説明

基板処理装置

【課題】処理室へ供給されるガスを充分に加熱することにより、ヘイズやスリップに起因する成膜不良を抑制することができる技術を提供する。
【解決手段】本発明によれば、ガスノズルに比べて遥かに表面積の大きなガス導入空間205を設けているので、表面積の大きなガス導入空間205の内部で予めガスを充分に加熱することができる。このため、処理室203に導入されるガスを加熱することができ、この結果、処理室203の内部に配置されているウェハWFとの温度差を小さくすることができる。したがって、本発明によれば、処理室203に導入されるガスと、処理室203の内部に配置されているウェハWFとの温度差に起因するヘイズやスリップを抑制することができ、ウェハWF上に形成される膜の品質を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置に関し、特に、処理室内に原料ガスを供給して基板上に膜を成膜する基板処理装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特公平06−16495号公報(特許文献1)には、シラン系ガスに塩化水素ガス(HCl)あるいは塩素ガス(Cl)を混合したガスと水素ガス(H)とを基板近傍まで別々に分離して供給するホットウォール式のシリコン(Si)気相エピタキシャル成長技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平06−16495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ホットウォール式のSi気相エピタキシャル成長技術では、特許文献1に記載されているように、900℃〜1200℃という高温に反応炉を保持した状態でガスを供給する必要がある。この場合、供給するガスを充分に加熱しないと、ヘイズやスリップが発生して成膜不良に至る。しかしながら、特許文献1には、供給するガスを充分に加熱する必要性には触れられていない。特に、基板上に膜厚の厚い膜を形成する場合は、供給するガスの流量が大きくなるため、基板処理装置の構造を工夫しないと、供給するガスを充分に加熱することができない場合がある。ここで、スリップとは、供給するガスの温度と基板の温度との温度差によって、基板に線状の傷が形成される現象であり、ヘイズとは、結晶の配向方向にばらつきが生じて、基板の表面が曇る現象である。
【0005】
本発明の目的は、処理室へ供給されるガスを充分に加熱することにより、ヘイズやスリップに起因する成膜不良を抑制することができる技術を提供することにある。
【0006】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0008】
本発明における基板処理装置は、(a)基板を処理する処理室と、(b)前記処理室の外壁に設けられた複数の噴出孔と、(c)前記処理室を囲むように設けられたチューブと、(d)前記処理室と前記チューブで挟まれたガス導入空間と、を備える。ここで、前記処理室の外壁と前記チューブは、一体的に形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明における基板処理装置は、(a)基板を処理する処理室と、(b)前記処理室を囲むように設けられたチューブと、(c)前記処理室と前記チューブで挟まれたガス導入空間と、を備える。そして、前記ガス導入空間は、複数の隔壁によって、第1分割空間と第2分割空間に区切られている。さらに、(d)前記第1分割空間と前記処理室の内部とを連通する複数の第1噴出孔と、(e)前記第2分割空間と前記処理室の内部とを連通する複数の第2噴出孔と、を有することを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明における基板処理装置は、(a)基板を処理する処理室と、(b)前記処理室の外壁に設けられた複数の噴出孔と、(c)前記処理室を囲むように設けられたチューブと、(d)前記処理室と前記チューブで挟まれたガス導入空間と、(e)前記ガス導入空間の内部に設けられた仕切り構造と、を備える。このとき、前記仕切り構造は、(e1)前記ガス導入空間の底面領域から上面領域に向って延在し、かつ、前記上面領域との間に隙間を有するように配置された第1仕切り板と、(e2)前記ガス導入空間の前記上面領域から前記底面領域に向って延在し、かつ、前記底面領域との間に隙間を有するように配置された第2仕切り板と、を有する。そして、前記第1仕切り板と前記第2仕切り板が交互に配置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0012】
処理室へ供給されるガスを充分に加熱することにより、ヘイズやスリップに起因する成膜不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1における基板処理装置の概略構成を示す図である。
【図2】実施の形態1における処理炉の概略構成を示す図である。
【図3】処理室の内部に配置されているウェハ上にガスを供給する様子を示す図である。
【図4】実施の形態1における処理炉周辺の構成を示す図である。
【図5】実施の形態1における基板処理装置を制御するコントローラの構成を示すブロック図である。
【図6】実施の形態1における基板処理装置の処理シーケンスを示すタイミングチャート図である。
【図7】実施の形態2における処理炉の構成を示す図である。
【図8】実施の形態3における処理炉の構成を示す図である。
【図9】実施の形態4におけるインナーチューブよりも内側領域の構成を示す断面図である。
【図10】変形例におけるインナーチューブよりも内側領域の構成を示す断面図である。
【図11】変形例におけるインナーチューブよりも内側領域の構成を示す斜視図である。
【図12】実施の形態5におけるインナーチューブの内側領域の構成を示す模式図である。
【図13】処理室の外壁とインナーチューブで挟まれたガス導入空間を隔壁で分離した構造を示す図である。
【図14】製造容易性を向上させた構造例を示す図である。
【図15】実施の形態6における構造例を示す図である。
【図16】変形例の構造を示す図である。
【図17】変形例の構造を分解した状態を示しており、インナーチューブを溶接する前の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0015】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0016】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0017】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0018】
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0019】
(実施の形態1)
<本実施の形態における基板処理装置の概略構成>
本発明を実施するための実施の形態において、基板処理装置は、一例として、基板の製造方法、半導体装置(IC等)の製造方法や太陽電池の製造方法に含まれる様々な処理工程を実施する半導体製造装置や太陽電池製造装置として構成されている。以下の説明では、例えば、半導体基板(半導体ウェハ)にエピタキシャル成長法による成膜処理、CVD(Chemical Vapor Deposition)法による成膜処理、あるいは、酸化処理や拡散処理などを行なう縦型の基板処理装置に本発明の技術的思想を適用した場合について述べる。特に、本実施の形態では、複数の基板を一度に処理するバッチ方式の基板処理装置を対象にして説明する。
【0020】
まず、本実施の形態1における基板処理装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施の形態1における基板処理装置の概略構成を示す図である。図1に示すように、本実施の形態1における基板処理装置101は、シリコン等からなる複数のウェハ(半導体基板)WFを収納したウェハキャリアとしてのカセット110を使用するように構成されており、筐体111を備えている。筐体111の正面壁111aの下方にはメンテナンス可能なように設けられた開口部としての正面メンテナンス口103が開設され、この正面メンテナンス口103を開閉する正面メンテナンス扉104が筐体111の正面壁111aに設けられている。
【0021】
正面メンテナンス扉104には、カセット搬入搬出口(基板収容器搬入搬出口)112が筐体111の内外を連通するように開設されており、カセット搬入搬出口112はフロントシャッタ(基板収容器搬入搬出口開閉機構)113によって開閉されるようになっている。カセット搬入搬出口112の筐体111内側にはカセットステージ(基板収容器受渡し台)114が設置されている。カセット110は、カセットステージ114上に工程内搬送装置(図示せず)によって搬入され、かつ、カセットステージ114上から搬出されるようになっている。カセットステージ114は、工程内搬送装置によって、カセット110内のウェハWFが垂直姿勢となり、かつ、カセット110のウェハ出し入れ口が上方向を向くように載置されるように構成されている。
【0022】
筐体111内の前後方向の略中央下部には、カセット棚(基板収容器載置棚)105が設置されており、カセット棚105は複数段および複数列で複数個のカセット110を保管し、カセット110内のウェハWFを出し入れすることが可能なように配置されている。このカセット棚105は、スライドステージ(水平移動機構)106上に横行可能なように設置されている。また、カセット棚105の上方にはバッファ棚(基板収容器保管棚)107が設置されており、このバッファ棚107にもカセット110が保管されるようになっている。
【0023】
カセットステージ114とカセット棚105との間には、カセット搬送装置(基板収容器搬送装置)118が設置されている。カセット搬送装置118は、カセット110を保持したまま昇降することができるカセットエレベータ(基板収容器昇降機構)118aと、搬送機構としてのカセット搬送機構(基板収容器搬送機構)118bから構成されている。このカセットエレベータ118aとカセット搬送機構118bとの連続動作により、カセットステージ114、カセット棚105およびバッファ棚107との間で、カセット110を搬送することができるようになっている。
【0024】
カセット棚105の後方には、ウェハ移載機構(基板移載機構)125が設置されており、ウェハ移載機構125は、ウェハWFを水平方向に回転ないし直動可能なウェハ移載装置(基板移載装置)125aおよびウェハ移載装置125aを昇降させるためのウェハ移載装置エレベータ(基板移載装置昇降機構)125bで構成されている。図1に模式的に示すように、ウェハ移載装置エレベータ125bは、筐体111の左側端部に設置されている。これら、ウェハ移載装置エレベータ125bおよびウェハ移載装置125aの連続動作により、ウェハ移載装置125aのツイーザ(基板保持体)125cをウェハWFの載置部として、ボート(基板保持体)BTに対してウェハWFを装填(チャージング)および脱装(ディスチャージング)するように構成されている。
