説明

基板処理装置及び温度調節方法

【課題】設置スペースが少なくて済み、装置構成を簡素化することができる温度調節手段を備えた基板処理装置を提供する。
【解決手段】基板にプラズマ処理を施すチャンバ11と、チャンバ11内で、基板を載置するサセプタ12と、サセプタ12と処理空間Sを隔てて対向するように設けられたシャワーヘッド14と、処理空間Sに高周波電力を印加してプラズマを発生させる高周波電源15と、温度調節面としてのサセプタ12の表面12aの裏面12bに水の濡れ面を形成する水吹きつけ装置16と、水の濡れ面を周囲の雰囲気から隔離する蒸発室17と、蒸発室17内の圧力を調整する圧力調整装置18、19とを備えた基板処理装置において、圧力調整装置18、19によって蒸発室17内の圧力を調整して濡れ面を形成する水を蒸発させ、水の蒸発潜熱を利用してサセプタ12の表面12aの温度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理室内の構成部材の表面温度を調節する温度調節手段を備えた基板処理装置及び該基板処理装置の処理室内構成部材の表面温度を調節する温度調節方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハをはじめとする各種基板に所定の処理を施す基板処理装置は、例えば、真空排気可能な処理室と、処理室内で基板を載置する基板載置台(サセプタ)と、基板載置台とは処理空間を隔てて対向配置されたシャワーヘッドとを備え、サセプタ及びシャワーヘッドのいずれかに印加される高周波電力によって処理ガスのプラズマを発生させ、発生したプラズマによって基板に対してエッチング、成膜等のプラズマ処理を施すものである。
【0003】
このような基板処理装置において、基板及び該基板を載置するサセプタの温度制御は、例えば、以下のように行われていた。すなわち、サセプタの内部に、例えば、円周方向に延在する環状の冷却媒体流路を設け、この冷却媒体流路に、例えばチラーユニットから冷却媒体用配管を介して低温の冷却媒体を循環供給させ、循環する冷却媒体によって冷却されたサセプタが、例えば静電チャック(ESC)を介して基板を冷却し、これによって、プラズマの入熱等を処理していた。
【0004】
また、最近では、冷却媒体流路を循環させる冷却媒体を、該冷却媒体の気化熱(以下、「蒸発潜熱」という。)を利用して冷却する基板処理装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−079539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、冷却媒体を循環させる温度調節方法を採用した基板処理装置においては、プラズマ等による入熱量が大きい場合には、冷却媒体温度をより低温化し、かつ循環量を増大させなければならず、冷却能力の高い温度調節手段を設置するための広い設置スペースが必要となるだけでなく、サセプタ内部の下部スペースが限られているために、基板処理装置によっては、温度調節手段を設置できない場合もあった。
【0007】
また、冷却媒体の蒸発潜熱を利用する冷却手段を備えた基板処理装置においては、冷却手段専用の循環ライン、圧縮機、凝縮器、膨張弁等が必要となり装置構成が複雑になるという問題があった。
【0008】
本発明の課題は、設置スペースが少なくて済み、装置構成を簡素化することができる温度調節手段を備えた基板処理装置及び該基板処理装置における処理室内構成部材の温度調節方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1記載の基板処理装置は、基板に所定の処理を施す真空排気可能な処理室と、前記処理室内の構成部材における温度調節面の裏面に冷却媒体の濡れ面を形成する濡れ面形成装置と、前記濡れ面を周囲の雰囲気から隔離する蒸発室と、該蒸発室内の圧力を調整する圧力調整装置とを備え、前記圧力調整装置によって前記蒸発室内の圧力を調整して前記濡れ面を形成する冷媒媒体を蒸発させ、該冷却媒体の蒸発潜熱によって前記温度調節面の温度を制御することを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の基板処理装置は、請求項1記載の基板処理装置において、前記温度調節面は、前記構成部材の表面において複数箇所に存在し、前記温度調節面毎に前記濡れ面形成装置、蒸発室、及び圧力調整装置を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の基板処理装置は、請求項1又は2記載の基板処理装置において、前記圧力調整装置は、前記蒸発室内の圧力を前記冷却媒体の飽和蒸気圧よりも低い圧力に調整することを