等間隔に離間させた状態で配置してもよい。この明細書における「近接配置」とは、互いに当接させた状態のみならず、小さな距離だけ離間させた場合をも含む概念である。
【0037】
次に、この発明に係る搬送ローラ1の他の実施形態について説明する。図6は、この発明の第2実施形態に係る搬送ローラ1を、駆動軸3の軸心方向から観察した状態を模式的に示す説明図である。
【0038】
上述した第1実施形態においては、当接領域21が円Sの円周全域の1/3をわずかに越える3個のローラ部材2a、2b、2cによりローラ部2を構成している。これに対して、この第2実施形態においては、当接領域21が円Sの円周全域の1/4をわずかに越える4個のローラ部材2d、2e、2f、2gによりローラ部2を構成している。
【0039】
すなわち、これらのローラ部材2d、2e、2f、2gには、図6に示すように駆動軸3の軸心方向から観察した場合に、その表面が、図6において仮想線で示す駆動軸3を中心とする円S上に配置されたガラス基板100との当接領域21と、その表面が円Sより駆動軸3の軸心側に配置されたガラス基板100との非当接領域22とが形成されている。この当接領域21は、図6において仮想線で示す円Sの円周全域の1/4(四分の一)をわずかに越えている、。このため、非当接領域22は、その円Sの円周全域の3/4(四分の三)よりわずかに小さな領域に対応して配置されることになる。
【0040】
そして、これらのローラ部材2d、2e、2f、2gは、駆動軸3の軸心に対して均等な角度位置となる状態、すなわち互いに90度だけ位相がずれた状態で、駆動軸3に対して固定されている。このため、これらのローラ部材2d、2e、2f、2gは、各ローラ部材2d、2e、2f、2gの各当接領域21が全体として図6において仮想線で示す円Sの円周全域に配置されるように、互いに当接領域21を補完する形状を有することになる。そして、これらのローラ部材2d、2e、2f、2gは、駆動軸3の軸心を中心として、駆動軸3の回転に伴って回転する。
【0041】
このような構成を有する搬送ローラ1によりガラス基板100を搬送した場合においても、ローラ部2を構成する各ローラ部材2d、2e、2f、2gの当接領域21が順次ガラス基板100の裏面に当接し、ガラス基板100を搬送する。このとき、各ローラ部材2d、2e、2f、2gにおける当接領域21は、円Sの円周全域の1/4をわずかに越えており、各ローラ部材2d、2e、2f、2gの各当接領域21が全体として円Sの円周全域に配置されるように、互いに当接領域21を補完する形状を有することから、ガラス基板100に振動等を与えることなく、ガラス基板100を水平方向に安定して搬送しながら、ガラス基板100を均一に処理することが可能となる。
【0042】
次に、この発明に係る搬送ローラ1のさらに他の実施形態について説明する。図7は、この発明の第3実施形態に係る搬送ローラ1を、駆動軸3の軸心方向から観察した状態を模式的に示す説明図である。
【0043】
この第3実施形態においては、当接領域21が円Sの円周全域の1/2をわずかに越える2個のローラ部材2h、2iによりローラ部2を構成している。すなわち、これらのローラ部材2h、2iには、図7に示すように駆動軸3の軸心方向から観察した場合に、その表面が、図7において仮想線で示す駆動軸3を中心とする円S上に配置されたガラス基板100との当接領域21と、その表面が円Sより駆動軸3の軸心側に配置されたガラス基板100との非当接領域22とが形成されている。この当接領域21は、図7において仮想線で示す円Sの円周全域の1/2(二分の一)をわずかに越えている。このため、非当接領域22は、その円Sの円周全域の1/2(二分の一)よりわずかに小さな領域に対応して配置されることになる。
【0044】
そして、これらのローラ部材2h、2iは、駆動軸3の軸心に対して均等な角度位置となる状態、すなわち互いに180度だけ位相がずれた状態で、駆動軸3に対して固定されている。このため、これらのローラ部材2h、2iは、各ローラ部材2h、2iの各当接領域21が2つで図7において仮想線で示す円Sの円周全域に配置されるように、互いに当接領域21を補完する形状を有することになる。そして、これらのローラ部材2h、2iは、駆動軸3の軸心を中心として、駆動軸3の回転に伴って回転する。
【0045】
このような構成を有する搬送ローラ1によりガラス基板100を搬送した場合においても、ローラ部2を構成する各ローラ部材2h、2iの当接領域21が順次ガラス基板100の裏面に当接し、ガラス基板100を搬送する。このとき、各ローラ部材2h、2iにおける当接領域21は、円Sの円周全域の1/2をわずかに越えており、各ローラ部材2h、2iの各当接領域21が2つで円Sの円周全域に配置されるように、互いに当接領域21を補完する形状を有することから、ガラス基板100に振動等を与えることなく、ガラス基板100を水平方向に安定して搬送しながら、ガラス基板100を均一に処理することが可能となる。
【0046】
上述した実施形態からも明らかなように、ローラ部材2a、2b、2c、2d、2e、2f、2g、2h、2iとしては、nを2以上の整数としたときに、駆動軸3を中心とする円S上に配置された円Sの円周全域の1/nを越えるガラス基板100との当接領域21と、その表面が円Sより駆動軸3の軸心側に配置されたガラス基板100との非当接領域22とが形成されたものをn個使用することにより、ガラス基板100を安定して搬送しながら、ガラス基板100を均一に処理することが可能となる。また、各ローラ部材2a、2b、2c、2d、2e、2f、2g、2h、2iを同一形状とすることにより、各ローラ部材2a、2b、2c、2d、2e、2f、2g、2h、2iの製造コストを低減することが可能となる。
【0047】
このとき、処理液の滴下作用とガラス基板100の安定的な搬送作用を得ながら、各ローラ部材2a、2b、2c、2d、2e、2f、2g、2h、2iの製造コストを低減するためには、上述したように、このnを2乃至4程度とすることが好ましい。
