説明

基板処理装置

本発明の基板処理装置は、ウエハ200を収容する処理室201と、処理室201内に処理ガスを供給するガス供給系232a、232bと、処理室201内の雰囲気を排気する排気系231、246と、処理ガスをプラズマ化するため、保護管275内に挿抜可能に収容された一対の電極269、270とを有し、電極269、270は可撓性の部材で構成され、少なくとも一箇所が屈曲した状態で保護管275内に収容される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置に関し、特に、プラズマにより励起された処理ガスを利用して半導体ウエハに成膜を行う基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマにより励起された処理ガスを利用して半導体ウエハに成膜を行う基板処理装置には、処理ガスとの反応を防止するために、プラズマを発生させる電極を保護管内に収容する構造のものがある。(日本国特開2002−280378号公報参照)
【発明の開示】
【0003】
本発明者らは、そのような構造の基板処理装置では、プラズマを均一に発生させることができると共に、装置への装着が容易な構造の電極が望ましいことを見いだした。
【0004】
従って、本発明の主な目的は、プラズマを均一に発生させることができると共に、装置への装着が容易な構造の電極を備える基板処理装置を提供することにある。
【0005】
本発明の一態様によれば、
少なくとも一つの基板を収容する処理室と、
前記処理室内に処理ガスを供給するガス供給系と、
前記処理室内の雰囲気を排気する排気系と、
前記処理ガスを活性な状態とするため、保護管内に挿抜可能に収容された、少なくとも一対の電極と、を有し、
前記電極は、少なくとも一箇所が屈曲した状態で前記保護管内に収容され、更に、前記電極は可撓性の部材で構成したことを特徴とする基板処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の実施例1に係る基板処理装置の縦型の基板処理炉を説明するための概略縦断面図である。
【図2】本発明の実施例1に係る基板処理装置の縦型の基板処理炉を説明するための概略横断面図である。
【図3】本発明の実施例1に係る基板処理装置の縦型の基板処理炉に使用するプラズマ発生用電極を説明するための概略図である。
【図4】本発明の実施例1に係る基板処理装置の縦型の基板処理炉に使用するプラズマ発生用電極を説明するための概略図である。
【図5】本発明の実施例1に係る基板処理装置の縦型の基板処理炉に使用するプラズマ発生用電極を説明するための概略図である。
【図6】比較ための縦型の基板処理炉を説明するための概略縦断面図である。
【図7】本発明の実施例1に係る基板処理装置を説明するための概略斜視図である。
【図8】本発明の実施例1に係る基板処理装置を説明するための概略縦断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の好ましい実施形態によれば、
少なくとも一つの基板を収容する処理室と、
前記処理室内に処理ガスを供給するガス供給系と、
前記処理室内の雰囲気を排気する排気系と、
前記処理ガスを活性な状態とするため、保護管内に挿抜可能に収容された、少なくとも一対の電極と、を有し、
前記電極は、少なくとも一箇所が屈曲した状態で前記保護管内に収容され、更に、前記電極は可撓性の部材で構成したことを特徴とする基板処理装置が提供される。
【0008】
好ましくは、前記電極は、線状の導電部材を編み込んで構成されている。さらに好ましくは、前記電極に芯が設けられている。
【0009】
また、好ましくは、前記電極は、線状の導電部材を編み込んで構成した部材を中空の円筒形状としたものである。
【0010】
また、好ましくは、前記電極は、線状の導電部材を束ねて構成した部材からなる。
【0011】
また、好ましくは、前記一対の電極のそれぞれの電極は、それぞれが別体の保護管に挿抜可能に収容されている。
【0012】
また、好ましくは、前記一対の電極のそれぞれの電極の外径が、前記別体の保護管のそれぞれの内径より1乃至2mm小さい。
【0013】
また、好ましくは、前記基板処理装置が、複数の基板を所定の間隔で積層して保持する基板保持部材を、処理室内に収容した状態で基板の処理が実行される装置であって、
前記一対の電極が基板の積層方向に亘って配置され、更に、前記電極の端部が、前記基板保持部材に保持される前記電極端部側の最端の基板位置よりも、少なくとも基板保持部材での基板同士の間隔分の長さを超えて設置されている。
