説明

基板処理装置

【課題】処理カップでの種類の異なる薬液の混触を防止することができる基板処理装置を提供すること。
【解決手段】基板処理装置の再起動処理時には、スプラッシュガード34や遮断板22が順次に退避位置(原点位置)に復帰される原点復帰動作が行われる(ステップE3)。原点復帰動作の完了後は、処理カップ7が洗浄される処理カップ洗浄処理が実行される(ステップE5)。処理カップ洗浄処理では、第1〜第4空間81,82,83,84に対して洗浄液としての純水が供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数種の薬液を用いて基板を処理するための基板処理装置に関する。処理対象の基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用ガラス基板、プラズマディスプレイ用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板等が含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程では、半導体ウエハ等の基板の表面に薬液による処理を施すために、基板を1枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置が用いられることがある。この種の基板処理装置の中には、基板の処理に用いられる薬液の消費量の低減を図るために、基板の処理に用いた後の薬液を回収して、その回収した薬液を以降の処理に再使用するように構成されたものがある。そして、複数種の薬液を用いた処理が行われる場合に、基板の処理に用いられる複数種の薬液の消費量をそれぞれ低減させるために、複数の薬液を個別に回収して再使用するように構成されたものがある。
【0003】
複数種の薬液の個別回収可能な構成の基板処理装置は、たとえば、複数本のチャックピンで基板をほぼ水平に保持しつつ、その基板を回転させるスピンチャックと、このスピンチャックを収容した有底円筒形状のカップと、そのカップに対して昇降可能に設けられたスプラッシュガードとを備えている。
カップの底部には、スピンチャックの周囲を取り囲むように、基板の処理に用いられた後の薬液を廃液するための廃液溝が形成されており、さらに、この廃液溝を取り囲むように、たとえば、基板の処理のために用いられた後の薬液を回収するための第1〜第3回収溝が3重に形成されている。廃液溝には、図外の廃液処理設備へと薬液を導くための廃液ラインが接続されており、第1〜第3回収溝には、図外の回収処理設備へと薬液を導くための回収路がそれぞれに接続されている。
【0004】
スプラッシュガードは、互いに大きさが異なる4つの傘状部材を上下に重ねて構成されている。スプラッシュガードには、たとえば、ボールねじ機構などを含む昇降駆動機構が結合されており、この昇降駆動機構によって、スプラッシュガードをカップに対して昇降させることができるようになっている。
たとえば、最上の第1傘状部材の傾斜面上端とその直下の第2傘状部材の傾斜面上端との間には、基板から飛散する薬液を飛入させるための環状の第1回収開口部が形成され、第2傘状部材の傾斜面上端とその直下の第3傘状部材の傾斜面上端との間には、基板から飛散する薬液を飛入させるための環状の第2回収開口部が形成され、第3傘状部材の傾斜面上端と最下の第4傘状部材の傾斜面上端との間には、基板から飛散する薬液を飛入させるための環状の第3回収開口部が形成されている。また、最下の第4傘状部材とカップの底面との間には、基板から飛散する薬液を飛入させるための廃液開口部が形成されている。そして、第1〜第3回収開口部に飛入する薬液は、それぞれカップ底部の第1〜第3回収溝へ導かれ、廃液開口部に飛入する薬液は、カップ底部の廃液溝へ導かれるようになっている。
【0005】
すなわち、スピンチャックによって基板を回転させつつ、基板の表面に第1薬液を供給することにより、基板の表面に第1薬液による処理を施すことができる。基板の表面に供給された第1薬液は、基板の回転による遠心力を受けて、基板の周縁から側方へ飛散する。したがって、このとき、スプラッシュガードを昇降させて、第1回収開口部を基板の端面に対向させておけば、基板の周縁から飛散する第1薬液を、第1回収開口部へ飛入させて、第1回収溝に集めることができ、さらに、その第1回収溝から回収ラインを通して回収することができる。また同様に、基板の表面に第2薬液を供給するときに、第2回収開口部を基板の端面に対向させておけば、基板から飛散する第2薬液を回収することができ、基板の表面に第3薬液を供給するときに、第3回収開口部を基板の端面に対向させておけば、基板から飛散する第3薬液を回収することができる。さらに、スピンチャックによって基板を回転させつつ、基板の表面に純水を供給することにより、基板の表面を純水で洗い流すリンス処理を行うときには、廃液開口部を基板の端面に対向させておけば、その基板の表面を洗い流した純水を、廃液溝に集めることができ、廃液溝から廃液路を通して廃液することができる。
【0006】
ところで、基板処理装置には、緊急の場合に装置各部の動作を停止させる緊急停止スイッチが設けられている。緊急停止スイッチが押操作されると、装置各部への電力供給が停止されることにより、装置各部の動作が停止される。その後、装置各部への電力供給が再開され、装置の各部を順に原点復帰させるための原点復帰処理が行われると、基板の処理が可能な状態となる。
【特許文献1】特開2006−66815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
スピンチャックによる基板の回転中に緊急停止スイッチが押操作された場合、スピンチャックへの電力供給が遮断された後も、基板は徐々に速度を下げながら回転し続ける。そのため、たとえば回転状態の基板に対して第1薬液が供給されている途中に緊急停止スイッチが押操作されると、基板から飛散する第1薬液の飛散方向が基板の回転速度にともなって変化し、基板が回転停止するまでの間に、第1薬液の飛入が予定されていない第2回収開口部や第3回収開口部へも第1薬液が飛入して、第2回収開口部や第3回収開口部の内壁に第1薬液が付着してしまうことがある。第2回収開口部の内壁に第1薬液が付着していると、基板の処理が再開されて、第2薬液が第2回収開口部から回収されたときに、第2回収開口部において第1薬液と第2薬液との混触が生じる。また、第3回収開口部の内壁に第1薬液が付着していると、第3薬液が第3回収開口部から回収されたときに、第3回収開口部において第1薬液と第3薬液との混触が生じる。
【0008】
互いに種類の異なる薬液の混触が生じると、これらの薬液の化学反応によって生じる発熱による処理カップの破損や、有害ガスの発生を招くおそれがある。