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の基板処理装置は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の基板処理装置において、前記蒸発室には前記冷却媒体が蒸発した蒸気を蒸発室外に排出する蒸気排出流路が連結されていることを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の基板処理装置は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の基板処理装置において、前記濡れ面形成装置は、前記温度調節面の裏面に前記冷却媒体を吹き付けて前記濡れ面を形成する冷却媒体吹き付け装置であることを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の基板処理装置は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の基板処理装置において、前記濡れ面形成装置は、前記温度調節面の裏面の少なくとも一部を前記冷却媒体に浸漬させる冷却媒体槽を有し、前記冷却媒体を、該冷却媒体の表面張力によって前記温度調節面の裏面に供給して前記濡れ面を形成するものであることを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の基板処理装置は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の基板処理装置において、前記濡れ面形成装置は、前記温度調節面の裏面に前記冷却媒体を噴射して前記濡れ面を形成するシャワー装置であることを特徴とする。
【0016】
請求項8記載の基板処理装置は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の基板処理装置において、前記濡れ面形成装置は、前記温度調節面の裏面に設けられたた多孔質膜を有し、該多孔質膜を介して前記温度調節面の裏面に前記冷却媒体を供給して前記濡れ面を形成するものであることを特徴とする。
【0017】
請求項9記載の基板処理装置は、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の基板処理装置において、前記処理室内の構成部材は、前記基板を載置する基板載置台又は該基板載置台と処理空間を隔てて対向するように設けられたシャワーヘッドであることを特徴とする。
【0018】
請求項10記載の基板処理装置は、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の基板処理装置において、前記冷却媒体は、水であることを特徴とする。
【0019】
上記課題を解決するために、請求項11記載の温度調節方法は、基板に所定の処理を施す真空排気可能な処理室を有する基板処理装置の前記処理室内の構成部品の温度調節面の裏面に冷却媒体を供給して該冷却媒体の濡れ面を形成する濡れ面形成ステップと、前記濡れ面を周囲の雰囲気から隔離する蒸発室内の圧力を調整して前記濡れ面を形成する冷却媒体を蒸発させ、該冷却媒体の蒸発潜熱によって前記温度調節面の温度を調節する減圧ステップと、を有することを特徴とする。
【0020】
請求項12記載の温度調節方法は、請求項11記載の温度調節方法において、前記濡れ面形成ステップにおける前記冷却媒体の供給量及び/又は前記蒸発室内の圧力に基づいて前記温度調節面の温度を制御することを特徴とする。
【0021】
請求項13記載の温度調節方法は、請求項12記載の温度調節方法において、前記蒸発室内の圧力を前記冷却媒体の飽和蒸気圧以下に設定した後、前記濡れ面へ供給する前記冷却媒体の供給量を調整して前記温度調節面の温度を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、設置スペースが少なくて済み、装置構成を簡素化した温度調節手段を実現することができ、これによって、処理室内の構成部材の温度調整面の温度を効率よく任意の温度に調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係る基板処理装置の要部を示す断面図、及びその部分拡大図である。
【図2】本実施の形態における蒸発室内の圧力と温度調節面の温度との関係を示す図である。