この場合に、より好ましくは、前記電極の端部が、前記基板保持部材の天板の位置を超えた位置に設置されている。
【0014】
また、本発明の好ましい実施形態によれば、
少なくとも一つの基板を収容する処理室と、
前記処理室内に処理ガスを供給するガス供給系と、
前記処理室内の雰囲気を排気する排気系と、
前記処理ガスを活性な状態とするため、保護管内に挿抜可能に収容された、少なくとも一対の電極と、を有し、
前記電極は、少なくとも一箇所が屈曲した状態で前記保護管内に収容され、更に、前記電極は可撓性の部材で構成したことを特徴とする基板処理装置を使用して、基板を処理する工程を備える半導体装置の製造方法が提供される。
【0015】
次に、本発明の好ましい実施例を説明する。
本発明の好ましい実施例においては、プラズマを発生させる電極は、少なくとも一箇所が屈曲した状態で保護管内に収容されると共に、可撓性の部材で構成されている。
電極を可撓性とすることにより、保護管内に挿入時に柔軟性を持たせることができると共に、熱膨張を抑制することができるためである。また、反応室の下から上まで均一な放電を行うために細長形状の電極を用いる場合でも、保護管に容易に着脱することができる。
【0016】
また、プラズマを発生させる電極を、線状の導電部材を編み込んで構成することにより、電極挿入時の自由度を大きくすることができ、熱膨張による変形が少ないものとすることができる。さらに、表面積を確保出来、高周波は物体の表面を流れる特性があるので、プラズマを効率よく発生させることができるようになる。特に電極を円筒形状に加工することで更に良い効果が得られる。
【0017】
プラズマを発生させる電極に芯を設けることにより、可撓性のある電極を縮みなく使用でき、複数のウェハについてより均一なプラズマを供給できる。
【0018】
また、プラズマを発生させる電極を、線状の導電部材を束ねて構成した部材からなるようにすることも好ましく、このようにすることで、断面が丸形の屈曲性のある細長形状の電極を容易に実現できるようになる。
【0019】
なお、導電部材の1例として、鉄、ニッケル、炭素、金等、またはそれらを含む化合物が好ましく用いられる。この中で、耐熱性、金属汚染、価格を考慮すれば、ニッケルがより好ましく用いられる。
また、特に500℃以上の高温雰囲気で用いる場合は、タングステン、モリブデンなどの高融点金属や炭素繊維なども好ましく用いられる。
【実施例1】
【0020】
次に、図面を参照して本発明の実施例をより詳細に説明する。
【0021】
本実施例として、ウエハ等の基板へのプロセス処理例としてALD(Atomic Layer Deposition)法を用いた成膜処理について、簡単に説明する。
【0022】
ALD法は、ある成膜条件(温度、時間等)の下で、成膜に用いる2種類(またはそれ以上)の原料となるガスを1種類ずつ交互に基板上に供給し、1原子層単位で吸着させ、表面反応を利用して成膜を行う手法である。
【0023】
即ち、利用する化学反応は、例えばSiN(窒化珪素)膜形成の場合ALD法ではDCS(SiHCl、ジクロルシラン)とNH(アンモニア)を用いて300〜600℃の低温で高品質の成膜が可能である。また、成膜に必要な原料ガスは、複数種類の反応性ガスを1種類ずつ交互に供給する。そして、膜厚制御は、反応性ガス供給のサイクル数で制御する。(例えば、成膜速度が1Å/サイクルとすると、20Åの膜を形成する場合、処理を20サイクル行う。)
【0024】
図1は、本実施例にかかる基板処理装置の縦型の基板処理炉を説明するための概略縦断面図であり、図2は本実施例にかかる基板処理装置の縦型の基板処理炉を説明するための概略横断面図である。
【0025】
加熱手段であるヒータ207の内側に、基板であるウエハ200を処理する反応容器として反応管203が設けられ、この反応管203の下端開口は蓋体であるシールキャップ219により気密部材であるOリング(図示せず)を介して気密に閉塞されている。反応管203およびヒータ207の外側には断熱部材208が設けられている。断熱部材208は反応管203の上方をも覆うように設けられている。少なくとも、ヒータ207、断熱部材208、反応管203、及びシールキャップ219により処理炉202を形成している。また、反応管203、シールキャップ219および後述する反応管203内に形成されたバッファ室237により処理室201を形成している。シールキャップ219にはボート台218および回転軸220を介して基板保持手段であるボート217が立設され、ボート台218はボート217を保持する保持体となっている。そして、ボート217は処理炉202に挿入される。ボート217にはバッチ処理される複数のウエハ200が水平姿勢で管軸方向に多段に垂直方向に積載される。ヒータ207は処理炉202に挿入されたウエハ200を所定の温度に加熱する。