【0025】
次に、図1に示すように、バッファ棚107の後方には、清浄化した雰囲気であるクリーンエアを基板処理装置101内へ供給するために、供給ファンおよび防塵フィルタで構成されたクリーンユニット134aが設けられており、このクリーンユニット134aは、クリーンエアを筐体111の内部に流通させるように構成されている。また、ウェハ移載装置エレベータ125b側と反対側である右側端部には、クリーンエアを供給するように、供給ファンおよび防塵フィルタで構成されたクリーンユニット(図示せず)が設置されている。そして、このクリーンユニットから吹き出されたクリーンエアは、ウェハ移載装置125aを流通した後に、図示しない排気装置に吸い込まれて、筐体111の外部へ排気されるようになっている。
【0026】
ウェハ移載装置(基板移載装置)125aの後側には、大気圧未満の圧力(以下、負圧という。)を維持することが可能な機密性能を有する耐圧筐体140が設置されている。この耐圧筐体140により、ボートBTを収容可能な容積を有するロードロック方式の待機室であるロードロック室(移載室)141が形成されている。
【0027】
耐圧筐体140の正面壁140aにはウェハ搬入搬出口(基板搬入搬出口)142が開設されており、ウェハ搬入搬出口142はゲートバルブ(基板搬入搬出口開閉機構)143によって開閉されるようになっている。耐圧筐体140の一対の側壁にはロードロック室141へ窒素ガス等の不活性ガスを給気するためのガス供給管144と、ロードロック室141を負圧に排気するためのガス排気管(図示せず)とがそれぞれ接続されている。
【0028】
ロードロック室141上方には、処理炉(反応炉)200が設けられている。処理炉200の下端部は炉口シャッタ(炉口ゲートバルブ)(炉口開閉機構)147により開閉されるように構成されている。
【0029】
図1に模式的に示すように、ロードロック室141には、ボートBTを昇降させるためのボートエレベータ(支持体保持体昇降機構)115が設置されている。ボートエレベータ115に連結された連結具としてのアーム(図示せず)には蓋体としてのシールキャップ219が水平に据え付けられており、シールキャップ219はボートBTを垂直に支持し、処理炉200の下端部を閉塞可能なように構成されている。
【0030】
ボートBTは複数本の支柱(保持部材)を備えており、複数枚(例えば、50枚〜100枚程度)のウェハWFをその中心を揃えて垂直方向に整列させた状態で、それぞれ水平に保持することができるように構成されている。基板処理装置101を構成する各部は、コントローラCLと電気的に接続されており、コントローラCLは、基板処理装置101を構成する各部の動作を制御するように構成されている。
【0031】
本実施の形態1における基板処理装置101は上記のように概略構成されており、以下にその動作について説明する。なお、以下の説明において、基板処理装置101を構成する各部の動作は、コントローラCLにより制御される。
【0032】
図1に示すように、カセット110がカセットステージ114に供給されるのに先立って、カセット搬入搬出口112がフロントシャッタ113によって開放される。その後、カセット110はカセット搬入搬出口112から搬入され、カセットステージ114上に載置される。このとき、カセットステージ114上に載置されるウェハWFは垂直姿勢になっており、かつ、カセット110のウェハ出し入れ口が上方向を向くように載置される。
【0033】
次に、カセット110は、カセット搬送装置118によって、カセットステージ114から取り上げられるとともに、カセット110内のウェハWFが水平姿勢となり、かつ、カセット110のウェハ出し入れ口が筐体111の後方を向くように、筐体111の後方に右周り縦方向へ90°回転させられる。続いて、カセット110は、カセット搬送装置118によって、カセット棚105あるいはバッファ棚107の指定された位置へ自動的に搬送される。そして、カセット110は、一時的に保管された後、カセット搬送装置118によってカセット棚105に移載されるか、あるいは、直接カセット棚105に搬送される。
【0034】
その後、スライドステージ106はカセット棚105を水平移動させ、移載の対象となるカセット110をウェハ移載装置125aに対峙するように位置決めする。
【0035】
予め内部が大気圧状態とされていたロードロック室141のウェハ搬入搬出口142がゲートバルブ143の動作により開放されると、ウェハWFはカセット110からウェハ移載装置125aのツイーザ125cによってウェハ出し入れ口を通じてピックアップされる。そして、ウェハ搬入搬出口142を通じてロードロック室141に搬入され、ボートBTへ移載されて装填(ウェハチャージング)される。ボートBTにウェハWFを受け渡したウェハ移載装置125aはカセット110に戻り、次のウェハWFをボートBTに装填する。
【0036】
予め指定された枚数のウェハWFがボートBTに装填されると、ウェハ搬入搬出口142がゲートバルブ143によって閉じられる。その後、処理炉200の下端部が炉口シャッタ(炉口ゲートバルブ147)によって開放される。続いて、シールキャップ219がボートエレベータ115によって上昇し、シールキャップ219に支持されたボートBTが処理炉200内へ搬入(ローディング)されて行く。
【0037】
ローディング後は、処理炉200においてウェハWFに任意の処理が実施される。ウェハWFの処理後、ボートエレベータ115によりボートBTが引き出される。さらに、ゲートバルブ143が開かれる。その後は、概ね上述した動作と逆の動作により、処理済みのウェハWFおよびカセット110が筐体111の外部へ払い出される。以上のようにして、本実施の形態1における基板処理装置101が動作する。
【0038】
<本実施の形態1における処理炉の構成>
次に、本実施の形態1における処理炉の構成について、図面を参照しながら説明する。図2は、本実施の形態1における処理炉200の概略構成を示す図である。図2において、本実施の形態1における処理炉200は、有天円筒形状のアウターチューブ201を有しており、このアウターチューブ201は、例えば、石英などから構成されている。そして、アウターチューブ201の内部には、例えば、石英などから構成される外壁202で囲まれた処理室203が配置されている。この処理室203の内部には、ウェハWFを積層配置したボートBTが挿入され、この処理室203において、ボートBTに積層配置したウェハWFへの成膜処理が行なわれるようになっている。ボートBTはシールキャップ219上に配置され、このシールキャップ219によって処理室203が密閉されるように構成されている。なお、ボートBTの下部は断熱構造となっており、炉口への熱の伝達が抑制される構造となっている。
【0039】
処理室203の外壁202とアウターチューブ201の間には、例えば、石英などの耐熱材料から構成されるインナーチューブ204が形成されており、このインナーチューブ204と処理室203の外壁202によって囲まれる同心円領域にガス導入空間205が形成される。つまり、本実施の形態1では、インナーチューブ204と処理室203の外壁202によって囲まれるようにガス導入空間205が設けられている点に特徴点がある。そして、インナーチューブ204とアウターチューブ201の間の空間に、例えば、カーボンからなる有天円筒形状の加熱体206が配置され、この加熱体206の外側に石英ウォール207が配置されている。
【0040】
さらに、アウターチューブ201の側壁には、誘導コイル213が巻き付けられており、本実施の形態1における処理炉200は、この誘導コイル213に高周波電流を印加することにより、加熱体206を加熱するための誘導加熱装置(図示せず)を有する。この誘導加熱装置は、誘導加熱部としての誘導コイル213と、その他の構成要素として壁体や冷却壁を有している。誘導コイル213は高周波電源(図示せず)に接続されており、この高周波電源により、誘導コイル213には高周波電流が流れるようになっている。つまり、本実施の形態1では、誘導コイル213に高周波電流を流すと、処理炉200の内部に高周波電磁界が発生し、この高周波電磁界により被誘導体である加熱体206に渦電流が発生する。この加熱体206は、渦電流によって誘導加熱が起こり昇温され、その後、加熱体206からの輻射熱により、処理室203の内部が加熱され、結果的に、処理室203の内部に配置されているウェハWFが加熱されるように構成されている。このように、本実施の形態1では、誘導加熱方式によって加熱体206を加熱し、この加熱体206からの輻射熱によって処理室203の内部の温度を、例えば、1100℃前後に加熱している。ここで、加熱体206の外側には、例えば、石英で作られた有天筒形状の石英ウォール207が形成されているが、この石英ウォール207は、加熱体206からの熱がアウターチューブ201側に伝わることを抑制する機能を有している。つまり、加熱体206からの輻射熱は石英ウォール207によって遮られ、輻射熱がアウターチューブ201側に伝わることが抑制され、この結果、アウターチューブ201の温度は、800℃〜900℃程度になる。
【0041】
誘導加熱装置の近傍には、処理室203内の温度を検出する温度検出体としての放射温度計(図示せず)が、例えば、4箇所に設置されている。この放射温度計は、少なくとも一つ設置されていればよいが、複数個の放射温度計を設置することで温度制御性を向上させることができる。
【0042】
誘導加熱装置および放射温度計には、電気的に温度制御部が接続されており、放射温度計により検出された温度情報に基づいて、誘導コイル213への通電状態を調節することができるようになっている。そして、温度制御部によって、処理室203内の温度が所望の温度分布となるよう所望のタイミングにて制御されるようになっている。
【0043】
続いて、ガス導入空間205は、ガスを供給するガス供給部211と連通しており、このガス供給部211から供給されるガスは、まず、ガス導入空間205に導入されるようになっている。さらに、処理室203の外壁202には、複数の噴出孔(ガス噴出孔)208が形成されており、ガス導入空間205に導入されたガスが、これらの複数の噴出孔208によって、処理室203の内部へ導入されるようになっている。複数の噴出孔208のそれぞれの径は、例えば、φ0.5mm〜φ5mm程度となっている。
【0044】
そして、処理室203に導入されたガスは、ボートBTに搭載されたウェハWF上に供給され、これによって、ウェハWFに成膜処理が施されるとともに、ウェハWF上に供給されたガスの一部は、処理室203と連通するように設けられているガス排気部212から排出されるように構成されている。
【0045】
ガス供給部211は、ガスを流す上流側にバルブ(図示せず)とガス流量制御装置としてのマスフローコントローラ(MFC)(図示せず)を介してガス供給源に接続されている。このマスフローコントローラおよびバルブには、ガス流量制御部が電気的に接続されており、このガス流量制御部によって、供給するガスの流量が所望の流量となるよう所望のタイミングにて制御されるようになっている。