【図3】本実施の形態における処理熱量と温度調整手段への冷却媒体の供給量との関係を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る基板処理装置の第1の変形例の要部を示す断面図、及びその部分拡大図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る基板処理装置の第1の変形例における処理熱量と水槽への水の供給量との関係を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る基板処理装置の第2の変形例の要部を示す断面図、及びその部分拡大図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る基板処理装置の第3の変形例の要部を示す断面図、及びその部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施の形態に係る基板処理装置の要部を示す断面図、及びその部分拡大図である。
【0026】
図1において、この基板処理装置10は、基板に対してエッチング、成膜等の所定のプラズマ処理を施す真空排気可能な処理室(チャンバ)11を有する。チャンバ11内の下部中央部には、基板載置台(サセプタ)12が設けられている。サセプタ12は、その上部表面12aに基板を載置する。サセプタ12には、第1の高周波電源13が第1の整合器(図示省略)を介して接続されており、第1の高周波電源13は比較的低い周波数、例えば2MHzのバイアス用の高周波電力をサセプタ12に印加する。サセプタ12は下部電極として機能する。
【0027】
サセプタ12とは処理空間Sを介して対向する天井部分にシャワーヘッド14が配置されている。シャワーヘッド14には、第2の高周波電源15が第2の整合器(図示省略)を介して接続されており、第2の高周波電源15は比較的高い周波数、例えば60MHzのプラズマ生成用の高周波電力をシャワーヘッド14に印加する。シャワーヘッド14は上部電極として機能する。
【0028】
基板処理装置10において、チャンバ内構成部材としてのサセプタ12の上部表面12aは温度調節面である。すなわち、チャンバ11内において、図示省略した基板に対して所定のプラズマ処理を施す際、基板はプラズマからの入熱によって、例えば300℃以上に加熱される。プラズマエッチング時における基板の最適処理温度は、例えば40℃程度である。従って、基板温度を最適処理温度まで冷却するために、サセプタ12の上部平面12aは温度調節手段によって冷却する必要がある温度調節面である。
【0029】
ここで、温度調節面とは、基板の処理目的に応じて表面温度を任意の温度に調節する必要があるチャンバ内構成部材の表面である。また、チャンバ内構成部材とは、チャンバ11の内壁構成部材をも含む広い概念である。
【0030】
温度調節面の温度を調節する温度調節装置は、サセプタ12の上部表面(以下、「サセプタの表面」という。)12aの直近面である裏面(以下、「サセプタの裏面」という。)12bに冷却媒体、例えば水の濡れ面を形成する複数の水吹きつけ装置16と、サセプタ12の裏面12bに形成された濡れ面を周囲の雰囲気から隔離する蒸発室17と、蒸発室17内の圧力を監視する圧力計20と、蒸発室17内の圧力を調整する圧力調整装置とから主として構成される。圧力調整装置は、蒸発室17に接続された排気管18、該排気管18に接続された排気ポンプ(図示省略)及び蒸発室17内の圧力を制御するAPCバルブ19とを有する。
【0031】
このような構成の基板処理装置10において、温度調節面としてのサセプタ12の表面12aの温度は、以下のように調節される。
【0032】
すなわち、まず、水を貯留する貯水タンクから、水供給配管(共に図示省略)を介して冷却媒体としての水を水吹きつけ装置16に供給し、該水吹きつけ装置16から図1の部分拡大図Iに示したように、上方に向かって水を吹きつけ、サセプタ12の裏面12bに冷却媒体である水の濡れ面を形成する。
【0033】
このとき、水の吹きつけ量は、例えば、サセプタ12の裏面12b全体に均等な水の薄膜が形成される程度とする。また、このとき排気ポンプによって蒸発室17内が減圧され、APCバルブ19によって、蒸発室17内の圧力が水の飽和蒸気圧よりも若干低くなるように調整される。蒸発室17内の圧力を水の飽和水蒸気圧よりも若干低い圧力に調整することにより、サセプタ12の裏面12bに形成された濡れ面における水が水蒸気となって蒸発し、このとき水の蒸発潜熱に相当する熱が奪われ、サセプタ12の裏面12b及び温度調節面であるサセプタ12の表面12aが、所定温度まで冷却される。
【0034】
基板処理装置10の各構成部材の動作は、基板処理装置10が備える制御部(図示省略)のCPUが温度調節処理に対応するプログラムに応じて制御する。
【0035】