そこで、この発明の目的は、処理カップでの種類の異なる薬液の混触を防止することができる基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、基板(W)を保持しつつ回転させる基板回転手段(6)と、前記基板回転手段によって回転される基板に対して、第1薬液を供給する第1薬液供給手段(8)と、前記基板回転手段によって回転される基板に対して、第1薬液と種類の異なる第2薬液を供給する第2薬液供給手段(9)と、前記基板回転手段による基板の回転軸線を取り囲むように形成され、基板から飛散する第1薬液を進入させるための第1開口部(71)、および前記第1開口部から進入した第1薬液が導かれる第1空間(81)、ならびに、前記回転軸線と平行な方向に前記第1開口部と異なる位置において前記回転線を取り囲むように形成され、基板から飛散する第2薬液を進入させるための第2開口部(72)、および前記第2開口部から進入した第2薬液が導かれる第2空間(82)を有する処理カップ(7)と、所定の起動処理後、前記第1薬液供給手段による第1薬液の供給開始または前記第2薬液供給手段による第2薬液の供給開始までの間に、前記第1開口部および前記第2開口部からそれぞれ第1空間および第2空間に洗浄液を供給して、前記第1空間内および前記第2空間内を洗浄する洗浄手段(11,25,31,75,80)とを含むことを特徴とする、基板処理装置である。
【0010】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
この構成によれば、装置の起動処理後、第1薬液の基板への供給または第2薬液の基板への供給が開始されるまでの間に、処理カップの第1空間内および第2空間内が洗浄される。このため、装置の起動処理の前に第1開口部の内壁に第2薬液が付着していても、その第2薬液は、基板から飛散した第1薬液が第1開口部に達する前に洗い流される。また、装置の起動処理の前に第2開口部の内壁に第1薬液が付着していても、その第1薬液は、基板から飛散した第2薬液が第1開口部に達する前に洗い流される。このため、第1空間内および第2空間内で互いに種類の異なる薬液が混触することがない。これにより、処理カップでの互いに種類の異なる薬液の混触を防止することができる。ゆえに、処理カップの損傷の発生や有害ガスの発生を防止することができる。
【0011】
装置の起動処理は、請求項2のように、装置の各部を原点復帰させるための原点復帰処理であってもよいし、電源オン時に装置で行われる処理(たとえば、装置のウォームアップ処理)であってもよい。
また、請求項3記載の発明は、前記基板回転手段と前記処理カップとを前記回転軸線と平行な方向に相対的に移動させる移動手段(75)をさらに含み、前記洗浄手段は、前記回転手段に向けて洗浄液を供給する洗浄液供給手段(11,25,31)と、前記洗浄液供給手段および前記移動手段を制御して、前記基板回転手段から飛散する洗浄液をそれぞれ第1空間および第2空間に選択的に供給する制御手段(80)とを備えることを特徴とする、請求項1または2記載の基板処理装置である。
【0012】
この構成によれば、洗浄液を基板回転手段に向けて供給しつつ基板回転手段と移動手段とを相対的に移動させるという簡単な構成で、第1空間内および第2空間内への洗浄液の供給を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る基板処理装置のレイアウトを示す図解的な平面図である。この基板処理装置は、基板の一例としての半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」という。)Wを1枚ずつ処理する枚葉式の装置であり、処理部PCと、処理部PCに結合されたインデクサ部INDとを備えている。
【0014】
処理部PCには、搬送路TPと、搬送路TPの両側に、この搬送路TPに沿って並べて並べて形成された複数(この実施形態では、4つ)の処理ユニット1,2,3,4とが配置されている。
搬送路TPには、搬送ロボットTRが配置されている。この搬送ロボットTRは、処理ユニット1〜4に対してハンドをアクセスさせることでウエハWを搬入および搬出することができる。
【0015】
インデクサ部INDの処理部PCと反対側には、複数のカセットCが並べて配置されるカセット載置部CSが設けられている。カセットCは、複数枚のウエハWを多段に積層した状態で収容することができる。
インデクサ部INDには、インデクサロボットIRが配置されている。このインデクサロボットIRは、カセット載置部CSに配置された各カセットCにハンドをアクセスさせて、カセットCからウエハWを取り出したり、カセットCにウエハWを収納したりすることができる。また、インデクサロボットIRは、搬送ロボットTRとの間でウエハWの受け渡しを行うことができる。
【0016】
各処理ユニット1〜4は、ウエハWの表面に第1薬液、第2薬液および第3薬液による処理を施すための装置である。各処理ユニット1〜4の構成は互いに共通している。各処理ユニット1〜4の構成を、処理ユニット1を例にとって説明する。
図2は、この発明の一実施形態に係る基板処理装置の処理ユニットの構成を図解的に示す断面図である。処理ユニット1の処理チャンバ5内には、ウエハWをほぼ水平に保持するとともに、その中心を通るほぼ鉛直な回転軸線方向まわりにウエハWを回転させるスピンチャック6と、このスピンチャック6を収容する処理カップ7と、スピンチャック6に保持されたウエハWの表面にそれぞれ第1薬液、第2薬液、第3薬液および純水(脱イオン化された純水)を供給するための第1薬液ノズル8、第2薬液ノズル9、第3薬液ノズル10および純水ノズル11とを備えている。
【0017】
スピンチャック6は、ほぼ鉛直に延びたスピン軸13と、ウエハWとほぼ同じサイズの上面を有し、スピン軸13の上端にほぼ水平に取り付けられたスピンベース14と、このスピンベース14の上面に立設された複数個の挟持部材15とを備えている。複数個の挟持部材15は、スピン軸13の中心軸線を中心とする円周上にほぼ等角度間隔で配置されており、ウエハWの端面を互いに異なる複数の位置で挟持することによって、そのウエハWを、ほぼ水平な姿勢で保持することができる。
【0018】
スピン軸13には、モータなどの駆動源を含むチャック回転駆動機構16が結合されている。複数個の挟持部材15によってウエハWを保持した状態で、チャック回転駆動機構16からスピン軸13に回転力を入力し、スピン軸13をその中心軸線まわりに回転させることにより、そのウエハWをスピンベース14とともにスピン軸13の中心軸線まわりに回転させることができる。
【0019】
第1薬液ノズル8は、スピンチャック6の上方で、その吐出口をスピンチャック6に向けて配置されている。この第1薬液ノズル8には、第1薬液バルブ18を介して、第1薬液が供給されるようになっている。
第2薬液ノズル9は、スピンチャック6の上方で、その吐出口をスピンチャック6に向けて配置されている。この第2薬液ノズル9には、第2薬液バルブ19を介して、第2薬液が供給されるようになっている。