【0046】
ガス排気部212の下流側には、圧力検出器としての圧力センサ(図示せず)および圧力調整器としてのAPCバルブ(図示せず)を介して真空ポンプ等の真空排気装置(図示せず)が接続されている。圧力センサおよびAPCバルブには、圧力制御部が電気的に接続されており、圧力制御部は、圧力センサにより検出された圧力に基づいてAPCバルブの開度を調節することにより、処理室203内の圧力が所望の圧力となるよう所望のタイミングにて制御するよう構成されている。
【0047】
さらに、本実施の形態1では、ガスノズル209が処理室203の内部に配置されており、このガスノズル209からもガスが処理室203の内部に供給される。具体的に、ガスノズル209には、複数の噴出孔210が形成されており、ガスノズル209を流れてきたガスが、これらの噴出孔210から処理室203の内部に供給されるようになっている。このように、本実施の形態1では、ガス導入空間205から複数の噴出孔208を介して処理室203の内部へガスを供給する第1経路と、ガスノズル209から複数の噴出孔210を介して処理室203の内部へガスを供給する第2経路とが存在する。
【0048】
図3は、処理室203の内部に配置されているウェハWF上にガスを供給する様子を示す図である。図3に示すように、インナーチューブ204の内部に処理室203が配置されており、この処理室203の外壁とインナーチューブ204で囲まれた空間がガス導入空間205となっている。このガス導入空間205に導入されたガスは、処理室203の外壁202に設けられている複数の噴出孔208から処理室203の内部に配置されているウェハWF上に供給される(第1経路)。また、図3に示すように、処理室203の内部には、ガスノズル209が設けられており、このガスノズル209を通ってきたガスは、ガスノズル209に設けられている噴出孔210から処理室203の内部へ供給される(第2経路)。そして、第1経路から導入されたガスと、第2経路から導入されたガスが処理室203の内部で混合されて、ウェハWF上に供給される。この結果、ウェハWFの表面に膜が成膜される。
【0049】
<本実施の形態1における特徴>
本実施の形態1における処理炉200は上記のように構成されており、以下に、その特徴点について説明する。本実施の形態1における第1特徴点は、図2に示すように、処理室203の外壁202とインナーチューブ204の間にガス導入空間205を設けている点にある。これにより、ガス供給部211から供給されるガスは、まず、処理室203の内部に導入される前に先立って、ガス導入空間205内に導入され、このガス導入空間205を通過することにより加熱される。つまり、ガス導入空間205は、誘導コイル213を使用した誘導加熱により加熱された加熱体206からの輻射熱によって加熱されているため、この加熱されたガス導入空間205を通過するガスは加熱されるのである。
【0050】
そして、本実施の形態1では、ガス導入空間205で予備加熱されたガスを処理室203の内部へ導入することができるので、ガスとウェハWFとの温度差に起因したヘイズやスリップの発生を抑制することができ、このヘイズやスリップに基づくウェハWF上への成膜不良を抑制することができる。具体的に、本実施の形態1における処理炉200においては、まず、ガスは、ガス供給部211から、インナーチューブ204と処理室203の外壁202で挟まれたガス導入空間205に導入される。このとき、ガス導入空間205は、誘導コイル213に高周波電流を流すことによる誘導加熱によって加熱された加熱体206からの輻射熱によって加熱される。そして、この加熱されたガス導入空間205をガスが通過することから、ガスは、ガス導入空間205で直接加熱される。その後、ガス導入空間205で加熱されたガスは、処理室203の外壁202に設けられた複数の噴出孔208から処理室203の内部へ導入される。したがって、本実施の形態1において、処理室203の内部に導入されるガスは、予め加熱されているので、ガスとウェハWFとの温度差に起因したヘイズやスリップの発生を抑制することができ、このヘイズやスリップに基づくウェハWF上への成膜不良を抑制することができるのである。
【0051】
特に、本実施の形態1において、ガス導入空間205は、処理室203の外壁202とインナーチューブ204の間に挟まれており、ガスノズルの内部空間よりも大幅に広いガス導入空間205をガスが通過するので、ガスの加熱効率を向上させることができる。つまり、本実施の形態1におけるガス導入空間205の表面積は、ガスノズルの表面積よりも遥かに大きいので、ガス導入空間205におけるガスの加熱量は、ガスノズルにおけるガスの加熱量に比べて遥かに大きくなる。このことは、本実施の形態1のように、加熱されたガス導入空間205にガスを導入して、ガスを加熱した後、加熱したガスを処理室203の内部を導入する構成によれば、表面積の小さなガスノズルによってガスを処理室203の内部へ導入する構成に比べて、ガスを充分に加熱できることを意味している。これにより、本実施の形態1の第1特徴点によれば、ガスとウェハWFとの温度差に起因したヘイズやスリップの発生を抑制することができ、このヘイズやスリップに基づくウェハWF上への成膜不良を抑制することができるのである。
【0052】
例えば、約1100℃に加熱された処理室203内にφ20mm〜φ40mm程度のガスノズルを配置し、このガスノズルに数百リットル/minのガスを処理室203の内部に常温で導入する場合を考えると、ガスは、約1100℃程度まで上昇することはなく、数百度を低い温度でウェハWF上に到達することになる。この場合、ガスノズルからの低温のガス噴射がヘイズやスリップの原因となるため、ウェハWF上への成膜不良が顕在化してしまう。これに対し、本実施の形態1における第1特徴点によれば、ガスノズルに比べて遥かに表面積の大きなガス導入空間205を設けているので、表面積の大きなガス導入空間205の内部で予めガスを充分に加熱することができる。このため、処理室203に導入されるガスの温度を約1100℃程度まで加熱することができ、この結果、処理室203の内部に配置されているウェハWFとの温度差を小さくすることができる。したがって、本実施の形態1における第1特徴点によれば、処理室203に導入されるガスと、処理室203の内部に配置されているウェハWFとの温度差に起因するヘイズやスリップを抑制することができ、ウェハWF上に形成される膜の品質を向上させることができる。
【0053】
次に、本実施の形態1における第2特徴点は、ガス導入空間205から複数の噴出孔208を介して処理室203の内部へガスを供給する第1経路とは別に、処理室203の内部にガスノズル209を設け、このガスノズル209から複数の噴出孔210を介して処理室203の内部へガスを供給する第2経路をさらに有している点である。すなわち、本実施の形態1は、2系統の異なるガス供給経路が存在する点に特徴がある。
【0054】
例えば、ウェハWF上にシリコン(Si)からなる膜をエピタキシャル成長させる場合には、原料ガスとして、SiHCl(ジクロロシラン)、SiHCl(トリクロロシラン)、SiCl(四塩化ケイ素)等が使用され、キャリアガス(希釈ガス)として、水素ガス(H)が使用される。この水素ガス(H)は、原料ガスを流すためのキャリアガスとして機能するとともに、水素(H)ガスは、水素還元によってシリコン含有原料ガスの分解を促進する還元ガスとしても機能する。
【0055】
ここで、本実施の形態1では、例えば、第1経路によって供給するガスを水素(H)ガスとし、第2経路によって供給するガスをSiCl(四塩化ケイ素)と水素(H)ガスとの混合ガス(SiCl/水素ガス)とすることができる。例えば、第1経路から供給される水素(H)ガスの流量は、ウェハ枚数×(3〜30L(リットル)/min)である。また、第2経路から供給されるSiCl/水素ガスに含まれるSiCl(四塩化ケイ素)の濃度は、30%〜50%であり、SiCl/水素ガスの流量は、ウェハ枚数×(3〜30L(リットル)/min)である。このようにして、第1経路から供給される水素(H)ガスと、第2経路から供給されるSiCl/水素ガスを処理室203の内部で混合(ミキシング)することにより、成膜に適した2%〜10%程度のSiCl/水素ガスをウェハWF上に供給する。この結果、ウェハWF上にシリコン(Si)からなる膜をエピタキシャル成長させることができる。
【0056】
以下に、2系統の異なるガス供給経路を設ける理由について説明する。例えば、処理室203にガスを導入するのに先立ち、ガスを予め充分に加熱する観点からは、本実施の形態1における第1特徴点で説明したように、表面積の大きなガス導入空間205を設け、このガス導入空間205にガスを導入して加熱した後、加熱したガスを処理室203の内部へ供給すればよいと考えられる。ところが、ガス導入空間205から複数の噴出孔208を介して処理室203の内部へガスを供給する第1経路だけを設ける場合、ガス導入空間205内でガスが加熱されるため、このガス導入空間205内で成膜条件が整ってしまい、ガス導入空間205においても不所望な膜が形成されてしまうおそれがある。この場合、処理室203内におけるウェハWF上への成膜に寄与するガスの消費効率が悪化するとともに、ガス導入空間で成膜された膜の膜剥がれによる異物(パーティクル)の発生などが問題となるおそれが高くなる。つまり、上述した第1経路だけを設ける場合、第1経路から、SiHCl(ジクロロシラン)、SiHCl(トリクロロシラン)、SiCl(四塩化ケイ素)等からなる原料ガスと、水素ガス(H)からなるキャリアガスを一緒に導入する必要があり、かつ、成膜に適した2%〜10%程度のSiCl/水素ガスとして、第1経路から導入する必要がある。このため、ガス導入空間205内においても、SiCl/水素ガスの濃度が成膜に適した2%〜10%程度になっているため、ガス導入空間205内での加熱によって膜が成膜されてしまうのである。
【0057】
そこで、本実施の形態1では、ガス導入空間205から複数の噴出孔208を介して処理室203の内部へガスを供給する第1経路とは別に、処理室203の内部にガスノズル209を設け、このガスノズル209から複数の噴出孔210を介して処理室203の内部へガスを供給する第2経路も設けている。このとき、第1経路によって供給するガスを水素(H)ガスとし、第2経路によって供給するガスを30%〜50%程度のSiCl(四塩化ケイ素)と水素(H)ガスとの混合ガス(SiCl/水素ガス)とする。これにより、ガス導入空間205からは、キャリアガス(希釈ガス)である水素(H)ガスだけが供給されるので、ガス導入空間205内での不所望な成膜がなくなる。一方、ガスノズル209からは、成膜条件よりも高い濃度のSiCl/水素ガスが供給されるため、ガスノズル209内での不所望な膜の形成が抑制される。そして、処理室203の内部では、ガス導入空間205から導入された水素(H)ガスと、ガスノズル209から導入された成膜条件よりも高い濃度のSiCl/水素ガスとが混合(ミキシング)され、成膜条件に適した2%〜10%程度のSiCl/水素ガスとなる。この成膜条件に適した2%〜10%程度のSiCl/水素ガスが処理室203の内部に配置されているウェハWF上に供給されることにより、ウェハWF上に、例えば、シリコン(Si)からなる膜をエピタキシャル成長させることができる。