本実施の形態によれば、温度調節面としてのサセプタ12の表面12aの裏面12bに冷却媒体としての水の濡れ面を形成し、該濡れ面を周囲の雰囲気から隔離する蒸発室17内の圧力を調整して濡れ面を形成する水を蒸発させ、水の蒸発潜熱を利用してサセプタ12の裏面12bひいてはサセプタ12の表面12aを冷却するようにしたので、冷却媒体を循環させる従来の温度調節装置に比べて装置構成を簡素化して、設置スペースを少なくすることができる。
【0036】
すなわち、本実施の形態によれば、冷却媒体としての水の供給配管は必要であるが、供給した水を水蒸気として排気管18を介して蒸発室外に排出するので、排水用配管が不要になる。また、従来必要であったチラーの温度制御装置及び冷媒配管の断熱構造も不要となる。従って、設置スペースが少ない小さい基板処理装置から、大面積構成部材の表面温度を調整する必要がある大型基板処理装置にまで幅広く適用することができる。特に、冷却媒体の循環流路を確保し難い基板処理装置には最適である。
【0037】
本実施の形態において、温度調節面であるサセプタ12の表面12aの温度は、吹きつけ装置16への水の供給量と蒸発室17内の圧力に基づいて制御する。水の蒸発潜熱は、圧力によってほとんど変化しないので、蒸発室17内の圧力を主制御条件とし、水吹きつけ装置16への水の供給量を副制御条件とすることが好ましい。
【0038】
すなわち、サセプタ12の表面12aの温度が所望温度となるような水の飽和蒸気圧を求め、蒸発室17内の圧力を当該飽和蒸気圧に維持し、プラズマの入熱等、比較的小さな変動を伴う入熱に対しては水の供給量を調整することによって対処し、これによって、なるべく飽和蒸気圧を維持するように制御することが好ましい。そして、急激な入熱に対しては、蒸発室17内の圧力を急降下させ、これによって水の蒸発量を増大させることによって対処することが好ましい。
【0039】
本実施の形態において、サセプタ12におけるプラズマからの入熱を温度調節手段によって処理、回収する場合、水の蒸発潜熱を、例えば2257(kJ/kg)、プラズマからの入熱をA(kJ/sec)とすると、A/2257(kg/sec)の水が蒸発するように制御することによって、プラズマからの入熱を回収、処理することができる。
【0040】
本実施の形態において、冷却媒体として常温の水を使用して、温度調節面であるサセプタ12の表面12aの温度を、例えば0℃〜80℃の範囲で調整することができる。
【0041】
図2は、本実施の形態における蒸発室17内の圧力と、サセプタ12の表面12aの温度との関係を示すグラフである。
【0042】
図2において、蒸発室17内の圧力が50000Paの時、サセプタ12の表面12aの温度が80℃となるように調整し、この状態で、蒸発室17内の圧力を1230Paまで下げると、サセプタ12の表面12aの温度は10℃程度となり、蒸発室17内の圧力を610Paまで下げると、サセプタ12の表面12aの温度は0℃程度となることが分かる。なお、サセプタ12の表面12aの温度は、各条件を選定することによって、例えば、−10℃程度まで冷却することができる。この場合、水の供給流路が凍結する虞があるので、凍結防止用のヒータを水の供給流路に設けるのが好ましい。
【0043】
本実施の形態において、水吹きつけ装置16に供給する水の流量、換言すると水の蒸発量に従って処理可能な熱量が変化する。
【0044】
図3は、本実施の形態における水吹きつけ装置16に対する水の供給流量と処理熱量との関係を示すグラフである。なお、図3は、蒸発室17内の圧力が5000Paである場合の水供給流量と処理熱量との関係を示すグラフであり、処理熱量は水の流量(水の蒸発量)に比例して増大することが分かる。
【0045】
本実施の形態において、サセプタ12の表面温度を部分的に調節することもできる。すなわち、サセプタ12の表面12aの中央部と周辺部を異なる温度に調整することができる。この場合、サセプタ12の表面12aの中央部に対応するサセプタの裏面12bと、サセプタ12の表面12aの周辺部に対応するサセプタ12の裏面12bとに、それぞれ濡れ面形成装置としての、例えば水吹きつけ装置16、蒸発室17及び圧力調整装置18、19を設け、それぞれを別個独立に制御してサセプタ12の表面12aの温度を部分的に調節する。温度調節面である所定の部分は1箇所だけでなく、2箇所又はそれ以上であってもよく、温度調節部分ごとに濡れ面形成装置、圧力調整装置が設けられる。なお、本実施の形態において、温度調整面内で水吹きつけ装置からの水吹きつけ時間を変えることにより、サセプタ12の表面温度分布も調整することができる。
【0046】
本実施の形態において、チャンバ内構成部品としては、サセプタ12の他、シャワーヘッド14、図示省略したデポシールド、フォーカスリング、シールドリングをはじめ各種部材が挙げられ、これらの部材の表面が温度調節面となり得る。
【0047】