【0020】
第3薬液ノズル10は、スピンチャック6の上方で、その吐出口をスピンチャック6に向けて配置されている。この第3薬液ノズル10には、第3薬液バルブ20を介して、第3薬液が供給されるようになっている。
第1薬液、第2薬液および第3薬液は、互いに混触したときに比較的高温の反応熱が発生する薬液である。第1薬液、第2薬液および第3薬液の組合せとして、第1薬液がたとえば王水や、硝酸、塩酸のいずれかである場合には、第2薬液および第3薬液としてそれぞれ硫酸およびSC1(アンアンモニア過酸化水素水)を例示することができる。
【0021】
純水ノズル11は、スピンチャック6の上方で、その吐出口をスピンチャック6に向けて配置されている。この純水ノズル11には、純水バルブ21を介して、純水が供給されるようになっている。
スピンチャック6の上方には、ウエハWとほぼ同じ径を有する円板状の遮断板22が設けられている。遮断板22の上面には、スピンチャック6のスピン軸13と共通の軸線に沿う回転軸23が固定されている。この回転軸23は中空に形成されていて、その内部には、ウエハWの表面に純水を供給するための遮断板純水ノズル24が挿通されている。遮断板純水ノズル24には、遮断板純水バルブ25を介して純水が供給されるようになっている。また、回転軸23の内壁面と遮断板純水ノズル24の外壁面との間は、ウエハWの中心部に向けて不活性ガスとしての窒素ガスを供給するための窒素ガス流通路26を形成している。この窒素ガス流通路26には、窒素ガスバルブ27を介して窒素ガスが供給されるようになっている。
【0022】
回転軸23は、ほぼ水平に延びて設けられたアーム28の先端付近から垂下した状態に取り付けられている。そして、このアーム28に関連して、遮断板22をスピンチャック6に保持されたウエハWの表面に近接した近接位置とスピンチャック6の上方に大きく退避した退避位置との間で昇降させるための遮断板昇降駆動機構29と、遮断板22をスピンチャック6によるウエハWの回転にほぼ同期させて回転させるための遮断板回転駆動機構30とが設けられている。
【0023】
また、アーム28には、遮断板22の上面を洗浄すべく、遮断板22の上面に純水を供給するための2つの洗浄用純水ノズル31,31が保持されている。各洗浄用純水ノズル31には、洗浄用純水バルブ32を介して純水が供給されるようになっている。また、各洗浄用純水ノズル31は、先端(吐出口)が遮断板22の上面と回転軸23の外周面との境界部付近に位置するように斜め下方に延びている。このため、洗浄用純水ノズル31から吐出される純水は、遮断板22の上面と回転軸23の外周面との境界部付近に供給される。
【0024】
処理カップ7は、ウエハWの処理に用いられた後の第1〜第3薬液および純水を処理するためのものであり、スピンチャック6を収容する有底円筒容器状のカップ33と、このカップ33の上方に設けられ、このカップ33に対して昇降可能なスプラッシュガード34とを備えている。
カップ33の底部には、純水とウエハWの処理に用いられた後の薬液との混合液を廃液するための廃液溝35が、ウエハWの回転軸線(スピン軸13の中心軸線)を中心とする円環状に形成されている。また、カップ33の底部には、廃液溝35を取り囲むように、ウエハWの処理のために用いられた後の第1〜第3薬液をそれぞれ回収するための円環状の第1回収溝36、第2回収溝37および第3回収溝38が3重に形成されている。具体的には、廃液溝35の外側に第3回収溝38が形成され、第3回収溝38の外側に第2回収溝37が形成され、第2回収溝37の外側に第1回収溝36が形成されている。
【0025】
廃液溝35には、図外の廃液処理設備へと導くための廃液路17が接続されている。
第1回収溝36には、第1回収/廃液路39が接続されている。第1回収/廃液路39の先端には、第1分岐回収路40と第1分岐廃液路41とが分岐して接続されている。第1回収/廃液路39の先端には、第1回収/廃液路39を流通する第1薬液を、第1分岐回収路40と第1分岐廃液路41とに選択的に導く第1切換えバルブ42が介装されている。この第1切換えバルブ42は、たとえば三方弁により構成されている。第1分岐回収路40の先端は、図外の第1薬液用の回収処理設備へと延び、また、第1分岐廃液路41の先端は、図外の廃液処理設備へと延びている。
【0026】
第2回収溝37には、第2回収/廃液路43が接続されている。第2回収/廃液路43の先端には、第2分岐回収路44と第2分岐廃液路45とが分岐して接続されている。第2回収/廃液路43の先端には、第2回収/廃液路43を流通する第2薬液を、第2分岐回収路44と第2分岐廃液路45とに選択的に導く第2切換えバルブ46が介装されている。この第2切換えバルブ46は、たとえば三方弁により構成されている。第2分岐回収路44の先端は、図外の第2薬液用の回収処理設備へと延び、また、第2分岐廃液路45の先端は、図外の廃液処理設備へと延びている。
【0027】
第3回収溝38には、第3回収/廃液路47が接続されている。第3回収/廃液路47の先端には、第3分岐回収路48と第3分岐廃液路49とが分岐して接続されている。第3回収/廃液路47の先端には、第3回収/廃液路47を流通する第3薬液を、第3分岐回収路48と第3分岐廃液路49とに選択的に導く第3切換えバルブ50が介装されている。この第3切換えバルブ50は、たとえば三方弁により構成されている。第3分岐回収路48の先端は、図外の第3薬液用の回収処理設備へと延びており、また、第3分岐廃液路49の先端は、図外の廃液処理設備へと延びている。
【0028】
スプラッシュガード34は、第1〜第3薬液がウエハWから外部に飛散することを防止するためのものであり、互いに大きさが異なる4つの傘状部材51,52,53,54を重ねて構成されている。スプラッシュガード34には、たとえばサーボモータなどを含むガード昇降駆動機構75が結合されており、このガード昇降駆動機構75が制御されることによって、スプラッシュガード34をカップ33に対して昇降(上下動)させることができる。
【0029】
各傘状部材51〜54は、ウエハWの回転軸線に対してほぼ回転対称な形状を有している。
最上の第1傘状部材51は、ウエハWの回転軸線を中心軸線とする同軸円筒状の円筒部55,56と、これら円筒部55,56の上端を連結し、外側の円筒部55の上端から中心側斜め上方(ウエハWの回転軸線に近づく方向)に延びる傾斜部57とを備えている。外側の円筒部55は、カップ33の外周面の外方に位置し、内側(中心側)の円筒部56の下端は、第1回収溝36上に位置している。
【0030】