【0058】
このように、ガス導入空間205から複数の噴出孔208を介して処理室203の内部へガスを供給する第1経路だけを設ける場合には、この第1経路から成膜条件に適した原料ガスおよびキャリアガス(希釈ガス)の混合ガスを流す必要があり、この結果、ガス導入空間205の内部に不所望な膜が形成されてしまい、ガス導入空間205内における膜剥がれによる異物(パーティクル)の発生が問題として顕在化するおそれがある。これに対し、本実施の形態1では、ガス導入空間205から複数の噴出孔208を介して処理室203の内部へガスを供給する第1経路とは別に、処理室203の内部にガスノズル209を設け、このガスノズル209から複数の噴出孔210を介して処理室203の内部へガスを供給する第2経路も設けている。これにより、ガス導入空間205における不所望な膜の生成が抑制され、不所望な膜の膜剥がれに起因する異物(パーティクル)の発生を抑制することができるのである。
【0059】
ここで、本実施の形態1では、ガス導入空間205から複数の噴出孔208を介して処理室203の内部へガスを供給する第1経路から水素(H)ガスを供給し、ガスノズル209から複数の噴出孔210を介して処理室203の内部へガスを供給する第2経路から30%〜50%程度のSiCl/水素ガスを供給するように構成している。これは、ガス導入空間205の表面積の方がガスノズル209の表面積よりも遥かに大きいため、ガス導入空間205を流れるガスの方が効率良く加熱されることに基づいている。つまり、一般的に、原料ガスであるSiClの流量よりも、キャリアガスである水素(H)ガスの流量のほうが多いことから、流量の多い水素(H)ガスを充分に加熱するため、加熱量の大きなガス導入空間205に流量の多い水素(H)ガスを流しているものである。これにより、ガス導入空間205から導入された流量の多い水素(H)ガスと、ガスノズル209から導入された流量の少ないSiCl/水素ガスとを処理室203の内部で混合した際、混合したガスの温度を高い温度に維持することができる。この結果、本実施の形態1によれば、処理室203に導入されるガスと、処理室203の内部に配置されているウェハWFとの温度差に起因するヘイズやスリップを抑制することができ、ウェハWF上に形成される膜の品質を向上させることができる。
【0060】
さらに、例えば、第1経路からSiCl/水素ガスを供給する場合、このSiCl/水素ガスにおけるSiClの濃度は、成膜条件よりも高い濃度になっているとはいえ、ガス導入空間205で充分に加熱されることになる。このため、水素(H)ガスによるSiClの還元反応が起こって、ガス導入空間205の内部に不所望な膜が形成されるおそれがある。これに対し、本実施の形態1では、第1経路から水素(H)ガスだけを供給しているので、ガス導入空間205での膜の成膜を防止することができる利点がある。
【0061】
続いて、本実施の形態1における第3特徴点は、図2に示すように、ガス導入空間205を規定する処理室203の外壁202とインナーチューブ204が一体的に構成されている点である。これにより、処理室203の外壁202およびインナーチューブ204の損傷を抑制することができる。以下に、具体的に説明する。
【0062】
例えば、背景技術で挙げた特許文献1(特公平06−16495号公報)には、特許文献1の図1に示すように、外管(本願発明のインナーチューブ204に相当する)と内管(本願発明の外壁202に相当する)とが別部品として構成する例が記載されている。このとき、内管と外管で挟まれた空間(本願発明のガス導入空間205に相当する)にガスが導入されるため、この空間の圧力は大きくなる。一方、内管の内側は、一般的に減圧される。このことから、内管の内側の圧力よりも内管と外管で挟まれた空間の圧力が高いことから、内管には内側に向かう力が働くことになる。一方、外管の外側の圧力よりも、内管と外管で挟まれた空間の圧力が高くなることから、外管には、外側に向う力が働くことになる。このように内管と外管とを別部品で構成する場合、内管と外管に独立別個に異なる方向の力が働くことになり、これらの力が緩和されないため、長期間使用すると、内管や外管の損傷が起こる可能性がある。
【0063】
これに対し、本実施の形態1では、ガス導入空間205を規定する処理室203の外壁202とインナーチューブ204が一体的に形成されている。この場合も、ガス導入空間205の圧力が高くなるため、インナーチューブ204には外側に向う力が働き、かつ、処理室203の外壁202には内側に向う力が働く。ただし、本実施の形態1では、インナーチューブ204と、処理室203の外壁202が一体的に形成されているため、例えば、インナーチューブ204に着目すると、一体的に形成されている処理室203の外壁202からインナーチューブ204には内側に向う力が働くことになり、この結果、インナーチューブ204には、外側に向う力と内側に向う力が働くことになる。したがって、インナーチューブ204に加わる外側に向う力が内側に向う力によって緩和される。同様に、処理室203の外壁202に着目すると、一体的に形成されているインナーチューブ204から処理室203の外壁202には外側に向う力が働くことになり、この結果、処理室203の外壁202には、内側に向う力と外側に向う力が働くことになる。したがって、処理室203の外壁202に加わる内側に向う力が外側に向う力によって緩和される。このようにして、本実施の形態1によれば、インナーチューブ204と、処理室203の外壁202とを一体的に形成することにより、インナーチューブ204や、処理室203の外壁202の損傷を抑制することができる。
【0064】
<本実施の形態1における処理炉周辺の構成>
次に、本実施の形態1における処理炉周辺の構成について、図面を参照しながら説明する。図4は、本実施の形態1における処理炉周辺の構成を示す図である。図4において、処理炉200の下方には、処理炉200の下端開口部を気密封止するための炉口蓋体としてシールキャップ219が設けられている。このシールキャップ219は、例えば、ステンレスなどの金属から構成されており、円盤状の形状をしている。シールキャップ219の上面には、処理炉200の下端と当接するシール材としてのOリング(図示せず)が設けられている。シールキャップ219には、回転機構301が設けられており、この回転機構301の回転軸302はシールキャップ219を貫通してボートBTに接続されている。これにより、回転機構301は、回転軸302を介してボートBTを回転させることで、ボートBTに搭載されているウェハ(半導体基板)WFを回転するようになっている。
【0065】
また、シールキャップ219は、処理炉200の外側に設けられた昇降機構によって垂直方向に昇降されるように構成されており、これによって、シールキャップ219上に搭載されたボートBTを処理炉200に対して搬入あるいは搬出することができるようになっている。上述した回転機構301および昇降機構を動作させる昇降モータ303は、後述する駆動制御部と電気的に接続されており、駆動制御部は、回転機構301や昇降モータ303が所定動作をするように制御する。
【0066】
次に、予備室としてのロードロック室141の外面に下基板304が設けられている。この下基板304には、昇降台305とスライド自在になっているガイドシャフト306および昇降台305と螺合するボール螺子307が設けられている。そして、下基板304に立設したガイドシャフト306およびボール螺子307の上端には、上基板308が設けられている。ボール螺子307は、上基板308に設けられた昇降モータ303によって回転され、ボール螺子307が回転することにより、昇降台305が昇降するようになっている。
【0067】
昇降台305には中空の昇降シャフト309が垂設され、昇降台305と昇降シャフト309の連結部は気密となっており、この昇降シャフト309は昇降台305とともに昇降するように構成されている。昇降シャフト309は、ロードロック室141の天板310を遊貫し、昇降シャフト309が貫通する天板310の貫通孔は、昇降シャフト309が天板310と接触することがないように充分な隙間が形成されている。
【0068】
ロードロック室141と昇降台305との間には、昇降シャフト309の周囲を覆うように伸縮性を有する中空伸縮体としてベローズ311が設けられており、このベローズ311によりロードロック室141が気密に保たれるようになっている。このとき、ベローズ311は、昇降台305の昇降量に対応できる充分な伸縮量を有し、ベローズ311の内径は、昇降シャフト309の外径に比べて充分に大きく、伸縮の際にベローズ311と昇降シャフト309が接触することがないように構成されている。
【0069】
昇降シャフト309の下端には、昇降基板312が水平に固着され、この昇降基板312の下面にはOリングなどのシール部材を介して駆動部カバー313が気密に取り付けられている。昇降基板312と駆動部カバー313により駆動部収納ケース314が構成され、この構成により、駆動部収納ケース314の内部は、ロードロック室141内の雰囲気と隔離される。
【0070】
駆動部収納ケース314の内部には、ボートBTの回転機構301が設けられており、この回転機構301の周辺は、冷却機構315によって冷却されるようになっている。
【0071】
続いて、電力ケーブル316は、昇降シャフト309の上端から中空部を通り、回転機構301に導かれて接続されている。また、冷却機構315およびシールキャップ219には、冷却水流路317が形成されている。さらに、冷却水配管318が昇降シャフト309の上端から中空部を通り、冷却水流路317に導かれて接続されている。
【0072】
このように構成されている処理炉周辺構造において、昇降モータ303が駆動されて、ボール螺子307が回転することにより、昇降台305および昇降シャフト309を介して駆動部収納ケース314を昇降させる。そして、例えば、駆動部収納ケース314が上昇することにより、昇降基板312に気密に設けられているシールキャップ219が処理炉200の開口部である炉口319を閉塞し、ボートBTに搭載されたウェハWFの成膜処理が可能な状態となる。一方、例えば、駆動部収納ケース314が下降することにより、シールキャップ219とともにボートBTが下降し、ボートBTに搭載されているウェハWFを外部に搬出できる状態となる。
【0073】
<本実施の形態1における基板処理装置の制御部の構成>