本実施の形態において、温度調節面であるサセプタ12の表面12aの裏面12bに水の濡れ面を形成したが、構成部材によっては、裏面に濡れ面を形成し難い場合が考えられる。この場合は、温度調節面の直近の面として、例えば、温度調節面の裏面に隣接する側面等に水の濡れ面を形成するようにしてもよい。
【0048】
本実施の形態において、冷却媒体として最適な水を用いたが、水以外にメタノール、アンモニア等、大きな蒸発潜熱を有する液体を用いることができる。
【0049】
次に、本発明の実施の形態に係る基板処理装置の変形例について説明する。
【0050】
図4は、本発明の実施の形態に係る基板処理装置の第1の変形例の要部を示す断面図、及びその部分拡大図である。
【0051】
図4において、この基板処理装置は、サセプタ22の表面22aに対向する裏面22bを多数の凸状部が形成された凹凸面とし、該凹凸面を周囲の雰囲気から隔離する蒸発室24と、該蒸発室24内に配置された水槽23を設け、該水槽23にサセプタ22の裏面22bの凸状部の一部を浸漬させ、図4の部分拡大図IVに示したように、表面張力を利用して冷却媒体として水をサセプタ22の裏面22bに供給して濡れ面を形成するものである。そして、上記実施の形態と同様、濡れ面を形成する水が蒸発する際の蒸発潜熱を利用してサセプタ22の表面22aが冷却される。
【0052】
本実施の形態の第1の変形例においても、上記実施の形態と同様、設置スペースが少なくて済み、装置構成を簡素化した温度調節装置を実現することができ、これによって、温度調整面の温度を効率よく任意の温度に調節することができる。また、本実施の形態の第1の変形例において、温度調整面内で凹凸面の疎密を変えることにより、サセプタ22の表面温度分布を調整することができる。
【0053】
以下に、本実施の形態の第1の変形例を用いた実験例について説明する。
【0054】
図4の基板処理装置を用い、サセプタ22の表面22aからの入熱がある場合(図示省略)に、水の蒸発潜熱を利用してサセプタ22の表面22aの温度を25℃に保持するために必要な水槽23に供給する水の供給量を調査したところ、サセプタ22の表面22aへの入熱量と水槽23への水供給量は、良好な相関関係を示した。
【0055】
図5は、チャンバ内圧力が670Paにおけるサセプタ22の表面22aへの入熱量と水槽23への水の供給量との関係を示す図である。
【0056】
図5において、入熱量が大きくなるに従って水槽23への必要な水供給量は順次増大している。このような基板処理装置において、サセプタ22の表面22aへの入熱量に変動がなく、水槽23に供給される水の供給量も一定に保持されれば、サセプタ22の表面22aの温度を半永久的に25℃に保持し続けることができる。
【0057】
次に、本発明の実施の形態に係る基板処理装置の他の変形例について説明する。
【0058】
図6は、本発明の実施の形態に係る基板処理装置の第2の変形例の要部を示す断面図、及びその部分拡大図である。
【0059】
図6において、この基板処理装置は、サセプタ32の裏面32bを囲む蒸発室34内に多数のシャワー装置33を配設し、該シャワー装置33によって図6の部分拡大図VIに示したように、サセプタ32の裏面32bに水の濡れ面を形成し、蒸発室34内の圧力を調整して濡れ面を形成する冷却媒体としての水を蒸発させるようにしたものである。
【0060】
本実施の形態の第2の変形例においても、上記実施の形態と同様、設置スペースが少なくて済み、装置構成を簡素化した温度調節装置によって、温度調整面の温度を効率よく調節することができる。
【0061】
次に、本発明の実施の形態に係る基板処理装置のさらに他の変形例について説明する。
【0062】
図7は、本発明の実施の形態に係る基板処理装置の第3の変形例の要部を示す断面図、及びその部分拡大図である。
【0063】
図7において、この基板処理装置は、サセプタ42の裏面42bにポーラスな多孔質層43を当接するように配置し、該多孔質層43に図示省略した水供給源から冷却媒体としての水を供給して多孔質層43の蒸発室44側の表面から水をしみ出させ、これによって多孔質層43の表面に水の濡れ面を形成するようにしたものである。
【0064】
そして、上記実施の形態と同様、圧力調整装置(図示省略)によって蒸発室44内の圧力を調整することによって、濡れ面を形成する水が蒸発し、蒸発潜熱を利用してサセプタ42の表面42aの温度が調節される。
【0065】
本実施の形態の第3の変形例においても、上記実施の形態と同様、設置スペースが少なくて済み、装置構成を簡素化した温度調節装置を実現することができ、これによって、温度調整面の温度を効率よく調節することができる。
【0066】