第2傘状部材52は、第1傘状部材51の内側の円筒部56に取り囲まれるように設けられ、ウエハWの回転軸線を中心軸線とする同軸円筒状の円筒部58,59と、外側の円筒部58の上端から中心側斜め上方(ウエハWの回転軸線に近づく方向)に延びる傾斜部60とを備えている。外側の円筒部58の下端は、第1回収溝36上に位置し、内側(中心側)の円筒部59の下端は、第2回収溝37上に位置している。
【0031】
第3傘状部材53は、第2傘状部材52の内側の円筒部59に取り囲まれるように設けられ、ウエハWの回転軸線を中心軸線とする同軸円筒状の円筒部61,62と、外側の円筒部61の上端から中心側斜め上方(ウエハWの回転軸線に近づく方向)に延びる傾斜部63とを備えている。外側の円筒部61の下端は、第2回収溝37上に位置し、内側(中心側)の円筒部62の下端は、第3回収溝38上に位置している。
【0032】
第4傘状部材54は、第3傘状部材53の内側の円筒部62に取り囲まれるように設けられ、ウエハWの回転軸線を中心軸線とする円筒状の円筒部64と、円筒部64の上端から中心側斜め上方(ウエハWの回転軸線に近づく方向)に延びる傾斜部65と、円筒部64の途中部から中心側斜め下方に延びる廃液案内部66とを備えている。円筒部64の下端は、第3回収溝38上に位置し、廃液案内部66の下端は、廃液溝35上に位置している。
【0033】
傘状部材51〜54の上端縁は、ウエハWの回転軸線を中心軸線とする円筒面上において、そのウエハWの回転軸線に沿う方向(鉛直方向)に間隔を空けて位置している。
第1傘状部材51の上端縁と第2傘状部材52の上端縁との間には、ウエハWから飛散する第1薬液を飛入させて、その第1薬液を第1回収溝36に捕集するための円環状の第1開口部71が形成されている。第1傘状部材51の内面と第2傘状部材52の外面と第1回収溝36とによって、第1開口部71から飛入した第1薬液が導かれる第1空間81が区画されている。
【0034】
また、第2傘状部材52の上端縁と第3傘状部材53の上端縁との間には、ウエハWから飛散する第2薬液を飛入させて、その第2薬液を第2回収溝37に捕集するための円環状の第2開口部72が形成されている。第2傘状部材52の内面と第3傘状部材53の外面と第2回収溝37とによって、第2開口部72から飛入した第2薬液が導かれる第2空間82が区画されている。
【0035】
さらに、第3傘状部材53の上端縁と第4傘状部材54の上端縁との間には、ウエハWから飛散する第3薬液を飛入させて、その第3薬液を第3回収溝38に捕集するための円環状の第3開口部73が形成されている。第3傘状部材53の内面と第4傘状部材54の外面と第3回収溝38とによって、第3開口部73から飛入した第3薬液が導かれる第3空間83が区画されている。
【0036】
第4傘状部材54の傾斜部65の上端縁と廃液案内部66の下端縁との間には、ウエハWから飛散する処理液を捕獲するための第4開口部74が形成されている。第4傘状部材54の内面と廃液溝35とによって、第4開口部74から飛入した処理液が導かれる第4空間84が区画されている。
図3は、基板処理装置の制御系の構成を説明するためのブロック図である。
【0037】
基板処理装置は,CPU67およびメモリ68を含む構成のメイン制御部70を備えている。メモリ68は、ROM、RAM、ハードディスクドライブその他の外部記憶装置を含むものであり、CPU67によって実行されるプログラムや、当該基板処理装置の各部の制御に必要なデータを記憶している。
メイン制御部70には、原点復帰スイッチ95が接続されている。この原点復帰スイッチ95は、基板処理装置の外側面に配置された操作パネルPに配設されている。原点復帰スイッチ95が押操作されることに基づいて、メイン制御部70に対して原点復帰信号が入力されるようになっている。
【0038】
処理ユニット1〜4は、同様の電気的構成を有している。処理ユニット1を例にとって、各処理ユニット1〜4の電気的構成を説明する。
処理ユニット1には、CPU77およびメモリ78を含む構成のローカル制御部80が設けられている。ローカル制御部80には、第1薬液バルブ18、第2薬液バルブ19、第3薬液バルブ20、純水バルブ21、チャック回転駆動機構16、ガード昇降駆動機構75、第1切換えバルブ42、第2切換えバルブ46、第3切換えバルブ50、遮断板昇降駆動機構29、遮断板回転駆動機構30、遮断板純水バルブ25、洗浄用純水バルブ32などが制御対象として接続されている。また、ローカル制御部80は、メイン制御部70と接続されており、メイン制御部70との間で、処理条件や進行状況等を表す各種のデータを授受する。
【0039】
基板処理装置の外側面には、各処理ユニット1〜4における基板処理動作を緊急停止させるための緊急停止スイッチ(EMOスイッチ)92が、各処理ユニット1〜4ごとに、配設されている。緊急停止スイッチ92は、ローカル制御部80に接続されている。たとえば処理ユニット1に対応する緊急停止スイッチ92が押操作されると、ローカル制御部80にEMO信号が入力されて、処理ユニット1への電力供給が遮断される。これにより、処理ユニット1における基板処理動作が緊急停止される。
【0040】
緊急停止スイッチ92の押操作により電源供給が遮断された処理ユニット1を再起動させるためには、基板処理装置が一度電源オフされる必要がある。その後、基板処理装置が再度電源オンされて、かつ、原点復帰スイッチ95が操作されることにより、処理ユニット1は基板処理動作可能な状態に復帰する。
図4は、処理ユニットで行われる処理例を説明するためのフローチャートである。以下、処理ユニット1におけるウエハWの処理について説明する。
【0041】
ウエハWの処理は、予め設定されてメモリ68に記憶されているレシピに基づいて実行される。このレシピには、第1薬液処理、第2薬液処理、第3薬液処理、リンス処理およびスピンドライを実行させるための制御パラメータが設定されている。
処理対象のウエハWの搬入前は、その搬入の妨げにならないように、スプラッシュガード34が最下方の退避位置に下げられている。このスプラッシュガード34の退避位置では、第1傘状部材51の上端がスピンチャック6によるウエハWの保持位置の下方に位置している。
【0042】
処理対象の未処理ウエハWは、図示しない搬送ロボットTRによって処理ユニット1内に搬入されて、その表面(デバイス形成面)を上方に向けた状態でスピンチャック6に保持される(ステップS1)。ウエハWがスピンチャック6に保持されると、チャック回転駆動機構16が制御されて、スピンチャック6によるウエハWの回転(スピンベース22の回転)が開始され、ウエハWの回転速度がたとえば1500rpmまで上げられる(ステップS2)。また、ガード昇降駆動機構75が制御されて、スプラッシュガード34が、第1開口部71がウエハWの端面に対向する第1開口部対向位置まで下降される。
【0043】