続いて、本実施の形態1における基板処理装置101の制御部の構成について、図面を参照しながら説明する。図5は、本実施の形態1における基板処理装置101を制御するコントローラCLの構成を示すブロック図である。図5において、本実施の形態1におけるコントローラCLは、主制御部401、温度制御部402、ガス流量制御部403、圧力制御部404、および、駆動制御部405を有している。そして、主制御部401は、温度制御部402、ガス流量制御部403、圧力制御部404、および、駆動制御部405と電気的に接続されており、主制御部401は、温度制御部402、ガス流量制御部403、圧力制御部404、および、駆動制御部405を制御するように構成されている。
【0074】
温度制御部402は、例えば、図2に示す誘導コイル213や図示しない温度センサと電気的に接続されている。そして、温度制御部402は、温度センサによって検出された温度情報に基づき、誘導コイル213への通電具合を調節することで、処理室203内の温度が所望の温度分布となるように制御するように構成されている。
【0075】
ガス流量制御部403は、例えば、図2に示すガス供給部211に接続されるバルブおよびマスフローコントローラと電気的に接続されており、ガス流量制御部403は、それぞれ供給するガスの流量が所定の流量となるようにバルブおよびマスフローコントローラを制御するように構成されている。
【0076】
圧力制御部404は、例えば、図示しない圧力センサおよびAPCバルブと電気的に接続されている。そして、この圧力制御部404は、圧力センサによって検出された圧力に基づいて、APCバルブの開閉度を調節し、処理室203内の圧力が所定圧力となるように制御するように構成されている。
【0077】
駆動制御部405は、例えば、図5に示す回転機構301および昇降機構を動作させる昇降モータ303と電気的に接続されており、この駆動制御部405は、回転機構301や昇降モータ303が所定動作をするように制御している。
【0078】
以上のようにして、本実施の形態1における基板処理装置がコントローラCLによって制御される。以下では、このコントローラCLによる制御のもと、本実施の形態1における基板処理装置によって、半導体基板上にシリコン(Si)などの半導体膜を成膜する方法について説明する。
【0079】
<本実施の形態1における基板処理装置を使用した半導体装置の製造方法>
本実施の形態1における基板処理装置101は上記のように構成されており、以下に、この基板処理装置101を使用した基板の処理工程について、図面を参照しながら説明する。具体的に、本実施の形態1では、基板の処理工程の一工程として、ウェハWFなどの基板上に、エピタキシャル成長法を使用してシリコン(Si)などの半導体膜を形成する方法について説明する。
【0080】
なお、本実施の形態1では、半導体装置の製造方法を例に挙げて説明するが、本実施の形態1で開示される基板の処理方法は、半導体装置の製造方法に限定されるものではない。例えば、第1導電型(例えばn型)の半導体基板であるウェハWFなどの基板上に第1導電型とは反対導電型の第2導電型(例えばp型)のシリコン(Si)などの半導体膜をエピタキシャル成長法で形成してpn接合を形成する太陽電池の製造方法にも適用することもできる。
【0081】
図6は、本実施の形態1における基板処理装置101の処理シーケンスを示すタイミングチャート図を表しており、図6の破線は処理室203内の温度(℃)を示し、図6の実線は処理室203内の圧力(Torr)を示している。なお、以下の説明において、基板処理装置101を構成する各部の動作は、コントローラCLにより制御される。
【0082】
まず、図2に示す処理室203内にボートBTを搬入する前段階として、処理室203はスタンバイ状態となっている(図6のスタンバイ工程)。スタンバイ状態とは、ボートBTが処理室203の真下にあるロードロック室141に配置され、複数枚のウェハWFをボートBTに装填した状態を指している。
【0083】
次に、複数枚のウェハWFがボートBTに装填されると、スタンバイ工程に続いて、昇降モータ303の上昇方向への回転駆動(正転駆動)により昇降台305および昇降シャフト309が上昇動作する。これにより、図2に示すようにボートBTは上昇して処理室209内に搬入(ボートローディング)される(図6のボートロード工程)。その後、シールキャップ219はOリングを介して天板310をシールした状態となる。このとき、処理室203内の内部圧力は、例えば、760Torr(=760×133.3Pa)となっている。ここで、ボートロード工程は、本実施の形態1における「基板を処理室内に搬送する工程」を構成している。
【0084】
ボートロード工程に続いて、処理室203内に不活性ガスとして、例えば、N(窒素)ガスが供給され、処理炉200内の処理室203を不活性ガスに置換する(図6のパージ1工程)。なお、不活性ガスは、ガス供給部211に接続される不活性ガス供給源(図示せず)から処理室203の内部へ供給される。
【0085】
パージ1工程に続いて、処理室203内を不活性ガスで満たし、かつ、所望の圧力となるように真空排気装置によって排気(真空引き)し、処理室203内を減圧する(図6の真空排気1工程)。
【0086】
真空排気1工程に続いて、処理室203内の圧力を圧力センサで測定し、測定した圧力に基づきAPCバルブ(圧力調節器)の開度がフィードバック制御される(図6の圧力制御工程)。このとき、ガス供給部211に接続された不活性ガス供給源(図示せず)からは、不活性ガスとして、例えばNガスが、処理室203の内部へ供給される。この圧力制御工程によって、処理室203内の圧力は、16000Pa〜93310Paの範囲から選択される処理圧力のうち、一定の処理圧力に調整される。例えば、200Torr〜700Torr(200×133.3Pa〜700×133.3Pa)となる。なお、処理室203内の圧力制御は、この圧力制御工程以降、図6に示す真空排気2工程まで一定の処理圧力を維持するように制御する。
【0087】
そして、ブロア(図示せず)を動作させることで、誘導加熱装置とアウターチューブ204との間でガス若しくはエアを流通させ、アウターチューブ204の側壁などを冷却する。ラジエータおよび冷却壁には、冷却媒体として冷却水が流通し、壁体を介して誘導加熱装置内が冷却される。また、処理室203内の温度を所望の温度とするように誘導加熱装置を構成する誘導コイル213には高周波電流が印加され、加熱体206に誘導電流(渦電流)を生じさせる。
【0088】
具体的には、誘導加熱装置により処理炉200内の少なくとも、加熱体206を誘導加熱し、加熱体206からの輻射熱によって、処理室203内のボートBTに保持された各ウェハWFを加熱する(図6の昇温工程)。つまり、誘導加熱装置を構成する誘導コイル213に高周波電流を流すと、処理炉200内に高周波電磁界が発生し、この高周波電磁界により被誘導体である加熱体206に渦電流が発生する。そして、加熱体206は、渦電流によって誘導加熱が起こって昇温され、その後、加熱体206からの輻射熱により、処理室203内に配置されているウェハWFが加熱される。ここでの昇温工程は、本実施の形態1における「基板を処理する工程」を構成している。
【0089】
加熱体206を誘導加熱する際、温度制御部402は、処理炉200(処理室203)内が所望の温度分布となるように各放射温度計により検出した温度情報を監視し、この温度情報に基づいて誘導加熱装置を構成する誘導コイル213への通電具合をフィードバック制御するようにしている。処理炉200内を昇温することにより、処理室203内のボートBTに配置されているウェハWFの温度も上昇する。例えば、原料ガスとしてSiHCl(トリクロロシラン)、キャリアガスとして水素ガス(H)を用いる場合には、加熱体206の温度が1150℃以上となるように誘導加熱する。さらに、各ウェハWFは、700℃〜1200℃の範囲から選択される処理温度のうち、一定の温度で加熱される。
【0090】
昇温工程に続いて、回転機構301を回転駆動してボートBTを回転させ、各ウェハWFを処理炉200内で回転させる。その後、各ウェハWFの温度が安定したところで、ガス供給部211から加熱されているガス導入空間205へ水素(H)ガス(キャリアガス)が導入される。そして、ガス導入空間205に導入された水素(H)ガスは、加熱されたガス導入空間205によって加熱された後、処理室203の外壁202に設けられている複数の噴出孔208から処理室203の内部へ供給される。一方、ガスノズル209からは、原料ガスとキャリアガスの混合ガスであり、かつ、成膜条件よりも高い濃度のSiCl/水素ガスを供給する。これにより、ガス導入空間205からは、キャリアガス(希釈ガス)である水素(H)ガスだけが供給されるので、ガス導入空間205内での不所望な成膜がなくなる。一方、ガスノズル209からは、成膜条件よりも高い濃度のSiCl/水素ガスが供給されるため、ガスノズル209内での不所望な膜の形成が抑制される。そして、処理室203の内部では、ガス導入空間205から導入された水素(H)ガスと、ガスノズル209から導入された成膜条件よりも高い濃度のSiCl/水素ガスとが混合(ミキシング)され、成膜条件に適した2%〜10%程度のSiCl/水素ガスとなる。この成膜条件に適した2%〜10%程度のSiCl/水素ガスが処理室203の内部に配置されているウェハWF上に供給されることにより、ウェハWF上に、例えば、シリコン(Si)からなる膜をエピタキシャル成長させることができる。
【0091】
処理室203の内部に供給された原料ガスおよびキャリアガスは、各ウェハWF間を通過して各ウェハWFの表面上に行き渡った後、ガス排気部212に到達して排気される。このとき、キャリアガスは、予めガス導入空間205を通過する際に予備加熱されているため、加熱されているウェハWFと、原料ガスとキャリアガスとの混合ガスとの温度差を小さくすることができる。この結果、本実施の形態1によれば、原料ガス(キャリアガスを含む)とウェハWFとの温度差に起因したヘイズやスリップの発生を抑制することができる。この結果、本実施の形態1によれば、ヘイズやスリップに基づくウェハWF上への成膜不良を抑制することができる。さらには、原料ガスおよびキャリアガスによるウェハWFの温度低下も抑制することができるため、温度低下に起因するウェハWF上への成膜速度の低下も効果的に抑制することができる。以上のようにして、各ウェハWFの表面上で原料ガスの分解に基づくエピタシャル成長により、各ウェハWFの表面上にシリコン(Si)などの半導体膜を形成することができる(図6の成膜工程)。
【0092】
成膜工程後、予め設定された時間が経過すると、誘導加熱装置を構成する誘導コイル213への高周波電流の印加を停止させる等して、処理室203内の温度を低下させる(図6の降温工程)。そして、処理室203内の圧力を所望の圧力とするため、真空排気装置を作動させて、処理室203内の雰囲気をガス排気部212から外部へ排気(真空引き)しつつ、処理室203の内部圧力を減圧する(図6の真空排気2工程)。続いて、不活性ガス供給源(図示せず)から不活性ガスとして、例えば、Nガスを処理室203内に供給して処理室203内を不活性ガスに置換し、処理室203内の圧力を常圧に復帰させる(図6のパージ2工程)。
【0093】