【0026】
反応管203内の中央部には複数枚のウエハ200を多段に同一間隔で鉛直方向に載置するボート217が設けられており、このボート217は図中省略のボートエレベータ機構により反応管203に出入りできるようになっている。また処理の均一性を向上するためにボート217を回転するための回転手段であるボート回転機構267が設けてあり、ボート回転機構267を回転することにより、ボート台218に保持されたボート217を回転するようになっている。
【0027】
そして、処理炉202へは複数種類、ここでは2種類のガスを供給する供給管としての2本のガス供給管232a、232bが設けられる。ここではガス供給管232aからは流量制御手段であるマスフローコントローラ241a及び開閉弁であるバルブ243aを介し、更に後述する反応管203内に形成されたバッファ室237を介して処理室201に反応ガスが供給され、ガス供給管232bからは流量制御手段であるマスフローコントローラ241b、開閉弁であるバルブ243b、ガス溜め247、及び開閉弁であるバルブ243cを介し、ガス供給部(図示せず)を介して処理室201に反応ガスが供給されている。
【0028】
処理室201は、ガスを排気する排気管であるガス排気管231によりバルブ243dを介して排気手段である真空ポンプ246に接続され、真空排気されるようになっている。尚、このバルブ243dは弁を開閉して処理室201の真空排気・真空排気停止ができ、更に弁開度を調節して圧力調整可能になっている開閉弁である。
【0029】
処理室201を構成している反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間には、反応管203の下部より上部の内壁にウエハ200の積載方向に沿って、ガス分散空間であるバッファ室237が設けられており、そのバッファ室237のウエハ200と隣接する内側の壁の端部近傍にはガスを供給する供給孔であるガス供給孔248aが設けられている。このガス供給孔248aは反応管203の中心へ向けて開口している。このガス供給孔248aは、ウエハ200の積載方向に沿って下部から上部に所定の長さにわたってそれぞれ同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0030】
そしてバッファ室237のガス供給孔248aが設けられた側と反対側の反応管203の側壁には、ガス供給管232aが接続されている。
【0031】
さらに、バッファ室237に、細長い構造を有する電極269及び電極270が上部より下部にわたって電極を保護する保護管である電極保護管275にそれぞれ保護されて配設され、この電極269又は電極270のいずれか一方は整合器272を介して高周波電源273に接続され、他方は基準電位であるアースに接続されている。この結果、電極269及び電極270間のプラズマ生成領域224にプラズマが生成される。
【0032】
この電極保護管275は、電極269及び電極270のそれぞれをバッファ室237の雰囲気と隔離した状態でバッファ室237に挿入できる構造となっている。
【0033】
ここで、電極保護管275の内部は外気(大気)と同一雰囲気であると、電極保護管275にそれぞれ挿入された電極269及び電極270はヒータ207の加熱で酸化されてしまう。そこで、電極保護管275の内部は窒素などの不活性ガスを充填あるいはパージし、酸素濃度を充分低く抑えて電極269又は電極270の酸化を防止するための不活性ガスパージ機構(図示せず)が設けられる。
【0034】
本実施例では、電極保護管275を途中で屈曲した構造としており、バッファ室237内を最下端のウエハ200よりも下側からボート天板216よりも上部まで延在する垂直部とその下の斜め部とから構成されている。斜め部の下端は反応管203の側壁から外部に突き出している。
【0035】
電極269及び電極270として、可撓性のある部材を使用することにより、電極保護管275内に、電極保護管275の斜め部の下端から電極269、270を挿入すると共に、電極269、270を電極保護管275の上端部まで達するようにすることができる。