ウエハWの回転速度が1500rpmに達すると、第1薬液バルブ18が開かれて、第1薬液ノズル8からウエハWの表面の回転中心に向けて第1薬液が供給される。ウエハWの表面に供給された第1薬液は、ウエハWの回転による遠心力によって、ウエハWの周縁に向けて流れる。これにより、ウエハWの表面に第1薬液を用いた第1薬液処理が施される(ステップS3)。ウエハWの周縁に向かって流れる第1薬液は、ウエハWの周縁から側方へ飛散し、ウエハWの端面に対向している第1開口部71に飛入する。第1開口部71に飛入した第1薬液は、第1傘状部材51の内面または第2傘状部材52の外面を伝って第1回収溝36に集められる。このとき、第1回収/廃液路39を流通する液は、第1分岐回収路40へと導かれるようになっている。そのため、第1回収溝36に集められた第1薬液は、第1分岐回収路40を通して、第1薬液用の回収設備に回収される。
【0044】
予め定める第1薬液処理時間が経過すると、第1薬液バルブ18が閉じられて、ウエハWへの第1薬液の供給が停止される。その後、ガード昇降駆動機構75が駆動されて、スプラッシュガード34が、ウエハWの端面に第4開口部74が対向する第4開口部対向位置まで上昇される。
スプラッシュガード34が第4開口部対向位置に達すると、純水バルブ21が開かれて、純水ノズル11から回転状態にあるウエハWの表面の回転中心に向けて純水が供給される。ウエハWの表面に供給された純水は、ウエハWの回転による遠心力によって、ウエハWの周縁に向けて流れる。これにより、ウエハWの表面に付着している第1薬液を純水によって洗い流すリンス処理が施される(ステップS4)。ウエハWの周縁に向けて流れる純水は、ウエハWの周縁から側方へ飛散する。ウエハWの周縁から飛散する純水(ウエハWから洗い流された第1薬液を含む。)は、ウエハWの端面に対向している第4開口部74に捕獲され、第4傘状部材54の内面を伝って廃液溝35に集められ、その廃液溝35から廃液路17を通して図外の廃液処理設備へ導かれる。
【0045】
予め定めるリンス時間が経過すると、純水バルブ21が閉じられて、ウエハWへの純水の供給が停止される。その後、ガード昇降駆動機構75が駆動されて、スプラッシュガード34が、ウエハWの端面に第2開口部72が対向する第2開口部対向位置まで下げられる。
スプラッシュガード34が第2開口部対向位置に達すると、第2薬液バルブ19が開かれて、第2薬液ノズル9から回転状態にあるウエハWの表面の回転中心に向けて第2薬液が供給される。ウエハWの表面に供給された第2薬液は、ウエハWの回転による遠心力によって、ウエハWの周縁に向けて流れる。これにより、ウエハWの表面に第2薬液を用いた第2薬液処理が施される(ステップS5)。ウエハWの周縁に向かって流れる第2薬液は、ウエハWの周縁から側方へ飛散し、ウエハWの端面に対向している第2開口部72に飛入する。第2開口部72に飛入した第2薬液は、第2傘状部材52の内面または第3傘状部材53の外面を伝って第2回収溝37に集められる。このとき、第2回収/廃液路43を流通する液は、第2分岐回収路44へと導かれるようになっている。そのため、第2回収溝37に集められた第2薬液は、第2分岐回収路44を通して、第2薬液用の回収設備に回収される。
【0046】
予め定める第2薬液処理時間が経過すると、第2薬液バルブ19が閉じられて、ウエハWへの第2薬液の供給が停止される。その後、ガード昇降駆動機構75が駆動されて、スプラッシュガード34が、ウエハWの端面に第4開口部74が対向する第4開口部対向位置まで上昇され、ステップS4と同様のリンス処理が実行される(ステップS6)。これにより、ウエハWの表面に付着している第2薬液が純水によって洗い流される。ウエハWの周縁から飛散する純水(ウエハWから洗い流された第2薬液を含む。)は、ウエハWの端面に対向している第4開口部74に飛入して廃液溝35へと導かれ、その廃液溝35から廃液路17を通して図外の廃液処理設備へ導かれる。
【0047】
予め定めるリンス時間が経過すると、純水バルブ21が閉じられて、ウエハWへの純水の供給が停止される。その後、ガード昇降駆動機構75が駆動されて、スプラッシュガード34が、ウエハWの端面に第3開口部73が対向する第3開口部対向位置まで下げられる。
スプラッシュガード34が第3開口部対向位置に達すると、第3薬液バルブ20が開かれて第3薬液ノズル10から回転状態にあるウエハWの表面の回転中心に向けて第3薬液が供給される。ウエハWの表面に供給された第3薬液は、ウエハWの回転による遠心力によって、ウエハWの周縁に向けて流れる。これにより、ウエハWの表面に第3薬液を用いた第3薬液処理が施される(ステップS7)。ウエハWの周縁に向かって流れる第3薬液は、ウエハWの周縁から側方へ飛散し、ウエハWの端面に対向している第3開口部73に飛入する。第3開口部73に飛入した第3薬液は、第3傘状部材53の内面または第4傘状部材54の外面を伝って第3回収溝38に集められる。このとき、第3回収/廃液路47を流通する液は、第3分岐回収路48へと導かれるようになっている。そのため、第3回収溝38に集められた第3薬液は、第3分岐回収路48を通して、第3薬液用の回収設備に回収される。
【0048】
予め定める第3薬液処理時間が経過すると、第3薬液バルブ20が閉じられて、ウエハWへの第3薬液の供給が停止される。その後、ガード昇降駆動機構75が駆動されて、スプラッシュガード34がウエハWの端面に第4開口部74が対向する第4開口部対向位置まで上昇される。また、遮断板昇降駆動機構29が駆動されて、遮断板22がウエハWの上面に近接する近接位置まで下降される。そして、遮断板純水バルブ25が開かれて、遮断板純水ノズル24からウエハWに対して純水が供給される。ウエハWの表面に供給された純水は、ウエハWの回転による遠心力によって、ウエハWの周縁に向けて流れる。これにより、ウエハWの表面に付着している第3薬液を純水によって洗い流すリンス処理が施される(ステップS8)。ウエハWの周縁に向けて流れる純水は、ウエハWの周縁から側方へ飛散する。ウエハWの周縁から飛散する純水(ウエハWから洗い流された第3薬液を含む。)は、ウエハWの端面に対向している第4開口部74に飛入し、第4傘状部材54の内面を伝って廃液溝35に集められ、その廃液溝35から廃液路17を通して図外の廃液処理設備へ導かれる。
【0049】
予め定めるリンス処理が終了すると、遮断板純水バルブ25が閉じられて、ウエハWへの純水の供給が停止される。その後、ガード昇降駆動機構75が駆動されて、スプラッシュガード34が退避位置まで上げられる。スプラッシュガード34が退避位置に達すると、ウエハWの回転速度がたとえば3000rpmに上げられて、リンス処理後のウエハWの表面に付着している純水を遠心力で振り切って乾燥させるためのスピンドライが行われる(ステップS9)。このスピンドライ時には、遮断板回転駆動機構30が駆動されて、遮断板22がウエハWと同じ方向にほぼ同速度で高速回転される。また、窒素ガスバルブが開かれて、窒素ガス流通路26の開口から、ウエハWと遮断板22との間の空間に窒素ガスが供給される。これにより、ウエハWと遮断板22との間の空間に窒素ガスの安定した気流が生じ、ウエハWの表面に純水の跡などを残すことなく、ウエハWを良好に乾燥させることができる。予め定めるスピンドライ時間が経過すると、遮断板昇降駆動機構29が駆動されて、遮断板22が退避位置まで上昇される。また、ウエハWの回転が停止されて(ステップS10)、処理済みのウエハWが図示しない搬送ロボットにより搬出されていく(ステップS11)。
