説明

基板処理装置

【課題】メンテナンス頻度を抑える。
【解決手段】プラズマ生成空間と、該プラズマ生成空間に第1のガスを供給する第1ガス供給部と、前記プラズマ生成空間に供給される第1のガスをプラズマ化させ、プラズマ化された前記第1のガスのラジカルを生成するプラズマ生成部と、前記プラズマ生成空間でプラズマ化された前記第1のガスのラジカル成分を抽出する抽出部と、前記第1のガスと異なる第2のガスを供給する第2ガス供給部と、前記抽出部から抽出されるラジカルと前記第2ガス供給部から供給される前記第2のガスとを反応させて基板を処理する処理室とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板処理装置、特にプラズマCVD装置に好適なものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、IC、LSI等の半導体装置の製造工程の一工程として、プラズマCVD装置を用いて基板に対し所定のプラズマCVD処理、例えば成膜処理を施すことが行われている。
図4に、そのようなCVD処理を施す従来のプラズマCVD装置構成の一例を示す。反応管101に、材料ガスを導入するためのガス導入部102が設けられている。ガス導入部102の下流側に、導入されたガスを反応管101の内壁に沿って流れるようにするためのバッフル板103が設けられている。反応管101の外周に、ガス中に放電を起こさせ、プラズマを発生させるためのコイル104が設けられている。コイル104に高周波電力を供給する高周波電源105が接続されている。反応管101の下部に、基板108上に所望の膜を堆積させるための処理容器106が設けられている。処理容器106内には、基板108を搭載するサセプタ107が設けられている。サセプタ107の下部にガスの流れを一様にするバッフルリング109が設けられている。コイル104の外周に、高周波電力を装置内に留めて外部に漏れないようにするためのシールド110が設けられている。
【0003】
成膜は次のような工程で行われる。複数の混合した材料ガスをガス導入部102より反応管101に導入する。コイル104に高周波電源105から高周波電力を供給し、反応管101のガス中に放電を誘起し、プラズマを形成させる。プラズマ放電によって材料ガスはラジカルやイオン化し、気相中でCVD反応が起きる。その反応生成物が、サセプタ107からの輻射伝熱によって加熱された基板108に接触し、基板108上に堆積し所望の膜が形成される。
【0004】
このように従来のプラズマCVD装置は、複数の材料ガスをガス導入部に到達する前に混合させて、反応管に導入している(例えば、特許文献1参照)。これは、プラズマCVD処理の場合、その反応に用いられる材料ガスは、混合しただけでは反応を起こさず、プラズマからのエネルギーを得て初めて分解し気相反応を起こすからである。従って、通常は処理室導入前に材料ガスを混合させるようになっている。
【0005】
なお、プラズマCVD装置ではなく、熱CVD装置を用いて基板に対し所定の熱処理を施す場合には、複数の材料ガスを処理室に導入した後に混合させている(例えば、特許文献1、2参照)。これは、熱CVD処理の場合、その反応に用いられる材料ガスは、混合するだけで分解し気相反応を起こすからである。
【特許文献1】特開2002−180250号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、処理室導入前に複数のガスを混合させている従来のプラズマを用いた基板処理装置では、プラズマが生成されるプラズマ生成空間であるプラズマ生成室で既に反応が起き反応生成物が形成されるため、その反応生成物がプラズマ生成室の壁などに付着してしまう。そのために処理室に堆積した膜のクリーニングやメンテナンスの頻度(以下、メンテナンス頻度ともいう)が高くなるという問題があった。
【0007】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解消して、メンテナンス頻度を抑えることが可