【0036】
電極269、270の一例として、導電部材を薄板に加工した構造を図3に示す。これは可撓性のある導電部材を1つ使用した電極269、270の一例である。この電極269、270は導電部材を薄板に加工したものなので、薄板の主面に垂直方向について屈曲性が得られる。そのため、電極269、270の差込み口が反応管203の側面にある構造でも、電極269、270の電極保護管275への差込みが可能である。またこの電極269、270に高周波電力を印可すると、プラズマ224を発生させることができる。ただ、薄板の電極269、270は電極保護管275の中で歪みが生じてしまい、電極269、270間の間隔が垂直方向で一定でなくなってプラズマ224は不均一となる場合もある。
【0037】
次に、屈曲性のある導電部材を複数使用した電極269、270の例を図4、図5を参照して説明する。
【0038】
まず、線状に加工した導電部材を束ねた電極269、270の構造を図4に示す。この電極269、270は導電部材を線状に加工したものを使用しているので、可撓性、屈曲性が得られる。
【0039】
また、図5には、線状に加工した導電部材を編み込んだ構造の例を示している。この電極269、270は複数本の導電部材を編み込み、その中心に芯271を通した構造になっている。編み込み型電極269、270に芯271がない場合は、電極269、270は、プラズマ224発生時に熱が加わると、柔らかくなって網目が詰まり、下方向に縮むことがある。また、メンテナンス時に一度抜いた電極269、270を電極保護管275に再挿入する際に、柔らかくなった電極269、270は電極保護管275との摩擦で縮み、最上部のウェハ200まで電極269、270が到達しないことがある。最上部のウェハ200まで電極267、270が届いていないということは、複数のウェハ200が存在する領域でプラズマ224が未発生な部分または不均一な部分ができ、成膜にも影響がでることが懸念される。そこで、電極269、270の中心に芯271をいれることにより、縮みを防止する構造にしている。
【0040】
また、上部ウェハ200領域にプラズマ224未発生部分ができてしまうことの他の対策として、図1に示すように、電極269、270が縮んだ場合でも最上位のウェハ200までプラズマ224が供給されるように、電極保護管269、270を上方向に長くして、ボート天井部216よりも上にくるようにした。これにより、電極267、270を最上位のウェハ200より高い位置まで挿入できるようになり、熱により縮みが生じた場合でも、ウェハ200が存在する領域でのプラズマ224未発生領域が生じないようにできる。
【0041】
なお、電極269、270の上部端の設置位置としては、少なくとも最上位のウエハ200よりも、ボート217に保持されるウエハ200の保持ピッチ間隔以上、上側にする。好ましくは、本実施例のように、ボート天板板216の位置を超えた位置にする。
【0042】
図4、図5に示す場合は、電極保護管275の内径より1〜2mm程小さな外形になるように電極269、270を作成すると、電極269、270を差し込むための隙間が残ると共に、電極269、270が電極保護管275との間で横方向に歪む隙間をなくすことができるため、電極269、270はまっすぐな形状のままであり、プラズマをより均一に発生させることができる。
【0043】
このような電極構造とすることで、反応管203内に均一なプラズマを生成するための細長形状の電極269、270を使い勝手良く着脱可能でまた安全に運用できるようにすることができる。
【0044】
ガス供給孔248aの位置より、120°程度回った反応管203の内側にノズル233が設けられている。このノズル233は、ALD法による成膜においてウエハ200へ、複数種類のガスを1種類ずつ交互に供給する際に、バッファ室237とガス供給種を分担する供給部である。
【0045】
このノズル233もバッファ室237と同様にウエハと隣接する位置に同一ピッチでガスを供給する供給孔であるガス供給孔248cを有し、下部ではガス供給管232bが接続されている。
【0046】
ガス供給孔248cの開口面積はノズル233内と処理室201の差圧が小さい場合には、上流側から下流側まで同一の開口面積で同一の開口ピッチとすると良いが、差圧が大きい場合には上流側から下流側に向かって開口面積を大きくするか開口ピッチを小さくすると良い。
【0047】