パージ2工程に続いて、昇降モータ303を下降方向に回転駆動(逆転駆動)させることにより、シールキャップ219を下降させる。すると、マニホールドの下端側が開口されるとともに、処理済の各ウェハWFがボートBTに保持された状態で、マニホールドの下端側から処理炉200の外部、つまり、ロードロック室141に向けて搬出(ボートアンローディング)される(図6のボートアンロード工程)。そして、処理済の各ウェハWFをボートBTから取り出せる状態となる(ウェハディスチャージ)。その後、本実施の形態1における基板処理装置101はスタンバイ状態に復帰する。以上のようにして、各ウェハWFの表面上に半導体膜を形成することができる。
【0094】
<本実施の形態1における効果>
以上のようにして、本実施の形態1における技術的思想によれば、少なくとも、以下に記載する複数の効果のうち、1つ以上の効果を奏する。
【0095】
(1)本実施の形態1によれば、ガスノズルに比べて遥かに表面積の大きなガス導入空間205を設けているので、表面積の大きなガス導入空間205の内部で予めガスを充分に加熱することができる。このため、処理室203に導入されるガスの温度を約1100℃程度まで加熱することができ、この結果、処理室203の内部に配置されているウェハWFとの温度差を小さくすることができる。したがって、本実施の形態1によれば、処理室203に導入されるガスと、処理室203の内部に配置されているウェハWFとの温度差に起因するヘイズやスリップを抑制することができ、ウェハWF上に形成される膜の品質を向上させることができる。
【0096】
(2)さらには、本実施の形態1によれば、原料ガスおよびキャリアガスによるウェハWFの温度低下も抑制することができるため、温度低下に起因するウェハWF上への成膜速度の低下も効果的に抑制することができる。
【0097】
(3)本実施の形態1によれば、ガス導入空間205から複数の噴出孔208を介して処理室203の内部へガスを供給する第1経路とは別に、処理室203の内部にガスノズル209を設け、このガスノズル209から複数の噴出孔210を介して処理室203の内部へガスを供給する第2経路も設けている。具体的に、本実施の形態1では、上述した第1経路から水素(H)ガスを供給し、上述した第2経路から30%〜50%程度のSiCl/水素ガスを供給するように構成している。これにより、ガス導入空間205における不所望な膜の生成が抑制され、不所望な膜の膜剥がれに起因する異物(パーティクル)の発生を抑制することができる。
【0098】
(4)本実施の形態1によれば、流量の多い水素(H)ガスを充分に加熱するため、加熱量の大きなガス導入空間205に流量の多い水素(H)ガスを流している。これにより、ガス導入空間205から導入された流量の多い水素(H)ガスと、ガスノズル209から導入された流量の少ないSiCl/水素ガスとを処理室203の内部で混合した際、混合したガスの温度を高い温度に維持することができる。
【0099】
(5)本実施の形態1によれば、インナーチューブ204と、処理室203の外壁202とを一体的に形成することにより、インナーチューブ204や、処理室203の外壁202の損傷を抑制することができる。
【0100】
(実施の形態2)
前記実施の形態1では、処理室203の外壁202を囲むようにインナーチューブ204を設ける例について説明したが、本実施の形態2では、処理室203の外壁202の全体ではなく一部を囲むようにインナーチューブ204を設ける例について説明する。
【0101】
図7は、本実施の形態2における処理炉200の構成を示す図である。図7に示す本実施の形態2における処理炉200の構成は、図2に示す前記実施の形態1における処理炉200の構成とほぼ同様の構成をしているため、主に、相違点を中心に説明する。
【0102】
<本実施の形態2における特徴>
本実施の形態2における特徴は、図7に示すように、処理室203の外壁202の全体ではなく一部を囲むようにインナーチューブ204が設けられている点である。具体的に、処理室203の外壁202には、複数の噴出孔208が設けられているが、本実施の形態2では、これらの複数の噴出孔208が設けられている外壁202の側面にインナーチューブ204が設けられている点に特徴がある。すなわち、インナーチューブ204の終端部が、複数の噴出孔208のうち、一番上部に配置されている噴出孔208の上部近傍に設けられている。言い換えれば、処理室203の上面部は、インナーチューブ204で囲まれていないようになっているということもできる。このようにインナーチューブ204を設けることにより、以下に示す利点が得られる。
【0103】
例えば、図2に示す前記実施の形態1で説明した処理炉200において、処理室203の上面部は、インナーチューブ204で囲まれた構造をしていた。ここで、処理室203の外壁202とインナーチューブ204で挟まれるようにガス導入空間205が設けられている。そして、このガス導入空間205には、例えば、水素(H)ガスなどからなるキャリアガスが導入される。導入される水素(H)ガスは、軽いため、ガス導入空間205のうち、処理室203の天井(上面部)とインナーチューブ204の上面で囲まれた領域に溜まりやすい。ところが、図2に示す前記実施の形態1の構造では、処理室203の天井(上面部)に噴出孔208が設けられていないため、処理室203の天井(上面部)とインナーチューブ204の上面で囲まれた領域に溜まったキャリアガスは、流れることなく、この領域に停留する可能性が高くなる。つまり、図2に示す前記実施の形態1の構造では、処理室203の天井(上面部)とインナーチューブ204の上面で囲まれた領域において、キャリアガスのスムーズな流れが起こりにくく、ガス溜まりが形成されてしまう。すると、ガス導入空間205に導入したキャリアガスを効率よく処理室203の内部へ流すことができなくなるおそれが高まる。
【0104】
これに対し、図7に示す本実施の形態2の構造に着目すると、処理室203の上面部が、インナーチューブ204で囲まれておらず、インナーチューブ204の終端部が、複数の噴出孔208のうち、一番上部に配置されている噴出孔208の上部近傍で終端している。このことは、処理室203の天井(上面部)までガス導入空間205が設けられていないことを意味している。このため、キャリアガスとして、軽い水素(H)ガスを使用する場合であっても、一番上部に配置されている噴出孔208の上部近傍に設けられているインナーチューブ204の終端部よりも上方にはキャリアガスが到達することはなく、ガス溜まりの発生を抑制することができる。つまり、本実施の形態2では、ガス溜まりを発生させることなく、効率良く噴出孔208から処理室203の内部へキャリアガスを供給することができる。
【0105】
さらに、処理室203の天井(上面部)は熱放出の大きな領域である。このため、例えば、処理室203の天井(上面部)を囲むようにインナーチューブ204を設ける場合(2重管構造)、インナーチューブ204の上方に設けられている加熱体206からの輻射熱が処理室203の上面部に届きにくくなり、熱放出の大きな処理室203の天井(上面部)を効率良く加熱することができなくなるおそれがある。これに対し、本実施の形態2では、処理室203の上面部が、インナーチューブ204で囲まれていない構造となっているため、熱放出の大きな処理室203の天井(上面部)を加熱体206からの輻射熱で効率良く加熱することができる。
【0106】
(実施の形態3)
本実施の形態3では、前記実施の形態2と同様に、処理室203の外壁202の全体ではなく一部を囲むようにインナーチューブ204を設けるとともに、さらに、インナーチューブ204が設けられていない処理室203の上面部に、インナーチューブ204とは別部材からなるキャップ部214を設ける例について説明する。
【0107】
図8は、本実施の形態3における処理炉200の構成を示す図である。図8に示す本実施の形態3における処理炉200の構成は、図2に示す前記実施の形態1における処理炉200の構成とほぼ同様の構成をしているため、主に、相違点を中心に説明する。
【0108】
<本実施の形態3における特徴>
本実施の形態3では、前記実施の形態2と同様に、複数の噴出孔208が設けられている外壁202の側面にインナーチューブ204が設けられており、このインナーチューブ204の終端部が、複数の噴出孔208のうち、一番上部に配置されている噴出孔208の上部近傍に設けられている。これにより、本実施の形態3においても、前記実施の形態2と同様に、ガス溜まりを発生させることなく、効率良く噴出孔208から処理室203の内部へキャリアガスを供給することができる。
【0109】
ここで、本実施の形態3では、前記実施の形態2と相違して、処理室203の天井(上面部)にキャップ部214が設けられている。このキャップ部214は、インナーチューブ204とは別部品で構成されており、処理室203の天井(上面部)を囲むように形成されている。このようなキャップ部214を設ける利点について、以下に説明する。
【0110】
図7に示す前記実施の形態2の処理炉200のように、処理室203の天井(上面部)を2重管構造としないことにより、熱放出の大きな処理室203の上部領域を効率的に加熱することができる。ところが、このような構成では、加熱効率が良くなることから、かえって、処理室203の上部領域を加熱しすぎる可能性がある。そこで、本実施の形態3では、処理室203の天井(上面部)を囲むようにキャップ部214を設けて2重管構造としているのである。これにより、処理室203の上部領域を加熱しすぎることを抑制することができる。そして、このキャップ部214をインナーチューブ204と別部品で構成することにより、本実施の形態3によれば、ガス溜まりを発生させることなく、効率良く噴出孔208から処理室203の内部へキャリアガスを供給することができるとともに、処理室203の上部領域の加熱具合を調整することができるのである。
【0111】
ここで、キャップ部214は、インナーチューブ204と別部品から構成されているが、例えば、キャップ部214の構成材料をインナーチューブ204の構成材料と別材料で構成することができる。つまり、キャップ部214の構成材料を適宜選択することにより、キャップ部214の熱伝導率を調整することができ、この結果、処理室203の上部領域の加熱具合を調整することができる。また、処理室203の上部領域の加熱具合を調整する観点からは、キャップ部214と、処理室203の天井(上面部)で挟まれた空間に熱伝導率を調整するための調整ガスを充填することも可能である。さらには、キャップ部214と処理室203の天井(上面部)とにより挟まれる距離を、処理室203の外壁202とインナーチューブ204で挟まれる距離(ガス導入空間205の幅)と相違させることもできる。例えば、キャップ部214と処理室203の天井(上面部)とにより挟まれる距離が、処理室203の外壁202とインナーチューブ204で挟まれる距離(ガス導入空間205の幅)と等しくすると、処理室203の上部領域の加熱状態が加熱しすぎる状態になる場合には、キャップ部214と処理室203の天井(上面部)とにより挟まれる距離を、ガス導入空間205の幅よりも大きく構成することができる。一方、キャップ部214と処理室203の天井(上面部)とにより挟まれる距離が、処理室203の外壁202とインナーチューブ204で挟まれる距離(ガス導入空間205の幅)と等しくすると、処理室203の上部領域の熱放出が大きくなる場合には、キャップ部214と処理室203の天井(上面部)とにより挟まれる距離を、ガス導入空間205の幅よりも小さく構成することができる。以上のようにして、本実施の形態3によれば、処理室203の内部の温度分布のばらつきを抑制して、処理室203の内部温度を均一にすることができる。この結果、処理室203に積層配置されている複数枚のウェハ上に形成される膜の品質や膜厚の均一性を向上させることができる。