【0050】
この基板処理装置では、各処理ユニット1〜4ごとに、予め定める枚数のウエハWの処理が行われる度に、後述する処理カップ洗浄処理が行われる。つまり、前回の処理カップ洗浄処理が行われてからの処理枚数が予め定める枚数未満の場合は(ステップS12でNO)、処理カップ洗浄処理は行われず、この一連の処理は終了する。一方、今回のウエハWの処理により、前回の処理カップ洗浄処理が行われてからの処理枚数が予め定める枚数に達した場合には(ステップS12でYES)、次に述べる処理カップ洗浄処理が実行される。
【0051】
図5は、処理カップ洗浄処理の流れを示すフローチャートである。
処理カップ洗浄処理では、回転状態にあるスピンベース14の上面に対して洗浄液としての純水が供給される。スピンベース14の上面の周縁から飛散する純水は、ウエハWに対する処理時におけるウエハWの周縁から飛散する純水および第1〜第3薬液とほぼ同じ方向に向けて飛散する。これにより、スプラッシュガード34が第1開口部対向位置にあるとき、スピンベース14の上面の周縁から飛散する純水は、第1開口部71に飛入し、スプラッシュガード34が第2開口部対向位置にあるとき、スピンベース14の上面の周縁から飛散する純水は第2開口部92に飛入する。また、スプラッシュガード34が第3開口部対向位置にあるとき、スピンベース14の上面の周縁から飛散する純水は第3開口部92に飛入し、スプラッシュガード34が第4開口部対向位置にあるとき、スピンベース14の上面の周縁から飛散する純水は第4開口部74に飛入する。
【0052】
第1切換えバルブ42、第2切換えバルブ46および第3切換えバルブ50が切換え制御され、これにより、第1回収/廃液路39を流通する液は第1分岐廃液路41に導かれ、第2回収/廃液路43を流通する液は第2分岐廃液路45に導かれ、第3回収/廃液路47を流通する液は第3分岐廃液路49に導かれるようになる(ステップT1)。その後、チャック回転駆動機構16が制御されて、スピンチャック6(スピンベース14)の回転が開始される(ステップT2)。
【0053】
スピンチャック6の回転速度が500〜100rpmの間の所定の回転速度に達すると、純水バルブ21が開かれて、純水ノズル11からスピンベース14の上面の回転中心に向けて純水が供給される(ステップT3)。スピンベース14の上面に供給された純水は、スピンベース14の回転による遠心力によって、スピンベース14の周縁に向けて流れ、スピンベース14の周縁から側方へ飛散する。このとき、スプラッシュガード34は退避位置に位置されており、スピンベース14の上面の周縁から側方へ飛散する純水は、第1傘状部材51の外面を伝って図示しない廃液路から図外の廃液処理設備へ導かれる。これにより、第1傘状部材51の外面が純水で洗浄される。
【0054】
予め定める洗浄時間(たとえば、5秒間〜10秒間)が経過すると(ステップT4でYES)、ガード昇降駆動機構75が制御されて、スプラッシュガード34が退避位置から第1開口部対向位置へと上昇される(ステップT5)。これにともなって、スピンベース14の上面の周縁から側方へ飛散する純水は、第1開口部71に飛入する。第1開口部71から飛入した純水は、第1傘状部材51の内面または第2傘状部材52の外面を伝って第1回収溝36に集められ、その第1回収溝36から第1回収/廃液路39へと送られる。これにより、第1傘状部材51の内面、第2傘状部材52の外面および第1回収溝36、すなわち第1空間81の内壁が純水で洗浄される。また、ステップT1における第1切換えバルブ42の切換えによって、第1回収/廃液路39を流通する液が第1分岐廃液路40に導かれるようになっているので、第1回収/廃液路39を流通する純水は第1分岐廃液路40を通して図外の廃液処理設備へ導かれる。
【0055】
予め定める洗浄時間(たとえば、5秒間〜10秒間)が経過すると(ステップT6でYES)、ガード昇降駆動機構75が制御されて、スプラッシュガード34が、前述の第2開口部対向位置まで上昇される(ステップT7)。これにともなって、スピンベース14の上面の周縁から側方へ飛散する純水は、第2開口部72に飛入する。第2開口部72から飛入した純水は、第2傘状部材52の内面または第3傘状部材53の外面を伝って第2回収溝37に集められ、その第2回収溝37から第2回収/廃液路43へと送られる。これにより、第2傘状部材52の内面、第3傘状部材53の外面および第2回収溝37、すなわち第2空間82の内壁が純水で洗浄される。また、ステップT1における第2切換えバルブ46の切換えによって、第2回収/廃液路43を流通する液が第2分岐廃液路45に導かれるようになっているので、第2回収/廃液路43を流通する純水は第2分岐廃液路45を通して図外の廃液処理設備へ導かれる。
【0056】
予め定める洗浄時間(たとえば、5秒間〜10秒間)が経過すると(ステップT8でYES)、ガード昇降駆動機構75が制御されて、スプラッシュガード34が、前述の第3開口部対向位置まで上昇される(ステップT9)。これにともなって、スピンベース14の上面の周縁から側方へ飛散する純水は、第3開口部73に飛入する。第3開口部73から飛入した純水は、第3傘状部材53の内面または第4傘状部材54の外面を伝って第3回収溝38に集められ、その第3回収溝38から第3回収/廃液路47へと送られる。これにより、第3傘状部材53の内面、第4傘状部材54の外面および第3回収溝38、すなわち第3空間83の内壁が純水で洗浄される。また、ステップT1における第3切換えバルブ50の切換えによって、第3回収/廃液路47を流通する液は第3分岐廃液路49に導かれるようになっているので、第3回収/廃液路47を流通する純水は第3分岐廃液路49を通して図外の廃液処理設備へ導かれる。
【0057】
予め定める洗浄時間(たとえば、5秒間〜10秒間)が経過すると(ステップT10でYES)、ガード昇降駆動機構75が制御されて、スプラッシュガード34が、前述の第4開口部対向位置まで上昇される(ステップT11)。回転状態にあるスピンベース14の上面の周縁から側方へ飛散する純水は、前述の第4開口部74に飛入する。第4開口部74から飛入した純水は、第4傘状部材54の内面を伝って廃液溝35に集められ、その廃液溝35から廃液路17へと送られる。これにより、第4傘状部材54の内面および廃液溝35、すなわち第4空間84の内壁が純水で洗浄される。廃液路17に送られた純水は図外の廃液処理設備へと導かれる。