制御手段であるコントローラ321は、マスフローコントローラ241a、241b、バルブ243a、243b、243c、243d、ヒータ207、真空ポンプ246、ボート回転機構267、図中省略のボート昇降機構、高周波電源273、整合器272に接続されており、マスフローコントローラ241a、241bの流量調整、バルブ243a、243b、243cの開閉動作、バルブ243dの開閉及び圧力調整動作、ヒータ207温度調節、真空ポンプ246の起動・停止、ボート回転機構267の回転速度調節、ボート昇降機構の昇降動作制御、高周波電極273の電力供給制御、整合器272によるインピーダンス制御が行われる。
【0048】
次にALD法による成膜例について、DCS及びNHガスを用いてSiN膜を成膜する例で説明する。
【0049】
まず成膜しようとするウエハ200をボート217に装填し、処理炉202に搬入する。搬入後、次の4つのステップを順次実行する。
【0050】
[ステップ1]
ステップ1では、プラズマ励起の必要なNHガスと、プラズマ励起の必要のないDCSガスとを併行して流す。まずガス供給管232aに設けたバルブ243a、及びガス排気管231に設けたバルブ243dを共に開けて、ガス供給管232aからマスフローコントローラ241aにより流量調整されたNHガスをバッファ室237へ噴出し、電極269及び電極270間に高周波電源273から整合器272を介して高周波電力を0.1〜0.6kW印加してNHをプラズマ励起し、活性種として処理室201に供給しつつガス排気管231から排気する。NHガスをプラズマ励起することにより活性種として流すときは、バルブ243dを適正に調整して処理室201内圧力を10〜100Paとする。マスフローコントローラ241aで制御するNHの供給流量は1000〜10000sccmである。NHをプラズマ励起することにより得られた活性種にウエハ200を晒す時間は1〜120秒間である。このときのヒータ207温度はウエハが300〜600℃になるよう設定してある。NHガスをプラズマで活性化する事によりウエハ表面を低温で処理することができる。
【0051】
このNHをプラズマで励起して活性種として供給しているとき、ガス供給管232bの上流側のバルブ243bを開け、下流側のバルブ243cを閉めて、DCSも流すようにする。これによりバルブ243b、243c間に設けたガス溜め247にDCSを溜める。このとき、処理室201内に流しているガスはNHをプラズマ励起することにより得られた活性種であり、DCSは存在しない。したがって、NHは気相反応を起こすことはなく、プラズマにより励起され活性種となったNHはウエハ200上の下地膜と表面反応する。
【0052】
[ステップ2]
ステップ2では、ガス供給管232aのバルブ243aを閉めて、NHの供給を止めた後、Nの不活性ガスで反応管203内をパージするが、その間も引続きガス溜め247へ供給を継続する。ガス溜め247に所定圧、所定量のDCSが溜まったら上流側のバルブ243bも閉めて、ガス溜め247にDCSを閉じ込めておく。また、ガス排気管231のバルブ243dは開いたままにし真空ポンプ246により、処理室201を十分に排気し、残留NHを処理室201から排除する。
【0053】
[ステップ3]
ステップ3では、処理室201の排気が終わったらガス排気管231のバルブ243dを閉じて排気を止める。ガス供給管232bの下流側のバルブ243cを開く。これによりガス溜め247に溜められたDCSが処理室201に一気に供給される。このときガス排気管231のバルブ243dが閉じられているので、処理室201内の圧力は急激に上昇して約931Pa(7Torr)まで昇圧される。DCSを供給するための時間は2〜4秒に設定し、その後上昇した圧力雰囲気中に晒す時間を2〜4秒に設定し、合計6秒とした。このときのウエハ温度はNHの供給時と同じく、300〜600℃である。DCSの供給により、DCSが表面反応しN−H結合のHがSiと置換されて、ウエハ200上にSiN膜が成膜される。
【0054】
[ステップ4]
ステップ3では、成膜後、バルブ243cを閉じ、バルブ243dを開けて処理室201を真空排気し、残留するDCSの成膜に寄与した後のガスを排除する。また、この時にはN等の不活性ガスを処理室201に供給すると、更に残留するDCSの成膜に寄与した後のガスを処理室201から排除する効果が高まる。またバルブ243bを開いてガス溜め247へのDCSの供給を開始する。
【0055】
上記ステップ1〜4を1サイクルとし、このサイクルを複数回繰り返すことによりウエハ上に所定膜厚のSiN膜を成膜する。
【0056】