また、本発明の実施の形態全般において、基板が大口径化された場合の冷却媒体流路長の増加に伴う冷却媒体入口と冷却媒体出口の温度勾配も、一様に濡れ面を形成しておくだけで簡単に抑制することができる。
【符号の説明】
【0067】
10 基板処理装置
11 処理室(チャンバ)
12、22、32、42 基板載置台(サセプタ)
14 シャワーヘッド
16 水吹きつけ装置
18 排気管
19 APCバルブ
23 水槽
33 シャワー装置
43 多孔質層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に所定の処理を施す真空排気可能な処理室と、前記処理室内の構成部材における温度調節面の裏面に冷却媒体の濡れ面を形成する濡れ面形成装置と、前記濡れ面を周囲の雰囲気から隔離する蒸発室と、該蒸発室内の圧力を調整する圧力調整装置とを備え、
前記圧力調整装置によって前記蒸発室内の圧力を調整して前記濡れ面を形成する冷媒媒体を蒸発させ、該冷却媒体の蒸発潜熱によって前記温度調節面の温度を制御することを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記温度調節面は、前記構成部材の表面において複数箇所に存在し、前記温度調節面毎に前記濡れ面形成装置、蒸発室、及び圧力調整装置を備えることを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記圧力調整装置は、前記蒸発室内の圧力を前記冷却媒体の飽和蒸気圧よりも低い圧力に調整することを特徴とする請求項1又は2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記蒸発室には前記冷却媒体が蒸発した蒸気を蒸発室外に排出する蒸気排出流路が連結されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記濡れ面形成装置は、前記温度調節面の裏面に前記冷却媒体を吹き付けて前記濡れ面を形成する冷却媒体吹き付け装置であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記濡れ面形成装置は、前記温度調節面の裏面の少なくとも一部を前記冷却媒体に浸漬させる冷却媒体槽を有し、前記冷却媒体を、該冷却媒体の表面張力によって前記温度調節面の裏面に供給して前記濡れ面を形成するものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記濡れ面形成装置は、前記温度調節面の裏面に前記冷却媒体を噴射して前記濡れ面を形成するシャワー装置であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記濡れ面形成装置は、前記温度調節面の裏面に設けられた多孔質膜を有し、該多孔質膜を介して前記温度調節面の裏面に前記冷却媒体を供給して前記濡れ面を形成するものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記処理室内の構成部材は、前記基板を載置する基板載置台又は該基板載置台と処理空間を隔てて対向するように設けられたシャワーヘッドであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記冷却媒体は、水であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項11】
基板に所定の処理を施す真空排気可能な処理室を有する基板処理装置の前記処理室内の構成部品の温度調節面の裏面に冷却媒体を供給して該冷却媒体の濡れ面を形成する濡れ面形成ステップと、
前記濡れ面を周囲の雰囲気から隔離する蒸発室内の圧力を調整して前記濡れ面を形成する冷却媒体を蒸発させ、該冷却媒体の蒸発潜熱によって前記温度調節面の温度を調節する減圧ステップと、
を有することを特徴とする温度調節方法。
【請求項12】
前記濡れ面形成ステップにおける前記冷却媒体の供給量及び/又は前記蒸発室内の圧力に基づいて前記温度調節面の温度を制御することを特徴とする請求項11記載の温度調節方法。
【請求項13】
前記蒸発室内の圧力を前記冷却媒体の飽和蒸気圧以下に設定した後、前記濡れ面へ供給する前記冷却媒体の供給量を調整して前記温度調節面の温度を制御することを特徴とする請求項12記載の温度調節方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−44041(P2012−44041A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184996(P2010−184996)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】