能な基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の第1の主要な観点によれば、プラズマ生成室と、該プラズマ生成室に隣接する処理室と、前記プラズマ生成室と前記処理室とを区画するシャワープレートとを備え、前記プラズマ生成室は、該プラズマ生成室に反応性の低いガスを供給する低反応性ガス供給手段と、前記反応性の低いガスのラジカルを生成するためのプラズマ源とを有し、前記処理室は、基板を保持する基板保持台と、前記処理室に前記反応性の低いガスよりも反応性の高いガスを供給するための高反応性ガス供給手段と、前記処理室を排気する排気手段とを有し、前記シャワープレートは、前記プラズマ生成室で生成される前記反応性の低いガスのラジカルを前記処理室に導入する第1の通孔と、前記高反応性ガス供給手段からの前記反応性の高いガスを前記ラジカルとは個別に前記処理室に導入する第2の通孔とを有する基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、メンテナンス頻度を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の色々な例示的実施態様について詳細に説明する。各図面を通じて、同様の部分については同様の番号を付す。
既に述べた通り、複数のガスを予め混合してからプラズマ生成空間に導入すると、プラズマ生成空間で気相反応が起きて、反応生成物が形成されるため、プラズマ生成空間内の反応生成物の付着面積が増加し、クリーニングなどのメンテナンスの手間が増加する。
【0011】
本発明の実施の態様によれば、第1のガスをプラズマ生成空間でプラズマ化してラジカルを形成した後、処理室に、この第1のガスのラジカルと第2のガスとを個別に導入し、ラジカルと第2のガスを処理室で初めて混合させる。このように処理室でラジカルと第2のガスとを初めて混合させることで、プラズマ生成空間内の反応生成物の付着面積を低減させ、クリーニングなどのメンテナンスの手間を低減させることが可能となる。
【0012】
本発明の実施態様の基板処理装置は、プラズマ生成空間と、第1ガス供給部と、プラズマ生成部と、抽出部と、第2ガス供給部と、処理室とを備えている。
【0013】
プラズマ生成空間は、該プラズマ生成空間に供給されたガスを用いてプラズマが生成される。第1ガス供給部は、プラズマ生成空間に第1のガスを供給する。プラズマ生成部は、プラズマ生成空間に供給される第1のガスをプラズマ励起して第1のガスのラジカルを生成する。抽出部は、プラズマ生成空間と処理室との間に設けられ、プラズマ生成空間で生成された第1のガスのラジカル成分を抽出して処理室に供給する。ここで、ラジカル成分を抽出してとは、プラズマ生成空間で生成されたイオン、電子、ラジカルの各成分うち、ラジカル成分のみを取り出すことをいう。第2ガス供給部は、第1のガスと異なる第2のガスを供給する。第1のガスはプラズマによって活性化され、第2のガスはプラズマによることなく、基板処理条件に応じて活性化される。処理室は、抽出部から抽出される第1のガスのラジカルと第2ガス供給部から供給される第2のガスとを反応させて基板を処理する。基板は半導体基板、LCD基板、ガラス基板等がある。
【0014】
第1ガス供給部からプラズマ生成空間に第1のガスが供給されると、プラズマ生成部によって第1のガスがプラズマ励起されラジカルが生成される。プラズマ生成空間で生成された第1のガスのラジカル成分は抽出部から抽出されて処理室に供給される。第1のガスと異なる第2のガスが処理室に供給される。処理室では、抽出部から抽出された第1のガスのラジカルと第2ガス供給部から供給された第2のガスとが初めて混合して反応し、基
板が処理される。このように処理室で初めて第1のガスのラジカルと第2のガスとを混合して反応させることで、プラズマ生成空間内の反応生成物の付着面積が低減し、クリーニングなどのメンテナンスの手間を低減させることが可能となる。
【0015】
ここで、上記抽出部は、第1のガスのラジカル成分をプラズマ生成空間から抽出して処理室に供給するものである限り、何ら特定のものに限定されない。例えば、抽出部は、抽出される第1のガスのラジカル成分を処理室に導入する第1の通孔と、第2ガス供給部と接続されて第2のガスを処理室に導入する第2の通孔とを有することも可能である。実施態様によっては、上記抽出部は、処理される基板に向かってラジカルないしガスをシャワー状に吹き出すシャワープレートであることもある。また、第1のラジカルと第2のガスとを初めて混合させる箇所は、基板に近い箇所であることが好ましく、抽出部の直下であることがより好ましい。
【0016】
図1に本発明の一実施の形態の基板処理装置に用いられるプラズマ処理ユニット410の詳細が示されている。ここでは、基板処理として所望の膜を堆積させる成膜処理について説明する。
【0017】