なお、ALD装置では、ガスは下地膜表面に吸着する。このガスの吸着量は、ガスの圧力、及びガスの暴露時間に比例する。よって、希望する一定量のガスを、短時間で吸着させるためには、ガスの圧力を短時間で大きくする必要がある。この点で、本実施例では、バルブ243dを閉めたうえで、ガス溜め247内に溜めたDCSを瞬間的に供給しているので、処理室201内のDCSの圧力を急激に上げることができ、希望する一定量のガスを瞬間的に吸着させることができる。
【0057】
また、本実施例では、ガス溜め247にDCSを溜めている間に、ALD法で必要なステップであるNHガスをプラズマ励起することにより活性種として供給、及び処理室201の排気をしているので、DCSを溜めるための特別なステップを必要としない。また、処理室201内を排気してNHガスを除去しているからDCSを流すので、両者はウエハ200に向かう途中で反応しない。供給されたDCSは、ウエハ200表面のみで有効に反応させることができる。
【0058】
次に、図6を参照して、比較例として、可撓性のない電極276、277を使用した場合の反応管構造について説明する。
【0059】
図6に示すように、下側から電極276を挿入する場合には、下部しか電極276を挿入することができず、プラズマがバッファ室237下の方にしか生成できないため、ウェーハ200の処理がボート217の上下で不均一になってしまう。
【0060】
次に、図7、図8を参照して本発明が好適に適用される基板処理装置の一例である半導体製造装置についての概略を説明する。
【0061】
筐体101内部の前面側には、図示しない外部搬送装置との間で基板収納容器としてのカセット100の授受を行う保持具授受部材としてのカセットステージ105が設けられ、カセットステージ105の後側には昇降手段としてのカセットエレベータ115が設けられ、カセットエレベータ115には搬送手段としてのカセット移載機114が取りつけられている。又、カセットエレベータ115の後側には、カセット100の載置手段としてのカセット棚109が設けられると共にカセットステージ105の上方にも予備カセット棚110が設けられている。予備カセット棚110の上方にはクリーンユニット118が設けられクリーンエアを筐体101の内部を流通させるように構成されている。
【0062】
筐体101の後部上方には、処理炉202が設けられ、処理炉202の下方には基板としてのウエハ200を水平姿勢で多段に保持する基板保持手段としてのボート217を処理炉202に昇降させる昇降手段としてのボートエレベータ121が設けられ、ボートエレベータ121に取りつけられた昇降部材122の先端部には蓋体としてのシールキャップ219が取りつけられボート217を垂直に支持している。ボートエレベータ121とカセット棚109との間には昇降手段としての移載エレベータ113が設けられ、移載エレベータ113には搬送手段としてのウエハ移載機112が取りつけられている。又、ボートエレベータ121の横には、開閉機構を持ち処理炉202の下面を塞ぐ遮蔽部材としての炉口シャッタ116が設けられている。
【0063】
ウエハ200が装填されたカセット100は、図示しない外部搬送装置からカセットステージ105にウエハ200が上向き姿勢で搬入され、ウエハ200が水平姿勢となるようカセットステージ105で90°回転させられる。更に、カセット100は、カセットエレベータ115の昇降動作、横行動作及びカセット移載機114の進退動作、回転動作の協働によりカセットステージ105からカセット棚109又は予備カセット棚110に搬送される。
【0064】
カセット棚109にはウエハ移載機112の搬送対象となるカセット100が収納される移載棚123があり、ウエハ200が移載に供されるカセット100はカセットエレベータ115、カセット移載機114により移載棚123に移載される。
【0065】
カセット100が移載棚123に移載されると、ウエハ移載機112の進退動作、回転動作及び移載エレベータ113の昇降動作の協働により移載棚123から降下状態のボート217にウエハ200を移載する。
【0066】
ボート217に所定枚数のウエハ200が移載されるとボートエレベータ121によりボート217が処理炉202に挿入され、シールキャップ219により処理炉202が気密に閉塞される。気密に閉塞された処理炉202内ではウエハ200が加熱されると共に処理ガスが処理炉202内に供給され、ウエハ200に処理がなされる。
【0067】