【0058】
予め定める洗浄時間(たとえば、5秒間〜10秒間)が経過すると(ステップT12でYES)、純水バルブ21が閉じられて、スピンベース14の上面への純水の供給が停止される(ステップT13)。また、スピンベース14の回転が停止される(ステップT14)。
その後、ガード昇降駆動機構75が駆動されて、スプラッシュガード34が退避位置へと下降される(ステップT15)。また、第1切換えバルブ42、第2切換えバルブ46および第3切換えバルブ50が切換え制御され、これにより、その後に第1回収/廃液路39を流通する液は第1分岐回収路40に導かれ、第2回収/廃液路43を流通する液は第2分岐回収路44に導かれ、第3回収/廃液路42を流通する液は第3分岐回収路48に導かれるようになる(ステップT16)。
【0059】
図6は、基板処理装置の再起動処理時における処理を説明するためのフローチャートである。
緊急停止スイッチ92の押操作により電源供給が遮断された処理ユニット1を再起動させるためには、基板処理装置が一度電源オフされる必要がある。その後、基板処理装置が再度電源オンされて、かつ、原点復帰スイッチ95が操作されることにより、処理ユニット1は基板処理動作可能な状態に復帰する。
【0060】
図示しない電源投入スイッチが押操作された後(ステップE1)、原点復帰スイッチ95が押操作されるか否かが監視される。原点復帰スイッチ95が押操作されると(ステップE2でYES)、各ユニット1〜4でスプラッシュガード34や遮断板22が順次に退避位置(原点位置)に復帰される原点復帰処理が行われる(ステップE3)。原点復帰処理の完了後には、基板処理装置の各ユニット1〜4においてウエハWに対する処理が可能な状態となる。
【0061】
ところで、前回の処理ユニット1の緊急停止のタイミングが回転中のウエハWへの第1薬液の供給の途中であると、第1薬液の飛入が予定されていない第2開口部72、第3開口部73および第4開口部74の内壁に第1薬液が付着していることがある。
具体的に説明すると、スピンチャック6によるウエハWの回転中に緊急停止スイッチ92が押操作されると、スピンチャック6への電力供給が遮断された後も、ウエハWは徐々に速度を下げながら回転し続ける。そのため、たとえば回転状態のウエハWに対して第1薬液が供給されている途中に緊急停止スイッチ92が押操作されると、ウエハWから飛散する第1薬液の飛散方向がウエハWの回転速度にともなって変化し、ウエハWが回転停止するまでの間に、第2〜第4開口部72〜74へも第1薬液が飛入して、第2〜第4開口部72〜74の内壁に第1薬液が付着する。
【0062】
第2開口部72の内壁に第1薬液が付着していると、ウエハWの処理が再開されて、第2薬液が第2開口部72に飛入したときに、第2開口部72において第1薬液と第2薬液との混触が生じる。また、第3開口部73の内壁に第1薬液が付着していると、第3薬液が第3開口部73から飛入したときに、第3開口部73において第1薬液と第3薬液との混触が生じる。
【0063】
そこで、ステップE3の原点復帰処理が完了してから、ウエハWの処理が行われるまでの間に、図5の処理カップ洗浄処理が実行される(ステップE5)。この実施形態ではステップE3の原点復帰処理の完了後には、メイン制御部70のメモリ68から、処理カップ洗浄処理のためのレシピが読み出され(ステップE4)、その後処理カップ洗浄処理が実行される。これにより、第2〜第4開口部72〜74の内壁に付着している第1薬液は洗い流される。
【0064】
基板処理装置の再起動処理時には、全ての処理ユニット1〜4で同時に原点復帰処理が行われる。このため全ての処理ユニット1〜4では、処理カップ洗浄処理が一斉に行われることとなる。
以上のようにこの実施形態によれば、原点復帰処理の完了後、ウエハWの処理が開始されるまでの間に処理カップ洗浄処理が実行される。前回の処理ユニット1の緊急停止の際に第1〜第4開口部71〜74のいずれかの内壁に付着した薬液は、ウエハWから飛散した薬液(第2薬液)が第2開口部72に達する前に洗い流される。このため、第1〜第4空間81〜84で互いに種類の異なる薬液が混触することがない。これにより、処理カップ7での互いに種類の異なる薬液の混触を防止することができる。ゆえに、処理カップ7の損傷の発生や有害ガスの発生を防止することができる。
【0065】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、さらに他の形態で実施することができる。
前述の説明では、全ての処理ユニット1〜4で処理カップ洗浄処理が一斉に行われるとして説明したが、電源供給および原点復帰処理を、処理ユニット1〜4ごとに行うことができる場合には、処理ユニット1〜4ごとに処理カップ洗浄処理を行ってもよい。
【0066】
また、処理カップ洗浄処理は、原点復帰処理の完了後ではなく、電源オン時のウォームアップ処理時に実行されていてもよい。
たとえば、基板処理装置では、リモコンを各処理ユニット1〜4に選択的に接続することによって各処理ユニット1〜4の各部をマニュアル操作することが可能である。たとえば、ウエハWから飛散する第1薬液が第1開口部71に飛入するか否かを確認する検査では、オペレータは、スピンチャック6の回転および第1薬液ノズル8からの第1薬液の供給をマニュアル操作により行いつつ、スプラッシュガード34の高さ位置を調整する。
【0067】
この検査の終了後、基板処理装置が電源オフされると、メイン制御部70のメモリ68がリセットされる。これにより、検査時に第1薬液を使用していたという履歴が消去される。検査時には、スプラッシュガード34の高さ位置の調整過程において第2開口部72などに第1薬液などが飛入し、第2開口部72などの内壁に第1薬液が付着することがある。そこで、電源オン時のウォームアップ処理時に処理カップ洗浄処理が実行され、これにより、種類の異なる薬液の混触を防止することができる。
【0068】
さらに、前述の説明では、各処理ユニット1〜4ごとに、予め定める枚数のウエハWの処理が行われる度に処理カップ洗浄処理が行われるとして説明したが、予め定める数のカセットC数に相当する枚数のウエハWの処理や、予め定める数のプロダクト数(処理に用いられるレシピ数)の処理が行われる度に、前述の処理カップ洗浄処理が行われてもよい。また、処理ユニット1〜4の稼動時間が予め定められた時間に達する度に、前述の処理カップ洗浄処理を行ってもよい。さらにまた、この処理カップ洗浄処理が、基板処理装置全体の処理枚数が予め定める枚数に達したときに実行される場合には、基板処理装置の全ての処理ユニット1〜4で処理カップ洗浄処理が同時に実行される。
【0069】
前述の実施形態では、処理カップ洗浄処理において純水ノズル11が用いられるとして説明したが、純水ノズル11に代えて遮断板22の遮断板純水ノズル24が処理カップ洗浄処理に用いられてもよい。この場合、遮断板22を近接位置まで下降させつつ、遮断板純水ノズル24からスピンベース14の上面に向けて洗浄液としての純水が供給される。