プラズマ処理ユニット410は、半導体基板や半導体素子にプラズマCVD処理を施す高周波無電極放電型のプラズマ処理ユニットである。プラズマ処理ユニット410は、図1に示すように、プラズマ生成部としてのプラズマソース430、反応容器431、処理容器464、高周波電源444、及び高周波電源444の発振周波数を制御する周波数整合器446を備えている。例えば、架台としての水平なベースプレート448の上部に前記のプラズマソース430を配置し、ベースプレート448の下部に処理容器464を配置して構成される。
【0018】
プラズマソース430は、反応容器431の外周に巻回された共振コイル432と、共振コイル432の外周に配置され且つ電気的に接地された外側シールド452とから構成される。共振コイル432は反応容器431の内部のガス中に放電を起こさせ、プラズマを発生させるためのコイルである。共振コイル432は、絶縁性材料にて平板状に形成され且つベースプレート448の上端面に鉛直に立設された複数のサポートによって支持される。外側シールド452は、共振コイル432の外側への電磁波の漏れを遮蔽するとともに、共振回路を構成するのに必要な容量成分を共振コイル432との間に形成するために設けられる。外側シールド452は、一般的には、アルミニウム合金、銅又は銅合金などの導電性材料を使用して円筒状に形成される。
【0019】
高周波電源444は、プラズマソース430(特に共振コイル432)に高周波電力を供給する。高周波電源444の出力側にはRFセンサ468が設置され、進行波、反射波等をモニタしている。RFセンサ468によってモニタされた反射波電力は、周波数整合器446に入力される。周波数整合器446は、反射波が最小となるよう周波数を制御する。
【0020】
コントローラ470は、単に高周波電源444のみを制御するものではなく、プラズマ処理ユニット410全体の制御を行っている。コントローラ470には、表示部であるディスプレイ472が接続されている。ディスプレイ472は、例えば、RFセンサ468による反射波のモニタ結果等、プラズマCVD装置に設けられた各種検出部で検出されたデータ等を表示する。
【0021】
反応容器431は、減圧可能に構成され、且つプラズマ用の第1の反応ガスが供給され、内部にプラズマ生成空間としてのプラズマ生成室420を形成する。反応容器431には、第1の反応ガスを供給する第1ガス供給部としての低反応性ガス供給部が設けられる
。第1の反応ガスは反応性の低い材料ガスである。反応容器431の内部に形成されるプラズマ生成室420は、反応性の低い材料ガスのラジカルを生成する。
【0022】
処理容器464は、減圧可能に構成され、且つプラズマ用の第1の反応ガスのラジカルと成膜用の第2の反応ガスが供給され、内部に処理室445を形成する。処理容器464には、第2の反応ガスを供給する第2ガス供給部としての高反応性ガス供給部が設けられる。第2の反応ガスは第1の反応ガスと比べて反応性の高い材料ガスである。処理容器464の内部に形成される処理室445は、半導体基板などのウエハ600を収容して所望の膜を堆積させる。処理容器464は、通常、アルミニウム又はアルミニウム合金(例えばアルミナAl)で構成される。
【0023】
上述した反応容器431は、通常、高純度の石英硝子やセラミックスにて円筒状に形成された所謂チャンバである。反応容器431は、通常、軸線が垂直になるように配置され、トッププレート454及び処理容器464によって上下端が気密に封止される。トッププレート454は、通常、アルミニウム又はアルミニウム合金(例えばアルミナAl)で構成される。反応容器431の下方の処理容器464内には、複数(例えば4本)の支柱461によって支持される基板保持台としてのサセプタ459が設けられる。サセプタ459はウエハ600を載置する。サセプタ459には、サセプタテーブル411及びサセプタ459上のウエハ600を加熱する基板加熱部としてのヒータ463が具備される。
本実施の形態では、サセプタ459の上で複数のガスが混合されるが、反応生成物の付着面積を低減するためには、複数のガスを混合させる箇所は、サセプタ459上に載置されたウエハ600に近い箇所、例えば後述するシャワープレート322の直下であることが好ましい。
【0024】
サセプタ459の下方に、排気板465が配設される。排気板465は、ガイドシャフト467を介して底板469に支持され、底板469は処理室445の下面に気密に設けられる。昇降基板471がガイドシャフト467をガイドとして昇降自在に動くように設けられる。昇降基板471は、少なくとも3本のリフターピン413を支持している。