【0048】
図8は、この発明のさらに他の実施形態に係るローラ部材2jおよび2kを駆動軸3とともに示す説明図である。
【0049】
上述した第1乃至第3実施形態においては、ガラス基板100との当接領域21と非当接領域22とを各々1個有するローラ部材2a、2b、2c、2d、2e、2f、2g、2h、2iを使用している。しかしながら、この実施形態に係るローラ部材2jおよび2kにおいては、ガラス基板100との当接領域21と非当接領域22とを各々2個有する構成となっている。このようなローラ部材2jおよび2kを使用した場合においても、各ローラ部材2j、2kの各当接領域21が全体として円Sの円周全域に配置されるように、互いに当接領域21を補完する形状を有している場合には、ガラス基板100に振動等を与えることなく、ガラス基板100を水平方向に安定して搬送しながら、ガラス基板100を均一に処理することが可能となる。
【0050】
なお、上述した実施形態においては、複数個のローラ部材2a、2b、2c、2d、2e、2f、2g、2h、2i、2j、2kにおけるいずれかの当接領域21が円Sの円周全域に配置されるような、互いに当接領域を補完する形状を有するローラ部材2a、2b、2c、2d、2e、2f、2g、2h、2i、2j、2kを使用している。しかしながら、ローラ部2を構成するローラ部材の数を比較的多数とすることによりガラス基板100の搬送安定性を向上させた場合には、各ローラ部材のそれぞれの当接領域21が全体として、必ずしも円Sの円周全域に配置される必要はない。
【0051】
また、上述した実施形態においては、ガラス基板100に対してスプレーノズル11から処理液を供給する構成の基板処理装置にこの発明を適用しているが、貯留された処理液中にガラス基板100を浸漬することによりガラス基板100に処理液を供給するディップ処理式の基板処理装置や、ガラス基板100に処理液を盛るパドル処理式の基板処理装置にこの発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 搬送ローラ
2 ローラ部
2a ローラ部材
2b ローラ部材
2c ローラ部材
2d ローラ部材
2e ローラ部材
2f ローラ部材
2g ローラ部材
2h ローラ部材
2i ローラ部材
2j ローラ部材
2k ローラ部材
3 駆動軸
11 スプレーノズル
12 回収槽
13 貯留槽
14 ポンプ
15 フィルター
16 管路
21 当接領域
22 非当接領域
100 ガラス基板
S 円


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を搬送ローラにより水平方向に搬送するとともに、当該基板に対して処理液を供給して基板を処理する基板処理装置において、
前記搬送ローラは、
駆動軸と、
前記駆動軸の軸心方向に所定の厚さを有するとともに、前記駆動軸の軸心方向から観察した場合に、その表面が前記駆動軸を中心とする円上に配置された基板との当接領域と、その表面が前記円より前記駆動軸の軸心側に配置された基板との非当接領域とが形成され、前記駆動軸に固定されることにより前記駆動軸の軸心を中心として回転する、前記駆動軸の軸心方向に対して互いに近接配置された複数個のローラ部材と、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置において、
前記複数個のローラ部材は、
前記複数個のローラ部材における各当接領域が全体として前記円の円周全域に配置されるように、互いに当接領域を補完する形状を有する基板処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理装置において、
前記円の円周全域の1/3を越える当接領域と、前記当接領域以外の非当接領域とが形成された3個のローラ部材を、前記駆動軸の軸心に対して均等な角度位置で固定した基板処理装置。
【請求項4】
請求項2に記載の基板処理装置において、
前記円の円周全域の1/4を越える当接領域と、前記当接領域以外の非当接領域とが形成された4個のローラ部材を、前記駆動軸の軸心に対して均等な角度位置で固定した基板処理装置。
【請求項5】
請求項2に記載の基板処理装置において、
前記円の円周全域の1/2を越える当接領域と、前記当接領域以外の非当接領域とが形成された2個のローラ部材を、前記駆動軸の軸心に対して均等な角度位置で固定した基板処理装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の基板処理装置において、
前記処理液はフッ酸である基板処理装置。
【請求項7】
基板を水平方向に搬送するとともに、当該基板に対して処理液を供給して基板を処理する基板処理装置に使用される搬送ローラであって、
駆動軸と、
前記駆動軸の軸心方向に所定の厚さを有するとともに、nを2以上の整数としたときに、前記駆動軸の軸心方向から観察した場合に、その表面が前記駆動軸を中心とする円上に配置された前記円の円周全域の1/nを越える基板との当接領域と、その表面が前記円より前記駆動軸の軸心側に配置された前記当接領域以外の基板との非当接領域とが形成されたn個のローラ部材を、前記駆動軸の軸心に対して均等な角度位置で前記駆動軸の軸心方向に対して互いに近接配置した状態で、前記駆動軸に固定したことを特徴とする搬送ローラ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−204714(P2012−204714A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69258(P2011−69258)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】