また、遮断板22の洗浄用純水ノズル31を用いて処理カップ洗浄処理を行うこともできる。再び図2を参照して、処理カップ洗浄処理では、洗浄用純水バルブ32が開かれて、洗浄用純水ノズル31から遮断板22の上面に純水が供給される。また、遮断板回転駆動機構30が制御されて遮断板22が回転される。洗浄用純水ノズル31から遮断板22の上面と回転軸23の外周面との境界部付近に供給された純水は、遮断板22の回転による遠心力によって遮断板22の上面を周縁に向けて流れ、遮断板22の周縁から側方へ飛散する。
【0070】
遮断板22が、第1開口部71が遮断板22の端面に対向する位置にあるとき、遮断板22の周縁から飛散する純水は、第1開口部71に飛入する。遮断板22が、第2開口部72が遮断板22の端面に対向する位置にあるとき、遮断板22の周縁から飛散する純水は、第2開口部72に飛入する。また、遮断板22が、第3開口部73が遮断板22の端面に対向する位置にあるとき、遮断板22の周縁から飛散する純水は、第3開口部73に飛入する。さらにまた、遮断板22が、第4開口部74が遮断板22の端面に対向する位置にあるとき、遮断板22の周縁から飛散する純水は、第4開口部74に飛入する。このため、遮断板昇降駆動機構29が制御されて、遮断板22が退避位置と近接位置との間で繰り返し昇降されることにより、第1〜第4開口部71〜74から純水を飛入させることができ、これにより、処理カップ7の第1〜第4空間81〜84の内壁を純水で洗浄することができる。
【0071】
この遮断板22の洗浄用純水ノズル31を用いた処理カップ洗浄処理は、処理カップ7だけを洗浄するものに限られず、処理チャンバ5の隔壁の内面や各種ノズル8〜11なども併せて洗浄する構成であってもよい。
また、前述の説明では、回転するスピンベース14の上面に対して洗浄液が供給され、スピンベース14の回転による遠心力によってスピンベース14の周縁から側方へ飛散した洗浄液によって、処理カップの洗浄処理が行われるとしたが、スピンベース14の上方においてスピンチャック6に保持されて回転されているウエハWの上面に対して洗浄液が供給され、ウエハWの回転による遠心力によってウエハWの周縁から側方へ飛散した洗浄液によって、処理カップの洗浄処理が行われてもよい。これは、たとえば、ウエハW処理中のトラブルによって装置が停止された後に、ウエハWがスピンチャック6に残留されたまま装置を再起動した場合に行われてもよい。また、この場合において、装置停止後にはウエハW上に前回の処理薬液が残留しており、このウエハW上の残留薬液を洗い流すことにより、ウエハW上での混触を防止することもできる。
【0072】
さらにまた、前述の説明では、処理カップ7の洗浄に用いられる洗浄液として純水を用いるとして説明したが、洗浄液としてこれ以外に電解イオン水、炭酸水、還元水、有機溶剤、過酸化水素水、希塩酸を例示することができる。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】この発明の一実施形態に係る基板処理装置のレイアウトを示す図解的な平面図である。
【図2】この発明の一実施形態に係る基板処理装置の処理ユニットの構成例を図解的に示す断面図である。
【図3】基板処理装置の制御系の構成を説明するためのブロック図である。
【図4】処理ユニットにおいて行われる処理例を説明するためのフローチャートである。
【図5】処理カップ洗浄処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】基板処理装置の再起動処理時における処理を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0074】
1,2,3,4 処理ユニット
5 処理チャンバ
6 スピンチャック(基板回転手段)
7 処理カップ
8 第1薬液ノズル(第1薬液供給手段)
9 第2薬液ノズル(第2薬液供給手段)
10 第3薬液ノズル
11 純水ノズル(洗浄液供給手段)
25 遮断板純水ノズル(洗浄液供給手段)
31 洗浄用純水ノズル(洗浄液供給手段)
71 第1開口部
72 第2開口部
73 第3開口部
74 第4開口部
75 ガード昇降駆動機構(移動手段)
80 ローカル制御部(制御手段)
81 第1空間
82 第2空間
83 第3空間
84 第4空間
W ウエハ(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持しつつ回転させる基板回転手段と、
前記基板回転手段によって回転される基板に対して、第1薬液を供給する第1薬液供給手段と、
前記基板回転手段によって回転される基板に対して、第1薬液と種類の異なる第2薬液を供給する第2薬液供給手段と、
前記基板回転手段による基板の回転軸線を取り囲むように形成され、基板から飛散する第1薬液を進入させるための第1開口部、および前記第1開口部から進入した第1薬液が導かれる第1空間、ならびに、前記回転軸線と平行な方向に前記第1開口部と異なる位置において前記回転線を取り囲むように形成され、基板から飛散する第2薬液を進入させるための第2開口部、および前記第2開口部から進入した第2薬液が導かれる第2空間を有する処理カップと、
所定の起動処理後、前記第1薬液供給手段による第1薬液の供給開始または前記第2薬液供給手段による第2薬液の供給開始までの間に、前記第1開口部および前記第2開口部からそれぞれ第1空間および第2空間に洗浄液を供給して、前記第1空間内および前記第2空間内を洗浄する洗浄手段とを含むことを特徴とする、基板処理装置。
【請求項2】
前記所定の起動処理は、装置の各部を原点復帰させるための原点復帰処理を含むことを特徴とする、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記基板回転手段と前記処理カップとを前記回転軸線と平行な方向に相対的に移動させる移動手段をさらに含み、
前記洗浄手段は、前記回転手段に向けて洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、前記洗浄液供給手段および前記移動手段を制御して、前記基板回転手段から飛散する洗浄液を、それぞれ第1空間および第2空間に選択的に供給する制御手段とを備えることを特徴とする、請求項1または2記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−205311(P2008−205311A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−41312(P2007−41312)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】