【0025】
リフターピン413は、サセプタ459を貫通する。そして、リフターピン413の頂には、ウエハ600を支持するウエハ支持部414が設けられている。
【0026】
ウエハ支持部414は、サセプタ459の中心方向に延出している。リフターピン413の昇降によって、ウエハ600をサセプタテーブル411に載置し、あるいはサセプタテーブル411から持ち上げることができる。
【0027】
底板469を経由して、昇降駆動部(図示略)の昇降シャフト473が昇降基板471に連結されている。昇降駆動部が昇降シャフト473を昇降させることで、昇降基板471とリフターピン413を介して、ウエハ支持部414が昇降する。
【0028】
サセプタ459と排気板465の間に、バッフルリング458が設けられる。バッフルリング458は処理室445と排気系との間にある排気抵抗の役割を持つ。バッフルリング458、サセプタ459、排気板465で第一排気室474が形成される。円筒状のバッフルリング458は、通気孔が多数均一に設けられている。従って、第一排気室474は、処理室445と仕切られ、また通気孔によって、処理室445と連通している。
【0029】
排気板465に、排気連通孔475が設けられる。排気連通孔475によって、第一排気室と第二排気室476が連通される。第二排気室476には、排気管480が連通されており、排気管480には排気装置479が設けられている。上記排気管480と排気装
置479から処理室445を排気する排気手段が構成される。
【0030】
反応容器431の上部のトッププレート454には、第1ガス供給ユニットから伸長され且つ所要のプラズマ用の反応ガスを供給するための第1ガス供給管455が、第1ガス導入口433に付設されている。第1ガス供給ユニットは、ガスの流量を制御する機能を持ち、具体的には流量制御部であるマスフローコントローラ477及び開閉弁478を有している。マスフローコントローラ477及び開閉弁478を制御することで、ガスの供給量を制御する。上記第1ガス導入口433、第1ガス供給管455、第1ガス供給ユニット等から上記低反応性ガス供給部が構成される。
【0031】
また、反応容器431内には、反応ガスを反応容器431の内壁に沿って流れるようにするための略円板形で、石英からなるバッフル板460が設けられている。バッフル板460は第1ガス導入口433から導入されたガスを反応容器431の内壁に沿って流れるようにする。バッフル板460は複数の支柱462によってトッププレート454に支持されている。第1ガス導入口433に付設されてプラズマ生成室420内に導かれる第1ガス供給管455はバッフル板460を貫通する。
【0032】
上記プラズマ生成室420と、このプラズマ生成室420に隣接する処理室445との間に、抽出部としてのシャワープレート322が設けられる。シャワープレート322は、プラズマ生成室420と処理室445とを区画形成する。シャワープレート322は、プラズマ生成室420と処理室445とを連通する第1の通孔としてのラジカル噴出孔315と、第2ガス供給管311と処理室445とを連通して第2のガスとしての反応性の高い材料ガスを供給する第2の通孔としての高反応性ガス噴出孔316とを有する。
【0033】
反応容器431の下部のベースプレート448には、第2ガス供給ユニットから伸長され且つ所要の成膜用の反応ガスを供給するための第2ガス供給管311が、第2ガス導入口310に付設されている。第2ガス供給ユニットは、ガスの流量を制御する機能を持ち、具体的には流量制御部であるマスフローコントローラ313及び開閉弁312を有している。マスフローコントローラ313及び開閉弁312を制御することで、ガスの供給量を制御する。上記第2ガス導入口310、第2ガス供給管311、第2ガス供給ユニット等から上記高反応性ガス供給部が構成される。
【0034】
ラジカル噴出孔315は、反応性の低い材料ガスのラジカルをプラズマ生成室420から抽出して処理室445に供給する。高反応性ガス噴出孔316は、高反応性ガス供給手段から導入される反応性の高い材料ガスを処理室445に供給する。
【0035】
尚、マスフローコントローラ313、477及び排気装置479によって供給量、排気量を調整することにより、処理室445の圧力が調整される。
【0036】