【0112】
(実施の形態4)
前記実施の形態1では、ガス導入空間205からキャリアガスである水素(H)ガスを処理室203の内部に供給するとともに、ガスノズル209から原料ガスとキャリアガスの混合ガスであるSiCl/水素ガスを供給する例について説明した。本実施の形態4では、ガスノズル209を使用せずに、ガス導入空間205を複数の分割空間に分離し、それぞれの分割空間に異なる種類のガスを導入する例について説明する。
【0113】
<本実施の形態4における特徴>
図9は、本実施の形態4におけるインナーチューブ204よりも内側領域の構成を示す断面図である。図9に示すように、本実施の形態4では、円筒形状のインナーチューブ204の内側領域に処理室203が設けられており、この処理室203の外壁202とインナーチューブ204の間にガス導入空間が形成されている。このガス導入空間は、例えば、2つの隔壁215によって、分割空間205aと分割空間205bに分割されている。そして、処理室203の外壁202には、分割空間205aと連通する複数の噴出孔208aが設けられているとともに、分割空間205bと連通する複数の噴出孔208bが設けられている。また、処理室203の内部にはウェハWFが配置されている。
【0114】
このように構成されている本実施の形態4における基板処理装置の利点について説明する。例えば、前記実施の形態1では、図3に示すように、ガス導入空間205からキャリアガスである水素(H)ガスを処理室203の内部に供給するとともに、ガスノズル209から原料ガスとキャリアガスの混合ガスであるSiCl/水素ガスを供給していた。この場合、ガス導入空間205の表面積はかなり大きいため、このガス導入空間205を水素(H)ガスが通過する際、この水素(H)ガスは、効率良く充分に加熱され、加熱された水素(H)ガスが処理室203の内部へ供給される。一方、ガスノズル209からは、SiCl/水素ガスが供給されるが、ガスノズル209の表面積はガス導入空間205の表面積に比べて遥かに小さいため、SiCl/水素ガスを充分に加熱されないおそれがある。したがって、処理室203の内部で、ガス導入空間205から導入される水素(H)ガスと、ガスノズル209から導入されるSiCl/水素ガスを混合した場合、混合したガスの温度が低下するおそれが考えられる。
【0115】
これに対し、本実施の形態4では、例えば、図9に示すように、ガス導入空間を分割空間205aと分割空間205bに分割し、分割空間205aにキャリアガスである水素(H)ガスを導入し、かつ、分割空間205bにSiCl/水素ガスを導入するように構成している。このことから、本実施の形態4によれば、水素(H)ガスとSiCl/水素ガスが、ともに、処理室203の外壁202とインナーチューブ204で挟まれたガス導入空間を通過することになる。分割空間205aおよび分割空間205bは、ガス導入空間を分割した領域であるが、その表面積は、ガスノズル209に比べて充分に大きい。したがって、本実施の形態4によれば、水素(H)ガスは、分割空間205aを通過する際に充分に加熱されるとともに、SiCl/水素ガスは、分割空間205bを通過する際に充分に加熱される。この結果、水素(H)ガスおよびSiCl/水素ガスを充分に加熱することができる。このため、処理室203の内部で、分割空間205aから導入される水素(H)ガスと、分割空間205bから導入されるSiCl/水素ガスを混合した場合、混合したガスの温度低下を抑制することができる。したがって、本実施の形態4によれば、さらに、導入されるガスと、処理室203の内部に配置されているウェハWFとの温度差を小さくすることができる。このことから、本実施の形態4によれば、処理室203に導入されるガスと、処理室203の内部に配置されているウェハWFとの温度差に起因するヘイズやスリップを抑制することができ、ウェハWF上に形成される膜の品質を向上させることができる。
【0116】
<変形例>
次に、本実施の形態4における変形例について説明する。図10は、本変形例におけるインナーチューブ204よりも内側領域の構成を示す断面図である。図10は、図9とほぼ同様の構成をしており、異なる点は、ガス導入空間を分割する隔壁215が3つあり、ガス導入空間が分割空間205a、分割空間205bおよび分割空間205cの3つの空間に分離されている点である。この場合も前記実施の形態4と同様に、それぞれの分割空間205a〜205cにガスを導入して充分に加熱した後、処理室203の内部へガスを供給することができる。例えば、分割空間205aと分割空間205cに水素(H)ガスし、分割空間205bにSiCl/水素ガスを導入することができる。この場合、分割空間205aに導入された水素(H)ガスは、噴出孔208aから処理室203の内部へ供給され、分割空間205cに導入された水素(H)ガスは、噴出孔208cから処理室203の内部へ供給される。同様に、分割空間205bに導入されたSiCl/水素ガスは、噴出孔208bから処理室203の内部へ供給される。
【0117】
図11は、本変形例におけるインナーチューブ204よりも内側領域の構成を示す斜視図である。図11に示すように、インナーチューブ204と、処理室203の外壁202で挟まれたガス導入空間は、3つの隔壁215によって、分割空間205a、分割空間205bおよび分割空間205cに分割されている。そして、処理室203の外壁202には、分割空間205aと連通する複数の噴出孔208aが縦方向に沿って1列に配置されている。同様に、処理室203の外壁202には、分割空間205bと連通する複数の噴出孔208bが縦方向に沿って2列に配置され、さらに、分割空間205cと連通する複数の噴出孔208cが縦方向に沿って1列に配置されている。このように構成されている本変形例においても、前記実施の形態4と同様の効果を得ることができる。
【0118】
なお、前記実施の形態4では、例えば、図9に示すように、分割空間205aの表面積と分割空間205bの表面積が異なるように隔壁215を設けている。これは、以下に示す理由による。すなわち、前記実施の形態4では、水素(H)ガスとSiCl/水素ガスとを分離して分割空間205aと分割空間205bに導入しているが、水素(H)ガスの流量と、SiCl/水素ガスの流量は異なっている。したがって、例えば、表面積の大きな分割空間205aに流量の多い水素(H)ガスを流すとともに、表面積の小さな分割空間205bに流量の少ないSiCl/水素ガスを流すことができる。このように流量の大小に合わせて、表面積の異なる分割空間205a、205bを使用することにより、流量の大小に合わせて加熱量を調整することができ、この結果、水素(H)ガスおよびSiCl/水素ガスの両方を均一な温度に加熱することができるのである。
【0119】
(実施の形態5)
本実施の形態5では、ガス導入空間205の内部に仕切り板を追加することにより、仕切り板を設けない場合に比べて、ガス流路を長くする例について説明する。図12は、本実施の形態5におけるインナーチューブ204の内側領域の構成を示す模式図である。図12において、処理室の外壁202を囲むようにインナーチューブ204が設けられており、この外壁202とインナーチューブ204で挟まれた空間がガス導入空間205となっている。このガス導入空間205は、まず、ガス導入空間205の底面領域から上面領域に達する隔壁215によって、2つの分割空間に分離されている。そして、2つの分割空間の一方にガス供給部211aが接続されており、他方にガス供給部211bが接続されている。例えば、ガス供給部211aからは、水素(H)ガスが供給され、ガス供給部211bからは、SiCl/水素ガスが供給されるようになっている。
【0120】
そして、例えば、隔壁215によって図12の左側に分割されている分割空間に着目すると、図12に示すように、この分割空間には、仕切り構造が形成されている。具体的に、この仕切り構造は、ガス導入空間205の底面領域から上面領域に向って延在し、かつ、上面領域との間に隙間を有するように配置された第1仕切り板216と、ガス導入空間205の上面領域から底面領域に向って延在し、かつ、底面領域との間に隙間を有するように配置された第2仕切り板217とを有している。そして、第1仕切り板216と第2仕切り板217が交互に配置されているものである。これにより、ガス供給部211aから供給されたガスは、矢印で示すガス流路に沿って流れることになる。つまり、第1仕切り板216と第2仕切り板217によって、仕切り構造を設けない場合に比べて、ガス流路が長くなる。この結果、ガス導入空間205に導入されたガスが、ガス導入空間205に留まる時間が長くなり、これによって、ガスの加熱効率を向上させることができる。
【0121】
なお、本実施の形態5では、隔壁215によってガス導入空間205を2つの分割空間に分割する構成を前提に説明したが、本実施の形態5における技術的思想は、これに限らず、例えば、ガス導入空間205に隔壁215を設けずに、ガス導入空間205を複数の分割空間に分離しない場合の構成(前記実施の形態1〜3の構成)にも適用することができる。
【0122】
(実施の形態6)
本実施の形態6では、ガス導入空間205を隔壁215で複数の分割空間205a、205bに分割し、それぞれの分割空間205aと分割空間205bに異なる種類のガスを導入する構造を前提とし、この構造の製造容易性を高める技術的思想について説明する。
【0123】
図13は、処理室203の外壁202とインナーチューブ204で挟まれたガス導入空間205を隔壁215で分離した構造を示す図である。図13において、ガス導入空間205は、分割空間205aと分割空間205bに分割されている。そして、分割空間205aは、ガス供給部211aと接続されており、ガス供給部211aから供給されたガス(例えば、水素(H)ガス)は、分割空間205aで加熱されながら通過して、処理室203の外壁202に設けられた噴出孔208aから処理室203の内部へ供給される。同様に、分割空間205bは、ガス供給部211bと接続されており、ガス供給部211bから供給されたガス(例えば、SiCl/水素ガス)は、分割空間205bで加熱されながら通過して、処理室203の外壁202に設けられた噴出孔208bから処理室203の内部へ供給される。そして、分割空間205aあるいは分割空間205bから供給されたそれぞれのガスは、処理室203の内部で混合(ミキシング)されて、ウェハWF上に供給される。このような図13に示す構造は、製作上困難であるため、通常は、図14に示す構造が使用される。