ウエハ200への処理が完了すると、ウエハ200は上記した作動の逆の手順により、ボート217から移載棚123のカセット100に移載され、カセット100はカセット移載機114により移載棚123からカセットステージ105に移載され、図示しない外部搬送装置により筐体101の外部に搬出される。尚、炉口シャッタ116は、ボート217が降下状態の際に処理炉202の下面を塞ぎ、外気が処理炉202内に巻き込まれるのを防止している。
【0068】
カセット移載機114等の搬送動作は、搬送制御手段124により制御される。
【0069】
明細書、特許請求の範囲、図面および要約書を含む2004年2月27日提出の日本国特許出願2004−55446号の開示内容全体は、そのまま引用してここに組み込まれる。
【0070】
種々の典型的な実施の形態を示しかつ説明してきたが、本発明はそれらの実施の形態に限定されない。従って、本発明の範囲は、次の請求の範囲によってのみ限定されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上説明したように、本発明の好ましい実施形態によれば、プラズマを均一に発生させることができると共に、装置への装着が容易な構造の電極を備える基板処理装置が提供される。
その結果、本発明は、プラズマにより励起された処理ガスを利用して半導体ウエハに成膜を行う基板処理装置に特に好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの基板を収容する処理室と、
前記処理室内に処理ガスを供給するガス供給系と、
前記処理室内の雰囲気を排気する排気系と、
前記処理ガスを活性な状態とするため、保護管内に挿抜可能に収容された、少なくとも一対の電極と、を有し、
前記電極は、少なくとも一箇所が屈曲した状態で前記保護管内に収容され、更に、前記電極は可撓性の部材で構成したことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記電極は、線状の導電部材を編み込んで構成されていることを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記電極は、線状の導電部材を編み込んで構成した部材を中空の円筒形状としたものであることを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記電極は、線状の導電部材を束ねて構成した部材からなることを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記基板処理装置が、複数の基板を所定の間隔で積層して保持する基板保持部材を、処理室内に収容した状態で基板の処理が実行される装置であって、
前記一対の電極が基板の積層方向に亘って配置され、更に、前記電極の端部が、前記基板保持部材に保持される前記電極端部側の最端の基板位置よりも、少なくとも基板保持部材での基板同士の間隔分の長さを超えて設置されることを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記一対の電極のそれぞれの電極は、それぞれが別体の保護管に挿抜可能に収容されていることを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記一対の電極のそれぞれの電極の外径が、前記別体の保護管のそれぞれの内径より1乃至2mm小さいことを特徴とする請求項7記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記電極に芯を設けたことを特徴とする請求項2記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記電極の端部が、前記基板保持部材の天板の位置を超えた位置に設置されていることを特徴とする請求項5記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【国際公開番号】WO2005/083766
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【発行日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−510398(P2006−510398)
【国際出願番号】PCT/JP2005/002306
【国際出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】