図2に上述したシャワープレート322の詳細構造を示す。シャワープレート322はプラズマ生成室420と処理室445とを隔てる機能と、プラズマ生成室420から処理室445へ反応性の低い材料ガスのラジカル成分を通過させる機能と、第2ガス導入口310から処理室445へ反応性の高い材料ガスを導入する機能とを有する。
【0037】
前記シャワープレート322は、図2(a)に示すように、複数の噴出孔を有し、処理されるウエハ600に向かってラジカルとガス(これらを単にガスというときもある)をシャワー状に個別に吹き出す。複数の噴出孔は、図2(b)に示すように、プラズマ生成室420で生成された反応性の低いガスのラジカル成分を処理室445に噴出する複数のラジカル噴出孔315と、第2ガス供給管311と接続されて反応性の高いガスを処理室445に噴出する複数の高反応性ガス噴出孔316とから構成される。
【0038】
板状のシャワープレート322は中空状に形成される。複数のラジカル噴出孔315は、中空のシャワープレート322を板厚方向に貫通して形成される。シャワープレート322の中空部は、複数の高反応性ガス噴出孔316に対して共通のバッファ室317となる。複数の高反応性ガス噴出孔316は、このバッファ室317と連通する。バッファ室317は第2ガス導入口310と連通する。
【0039】
プラズマ生成室420で生成された反応性の低いガス202のラジカル成分は、シャワープレート322のラジカル噴出孔315を通過し、処理室445に噴射される。一方、反応性の高いガス201は第2ガス導入口310からシャワープレート322内部のバッファ室317に導入され、高反応性ガス噴出孔316を通過し、処理室445に噴射される。
【0040】
上述したシャワープレート322は、例えば、図3に示すように容器331と、底板332と、複数の中空ピン333とを接合することにより構成することができる。容器331は、上部が閉じ底部が開いた浅い円筒形の容器で構成され、上部に複数の孔334が所定の間隔を開けて均一に設けられている。底板332は、容器331の底部を塞ぐ板状部材から構成され、前記孔334に対応する箇所に複数の孔335が開けられ、さらに複数の高反応性ガス噴出孔316が前記孔335と重ならないように所定の間隔を開けて均一に設けられている。中空ピン333は、その内部の孔がラジカル噴出孔315を構成する。容器331の上部と底板332とにそれぞれ設けた孔334、335を合わせて挿入孔を形成し、この挿入孔に、中空ピン333を挿入し、容器331の上部及び底板332に結合する。これにより、内部にバッファ室317を有するシャワープレート322が構成される。シャワープレート材には、非導電性の材質を選択することが好ましい。例えば、石英で構成するとよい。
【0041】
次に、上述したプラズマ処理ユニットを用いて成膜する方法を説明する。
(搬送工程)
ウエハ600を搭載したツィーザ(図示せず)が処理室445に進入する。リフターピン413が上昇する。ツィーザは、上昇したリフターピン413に室温のウエハ600を移載させる。リフターピン413を下降して、ウエハ600をサセプタ459上に載置する。
【0042】
(プラズマ生成工程)
室温のウエハ600をヒータ463により成膜温度まで加熱する。反応性の低いガスを、第1ガス導入口433からプラズマ生成室420に供給し、ガス雰囲気圧力の調整を行う。反応性の低いガスは、例えば、プラズマ生成室420で分解しても反応容器431の内壁面に反応成物が着かないような希ガスHe、Ne、Ar、Kr、Xe、Rn、またはNガスを用いる。ガス供給後、高周波電源444が共振コイル432に電力を供給する。
【0043】
このとき、RFセンサ468が共振コイル432からの反射波をモニタし、モニタされた反射波のレベルを周波数整合器446に送信する。周波数整合器446は、反射波電力がその反射波が最小となるよう、高周波電源444の発信周波数を調整する。
【0044】
(成膜工程)
共振コイル432に高周波電源444から高周波電流を供給し、反応容器431のガス中に放電を誘起し、プラズマを生成させる。放電によって生成したラジカルやイオン化分子を含んだガスはシャワープレート322のラジカル噴出孔315を通過し、処理室445に噴出される。
一方、反応性の高いガスは第2ガス導入口310からシャワープレート322に供給され、シャワープレート322内部を通過して高反応性ガス噴出孔316より処理室445に噴射される。反応性の高いガスは、例えばウエハ600上にカーボン成膜する場合はCHである。こうして2種類の材料ガスは処理室445内部で初めて混合され気相反応が起こる。