【0124】
図14は、製造容易性を向上させた構造例を示す図である。図14において、分割空間205aと分割空間205bは、それぞれ、別部品であるインナーチューブ204aとインナーチューブ204bによって区画されている。この場合、インナーチューブ204aやインナーチューブ204bと、処理室203の外壁202とは、例えば、溶接によって接続される。このとき、図14に示す構造では、製作上、インナーチューブ204aの端部とインナーチューブ204bの端部との間の距離を、例えば、20mm以上とする必要があり、噴出孔208aと噴出孔208bとの間の距離が離れることになる。この場合、噴出孔208aから処理室203の内部へ導入されるガス(例えば、水素(H)ガス)と、噴出孔208bから処理室203の内部へ導入されるガス(例えば、SiCl/水素ガス)が混合しにくくなる。この結果、ウェハWF上に成膜に適した条件の混合ガスが供給されにくくなり、膜の品質不良を引き起こすおそれがある。
【0125】
そこで、本実施の形態6では、ガス導入空間205を複数の分割空間205a、205bに分割し、それぞれの分割空間205aと分割空間205bに異なる種類のガスを導入する構造において、噴出孔208aおよび噴出孔208bの位置をできるだけ近づけることができる工夫を施している。以下に、この工夫を施した本実施の形態6における技術的思想について図面を参照しながら説明する。
【0126】
<本実施の形態6における特徴>
図15は、本実施の形態6における構造例を示す図である。図15において、本実施の形態6における構造は、まず、円筒形状のインナーチューブ204の内側領域に処理室203が設けられており、この処理室203の内部にウェハWFが配置されている。そして、処理室203の外壁202と溶接で接続された円筒部220が、処理室203とインナーチューブ204で挟まれた分割空間205aに配置されている。これにより、分割空間205aと分割空間205bが円筒部220によって分離されることになる。この構造では、円筒部220が処理室203の外壁202に溶接で接続することができるので、製造容易性を向上させることができる。そして、本実施の形態6では、円筒部220の端部を挟んで、分割空間205b内に噴出孔208bが設けられ、分割空間205aに噴出孔208aが設けられている。これにより、噴出孔208aと噴出孔208bとの間の距離を、例えば、図14の半分の10mm程度まで縮めることができる。この結果、本実施の形態6によれば、噴出孔208aから処理室203の内部へ導入されるガス(例えば、水素(H)ガス)と、噴出孔208bから処理室203の内部へ導入されるガス(例えば、SiCl/水素ガス)とが混合しやすくなり、この結果、ウェハWF上に成膜に適した条件の混合ガスが供給されることになる。これにより、本実施の形態6によれば、ウェハWF上に形成される膜の品質向上を図ることができる。以上のことから、本実施の形態6によれば、製造容易性と、ウェハWF上に形成される膜の品質向上を両立させることができる。
【0127】
<変形例>
続いて、本実施の形態6の変形例について説明する。図16は、本変形例の構造を示す図である。図16において、処理室203の外壁202とインナーチューブ204との間に挟まれるように分割空間205aが形成されており、この分割空間205aと分離するように、3つの円筒部220a、220b、220cが所定間隔で外壁202に溶接されている。そして、円筒部220a、220b、220cの内部が分割空間205bとなっており、円筒部220a、220b、220cの内部のそれぞれと、処理室203の内部とを連通する噴出孔221a、221b、221cが形成されている。そして、円筒部220aと円筒部220bの間と、円筒部220bと円筒部220cの間とに、分割空間205aと処理室203の内部を連通する噴出孔208aが形成されている。このように構成されている本変形例においても、噴出孔208aと、噴出孔221a〜221cのそれぞれとの間の距離を縮めることができる。この結果、本変形例によれば、噴出孔208aから処理室203の内部へ導入されるガス(例えば、水素(H)ガス)と、噴出孔221a〜221cから処理室203の内部へ導入されるガス(例えば、SiCl/水素ガス)とが混合しやすくなり、この結果、ウェハWF上に成膜に適した条件の混合ガスが供給されることになる。これにより、本実施の形態6によれば、ウェハWF上に形成される膜の品質向上を図ることができる。特に、本変形例では、水素(H)ガスを噴射する噴出孔208aと、SiCl/水素ガスを噴射する噴出孔(噴出孔221a〜221c)が交互に配置されているので、ガス同士の混合が起こりやすく、これによって、ウェハWF上に形成される膜の品質向上を図ることができる。以上のことから、本変形例よっても、製造容易性と、ウェハWF上に形成される膜の品質向上を両立させることができる。
【0128】
図17は、本変形例の構造を分解した状態を示しており、インナーチューブ204を溶接する前の状態である。図17に示すように、フランジの付いた処理室の外壁202に噴出孔208aを設け、その後、円筒部220a〜220cが一体形成された部品を溶接によって外壁202に接合する。そして、インナーチューブ204と処理室の外壁202のフランジを溶接することにより、本変形例の構造を製造することができる。このように本変形例においても溶接によって製造することができるので、製造容易性を向上させることができる。
【0129】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0130】
前記実施の形態では、高周波誘導加熱方式によって加熱体を加熱する基板処理装置を例に挙げて説明したが、本発明の技術的思想は、これに限らず、例えば、抵抗加熱方式の基板処理装置や、ランプ加熱方式の基板処理装置などの他の加熱方式の基板処理装置にも幅広く適用することができる。
【0131】
また、前記実施の形態では、バッチ式の基板処理装置を例にして説明したが、本発明の技術的思想は、これに限らず、例えば、枚葉式の基板処理装置にも適用することができる。
【0132】
さらに、前記実施の形態では、シリコン(Si)膜を形成する例について説明したが、シリコン膜に限定されず、様々な種類の膜を形成する基板処理装置に幅広く適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明は、半導体装置や太陽電池を製造する製造業に幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0134】
101 基板処理装置
103 正面メンテナンス口
104 正面メンテナンス扉
105 カセット棚
106 スライドステージ
107 バッファ棚
110 カセット
111 筐体
111a 正面壁
112 カセット搬入搬出口
113 フロントシャッタ
114 カセットステージ
115 ボートエレベータ
118 カセット搬送装置
118a カセットエレベータ
118b カセット搬送機構
125 ウェハ移載機構
125a ウェハ移載装置
125b ウェハ移載装置エレベータ
125c ツイーザ
134a クリーンユニット
140 耐圧筐体
140a 正面壁
141 ロードロック室
142 ウェハ搬入搬出口
143 ゲートバルブ
144 ガス供給管
147 炉口シャッタ
200 処理炉
201 アウターチューブ
202 外壁
203 処理室
204 インナーチューブ
204a インナーチューブ
204b インナーチューブ
205 ガス導入空間
205a 分割空間
205b 分割空間
206 加熱体
207 石英ウォール
208 噴出孔
208a 噴出孔
208b 噴出孔
209 ガスノズル
210 噴出孔
211 ガス供給部
211a ガス供給部
211b ガス供給部
212 ガス排気部
213 誘導コイル
214 キャップ部
215 隔壁
216 第1仕切り板
217 第2仕切り板
219 シールキャップ
220 円筒部
220a 円筒部
220b 円筒部
220c 円筒部
221a 噴出孔
221b 噴出孔
221c 噴出孔
301 回転機構
302 回転軸
303 昇降モータ
304 下基板
305 昇降台
306 ガイドシャフト
307 ボール螺子
308 上基板
309 昇降シャフト
310 天板
311 ベローズ
312 昇降基板
313 駆動部カバー
314 駆動部収納ケース
315 冷却機構
316 電力ケーブル
317 冷却水流路
318 冷却水配管
319 炉口
401 主制御部
402 温度制御部
403 ガス流量制御部
404 圧力制御部
405 駆動制御部
BT ボート
CL コントローラ
WF ウェハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基板を処理する処理室と、
(b)前記処理室の外壁に設けられた複数の噴出孔と、
(c)前記処理室を囲むように設けられたチューブと、
(d)前記処理室と前記チューブで挟まれたガス導入空間と、を備え、
前記処理室の外壁と前記チューブは、一体的に形成されていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
(a)基板を処理する処理室と、
(b)前記処理室を囲むように設けられたチューブと、
(c)前記処理室と前記チューブで挟まれたガス導入空間と、を備える基板処理装置であって、
前記ガス導入空間は、複数の隔壁によって、第1分割空間と第2分割空間に区切られ、
前記基板処理装置は、さらに、
(d)前記第1分割空間と前記処理室の内部とを連通する複数の第1噴出孔と、
(e)前記第2分割空間と前記処理室の内部とを連通する複数の第2噴出孔と、を有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
(a)基板を処理する処理室と、
(b)前記処理室の外壁に設けられた複数の噴出孔と、
(c)前記処理室を囲むように設けられたチューブと、
(d)前記処理室と前記チューブで挟まれたガス導入空間と、
(e)前記ガス導入空間の内部に設けられた仕切り構造と、を備え、
前記仕切り構造は、
(e1)前記ガス導入空間の底面領域から上面領域に向って延在し、かつ、前記上面領域との間に隙間を有するように配置された第1仕切り板と、
(e2)前記ガス導入空間の前記上面領域から前記底面領域に向って延在し、かつ、前記底面領域との間に隙間を有するように配置された第2仕切り板と、を有し、
前記第1仕切り板と前記第2仕切り板が交互に配置されていることを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−45884(P2013−45884A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182555(P2011−182555)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】