【0045】
この気相反により生成される反応生成物は、加熱されたサセプタ459上に搭載されたウエハ600に接触させることで、所望の成膜を実現する。
【0046】
(搬出工程)
上記搬送工程とは逆の順序でリフターピン413、ツィーザを操作して、ウエハ600を処理室から取り出す。
【0047】
なお、本実施の形態のプラズマ処理ユニットでの処理条件は、カーボン膜の成膜で例示すれば、ウエハ温度:室温〜400℃、ガス種:Ar、その流量:5000〜30000sccm、ガス種:CH、その流量:100〜1000sccm、処理圧力:50〜500Paである。
【0048】
ここで成膜反応の一例を説明する。反応性の低いガスにArを、反応性の高いガスにCHをそれぞれ使用する。Arはプラズマ放電により、イオン化およびラジカル化する。これらのガスはラジカル噴出孔315、316によりシャワープレート322を通過し、処理室445に導入される。このときCHはプラズマ放電の影響を受けずに処理室445に導入される。反応は次のように進む。
(1)プラズマ生成室の放電領域:
下記反応式により、Ar(正イオン)、e(電子)、Ar(ラジカル)が生成される。
Ar+プラズマ放電→Ar+e、Ar
(2)シャワープレート:
Ar、eは非導電性のシャワープレートによりその殆どが失活し、Ar(ラジカル)だけがシャワープレートを通過する。
(3)処理室306:
下記反応式より、C(カーボン)が生成されウエハ上に堆積する。
Ar+CH→Ar+C↓+2H
【0049】
シャワープレートに非導電性の材料を選択する理由は、C(カーボン)成膜が妨害されないようにするためである。シャワープレートが導電性であると、eはシャワープレートによりその殆どが失活する。シャワープレート上部表面にイオンシースが発生するため、Arはそれによって形成される電界によって加速され、ラジカル噴出孔から噴射され、ウエハに到達する。これでは、Arイオンによるスバッタ効果の影響で、C(カーボン)成膜が妨害されて均質な膜が形成されないことになる。したがって、シャワープレートを非導電性にしてイオンシースの発生を防止している。
【0050】
本発明の実施の形態によれば、以下に挙げる一つ又はそれ以上の効果を有する。
(1)装置内に導入する材料ガスの混合を、処理室で初めて行ったり、基板に近い箇所で行ったりするという混合方法の最適化を図ることで、メンテナンス頻度を抑えることができる。
(2)処理室導入前に複数のガスを混合させた場合には、プラズマが生成されるプラズマ生成室で既に気相反応が起きて反応生成物が形成されるため、その反応生成物がプラズマ生成室の内壁面などに付着してしまうが、本実施の形態によれば、処理室内に導入してから初めて複数のガスを混合するので、気相反応は処理室内でのみ起き、プラズマ生成室内
で混合が起こらないので、装置室内におけるガスの付着面積が低減する。したがって、反応容器の内壁面などに堆積した膜のクリーニングやメンテナンスを実施する頻度を抑えることができる。また、クリーニングやメンテナンスによる装置稼働率の低下、交換部品のコストアップ等を防止でき、資源の無駄を低減できる。
(3)特に、プラズマ用の材料ガスに上述した希ガスやNガスを用いる場合には、これらのガスはプラズマ生成室で分解しても反応容器の内壁面などに反応成物が付着しないので、装置室内におけるガスの付着面積がより低減する。したがって、メンテナンス頻度を一層抑えることができ、資源の無駄を一層低減できる。
(4)また、処理室導入前に複数のガスを混合させた場合には、処理室の上流側のプラズマ生成室でガスが消費されることになるが、本実施の形態によれば、プラズマ生成室では混合しないので、消費されるガス量を低減できる。
(5)また、複数のガスを混合させる箇所が基板に近い箇所であるシャワープレートの直下であると、装置室内におけるガスの付着面積をさらに低減できる。
(6)また、シャワープレートを非導電性部材で構成すると、プラズマにより生成されたうちの、Ar(ラジカル)だけがシャワープレートを通過し、Ar、eは非導電性のシャワープレートによりその殆どが失活する。したがって、C(カーボン)成膜の妨害を低減することができる。
【0051】
本発明の好ましい形態を付記する。
第1の好ましい形態は、プラズマ生成空間と、該プラズマ生成空間に第1のガスを供給する第1ガス供給部と、前記プラズマ生成空間に供給される第1のガスをプラズマ化させ、プラズマ化された前記第1のガスのラジカルを生成するプラズマ生成部と、前記プラズマ生成空間でプラズマ化された前記第1のガスのラジカル成分を抽出する抽出部と、前記第1のガスと異なる第2のガスを供給する第2ガス供給部と、前記抽出部から抽出されるラジカルと前記第2ガス供給部から供給される前記第2のガスとを反応させて基板を処理する処理室とを備えた基板処理装置である。
【0052】
この場合の1の態様によれば、抽出部は第2ガス供給部を兼ねている。第2ガス供給部を兼ねている抽出部は、抽出される第1のガスのラジカル成分を噴出する第1の通孔と、第2ガス供給部と接続されて第2のガスを噴出する第2の通孔とを有するのが好ましい。また、抽出部は、非導電性であることが好ましい。また、第1のガスは希ガスであることが好ましい。また、第2のガスをCHとすることができる。
【0053】
第2の好ましい形態は、プラズマ生成室と、該プラズマ生成室に隣接する処理室と、前記プラズマ生成室と前記処理室とを区画するシャワープレートとを備え、前記プラズマ生成室は、該プラズマ生成室に反応性の低いガスを供給する低反応性ガス供給手段と、前記反応性の低いガスのラジカルを生成するためのプラズマ源とを有し、前記処理室は、基板を保持する基板保持台と、前記処理室に前記反応性の低いガスよりも反応性の高いガスを供給するための高反応性ガス供給手段と、前記処理室を排気する排気手段とを有し、前記シャワープレートは、前記プラズマ生成室で生成される前記反応性の低いガスのラジカルを前記処理室に導入する第1の通孔と、前記高反応性ガス供給手段からの前記反応性の高いガスを前記ラジカルとは個別に前記処理室に導入する第2の通孔とを有する基板処理装置である。
【0054】
この場合の1の態様によれば、反応性の低いガスは、He、Ne、Ar、Kr、Xe、Rnの希ガス、およびNガスのうち1種あるいは数種のガスを用いることが可能である。また、シャワープレートは、非導電性の材料で構成されていることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施の形態の基板処理装置に用いられるプラズマ処理ユニットを示す断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態のシャワープレートの構成図である。
【図3】本発明の一実施の形態のシャワープレートの具体的構成図である。
【図4】従来の基板処理装置に用いられるプラズマ処理ユニットを示す断面図である。
【符号の説明】
【0056】
310 第2ガス導入口(高反応性ガス供給手段)
315 ラジカル噴出孔
316 高反応性ガス噴出孔
322 シャワープレート
410 プラズマ処理ユニット(基板処理装置)
420 プラズマ生成室(プラズマ生成空間)
430 プラズマソース(プラズマ源)
431 反応容器
432 共振コイル
433 第1ガス導入口(低反応性ガス供給手段)
445 処理室
444 高周波電源
450 共振コイル
452 外側シールド
459 サセプタ(基板保持台)
480 排気管(排気手段)
600 ウエハ(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ生成室と、該プラズマ生成室に隣接する処理室と、前記プラズマ生成室と前記処理室とを区画するシャワープレートとを備え、
前記プラズマ生成室は、該プラズマ生成室に反応性の低いガスを供給する低反応性ガス供給手段と、前記反応性の低いガスのラジカルを生成するためのプラズマ源とを有し、
前記処理室は、基板を保持する基板保持台と、前記処理室に前記反応性の低いガスよりも反応性の高いガスを供給するための高反応性ガス供給手段と、前記処理室を排気する排気手段とを有し、
前記シャワープレートは、前記プラズマ生成室で生成される前記反応性の低いガスのラジカルを前記処理室に導入する第1の通孔と、前記高反応性ガス供給手段からの前記反応性の高いガスを前記ラジカルとは個別に前記処理室に導入する第2の通孔とを有する
基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−77489(P2010−77489A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246824(P2008−246824)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】